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特許7494703酸無水物分散アルミナゾル、その用途およびその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-27
(45)【発行日】2024-06-04
(54)【発明の名称】酸無水物分散アルミナゾル、その用途およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08G 59/42 20060101AFI20240528BHJP
   C08L 63/00 20060101ALI20240528BHJP
   C08K 3/20 20060101ALI20240528BHJP
   C08K 9/04 20060101ALI20240528BHJP
   C09C 3/08 20060101ALI20240528BHJP
   H01B 17/56 20060101ALI20240528BHJP
   C01F 7/026 20220101ALN20240528BHJP
【FI】
C08G59/42
C08L63/00 C
C08K3/20
C08K9/04
C09C3/08
H01B17/56 Z
C01F7/026
【請求項の数】 18
(21)【出願番号】P 2020180932
(22)【出願日】2020-10-28
(65)【公開番号】P2021070827
(43)【公開日】2021-05-06
【審査請求日】2023-08-10
(31)【優先権主張番号】P 2019197360
(32)【優先日】2019-10-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003986
【氏名又は名称】日産化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】末村 尚彦
(72)【発明者】
【氏名】杉澤 雅敏
(72)【発明者】
【氏名】大西 耀
【審査官】中川 裕文
(56)【参考文献】
【文献】特開昭59-001526(JP,A)
【文献】特開平04-345640(JP,A)
【文献】特開2004-099690(JP,A)
【文献】特開2001-342325(JP,A)
【文献】特開昭61-106618(JP,A)
【文献】特開平04-341711(JP,A)
【文献】特開2004-131556(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 59/00- 59/72
C08K 3/00- 13/08
C08L 1/00-101/14
C01F 7/02- 7/476
C09C 3/08
H01B 17/56
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
チタネート系カップリング剤(II)、及び/又はアルミネート系カップリング剤(III)により被覆されたアルミナを含む分散質粒子が、式(1a)、式(1b)、又は式(1c)で示される構造を有し20℃にて液状であるカルボン酸無水物(I)を含む分散媒に分散した分散液:
【化1】

(式中、R、及びRは炭素原子数1から3のアルキル基を示し、Rは炭素原子数2から12のアルケニル基を示し、n及びnは0から1の整数を示す。)。
【請求項2】
前記カルボン酸無水物(I)が、前記分散液の分散媒中に5質量%以上含まれる請求項1に記載の分散液。
【請求項3】
前記アルミナがα-アルミナ、β-アルミナ、γ-アルミナ、θ-アルミナ、及びアルミナ水和物からなる群より選ばれる少なくとも一種である請求項1又は2に記載の分散液。
【請求項4】
前記チタネート系カップリング剤(II)が、式(2a)又は式(2b)で示される構造を有する、請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の分散液:
【化2】

(式(2a)中、Rはそれぞれ独立に炭素原子数1から12のアルコキシ基、オキシ酢酸残基、又はエチレングリコール残基を示し、Xはそれぞれ独立にカルボキシル基、ホスフェート基、ピロホスフェイト基、ホスファイト基、スルホニル基、又はアミノエチル基、を示し、Rはそれぞれ独立に炭素原子数1から13のアルキル基、又はアリール基を示し、Yはヒドロキシル基を示す。n、及びnはそれぞれ独立に0又は1の整数、nは1、nはそれぞれ独立に0から2の整数、mは1から3の整数を示す。);
【化3】

(式(2b)中、Rはそれぞれ独立に炭素原子数1から12のアルコキシ基、Zはそれぞれ独立にホスフェート基、又はホスファイト基を示し、sは1から4の整数を示す。)。
【請求項5】
前記チタネート系カップリング剤(II)が、式(3a)、又は式(3b)で示される構造を有する、請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の分散液:
【化4】


(式(3a)中、nは1から3の整数を示す。)。
【請求項6】
前記アルミネート系カップリング剤(III)が、式(4)で示される構造を有する、請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載の分散液:
【化5】
【請求項7】
前記分散質粒子がさらに、式(5a)、又は式(5b)で示される構造を有する加水分解性シランで表面被覆された、請求項1乃至請求項6のいずれか1項に記載の分散液:
【化6】

(式(5a)、及び式(5b)中、R及びR11は、それぞれ独立にアルキル基、フェニル基、ビニル基、アクリロキシ基、メタクリロキシ基、エポキシ基、イソシアネート基、メルカプト基、ウレイド基、アミノ基、若しくは酸無水物基、又はそれら官能基のいずれかを含む炭素原子数1から10のアルキレン基であって、且つSi-C結合によりケイ素原子と結合しているものであり、R及びR12は、それぞれ独立にアルコキシ基、アシルオキシ基、及びハロゲン基からなる群より選ばれる加水分解性基を示す。Yはアルキレン基、アリーレン基、NH基又は酸素原子を示す。aは1から3の整数を示し、dはそれぞれ独立に0から2の整数を示し、eは0又は1の整数を示す。)。
【請求項8】
前記分散質粒子の平均粒子径が20nm乃至1000nmである請求項1乃至請求項7のいずれか1項に記載の分散液。
【請求項9】
前記分散質粒子を、Alの質量換算で0.1から50質量%含有する請求項1乃至請求項8のいずれか1項に記載の分散液。
【請求項10】
請求項1乃至請求項9のいずれか1項に記載の分散液、及びエポキシ樹脂成分を含むエポキシ樹脂組成物。
【請求項11】
さらに平均粒子径1μm~20μmの無機酸化物又は金属酸化物粒子を含む請求項10に記載のエポキシ樹脂組成物。
【請求項12】
前記エポキシ樹脂成分1等量に対して、前記カルボン酸無水物(I)を1.5から2.5等量の等量割合にて含有してなる、請求項10又は11に記載のエポキシ樹脂組成物。
【請求項13】
さらに硬化促進剤を含む請求項10乃至請求項12のいずれか1項に記載のエポキシ樹脂組成物。
【請求項14】
請求項10乃至請求項13のいずれか1項に記載のエポキシ樹脂組成物の硬化物であるエポキシ樹脂硬化物。
【請求項15】
請求項14に記載のエポキシ樹脂硬化物を用いた絶縁部材。
【請求項16】
アルミナを含む分散質粒子とチタネート系カップリング剤(II)、及び/又はアルミネート系カップリング剤(III)とを、カルボン酸無水物(I)を含む分散媒中にて分散処理する工程を含む請求項1乃至請求項9のいずれか1項に記載の分散液の製造方法。
【請求項17】
前記分散処理する工程を、粉砕装置を用いて行う請求項16に記載の分散液の製造方法。
【請求項18】
前記粉砕装置が、ボールミル、ビーズミル、又はサンドミルである請求項17に記載の分散液の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はチタネート系、又はアルミネート系カップリング剤により表面被覆されたアルミナ粒子を含む分散粒子を分散質とし、酸無水物を含む分散媒に分散させた分散液、並びのその用途及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
アルミナは化学的に安定であり、高硬度、電気絶縁性、高い熱伝導率を有することから、産業分野において電気・電子部品材料や機械部品材料、建築材料などに広く用いられている。特に、変電所や発電所におけるガス絶縁開閉設備に関して、媒体となる六フッ化硫黄(SF)に対して耐薬品性が高いため、アルミナを絶縁性充填剤として用いることが提案されている。
アルミナをこのような絶縁部材に用いる際は、一般的に、アルミナ粒子をエポキシ樹脂などに配合したエポキシ樹脂組成物を硬化した硬化物を使用する。例えば、多塩基性カルボン残無水物を硬化剤としたエポキシ樹脂組成物にアルミナ粉末を添加する1液型エポキシ樹脂組成物が開示されている(特許文献1)。
【0003】
しかし、1液型ではエポキシ樹脂組成物の粘度が増大しハンドリングに課題が生じることがあるため、主剤成分と硬化成分からなる2液型のエポキシ樹脂組成物を用いることが提案されている。この場合、エポキシ樹脂を含む主剤成分、酸無水物等を含む硬化剤成分、あるいはその両方にアルミナ粒子を配合する。樹脂組成物中で、アルミナ粒子が沈降したり、凝集体を形成すると、得られる硬化物の電気特性が劣化したり、機械的強度が不十分になるなどの恐れがある。そのため、アルミナが各成分中において良好に分散していることが求められる。特に、ハンドリングのしやすさから、酸無水物等にアルミナが良好に分散した硬化成分が求められる。
例えば、エポキシ樹脂にカップリング剤で表面処理されていないアルミナ、エポキシ基含有シランカップリング剤、及びアクリル樹脂粒子を含有するA液と、カップリング剤で表面処理していないアルミナと酸無水物とを含有するB液とからなる2液型エポキシ樹脂組成物が開示されている。(特許文献2)
【0004】
また、エポキシ樹脂、表面処理していないアルミナ粒子、シランカップリング剤、シリカ微粒子、硬化促進剤を配合した主剤成分と、酸無水物、及び表面処理されていないアルミナ粒子を配合した硬化剤成分からなる2液型エポキシ樹脂組成物(特許文献3)、エポキシ樹脂及び電融アルミナを含む第1液と、アミノシランで表面処理した電融アルミナと酸無水物及び硬化促進剤を含む第2液を配合した2液型エポキシ樹脂組成物も開示されている(特許文献4)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開昭61-171725号公報
【文献】特開2012-188611号公報
【文献】特開2014-88498号公報
【文献】特開2009-67884号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
絶縁部材等においては近年一層高い絶縁性能や機械的強度が求められており、絶縁破壊抵抗等の絶縁性と機械的強度とが一層高いレベルで両立したアルミナ分散エポキシ樹脂が強く求められるに至っている。この様な要求に応えるためにはアルミナ含有粒子の分散状態が重要であり、アルミナ含有粒子が、硬化剤成分中に良好に分散した分散液を用いることが有効である。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、アルミナ含有粒子が分散質として酸無水物を含む分散媒中に良好に分散した分散液、及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題について鋭意検討した結果、チタネート系、又はアルミネート系カップリング剤でアルミナ含有分散質粒子を表面被覆することにより、特定の酸無水物を含む分散媒中へのアルミナ含有粒子の分散性が飛躍的に向上することを見出し、当該知見に基づき、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明及びその実施形態は、以下のとおりである。
[1]
チタネート系カップリング剤(II)、及び/又はアルミネート系カップリング剤(III)により被覆されたアルミナを含む分散質粒子が、式(1a)、式(1b)、又は式(1c)で示される構造を有し20℃にて液状であるカルボン酸無水物(I)を含む分散媒に分散した分散液:
【化1】

