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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-27
(45)【発行日】2024-06-04
(54)【発明の名称】樹脂組成物、樹脂膜及び液晶表示素子
(51)【国際特許分類】
   G02F 1/1334 20060101AFI20240528BHJP
   G02F 1/13 20060101ALI20240528BHJP
   C08G 73/10 20060101ALI20240528BHJP
   C08F 290/14 20060101ALI20240528BHJP
   C08G 77/04 20060101ALI20240528BHJP
   G02F 1/1337 20060101ALN20240528BHJP
【FI】
G02F1/1334
G02F1/13 500
C08G73/10
C08F290/14
C08G77/04
G02F1/1337 525
G02F1/1337 530
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2021505015
(86)(22)【出願日】2020-03-06
(86)【国際出願番号】 JP2020009623
(87)【国際公開番号】W WO2020184420
(87)【国際公開日】2020-09-17
【審査請求日】2023-01-12
(31)【優先権主張番号】P 2019042708
(32)【優先日】2019-03-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003986
【氏名又は名称】日産化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000095
【氏名又は名称】弁理士法人T.S.パートナーズ
(74)【代理人】
【識別番号】100082887
【弁理士】
【氏名又は名称】小川 利春
(74)【代理人】
【識別番号】100181331
【弁理士】
【氏名又は名称】金 鎭文
(74)【代理人】
【識別番号】100183597
【弁理士】
【氏名又は名称】比企野 健
(74)【代理人】
【識別番号】100161997
【弁理士】
【氏名又は名称】横井 大一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100090918
【弁理士】
【氏名又は名称】泉名 謙治
(72)【発明者】
【氏名】保坂 和義
(72)【発明者】
【氏名】片山 雅章
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 加名子
(72)【発明者】
【氏名】高橋 真文
【審査官】岩村 貴
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/022202(WO,A1)
【文献】特開2007-065286(JP,A)
【文献】国際公開第2017/146217(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02F 1/1334
G02F 1/13,1/1337
C08F 290/14
C08G 73/10
C08G 77/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電極を備えた一対の基板の間に配置した液晶及び重合性化合物を含む液晶組成物に対し、活性エネルギー線及び熱の少なくとも一方を与えて硬化させた液晶層を有し、且つ、前記一対の基板の前記液晶層と密着する面の少なくとも一方に樹脂膜を備え、更に、電圧無印加時に散乱状態となり、電圧印加時に透明状態となる透過散乱型の液晶表示素子であって、
前記樹脂膜が、下記式[1-1]及び式[1-2]から選ばれる少なくとも1種の構造を有する重合体を含む樹脂組成物を用いて得られ
前記重合体が、アクリルポリマー、メタクリルポリマー、ノボラック樹脂、ポリヒドロキシスチレン、ポリイミド前駆体、ポリイミド、ポリアミド、ポリエステル、セルロース及びポリシロキサンから選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする液晶表示素子。
【化1】
は、単結合、-(CH-(aは1~15の整数である)、-O-、-CHO-、-CONH-、-NHCO-、-CON(CH)-、-N(CH)CO-、-COO-又は-OCO-から選ばれる1種を示す。Xは、単結合又は-(CH-(bは1~15の整数である)を示す。Xは、単結合、-(CH-(cは1~15の整数である)、-O-、-CHO-、-COO-又は-OCO-から選ばれる1種を示す。Xは、ベンゼン環、シクロヘキサン環及び複素環から選ばれる2価の環状基、又はステロイド骨格を有する炭素数17~51の2価の有機基を示し、前記環状基上の任意の水素原子は、炭素数1~3のアルキル基、炭素数1~3のアルコキシル基、炭素数1~3のフッ素含有アルキル基、炭素数1~3のフッ素含有アルコキシル基又はフッ素原子で置換されていても良い。Xは、ベンゼン環、シクロヘキサン環及び複素環から選ばれる環状基を示し、これらの環状基上の任意の水素原子が、炭素数1~3のアルキル基、炭素数1~3のアルコキシル基、炭素数1~3のフッ素含有アルキル基、炭素数1~3のフッ素含有アルコキシル基又はフッ素原子で置換されていても良い。Xnは、0~4の整数を示す。Xは、炭素数1~18のアルキル基を示す。
【化2】
は、単結合、-O-、-CHO-、-CONH-、-NHCO-、-CON(CH)-、-N(CH)CO-、-COO-又は-OCO-を示す。Xは、炭素数8~22のアルキル基を示す。
【請求項2】
前記重合体が、下記式[2-a]~式[2-i]から選ばれる少なくとも1種の構造をさらに有する請求項1に記載の液晶表示素子。
【化3】
は、水素原子又はベンゼン環を示す。
【請求項3】
前記重合体が、ジアミン成分とテトラカルボン酸成分との反応で得られるポリイミド前駆体又は該ポリイミド前駆体をイミド化したポリイミドである請求項1又は請求項2に記載の液晶表示素子。
【請求項4】
前記ジアミン成分が、前記式[1-1]及び式[1-2]から選ばれる少なくとも1種の構造を有するジアミンを含む請求項に記載の液晶表示素子。
【請求項5】
前記式[1-1]及び式[1-2]から選ばれる少なくとも1種の構造を有するジアミンが、下記式[1a]である請求項に記載の液晶表示素子。
【化4】
Xは、前記式[1-1]又は式[1-2]を示す。Xmは、1~4の整数を示す。
【請求項6】
前記ジアミン成分が、下記式[2]の構造を有するジアミンを含む請求項~請求項のいずれか一項に記載の液晶表示素子。
【化5】
は、単結合、-O-、-NH-、-N(CH)-、-CHO-、-CONH-、-NHCO-、-CON(CH)-、-N(CH)CO-、-COO-又は-OCO-を示す。Yは、単結合、炭素数1~18のアルキレン基、又はベンゼン環、シクロヘキサン環及び複素環から選ばれる環状基を有する炭素数6~24の有機基を示し、これら環状基上の任意の水素原子は、炭素数1~3のアルキル基、炭素数1~3のアルコキシル基、炭素数1~3のフッ素含有アルキル基、炭素数1~3のフッ素含有アルコキシル基又はフッ素原子で置換されていても良い。Yは、単結合、-O-、-NH-、-N(CH)-、-CHO-、-CONH-、-NHCO-、-CON(CH)-、-N(CH)CO-、-COO-及び-OCO-から選ばれる1種を示す。Yは、前記式[2-a]~式[2-i]から選ばれる1種の構造を示す。Ynは、1~4の整数を示す。
【請求項7】
前記式[2]の構造を有するジアミンが、下記式[2a]である請求項に記載の液晶表示素子。
【化6】
Yは、前記式[2]の構造を示す。Ymは、1~4の整数を示す。
【請求項8】
前記テトラカルボン酸成分が、下記式[3]のテトラカルボン酸二無水物を含む請求項~請求項のいずれか一項に記載の液晶表示素子。
【化7】
Zは、下記式[3a]~式[3l]のいずれかを示す。
【化8】
~Zはそれぞれ、水素原子、メチル基、塩素原子又はベンゼン環を示す。Z及びZはそれぞれ、水素原子又はメチル基を示す。
【請求項9】
前記重合体が、下記式[A1]のアルコキシシランを重縮合させて得られるポリシロキサン、又は、該式[A1]のアルコキシシランと、下記式[A2]及び/又は式[A3]のアルコキシシランとを重縮合させて得られるポリシロキサンを含む請求項1又は請求項2に記載の液晶表示素子。
【化9】
は、前記式[1-1]又は式[1-2]を示す。Aは、水素原子又は炭素数1~5のアルキル基を示す。Aは、炭素数1~5のアルキル基を示す。mは、1又は2の整数を示す。nは、0~2の整数を示す。pは、0~3の整数を示す。ただし、m+n+pは、4である。
【化10】
は、ビニル基、エポキシ基、アミノ基、メルカプト基、イソシアネート基、メタクリル基、アクリル基、ウレイド基及びシンナモイル基から選ばれる少なくとも1種を有する炭素数2~12の有機基を示す。Bは、水素原子又は炭素数1~5のアルキル基を示す。Bは、炭素数1~5のアルキル基を示す。mは、1又は2の整数を示す。nは、0~2の整数を示す。pは、0~3の整数を示す。ただし、m+n+pは、4である。
【化11】
は水素原子又は炭素数1~5のアルキル基を示す。Dは炭素数1~5のアルキル基を示す。nは0~3の整数を示す。
【請求項10】
前記液晶組成物が、下記式[5a]の化合物を含む請求項1~請求項のいずれか一項に記載の液晶表示素子。
【化12】
は、下記式[5-a]~式[5-j]のいずれかを示す。Sは、単結合、-O-、-NH-、-N(CH)-、-CHO-、-CONH-、-NHCO-、-CON(CH)-、-N(CH)CO-、-COO-又は-OCO-を示す。Sは、単結合又は-(CH-(aは1~15の整数である)を示す。Sは、単結合、-O-、-OCH-、-COO-又は-OCO-を示す。Sは、ベンゼン環、シクロヘキサン環及び複素環から選ばれる2価の環状基、又はステロイド骨格を有する炭素数17~51の2価の有機基を示し、前記環状基上の任意の水素原子は、炭素数1~3のアルキル基、炭素数1~3のアルコキシ基、炭素数1~3のフッ素含有アルキル基、炭素数1~3のフッ素含有アルコキシ基又はフッ素原子で置換されていても良い。Sは、単結合、-O-、-CH-、-OCH-、-CHO-、-COO-又は-OCO-を示す。Sは、ベンゼン環、シクロヘキサン環及び複素環から選ばれる環状基を示し、これらの環状基上の任意の水素原子が、炭素数1~3のアルキル基、炭素数1~3のアルコキシ基、炭素数1~3のフッ素含有アルキル基、炭素数1~3のフッ素含有アルコキシ基又はフッ素原子で置換されていても良い。Sは、炭素数1~18のアルキル基、炭素数2~18のアルケニル基、炭素数1~18のフッ素含有アルキル基、炭素数1~18のアルコキシ基又は炭素数1~18のフッ素含有アルコキシ基を示す。Smは、0~4の整数を示す。
【化13】
は、水素原子又はベンゼン環を示す。
【請求項11】
前記式[5a]の化合物が、下記式[5a-1]~式[5a-11]のいずれかである請求項10に記載の液晶表示素子。
【化14】
はそれぞれ、-O-又は-COO-を示す。Sはそれぞれ、炭素数1~12のアルキル基を示す。p1はそれぞれ、1~10の整数を示す。p2はそれぞれ、1又は2の整数を示す。
【化15】
はそれぞれ、単結合、-COO-又は-OCO-を示す。Sはそれぞれ、炭素数1~12のアルキル基又はアルコキシ基を示す。p3はそれぞれ、1~10の整数を示す。p4はそれぞれ、1又は2の整数を示す。
【化16】
はそれぞれ、-O-又は-COO-を示す。Sはそれぞれ、ステロイド骨格を有する炭素数17~51の2価の有機基を示す。Sはそれぞれ、炭素数1~12のアルキル基又は炭素数2~18のアルケニル基を示す。p5はそれぞれ、1~10の整数を示す。
