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特許7495015添加剤含有シリコン含有レジスト下層膜形成組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-27
(45)【発行日】2024-06-04
(54)【発明の名称】添加剤含有シリコン含有レジスト下層膜形成組成物
(51)【国際特許分類】
   G03F 7/11 20060101AFI20240528BHJP
   G03F 7/26 20060101ALI20240528BHJP
   G03F 7/42 20060101ALI20240528BHJP
   C08G 77/04 20060101ALI20240528BHJP
   H01L 21/027 20060101ALI20240528BHJP
【FI】
G03F7/11 503
G03F7/11 502
G03F7/26 511
G03F7/42
C08G77/04
H01L21/30 573
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2023550293
(86)(22)【出願日】2022-10-27
(86)【国際出願番号】 JP2022040061
(87)【国際公開番号】W WO2023074777
(87)【国際公開日】2023-05-04
【審査請求日】2023-08-21
(31)【優先権主張番号】P 2021176582
(32)【優先日】2021-10-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000003986
【氏名又は名称】日産化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【弁理士】
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【弁理士】
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100193725
【弁理士】
【氏名又は名称】小森 幸子
(74)【代理人】
【識別番号】100163038
【弁理士】
【氏名又は名称】山下 武志
(72)【発明者】
【氏名】志垣 修平
(72)【発明者】
【氏名】西條 太規
(72)【発明者】
【氏名】柴山 亘
【審査官】川口 真隆
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-036631(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03F 7/11
G03F 7/26
G03F 7/42
C08G 77/04
H01L 21/027
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)で表される加水分解性シラン及び下記式(2)で表される加水分解性シランの少なくともいずれかを含む加水分解性シラン混合物の加水分解縮合物を含む、シリコン含有レジスト下層膜形成用組成物であって、塩基性薬液に可溶性のシリコン含有レジスト下層膜を形成するためのシリコン含有レジスト下層膜形成用組成物。
【化1】
(式(1)中、
は、ケイ素原子に結合する基であって、下記式(1-1)で表される1価の基を表し、
【化2】
(式(1-1)中、
401 は、アルキレン基を表し、*はケイ素原子と結合する結合手を表す。)
は、ケイ素原子に結合する基であって、互いに独立して、置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいハロゲン化アルキル基、若しくは置換されていてもよいアルコキシアルキル基を表すか、又はエポキシ基、アクリロイル基、メタクリロイル基、メルカプト基、アミノ基、アミド基、アルコキシ基、スルホニル基、若しくはシアノ基を含む有機基、又はそれらの組み合わせを表し、
は、ケイ素原子に結合する基又は原子であって、互いに独立して、アルコキシ基、アラルキルオキシ基、アシルオキシ基又はハロゲン原子を表し、
aは1を表し、bは0~2の整数を表し、4-(a+b)は1~3の整数を表す。)
【化3】
(式(2)中、
は、ケイ素原子に結合する基であって、下記式(2-1)で表される1価の基を表し、
【化4】
(式(2-1)中、
201~R202は、互いに独立して、水素原子、置換されてもよいアルキル基を含む有機基を表し、R203 は、アルキレン基を表し、*はケイ素原子と結合する結合手を表す。)
は、ケイ素原子に結合する基であって、互いに独立して、置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいハロゲン化アルキル基、若しくは置換されていてもよいアルコキシアルキル基を表すか、又はエポキシ基、アクリロイル基、メタクリロイル基、メルカプト基、アミノ基、アミド基、アルコキシ基、スルホニル基、若しくはシアノ基を含む有機基、又はそれらの組み合わせを表し、
は、ケイ素原子に結合する基又は原子であって、互いに独立して、アルコキシ基、アラルキルオキシ基、アシルオキシ基又はハロゲン原子を表し、
aは1を表し、bは0~2の整数を表し、4-(a+b)は1~3の整数を表す。)
【請求項2】
シリコン含有レジスト下層膜形成用組成物が、カチオンAX及びアニオンAZを含む化学構造を有し、前記アニオンの分子量が65以上である化合物Aを更に含む、請求項1に記載のシリコン含有レジスト下層膜形成用組成物。
【請求項3】
前記アニオンAZが、下記(A)~(E)で表されるアニオンからなる群から選択される少なくとも1種のアニオンである、請求項2に記載のシリコン含有レジスト下層膜形成用組成物。
【化5】
【化6】
【化7】
【化8】
【化9】
【化10】
(式(A)~(E)中、
301は、置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいアリール基、置換されていてもよいハロゲン化アルキル基、置換されていてもよいアラルキル基、もしくはエステル結合(-C(=O)-O-又は-O-C(=O)-)を含む有機基、又はそれらの組み合わせを表し、
Zは、芳香族環、環状アルカン、または非芳香族環の環状アルケンを表し、
501は、一部または全部がフッ素原子で置換されてもよいアルキル基を表し、
302とR303は、互いに独立して、アルキル基を表し、
304とR305は、互いに独立して、アルキル基を表す。)
【請求項4】
前記加水分解性シラン混合物が、下記式(3)で表される加水分解性シランを更に含む、請求項1に記載のシリコン含有レジスト下層膜形成用組成物。
