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特許7494841ドルメン構造を有する半導体装置及びその製造方法、並びに、支持片形成用積層フィルム及びその製造方法
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  • 特許-ドルメン構造を有する半導体装置及びその製造方法、並びに、支持片形成用積層フィルム及びその製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-27
(45)【発行日】2024-06-04
(54)【発明の名称】ドルメン構造を有する半導体装置及びその製造方法、並びに、支持片形成用積層フィルム及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 25/07 20060101AFI20240528BHJP
   H01L 25/065 20230101ALI20240528BHJP
   H01L 25/18 20230101ALI20240528BHJP
【FI】
H01L25/08 E
H01L25/08 Z
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2021516268
(86)(22)【出願日】2020-04-24
(86)【国際出願番号】 JP2020017728
(87)【国際公開番号】W WO2020218523
(87)【国際公開日】2020-10-29
【審査請求日】2023-02-27
(31)【優先権主張番号】PCT/JP2019/017701
(32)【優先日】2019-04-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004455
【氏名又は名称】株式会社レゾナック
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100169454
【弁理士】
【氏名又は名称】平野 裕之
(74)【代理人】
【識別番号】100169063
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 洋平
(72)【発明者】
【氏名】矢羽田 達也
(72)【発明者】
【氏名】谷口 紘平
(72)【発明者】
【氏名】橋本 慎太郎
(72)【発明者】
【氏名】尾崎 義信
(72)【発明者】
【氏名】板垣 圭
【審査官】庄司 一隆
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第07859119(US,B1)
【文献】特開2016-216562(JP,A)
【文献】特開2006-005333(JP,A)
【文献】特表2017-515306(JP,A)
【文献】特開2003-124433(JP,A)
【文献】特開2002-222889(JP,A)
【文献】特開2015-176906(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2007/0181990(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2008/0029885(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2013/0270717(US,A1)
【文献】特開2013-131557(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 25/07
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、前記基板上に配置された第一のチップと、前記基板上であって前記第一のチップの周囲に配置された複数の支持片と、前記複数の支持片によって支持され且つ前記第一のチップを覆うように配置された第二のチップとを含むドルメン構造を有する半導体装置の製造方法であって、
(A)基材フィルムと、感圧接着層と、支持片形成用フィルムとをこの順序で備える積層フィルムを準備する工程と、
(B)前記支持片形成用フィルムを個片化することによって、前記感圧接着層の表面上に複数の支持片を形成する工程と、
(C)前記感圧接着層から前記支持片をピックアップする工程と、
(D)基板上に第一のチップを配置する工程と、
(E)前記基板上であって前記第一のチップの周囲又は前記第一のチップが配置されるべき領域の周囲に複数の前記支持片を配置する工程と、
(F)第二のチップと、前記第二のチップの一方の面上に設けられた接着剤片とを備える接着剤片付きチップを準備する工程と、
(G)複数の前記支持片の表面上に前記接着剤片付きチップを配置することによってドルメン構造を構築する工程と、
を含み、
前記支持片形成用フィルムが金属層を少なくとも含む多層構造を有する、半導体装置の製造方法。
【請求項2】
(B)工程と(C)工程の間に、前記感圧接着層に紫外線を照射する工程を含まない、請求項1に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項3】
前記支持片形成用フィルムが熱硬化性樹脂層を含み、
(G)工程よりも前に、前記支持片形成用フィルム又は前記支持片を加熱する工程を含む、請求項1又は2に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項4】
基板と、前記基板上に配置された第一のチップと、前記基板上であって前記第一のチップの周囲に配置された複数の支持片と、前記複数の支持片によって支持され且つ前記第一のチップを覆うように配置された第二のチップとを含むドルメン構造を有する半導体装置の製造プロセスにおいて使用される支持片形成用積層フィルムであって、
基材フィルムと、
感圧接着層と、
支持片形成用フィルムと、
をこの順序で備え、
前記支持片形成用フィルムが金属層を少なくとも含む多層構造を有する、支持片形成用積層フィルム。
【請求項5】
前記金属層が銅層又はアルミニウム層である、請求項に記載の支持片形成用積層フィルム。
【請求項6】
前記支持片形成用フィルムの厚さが5~180μmである、請求項又はに記載の支持片形成用積層フィルム。
【請求項7】
前記感圧接着層が光反応性を有する炭素-炭素二重結合を有する樹脂を含有しない、請求項4~6のいずれか一項に記載の支持片形成用積層フィルム。
【請求項8】
前記支持片形成用フィルムが熱硬化性樹脂層を含む、請求項4~7のいずれか一項に記載の支持片形成用積層フィルム。
【請求項9】
前記熱硬化性樹脂層がエポキシ樹脂を含む、請求項に記載の支持片形成用積層フィルム。
【請求項10】
前記熱硬化性樹脂層がエラストマを含む、請求項又はに記載の支持片形成用積層フィルム。
【請求項11】
