(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-27
(45)【発行日】2024-06-04
(54)【発明の名称】液晶表示素子及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
G02F 1/13 20060101AFI20240528BHJP
G02F 1/1337 20060101ALI20240528BHJP
C08G 73/10 20060101ALI20240528BHJP
【FI】
G02F1/13 505
G02F1/1337 525
C08G73/10
(21)【出願番号】P 2021502300
(86)(22)【出願日】2020-02-26
(86)【国際出願番号】 JP2020007619
(87)【国際公開番号】W WO2020175518
(87)【国際公開日】2020-09-03
【審査請求日】2022-11-29
(31)【優先権主張番号】P 2019034266
(32)【優先日】2019-02-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000003986
【氏名又は名称】日産化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100097102
【氏名又は名称】吉澤 敬夫
(74)【代理人】
【識別番号】100094640
【氏名又は名称】紺野 昭男
(74)【代理人】
【識別番号】100103447
【氏名又は名称】井波 実
(74)【代理人】
【識別番号】100111730
【氏名又は名称】伊藤 武泰
(74)【代理人】
【識別番号】100180873
【氏名又は名称】田村 慶政
(72)【発明者】
【氏名】高橋 真文
(72)【発明者】
【氏名】別府 功一朗
(72)【発明者】
【氏名】片山 雅章
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 加名子
【審査官】磯崎 忠昭
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2012/141173(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/135657(WO,A1)
【文献】特開2002-155113(JP,A)
【文献】特開平10-227906(JP,A)
【文献】特開平06-034979(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02F 1/13
G02F 1/1337
G02F 1/1334
C08G 73/10
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電極を備えた一対の基板の間に液晶を含む液晶層を有し、且つ、基板の少なくとも一方に液晶性を発現する液晶配向膜を備える、電圧印加により透明状態と散乱状態とを制御する透過散乱型の液晶表示素子であって、前記透過散乱型の液晶表示素子が、電圧無印加時に散乱状態になり、電圧印加時に透明状態とな
り、前記液晶配向膜が液晶性高分子を含み、前記液晶性高分子が、下記式[A1]~式[A4](式中、a1~a3はそれぞれ独立して、1~12の整数を示す。a4は1~5の整数を示す。R
1
及びR
2
はそれぞれ独立して、単結合又は炭素数1~12のアルキレン基を示す。R
A
~R
D
はそれぞれ独立して、水素原子、炭素数1~5のアルキル基又は炭素数1~5のアルコキシ基から選ばれる少なくとも1種を示す。)からなる群Aから選ばれる少なくとも1種の部分構造Aと、下記式[B1]~式[B7](式中、S
A
~S
D
はそれぞれ独立して、炭素数1~3のアルキル基を示す。n1~n4はそれぞれ独立して、0~2の整数を示す。)からなる群Bから選ばれる少なくとも1種の部分構造Bを有するポリイミド前駆体又は該ポリイミド前駆体をイミド化したポリイミドである、上記液晶表示素子。
【化1】
【請求項2】
前記液晶が、正の誘電異方性を有する請求項1に記載の液晶表示素子。
【請求項3】
前記液晶の屈折率異方性(Δn)が、0.20以上である請求項1又は2に記載の液晶表示素子。
【請求項4】
前記ポリイミド前駆体又は該ポリイミド前駆体をイミド化したポリイミドがジアミン成分とテトラカルボン酸成分とから得られ、前記ジアミン成分が、前記少なくとも1種の部分構造A及び前記少なくとも1種の部分構造Bのうち、いずれか一方又は双方を有するジアミンを有し、前記テトラカルボン酸成分が、いずれか一方以外である他方又は双方を有するテトラカルボン酸を有する請求項
1~3のいずれか一項に記載の液晶表示素子。
【請求項5】
前記ジアミン成分が、前記少なくとも1種の部分構造Aを有する第1のジアミンを有し、前記テトラカルボン酸成分が、前記少なくとも1種の部分構造Bを有する第1のテトラカルボン酸を有する請求項
4に記載の液晶表示素子。
【請求項6】
前記第1のジアミンが、下記式[1A](式中、X
1及びX
3はそれぞれ独立して、単結合、-O-、-CO-、-COO-、-OCO-、-CONH-、-NHCO-又は-NH-から選ばれる少なくとも1種を示す。X
2は前記式[A1]~式[A4]から選ばれる少なくとも1種を示す。)であり、前記第1のテトラカルボン酸が、下記式[2B](式中、Y
1及びY
5はそれぞれ独立して、芳香環、脂環式基又は複素環基から選ばれる少なくとも1種を示す。Y
2及びY
4はそれぞれ独立して、単結合、-O-、-CO-、-COO-、-OCO-、-CONH-、-NHCO-又は-NH-から選ばれる少なくとも1種を示す。Y
3は前記式[B1]~式[B7]から選ばれる少なくとも1種を示す。n5及びn6はそれぞれ独立して、0又は1の整数を示す。)である請求項
5に記載の液晶表示素子。
【化2】
【請求項7】
前記ジアミン成分が、前記少なくとも1種の部分構造Bを有する第2のジアミンを有し、前記テトラカルボン酸成分が、前記少なくとも1種の部分構造Aを有する第2のテトラカルボン酸を有する請求項
4~
6のいずれか一項に記載の液晶表示素子。
【請求項8】
前記第2のジアミンが、下記式[1B](式中、X
4は前記式[B1]~式[B7]から選ばれる少なくとも1種を示す。)であり、前記第2のテトラカルボン酸が、下記式[2A](式中、Y
6及びY
