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特許7494734液晶配向剤、液晶配向膜及びそれを用いた液晶表示素子
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-27
(45)【発行日】2024-06-04
(54)【発明の名称】液晶配向剤、液晶配向膜及びそれを用いた液晶表示素子
(51)【国際特許分類】
   G02F 1/1337 20060101AFI20240528BHJP
   C08G 73/10 20060101ALI20240528BHJP
【FI】
G02F1/1337 525
C08G73/10
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2020556128
(86)(22)【出願日】2019-11-12
(86)【国際出願番号】 JP2019044415
(87)【国際公開番号】W WO2020100918
(87)【国際公開日】2020-05-22
【審査請求日】2022-09-15
(31)【優先権主張番号】P 2018214005
(32)【優先日】2018-11-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000003986
【氏名又は名称】日産化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000095
【氏名又は名称】弁理士法人T.S.パートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】宮本 泰宏
【審査官】磯崎 忠昭
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/126627(WO,A1)
【文献】特開2017-090781(JP,A)
【文献】国際公開第2018/062197(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/110354(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02F 1/1337
C08G 73/10
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(ND-2)で表される部分骨格を有するジアミン及び下記式(ND-5)で表されるジアミンからなる群から選ばれる少なくとも1種のジアミンを含むジアミン成分と、テトラカルボン酸成分と、を重合反応させ、かつ未反応の酸末端と反応する末端封止剤と反応させて得られる、末端が封止された第1のポリイミド前駆体及びそのイミド化重合体からなる群から選ばれる少なくとも1種の重合体(P1)を含有することを特徴とする液晶配向剤。
【化1】
(R21、R22は、それぞれ独立して、水素原子又はメチル基を表す。
【化2】
(R51、R52は、それぞれ独立して、水素原子又はメチル基を表す。Aは単結合又は2価の有機基を表す。)
【請求項2】
前記ジアミン成分が、前記(ND-5)で表されるジアミンを含む、請求項1に記載の液晶配向剤。
【請求項3】
前記テトラカルボン酸成分が、下記式(1)で表されるテトラカルボン酸二無水物を含む、請求項1又は2に記載の液晶配向剤。
【化3】
(Xは、下記式(X-1)~(X-14)から選ばれる4価の有機基を表す。)
【化4】
(x及びyは、それぞれ独立に、単結合、メチレン、エチレン、プロピレン、エーテル、カルボニル、エステル、フェニレン、スルホニル又はアミド基を表す。Z~Zは、それぞれ独立して、水素原子、メチル基、エチル基、プロピル基、塩素原子又はフェニル基を表す。j及びkは、0又は1の整数である。mは0~5の整数である。*は結合手を表す。)
【請求項4】
前記式(1)で表されるテトラカルボン酸二無水物の含有量が、テトラカルボン酸成分全体の5モル%以上である、請求項3に記載の液晶配向剤。
【請求項5】
前記式(ND-2)で表される部分骨格を含有するジアミン及び前記式(ND-5)で表されるジアミンからなる群から選ばれる少なくとも1種のジアミンの含有量が、ジアミン成分全体の5モル%以上である、請求項1~4のいずれか1項に記載の液晶配向剤。
【請求項6】
前記ジアミン成分が、前記式(ND-2)で表される部分骨格を含有するジアミン及び前記式(ND-5)で表されるジアミンからなる群から選ばれるジアミンを少なくとも2種含有する、請求項1、3~5のいずれか1項に記載の液晶配向剤。
【請求項7】
ジアミン成分とテトラカルボン酸成分とを反応させて得られる第2のポリイミド前駆体及びそのイミド化重合体からなる群から選ばれ、前記重合体(P1)とは異なる少なくとも1種の重合体(P2)を更に含有する、請求項1~6のいずれか1項に記載の液晶配向剤。
【請求項8】
前記重合体(P2)の原料であるジアミン成分が、下記式(3)、下記式(4)及び下記式(5)からなる群から選ばれる少なくとも1種のジアミンを含有する、請求項7に記載の液晶配向剤。
【化5】
(A、Aはそれぞれ独立して、単結合、又は2価の有機基を表し、Aは、水素原子、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、アミノ基、チオール基、ニトロ基、リン酸基、又は炭素数1~20の1価の有機基を表し、Aは、2価の有機基を表す。aは1~4の整数であり、aが2以上の場合、Aの構造は同一でも異なってもよい。b及びcはそれぞれ独立して1~2の整数である。dは0又は1の整数である。)
【請求項9】
前記重合体(P2)の原料であるジアミン成分が、下記式(DA-3-1)、(DA-4-1)~(DA-4-23)、及び(DA-5-1)~(DA-5-3)よりなる群から選ばれる少なくとも1種のジアミンを含有する、請求項7~8のいずれか1項に記載の液晶配向剤。
【化6】
【化7】
【化8】
【化9】
【請求項10】
前記未反応の酸末端と反応する末端封止剤が、モノアミンである、請求項1~9のいずれか1項に記載の液晶配向剤。
【請求項11】
前記重合体(P1)の含有量は、前記重合体(P1)と前記重合体(P2)との合計量100質量部に対して、30質量部以上である、請求項7~10のいずれか1項に記載の液晶配向剤。
【請求項12】
請求項1~11のいずれか1項に記載の液晶配向剤を塗布し、焼成して得られた膜に、偏光された紫外線を照射して得られる液晶配向膜。
【請求項13】
請求項12に記載の液晶配向膜を具備する液晶表示素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶配向剤、液晶配向膜及びそれを用いた液晶表示素子に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、液晶表示素子に用いられる液晶配向膜には、多くの場合、ポリイミド膜が使用されている。このポリイミド膜の液晶配向膜は、ポリイミドの前駆体であるポリアミック酸の溶液、又は溶媒可溶性のポリイミドの溶液を基板に塗布し、焼成して得られる膜をラビング処理等の配向処理する方法により作製されている。このポリアミック酸や溶媒可溶性のポリイミドは、一般的に、テトラカルボン酸二無水物等のテトラカルボン酸誘導体と、ジアミン化合物との縮重合反応によって製造されている。
【0003】
ポリアミック酸やポリイミドから得られる液晶配向膜における液晶配向性や電圧の印加に伴って発生する残像を消去する特性を向上させるためにポリアミック酸やポリイミドの末端を封止させることが提案されている。
【0004】
例えば、特許文献1には、液晶表示素子における残像消去時間を短くするために、末端封止ポリアミック酸等から選ばれる末端封止重合体(1)、及び末端未封止ポリアミック酸等から選ばれる末端未封止重合体(2)を含有する液晶配向剤であって、該液晶配向剤中の重合体の全体に占める末端封止重合体(1)の割合が5~60重量%であることを特徴とする液晶配向剤を用いることが記載されている。
また、特許文献2には、液晶表示素子においてDC残像を生じさせないために、第一級アミノ基を含まない末端骨格を有する第1ポリアミド酸系化合物を含む光配向膜用ワニスを用いることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】日本特許第4336922号公報
【文献】日本特開2017-90781号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
近年、液晶表示素子の高性能化、大面積化、表示デバイスの省電力化等が進み、それに加えて様々な環境下で液晶表示素子が使用されるようになり、液晶配向膜に求められる特性も厳しいものになってきた。とりわけ、液晶表示素子の利用が進むにつれ、液晶配向膜に電荷が蓄積されるという問題や、良好な液晶配向性を確保するのが困難となるという問題が顕著となってきている。
【0007】
液晶配向膜に電荷が蓄積されると、短時間の駆動でも残像が発生しやすくなる。また、良好な液晶配向性を確保できなくなると光抜けや配向不良が発生しやすくなる。このため、良好な蓄積電荷緩和特性や液晶配向性に対して強い要求があるものの、従来提案されている技術では、これらの両方の要求を十分に満たすことができない場合があった。
【0008】
