(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-27
(45)【発行日】2024-06-04
(54)【発明の名称】基板重ね合わせ装置および基板処理方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/02 20060101AFI20240528BHJP
H01L 21/68 20060101ALI20240528BHJP
【FI】
H01L21/02 B
H01L21/68 K
(21)【出願番号】P 2022064241
(22)【出願日】2022-04-08
(62)【分割の表示】P 2019169900の分割
【原出願日】2015-12-09
【審査請求日】2022-04-08
(31)【優先権主張番号】P 2014250427
(32)【優先日】2014-12-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004112
【氏名又は名称】株式会社ニコン
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】弁理士法人RYUKA国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】菅谷 功
(72)【発明者】
【氏名】岡本 和也
(72)【発明者】
【氏名】福田 稔
(72)【発明者】
【氏名】三ッ石 創
【審査官】今井 聖和
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-158200(JP,A)
【文献】特開2013-191789(JP,A)
【文献】特開2003-347522(JP,A)
【文献】特開2013-008921(JP,A)
【文献】特開2013-008804(JP,A)
【文献】特開2010-067713(JP,A)
【文献】特開平09-246505(JP,A)
【文献】特開2012-175049(JP,A)
【文献】特開2004-119943(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/02
H01L 21/68
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
結晶方位を有する複数の基板を露光
し、前記基板に構造物を形成する露光装置と、
前記
構造物が形成された複数の基板のうち2つの基板の間
の一部を接触させた後、前記接触した領域を拡大させ、前記2つの基板を積層して積層基板を製造する積層装置と、
積層された前記
2つの基板における構造物の間の位置ずれを計測する計測部と、を備え、
前記積層装置は、前記2つの基板における構造物の間の位置ずれを抑制するように、前記2つの基板の間で、前記結晶方位を互いに異ならせて重ね合わせ、
前記露光装置は、前記2つの基板とは異なる基板を露光する際に、
前記計測部の計測結果に基づいて制御される基板処理システム。
【請求項2】
前記計測結果に基づいて、前記露光装置が前記2つの基板とは異なる基板を露光するために用いる補正量を算出する請求項1に記載の基板処理システム。
【請求項3】
前記位置ずれは、前記2つの基板間で接合波が進行することにより生じ
、かつ前記接触した領域の拡大方向に応じた前記2つの基板の間の不均一な変形量の違いに起因する前記2つの基板における構造物の間の位置ずれを含む請求項1または2に記載の基板処理システム。
【請求項4】
前記位置ずれは、前記2つの基板の少なくとも一方に生じる変形により生じる位置ずれを含む請求項2または3に記載の基板処理システム。
【請求項5】
前記露光装置は、前記計測結果に基づいて、前記2つの基板の少なくとも一方において、露光する構造物の位置が面内の方向によって異なるよう制御される請求項1から4のいずれか1項に記載の基板処理システム。
【請求項6】
前記露光装置は、前記計測結果に基づいて、前記2つの基板の少なくとも一方において、中心から周縁部に向けて、露光される構造物間の間隔が大きくなるように制御される請求項1から5のいずれか1項に記載の基板処理システム。
【請求項7】
前記露光装置は、前記計測結果に基づいて、前記2つの基板
の少なくとも一方において、一つのショット内の複数のチップ間の間隔および形状の少なくとも一方を変化させて露光することにより構造物を形成するように制御される請求項1から6のいずれか1項に記載の基板処理システム。
【請求項8】
前記露光装置は、前記計測結果に基づいて、前記2つの基板の少なくとも一方の弾性率を部分的に変化させる構造物を形成するように制御される請求項1から7のいずれか1項に記載の基板処理システム。
【請求項9】
結晶方位を有する複数の基板を露光
し、前記基板に構造物を形成する段階と、
前記
構造物が形成された複数の基板のうち
2つの基板の間の一部を接触させた後、前記接触した領域を拡大させ、前記2つの基板を積層して積層基板を製造する段階と、
積層された前記2つの基板
における構造物の間の位置ずれを計測する段階と
を備え、
前記積層基板を製造する段階は、前記2つの基板における構造物の間の位置ずれを抑制するように、前記2つの基板の間で、前記結晶方位を互いに異ならせて重ね合わせ、
前記基板に構造物を形成する段階は、前記2つの基板とは異なる基板を露光する
際に、前記計測する段階の計測結果に基づいて制御される基板処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板重ね合わせ装置および基板重ね合わせ方法に関する。
【背景技術】
【0002】
基板を積層して、積層半導体装置を製造する技術がある(例えば、特許文献1参照)。
特許文献1 特開2013-098186号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
重ね合わせる前に基板を位置合わせしても、基板を重ね合わせた後に観察すると、基板上の回路が相互に位置ずれしている場合がある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の第1の態様においては、第1保持部に保持された第1基板と第2保持部に保持された第2基板とが接触する接触領域を、第1基板および第2基板の一部に形成した後、第1保持部による第1基板の保持を解除することによって、接触領域を一部から広げて第1基板と第2基板とを互いに重ね合わせる基板重ね合わせ装置であって、接触領域が広がるときに、少なくとも第1基板の複数の方向に生じる変形量が異なり、変形量の違いによる第1基板および第2基板の間の位置ずれを抑制する抑制部を備える基板重ね合わせ装置が提供される。
【0005】
本発明の第2の態様においては、第1保持部に保持された第1基板と第2保持部に保持された第2基板とが接触する接触領域を、第1基板および第2基板の一部に形成した後、第1保持部による第1基板の保持を解除することによって、接触領域を一部から広げて第1基板と第2基板とを互いに重ね合わせる基板処理方法であって、接触領域が広がるときに、少なくとも第1基板の複数の方向に生じる変形量が異なり、変形量の違いによる第1基板および第2基板の間の位置ずれを抑制する抑制段階を含む基板処理方法が提供される。
【0006】
上記の発明の概要は、本発明の特徴の全てを列挙したものではない。これらの特徴群のサブコンビネーションも発明となり得る。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図3】基板210を重ね合わせる手順を示す流れ図である。
【
図9】基板211、213の重ね合わせの過程を示す模式的断面図である。
【
図10】重ね合わせ過程にある基板211、213の模式図である。
【
図11】重ね合わせ過程にある基板211、213の模式図である。
【
図12】重ね合わせ過程にある基板211、213の模式図である。
【
図13】積層構造基板230における位置ずれを示す図である。
【
図14】基板210における補正方法を示す模式図である。
【
図15】基板210における補正方法を示す模式図である。
【
図16】シリコン単結晶基板208における補正方法を示す模式図である。
【
図17】シリコン単結晶基板209における補正方法を示す模式図である。
【
図20】補正部601の動作を説明する模式図である。
【
図21】補正部601による基板211の補正を説明する模式図である。
【
図22】補正部601を用いた補正を説明する模式図である。
【
図23】補正部601の動作を説明する模式図である。
【
図26】補正部602の動作を説明する模式図である。
【
図28】補正部603の動作を説明する模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、発明の実施の形態を通じて本発明を説明する。下記の実施形態は特許請求の範囲にかかる発明を限定するものではない。実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0009】