【請求項12】
前記樹脂組成物が、エポキシ基、イソシアネート基、オキセタン基、シクロカーボネート基、ヒドロキシ基、ヒドロキシアルキル基及び低級アルコキシアルキル基から選ばれる少なくとも1種を有する架橋性化合物をさらに含む、請求項1~請求項11のいずれか一項に記載の液晶表示素子。
【請求項13】
前記液晶表示素子の基板が、ガラス基板又はプラスチック基板である請求項1~請求項12のいずれか一項に記載の液晶表示素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電圧無印加時に散乱状態となり、電圧印加時に透過状態となる透過散乱型の液晶表示素子に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示素子としては、TN(Twisted Nematic)モードが実用化されている。このモードでは、液晶の旋光特性を利用して、光のスイッチングを行うために、偏光板を用いる必要がある。偏光板を用いると光の利用効率が低くなる。
【0003】
偏光板を用いない液晶表示素子として、液晶の透過状態(透明状態ともいう。)と散乱状態との間でスイッチングを行う素子がある。一般的には、高分子分散型液晶(PDLC(Polymer Dispersed Liquid Crystal)ともいう。)や高分子ネットワーク型液晶(PNLC(Polymer Network Liquid Crystal)ともいう。)を用いたものが知られている。
これらの液晶表示素子では、電極を備えた一対の基板の間に、紫外線により重合する重合性化合物を含む液晶組成物を配置し、紫外線の照射により液晶組成物の硬化を行い、液晶と重合性化合物の硬化物(例えば、ポリマーネットワーク)との複合体を形成する。そして、この液晶表示素子では、電圧の印加により、液晶の散乱状態と透過状態が制御される。
PDLCやPNLCを用いた液晶表示素子には、電圧無印加時に、液晶がランダムな方向を向いているため、白濁(散乱)状態となり、電圧印加時には、液晶が電界方向に配列し、光を透過して透過状態となる液晶表示素子がある(ノーマル型素子ともいう。)。この場合、電圧無印加時の液晶はランダムであるため、液晶を一方方向に配向させる液晶配向膜や配向処理の必要がない。そのため、この液晶表示素子では、電極と液晶層(前記液晶と重合性化合物の硬化物との複合体)とが直に接した状態となる(特許文献1、2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】日本特許3552328号公報
【文献】日本特許4630954号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
液晶組成物中の重合性化合物は、ポリマーネットワークを形成させ、所望とする光学特性を得る役割と、液晶層と電極との密着性を高める役割がある。しかしながら、これらを実現するためには、密なポリマーネットワークを形成させる必要があるため、電圧印加に対する液晶分子の駆動が阻害される。そのため。本素子は、TNモードなどの液晶表示素子に比べて駆動電圧が高くなってしまう。
【0006】
以上の点から、本発明は、良好な光学特性を発現し、液晶表示素子の駆動電圧が低くなる液晶表示素子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、前記目的を達成するため鋭意研究を進めた結果、以下の要旨を有する本発明を完成するに至った。
即ち、電極を備えた一対の基板の間に配置した液晶及び重合性化合物を含む液晶組成物に対し、活性エネルギー線及び熱の少なくとも一方を与えて硬化させた液晶層を有し、且つ、基板の少なくとも一方に樹脂膜を備え、更に、電圧無印加時に散乱状態となり、電圧印加時に透明状態となる透過散乱型の液晶表示素子であって、
前記樹脂膜が、下記式[1-1]及び式[1-2]から選ばれる少なくとも1種の構造(特定構造(1)ともいう。)を有する重合体を含む樹脂組成物を用いて得られることを特徴とする液晶表示素子である。
【0008】
【化1】
【0009】
は、単結合、-(CH-(aは1~15の整数である)、-O-、-CHO-、-CONH-、-NHCO-、-CON(CH)-、-N(CH)CO-、-COO-又は-OCO-を示す。Xは、単結合又は-(CH-(bは1~15の整数である)を示す。Xは、単結合、-(CH-(cは1~15の整数である)、-O-、-CHO-、-COO-又は-OCO-を示す。Xは、ベンゼン環、シクロヘキサン環及び複素環から選ばれる2価の環状基、又はステロイド骨格を有する炭素数17~51の2価の有機基を示し、前記環状基上の任意の水素原子は、炭素数1~3のアルキル基、炭素数1~3のアルコキシル基、炭素数1~3のフッ素含有アルキル基、炭素数1~3のフッ素含有アルコキシル基又はフッ素原子で置換されていても良い。Xは、ベンゼン環、シクロヘキサン環及び複素環から選ばれる2価の環状基を示し、これらの環状基上の任意の水素原子が、炭素数1~3のアルキル基、炭素数1~3のアルコキシル基、炭素数1~3のフッ素含有アルキル基、炭素数1~3のフッ素含有アルコキシル基又はフッ素原子で置換されていても良い。Xnは、0~4の整数を示す。Xは、炭素数1~18のアルキル基、炭素数2~18のアルケニル基、炭素数1~18のフッ素含有アルキル基、炭素数1~18のアルコキシル基又は炭素数1~18のフッ素含有アルコキシル基を示す。
【0010】
【化2】
【0011】
は、単結合、-O-、-CHO-、-CONH-、-NHCO-、-CON(CH)-、-N(CH)CO-、-COO-又は-OCO-を示す。Xは、炭素数8~22のアルキル基又は炭素数6~18のフッ素含有アルキル基を示す。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、光学特性が良好で、液晶表示素子の駆動電圧が低くなる液晶表示素子が得られる。
本発明により、何故に上記の優れた特性を有する液晶表示素子が得られるメカニズムは、必ずしも明らかではないが、ほぼ次のように推定される。
特定構造(1)は、ベンゼン環やシクロヘキサン環などの部位や、長鎖アルキル基を有する。そのため、これを含む樹脂組成物から得られた樹脂膜は、電圧印加に伴う液晶の駆動を促進し、液晶表示素子の駆動電圧を低くすることができると考えられる。
また、前記式[1-1]の構造は、剛直な構造であることから、少ない使用量であっても、前記効果が得られる。そのため、樹脂膜上の疎水性構造を少なくすることができるため、液晶表示素子における液晶層と樹脂膜との密着性が高くなり、液晶表示素子の信頼性を高めることができる。
かくして、特定構造(1)を有する重合体を含む樹脂組成物を用いた液晶表示素子は、前記特性を有する液晶表示素子となる。そのため、本発明の液晶表示素子は、表示を目的とする液晶ディスプレイや、光の遮断と透過とを制御する調光窓や光シャッター素子などに用いることができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
<特定構造(1)>
特定構造(1)は、前記式[1-1]又は式[1-2]の構造である。
式[1-1]中、X~X及びXnは、前記に定義した通りであるが、なかでも、それぞれ、下記のものが好ましい。
は、原料の入手性や合成の容易さの点から、単結合、-(CH-(aは1~15の整数である)、-O-、-CHO-又は-COO-が好ましい。より好ましいのは、単結合、-(CH-(aは1~10の整数である)、-O-、-CHO-又は-COO-である。
は、単結合又は-(CH-(bは1~10の整数である)が好ましい。
は、合成の容易さの点から、単結合、-(CH-(aは1~15の整数である)、-O-、-CHO-又は-COO-が好ましい。より好ましいのは、単結合、-(CH-(aは1~10の整数である)、-O-、-CHO-又は-COO-である。
は、合成の容易さの点から、ベンゼン環、シクロへキサン環又はステロイド骨格を有する炭素数17~51の有機基が好ましい。
は、ベンゼン環又はシクロへキサン環が好ましい。
は、炭素数1~18のアルキル基、炭素数1~10のフッ素含有アルキル基、炭素数1~18のアルコキシ基又は炭素数1~10のフッ素含有アルコキシ基が好ましい。より好ましいのは、炭素数1~12のアルキル基又は炭素数1~12のアルコキシ基である。特に好ましいのは、炭素数1~9のアルキル基又は炭素数1~9のアルコキシ基である。
Xnは、原料の入手性や合成の容易さの点から、0~3が好ましい。より好ましいのは、0~2である。
【0014】
~X及びXnの好ましい組み合わせは、国際公開公報WO2011/132751(2011.10.27公開)の13頁~34頁の表6~表47に掲載される(2-1)~(2-629)と同じ組み合わせが挙げられる。なお、国際公開公報の各表では、本発明におけるX~Xが、Y1~Y6として示され、Xnがnとして示されているが、Y1~Y6は、X~Xと、nはXnと読み替えるものとする。また、前記国際公開公報の各表に掲載される(2-605)~(2-629)では、本発明におけるステロイド骨格を有する炭素数17~51の有機基が、ステロイド骨格を有する炭素数12~25の有機基と示されているが、ステロイド骨格を有する炭素数12~25の有機基は、ステロイド骨格を有する炭素数17~51の有機基と読み替えるものとする。
【0015】
なかでも、(2-25)~(2-96)、(2-145)~(2-168)、(2-217)~(2-240)、(2-268)~(2-315)、(2-364)~(2-387)、(2-436)~(2-483)又は(2-603)~(2-615)の組み合わせが好ましい。特に好ましいのは、(2-49)~(2-96)、(2-145)~(2-168)、(2-217)~(2-240)、(2-603)~(2-606)、(2-607)~(2-609)、(2-611)、(2-612)又は(2-624)である。
【0016】
式[1-2]中、X及びXは、前記に定義した通りであるが、なかでも、それぞれ、下記のものが好ましい。
【0017】
は、単結合、-O-、-CHO-、-CONH-、-CON(CH)-又は-COO-が好ましい。より好ましいのは、単結合、-O-、-CONH-又は-COO-である。
は、炭素数8~18のアルキル基が好ましい。
【0018】
本発明における特定構造(1)は、前記の通り、より効率的に液晶表示素子の駆動電圧を低くすることができる点から、式[1-1]の構造を用いることが好ましい。
特定構造(1)は、重合体を構成する繰り返し単位に含まれる形態が好ましい。特定構造(1)を含む繰り返し単位は、重合体を構成する繰り返し単位全体に対して、0.1~60モル%含むことが好ましく、より好ましいのは1~30モル%含むことである。
<特定構造(2)>
本発明における重合体は、好ましくは、下記式[2-a]~式[2-i]から選ばれる少なくとも1種の構造(特定構造(2)ともいう。)をさらに有する。
【0019】
【化3】
【0020】
は、水素原子又はベンゼン環を示す。
なかでも、式[2-a]~式[2-f]が好ましい。より好ましいのは、式[2-a]~式[2-e]である。特に好ましいのは、液晶層と樹脂膜との密着性の点から、式[2-a]、式[2-b]、式[2-d]又は式[2-e]である。
また、本発明における樹脂組成物は、好ましくは、特定構造(2)を有する重合体をさらに含む。
特定構造(2)を用いることで、液晶表示素子を作製する際の紫外線の照射や加熱の工程において、液晶組成物中の重合性化合物の反応基と光反応し、液晶層と樹脂膜との密着性が、強固なものとなると考えられる。
<重合体>
