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特許7494898感光性樹脂組成物、感光性エレメント、及び配線基板の製造方法
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  • 特許-感光性樹脂組成物、感光性エレメント、及び配線基板の製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-27
(45)【発行日】2024-06-04
(54)【発明の名称】感光性樹脂組成物、感光性エレメント、及び配線基板の製造方法
(51)【国際特許分類】
   G03F 7/028 20060101AFI20240528BHJP
   G03F 7/033 20060101ALI20240528BHJP
   G03F 7/004 20060101ALI20240528BHJP
   H05K 3/00 20060101ALI20240528BHJP
【FI】
G03F7/028
G03F7/033
G03F7/004 502
G03F7/004 512
H05K3/00 F
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2022501448
(86)(22)【出願日】2020-02-18
(86)【国際出願番号】 JP2020006345
(87)【国際公開番号】W WO2021166082
(87)【国際公開日】2021-08-26
【審査請求日】2022-12-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000004455
【氏名又は名称】株式会社レゾナック
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100169454
【弁理士】
【氏名又は名称】平野 裕之
(72)【発明者】
【氏名】加藤 禎明
(72)【発明者】
【氏名】岩下 健一
(72)【発明者】
【氏名】吉廻 公博
【審査官】高橋 純平
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-269416(JP,A)
【文献】特開2002-196490(JP,A)
【文献】特開2000-344812(JP,A)
【文献】特開2000-086670(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03F 7/004-7/18
H05K 3/00
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
バインダーポリマーと、3官能モノマーを含む光重合性化合物と、光重合開始剤と、クマリン系増感剤と、を含有し、
前記バインダーポリマーが、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート単位を含むポリマーを含有し、
前記クマリン系増感剤が、下記一般式(3)又は(4)で表される化合物を含む、感光性樹脂組成物。
【化1】

[式中、Z 及びZ 21 はそれぞれ独立にハロゲン原子、炭素数1~20のアルキル基、炭素数3~10のシクロアルキル基、炭素数6~14のアリール基、アミノ基、炭素数1~10のアルキルアミノ基、炭素数2~20のジアルキルアミノ基、メルカプト基、炭素数1~10のアルキルメルカプト基、アリル基、炭素数1~20のヒドロキシアルキル基、カルボキシル基、アルキル基の炭素数が1~10のカルボキシアルキル基、アルキル基の炭素数が1~10のアシル基、炭素数1~20のアルコキシル基、炭素数1~20のアルコキシカルボニル基又は複素環を含む基を示し、Z 11 及びZ 12 はそれぞれ独立に水素原子又は炭素数1~20のアルキル基を示し、rは0~3の整数を示し、sは0~6の整数を示す。なお、r個のZ のうち少なくとも2つは環を形成していてもよい。]
【化2】

[式中、Z 、Z 、Z 31 及びZ 32 はそれぞれ独立にハロゲン原子、炭素数1~20のアルキル基、炭素数3~10のシクロアルキル基、炭素数6~14のアリール基、アミノ基、炭素数1~10のアルキルアミノ基、炭素数2~20のジアルキルアミノ基、メルカプト基、炭素数1~10のアルキルメルカプト基、アリル基、炭素数1~20のヒドロキシアルキル基、カルボキシル基、アルキル基の炭素数が1~10のカルボキシアルキル基又は炭素数1~20のアルコキシル基を示し、mは0~2の整数を示し、tは0~1の整数を示し、uは0~6の整数を示し、vは0~6の整数を示す。なお、mが2の場合、2つのZ は環を形成していてもよい。]
【請求項2】
前記クマリン系増感剤の含有量が、前記バインダーポリマー及び前記光重合性化合物の総量100質量部に対して、0.01~0.5質量部である、請求項1に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項3】
重合禁止剤を更に含有する、請求項1又は2に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項4】
前記重合禁止剤の含有量が、前記バインダーポリマー及び前記光重合性化合物の総量100質量部に対して、0.003質量部以下である、請求項に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項5】
前記光重合開始剤が、ヘキサアリールビイミダゾール化合物のみからなる、請求項1~4のいずれか一項に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項6】
支持体と、該支持体上に請求項1~のいずれか一項に記載の感光性樹脂組成物を用いて形成された感光性樹脂層と、を備える感光性エレメント。
【請求項7】
請求項1~のいずれか一項に記載の感光性樹脂組成物又は請求項に記載の感光性エレメントを用いて感光性樹脂層を基板上に設ける工程と、
前記感光性樹脂層の一部を光硬化させる工程と、
前記感光性樹脂層の未硬化部分を除去してレジストパターンを形成する工程と、
前記基板の前記レジストパターンが形成されていない部分に配線層を形成する工程と、
を備える、配線基板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、感光性樹脂組成物、感光性エレメント、及び配線基板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
配線基板の製造においては、所望の配線を得るためにレジストパターンが形成される。レジストパターンの形成には、感光性樹脂組成物が広く用いられている。近年、微細な配線を形成可能な方法としてMSAP(Modified Semi Additive Process)が注目されている。この方法において、微細な配線を形成するためには、従来よりも精度良くレジストパターンを形成する必要がある。
【0003】
精度良くレジストパターンを形成するために、一般に、感光性樹脂組成物には、光増感剤が添加される。光増感剤としては、例えば9,10-ジブトキシアントラセン(DBA)等のアントラセン誘導体が知られている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】国際公開第2007/004619号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、DBAを含有する感光性樹脂組成物には、更に精度の良いレジストパターンを得るために未だ改善の余地がある。加えて、感光性樹脂組成物は、通常、ポリエチレンのようなポリマーのフィルム間に挟持された感光性エレメントの形態で用いられるが、本発明者らの検討によれば、感光性樹脂組成物がDBAを含有する場合、DBAがポリマーフィルムを浸透してしまい、レジストパターン形成時に所望のパターン形状を形成できないという問題が生じ得る。このような問題は、ポリマーフィルムがポリエチレンフィルムである場合に特に顕著に発生する。
【0006】
