(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-27
(45)【発行日】2024-06-04
(54)【発明の名称】炭化珪素単結晶ウェーハの結晶欠陥評価方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/66 20060101AFI20240528BHJP
C30B 29/36 20060101ALI20240528BHJP
G01N 21/956 20060101ALI20240528BHJP
【FI】
H01L21/66 N
C30B29/36 A
G01N21/956 A
(21)【出願番号】P 2021042104
(22)【出願日】2021-03-16
【審査請求日】2023-02-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000190149
【氏名又は名称】信越半導体株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100102532
【氏名又は名称】好宮 幹夫
(74)【代理人】
【識別番号】100194881
【氏名又は名称】小林 俊弘
(72)【発明者】
【氏名】志賀 雄高
(72)【発明者】
【氏名】高橋 亨
(72)【発明者】
【氏名】村木 久男
【審査官】今井 聖和
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-131350(JP,A)
【文献】特開2015-188003(JP,A)
【文献】特開2010-223812(JP,A)
【文献】特開2011-027427(JP,A)
【文献】特開2017-145150(JP,A)
【文献】国際公開第2016/084561(WO,A1)
【文献】特開2008-115036(JP,A)
【文献】特開昭60-055612(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/66
C30B 29/36
G01N 21/956
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭化珪素単結晶ウェーハの結晶欠陥評価方法であって、
貫通刃状転位起因のエッチピットのサイズが10~50μmとなるように、炭化珪素単結晶ウェーハを溶融KOHでエッチングし、
前記エッチング後の前記炭化珪素単結晶ウェーハの表面の複数の箇所について、顕微鏡像を自動撮影により取得し、
前記取得した全顕微鏡像のそれぞれについて、前記エッチングにより形成されたエッチピットの連なり長さに基づいて欠陥密集部の有無を判定し、
前記取得した全顕微鏡像を、前記欠陥密集部を有する顕微鏡像と、前記欠陥密集部を有しない顕微鏡像とに分類して、前記炭化珪素単結晶ウェーハの結晶欠陥の密集状態を評価することを特徴とする炭化珪素単結晶ウェーハの結晶欠陥評価方法。
【請求項2】
前記顕微鏡像において、エッチピットの連なり長さが500μm以上のものが観察されたときに、前記欠陥密集部が有ると判定することを特徴とする請求項1に記載の炭化珪素単結晶ウェーハの結晶欠陥評価方法。
【請求項3】
前記取得した顕微鏡像の総数に対する、前記欠陥密集部を有する顕微鏡像の数の割合に基づいて、前記炭化珪素単結晶ウェーハの結晶欠陥の密集状態を評価することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の炭化珪素単結晶ウェーハの結晶欠陥評価方法。
【請求項4】
前記欠陥密集部を有する顕微鏡像の位置情報と、前記欠陥密集部を有しない顕微鏡像の位置情報とに基づいて、前記炭化珪素単結晶ウェーハの結晶欠陥の面内分布を評価することを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の炭化珪素単結晶ウェーハの結晶欠陥評価方法。
【請求項5】
前記結晶欠陥が、マイクロパイプ、貫通螺旋転位、貫通刃状転位及び基底面転位であることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の炭化珪素単結晶ウェーハの結晶欠陥評価方法。