図1は、基板重ね合わせ装置100の模式的平面図である。基板重ね合わせ装置100は、筐体110と、筐体110の外側に配された基板カセット120、130および制御部150と、筐体110の内部に配された搬送ロボット140、アライナ300、ホルダストッカ400、およびプリアライナ500を備える。筐体110の内部は温度管理されており、例えば、室温に保たれる。
【0010】
一方の基板カセット120は、これから重ね合わせる基板210を収容する。他方の基板カセット130は、基板210を重ね合わせて作製された積層構造基板230を収容する。基板カセット120、130は、筐体110に対して個別に着脱できる。
【0011】
基板カセット120を用いることにより、複数の基板210を一括して基板重ね合わせ装置100に搬入できる。また、基板カセット130を用いることにより、複数の積層構造基板230を一括して基板重ね合わせ装置100から搬出できる。
【0012】
搬送ロボット140は、筐体110の内部における搬送機能を担う。搬送ロボット140は、単独の基板210、基板ホルダ220、基板210を保持した基板ホルダ220、基板210を積層して形成した積層構造基板230等を搬送する。
【0013】
制御部150は、基板重ね合わせ装置100の各部を相互に連携させて統括的に制御する。また、制御部150は、外部からのユーザの指示を受け付けて、積層構造基板230を製造する場合の製造条件を設定する。更に、制御部150は、基板重ね合わせ装置100の動作状態を外部に向かって表示するユーザインターフェイスをも形成する。
【0014】
アライナ300は、各々が基板210を保持して対向する一対のステージを有し、ステージに保持した基板210を相互に位置合わせした後、互いに接触させて重ね合わせることにより積層構造基板230を形成する。また、後述する基板210の補正が、アライナ300において実行される場合もある。
【0015】
なお、基板重ね合わせ装置100の内部において、基板210は基板ホルダ220に保持した状態で取り扱われる。基板ホルダ220は、静電チャック等により基板210を吸着して保持する。強度の高い基板ホルダ220と一体的に取り扱うことにより、脆い基板210の損傷を防止して、基板重ね合わせ装置100の動作を高速化できる。
【0016】
なお、基板ホルダ220は、アルミナセラミックス等の硬質材料により形成され、基板210の面積と略同じ広さを有する保持部と、保持部の外側に配された縁部とを有する。また、基板ホルダ220は、基板重ね合わせ装置100内に複数用意され、搬入された基板210を1枚ずつ保持する。
【0017】
基板210または積層構造基板230を基板重ね合わせ装置100から搬出する場合、基板ホルダ220は、基板210または積層構造基板230から分離される。よって、基板ホルダ220は、基板重ね合わせ装置100の内部に留まり、繰り返し使用される。よって、基板ホルダ220は、基板重ね合わせ装置100の一部であると考えることもできる。使用していない基板ホルダ220は、ホルダストッカ400に収容して保管される。
【0018】
プリアライナ500は、搬送ロボット140と協働して、搬入された基板210を基板ホルダ220に基板を保持させる。また、プリアライナ500は、アライナ300から搬出された積層構造基板230を基板ホルダ220から分離する場合にも使用される。
【0019】
上記のような基板重ね合わせ装置100においては、素子、回路、端子等が形成された基板210の他に、未加工のシリコンウエハ、化合物半導体ウエハ、ガラス基板等を接合することもできる。接合は、回路基板と未加工基板であっても、未加工基板同士であってもよい。接合される基板210は、それ自体が、既に複数の基板を積層して形成された積層構造基板230であってもよい。
【0020】
図2は、基板重ね合わせ装置100において重ね合わせる基板210の模式的平面図である。基板210は、ノッチ214と、複数の回路領域216および複数のアライメントマーク218とを有する。
【0021】
ノッチ214は、全体として略円形の基板210の周縁に形成されて、基板210における結晶方位を示す指標となる。また、基板210を取り扱う場合は、ノッチ214の位置を検出することにより、基板210における回路領域216の配列方向等も知ることができる。更に、1枚の基板210に、互いに異なる回路を含む回路領域216が形成されている場合は、ノッチ214を基準として、回路領域216を区別することができる。
【0022】
回路領域216は、基板210の表面に、基板210の面方向に周期的に配される。回路領域216の各々には、フォトリソグラフィ技術等より形成された半導体装置、配線、保護膜等が設けられる。回路領域216には、基板210を他の基板210、リードフレーム等に電気的に接続する場合に接続端子となるパッド、バンプ等も配される。
【0023】
アライメントマーク218は、基板210の表面に形成された構造物の一例であり、回路領域216相互の間に配されたスクライブライン212に重ねて配される。アライメントマーク218は、この基板210を積層対象である他の基板210と位置合わせする場合に指標として利用される。
【0024】
図3は、基板重ね合わせ装置100において基板210を積層して積層構造基板230を作製する手順を示す流れ図である。基板重ね合わせ装置100においては、まず、プリアライナ500において、基板211を基板ホルダ220に1枚ずつ保持させる(ステップS101)。
【0025】
基板211を保持した基板ホルダ221は、基板211と共に、アライナ300に搬入される(ステップS102)。次いで、基板211に対して重ね合わされる他の基板213も、基板ホルダ223に保持された状態で、アライナ300に搬入される。
【0026】
図4から
図8は、アライナ300の構造と動作を説明する図である。まず、アライナ300の構造について説明する。
【0027】
図4は、基板211、213および基板ホルダ221、223が搬入された直後のアライナ300の様子を模式的に示す断面図である。基板重ね合わせ装置100におけるアライナ300は、枠体310、上ステージ322および下ステージ332を備える。
【0028】
枠体310は、水平な床面301に対して平行な底板312および天板316と、床板に対して垂直な複数の支柱314とを有する。底板312、支柱314および天板316は、アライナ300の他の部材を収容する直方体の枠体310を形成する。
【0029】
上ステージ322は、天板316の図中下面に下向きに固定される。上ステージ322は、真空チャック、静電チャック等の保持機能を有する。図示の状態において、上ステージ322には、既に、基板213が基板ホルダ223と共に保持されている。
【0030】
天板316の下面には、顕微鏡324および活性化装置326が上ステージ322の側方に固定される。顕微鏡324は、上ステージ322に対向して配置された下ステージ332に保持された基板210の上面を観察できる。活性化装置326は、下ステージ332に保持された基板210の上面を清浄化するプラズマを発生する。プラズマには、例えば酸素プラズマや窒素プラズマを用いられる。尚、この活性化装置326および336は、アライナ300と別置きとして具備し、ロボットにより基板および基板ホルダをアライナ300に搬送するようにしてもよい。
【0031】
下ステージ332は、底板312の上面に配されたX方向駆動部331に重ねられたY方向駆動部333の図中上面に搭載される。図示の状態において、下ステージ332には、既に、基板211が基板ホルダ221と共に保持されている。基板ホルダ221は、基板211を保持し続けており、基板211は、補正された状態が継続している。
【0032】
X方向駆動部331は、底板312と平行に、図中に矢印Xで示す方向に移動する。Y方向駆動部333は、X方向駆動部331上で、底板312と平行に、図中に矢印Yで示す方向に移動する。これら、X方向駆動部331およびY方向駆動部333の動作を組み合わせることにより、下ステージ332は、底板312と平行に二次元的に移動する。
【0033】
また、下ステージ332は、底板312に対して垂直に、矢印Zで示す方向に昇降する昇降駆動部338により支持される。これにより、下ステージ332は、Y方向駆動部333に対して昇降できる。
【0034】
X方向駆動部331、Y方向駆動部333および昇降駆動部338による下ステージ332の移動量は、干渉計等を用いて精密に計測される。また、X方向駆動部331およびY方向駆動部333は、粗動部と微動部との2段構成としてもよい。これにより、高精度な位置合わせと、高いスループットとを両立させて、下ステージ332に搭載された基板210の移動を精度よく高速に接合できる。
【0035】
Y方向駆動部333には、顕微鏡334および活性化装置326が、それぞれ下ステージ332の側方に更に搭載される。顕微鏡334は、上ステージ322に保持された下向きの基板210の下面を観察できる。活性化装置336は、上ステージ322に保持された基板210の下面を清浄化するプラズマを発生する。
【0036】