【化11】
(式(3)中、
は、ケイ素原子に結合する基であって、アルケニル基を含む有機基を表し、
は、ケイ素原子に結合する基であって、互いに独立して、置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいハロゲン化アルキル基、若しくは置換されていてもよいアルコキシアルキル基を表すか、又はエポキシ基、アクリロイル基、メタクリロイル基、メルカプト基、アミノ基、アミド基、アルコキシ基、スルホニル基、若しくはシアノ基を含む有機基、又はそれらの組み合わせを表し、
は、ケイ素原子に結合する基又は原子であって、互いに独立して、アルコキシ基、アラルキルオキシ基、アシルオキシ基又はハロゲン原子を表し、
aは1を表し、bは0~2の整数を表し、4-(a+b)は1~3の整数を表す。)
【請求項5】
前記加水分解性シラン混合物が、下記式(4)で表される加水分解性シランを更に含む、請求項4に記載のシリコン含有レジスト下層膜形成用組成物。
【化12】
(式(4)中、
10は、ケイ素原子に結合する基又は原子であって、互いに独立して、アルコキシ基、アラルキルオキシ基、アシルオキシ基、又はハロゲン原子を表す。)
【請求項6】
請求項1~請求項5のいずれかに記載のレジスト下層膜形成用組成物を用いて形成されたシリコン含有レジスト下層膜。
【請求項7】
半導体基板上に有機下層膜を形成する工程、
前記有機下層膜の上に、請求項1~請求項5のいずれかに記載のレジスト下層膜形成用組成物を塗布し、焼成して、シリコン含有レジスト下層膜を形成する工程、
前記シリコン含有レジスト下層膜の上に、レジスト膜形成用組成物を塗布し、レジスト膜を形成する工程、
前記レジスト膜を露光、現像し、レジストパターンを得る工程、
レジストパターンをマスクに用い、前記シリコン含有レジスト下層膜をエッチングする工程、
パターン化された前記シリコン含有レジスト下層膜をマスクとして用い、前記有機下層膜をエッチングする工程を含む、
パターン形成方法。
【請求項8】
前記有機下層膜をエッチングする工程の後に、薬液を用いた湿式法によりシリコン含有レジスト下層膜を除去する工程を更に含む、
請求項7に記載のパターン形成方法。
【請求項9】
前記薬液が、塩基性薬液である、請求項8に記載のパターン形成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レジスト下層膜形成用組成物に関し、微細パターニングにおいて、低ラフネスのパターンを形成でき、半導体基板やパターニング工程で必要な塗布型有機下層膜や炭素を主成分とするCVD膜に対してダメージを与えない剥離液で容易に剥離可能であり、特にアルカリ性薬液(塩基性薬液)に可溶性を示し、かつドライエッチング後も剥離性を維持できるシリコン含有膜を形成できる、シリコン含有レジスト下層膜形成用組成物を提供する。
【背景技術】
【0002】
従来から半導体装置の製造において、フォトレジストを用いたリソグラフィーによる微細加工が行われている。上記微細加工はシリコンウエハー等の半導体基板上にフォトレジストの薄膜を形成し、その上に半導体デバイスのパターンが描かれたマスクパターンを介して紫外線などの活性光線を照射し、現像し、得られたフォトレジストパターンを保護膜として基板をエッチング処理することにより、基板表面に、上記パターンに対応する微細凹凸を形成する加工法である。
近年、半導体デバイスの高集積度化が進み、使用される活性光線もKrFエキシマレーザー(248nm)からArFエキシマレーザー(193nm)へと短波長化される傾向にある。活性光線の短波長化に伴い、活性光線の半導体基板からの反射の影響が大きな問題となる中、フォトレジストと被加工基板の間に反射防止膜(BottomAnti-ReflectiveCoating、BARC)と呼ばれるレジスト下層膜を設ける方法が広く適用されるようになってきた。
【0003】
上記の半導体基板とフォトレジストとの間の下層膜として、シリコンやチタン等の金属元素を含むハードマスクとして知られる膜を使用することが行なわれている。この場合、レジストとハードマスクでは、その構成成分に大きな違いが有るため、それらのドライエッチングによって除去される速度は、ドライエッチングに使用されるガス種に大きく依存する。そして、ガス種を適切に選択することにより、フォトレジストの膜厚の大きな減少を伴うことなく、ハードマスクをドライエッチングによって除去することが可能となる。このように、近年の半導体装置の製造においては、反射防止効果を初め、さまざまな効果を達成するために、半導体基板とフォトレジストの間にレジスト下層膜が配置されるようになってきている。
これまでもレジスト下層膜用の組成物の検討が行なわれてきているが、その要求される特性の多様性などから、レジスト下層膜用の新たな材料の開発が望まれている。例えばウェットエッチング可能な膜形成を課題とした、特定のケイ酸を骨格とする構造を含む塗布型のBPSG(ホウ素リンガラス)膜形成用組成物(特許文献1)や、リソグラフィー後のマスク残渣の薬液除去を課題とした、カルボニル構造を含有するシリコン含有レジスト下層膜形成用組成物(特許文献2)が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2016-74774号公報
【文献】国際公開第2018/181989号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
最先端の半導体デバイスにおいて、インプラントレイヤーの微細化により、多層プロセスが多用される中、通常、多層プロセスでは下層への転写が上述のドライエッチングにより行われ、最終的に基板の加工や、基板加工後のマスクの残渣、例えば、レジスト膜やレジスト下層膜を含む下層膜の除去もドライエッチングや灰化処理で行われることがある。しかし、ドライエッチングや灰化処理は基板へのダメージが少なく無く、その改善が求められている。
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、半導体基板等の加工工程において、従来のドライエッチングによる方法だけでなく、希フッ酸、バッファードフッ酸、アルカリ性薬液(塩基性薬液)などの薬液を用いたウェットエッチングによる方法でも剥離可能であり、特にアルカリ性薬液(塩基性薬液)に優れた可溶性を示すレジスト下層膜を形成するためのシリコン含有レジスト下層膜形成用組成物を提供すること、また保存安定性に優れ、ドライエッチング工程における残渣の少ないレジスト下層膜を形成するためのシリコン含有レジスト下層膜形成用組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは上記課題を解決するため鋭意検討を行った結果、コハク酸無水物骨格を有する加水分解性シラン又はホスホン酸由来の基を有する加水分解性シランから得られる特定の加水分解縮合物(ポリシロキサン)を含む組成物から得られる膜が、アルカリ性溶液(塩基性薬液)で優れた可溶性を示すこと、また、カチオンAX及びアニオンAZを含む化学構造を有する特定の添加剤(化合物A)を含む、加水分解性シランから得られる加水分解縮合物(ポリシロキサン)を含む組成物から得られる膜が、アルカリ性溶液(塩基性薬液)で優れた可溶性を示すことを見出し、本発明を完成した。