基板と、前記基板上に配置された第一のチップと、前記基板上であって前記第一のチップの周囲に配置された複数の支持片と、前記複数の支持片によって支持され且つ前記第一のチップを覆うように配置された第二のチップとを含むドルメン構造を有する半導体装置の製造プロセスにおいて使用される支持片形成用積層フィルムの製造方法であって、
基材フィルムと、その一方の面上に形成された感圧接着層とを有する粘着フィルムを準備する工程と、
前記感圧接着層の表面上に支持片形成用フィルムを積層する工程と、
を含み、
前記支持片形成用フィルムが金属層を少なくとも含む多層構造を有する、支持片形成用積層フィルムの製造方法。
【請求項12】
基板と、前記基板上に配置された第一のチップと、前記基板上であって前記第一のチップの周囲に配置された複数の支持片と、前記複数の支持片によって支持され且つ前記第一のチップを覆うように配置された第二のチップとを含むドルメン構造を有する半導体装置の製造プロセスにおいて使用される支持片形成用積層フィルムの製造方法であって、
基材フィルムと、感圧接着層と、熱硬化性樹脂層とをこの順序で備える積層フィルムを準備する工程と、
前記熱硬化性樹脂層の表面に金属層を形成する工程と、
を含む、支持片形成用積層フィルムの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、基板と、基板上に配置された第一のチップと、基板上であって第一のチップの周囲に配置された複数の支持片と、複数の支持片によって支持され且つ第一のチップを覆うように配置された第二のチップとを含むドルメン構造を有する半導体装置に関する。また、本開示は、ドルメン構造を有する半導体装置の製造方法、並びに、支持片形成用積層フィルム及びその製造方法に関する。なお、ドルメン(dolmen、支石墓)は、石墳墓の一種であり、複数の支柱石と、その上に載せられた板状の岩とを備える。ドルメン構造を有する半導体装置において、支持片が「支柱石」に相当し、第二のチップが「板状の岩」に相当する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体装置の分野において、高集積、小型化及び高速化が求められている。半導体装置の一態様として、基板上に配置されたコントローラーチップの上に半導体チップを積層させる構造が注目を集めている。例えば、特許文献1は、コントローラダイと、コントローラダイの上に支持部材によって支持されたメモリダイとを含む半導体ダイアセンブリを開示している。特許文献1の図1Aに図示された半導体アセンブリ100はドルメン構造を有するということができる。すなわち、半導体アセンブリ100は、パッケージ基板102と、その表面上に配置されたコントローラダイ103と、コントローラダイ103の上方に配置されたメモリダイ106a,106bと、メモリダイ106aを支持する支持部材130a,130bとを備える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特表2017-515306号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1は、支持部材(支持片)として、シリコンなどの半導体材料を使用できること、より具体的には半導体ウェハをダイシングして得られる半導体材料の断片を使用できることを開示している(特許文献1の[0012]、[0014]及び図2参照)。半導体ウェハを使用してドルメン構造用の支持片を製造するには、通常の半導体チップの製造と同様、例えば、以下の各工程が必要である。
(1)半導体ウェハにバックグラインドテープを貼り付ける工程
(2)半導体ウェハをバックグラインドする工程
(3)ダイシングリングとその中に配置されたバックグラインド後の半導体ウェハに対し、粘着層と接着剤層とを有するフィルム(ダイシング・ダイボンディング一体型フィルム)を貼り付ける工程
(4)半導体ウェハからバックグラインドテープを剥がす工程
(5)半導体ウェハを個片化する工程
(6)半導体チップと接着剤片の積層体からなる支持片を粘着層からピックアップする工程
(7)複数の支持片を基板の所定の位置に圧着する工程
【0005】
本開示は、ドルメン構造を有する半導体装置の製造プロセスにおいて支持片を作製する工程を簡略化できるとともに、支持片の優れたピックアップ性を達成できる半導体装置の製造方法を提供する。また、本開示は、ドルメン構造を有する半導体装置、並びに支持片形成用積層フィルム及びその製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一側面はドルメン構造を有する半導体装置の製造方法に関する。この製造方法は以下の工程を含む。
(A)基材フィルムと、感圧接着層と、支持片形成用フィルムとをこの順序で備える積層フィルムを準備する工程
(B)支持片形成用フィルムを個片化することによって、感圧接着層の表面上に複数の支持片を形成する工程
(C)感圧接着層から支持片をピックアップする工程
(D)基板上に第一のチップを配置する工程
(E)基板上であって第一のチップの周囲又は第一のチップが配置されるべき領域の周囲に複数の支持片を配置する工程
(F)第二のチップと、第二のチップの一方の面上に設けられた接着剤片とを備える接着剤片付きチップを準備する工程
(G)複数の支持片の表面上に接着剤片付きチップを配置することによってドルメン構造を構築する工程
上記支持片形成用フィルムは金属層を少なくとも含む多層構造を有する。本発明者らの検討によると、金属層を含む支持片形成用フィルムと、紫外線硬化型の粘着層とを併用した場合、支持片形成用フィルムを個片化して得られる支持片のピックアップ性が不十分となる傾向にある。すなわち、例えば、金属層を含む支持片形成用フィルムをブレードで個片化した場合、金属の展性に起因して金属片(金属層が個片化されたもの)のエッジが粘着層に入り込んだ状態となりやすい。その後、紫外線照射によって粘着層が硬化すると金属片のエッジが硬化した粘着層に固定され、これにより支持片のピックアップ性が不十分となる傾向にあると本発明者らは推察する。紫外線硬化型の粘着層の代わりに、感圧接着層(感圧型の粘着層)を採用することで、支持片形成用フィルムが金属層を含む場合であっても、支持片の優れたピックアップ性を達成できる。
【0007】
(D)工程及び(E)工程はどちらを先に実施してもよい。(D)工程を先に実施する場合、(E)工程において、基板上であって第一のチップの周囲に複数の支持片を配置すればよい。他方、(E)工程を先に実施する場合、(E)工程において、基板上であって第一のチップが配置されるべき領域の周囲に複数の支持片を配置し、その後、(D)工程において、当該領域に第一のチップを配置すればよい。
【0008】