また、DBAを含有する感光性樹脂組成物は、基板に対する優れた密着性を有するレジストパターンを形成する上で未だ改善の余地がある。
【0007】
そこで、本開示は、基板に対する優れた密着性を有し、且つ、良好なパターン形状を有するレジストパターンを形成可能な感光性樹脂組成物及び感光性エレメント、並びにそれらを用いた配線基板の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本開示は、バインダーポリマーと、3官能モノマーを含む光重合性化合物と、光重合開始剤と、クマリン系増感剤と、を含有する感光性樹脂組成物を提供する。
【0009】
上記感光性樹脂組成物によれば、光重合性化合物としての3官能モノマーと、クマリン系増感剤とを組み合わせて用いることにより、基板に対する優れた密着性を有し、且つ、良好なパターン形状を有するレジストパターンを形成することができる。これは、クマリン系増感剤がDBAと比較してポリマーフィルムを浸透し難く、且つ、少ない添加量でより高い感度が得られることから、レジストパターンのパターン形状を良好なものにできると共に、かかるクマリン系増感剤を3官能モノマーと併用することにより、レジストパターンの基板に対する密着性を大幅に向上できるためであると考えられる。また、クマリン系増感剤は添加量を低減できることから、増感剤を溶解させるための溶剤量も低減することができる。更に、クマリン系増感剤はDBAと比較して吸光度が低いため、レジストパターン形成時に、露光した光が感光性樹脂層の深部まで到達し易く、感光性樹脂層底部の光硬化性を高めることができる。そのため、密着性、解像度及びパターン形状をより向上させることができる。
【0010】
上記感光性樹脂組成物において、上記クマリン系増感剤が、下記一般式(1)で表される化合物を含んでもよい。
【化1】
[式中、Z及びZはそれぞれ独立にハロゲン原子、炭素数1~20のアルキル基、炭素数3~10のシクロアルキル基、炭素数6~14のアリール基、アミノ基、炭素数1~10のアルキルアミノ基、炭素数2~20のジアルキルアミノ基、メルカプト基、炭素数1~10のアルキルメルカプト基、アリル基、炭素数1~20のヒドロキシアルキル基、カルボキシル基、アルキル基の炭素数が1~10のカルボキシアルキル基、アルキル基の炭素数が1~10のアシル基、炭素数1~20のアルコキシル基、炭素数1~20のアルコキシカルボニル基又は複素環を含む基、nは0~4の整数、mは0~2の整数をそれぞれ示す。なお、n個のZ及びm個のZのうち少なくとも2つは環を形成していてもよい。]
【0011】
光増感剤として上記一般式(1)で表される化合物を用いることで、レジストパターンの密着性及びパターン形状をより良好なものとすることができる。
【0012】
上記感光性樹脂組成物において、上記クマリン系増感剤の含有量が、上記バインダーポリマー及び上記光重合性化合物の総量100質量部に対して、0.01~0.5質量部であってよい。クマリン系増感剤の含有量が上記範囲内であることで、レジストパターンの優れた密着性と良好なパターン形状とをより高水準で両立させることができる。
【0013】
上記感光性樹脂組成物において、上記バインダーポリマーが、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート単位を含むポリマーを含有してもよい。バインダーポリマーが、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート単位を含むことで、レジストパターンの優れた密着性と良好なパターン形状とをより高水準で両立させることができる。
【0014】
上記感光性樹脂組成物は、重合禁止剤を更に含有してもよい。また、上記感光性樹脂組成物における上記重合禁止剤の含有量が、上記バインダーポリマー及び上記光重合性化合物の総量100質量部に対して、0.003質量部以下であってもよい。重合禁止剤の含有量が、上記範囲内であることで、レジストパターンのパターン形状をより良好なものとすることができる。
【0015】
本開示はまた、支持体と、該支持体上に上記本開示の感光性樹脂組成物を用いて形成された感光性樹脂層と、を備える感光性エレメントを提供する。
【0016】
本開示は更に、上記本開示の感光性樹脂組成物又は上記本開示の感光性エレメントを用いて感光性樹脂層を基板上に設ける工程と、上記感光性樹脂層の一部を光硬化させる工程と、上記感光性樹脂層の未硬化部分を除去してレジストパターンを形成する工程と、上記基板の上記レジストパターンが形成されていない部分に配線層を形成する工程と、を備える、配線基板の製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0017】
本開示によれば、基板に対する優れた密着性を有し、且つ、良好なパターン形状を有するレジストパターンを形成可能な感光性樹脂組成物及び感光性エレメント、並びにそれらを用いた配線基板の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】一実施形態に係る感光性エレメントを示す模式断面図である。
図2】一実施形態に係る配線基板の製造方法を示す模式図である。
図3】実施例1の感光性樹脂組成物を用いて形成したレジストパターンの電子顕微鏡写真である。
図4】比較例1の感光性樹脂組成物を用いて形成したレジストパターンの電子顕微鏡写真である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本開示の実施形態について詳細に説明する。
【0020】
本明細書において、「工程」との語は、独立した工程だけではなく、他の工程と明確に区別できない場合であってもその工程の所期の作用が達成されれば、本用語に含まれる。「~」を用いて示された数値範囲は、「~」の前後に記載される数値をそれぞれ最小値及び最大値として含む範囲を示す。「層」との語は、平面図として観察したときに、全面に形成されている形状の構造に加え、一部に形成されている形状の構造も包含される。「(メタ)アクリル酸」とは、「アクリル酸」、及び、それに対応する「メタクリル酸」の少なくとも一方を意味する。(メタ)アクリレート等の他の類似表現についても同様である。
【0021】
本明細書において、「(ポリ)オキシエチレン基」とは、オキシエチレン基、又は、2以上のエチレン基がエーテル結合で連結したポリオキシエチレン基を意味する。「(ポリ)オキシプロピレン基」とは、オキシプロピレン基、又は、2以上のプロピレン基がエーテル結合で連結したポリオキシプロピレン基を意味する。「EO変性」とは、(ポリ)オキシエチレン基を有する化合物であることを意味する。「PO変性」とは、(ポリ)オキシプロピレン基を有する化合物であることを意味する。「EO・PO変性」とは、(ポリ)オキシエチレン基及び/又は(ポリ)オキシプロピレン基を有する化合物であることを意味する。
【0022】
本明細書において組成物中の各成分の量は、組成物中に各成分に該当する物質が複数存在する場合には、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数の物質の合計量を意味する。本明細書において、「固形分」とは、感光性樹脂組成物において、揮発する物質(水、溶媒等)を除いた不揮発分を指す。すなわち、「固形分」とは、後述する感光性樹脂組成物の乾燥において揮発せずに残る溶媒以外の成分を指し、室温(25℃)で液状、水飴状又はワックス状のものも含む。
【0023】
<感光性樹脂組成物>
本実施形態に係る感光性樹脂組成物は、(A)成分:バインダーポリマーと、(B)成分:光重合性化合物と、(C)成分:光重合開始剤と、(D)成分:クマリン系増感剤と、を含有する。ここで、(B)成分は、3官能モノマーを含む。また、本実施形態に係る感光性樹脂組成物は、(E)成分:重合禁止剤を更に含有していてもよい。以下、各成分について説明する。
【0024】
(A)成分:バインダーポリマー
感光性樹脂組成物は、(A)成分の1種又は2種以上を含んでいる。(A)成分としては、例えば、アクリル系樹脂、スチレン系樹脂、エポキシ系樹脂、アミド系樹脂、アミドエポキシ系樹脂、アルキド系樹脂、及び、フェノール系樹脂が挙げられる。(A)成分は、アルカリ現像性を更に向上させる観点から、アクリル系樹脂を含んでもよい。