本発明は、上記の事情を鑑みてなされたものであり、良好な液晶配向性、及び蓄積電荷緩和特性を兼ね備えた液晶配向膜が得られる液晶配向剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、鋭意検討を行った結果、特定のジアミンを使用し、かつ末端が封止された特定のポリイミド系重合体を含有する液晶配向剤が、上記の課題を達成し得ることを見出した。
本発明は、かかる知見に基づくものであり、下記を要旨とする液晶配向剤を含む発明にある。
下記式(ND-1)~(ND-4)のいずれかで表される部分骨格を含有するジアミン、及び(ND-5)で表されるジアミンからなる群から選ばれる少なくとも1種のジアミンを含むジアミン成分と、テトラカルボン酸成分と、を重合反応させ、かつ末端封止剤と反応させて得られる、末端が封止された第1のポリイミド前駆体及びそのイミド化重合体からなる群から選ばれる少なくとも1種の重合体(P1)を含有することを特徴とする液晶配向剤。
【化1】
(R、R21、R22は、それぞれ独立して、水素原子又はメチル基を表し、R51、R52は、それぞれ独立して、水素原子又はメチル基を表す。Sp3、Sp4は、それぞれ独立して2価の有機基を表す。Aは単結合又は2価の有機基を表す。)
【発明の効果】
【0010】
本発明の液晶配向剤によれば、良好な液晶配向性、及び蓄積電荷緩和特性を兼ね備えた液晶配向膜を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
<重合体(P1)>
本発明の液晶配向剤は、上記式(ND-1)~(ND-4)のいずれかで表される部分骨格を有するジアミン、及び(ND-5)で表されるジアミンからなる群から選ばれる少なくとも1種のジアミンを含むジアミン成分と、テトラカルボン酸成分との重合反応させ、かつ末端封止剤と反応させて得られる、末端が封止された第1のポリイミド前駆体及びそのイミド化重合体からなる群から選ばれる少なくとも1種の重合体(P1)を含有する。
【0012】
以下、重合体(P1)の原料となる各成分について説明する。
(特定ジアミン)
特定ジアミンは、下記式(ND-1)~(ND-4)で表される部分骨格を有するジアミン及び(ND-5)のいずれかで表されるジアミンからなる群から選ばれる少なくとも1種のジアミンである。
【0013】
【化2】
上記式中、R、R21、R22は、それぞれ独立して水素原子又はメチル基を表す。R51、R52は、それぞれ独立して水素原子又はメチル基を表す。Sp3、Sp4は、2価の有機基を表す。Aは単結合又は2価の有機基を表す。
【0014】
p3、Sp4の上記2価の有機基の好ましい例としては、例えば、フェニレン、ピロリジン、ピペリジン、ピペラジン、炭素数2~20の2価の鎖状炭化水素基、又は該2価の鎖状炭化水素基の-CH-が、-O-、-CO-、-CO-O-、-O-CO-、-NRCO-(Rは水素原子又はメチル基を表す。)、-NRCOO-(Rは水素原子又はメチル基を表す。)、-CONR-(Rは水素原子又はメチル基を表す。)、-COS-、-NR-(Rはメチル基を表す)、ピロリジン、ピペリジン及びピペラジンから選ばれる基で置換された基が挙げられる。
【0015】
上記Sp3、Sp4における2価の鎖状炭化水素基としては、例えば、エチレン基、プロパンジイル基、ブタンジイル基、ペンタンジイル基、ヘキサンジル基、ヘプタンジイル基、オクタンジイル基、ノナンジイル基、デカンジイル基等が挙げられる。
【0016】
の上記2価の有機基の好ましい例としては、炭素数1~20の2価の鎖状炭化水素基、又は該2価の鎖状炭化水素基の-CH-が、-O-、-CO-、-CO-O-、-O-CO-、-NRCO-(Rは水素原子又はメチル基を表す。)、-NRCOO-(Rは水素原子又はメチル基を表す。)、-CONR-(Rは水素原子又はメチル基を表す。)で置換された基等が挙げられる。
上記Aにおける2価の鎖状炭化水素基の具体例としては、メチレン基の他、上記Sp、Spで例示した2価の鎖状炭化水素基が挙げられる。
【0017】
式(ND-1)で表される部分骨格を有するジアミンの好ましい例としては、下記式(ND-1-1)又は(ND-1-2)が挙げられる。
【化3】
【0018】
上記式中、R、Rは水素原子又はメチル基を表す。R11、R22はそれぞれ独立して単結合、又は*1-R-Ph-*2を表す。Rは単結合、-O-、-COO-、-OCO-、-(CH-、-O(CHO-、-CONH-、及び-NHCO-から選ばれる2価の有機基を表す(l、mは1~5の整数を表す)。なお、*1は式(ND-1-1)又は(ND-1-2)中のベンゼン環と結合する部位を表し、*2は式(ND-1-1)又は(ND-1-2)中のアミノ基と結合する部位を表す。Phはフェニレン基を表す。nは1~3を表す。
上記式(ND-1-1)、(ND-1-2)において、合成が容易である観点から、ピロール環の置換位置は、2位及び5位であることが好ましい。
【0019】
上記式(ND-1-1)、(ND-1-2)で表されるジアミンの具体例としては、下記式(n1-1)~(n1-14)のずれかで表されるジアミンが挙げられる。
【化4】
【化5】
【0020】
式(ND-2)で表される部分骨格を有するジアミンの例としては、下記式(ND-2-1)~(ND-2-3)で表されるジアミンが挙げられる。
【化6】
【0021】
上記式中、R21、R22は、それぞれ、上記式(ND-2)のR21、R22と好ましい具体例を含めて同義である。R24は単結合又は以下の式(Ar)の構造を表し、nは1~3の整数を表す。*は結合手を表す。更に、ベンゼン環の任意の水素原子は、炭素数1~3のアルキル基、炭素数1~3のアルコキシ基、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)などの1価の有機基で置換されていてもよい。
【化7】
上記式(Ar)中、Rは、単結合、-O-、-COO-、-OCO-、-(CH-、-O(CHO-、-CONR-、及び-NRCO-から選ばれる2価の有機基を表し、kは1~5の整数である。なお、Rは水素又は一価の有機基を表し、l、mは1~5の整数を表す。*1、*2は結合手を表し、*は式(ND-2-1)~式(ND-2-3)中のベンゼン環と結合する。
上記式(Ar)のRにおける一価の有機基としては、例えば炭素数1~3のアルキル基が挙げられる。
【0022】
上記式(ND-2-1)~(ND-2-3)で表されるジアミンの好ましい具体例としては、下記式(n2-1)~(n2-6)で表されるジアミンが挙げられる。
【化8】
【化9】
【0023】
上記式(ND-3)又は(ND-4)で表される部分骨格を有するジアミンの具体例としては、下記式(ND-3-1)又は(ND-4-1)で表されるジアミンが挙げられる。
【化10】
【0024】
上記式(ND-3-1)で表されるジアミンの好ましい具体例としては、下記式(n3-1)~(n3-7)で表されるジアミンが挙げられる。
【化11】
【0025】
上記式(ND-4-1)で表されるジアミンの好ましい具体例としては、下記式(n4-1)~(n4-6)で表されるジアミンが挙げられる。
【化12】
【0026】
上記式(ND-5)で表されるジアミンの好ましい具体例としては、下記式(n5-1)~(n5-8)で表されるジアミンが挙げられる。
【化13】
【0027】
特定ジアミンの含有量は、ジアミン成分全体の5モル%以上であることが好ましく、10モル%以上であることが好ましく、20モル%以上であることが更に好ましく、50モル%以上であることが特に好ましい。
特定ジアミンは、重合体(P1)の溶媒への溶解性、液晶配向剤の塗布性、液晶配向膜とした場合における液晶の配向性、電圧保持率、蓄積電荷等の特性に応じて、1種、又は2種以上使用できる。
【0028】
重合体(P1)を得るためのジアミン成分としては、上記特定ジアミン以外のジアミン(以下、その他のジアミンとも言う。)を含有しても良い。その他のジアミンとして、以下の一般式(2)で表されるジアミンが挙げられる。
【化14】
【0029】
上記式(2)中、A及びAは、それぞれ独立して、水素原子又は、炭素数1~5のアルキル基、炭素数2~5のアルケニル基、又は炭素数2~5のアルキニル基である。液晶配向性の観点から、A及びAは水素原子、又はメチル基が好ましい。Yの構造を例示すると、以下の式(Y-1)~式(Y-68)のとおりである。
【0030】
【化15】
【0031】
【化16】
【0032】
【化17】
【0033】
【化18】
(上記式中のBocは、tert-ブトキシカルボニル基を表す。*は結合手を表す。)
【0034】
また、その他のジアミンとして、国際公開公報WO2018/092759号に記載のチオフェン又はフラン構造を有するジアミン、好ましくは下式(sf)で表されるジアミン;2,3-ジアミノピリジン、2,6-ジアミノピリジン、3,4-ジアミノピリジン、2,4-ジアミノピリミジン、1,3-ビス(3-アミノプロピル)-テトラメチルジシロキサン等のジアミノオルガノシロキサン、メタキシレンジアミン等の脂肪族ジアミン、4,4-メチレンビス(シクロヘキシルアミン)等の脂環式ジアミン等を挙げることができる。その他のジアミンは1種又は2種以上を併用することもできる。
【化19】
【0035】
上記式(sf)中、Yは硫黄原子又は酸素原子を表し、Rは、それぞれ独立して、単結合又は*1-R-Ph-*2を表し、Rは、単結合、-O-、-COO-、-OCO-、-(CH-、-O(CHO-、-CONH-、及び-NHCO-から選ばれる2価の有機基を表す(l、mは1~5の整数である。)。なお、*1は式(sf)中のベンゼン環と結合する部位を表し、*2は式(sf)中のアミノ基と結合する部位を表す。Phはフェニレン基を表す。nは1~3である。)