重合体としては、特に限定されないが、アクリルポリマー、メタクリルポリマー、ノボラック樹脂、ポリヒドロキシスチレン、ポリイミド前駆体、ポリイミド、ポリアミド、ポリエステル、セルロース及びポリシロキサンから選ばれる少なくとも1種の重合体が好ましい。より好ましいのは、ポリイミド前駆体、ポリイミド又はポリシロキサンである。
重合体にポリイミド前駆体又はポリイミド(総称してポリイミド系重合体ともいう。)を用いる場合、それらは、ジアミン成分とテトラカルボン酸成分とを反応させて得られるポリイミド前駆体又はポリイミドが好ましい。
【0021】
ポリイミド前駆体とは、下記式[A]の構造を有する。
【0022】
【化4】
【0023】
は、4価の有機基を示す。Rは、2価の有機基を示す。A及びAはそれぞれ、水素原子又は炭素数1~8のアルキル基を示す。A及びAはそれぞれ、水素原子、炭素数1~5のアルキル基又はアセチル基を示す。nは、正の整数を示す。
【0024】
ジアミン成分としては、分子内に第一級又は第二級のアミノ基を2個有するジアミンであり、テトラカルボン酸成分としては、テトラカルボン酸化合物、テトラカルボン酸二無水物、テトラカルボン酸ジハライド化合物、テトラカルボン酸ジアルキルエステル化合物又はテトラカルボン酸ジアルキルエステルジハライド化合物が挙げられる。
【0025】
ポリイミド系重合体は、下記式[B]のテトラカルボン酸二無水物と下記式[C]のジアミンとを原料とすることで、比較的簡便に得られるという理由から、下記式[D]の繰り返し単位の構造式から成るポリアミド酸又は該ポリアミド酸をイミド化させたポリイミドが好ましい。
【0026】
【化5】
【0027】
及びRは、式[A]で定義したものと同じである。
【0028】
【化6】
【0029】
及びRは、式[A]で定義したものと同じである。
【0030】
また、通常の合成手法で、前記で得られた式[D]の重合体に、式[A]中のA及びAの炭素数1~8のアルキル基、及び式[A]中のA及びAの炭素数1~5のアルキル基又はアセチル基を導入することもできる。
特定構造(1)をポリイミド系重合体に導入する方法としては、特定構造(1)を有するジアミンを原料の一部に用いることが好ましい。なかでも、前記式[1-1]及び式[1-2]から選ばれる少なくとも1種の構造を有するジアミン(特定ジアミン(1)ともいう。)を用いることが好ましい。
【0031】
特に、下記式[1a]のジアミンを用いることが好ましい。
【0032】
【化7】
【0033】
Xは、前記式[1-1]又は式[1-2]を示す。また、式[1-1]におけるX~X及びXnの詳細、及び好ましい組み合わせは、前記式[1-1]の通りであり、式[1-2]におけるX及びXの詳細、及び好ましい組み合わせは、前記式[1-2]の通りである。
Xmは、1~4の整数を示す。なかでも、1又は2が好ましい。
式[1-1]の特定ジアミン(1)として、具体的には、国際公開公報WO2013/125595(2013.8.29公開)の15頁~19頁に記載される式[2-1]~式[2-6]、式[2-9]~式[2-36]のジアミン化合物が挙げられる。なお、国際公開公報WO2013/125595の記載において、式[2-1]~式[2-3]中のR及び式[2-4]~式[2-6]中のRは、炭素数1~18のアルキル基、炭素数1~18のフッ素含有アルキル基、炭素数1~18のアルコキシ基又は炭素数1~18のフッ素含有アルコキシ基を示す。また、式[2-13]中のAは、炭素数3~18の直鎖状又は分岐状アルキル基を示す。加えて、式[2-4]~式[2-6]中のRは、-O-、-CHO-、-COO-又は-OCO-を示す。
【0034】
なかでも、好ましいジアミンは、国際公開公報WO2013/125595に記載される式[2-1]~式[2-6]、式[2-9]~式[2-13]又は式[2-22]~式[2-31]のジアミン化合物である。
より好ましいのは、液晶表示素子の光学特性の点から、下記式[1a-32]~式[1a-41]のジアミンである。
【0035】
【化8】
【0036】
及びRはそれぞれ、炭素数3~12のアルキル基を示す。
【0037】
【化9】
【0038】
及びRはそれぞれ、炭素数3~12のアルキル基を示し、1,4-シクロヘキシレンのシス-トランス異性は、トランス異性体である。
最も好ましいのは、液晶表示素子の光学特性の点から、前記式[1a-35]~式[1a-37]、式[1a-40]又は式[1a-41]のジアミンである。
式[1-2]の特定ジアミン(1)として、具体的には、国際公開公報WO2013/125595(2013.8.29公開)の23頁に記載される式[DA1]~式[DA11]のジアミン化合物が挙げられる。なお、国際公開公報WO2013/125595の記載において、式[DA1]~式[DA5]中のAは、炭素数8~22のアルキル基又は炭素数6~18のフッ素含有アルキル基を示す。
特定ジアミン(1)の使用割合は、液晶表示素子の光学特性、及び液晶層と樹脂膜との密着性の点から、ジアミン成分全体に対して、0.1~60モル%が好ましい。より好ましいのは、1~30モル%である。また、特定ジアミン(1)は、各特性に応じて、1種類又は2種類以上を混合して使用できる。
特定構造(2)をポリイミド系重合体に導入する方法としては、特定構造(2)を有するジアミンを原料の一部に用いることが好ましい。特に下記式[2]の構造を有するジアミン(特定ジアミン(2)ともいう。)を用いることが好ましい。
【0039】
【化10】
【0040】
は、単結合、-O-、-NH-、-N(CH)-、-CHO-、-CONH-、-NHCO-、-CON(CH)-、-N(CH)CO-、-COO-又は-OCO-を示す。なかでも、単結合、-O-、-CHO-、-CONH-、-COO-又は-OCO-が好ましい。より好ましいのは、原料の入手性や合成の容易さから、単結合、-O-、-CHO-又は-COO-である。
は、単結合、炭素数1~18のアルキレン基、又はベンゼン環、シクロヘキサン環及び複素環から選ばれる環状基を有する炭素数6~24の有機基を示し、これら環状基上の任意の水素原子は、炭素数1~3のアルキル基、炭素数1~3のアルコキシル基、炭素数1~3のフッ素含有アルキル基、炭素数1~3のフッ素含有アルコキシル基又はフッ素原子で置換されていても良い。なかでも、単結合、炭素数1~12のアルキレン基、ベンゼン環又はシクロヘキサン環が好ましい。より好ましいのは、液晶層と樹脂膜との密着性の点から、単結合又は炭素数1~12のアルキレン基である。
は、単結合、-O-、-NH-、-N(CH)-、-CHO-、-CONH-、-NHCO-、-CON(CH)-、-N(CH)CO-、-COO-又は-OCO-を示す。なかでも、単結合、-O-、-COO-又は-OCO-が好ましい。より好ましいのは、単結合又は-OCO-である。
は、前記式[2-a]~式[2-i]から選ばれる少なくとも1種の構造を示す。なかでも、式[2-a]~式[2-f]が好ましい。より好ましいのは、式[2-a]~式[2-e]である。特に好ましいのは、液晶層と樹脂膜との密着性の点から、式[2-a]、式[2-b]、式[2-d]又は式[2-e]である。
Ynは、1~4の整数を示す。なかでも、1又は2が好ましい。
【0041】
特定ジアミン(2)には、下記式[2a]のジアミンを用いることが好ましい。
【0042】
【化11】
【0043】
Yは、前記式[2]の構造を示す。また、式[2]におけるY~Y及びYnの詳細、及び好ましい組み合わせは、前記式[2]の通りである。
Ymは1~4の整数を示す。なかでも、1が好ましい。
【0044】
より具体的な特定ジアミン(2)としては、下記式[2a-1]~式[2a-12]が挙げられ、これらを用いることが好ましい。
【0045】
【化12】
【0046】
n1は2~12の整数を示す。
【0047】
【化13】
【0048】
n2は、0~12の整数を示す。n3は、2~12の整数を示す。
【0049】
なかでも、式[2a-1]、式[2a-2]、式[2a-5]~式[2a-7]、式[2a-11]又は式[2a-12]が好ましい。より好ましいのは、式[2a-5]~式[2a-7]、式[2a-11]又は式[2a-12]である。
特定ジアミン(2)の使用割合は、液晶表示素子の光学特性、及び液晶層と樹脂膜との密着性の点から、ジアミン成分全体に対して、5~70モル%が好ましい。より好ましいのは、10~60モル%である。また、特定ジアミン(2)は、各特性に応じて、1種類又は2種類以上を混合して使用できる。
ポリイミド系重合体を作製するためジアミン成分としては、特定ジアミン(1)及び特定ジアミン(2)以外のジアミン(その他のジアミンともいう。)を用いることもできる。
【0050】
具体的には、国際公開公報WO2015/012368(2015.1.29公開)の27頁~30頁に記載されるその他のジアミン化合物、及び同公報の30頁~32頁に記載される式[DA1]~式[DA14]のジアミン化合物が挙げられる。また、その他ジアミンは、各特性に応じて、1種又は2種以上を混合して使用できる。
【0051】
本発明においては、液晶表示素子の光学特性、及び液晶層と樹脂膜との密着性の点から、特定ジアミン(1)と特定ジアミン(2)との両方を用いることが好ましい。
ポリイミド系重合体を作製するためのテトラカルボン酸成分としては、下記式[3]のテトラカルボン酸二無水物や、その誘導体であるテトラカルボン酸、テトラカルボン酸ジハライド、テトラカルボン酸ジアルキルエステル又はテトラカルボン酸ジアルキルエステルジハライド(すべてを総称して特定テトラカルボン酸成分ともいう。)を用いることが好ましい。
【0052】
【化14】
【0053】
Zは、下記式[3a]~式[3l]のいずれかを示す。
【0054】
【化15】
【0055】
~Zはそれぞれ、水素原子、メチル基、塩素原子又はベンゼン環を示す。Z及びZはそれぞれ、水素原子又はメチル基を示す。)
なかでも、式[3]中のZは、合成の容易さやポリマーを製造する際の重合反応性のし易さの点から、式[3a]、式[3c]、式[3d]、式[3e]、式[3f]、式[3g]、式[3k]又は式[3l]が好ましい。より好ましいのは、式[3a]、式[3e]、式[3f]、式[3g]、式[3k]又は式[3l]である。特に好ましいのは、液晶表示素子の光学特性の点から、式[3a]、式[3e]、式[3f]、式[3g]又は式[3l]である。
特定テトラカルボン酸成分の使用割合は、全テトラカルボン酸成分に対して、1モル%以上が好ましい。より好ましいのは、5モル%以上であり、特に好ましいのは、10モル%以上である。最も好ましいのは、液晶表示素子の光学特性の点から、10~90モル%である。
【0056】
ポリイミド系重合体には、特定テトラカルボン酸成分以外のその他のテトラカルボン酸成分を用いることができる。その他のテトラカルボン酸成分としては、以下に示すテトラカルボン酸化合物、テトラカルボン酸二無水物、ジカルボン酸ジハライド化合物、ジカルボン酸ジアルキルエステル化合物又はジアルキルエステルジハライド化合物が挙げられる。
具体的には、国際公開公報WO2015/012368(2015.1.29公開)の34頁~35頁に記載されるその他のテトラカルボン酸成分が挙げられる。
特定テトラカルボン酸成分及びその他のテトラカルボン酸成分は、各特性に応じて、1種又は2種以上を混合して使用できる。
ポリイミド系重合体を合成する方法は特に限定されない。通常、ジアミン成分とテトラカルボン酸成分とを反応させて得られる。具体的には、国際公開公報WO2015/012368(2015.1.29公開)の35頁~36頁に記載される方法が挙げられる。
【0057】
ジアミン成分とテトラカルボン酸成分との反応は、通常、ジアミン成分とテトラカルボン酸成分とを含む溶媒中で行う。その際に用いる溶媒としては、生成したポリイミド前駆体が溶解するものであれば特に限定されない。
【0058】