【0008】
すなわち、本発明は以下の態様を包含するものである。
[1]下記式(1)で表される加水分解性シラン及び下記式(2)で表される加水分解性シランの少なくともいずれかを含む加水分解性シラン混合物の加水分解縮合物を含む、シリコン含有レジスト下層膜形成用組成物であって、塩基性薬液に可溶性のシリコン含有レジスト下層膜を形成するためのシリコン含有レジスト下層膜形成用組成物。
【化1】
(式(1)中、
は、ケイ素原子に結合する基であって、コハク酸無水物骨格を含む有機基を表し、
は、ケイ素原子に結合する基であって、互いに独立して、置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいハロゲン化アルキル基、若しくは置換されていてもよいアルコキシアルキル基を表すか、又はエポキシ基、アクリロイル基、メタクリロイル基、メルカプト基、アミノ基、アミド基、アルコキシ基、スルホニル基、若しくはシアノ基を含む有機基、又はそれらの組み合わせを表し、
は、ケイ素原子に結合する基又は原子であって、互いに独立して、アルコキシ基、アラルキルオキシ基、アシルオキシ基又はハロゲン原子を表し、
aは1を表し、bは0~2の整数を表し、4-(a+b)は1~3の整数を表す。)
【化2】
(式(2)中、
は、ケイ素原子に結合する基であって、下記式(2-1)で表される1価の基を表し、
【化3】
(式(2-1)中、
201~R202は、互いに独立して、水素原子、置換されてもよいアルキル基を含む有機基を表し、R203は、置換されてもよいアルキレン基を表し、*はケイ素原子と結合する結合手を表す。)
は、ケイ素原子に結合する基であって、互いに独立して、置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいハロゲン化アルキル基、若しくは置換されていてもよいアルコキシアルキル基を表すか、又はエポキシ基、アクリロイル基、メタクリロイル基、メルカプト基、アミノ基、アミド基、アルコキシ基、スルホニル基、若しくはシアノ基を含む有機基、又はそれらの組み合わせを表し、
は、ケイ素原子に結合する基又は原子であって、互いに独立して、アルコキシ基、アラルキルオキシ基、アシルオキシ基又はハロゲン原子を表し、
aは1を表し、bは0~2の整数を表し、4-(a+b)は1~3の整数を表す。)
[2]シリコン含有レジスト下層膜形成用組成物が、カチオンAX及びアニオンAZを含む化学構造を有し、前記アニオンの分子量が65以上である化合物Aを更に含む、[1]に記載のシリコン含有レジスト下層膜形成用組成物。
[3]前記アニオンAZが、下記(A)~(E)で表されるアニオンからなる群から選択される少なくとも1種のアニオンである、[2]に記載のシリコン含有レジスト下層膜形成用組成物。
【化4】
【化5】
【化6】
【化7】
【化8】
【化9】
(式(A)~(E)中、
301は、置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいアリール基、置換されていてもよいハロゲン化アルキル基、置換されていてもよいアラルキル基、もしくはエステル結合(-C(=O)-O-又は-O-C(=O)-)を含む有機基、又はそれらの組み合わせを表し、
Zは、芳香族環、環状アルカン、または非芳香族環の環状アルケンを表し、
501は、一部または全部がフッ素原子で置換されてもよいアルキル基を表し、
302とR303は、互いに独立して、アルキル基を表し、
304とR305は、互いに独立して、アルキル基を表す。)
[4]前記加水分解性シラン混合物が、下記式(3)で表される加水分解性シランを更に含む、[1]~[3]のいずれかに記載のシリコン含有レジスト下層膜形成用組成物。
【化10】
(式(3)中、
は、ケイ素原子に結合する基であって、アルケニル基を含む有機基を表し、
は、ケイ素原子に結合する基であって、互いに独立して、置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいハロゲン化アルキル基、若しくは置換されていてもよいアルコキシアルキル基を表すか、又はエポキシ基、アクリロイル基、メタクリロイル基、メルカプト基、アミノ基、アミド基、アルコキシ基、スルホニル基、若しくはシアノ基を含む有機基、又はそれらの組み合わせを表し、
は、ケイ素原子に結合する基又は原子であって、互いに独立して、アルコキシ基、アラルキルオキシ基、アシルオキシ基又はハロゲン原子を表し、
aは1を表し、bは0~2の整数を表し、4-(a+b)は1~3の整数を表す。)
[5]前記加水分解性シラン混合物が、下記式(4)で表される加水分解性シランを更に含む、[4]に記載のシリコン含有レジスト下層膜形成用組成物。
【化11】
(式(4)中、
10は、ケイ素原子に結合する基又は原子であって、互いに独立して、アルコキシ基、アラルキルオキシ基、アシルオキシ基、又はハロゲン原子を表す。)
[6]塩基性薬液に可溶性のシリコン含有レジスト下層膜を形成するためのシリコン含有レジスト下層膜形成用組成物であって、
シリコン含有レジスト下層膜形成用組成物が、カチオンAX及びアニオンAZを含む化学構造を有し、前記アニオンの分子量が65以上である化合物Aを含む、シリコン含有レジスト下層膜形成用組成物。
[7]前記アニオンAZが、下記(A)~(E)で表されるアニオンからなる群から選択される少なくとも1種のアニオンである、[6]に記載のシリコン含有レジスト下層膜形成用組成物。
【化12】
【化13】
【化14】
【化15】
【化16】
【化17】
(式(A)~(E)中、
301は、置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいアリール基、置換されていてもよいハロゲン化アルキル基、置換されていてもよいアラルキル基、もしくはエステル結合(-C(=O)-O-又は-O-C(=O)-)を含む有機基、又はそれらの組み合わせを表し、
Zは、芳香族環、環状アルカン、または非芳香族環の環状アルケンを表し、