【0036】
(テトラカルボン酸成分)
重合体(P1)を得るためのテトラカルボン酸成分としては、下記式(1)で表されるテトラカルボン酸二無水物、又はその誘導体(テトラカルボン酸、テトラカルボン酸ジハライド、テトラカルボン酸ジアルキルエステル、又はテトラカルボン酸ジアルキルエステルジハライド)(これらを総称して、第1のテトラカルボン酸成分という。)を用いることができる。
【0037】
【化20】
上記式中、Xは、4価の有機基を表す。その例としては、下記式(X-1)~(X-14)からなる群から選ばれる少なくとも1種があげられる。
【0038】
【化21】
(x及びyは、それぞれ独立に、単結合、メチレン、エチレン、プロピレン、エーテル(-O-)、カルボニル(-CO-)、エステル(-COO-)、フェニレン、スルホニル(-SO-)又はアミド基(-CONH-)を表す。Z~Zは、それぞれ独立して、水素原子、メチル基、エチル基、プロピル基、塩素原子又はフェニル基を表す。j及びkは、それぞれ独立に、0又は1の整数である。mは0~5の整数である。*は結合手を表す。)
【0039】
上記式(X-1)の好ましい例として、下記式(X1-1)~(X1-4)で表される構造が挙げられる。
【化22】
【0040】
上記式(X-13)の好ましい例としては、下記式(X13-1)~(X13-4)が挙げられる。
【化23】
【0041】
第1のテトラカルボン酸成分の含有量は、テトラカルボン酸成分全体の5モル%以上であることが好ましく、10モル%以上であることが好ましく、20モル%以上であることが更に好ましく、50モル%以上であることが特に好ましい。
【0042】
第1のテトラカルボン酸成分は、重合体(P1)の溶媒への溶解性や液晶配向剤の塗布性、液晶配向膜とした場合における液晶の配向性、電圧保持率、蓄積電荷等の特性に応じて、1種、又は2種以上使用できる。
【0043】
本発明の重合体(P1)を得るためのテトラカルボン酸成分は、第1のテトラカルボン酸成分以外のその他のテトラカルボン酸成分を使用できる。その他のテトラカルボン酸成分としては、下記するテトラカルボン酸二無水物、該テトラカルボン酸二無水物に由来するテトラカルボン酸ジハライド、テトラカルボン酸ジアルキルエステル又はテトラカルボン酸ジアルキルエステルジハライドが挙げられる。
具体的には、1,2,5,6-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,4,5,8-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,2,5,6-アントラセンテトラカルボン酸二無水物、4,4’-(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物、ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)ジメチルシラン二無水物、ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)ジフェニルシラン二無水物、2,6-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)ピリジン二無水物等が挙げられる。
その他のテトラカルボン酸成分は1種又は2種以上を混合して使用することもできる。
【0044】
(末端封止剤)
本発明において、末端封止剤とは、ポリイミド前駆体又はそのイミド化重合体の有する未反応の酸末端及び/又はアミン末端と反応して、これらを封止することができる化合物である。
末端封止剤は、酸末端及び/又はアミン末端を封止することができる化合物であれば、特に限定されないが、モノアミン又は酸無水物が好ましい。モノアミンは、ポリイミド前駆体又はそのイミド化重合体の酸末端を封止することができ、酸無水物は、ポリイミド前駆体又はそのイミド化重合体のアミン末端を封止することができる。
【0045】
モノアミンの好ましい例として、アニリン、2-アミノフェノール、3-アミノフェノール、2-アミノ-m-クレゾール、2-アミノ-p-クレゾール、3-アミノ-o-クレゾール、4-アミノ-o-クレゾール、4-アミノ-m-クレゾール、5-アミノ-o-クレゾール、6-アミノ-m-クレゾール、4-アミノ-2,3-キシレノール、4-アミノ-3,5-キシレノール、6-アミノ-2,4-キシレノール、2-アミノ-4-エチルフェノール、3-アミノ-4-エチルフェノール、2-アミノ-4-tert-ブチルフェノール、2-アミノ-4-フェニルフェノール、4-アミノ-2,6-ジフェニルフェノール、4-アミノサリチル酸、5-アミノサリチル酸、6-アミノサリチル酸、2-アミノ安息香酸、3-アミノ安息香酸、4-アミノ安息香酸、2-アミノ-m-トルエン酸、3-アミノ-o-トルエン酸、3-アミノ-p-トルエン酸、4-アミノ-m-トルエン酸、6-アミノ-o-トルエン酸、6-アミノ-m-トルエン酸、3-アミノベンゼンスルホン酸、4-アミノベンゼンスルホン酸、4-アミノトルエン-3-スルホン酸等を挙げることができる。これらを2種以上用いてもよい。
【0046】
酸無水物は、環状構造を有する酸無水物又は架橋性基を有する酸無水物が好ましい。酸無水物の例として、無水フタル酸、無水マレイン酸、無水ナジック酸、シクロヘキサンジカルボン酸無水物、3-ヒドロキシフタル酸無水物、トリメット酸無水物、下記式(m-1)~(m-6)で表される化合物等を挙げることができる。これらを2種以上用いてもよい。
【化24】
【0047】
<重合体(P2)>
本発明の液晶配向剤は、重合体(P1)とともに、ジアミン成分とテトラカルボン酸成分とを反応させて得られる、第2のポリイミド前駆体及びそのイミド化重合体からなる群から選ばれる少なくとも1種の重合体(P2)を更に含有してもよい。この場合、例えば重合体(P1)が蓄積電荷緩和特性に優れた機能を有し、重合体(P2)が液晶配向性に優れた機能を有する態様とすることができる点で好ましい。
重合体(P2)のポリイミド前駆体又はそのイミド化重合体は、末端が封止されていてもよく、その場合において重合体(P2)のジアミン成分は上記特定ジアミン以外のジアミンを含む。具体例を挙げると、重合体(P1)で例示したその他のジアミンの他、液晶を垂直に配向させるために、国際公開公報WO2018-159733号に記載のジアミンや、国際公開公報WO2016-104365号に記載の特定ジアミン(1)等の配向性ジアミン、液晶の応答速度を高めるために、国際公開公報WO2016-104365号に記載の特定ジアミン(4)や日本特開2018-081225号に記載の重合開始機能を有するジアミン等を用いてもよい。
【0048】
重合体(P2)の末端が封止されない場合、重合体(P2)を得るためのジアミン成分として、上記で例示したジアミンの他、重合体(P1)を得るためのジアミン成分を使用することができる。
重合体(P2)を得るためのジアミン成分は、液晶配向性を高める観点において下記の式(3)、式(4)及び式(5)から選ばれる少なくとも1種のジアミンを含有することができる。
【0049】
【化25】
【0050】
上記式中、A、Aはそれぞれ独立して、単結合、2価の有機基を表し、Aは、水素原子、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、アミノ基、チオール基、ニトロ基、リン酸基、又は炭素数1~20の1価の有機基を表し、Aは、2価の有機基を表す。aは1~4の整数であり、aが2以上の場合、Aの構造は同一でも異なってもよい。b及びcはそれぞれ独立して1又は2の整数である。dは0又は1の整数である。
【0051】
上記A、Aにおける2価の有機基としては、炭素数2~20の2価の鎖状炭化水素基、又は該2価の鎖状炭化水素基の-CH-が、-O-、-CO-、-CO-O-、-NRCO-(Rは水素原子又はメチル基を表す。)、-NRCOO-(Rは水素原子又はメチル基を表す。)、-CONR-(Rは水素原子又はメチル基を表す。)、-COS-、-NR-CO-NR-(R、Rはそれぞれ独立して、水素原子又はメチル基を表す。)、-NR-(Rはメチル基を表す)、ピロリジン、ピペリジン、及びピペラジンから選ばれる基で置換された基(h1)を表す。尚、上記鎖状炭化水素基及び基(h1)が有する水素原子の一部又は全部をメチル基等の炭素数1~3のアルキル基、フッ素原子、塩素原子等のハロゲン原子で置換してもよい。
【0052】
上記Aにおける2価の有機基としては、炭素数1~20の2価の鎖状炭化水素基、又は当該2価の鎖状炭化水素基の-CH-が、-O-、-CO-、-CO-O-、-NRCO-(Rは水素原子又はメチル基を表す。)、-NRCOO-(Rは水素原子又はメチル基を表す。)、-CONR-(Rは水素原子又はメチル基を表す。)、-COS-、-NR-CO-NR-(R、Rはそれぞれ独立して、水素原子又はメチル基を表す。)、-NR-(Rはメチル基を表す)、ピロリジン、ピペリジン、及びピペラジンから選ばれる基で置換された基(h2)を表す。尚、上記Aの鎖状炭化水素基及び基(h2)が有する水素原子の一部又は全部をメチル基等の炭素数1~3のアルキル基、フッ素原子、塩素原子等のハロゲン原子で置換してもよい。
【0053】