(式中、R、及びRは炭素原子数1から3のアルキル基を示し、Rは炭素原子数2から12のアルケニル基を示し、n及びnは0から1の整数を示す。)。
[2]
前記カルボン酸無水物(I)が、前記分散液の分散媒中に5質量%以上含まれる[1]に記載の分散液。
[3]
前記アルミナがα-アルミナ、β-アルミナ、γ-アルミナ、θ-アルミナ、及びアルミナ水和物からなる群より選ばれる少なくとも一種である[1]又は[2]に記載の分散液。
[4]
前記チタネート系カップリング剤(II)が、式(2a)又は式(2b)で示される構造を有する、[1]乃至[3]のいずれか1項に記載の分散液:
【化2】

(式(2a)中、Rはそれぞれ独立に炭素原子数1から12のアルコキシ基、オキシ酢酸残基、又はエチレングリコール残基を示し、Xはそれぞれ独立にカルボキシル基、ホスフェート基、ピロホスフェイト基、ホスファイト基、スルホニル基、又はアミノエチル基、を示し、Rはそれぞれ独立に炭素原子数1から13のアルキル基、又はアリール基を示し、Yはヒドロキシル基を示す。n、及びnはそれぞれ独立に0又は1の整数、nは1、nはそれぞれ独立に0から2の整数、mは1から3の整数を示す。);
【化3】

(式(2b)中、Rは炭素原子数1から12のアルコキシ基、Zはホスフェート基、又はホスファイト基を示し、sは1から4の整数を示す。)。
[5]
前記チタネート系カップリング剤(II)が、式(3a)、又は式(3b)で示される構造を有する、[1]乃至[4]のいずれか1項に記載の分散液:
【化4】


(式(3a)中、nは1から3の整数を示す。)。
[6]
前記アルミネート系カップリング剤(III)が、式(4)で示される構造を有する、[1]乃至[5]のいずれか1項に記載の分散液:
【化5】

[7]
前記分散質粒子がさらに、式(5a)、又は式(5b)で示される構造を有する加水分解性シランで表面被覆された、[1]乃至[6]のいずれか1項に記載の分散液:
【化6】

(式(5a)、及び式(5b)中、R及びR11は、それぞれ独立にアルキル基、フェニル基、ビニル基、アクリロキシ基、メタクリロキシ基、エポキシ基、イソシアネート基、メルカプト基、ウレイド基、アミノ基、若しくは酸無水物基、又はそれら官能基のいずれかを含む炭素原子数1から10のアルキレン基であって、且つSi-C結合によりケイ素原子と結合しているものであり、R及びR12は、それぞれ独立にアルコキシ基、アシルオキシ基、及びハロゲン基からなる群より選ばれる加水分解性基を示す。Yはアルキレン基、アリーレン基、NH基又は酸素原子を示す。aは1から3の整数を示し、dはそれぞれ独立に0から2の整数を示し、eは0又は1の整数を示す。)。
[8]
前記分散質粒子の平均粒子径が20nm乃至1000nmである[1]乃至[7]のいずれか1項に記載の分散液。
[9]
前記分散質粒子を、Alの質量換算で0.1から50質量%含有する[1]乃至[8]のいずれか1項に記載の分散液。
[10]
[1]乃至[9]のいずれか1項に記載の分散液、及びエポキシ樹脂成分を含むエポキシ樹脂組成物。
[11]
さらに平均粒子径1μm~20μmの無機酸化物又は金属酸化物粒子を含む[10]に記載のエポキシ樹脂組成物。
[12]
前記エポキシ樹脂成分1等量に対して、前記カルボン酸無水物(I)を1.5から2.5等量の等量割合にて含有してなる、[10]又は[11]に記載のエポキシ樹脂組成物。
[13]
さらに硬化促進剤を含む[10]乃至[12]のいずれか1項に記載のエポキシ樹脂組成物。
[14]
[10]乃至[13]のいずれか1項に記載のエポキシ樹脂組成物の硬化物であるエポキシ樹脂硬化物。
[15]
[14]に記載のエポキシ樹脂硬化物を用いた絶縁部材。
[16]
アルミナを含む分散質粒子とチタネート系カップリング剤(II)、及び/又はアルミネート系カップリング剤(III)とを、カルボン酸無水物(I)を含む分散媒中にて分散処理する工程を含む[1]乃至[9]のいずれか1項に記載の分散液の製造方法。
[17]
前記分散処理する工程を、粉砕装置を用いて行う[16]に記載の分散液の製造方法。
[18]
前記粉砕装置が、ボールミル、ビーズミル、又はサンドミルである[17]に記載の分散液の製造方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、チタネート系、又はアルミネート系カップリング剤でアルミナを含む分散質粒子を表面被覆することにより、アルミナ含有粒子が、特定の酸無水物を含む分散媒中に良好に分散した分散液を得ることができる。さらに、前記分散液を用いてエポキシ樹脂組成物を作製することにより、高い絶縁性と、高い曲げ強度等の優れた機械的特性が高いレベルで両立するなどの優れた特性を有するエポキシ樹脂硬化物を作製することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の好ましい実施形態について説明する。ただし、下記の実施形態は本発明を説明するための例示であり、本発明は下記の実施形態に何ら限定されるものではない。
【0011】
本発明は、チタネート系カップリング剤(II)、及び/又はアルミネート系カップリング剤(III)により表面被覆されたアルミナ粒子を含む分散質粒子が、特定の化学構造を有し20℃で液状のカルボン酸無水物(I)を含む分散媒に分散した分散液であり、分散媒には後述する有機溶媒を含むこともできる。そして、任意成分として、pH調整剤、粘度調整剤、硬化促進剤などを含むことが出来る。
以下、本発明の分散液を構成する各要素について詳述する。
前記カルボン酸無水物(I)は、下記式(1a)、(1b)、又は(1c)で示される化合物であり、これらは1種類を単独で使用してもよく、2種類以上の混合物を使用してもよい。
【化7】

式中、R、及びRは炭素原子数1から3のアルキル基を示し、Rは炭素原子数2から12のアルケニル基を示し、n及びnは0から1の整数を示す。
【0012】
上記式(1a)で示されるカルボン酸無水物の具体的な例としては、下記式(6a)で示される2-メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、下記式(6b)で示される4-メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、下記式(6c)で示される2-メチルビシクロ[2.2.1]ヘプタン―2,3-ジカルボン酸無水物、下記式(6d)で示される4-メチルビシクロ[2.2.1]ヘプタン―2,3-ジカルボン酸無水物等が挙げられる。
【化8】

【0013】
上記式(1b)で示されるカルボン酸無水物の具体例としては、下記式(7a)で示される2-メチル-1,2,3,6-テトラヒドロ無水フタル酸、下記式(7b)で示される4-メチル-1,2,3,6-テトラヒドロ無水フタル酸、下記式(7c)で示される2-メチル-3,6 エンドメチレン-1,2,3,6-テトラヒドロ無水フタル酸、下記式(7d)で示される4-メチル-3,6 エンドメチレン-1,2,3,6-テトラヒドロ無水フタル酸等が挙げられる。
【化9】

【0014】
上記式(1c)で示されるカルボン酸無水物の具体例としては、下記式(8a)で示されるテトラプロペニル無水コハク酸、下記式(8b)で示されるオクテニル無水コハク酸が挙げられる。
【化10】