【0025】
アクリル系樹脂は、例えば(メタ)アクリル酸に由来する構造単位を有しており、(メタ)アクリル酸以外のその他の単量体に由来する構造単位を更に有していてもよい。その他の単量体は、1種又は2種以上であってよい。
【0026】
その他の単量体は、例えば、(メタ)アクリル酸エステルであってよい。(メタ)アクリル酸エステルとしては、(メタ)アクリル酸アルキルエステル、(メタ)アクリル酸シクロアルキルエステル、(メタ)アクリル酸アリールエステル等が挙げられる。
【0027】
その他の単量体は、アルカリ現像性及び剥離特性を向上させる観点から、好ましくは、(メタ)アクリル酸アルキルエステルであってよい。(メタ)アクリル酸アルキルエステルのアルキル基は、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基又はこれらの構造異性体であってよく、剥離特性を更に向上させる観点から、炭素数1~4のアルキル基であってもよい。
【0028】
その他の単量体が(メタ)アクリル酸アルキルエステルである場合、(メタ)アクリル酸アルキルエステルの含有量は、(A)成分を構成する単量体の全量を基準として、剥離特性に優れる観点から、1質量%以上、2質量%以上、又は3質量%以上であってよく、解像度及び密着性が更に向上する観点から、80質量%以下、60質量%以下、又は50質量%以下であってよい。
【0029】
その他の単量体は、解像度及び密着性を更に向上させる観点から、スチレン又はスチレン誘導体であってよい。スチレン誘導体は、例えば、ビニルトルエン、α-メチルスチレン等であってよい。その他の単量体がスチレン又はスチレン誘導体である場合、スチレン及びスチレン誘導体の含有量は、(A)成分を構成する単量体の全量を基準として、解像度が更に向上する観点から、5質量%以上、10質量%以上、又は20質量%以上であってよく、剥離特性に優れる観点から、65質量%以下、55質量%以下、又は50質量%以下であってよい。
【0030】
その他の単量体は、現像性、密着性、剥離性を更に向上させる観点から、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートであってよい。ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートは、例えば、ヒドロキシメチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート等であってよい。その他の単量体がヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートである場合、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートの含有量は、(A)成分を構成する単量体の全量を基準として、現像性、剥離性が更に向上する観点から、2質量%以上、4質量%以上、又は6質量%以上であってよく、高感度を維持する観点から、14質量%以下、12質量%以下、又は10質量%以下であってよい。
【0031】
(A)成分の酸価は、好適に現像できる観点から、100mgKOH/g以上、120mgKOH/g以上、140mgKOH/g以上、又は150mgKOH/g以上であってよく、感光性樹脂組成物の硬化物の密着性(耐現像液性)が向上する観点から、250mgKOH/g以下、240mgKOH/g以下、又は230mgKOH/g以下であってよい。(A)成分の酸価は、(A)成分を構成する構造単位の含有量(例えば、(メタ)アクリル酸に由来する構造単位)により調整できる。
【0032】
(A)成分の重量平均分子量(Mw)は、感光性樹脂組成物の硬化物の密着性(耐現像液性)が優れる観点から、10000以上、20000以上、又は25000以上であってよく、好適に現像できる観点から、100000以下、80000以下、又は60000以下であってよい。(A)成分の分散度(Mw/Mn)は、例えば1.0以上又は1.5以上であってよく、密着性及び解像度が更に向上する観点から、3.0以下又は2.5以下であってよい。
【0033】
重量平均分子量及び分散度は、例えば、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により標準ポリスチレンの検量線を用いて測定することができる。より具体的には実施例に記載の条件で測定することができる。なお、分子量の低い化合物について、上述の重量平均分子量の測定方法で測定困難な場合には、他の方法で分子量を測定し、その平均を算出することもできる。
【0034】
(A)成分の含有量は、感光性樹脂組成物の固形分全量を基準として、フィルムの成形性に優れる観点から、20質量%以上、30質量%以上、又は40質量%以上であってよく、感度及び解像度に更に優れる観点から、90質量%以下、80質量%以下、又は65質量%以下であってよい。
【0035】
(A)成分の含有量は、(A)成分及び(B)成分の総量100質量部に対して、フィルムの成形性に優れる観点から、30質量部以上、35質量部以上、又は40質量部以上であってよく、感度及び解像度が更に向上する観点から、70質量部以下、65質量部以下、又は60質量部以下であってよい。
【0036】
(B)成分:光重合性化合物
感光性樹脂組成物は、(B)成分の1種又は2種以上を含んでいる。(B)成分は、光により重合する化合物であればよく、例えば、エチレン性不飽和結合を有する化合物であってよい。(B)成分は、密着性、パターン形状、現像性を向上させる観点から、3官能モノマーを含む。
【0037】
3官能モノマーとしては、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、EO変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、PO変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、EO・PO変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタントリ(メタ)アクリレート等が挙げられる。3官能モノマーは、剥離性、密着性、柔軟性をより向上させる観点から、EO変性、PO変性、又は、EO・PO変性されたものが好ましい。
【0038】
3官能モノマーの含有量は、(B)成分の全量を基準として、現像性、密着性、パターン形状をより向上させる観点から、5質量%以上又は10質量%以上であってよく、剥離性をより向上させる観点から、30質量%以下又は25質量%以下であってよい。
【0039】
(B)成分は、アルカリ現像性、解像度、及び、硬化後の剥離特性を更に向上させる観点から、ビスフェノールA型(メタ)アクリレート化合物を含んでもよい。
【0040】
ビスフェノールA型(メタ)アクリレート化合物としては、2,2-ビス(4-((メタ)アクリロキシポリエトキシ)フェニル)プロパン(2,2-ビス(4-((メタ)アクリロキシペンタエトキシ)フェニル)プロパン等)、2,2-ビス(4-((メタ)アクリロキシポリプロポキシ)フェニル)プロパン、2,2-ビス(4-((メタ)アクリロキシポリブトキシ)フェニル)プロパン、2,2-ビス(4-((メタ)アクリロキシポリエトキシポリプロポキシ)フェニル)プロパンなどが挙げられる。(B)成分は、解像度及び剥離特性を更に向上させる観点から、2,2-ビス(4-((メタ)アクリロキシポリエトキシ)フェニル)プロパン(2,2-ビス(4-((メタ)アクリロキシペンタエトキシ)フェニル)プロパン等)を含んでもよい。
【0041】
ビスフェノールA型(メタ)アクリレート化合物の含有量は、レジストの解像度が更に向上する観点から、(B)成分の全量を基準として、20質量%以上又は40質量%以上であってよく、95質量%以下、90質量%以下又は80質量%以下であってよい。
【0042】