上記炭素数1~20の2価の鎖状炭化水素基としては、例えばメタンジイル基、エタンジイル基、n-プロパンジイル基、i-プロパンジイル基、n-ブタンジイル基、i-ブタンジイル基、sec-ブタンジイル基、t-ブタンジイル基等のアルカンジイル基;
エテンジイル基、プロペンジイル基、ブテンジイル基等のアルケンジイル基;エチンジイル基、プロピンジイル基、ブチンジイル基等のアルキンジイル基等が挙げられる。
【0054】
における炭素数1~20の1価の有機基としては、例えば上記Aの炭素数1~20の2価の鎖状炭化水素基、基(h2)、又は該炭素数1~20の2価の鎖状炭化水素基及び基(h2)が有する水素原子の一部又は全部をメチル基等の炭素数1~3のアルキル基、又は、フッ素原子、塩素原子等のハロゲン原子で置換された基として例示したものに1個の水素原子を加えた基等が挙げられる。
【0055】
上記式(3)、下記式(4)及び下記式(5)から選ばれる少なくとも1種のジアミンの好ましい具体例として、下記式(DA-3-1)、(DA-4-1)~(DA-4-23)、及び(DA-5-1)~(DA-5-3)からなる群から選ばれる少なくとも1種のジアミンを挙げることができる。
【化26】
【化27】
【化28】
【化29】
【0056】
液晶配向性を高める観点において、上記式(3)、式(4)及び式(5)から選ばれる少なくとも1種のジアミンの合計量は、重合体(P2)を得るためのジアミン成分全体の10モル%以上であることが好ましい。
【0057】
重合体(P1)と重合体(P2)の機能分離を高める観点において、重合体(P1)及び/又は重合体(P2)を得るためのジアミン成分は、下記式(6)で表されるジアミンを含むことが好ましい。
【化30】
上記式中、Yは下記式(7)で表される構造を含む2価の有機基を表す。Aは、それぞれ独立して、水素原子又は、炭素数1~5のアルキル基、炭素数2~5のアルケニル基、炭素数2~5のアルキニル基を表す。液晶配向性の観点から、Aは水素原子、又はメチル基が好ましい。
【化31】
(Dはt-ブトキシカルボニル基である。)
【0058】
上記式(7)で表される構造を含む2価の有機基の例としては、下記の式(J-1)又は式(J-2)で表される基が挙げられる。
【化32】
【0059】
上記式中、Rは単結合、-(CH-(nは1~20の整数である)、又は-(CH-の任意の-CH-がそれぞれ隣り合わない条件で-O-、-COO-、-OCO-、-NR-、-NRCO-、-CONR-、-NRCONR-、-NRCOO-、-OCOO-に置き換えられた基を表す。Rは水素原子又は1価の有機基を表す。R、Rは、それぞれ独立して、-H、-NHD、-N(D)、-NHDを有する基、又は-N(D)を有する基を表す。Rは-NHD、-N(D)、-NHDを有する基、又は-N(D)を有する基を表す。Dはt-ブトキシカルボニル基を表す。但し、R、R及びRの少なくとも一つは基中にt-ブトキシカルボニル基を有する。
【0060】
上記の式(J-1)又は式(J-2)で表される2価の有機基のより好ましい具体例は、下記の式(J-1-a)~(J-1-d)、(J-2-1)で表される2価の有機基である。尚、Bocはt-ブトキシカルボニル基を表す。
【化33】
【0061】
重合体(P2)を得るためのテトラカルボン酸成分としては、重合体(P1)を得るためのテトラカルボン酸成分を使用できる。具体的には、液晶配向性を高める観点において、上記第1のテトラカルボン酸成分を用いることができる。更に好ましくは上記第1のテトラカルボン酸成分を重合体(P2)に用いるテトラカルボン酸成分全体の10モル%以上用いることが好ましい。
【0062】
<重合体(P1)の製造方法>
重合体(P1)は、末端が封止された第1のポリイミド前駆体及びそのイミド化重合体からなる群から選ばれるものであって、特定ジアミンから選ばれる少なくとも1種のジアミンを含むジアミン成分と、テトラカルボン酸成分と、を(縮)重合反応させ、かつ末端封止剤と反応させて得られる。
ここで、ポリイミド前駆体とは、ポリアミック酸又はポリアミック酸アルキルエステルを言う。本発明の液晶配向剤において、重合体(P1)は、末端が封止されたポリイミド前駆体であることが好ましく、特に、末端が封止されたポリアミック酸がより好ましい。
【0063】
本発明の実施形態においては、重合体(P1)は、特定ジアミンから選ばれる少なくとも1種のジアミンを含むジアミン成分とテトラカルボン酸成分とを重合反応させることによってポリイミド前駆体又はそのイミド化重合体を得て、更に、このポリイミド前駆体又はそのイミド化重合体を末端封止剤と反応させることによって得ることが好ましい。
上記重合体(P1)は、特定ジアミンから選ばれる少なくとも1種のジアミンを含むジアミン成分とテトラカルボン酸成分とを重合させる際、又は重合中に末端封止剤を供給することにより得ることもできる。
【0064】
ジアミン成分とテトラカルボン酸成分との反応は、通常、溶媒中で行なわれる。その際に用いる溶媒としては、生成したポリイミド前駆体が溶解するものであれば特に限定されない。下記に、反応に用いる溶媒の具体例を挙げるが、これらの例に限定されない。
例えば、N-メチル-2-ピロリドン、N-エチル-2-ピロリドン、γ-ブチロラクトン、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、3-メトキシ-N,N-ジメチルプロパンアミド、3-ブトキシ-N,N-ジメチルプロパンアミド、ジメチルスルホキシド、又は1,3-ジメチル-イミダゾリジノンが挙げられる。ポリイミド前駆体の溶媒溶解性が高い場合は、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、4-ヒドロキシ-4-メチル-2-ペンタノン又はエチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールものプロピルエーテル等を用いることができる。
【0065】
これらの溶媒は単独で使用しても、混合して使用してもよい。更に、ポリイミド前駆体を溶解させない溶媒であっても、生成したポリイミド前駆体が析出しない範囲で、上記溶媒に混合して使用してもよい。また、溶媒中の水分は、重合反応を阻害し、更には、生成したポリイミド前駆体を加水分解させる原因となるので、溶媒は脱水乾燥させたものを用いることが好ましい。
【0066】
ジアミン成分とテトラカルボン酸成分とを溶媒中で反応させる際には、ジアミン成分を溶媒に分散或いは溶解させた溶液を攪拌させ、テトラカルボン酸成分をそのまま、又は溶媒に分散或いは溶解させて添加する方法、逆にテトラカルボン酸成分を溶媒に分散、或いは溶解させた溶液にジアミン成分を添加する方法、ジアミン成分とテトラカルボン酸成分とを反応系に対して交互に添加する方法等が挙げられ、これらのいずれの方法を用いてもよい。また、ジアミン成分又はテトラカルボン酸成分を、それぞれ複数種用いて反応させる場合は、予め混合した状態で反応させてもよく、個別に順次反応させてもよく、更に個別に反応させた低分子量体を混合して反応させ重合体としてもよい。
【0067】
ジアミン成分とテトラカルボン酸成分とを重縮合せしめる温度は、-20~150℃の任意の温度を選択できるが、好ましくは-5~100℃の範囲である。反応は任意の濃度で行うことができるが、濃度が低すぎると高分子量の重合体を得ることが難しくなり、濃度が高すぎると反応液の粘性が高くなり過ぎて均一な攪拌が困難となる。そのため、重合体の濃度は、好ましくは1~50質量%、より好ましくは5~30質量%である。反応初期は高濃度で行い、その後、溶媒を追加できる。
ポリイミド前駆体を得る重合反応においては、ジアミン成分の合計モル数に対するテトラカルボン酸成分の合計モル数の比は0.8~1.2であることが好ましい。通常の重縮合反応と同様に、このモル比が1.0に近いほど生成するポリイミド前駆体の分子量は大きくなる。
【0068】
イミド化重合体は、ポリイミド前駆体を閉環させて得られるポリイミドであり、このポリイミドにおいては、アミック酸基(アミド酸基)の閉環率(イミド化率ともいう)は必ずしも100%である必要はなく、用途や目的に応じて任意に調整できる。
ポリイミド前駆体をイミド化させる方法としては、ポリイミド前駆体の溶液をそのまま加熱する熱イミド化、又はポリイミド前駆体の溶液に触媒を添加する触媒イミド化が挙げられる。
【0069】
ポリイミド前駆体を溶液中で熱イミド化させる場合の温度は、好ましくは100~400℃、より好ましくは120~250℃であり、イミド化反応により生成する水を系外に除きながら行う方法が好ましい。ポリイミド前駆体の触媒イミド化は、ポリイミド前駆体の溶液に、塩基性触媒と酸無水物とを添加し、-20~250℃、好ましくは0~180℃で攪拌することにより行うことができる。
【0070】
塩基性触媒の量は、アミック酸基の好ましくは0.5~30モル倍、より好ましくは2~20モル倍であり、酸無水物の量は、アミック酸基の好ましくは1~50モル倍、より好ましくは3~30モル倍である。
塩基性触媒としてはピリジン、トリエチルアミン、トリメチルアミン、トリブチルアミン、トリオクチルアミン等を挙げることができる。なかでも、ピリジンは反応を進行させるのに適度な塩基性を持つので好ましい。
酸無水物としては、無水酢酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸等を挙げることができる。特に、無水酢酸を用いると反応終了後の精製が容易となるので好ましい。触媒イミド化によるイミド化率は、触媒量、反応温度、反応時間を調節して制御できる。