10はそれぞれ独立して、芳香環、脂環式基又は複素環基から選ばれる少なくとも1種を示す。Y
7及びY
9はそれぞれ独立して、単結合、-O-、-CO-、-COO-、-OCO-、-CONH-、-NHCO-又は-NH-から選ばれる少なくとも1種を示す。Y
8は前記式[A1]~式[A4]から選ばれる少なくとも1種を示す。n7及びn8はそれぞれ独立して、0又は1の整数を示す。)
である請求項
7に記載の液晶表示素子。
【化3】
【請求項9】
前記液晶配向膜が、80~350℃の範囲で液晶性を発現する請求項1~
8のいずれか一項に記載の液晶表示素子。
【請求項10】
液晶表示素子の液晶層のギャップが、2.0~50μmである請求項1~
9のいずれか一項に記載の液晶表示素子。
【請求項11】
前記液晶表示素子の基板が、ガラス基板又はプラスチック基板である請求項1~
10のいずれか一項に記載の液晶表示素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電圧印加により透明状態と散乱状態とを制御する透過散乱型の液晶表示素子及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
TN(Twisted Nematic)モードの液晶表示素子が実用化されている。このモードでは、液晶の旋光特性を利用して、光のスイッチングを行うために、偏光板を用いる必要があるが、偏光板を用いると光の利用効率が低くなる。
偏光板を用いない液晶表示素子として、液晶の透過状態(透明状態ともいう)と散乱状態との間でスイッチングを行う素子がある。一般的には、高分子分散型液晶(PDLC(Polymer Dispersed Liquid Crystal)ともいう。)や高分子ネットワーク型液晶(PNLC(Polymer Network Liquid Crystal)ともいう。)を用いたものが知られている。
これらの液晶表示素子では、電極を備えた一対の基板の間に、紫外線により重合する重合性化合物を含む液晶組成物を配置し、紫外線の照射により液晶組成物の硬化を行い、液晶と重合性化合物の硬化物(例えば、ポリマーネットワーク)との複合体を形成する。そして、この液晶表示素子では、電圧の印加により、液晶の透過状態と散乱状態が制御される(特許文献1、2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】日本特許第3552328号。
【文献】日本特許第4630954号。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述のPDLCやPNLCの液晶表示素子は、液晶組成物中の重合性化合物の硬化を行うため、紫外線照射工程が必要となる。
一方、液晶組成物中に重合性化合物を用いることなく、且つ、紫外線照射工程が不要な透過散乱型の液晶表示素子を提供することが要望されている。
そこで、本発明の目的は、液晶組成物中に重合性化合物を用いることなく、且つ、紫外線照射工程が不要な透過散乱型の液晶表示素子及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は、以下の要旨を有する発明を見出した。
1. 電極を備えた一対の基板の間に液晶を含む液晶層を有し、且つ、基板の少なくとも一方に液晶性を発現する液晶配向膜を備える、電圧印加により透明状態と散乱状態を制御する透過散乱型の液晶表示素子。
【発明の効果】
【0006】
本発明により、液晶組成物中に重合性化合物を用いることなく、且つ、紫外線照射工程が不要である、透過散乱型の液晶表示素子を提供することができる。
また、本発明の液晶表示素子により、表示を目的とする液晶ディスプレイや、光の遮断と透過とを制御する調光窓や光シャッター素子などを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】実施例1で得られた液晶配向膜付きのガラス基板の膜の偏光顕微鏡像(膜が液晶性を示す)である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本願は、液晶表示素子、特に電圧印加により透明状態と散乱状態とを制御する透過散乱型の液晶表示素子を提供する。また、該液晶表示素子の製造方法を提供する。
以下、本願に記載する発明について、順に説明する。
<液晶表示素子>
本願は、電極を備えた一対の基板の間に液晶を含む液晶層を有し、且つ、基板の少なくとも一方に液晶性を発現する液晶配向膜を備える、電圧印加により透明状態と散乱状態とを制御する散乱透過型の液晶表示素子を提供する。
【0009】
<基板>
本発明の液晶表示素子は、電極を備えた一対の基板を有する。
ここで、基板は、電極を備えることができれば、特に限定されないが、透明性の高い基板が用いられることが好ましい。基板として、例えば、ガラス基板の他、ポリアミド基板、ポリイミド基板、ポリエーテルサルホン基板、アクリル基板、ポリカーボネート基板、PET(ポリエチレンテレフタレート)基板などのプラスチック基板、更には、それらのフィルムを用いることができるがこれらに限定されない。特に、調光窓などに用いる場合には、プラスチック基板やフィルムが好ましい。
【0010】
電極は、特に限定されないが、プロセスの簡素化の観点からは、液晶駆動のためのITO電極、IZO(Indium Zinc Oxide)電極、IGZO(Indium Gallium Zinc Oxide)電極、有機導電膜などが形成された基板を用いることが好ましい。
なお、反射型の液晶表示素子とする場合には、片側の基板のみにならば、シリコンウエハやアルミニウムなどの金属や誘電体多層膜が形成された基板を使用できる。
【0011】
本発明の液晶表示素子において、上記一対の基板は、所定間隔を離間させて平行に配置させ、該一対の基板間に液晶を含む液晶層を有するように配置する。
ここで、液晶表示素子の電極間隙(ギャップともいう。)は、2.0~50μmが好ましい。より好ましくは2.0~30μm、特に好ましくは2.0~20μmである。
また、上記一対の基板の少なくとも一方の基板には、特に該基板の液晶層を配置する側には、液晶性を発現する液晶配向膜が配置される。
【0012】
<液晶>
液晶層に含まれる液晶として、ネマチック液晶、スメクチック液晶又はコレステリック液晶を用いることができる。