(B)成分は、解像度及び可とう性を更に好適に向上させる観点から、上述した3官能モノマー以外の、多価アルコールにα,β-不飽和カルボン酸を反応させて得られるα,β-不飽和エステル化合物を含んでもよい。α,β-不飽和エステル化合物としては、例えば、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、EO変性ポリプロピレングリコール等のポリアルキレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタンテトラ(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
【0043】
α,β-不飽和エステル化合物の含有量は、(B)成分の全量を基準として、可とう性が向上する観点から、20質量%以上又は30質量%以上であってよく、解像度が更に向上する観点から、70質量%以下又は60質量%以下であってよい。
【0044】
(B)成分は、剥離性、現像性をより向上させる観点から、ウレタン結合を有する(メタ)アクリレート化合物を含んでもよい。ウレタン結合を有する(メタ)アクリレート化合物としては、例えば、β位にOH基を有する(メタ)アクリル酸系モノマーとイソホロンジイソシアネート、2,6-トルエンジイソシアネート、2,4-トルエンジイソシアネート、1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート等のジイソシアネート化合物との反応物、トリス((メタ)アクリロキシテトラエチレングリコールイソシアネート)ヘキサメチレンイソシアヌレート、EO変性ウレタンジ(メタ)アクリレート、PO変性ウレタンジ(メタ)アクリレート、EO及びPO変性ウレタンジ(メタ)アクリレート、カルボキシル基含有ウレタン(メタ)アクリレート等が挙げられる。また、ウレタン結合を有する(メタ)アクリレート化合物としてウレタンオリゴマーも好ましく用いられる。
【0045】
ウレタン結合を有する(メタ)アクリレート化合物の重量平均分子量は、液状状態での塗布性、ハンドリング性、硬化後の硬化収縮性、表面硬化性、硬度、伸び等の物理特性等の観点から、好ましくは800以上、より好ましくは2000以上、更に好ましくは4000以上である。また、ウレタン結合を有する(メタ)アクリレート化合物の重量平均分子量は、同様の観点から、好ましくは10000以下、より好ましくは9000以下、更に好ましくは7000以下である。重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定し、標準ポリスチレン換算した値を使用する。
【0046】
ウレタン結合を有する(メタ)アクリレート化合物の含有量は、(B)成分の全量を基準として、剥離性、現像性をより向上させる観点から、2質量%以上又は4質量%以上であってよく、流動性をより向上させる観点から、10質量%以下又は8質量%以下であってよい。
【0047】
感光性樹脂組成物は、(B)成分として、3官能モノマー、ビスフェノールA系(メタ)アクリレート化合物、α,β-不飽和エステル化合物及びウレタン結合を有する(メタ)アクリレート化合物以外のその他の光重合性化合物を含んでいてもよい。
【0048】
その他の光重合性化合物としては、ノニルフェノキシポリエチレンオキシアクリレート、フタル酸系化合物、(メタ)アクリル酸アルキルエステル、分子内に少なくとも1つのカチオン重合可能な環状エーテル基を有する光重合性化合物(オキセタン化合物等)などが挙げられる。その他の光重合性化合物は、解像度、密着性、レジスト形状及び硬化後の剥離特性を更に好適に向上させる観点から、ノニルフェノキシポリエチレンオキシアクリレート及びフタル酸系化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種であってよい。
【0049】
ノニルフェノキシポリエチレンオキシアクリレートとしては、例えば、ノニルフェノキシトリエチレンオキシアクリレート、ノニルフェノキシテトラエチレンオキシアクリレート、ノニルフェノキシペンタエチレンオキシアクリレート、ノニルフェノキシヘキサエチレンオキシアクリレート、ノニルフェノキシヘプタエチレンオキシアクリレート、ノニルフェノキシオクタエチレンオキシアクリレート、ノニルフェノキシノナエチレンオキシアクリレート、ノニルフェノキシデカエチレンオキシアクリレート、及びノニルフェノキシウンデカエチレンオキシアクリレートが挙げられる。
【0050】
フタル酸系化合物は、例えば、γ-クロロ-β-ヒドロキシプロピル-β’-(メタ)アクリロイルオキシエチル-o-フタレート(別名:3-クロロ-2-ヒドロキシプロピル-2-(メタ)アクリロイルオキシエチルフタレート)、β-ヒドロキシエチル-β’-(メタ)アクリロイルオキシエチル-o-フタレート、β-ヒドロキシプロピル-β’-(メタ)アクリロイルオキシエチル-o-フタレート等であってよく、好ましくはγ-クロロ-β-ヒドロキシプロピル-β’-(メタ)アクリロイルオキシエチル-o-フタレートである。
【0051】
(B)成分がその他の光重合性化合物を含む場合、その他の光重合性化合物の含有量は、解像度、密着性、レジスト形状及び硬化後の剥離特性を更に好適に向上させる観点から、(B)成分の全量を基準として、1質量%以上、3質量%以上、又は5質量%以上であってよく、30質量%以下、25質量%以下、又は20質量%以下であってよい。
【0052】
(B)成分の含有量は、感光性樹脂組成物の固形分全量を基準として、感度及び解像度が更に向上する観点から、3質量%以上、10質量%以上、又は25質量%以上であってよく、フィルムの成形性に優れる観点から、70質量%以下、60質量%以下、又は50質量%以下であってよい。
【0053】
(C)成分:光重合開始剤
感光性樹脂組成物は、(C)成分の1種又は2種以上を含んでいる。(C)成分としては、ヘキサアリールビイミダゾール化合物;ベンゾフェノン、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルホリノフェニル)-1-ブタノン、2-(ジメチルアミノ)-2-[(4-メチルフェニル)メチル]-1-[4-(4-モルホリニル)フェニル]-1-ブタノン、4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル-2-(ヒドロキシ-2-プロピル)ケトン、2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルホリノ-プロパノン-1等の芳香族ケトン;アルキルアントラキノン等のキノン;ベンゾインアルキルエーテル等のベンゾインエーテル化合物;ベンゾイン、アルキルベンゾイン等のベンゾイン化合物;ベンジルジメチルケタール等のベンジル誘導体;ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルフォスフィンオキサイド;ビス(2,6-ジメチルベンゾイル)-2,4,4-トリメチル-ペンチルフォスフィンオキサイド;(2,4,6-トリメチルベンゾイル)エトキシフェニルフォスフィンオキサイドなどが挙げられる。
【0054】
(C)成分は、ポリエチレンフィルムへの光増感剤の浸透を更に抑制できる観点から、ヘキサアリールビイミダゾール化合物を含んでよい。ヘキサアリールビイミダゾール化合物におけるアリール基は、フェニル基等であってよい。ヘキサアリールビイミダゾール化合物におけるアリール基に結合する水素原子は、ハロゲン原子(塩素原子等)により置換されていてもよい。
【0055】
ヘキサアリールビイミダゾール化合物は、2,4,5-トリアリールイミダゾール二量体であってよい。2,4,5-トリアリールイミダゾール二量体としては、例えば、2-(o-クロロフェニル)-4,5-ジフェニルイミダゾール二量体、2-(o-クロロフェニル)-4,5-ビス-(m-メトキシフェニル)イミダゾール二量体、及び2-(p-メトキシフェニル)-4,5-ジフェニルイミダゾール二量体が挙げられる。ヘキサアリールビイミダゾール化合物は、ポリエチレンフィルムへの光増感剤の浸透を更に抑制できる観点から、好ましくは2-(o-クロロフェニル)-4,5-ジフェニルイミダゾール二量体であり、より好ましくは2,2-ビス(o-クロロフェニル)-4,5-4’,5’-テトラフェニル-1,2’ビイミダゾールである。
【0056】