【0071】
反応溶液から生成したポリイミド前駆体又はそのイミド化重合体を回収する場合には、反応溶液を溶媒に投入して沈殿させればよい。沈殿に用いる溶媒としては、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、アセトン、ヘキサン、ブチルセルソルブ、ヘプタン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、トルエン、ベンゼン、水等を挙げることができる。溶媒に投入して沈殿させた重合体は、濾過して回収した後、常圧或いは減圧下で、常温或いは加熱して乾燥することができる。また、回収した重合体を、溶媒に再溶解させ、再沈殿回収する操作を2~10回繰り返すと、重合体中の不純物を少なくすることができる。この際の溶媒として、例えば、アルコール類、ケトン類、炭化水素等が挙げられる。これら中から選ばれる3種類以上の溶媒を用いると、より一層精製の効率が上がるので好ましい。
【0072】
本発明においてポリイミド前駆体がポリアミック酸アルキルエステルである場合、それを製造するための具体的な方法としては、例えば、国際公開公報WO2011-115077号の段落[0054]~[0062]に記載の手法が挙げられる。
【0073】
次いで、ポリイミド前駆体又はそのイミド化重合体の酸末端やアミン末端を封止するために、ポリイミド前駆体又はそのイミド化重合体を製造途中又は製造後のいずれかにおいて、末端封止剤を添加して反応させればよい。
末端封止剤の使用量は、特に限定されないが、ポリイミド前駆体又はそのイミド化重合体の重合反応に関与するジアミン成分中のアミノ基1当量に対し、0.001~0.8当量が好ましく、0.01~0.2当量がより好ましい。
また、ポリイミド前駆体又はそのイミド化重合体の重合反応に関与するテトラカルボン酸成分中のカルボキシル基(又はその誘導体構造)1当量に対し、0.001~0.8当量が好ましく、0.01~0.2当量が好ましい。
末端を封止する際の反応温度は、-50~150℃が好ましく、-30~100℃がより好ましい。また、反応時間は、通常、0.1~100時間である。
【0074】
<重合体(P2)の製造方法>
重合体(P2)は、第2のポリイミド前駆体及びそのイミド化重合体からなる群から選ばれるものであって、ジアミン成分とテトラカルボン酸成分とを反応させて得られる。ジアミン成分とテトラカルボン酸成分との反応については、上記の重合体(P1)の製造方法における記載と同様である。
【0075】
重合体(P2)が、末端を封止したポリイミド前駆体及びそのイミド化重合体からなる群から選ばれる場合、ポリイミド前駆体又はそのイミド化重合体を製造途中又は製造後のいずれか又は両方において、下記式(R-1)~(R-2)から選ばれる末端封止剤を反応させればよい。
【0076】
【化34】
(R及びR’は、1価の有機基を表す。nは1~2の整数である。)
【0077】
及びR’の具体例としては、メチル基、9-フルオニルメチル基、2,2,2-トリクロロエチル基、2-トリメチルシリルエチル基、1,1-ジメチルプロピニル基、1-メチル-1-フェニルエチル基、1-メチル-1-(4-ビフェニルイル)エチル基、1、1-ジメチル-2-ハロエチル基、1,1-ジメチル-2-シアノエチル基、tert-ブチル基、シクロブチル基、1-メチルシクロブチル基、1-アダマンチル基、ビニル基、アリル基、シンナミル基、8-キノリル基、N-ヒドロキシピペリジニル基、ベンジル基、p-ニトロベンジル基、3,4-ジメトキシ-6-ニトロベンジル基、2,4-ジクロロベンジル基が挙げられる。なかでも、液晶表示素子製造プロセスにおける焼成温度との関係から、tert-ブチル基、2,2,2-トリクロロエチル基、2-トリメチルシリルエチル基、1,1-ジメチルプロピニル基、1-メチル-1-(4-ビフェニルイル)エチル基、1、1-ジメチル-2-ハロエチル基、1,1-ジメチル-2-シアノエチル基、t-ブチル基、シクロブチル基、1-メチルシクロブチル基、ビニル基、アリル基、シンナミル基、N-ヒドロキシピペリジニル基がより好ましく、1、1-ジメチル-2-ハロエチル基、1,1-ジメチル-2-シアノエチル基、tert-ブチル基が特に好ましい。
【0078】
<液晶配向剤>
本発明の液晶配向剤は、重合体(P1)、及び必要に応じて重合体(P2)を含有する。液晶配向剤における重合体(P1)の含有量は、液晶配向剤中、2~10質量%が好ましく、3~8質量%がより好ましい。
液晶配向剤が重合体(P2)を含有する場合、重合体(P1)の含有量は、重合体(P1)と重合体(P2)との合計量100質量部に対して、30質量部以上が好ましく、50質量部以上がより好ましく、60質量部以上が更に好ましく、70質量部以上が最も好ましい。
【0079】
本発明の液晶配向剤は、重合体(P1)及び重合体(P2)以外の他の重合体を含有していても良い。それ以外の重合体としては、セルロース系重合体、アクリルポリマー、メタクリルポリマー、ポリスチレン、ポリアミド、ポリシロキサン等も挙げられる。それ以外の他の重合体の含有量は、重合体(P1)及び重合体(P2)の合計100質量部に対して、0.5~15質量部が好ましく、1~10質量部がより好ましい。
【0080】
また、液晶配向剤は、通常、有機溶媒が含有するが、有機溶媒の含有量は、液晶配向剤に対して、70~99.9質量%であることが好ましい。この含有量は、液晶配向剤の塗布方法や目的とする液晶配向膜の膜厚によって、適宜変更することができる。
液晶配向剤に用いる有機溶媒は、重合体(P1)及び重合体(P2)を溶解させる溶媒(良溶媒ともいう)が好ましい。例えば、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチル-2-ピロリドン、N-エチル-2-ピロリドン、ジメチルスルホキシド、γ-ブチロラクトン、1,3-ジメチル-イミダゾリジノン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、4-ヒドロキシ-4-メチル-2-ペンタノン、3-メトキシ-N,N-ジメチルプロパンアミド、3-ブトキシ-N,N-ジメチルプロパンアミド、等を挙げられる。なかでも、N-メチル-2-ピロリドン、N-エチル-2-ピロリドン、3-メトキシ-N,N-ジメチルプロパンアミド、3-ブトキシ-N,N-ジメチルプロパンアミド又はγ-ブチロラクトンが好ましい。
本発明の液晶配向剤における良溶媒は、液晶配向剤に含まれる溶媒全体の20~99質量%であることが好ましく、20~90質量%がより好ましく、特に好ましいのは、30~80質量%である。
【0081】
本発明の液晶配向剤は、液晶配向剤を塗布した際の液晶配向膜の塗膜性や表面平滑性を向上させる溶媒(貧溶媒ともいう)を使用できる。下記にその具体例を挙げる。
例えば、ジイソプロピルエーテル、ジイソブチルエーテル、ジイソブチルカルビノール(2,6-ジメチル-4-ヘプタノール)、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテル、1,2-ブトキシエタン、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、4-ヒドロキシ-4-メチル-2-ペンタノン、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、3-エトキシブチルアセタート、1-メチルペンチルアセタート、2-エチルブチルアセタート、2-エチルヘキシルアセタート、エチレングリコールモノアセタート、エチレングリコールジアセタート、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノイソアミルエーテル、エチレングリコールモノヘキシルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、1-(2-ブトキシエトキシ)-2-プロパノール、2-(2-ブトキシエトキシ)-1-プロパノール、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセタート、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテルアセタート、エチレングリコールモノアセタート、エチレングリコールジアセタート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセタート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセタート、2-(2-エトキシエトキシ)エチルアセタート、ジエチレングリコールアセタート、プロピレングリコールジアセテート、酢酸n-ブチル、酢酸プロピレングリコールモノエチルエーテル、3-メトキシプロピオン酸メチル、3-エトキシプロピオン酸エチル、3-メトキシプロピオン酸エチル、3-メトキシプロピオン酸プロピル、3-メトキシプロピオン酸ブチル、乳酸n-ブチルエステル、乳酸イソアミルエステル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジイソブチルケトン(2,6-ジメチル-4-ヘプタノン)等を挙げることができる。
【0082】
