(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-27
(45)【発行日】2024-06-04
(54)【発明の名称】圧粉磁心及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
H01F 1/24 20060101AFI20240528BHJP
B22F 1/00 20220101ALI20240528BHJP
B22F 1/16 20220101ALI20240528BHJP
B22F 3/00 20210101ALI20240528BHJP
H01F 7/06 20060101ALI20240528BHJP
H01F 41/02 20060101ALI20240528BHJP
【FI】
H01F1/24
B22F1/00 Y
B22F1/16 100
B22F3/00 B
H01F7/06 D
H01F41/02 D
(21)【出願番号】P 2020117547
(22)【出願日】2020-07-08
【審査請求日】2023-06-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000004455
【氏名又は名称】株式会社レゾナック
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100098327
【氏名又は名称】高松 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】平良 有紗
(72)【発明者】
【氏名】石原 千生
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 輝雄
【審査官】秋山 直人
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-189441(JP,A)
【文献】国際公開第2011/040568(WO,A1)
【文献】特開2006-310873(JP,A)
【文献】国際公開第2014/157517(WO,A1)
【文献】特開2003-303711(JP,A)
【文献】特開2011-018822(JP,A)
【文献】特開2004-128455(JP,A)
【文献】特開2011-243830(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01F 1/24
H01F 41/02
H01F 7/06
B22F 1/00
B22F 3/00
B22F 1/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
平均粒子径が60μm~150μmである鉄基軟磁性粒子と、前記鉄基軟磁性粒子の外周部分に形成される空隙部とを含み、前記空隙部は、前記鉄基軟磁性粒子の外周全長に対し50%以上の部分において、幅0.4μm~4.0μmであ
り、前記鉄基軟磁性粒子は、表面に絶縁性被膜が形成された絶縁性被覆鉄基軟磁性粒子を含み、前記絶縁性被覆鉄基軟磁性粒子の外周部分に、更に絶縁成分を含む、圧粉磁心。
【請求項2】
前記鉄基軟磁性粒子は純鉄粒子を含む、請求項1に記載の圧粉磁心。
【請求項3】
前記絶縁性被覆鉄基軟磁性粒子の絶縁性被膜は、リン酸塩化合物を含む、請求項
1又は2に記載の圧粉磁心。
【請求項4】
前記絶縁成分は、バリウム、カルシウム、リチウム、マグネシウム、及び亜鉛からなる群より選ばれる少なくとも1種の金属の絶縁成分を含む、請求項
1から3のいずれか1項に記載の圧粉磁心。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1項に記載の圧粉磁心を用いる、アクチュエータ。
【請求項6】
請求項1から4のいずれか1項に記載の圧粉磁心を用いる、位置センサ。
【請求項7】
10kHz~500kHzの周波数領域で用い
る、請求項
6に記載の
位置センサ。
【請求項8】
平均粒子径が60μm~150μmである鉄基軟磁性粉末と、前記鉄基軟磁性粉末100質量部に対し0.5質量部以上2.0質量部未満の潤滑剤粉末とを含む粉末混合物に、
1000MPa以上の成形圧力を加えて圧粉体に成形すること、及び、前記圧粉体を200℃~450℃で熱処理することを含む、
請求項1から4のいずれか1項に記載の圧粉磁心の製造方法。
【請求項9】
前記鉄基軟磁性粉末は純鉄粉末を含む、請求項
8に記載の圧粉磁心の製造方法。
【請求項10】