【化11】

これらのカルボン酸無水物は、1種類を単独で使用してもよく、2種類以上の混合物として使用してもよい。また、上記式(1a)、式(1b)、又は式(1c)で表される構造を有さないカルボン酸無水物と混合して使用してもよい。
【0015】
式(1a)、式(1b)、又は式(1c)で表される構造を有さないカルボン酸無水物と混合して使用する際の該カルボン酸無水物混合物中における式(1a)、式(1b)、又は式(1c)で表される構造を有するカルボン酸無水物の含有量は、合計で1質量%~95質量%、好ましくは20質量%~90質量%、より好ましくは50質量%~90質量%とすることができる。
上記分散媒中におけるカルボン酸無水物の含有量は、合計で5質量%~90質量%、好ましくは30質量%~90質量%、より好ましくは50質量%~90質量%とすることができる。
【0016】
前記チタネート系カップリング剤(II)は、加水分解性基、及び疎水性官能基を有する有機チタン化合物である。
前記チタネート系カップリング剤(II)が有する加水分解性基、及び疎水性官能基の数には特に制限は無いが、チタン原子1個あたり、加水分解性基1~4個、及び疎水性官能基1~3個を有することが好ましい。
加水分解性基としては、アルコキシ基、オキシ酢酸残基、エチレングリコール残基等が好ましく、複数存在する場合には同一であっても互いに異なっていてもよい。
疎水性官能基としては、カルボキシル基、ホスフェート基、ピロホスフェイト基、ホスファイト基、スルホニル基、アミノエチル基等が好ましく、複数存在する場合には同一であっても互いに異なっていてもよい。
【0017】
前記チタネート系カップリング剤(II)の好ましい例としては、式(2a)又は式(2b)で示される化合物が挙げられる。
【化12】

式(2a)中、Rはそれぞれ独立に炭素原子数1から12のアルコキシ基、オキシ酢酸残基、又はエチレングリコール残基を示し、Xはそれぞれ独立にカルボキシル基、ホスフェート基、ピロホスフェイト基、ホスファイト基、スルホニル基、又はアミノエチル基、を示し、Rはそれぞれ独立に炭素原子数1から13のアルキル基、又はアリール基を示し、Yはヒドロキシル基を示す。n、及びnはそれぞれ独立に0又は1の整数、nは1、nはそれぞれ独立に0から2の整数、mは1から3の整数を示す。
すなわち、R、X、及び/又はRが複数存在するときは、それらは同一であってもよく、互いに異なっていてもよい。同様に、4-mが2以上であるとき(式(2a)右辺の構造が複数存在するとき)は、複数のn、n、及び/又はnは、同一であってもよく、互いに異なっていてもよい。
【化13】

式(2b)中、Rはそれぞれ独立に炭素原子数1から12のアルコキシ基、Zはそれぞれ独立にホスフェート基、又はホスファイト基を示し、sは1から4の整数を示す。
すなわち、R、及び/又はZが複数存在するときは、それらは同一であってもよく、互いに異なっていてもよい。
【0018】
上記式(2a)又は式(2b)で示されるチタネート系カップリング剤の具体例には、下記式(3a)で示されるイソプロピルトリイソステアロイチタネート(プレンアクトTTSとして、味の素ファインテクノ株式会社から入手可能)、下記式(3b)で示されるテトラオクチル-ビス(ジトリデシルホスファイト)チタネート(プレンアクト46Bとして、味の素ファインテクノ株式会社から入手可能)、下記式(3c)で示されるテトラ(2,2-ジアリロキシメチル-1-ブチル)-ビス(ジトリデシルホスファイト)チタネート、下記式で示される(3d)で示されるテトライソプロピル-ビス(ジオクチルホスファイト)チタネートが挙げられる。
【化14】


式(3a)中、nは1から3の整数を示す。
【0019】
前記アルミネート系カップリング剤(III)は、加水分解性基、及び疎水性官能基を有する有機アルミニウム化合物である。
前記アルミネート系カップリング剤(III)が有する、加水分解性基、及び疎水性官能基の数には特に制限は無いが、アルミニウム原子1個あたり、加水分解性基を1~4個、及び疎水性官能基を1~3個有することが好ましい。
加水分解性基としては、アルコキシ基、オキシ酢酸残基、エチレングリコール残基等が好ましく、複数存在する場合には同一であっても互いに異なっていてもよい。
疎水性官能基としては、カルボキシル基、ホスフェート基、ピロホスフェイト基、ホスファイト基、スルホニル基、又はアミノエチル基等が好ましく、複数存在する場合には同一であっても互いに異なっていてもよい。
【0020】
前記アルミネート系カップリング剤(III)の例としては、式(4)で示されるアルキルアセトアセテートアルミニウムジイソプロピレート等が挙げられる。
【化15】

【0021】
前記アルミナを含む分散質粒子は、アルミナのみであっても、その他成分を含んでもよい。その他成分として、例えば、Li、Be、Na、Mg、Si、K、Ca、Sc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Ga、Ge、Sr、Y、Zrからなる群から選ばれる少なくとも1種の金属酸化物が挙げられる。これらの酸化物の形態としては、LiO、BeO、NaO、MgO、SiO、KO、CaO、Sc、TiO、V、CrO、MnO、Fe、CoO、NiO、CuO、ZnO、Ga、GeO、SrO、Y、ZrOが挙げられる。これらの金属酸化物は単独でも複数種組み合わせることもできる。
アルミナと他の金属酸化物等の他の成分とが存在する場合には、両者が混合物や複合酸化物の形で均一に分布していてもよいし、アルミナ部分と他の成分の部分とが、分離していてもよい。後者の場合においては、実質的にアルミナのみが粒子を形成していてもよい。
アルミナの純度が高いほど高い絶縁性能が実現できるので、絶縁性能が求められる用途では、高純度のアルミナ粒子を選択することができる。具体的には、金属不純物量として、Siが20ppm以下、Feが10ppm以下、Naが10ppm以下、Mgが10ppm以下、Cuが10ppm以下であることが好ましい。特にNaが10ppm以下であることが好ましい。
【0022】
前記アルミナを含む分散質粒子を構成するアルミナは、α型、β型、γ型、θ型などの結晶構造を有するものであってもよい。また、アルミナ水和物であってもよい。更に、これらのうち2種以上の混合物であってもよい。
前記アルミナを含む分散質粒子が、アルミナ以外の成分を酸化物として含む場合、組み合わせ方法としては、上記アルミナと一種又は二種以上の金属酸化物を混合する方法や、上記アルミナと一種又は二種以上の金属酸化物を複合化させる方法、又は上記アルミナと一種又は二種以上の金属酸化物を原子レベルで固溶体化する方法等が挙げられる。
前記アルミナを含む分散質粒子中におけるアルミナ含有量は、Al換算で50~100質量%であることが好ましく、より好ましくは60質量%以上、特に好ましくは80質量%以上である。アルミナ含有量を50~100質量%以上とすることで、これらの粒子を含む樹脂組成物を硬化した硬化物において、絶縁特性の向上が期待できる。
【0023】
前記アルミナを含む分散質粒子は、公知の方法により作製することができる。例えば、バイヤー法、アンモニウム明ばんの熱分解法、アンモニウムアルミニウム炭酸塩の熱分解法、アルミニウムの水中火花放電法、気相酸化法、アルミニウムアルコキシドの加水分解法、アルミナ粉末の溶射法などが挙げられる。これらのアルミナは、例えば住友化学株式会社やデンカ株式会社から入手することができる。(また、市販のアルミナを含む分散質粒子の溶媒分散液を乾燥さえて得られる固形分を分散質粒子としても良い。)
ここで、本明細書における分散質粒子中における“全金属酸化物濃度”とは、分散質粒子に含まれるAlのなど金属酸化物、及びSiOなどの無機酸化物を含めた濃度(質量基準)として定義される。
【0024】
前記アルミナを含む分散質粒子に対するチタネート系カップリング剤(II)、及び/又はアルミネート系カップリング剤(III)の表面被覆量は特に限定されないが、分散質粒子中の全金属酸化物質量に対して、これらのカップリング剤の合計量が0.1質量%~30質量%、好ましくは0.1質量%~20質量%、より好ましくは0.1質量%~10質量%であることが望ましい。
また、この分散液における、チタネート系カップリング剤(II)、及び/又はアルミネート系カップリング剤(III)の種類や、アルミナを含む分散質粒子への被覆量を調整することにより、分散質粒子の平均粒子径を適宜調製し、所望の粒子径にすることができる。
【0025】
本実施形態における、チタネート系カップリング剤(II)、及び/又はアルミネート系カップリング剤(III)により表面被覆されたアルミナ粒子を含む分散質粒子は、さらにシランカップリング剤で表面被覆することができる。この場合のシランカップリング剤は、少なくともその一部が式(5a)又は式(5b)で示される構造を有する加水分解性シランであることが好ましい。
【化16】