なかでも、好ましい溶媒の組み合わせとしては、N-メチル-2-ピロリドンとエチレングリコールモノブチルエーテル、N-メチル-2-ピロリドンとγ-ブチロラクトンとエチレングリコールモノブチルエーテル、N-メチル-2-ピロリドンとγ-ブチロラクトンとプロピレングリコールモノブチルエーテル、N-エチル-2-ピロリドンとプロピレングリコールモノブチルエーテル、N-メチル-2-ピロリドンとγ-ブチロラクトンと4-ヒドロキシ-4-メチル-2-ペンタノンとジエチレングリコールジエチルエーテル、N-メチル-2-ピロリドンとγ-ブチロラクトンとプロピレングリコールモノブチルエーテルと2,6-ジメチル-4-ヘプタノン、N-メチル-2-ピロリドンとγ-ブチロラクトンとプロピレングリコールモノブチルエーテルとジイソプロピルエーテル、N-メチル-2-ピロリドンとγ-ブチロラクトンとプロピレングリコールモノブチルエーテルと2,6-ジメチル-4-ヘプタノール、N-メチル-2-ピロリドンとγ-ブチロラクトンとジプロピレングリコールジメチルエーテル、等を挙げることができる。これら貧溶媒は、液晶配向剤に含まれる溶媒全体の1~80質量%が好ましく、10~80質量%がより好ましく、20~70質量%が特に好ましい。このような溶媒の種類及び含有量は、液晶配向剤の塗布装置、塗布条件、塗布環境等に応じて適宜選択される。
【0083】
本発明の液晶配向剤には、液晶配向膜の誘電率や導電性等の電気特性を変化させる目的の誘電体、液晶配向膜と基板との密着性を向上させる目的のシランカップリング剤、液晶配向膜にした際の膜の硬度や緻密度を高める目的の架橋性化合物、更には塗膜を焼成する際にポリイミド前駆体の加熱によるイミド化を効率よく進行させる目的のイミド化促進剤等を含有せしめてもよい。
【0084】
液晶配向膜と基板との密着性を向上させる化合物としては、官能性シラン含有化合物やエポキシ基含有化合物が挙げられ、例えば、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、2-アミノプロピルトリメトキシシラン、2-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3-ウレイドプロピルトリメトキシシラン、3-ウレイドプロピルトリエトキシシラン、N-エトキシカルボニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-エトキシカルボニル-3-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-トリエトキシシリルプロピルトリエチレントリアミン、N-トリメトキシシリルプロピルトリエチレントリアミン、10-トリメトキシシリル-1,4,7-トリアザデカン、10-トリエトキシシリル-1,4,7-トリアザデカン、9-トリメトキシシリル-3,6-ジアザノニルアセテート、9-トリエトキシシリル-3,6-ジアザノニルアセテート、N-ベンジル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-ベンジル-3-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-フェニル-3-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-ビス(オキシエチレン)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-ビス(オキシエチレン)-3-アミノプロピルトリエトキシシラン、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、トリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、1,6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、グリセリンジグリシジルエーテル、2,2-ジブロモネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、1,3,5,6-テトラグリシジル-2,4-ヘキサンジオール、N,N,N’,N’,-テトラグリシジル-m-キシレンジアミン、1,3-ビス(N,N-ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサン、又はN,N,N’,N’,-テトラグリシジル-4、4’-ジアミノジフェニルメタン等が挙げられる。
【0085】
また、本発明の液晶配向剤には、液晶配向膜の機械的強度を上げるために以下のような添加剤(CL-1)~(CL-15)を含有してもよい。
【化35】
【0086】
上記の添加剤は、液晶配向剤に含有される重合体成分の100質量部に対して0.1~30質量部であることが好ましい。より好ましくは、0.5~20質量部である。
【0087】
<液晶配向膜の製造方法>
液晶配向膜は、上記液晶配向剤を基板上に塗布等により被膜を形成し、好ましくは乾燥し、次いで、焼成して得られる。基板としては、透明性の高い基板が好ましく、その材質として、ガラス、窒化珪素等のセラミクス、アクリル樹脂やポリカーボネート等のプラスチック等が使用できる。基板として、液晶を駆動させるためのITO(Indium Tin Oxide)電極等が形成された基板を用いると、プロセスの簡素化の点から好ましい。また、反射型の液晶表示素子では、片側の基板には、シリコンウエハー等の不透明のものも使用でき、その電極にはアルミニウム等の光を反射する材料も使用できる。
【0088】
液晶配向剤から基板上に被膜を形成する方法は、スクリーン印刷、オフセット印刷、フレキソ印刷、インクジェット法等が使用でき、また、ディップ法、ロールコータ法、スリットコータ法、スピンナー法、スプレー法等も目的に応じて使用できる。
基板上に液晶配向剤の被膜を形成した後、被膜は、ホットプレート、熱循環型オーブン、IR(赤外線)型オーブン等の加熱手段により、好ましくは30~120℃、より好ましくは50~120℃にて、好ましくは1分~10分、より好ましくは1分~5分乾燥処理することにより溶媒を蒸発させることが好ましい。
【0089】
重合体中のイミド前駆体の熱イミド化を行う場合には、次いで、液晶配向剤から得られる被膜は、上記の乾燥処理と同様の加熱手段により、好ましくは120~250℃、より好ましくは150~230℃にて焼成処理される。焼成処理の時間は、焼成温度によっても異なるが、好ましくは5分~1時間、より好ましくは5分~40分である。
【0090】
上記焼成処理後の被膜の厚みは、特に限定されないが、薄すぎると液晶表示素子の信頼性が低下する場合があり、厚すぎると得られる液晶配向膜の電気抵抗が大きくなるので、5~300nmが好ましく、10~200nmがより好ましい。
上記焼成処理後に、得られた被膜は配向処理される。配向処理する方法としては、ラビング処理法、光配向処理法等が挙げられる。
【0091】
光配向処理の具体例としては、上記被膜の表面に、一定方向に偏向された放射線を照射する。放射線としては、100~800nmの波長を有する紫外線又は可視光線を用いることができる。なかでも、100~400nmの波長を有する紫外線が好ましく、より好ましくは、200~400nmの波長を有する紫外線である。液晶配向性を改善するために、液晶配向膜が塗膜された基板を50~250℃で加熱しながら、紫外線を照射してもよい。また、上記放射線の照射量は、1~10,000mJ/cmが好ましい。なかでも、100~5,000mJ/cmが好ましい。このようにして作製した液晶配向膜は、液晶分子を一定の方向に安定して配向させることができる。
偏光された紫外線の消光比が高いほど、より高い異方性が付与できるため、好ましい。具体的には、直線に偏光された紫外線の消光比は、10:1以上が好ましく、20:1以上がより好ましい。
【0092】
上記配向処理を施した被膜に、更に、加熱処理及び溶媒による接触処理からなる群から選ばれる少なくとも1つの処理を施してもよい。
配向処理後の加熱処理は、上記の乾燥処理や焼成処理と同様の加熱手段により行うことができ、好ましくは180~250℃、より好ましくは180~230℃にて行われる。加熱処理の温度が、上記の範囲で行われる場合、得られる液晶配向膜によって得られる液晶表示素子のコントラストを高めることができる。加熱処理の時間は、加熱温度によっても異なるが、好ましくは5分~1時間、より好ましくは5~40分である。
【0093】
上記溶媒による接触処理に使用する溶媒としては、液晶配向膜に付着していた不純物等を溶解する溶媒であれば、特に限定されない。
具体例としては、水、メタノール、エタノール、2-プロパノール、アセトン、メチルエチルケトン、1-メトキシ-2-プロパノール、1-メトキシ-2-プロパノールアセテート、ブチルセロソルブ、乳酸エチル、乳酸メチル、ジアセトンアルコール、3-メトキシプロピオン酸メチル、3-エトキシプロピオン酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、酢酸シクロヘキシル等が挙げられる。なかでも、汎用性や溶媒の安全性の点から、水、2-プロパンール、1-メトキシ-2-プロパノール又は乳酸エチルが好ましい。より好ましいのは、水、1-メトキシ-2-プロパノール又は乳酸エチルである。これらの溶媒は、1種でも2種以上であってもよい。
【0094】