具体的には、N-メチル-2-ピロリドン、N-エチル-2-ピロリドン、γ-ブチロラクトン、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド又は1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノンなどが挙げられる。また、ポリイミド前駆体の溶媒溶解性が高い場合は、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、4-ヒドロキシ-4-メチル-2-ペンタノン又は下記式[D1]~式[D3]の溶媒を用いることができる。
【0059】
【化16】
【0060】
及びDは、炭素数1~3のアルキル基を示す。Dは、炭素数1~4のアルキル基を示す。
また、これらは単独で使用しても、混合して使用してもよい。更に、ポリイミド前駆体を溶解させない溶媒であっても、生成したポリイミド前駆体が析出しない範囲で、前記溶媒に混合して使用してもよい。また、有機溶媒中の水分は重合反応を阻害し、更には生成したポリイミド前駆体を加水分解させる原因となるので、有機溶媒は脱水乾燥させたものを用いることが好ましい。
ポリイミド前駆体の重合反応においては、ジアミン成分の合計モル数を1.0にした際のテトラカルボン酸成分の合計モル数は、0.8~1.2であることが好ましい。テトラカルボン酸成分の合計モル数が1.0より小さい場合、即ち、テトラカルボン酸成分の合計モル数がジアミン成分のモル数よりも小さい場合は、ポリマーの末端がアミノ基の構造となり、1.0より大きい場合、即ち、テトラカルボン酸成分の合計モル数がジアミン成分のモル数よりも大きい場合は、ポリマーの末端がカルボン酸無水物或いはジカルボン酸の構造となる。本発明においては、前記特定化合物による効果が、より高くなることから、テトラカルボン酸成分の合計モル数は1.0より大きい、即ち、テトラカルボン酸成分の合計モル数がジアミン成分のモル数よりも大きいことが好ましい。具体的には、ジアミン成分の合計モル数を1.0にした際、テトラカルボン酸成分の合計モル数が1.05~1.20であることが好ましい。
【0061】
ポリイミドはポリイミド前駆体を閉環させて得られる。このポリイミドにおいては、アミド酸基の閉環率(イミド化率ともいう。)は必ずしも100%である必要はなく、用途や目的に応じて任意に調整できる。なかでも、ポリイミド系重合体の溶媒への溶解性の点から、30~80%が好ましい。より好ましいのは、40~70%である。
【0062】
ポリイミド系重合体の分子量は、そこから得られる樹脂膜の強度、及び樹脂膜形成時の作業性及び塗膜性を考慮した場合、GPC(Gel Permeation Chromatography)法で測定したMw(重量平均分子量)で5,000~1,000,000とするのが好ましい。より好ましいのは、10,000~150,000である。
重合体にポリシロキサンを用いる場合、下記式[A1]のアルコキシシランを重縮合させて得られるポリシロキサン、又は、該式[A1]のアルコキシシランと、下記式[A2]及び/又は式[A3]のアルコキシシランとを重縮合させて得られるポリシロキサン(総称してポリシロキサン系重合体ともいう。)を用いることが好ましい。
式[A1]のアルコキシシラン:
【0063】
【化17】
【0064】
は、前記式[1-1]又は式[1-2]を示す。また、式[1-1]におけるX~X及びXnの詳細、及び好ましい組み合わせは、前記式[1-1]の通りであり、式[1-2]におけるX及びXの詳細、及び好ましい組み合わせは、前記式[1-2]の通りである。なかでも、より効率的に液晶表示素子の駆動電圧を低くすることができる点から、式[1-1]の構造を用いることが好ましい。
は、水素原子又は炭素数1~5のアルキル基を示す。なかでも、水素原子又は炭素数1~3のアルキル基が好ましい。
は、炭素数1~5のアルキル基を示す。なかでも、重縮合の反応性の点から、炭素数1~3のアルキル基が好ましい。
mは1又は2の整数を示す。なかでも、合成の容易さの点から、1が好ましい。
nは、0~2の整数を示す。
pは、0~3の整数を示す。なかでも、重縮合の反応性の点から、1~3が好ましい。より好ましいのは、2又は3である。
m+n+pは、4である。
【0065】
式[A1]のアルコキシシランの具体例は、国際公開公報WO2015/008846(2015.1.22公開)の17頁~21頁に記載される式[2a-1]~式[2a-32]のアルコキシシランが挙げられる。なかでも、同公報内の式[2a-9]~式[2a-21]、式[2a-25]~式[2a-28]又は式[2a-32]のアルコキシシランが好ましい。
式[A1]のアルコキシシランは、各特性に応じて、1種類又は2種類以上を混合して使用できる。
式[A2]のアルコキシシラン:
【0066】
【化18】
【0067】
は、ビニル基、エポキシ基、アミノ基、メルカプト基、イソシアネート基、メタクリル基、アクリル基、ウレイド基及びシンナモイル基から選ばれる少なくとも1種を有する炭素数2~12の有機基を示す。なかでも、入手の容易さの点から、ビニル基、エポキシ基、アミノ基、メタクリル基、アクリル基又はウレイド基を有する有機基が好ましい。より好ましいのは、メタクリル基、アクリル基又はウレイド基を有する有機基である。
は、水素原子又は炭素数1~5のアルキル基を示す。なかでも、水素原子又は炭素数1~3のアルキル基が好ましい。
は、炭素数1~5のアルキル基を示す。なかでも、重縮合の反応性の点から、炭素数1~3のアルキル基が好ましい。
mは1又は2の整数を示す。なかでも、合成の容易さの点から、1が好ましい。
nは、0~2の整数を示す。
pは、0~3の整数を示す。なかでも、重縮合の反応性の点から、1~3が好ましい。より好ましいのは、2又は3である。
m+n+pは、4である。
【0068】
式[A2]のアルコキシシランの具体例は、国際公開公報WO2015/008846(2015.1.22公開)の21頁~24頁に記載される式[2b]のアルコキシシランの具体例が挙げられる。
なかでも、アリルトリエトキシシラン、アリルトリメトキシシラン、ジエトキシメチルビニルシラン、ジメトキシメチルビニルシラン、トリエトキシビニルシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリス(2-メトキシエトキシ)シラン、3-(トリエトキシシリル)プロピルメタクリレート、3-(トリメトキシシリル)プロピルアクリレート、3-(トリメトキシシリル)プロピルメタクリレート、3-グリシジルオキシプロピル(ジメトキシ)メチルシラン、3-グリシジルオキシプロピル(ジエトキシ)メチルシラン、3-グリシジルオキシプロピルトリメトキシシラン又は2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシランが好ましい。
【0069】
式[A2]のアルコキシシランは、各特性に応じて、1種類又は2種類以上を混合して使用できる。
【0070】
式[A3]のアルコキシシラン:
【0071】
【化19】
【0072】
は、水素原子又は炭素数1~5のアルキル基を示す。なかでも、水素原子又は炭素数1~3のアルキル基が好ましい。
は、炭素数1~5のアルキル基を示す。なかでも、重縮合の反応性の点から、炭素数1~3のアルキル基が好ましい。
nは、0~3の整数を示す。
【0073】
式[A3]のアルコキシシランの具体例は、国際公開公報WO2015/008846(2015.1.22公開)の24頁~25頁に記載される式[2c]のアルコキシシランの具体例が挙げられる。
【0074】
また、式[A3]中、nが0であるアルコキシシランとしては、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシラン又はテトラブトキシシランが挙げられ、式[A3]のアルコキシシランとしては、これらのアルコキシシランを用いることが好ましい。
【0075】
式[A3]のアルコキシシランは、各特性に応じて、1種類又は2種類以上を混合して使用できる。
ポリシロキサン系重合体は、式[A1]のアルコキシシランを重縮合させて得られるポリシロキサン、又は式[A1]のアルコキシシランと、式[A2]及び/又は式[A3]のアルコキシシランとを重縮合させて得られるポリシロキサンである。即ち、ポリシロキサン系重合体は、式[A1]のアルコキシシランのみを重縮合させて得られるポリシロキサン、式[A1]と式[A2]の2種類のアルコキシシランを重縮合させて得られるポリシロキサン、式[A1]と式[A3]の2種類のアルコキシシランを重縮合させて得られるポリシロキサン、並びに式[A1]、式[A2]及び式[A3]の3種類のアルコキシシランを重縮合させて得られるポリシロキサンのうちのいずれか1種である。
【0076】
なかでも、重縮合の反応性やポリシロキサン系重合体の溶媒への溶解性の点から、複数種のアルコキシシランを重縮合させて得られるポリシロキサンが好ましい。即ち、式[A1]と式[A2]の2種類のアルコキシシランを重縮合させて得られるポリシロキサン、式[A1]と式[A3]の2種類のアルコキシシランを重縮合させて得られるポリシロキサン、並びに式[A1]、式[A2]及び式[A3]の3種類のアルコキシシランを重縮合させて得られるポリシロキサンのうちのいずれか1種を用いることが好ましい。
【0077】
ポリシロキサン系重合体を作製する際に複数種のアルコキシランを用いる場合、式[A1]のアルコキシシランの使用割合は、全てのアルコキシシラン中、0.1~60モル%が好ましい。より好ましいのは、1~30モル%である。また、式[A2]のアルコキシシランの使用割合は、全てのアルコキシシラン中、5~70モル%が好ましい。より好ましいのは、10~60モル%である。更に、式[A3]のアルコキシシランの使用割合は、全てのアルコキシシラン中、1~99モル%が好ましい。より好ましいのは、1~80モル%である。
ポリシロキサン系重合体を重縮合する方法は特に限定されない。具体的には、国際公開公報WO2015/008846(2015.1.22公開)の26頁~29頁に記載される方法が挙げられる。
【0078】
ポリシロキサン系重合体を作製する重縮合反応において、式[A1]、式[A2]又は式[A3]のアルコキシシランを複種用いる場合は、複数種のアルコキシシランを、予め混合した混合物を用いて反応しても、複数種のアルコキシシランを順次添加しながら反応してもよい。
本発明においては、前記方法で得られたポリシロキサン系重合体の溶液をそのまま重合体として用いても良いし、必要に応じて、前記方法で得られたポリシロキサン系重合体の溶液を濃縮したり、溶媒を加えて希釈したり、他の溶媒に置換して、重合体として用いても良い。
【0079】
希釈する際に用いる溶媒(添加溶媒ともいう。)は、重縮合反応に用いる溶媒やその他の溶媒であってもよい。添加溶媒は、ポリシロキサン系重合体が均一に溶解している限りにおいては特に限定されず、1種類又は2種類以上を任意に選択できる。添加溶媒としては、前記重縮合反応に用いる溶媒に加え、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン系溶媒、酢酸メチル、酢酸エチル、乳酸エチルなどのエステル系溶媒などが挙げられる。
【0080】
更に、重合体にポリシロキサン系重合体とそれ以外の重合体を用いる場合、ポリシロキサン系重合体にそれ以外の重合体を混合する前に、ポリシロキサン系重合体の重縮合反応の際に発生するアルコールを常圧又は減圧で留去しておくことが好ましい。
<樹脂組成物>
樹脂組成物は、特定構造(1)を有する重合体を含むものであり、好ましくは、樹脂膜を形成するための溶液であり、特定構造(1)を有する重合体及び溶媒を含有する溶液である。その際、特定構造(1)を有する重合体は、2種類以上のものを用いることができる。
樹脂組成物中の特定構造(1)を有する重合体の濃度は、10~100質量%が好ましく、20~100質量%がより好ましく、30~100質量%が特に好ましい。