なお、アライナ300は、底板312に対して垂直な回転軸の回りに下ステージ332を回転させる回転駆動部、および、下ステージ332を揺動させる揺動駆動部を更に備えてもよい。これにより、下ステージ332を上ステージ322に対して平行にすると共に、下ステージ332に保持された基板210を回転させて、基板210の位置合わせ精度を向上させることができる。
【0037】
制御部150は、予め、顕微鏡324、334を相互に較正しておく。顕微鏡324、334は、
図4に併せて示すように、顕微鏡324、334の焦点を相互に合わせることにより較正される。これにより、アライナ300における一対の顕微鏡324、334の相対位置が測定される。
【0038】
続いて、
図5に示すように、制御部150は、X方向駆動部331およびY方向駆動部333を動作させて、顕微鏡324、334により基板211、213の各々に設けられたアライメントマーク218を検出させる(
図3のステップS103)。アライメントマーク218は、顕微鏡324、334で基板210の表面を観察することにより検出される。こうして、相対位置が既知である顕微鏡324、334により基板210の各々のアライメントマーク218を検出することにより、基板211、213の相対位置が判る(ステップS104)。よって、当該相対位置に基づいて、基板211、213を相互に位置合わせできる状態になる。
【0039】
次に、
図6に示すように、制御部150は、一対の基板211、213の相対位置を記憶したまま、一対の基板210の各々の接合面を化学的に活性化する(
図3のステップS105)。制御部150は、まず、下ステージ332の位置を初期位置にリセットした後に水平に移動させて、活性化装置326、336の生成したプラズマにより基板211、213の表面を走査させる。これにより、基板211、213のそれぞれの表面が清浄化され、化学的な活性が高くなる。このため、基板211、213は、互いに接近しただけで自律的に吸着して接合する状態になる。
【0040】
なお、上記の例では、下ステージ332に保持された基板210を天板316に支持された活性化装置326で発生したプラズマPに暴露して、基板210の表面を清浄化した。また、上ステージ322に保持された基板210を、Y方向駆動部333に搭載された活性化装置336で発生したプラズマPに暴露して、基板210の表面を清浄化した。
【0041】
なお、活性化装置326、336は、顕微鏡324、334の各々から遠ざかる方向にプラズマPを放射する。これにより、プラズマを照射された基板210から発生した破片が顕微鏡324を汚染することが防止される。
【0042】
また、図示のアライナ300は、基板210を活性化する活性化装置326、326を備えているが、アライナ300とは別に設けた活性化装置326、326を用いて予め活性化した基板210をアライナ300に搬入することにより、アライナ300の活性化装置326を省略した構造にすることもできる。
【0043】
更に、基板210は、プラズマに暴露する方法の他に、不活性ガスを用いたスパッタエッチング、イオンビーム、または、高速原子ビーム等によりを活性化することもできる。イオンビームや高速原子ビームを用いる場合は、アライナ300を減圧下において生成することが可能である。また更に、紫外線照射、オゾンアッシャー等により基板210を活性化することもできる。更に、例えば、液体または気体のエッチャントを用いて、基板210の表面を化学的に清浄化することにより活性化してもよい。
【0044】
次に、
図7に示すように、制御部150は、基板211、213を相互に位置合わせする(
図3のステップS106)。制御部150は、まず、最初に検出した顕微鏡324、334の相対位置と、ステップS103において検出した基板211、213のアライメントマーク218の位置とに基づいて、基板211、213のアライメントマーク218の面方向の位置が一致するように、下ステージ332を移動させる。
【0045】
続いて、
図8に示すように、制御部150は、昇降駆動部338を動作させて下ステージ332を上昇させ、基板211、213を相互に接触させる(ステップS107)。これにより、基板211、213の一部が接触して接合する。
【0046】
更に、基板211、213の表面は活性化されているので、一部が接触すると、基板211、213同士の分子間力により、隣接する領域が自律的に相互に吸着されて接合される。よって、例えば、上ステージ322における基板213の保持を開放することにより、基板211、213の接触領域すなわち基板211、213が接合された領域は、隣接する領域に順次拡大する。これにより、接合した領域が順次拡がっていく接合波(ボンディングウエイブ)が発生し、基板211、213の接合が進行する。すなわち、基板211,214の接触領域と非接触領域との境界が非接触領域に向けて移動することにより、接合が進行する。やがて、基板211、213は、全面にわたって接触し、且つ、接合される(
図3のステップS108)。これにより、基板211、213は、積層構造基板230を形成する。
【0047】
なお、上記のように基板211、213の接合領域が拡大していく過程で、制御部150は、基板ホルダ223による基板213の保持を解除してもよい。また、上ステージ322による基板ホルダ223の保持を解除してもよい。
【0048】
更に、上ステージ322において基板213を開放せずに、下ステージ332において基板211を開放することにより、基板211、213の接合を進行させてもよい。更に、上ステージ322および下ステージ332の双方において基板213、211を保持したまま、上ステージ322および下ステージ332を更に近づけることにより、基板211、213を接合させてもよい。
【0049】
こうして形成された積層構造基板230は、搬送ロボット140によりアライナ300から搬出され(ステップS109)、基板カセット130に収納される。なお、基板ホルダ223が上側の基板213の保持を開放した場合は、当該基板ホルダ223が上ステージ322に保持され続けている。
【0050】
積層構造基板230をアライナ300から搬出する段階においては、下ステージ332に保持された基板ホルダ221が、基板211を依然として保持している場合がある。よって、そのような場合は、積層構造基板230と共に基板ホルダ221を搬出して、プリアライナ500において積層構造基板230と基板ホルダ221とを分離した後に、積層構造基板230を基板カセット130に搬送してもよい。
【0051】
図9は、上記のようなアライナ300による重ね合わせの過程における基板211、213の状態を示す図である。
図9には、
図3のステップS107において、基板211、213が接触し始めた時点の状態が示される。
【0052】
基板ホルダ222、223は、静電チャック等を有し、基板211、213を、それぞれ全体で吸着して保持する。よって、図中下側に示される基板ホルダ222のように保持面が平坦な場合、基板211は平坦に保持される。また、図中上側に示される基板ホルダ223のように、保持面の表面が曲面、例えば、円筒面、球面、放物面等をなす場合は、吸着された基板213も、そのような曲面をなすように変形される。
【0053】
なお、基板211、213の少なくとも一方を、上記のように、基板211、213の面方向について内側が突出するように変形させた状態で接合することにより、基板211、213の接合が、基板211、213の面方向について内側から外側に向かって進行する。これにより、接合により形成された積層構造基板230の内部に気泡(ボイド)等が残ることが防止される。
【0054】
また、基板211、213を重ね合わせるに当たって、基板211、213の一方を保持し続け、他方を開放する場合には、基板211、213の単体で予測される伸び量の不均一がより大きいもの、より複雑であるもの、構造の異方性がより高い方を保持し続け、他方を開放して重ね合わせることが好ましい。これにより、回路領域216の位置ずれの補正が、積層構造基板230に、より反映されやすくなる。
【0055】
更に、基板211、213を重ね合わせるに当たって、基板211、213の接合が完了するまで、アライナ300により基板211、213を保持し続けてもよい。この場合は、基板211、213を保持する基板ホルダ221、223またはステージによる基板211、213の位置決めを維持したまま、基板211、213を全面にわたって押し付ける。
【0056】
図10から
図12までは、
図9に示した基板211、213の重ね合わせ過程における状態の変化を示す図であり、
図9に点線Qで示した領域に対応する。ステップS108において重ね合わせが進行する過程において、基板211、213が相互に重ね合わされた接触領域と、基板211、213が相互に離れていてこれから重ね合わせされる非接触領域との境界Kが、基板211、213の中央から周縁部に向かって移動する。
【0057】
このため、境界Kにおいては、基板ホルダ223による保持から開放された基板213に不可避に伸び変形が生じる。より具体的には、境界Kにおいて、基板213の厚さ方向の中央の面Aに対して、基板213の図中下面側においては基板213が伸び、図中上面側においては基板213が収縮する。