式(5a)、式(5b)中、R及びR11は、それぞれ独立にアルキル基、フェニル基、ビニル基、アクリロキシ基、メタクリロキシ基、エポキシ基、イソシアネート基、メルカプト基、ウレイド基、アミノ基、酸無水物基又はそれら官能基のいずれかを含む炭素原子数1から10のアルキレン基であって、且つSi-C結合によりケイ素原子と結合しているものであり、R及びR12は、それぞれ独立にアルコキシ基、アシルオキシ基、及びハロゲン基からなる群より選ばれる加水分解性基を示す。Yはアルキレン基、アリーレン基、NH基又は酸素原子を示す。aは1から3の整数を示し、dはそれぞれ独立に0から2の整数を示し、eは0又は1の整数を示す。
すなわち、R、R、R11、R12、及び/又はdが複数存在するときは、それらは同一であってもよく、互いに異なっていてもよい。
【0026】
上記アルキル基は炭素原子数1~10のアルキル基であることが好ましく、例えばメチル基、エチル基、n-プロピル基、i-プロピル基、シクロプロピル基、n-ブチル基、i-ブチル基、s-ブチル基、t-ブチル基、シクロブチル基、1-メチル-シクロプロピル基、2-メチル-シクロプロピル基、n-ペンチル基、1-メチル-n-ブチル基、2-メチル-n-ブチル基、3-メチル-n-ブチル基、1,1-ジメチル-n-プロピル基、1,2-ジメチル-n-プロピル基、2,2-ジメチル-n-プロピル基、1-エチル-n-プロピル基、シクロペンチル基、1-メチル-シクロブチル基、2-メチル-シクロブチル基、3-メチル-シクロブチル基、1,2-ジメチル-シクロプロピル基、2,3-ジメチル-シクロプロピル基、1-エチル-シクロプロピル基、2-エチル-シクロプロピル基、n-ヘキシル基、1-メチル-n-ペンチル基、2-メチル-n-ペンチル基、3-メチル-n-ペンチル基、4-メチル-n-ペンチル基、1,1-ジメチル-n-ブチル基、1,2-ジメチル-n-ブチル基、1,3-ジメチル-n-ブチル基、2,2-ジメチル-n-ブチル基、2,3-ジメチル-n-ブチル基、3,3-ジメチル-n-ブチル基、1-エチル-n-ブチル基、2-エチル-n-ブチル基、1,1,2-トリメチル-n-プロピル基、1,2,2-トリメチル-n-プロピル基、1-エチル-1-メチル-n-プロピル基、1-エチル-2-メチル-n-プロピル基、シクロヘキシル基、1-メチル-シクロペンチル基、2-メチル-シクロペンチル基、3-メチル-シクロペンチル基、1-エチル-シクロブチル基、2-エチル-シクロブチル基、3-エチル-シクロブチル基、1,2-ジメチル-シクロブチル基、1,3-ジメチル-シクロブチル基、2,2-ジメチル-シクロブチル基、2,3-ジメチル-シクロブチル基、2,4-ジメチル-シクロブチル基、3,3-ジメチル-シクロブチル基、1-n-プロピル-シクロプロピル基、2-n-プロピル-シクロプロピル基、1-i-プロピル-シクロプロピル基、2-i-プロピル-シクロプロピル基、1,2,2-トリメチル-シクロプロピル基、1,2,3-トリメチル-シクロプロピル基、2,2,3-トリメチル-シクロプロピル基、1-エチル-2-メチル-シクロプロピル基、2-エチル-1-メチル-シクロプロピル基、2-エチル-2-メチル-シクロプロピル基及び2-エチル-3-メチル-シクロプロピル基等が挙げられる。
【0027】
上記アルコキシ基は炭素原子数1~10のアルコキシ基であることが好ましく、例えばメトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、i-プロポキシ基、n-ブトキシ基、i-ブトキシ基、s-ブトキシ基、t-ブトキシ基、n-ペンチロキシ基、1-メチル-n-ブトキシ基、2-メチル-n-ブトキシ基、3-メチル-n-ブトキシ基、1,1-ジメチル-n-プロポキシ基、1,2-ジメチル-n-プロポキシ基、2,2-ジメチル-n-プロポキシ基、1-エチル-n-プロポキシ基、n-ヘキシロキシ基、1-メチル-n-ペンチロキシ基、2-メチル-n-ペンチロキシ基、3-メチル-n-ペンチロキシ基、4-メチル-n-ペンチロキシ基、1,1-ジメチル-n-ブトキシ基、1,2-ジメチル-n-ブトキシ基、1,3-ジメチル-n-ブトキシ基、2,2-ジメチル-n-ブトキシ基、2,3-ジメチル-n-ブトキシ基、3,3-ジメチル-n-ブトキシ基、1-エチル-n-ブトキシ基、2-エチル-n-ブトキシ基、1,1,2-トリメチル-n-プロポキシ基、1,2,2-トリメチル-n-プロポキシ基、1-エチル-1-メチル-n-プロポキシ基及び1-エチル-2-メチル-n-プロポキシ基等が、また環状のアルコキシ基としてはシクロプロポキシ基、シクロブトキシ基、1-メチル-シクロプロポキシ基、2-メチル-シクロプロポキシ基、シクロペンチロキシ基、1-メチル-シクロブトキシ基、2-メチル-シクロブトキシ基、3-メチル-シクロブトキシ基、1,2-ジメチル-シクロプロポキシ基、2,3-ジメチル-シクロプロポキシ基、1-エチル-シクロプロポキシ基、2-エチル-シクロプロポキシ基、シクロヘキシロキシ基、1-メチル-シクロペンチロキシ基、2-メチル-シクロペンチロキシ基、3-メチル-シクロペンチロキシ基、1-エチル-シクロブトキシ基、2-エチル-シクロブトキシ基、3-エチル-シクロブトキシ基、1,2-ジメチル-シクロブトキシ基、1,3-ジメチル-シクロブトキシ基、2,2-ジメチル-シクロブトキシ基、2,3-ジメチル-シクロブトキシ基、2,4-ジメチル-シクロブトキシ基、3,3-ジメチル-シクロブトキシ基、1-n-プロピル-シクロプロポキシ基、2-n-プロピル-シクロプロポキシ基、1-i-プロピル-シクロプロポキシ基、2-i-プロピル-シクロプロポキシ基、1,2,2-トリメチル-シクロプロポキシ基、1,2,3-トリメチル-シクロプロポキシ基、2,2,3-トリメチル-シクロプロポキシ基、1-エチル-2-メチル-シクロプロポキシ基、2-エチル-1-メチル-シクロプロポキシ基、2-エチル-2-メチル-シクロプロポキシ基及び2-エチル-3-メチル-シクロプロポキシ基等が挙げられる。
【0028】
上記アシルオキシ基は炭素原子数1~10のアシルオキシ基であることが好ましく、例えばメチルカルボニルオキシ基、エチルカルボニルオキシ基、n-プロピルカルボニルオキシ基、i-プロピルカルボニルオキシ基、n-ブチルカルボニルオキシ基、i-ブチルカルボニルオキシ基、s-ブチルカルボニルオキシ基、t-ブチルカルボニルオキシ基、n-ペンチルカルボニルオキシ基、1-メチル-n-ブチルカルボニルオキシ基、2-メチル-n-ブチルカルボニルオキシ基、3-メチル-n-ブチルカルボニルオキシ基、1,1-ジメチル-n-プロピルカルボニルオキシ基、1,2-ジメチル-n-プロピルカルボニルオキシ基、2,2-ジメチル-n-プロピルカルボニルオキシ基、1-エチル-n-プロピルカルボニルオキシ基、n-ヘキシルカルボニルオキシ基、1-メチル-n-ペンチルカルボニルオキシ基、2-メチル-n-ペンチルカルボニルオキシ基、3-メチル-n-ペンチルカルボニルオキシ基、4-メチル-n-ペンチルカルボニルオキシ基、1,1-ジメチル-n-ブチルカルボニルオキシ基、1,2-ジメチル-n-ブチルカルボニルオキシ基、1,3-ジメチル-n-ブチルカルボニルオキシ基、2,2-ジメチル-n-ブチルカルボニルオキシ基、2,3-ジメチル-n-ブチルカルボニルオキシ基、3,3-ジメチル-n-ブチルカルボニルオキシ基、1-エチル-n-ブチルカルボニルオキシ基、2-エチル-n-ブチルカルボニルオキシ基、1,1,2-トリメチル-n-プロピルカルボニルオキシ基、1,2,2-トリメチル-n-プロピルカルボニルオキシ基、1-エチル-1-メチル-n-プロピルカルボニルオキシ基、1-エチル-2-メチル-n-プロピルカルボニルオキシ基、フェニルカルボニルオキシ基、及びトシルカルボニルオキシ基等が挙げられる。
【0029】
上記ハロゲン基としてはフッ素、塩素、臭素、ヨウ素等が挙げられる。
【0030】
上記式(5a)、(5b)で示される加水分解性シランの具体例としては、下記式(10a)~(10i)で示される化合物等が挙げられる。
【化17】