【請求項6】
前記顕微鏡像の前記自動撮影による取得を、少なくとも電動XYステージ、顕微鏡及び撮像カメラを有する自動検査装置を用いて行い、前記取得した顕微鏡像の画像解析を行うことで前記欠陥密集部の有無を判定することを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の炭化珪素単結晶ウェーハの結晶欠陥評価方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、炭化珪素単結晶ウェーハの結晶欠陥評価方法に関する。
【背景技術】
【0002】
炭化珪素(SiC)単結晶ウェーハを用いたパワーデバイスは、高耐圧、低損失、高温動作が可能といった特徴を有することから、近年注目を集めている。
【0003】
炭化珪素(SiC)単結晶ウェーハには種々の結晶欠陥が存在する。特にマイクロパイプ、貫通螺旋転位、貫通刃状転位、基底面転位は電子デバイスの特性に非常に悪影響を及ぼすため、その評価を正確に行うことは基板の品質評価にとって極めて重要である。特に、半導体基板の製造プロセス中で、容易かつ簡便に結晶欠陥密度を高精度で検出する方法が必要である。炭化珪素単結晶の結晶欠陥を検出する方法は、例えば特許文献1に提案されている。特許文献1に記載の炭化珪素単結晶ウェーハの転位密度評価方法は、溶融アルカリを用いた選択エッチングにより結晶欠陥(転位)をエッチピットとして顕在化させたウェーハを顕微鏡観察することで品質評価を行っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、従来の顕微鏡観察ではウェーハ全面の観察は難しく、局所的な観察に留まっていた。また、転位が密集している箇所は特に悪影響が大きいが、ウェーハ面内での転位の密集部の位置、分布の評価や、密集部の程度を定量的に評価することは、従来のような局所的な観察では困難であった。
【0006】
本発明は、上記問題を解決するためになされたものであり、容易かつ簡便に、炭化珪素単結晶ウェーハ面内のマイクロパイプ、貫通螺旋転位、貫通刃状転位、基底面転位等の結晶欠陥の欠陥密集部の評価、特に欠陥密集部の位置、分布の評価や、欠陥密集部の程度を定量的に評価することができる炭化珪素単結晶ウェーハの結晶欠陥評価方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記目的を達成するためになされたものであり、炭化珪素単結晶ウェーハの結晶欠陥評価方法であって、貫通刃状転位起因のエッチピットのサイズが10~50μmとなるように、炭化珪素単結晶ウェーハを溶融KOHでエッチングし、前記エッチング後の前記炭化珪素単結晶ウェーハの表面の複数の箇所について、顕微鏡像を自動撮影により取得し、前記取得した全顕微鏡像のそれぞれについて、前記エッチングにより形成されたエッチピットの連なり長さに基づいて欠陥密集部の有無を判定し、前記取得した全顕微鏡像を、前記欠陥密集部を有する顕微鏡像と、前記欠陥密集部を有しない顕微鏡像とに分類して、前記炭化珪素単結晶ウェーハの結晶欠陥の密集状態を評価する炭化珪素単結晶ウェーハの結晶欠陥評価方法を提供する。
【0008】
このような炭化珪素単結晶ウェーハの結晶欠陥評価方法によれば、結晶欠陥をエッチピットとして顕在化させることで、炭化珪素単結晶ウェーハの結晶欠陥の密集状態の評価が容易かつ簡便、高精度でできるようになる。この評価結果を用いて欠陥密集部のさらなる検査を行い、改善もしくは選別を行うことで、結晶欠陥の密集が低減された良好な炭化珪素単結晶ウェーハを提供できるようになる。その結果、歩留まり良くデバイスを製造できる炭化珪素単結晶ウェーハを提供できる。
【0009】
このとき、前記顕微鏡像において、エッチピットの連なり長さが500μm以上のものが観察されたときに、前記欠陥密集部が有ると判定する炭化珪素単結晶ウェーハの結晶欠陥評価方法とすることができる。
【0010】
これにより、より安定して確実に精度高く、炭化珪素単結晶ウェーハの結晶欠陥の評価を行うことができる。
【0011】