【0058】
図11は、
図10に示した状態から、境界Kが、基板211、213の周縁部に向かって移動した状態を、
図10と同じ視点から示す。基板211に対して接触した基板213は、当初接触した中央部から、当初は下側の基板211から離れていた周縁部に向かって、接触面積を徐々に拡大する。
【0059】
また、図中に点線で示すように、基板213において、基板211に接合された領域の外端においては、基板213表面の倍率が、基板211に対して拡大したかのように変形する。このため、図中に点線のずれとして現れるように、基板ホルダ222に保持された下側の基板211と、基板ホルダ223から開放された上側の基板213との間に、基板213の伸び量の相違に起因する位置ずれが生じる。すなわち、基板211、213の接触領域の拡大方向の応じて基板213の変形量が異なり、この変形量の違いにより、基板211,213間に位置ずれが生じる。接触領域の拡大方向は、接触領域の境界の接線に垂直な方向、接線方向および境界に沿った方向を含み、基板211,213同士が中心から接触した場合には、基板211,213の径方向および基板の周方向を含む。
【0060】
図12は、
図12に示した状態から、基板213の基板211に対する接合が更に進行して、基板211、213の接合が完了に近づいた状態を示す。基板211、213の活性化された面が互いに接触すると、両者は接合されて一体化する。このため、接合の界面において、基板211と基板213との間に生じた位置ずれは、接合により固定される。
【0061】
図13は、上記のような過程を経て基板211、213を重ね合わせることにより作製した積層構造基板230における基板211の基板213に対する位置ずれ量を示す図である。図中の矢印は、その方向により位置ずれの方向を、その長さにより位置ずれの大きさをそれぞれ表す。図示のように、基板211、213の位置ずれは積層構造基板230の略全面にわたって生じており、更に、積層構造基板230の周縁部に近づくほど、位置ずれ量は大きくなる。
【0062】
このため、基板211、213全体において、位置ずれ量は変化して均一にならない。よって、
図3に示したステップS106において基板211、213全体の位置合わせを調整しても、伸び量の不均一に起因する基板211、213全体で位置ずれを解消することはできない。
【0063】
なお、変形量に不均一が生じる原因として、基板に剛性分布が生じていること以外に、以下のことがある。基板の表面に形成された酸化膜層に例えばCuのような金属からなる接続部が埋め込まれている場合、接合時に二つの基板の酸化膜間に働く分子間力と接続部間に働く分子間力との間に差が生じ、これにより、ボンディングウエイブの進行度合いすなわち進行速度や進行量が変化する。特に、接続部の表面が酸化膜表面よりも下に位置する場合は接続部間での引き付け力が小さくなり、ボンディングウエイブの進行が遅くなる。
【0064】
これを防止する方法として、
図10で示した境界Kの線上に接続部を配置することによりボンディングウエイブが複数の接続部を通過するタイミングを合わせることが例示できる。また、電気的な接続を目的としないダミーの接続部を配置することによりボンディングウエイブの進行速度を制御することもできる。更に、基板に剛性の分布がある場合は、その剛性分布を考慮して接続部やダミーの接続部を配置してもよい。
【0065】
図14は、基板211に対して重ね合わせる場合に、上記の位置ずれの補正を目的として、基板211から変更した基板501のレイアウトを示す模式図である。基板501においては、同じマスクを用いた露光を繰り返して基板501全体に回路領域216を形成する場合に、ショットマップを補正して、基板211との接触位置である基板501の中心から周縁部に向けて、回路領域216の間隔が徐々に広くする。
【0066】
これにより、基板501を基板213に接合する場合に生じる位置ずれが、基板501自体のレイアウトにより補正され、積層構造基板230全体で、回路の位置ずれが抑制される。よって、基板213と基板501とを積層して製造した積層構造基板230をダイシングした後に得られる積層半導体装置の歩留りを向上できる。
【0067】
図15は、基板211に対して重ね合わせる場合に、上記の位置ずれの補正を目的として、基板211から変更した、基板502のレイアウトを示す模式図である。基板502においては、同じマスクを用いた露光を繰り返して基板502に回路領域216を形成する場合に、基板213との接触位置である基板502の中心から周縁部に向けて、すなわち、ボンディングウエイブの進行方向に沿って、基板502における構造物の倍率が徐々に高くなるように、露光パターンを光学的に制御している。ボンディングウエイブの進行方向は、基板211,213の接触領域の拡大方向のうち基板211、213の径方向に沿った方向を含む。このため、基板502においては、基板502の周縁部に近づくほど、基板502表面の構造物の倍率が高くなる。
【0068】
これにより、基板502を基板213に接合する場合に生じる位置ずれが、基板502自体のレイアウトにより補正され、積層構造基板230全体で、回路の位置ずれが抑制される。よって、基板213と基板502とを積層して製造した積層構造基板230をダイシングした後に得られる積層半導体装置の歩留りを向上できる。
【0069】
図14および
図15に示す例では、基板501の0°方向および90°方向の変形量に対して45°方向の変形量が大きいため、45°方向のショット間隔を調整したが、基板501の変形量が全方位について等しいもしくは近い場合は、全方位についてショット間隔やショット形状を同様に調整することができる。また、
図14および
図15において、一つのショット内に複数のチップが形成されている場合には、一つのショット内の複数のチップ間の間隔や形状を、基板501または基板502の中心から周縁部に向けて変化するように調整してもよい。
【0070】
また、例えば、基板502において、ある方向の変形量が他の方向の変形量よりも大きい場合に、変形量の相違を補正するように変形させた状態で基板を露光し、露光後に変形を解除することにより変形量の相違を補正してもよい。例えば、ノッチ214が設けられた図中上側を0度とした場合に、45度毎の径方向の変形量が他の方向の変形量よりも大きいことが判った場合、アクチュエータ等を用いて、45度、135度、225度、および315度の各径方向に基板502を収縮させた状態で露光して回路領域216のパターンを転写する。
【0071】
ここで、基板502を収縮させる場合は、基板502が平坦な状態を保ったまま収縮することにより、露光による回路領域216の位置ずれが生じることが防止できる。そのような収縮方法としては、例えば、基板ホルダを撓ませた状態で基板502を収縮させ、その後、基板ホルダが撓ませた状態を解除して基板ホルダを平坦に戻すことにより、結果的に、基板502を平坦な状態で収縮させることができる。
【0072】
その後、アクチュエータによる基板502の変形を解除することにより基板502の収縮を除くことにより、基板502における特定の径方向の変形量を補正できる。なお、露光における基板502の変形量は、基板502において補正すべき補正量に応じて決定される。
【0073】
尚、基板213の変形量が大きい進行方向に対応する領域に対する補正を、変形量が小さい進行方向に対応する領域を基準にして行ったが、変形量が大きい領域を基準にして変形量が小さい領域を補正してもよい。また、基準となる変形量に対する差が所定の値以上である変形量を有する領域に生じる位置ずれを補正する。この場合、所定の値は、位置ずれによって二つの基板の接続部間に電気的な接続がされなくなるときの値であり、差が所定の値より小さい場合は接続部同士が接続される。
【0074】
ところで、基板211、213における回路領域216の位置ずれの原因となる伸び量の不均一は、基板211、213の径方向に依存する変化とは異なる要因によっても生じる。
図16および
図17は、シリコン単結晶基板208、209における結晶方位とヤング率との関係を例示する図である。
【0075】
図16に示すように、(100)面を表面とするシリコン単結晶基板208においては、中心に対するノッチ214の方向を0°とするX-Y座標において、0°方向および90°方向においてヤング率が169GPaと高く、45°方向においては、ヤング率が130GPaと低い。このため、シリコン単結晶基板208を用いて作製した基板210においては、基板210の周方向に、曲げ剛性の不均一な分布が生じる。すなわち、ボンディングウエイブが基板210の中心から周縁部に向けて進行したときの進行方向によって、基板210の曲げ剛性が異なっている。曲げ剛性は、基板210を曲げる力に対する変形のし易さを示しており、弾性率としてもよい。
【0076】
図2に示す基板210において曲げ剛性が異なる領域は、
図10から
図12までを参照して説明したように、一対の基板211、213を重ね合わせて接合する過程において生じる変形の大きさが、曲げ剛性に応じて異なる。このため、基板211、213を積層して製造した積層構造基板230においては、積層構造基板230の周方向について不均一な回路領域216の位置ずれが生じる。