本開示に係る上記製造方法においては、支持片形成用フィルムを個片化して得られる支持片を使用する。これにより、支持片として、半導体ウェハをダイシングして得られる半導体材料の断片を使用する従来の製造方法と比較すると、支持片を作製する工程を簡略化できる。すなわち、従来、上述の(1)~(7)の工程を必要としていたのに対し、支持片形成用フィルムは半導体ウェハを含まないため、半導体ウェハのバックグラインドに関する(1)、(2)及び(4)の工程を省略できる。また、樹脂材料と比較して高価な半導体ウェハを使用しないため、コストも削減できる。
【0009】
(A)工程で準備する積層フィルムは感圧接着層を有するものであるから、(B)工程と(C)工程の間に、感圧接着層に紫外線を照射する工程を実施しなくてよい。
【0010】
支持片形成用フィルムが熱硬化性樹脂層を含む場合、支持片形成用フィルム又は支持片を加熱して熱硬化性樹脂層又は接着剤片を硬化させる工程は適切なタイミングで実施すればよく、例えば、(G)工程よりも前に実施すればよい。複数の支持片の表面に接するように接着剤片付きチップを配置する段階において、熱硬化性樹脂層が既に硬化していることで接着剤片付きチップの配置に伴って支持片が変形することを抑制できる。なお、熱硬化性樹脂層は他の部材(例えば、基板)に対して接着性を有するため、支持片に接着剤層等を別途設けなくてもよい。
【0011】
本開示の一側面はドルメン構造を有する半導体装置に関する。すなわち、この半導体装置は、基板と、基板上に配置された第一のチップと、基板上であって第一のチップの周囲に配置された複数の支持片と、複数の支持片によって支持され且つ第一のチップを覆うように配置された第二のチップとを含むドルメン構造を有し、支持片が金属片を少なくとも含む多層構造を有する。
【0012】
本開示に係る上記半導体装置は、第二のチップの一方の面上に設けられており且つ第二のチップと複数の支持片とによって挟まれている接着剤片を更に備えてもよい。この場合、上記第一のチップは、接着剤片と離間していてもよいし、接着剤片と接していてもよい。この接着剤片は、例えば、第二のチップにおける第一のチップと対面する領域を少なくとも覆うように設けられている。当該接着剤片は、第二のチップの上記領域から第二のチップの周縁側にまで連続的に延在しており第二のチップと複数の支持片とによって挟まれていてもよい。つまり、一つの当該接着剤片が第二のチップの上記領域を覆い且つ第二のチップと複数の支持片とを接着していてもよい。
【0013】
本開示の一側面は支持片形成用積層フィルムに関する。この積層フィルムは、基材フィルムと、感圧接着層と、支持片形成用フィルムとをこの順序で備え、支持片形成用フィルムは金属層を少なくとも含む多層構造を有する。金属層の具体例として、銅層及びアルミニウム層が挙げられる。感圧接着層は、紫外線照射によって硬化するものである必要がないため、光反応性を有する炭素-炭素二重結合を有する樹脂を含有しなくてよい。なお、感圧接着層は光反応性を有する炭素-炭素二重結合を有する樹脂を含有してもよい。例えば、感圧接着層は、炭素-炭素二重結合を有する樹脂を含む粘着層の所定の領域に紫外線を照射することによって粘着層の当該領域の粘着性を低下させたものであってもよく、光反応性を有する炭素-炭素二重結合を有する樹脂が残存していてもよい。
【0014】
上記支持片形成用フィルムの厚さは、例えば、5~180μmである。支持片形成用フィルムの厚さがこの範囲であることで、第一のチップ(例えば、コントローラチップ)に対して適度な高さのドルメン構造を構築できる。支持片形成用フィルムは熱硬化性樹脂層を含んでもよい。熱硬化性樹脂層は、例えば、エポキシ樹脂を含み、エラストマを含むことが好ましい。支持片を構成する熱硬化性樹脂層がエラストマを含むことで半導体装置内における応力を緩和できる。
【0015】
本開示の一側面は支持片形成用積層フィルムの製造方法に関する。この製造方法は、基材フィルムと、その一方の面上に形成された感圧接着層とを有する粘着フィルムを準備する工程と、感圧接着層の表面上に支持片形成用フィルムを積層する工程とを含み、支持片形成用フィルムは金属層を少なくとも含む多層構造を有する。
【0016】
熱硬化性樹脂層及び金属層を有する支持片形成用積層フィルムは、例えば、以下のように製造することができる。すなわち、この支持片形成用積層フィルムの製造方法は、基材フィルムと、感圧接着層と、熱硬化性樹脂層とをこの順序で備える積層フィルムを準備する工程と、熱硬化性樹脂層の表面に金属層を形成する工程とを含む。
【発明の効果】
【0017】
本開示によれば、ドルメン構造を有する半導体装置の製造プロセスにおいて支持片を作製する工程を簡略化できるとともに、支持片の優れたピックアップ性を達成できる半導体装置の製造方法が提供される。また、本開示によれば、ドルメン構造を有する半導体装置、並びに支持片形成用積層フィルム及びその製造方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1図1は本開示に係る半導体装置の第一実施形態を模式的に示す断面図である。
図2図2(a)及び図2(b)は第一のチップと複数の支持片との位置関係の例を模式的に示す平面図である。
図3図3(a)は支持片形成用積層フィルムの一実施形態を模式的に示す平面図であり、図3(b)は図3(a)のb-b線における断面図である。
図4図4は感圧接着層と支持片形成用フィルムとを貼り合わせる工程を模式的に示す断面図である。
図5図5(a)~図5(d)は支持片の作製過程を模式的に示す断面図である。
図6図6は基板上であって第一のチップの周囲に複数の支持片を配置した状態を模式的に示す断面図である。
図7図7は接着剤片付きチップの一例を模式的に示す断面図である。
図8図8は基板上に形成されたドルメン構造を模式的に示す断面図である。
図9図9は本開示に係る半導体装置の第二実施形態を模式的に示す断面図である。
図10図10は支持片形成用積層フィルムの他の実施形態を模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照しつつ、本開示の実施形態について詳細に説明する。ただし、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。なお、本明細書において、「(メタ)アクリル酸」とは、アクリル酸又はメタクリル酸を意味し、「(メタ)アクリレート」とは、アクリレート又はそれに対応するメタクリレートを意味する。「A又はB」とは、AとBのどちらか一方を含んでいればよく、両方とも含んでいてもよい。
【0020】
本明細書において「層」との語は、平面図として観察したときに、全面に形成されている形状の構造に加え、一部に形成されている形状の構造も包含される。また、本明細書において「工程」との語は、独立した工程だけではなく、他の工程と明確に区別できない場合であってもその工程の所期の作用が達成されれば、本用語に含まれる。また、「~」を用いて示された数値範囲は、「~」の前後に記載される数値をそれぞれ最小値及び最大値として含む範囲を示す。
【0021】