上記接触処理としては、浸漬処理や噴霧処理(スプレー処理ともいう)が挙げられる。これらの処理における処理時間は、10秒~1時間が好ましく、特に、1~30分間浸漬処理をする態様が挙げられる。また、接触処理時の温度は、常温でも加温してもよいが、好ましくは、10~80℃であり、20~50℃が挙げられる。接触処理時に、必要に応じて、超音波処理等を、更に行ってもよい。
【0095】
上記接触処理の後に、水、メタノール、エタノール、2-プロパノール、アセトン、メチルエチルケトン等の低沸点溶媒によるすすぎ(リンスともいう)や乾燥を行ってもよい。その際、リンスと乾燥のどちらか一方を行っても、両方を行ってもよい。乾燥温度は、50~150℃が好ましく、80~120℃が挙げられる。また、乾燥時間は10秒~30分が好ましく、1~10分が好ましい。
上記溶媒による接触処理を行った後、上記配向処理後の加熱処理を施してもよい。このような態様とすることで、液晶配向性に優れた液晶配向膜が得られる。
【0096】
<液晶表示素子>
本発明の液晶配向膜は、TN方式、STN方式、IPS方式、FFS方式、VA方式、MVA方式、PSA方式等の種々の駆動モードに適用することができるが、IPS方式やFFS方式等の横電界方式の液晶表示素子の液晶配向膜として好適であり、特に、FFS方式の液晶表示素子に有用である。本発明の液晶表示素子は、上記液晶配向剤から得られる液晶配向膜付きの基板を得た後、既知の方法で液晶セルを作製し、該液晶セルを使用して素子としたものである。
液晶セルの作製方法の一例として、パッシブマトリクス構造の液晶表示素子を例にとり説明する。なお、画像表示を構成する各画素部分にTFT等のスイッチング素子が設けられたアクティブマトリクス構造の液晶表示素子であってもよい。
【0097】
具体的には、透明なガラス製の基板を準備し、一方の基板の上にコモン電極を、他方の基板の上にセグメント電極を設ける。これらの電極は、例えば、ITO電極とすることができ、所望の画像表示ができるようパターニングされている。次いで、各基板の上に、コモン電極とセグメント電極を被覆するようにして絶縁膜を設ける。絶縁膜は、例えば、ゾル-ゲル法によって形成されたSiO-TiOからなる膜とすることができる。次に、上記のような条件で、各基板の上に液晶配向膜を形成し、一方の基板に他方の基板を、互いの液晶配向膜面が対向するようにして重ね合わせ、周辺をシール剤で接着する。シール剤には、基板間隙を制御するために、通常、スペーサーを混入しておくことが好ましい。また、シール剤を設けない面内部分にも、基板間隙制御用のスペーサーを散布しておくことが好ましい。シール剤の一部には、外部から液晶を充填可能な開口部を設けておくことが好ましい。
【0098】
その後、シール剤に設けた開口部を通じて、2枚の基板とシール剤で包囲された空間内に液晶材料を注入する。次いで、この開口部を接着剤で封止する。注入には、真空注入法や大気中で毛細管現象を利用した方法が挙げられ、ODF(One Drop Fill)法を用いてもよい。液晶材料としては、誘電異方性が正負いずれのものを用いてもよい。本発明では液晶配向性の観点から負の誘電異方性を有する液晶の方が好ましいが、用途に応じて使い分けることができる。
液晶セルに液晶材料が注入されたのち、偏光板の設置を行う。具体的には、2枚の基板の液晶層とは反対側の面に、一対の偏光板を貼り付けることが好ましい。
【実施例
【0099】
以下に実施例を挙げ、本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。以下における化合物の略号及び各特性の測定方法は、次のとおりである。
【0100】
NMP:N-メチル-2-ピロリドン、 GBL:γ―ブチロラクトン
BCS:ブチルセロソルブ
【化36】
【化37】
【化38】
【化39】
【0101】
[粘度]
E型粘度計TVE-22H(東機産業社製)を用い、サンプル量1.1mL、コーンロータTE-1(1°34’、R24)、温度25℃で測定した。
[分子量]
GPC(常温ゲル浸透クロマトグラフィー)装置によって測定し、ポリエチレンオキシド換算値として、数平均分子量(Mn)と重量平均分子量(Mw)を算出した。
GPC装置:Shodex社製(GPC-101)、カラム:Shodex社製(KD803、KD805の直列)、カラム温度:50℃、溶離液:N,N-ジメチルホルムアミド(添加剤として、臭化リチウム-水和物(LiBr・HO)が30mmol/L、リン酸・無水結晶(o-リン酸)が30mmol/L、テトラヒドロフラン(THF)が10ml/Lを含有する。)、流速:1.0ml/分
検量線作成用標準サンプル:東ソー社製 TSK 標準ポリエチレンオキサイド(重量平均分子量(Mw) 約900,000、150,000、100,000、30,000)、及び、ポリマーラボラトリー社製 ポリエチレングリコール(ピークトップ分子量(Mp)約12,000、4,000、1,000)。測定は、ピークが重なるのを避けるため、900,000、100,000、12,000、1,000の4種類を混合したサンプル、及び150,000、30,000、4,000の3種類を混合したサンプルの2サンプルを別々に測定した。
【0102】
[液晶セルの作製]
フリンジフィールドスィッチング(Fringe Field Switching:FFS)モード液晶表示素子の構成を備えた液晶セルを作製する。
始めに、電極付きの基板を準備した。基板は、30mm×50mmの大きさで、厚さが0.7mmのガラス基板である。基板上には第1層目として対向電極を構成する、ベタ状のパターンを備えたITO電極が形成されている。第1層目の対向電極の上には第2層目として、CVD法により成膜されたSiN(窒化珪素)膜が形成されている。第2層目のSiN膜の膜厚は500nmであり、層間絶縁膜として機能する。第2層目のSiN膜の上には、第3層目としてITO膜をパターニングして形成された櫛歯状の画素電極が配置され、第1画素及び第2画素の2つの画素を形成している。各画素のサイズは、縦10mmで横約5mmである。このとき、第1層目の対向電極と第3層目の画素電極とは、第2層目のSiN膜の作用により電気的に絶縁されている。
第3層目の画素電極は、中央部分が内角160°に屈曲した「くの字」形状の電極要素を複数配列して構成された櫛歯状の形状を有する。各電極要素の短手方向の幅は3μmであり、電極要素間の間隔は6μmである。各画素を形成する画素電極が、中央部分の屈曲した「くの字」形状の電極要素を複数配列して構成されているため、各画素の形状は長方形状ではなく、電極要素と同様に中央部分で屈曲する、太字の「くの字」に似た形状を備える。そして、各画素は、その中央の屈曲部分を境にして上下に分割され、屈曲部分の上側の第1領域と下側の第2領域を有する。
【0103】
次に、液晶配向剤を孔径1.0μmのフィルターで濾過した後、準備された上記電極付き基板と裏面にITO膜が成膜されている高さ4μmの柱状スペーサーを有するガラス基板に、スピンコート法にて塗布した。80℃のホットプレート上で2分間乾燥させた後、230℃の熱風循環式オーブンで30分間焼成を行い、膜厚100nmの塗膜を形成させた。この塗膜面に偏光板を介して消光比10:1以上の直線偏光した波長254nmの紫外線を照射した。この基板を、230℃の熱風循環式オーブンで更に30分間焼成し、液晶配向膜付き基板を得た。なお、上記電極付き基板に形成する液晶配向膜は、画素屈曲部の内角を等分する方向と液晶の配向方向とが直交するように配向処理し、第2のガラス基板に形成する液晶配向膜は、液晶セルを作製した時に第1の基板上の液晶の配向方向と第2の基板上の液晶の配向方向とが一致するように配向処理した。上記2枚の基板を一組とし、基板上にシール剤を印刷し、もう1枚の基板を、液晶配向膜面が向き合い配向方向が0°になるようにして張り合わせた後、シール剤を硬化させて空セルを作製した。この空セルに減圧注入法によって、液晶MLC-3019(メルク社製)を注入し、注入口を封止して、FFS駆動液晶セルを得た。その後、得られた液晶セルを110℃で1時間加熱し、一晩放置してから各評価に使用した。
【0104】
[長期交流駆動による残像評価]
上記した残像評価に使用した液晶セルと同様の構造の液晶セルを準備した。
この液晶セルを用い、60℃の恒温環境下、周波数60Hzで±5Vの交流電圧を120時間印加した。その後、液晶セルの画素電極と対向電極との間をショートさせた状態にし、そのまま室温に一日放置した。
放置の後、液晶セルを偏光軸が直交するように配置された2枚の偏光板の間に設置し、電圧無印加の状態でバックライトを点灯させておき、透過光の輝度が最も小さくなるように液晶セルの配置角度を調整した。そして、第1画素の第2領域が最も暗くなる角度から第1領域が最も暗くなる角度まで液晶セルを回転させたときの回転角度を角度Δとして算出した。第2画素でも同様に、第2領域と第1領域とを比較し同様の角度Δを算出した。
【0105】
<合成例1>(末端が封止されていないポリアミック酸)
撹拌装置及び窒素導入管付きの3L四つ口フラスコに、ジアミンDA-1を17.30g(159.98mmol)、ジアミンDA-2を58.63g(240.0mmol)、ジアミンDA-3を76.89g(240.0mmol)及びジアミンDA-4を54.63g(159.99mmol)量り取り、NMPを2458.13g加えて、窒素を送りながら撹拌し溶解させた。このジアミン溶液を撹拌しながら、テトラカルボン酸二無水物TA-1を171.27g(764.02mmol)添加し、更に、固形分濃度が12質量%になるようにNMPを加え、40℃で20時間撹拌して、ポリアミック酸溶液(PAA-1)を得た。