501は、一部または全部がフッ素原子で置換されてもよいアルキル基を表し、
302とR303は、互いに独立して、アルキル基を表し、
304とR305は、互いに独立して、アルキル基を表す。)
[8][1]~[7]のいずれかに記載のレジスト下層膜形成用組成物を用いて形成されたシリコン含有レジスト下層膜。
[9]半導体基板上に有機下層膜を形成する工程、
前記有機下層膜の上に、[1]~[7]のいずれかに記載のレジスト下層膜形成用組成物を塗布し、焼成して、シリコン含有レジスト下層膜を形成する工程、
前記シリコン含有レジスト下層膜の上に、レジスト膜形成用組成物を塗布し、レジスト膜を形成する工程、
前記レジスト膜を露光、現像し、レジストパターンを得る工程、
レジストパターンをマスクに用い、前記シリコン含有レジスト下層膜をエッチングする工程、
パターン化された前記シリコン含有レジスト下層膜をマスクとして用い、前記有機下層膜をエッチングする工程を含む、
パターン形成方法。
[10]前記有機下層膜をエッチングする工程の後に、薬液を用いた湿式法によりシリコン含有レジスト下層膜を除去する工程を更に含む、
[9]に記載のパターン形成方法。
[11]前記薬液が、塩基性薬液である、[10]に記載のパターン形成方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明にあっては、加水分解性シランとしてコハク酸無水物骨格又はホスホン酸由来の基を含む特定構造のシラン化合物を用いて得られる加水分解縮合物を、レジスト下層膜形成用組成物の一成分とすることにより、該組成物より形成される膜において、シリコン系の膜であっても、塩基性薬液に対し優れた可溶性を示し、湿式法による除去性を高めることができる。
また、本発明にあっては、カチオンAX及びアニオンAZを含む化学構造を有する特定の添加剤(化合物A)を、シラン化合物を用いて得られる加水分解縮合物を含むレジスト下層膜形成用組成物の一成分とすることにより、該組成物より形成される膜において、シリコン系の膜であっても、塩基性薬液に対し優れた可溶性を示し、湿式法による除去性を高めることができる。
そのため、本発明のレジスト下層膜形成用組成物を用いて、フォトレジスト膜等を用いたパターン形成や半導体基板等の加工を行う際、加工後のマスクの残渣の除去、例えば、レジスト膜やレジスト下層膜を含む下層膜の除去を行う場合に、薬液による容易な除去が可能となり、基板ダメージの少ない半導体デバイスを製造することが可能となる。
また本発明によれば、上記加水分解縮合物を含む組成物から形成される膜をドライエッチングした際、エッチングによる残渣除去性を高めることができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明について詳細に説明する。なお、以下に記載する構成要件の説明は、本発明を説明するための例示であり、本発明はこれらの内容に限定されるものではない。
【0011】
[シリコン含有レジスト下層膜形成用組成物]
本発明は、湿式法により剥離可能な、特に塩基性薬液に対し優れた可溶性を示すシリコン含有レジスト下層膜を形成する組成物を対象とする。
本発明のレジスト下層膜形成用組成物は、加水分解性シラン混合物の加水分解縮合物を含む。
本発明のレジスト下層膜形成用組成物は、特定構造の加水分解性シランを含む加水分解性シラン混合物を加水分解縮合して得られる生成物(加水分解縮合物)を含むことを一つの特徴とする。以下、(第1の態様のシリコン含有レジスト下層膜形成用組成物)の欄で詳しく説明する。
また、本発明のレジスト下層膜形成用組成物は、加水分解性シラン混合物の加水分解縮合物とカチオンAX及びアニオンAZを含む化学構造を有する特定の添加剤(化合物A)とを含むことを一つの特徴とする。以下、(第2の態様のシリコン含有レジスト下層膜形成用組成物)の欄で詳しく説明する。
本発明のレジスト下層膜形成用組成物は、加水分解性シラン混合物の加水分解縮合物と特定の添加剤(化合物A)の他に、溶媒やさらに後述するその他成分を含み得る。
【0012】
本発明において、加水分解縮合物には、縮合が完全に完了した縮合物であるポリオルガノシロキサンポリマーだけでなく、縮合が完全に完了しない部分加水分解縮合物であるポリオルガノシロキサンポリマーも包含される。このような部分加水分解縮合物も、縮合が完全に完了した縮合物と同様、加水分解性シラン化合物の加水分解及び縮合によって得られたポリマーであるが、部分的に加水分解で止まり、縮合しておらず、それ故、Si-OH基が残存しているものである。また、本発明のレジスト下層膜形成用組成物は、加水分解縮合物の他に、未縮合の加水分解物(完全加水分解物、部分加水分解物)や、モノマー(加水分解性シラン化合物)が残存していてもよい。
なお、本明細書において、「加水分解性シラン」を単に「シラン化合物」とも称することがある。
【0013】
(第1の態様のシリコン含有レジスト下層膜形成用組成物)
本発明のレジスト下層膜形成用組成物は、特定構造の加水分解性シランを含む加水分解性シラン混合物の加水分解縮合物を含む。
【0014】
<加水分解性シラン混合物の加水分解縮合物>
加水分解性シラン混合物は、下記式(1)で表される加水分解性シラン又は下記式(2)で表される加水分解性シランを含み、所望により、下記式(3)で表される加水分解性シランや、下記式(4)で表されるテトラアルコキシシランの加水分解性シランや、下記式(5)で表される加水分解性シランや、その他の加水分解性シランを含み得る。
【0015】
<<式(1)で表されるシラン化合物(加水分解性シラン)>>
本発明のレジスト下層膜形成用組成物に使用する加水分解縮合物は、下記式(1)で表されるシラン化合物を含む加水分解性シラン混合物の、加水分解縮合の生成物とすることができる。
【0016】
【化18】
【0017】
は、ケイ素原子に結合する基であって、コハク酸無水物骨格を含む有機基を表す。
【0018】
上記Rの有機基として、上記の骨格を含む有機基である限り特に限定されるものではない。
【0019】
例えば、コハク酸無水物骨格を含む有機基は、該骨格自体だけでなく、アルキル基における1以上の水素原子がコハク酸無水物骨格で置換された有機基を挙げることができる。
【0020】
上記コハク酸無水物骨格等によって水素原子が置換されるアルキル基は特に限定されるものではなく、直鎖状、分岐鎖状、環状のいずれであってもよく、その炭素原子数は、通常40以下、例えば30以下、より例えば20以下、また10以下とすることができる。