【0077】
また、
図17に示すように、(110)面を表面とするシリコン単結晶基板209においては、中心に対するノッチ214の方向を0°とするX-Y座標において、45°方向のヤング率が最も高く、0°方向のヤング率がそれに続く。更に、90°方向においては、シリコン単結晶基板209のヤング率が最も低くなる。このため、シリコン単結晶基板209を用いて作製した基板210においては、基板210の周方向に、曲げ剛性の不均一且つ複雑な分布が生じる。よって、
図16に示したシリコン単結晶基板208と同様に、基板211、213を積層して製造した場合に、積層構造基板230において、周方向に不均一な、回路領域216の位置ずれが生じる。
【0078】
このように、シリコン単結晶基板208、209を用いて作製した基板211、213を重ね合わせて積層構造基板230を製造する場合は、周方向に不均一な伸び量に起因する回路領域216の位置ずれが生じる。よって、基板211、213を重ね合わせて接合する前に、基板211、213の不均一な伸び量に起因する回路領域216の位置ずれを補正する。
【0079】
図16および
図17では、ノッチ214の方向を0°の位置に配置した例を示したが、ノッチ214の位置はシリコン単結晶基板208,209の結晶方位が判別できるように配置されていればよく、結晶方位に対して所定の位置に配置されていればよい。また、ノッチ214を基準にしてX-Y座標を設定したが、シリコン単結晶基板208,209の結晶方位自体を基準としてX-Y座標を設定してもよい。また、
図16および
図17では、シリコン単結晶基板208,209の0°、45°、90°方向の曲げ剛性を示したが、例えば結晶方位が0°、45°、90°方向と一致しないシリコン単結晶基板を用いる場合は、結晶方位に対する曲げ剛性を用いてもよい。
【0080】
なお、上記のように、伸び量に異方性を有する基板211、213を、基板ホルダ221、223またはアライナ300のステージにより基板211、213を保持した状態で基板211、213を重ね合わせる場合は、基板211、213相互で結晶方位を異ならせてもよい。例えば、同じ結晶方位を有する基板に、45°ずれた配置で回路領域216を形成して重ね合わせてもよい。これにより、基板211、213の剛性の異方性に起因する回路領域216のずれは、方向が45°回転するだけで、位置ずれとして顕在化しない。また、互いに異なる結晶方位を有する基板211、213に回路領域を形成して、重ね合わせてもよい。このように、結晶方位等に依る他の非線形ずれも、組合せによっては、結晶方位をずらすことにより補正できる。
【0081】
基板211、213の伸び量が不均一になる他の原因として、基板211、213の厚さのばらつきがある。基板211、213において、厚さが大きい領域は曲げ剛性が高く、薄い領域は曲げ剛性が低い。このため、補正せずに基板211、213を重ね合わせた場合には、厚さの分布に応じた伸び量の不均一に起因する回路領域216の位置ずれが生じる。
【0082】
また、基板211、213の曲げ剛性には、基板211、213上に形成された回路領域の構造も影響する。基板211、213において、素子、配線、保護膜等が堆積された回路領域216は、アライメントマーク218以外は何も形成されていないスクライブライン212に比較して曲げ剛性が高い。スクライブライン212は、基板211、213上で格子状に形成されているので、スクライブライン212と平行な折り目が生じる曲げに対しては剛性が低く、スクライブライン212と公交差する折り目が生じる曲げに対しては剛性が高くなる。
【0083】
このように、基板211、213の表面に形成された構造物によっても、重ね合わせする場合の伸び量の不均一が生じる。ただし、換言すれば、基板211、213上の構造物のレイアウトにより、基板211、213の曲げ剛性の不均一性を補正することもできる。
【0084】
例えば、基板211、213の空き領域に、ダミーのパッド、パンプ等の接続部を配置して曲げ剛性を補強することができる。また、一つのチップ内でのバンプや回路等の構造物の密度や配置を調整することにより曲げ剛性の不均一性を補正できる。例えば、曲げ剛性が高い領域に形成されたチップ内の構造物の密度を低くし、曲げ剛性が低い領域に形成されたチップ内の構造物の密度を高くする。
【0085】
また、他の素子、配線等が形成されている領域であっても、保護膜、絶縁膜等を形成し、それらの厚さや材料等を調整することにより、基板の曲げ剛性を補うことができる。更に、スクライブライン212の形状を、直線により形成された格子以外の形状にして、スクライブライン212による基板211、213の剛性の異方性を緩和してもよい。また、例えば
図16に示すシリコン単結晶基板208では、45°方向の曲げ剛性が低いことによって、重ね合される基板に対するずれ量すなわち変形量が0°及び90°方向に比べて大きい場合は、
図14及び
図15に示すように、ショットやチップの間隔および形状をシリコン単結晶基板208の中心から周縁部に向けて変化させることにより、基板211、213の不均一な伸び量に起因する回路領域216の位置ずれを補正することができる。これにより、互いに重ね合される一対の基板間の位置ずれ量を、一対の基板の回路が互いに接合される所定の範囲内に収めることができる。
【0086】
また、基板211、213においては、回路領域216等を形成する過程や基板の表面に酸化膜を形成する過程で生じた応力に由来する残留応力によっても、領域毎の曲げ剛性が異なる場合がある。更に、回路領域216を形成する過程で、基板211、213には反り等の変形が生じている場合は、変形に応じて、反りの生じている領域毎に曲げ剛性の不均一性が生じる。上記のような構造物による曲げ剛性の均一化は、このような、基板211、213自体の状態による曲げ剛性の不均一性の補正にも役立てることができる。
【0087】
なお、位置ずれを補正する場合の補正量は、例えば、基板重ね合わせ装置100を用いて、製品と同じ仕様のテストピースを作製した上で、回路領域216に生じた位置ずれ量を測定してもよい。これにより得られた測定値を用いて、補正することにより、製品に則した補正を効果的に実行できる。
【0088】
また、互いに重ね合わせる基板211、213の組み合わせを予め決めた上で基板211、213を相互に補正することにより、各基板211、213における伸び量の不均一を相殺して、位置ずれの補正量を低減できる場合がある。逆に、基板211、213の各々において位置ずれを補正し切っておくことにより、重ね合わせる基板211、213の組み合わせに対する制約をなくすこともできる。
【0089】
また、基板211,213のそれぞれの剛性分布を予め検出もしくは予測しておくことにより、基板211,213を互いに位置合わせを行うときに、基板間での剛性の合計の値が等しくなるように、もしくは、剛性の合計の値が所定の範囲内に入るように、基板同士の位置合わせを行ってもよい。この場合、互いに重ね合される一対の基板の一方の基板の結晶異方性等に基づく剛性分布に応じて、他方の基板のショット、チップ、および回路等の構造物の位置を形成してもよい。
【0090】
また、結晶方位が同一もしくは似ている基板同士を重ね合わせる場合は、曲げに対する剛性または弾性率が同一もしくは近い領域すなわち剛性または弾性率の差が所定の閾値以下である領域同士を互いに対向させて重ね合わせることにより、剛性分布による変形量の差が基板間で生じることが抑制される。ここで所定の閾値とは、剛性の差により二つの基板間に生じる位置ずれによって二つの基板の接続部間に電気的な接続がされなくなるときの値であり、閾値より大きい場合は接続部同士が接続されない。この場合、一対の基板をステージもしくは基板ホルダに保持した状態で部分的に接触させた後、一対の基板のそれぞれの保持を解除することが好ましい。
【0091】
さらに、一方の基板が回路形成時や酸化膜形成時に生じた応力等により非線形倍率変形が生じている場合は、他方の基板として、ボンディングウエイブの過程で生じる変形状態が一方の基板に整合する、すなわち、変形した結果、他方の基板の回路の位置が一方の基板の回路の位置に整合するような基板を選択する。このように、初期変形を有する基板の変形状態に対応する剛性分布を有する基板を選択することにより、基板間の位置ずれを抑制できる。この場合、上記した一方の基板をステージまたは基板ホルダに固定しておき、他方の基板の保持を解除することにより一方の基板に接合することが好ましい。
【0092】
また、少なくとも一対の基板211,213の周囲の気圧を調整する気圧調整部を設けてもよい。気圧調整部は、一対の基板211,213の一方の基板211の変形の分布に応じて一対の基板211,213に存在する気体の量を調整することにより、一対の基板211,213の少なくとも一方の変形量を制御することができる。例えば一対の基板211,213の周囲を減圧すると、一対の基板211,213間に存在する気体から受ける圧力を低減することができる。これにより、この圧力による基板211の変形量を小さくすることができる。例えば