ヘキサアリールビイミダゾール化合物の含有量は、ポリエチレンフィルムへの光増感剤の浸透を更に抑制できる観点から、(C)成分の全量を基準として、90質量%以上、95質量%以上、又は99質量%以上であってよい。(C)成分は、ヘキサアリールビイミダゾール化合物のみからなっていてよい。
【0057】
(C)成分の含有量は、感度及び密着性が更に向上する観点から、感光性樹脂組成物の固形分全量を基準として、0.1質量%以上、0.5質量%以上、又は1質量%以上であってよく、20質量%以下、10質量%以下、又は5質量%以下であってよい。
【0058】
(D)成分:クマリン系増感剤
感光性樹脂組成物は、(D)成分の1種又は2種以上を含んでいる。(D)成分は、光増感剤として用いられる。(D)成分としては、下記一般式(1)で表される化合物が挙げられる。
【化2】
式中、Z及びZはそれぞれ独立にハロゲン原子、炭素数1~20のアルキル基、炭素数3~10のシクロアルキル基、炭素数6~14のアリール基、アミノ基、炭素数1~10のアルキルアミノ基、炭素数2~20のジアルキルアミノ基、メルカプト基、炭素数1~10のアルキルメルカプト基、アリル基、炭素数1~20のヒドロキシアルキル基、カルボキシル基、アルキル基の炭素数が1~10のカルボキシアルキル基、アルキル基の炭素数が1~10のアシル基、炭素数1~20のアルコキシル基、炭素数1~20のアルコキシカルボニル基又は複素環を含む基、nは0~4の整数、mは0~2の整数をそれぞれ示す。なお、n個のZ及びm個のZのうち少なくとも2つは環を形成していてもよい。
【0059】
一般式(1)において、少なくとも1つのZは7位に置換されていることが好ましく、少なくとも1つのZは4位に置換されていることが好ましい。また、感度の点からは3位は置換されていないことが好ましい。
【0060】
一般式(1)における、ハロゲン原子としては、例えば、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素及びアスタチン等が挙げられ、炭素数1~20のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、ノナデシル基、イコシル基及びこれらの構造異性体等が挙げられる。また、炭素数3~10のシクロアルキル基としては、例えば、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基等が挙げられる。炭素数6~14のアリール基としては、例えば、フェニル基、トリル基、キシリル基、ビフェニル基、ナフチル基、アントリル基、フェナントリル基等が挙げられ、これらはハロゲン原子、アミノ基、ニトロ基、シアノ基、メルカプト基、アリル基、炭素数1~20のアルキル基等で置換されていてもよい。炭素数1~10のアルキルアミノ基としては、例えば、メチルアミノ基、エチルアミノ基、プロピルアミノ基、イソプロピルアミノ基等が挙げられ、炭素数2~20のジアルキルアミノ基としては、例えば、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジプロピルアミノ基、ジイソプロピルアミノ基等が挙げられる。そして、炭素数1~10のアルキルメルカプト基としては、例えば、メチルメルカプト基、エチルメルカプト基、プロピルメルカプト基等が挙げられる。更に、炭素数1~20のヒドロキシアルキル基としては、例えば、ヒドロキシメチル基、ヒドロキシエチル基、ヒドロキシプロピル基、ヒドロキシイソプロピル基、ヒドロキシブチル基等が挙げられ、アルキル基の炭素数が1~10のカルボキシアルキル基としては、例えば、カルボキシメチル基、カルボキシエチル基、カルボキシプロピル基、カルボキシブチル基等が挙げられる。また、アルキル基の炭素数が1~10のアシル基としては、例えば、ホルミル基、アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基、イソブチリル基、バレリル基、イソバレリル基、ピバロイル基等が挙げられ、炭素数1~20のアルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基等が挙げられる。そして、炭素数1~20のアルコキシカルボニル基としては、例えば、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、プロポキシカルボニル基、ブトキシカルボニル基等が挙げられ、複素環を含む基としては、例えば、フリル基、チエニル基、ピロリル基、チアゾリル基、インドリル基、キノリル基等が挙げられる。
【0061】
一般式(1)において、Z及びZは、それぞれ独立に炭素数1~20のアルキル基、アミノ基、炭素数1~10のアルキルアミノ基又は炭素数2~20のジアルキルアミノ基であることが好ましい。この場合においてもn個のZ及びm個のZのうち少なくとも2つは環を形成していてもよい。
【0062】
解像度及び光感度の観点から、一般式(1)で表されるクマリン化合物は、下記一般式(2)で表される化合物であることがより好ましい。なお、一般式(2)中、Z、Z及びmは上記Z、Z及びmと同義であり、Z11及びZ12は、それぞれ独立に水素原子又は炭素数1~20のアルキル基、rは0~3の整数をそれぞれ示す。なお、r個のZ、m個のZ、Z11及びZ12のうち少なくとも2つは環を形成していてもよい。そして、下記一般式(2)で表される化合物において、Z11及びZ12は、それぞれ独立に炭素数1~10のアルキル基であることが好ましく、炭素数1~6のアルキル基であることがより好ましい。また、好適な、Z及びZは上記と同様である。
【化3】
【0063】
一般式(2)で表される化合物であって、m個のZ、Z11及びZ12のうち少なくとも2つが環を形成している態様としては、下記一般式(3)で表される化合物、及び、下記一般式(4)で表される化合物が挙げられる。
【化4】
式中、Z、Z11、Z12及びrは上記Z、Z11、Z12及びrと同義であり、Z21は、上記Zと同様の原子又は基を示す。また、sは0~8の整数を示す。なお、好適なZ、Z11及びZ12は上記と同様である。
【0064】
【化5】
式中、Z、Z及びmは上記Z、Z及びmと同義であり、Z31及びZ32はそれぞれ独立に上記Zと同様の原子又は基を示す。また、tは0~1の整数、uは0~6の整数、vは0~6の整数をそれぞれ示す。なお、好適なZ及びZは上記と同様である。
【0065】
一般式(2)で表される化合物(一般式(3)及び(4)で表される化合物を含む)としては、7-アミノ-4-メチルクマリン、7-ジメチルアミノ-4-メチルクマリン、7-ジエチルアミノ-4-メチルクマリン(下記式(5)で表される化合物)、7-メチルアミノ-4-メチルクマリン、7-エチルアミノ-4-メチルクマリン、4,6-ジメチル-7-エチルアミノクマリン(下記式(6)で表される化合物)、4,6-ジエチル-7-エチルアミノクマリン、4,6-ジメチル-7-ジエチルアミノクマリン、4,6-ジメチル-7-ジメチルアミノクマリン、4,6-ジエチル-7-ジエチルアミノクマリン、4,6-ジエチル-7-ジメチルアミノクマリン、4,6-ジメチル-7-エチルアミノクマリン、7-ジメチルアミノシクロペンタ[c]クマリン(下記式(7)で表される化合物)、7-アミノシクロペンタ[c]クマリン、7-ジエチルアミノシクロペンタ[c]クマリン、2,3,6,7,10,11-ヘキサアンヒドロ-1H,5H-シクロペンタ[3,4][1]ベンゾピラノ[6,7,8-ij]キノリジン12(9H)-オン、7-ジエチルアミノ-5’,7’-ジメトキシ-3,3’-カルボニルビスクマリン、3,3’-カルボニルビス[7-(ジエチルアミノ)クマリン]、7-(ジエチルアミノ)-3-(2-チエニル)クマリン及び下記式(8)で表される化合物が挙げられる。
【0066】
【化6】
【0067】
一般式(1)で表されるクマリン化合物として特に好ましいものは、一般式(4)で表される化合物である。(D)成分としての一般式(4)で表される化合物と、(B)成分としての3官能モノマーとを組み合わせて用いることにより、感度、密着性及び解像度を大幅に向上させることができると共に、かかる効果を(D)成分を少量添加しただけでも十分に得ることができる。