【化18】

【0031】
上記式中R15はそれぞれ独立にアルコキシ基、アシルオキシ基、又はハロゲン基からなる群より選ばれる加水分解性基を示す。
これらは信越化学工業株式会社のシランやシランカップリング剤として入手することができる。
【0032】
式(5b)の化合物にはトリメチルシリル化剤を含むものであり、ヘキサメチルジシロキサン、ヘキサメチルジシラザン等が挙げられる。これらのシリル化剤は東京化成工業株式会社から入手することができる。
【0033】
アルミナを含む分散質粒子の表面被覆に用いられるシランカップリング剤は、式(5a)の加水分解性シラン及び/又は式(5b)の加水分解性シランを含むことができる。式(5a)の加水分解性シラン、式(5b)の加水分解性シランは、更に他の加水分解性シランを併用する事が可能であり、式(5a)の加水分解性シラン及び/又は式(5b)の加水分解性シラン:他の加水分解性シランの質量比は、好ましくは1:0.1~1.0、より好ましくは1:0.5~1.0の範囲で用いる事ができる。
【0034】
加水分解性シランの添加量は、アルミナを含む分散質粒子100質量部に対して、好ましくは0.5~50質量%、より好ましくは1~30質量%、特に好ましくは5~20質量%の範囲で添加することができる。
【0035】
加水分解性シランによるアルミナを含む分散質粒子の表面処理方法には特に制限は無いが、例えば、チタネート又はアルミネート系カップリング剤により表面被覆されたアルミナ粒子を含む分散質粒子のカルボン酸無水物分散液に、式(5a)及び/又は式(5b)の加水分解性シランを含む加水分解性シランを添加して加水分解と表面被覆をすることができる。また、アルミナ粒子を含む分散質粒子とチタネート系又はアルミネート系カップリング剤とを、20℃にて液状のカルボン酸無水物、又はそれらの混合物を含む分散媒中にて分散処理する際に、加水分解性シランを添加して加水分解と表面被覆をすることができる。
【0036】
アルコキシシリル基、アシロキシシリル基、又はハロゲン化シリル基の加水分解には、加水分解性基の1モル当たり、0.5~100モル、好ましくは1~10モルの水を用いることができる。
また、加水分解性基の1モル当たり0.001~10モル、好ましくは0.001~1モルの加水分解触媒を用いることができる。
加水分解と縮合を行う際の反応温度は、通常20~80℃である。
加水分解は完全に加水分解を行うことでも、部分加水分解することでもよい。即ち、加水分解縮合物中に加水分解物やモノマーが残存していてもよい。
【0037】
加水分解し縮合させる際に触媒を用いることができる。加水分解触媒としてはキレート化合物、有機酸、無機酸、有機塩基、又は無機塩基を単独で用い又は併用する事ができる。より具体的には、例えば、塩酸水溶液、酢酸、アンモニア水溶液等を用いる事ができる。
【0038】
本発明の分散液は、流動性の付与、固形分濃度や粘度などの調整を目的に、有機溶媒を含むことができる。使用される溶媒は、酸無水物や各成分が分散できる溶媒であれば限定されず、例えばアルコール類、エーテル類、ケトン類、エステル類、アミド類、炭化水素類、ニトリル類等を使用可能な有機溶剤として例示できる。
【0039】
アルコール類としては、メタノール、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、1-ブタノール、イソブチルアルコール、2-ブタノール、エチレングリコール、グリセリン、プリピレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ベンジルアルコール、1,5-ペンタンジオール、ジアセトンアルコール等が挙げられる。
エーテル類としては、ジエチルエーテル、ジブチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル等が挙げられる。
ケトン類としては、アセトン、メチルエチルケトン、2-ペンタノン、3-ペンタノン、メチルイソブチルケトン、2-ヘプタノン、シクロヘキサノン等が挙げられる。
エステル類としては、ギ酸エチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、エチレングリコールモノエチルエーテルアセタート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセタート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセタート等が挙げられる。
アミド類としては、アセトアミド、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドン等が挙げられる。
炭化水素類としては、n-ヘキサン、シクロヘキサン、ベンゼン、トルエン、キシレン、ソルベントナフサ、スチレン等が挙げられ、更にハロゲン化炭化水素類としてはジクロロメタン、トリクロロエチレン等が挙げられる。
ニトリル類としては、アセトニトリル、グルタロニトリル、メトキシアセトニトリル、プロピオニトリル、ベンゾニトリル等が挙げられる。
その他の有機溶媒としては、ジメチルスルホキシドが挙げられる。
これらの有機溶媒は1種を単独で使用してもよいし、2種以上を混合して使用してもよい。
【0040】
上記分散媒における有機溶媒の含有量は、適宜調整することができるが、好ましくは、0.01質量%~20質量%であり、より好ましくは0.01質量%~10質量%である
本発明の分酸液を構成するチタネート系、又はアルミネート系カップリング剤が被覆されたアルミナを含む分散質粒子の平均粒子径には特に制限は無いが、好ましくは20nm~1000nm、より好ましくは50nm~600nm、特に好ましくは50nm~200nmである。平均粒子径は動的光散乱法あるいはレーザー回折法により測定することができ、より具体的には例えば本願実施例に記載の方法によって測定することができる。
この様な特定の粒子径の分散質粒子を用いることで、絶縁破壊抵抗等の絶縁性と機械的強度とが特に高いレベルで両立した、特に優れたアルミナ分散エポキシ樹脂を製造することができる。また、本発明の分散液は、この様な特定の粒子径のアルミナ含有分散質粒子を良好な分散状態で分散させるために特に好適に用いることができる。
【0041】
本発明の一実施形態は、本発明の分散液及びエポキシ樹脂成分を含むエポキシ樹脂組成物である。本実施形態におけるエポキシ樹脂組成物は、エポキシ樹脂成分として、エポキシ環を有する重合性化合物、オキセタン環を有する重合性化合物等の重合性化合物、又はそれらを重合することにより得られた樹脂を好ましく用いることができる。重合性化合物を重合して得られた樹脂は末端や側鎖に重合性官能基が存在していて、それらを利用して更に重合することができる。
【0042】
エポキシ環を有する重合性化合物としては、1乃至6個のエポキシ環を有する化合物を好ましく使用することができる。1乃至6個のエポキシ環を有する重合性化合物は、例えばジオール化合物、トリオール化合物、ジカルボン酸化合物、トリカルボン酸化合物等の2個以上の水酸基又はカルボキシル基を有する化合物と、エピクロルヒドリン等のグリシジル化合物とから製造することができる、2個以上のグリシジルエーテル構造又はグリシジルエステル構造を有する化合物を挙げることができる。
【0043】
エポキシ環を有する重合性化合物の具体例としては、1,4-ブタンジオールジグリシジルエーテル、1,2-エポキシ-4-(エポキシエチル)シクロヘキサン、グリセロールトリグリシジルエーテル、ジエチレングリコールジグリシジルエーテル、2,6-ジグリシジルフェニルグリシジルエーテル、1,1,3-トリス[p-(2,3-エポキシプロポキシ)フェニル]プロパン、1,2-シクロヘキサンジカルボン酸ジグリシジルエステル、4,4’-メチレンビス(N,N-ジグリシジルアニリン)、3,4-エポキシシクロヘキシルメチル-3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、トリメチロールエタントリグリシジルエーテル、トリグリシジル-p-アミノフェノール、テトラグリシジルメタキシレンジアミン、テトラグリシジルジアミノジフェニルメタン、テトラグリシジル-1,3-ビスアミノメチルシクロヘキサン、ビスフェノール-A-ジグリシジルエーテル、ビスフェノール-S-ジグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールテトラグリシジルエーテルレゾルシノールジグリシジルエーテル、フタル酸ジグリシジルエステル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、テトラブロモビスフェノール-A-ジグリシジルエーテル、ビスフェノールヘキサフルオロアセトンジグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールジグリシジルエーテル、水素化ビスフェノール-A-ジグリシジルエーテル、トリス-(2,3-エポキシプロピル)イソシアヌレート、1-{2,3-ジ(プロピオニルオキシ)}-3,5-ビス(2,3-エポキシプロピル)-1,3,5-トリアジン-2,4,6・(1H,3H,5H)-トリオン、1,3-ビス{2,3-ジ(プロピオニルオキシ)}-5-(2,3-エポキシプロピル)-1,3,5-トリアジン-2,4,6・(1H,3H,5H)-トリオン、モノアリルジグリシジルイソシアヌレート、ジグリセロールポリジグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールポリグリシジルエーテル、1,4-ビス(2,3-エポキシプロポキシパーフルオロイソプロピル)シクロヘキサン、ソルビトールポリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル、レゾルシンジグリシジルエーテル、1,6-へキサンジオールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル、p-ターシャリーブチルフェニルグリシジルエーテル、アジピン酸ジグリシジルエーテル、o-フタル酸ジグリシジルエーテル、ジブロモフェニルグリシジルエーテル、1,2,7,8-ジエポキシオクタン、1,6-ジメチロールパーフルオロヘキサンジグリシジルエーテル、4,4’-ビス(2,3-エポキシプロポキシパーフルオロイソプロピル)ジフェニルエーテル、2,2-ビス(4-グリシジルオキシフェニル)プロパン、3,4-エポキシシクロヘキシルメチル-3’,4’-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、3,4-エポキシシクロヘキシルオキシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)-3’,4’-エポキシ-1,3-ジオキサン-5-スピロシクロヘキサン、1,2-エチレンジオキシ-ビス(3,4-エポキシシクロヘキシルメタン)、4’,5’-エポキシ-2’-メチルシクロヘキシルメチル-4,5-エポキシ-2-メチルシクロヘキサンカルボキシレート、エチレングリコール-ビス(3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート)、ビス-(3,4-エポキシシクロヘキシルメチル)アジペート、ビス(2,3-エポキシシクロペンチル)エーテル等を挙げることができる。
【0044】
また、エポキシ環を有する重合性化合物の他の好ましい一例として、下式(11)で示される官能基を分子内に有する部分(i)及び分子内にグリシジル基を有する部分(ii)とを含むエステル変性エポキシ化合物を用いる事ができる。
【化19】