【0081】
樹脂組成物に含まれる重合体成分は、すべてが特定構造(1)を有する重合体であっても良いが、本発明においては、前記通り、特性構造(1)と特定構造(2)との両方を有することが好ましい。その際、特定構造(1)と特定構造(2)との両方を有する1種の重合体を用いても、特定構造(1)を有する重合体と特定構造(2)を有する重合体とを合わせて用いても良い。合わせて用いる場合、特定構造(2)を有する重合体の使用割合は、特定構造(1)を有する重合体100質量部に対して、10~400質量部であることが好ましい。より好ましいのは、50~200質量部である。特定構造(2)を有する重合体は、各特性に応じて、1種類又は2種類以上を使用することができる。
【0082】
また、重合体成分は、特定構造(1)を有する重合体及び特定構造(2)を有する重合体以外の重合体が混合されていても良い。その際、特定構造を持たない重合体の使用割合は、特定構造を有するすべての重合体100質量部に対して、10~200質量部であることが好ましい。より好ましいのは、10~100質量部である。
【0083】
樹脂組成物中の溶媒の含有量は、樹脂組成物の塗布方法や目的とする膜厚を得るという観点から、適宜選択できる。なかでも、塗布により均一な樹脂膜を形成するとい観点から、樹脂組成物中の溶媒の含有量は50~99.9質量%が好ましい。より好ましいのは、60~99質量%である。特に好ましいのは、65~99質量%である。
【0084】
樹脂組成物に用いる溶媒は、特定構造を有する重合体を溶解させる溶媒であれば特に限定されない。なかでも、重合体がポリイミド前駆体、ポリイミド、ポリアミド又はポリエステルの場合、或いは、アクリルポリマー、メタクリルポリマー、ノボラック樹脂、ポリヒドロキシスチレン、セルロース又はポリシロキサンの溶媒への溶解性が低い場合は、下記溶媒(溶媒A類ともいう。)を用いることが好ましい。
【0085】
例えば、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチル-2-ピロリドン、N-エチル-2-ピロリドン、ジメチルスルホキシド、γ-ブチロラクトン、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、4-ヒドロキシ-4-メチル-2-ペンタノンなどである。なかでも、N-メチル-2-ピロリドン、N-エチル-2-ピロリドン又はγ-ブチロラクトンを用いることが好ましい。また、これらは単独で使用しても、混合して使用してもよい。
【0086】
重合体が、アクリルポリマー、メタクリルポリマー、ノボラック樹脂、ポリヒドロキシスチレン、セルロース又はポリシロキサンである場合、更には、重合体がポリイミド前駆体、ポリイミド、ポリアミド又はポリエステルであり、これら重合体の溶媒への溶解性が高い場合は、下記溶媒(溶媒B類ともいう。)を用いることができる。
【0087】
溶媒B類の具体例は、国際公開公報WO2014/171493(2014.10.23公開)の58頁~60頁に記載される溶媒B類が挙げられる。なかでも、1-ヘキサノール、シクロヘキサノール、1,2-エタンジオール、1,2-プロパンジオール、プロピレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、シクロヘキサノン、シクロペンタノン又は前記式[D1]~式[D3]を用いることが好ましい。
また、これら溶媒B類を用いる際、樹脂組成物の塗布性を改善する目的に、前記溶媒A類のN-メチル-2-ピロリドン、N-エチル-2-ピロリドン又はγ-ブチロラクトンを併用して用いることが好ましい。より好ましいのは、γ-ブチロラクトンを併用することである。
【0088】
これら溶媒B類は、樹脂組成物を塗布する際の樹脂膜の塗膜性や表面平滑性を高めることができるため、重合体にポリイミド前駆体、ポリイミド、ポリアミド又はポリエステルを用いた場合、前記溶媒A類と併用して用いることが好ましい。その際、溶媒B類は、樹脂組成物に含まれる溶媒全体の1~99質量%が好ましい。なかでも、10~99質量%が好ましい。より好ましいのは、20~95質量%である。
樹脂組成物には、樹脂膜の膜強度を高めるために、エポキシ基、イソシアネート基、オキセタン基、シクロカーボネート基、ヒドロキシ基、ヒドロキシアルキル基及び低級アルコキシアルキル基から選ばれる少なくとも1種を有する化合物(総称して特定架橋性化合物ともいう。)を導入することが好ましい。その際、これらの基は、化合物中に2個以上有する必要がある。
エポキシ基又はイソシアネート基を有する架橋性化合物の具体例は、国際公開公報WO2014/171493(2014.10.23公開)の63頁~64頁に記載されるエポキシ基又はイソシアネート基を有する架橋性化合物が挙げられる。
【0089】
オキセタン基を有する架橋性化合物の具体例は、国際公開公報WO2011/132751(2011.10.27公開)の58頁~59頁に掲載される式[4a]~式[4k]の架橋性化合物が挙げられる。
【0090】
シクロカーボネート基を有する架橋性化合物の具体例は、国際公開公報WO2012/014898(2012.2.2公開)の76頁~82頁に掲載される式[5-1]~式[5-42]の架橋性化合物が挙げられる。
【0091】
ヒドロキシル基、ヒドロキシアルキル基及び低級アルコキシアルキル基を有する架橋性化合物の具体例は、国際公開公報2014/171493(2014.10.23公開)の65頁~66頁に記載されるメラミン誘導体又はベンゾグアナミン誘導体、及び国際公開公報WO2011/132751(2011.10.27公開)の62頁~66頁に掲載される、式[6-1]~式[6-48]の架橋性化合物が挙げられる。
【0092】
樹脂組成物における特定架橋性化合物の使用割合は、すべての重合体成分100質量部に対して、0.1~100質量部が好ましい。より好ましいのは、架橋反応が進行し、目的の効果を発現させるため、0.1~50質量部である。特に好ましいのは、1~30質量部である。
樹脂組成物には、光ラジカル発生剤、光酸発生剤及び光塩基発生剤から選ばれる少なくとも1種の発生剤(特定発生剤ともいう。)を導入することが好ましい。
【0093】
特定発生剤の具体例は、国際公開公報2014/171493(2014.10.23公開)の54頁~56頁に記載される特定発生剤が挙げられる。なかでも、特定発生剤には、液晶層と樹脂膜との密着性の点から、光ラジカル発生剤を用いることが好ましい。
樹脂組成物には、樹脂組成物を塗布した際の樹脂膜の膜厚の均一性や表面平滑性を向上させる化合物を用いることができる。更に、樹脂膜と基板との密着性を向上させる化合物などを用いることもできる。
樹脂膜の膜厚の均一性や表面平滑性を向上させる化合物としては、フッ素系界面活性剤、シリコーン系界面活性剤、又はノ二オン系界面活性剤などが挙げられる。具体的には、国際公開公報WO2014/171493(2014.10.23公開)の67頁に記載される界面活性剤が挙げられる。また、その使用割合は、すべての重合体成分100質量部に対して、0.01~2質量部が好ましい。より好ましいのは、0.01~1質量部である。
【0094】
樹脂膜と基板との密着性を向上させる化合物の具体例は、国際公開公報WO2014/171493(2014.10.23公開)の67頁~69頁に記載される化合物が挙げられる。また、その使用割合は、すべての重合体成分100質量部に対して0.1~30質量部が好ましい。より好ましいのは1~20質量部である。
【0095】
樹脂組成物には、前記以外の化合物の他に、樹脂膜の誘電率や導電性などの電気特性を変化させる目的の誘電体や導電物質を添加してもよい。
<液晶組成物>
液晶組成物は、液晶及び重合性化合物を有する。
液晶には、ネマチック液晶、スメクチック液晶又はコレステリック液晶を用いることができる。なかでも、本発明における液晶表示素子には、正の誘電異方性を有する液晶を用いることが好ましい。その際、低電圧駆動及び散乱特性の点からは、誘電率の異方性が大きく、屈折率の異方性が大きいものが好ましい。また、液晶には、前記相転移温度、誘電率異方性及び屈折率異方性の各物性値に応じて、2種類以上の液晶を混合して用いることができる。
液晶表示素子をTFT(Thin Film Transistor)などの能動素子として駆動させるためには、液晶の電気抵抗が高くて電圧保持率(VHRともいう。)が高いことが求められる。そのため、液晶には、電気抵抗が高くて紫外線などの活性エネルギー線によりVHRが低下しないフッ素系や塩素系の液晶が好ましい。
【0096】
更に、液晶表示素子は、液晶組成物中に二色性染料を溶解させてゲストホスト型の素子とすることもできる。その際、電圧無印加時は吸収(散乱)で、電圧印加時に透明となる素子が得られる。また、この素子では、液晶のダイレクターの方向(配向の方向)は、電圧印加の有無により90度変化する。そのため、この素子は、二色性染料の吸光特性の違いを利用することで、ランダム配向と垂直配向でスイッチングを行う従来のゲストホスト型の素子に比べて、高いコントラストが得られる。また、二色性染料を溶解させたゲストホスト型の素子では、液晶が水平方向に配向した場合に有色になり、散乱状態においてのみ不透明となる。そのため、電圧を印加するにつれ、電圧無印加時の有色不透明から有色透明、無色透明の状態に切り替わる素子を得ることもできる。
【0097】
液晶組成物中の重合性化合物は、液晶表示素子作製時の活性エネルギー線や熱により、重合反応してポリマーネットワーク(硬化性樹脂ともいう。)を形成するためのものである。本発明における重合反応は、紫外線を照射して進行するものが好ましい。
重合性化合物は、予め、重合性化合物を重合反応させたポリマーを液晶組成物に導入しても良いが、液晶組成物の取り扱い、即ち、液晶組成物の高粘度化の抑制や液晶への溶解性の点から、重合性化合物を含む液晶組成物を用いることが好ましい。
重合性化合物は、液晶に溶解すれば、特に限定されないが、重合性化合物を液晶に溶解した際に、液晶組成物の一部又は全体が液晶相を示す温度が存在することが必要となる。液晶組成物の一部が液晶相を示す場合であっても、液晶表示素子を肉眼で確認して、素子内全体がほぼ一様な透明性と散乱特性が得られていれば良い。
【0098】
重合性化合物は、紫外線や熱により重合する化合物であれば良く、その際、どのような反応形式で重合が進み、硬化性樹脂を形成させても良い。具体的な反応形式としては、ラジカル重合、カチオン重合、アニオン重合又は重付加反応が挙げられる。
【0099】
なかでも、重合性化合物の反応形式は、液晶表示素子の光学特性の点から、ラジカル重合が好ましい。その際、重合性化合物としては、下記のラジカル型の重合性化合物、又はそのオリゴマーを用いることができる。また、前記の通り、これらの重合性化合物を重合反応させたポリマーを用いることもできる。
【0100】
ラジカル型の重合性化合物又はそのオリゴマーの具体例は、国際公開公報2015/146987(2015.10.1公開)の69頁~71頁に記載されるラジカル型の重合性化合物が挙げられる。
ラジカル型の重合性化合物又はそのオリゴマーの使用割合は、液晶層と樹脂膜との密着性の点から、液晶組成物中の液晶100質量部に対して、70~150質量部が好ましい。より好ましいのは、80~110質量部である。また、ラジカル型の重合性化合物は、各特性に応じて、1種類又は2種類以上を混合して使用することもできる。
液晶組成物中には、重合性化合物のラジカル重合を促進させる目的で、紫外線によりラジカルを発生するラジカル開始剤(重合開始剤ともいう。)を導入することが好ましい。
具体的には、国際公開公報WO2015/146987(2015.10.1公開)の71頁~72頁に記載されるラジカル開始剤が挙げられる。