本明細書において組成物中の各成分の含有量は、組成物中に各成分に該当する物質が複数存在する場合、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数の物質の合計量を意味する。また、例示材料は特に断らない限り単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、本明細書中に段階的に記載されている数値範囲において、ある段階の数値範囲の上限値又は下限値は、他の段階の数値範囲の上限値又は下限値に置き換えてもよい。また、本明細書中に記載されている数値範囲において、その数値範囲の上限値又は下限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。
【0022】
<第一実施形態>
(半導体装置)
図1は本実施形態に係る半導体装置を模式的に示す断面図である。この図に示す半導体装置100は、基板10と、基板10の表面上に配置されたチップT1(第一のチップ)と、基板10の表面上であってチップT1の周囲に配置された複数の支持片Dcと、チップT1の上方に配置されたチップT2(第二のチップ)と、チップT2と複数の支持片Dcとによって挟まれている接着剤片Tcと、チップT2上に積層されたチップT3,T4と、基板10の表面上の電極(不図示)とチップT1~T4とをそれぞれ電気的に接続する複数のワイヤwと、チップT1とチップT2との隙間等に充填された封止材50とを備える。
【0023】
本実施形態においては、複数の支持片Dcと、チップT2と、支持片DcとチップT2との間に位置する接着剤片Tcとによって基板10上にドルメン構造が構成されている。チップT1は、接着剤片Tcと離間している。支持片Dcの厚さを適宜設定することで、チップT1の上面と基板10とを接続するワイヤwのためのスペースを確保することができる。チップT1が接着剤片Tcと離間していることで、チップT1と接続されるワイヤwの上部がチップT2に接することによるワイヤwのショートを防ぐことができる。また、チップT2と接する接着剤片Tcにワイヤを埋め込む必要性がないため、接着剤片Tcを薄くできるという利点がある。
【0024】
図1に示すように、チップT1とチップT2の間の接着剤片Tcは、チップT2におけるチップT1と対面する領域Rを覆うとともに、領域RからチップT2の周縁側にまで連続的に延在している。つまり、一つの接着剤片Tcが、チップT2の領域Rを覆うとともに、チップT2と複数の支持片の間に介在し、これらを接着している。なお、図1には、接着剤片TcがチップT2の一方の面(下面)の全体を覆うように設けられている態様を図示した。しかし、接着剤片Tcは、半導体装置100の製造過程において収縮することがあり得るため、チップT2の一方の面(下面)の全体を実質的に覆っていればよく、例えば、チップT2の周縁の一部に接着剤片Tcで覆われていない箇所があってもよい。図1におけるチップT2の下面はチップの裏面に相当する。近年のチップの裏面は凹凸が形成されていることが多い。チップT2の裏面の実質的全体が接着剤片Tcで覆われていることで、チップT2にクラック又は割れが生じることを抑制できる。
【0025】
基板10は、有機基板であってもよく、リードフレーム等の金属基板であってもよい。基板10は、半導体装置100の反りを抑制する観点から、基板10の厚さは、例えば、90~300μmであり、90~210μmであってもよい。
【0026】
チップT1は、例えば、コントローラーチップであり、接着剤片T1cによって基板10に接着され且つワイヤwによって基板10と電気的に接続されている。平面視におけるチップT1の形状は、例えば矩形(正方形又は長方形)である。チップT1の一辺の長さは、例えば、5mm以下であり、2~5mm又は1~5mmであってもよい。チップT1の厚さは、例えば、10~150μmであり、20~100μmであってもよい。
【0027】
チップT2は、例えば、メモリチップであり、接着剤片Tcを介して支持片Dcの上に接着されている。平面視でチップT2は、チップT1よりも大きいサイズを有する。平面視におけるチップT2の形状は、例えば矩形(正方形又は長方形)である。チップT2の一辺の長さは、例えば、20mm以下であり、4~20mm又は4~12mmであってもよい。チップT2の厚さは、例えば、10~170μmであり、20~120μmであってもよい。なお、チップT3,T4も、例えば、メモリチップであり、接着剤片Tcを介してチップT2の上に接着されている。チップT3,T4の一辺の長さは、チップT2と同様であればよく、チップT3,T4の厚さもチップT2と同様であればよい。
【0028】
支持片Dcは、チップT1の周囲に空間を形成するスペーサーの役割を果たす。支持片Dcは、二つの接着剤片5cと、これらに挟まれた金属片6pとによって構成されている。接着剤片5cは熱硬化性樹脂組成物(接着剤片5p)の硬化物からなる。金属片6pは金属材料(例えば、銅又はアルミニウム)からなる。なお、図2(a)に示すように、チップT1の両側の離れた位置に、二つの支持片Dc(形状:長方形)を配置してもよいし、図2(b)に示すように、チップT1の角に対応する位置にそれぞれ一つの支持片Dc(形状:正方形、計4個)を配置してもよい。平面視における支持片Dcの一辺の長さは、例えば、20mm以下であり、1~20mm又は1~12mmであってもよい。支持片Dcの厚さ(高さ)は、例えば、10~180μmであり、20~120μmであってもよい。
【0029】
支持片Dcの厚さに対する二つの接着剤片5c,5cの厚さの合計の比率は好ましくは0.1~0.9であり、より好ましくは0.2~0.8であり、更に好ましくは0.35~0.7であり、もっと好ましくは0.35~0.6である。この比率が上記範囲であることで、支持片Daの製造過程においてピックアップ性を実現し得る(図5(d)参照)。すなわち、比率が0.1以上であることで、金属片6pのエッジが感圧接着層2に入り込むことに起因して支持片Daのピックアップ性が低下することをより高度に抑制できる。他方、比率が0.9以下であれば、金属片6pが十分な厚さを有するため、金属片6pがバネ板のような役割を果たし、より優れたピックアップ性を達成できる。これらの観点から、金属片6pの厚さは、例えば、10~80μmであり、20~60μmであってもよい。接着剤片5c(一層)の厚さは、例えば、5~120μmであり、10~60μmであってもよい。
【0030】
(支持片の作製方法)
支持片の作製方法の一例について説明する。なお、図1に示す支持片Dcは、これに含まれる接着剤片(熱硬化性樹組成物)が硬化した後のものである。一方、支持片Daは、これに含まれる接着剤片(熱硬化性樹組成物)が完全に硬化する前の状態のものである(例えば、図5(b)参照)。
【0031】