前記鉄基軟磁性粉末は、表面に絶縁性被膜が形成された絶縁性被覆鉄基軟磁性粒子を含む、請求項
8又は
9に記載の圧粉磁心の製造方法。
【請求項11】
前記絶縁性被覆鉄基軟磁性粒子の絶縁性被膜は、リン酸塩化合物を含む、請求項
10に記載の圧粉磁心の製造方法。
【請求項12】
前記潤滑剤粉末は絶縁成分を含む、請求項
8から
11のいずれか1項に記載の圧粉磁心の製造方法。
【請求項13】
前記絶縁成分は、バリウム、カルシウム、リチウム、マグネシウム、及び亜鉛からなる群より選ばれる少なくとも1種の金属の絶縁成分を含む、請求項
12に記載の圧粉磁心の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の一実施形態は、圧粉磁心及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
鉄粉等の軟磁性粉末を圧縮成形して得られる圧粉磁心は、形状自由度が高く、磁心形状の設計範囲が広いという利点がある。また、圧粉磁心は、製造工程での材料歩留まりがよく、材料コストを低減可能であるという利点を有している。
このような利点から、圧粉磁心は、変圧器、リアクトル、サイリスタバルブ、ノイズフィルタ、チョークコイル等に用いられている。また、圧粉磁心は、モータ用鉄心、一般家電及び産業機器用モータのロータ及びヨーク、さらには、ディーゼルエンジン及びガソリンエンジンの電子制御式燃料噴射装置に組み込まれる電磁弁用のソレノイドコア(固定鉄心)等、各種軟質磁気部品への適用が進んでいる。
【0003】
特許文献1には、良好な直流重畳特性と高い比抵抗を有するリアクトル用複合軟磁性材料として、絶縁被膜により被覆された軟磁性粉末をシリコーン樹脂で被覆して得た被覆粉末と、SiO2等の無機絶縁粉末とを均一に混合し、その混合物を成形し、500℃以上で焼成することで複合軟磁性材料を得ることが提案されている。特許文献1の複合軟磁性材料では、シリコーン樹脂と無機絶縁粉末とからなる絶縁層の偏析厚さを制御することで、良好な直流重畳特性と高い比抵抗を得ようとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
鉄損Wは、渦電流損Weとヒステリシス損Whの和であり、周波数f、励磁磁束密度Bm、固有抵抗値ρ、材料の厚みtとしたとき、渦電流損Weは下記式1、ヒステリシス損Whは下記式2のように表されることから、鉄損Wは下記式3のように表される。なお、k1、k2は係数である。
We=(k1Bm
2t2/ρ)f2 (式1)
Wh=k2Bm
1.6f (式2)
W=We+Wh=(k1Bm
2t2/ρ)f2+k2Bm
1.6f (式3)
【0006】
渦電流損Weは、式1のように周波数fの二乗に比例して増大する。このため、鉄損Wは、式3のような数百kHzから数MHzのような高周波数領域では渦電流損Weの影響がきわめて大きくなるため、鉄損Wにおけるヒステリシス損Whの影響は相対的に小さくなる。このため高周波数領域では、固有抵抗値ρを大きくして渦電流損Weを低減させることが最優先で重要である。
モータの大出力化等に伴い、リアクトル等のコアは、大電流、高磁場側での使用が求められるようになっている。このようなリアクトル用コアにおいては、高磁場側でも微分透磁率が低下しないこと、すなわち恒透磁率(使用環境による透磁率の変化)に優れることが望ましい。そのため、リアクトル用圧粉磁心はより小粒子径の軟磁性粉末を用いること、より厚い絶縁被膜を被覆することが多い。
【0007】
近年、センサ用途でも、数百kHzから数MHzのような高周波数領域での利用は増えている。高周波数領域でのセンサ応答性を向上させるために、高複素透磁率材料は望ましい。複素透磁率は、材料中に発生する磁束密度Bを、材料に印加した交流磁界Hで割ったものである。
【0008】
本発明の一目的は、高周波数領域で使用する低鉄損で高複素透磁率の圧粉磁心を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一実施形態は、以下の通りである。
[1]平均粒子径が60μm~150μmである鉄基軟磁性粒子と、前記鉄基軟磁性粒子の外周部分に形成される空隙部とを含み、前記空隙部は、前記鉄基軟磁性粒子の外周全長に対し50%以上の部分において、幅0.4μm~4.0μmである、圧粉磁心。
[2]前記鉄基軟磁性粒子は純鉄粒子を含む、[1]に記載の圧粉磁心。
[3]前記鉄基軟磁性粒子は、表面に絶縁性被膜が形成された絶縁性被覆鉄基軟磁性粒子を含む、[1]又は[2]に記載の圧粉磁心。