式(11)中、R16及びR17は、それぞれ独立して、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、アラルキル基、複素環基、又はそれらのハロゲン化、アミノ化、若しくはニトロ化誘導体を表す。
【0045】
オキセタン環を有する重合性化合物としては、1乃至6個のオキセタン環を有する化合物を好ましく使用することができる。該化合物の好ましい具体例として、3-エチル-3-ヒドロキシメチルオキセタン、3-エチル-3-(フェノキシメチル)オキセタン、3,3-ジエチルオキセタン、及び3-エチル-3-(2-エチルヘキシロキシメチル)オキセタン、1,4-ビス(((3-エチル-3-オキセタニル)メトキシ)メチル)ベンゼン、ジ((3-エチル-3-オキセタニル)メチル)エーテル、及びペンタエリスリトールテトラキス((3-エチル-3-オキセタニル)メチル)エーテル等を挙げることができる。
【0046】
本実施形態のエポキシ樹脂組成物においては、エポキシ樹脂成分1等量に対して、前記カルボン酸無水物(I)を1.5から2.5等量の等量割合にて含有してなることが好ましく、前記カルボン酸無水物(I)を1.5から2.0等量の等量割合にて含有することがより好ましい。
上記当量割合が実現されている限りにおいて、カルボン酸無水物(I)とエポキシ樹脂成分との質量割合には特に制限は無いが、実用上カルボン酸無水物(I)100質量部に対して、エポキシ樹脂成分を80から120質量部含有することが好ましい場合が多い。
エポキシ樹脂組成物における、エポキシ樹脂成分とカルボン酸無水物(I)との配合量比や分散質粒子の濃度を調整することで、該エポキシ樹脂組成物から得られる硬化物の透明性や絶縁性を調整することができる。
【0047】
本実施形態のエポキシ樹脂組成物においては、上記特定のカルボン酸無水物(I)は、エポキシ樹脂成分の硬化剤として機能する。
本実施形態のエポキシ樹脂組成物は、エポキシ樹脂成分と、本発明の分散液(特定の被覆処理を行ったアルミナを含む分散質粒子、及び特定のカルボン酸無水物(I)を含むものである)とを含んでいればよく、それ以外の成分を含んでいてもいなくとも良いが、例えば反応性希釈剤、硬化促進剤、可塑剤、沈降防止剤等を含有することができる。
好ましくは硬化促進剤として、第三級の脂肪族アミン類や混成アミン類、有機リン化合物類などを含有することができる。
【0048】
第三級の脂肪族アミン類として、例えば、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリ-n-プロピルアミン、トリイソプロピルアミン、トリ-n-ブチルアミン、トリイソブチルアミン、トリ-sec-ブチルアミン、トリペンチルアミン、トリシクロペンチルアミン、トリヘキシルアミン、トリシクロヘキシルアミン、トリヘプチルアミン、トリオクチルアミン、トリノニルアミン、トリデシルアミン、トリドデシルアミン、トリセチルアミン、N,N,N’,N’-テトラメチルメチレンジアミン、N,N,N’,N’-テトラメチルエチレンジアミン、N,N,N’,N’-テトラメチルテトラエチレンペンタミン等が例示される。
また、混成アミン類としては、例えばジメチルエチルアミン、メチルエチルプロピルア
ミン、ベンジルアミン、フェネチルアミン、ベンジルジメチルアミン等が例示される。
また、有機リン系化合物類としては、例えば、トリフェニルホスフィン、トリ-p-トリルホスフィン、ジフェニルシクロへキシルホスフィン、トリシクロへキシルホスフィン、テトラ-n-ブチルホスホニウム ブロマイド、テトラ-n-ブチルホスホニウム ラウレート、ビス(テトラテトラ-n-ブチルホスホニウム)ピロメリテート、エチルトリフェニルホスホニウム ブロマイド、n-ブチルトリフェニルホスホニウム ブロマイド、ベンジルトリフェニルホスホニウム クロライド、トリフェニルホスフィン トリフェニルボラン、テトラフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート、テトラフェニルホスホニウムテトラ-p-トリルボレート、1,4-ビス(ジフェニルホスフィノ)ブタン、1,2-ビス(ジフェニルホスフィノ)アセチレン等が例示される。
なお、これらは単独で用いても良く、2種以上を併用しても良い。
【0049】
本実施形態のエポキシ樹脂組成物は、硬化物の機械強度の向上や電気特性の向上を目的として、さらに平均粒子径1μm~20μmの無機酸化物又は金属酸化物粒子を含むことができる。平均粒子径1μm~20μmの無機酸化物又は金属酸化物粒子を、本発明の分散液を構成する(アルミナを含有する)分散質粒子と併用することで、機械的強度の向上等の好ましい効果を実現することができる。
また、平均粒子径1μm~20μmの無機酸化物又は金属酸化物粒子を本発明の分散液を構成する(アルミナを含有する)分散質粒子と併用することで、硬化物の熱伝導率の向上や低CTE化を図ることができる。
ここで好適な無機酸化物又は金属酸化物粒子としては、例えば、シリカ、アルミナ、ジルコニアなど、またこれらの複合粒子を挙げることができる。好ましくはアルミナ粒子である。
上記無機酸化物又は金属酸化物粒子、好ましくはアルミナ粒子の平均粒子径は、好ましくは1μm~10μm、より好ましくは1μm~3μmである。
また、上記無機酸化物又は金属酸化物粒子、好ましくはアルミナ粒子の含有量は、エポキシ樹脂組成物の全質量に対して、1質量%~30質量%であることが好ましく、1質量%~20質量%であることがより好ましい。またこれら無機酸化物又は金属酸化物粒子がアルミナ粒子である場合には、α型、β型、γ型、θ型などの結晶構造を有するもの、あるいはアルミナ水和物であっても良い。また、これら無機酸化物又は金属酸化物粒子、好ましくはアルミナ粒子は、例えば住友化学株式会社やデンカ株式会社から入手することができる。上記無機酸化物又は金属酸化物粒子、好ましくはアルミナ粒子は、本発明の分散液を構成する分散質粒子と同様の表面被覆処理、例えばカップリング剤処理、好ましくは上述のチタネート系カップリング剤(II)、アルミネート系カップリング剤(III)、及び/又はシランカップリング剤による表面処理が行われていてもよい。
【0050】
本実施形態のエポキシ樹脂組成物を硬化させることで、エポキシ樹脂硬化物を製造することができる。当該実施形態のエポキシ樹脂硬化物は、アルミナを含む分散質粒子が良好な分散状態で存在しているので、絶縁破壊抵抗等の絶縁性と機械的強度とが、従来技術より一層高いレベルでバランス(両立)した、良好なエポキシ樹脂硬化物である。
当該エポキシ樹脂硬化物の絶縁破壊抵抗は、用いるエポキシ樹脂成分及び硬化剤から導かれるエポキシ樹脂相当、又はそれ以上であることが好ましく、具体的には、25kV/mm以上であることが好ましく、30kV/mm以上であることがより好ましい。
当該エポキシ樹脂硬化物の曲げ強度も、用いるエポキシ樹脂成分及び硬化剤から導かれるエポキシ樹脂相当、又はそれ以上であることが好ましく、具体的には、140MPa以上であることが好ましく、150MPaであることがより好ましい。
本実施形態のエポキシ樹脂組成物で基材を被覆し加熱することにより、絶縁部材を製造することができる。
ここで基材としては、アルミ、銅、ステンレス、シリコン等の金属や、ガラス、プラスチック、ガラスクロス等を好ましく用いる事ができる。
基材への被覆方法に特に制限は無いが、スピンコート、バーコート、ポッティング、注型、含浸等の塗布方法を用いて行うことができる。被覆された被膜の膜厚は、例えば100nm~5mmにすることができる。塗布された被膜は、例えば50~500℃で加熱することで硬化することができる。
【0051】
本実施形態のエポキシ樹脂組成物及びそれから得られるエポキシ樹脂硬化物は、半導体封止材料、電子材料用接着剤、プリント配線基板材料、層間絶縁膜材料、パワーモジュール用封止材等の電子材料用絶縁部材や発電機コイル、変圧器コイル、ガス絶縁開閉装置等の高電圧機器に使用される絶縁部材等として好適に使用できる。
【0052】
本発明の分散液を製造するにあたり、アルミナ粒子を含む分散質粒子とチタネート系カップリング剤(II)又はアルミネート系カップリング剤(III)とを20℃にて液状のカルボン酸無水物(I)を含む分散媒中にて分散処理するための好ましい方法として、粉砕装置を用いた湿式媒体撹拌ミルが挙げられる。
湿式媒体撹拌ミルは、メディアが充填された容器に原料液を投入し、撹拌装置を用いてメディアと原料液を一緒に撹拌することで分散処理を行うことができる。本実施形態では、メディアが充填された容器とメディアを撹拌させるための装置とを合わせて粉砕装置と定義する。市販の粉砕装置にメディアを撹拌させるための装置に専用の容器が取り付けられて場合は、原料液の容量などに応じて、市販の容器を用いることができる。
ここで用いることができる具体的な粉砕装置としては、ボールミル、ビーズミル、サンドミルなどが挙げられる。
ボールミルとして、例えば、ユニバーサルボールミル(ヤマト科学)、アトライタ(日本コークス株式会社製)等が挙げられる。また、ビーズミルとして、例えば、ビーズミル(アシザワ・ファインテック株式会社製)、アペックスミル(株式会社寿工業製)、等が挙げられる。
サンドミルとして、例えば、サンドグラインダー(アイメックス株式会社製)等が挙げられる。
【0053】
なお、メディアの材質や粒子径、メディア撹拌のための装置の回転数や反応時間等は、所望の粒子径等に合わせて適宜調整すればよい。また、分散媒中の粒子の再凝集を防ぐために装置の回転数や反応時間など適宜調整することも可能である。
さらに、分散処理工程時の流動性の付与、固形分濃度の調整、粘度の調整などを目的に有機溶媒を添加することができる。上記有機溶媒としては、例えばアルコール類、エーテル類、ケトン類、エステル類、アミド類、炭化水素類、ニトリル類等の有機溶剤が挙げられる。
本発明の分散液の製造にあたっては、分散処理工程後に、必要に応じて、分散処理工程にて添加した溶媒を除去する工程を追加することができる。除去方法は、減圧蒸留法、常圧蒸留法、限外ろ過法などの公知の方法を用いることができる。
【実施例
【0054】
以下、本発明について、製造例、実施例及び比較例を参照しながらさらに詳述するが、本発明はこれらの実施例等により何ら限定されるものではない。
実施例等における、物性、特性等の評価方法は、下記のとおりである。
【0055】
[分散液の評価]
(粘度)
B型回転粘度計(東機産業(株)製)を用いて測定した。
(アルミナ濃度)
ゾルを坩堝に取り、1000℃で1時間焼成し、焼成残分を計量して、ゾルの質量に対するアルミナの割合を算出した。
(平均粒子径(動的光散乱法))
分散液ゾルを分散溶媒で希釈し、アルミナ、及び溶媒のパラメータ―を用いて動的光散乱法測定装置(Malvern製)で動的光散乱法による平均粒子径(DLS径)を測定した。
(粒子のメジアン径(レーザー回折法))
DLS径が150nm以上の分散液ゾルについては、分散液ゾルを分散溶媒で希釈し、レーザー回折法測定装置((株)島津製作所製)でレーザー回折法によるメジアン径(SALD-D50)を測定した。ここで、アルミナの理論屈折率を参考に計算した粒度分布のうち、測定された光強度分布との一致度が高い屈折率を選定した。
(保管安定性)
分散液(酸無水物分散アルミナゾル)を50℃で4週間保管し、粘度、及び上記平均粒子径(若しくはメジアン径)を測定し、以下の基準に従い初期値と比較して保管安定性を評価した。
〇:平均粒子径(若しくはメジアン径)(nm)が初期値+20%未満であったもので、且つ、粘度(mPa・s)が初期値+20%未満であったもの。
△:平均粒子径(若しくはメジアン径)(nm)及び粘度(mPa・s)のいずれかが初期値+20%以上であり、且つ、平均粒子径(若しくはメジアン径)(nm)及び粘度(mPa・s)のいずれも初期値+35%未満であったもの。
×:平均粒子径(若しくはメジアン径)(nm)が初期値+35%以上であったもの、且つ/又は、粘度(mPa・s)が初期値+35%以上であったもの。
(中和価の測定)
分散液ゾル1.5gを250mL共栓付三角フラスコに精秤し、指示薬としてチモールフタレイン―ピリジン溶液20mLを加えて、溶解した後、30mLの蒸留水を加え、均一になるまで振り、0.5N水酸化カリウム溶液で滴定した。最後の一滴で青色になる点を終点とし、次式により中和価を算出した。
【数1】