まず、図3(a)及び図3(b)に示す支持片形成用積層フィルム20(以下、場合により「積層フィルム20」という。)を準備する。積層フィルム20は、基材フィルム1と、感圧接着層2と、支持片形成用フィルムDとを備える。基材フィルム1は、例えば、ポリエチレンテレフタレートフィルム(PETフィルム)である。感圧接着層2は、パンチング等によって円形に形成されている(図3(a)参照)。支持片形成用フィルムDは、パンチング等によって円形に形成されており、感圧接着層2よりも小さい直径を有する(図3(a)参照)。支持片形成用フィルムDは、二つの熱硬化性樹脂層5と、これらに挟まれた金属層6とによって構成されている。
【0032】
熱硬化性樹脂層5の厚さは、例えば、5~180μmであり、10~170μm又は15~160μmであってもよい。二つの熱硬化性樹脂層5の厚さは同じであってもよいし、異なっていてもよい。金属層6は、例えば、銅層又はアルミニウム層である。熱硬化性樹脂層5は熱硬化性樹脂組成物からなる。熱硬化性樹脂組成物は、半硬化(Bステージ)状態を経て、その後の硬化処理によって完全硬化物(Cステージ)状態となり得るものである。熱硬化性樹脂組成物は、エポキシ樹脂と、硬化剤と、エラストマ(例えば、アクリル樹脂)とを含み、必要に応じて、無機フィラー及び硬化促進剤等を更に含む。二つの熱硬化性樹脂層5の組成は同じであってもよいし、異なっていてもよい。熱硬化性樹脂層5を構成する熱硬化性樹脂組成物の詳細については後述する。
【0033】
金属層6の厚さは、例えば、5~100μmであり、10~90μm又は20~80μmであってもよい。金属層6の厚さが上記範囲であることで、支持片Daをピックアップする工程において(図5(d)参照)、金属片6pがバネ板のような役割を果たし、優れたピックアップ性を達成できる。また、積層フィルム20が金属層6を含むことで、樹脂材料と金属材料の光学的なコントラストにより、ピックアップ工程において支持片Daの優れた視認性を達成し得る。
【0034】
支持片形成用フィルムDの厚さに対する二つの熱硬化性樹脂層5,5の厚さの合計の比率は好ましくは0.1~0.9であり、より好ましくは0.2~0.8であり、更に好ましくは0.35~0.7であり、もっと好ましくは0.35~0.6ある。この比率が上記範囲であることで、支持片Daの製造過程においてピックアップ性を実現し得る(図5(d)参照)。すなわち、比率が0.1以上であることで、金属片6pのエッジが感圧接着層2に入り込むことに起因して支持片Daのピックアップ性が低下することをより高度に抑制できる。他方、比率が0.9以下であれば、金属片6pが十分な厚さを有するため、金属片6pがバネ板のような役割を果たし、より優れたピックアップ性を達成できる。これらの観点から、金属層6の厚さは、例えば、10~80μmであり、20~60μmであってもよい。熱硬化性樹脂層5(一層)の厚さは、例えば、5~120μmであり、10~60μmであってもよい。
【0035】
積層フィルム20は、例えば、基材フィルム1とその表面上に感圧接着層2とを有する第1の積層フィルムと、カバーフィルム3とその表面上に支持片形成用フィルムDとを有する第2の積層フィルムとを貼り合わせることによって作製することができる(図4参照)。第1の積層フィルムは、基材フィルム1の表面上に感圧接着層を塗工によって形成する工程と、感圧接着層をパンチング等によって所定の形状(例えば、円形)に加工する工程を経て得られる。第2の積層フィルムは、カバーフィルム3(例えば、PETフィルム又はポリエチレンフィルム)の表面上に熱硬化性樹脂層5を塗工によって形成する工程と、熱硬化性樹脂層5の表面に金属層6を形成する工程と、金属層6の表面上に熱硬化性樹脂層5を塗工によって形成する工程と、これらの工程を経て形成された支持片形成用フィルムをパンチング等によって所定の形状(例えば、円形)に加工する工程を経て得られる。積層フィルム20を使用するに際し、カバーフィルム3は適当なタイミングで剥がされる。
【0036】
図5(a)に示されたように、積層フィルム20にダイシングリングDRを貼り付ける。すなわち、積層フィルム20の感圧接着層2にダイシングリングDRを貼り付け、ダイシングリングDRの内側に支持片形成用フィルムDが配置された状態にする。支持片形成用フィルムDをダイシングによって個片化する(図5(b)参照)。これにより、支持片形成用フィルムDから多数の支持片Daが得られる。支持片Daは、二つの接着剤片5pと、これらに挟まれた金属片6pとによって構成される。その後、図5(c)に示されるように、基材フィルム1をエキスパンドすることで、支持片Daを互いに離間させる。図5(d)に示されるように、支持片Daを突き上げ治具42で突き上げることによって感圧接着層2から支持片Daを剥離させるとともに、吸引コレット44で吸引して支持片Daをピックアップする。なお、ダイシング前の支持片形成用フィルムD又はピックアップ前の支持片Daを加熱することによって、熱硬化性樹脂の硬化反応を進行させておいてもよい。ピックアップする際に支持片Daが適度に硬化していることで優れたピックアップ性を達成し得る。個片化のための切り込みは支持片形成用フィルムDの外縁まで形成されていることが好ましい。支持片形成用フィルムDの直径は、例えば、300~310mm又は300~305mmであってもよい。支持片形成用フィルムDの平面視における形状は、図3(a)に示す円形に限られず、矩形(正方形又は長方形)であってもよい。
【0037】
(半導体装置の製造方法)
半導体装置100の製造方法について説明する。本実施形態に係る製造方法は、以下の(A)~(H)の工程を含む。
(A)積層フィルム20を準備する工程(図4参照)
(B)支持片形成用フィルムDを個片化することによって、感圧接着層2の表面上に複数の支持片Daを形成する工程(図5(b)参照)
(C)感圧接着層2から支持片Daをピックアップする工程(図5(d)参照)
(D)基板10上に第一のチップT1を配置する工程
(E)基板10上であって第一のチップT1の周囲に複数の支持片Daを配置する工程(図6参照)
(F)第二のチップT2と、第二のチップT2の一方の面上に設けられた接着剤片Taとを備える接着剤片付きチップT2aを準備する工程(図7参照)
(G)複数の支持片Dcの表面上に接着剤片付きチップT2aを配置することによってドルメン構造を構築する工程(図8参照)
(H)チップT1とチップT2との隙間等を封止材50で封止する工程(図1参照)
【0038】
(A)~(C)工程は、複数の支持片Daを作製するプロセスであり、説明済みである。(D)~(H)工程は、複数の支持片Daを使用してドルメン構造を基板10上に構築していくプロセスである。以下、図6~8を参照しながら、(D)~(H)工程について説明する。
【0039】
[(D)工程]
(D)工程は、基板10上に第一のチップT1を配置する工程である。例えば、まず、基板10上の所定の位置に接着剤層T1cを介してチップT1を配置する。その後、チップT1はワイヤwで基板10と電気的に接続される。(D)工程は、(E)工程よりも前に行われる工程であってよく、(A)工程よりも前、(A)工程と(B)工程の間、(B)工程と(C)工程の間、又は(C)工程と(E)工程の間であってもよい。
【0040】
[(E)工程]