[4]前記絶縁性被覆鉄基軟磁性粒子の絶縁性被膜は、リン酸塩化合物を含む、[3]に記載の圧粉磁心。
[5]前記絶縁性被覆鉄基軟磁性粒子の外周部分に、更に絶縁成分を含む、[3]又は[4]に記載の圧粉磁心。
[6]前記絶縁成分は、バリウム、カルシウム、リチウム、マグネシウム、及び亜鉛からなる群より選ばれる少なくとも1種の金属の絶縁成分を含む、[5]に記載の圧粉磁心。
[7]位置センサ用圧粉磁心又はアクチュエータ用圧粉磁心である、[1]から[6]のいずれかに記載の圧粉磁心。
[8]10kHz~500kHzの周波数領域で用いる位置センサ用圧粉磁心である、[1]から[7]のいずれかに記載の圧粉磁心。
【0010】
[9]平均粒子径が60μm~150μmである鉄基軟磁性粉末と、前記鉄基軟磁性粉末100質量部に対し0.5質量部以上2.0質量部未満の潤滑剤粉末とを含む粉末混合物に、700MPa以上の成形圧力を加えて圧粉体に成形すること、及び、前記圧粉体を200℃~450℃で熱処理することを含む、圧粉磁心の製造方法。
[10]前記鉄基軟磁性粉末は純鉄粉末を含む、[9]に記載の圧粉磁心の製造方法。
[11]前記鉄基軟磁性粉末は、表面に絶縁性被膜が形成された絶縁性被覆鉄基軟磁性粒子を含む、[9]又は[10]に記載の圧粉磁心の製造方法。
[12]前記絶縁性被覆鉄基軟磁性粒子の絶縁性被膜は、リン酸塩化合物を含む、[11]に記載の圧粉磁心の製造方法。
[13]前記潤滑剤粉末は絶縁成分を含む、[9]から[12]のいずれかに記載の圧粉磁心の製造方法。
[14]前記絶縁成分は、バリウム、カルシウム、リチウム、マグネシウム、及び亜鉛からなる群より選ばれる少なくとも1種の金属の絶縁成分を含む、[13]に記載の圧粉磁心の製造方法。
【発明の効果】
【0011】
一実施形態によれば、低鉄損で高複素透磁率の圧粉磁心を提供することができる。この圧粉磁心を用いて、高周波数領域において適するセンサを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は、例1~例4の断面画像を示す顕微鏡写真である。
【
図2】
図2は、例5~例8の断面画像を示す顕微鏡写真である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の一実施形態について説明するが、以下の例示によって本発明は限定されない。
【0014】
(圧粉磁心)
一実施形態による圧粉磁心としては、平均粒子径が60~150μmである鉄基軟磁性粒子と、鉄基軟磁性粒子の外周部分に形成される空隙部とを含み、空隙部は、鉄基軟磁性粒子の外周全長に対し50%以上の部分において、幅0.4μm以上4.0μm以下であることを特徴とする。
これによれば、低鉄損で高複素透磁率の圧粉磁心を提供することができる。
【0015】
一実施形態による圧粉磁心は、鉄基軟磁性粒子と、鉄基軟磁性粒子の外周部分に形成される空隙部とを含むことができる。
圧粉磁心は、原料としての鉄基軟磁性粉末を圧粉成形して得ることができ、好ましくは圧粉成形後に鉄基軟磁性粒子が焼結を開始する温度未満で熱処理して得ることができる。
このようにして得られる圧粉磁心は、原料としての鉄基軟磁性粉末に由来して、鉄基軟磁性粒子と、鉄基軟磁性粒子間に介在する空隙部とを含む。鉄基軟磁性粒子間の界面は、緊密に接している部分もあり得るし、線状の隙間を介在して対向する部分もあり得る。さらには、原料の潤滑剤粉末等に由来して、鉄基軟磁性粒子の外周部分には大きい空隙部が形成されることもあり得る。また、圧粉磁心には、複数の鉄基軟磁性粒子に囲まれた比較的大きな空隙部が形成されることもあり得る。
圧粉磁心において、鉄基軟磁性粒子の外周部分に形成される空隙部には、潤滑剤粉末等に由来して潤滑剤成分等の絶縁成分が含まれることもある。また、鉄基軟磁性粒子の表面に絶縁性被膜等が形成される場合では、圧粉磁心において、鉄基軟磁性粒子の外周部分に形成される空隙部には、絶縁性被膜等に由来して絶縁性成分が含まれることもある。
【0016】
圧粉磁心において、空隙部は、鉄基軟磁性粒子の外周全長に対し50%以上の部分において、幅0.4μm以上4.0μm以下であることが好ましい。以下、鉄基軟磁性粒子の外周全長に対し空隙部の幅が0.4μm以上4.0μm以下となる割合を数値A(%)とも記す。
数値Aは50%以上が好ましく、60%以上がより好ましく、80%以上がさらに好ましい。鉄基軟磁性粒子の外周部分に、大きな空隙部が存在する割合が少ないことで、複素透磁率の低下を抑制することができる。一実施形態では、比較的大粒子径の鉄基軟磁性粒子を用いるため、粒子内で渦電流損が発生して鉄損が増大する傾向があるが、数値Aを50%以上に制御することで、ヒステリシス損の上昇を抑制して、全体の鉄損を低くすることができる。