上記直鎖状又は分岐鎖状アルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、i-プロピル基、n-ブチル基、i-ブチル基、s-ブチル基、t-ブチル基、n-ペンチル基、1-メチル-n-ブチル基、2-メチル-n-ブチル基、3-メチル-n-ブチル基、1,1-ジメチル-n-プロピル基、1,2-ジメチル-n-プロピル基、2,2-ジメチル-n-プロピル基、1-エチル-n-プロピル基、n-ヘキシル、1-メチル-n-ペンチル基、2-メチル-n-ペンチル基、3-メチル-n-ペンチル基、4-メチル-n-ペンチル基、1,1-ジメチル-n-ブチル基、1,2-ジメチル-n-ブチル基、1,3-ジメチル-n-ブチル基、2,2-ジメチル-n-ブチル基、2,3-ジメチル-n-ブチル基、3,3-ジメチル-n-ブチル基、1-エチル-n-ブチル基、2-エチル-n-ブチル基、1,1,2-トリメチル-n-プロピル基、1,2,2-トリメチル-n-プロピル基、1-エチル-1-メチル-n-プロピル基、1-エチル-2-メチル-n-プロピル基等が挙げられるが、これらに限定されない。
また上記環状アルキル基の具体例としては、シクロプロピル基、シクロブチル基、1-メチル-シクロプロピル基、2-メチル-シクロプロピル基、シクロペンチル基、1-メチル-シクロブチル基、2-メチル-シクロブチル基、3-メチル-シクロブチル基、1,2-ジメチル-シクロプロピル基、2,3-ジメチル-シクロプロピル基、1-エチル-シクロプロピル基、2-エチル-シクロプロピル基、シクロヘキシル基、1-メチル-シクロペンチル基、2-メチル-シクロペンチル基、3-メチル-シクロペンチル基、1-エチル-シクロブチル基、2-エチル-シクロブチル基、3-エチル-シクロブチル基、1,2-ジメチル-シクロブチル基、1,3-ジメチル-シクロブチル基、2,2-ジメチル-シクロブチル基、2,3-ジメチル-シクロブチル基、2,4-ジメチル-シクロブチル基、3,3-ジメチル-シクロブチル基、1-n-プロピル-シクロプロピル基、2-n-プロピル-シクロプロピル基、1-i-プロピル-シクロプロピル基、2-i-プロピル-シクロプロピル基、1,2,2-トリメチル-シクロプロピル基、1,2,3-トリメチル-シクロプロピル基、2,2,3-トリメチル-シクロプロピル基、1-エチル-2-メチル-シクロプロピル基、2-エチル-1-メチル-シクロプロピル基、2-エチル-2-メチル-シクロプロピル、2-エチル-3-メチル-シクロプロピル基等のシクロアルキル基、ビシクロブチル基、ビシクロペンチル基、ビシクロヘキシル基、ビシクロヘプチル基、ビシクロオクチル基、ビシクロノニル基、ビシクロデシル基等のビシクロアルキル基等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0021】
上記Rの有機基として、例えば、下記式(1-1)で表される1価の基が挙げられる。
【0022】
【化19】
【0023】
401は、例えば、上述した直鎖状、分岐鎖状、または環状のアルキル基から水素原子を一つ取り除いて誘導される2価の基であるアルキレン基を表す。*はケイ素原子と結合する結合手を表す。
【0024】
式(1)中、Rは、ケイ素原子に結合する基であって、互いに独立して、置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいハロゲン化アルキル基、若しくは置換されていてもよいアルコキシアルキル基を表すか、又はエポキシ基、アクリロイル基、メタクリロイル基、メルカプト基、アミノ基、アミド基、アルコキシ基、スルホニル基、若しくはシアノ基を含む有機基、又はそれらの組み合わせを表す。
【0025】
式(1)のRにおけるアルキル基としては、例えば、直鎖又は分枝を有する炭素原子数1~10のアルキル基が挙げられ、例えばメチル基、エチル基、n-プロピル基、i-プロピル基、n-ブチル基、i-ブチル基、s-ブチル基、t-ブチル基、n-ペンチル基、1-メチル-n-ブチル基、2-メチル-n-ブチル基、3-メチル-n-ブチル基、1,1-ジメチル-n-プロピル基、1,2-ジメチル-n-プロピル基、2,2-ジメチル-n-プロピル基、1-エチル-n-プロピル基、n-ヘキシル基、1-メチル-n-ペンチル基、2-メチル-n-ペンチル基、3-メチル-n-ペンチル基、4-メチル-n-ペンチル基、1,1-ジメチル-n-ブチル基、1,2-ジメチル-n-ブチル基、1,3-ジメチル-n-ブチル基、2,2-ジメチル-n-ブチル基、2,3-ジメチル-n-ブチル基、3,3-ジメチル-n-ブチル基、1-エチル-n-ブチル基、2-エチル-n-ブチル基、1,1,2-トリメチル-n-プロピル基、1,2,2-トリメチル-n-プロピル基、1-エチル-1-メチル-n-プロピル基及び1-エチル-2-メチル-n-プロピル基等が挙げられる。
また環状アルキル基を用いることもでき、例えば炭素原子数3~10の環状アルキル基として、シクロプロピル基、シクロブチル基、1-メチル-シクロプロピル基、2-メチル-シクロプロピル基、シクロペンチル基、1-メチル-シクロブチル基、2-メチル-シクロブチル基、3-メチル-シクロブチル基、1,2-ジメチル-シクロプロピル基、2,3-ジメチル-シクロプロピル基、1-エチル-シクロプロピル基、2-エチル-シクロプロピル基、シクロヘキシル基、1-メチル-シクロペンチル基、2-メチル-シクロペンチル基、3-メチル-シクロペンチル基、1-エチル-シクロブチル基、2-エチル-シクロブチル基、3-エチル-シクロブチル基、1,2-ジメチル-シクロブチル基、1,3-ジメチル-シクロブチル基、2,2-ジメチル-シクロブチル基、2,3-ジメチル-シクロブチル基、2,4-ジメチル-シクロブチル基、3,3-ジメチル-シクロブチル基、1-n-プロピル-シクロプロピル基、2-n-プロピル-シクロプロピル基、1-i-プロピル-シクロプロピル基、2-i-プロピル-シクロプロピル基、1,2,2-トリメチル-シクロプロピル基、1,2,3-トリメチル-シクロプロピル基、2,2,3-トリメチル-シクロプロピル基、1-エチル-2-メチル-シクロプロピル基、2-エチル-1-メチル-シクロプロピル基、2-エチル-2-メチル-シクロプロピル基及び2-エチル-3-メチル-シクロプロピル基等が挙げられる。
【0026】
式(1)のRにおけるハロゲン化アルキル基は、ハロゲン原子により置換されたアルキル基を指す。
上記ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられ、またアルキル基の具体例としては上述したものと同じものが挙げられる。
ハロゲン化アルキル基の炭素原子数は、特に限定されるものではないが、好ましくは40以下、より好ましくは30以下、より一層好ましくは20以下、更に好ましくは10以下である。