なかでも、本発明においては、正の誘電異方性を有するものが好ましい。正の誘電異方性を有する液晶を用いた場合には、電圧無印加時は吸収(散乱)で、電圧印加時に透明となる素子を得ることができる。
【0013】
また、低電圧駆動及び散乱特性の点からは、誘電率異方性(Δεともいう。)が大きく、屈折率異方性(Δnともいう。)が大きいものが好ましい。
更に、液晶表示素子を自動車などの窓に使用する場合には、透明点(Tniともいう。)が高い方が好ましい。特に、液晶は、大きなΔnを有するのがよく、好ましくはΔnが0.20以上、より好ましくは0.22以上、特に好ましくは0.26以上であるのがよい。
また、液晶には、Δε、Δn及びTniの各物性値に応じて、2種類以上の液晶を混合して用いることができる。
【0014】
液晶表示素子をTFT(Thin Film Transistor)などの能動素子として駆動させるためには、液晶の電気抵抗が高くて電圧保持率(VHRともいう。)が高いことが求められる。そのため、液晶は、電気抵抗が高くて紫外線などの活性エネルギー線によりVHRが低下しないフッ素系や塩素系の液晶を用いることが好ましい。
【0015】
更に、液晶表示素子は、液晶層に二色性染料を溶解させてゲストホスト型の素子とすることもできる。
【0016】
<液晶配向膜>
上述したように、本発明の液晶表示素子は、一対の基板の少なくとも一方の基板に、特に該基板の液晶層を配置する側に、液晶性を発現する液晶配向膜が配置される。
本発明の液晶表示素子において、液晶配向膜が、80~350℃、好ましくは100~300℃、より好ましくは120~250℃の範囲で液晶性を発現するのがよい。
【0017】
該液晶配向膜は、液晶性高分子を含むのがよい。
液晶性高分子としては、特に限定されないが、アクリルポリマー、メタクリルポリマー、ノボラック樹脂、エポキシ樹脂、ポリヒドロキシスチレン、ポリイミド前駆体、ポリイミド、ポリアミド、ポリエステル、ポリエーテル、ポリウレタン、ポリ(エステルアミド)、ポリ(エステル-イミド)、ポリ(エステル-無水物)、ポリ(エステル-カーボナート)、セルロース又はポリシロキサンから選ばれる少なくとも1種の重合体が好ましい。より好ましいのは、ポリイミド前駆体又はポリイミド(総称してポリイミド系重合体ともいう。)である。
【0018】
ここで、ポリイミド前駆体とは、下記式[A]の構造を有する。
式[A]において、R1は4価の有機基を示す。R2は2価の有機基を示す。A1及びA2はそれぞれ、水素原子又は炭素数1~8のアルキル基を示す。A3及びA4はそれぞれ、水素原子、炭素数1~5のアルキル基又はアセチル基を示す。nは正の整数を示す。
【0019】
【0020】
ジアミン成分としては、分子内に第一級又は第二級のアミノ基を2個有するジアミンであり、テトラカルボン酸成分としては、テトラカルボン酸化合物、テトラカルボン酸二無水物、テトラカルボン酸ジハライド化合物、テトラカルボン酸ジアルキルエステル化合物又はテトラカルボン酸ジアルキルエステルジハライド化合物が挙げられる。
【0021】
ポリイミド系重合体は、下記式[B]のテトラカルボン酸二無水物と下記式[C]のジアミンとを原料とすることで、比較的簡便に得られるという理由から、下記式[D]の繰り返し単位の構造式から成るポリアミド酸又は該ポリアミド酸をイミド化させたポリイミドが好ましい。
なお、式中、R1及びR2は、式[A]で定義したものと同じである。
【0022】
【0023】
また、通常の合成手法で、前記で得られた式[D]の重合体に、式[A]中のA1及びA2の炭素数1~8のアルキル基、及び式[A]中のA3及びA4の炭素数1~5のアルキル基又はアセチル基を導入することもできる。
【0024】
液晶性高分子は、下記式[A1]~[A4]から選ばれる少なくとも1種の部分構造(特定部分構造(A)ともいう。)を有するのがよく、好ましくは式[A4]の部分構造を有するのがよい。
下記式[A1]~[A4]において、a1~a3はそれぞれ独立して、1~12、好ましくは1~8、より好ましくは1~6の整数を示す。
a4は1~5、好ましくは1~3、より好ましくは1~2の整数を示す。
R1及びR2はそれぞれ独立して、単結合又は炭素数1~12、好ましくは1~6、より好ましくは1~4のアルキレン基を示す。
RA~RDはそれぞれ独立して、水素原子、炭素数1~5、好ましくは1~3のアルキル基又はアルコキシ基から選ばれる少なくとも1種を示し、更により好ましくは炭素数1又は2のアルキル基であるのがよい。
【0025】
【0026】
また、液晶性高分子は、下記式[B1]~[B7]から選ばれる少なくとも1種の部分構造(特定部分構造(B)ともいう。)を有するのがよく、好ましくは、式[B1]、式[B4]又は式[B7]であるのがよい。
式[B1]~[B7]において、SA~SDはそれぞれ独立して、炭素数1~3、好ましくは1~2のアルキル基を示す。n1~n4はそれぞれ独立して、0~2、好ましくは0又は1の整数を示す。芳香環上の水素は、-CH3、-CF3、-F、-CN、-COOH、-NO2、-NH-Boc、または-N(Boc)2で置き換えられていてもよい(Bocは、tert-ブトキシカルボニル基を表す)。
【0027】
【0028】
特に、液晶性高分子は、下記式[A1]~式[A4]から選ばれる少なくとも1種の部分構造と、下記式[B1]~式[B7]から選ばれる少なくとも1種の部分構造を有するポリイミド系重合体であることが好ましい。
【0029】
特定部分構造(A)及び特定部分構造(B)を、ポリイミド系重合体に導入する方法としては、前記式[A1]~式[A4]又は前記式[B1]~式[B7]の部分構造を有するジアミンを含むジアミン成分と、式[A1]~式[A4]又は式[B1]~式[B7]の部分構造を有するテトラカルボン酸を含むテトラカルボン酸成分を用いることが好ましい。
【0030】
具体的には、特定部分構造(A)を有するジアミンと特定部分構造(B)を有するテトラカルボン酸を用いる場合と、特定部分構造(B)を有するジアミンと特定部分構造(A)を有するテトラカルボン酸を用いる場合が挙げられる。
特定部分構造(A)を有するジアミン(特定ジアミン(A)ともいう。)と特定部分構造(B)を有するテトラカルボン酸(特定テトラカルボン酸(B)ともいう。)を用いる場合、それぞれ、下記式[1A]のジアミン及び式[2B]のテトラカルボン酸を用いることが好ましい。
【0031】