数値Aの上限値は特に制限されず、理論上は100%が好ましいが、幅4.0μmを超える空隙部を排除する制御が複雑になることから、98%以下であってよく、95%以下であってもよい。
【0017】
鉄基軟磁性粒子の外周部分に形成される空隙部は、幅0.4μm以上が好ましく、0.5m以上がより好ましく、1.0μm以上がさらに好ましい。鉄基軟磁性粒子間が緊密に接近、又は接触すると、粒子の振動が粒子間で吸収され熱エネルギーに変換されることを一因として、鉄損が大きくなる可能性がある。そのため、鉄基軟磁性粒子間には、幅0.4μm以上の空隙部が介在することが好ましい。また、この空隙部に軟質の潤滑剤成分、絶縁性成分等が形成されていることで、鉄損の上昇をより抑制することができる。
鉄基軟磁性粒子の外周部分に形成される空隙部は、幅4.0μm以下が好ましく、3.5μm以下がより好ましい。これによって、密度低下を防止して、磁気特性をより高めることができる。
【0018】
ここで、数値Aの測定方法について説明する。
空隙部の幅は、鉄基軟磁性粒子の中心点から直径方向において、鉄基軟磁性粒子の表面から、隣接する鉄基軟磁性粒子の表面までの距離である。また、鉄基軟磁性粒子の中心点は、鉄基軟磁性粒子の長径と短径が交差する点とする。
隣接する鉄基軟磁性粒子の間に潤滑剤成分、絶縁性成分等が介在する場合は、これらが介在する部分は空隙部として扱う。隣接する鉄基軟磁性粒子の界面が一部結合して空隙部を介さない場合は、一部結合している部分の空隙部の幅は0μmとして扱う。
【0019】
数値Aは、以下の手順で測定することができる。
圧粉磁心の断面を顕微鏡によって観察し、倍率Z100X1000=10000倍でサイズが1600mm×1200mmの写真画像を得る。全周長が撮影されている粒子をランダムで一個を選ぶ。この粒子と隣の粒子との間の空隙の幅を測定する。幅が0.4μm以上4.0μm以下であれば、その部分の空隙に対応する粒子の外周の長さを測定する。上記測定した長さを全周長で割った数値を数値A(%)とする。この操作を複数個の粒子で行って平均して数値A(%)を求めるとよい。
【0020】
鉄基軟磁性粒子の平均粒子径は、60μm~150μmが好ましい。
鉄基軟磁性粒子の平均粒子径は、60μm以上が好ましく、65μm以上がより好ましく、70μm以上がさらに好ましい。より微小な粒子では渦電流損を低減し、低鉄損の材料を得ることができる。一方、一実施形態では、鉄基軟磁性粒子の平均粒子径を60μm以上とすることで、鉄損が増大する傾向があるが、鉄基軟磁性粒子の外周部分の空隙部の形状を制御することで、比較的大粒子径の鉄基軟磁性粒子であっても鉄損の増大を抑制することができる。このような圧粉磁心は、低鉄損かつ高複素透磁率の用途に好ましく用いることができる。
鉄基軟磁性粒子の平均粒子径は、150μm以下が好ましく、100μm以下がより好ましく、80μm以下がさらに好ましい。これによって、粒子内の渦電流損を低減して、鉄損の増大を抑制することができる。
【0021】
ここで、平均粒子径は、面積基準の平均粒子径である。例えば、鉄基軟磁性粒子の平均粒子径は、上記した数値Aの測定手順と同様にして写真画像を得て、観察される3個の粒子について、長径及び短径を測定し、(長径+短径)/2から粒子径を求め、3個の粒子径を平均して求めることができる。
【0022】
鉄基軟磁性粒子としては、鉄基及び鉄合金基のいずれであってもよい。
圧粉磁心の全体組成は、鉄を主成分として含むことが好ましい。例えば、圧粉磁心の全体組成に対し、鉄は、50質量%以上が好ましく、80質量%以上がより好ましく、90質量%以上がさらに好ましい。
圧粉磁心の全体組成は、不可避不純物を含み得る。圧粉磁心の全体組成全量に対し、不可避不純物は、合計量として1質量%以下が好ましく、0.5質量%以下がより好ましく、0.1質量%以下がさらに好ましい。
【0023】
鉄基軟磁性粒子としては、例えば、純鉄粒子;Fe-Si合金、Fe-Al合金、パーマロイ、センダスト等の鉄合金粒子等が挙げられる。磁束密度の高さや成形性等の観点から、純鉄粒子をより好ましく用いることができる。
【0024】
一実施形態による圧粉磁心は、鉄基軟磁性粒子の外周部分に絶縁成分を含むことができる。ここで、絶縁成分は、原料に添加した潤滑剤粉末、潤滑剤粉末の一部が熱分解した潤滑剤由来成分、又はこれらの組み合わせを含むことができる。