(E)工程は、基板10上であって第一のチップT1の周囲に複数の支持片Daを配置する工程である。この工程を経て、図6に示す構造体30が作製される。構造体30は、基板10と、その表面上に配置されたチップT1と、複数の支持片Daとを備える。支持片Daの配置は圧着処理によって行えばよい。圧着処理は、例えば、80~180℃、0.01~0.50MPaの条件で、0.5~3.0秒間にわたって実施することが好ましい。なお、支持片Daは、これに含まれる接着剤片5pが(E)工程の時点で完全に硬化して支持片Dcとなっていてもよく、この時点では完全硬化していなくてもよい。支持片Daに含まれる接着剤片5pは(G)工程の開始前の時点で完全硬化して接着剤片5cとなっていてもよい。
【0041】
[(F)工程]
(F)工程は、図7に示す接着剤片付きチップT2aを準備する工程である。接着剤片付きチップT2aは、チップT2と、その一方の表面に設けられた接着剤片Taとを備える。接着剤片付きチップT2aは、例えば、半導体ウェハ及びダイシング・ダイボンディング一体型フィルムを使用し、ダイシング工程及びピックアップ工程を経て得ることができる。
【0042】
[(G)工程]
(G)工程は、複数の支持片Dcの上面に接着剤片Taが接するように、チップT1の上方に接着剤片付きチップT2aを配置する工程である。具体的には、支持片Dcの上面に接着剤片Taを介してチップT2を圧着する。この圧着処理は、例えば、80~180℃、0.01~0.50MPaの条件で、0.5~3.0秒間にわたって実施することが好ましい。次に、加熱によって接着剤片Taを硬化させる。この硬化処理は、例えば、60~175℃、0.01~1.0MPaの条件で、5分間以上にわたって実施することが好ましい。これにより、接着剤片Taが硬化して接着剤片Tcとなる。この工程を経て、基板10上にドルメン構造が構築される(図8参照)。チップT1が接着剤片付きチップT2aと離間していることで、ワイヤwの上部がチップT2に接することによるワイヤwのショートを防ぐことができる。また、チップT2と接する接着剤片Taにワイヤを埋め込む必要性がないため、接着剤片Taを薄くできるという利点がある。
【0043】
(G)工程後であって(H)工程前に、チップT2の上に接着剤片を介してチップT3を配置し、更に、チップT3の上に接着剤片を介してチップT4を配置する。接着剤片は上述の接着剤片Taと同様の熱硬化性樹脂組成物であればよく、加熱硬化によって接着剤片Tcとなる(図1参照)。他方、チップT2,T3,T4と基板10とをワイヤwで電気的にそれぞれ接続する。なお、チップT1の上方に積層するチップの数は本実施形態の三つに限定されず、適宜設定すればよい。
【0044】
[(H)工程]
(H)工程は、チップT1とチップT2との隙間等を封止材50で封止する工程である。この工程を経て図1に示す半導体装置100が完成する。
【0045】
(熱硬化性樹脂組成物)
熱硬化性樹脂層5を構成する熱硬化性樹脂組成物は、上述のとおり、エポキシ樹脂と、硬化剤と、エラストマとを含み、必要に応じて、無機フィラー及び硬化促進剤等を更に含む。本発明者らの検討によると、支持片Da及び硬化後の支持片Dcは以下の特性を有することが好ましい。
・特性1:基板10の所定の位置に支持片Daを熱圧着したとき位置ずれが生じにくいこと(120℃における接着剤片5pの溶融粘度が、例えば、4300~50000Pa・s又は5000~40000Pa・sであること)
・特性2:半導体装置100内において接着剤片5cが応力緩和性を発揮すること(熱硬化性樹脂組成物がエラストマ(ゴム成分)を含むこと)
・特性3:接着剤片付きチップの接着剤片Tcとの接着強度が十分に高いこと(接着剤片Tcに対する接着剤片5cのダイシェア強度が、例えば、2.0~7.0Mpa又は3.0~6.0Mpaであること)
・特性4:硬化に伴う収縮率が十分に小さいこと
・特性5:ピックアップ工程においてカメラによる支持片Daの視認性が良いこと(熱硬化性樹脂組成物が、例えば、着色料を含んでいること)
・特性6:接着剤片5cが十分な機械的強度を有すること
【0046】
[エポキシ樹脂]
エポキシ樹脂は、硬化して接着作用を有するものであれば特に限定されない。ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂等の二官能エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂等のノボラック型エポキシ樹脂などを使用することができる。また、多官能エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、複素環含有エポキシ樹脂または脂環式エポキシ樹脂など、一般に知られているものを適用することができる。これらは一種を単独で使用してもよいし、二種以上を併用してもよい。
【0047】
[硬化剤]
硬化剤として、例えば、フェノール樹脂、エステル化合物、芳香族アミン、脂肪族アミン及び酸無水物が挙げられる。これらのうち、高いダイシェア強度を達成する観点から、フェノール樹脂が好ましい。フェノール樹脂の市販品として、例えば、DIC(株)製のLF-4871(商品名、BPAノボラック型フェノール樹脂)、エア・ウォーター(株)製のHE-100C-30(商品名、フェニルアラキル型フェノール樹脂)、DIC(株)製のフェノライトKA及びTDシリーズ、三井化学(株)製のミレックスXLC-シリーズとXLシリーズ(例えば、ミレックスXLC-LL)、エア・ウォーター(株)製のHEシリーズ(例えば、HE100C-30)、明和化成(株)製のMEHC-7800シリーズ(例えばMEHC-7800-4S)、JEFケミカル(株)製のJDPPシリーズが挙げられる。これらは一種を単独で使用してもよいし、二種以上を併用してもよい。
【0048】
エポキシ樹脂とフェノール樹脂の配合量は、高いダイシェア強度を達成する観点から、それぞれエポキシ当量と水酸基当量の当量比が0.6~1.5であることが好ましく、0.7~1.4であることがより好ましく、0.8~1.3であることが更に好ましい。配合比が上記範囲内であることで、硬化性及び流動性の両方を十分に高水準に達成しやすい。
【0049】
[エラストマ]
エラストマとして、例えば、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、シリコーン樹脂、ポリブタジエン、アクリロニトリル、エポキシ変性ポリブタジエン、無水マレイン酸変性ポリブタジエン、フェノール変性ポリブタジエン及びカルボキシ変性アクリロニトリルが挙げられる。
【0050】