ハロゲン化アルキル基の具体例としては、モノフルオロメチル基、ジフルオロメチル基、トリフルオロメチル基、ブロモジフルオロメチル基、2-クロロエチル基、2-ブロモエチル基、1,1-ジフルオロエチル基、2,2,2-トリフルオロエチル基、1,1,2,2-テトラフルオロエチル基、2-クロロ-1,1,2-トリフルオロエチル基、ペンタフルオロエチル基、3-ブロモプロピル基、2,2,3,3-テトラフルオロプロピル基、1,1,2,3,3,3-ヘキサフルオロプロピル基、1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロプロパン-2-イル基、3-ブロモ-2-メチルプロピル基、4-ブロモブチル基、パーフルオロペンチル基等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0027】
式(1)のRにおけるアルコキシアルキル基は、アルコキシ基により置換されたアルキル基をいう。
アルキル基の具体例としては、上述したものと同じものが挙げられる。
アルコキシ基の具体例としては、炭素原子数1~20の直鎖、分岐、環状のアルキル部分を有するアルコキシ基が挙げられる。直鎖又は分岐を有するアルコキシ基としては、例えばメトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、i-プロポキシ基、n-ブトキシ基、i-ブトキシ基、s-ブトキシ基、t-ブトキシ基、n-ペンチロキシ基、1-メチル-n-ブトキシ基、2-メチル-n-ブトキシ基、3-メチル-n-ブトキシ基、1,1-ジメチル-n-プロポキシ基、1,2-ジメチル-n-プロポキシ基、2,2-ジメチル-n-プロポキシ基、1-エチル-n-プロポキシ基、n-ヘキシロキシ基、1-メチル-n-ペンチロキシ基、2-メチル-n-ペンチロキシ基、3-メチル-n-ペンチロキシ基、4-メチル-n-ペンチロキシ基、1,1-ジメチル-n-ブトキシ基、1,2-ジメチル-n-ブトキシ基、1,3-ジメチル-n-ブトキシ基、2,2-ジメチル-n-ブトキシ基、2,3-ジメチル-n-ブトキシ基、3,3-ジメチル-n-ブトキシ基、1-エチル-n-ブトキシ基、2-エチル-n-ブトキシ基、1,1,2-トリメチル-n-プロポキシ基、1,2,2-トリメチル-n-プロポキシ基、1-エチル-1-メチル-n-プロポキシ基及び1-エチル-2-メチル-n-プロポキシ基等が挙げられる。
また環状のアルコキシ基としては、例えばシクロプロポキシ基、シクロブトキシ基、1-メチル-シクロプロポキシ基、2-メチル-シクロプロポキシ基、シクロペンチロキシ基、1-メチル-シクロブトキシ基、2-メチル-シクロブトキシ基、3-メチル-シクロブトキシ基、1,2-ジメチル-シクロプロポキシ基、2,3-ジメチル-シクロプロポキシ基、1-エチル-シクロプロポキシ基、2-エチル-シクロプロポキシ基、シクロヘキシロキシ基、1-メチル-シクロペンチロキシ基、2-メチル-シクロペンチロキシ基、3-メチル-シクロペンチロキシ基、1-エチル-シクロブトキシ基、2-エチル-シクロブトキシ基、3-エチル-シクロブトキシ基、1,2-ジメチル-シクロブトキシ基、1,3-ジメチル-シクロブトキシ基、2,2-ジメチル-シクロブトキシ基、2,3-ジメチル-シクロブトキシ基、2,4-ジメチル-シクロブトキシ基、3,3-ジメチル-シクロブトキシ基、1-n-プロピル-シクロプロポキシ基、2-n-プロピル-シクロプロポキシ基、1-i-プロピル-シクロプロポキシ基、2-i-プロピル-シクロプロポキシ基、1,2,2-トリメチル-シクロプロポキシ基、1,2,3-トリメチル-シクロプロポキシ基、2,2,3-トリメチル-シクロプロポキシ基、1-エチル-2-メチル-シクロプロポキシ基、2-エチル-1-メチル-シクロプロポキシ基、2-エチル-2-メチル-シクロプロポキシ基及び2-エチル-3-メチル-シクロプロポキシ基等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
アルコキシアルキル基の炭素原子数は、特に限定されるものではないが、好ましくは40以下、より好ましくは30以下、より一層好ましくは20以下、更に好ましくは10以下である。
アルコキシアルキル基の具体例としては、メトキシメチル基、エトキシメチル基、1-エトキシエチル基、2-エトキシエチル基、エトキシメチル基等の低級アルキルオキシ低級アルキル基等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0028】
上記アルキル基、ハロゲン化アルキル基、若しくはアルコキシアルキル基における置換基としては、例えば、アルキル基、アリール基、アラルキル基、ハロゲン化アルキル基、ハロゲン化アリール基、ハロゲン化アラルキル基、アルコキシアルキル基、アリールオキシ基、アルコキシアリール基、アルコキシアラルキル基、アルケニル基、アルコキシ基、アラルキルオキシ基等が挙げられる。これらのうち、アルキル基、ハロゲン化アルキル基、アルコキシアルキル基、アルコキシ基の具体例及びそれらの好適な炭素原子数としては、上述のものと同じものが挙げられる。
【0029】
上記置換基において挙げたアリール基としては、例えば、フェニル基、o-メチルフェニル基、m-メチルフェニル基、p-メチルフェニル基、o-クロルフェニル基、m-クロルフェニル基、p-クロルフェニル基、o-フルオロフェニル基、p-メルカプトフェニル基、o-メトキシフェニル基、p-メトキシフェニル基、p-アミノフェニル基、p-シアノフェニル基、α-ナフチル基、β-ナフチル基、o-ビフェニリル基、m-ビフェニリル基、p-ビフェニリル基、1-アントリル基、2-アントリル基、9-アントリル基、1-フェナントリル基、2-フェナントリル基、3-フェナントリル基、4-フェナントリル基及び9-フェナントリル基等を挙げることができるが、これらに限定されない。
【0030】
上記置換基において挙げたアラルキル基としては、例えば、フェニルメチル基(ベンジル基)、2-フェニルエチレン基、3-フェニル-n-プロピル基、4-フェニル-n-ブチル基、5-フェニル-n-ペンチル基、6-フェニル-n-ヘキシル基、7-フェニル-n-ヘプチル基、8-フェニル-n-オクチル基、9-フェニル-n-ノニル基、10-フェニル-n-デシル基等を挙げることができるが、これらに限定されない。
【0031】
上記置換基において挙げたハロゲン化アリール基としては、ハロゲン原子により置換されたアリール基であり、このようなアリール基の具体例としては上述したものと同じものが挙げられる。ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられる。