圧粉磁心において、隣接する鉄基軟磁性粒子の間に絶縁成分が介在することで、鉄損の上昇をより抑制することができる。また、一実施形態による数値Aを満たす空隙部に絶縁成分が介在することで、過剰な絶縁成分を起因として磁束密度が低下することによる透磁率の低下を防止することができる。
【0025】
絶縁成分としては、潤滑剤成分であることが好ましく、具体的には脂肪酸金属塩を好ましく用いることができ、例えば、バリウム、カルシウム、リチウム、マグネシウム、亜鉛、マグネシウム、アルミニウム、ナトリウム、ストロンチウム等の金属の絶縁成分が挙げられ、より好ましくはこれらの金蔵の脂肪酸金属塩である。なかでも、バリウム、カルシウム、リチウム、マグネシウム、及び亜鉛からなる群より選ばれる少なくとも1種の金属による脂肪酸金属塩を用いることが好ましく、バリウム、リチウム、亜鉛、又はこれらの組み合わせがより好ましい。
脂肪酸金属塩を構成する脂肪酸としては、炭素数12~28の飽和又は不飽和の高級脂肪酸類が好ましく、例えば、ステアリン酸、12-ヒドロキシステアリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、リシノール酸、ベヘン酸、モンタン酸等が挙げられる。これらの脂肪酸の金属塩は、圧粉成形において特に好適な粉末潤滑性を示す。なかでも、ステアリン酸金属塩を好ましく用いることができる。
好ましい一例としては、ステアリン酸バリウム、ステアリン酸リチウム、ステアリン酸亜鉛、又はこれらの組み合わせである。
【0026】
上記した脂肪酸金属塩は、1種単独で、又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。脂肪酸金属塩に加えて、又はこれに変えて、潤滑剤成分としてアミドワックス等のその他の潤滑剤成分を用いてもよい。この場合、上記した脂肪酸金属塩は、潤滑剤成分全量に対し0.1質量%以上であることが好ましい。
【0027】
潤滑剤成分は、鉄基軟磁性粒子100質量部に対し、0.5質量部以上が好ましく、0.7質量部以上がより好ましく、1.0質量部以上がさらに好ましくい。これによって、圧粉磁心において、鉄基軟磁性粒子間の空隙部の形状をより好ましく制御することができ、鉄損をより低減することができる。また、潤滑剤成分が成形体に適度に配合されるため、成形体の充填性が高まり、鉄基軟磁性粒子間の空隙部の形状をより好ましく制御することができる。また、成形体の充填性が高まることで、磁束密度を高めてより高透磁率化することができる。
潤滑剤成分は、鉄基軟磁性粒子100質量部に対し、2.0質量部未満が好ましく、1.7質量部以下がより好ましく、1.5質量部以下がさらに好ましい。これによって、圧粉磁心全体に対し鉄基軟磁性粒子の占積率を適度に維持して、透磁率の過剰な低下を防止することができる。
潤滑剤成分を含む絶縁成分は、鉄基軟磁性粒子100質量部に対して0.5質量部以上が好ましく、0.7質量部以上がより好ましく、及び/又は2.0質量部未満が好ましい。
【0028】
鉄基軟磁性粒子としては、表面に絶縁性被膜が形成された絶縁性被覆鉄基軟磁性粒子を用いることができる。
圧粉磁心において、鉄基軟磁性粒子の表面に絶縁性被膜が形成されることで、渦電流損をより低減することができ、鉄損の増大をより抑制することができる。
【0029】
絶縁性被膜としては、無機絶縁性被膜であることが好ましい。絶縁性被膜としては、リン酸塩化合物が好ましく、例えば、リン酸エステル;リン酸鉄、リン酸マンガン、リン酸亜鉛、リン酸カルシウム、リン酸アルミニウム等のリン酸金属塩化合物等が挙げられる。
一方法として、リン酸塩化合物被覆鉄基軟磁性粒子は、リン酸、ホウ酸及びマグネシウムを含有する水溶液を鉄基軟磁性粉末に混合して乾燥することによって製造することができる。この場合、鉄基軟磁性粉末1kgの表面に0.7~11g程度のリン酸塩化合物被膜が形成されることが好ましい。より詳しくは、特開平09-320830号公報に記載の方法に準拠して行うことができる。
【0030】
一実施形態による圧粉磁心は、低鉄損かつ高複素透磁率が要求される用途に好ましく用いることができる。用途の一例としては、位置センサ用圧粉磁心、アクチュエータ用圧粉磁心等が挙げられる。また、一実施形態による圧粉磁心は、10kHz~500kHzの中周波数領域での使用に適している。
【0031】
(圧粉磁心の製造方法)