高いダイシェア強度を達成する観点から、エラストマとしてアクリル系樹脂が好ましく、更に、グリシジルアクリレート又はグリシジルメタクリレート等のエポキシ基又はグリシジル基を架橋性官能基として有する官能性モノマーを重合して得たエポキシ基含有(メタ)アクリル共重合体等のアクリル系樹脂がより好ましい。アクリル系樹脂のなかでもエポキシ基含有(メタ)アクリル酸エステル共重合体及びエポキシ基含有アクリルゴムが好ましく、エポキシ基含有アクリルゴムがより好ましい。エポキシ基含有アクリルゴムは、アクリル酸エステルを主成分とし、主として、ブチルアクリレートとアクリロニトリル等の共重合体、エチルアクリレートとアクリロニトリル等の共重合体などからなる、エポキシ基を有するゴムである。なお、アクリル系樹脂は、エポキシ基だけでなく、アルコール性又はフェノール性水酸基、カルボキシル基等の架橋性官能基を有していてもよい。
【0051】
アクリル樹脂の市販品としては、ナガセケムテック(株)製のSG-70L、SG-708-6、WS-023 EK30、SG-280 EK23、SG-P3溶剤変更品(商品名、アクリルゴム、重量平均分子量:80万、Tg:12℃、溶剤はシクロヘキサノン)等が挙げられる。
【0052】
アクリル樹脂のガラス転移温度(Tg)は、高いダイシェア強度を達成する観点から、-50~50℃であることが好ましく、-30~30℃であることがより好ましい。アクリル樹脂の重量平均分子量(Mw)は、高いダイシェア強度を達成する観点から、10万~300万であることが好ましく、50万~200万であることがより好ましい。ここで、Mwは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定し、標準ポリスチレンによる検量線を用いて換算した値を意味する。なお、分子量分布の狭いアクリル樹脂を用いることにより、高弾性の接着剤片を形成できる傾向にある。
【0053】
熱硬化性樹脂組成物に含まれるアクリル樹脂の量は、高いダイシェア強度を達成する観点から、エポキシ樹脂及びエポキシ樹脂硬化剤の合計100質量部に対して10~200質量部であることが好ましく、20~100質量部であることがより好ましい。
【0054】
[無機フィラー]
無機フィラーとして、例えば、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、ホウ酸アルミウィスカ、窒化ホウ素及び結晶性シリカ、非晶性シリカが挙げられる。これらは一種を単独で使用してもよいし、二種以上を併用してもよい。
【0055】
無機フィラーの平均粒径は、高いダイシェア強度を達成する観点から、0.005μm~1.0μmが好ましく、0.05~0.5μmがより好ましい。無機フィラーの表面は、高いダイシェア強度を達成する観点から、化学修飾されていることが好ましい。表面を化学修飾する材料として適したものにシランカップリング剤が挙げられる。シランカップリング剤の官能基の種類として、例えば、ビニル基、アクリロイル基、エポキシ基、メルカプト基、アミノ基、ジアミノ基、アルコキシ基、エトキシ基が挙げられる。
【0056】
高いダイシェア強度を達成する観点から、熱硬化性樹脂組成物の樹脂成分100質量部に対して、無機フィラーの含有量は20~200質量部であることが好ましく、30~100質量部であることがより好ましい。
【0057】
[硬化促進剤]
硬化促進剤として、例えば、イミダゾール類及びその誘導体、有機リン系化合物、第二級アミン類、第三級アミン類、及び第四級アンモニウム塩が挙げられる。高いダイシェア強度を達成する観点から、イミダゾール系の化合物が好ましい。イミダゾール類としては、2-メチルイミダゾール、1-ベンジル-2-メチルイミダゾール、1-シアノエチル-2-フェニルイミダゾール、1-シアノエチルー2-メチルイミダゾール等が挙げられる。これらは一種を単独で使用してもよいし、二種以上を併用してもよい。
【0058】
熱硬化性樹脂組成物における硬化促進剤の含有量は、高いダイシェア強度を達成する観点から、エポキシ樹脂及びエポキシ樹脂硬化剤の合計100質量部に対して0.04~3質量部が好ましく、0.04~0.2質量部がより好ましい。
【0059】
<第二実施形態>
図9は第二実施形態に係る半導体装置を模式的に示す断面図である。第一実施形態に係る半導体装置100はチップT1が接着剤片Tcと離間している態様であったのに対し、本実施形態に係る半導体装置200はチップT1が接着剤片Tcと接している。つまり、接着剤片Tcは、チップT1の上面及び支持片Dcの上面に接している。例えば、支持片形成用フィルムDの厚さを適宜設定することで、チップT1の上面の位置と支持片Dcの上面の位置を一致させることができる。
【0060】
半導体装置200においては、チップT1が基板10に対し、ワイヤボンディングではなく、フリップチップ接続されている。なお、ワイヤwが接着剤片Taに埋め込まれる構成とすれば、基板10にチップT1がワイヤボンディングされた態様であっても、チップT1が接着剤片Tcと接した状態とすることができる。接着剤片TaはチップT2とともに接着剤片付きチップT2aを構成するものである(図8参照)。
【0061】
図9に示すように、チップT1とチップT2の間の接着剤片Tcは、チップT2におけるチップT1と対面する領域Rを覆うとともに、領域RからチップT2の周縁側にまで連続的に延在している。この一つの接着剤片Tcが、チップT2の領域Rを覆うとともに、チップT2と複数の支持片の間に介在し、これらを接着している。図9におけるチップT2の下面は裏面に相当する。上述のとおり、近年のチップの裏面は凹凸が形成されていることが多い。チップT2の裏面の実質的全体が接着剤片Tcで覆われていることで、接着剤片TcにチップT1の上面が接してもチップT2にクラック又は割れが生じることを抑制できる。
【0062】
以上、本開示の実施形態について詳細に説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。
【0063】
上記実施形態においては、図3(b)に示すように、三層構造の支持片形成用フィルムDを備える支持片形成用積層フィルム20を例示したが、支持片形成用積層フィルムは二層であっても四層以上であってもよい。図10に示す支持片形成用積層フィルム20Aは、熱硬化性樹脂層5と、金属層6とを有する二層フィルムD2(支持片形成用フィルム)を有する。すなわち、支持片形成用積層フィルム20Aにおいては、感圧接着層2と最外面の金属層6との間に熱硬化性樹脂層5が配置されている。
【0064】
二層フィルムD2の厚さに対する熱硬化性樹脂層5の厚さの比率は好ましくは0.1~0.9であり、より好ましくは0.2~0.8であり、更に好ましくは0.35~0.7であり、もっと好ましくは0.35~0.6である。この比率が上記範囲であることで、支持片の製造過程においてピックアップ性を実現し得る(図5(d)参照)。すなわち、比率が0.1以上であることで、金属片6pのエッジが感圧接着層2に入り込むことに起因して支持片のピックアップ性が低下することをより高度に抑制できる。他方、比率が0.8以下であれば、金属片6pが十分な厚さを有するため、金属片6pがバネ板のような役割を果たし、より優れたピックアップ性を達成できる。これらの観点から、金属層6の厚さは、例えば、10~80μmであり、20~60μmであってもよい。熱硬化性樹脂層5の厚さは、例えば、5~120μmであり、10~60μmであってもよい。