【0068】
(D)成分の含有量は、(A)成分及び(B)成分の総量100質量部に対して、感度、密着性及び解像度をより向上させる観点から、例えば0.01質量部以上であり、好ましくは0.02質量部以上、より好ましくは0.03質量部以上、更に好ましくは0.04質量部以上であり、レジストパターン形状をより良好にする観点から、例えば0.5質量部以下であり、好ましくは0.4質量部以下、より好ましくは0.3質量部以下、更に好ましくは0.2質量部以下、特に好ましくは0.15質量部以下である。
【0069】
感光性樹脂組成物は、(D)成分に加えて、その他の光増感剤として公知の光増感剤を更に含有してもよい。その他の増感剤の含有量は、(A)成分及び(B)成分の総量100質量部に対して、例えば、0.01~0.50質量部、又は、0.05~0.20質量部であってよい。
【0070】
(E)成分:重合禁止剤
感光性樹脂組成物は、レジストパターン形成時の未露光部における重合を抑制し、解像度を更に向上させる観点から、(E)成分:重合禁止剤を更に含有してもよい。重合禁止剤は、例えば、t-ブチルカテコール、4-ヒドロキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-N-オキシル等であってよい。
【0071】
感光性樹脂組成物は、(D)成分を含有していることにより、重合禁止剤を含有していなくても、従来の光増感剤(例えばDBA)を含有する場合に比べて、レジストパターン形成時の未露光部における重合を抑制し、更に精度良くレジストパターンを形成可能である。したがって、(E)成分の含有量は、(A)成分及び(B)成分の総量100質量部に対して、0.01質量部以下、0.005質量部以下、0.003質量部以下、0.0025質量部以下、又は0.002質量部以下であってよく、感光性樹脂組成物は(E)成分を含有していなくてもよい。(E)成分の含有量は、(A)成分及び(B)成分の総量100質量部に対して、0.001質量部以上であってもよい。
【0072】
感光性樹脂組成物は、上述した成分以外のその他の成分の1種又は2種以上を更に含有してもよい。その他の成分としては、水素供与体(ビス[4-(ジメチルアミノ)フェニル]メタン、ビス[4-(ジエチルアミノ)フェニル]メタン、ロイコクリスタルバイオレット、N-フェニルグリシン等)、染料(マラカイトグリーン等)、トリブロモフェニルスルホン、光発色剤、熱発色防止剤、可塑剤(p-トルエンスルホンアミド等)、顔料、充填剤、消泡剤、難燃剤、安定剤、密着性付与剤、レベリング剤、剥離促進剤、酸化防止剤、香料、イメージング剤、熱架橋剤などが挙げられる。その他の成分の含有量は、(A)成分及び(B)成分の総量100質量部に対して、0.005質量部以上又は0.01質量部以上であってよく、20質量部以下であってもよい。
【0073】
感光性樹脂組成物は、粘度を調整する観点から、有機溶剤の1種又は2種以上を更に含有してもよい。有機溶剤としては、例えば、メタノール、エタノール、アセトン、メチルエチルケトン、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、トルエン、N,N-ジメチルホルムアミド、プロピレングリコールモノメチルエーテル等が挙げられる。有機溶剤の含有量は、感光性樹脂組成物の全量を基準として、40質量%以上であってよく、70質量%以下であってよい。有機溶剤としては、例えば、トルエンと他の溶剤(メタノール、エタノール、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ等)との混合溶剤を用いてもよい。感光性樹脂組成物がクマリン系増感剤を含む場合、上記混合溶剤中のトルエンの割合を減らしても良好な溶解性が得られやすいため、トルエンの使用量を低減することができる。
【0074】
感光性樹脂組成物は、レジストパターンの形成に好適に用いることができ、後述する配線基板の製造方法に特に好適に用いることができる。
【0075】
<感光性エレメント>
図1は、一実施形態に係る感光性エレメントの模式断面図である。図1に示すように、感光性エレメント1は、支持体2と、支持体2上に設けられた感光性樹脂層3と、感光性樹脂層3の支持体2と反対側に設けられた保護層4とを備えている。
【0076】
支持体2及び保護層4は、それぞれ、耐熱性及び耐溶剤性を有するポリマーフィルムであってよく、例えば、ポリエチレンテレフタレートフィルム等のポリエステルフィルム、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム等のポリオレフィンフィルムなどであってよい。支持体2及び保護層4は、それぞれ、ポリオレフィン以外の炭化水素系ポリマーのフィルムであってよい。ポリオレフィンを含む炭化水素系ポリマーのフィルムは、低密度であってよく、例えば1.014g/cm以下の密度を有していてよい。支持体2及び保護層4は、それぞれ、当該低密度の炭化水素系ポリマーフィルムを延伸してなる延伸フィルムであってもよい。保護層4を構成するポリマーフィルムの種類は、支持体2を構成するポリマーフィルムの種類と同じであっても異なっていてもよい。
【0077】
これらのポリマーフィルムは、それぞれ、例えば、帝人株式会社製のPSシリーズ(例えばPS-25)等のポリエチレンテレフタレートフィルム、タマポリ株式会社製のNF-15等のポリエチレンフィルム、又は、王子製紙株式会社製(例えば、アルファンMA-410、E-200C)、信越フィルム株式会社製等のポリプロピレンフィルムとして購入可能である。
【0078】
支持体2の厚さは、支持体2を感光性樹脂層3から剥離する際の支持体2の破損を抑制できる観点から、1μm以上又は5μm以上であってよく、支持体2を介して露光する場合にも好適に露光できる観点から、100μm以下、50μm以下、又は30μm以下であってよい。
【0079】
保護層4の厚さは、保護層4を剥がしながら感光性樹脂層3及び支持体2を基板上にラミネートする際、保護層4の破損を抑制できる観点から、1μm以上、5μm以上、又は15μm以上であってよく、生産性が向上する観点から、100μm以下、50μm以下、又は30μm以下であってよい。
【0080】
感光性樹脂層3は、上述した感光性樹脂組成物からなっている。感光性樹脂層3の乾燥後(感光性樹脂組成物が有機溶剤を含有する場合は有機溶剤を揮発させた後)の厚さは、塗工が容易になり、生産性が向上する観点から、1μm以上又は5μm以上であってよく、密着性及び解像度が更に向上する観点から、100μm以下、50μm以下、又は40μm以下であってよい。
【0081】
感光性エレメント1は、例えば、以下のようにして得ることができる。まず、支持体2上に感光性樹脂層3を形成する。感光性樹脂層3は、例えば、有機溶剤を含有する感光性樹脂組成物を塗布して塗布層を形成し、この塗布層を乾燥することにより形成できる。次いで、感光性樹脂層3の支持体2と反対側の面上に保護層4を形成する。
【0082】
塗布層は、例えば、ロールコート、コンマコート、グラビアコート、エアーナイフコート、ダイコート、バーコート等の公知の方法により形成される。塗布層の乾燥は、感光性樹脂層3中に残存する有機溶剤の量が例えば2質量%以下となるように行われ、具体的には、例えば、70~150℃にて、5~30分間程度行われる。
【0083】
感光性エレメントは、他の一実施形態において、保護層を備えていなくてもよく、クッション層、接着層、光吸収層、ガスバリア層等のその他の層を更に備えていてもよい。
【0084】
感光性エレメント1は、例えば、シート状であってよく、巻芯にロール状に巻き取られた感光性エレメントロールの形態であってもよい。感光性エレメントロールにおいては、感光性エレメント1は、好ましくは、支持体2が外側になるように巻き取られている。巻芯は、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体等で形成されている。感光性エレメントロールの端面には、端面保護の観点から、端面セパレータが設けられていてよく、耐エッジフュージョンの観点から、防湿端面セパレータが設けられていてよい。感光性エレメント1は、例えば、透湿性の小さいブラックシートで包装されていてよい。