一実施形態による圧粉磁心の製造方法としては、平均粒子径が60μm~150μmである鉄基軟磁性粉末と、鉄基軟磁性粉末100質量部に対し0.5質量部以上2.0質量部未満の潤滑剤粉末とを含む粉末混合物に、700MPa以上の成形圧力を加えて圧粉体に成形すること、及び、圧粉体を200℃~450℃で熱処理することを含むことを特徴とする。
これによれば、低鉄損で高複素透磁率の圧粉磁心を提供することができる。
【0032】
まず、鉄基軟磁性粉末と、鉄基軟磁性粉末100質量部に対し0.5質量部以上2.0質量部未満である潤滑剤粉末とを含む粉末混合物を用意する工程について説明する。
【0033】
粉末混合物は、鉄基軟磁性粉末と、潤滑剤粉末とを含むことができる。
鉄基軟磁性粉末は、上記した鉄基軟磁性粒子と共通する組成及び平均粒子径を備えることが好ましい。鉄基軟磁性粉末としては、純鉄粉末を好ましく用いることができる。また、鉄基軟磁性粉末は、表面に絶縁性被膜が形成された絶縁性被覆鉄基軟磁性粉末であることが好ましい。この場合、絶縁性被膜は好ましくはリン酸塩化合物である。詳細については、上記鉄基軟磁性粒子で説明した通りである。
【0034】
潤滑剤粉末としては、成形潤滑剤であることが好ましく、例えば、脂肪酸、脂肪酸金属塩、非金属系ワックス等が挙げられる。
好ましくは、潤滑剤粉末は、バリウム、カルシウム、リチウム、マグネシウム、及び亜鉛からなる群より選ばれる少なくとも1種の金属の絶縁成分であって、より好ましくはこれらの金属の脂肪酸金属塩である。詳細については、上記潤滑剤成分で説明した通りである。
【0035】
潤滑剤粉末は、鉄基軟磁性粉末100質量部に対し、0.5質量部以上が好ましく、0.7質量部以上がより好ましく、1.0質量部以上がさらに好ましい。
潤滑剤粉末は、鉄基軟磁性粉末100質量部に対し、2.0質量部未満が好ましく、1.7質量部以下がより好ましく、1.5質量部以下がさらに好ましい。
例えば、潤滑剤粉末は、鉄基軟磁性粉末100質量部に対し、好ましくは0.5質量部以上2.0質量部未満であり、より好ましくは0.7~1.7質量部であり、さらに好ましくは1.0~1.5質量部である。
これによって、得られる圧粉磁心において、鉄基軟磁性粒子間に適度に潤滑剤成分が介在するようになって、鉄基軟磁性粒子間の空隙部の形状をより好ましく制御することができる。
【0036】
潤滑剤粉末の平均粒子径は、これに限定されないが、2~60μmが好ましく、8~25μmがより好ましい。特に小粒子径の潤滑剤粉末を用いることで、鉄基軟磁性粉末に潤滑剤粉末をより均一に分散させることができ、得られる圧粉磁心において成分組成がより均一になり、圧粉磁心の絶縁性をより高めることができる。
ここで、平均粒子径は、体積基準の平均粒子径であり、具体的には、レーザ回折法によって測定することができる。
【0037】
鉄基軟磁性粉末と潤滑剤粉末との混合方法は、特に限定されずに、通常の方法に従えばよい。粉末混合物にはその他の任意成分が配合されてもよい。
【0038】
次に、700MPa以上の成形圧力を加えて圧粉体に成形する工程について説明する。
【0039】
成形は、金型、樹脂型等の成形型に、上記した粉末混合物を充填し、加圧成形することで行うことができる。
成形圧力は、700MPa以上が好ましく、800MPa以上がより好ましく、1000MPa以上がさらに好ましい。これによって、圧粉体密度をより高めることができる。また、鉄基軟磁性粒子間の空隙部をより狭めることができ、圧粉体に粗大な空隙部が残らないようにすることができる。これによって、得られる圧粉磁心において空隙部が数値Aをより好ましい範囲で満たすことが可能となる。また、一実施形態では、粉末混合物に適度の潤滑剤粉末が含まれるため、粉末混合物を700MPa以上で加圧しても、隣り合う鉄基軟磁性粒子が直接接触することを防止し、鉄基軟磁性粒子間に適度の潤滑剤成分が形成されて、得られる圧粉磁心においてより好ましい形状の空隙部を形成可能となる。
【0040】
成形圧力は、2000MPa以下が好ましく、1500MPa以下がより好ましい。より高圧力で粉末混合物を成形すると、隣り合う鉄基軟磁性粒子間の距離が狭くなり、又は、隣り合う鉄基軟磁性粒子が直接接触するようになって、ヒステリシス損が上昇する傾向がある。そのため、成形圧力は2000MPa以下に制限することが好ましい。
【0041】
成形は、成形後の圧粉体において、鉄基軟磁性粉末の占積率が90体積%以上が好ましく、93体積%以上がより好ましく、95体積%以上がさらに好ましい。
これによって、圧粉磁心において、鉄基軟磁性粒子の割合が多くなり、ある程度の透磁率を確保することができ、また、比抵抗をより高めることができる。