このとき、前記取得した顕微鏡像の総数に対する、前記欠陥密集部を有する顕微鏡像の数の割合に基づいて、前記炭化珪素単結晶ウェーハの結晶欠陥の密集状態を評価する炭化珪素単結晶ウェーハの結晶欠陥評価方法とすることができる。
【0012】
これにより、炭化珪素単結晶ウェーハ表面の欠陥密集部の程度を数値化して容易に定量的な評価をすることが可能となる。
【0013】
このとき、前記欠陥密集部を有する顕微鏡像の位置情報と、前記欠陥密集部を有しない顕微鏡像の位置情報とに基づいて、前記炭化珪素単結晶ウェーハの結晶欠陥の面内分布を評価する炭化珪素単結晶ウェーハの結晶欠陥評価方法とすることができる。
【0014】
これにより、炭化珪素単結晶ウェーハ表面の欠陥密集部の位置が把握でき、容易に面内分布を評価すること可能となる。
【0015】
このとき、前記結晶欠陥が、マイクロパイプ、貫通螺旋転位、貫通刃状転位及び基底面転位である炭化珪素単結晶ウェーハの結晶欠陥評価方法とすることができる。
【0016】
本発明に係る結晶欠陥評価方法は、このような結晶欠陥の評価に好適である。
【0017】
このとき、前記顕微鏡像の前記自動撮影による取得を、少なくとも電動XYステージ、顕微鏡及び撮像カメラを有する自動検査装置を用いて行い、前記取得した顕微鏡像の画像解析を行うことで前記欠陥密集部の有無を判定する炭化珪素単結晶ウェーハの結晶欠陥評価方法とすることができる。
【0018】
これにより、測定者の技量や作業習熟度等の違いに関わらず、安定して短時間に容易に結晶欠陥の評価を行うことができる。
【発明の効果】
【0019】
以上のように、本発明の炭化珪素単結晶ウェーハの結晶欠陥評価方法によれば、結晶欠陥をエッチピットとして顕在化させることで、炭化珪素単結晶ウェーハの結晶欠陥の密集状態の評価が容易かつ簡便、高精度でできるようになる。この評価結果を用いて欠陥密集部のさらなる検査を行い、改善もしくは選別を行うことで、結晶欠陥の密集が低減された良好な炭化珪素単結晶ウェーハを提供できるようになる。その結果、歩留まり良くデバイスを製造できる炭化珪素単結晶ウェーハを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明に係る炭化珪素単結晶ウェーハの結晶欠陥評価方法の概略フローを示す。
【
図2】エッチピットの連なりを捉えた顕微鏡像を示す。
【
図3】エッチピットの連なりがない場合の顕微鏡像を示す。
【
図4】実施例(直径100mmのウェーハ)における、欠陥密集部の有無を分類した顕微鏡像のマッピングを示す。
【
図5】実施例(直径96mmのウェーハ)における、欠陥密集部の有無を分類した顕微鏡像のマッピングを示す。
【
図6】本発明に係る炭化珪素単結晶ウェーハの結晶欠陥評価方法に好適に用いられる自動検査装置を示す。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0022】
上述のように、炭化珪素単結晶ウェーハ面内のマイクロパイプ、貫通螺旋転位、貫通刃状転位、基底面転位等の結晶欠陥の密集部の位置、分布の評価や、密集部の程度を定量的に評価することができる方法が求められていた。
【0023】
本発明者らは、上記課題について鋭意検討を重ねた結果、炭化珪素単結晶ウェーハの結晶欠陥評価方法であって、貫通刃状転位起因のエッチピットのサイズが10~50μmとなるように、炭化珪素単結晶ウェーハを溶融KOHでエッチングし、前記エッチング後の前記炭化珪素単結晶ウェーハの表面の複数の箇所について、顕微鏡像を自動撮影により取得し、前記取得した全顕微鏡像のそれぞれについて、前記エッチングにより形成されたエッチピットの連なり長さに基づいて欠陥密集部の有無を判定し、前記取得した全顕微鏡像を、前記欠陥密集部を有する顕微鏡像と、前記欠陥密集部を有しない顕微鏡像とに分類して、前記炭化珪素単結晶ウェーハの結晶欠陥の密集状態を評価する炭化珪素単結晶ウェーハの結晶欠陥評価方法により、炭化珪素単結晶ウェーハの結晶欠陥の密集状態の評価が容易かつ簡便、高精度でできるようになることを見出し、本発明を完成した。
【0024】
以下、図面を参照して説明する。
【0025】
(自動検査装置)