式[1A]において、X1及びX3はそれぞれ独立して、単結合、-O-、-CO-、-COO-、-OCO-、-CONH-、-NHCO-又は-NH-から選ばれる少なくとも1種を示す。なかでも、単結合、-O-、-CO-、-COO-又は-OCO-が好ましい。
X2は前記式[A1]~式[A4]から選ばれる少なくとも1種を示す。なかでも、液晶表示素子の光学特性の点から、式[A1]又は式[A4]が好ましい。また、式[A1]~式[A4]中のa1~a4、R1、R2及びRA~RDの詳細及び好ましいものは、前記の通りである。
【0032】
式[2B]において、Y1及びY5はそれぞれ独立して、芳香環、脂環式基又は複素環基から選ばれる少なくとも1種を示す。なかでも、芳香環又は脂環式基が好ましい。
Y2及びY4はそれぞれ独立して、単結合、-O-、-CO-、-COO-、-OCO-、-CONH-、-NHCO-又は-NH-から選ばれる少なくとも1種を示す。なかでも、単結合、-O-、-CO-、-COO-又は-OCO-が好ましい。
Y3は前記式[B1]~式[B7]から選ばれる少なくとも1種を示す。なかでも、液晶表示素子の光学特性の点から、式[B1]、式[B4]又は式[B7]が好ましい。また、式[B1]~式[B7]中のSA~SD及びn1~n4の詳細及び好ましいものは、前記の通りである。
n5及びn6はそれぞれ独立して、0又は1の整数を示す。
また、n5及びn6が0の整数の場合、式[B1]~式[B7]の構造はテトラカルボン酸の結合手と直接結合しているものとする。
【0033】
【0034】
特定ジアミン(A)と特定テトラカルボン酸(B)を用いた場合のそれぞれの使用割合は、次のものが好ましい。具体的には、特定ジアミン(A)の使用割合は、液晶表示素子の光学特性の点から、ジアミン成分全体に対し30~100モル%が好ましく、50~100モル%がより好ましい。特定テトラカルボン酸(B)の使用割合は、液晶表示素子の光学特性の点から、テトラカルボン酸成分全体に対し、30~100モル%が好ましく、50~100モル%がより好ましい。また、特定ジアミン(A)及び特定テトラカルボン酸(B)は、それぞれ、各特性に応じて、1種類又は2種類以上を混合して使用できる。
【0035】
特定部分構造(B)を有するジアミン(特定ジアミン(B)ともいう。)と特定部分構造(A)を有するテトラカルボン酸(特定テトラカルボン酸(A)ともいう。)を用いる場合、それぞれ、下記式[1B]のジアミン及び式[2A]のテトラカルボン酸を用いることが好ましい。
式[1B]において、X4は前記式[B1]~式[B7]から選ばれる少なくとも1種を示す。なかでも、光学特性の点から、式[B1]、式[B4]又は式[B7]が好ましい。また、式[B1]~式[B7]中のSA~SD及びn1~n4の詳細及び好ましいものは、前記の通りである。
【0036】
また、式[2A]において、Y6及びY10はそれぞれ独立して、芳香環、脂環式基又は複素環基から選ばれる少なくとも1種を示す。なかでも、芳香環又は脂環式基が好ましい。
Y7及びY9はそれぞれ独立して、単結合、-O-、-CO-、-COO-、-OCO-、-CONH-、-NHCO-又は-NH-から選ばれる少なくとも1種を示す。なかでも、単結合、-O-、-CO-、-COO-又は-OCO-が好ましい。
Y8は前記式[A1]~式[A4]から選ばれる少なくとも1種を示す。なかでも、液晶表示素子の光学特性の点から、式[A4]が好ましい。また、式[A1]~式[A4]中のa1~a4、R1、R2及びRA~RDの詳細及び好ましいものは、前記の通りである。
n7及びn8はそれぞれ独立して、0又は1の整数を示す。
【0037】
【0038】
特定ジアミン(B)と特定テトラカルボン酸(A)を用いた場合のそれぞれの使用割合は、次のものが好ましい。具体的には、特定ジアミン(B)の使用割合は、液晶表示素子の光学特性の点から、ジアミン成分全体に対し30~100モル%が好ましく、50~100モル%がより好ましい。特定テトラカルボン酸(A)の使用割合は、液晶表示素子の光学特性の点から、テトラカルボン酸成分全体に対し、30~100モル%が好ましく、50~100モル%がより好ましい。また、特定ジアミン(B)及び特定テトラカルボン酸(A)は、それぞれ、各特性に応じて、1種類又は2種類以上を混合して使用できる。
【0039】
ジアミン成分には、本発明の効果を損なわない限りにおいて、特定ジアミン(A)及び特定ジアミン(B)以外のジアミン(その他ジアミンともいう。)を用いることもできる。具体的には、国際公開公報WO2016/076412(2016.5.19公開)の34頁~38頁に記載される式[3a-1]~式[3a-5]のジアミン化合物、同公報の39頁~42頁に記載されるその他ジアミン化合物、及び同公報の42頁~44頁に記載される式[DA1]~[DA15]のジアミン化合物が挙げられる。その他ジアミンは、各特性に応じて、1種又は2種以上を混合して使用できる。
【0040】
特定テトラカルボン酸(A)及び特定テトラカルボン酸(B)は、前記式[2A]及び式[2B]のテトラカルボン酸二無水物や、そのテトラカルボン酸誘導体であるテトラカルボン酸、テトラカルボン酸ジハライド化合物、テトラカルボン酸ジアルキルエステル化合物又はテトラカルボン酸ジアルキルエステルジハライド化合物を用いることができる。
テトラカルボン酸成分には、特定テトラカルボン酸(A)及び特定テトラカルボン酸(B)以外のその他のテトラカルボン酸を用いることができる。その他のテトラカルボン酸としては、次に示すテトラカルボン酸化合物、テトラカルボン酸二無水物、ジカルボン酸ジハライド化合物、ジカルボン酸ジアルキルエステル化合物又はジアルキルエステルジハライド化合物が挙げられる。具体的には、国際公開公報WO2015/012368(2015.1.29公開)の33頁~34頁に記載される式[3]のテトラカルボン酸が挙げられる。
【0041】
ポリイミド系重合体を合成する方法は、特に限定されない。通常、ジアミン成分とテトラカルボン酸成分とを反応させて得られる。具体的には、国際公開公報WO2016/076412(2016.5.19公開)の46頁~50頁に記載される方法が挙げられる。
【0042】
ジアミン成分とテトラカルボン酸成分との反応は、通常、ジアミン成分とテトラカルボン酸成分とを含む溶媒中で行う。その際に用いる溶媒としては、生成したポリイミド前駆体が溶解するものであれば特に限定されない。