【0085】
感光性エレメント1は、レジストパターンの形成に好適に用いることができ、後述する配線基板の製造方法に特に好適に用いることができる。感光性エレメント1は、従来の感光性エレメントに比べて光増感剤のポリエチレンフィルムへの浸透を抑制できるので、支持体2及び保護層4の少なくとも一方が、ポリエチレンフィルムであってもよく、上述した低密度の炭化水素系ポリマーフィルム又はその延伸フィルムであってもよい。
【0086】
<配線基板の製造方法>
図2は、一実施形態に係る配線基板(プリント配線板とも呼ばれる)の製造方法を示す模式図である。この製造方法では、まず、図2(a)に示すように、絶縁層11と、絶縁層11上に形成された導体層12とを備える基板(例えば回路形成用基板)を用意する。導体層12は、例えば金属銅層であってよい。
【0087】
次いで、図2(b)に示すように、基板(導体層12)上に感光性樹脂層13を設ける。この工程では、上述した感光性樹脂組成物又は感光性エレメント1を用いて、上述した感光性樹脂組成物からなる感光性樹脂層13を基板(導体層12)上に形成する。例えば、感光性樹脂層13は、感光性樹脂組成物を基板上に塗布及び乾燥することによって形成される。あるいは、感光性樹脂層13は、感光性エレメント1から保護層4を除去した後、感光性エレメント1の感光性樹脂層3を加熱しながら基板に圧着する。圧着の際、感光性樹脂層3及び基板の少なくとも一方は、例えば70~130℃で加熱されてよい。圧着の際の圧力は、例えば0.1~1.0MPaであってよい。
【0088】
次いで、図2(c)に示すように、感光性樹脂層13上にマスク14を配置し、活性光線15を照射して、マスク14が配置された領域以外の領域を露光して感光性樹脂層13を光硬化させる。活性光線15の光源は、例えば、カーボンアーク灯、水銀蒸気アーク灯、高圧水銀灯、キセノンランプ、ガスレーザー(アルゴンレーザ等)、固体レーザー(YAGレーザー等)、半導体レーザーなどの紫外光源又は可視光源であってよい。
【0089】
他の一実施形態では、マスク14を用いずに、LDI露光法、DLP露光法等の直接描画露光法により、活性光線15を所望のパターンで照射して感光性樹脂層13の一部を露光してもよい。
【0090】
次いで、図2(d)に示すように、露光により形成された光硬化部分以外の領域(未硬化部分)を現像により基板上から除去して、光硬化部分(感光性樹脂層の硬化物)からなるレジストパターン16を形成する。現像方法は、例えば、ウェット現像又はドライ現像であってよく、好ましくはウェット現像である。
【0091】
ウェット現像は、感光性樹脂組成物に対応した現像液を用いて、例えば、ディップ方式、パドル方式、スプレー方式、ブラッシング、スラッピング、スクラッビング、揺動浸漬等の方法により行われる。現像液は、感光性樹脂組成物の構成に応じて適宜選択され、アルカリ現像液又は有機溶剤現像液であってよい。
【0092】
アルカリ現像液は、リチウム、ナトリウム又はカリウムの水酸化物等の水酸化アルカリ;リチウム、ナトリウム、カリウム若しくはアンモニウムの炭酸塩又は重炭酸塩等の炭酸アルカリ;リン酸カリウム、リン酸ナトリウム等のアルカリ金属リン酸塩;ピロリン酸ナトリウム、ピロリン酸カリウム等のアルカリ金属ピロリン酸塩;ホウ砂;メタケイ酸ナトリウム;水酸化テトラメチルアンモニウム;エタノールアミン;エチレンジアミン;ジエチレントリアミン;2-アミノ-2-ヒドロキシメチル-1,3-プロパンジオール;1,3-ジアミノ-2-プロパノール;モルホリンなどの塩基を含む水溶液であってよい。
【0093】
アルカリ現像液は、例えば、0.1~5質量%炭酸ナトリウム水溶液、0.1~5質量%炭酸カリウム水溶液、0.1~5質量%水酸化ナトリウム水溶液、0.1~5質量%四ホウ酸ナトリウム水溶液等であってよい。アルカリ現像液のpHは、例えば9~11であってよい。
【0094】
アルカリ現像液は、表面活性剤、消泡剤、有機溶剤等を更に含有してもよい。有機溶剤としては、アセトン、酢酸エチル、炭素数1~4のアルコキシ基を有するアルコキシエタノール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、ブチルアルコール、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル等が挙げられる。有機溶剤の含有量は、アルカリ現像液の全量を基準として、2~90質量%であってよい。
【0095】
有機溶剤現像液は、1,1,1-トリクロロエタン、N-メチルピロリドン、N,N-ジメチルホルムアミド、シクロヘキサノン、メチルイソブチルケトン及びγ-ブチロラクトン等の有機溶剤を含有してよい。有機溶剤現像液は、1~20質量%の水を更に含有してもよい。
【0096】
この工程において、未露光部分を除去した後、必要に応じて、60~250℃の加熱、又は、0.2~10J/cmでの露光を更に行うことにより、レジストパターン16を更に硬化させてもよい。
【0097】
次いで、図2(e)に示すように、導体層12上のレジストパターン16が形成されていない部分に、例えばめっき処理を施すことにより、配線層17を形成する。配線層17は、導体層12と同種の材料で形成されていてよく、異種の材料で形成されていてもよい。配線層17は、例えば金属銅層であってよい。めっき処理は、電解めっき処理及び無電解めっき処理の一方又は両方であってよい。
【0098】
次いで、図2(f)に示すように、レジストパターン16を除去すると共に、レジストパターン16に対応する位置に設けられている導体層12を除去する。これにより、基板上に配線層17が形成された配線基板18が得られる。
【0099】
レジストパターン16は、例えば、強アルカリ性水溶液を用いて、浸漬方式、スプレー方式等の現像を行うことにより除去可能である。強アルカリ性水溶液は、例えば、1~10質量%水酸化ナトリウム水溶液、1~10質量%水酸化カリウム水溶液等であってよい。
【0100】
導体層12は、エッチング処理により除去可能である。エッチング液は、導体層12の種類に応じて適宜選択され、例えば、塩化第二銅溶液、塩化第二鉄溶液、アルカリエッチング溶液、過酸化水素エッチング液等であってよい。
【実施例
【0101】
以下、実施例により本開示を更に具体的に説明するが、本開示はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0102】
<(A)成分の合成>
表1に示す単量体を、同表に示す配合量(単位:質量部)でアゾビスイソブチロニトリル0.9質量部と共に混合し、溶液(a)を調製した。メチルセロソルブ30質量部及びトルエン20質量部の混合液(x)50質量部に、アゾビスイソブチロニトリル0.6質量部を溶解して溶液(b)を調製した。撹拌機、還流冷却器、温度計、滴下ロート及び窒素ガス導入管を備えたフラスコに、混合液(x)を500g投入した後、フラスコ内に窒素ガスを吹き込みながら撹拌し、80℃まで昇温させた。フラスコ内の上記混合液に、滴下速度を一定にして上記溶液(a)を4時間かけて滴下した後、80℃にて2時間撹拌した。次いで、フラスコ内の溶液に、滴下速度を一定にして上記溶液(b)を10分間かけて滴下した後、フラスコ内の溶液を80℃にて3時間撹拌した。さらに、フラスコ内の溶液を30分間かけて95℃まで昇温させ、95℃にて2時間保温した後、撹拌を止め、室温(25℃)まで冷却して、バインダーポリマーA-1~A-3の溶液を得た。バインダーポリマーA-1~A-3の溶液の不揮発分(固形分)は49.0質量%であった。バインダーポリマーA-1~A-3の重量平均分子量(Mw)、ガラス転移温度(Tg)、及び、酸価を表1に示す。
【0103】
なお、重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー法(GPC)によって測定し、標準ポリスチレンの検量線を用いて換算することにより導出した。GPCの条件は、以下に示す通りである。
(GPC条件)
ポンプ:日立 L-6000型(株式会社日立製作所製、商品名)
カラム:以下の計3本
Gelpack GL-R420
Gelpack GL-R430