ラジカル開始剤の使用割合は、液晶層と樹脂膜との密着性の点から、液晶組成物中の液晶100質量部に対して、0.01~20質量部が好ましい。より好ましいのは、0.05~10質量部である。また、ラジカル開始剤は、各特性に応じて、1種類又は2種類以上を混合して使用することもできる。
<特定液晶添加化合物>
液晶組成物中には、下記式[5a]の化合物(特定液晶添加化合物ともいう。)を導入することが好ましい。
【0101】
【化20】
【0102】
は、下記式[5-a]~式[5-j]のいずれかを示す。なかでも、式[5-a]、式[5-b]、式[5-c]、式[5-d]、式[5-e]又は式[5-f]が好ましい。より好ましいのは、式[5-a]、式[5-b]、式[5-c]又は式[5-e]である。特に好ましいのは、式[5-a]又は式[5-b]である。
【0103】
【化21】
【0104】
は、水素原子又はベンゼン環を示す。
は、単結合、-O-、-NH-、-N(CH)-、-CHO-、-CONH-、-NHCO-、-CON(CH)-、-N(CH)CO-、-COO-又は-OCO-を示す。なかでも、単結合、-O-、-CHO-、-CONH-、-COO-又は-OCO-が好ましい。より好ましいのは、単結合、-O-、-COO-又は-OCO-である。
は、単結合又は-(CH-(aは1~15の整数である)を示す。なかでも、単結合又は-(CH-(aは1~10の整数である)が好ましい。より好ましいのは、-(CH-(aは1~10の整数である)である。
は、単結合、-O-、-OCH-、-COO-又は-OCO-を示す。なかでも、単結合、-O-又は-COO-が好ましい。より好ましいのは、-O-である。
は、ベンゼン環、シクロヘキサン環及び複素環から選ばれる2価の環状基、又はステロイド骨格を有する炭素数17~51の2価の有機基を示し、前記環状基上の任意の水素原子は、炭素数1~3のアルキル基、炭素数1~3のアルコキシ基、炭素数1~3のフッ素含有アルキル基、炭素数1~3のフッ素含有アルコキシ基又はフッ素原子で置換されていても良い。なかでも、ベンゼン環又はシクロヘキサン環、又はステロイド骨格を有する炭素数17~51の2価の有機基が好ましい。より好ましいのは、ベンゼン環又はステロイド骨格を有する炭素数17~51の2価の有機基である。
は、単結合、-O-、-CH-、-OCH-、-CHO-、-COO-又は-OCO-から選ばれる少なくとも1種を示す。なかでも、単結合、-O-、-COO-又は-OCO-が好ましい。より好ましいのは、単結合、-COO-又は-OCO-である。
は、ベンゼン環、シクロヘキサン環及び複素環から選ばれる環状基を示し、これらの環状基上の任意の水素原子が、炭素数1~3のアルキル基、炭素数1~3のアルコキシ基、炭素数1~3のフッ素含有アルキル基、炭素数1~3のフッ素含有アルコキシ基又はフッ素原子で置換されていても良い。なかでも、ベンゼン環又はシクロヘキサン環が好ましい。
は、炭素数1~18のアルキル基、炭素数2~18のアルケニル基、炭素数1~18のフッ素含有アルキル基、炭素数1~18のアルコキシ基又は炭素数1~18のフッ素含有アルコキシ基を示す。なかでも、炭素数1~18のアルキル基若しくはアルコキシ基、又は炭素数2~18のアルケニル基が好ましい。より好ましいのは、炭素数1~12のアルキル基又はアルコキシ基である。
Smは、0~4の整数を示す。なかでも、0~2が好ましい。
特定液晶添加化合物は、ベンゼン環やシクロヘキサン環といった剛直構造の部位と、式[5a]中のSで示される紫外線や熱により重合反応する部位とを有する。そのため、特定液晶添加化合物を液晶組成物中に含めると、特定液晶添加化合物の剛直構造の部位が、液晶の垂直配向性を高め、電圧印加に伴う液晶の駆動を促進させ、液晶表示素子の駆動電圧を低くできる。また、式[5a]中のSの部位が重合性化合物と反応することで、ポリマーネットワークを密な状態に保つことができる。
より具体的な特定液晶添加化合物としては、下記式[5a-1]~式[5a-11]の化合物が挙げられ、これらを用いることが好ましい。
【0105】
【化22】
【0106】
はそれぞれ、-O-又は-COO-を示す。Sはそれぞれ、炭素数1~12のアルキル基を示す。p1はそれぞれ、1~10の整数を示す。p2はそれぞれ、1又は2の整数を示す。
【0107】
【化23】
【0108】
はそれぞれ、単結合、-COO-又は-OCO-を示す。Sはそれぞれ、炭素数1~12のアルキル基又はアルコキシ基を示す。p3はそれぞれ、1~10の整数を示す。p4はそれぞれ、1又は2の整数を示す。
【0109】
【化24】
【0110】
はそれぞれ、-O-又は-COO-を示す。Sはそれぞれ、ステロイド骨格を有する炭素数17~51の2価の有機基を示す。Sはそれぞれ、炭素数1~12のアルキル基又は炭素数2~18のアルケニル基を示す。p5はそれぞれ、1~10の整数を示す。
特定液晶添加化合物の使用割合は、液晶層と樹脂膜との密着性の点から、液晶組成物中の液晶100質量部に対して、0.1~30質量部が好ましい。より好ましいのは、0.5~20質量部である。特に好ましいのは、1~10質量部である。また、特定液晶添加化合物は、各特性に応じて、1種類又は2種類以上を混合して使用することもできる。
液晶組成物の調製方法としては、液晶、重合性化合物、及び特定液晶添加化合物を一緒に混合する方法や、予め、重合性化合物と、特定液晶添加化合物とを混合したものを、液晶と混合する方法が挙げられる。
なかでも、本発明においては、予め、重合性化合物と特定液晶添加化合物とを混合したものを液晶と混合する方法が好ましい。
前記の通りに液晶組成物を調製する場合、重合性化合物、及び特定液晶添加化合物の溶解性に応じて、加熱することもできる。その際の温度は100℃未満が好ましい。
<液晶表示素子の作製方法>
液晶表示素子に用いる基板としては、透明性の高い基板であれば特に限定されず、ガラス基板の他、アクリル基板、ポリカーボネート基板、PET(ポリエチレンテレフタレート)基板などのプラスチック基板、更には、それらのフィルムを用いることができる。特に、調光窓などに用いる場合には、プラスチック基板やフィルムが好ましい。また、プロセスの簡素化の観点からは、液晶駆動のためのITO電極、IZO(Indium Zinc Oxide)電極、IGZO(Indium Gallium Zinc Oxide)電極、有機導電膜などが形成された基板を用いることが好ましい。また、反射型の液晶表示素子とする場合には、片側の基板のみにならば、シリコンウエハやアルミニウムなどの金属や誘電体多層膜が形成された基板を使用できる。
液晶表示素子は、基板の少なくとも一方に、特定構造(1)を有する重合体を含む樹脂組成物から得られる樹脂膜を有する。特に、両方の基板に樹脂膜があることが好ましい。
【0111】
樹脂組成物の塗布方法は、特に限定されないが、工業的には、スクリーン印刷、オフセット印刷、フレキソ印刷、インクジェット法、ディップ法、ロールコータ法、スリットコータ法、スピンナー法、スプレー法などがあり、基板の種類や目的とする樹脂膜の膜厚に応じて、適宜選択できる。
【0112】
樹脂組成物を基板上に塗布した後は、ホットプレート、熱循環型オーブン、IR(赤外線)型オーブンなどの加熱手段により、基板の種類や樹脂組成物に用いる溶媒に応じて30~300℃、好ましくは、30~250℃の温度で溶媒を蒸発させて樹脂膜とすることができる。特に、基板にプラスチック基板を用いる場合には、30~150℃の温度で処理することが好ましい。
【0113】
焼成後の樹脂膜の厚みは、厚すぎると液晶表示素子の消費電力の面で不利となり、薄すぎると素子の信頼性が低下する場合があるので、好ましいのは、5~500nmである。より好ましいのは、10~300nmである。特に好ましいのは、10~250nmである。
【0114】
液晶表示素子に用いる液晶組成物は、前記の通りの液晶組成物であるが、そのなかに、液晶表示素子の電極間隙(ギャップともいう。)を制御するためのスペーサーを導入することもできる。
【0115】
液晶組成物の注入方法は、特に限定されないが、例えば、次の方法が挙げられる。即ち、基板にガラス基板を用いる場合、樹脂膜が形成された一対の基板を用意し、片側の基板の4片を、一部分を除いてシール剤を塗布し、その後、樹脂膜の面が内側になるようにして、もう片側の基板を貼り合わせた空セルを作製する。そして、シール剤が塗布されていない場所から、液晶組成物を減圧注入して、液晶組成物注入セルを得る方法が挙げられる。更に、基板にプラスチック基板やフィルムを用いる場合には、樹脂膜が形成された一対の基板を用意し、片側の基板の上にODF(One Drop Filling)法やインクジェット法などで、液晶組成物を滴下し、その後、もう片側の基板を貼り合わせて、液晶組成物注入セルを得る方法が挙げられる。
【0116】
液晶表示素子のギャップは、前記スペーサーなどで制御できる。その方法は、前記の通りに、液晶組成物中に目的とする大きさのスペーサーを導入する方法や、目的とする大きさのカラムスペーサーを有する基板を用いる方法などが挙げられる。また、基板にプラスチックやフィルム基板を用いて、基板の貼り合わせをラミネートで行う場合は、スペーサーを導入せずに、ギャップを制御できる。
【0117】
液晶表示素子のギャップの大きさは、1~100μmが好ましい。より好ましいのは、1~50μmである。特に好ましいのは、2~30μmである。ギャップが小さすぎると、液晶表示素子のコントラストが低下し、大きすぎると、素子の駆動電圧が高くなる。
【0118】
液晶表示素子は、液晶組成物の一部又は全体が液晶性を示す状態で、液晶組成物の硬化を行い、液晶層を形成させて得られる。この液晶組成物の硬化は、前記液晶組成物注入セルに、紫外線の照射や加熱をして行う。本発明においては、前記の通り、紫外線の照射が好ましい。
【0119】
紫外線の照射に用いる紫外線照射装置の光源としては、例えば、メタルハライドランプ又は高圧水銀ランプが挙げられる。また、紫外線の波長は、250~400nmが好ましい。なかでも、310~370nmが好ましい。また、紫外線を照射した後に、加熱処理を行っても良い。その際の温度としては、40~120℃が好ましい。より好ましいのは、40~80℃である。
加熱に用いる装置は、前記樹脂組成物を基板上に塗布した後に用いる加熱手段が挙げられる。また、その際の温度は、重合性化合物の反応が進行する温度や基板の種類に応じて、適宜、選択される。具体的には、80~200℃が好ましい。
【実施例
【0120】
以下に実施例を挙げ、本発明をさらに詳しく説明するが、これらに限定されるものではない。
以下で用いる略語は下記の通りである。
「ポリイミド系重合体に用いる化合物類」
<特定ジアミン(1)>
【0121】
【化25】
【0122】
<特定ジアミン(2)>
【0123】
【化26】
【0124】
<その他ジアミン>
【0125】
【化27】
【0126】
<特定テトラカルボン酸成分>
【0127】
【化28】
【0128】
「ポリシロキサン系重合体に用いる化合物類」
【0129】
【化29】
【0130】
E2:オクタデシルトリエトキシシラン
E3:3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン
E4:3-ウレイドプロピルトリエトキシシラン
E5:テトラエトキシシラン
「架橋性化合物」
【0131】
【化30】
【0132】
「溶媒」
NMP:N-メチル-2-ピロリドン
γ-BL:γ-ブチロラクトン
BCS:エチレングリコールモノブチルエーテル
PB:プロピレングリコールモノブチルエーテル
PGME:プロピレングリコールモノメチルエーテル
ECS:エチレングリコールモノエチルエーテル
EC:ジエチレングリコールモノエチルエーテル
「液晶組成物に用いる化合物類」
<特定液晶添加化合物>
【0133】
【化31】
【0134】
<重合性化合物>
R1:IBXA(大阪有機化学工業社製)