まず、本発明に係る炭化珪素単結晶ウェーハの結晶欠陥評価方法に好適に用いられる自動検査装置について説明する。
図6に自動検査装置の一例を示す。この自動検査装置10は、顕微鏡1と、評価(観察)対象のウェーハWを載置しXY方向に電動で移動自在の電動XYステージ2と、デジタルカメラなどの撮像カメラ3とを備えている。また、自動検査装置を制御するコントローラー4を備えている。さらに、PC(パーソナルコンピュータ)5を備えることで、作業者は測定条件の入力をしたり、測定結果をPC5のモニターに表示させるなどして、評価結果の確認、解析等を行うことができる。
【0026】
(結晶欠陥評価方法)
次に、本発明に係る炭化珪素単結晶ウェーハの結晶欠陥評価方法について説明する。
図1に、本発明に係る炭化珪素単結晶ウェーハの結晶欠陥評価方法のフローを示す。
【0027】
最初に
図1(a)に示すように、測定対象の炭化珪素(SiC)単結晶ウェーハを溶融KOHでエッチングして、炭化珪素単結晶ウェーハに存在する転位等の結晶欠陥をピットとして顕在化させる。その際のエッチング量(条件)は、貫通刃状転位起因のエッチピットのサイズが10~50μmになるように制御する。このような溶融KOHエッチング条件は、溶融KOHの温度、エッチング時間等により調節することが可能であり、実際の結晶評価に先立って予めエッチング条件を決定しておけばよい。
【0028】
ここで、貫通刃状転位起因のピットのサイズ(10~50μm)を指標として採用しているのは、次のステップで炭化珪素単結晶ウェーハの表面の顕微鏡像を自動撮影する場合に、正確にエッチピットの存在を捕捉、判定するためである。すなわち、貫通刃状転位は他の転位と比べて数が多く、エッチピットの形状が円形のため、エッチング条件を設定するときの指標として最適である。また、貫通刃状転位起因のエッチピットの大きさが10μm未満となる程度のエッチングではエッチピットの形状が明りょうではなく、ごみとの区別がつかない場合がある。一方、貫通刃状転位起因のピットの大きさが50μmより大きくなる程にエッチングを行うと、ピットが大きくなりすぎ密集状態の正確な評価が困難になるためである。
【0029】
次に
図1(b)に示すように、炭化珪素単結晶ウェーハの表面の複数の箇所について、顕微鏡像を自動撮影により取得する。上述のような自動検査装置を用いて、電動XYステージを制御することでウェーハ全面を所定の間隔で撮影することができる。例えば2mm間隔で視野サイズが1mm□以上となるように顕微鏡像を自動撮影することが好ましい。
【0030】
次に、取得した全顕微鏡像のそれぞれについて、エッチングにより形成されたエッチピットの連なり長さに基づいて欠陥密集部の有無を判定する。
図1(c)に示すように、得られた顕微鏡像を画像解析して、例えばエッチピットの連なりが所定長さ以上の長さの場合は欠陥密集部として判定し、このような欠陥密集部が存在した顕微鏡像(画像)は、欠陥密集部有りと判定する。
【0031】
図2にエッチピットの連なりを捉えた顕微鏡像(視野1.42×1.06mm)を示す。
図2のようにエッチピットの連なりが観察された顕微鏡像は欠陥密集部有りと判定する。また、
図3にエッチピットの連なりがない場合の顕微鏡像(視野1.42×1.06mm)を示す。
図3のような顕微鏡像は欠陥密集部無しと判定する。
【0032】
このとき、エッチピットの連なり長さが500μm以上のものが観察されたときに、欠陥密集部が有ると判定することが好ましい。このような範囲のエッチピットの連なり長さを基準とすれば、より安定して高精度で欠陥密集部の有無を判定することができるためである。
【0033】
また、評価する対象の結晶欠陥は、マイクロパイプ、貫通螺旋転位、貫通刃状転位及び基底面転位とすることができる。本発明に係る結晶欠陥評価方法は、特にこのような結晶欠陥の密集状態の評価に好適である。
【0034】
図1(d)に示すように、取得した全顕微鏡像を、欠陥密集部を有する顕微鏡像と、前記欠陥密集部を有しない顕微鏡像とに分類する。そして、この分類結果を用いて、炭化珪素単結晶ウェーハの結晶欠陥の密集状態を評価する。
【0035】