具体的には、N-メチル-2-ピロリドン、N-エチル-2-ピロリドン、γ-ブチロラクトン、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド又は1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノンなどが挙げられる。また、ポリイミド前駆体の溶媒溶解性が高い場合は、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、4-ヒドロキシ-4-メチル-2-ペンタノン又は下記式[D1]~式[D3]の溶媒を用いることができる。なお、式[D1]~式[D3]において、D1及びD2は炭素数1~3のアルキル基を示す。D3は炭素数1~4のアルキル基を示す。
【0043】
【0044】
また、これらは単独で使用しても、混合して使用してもよい。更に、ポリイミド前駆体を溶解させない溶媒であっても、生成したポリイミド前駆体が析出しない範囲で、前記の溶媒に混合して使用してもよい。また、有機溶媒中の水分は重合反応を阻害し、更には、生成したポリイミド前駆体を加水分解させる原因となるので、有機溶媒は脱水乾燥させたものを用いることが好ましい。
【0045】
ポリイミド前駆体の重合反応においては、ジアミン成分の合計モル数を1.0にした際のテトラカルボン酸成分の合計モル数は、0.8~1.2であることが好ましい。
ポリイミドはポリイミド前駆体を閉環させて得られるポリイミドであり、このポリイミドにおいては、アミド酸基の閉環率(イミド化率ともいう。)は必ずしも100%である必要はなく、用途や目的に応じて任意に調整できる。なかでも、ポリイミド系重合体の溶媒への溶解性の点から、30~80%が好ましい。より好ましいのは、40~70%である。
【0046】
ポリイミド系重合体の分子量は、そこから得られる液晶配向膜の強度、液晶配向膜形成時の作業性及び塗膜性を考慮した場合、GPC(Gel Permeation Chromatography)法で測定した重量平均分子量で5,000~1,000,000とするのが好ましく、より好ましいのは、10,000~150,000である。
【0047】
<液晶表示素子の製造方法>
本発明の液晶表示素子は、例えば次の製造方法により製造することができる。
即ち、
(I)第1の基板を準備する工程;
(II)液晶性高分子を有する液晶配向処理剤を準備する工程;
(III)前記液晶配向処理剤を前記第1の基板の片面に塗布する工程;
(IV)得られた塗布面を加温して、液晶配向膜を前記第1の基板上に形成する工程;
(V)第2の基板を準備する工程;
(VI)(IV)工程で得られた第1の基板と第2の基板とを、前記液晶配向膜が前記第2の基板と対向するように配置させ且つ前記第1の基板と前記第2の基板とが離間するように配置させる工程;及び
(VII)前記離間した空間に液晶を充填して液晶層とする工程;
を有する、液晶表示素子の製造方法、により製造することができる。
【0048】
<<工程(I)>>
工程(I)は、第1の基板を準備する工程である。
第1の基板として、上述の基板と同じ定義を有し、例えば透明な基板であればガラス基板又はプラスチック基板などを用いることをできる。
【0049】
<<工程(II)>>
工程(II)は、液晶性高分子を有する液晶配向処理剤を準備する工程である。
液晶性高分子は、上述と同じ定義を有する。
液晶配向処理剤は、液晶配向膜を形成するための溶液であり、該液晶性高分子及び所定の溶媒を含有する。なお、液晶性高分子として、1種又は2種以上を用いることができる。
【0050】
液晶配向処理剤中の溶媒の含有量は、液晶配向処理剤の塗布方法や目的とする膜厚を得るという観点から、適宜選択できる。なかでも、塗布により均一な液晶配向膜を形成するという観点から、液晶配向処理剤中の溶媒の含有量は50~99.9質量%が好ましい。なかでも、60~99質量%が好ましい。より好ましいのは、65~99質量%である。
【0051】
液晶配向処理剤に用いる溶媒は、液晶性高分子を溶解させる溶媒であれば特に限定されない。なかでも、液晶性高分子が、ポリイミド前駆体、ポリイミド、ポリアミド、ポリエステル、ポリエーテル、ポリウレタン、ポリ(エステルアミド)、ポリ(エステル-イミド)、ポリ(エステル-無水物)又はポリ(エステル-カーボナート)の場合、或いは、アクリルポリマー、メタクリルポリマー、ノボラック樹脂、エポキシ樹脂、ポリヒドロキシスチレン、セルロース又はポリシロキサンの溶媒への溶解性が低い場合は、下記の溶媒(溶媒A類ともいう。)を用いることが好ましい。
【0052】
例えば、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチル-2-ピロリドン、N-エチル-2-ピロリドン、ジメチルスルホキシド、γ-ブチロラクトン、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、4-ヒドロキシ-4-メチル-2-ペンタノンなどである。なかでも、N-メチル-2-ピロリドン、N-エチル-2-ピロリドン又はγ-ブチロラクトンが好ましい。また、これらは単独で使用しても、混合して使用してもよい。
【0053】
液晶性高分子が、アクリルポリマー、メタクリルポリマー、ノボラック樹脂、エポキシ樹脂、ポリヒドロキシスチレン、セルロース又はポリシロキサンである場合、更には、液晶性高分子が、ポリイミド前駆体、ポリイミド、ポリアミド、ポリエステル、ポリエーテル、ポリウレタン、ポリ(エステルアミド)、ポリ(エステル-イミド)、ポリ(エステル-無水物)又はポリ(エステル-カーボナート)であり、これらの溶媒への溶解性が高い場合は、下記の溶媒(溶媒B類ともいう。)を用いることができる。
【0054】
溶媒B類の具体例は、国際公開公報WO2014/171493(2014.10.23公開)の58頁~60頁に記載される溶媒B類が挙げられる。なかでも、1-ヘキサノール、シクロヘキサノール、1,2-エタンジオール、1,2-プロパンジオール、プロピレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、シクロヘキサノン、シクロペンタノン又は前記式[D1]~式[D3]が好ましい。
【0055】
また、これら溶媒B類を用いる際、液晶配向処理剤の塗布性を改善する目的に、前記溶媒A類のN-メチル-2-ピロリドン、N-エチル-2-ピロリドン又はγ-ブチロラクトンを併用して用いることが好ましい。