成形後の圧粉体において、鉄基軟磁性粉末の占積率の上限値は特に限定されずに、得られる圧粉磁心において空隙部が数値Aを満たす範囲が好ましく、例えば、99体積%以下が好ましく、98体積%以下がより好ましい。
【0042】
成形温度は、特に制限されず、室温で行うことができる。潤滑剤の流動性を確保するために、200℃以下の範囲で加熱下で成形してもよい。
成形時間は、特に制限されず、圧粉体のサイズ、形状、組成等に応じて適宜調節すればよい。例えば、成形時間は、10分~24時間でよく、30分~12時間でよい。
【0043】
次に、圧粉体を200℃~450℃で熱処理する工程について説明する。
圧粉体の熱処理温度は、200℃以上が好ましく、250℃以上がより好ましく、300℃以上がさらに好ましい。
これによって、鉄基軟磁性粒子の歪みを低減し、熱応力が緩和されることで、圧粉磁心のヒステリシス損をより低減することができる。また、鉄基軟磁性粒子間の潤滑剤成分の流動性が高まり、鉄基軟磁性粒子の外周部分の空隙部がより均等な幅を持つようになって、より好ましい範囲で数値Aを満たす空隙部を形成可能となる。これによって、より低鉄損で、より高複素透磁率である圧粉磁心を提供することができる。
【0044】
圧粉体の熱処理温度は、鉄基軟磁性粒子が焼結を開始する温度未満であることが好ましい。また、圧粉体の熱処理温度は、圧粉体に含まれる潤滑剤成分が熱分解を開始する温度未満であることが好ましい。
例えば、圧粉体の熱処理温度は、450℃以下が好ましく、400℃以下がより好ましい。
これによって、潤滑剤成分が熱分解することを防止して、得られる圧粉磁心において鉄基軟磁性粒子間に適度な潤滑剤成分が含まれるようにすることができる。また、潤滑剤成分が熱分解して気化することを防止して、圧粉体から潤滑剤成分が気化して除去されることで生じる比較的大きな空隙部の発生をより防止することができる。
【0045】
圧粉体の熱処理雰囲気は、特に制限されず、大気雰囲気下であってもよいが、より高温で熱処理する場合は、潤滑剤成分の熱分解を促進しないたために、窒素雰囲気等の不活性雰囲気で行うことが好ましい。圧粉体の熱処理は、特に制限されず、大気圧下で行ってもよい。
圧粉体の熱処理時間は、特に制限されず、圧粉体のサイズ、形状、組成等に応じて適宜調節すればよい。例えば、熱処理時間は、10分~24時間でよく、30分~12時間でよい。
【0046】
一実施形態による製造方法では、得られる圧粉磁心が鉄基軟磁性粒子と、鉄基軟磁性粒子の外周部分に形成される空隙部とを含むことが好ましく、より好ましくはが鉄基軟磁性粒子の平均粒子径が60~150μmである。さらに、得られる圧粉磁心において、空隙部は、鉄基軟磁性粒子の外周全長に対し50%以上の部分において、幅0.1μm以上4.0μm以下であることが好ましい。
【実施例】
【0047】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0048】
(例1)
平均粒子径が75μmの純鉄粉末をリン酸化合物層で被覆した絶縁性被覆純鉄粉末を、円柱形状の成形金型に充填し、1200MPaの成形圧力を加えて圧縮成形し、外径11.3mm、高さ約10mmの円柱形状の圧縮成形体を得た。
得られた圧縮成形体を窒素雰囲気下で、300℃、1時間で、熱処理し、圧粉体を得た。
なお、原料の絶縁性被覆純鉄粉末に由来して、圧粉体には0.05質量部程度の絶縁成分が含まれる。以下の例でも同じである。
【0049】
(例2)
平均粒子径が45μmの純鉄粉末をリン酸化合物層で被覆した絶縁性被覆純鉄粉末100質量部に対し、絶縁成分として平均粒子径が6μmであるステアリン酸亜鉛0.7質量部を添加し、粉末混合物を得た。この粉末混合物を用いて圧縮成形体を得た他は、例1と同様にして、圧粉体を得た。
(例3)
例2において、平均粒子径が75μmの純鉄粉末をリン酸化合物層で被覆した絶縁性被覆純鉄粉末を用いた他は例2と同様にして、圧粉体を得た。
(例4)
平均粒子径が75μmの純鉄粉末をリン酸化合物層で被覆した絶縁性被覆純鉄粉末100質量部に対し、絶縁成分として平均粒子径が8μmであるステアリン酸バリウム1.0質量部を添加し、粉末混合物を得た。この粉末混合物を用いて圧縮成形体を得た他は、例1と同様にして、圧粉体を得た。
(例5)
平均粒子径が160μmの純鉄粉末をリン酸化合物層で被覆した絶縁性被覆純鉄粉末100質量部に対し、絶縁成分として平均粒子径が20μm程度であるアミド系滑剤0.7質量部を含む粉末混合物を用意した。この粉末混合物を用いて圧縮成形体を得た他は、例1と同様にして、圧粉体を得た。