このポリアミック酸溶液の粘度は426mPa・sであった。また、このポリアミック酸の分子量はMn=12,380、Mw=33,250であった。
【0106】
<合成例2>(末端が封止されていないポリアミック酸)
撹拌装置及び窒素導入管付きの100mL四つ口フラスコに、テトラカルボン酸二無水物TA-2を5.29g(26.98mmol)量り取り、NMPを80.13g加えて、窒素を送りながら撹拌し溶解させた。このカルボン酸二無水物溶液を撹拌しながら、ジアミンDA-5を2.96g(14.86mmol)、ジアミンDA-6を2.28g(5.41mmol)、及びジアミンDA-7を1.61g(5.43mmol)添加し、更に、固形分濃度が12質量%になるようにNMPを加え、40℃で20時間撹拌して、ポリアミック酸溶液(PAA-2)を得た。
このポリアミック酸溶液の粘度は437mPa・sであった。また、このポリアミック酸の分子量はMn=16,331、Mw=35,853であった。
【0107】
<合成例3>(末端が封止されていないポリアミック酸)
撹拌装置及び窒素導入管付きの100mL四つ口フラスコに、ジアミンDA-5を2.98g(14.96mmol)、ジアミンDA-6を2.11g(5.00mmol)、及びジアミンDA-7を1.49g(4.99mmol)量り取り、NMPを74.16g加えて、窒素を送りながら撹拌し溶解させた。このジアミン溶液を撹拌しながら、テトラカルボン酸二無水物TA-2を4.64g(23.66mmol)添加し、更に、固形分濃度が12質量%になるようにNMPを加え、40℃で20時間撹拌して、ポリアミック酸溶液(PAA-3)を得た。
このポリアミック酸溶液の粘度は443mPa・sであった。また、このポリアミック酸の分子量はMn=12,155、Mw=35,725であった。
【0108】
【表1】
【0109】
<合成例4>(末端が封止されたポリアミック酸)
50mL三角フラスコに、ポリアミック酸(PAA-2)を20.0g量り取り、末端封止剤MA-1を0.035g(0.38mmol、重合反応に関与するジアミン中のアミノ基1当量に対して0.04当量)加え、40℃で20時間撹拌して、ポリアミック酸溶液(PAA-4)を得た。ポリアミック酸溶液(PAA-4)は酸末端が封止された。
【0110】
<合成例5~8>(末端が封止されたポリアミック酸)
下記表2に示す、ポリアミック酸溶液と末端封止剤を使用し、それぞれ、合成例4と同様に実施することにより、下記表2に示すポリアミック酸溶液(PAA-5)~(PAA-8)を得た。ポリアミック酸溶液(PAA-5)は酸末端が封止され、ポリアミック酸溶液(PAA-6)~(PAA-8)はアミン末端が封止された。
【0111】
【表2】
【0112】
(成分1:成分2のブレンド比(質量比)が5:5である液晶配向剤)
<実施例1>
12質量%のポリアミック酸溶液(PAA-4)(成分1)2.29gと12質量%のポリアミック酸溶液(PAA-1)(成分2)2.29gを50ml三角フラスコに取り、NMP2.41g、BCS3.00gを加え、25℃にて2時間混合して、液晶配向剤(A1)を得た。この液晶配向剤に、濁りや析出等の異常は見られず、均一な溶液であることが確認された。
【0113】
<実施例4、7、10、13>
ポリアミック酸溶液(PAA-4)の代わりに、ポリアミック酸溶液(PAA-5)~(PAA-8)を用いた以外は、実施例1と同様に実施することにより、液晶配向剤(A4)、(A7)、(A10)、(A13)を得た。
<比較例1、4>
ポリアミック酸溶液(PAA-4)の代わりに、ポリアミック酸溶液(PAA-2)~(PAA-3)を用いた以外は、実施例1と同様に実施することにより、液晶配向剤(B1)と(B4)を得た。
【0114】
(成分1:成分2のブレンド比(質量比)が6:4である液晶配向剤)
<実施例2>
12質量%のポリアミック酸溶液(PAA-4)(成分1)2.75gと12質量%のポリアミック酸溶液(PAA-1)(成分2)1.83gを50ml三角フラスコに取り、NMP2.41g、BCS3.00gを加え、25℃にて2時間混合して、液晶配向剤(A2)を得た。この液晶配向剤に、濁りや析出等の異常は見られず、均一な溶液であることが確認された。
【0115】
<実施例5、8、11、14>
ポリアミック酸溶液(PAA-4)の代わりに、ポリアミック酸溶液(PAA-5)~(PAA-8)を用いた以外は、実施例2と同様に実施することにより、液晶配向剤(A5)、(A8)、(A11)、(A14)を得た。
<比較例2、5>
ポリアミック酸溶液(PAA-4)の代わりに、ポリアミック酸溶液(PAA-2)~(PAA-3)を用いた以外は、実施例2と同様に実施することにより、液晶配向剤(B2)と(B5)を得た。
【0116】
(成分1:成分2のブレンド比(質量比)が7:3である液晶配向剤)
<実施例3>
12質量%のポリアミック酸溶液(PAA-4)(成分1)3.21gと12質量%のポリアミック酸溶液(PAA-1)(成分2)1.38gを50ml三角フラスコに取り、NMP2.41g、BCS3.00gを加え、25℃にて2時間混合して、液晶配向剤(A3)を得た。この液晶配向剤に、濁りや析出等の異常は見られず、均一な溶液であることが確認された。
【0117】
<実施例6、9、12、15>
ポリアミック酸溶液(PAA-4)の代わりに、ポリアミック酸溶液(PAA-5)~(PAA-8)を用いた以外は、実施例3と同様に実施することにより、液晶配向剤(A6)、(A9)、(A12)、(A15)を得た。
<比較例3、6>
ポリアミック酸溶液(PAA-4)の代わりに、ポリアミック酸溶液(PAA-2)~(PAA-3)を用いた以外は、実施例3と同様に実施することにより、液晶配向剤(B3)と(B6)を得た。
【0118】
【表3】
【0119】
(長期交流駆動による残像評価結果)
<実施例16>
実施例1で得られた液晶配向剤(A1)を孔径1.0μmのフィルターで濾過した後、準備された上記電極付き基板と裏面にITO膜が成膜されている高さ4μmの柱状スペーサーを有するガラス基板に、スピンコート塗布にて塗布した。80℃のホットプレート上で2分間乾燥させた後、230℃の熱風循環式オーブンで30分間焼成を行い、膜厚100nmの塗膜を形成させた。この塗膜面に偏光板を介して消光比26:1の直線偏光した波長254nmの紫外線を0.3J/cm照射した。この基板を、230℃の熱風循環式オーブンで30分間焼成し、液晶配向膜付き基板を得た。
【0120】
得られた上記2枚の基板を一組とし、基板上にシール剤を印刷し、もう1枚の基板を、液晶配向膜面が向き合い配向方向が0°になるようにして張り合わせた後、シール剤を硬化させて空セルを作製した。この空セルに減圧注入法によって、液晶MLC-3019(メルク社製)を注入し、注入口を封止して、FFS駆動液晶セルを得た。その後、得られた液晶セルを110℃で1時間加熱し、一晩放置して、長期交流駆動による残像評価を実施した。長期交流駆動後におけるこの液晶セルの角度Δの値は、0.26度であった。
【0121】
<実施例17~21、比較例7~9>
液晶配向剤(A1)の代わりに、それぞれ、表3に示した液晶配向剤A2~A5、B1~B3をそれぞれ用いた以外は、実施例16と全く同様の方法でFFS駆動液晶セルを作製し、長期交流駆動による残像評価を実施した。それぞれにおける長期交流駆動後におけるこの液晶セルの角度Δの値を、表4に示す。
【0122】
【表4】
【0123】
<実施例22~30、比較例10~12>
液晶配向剤(A1)の代わりに、それぞれ、表4に示した液晶配向剤A7~A15、B4~B6をそれぞれ用いた以外は、実施例16と全く同様の方法でFFS駆動液晶セルを作製し、長期交流駆動による残像評価を実施した。それぞれにおける長期交流駆動後におけるこの液晶セルの角度Δの値を、表5に示す。
【0124】
【表5】
【0125】
表4において、比較例7と実施例16、19、比較例8と実施例17、20、比較例9と実施例18、21を比べると、酸末端をモノアミンで修飾したポリアミック酸をブレンドした場合に、交流駆動による残像が低減する傾向にあることがわかる。
また、表5において、比較例10と実施例22、25、28、比較例11と実施例23、26、29、比較例12と実施例24、26、30をそれぞれ比べると、アミン末端をカルボン酸無水物で修飾したポリアミック酸をブレンドした場合に、長期交流駆動による残像が低減する傾向にあることが確認された。
ブレンド比が同じ比較例と実施例について、そのΔ値の差分をとると、成分1のブレンド比率が高い時ほど、比較例のΔ値と実施例のΔ値の差は大きくなる傾向にあった。このことから、本手法は成分1の比率を高めたい場合に特に有用である。
【産業上の利用可能性】
【0126】
本発明の液晶配向剤から得られる液晶配向膜は、液晶パネル製造における歩留りが高く、且つIPS駆動方式やFFS駆動方式の液晶表示素子において発生する交流駆動による残像を低減することができ、残像特性に優れたIPS駆動方式やFFS駆動方式の液晶表示素子が得られる。そのため、特に、高い表示品位が求められる液晶表示素子において使用される。
なお、2018年11月14日に出願された日本特許出願2018-214005号の明細書、特許請求の範囲、図面、及び要約書の全内容をここに引用し、本発明の明細書の開示として、取り入れるものである。