これら溶媒B類は、液晶配向処理剤を塗布する際の液晶配向膜の塗膜性や表面平滑性を高めることができるため、液晶性高分子にポリイミド前駆体、ポリイミド、ポリアミド、ポリエステル、ポリエーテル、ポリウレタン、ポリ(エステルアミド)、ポリ(エステル-イミド)、ポリ(エステル-無水物)又はポリ(エステル-カーボナート)を用いた場合、前記溶媒A類と併用して用いることが好ましい。その際、溶媒B類は、液晶配向処理剤に含まれる溶媒全体の1~99質量%が好ましい。なかでも、10~99質量%が好ましい。より好ましいのは、20~95質量%である。
【0056】
液晶配向処理剤には、液晶配向膜の膜強度を高めるために、エポキシ基、イソシアネート基、オキセタン基、シクロカーボネート基、ヒドロキシ基、ヒドロキシアルキル基又は低級アルコキシアルキル基を有する化合物を導入することもできる。その際、これらの基は、化合物中に2個以上有する必要がある。
【0057】
エポキシ基又はイソシアネート基を有する架橋性化合物の具体例は、国際公開公報WO2014/171493(2014.10.23公開)の63頁~64頁に記載されるエポキシ基又はイソシアネート基を有する架橋性化合物が挙げられる。
オキセタン基を有する架橋性化合物の具体例は、国際公開公報WO2011/132751(2011.10.27公開)の58頁~59頁に掲載される式[4a]~式[4k]の架橋性化合物が挙げられる。
【0058】
シクロカーボネート基を有する架橋性化合物の具体例は、国際公開公報WO2012/014898(2012.2.2公開)の76頁~82頁に掲載される式[5-1]~式[5-42]の架橋性化合物が挙げられる。
ヒドロキシル基、ヒドロキシアルキル基及び低級アルコキシアルキル基を有する架橋性化合物の具体例は、国際公開公報2014/171493(2014.10.23公開)の65頁~66頁に記載されるメラミン誘導体又はベンゾグアナミン誘導体、及び国際公開公報WO2011/132751(2011.10.27公開)の62頁~66頁に掲載される、式[6-1]~式[6-48]の架橋性化合物が挙げられる。
【0059】
液晶配向処理剤における架橋性化合物の含有量は、すべての重合体成分100質量部に対して、0.1~100質量部が好ましい。架橋反応が進行し、目的の効果を発現させるためには、すべての重合体成分100質量部に対して0.1~50質量部がより好ましく、最も好ましいのは、1~30質量部である。
【0060】
液晶配向処理剤には、本発明の効果を損なわない限り、液晶配向処理剤を塗布した際の液晶配向膜の膜厚の均一性や表面平滑性を向上させる化合物を用いることができる。更に、液晶配向膜と電極基板との密着性を向上させる化合物などを用いることもできる。
【0061】
液晶配向膜の膜厚の均一性や表面平滑性を向上させる化合物としては、フッ素系界面活性剤、シリコーン系界面活性剤、又はノ二オン系界面活性剤などが挙げられる。具体的には、国際公開公報WO2014/171493(2014.10.23公開)の67頁に記載される界面活性剤が挙げられる。また、その使用割合は、液晶配向処理剤に含有されるすべての重合体成分100質量部に対して、0.01~2質量部が好ましい。より好ましいのは、0.01~1質量部である。
【0062】
液晶配向膜と電極基板との密着性を向上させる化合物の具体例は、国際公開公報WO2014/171493(2014.10.23公開)の67頁~69頁に記載される化合物が挙げられる。また、その使用割合は、液晶配向処理剤に含有されるすべての重合体成分100質量部に対して、0.1~30質量部が好ましい。より好ましいのは、1~20質量部である。
液晶配向処理剤には、前記以外の化合物の他に、液晶配向膜の誘電率や導電性などの電気特性を変化させる目的の誘電体や導電物質を添加してもよい。
【0063】
<<工程(III)>>
工程(III)は、液晶配向処理剤を第1の基板の片面に塗布する工程である。
液晶配向処理剤の塗布方法は、特に限定されないが、工業的には、スクリーン印刷、オフセット印刷、フレキソ印刷、インクジェット法、ディップ法、ロールコータ法、スリットコータ法、スピンナー法、スプレー法などがあり、基板の種類や目的とする膜の膜厚に応じて、適宜選択することができる。
【0064】
<<工程(IV)>>
工程(IV)は、得られた塗布面を加温して、液晶配向膜を前記第1の基板上に形成する工程である。
加温、即ち加熱処理は、用いる基板の種類、用いる液晶配向処理剤、特に液晶配向処理剤に用いられる溶媒、液晶配向膜の液晶性の発現の温度領域などに依存するが、ホットプレート、熱循環型オーブン、IR(赤外線)型オーブンなどによる加熱処理することができる。また、その温度は、80~350℃、好ましくは100~300℃、より好ましくは120~250℃であるがのがよい。
焼成後の液晶配向膜の厚みは、5~500nm、好ましくは10~300nm、より好ましくは10~250nmであるのがよい。
【0065】
<<工程(V)>>
工程(V)は、第2の基板を準備する工程である。
第2の基板は、電極を備えていれば特に限定されず、第1の基板と同じであっても異なってもよい。なお、第2の基板は、第1の基板と同様に、液晶配向膜を備えるのが好ましい。
【0066】
<<工程(VI)>>
工程(VI)は、(IV)工程で得られた第1の基板と第2の基板とを、前記液晶配向膜が前記第2の基板と対向するように配置させ且つ前記第1の基板と前記第2の基板とが離間するように配置させる工程である。
ここで、第2の基板が液晶配向膜を備える場合、該液晶配向膜は、第1の基板と対向するように配置させるのがよい。
なお、この工程において、基板間の間隙(ギャップともいう。)を制御するために、スペーサーを導入することもできる。ギャップは、用いる基板の種類、用いる液晶配向処理剤などに依存するが、2.0~50μm、好ましくは2~25μm、より好ましくは2~20μmであるのがよい。
【0067】
<<工程(VII)>>
工程(VII)は、離間した空間に液晶を充填して液晶層とする工程である。
ここで、液晶及び液晶層は、上述と同じ定義を有する。
液晶の注入方法は、特に限定されないが、例えば、次の方法が挙げられる。即ち、基板にガラス基板を用いる場合、液晶配向膜が形成された一対の基板を用意し、片側の基板の4片を、一部分を除いてシール剤を塗布し、その後、液晶配向膜の面が内側になるようにして、もう片側の基板を貼り合わせた空セルを作製する。そして、シール剤が塗布されていない場所から液晶を減圧注入して、液晶注入セルを得る方法が挙げられる。更に、基板にプラスチック基板やフィルムを用いる場合には、液晶配向膜が形成された一対の基板を用意し、片側の基板の上にODF(One Drop Filling)法やインクジェット法などで、液晶を滴下し、その後、もう片側の基板を貼り合わせて、液晶注入セルを得る方法が挙げられる。