【0050】
(例6)
平均粒子径が60μmの純鉄粉末をリン酸化合物層で被覆した絶縁性被覆純鉄粉末100質量部に対し、絶縁成分として平均粒子径が8μmであるステアリン酸バリウム1.2質量部を添加し、粉末混合物を得た。この粉末混合物を用いて圧縮成形体を得た他は、例1と同様にして、圧粉体を得た。
(例7)
例4において、ステアリン酸バリウムの添加量を2.0質量部とした他は例4と同様にして、圧粉体を得た。
(例8)
例4において、ステアリン酸バリウムの添加量を2.3質量部とした他は例4と同様にして、圧粉体を得た。
上記処方を表1にまとめた。表1において、絶縁成分のZnはステアリン酸亜鉛であり、Baはステアリン酸バリウムである。
【0051】
(評価)
さらに、励起磁束密度0.01T、周波数200kHzにおける複素透磁率(μ’)及び鉄損を測定した。結果を表1に示す。測定装置には、岩崎通信機株式会社製「B-Hアナライザ SY-8258」を用いた。
【0052】
得られた圧粉磁心の断面をVHX-1000顕微鏡(キーエンス製)を用いて倍率Z100X1000=10000倍で観察し、サイズが1600mm×1200mmの写真画像を得た。この写真画像から、純鉄の平均粒子径(μm)、数値A(%)を求めた。
例1~例8の写真画像を
図1及び
図2に示す。
ここで、数値A(%)は、純鉄粒子の外周部分において純鉄粒子の外周全長に対し幅0.4μm以上4.0μm以下である空隙部の割合である。
【0053】
純鉄の平均粒子径は、上記で得られた写真画像において観察される3個の粒子について、長径及び短径を測定し、(長径+短径)/2から粒子径を求め、3個の粒子径を平均して求めた。
【0054】
数値Aは、以下の手順で測定した。
上記で得られた写真画像において全周長が撮影されている粒子をランダムで3個を選ぶ。各粒子と隣の粒子との間の空隙の幅を測定する。幅が0.4μm以上4.0μm以下であれば、その部分の空隙に対応する粒子の外周の長さを測定する。上記測定した長さを全周長で割った数値を数値A(%)とする。3個の粒子の数値を平均化して数値A(%)を求めた。
【0055】
【0056】
上記した結果から、純鉄の平均粒子径が60~150μmであり、数値Aが50%以上である例において、複素透磁率(μ’)が80以上であり、鉄損が0.020(W/g)以上であり、高複素透磁率かつ低鉄損となる結果が得られた。
各例の写真画像を
図1及び
図2に示す。これらの写真画像では、測定領域において粒子をランダムに選択し、この粒子の外周部分に観察される幅0.4μm以上4.0μm以下である空隙部を実線で示している。
例3、4、6の写真画像を示す
図1(3)、(4)、
図2(6)では、粒子が1個の粒子形状を維持した状態で、粒子の外周部に、幅0.4μm以上4.0μm以下である空隙部が50%以上で観察された。
【0057】
例1では、潤滑剤粉末を添加していないため、粒子間の摩擦を起因とするヒステリシス損が発生して鉄損が増大した。また、鉄損が大きいため、複素透磁率が低下した。例1の写真画像を示す
図1(1)では、隣り合う粒子の界面の空隙部が狭く、数値Aが低下した。
例2では、純鉄の平均粒子径が45μmと小さいことから、渦電流損が減少して低鉄損となったが、小粒子径のため複素透磁率が低下した。例5では、純鉄の平均粒子径が160μmと大きいことから、渦電流損が増加して鉄損が増大した。例5では、純鉄が粗大粒で、鉄損が大きいため、複素透磁率が低下した。例2、5の写真画像を示す
図1(2)、
図2(5)では、潤滑剤添加量が適量のため、数値Aが50%以上で観察された。
【0058】
例7では、純鉄の平均粒子径が小さいことから低鉄損であるが、絶縁成分の配合量が多く、粒子間の隙間部の幅が広いことから数値Aが小さくなり、複素透磁率が低下した。例8では、例7よりも絶縁成分の配合量をさらに多くしており、複素透磁率がさらに低下した。例7、8の写真画像を示す
図2(7)、(8)では、潤滑剤添加量が過大のため、隣り合う粒子の界面の空隙部が大きく、数値Aが低下した。
【産業上の利用可能性】
【0059】
一実施形態による圧粉磁心は、低鉄損かつ高複素透磁率が要求される用途に好ましく用いることができる。用途の一例としては、位置センサ等の電子機器用センサ、各種アクチュエータ等を挙げることができる。また、一実施形態による圧粉磁心は、10kHz~500kHzの中周波数領域での使用に適している。