R2:2-ヒドロキシエチルメタクリレート(東京化成工業社製)
R3:KAYARAD FM-400(日本化薬社製)
R4:EBECRYL 230(ダイセル・オルネクス社製)
R5:カレンズMT PE1(昭和電工社製)
<光ラジカル開始剤>
P1:IRGACURE 184(BASF社製)
<液晶>
L1:MLC-3018(メルク社製)
「ポリイミド系重合体の分子量測定」
常温ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)装置(GPC-101)(昭和電工社製)、カラム(KD-803,KD-805)(Shodex社製)を用いて、以下のようにして測定した。
【0135】
カラム温度:50℃
溶離液:N,N-ジメチルホルムアミド(添加剤として、臭化リチウム一水和物(LiBr・HO)が30mmol/L(リットル)、リン酸・無水結晶(o-リン酸)が30mmol/L、テトラヒドロフラン(THF)が10ml/L)
流速:1.0ml/分
検量線作成用標準サンプル:TSK 標準ポリエチレンオキサイド(分子量;約900,000、150,000、100,000及び30,000)(東ソー社製)及びポリエチレングリコール(分子量;約12,000、4,000及び1,000)(ポリマーラボラトリー社製)。
「ポリイミド系重合体のイミド化率の測定」
ポリイミド粉末20mgをNMR(核磁気共鳴)サンプル管(NMRサンプリングチューブスタンダード,φ5(草野科学社製))に入れ、重水素化ジメチルスルホキシド(DMSO-d6,0.05質量%TMS(テトラメチルシラン)混合品)(0.53ml)を添加し、超音波をかけて完全に溶解させた。この溶液をNMR測定機(JNW-ECA500)(日本電子データム社製)にて500MHzのプロトンNMRを測定した。イミド化率は、イミド化前後で変化しない構造に由来するプロトンを基準プロトンとして決め、このプロトンのピーク積算値と、9.5ppm~10.0ppm付近に現れるアミド酸のNH基に由来するプロトンピーク積算値とを用い以下の式によって求めた。
【0136】
イミド化率(%)=(1-α・x/y)×100
(xはアミド酸のNH基由来のプロトンピーク積算値、yは基準プロトンのピーク積算値、αはポリアミド酸(イミド化率が0%)の場合におけるアミド酸のNH基プロトン1個に対する基準プロトンの個数割合である。)
「ポリイミド系重合体の合成」
<合成例1>
D2(1.36g,5.44mmol)、A1(1.05g,2.76mmol)及びC1(1.19g,11.0mmol)をNMP(10.4g)中で混合し、80℃で4時間反応させた後、D1(1.60g,8.16mmol)とNMP(5.21g)を加え、40℃で6時間反応させ、樹脂固形分濃度が25質量%のポリアミド酸溶液(1)を得た。このポリアミド酸の数平均分子量(Mnともいう。)は21,500、重量平均分子量(Mwともいう。)は64,700であった。
<合成例2>
D2(2.21g,8.83mmol)、A1(1.71g,4.49mmol)、B1(2.96g,11.2mmol)及びC1(0.73g,6.75mmol)をNMP(20.4g)中で混合し、80℃で4時間反応させた後、D1(2.60g,13.3mmol)とNMP(10.2g)を加え、40℃で6時間反応させ、樹脂固形分濃度が25質量%のポリアミド酸溶液(2)を得た。このポリアミド酸のMnは20,500、Mwは61,000であった。
<合成例3>
合成例2の手法で得られたポリアミド酸溶液(2)(20.0g)に、NMPを加え6質量%に希釈した後、イミド化触媒として無水酢酸(1.65g)及びピリジン(1.00g)を加え、60℃で3時間反応させた。この反応溶液をメタノール(450ml)中に投入し、得られた沈殿物を濾別した。この沈殿物をメタノールで洗浄し、100℃で減圧乾燥しポリイミド粉末(3)を得た。このポリイミドのイミド化率は55%であり、Mnは18,300、Mwは48,300であった。
<合成例4>
D4(0.74g,3.73mmol)、A2(0.75g,1.90mmol)、B1(1.50g,5.68mmol)及びC1(0.21g,1.94mmol)をγ-BL(8.60g)中で混合し、60℃で4時間反応させた後、D1(1.10g,5.61mmol)とγ-BL(4.30g)を加え、40℃で8時間反応させ、樹脂固形分濃度が25質量%のポリアミド酸溶液(4)を得た。このポリアミド酸のMnは15,900、Mwは47,600であった。
<合成例5>
D4(1.18g,5.96mmol)、A2(0.51g,1.29mmol)及びB1(1.94g,7.34mmol)をγ-BL(8.25g)中で混合し、60℃で4時間反応させた後、D1(0.50g,2.55mmol)とγ-BL(4.13g)を加え、40℃で8時間反応させ、樹脂固形分濃度が25質量%のポリアミド酸溶液(5)を得た。このポリアミド酸のMnは13,300、Mwは44,200であった。
<合成例6>
D4(0.74g,3.73mmol)、A3(0.54g,1.25mmol)、B1(1.66g,6.28mmol)及びC1(0.54g,4.99mmol)をNMP(10.4g)中で混合し、80℃で4時間反応させた後、D1(1.70g,8.67mmol)とNMP(5.18g)を加え、40℃で6時間反応させ、樹脂固形分濃度が25質量%のポリアミド酸溶液(6)を得た。このポリアミド酸のMnは22,300、Mwは68,500であった。
<合成例7>
D3(2.00g,8.92mmol)、A2(0.71g,1.80mmol)及びB2(1.47g,7.23mmol)をγ-BL(12.6g)中で混合し、40℃で12時間反応させ、樹脂固形分濃度が25質量%のポリアミド酸溶液(7)を得た。このポリアミド酸のMnは14,900、Mwは41,900であった。
<合成例8>
D3(2.50g,11.2mmol)、A4(0.28g,0.57mmol)、B1(1.79g,6.77mmol)及びC1(0.43g,3.98mmol)をNMP(15.0g)中で混合し、40℃で12時間反応させ、樹脂固形分濃度が25質量%のポリアミド酸溶液(8)を得た。このポリアミド酸のMnは16,100、Mwは45,200であった。
<合成例9>
D2(1.11g,4.44mmol)、A5(0.84g,2.23mmol)、B1(1.48g,5.60mmol)及びC1(0.36g,3.33mmol)をNMP(10.2g)中で混合し、80℃で4時間反応させた後、D1(1.30g,6.63mmol)とNMP(5.10g)を加え、40℃で6時間反応させ、樹脂固形分濃度が25質量%のポリアミド酸溶液(9)を得た。このポリアミド酸のMnは19,900、Mwは60,500であった。
<合成例10>
D2(1.53g,6.11mmol)及びC1(1.68g,15.5mmol)をNMP(10.0g)中で混合し、80℃で4時間反応させた後、D1(1.80g,9.18mmol)とNMP(5.01g)を加え、40℃で6時間反応させ、樹脂固形分濃度が25質量%のポリアミド酸溶液(10)を得た。このポリアミド酸のMnは28,200、Mwは73,900であった。
<合成例11>
D4(1.08g,5.45mmol)及びC1(1.49g,13.8mmol)をγ-BL(8.34g)中で混合し、60℃で4時間反応させた後、D1(1.60g,8.16mmol)とγ-BL(4.17g)を加え、40℃で8時間反応させ、樹脂固形分濃度が25質量%のポリアミド酸溶液(11)を得た。このポリアミド酸のMnは20,900、Mwは58,400であった。
合成例で得られたポリイミド系重合体を、表1に示す。
【0137】
【表1】
【0138】
*1:ポリアミド酸。
「ポリシロキサン系重合体の合成」
<合成例12>
温度計及び還流管を備え付けた200mlの四つ口反応フラスコ中で、ECS(28.3g)、E1(4.10g)、E3(7.45g)及びE5(32.5g)を混合して、アルコキシシランモノマーの溶液を調製した。この溶液に、予めECS(14.2g)、水(10.8g)、及び触媒として蓚酸(0.70g)を混合して調製しておいた溶液を、25℃にて30分かけて滴下し、更に、25℃にて30分間撹拌した。その後、オイルバスを用いて加熱して30分間還流させた後、予め調製しておいたE4の含有量が92質量%のメタノール溶液(1.20g)とECS(0.90g)の混合溶液を加えた。更に、30分間還流させた後、放冷してSiO換算濃度が12質量%のポリシロキサン溶液(1)を得た。
<合成例13>
温度計及び還流管を備え付けた200mlの四つ口反応フラスコ中で、EC(29.2g)、E1(4.10g)及びE5(38.8g)を混合して、アルコキシシランモノマーの溶液を調製した。この溶液に、予めEC(14.6g)、水(10.8g)、及び触媒として蓚酸(0.50g)を混合して調製しておいた溶液を、25℃にて30分かけて滴下し、更に、25℃にて30分間撹拌した。その後、オイルバスを用いて加熱して30分間還流させた後、予め調製しておいたE4の含有量92質量%のメタノール溶液(1.20g)とEC(0.90g)の混合溶液を加えた。更に、30分間還流させた後、放冷してSiO換算濃度が12質量%のポリシロキサン溶液(2)を得た。
<合成例14>
温度計及び還流管を備え付けた200mlの四つ口反応フラスコ中で、ECS(28.3g)、E2(4.07g)、E3(7.45g)及びE5(32.5g)を混合して、アルコキシシランモノマーの溶液を調製した。この溶液に、予めECS(14.2g)、水(10.8g)、及び触媒として蓚酸(0.70g)を混合して調製しておいた溶液を、25℃にて30分かけて滴下し、更に、25℃にて30分間撹拌した。その後、オイルバスを用いて加熱して30分間還流させた後、予め調製しておいたE4の含有量が92質量%のメタノール溶液(1.20g)とECS(0.90g)の混合溶液を加えた。更に、30分間還流させた後、放冷してSiO換算濃度が12質量%のポリシロキサン溶液(3)を得た。
【0139】
合成例で得られたポリシロキサン系重合体を、表2に示す。
【0140】
【表2】
【0141】
「樹脂組成物の製造」
<実施例1>
合成例1の手法で得られたポリアミド酸溶液(1)(10.0g)に、NMP(16.0g)及びBCS(15.7g)を加え、25℃で6時間撹拌して、樹脂組成物(1)を得た。この樹脂組成物には、濁りや析出などの異常は見られず、均一な溶液であった。
<実施例2>
合成例2の手法で得られたポリアミド酸溶液(2)(10.0g)に、NMP(16.0g)及びBCS(15.7g)を加え、25℃で6時間撹拌して、樹脂組成物(2)を得た。この樹脂組成物には、濁りや析出などの異常は見られず、均一な溶液であった。
<実施例3>
合成例3の手法で得られたポリイミド粉末(3)(2.50g)に、NMP(27.4g)を加え、70℃で24時間撹拌して溶解させた。その後、BCS(7.83g)及びPB(3.92g)を加え、25℃で6時間撹拌して、樹脂組成物(3)を得た。この樹脂組成物には、濁りや析出などの異常は見られず、均一な溶液であった。
<実施例4>
合成例3の手法で得られたポリイミド粉末(3)(2.50g)に、NMP(27.4g)を加え、70℃で24時間撹拌して溶解させた。その後、K1(0.13g)、BCS(7.83g)及びPB(3.92g)を加え、25℃で6時間撹拌して、樹脂組成物(4)を得た。この樹脂組成物には、濁りや析出などの異常は見られず、均一な溶液であった。
<実施例5>
合成例3の手法で得られたポリイミド粉末(3)(2.50g)に、γ-BL(5.88g)を加え、60℃で24時間撹拌して溶解させた。その後、PGME(33.3g)を加え、25℃で6時間撹拌して、樹脂組成物(5)を得た。この樹脂組成物には、濁りや析出などの異常は見られず、均一な溶液であった。
<実施例6>