【0068】
液晶表示素子のギャップは、前記のスペーサーなどで制御できる。その方法は、前記の通りに、液晶中に目的とする大きさのスペーサーを導入する方法や、目的とする大きさのカラムスペーサーを有する基板を用いる方法などが挙げられる。また、基板にプラスチックやフィルムを用いて、基板の貼り合わせをラミネートで行う場合は、スペーサーを導入せずに、ギャップを制御できる。
【0069】
液晶を注入した液晶表示素子は、液晶の配向性を安定化させる目的で、加熱処理を行うことが好ましい。その際の温度は、40~150℃が好ましい。より好ましいのは、60~120℃である。
【0070】
本発明の液晶表示素子の製造方法は、上記工程(I)~(VII)以外の工程を含んでもよい。例えば、上述のように、工程(VII)後に、液晶の配向性を安定化させる目的で、加熱処理を行ってもよい。
【0071】
本発明の液晶表示素子は、例えば、表示を目的とする液晶ディスプレイ、更には、光の遮断と透過とを制御する調光窓や光シャッター素子などに応用することができるが、これらに限定されない。
【実施例】
【0072】
以下に実施例を挙げ、本発明をさらに詳しく説明するが、これらに限定されるものではない。
本実施例で用いる略語及び評価機器は下記の通りである。
【0073】
<液晶>
L1:ZLI-2293(Tni:85℃,Δε:10.0,Δn:0.132)(メルク社製)
L2:(Tni:92℃,Δε:12.2,Δn:0.220)の物性値を有する液晶
L3:(Tni:102℃,Δε:7.4,Δn:0.236)の物性値を有する液晶
L4:(Tni:90℃,Δε:7.4,Δn:0.299)の物性値を有する液晶
<液晶配向処理剤に用いる化合物類>
<特定ジアミン(A)>
【0074】
【0075】
<特定ジアミン(B)>
【0076】
【0077】
<特定テトラカルボン酸(A)>
【0078】
【0079】
<特定テトラカルボン酸(B)>
【0080】
【0081】
<その他テトラカルボン酸>
【0082】
【0083】
<溶媒>
NMP:N-メチル-2-ピロリドン
BCS:エチレングリコールモノブチルエーテル
【0084】
「評価機器」
偏光顕微鏡:ECLIPSE LV100NPOL(ニコン社製)
顕微鏡用冷却加熱ステージ:1084L(ジャパンハイテック社製)
示差走査熱量計(DSC):DSClSTARe Sysytem(METTLER TOLEDO社製)
ヘイズメーター:HZ-V3(スガ試験機社製)
粘度計:E型粘度計TVE-22H,コーンロータTE-1(1°34’,R24)(東機産業社製)
【0085】
「液晶配向処理剤の製造」
<合成例1>
1A-1(4.44g,8.59mmol)をNMP(20.8g)で溶解させ、その溶液に、2B-1(2.50g,8.50mmol)を加えた。その後、NMP(6.95g)を加え、40℃で2時間反応させ、樹脂固形分濃度が20質量%のポリアミド酸溶液(A)を得た。このポリアミド酸の粘度は、380mPa・s(25℃)であった。
得られたポリアミド酸溶液(A)(5.00g)に、NMP(9.75g)及びBCS(3.45g)を加え、25℃で2時間撹拌して、液晶配向処理剤(1)を得た。この液晶配向処理剤には、濁りや析出などの異常は見られず、均一な溶液であった。
【0086】
<合成例2>
1A-2(4.74g,8.57mmol)をNMP(21.7g)で溶解させ、その溶液に、2B-1(2.50g,8.50mmol)を加えた。その後、NMP(7.25g)を加え、40℃で2時間反応させ、樹脂固形分濃度が20質量%のポリアミド酸溶液(B)を得た。このポリアミド酸の粘度は、375mPa・s(25℃)であった。
得られたポリアミド酸溶液(B)(5.00g)に、NMP(9.75g)及びBCS(3.45g)を加え、25℃で2時間撹拌して、液晶配向処理剤(2)を得た。この液晶配向処理剤には、濁りや析出などの異常は見られず、均一な溶液であった。
【0087】
<合成例3>
1A-3(3.44g,12.0mmol)をNMP(20.8g)で溶解させ、その溶液に、2B-1(3.50g,11.9mmol)を加えた。その後、NMP(6.95g)を加え、40℃で2時間反応させ、樹脂固形分濃度が20質量%のポリアミド酸溶液(C)を得た。このポリアミド酸の粘度は、450mPa・s(25℃)であった。
得られたポリアミド酸溶液(C)(5.00g)に、NMP(9.75g)及びBCS(3.45g)を加え、25℃で2時間撹拌して、液晶配向処理剤(3)を得た。この液晶配向処理剤には、濁りや析出などの異常は見られず、均一な溶液であった。
【0088】
<合成例4>
1B-1(2.38g,8.87mmol)をNMP(23.6g)で溶解させ、その溶液に、2A-1(5.50g,8.78mmol)を加えた。その後、NMP(7.88g)を加え、40℃で2時間反応させ、樹脂固形分濃度が20質量%のポリアミド酸溶液(D)を得た。このポリアミド酸の粘度は、360mPa・s(25℃)であった。
得られたポリアミド酸溶液(D)(5.00g)に、NMP(9.75g)及びBCS(3.45g)を加え、25℃で2時間撹拌して、液晶配向処理剤(4)を得た。この液晶配向処理剤には、濁りや析出などの異常は見られず、均一な溶液であった。
【0089】
<合成例5>
1A-3(4.13g,14.4mmol)をNMP(20.8g)で溶解させ、その溶液に、2-1(2.80g,14.3mmol)を加えた。その後、NMP(6.95g)を加え、25℃で4時間反応させ、樹脂固形分濃度が20質量%のポリアミド酸溶液(E)を得た。このポリアミド酸の粘度は、530mPa・s(25℃)であった。
得られたポリアミド酸溶液(E)(5.00g)に、NMP(9.75g)及びBCS(3.45g)を加え、25℃で2時間撹拌して、液晶配向処理剤(5)を得た。この液晶配向処理剤には、濁りや析出などの異常は見られず、均一な溶液であった。
【0090】
<合成例6>