図16に示すシリコン単結晶基板208において、45°方向の曲げ剛性が低いことによって、重ね合される基板に対するずれ量すなわち変形量が0°及び90°方向に比べて大きい場合、45°方向の領域の周囲を減圧することにより、0°及び90°方向の領域との変形量の差を小さくすることができる。
【0093】
さらに、一対の基板211,213の少なくとも一方の活性化度合いを調整することにより、当該一方の基板の剛性分布に起因する変形量の不均一さを抑制することができる。例えば、
図16に示すシリコン単結晶基板208において、45°方向の曲げ剛性が低いことによって変形量が0°及び90°方向に比べて大きい場合、45°方向の領域の活性化度合いを上げることにより、0°及び90°方向の領域に比べて他方の基板への吸着力が向上する。これにより、45°方向の領域の変形量を調整することができる。この場合、活性化度合いが調整される一方の基板をステージまたは基板ホルダから開放し、他方の基板をステージまたは基板ホルダに保持しておくことが好ましい。活性化度合は、プラズマの照射時間、プラズマの照射量、活性化後の経過時間およびプラズマの種類等を調整することにより調整される。すなわち、照射時間を長くする、照射量を多くする、または、経過時間を短くすることにより、活性化度合を上げることができる。
【0094】
更に、上記のようにして基板211、213の各々においてする補正に加えて、基板211、213を重ね合わせる段階においても、基板211、213の伸び量の不均一を補正することができる。
図18は、アライナ300において、基板211、213を重ね合わせる段階で伸び量の不均一を補正できる補正部601の模式図である。なお、さらに、CMOSの構成要素であるPMOSとNMOSの最適面方位を考慮したHOT(Hybrid-Orientation Technology)のパターン配置を考慮した最適な接合解を用いてもよい。
【0095】
図18は、アライナ300において基板211、213を補正する場合に使用できる補正部601の模式図である。補正部601は、アライナ300において、下ステージ332に組み込まれる。
【0096】
補正部601は、基部411、複数のアクチュエータ412、および吸着部413を含む。基部411は、アクチュエータ412を介して吸着部413を支持する。アクチュエータ412は、下ステージ332の面方向に複数配され、制御部150の制御の下に、外部からポンプ415およびバルブ416を通じて作動流体を個別に供給され、個々に異なる作動量で伸縮する。
【0097】
吸着部413は、真空チャック、静電チャック等の吸着機構を有し、基板211を保持した基板ホルダ221を上面に吸着する。これにより、基板211、基板ホルダ221、および吸着部413は一体化する。
【0098】
また、吸着部413は、リンクを介して複数のアクチュエータ412に結合される。また、吸着部413の中央は、支柱414により基部411に結合される。補正部601においてアクチュエータ412が動作した場合、アクチュエータ412が結合された領域毎に下ステージ332の厚さ方向に変位する。
【0099】
図19は、補正部601の模式的平面図であり、補正部601におけるアクチュエータ412のレイアウトを示す図である。補正部601において、アクチュエータ412は、支柱414を中心として放射状に配される。また、アクチュエータ412の配列は、支柱414を中心とする同心円状ともとらえることができる。アクチュエータ412の配置は
図19に示すものに限られず、例えば格子状に配置してもよい。
【0100】
図20は、補正部601の動作を説明する図である。図示のように、基板211を保持した基板ホルダ221を吸着部413に吸着した状態で、バルブ416を個別に開閉することにより、アライナ300の下ステージ332において、基板211を変形させることができる。
【0101】
図19に示した通り、アクチュエータ412は、同心円状、即ち、下ステージ332の周方向に配列されていると見做すことができる。よって、
図19に点線Mで示すように、周毎のアクチュエータ412をグループにして、中心に近づくほど伸長量を大きくすることにより、
図20に示すように吸着部413の表面において中央を隆起させて、球面、放物面等に変形させることができる。これにより、吸着部413に保持された基板ホルダ221および基板211も、球面、放物面等に変形する。
【0102】
図21は、補正部601による補正を説明する模式図である。
図20においては、
図9と同様に、重ね合わせの過程にある基板211、213の一部が示される。
【0103】
重ね合わせの過程において、基板211に対して重ね合わされる基板213は、
図10~12を参照して既に説明した通り、既に基板211に重ね合わされた領域と、基板211から離れていてこれから重ね合わせされる領域との境界Kにおいて、基板211に接合される図中下面が伸びる変形を生じる。これに対して、補正部601が動作した状態においては、基板211の中央側が外周側よりも突出して、基板211は全体として球面または放物面をなす。このため、図中に点線で示すように、基板213に対して接合される基板211の図中上面は、平坦な状態に比較すると拡がる。
【0104】
このように、補正部601が動作することにより、双方の基板211、213の接合面が伸びる変形を生じるので、基板211、213相互の間で、回路領域216の位置ずれが補正される。なお、補正部601において、アクチュエータ412はそれぞれ個別に制御できる。よって、補正すべき基板211の伸び量の分布が不均一な場合も、基板211の領域毎に異なる補正量で補正できる。複数のアクチュエータ412の駆動量すなわち変位量は、基板211、213の少なくとも一方の面内での変形量の差により生じる基板211、213間の位置ずれ量に応じて設定される。このとき、前記したように、接合される二つの基板211、213と同等の使用の基板を用いて試験的に接合したときの位置ずれ量の結果を用いてもよい。
【0105】
例えば
図16に示すシリコン単結晶基板208と同様に、基板213において45°方向の曲げ剛性が低いことによりずれ量が0°及び90°方向に比べて大きい場合は、基板213の45°方向の領域に対応する基板ホルダ221の部分の高さ位置が0°及び90°方向の領域に対応する部分の高さ位置よりも相対的に高くなるように、アクチュエータ412を制御する。これにより、基板213の45°方向の領域とそれに対応する基板211の領域との間の空気層を薄くすることができ、その空気層から受ける抵抗を低くすることができるので、シリコン単結晶基板208の剛性分布の不均一さに起因する面内での変形量の差を小さくすることができる。
【0106】
または、基板213において45°方向の曲げ剛性が低いことによりずれ量が0°及び90°方向に比べて大きい場合、基板213の45°方向の領域に対応する基板ホルダ221の部分の高さ位置を0°及び90°方向の領域に対応する部分の高さ位置よりも相対的に低くすることにより、基板211の45°方向の領域を伸ばす。この高低差は、基板213の45°方向の領域の変形量に応じて設定される。
【0107】
図22は、伸び量の不均一な分布に起因して積層構造基板230に生じた回路領域216の位置ずれの他の分布を示す図である。基板の結晶方位、スクライブラインにおける物性の違い等に起因する位置ずれは、図中に点線Rで示すように、積層構造基板230において平行に分布する。
【0108】
図23は、上記のように、位置ずれ量の分布に異方性が生じている場合の補正を、補正部601により実行する方法を示す。図示のように、特定の方向に分布する位置ずれを補正する場合は、
図19に点線Nで示すように、一列に並んだアクチュエータ412を伸長させて、補正部601の吸着部413を円筒状に変形させる。例えば、この位置ずれが基板の結晶方位に起因しており、結晶方向が
図22の点線Rに沿っている場合、点線Rに直交する線で基板211を湾曲させる。これにより、基板211に重ね合される基板のボンディングウエイブの進行方向が結晶方向に沿う。これにより、基板211には、吸着部413がなす円筒面の周方向に限って伸びる変形を生じる。これにより、基板211における特定方向の位置ずれを補正できる。
【0109】
なお、補正部601を用いた場合は、アクチュエータ412に供給する作動流体の量に応じて補正量を連続的に変化させることができる。しかしながら、補正方法および補正量が同等の数多くの基板211を重ね合わせる場合は、補正量を反映した形状を有する保持面で基板211を保持する基板ホルダ221を用意することにより、補正部601を有していない単純なアライナ300により、位置ずれ量を補正しながら基板211の重ね合わせをすることができる。また、基板ホルダ221に、基板211の伸び量の不均一性を小さくする特性を与え、基板ホルダ221に基板211を保持させることにより、不均一な伸び量を補正してもよい。
【0110】