ハロゲン化アリール基の炭素原子数は、特に限定されるものではないが、好ましくは40以下、より好ましくは30以下、より一層好ましくは20以下である。
ハロゲン化アリール基の具体例としては、2-フルオロフェニル基、3-フルオロフェニル基、4-フルオロフェニル基、2,3-ジフルオロフェニル基、2,4-ジフルオロフェニル基、2,5-ジフルオロフェニル基、2,6-ジフルオロフェニル基、3,4-ジフルオロフェニル基、3,5-ジフルオロフェニル基、2,3,4-トリフルオロフェニル基、2,3,5-トリフルオロフェニル基、2,3,6-トリフルオロフェニル基、2,4,5-トリフルオロフェニル基、2,4,6-トリフルオロフェニル基、3,4,5-トリフルオロフェニル基、2,3,4,5-テトラフルオロフェニル基、2,3,4,6-テトラフルオロフェニル基、2,3,5,6-テトラフルオロフェニル基、ペンタフルオロフェニル基、2-フルオロ-1-ナフチル基、3-フルオロ-1-ナフチル基、4-フルオロ-1-ナフチル基、6-フルオロ-1-ナフチル基、7-フルオロ-1-ナフチル基、8-フルオロ-1-ナフチル基、4,5-ジフルオロ-1-ナフチル基、5,7-ジフルオロ-1-ナフチル基、5,8-ジフルオロ-1-ナフチル基、5,6,7,8-テトラフルオロ-1-ナフチル基、ヘプタフルオロ-1-ナフチル基、1-フルオロ-2-ナフチル基、5-フルオロ-2-ナフチル基、6-フルオロ-2-ナフチル基、7-フルオロ-2-ナフチル基、5,7-ジフルオロ-2-ナフチル基、ヘプタフルオロ-2-ナフチル基等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0032】
上記置換基において挙げたハロゲン化アラルキル基としては、ハロゲン原子により置換されたアラルキル基であり、このようなアラルキル基及びハロゲン原子の具体例としては、上述したものと同じものが挙げられる。
ハロゲン化アラルキル基の炭素原子数は、特に限定されるものではないが、好ましくは40以下、より好ましくは30以下、より一層好ましくは20以下である。
ハロゲン化アラルキル基の具体例としては、2-フルオロベンジル基、3-フルオロベンジル基、4-フルオロベンジル基、2,3-ジフルオロベンジル基、2,4-ジフルオロベンジル基、2,5-ジフルオロベンジル基、2,6-ジフルオロベンジル基、3,4-ジフルオロベンジル基、3,5-ジフルオロベンジル基、2,3,4-トリフルオロベンジル基、2,3,5-トリフルオロベンジル基、2,3,6-トリフルオロベンジル基、2,4,5-トリフルオロベンジル基、2,4,6-トリフルオロベンジル基、2,3,4,5-テトラフルオロベンジル基、2,3,4,6-テトラフルオロベンジル基、2,3,5,6-テトラフルオロベンジル基、2,3,4,5,6-ペンタフルオロベンジル基等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0033】
上記置換基において挙げたアリールオキシ基は、アリール基が酸素原子(-O-)を介して結合する基であり、このようなアリール基の具体例としては上述したものと同じものが挙げられる。上記アリールオキシ基の炭素原子数は、特に限定されるものではないが、好ましくは40以下、より好ましくは30以下、より一層好ましくは20以下であり、その具体例としては、フェノキシ基、ナフタレン-2-イルオキシ基等が挙げられるが、これらに限定されない。
また、置換基が2以上存在する場合、置換基同士が結合して環を形成してもよい。
【0034】
上記置換基において挙げたアルコキシアリール基としては、アルコキシ基により置換されたアリール基であり、このようなアルコキシ基およびアリール基の具体例としては、上述したものと同じものが挙げられる。
アルコキシアリール基の炭素原子数は、特に限定されるものではないが、好ましくは40以下、より好ましくは30以下、より一層好ましくは20以下である。
アルコキシアリール基の具体例としては、例えば、2-メトキシフェニル基、3-メトキシフェニル基、4-メトキシフェニル基、2-(1-エトキシ)フェニル基、3-(1-エトキシ)フェニル基、4-(1-エトキシ)フェニル基、2-(2-エトキシ)フェニル基、3-(2-エトキシ)フェニル基、4-(2-エトキシ)フェニル基、2-メトキシナフタレン-1-イル基、3-メトキシナフタレン-1-イル基、4-メトキシナフタレン-1-イル基、5-メトキシナフタレン-1-イル基、6-メトキシナフタレン-1-イル基、7-メトキシナフタレン-1-イル基等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0035】
上記置換基において挙げたアルコキシアラルキル基としては、アルコキシ基により置換されたアラルキル基であり、このようなアルコキシ基及びアラルキル基の具体例としては、上述したものと同じものが挙げられる。
アルコキシアラルキル基の炭素原子数は、特に限定されるものではないが、好ましくは40以下、より好ましくは30以下、より一層好ましくは20以下である。
アルコキシアラルキル基の具体例としては、3-(メトキシフェニル)ベンジル基、4-(メトキシフェニル)ベンジル基等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0036】
上記置換基において挙げたアルケニル基としては、置換されていてもよいアルケニル基を挙げることができ、例えば炭素原子数2~10のアルケニル基が挙げられる。より具体的には、エテニル基(ビニル基)、1-プロペニル基、2-プロペニル基、1-メチル-1-エテニル基、1-ブテニル基、2-ブテニル基、3-ブテニル基、2-メチル-1-プロペニル基、2-メチル-2-プロペニル基、1-エチルエテニル基、1-メチル-1-プロペニル基、1-メチル-2-プロペニル基、1-ペンテニル基、2-ペンテニル基、3-ペンテニル基、4-ペンテニル基、1-n-プロピルエテニル基、1-メチル-1-ブテニル基、1-メチル-2-ブテニル基、1-メチル-3-ブテニル基、2-エチル-2-プロペニル基、2-メチル-1-ブテニル基、2-メチル-2-ブテニル基、2-メチル-3-ブテニル基、3-メチル-1-ブテニル基、3-メチル-2-ブテニル基、3-メチル-3-ブテニル基、1,1-ジメチル-2-プロペニル基、1-i-プロピルエテニル基、1,2-ジメチル-1-プロペニル基、1,2-ジメチル-2-プロペニル基、1-シクロペンテニル基、2-シクロペンテニル基、3-シクロペンテニル基、1-ヘキセニル基、2-ヘキセニル基、3-ヘキセニル基、4-ヘキセニル基、5-ヘキセニル基、1-メチル-1-ペンテニル基、1-メチル-2-ペンテニル基、