1B-2(2.51g,23.2mmol)をNMP(21.0g)で溶解させ、その溶液に、2-1(4.50g,23.0mmol)を加えた。その後、NMP(7.00g)を加え、25℃で4時間反応させ、樹脂固形分濃度が20質量%のポリアミド酸溶液(F)を得た。このポリアミド酸の粘度は、720mPa・s(25℃)であった。
得られたポリアミド酸溶液(F)(5.00g)に、NMP(9.75g)及びBCS(3.45g)を加え、25℃で2時間撹拌して、液晶配向処理剤(6)を得た。この液晶配向処理剤には、濁りや析出などの異常は見られず、均一な溶液であった。
【0091】
<合成例7>
1A-3(2.31g,8.07mmol)をNMP(21.9g)で溶解させ、その溶液に、2A-1(5.00g,7.98mmol)を加えた。その後、NMP(7.31g)を加え、40℃で2時間反応させ、樹脂固形分濃度が20質量%のポリアミド酸溶液(G)を得た。このポリアミド酸の粘度は、490mPa・s(25℃)であった。
得られたポリアミド酸溶液(G)(5.00g)に、NMP(9.75g)及びBCS(3.45g)を加え、25℃で2時間撹拌して、液晶配向処理剤(7)を得た。この液晶配向処理剤には、濁りや析出などの異常は見られず、均一な溶液であった。
【0092】
<合成例8>
1B-2(1.86g,17.2mmol)をNMP(20.6g)で溶解させ、その溶液に、2B-1(5.00g,17.0mmol)を加えた。その後、NMP(6.86g)を加え、25℃で4時間反応させ、樹脂固形分濃度が20質量%のポリアミド酸溶液(H)を得た。このポリアミド酸の粘度は、720mPa・s(25℃)であった。
得られたポリアミド酸溶液(H)(5.00g)に、NMP(9.75g)及びBCS(3.45g)を加え、25℃で2時間撹拌して、液晶配向処理剤(8)を得た。この液晶配向処理剤には、濁りや析出などの異常は見られず、均一な溶液であった。
合成例で得られた液晶配向処理剤を表1に示す。
【0093】
【0094】
「液晶配向膜の液晶性の確認」
<実施例1~3及び比較例1~4>
合成例の手法で得られた液晶配向処理剤を、細孔径1μmのメンブランフィルタで加圧濾過した。得られた溶液を、純水及びIPA(イソプロピルアルコール)で洗浄したガラス基板(縦:30mm、横:40mm、厚さ:0.7mm)にスピンコートし、ホットプレート上にて80℃で120秒、IR(赤外線)型熱循環型クリーンオーブンにて150℃で30分間加熱処理をして、膜厚が100nmの液晶配向膜付きのガラス基板を得た。
得られた液晶配向膜付きのガラス基板を、前記の顕微鏡用冷却加熱ステージ付きの偏光顕微鏡を用いて液晶性を確認した。具体的には、偏光顕微鏡観察により、
図1に示すような液晶相に由来する光学組織が見られたものを液晶性有りとし、見られなかったものを液晶性無しとした。
偏光顕微鏡観察の結果を、表2にまとめて示す。
【0095】
次に、前記で得られた液晶配向膜付きのガラス基板から液晶配向膜を採取し、前記の示差走査熱量計(DSC)を用いて、吸熱ピーク(液晶相→液晶相転位を示す。)(T1ともいう。)及び、吸熱ピーク(液晶相→等方相転位を示す。)(T2ともいう。)を得た。その際、昇温/降温速度は、10℃/分とし、T1及びT2は、2回目のスキャンから得た。
T1及びT2の結果を、表2にまとめて示す。なお、比較例1~4では、T1及びT2は観察されなかった。
【0096】
【0097】
「液晶セル(液晶表示素子)の作製及び光学特性の評価」
<実施例4~10及び比較例5~8>
合成例の手法で得られた液晶配向処理剤を、細孔径1μmのメンブランフィルタで加圧濾過した。得られた溶液を、純水及びIPA(イソプロピルアルコール)で洗浄したITO電極付きガラス基板(縦:40mm、横:30mm、厚さ:0.7mm)のITO面上にスピンコートし、ホットプレート上にて80℃で90秒、IR(赤外線)型熱循環型クリーンオーブンにて加熱処理をして、膜厚が100nmの液晶配向膜付きのガラス基板を得た。なお、実施例4~実施例7では、IR型熱循環型クリーンオーブンでの加熱処理は、180℃で30分行い、実施例8は、200℃で30分行い、実施例9、実施例10及び比較例5~8は、230℃で30分行った。
【0098】
この液晶配向膜付きのITO基板を2枚用意し、液晶配向膜面を内側に、液晶セルのギャップを制御するためのビーズスペーサー(6.0μm)を挟み、シール剤(XN-1500T:協立化学産業社製)で周囲を接着して空セルを作製した。
この空セルに減圧注入法にて前記の液晶L1~L4を注入し、注入口を封止して液晶セルを作製した。その後、120℃で30分間加熱処理を行い、23℃で15時間放置して、液晶セルを得た。
得られた液晶セルを、前記のヘイズメーターを用いて、電圧無印加状態(0V)及び電圧印加状態(交流駆動:20V)のHaze(曇り度)を測定した。
その際、Hazeの測定は、JIS K 7136に準拠し、電圧無印加状態のHazeが高いほど散乱特性に優れ、電圧印加状態でのHazeが低いほど透明性に優れるとした。
Hazeの測定結果を、表3にまとめて示す。
【0099】
【0100】
上記の結果からわかるように、特定ジアミン及び特定テトラカルボン酸を用いた特定ポリイミド系重合体を含む液晶配向処理剤を用いた実施例は、それらを含まない、或いはどちらか一方のみを含む液晶配向処理剤の比較例に比べて、液晶配向膜が液晶性を発現し、良好な光学特性、即ち、電圧無印加状態でのHazeが高く、電圧印加状態でのHazeが低くなった。具体的には、液晶性の発現は、実施例1~3と比較例1~4との比較であり、光学特性は、実施例4~10と比較例5~8との比較である。
また、液晶のΔnが大きくなるほど、電圧無印加状態でのHazeが高くなった。具体的には、実施例4~実施例7の比較である。
【産業上の利用可能性】
【0101】
液晶性を発現する液晶配向膜を用いることで、液晶組成物中に重合性化合物を用いることなく、且つ、紫外線照射工程が不要な透過散乱型の液晶表示素子が得られる。そのため、本液晶表示素子は、表示を目的とする液晶ディスプレイ、更には、光の遮断と透過とを制御する調光窓や光シャッター素子などに用いることができ、この素子の基板には、プラスチック基板を用いることができる。また、本素子は、LCD(Liquid Crystal Display)やOLED(Organic Light-emitting Diode)ディスプレイなどのディスプレイ装置の導光板やこれらディスプレイを用いた透明ディスプレイの裏板に用いることもできる。