例えば、基板211の曲げ剛性が高い部分に対応する部分の剛性が低く、基板211の曲げ剛性が低い部分に対応する部分の剛性が高い基板ホルダ221で基板211を保持することにより、基板211の面内での曲げ剛性の差を所定の範囲内にすることができる。この所定の範囲は、ボンディングウエイブ中に基板211に変形が生じた状態で、基板211の少なくとも剛性が低い領域の回路と基板211が重ね合される基板の回路とが互いに接合可能となる範囲である。
【0111】
また、上記の例では、下ステージ332に補正部601を設ける場合について説明した。しかしながら、補正部601を上ステージ322に設けて、図中上側の基板213を補正してもよい。更に、下ステージ332および上ステージ322の両方に補正部601を設けて、両方の基板211、213で補正を実行してもよい。また更に、既に説明した他の補正方法、あるいは、これから説明する他の補正方法を、上記の補正方法と併用してもよい。
【0112】
更に、基板ホルダ221ではなく、あるいは、基板ホルダ221に加えて、基板211を保持するステージ等の保持部における保持面を、目標とする補正量を反映した曲面にしてもよい。また更に、基板ホルダ221を用いることなく基板211を重ね合わせる場合も、基板211を保持するステージ等の保持部における保持面を、目標とする補正量を反映した曲面にすることにより基板213の伸び状の不均一性を抑圧できる。
【0113】
また、上記のいずれかの方法に代えて、あるいは、上記のいずれかの方法に加えて、接合時の変形量の不均一に起因するずれを、基板211の温度を調節することにより補正してもよい。この場合、例えば基板の45度方向の部分の変形量が他の部分に比べて大きい場合、この部分を加熱することにより伸長させる、または、45度方向の部分以外の部分を冷却することにより収縮させる。
【0114】
図24は、一方の基板211の変形量が他の進行方向よりも大きい進行方向に対応する領域の基板213への接触の進行を制御する例の一つであり、他の補正部602の模式的断面図である。補正部602はアライナ300の上ステージ322で使用される基板ホルダ223に組み込まれている。
【0115】
補正部602は、基板ホルダ223に設けられ、基板ホルダ223に保持された基板213に向かって開口した複数の開口部426を含む。開口部426の各々の一端は、上ステージ322を通じて、バルブ424を介して圧力源に連通する。圧力源422は、例えば、圧縮された乾燥空気等の加圧流体である。バルブ424は、制御部150の制御の下に個別に開閉される。バルブ424が開いた場合は、対応する開口部426から加圧流体が噴射される。
【0116】
図25は、補正部602における開口部426のレイアウトを示す図である。開口部426は、基板ホルダ223において基板213を保持する保持面全体に配される。よって、バルブ424のいずれかを開くことにより、基板ホルダ223の保持面における任意の位置で、加圧流体を図中下方に向かって噴射できる。
【0117】
基板ホルダ223は、例えば静電チャックにより基板213を保持する。静電チャックは、電力供給を遮断することにより吸着力を解消できるが、残留電荷等により保持していた基板213が開放されるまでにタイムラグが生じる。そこで、静電チャックへの給電を遮断した直後に、基板ホルダ223全体の開口部426から加圧流体を噴射して、基板213を即座に開放できる。
【0118】
図26は、補正部602の補正動作を説明する模式図である。
図26においては、
図9と同様に、重ね合わせの過程にある基板211、213の一部が示される。
【0119】
重ね合わせの過程において、基板211に対して重ね合わされる基板213は、
図10~12を参照して既に説明した通り、既に基板211に重ね合わされた領域と、基板211から離れていてこれから重ね合わせされる領域との境界Kにおいて、基板211に接合される図中下面が伸びる変形を生じる。ここで、基板213において変形が生じている境界K付近の領域に、補正部602により、図中上方から加圧流体427を噴射すると、基板213が他方の基板211に向かって押されて変形量が減少する。これにより、加圧流体を吹きつけた箇所において、基板213の伸び量をより小さくする補正ができる。
【0120】
このように、補正部602が動作することにより、基板213における伸び変形を抑制できるので、基板211、213相互の間で、伸び量の不均一に起因する回路領域216の位置ずれを補正できる。なお、補正部602において、開口部426は、個別に加圧流体を噴射できる。よって、補正すべき基板213の伸び量の分布が不均一な場合も、基板213の領域毎に異なる補正量で補正できる。
【0121】
よって、補正部602を備えたアライナ300においては、基板213の結晶方位、構造物の配置、厚さの分布等の情報に基づいて剛性の不均一を予め調べて、例えば、基板213において、曲げ剛性が低い領域および曲げ剛性が高い領域のうちずれ量が大きい方の領域に対して開口部426から加圧流体を吹きつけて、基板213の伸び量を補正することができる。これにより、基板211、213を重ね合わせて作製した積層構造基板230における回路領域216の位置ずれを抑制できる。
【0122】
例えば、基板213の曲げ剛性が高い領域の方がずれ量が大きい場合、
図21に示した補正部602の凸量もしくは曲率が、基板213の曲げ剛性が低い領域でのずれ量を補正すべく低剛性領域を基準に決められている場合には、高剛性領域に加圧流体を吹き付けることにより、高剛性領域におけるずれ量を小さくすることができる。
【0123】
なお、上記の例では、上ステージ322に補正部602を設ける場合について説明した。しかしながら、下ステージ332に保持された基板211が変形する構造のアライナ300では、補正部602を下ステージ332に設けて、図中下側の基板211の伸び量を補正してもよい。更に、下ステージ332および上ステージ322の両方に補正部602を設けて、両方の基板211、213で補正を実行してもよい。
【0124】
また更に、既に説明した他の補正方法、あるいは、これから説明する他の補正方法を、上記の補正方法と併用してもよい。更に、なお、補正部602を、
図18に示した補正部601と共にアライナ300に組み込んで使用することもできる。
【0125】
図27は、他の補正部603の模式的断面図である。補正部603はアライナ300で使用される基板ホルダ221、223に組み込まれている。
【0126】
補正部603は、スイッチ434、静電チャック436、および電圧源432を有する。静電チャック436は、基板ホルダ221、223に埋設される。静電チャック436の各々は、個別のスイッチ434を介して、共通の電圧源432に結合される。これにより、静電チャック436の各々は、制御部150の制御の下に開閉するスイッチ434が閉じた場合に、基板ホルダ221、223の表面で吸着力を発生して、基板211、213を吸着する。
【0127】
補正部603における静電チャック436は、
図25に示した補正部602の開口部426と同様に、基板ホルダ221、223において基板213を保持する保持面全体に配される。これにより、基板ホルダ221,223はそれぞれ複数の吸着領域を有する。よって、スイッチ434のいずれかが閉じた場合に、対応する静電チャック436が吸着力を発生して、基板ホルダ223の保持面における任意の位置で、基板211、213に対して吸着力を作用させる。なお、全てのスイッチ434を閉じた場合は、全ての静電チャック436が吸着力を発生して、基板211、213を基板ホルダ221、223に強固に保持させる。
【0128】
図28は、補正部603の補正動作を説明する図である。
図28においては、
図9と同様に、重ね合わせの過程にある基板211、213の一部が示される。
【0129】
重ね合わせの過程において、基板211に対して重ね合わされる基板213は、
図10~12を参照して既に説明した通り、既に基板211に重ね合わされた領域と、基板211から離れていてこれから重ね合わせされる領域との境界Kにおいて、基板211に接合される図中下面が伸びる変形を生じる。ここで、基板213において変形が生じている境界K付近の領域において、補正部603により、図中上方から基板213に対して吸着力を作用させると、図中に点線で示す、補正をしなかった場合の変形に対して、より大きな変形が基板213に生じる。これにより、静電チャック436を動作させた箇所において、基板213の伸び量をより大きくする補正ができる。
【0130】
基板の剛性分布に起因するずれ量すなわち変形量が大きい部分に対してこの補正を行う。例えば、
図16に示すシリコン単結晶基板208において、45°方向の曲げ剛性が低いことによりずれ量が0°及び90°方向に比べて大きい場合は、基板ホルダ223の複数の静電チャック436のうち45°方向に対応する静電チャック436の吸着力を0°及び90°方向に対応する静電チャック436の吸着力よりも大きくする。
【0131】
また、基板ホルダ223への基板213の吸着を解除することにより一対の基板211,213を互いに重ね合わせる過程において、下ステージ332における基板ホルダ221による基板211の保持を部分的に解除すると、当該領域においては、上側の基板213に倣って、下側の基板211が基板ホルダ221から浮き上がる。これにより、下側の基板211における変形が緩和され、伸び量をより小さくする補正ができる。