次に、結晶欠陥の密集状態の評価の具体例について説明する。例えば、炭化珪素単結晶ウェーハにおける密集状態の定量的評価を行うことができる。この場合、取得した顕微鏡像の総数(全画像数)に対する、欠陥密集部を有する顕微鏡像の数(欠陥密集部有りの画像数)の割合を計算して数値化することが好ましい。これによりウェーハ間の対比も可能となる。また、数値化した値から炭化珪素単結晶ウェーハの評価を行うこともできる。この評価としては例えば合否判定であったり、単結晶成長条件の見直しを行ったりすることができる。
【0036】
また、欠陥密集部を有する顕微鏡像の位置情報と、欠陥密集部を有しない顕微鏡像の位置情報とに基づいて、炭化珪素単結晶ウェーハの結晶欠陥の面内分布を評価することができる。この場合、顕微鏡像の位置情報からマッピングを行い、PCのモニターなどに表示させるなどして、視覚的に結晶欠陥の面内分布を評価することが可能である。
【0037】
以上詳述したように、本発明に係る炭化珪素単結晶ウェーハの評価方法であれば、従来の手動観察と比較して、ウェーハ面内のより多くの点を観察することができ、全面のマッピング測定と画像解析の組み合わせを行うことが可能となり、簡便に欠陥密集部の位置を把握可能になる。また、欠陥密集部の程度を数値化して定量的な評価をすることが可能になる。このような結果に基づいてさらに欠陥密集部の検査を行い、ウェーハ製造条件の改善もしくは製造されたウェーハの選別を行うことで、欠陥密集部の程度の良好な炭化珪素単結晶ウェーハを提供できるようになる。その結果、歩留まり良くデバイスを製造できる炭化珪素単結晶ウェーハを提供できる。
【実施例】
【0038】
以下、実施例を挙げて本発明について具体的に説明するが、これは本発明を限定するものではない。
【0039】
(実施例)
直径100mmと直径96mmの炭化珪素単結晶ウェーハを評価対象とした。これらの炭化珪素単結晶ウェーハに対し、500℃で溶融させた溶融KOHを用いて選択エッチング処理を施し、貫通刃状転位起因のピットサイズが30μm程度となるように結晶欠陥(転位)をエッチピットとして顕在化させた。このウェーハを
図6に示す自動検査装置を用いて電動XYステージを制御することで、ウェーハ全面を2mm間隔で視野サイズが1mm□となるようにして顕微鏡像を撮像カメラにより自動撮影した。直径100mmのウェーハにおいて1789点の顕微鏡像を自動撮影し、エッチピットの連なりが800μm以上の場合に欠陥密集部有りとして欠陥密集部の有無を判定させ、顕微鏡像の分類を行った。このようにして分類した顕微鏡像を位置情報に基づいてマッピングしたところ、
図4のようなマップが得られた。
図4において、黒で表されるセルが欠陥密集部有りの画像である。
図4に示すように73点の画像が欠陥密集部として判別され、欠陥密集部有りの画像の割合は73/1789=4.1%となった。また、直径96mmのウェーハについても同様な方法で1741点の顕微鏡像を自動撮影し、エッチピットの連なりが800μm以上の場合に欠陥密集部有りとして判定させたところ、
図5のようなマップが得られた。
図5に示すように23点の画像が欠陥密集部として判別され、欠陥密集部有りの画像の割合は23/1741=1.3%となった。このようにマッピングを行うことで、欠陥の密集部の分布を容易に把握できるように視覚化できた。また、数値化することで欠陥の密集状態を定量的に評価することができた。
【0040】
(比較例)
溶融KOHによる選択エッチングを行った実施例と同じウェーハについて、ウェーハ面内を顕微鏡にて手動による目視観察を行った。欠陥密集部の存在は確認できたが、欠陥密集部の位置の正確な把握や、数値化しての定量的な評価は困難であり、2枚のウェーハについて欠陥の密集状態の違いは明確に判らなかった。
【0041】
以上のとおり、本発明の実施例によれば、作業者の作業習熟度にかかわらず、容易に欠陥の密集状態を評価することができた。
【0042】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
【符号の説明】
【0043】
1…顕微鏡3、 2…電動XYステージ、 3…撮像カメラ、 4…コントローラー、
5…PC、 10…自動検査装置。
W…ウェーハ。