上記式により算出した中和価をゾル中の酸無水物の酸価とした。算出された酸価に基づいて、エポキシ1等量に対して酸無水物が1.8等量になるように、エポキシ樹脂と配合した。
【0056】
[エポキシ硬化物の評価]
実施例/比較例で作製した分散液(酸無水物分散アルミナゾル)を用いて、以下の手順に従いエポキシ樹脂硬化物を作製して、諸物性を測定し評価した。
エポキシ樹脂としてjER-828(三菱ケミカル株式会社製、エポキシ当量187g/eq)24.4gに、エポキシ1当量に対して酸無水物が1.8当量となるように実施例/比較例で作製した分散液(酸無水物分散アルミナゾル)を添加し、反応促進剤としてジメチルベンジルアミン(東京化成株式会社製)0.2gを混合し、硬化性エポキシ樹脂組成物を得た。
次いで、該硬化性エポキシ樹脂組成物をフッ素系離形剤(製品名:オプツールDSX、ダイキン工業株式会社製)で処理された3mm厚のガラス板からなる注型板に流し込み、70℃で2時間、90℃で2時間、150℃で8時間の硬化条件で加熱処理をおこない、エポキシ樹脂硬化物を得た。
(絶縁破壊電圧)
JIS-C2110-1に基づき絶縁破壊試験器を用いて測定した。
絶縁破壊試験器としてはヤマヨ試験器有限会社製のYST-243-100RHO型を用いた。エポキシ樹脂硬化物から大きさが70mm×70mm×1mmのシート状の試験片を作製し、円柱型の電極(φ25mm)で挟み、23℃の鉱油中で2kV/secで昇圧し、絶縁破壊する電圧を測定した。絶縁破壊時の検出電流値を10mAとした。試験はn=3乃至は4で測定し、絶縁破壊試験で得られた電圧(kV)を試験片の厚さ(mm)で除し、絶縁破壊電圧(kV/mm)を算出した。
算出した絶縁破壊電圧の値を元に、以下の基準に従い絶縁性を評価した。
A:絶縁破壊電圧の値が33.0以上であり、優れた絶縁性を示すもの。
B:絶縁破壊電圧の値が32.5以上33.0未満であり、良好な絶縁性を示すもの。
C:絶縁破壊電圧の値が30.5以上32.5未満であり、充分な絶縁性を示すもの。
(エポキシ樹脂硬化物の曲げ強度の測定)
JIS K-6911に基づき引張り試験機を用いて測定した。
試験片の高さ及び幅を測定し、試験片を支え、その中央に加圧くさびで荷重を加え、試験片が折れたときの荷重を測定し、下式に従い曲げ強度(σ)を算出した。
σ=(3PL)/(2Wh2
上記式において、
σ:曲げ強度:(MPa){kgf/mm2
P:試験片が折れたときの荷重(N){kgf}、
L:支点間距離(mm)
W:試験片の幅(mm)
h:試験片の高さ(mm)
とした。
(エポキシ樹脂硬化物の曲げ弾性率の測定)
JIS K-6911に基づき引張り試験機を用いて測定した。
より具体的には、曲げ強度の測定法と同様の方法を行ない、測定によって得られた荷重-たわみ曲線から下式に従い曲げ弾性率(E)を算出した。
E=(L/4Wh)×(ΔF/Δs)
上記式において、
E:曲げ弾性率(MPa){kgf/mm}
L:支点間距離(mm)
W:試験片の幅(mm)
h:試験片の厚さ(mm)
ΔF:曲げ荷重の変化量(N){kgf}
Δs:たわみの変化量(mm)
算出した曲げ弾性率の値を元に、以下の基準に従い評価した。
優:優れた曲げ弾性率を有するもの。
良:良好な曲げ弾性率を有するもの。
可:十分な曲げ弾性率を有するもの。
【0057】
(実施例1)
800mLのサンドグラインダー容器(アイメックス株式会社製)に、θ型高純度アルミナ粉末としてAKP-G07(住友化学株式会社製、BET比表面積 72.9m/g)を50g、チタネート系カップリング剤としてプレンアクトTTS(味の素ファインテクノ株式会社製)を2.5g、酸無水物としてARADUR HY925(HUNTSMAN ADVANCED MATERIALS製、テトラヒドロメチル無水フタル酸60~100質量部、2,2-ジメチルプロパン-1,3-ジイルシクロヘキサ-4-エン-1,2-ジカルボキシレート13~30質量部の割合で含有する混合物、テトラヒドロメチル無水フタル酸の含有量約80質量%)を447.5g、メチルエチルケトン(関東化学株式会社製)を125g、φ1mmのジルコニアビーズを375g投入した。次いで、サンドグラインダー(アイメックス株式会社製)に装着し、回転数1000rpmにて18時間の湿式分散処理をおこない、酸無水物分散アルミナゾルの中間溶液を得た。
次いで、1000mLのナス型フラスコに、得られた酸無水物分散アルミナゾルの中間溶液を600g分取し、次いで、3-トリメトキシシリルプロピルコハク酸無水物として、X-12-967C(信越化学工業株式会社製)を7.6g添加し、その後、エバポレーターを用いて300~50Torr、窒素バブリング下、浴温80℃にて、メチルエチルケトンを留去することにより、酸無水物分散アルミナゾルを得た。
得られた酸無水物分散アルミナゾルは、アルミナ濃度10質量%、平均粒子径(DLS径)125.3nm、B型粘度1150mPa・sであった。
上記酸無水物分散アルミナゾル及びそれから得られたエポキシ硬化物の評価結果を、表1に示す。
【0058】
(実施例2)
3-トリメトキシシリルプロピルコハク酸無水物に代えて、同じく固形分に対して15質量%のフェニルトリメトキシシランとしてKBM-103(信越化学工業株式会社製)を使用したことを除くほか、実施例1と同様にして、酸無水物分散アルミナゾルを作製し、次いでエポキシ硬化物を作製し、評価した。結果を、表1に示す。
【0059】
(実施例3)
3-トリメトキシシリルプロピルコハク酸無水物に代えて、同じく固形分に対して15質量%のビニルトリメトキシシランとしてKBM-1003(信越化学工業株式会社製)を使用したことを除くほか、実施例1と同様にして、酸無水物分散アルミナゾルを作製し、次いでエポキシ硬化物を作製し、評価した。結果を、表1に示す。
【0060】
(実施例4)
3-トリメトキシシリルプロピルコハク酸無水物に代えて、同じく固形分に対して15質量%の3-グリシドキシプロピルトリメトキシシランとしてKBM-403(信越化学工業株式会社製)を使用したことを除くほか、実施例1と同様にして、酸無水物分散アルミナゾルを作製し、次いでエポキシ硬化物を作製し、評価した。結果を、表1に示す。
【0061】
(実施例5)
酸無水物シランを使用せず、他のシラン系カップリング剤も使用しなかったことを除くほか、実施例1と同様にして、酸無水物分散アルミナゾルを作製し、次いでエポキシ硬化物を作製し、評価した。結果を、表1に示す。
【0062】
(比較例1)
酸無水物シランを使用せず、他のシラン系カップリング剤も使用しなかったことを除くほか実施例1と同様の出発原料を使用し、湿式分散処理に代えて粉末混練を行なった。
得られた混練物を用いてエポキシ硬化物を作製し、評価した。結果を、表1に示す。
なお、酸無水物分散アルミナゾルは得られなかったので、混練段階ではアルミナ濃度以外の評価は行っていない。
【0063】
(実施例6)
カルボン酸無水物として、ARADUR HY925に代えてMHHPA(4-メチルヘキサヒドロフタル酸無水物、東京応化工業株式会社製)を447.5g使用したことを除くほか、
実施例5と同様にして、酸無水物分散アルミナゾルを作製し、次いでエポキシ硬化物を作製し、評価した。結果を、表1に示す。
【0064】
(比較例2)
プレンアクトTTSを使用せず、他のチタネート系カップリング剤も使用しなかったことを除くほか、実施例6と同様にして、酸無水物分散アルミナゾルを作製し、次いでエポキシ硬化物を作製し、評価した。結果を、表1に示す。
【0065】
(実施例7)
チタネート系カップリング剤として、プレンアクトTTSに代えてプレンアクト46B(味の素ファインテクノ株式会社製)を2.5g使用したことを除くほか、実施例2と同様にして、酸無水物分散アルミナゾルを作製し、次いでエポキシ硬化物を作製し、評価した。結果を、表1に示す。
【0066】
(実施例8)
フェニルトリメトキシシランを使用せず、他のシラン系カップリング剤も使用しなかったことを除くほか、実施例7と同様にして、酸無水物分散アルミナゾルを作製し、次いでエポキシ硬化物を作製し、評価した。結果を、表1に示す。
【0067】
(実施例9)
プレンアクトTTSに代えて、アルミネート系カップリング剤AL-M(味の素ファインテクノ株式会社製)を2.5g使用したことを除くほか、実施例2と同様にして、酸無水物分散アルミナゾルを作製し、次いでエポキシ硬化物を作製し、評価した。結果を、表1に示す。
【0068】
(実施例10)
500mLのポリプロピレン製容器に、γ型アルミナ粉末としてCERALOX ALUMINA UHPA-G-AFS(sasol社製、BET比表面積:135m/g)を20g、チタネート系カップリング剤としてプレンアクトTTS(味の素ファインテクノ株式会社製)を2g、酸無水物としてMHHPA(4-メチルヘキサヒドロフタル酸無水物、東京応化工業株式会社製)を180g、メチルエチルケトン(関東化学株式会社製)を60g、φ1mmのジルコニアビーズを300g投入した。次いで、ボールミル回転台に乗せ、回転数350rpmにて69時間の湿式分散処理をおこない、酸無水物分散アルミナゾルの中間溶液を得た。
次いで、500mLのナス型フラスコに、得られた酸無水物分散アルミナゾルの中間溶液を260g分取し、次いで、固形分に対して15質量%のフェニルトリメトキシシランとしてKBM-103(信越化学工業株式会社製)を添加し、その後、エバポレーターを用いて300~50Torr、窒素バブリング下、浴温80℃にて、メチルエチルケトンを留去することにより、酸無水物分散アルミナゾルを得た。
得られた酸無水物分散アルミナゾルは、アルミナ濃度10質量%、平均粒子径(DLS径)179.7nm、B型粘度650mPa・sであった。
上記酸無水物分散アルミナゾル及びそれから得られたエポキシ硬化物の評価結果を、表1に示す。
【0069】
(実施例11)
フェニルトリメトキシシランを使用せず、他のシラン系カップリング剤も使用しなかったこと、及びプレンアクトTTSの使用量を表1に示すとおり変更したことを除くほか、実施例10と同様にして、酸無水物分散アルミナゾルを作製し、次いでエポキシ硬化物を作製し、評価した。
得られた酸無水物分散アルミナゾルは、アルミナ濃度10質量%、平均粒子径(DLS径)160.7nm、B型粘度1660mPa・sであった。
上記酸無水物分散アルミナゾル及びそれから得られたエポキシ硬化物の評価結果を、表1に示す。
【0070】
(比較例3)
500mLのポリプロピレン製容器に、γ型アルミナ粉末としてCERALOX ALUMINA UHPA-G-AFS(sasol社製、BET比表面積:135m/g)を20g、酸無水物としてMHHPA(4-メチルヘキサヒドロフタル酸無水物、東京応化工業株式会社製)を180g、メチルエチルケトン(関東化学株式会社製)を60g、φ1mmのジルコニアビーズを300g投入した。次いで、ボールミル回転台に乗せ、回転数350rpmにて70時間の湿式分散処理をおこない、酸無水物分散アルミナゾルの中間溶液を得た。
次いで、500mLのナス型フラスコに、得られた酸無水物分散アルミナゾルの中間溶液を260g分取し、その後、エバポレーターを用いて300~50Torr、窒素バブリング下、浴温80℃にて、メチルエチルケトンを留去することにより、酸無水物分散アルミナゾルを得た。
得られた酸無水物分散アルミナゾルは、アルミナ濃度10質量%、平均粒子径(DLS径)4045nm、B型粘度1720mPa・sであった。
上記酸無水物分散アルミナゾル及びそれから得られたエポキシ硬化物の評価結果を、表1に示す。
【表1】