合成例4の手法で得られたポリアミド酸溶液(4)(10.0g)に、γ-BL(0.33g)を加え、25℃で4時間撹拌した。その後、PGME(31.3g)を加え、25℃で6時間撹拌して、樹脂組成物(6)を得た。この樹脂組成物には、濁りや析出などの異常は見られず、均一な溶液であった。
<実施例7>
合成例4の手法で得られたポリアミド酸溶液(4)(10.0g)に、γ-BL(0.33g)を加え、25℃で4時間撹拌した。その後、K2(0.18g)及びPGME(31.3g)を加え、25℃で6時間撹拌して、樹脂組成物(7)を得た。この樹脂組成物には、濁りや析出などの異常は見られず、均一な溶液であった。
<実施例8>
合成例5の手法で得られたポリアミド酸溶液(5)(10.0g)に、γ-BL(0.33g)を加え、25℃で4時間撹拌した。その後、K2(0.13g)及びPGME(31.3g)を加え、25℃で6時間撹拌して、樹脂組成物(8)を得た。この樹脂組成物には、濁りや析出などの異常は見られず、均一な溶液であった。
<実施例9>
合成例6の手法で得られたポリアミド酸溶液(6)(10.0g)に、K1(0.08g)、NMP(19.9g)及びPB(11.8g)を加え、25℃で6時間撹拌して、樹脂組成物(9)を得た。この樹脂組成物には、濁りや析出などの異常は見られず、均一な溶液であった。
<実施例10>
合成例7の手法で得られたポリアミド酸溶液(7)(10.0g)に、γ-BL(0.33g)を加え、25℃で4時間撹拌した。その後、K2(0.08g)及びPGME(31.3g)を加え、25℃で6時間撹拌して、樹脂組成物(10)を得た。この樹脂組成物には、濁りや析出などの異常は見られず、均一な溶液であった。
<実施例11>
合成例8の手法で得られたポリアミド酸溶液(8)(10.0g)に、NMP(16.0g)、BCS(7.83g)及びPB(7.83g)を加え、25℃で6時間撹拌して、樹脂組成物(11)を得た。この樹脂組成物には、濁りや析出などの異常は見られず、均一な溶液であった。
<実施例12>
合成例9の手法で得られたポリアミド酸溶液(9)(10.0g)に、NMP(16.0g)及びBCS(15.7g)を加え、25℃で6時間撹拌して、樹脂組成物(12)を得た。この樹脂組成物には、濁りや析出などの異常は見られず、均一な溶液であった。
<実施例13>
合成例12の合成手法で得られたポリシロキサン溶液(1)(20.0g)に、ECS(12.5g)及びBCS(7.52g)を加え、25℃で6時間撹拌して、樹脂組成物(13)を得た。この樹脂組成物に、濁りや析出などの異常は見られず、均一な溶液であることが確認された。
<実施例14>
合成例13の合成手法で得られたポリシロキサン溶液(2)(20.0g)に、EC(8.72g)及びBCS(11.3g)を加え、25℃で6時間撹拌して、樹脂組成物(14)を得た。この樹脂組成物に、濁りや析出などの異常は見られず、均一な溶液であることが確認された。
<実施例15>
合成例14の合成手法で得られたポリシロキサン溶液(3)(20.0g)に、ECS(12.5g)及びBCS(7.52g)を加え、25℃で6時間撹拌して、樹脂組成物(15)を得た。この樹脂組成物に、濁りや析出などの異常は見られず、均一な溶液であることが確認された。
<比較例1>
合成例10の手法で得られたポリアミド酸溶液(10)(10.0g)に、NMP(16.0g)及びBCS(15.7g)を加え、25℃で6時間撹拌して、樹脂組成物(16)を得た。この樹脂組成物には、濁りや析出などの異常は見られず、均一な溶液であった。
<比較例2>
合成例11の手法で得られたポリアミド酸溶液(11)(10.0g)に、γ-BL(0.33g)及びPGME(31.3g)を加え、25℃で6時間撹拌して、樹脂組成物(17)を得た。この樹脂組成物には、濁りや析出などの異常は見られず、均一な溶液であった。
実施例及び比較例で得られた樹脂組成物を、表3~表5に示す。
【0142】
【表3】
【0143】
【表4】
【0144】
【表5】
【0145】
*2:括弧内の数値は重合体100質量部に対する架橋性化合物の導入量(質量部)を示す。
「液晶組成物の作製」
<液晶組成物(A)の作製>
R1(1.20g)、R2(0.30g)、R3(1.20g)、R4(0.90g)及びR5(0.30g)を混合し、60℃で2時間撹拌して、重合性化合物の溶液を作製した。その後、作製した重合性化合物の溶液、L1(6.00g)及びP1(0.10g)を混合し、25℃で6時間撹拌して、液晶組成物(A)を得た。
<液晶組成物(B)の作製>
R1(1.20g)、R2(0.30g)、R3(1.20g)、R4(0.90g)及びR5(0.30g)を混合し、60℃で2時間撹拌して、重合性化合物の溶液を作製した。その一方で、S1(0.20g)及びL1(5.80g)を混合し、25℃で2時間撹拌して特定液晶添加化合物を含む液晶を作製した。その後、作製した重合性化合物の溶液、特定液晶添加化合物を含む液晶、及びP1(0.10g)を混合し、25℃で6時間撹拌して、液晶組成物(B)を得た。
<液晶組成物(C)の作製>
R1(1.20g)、R2(0.30g)、R3(1.20g)、R4(0.90g)及びR5(0.30g)を混合し、60℃で2時間撹拌して、重合性化合物の溶液を作製した。その一方で、S2(0.40g)及びL1(5.60g)を混合し、25℃で2時間撹拌して特定液晶添加化合物を含む液晶を作製した。その後、作製した重合性化合物の溶液、特定液晶添加化合物を含む液晶、及びP1(0.10g)を混合し、25℃で6時間撹拌して、液晶組成物(C)を得た。
「液晶表示素子の作製(ガラス基板)」
前記実施例及び比較例の手法で得られた樹脂組成物を、細孔径1μmのメンブランフィルタで加圧濾過した。得られた溶液を純水及びIPA(イソプロピルアルコール)で洗浄した100×100mmのITO電極付きガラス基板(縦:100mm、横:100mm、厚さ:0.7mm)のITO面上にスピンコートし、ホットプレート上にて100℃で5分間、熱循環型クリーンオーブンにて210℃で30分間加熱処理をして、膜厚が100nmの樹脂膜付きのITO基板を得た。この樹脂膜付きのITO基板を2枚用意し、その一方の基板の樹脂膜面に、20μmのスペーサーを塗布した。その後、その基板のスペーサーを塗布した樹脂膜面に、ODF(One Drop Filling)法にて前記液晶組成物(A)~(C)を滴下し、次いで、他方の基板の樹脂膜面が向き合うように貼り合わせを行い、処理前の液晶表示素子を得た。
【0146】
この処理前の液晶表示素子に、照度20mW/cmのメタルハライドランプを用いて、350nm以下の波長をカットし、照射時間60秒で紫外線照射を行った。これにより、液晶表示素子(ガラス基板)を得た。
「液晶表示素子の作製(プラスチック基板)」
前記実施例及び比較例の手法で得られた樹脂組成物を、細孔径1μmのメンブランフィルタで加圧濾過した。得られた溶液を純水で洗浄した150×150mmのITO電極付きPET基板(縦:150mm、横:150mm、厚さ:0.1mm)のITO面上にバーコーターにて塗布をし、熱循環型オーブンにて120℃で2分間加熱処理をして、膜厚が100nmの樹脂膜付きのITO基板を得た。この樹脂膜付きのITO基板を2枚用意し、その一方の基板の樹脂膜面に、20μmのスペーサーを塗布した。その後、その基板のスペーサーを塗布した樹脂膜面に、ODF(One Drop Filling)法にて前記液晶組成物(A)~(C)を滴下し、次いで、他方の基板の樹脂膜面が向き合うように貼り合わせを行い、処理前の液晶表示素子を得た。なお、ODF法にて、液晶組成物の滴下及び貼り合わせを行う際には、ITO電極付きPET基板の支持基板としてガラス基板を用いた。その後、紫外線を照射する前に、その支持基板を外した。
【0147】
この処理前の液晶表示素子に、前記「液晶表示素子の作製(ガラス基板)」と同様の手法で紫外線を照射し、液晶表示素子(プラスチック基板)を得た。
「光学特性(散乱特性と透明性)の評価」
本評価は、液晶表示素子(ガラス基板及びプラスチック基板)の電圧無印加状態(0V)及び電圧印加状態(交流駆動:10V~60V)のHaze(曇り度)を測定することで行った。その際、Hazeは、JIS K 7136に準拠し、ヘーズメータ(HZ-V3,スガ試験機社製)で測定した。なお、本評価では、電圧無印加状態のHazeが高いほど散乱特性に優れ、電圧印加状態でのHazeが低いほど透明性に優れるとした。
【0148】
また、液晶表示素子の高温高湿環境下の安定性試験として、温度80℃、湿度90%RHの恒温恒湿槽内に24時間保管した後の測定も行った。具体的には、初期のHazeに対して、恒温恒湿槽保管後のHazeの変化が小さいものほど、本評価に優れるとした。
【0149】
更に、液晶表示素子の光の照射に対する安定性試験として、卓上型UV硬化装置(HCT3B28HEX-1)(センライト社製)を用いて、365nm換算で5J/cmの紫外線を照射した後の観察も行った。具体的には、初期のHazeに対して、紫外線照射後のHazeの変化が小さいものほど、本評価に優れるとした。
【0150】
初期、恒温恒湿槽保管後(恒温恒湿)及び紫外線照射後(紫外線)のHazeの測定結果を、表6~表8にまとめて示す。
<実施例16~実施例31、比較例3及び比較例4>
前記実施例及び比較例の手法で得られた樹脂組成物(1)~(17)のいずれかと、前記液晶組成物(A)~(C)を用いて、前記手法で液晶表示素子の作製及び光学特性(散乱特性と透明性)の評価を行った。その際、実施例16~実施例19、実施例25、実施例27、実施例28、実施例30及び比較例3は、ガラス基板を用いて液晶表示素子の作製と各評価を行い、実施例20~実施例24、実施例26、実施例29、実施例31及び比較例4は、プラスチック基板を用いた。
【0151】
【表6】
【0152】
【表7】
【0153】
【表8】
【0154】
前記の通り、特定構造(1)を有する重合体を含む樹脂組成物を用いた実施例の液晶表示素子は、それを用いてない比較例に比べて、電圧印加状態でのHazeが低く、且つ、より低い電圧でHazeが低くなった。即ち、実施例では、良好な光学特性(透明性)を発現し、且つ、液晶表示素子の駆動電圧が低くなった。具体的には、実施例16と比較例3との比較、及び実施例21と比較例4との比較である。
また、重合体に、特定構造(2)を有する特定ジアミン(2)を用いた場合、恒温恒湿槽保管後及び紫外線照射後のHazeの変化が小さくなった。具体的には、同一の条件での比較において、実施例16と実施例17との比較である。
更に、樹脂組成物に特定架橋性化合物を導入した場合、恒温恒湿槽保管後及び紫外線照射後のHazeの変化が小さくなった。具体的には、同一の条件での比較において、実施例18と実施例19との比較、及び実施例21と実施例22との比較である。
加えて、特定液晶添加化合物を含む液晶組成物を用いた場合、それを用いない場合に比べて、電圧印加状態でのHazeがより低くなり、更に、駆動電圧もより低くなった。具体的には、同一の条件での比較において、実施例22と実施例23との比較である。
【産業上の利用可能性】
【0155】
特定の構造を有する重合体を含む樹脂組成物を用いることで、光学特性が良好で、液晶表示素子の駆動電圧が低くなる液晶表示素子が得られる。
【0156】
また、本発明の液晶表示素子は、電圧無印加時に散乱状態となり、電圧印加時には透明状態になるノーマル型素子に、好適に用いることができる。そして、本素子は、表示を目的とする液晶ディスプレイ、更には、光の遮断と透過とを制御する調光窓や光シャッター素子などに用いることができ、このノーマル型素子の基板には、プラスチック基板を用いることができる。
【0157】
なお、2019年3月8日に出願された日本特許出願2019-042708号の明細書、特許請求の範囲及び要約書の全内容をここに引用し、本発明の明細書の開示として、取り入れるものである。