【0132】
基板の剛性分布に起因するずれ量すなわち変形量が大きい部分に対してこの補正を行う。例えば、
図16に示すシリコン単結晶基板208において、45°方向の曲げ剛性が低いことによりずれ量が0°及び90°方向に比べて大きい場合は、基板ホルダ221の複数の静電チャック436のうち45°方向に対応する静電チャック436を、一対の基板211,213の接触の進行度合いに合わせて順次解除する。このように、下ステージ332に保持される基板211に対する保持力を基板211の剛性分布に応じて設定、変更および制御することにより、基板内での剛性分布に起因する変形量の差を小さくすることができる。
【0133】
このように、補正部603が動作することにより、基板211、213における伸び変形を促進または抑制できる。また、基板ホルダ221、223全体に配された静電チャック436は、個別に吸着力を発生または遮断できる。よって、基板211、213における伸び量の不均一が複雑に分布している場合であっても、補正部603により補正することができる。
【0134】
なお、上記の例では、下ステージ332が保持する基板211に対して、上ステージ322による基板213の保持を一気に開放することにより、基板213の自律的な接合により基板211、213を重ね合わせた。しかしながら、静電チャック436の吸着力を、上ステージ322の面方向について基板の中心部から外側に向かって順次消去することにより、基板213の自律的な接合を抑制して、基板211、213が接合された領域の拡がりすなわち接触の進行度合いを制御してもよい。これにより、周縁部に近づくほど位置ずれが累積され、位置ずれの分布が不均一になることを抑制できる。
【0135】
このように、上ステージ322に保持される基板211に対する保持力を基板211の剛性分布に応じて設定、変更および制御することにより、基板内での剛性分布に起因する変形量の差を小さくすることができる。また、上記の例では、静電チャックにより基板を保持する例を示したが、これに代えて、または、これに加えて、真空チャックにより基板を保持してもよい。
【0136】
この場合、基板を保持する保持面に設けられるピンの密度を基板の剛性分布に応じて設定してもよい。例えば、
図16に示すシリコン単結晶基板208において、45°方向の曲げ剛性が低いことによりずれ量が0°及び90°方向に比べて大きい場合は、45°方向に対応する位置に配置されたピンの密度を0°及び90°方向に対応する位置に配置されたピンの密度よりも小さくすることにより、45°方向の領域に対する吸着力を小さくすることができる。
【0137】
また、上記の方法において、ピンの密度を調節することに代えて、あるいは、ピンの密度を調節することに加えて、基板211を保持する場合の吸着力を調節してもよい。例えば、基板211を保持する保持面を複数の領域に分割し、基板の変形量に対応して領域毎に吸着力を変化させてもよい。これにより、例えば、ノッチ214の方向を0度とした場合に、45度方向の部分の変形量が大きい場合、その部分に対応する4か所の領域の吸引力を他の領域の吸着力に対して小さくする。これにより、変形量が部分的に大きいことを補正できる。
【0138】
更に、上ステージ322による基板213の保持を継続して、下ステージ332による基板211の保持を開放することにより基板211、213を重ね合わせる場合にも、上記したと同様に補正部603を用いて、基板211、213の伸び量を補正できる。
【0139】
また、互いに重ね合される基板のうち一方の基板が、例えば
図17に示したような複雑な結晶方位性を有するシリコン単結晶基板209や、回路形成時や酸化膜形成時等に大きな初期歪や大きな反り変形が生じた基板である場合は、このような基板を下ステージ332に固定することが望ましい。これにより、ずれ補正の制御を簡易化することができる。
【0140】
また、既に説明した他の補正方法、あるいは、これから説明する他の補正方法を、上記の補正方法と併用してもよい。更に、補正部602を、
図18に示した補正部601、
図24に示した補正部602と共にアライナ300に組み込んで使用することもできる。
【0141】
このように、基板211、213を個別に補正することによっても、基板211、213を重ね合わせる段階に補正することによっても、基板211、213における伸び量の不均一に起因する回路領域216の位置ずれを抑制あるいは防止できる。これにより、積層構造基板230を、歩留りよく製造することができる。
【0142】
上記の例では、重ね合わせる基板211、213の中央を最初に接触させたが、複数の箇所で同時に接触することが避けられれば、縁部等、他の箇所から基板211、213を接触させてもよい。この場合、上記した例と同様に、互いに重ね合される基板211、213のうち一方の基板を、保持が解除される他方の基板の変形分布、すなわち、ボンディングウエイブの進行方向であり基板211,213の接触領域が広がる方向によって異なる変形量に応じて予め変形させておいたり、他方の基板のボンディングウエイブの進行を制御したりする。このとき、ステージまたは基板ホルダへの保持が開放される基板の結晶方向や応力歪の方向をボンディングウエイブの進行方向に沿わせることが好ましい。例えば
図16に示すシリコン単結晶基板208において、0°方向をボンディングウエイブの進行方向に沿わせることにより、ボンディングウエイブ中に生じるシリコン単結晶基板208の伸び量が均一になる。これにより、剛性分布に起因するシリコン単結晶基板208内での変形量の差を小さくすることができる。
【0143】
また、当初の接触箇所から重ね合わせに従って拡がる境界Kの形状を線状、楕円状等、他の形状にしてもよい。また、上記した例では、既存の基板211、213を補正するかのように説明したが、基板211、213を設計および製造する段階において、曲げ剛性等の機械的な仕様に不均一が生じないように配慮してもよい。
【0144】
上記の例では、シリコン単結晶基板を例にあげて説明したが、本実施例では基板がシリコン単結晶からなる例を示したが、重ね合わせる基板は、シリコン単結晶基板に限られないことはもちろんである。他の基板としては、Geを添加したSiGe基板、Ge単結晶基板等を例示できる。また、本発明は、III-V族またはII-VI族等の化合物半導体基板にも適用できる。
【0145】
また、本実施例において「接合」とは、本実施例に記載の方法で積層された二つの基板に設けられた端子が互いに接続されて二つの基板210間に電気的な導通が確保された場合もしくは二つの基板の接合強度が所定の強度以上となる場合には、それらの状態を指し、また、本実施例に記載の方法で積層された二つの基板をその後にアニール等の処理を行うことにより、二つの基板が最終的に電気的に接続される場合もしくは二つの基板の接合強度が所定の強度以上となる場合は、二つの基板が一時的に結合している状態すなわち仮接合されている状態を指す。仮接合されている状態は、重なり合った二つの基板を分離して再利用することができる状態を含む。
【0146】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。上記実施の形態に、多様な変更または改良を加え得ることが当業者に明らかである。その様な変更または改良を加えた形態もまた、本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【0147】
特許請求の範囲、明細書、および図面中において示した装置、システム、プログラム、および方法における動作、手順、ステップ、および段階等の各処理の実行順序は、特段「より前に」、「先立って」等と明示しておらず、また、前の処理の出力を後の処理で用いるのでない限り、任意の順序で実現しうることに留意すべきである。特許請求の範囲、明細書、および図面中の動作フローに関して、便宜上「まず、」、「次に、」等を用いて説明したとしても、この順で実施することが必須であることを意味するものではない。
【符号の説明】
【0148】
100 基板重ね合わせ装置、110 筐体、120、130 基板カセット、140 搬送ロボット、150 制御部、208、209 シリコン単結晶基板、210、211、213、501、502 基板、212 スクライブライン、214 ノッチ、216 回路領域、218 アライメントマーク、220、221、222、223 基板ホルダ、426 開口部、230 積層構造基板、300 アライナ、301 床面、310 枠体、312 底板、314 支柱、316 天板、322 上ステージ、324、334 顕微鏡、326、336 活性化装置、331 X方向駆動部、332 下ステージ、333 Y方向駆動部、338 昇降駆動部、400 ホルダストッカ、411 基部、412 アクチュエータ、413 吸着部、414 支柱、415 ポンプ、416、424 バルブ、422 圧力源、427 加圧流体、432 電圧源、434 スイッチ、436 静電チャック、500 プリアライナ、601、602、603 補正部