Gelpack GL-R440(以上、日立化成株式会社製、商品名)
溶離液:テトラヒドロフラン
測定温度:40℃
流量:2.05mL/分
検出器:日立 L-3300型RI(株式会社日立製作所製、商品名)
【0104】
ガラス転移温度は、DSC(パーキンエルマー社製、DSC-7型)を用いて、サンプル量10mg、昇温速度10℃/分、測定雰囲気:空気の条件で測定した。
【0105】
酸価は、JIS K0070に基づいた中和滴定法により測定した。まず、バインダーポリマーの溶液を130℃で1時間加熱し、揮発分を除去して、固形分を得た。そして、上記固形分のバインダーポリマー1gを精秤した後、このバインダーポリマーにアセトンを30g添加し、これを均一に溶解し、樹脂溶液を得た。次いで、指示薬であるフェノールフタレインをその樹脂溶液に適量添加して、0.1mol/Lの水酸化カリウム水溶液を用いて中和滴定を行った。そして、次式により酸価を算出した。
酸価=0.1×V×f1×56.1/(Wp×I/100)
式中、Vは滴定に用いた0.1mol/L水酸化カリウム水溶液の滴定量(mL)、f1は0.1mol/L水酸化カリウム水溶液のファクター(濃度換算係数)、Wpは測定した樹脂溶液の質量(g)、Iは測定した上記樹脂溶液中の不揮発分の割合(質量%)を示す。
【0106】
【表1】
【0107】
[実施例1~10及び比較例1~3]
<感光性樹脂組成物の調製>
表2~表3に示す各成分を、同表に示す配合量(質量部)で混合することにより、感光性樹脂組成物をそれぞれ調製した。なお、表2~表3に示す(A)成分の配合量(質量部)は、不揮発分の質量(固形分量)である。表2~表3に示す各成分の詳細については、以下の通りである。
【0108】
(B)成分
FA-321M(70):2,2-ビス(4-(メタクリロキシエトキシ)フェニル)プロパン(エチレンオキサイド平均10mol付加物)のプロピレングリコールモノメチルエーテル70%溶液(日立化成株式会社製)
FA-137M:EO変性トリメチロールプロパントリメタクリレート(日立化成株式会社製)
FA-024M:EO,PO変性ジメタクリレート(日立化成株式会社製、EO基の数:6(平均値)、PO基の数:12(平均値)
UA-13:EO,PO変性ウレタンジメタクリレート(新中村化学工業株式会社製、EO基の数:2(平均値)、PO基の数:18(平均値))
(C)成分
BCIM:2,2’-ビス(o-クロロフェニル)-4,4’,5,5’-テトラフェニル-1,2’-ビイミダゾール(Hampford社製)
【0109】
(D)成分
Coumarin 102:2,3,6,7-テトラヒドロ-9-メチル-1H,5H,11H-[1]ベンゾピラノ[6,7,8-ij]キノリジン-11-オン(東京化成工業社製)
(D)’成分
DBA:9,10-ジブトキシアントラセン(川崎化成工業株式会社製)
(E)成分
DIC-TBC-20:4-t-ブチルカテコール(DIC株式会社製)
【0110】
(その他成分)
LCV:ロイコクリスタルバイオレット(山田化学工業株式会社製)
SF-808H:カルボキシベンゾトリアゾール、5-アミノ-1H-テトラゾール、メトキシプロパノールの混合物(サンワ化成株式会社製)
LA-7RD:4-TEMPO(旭電化工業株式会社製)
MKG:マラカイトグリーン(大阪有機化学工業株式会社製)
【0111】
(溶剤)
TLS:トルエン
MAL:メタノール
ACS:アセトン
【0112】
<感光性エレメントの作製>
支持体として厚さ16μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(帝人株式会社製、商品名「HTF-01」)を用意し、支持体上に、感光性樹脂組成物を厚さが均一になるように塗布した後、70℃及び110℃の熱風対流式乾燥器で順次乾燥して、乾燥後の厚さが25μmである感光性樹脂層を形成した。この感光性樹脂層上に保護層としてポリエチレンフィルム(タマポリ株式会社製、商品名「NF-15」)を貼り合わせ、支持体と感光性樹脂層と保護層とが順に積層された感光性エレメントを得た。
【0113】
<積層体の作製>
銅箔(厚さ:35μm)を両面に積層したガラスエポキシ材である銅張積層板(基板、日立化成株式会社製、商品名「MCL-E-679」)を、表面粗化処理液「メックエッチボンドCZ-8100」(メック株式会社製、商品名)を用いて表面処理した。次いで、水洗、酸洗及び水洗後、空気流で乾燥した。表面処理された銅張積層板を80℃に加温し、保護層を剥離しながら、感光性樹脂層が銅表面に接するように、上記感光性エレメントをそれぞれラミネートした。これにより、銅張積層板、感光性樹脂層、及び、支持体の順に積層された積層体をそれぞれ得た。得られた積層体は、以下に示す試験における試験片として用いた。なお、ラミネートは、110℃のヒートロールを用いて、0.4MPaの圧着圧力、1.5m/分のロール速度で行った。
【0114】
<評価>
(吸光度の測定)
感光性樹脂層の吸光度を、UV分光光度計((株)日立ハイテクノロジーズ製、分光光度計U-3310)を用いて測定した。測定は、測定側に保護層を剥離した感光性エレメントを置き、リファレンス側に支持フィルムを置き、吸光度モードにより波長300~700nmまでを連続測定し、波長375nm及び波長405nmにおける値を読みとることにより行った。結果を表2~表3に示す。
【0115】
(最小現像時間の測定)
上記積層体を5cm四方に切断し、最小現像時間測定用の試験片を得た。試験片から支持体を剥離した後、30℃の1質量%炭酸ナトリウム水溶液を用いて、露光していない感光性樹脂層を0.15MPaの圧力でスプレー現像し、1mm以上の未露光部が除去されたことを目視で確認できる最短の時間を、最短現像時間とした。ノズルは、フルコーンタイプを使用した。上記試験片とノズル先端との距離は6cmであり、試験片の中心とノズルの中心が一致するように配置した。最小現像時間(単位:秒)が短いほど、現像性が良好であることを意味する。結果を表2~表3に示す。
【0116】
(密着性の評価)
ライン幅(L)/スペース幅(S)(以下、「L/S」と記す。)が3/400~30/400(単位:μm)である描画パターンを用いて、41段ステップタブレットの残存段数が14段となるエネルギー量で上記積層体の感光性樹脂層に対して露光(描画)を行った。
【0117】
露光後、積層体から支持体を剥離し、感光性樹脂層を露出させ、1質量%炭酸ナトリウム水溶液を30℃にて60秒間スプレーすることにより、未露光部分を除去した。現像後、スペース部分(未露光部分)が残渣なく除去され、且つライン部分(露光部分)が蛇行及び欠けを生じることなく形成されたレジストパターンにおけるライン幅/スペース幅の値のうちの最小値により、密着性を評価した。この数値が小さいほど密着性が良好であることを意味する。結果を表2~表3に示す。
【0118】
(レジストパターン形成性の評価)
上記密着性の評価で作製したライン幅10μmのレジストパターンを走査型電子顕微鏡で観察し、レジストパターンの形状、及び、線太りの有無を評価した。実施例1及び比較例1のレジストパターンの電子顕微鏡写真を図3及び図4にそれぞれ示す。レジストパターン形状は、レジストパターンの頂部の幅と底部の幅との比(底部幅/頂部幅)に基づき、下記評価基準により評価した。結果を表2~表3に示す。
A:断面形状が矩形(底部幅/頂部幅が0.9以上)
B:断面形状が小テーパー形状(底部幅/頂部幅が0.8以上0.9未満)
C:断面形状がテーパー形状(底部幅/頂部幅が0.8未満)
【0119】
また、線太りは、描画パターンにおけるライン幅の設計寸法と、形成されたレジストパターンのライン幅(頂部幅)との差を測定し、下記評価基準により評価した。結果を表2~表3に示す。
A:差が0.5μm以下
B:差が0.5μm超1.0μm以下
C:差が1.0μm超2.0μm以下
D:差が2.0μm超
【0120】
【表2】
【0121】
【表3】
【符号の説明】
【0122】
1…感光性エレメント、2…支持体、3,13…感光性樹脂層、4…保護層、11…絶縁層、12…導体層、14…マスク、15…活性光線、16…レジストパターン、17…配線層、18…配線基板。
図1
図2
図3
図4