【表2】

【0071】
(実施例12)
実施例2と同様にして得られた酸無水物分散アルミナゾルに、さらにマイクロ粒子としてアルミナ粉末LS-110F(平均粒子径1.1μm、日本軽金属ホールディングス株式会社製)を、酸無水物分散アルミナゾル100質量部に対して30質量部になるように添加したことを除くほか、実施例2と同様にしてエポキシ硬化物を作製して評価した。
結果を、表2に示す。
【0072】
(実施例13)
実施例5と同様にして得られた酸無水物分散アルミナゾルに、さらにマイクロ粒子としてアルミナ粉末LS-110F(平均粒子径1.1μm、日本軽金属ホールディングス株式会社製)を、酸無水物分散アルミナゾル100質量部に対して30質量部になるように添加したことを除くほか、実施例5と同様にしてエポキシ硬化物を作製して評価した。
結果を、表2に示す。
【表3】

【0073】
実施例1から実施例6と比較例2との比較から、本発明の分散液を用いることで、同等あるいは若干向上した絶縁破壊電圧を維持したまま、曲げ強度が大幅に向上したこと、すなわちより高いレベルで絶縁性と機械強度とを両立できたこと、が理解できる。
同様に実施例1から5と比較例1との比較からも、本発明によって、従来技術より高いレベルで絶縁性と機械強度とを両立できたことが理解できる。比較例1においては、チタネート系カップリング剤自体は使用しているので、本発明の効果を実現するにあたっては、例えば実施例5等におけるように、カップリング剤により被覆されたアルミナ粒子が、分散媒中に分散されていることが重要であることが理解できる。
【0074】
カルボン酸無水物にHY925を用いた実施例1から実施例5、及び実施例7から実施例9と、比較例1の比較から、本発明の分散液を用いることで、同等あるいは若干向上した絶縁破壊電圧を維持したまま、曲げ強度や曲げ弾性率といった曲げ特性を向上できたことが理解できる。
同様に、カルボン酸無水物にMHHPA、アルミナにθ-アルミナを用いた実施例6と比較例2との比較から、本発明の分散液を用いることで、同等の絶縁破壊電圧や曲げ弾性率を維持したまま、曲げ強度を向上できたことが理解できる。また、アルミナにγ-アルミナを用いた実施例10、実施例11と比較例3との比較から、本発明の分散液を用いることで、充分あるいはそれ以上の絶縁破壊電圧を維持しながらも、曲げ強度や曲げ弾性率といった曲げ特性を向上できたことが理解できる。
さらに、熱伝導率の向上や低CTE化を目的に、本発明の酸無水物分散アルミナゾルにマイクロ粒子を併用した実施例12、実施例13においても十分な絶縁性と優れた曲げ弾性率が発現されていることが確認できる。
【産業上の利用可能性】
【0075】
本発明の分散液およびそれを用いたエポキシ樹脂組成物は、高い絶縁性と、高い曲げ強度等の優れた機械的特性とを、高いレベルで両立させることができるので、ガス開閉器用絶縁スペーサをはじめとする各種絶縁部材等において好適に使用することが可能であり、発送電等のエネルギー産業、電気・電子産業、一般機械産業、輸送機械産業等の産業の各分野において、高い利用可能性を有する。