【0065】
支持片形成用積層フィルム20Aは、例えば、以下の工程を経て製造することができる。
・基材フィルム1と、感圧接着層2と、熱硬化性樹脂層5とをこの順序で備える積層フィルムを準備する工程
・上記積層フィルムの表面に金属層6を貼り合わせる工程
又は、
・熱硬化性樹脂層5と金属層6を貼り合わせて積層フィルムを準備する工程
・基材フィルム1と、感圧接着層2と、上記積層フィルムとをこの順序で備えるように貼り合わせる工程
【実施例
【0066】
以下、実施例により本開示について説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0067】
(ワニスの調製)
以下の材料を使用して支持片形成用フィルムの熱硬化性樹脂層を形成するためのワニスを調製した。
・エポキシ樹脂:YDCN-700-10:(商品名、新日鉄住金化学(株)製、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、25℃において固体)13.2質量部
・フェノール樹脂(硬化剤):HE-100C-30:(商品名、エア・ウォーター(株)製、フェニルアラキル型フェノール樹脂)11.0質量部
・無機フィラー:アエロジルR972:(商品名、日本アエロジル(株)製、シリカ、平均粒径0.016μm)7.8質量部
・エラストマ:SG-P3溶剤変更品(商品名、ナガセケムテックス(株)製、アクリルゴム、重量平均分子量:80万、Tg:12℃、溶剤はシクロヘキサノン)66.4質量部
・カップリング剤1:A-189:(商品名、GE東芝(株)製、γ-メルカプトプロピルトリメトキシシラン)0.4質量部
・カップリング剤1:A-1160:(商品名、GE東芝(株)製、γ-ウレイドプロピルトリエトキシシラン)1.15質量部
・硬化促進剤:キュアゾール2PZ-CN:(商品名、四国化成工業(株)製、1-シアノエチル-2-フェニルイミダゾール)0.03質量部
・溶媒:シクロヘキサン
【0068】
<実施例1>
上記のとおり、溶媒としてシクロヘキサノンを使用し、ワニスの固形分割合が40質量%となるように調整した。100メッシュのフィルターでワニスをろ過するとともに真空脱泡した。ワニスを塗布するフィルムとして、離型処理が施されたポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(厚さ38μm)を準備した。真空脱泡後のワニスを、PETフィルムの離型処理が施された面上に塗布した。塗布したワニスを、90℃で5分間、続いて140℃で5分間の二段階で加熱乾燥した。こうして、Bステージ状態(半硬化状態)の熱硬化性樹脂層をPETフィルムの表面上に形成した。熱硬化性樹脂層の表面に銅箔(厚さ:18μm)を70℃のホットプレート上で貼り付けることによって、図10に示す二層フィルムD2と同様の構成の支持片形成用フィルムをPETフィルムの表面上に作製した。
【0069】
感圧接着層を有する積層フィルム(ダイシングテープ)を以下の手順で準備した。粘着剤には、主モノマーとして2-エチルヘキシルアクリレートとメチルメタクリレートを用い、官能基モノマーとしてヒドロキシエチルアクリレートとアクリル酸を用いたアクリル共重合体を溶液重合法にて得た。この合成したアクリル共重合体の重量平均分子量は40万、ガラス転移点は-38℃であった。このアクリル共重合体100質量部に対し、多官能イソシアネート架橋剤(三菱ケミカル(株)製、商品名マイテックNY730A-T)を10質量部配合した粘着剤溶液を調製し、表面離型処理ポリエチレンテレフタレート(厚さ25μm)の上に乾燥時の粘着剤厚さが10μmになるよう塗工乾燥した。更に、ポリプロピレン/酢酸ビニル/ポリプロピレンからなる100μmのポリオレフィン基材を粘着剤面にラミネートした。この粘着フィルムを室温で2週間放置し十分にエージングを行うことでダイシングテープを得た。
【0070】
上記ダイシングテープの感圧接着層に支持片形成用フィルム(熱硬化性樹脂層と銅箔の二層フィルム)を、支持片形成用フィルムの熱硬化性樹脂層を有する面が感圧接着層と対向するようにして、70℃のホットプレート上でゴムロールを使用して貼り合わせた。これにより、支持片形成用フィルムと、ダイシングテープとの積層体を得た。熱硬化性樹脂層の厚さは25μmであった。
【0071】
<実施例2>
銅箔(厚さ:18μm)の代わりにアルミニウム箔(厚さ25μm)を使用したことの他は、実施例1と同様にして、支持片形成用フィルムと、ダイシングテープとの積層体を得た。
【0072】
実施例の支持片形成用フィルムに対して以下の評価を行った。
(1)剥離強度
実施例に係る支持片形成用フィルムを含む積層体を幅25mm、長さ100mmの長さにそれぞれカットして試験片を作製した。感圧接着層と支持片形成用フィルムとの界面の剥離強度(剥離角度:180°、剥離速度:300mm/分)を測定した。各実施例につき、測定を3回ずつ行い、その平均値を以下に示す。
・実施例1…0.4N/25mm
・実施例2…0.4N/25mm
【0073】
(2)ピックアップ性
実施例に係る支持片形成用フィルム(形状:直径320mmの円形)と、前記ダイシングテープ(形状:直径335mmの円形)の積層体を準備した。この積層体のダイシングテープにダイシングリングを70℃の条件でラミネートした。ダイサーを用いて支持片形成用フィルムをハイト55μmの条件で個片化した。これにより、サイズが10mm×10mmの支持片を得た。この支持片に両面テープ(サイズ:8mm×8mm)の一方の面を貼り付け、他方の面に治具を貼り付けた。この治具をプッシュプルゲージ(イマダ社製)で引っ張ることによって剥離時の引っ張り力を測定した。各実施例につき、測定を5回ずつ行い、その平均値を以下に示す。
・実施例1…4.4N/25mm
・実施例2…4.6N/25mm
【産業上の利用可能性】
【0074】
本開示によれば、ドルメン構造を有する半導体装置の製造プロセスにおいて支持片を作製する工程を簡略化できるとともに、支持片の優れたピックアップ性を達成できる半導体装置の製造方法が提供される。また、本開示によれば、ドルメン構造を有する半導体装置、並びに支持片形成用積層フィルム及びその製造方法が提供される。
【符号の説明】
【0075】
1…基材フィルム、2…感圧接着層、5…熱硬化性樹脂層、5c…接着剤片(硬化物)、5p…接着剤片、6…金属層、6p…金属片、10…基板、20,20A…支持片形成用積層フィルム、50…封止材、100,200…半導体装置、D…支持片形成用フィルム、D2…二層フィルム(支持片形成用フィルム)、Da,Dc…支持片、R…領域、T1…第一のチップ、T2…第二のチップ、T2a…接着剤片付きチップ、Ta,Tc…接着剤片

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