1-メチル-3-ペンテニル基、1-メチル-4-ペンテニル基、1-n-ブチルエテニル基、2-メチル-1-ペンテニル基、2-メチル-2-ペンテニル基、2-メチル-3-ペンテニル基、2-メチル-4-ペンテニル基、2-n-プロピル-2-プロペニル基、3-メチル-1-ペンテニル基、3-メチル-2-ペンテニル基、3-メチル-3-ペンテニル基、3-メチル-4-ペンテニル基、3-エチル-3-ブテニル基、4-メチル-1-ペンテニル基、4-メチル-2-ペンテニル基、4-メチル-3-ペンテニル基、4-メチル-4-ペンテニル基、1,1-ジメチル-2-ブテニル基、1,1-ジメチル-3-ブテニル基、1,2-ジメチル-1-ブテニル基、1,2-ジメチル-2-ブテニル基、1,2-ジメチル-3-ブテニル基、1-メチル-2-エチル-2-プロペニル基、1-s-ブチルエテニル基、1,3-ジメチル-1-ブテニル基、1,3-ジメチル-2-ブテニル基、1,3-ジメチル-3-ブテニル基、1-i-ブチルエテニル基、2,2-ジメチル-3-ブテニル基、2,3-ジメチル-1-ブテニル基、2,3-ジメチル-2-ブテニル基、2,3-ジメチル-3-ブテニル基、2-i-プロピル-2-プロペニル基、3,3-ジメチル-1-ブテニル基、1-エチル-1-ブテニル基、1-エチル-2-ブテニル基、1-エチル-3-ブテニル基、1-n-プロピル-1-プロペニル基、1-n-プロピル-2-プロペニル基、2-エチル-1-ブテニル基、2-エチル-2-ブテニル基、2-エチル-3-ブテニル基、1,1,2-トリメチル-2-プロペニル基、1-t-ブチルエテニル基、1-メチル-1-エチル-2-プロペニル基、1-エチル-2-メチル-1-プロペニル基、1-エチル-2-メチル-2-プロペニル基、1-i-プロピル-1-プロペニル基、1-i-プロピル-2-プロペニル基、1-メチル-2-シクロペンテニル基、1-メチル-3-シクロペンテニル基、2-メチル-1-シクロペンテニル基、2-メチル-2-シクロペンテニル基、2-メチル-3-シクロペンテニル基、2-メチル-4-シクロペンテニル基、2-メチル-5-シクロペンテニル基、2-メチレン-シクロペンチル基、3-メチル-1-シクロペンテニル基、3-メチル-2-シクロペンテニル基、3-メチル-3-シクロペンテニル基、3-メチル-4-シクロペンテニル基、3-メチル-5-シクロペンテニル基、3-メチレン-シクロペンチル基、1-シクロヘキセニル基、2-シクロヘキセニル基及び3-シクロヘキセニル基等が挙げられ、またビシクロへプテニル基(ノルボルニル基)等の架橋環式のアルケニル基も挙げることができる。
【0037】
上記置換基において挙げたアラルキルオキシ基としては、アラルキルアルコールのヒドロキシ基から水素原子を取り除いて誘導される基であり、このようなアラルキル基の具体例としては、上述したものと同じものが挙げられる。
アラルキルオキシ基の炭素原子数は、特に限定されるものではないが、好ましくは40以下、より好ましくは30以下、より一層好ましくは20以下である。
アラルキルオキシ基の具体例としては、フェニルメチルオキシ基(ベンジルオキシ基)、2-フェニルエチレンオキシ基、3-フェニル-n-プロピルオキシ基、4-フェニル-n-ブチルオキシ基、5-フェニル-n-ペンチルオキシ基、6-フェニル-n-ヘキシルオキシ基、7-フェニル-n-ヘプチルオキシ基、8-フェニル-n-オクチルオキシ基、9-フェニル-n-ノニルオキシ基、10-フェニル-n-デシルオキシ基等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0038】
上記式(1)のRにおけるエポキシ基を含む有機基としては、グリシドキシメチル基、グリシドキシエチル基、グリシドキシプロピル基、グリシドキシブチル基、エポキシシクロヘキシル基等が挙げられるがこれらに限定されない。
上記式(1)のRにおけるアクリロイル基を含む有機基としては、アクリロイルメチル基、アクリロイルエチル基、アクリロイルプロピル基等が挙げられるがこれらに限定されない。
上記式(1)のRにおけるメタクリロイル基を含む有機基としては、メタクリロイルメチル基、メタクリロイルエチル基、メタクリロイルプロピル基等が挙げられるがこれらに限定されない。
上記式(1)のRにおけるメルカプト基を含む有機基としては、エチルメルカプト基、ブチルメルカプト基、ヘキシルメルカプト基、オクチルメルカプト基等が挙げられるがこれらに限定されない。
上記式(1)のRにおけるアミノ基を含む有機基としては、アミノ基、アミノメチル基、アミノエチル基、ジメチルアミノエチル基、ジメチルアミノプロピル基等が挙げられるがこれらに限定されない。
上記式(1)のRにおけるアルコキシ基を含む有機基としては、例えばメトキシメチル基、メトキシエチル基が挙げられるがこれらに限定されない。ただし、アルコキシ基が直接ケイ素原子に結合する基は除かれる。
上記式(1)のRにおけるスルホニル基を含む有機基としては、スルホニルアルキル基や、スルホニルアリール基が挙げられるがこれらに限定されない。
上記式(1)のRにおけるシアノ基を含む有機基としては、例えばシアノエチル基、シアノプロピル基等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0039】
式(1)中、Rは、ケイ素原子に結合する基又は原子であって、互いに独立して、アルコキシ基、アラルキルオキシ基、アシルオキシ基又はハロゲン原子を表す。上記アルコキシ基、ハロゲン原子としては、上述したものと同じものが挙げられる。
【0040】
アラルキルオキシ基は、アラルキルアルコールのヒドロキシ基から水素原子を取り除いて誘導される基であり、このようなアラルキル基の具体例としては、上述したものと同じものが挙げられる。
アラルキルオキシ基の炭素原子数は、特に限定されるものではないが、好ましくは40以下、より好ましくは30以下、より一層好ましくは20以下である。
アラルキルオキシ基の具体例としては、フェニルメチルオキシ基(ベンジルオキシ基)、2-フェニルエチレンオキシ基、3-フェニル-n-プロピルオキシ基、4-フェニル-n-ブチルオキシ基、5-フェニル-n-ペンチルオキシ基、6-フェニル-n-ヘキシルオキシ基、7-フェニル-n-ヘプチルオキシ基、8-フェニル-n-オクチルオキシ基、9-フェニル-n-ノニルオキシ基、10-フェニル-n-デシルオキシ基等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0041】
アシルオキシ基は、カルボン酸化合物のカルボン酸基から水素原子を取り除いて誘導される基であり、典型的には、アルキルカルボン酸、アリールカルボン酸又はアラルキルカルボン酸のカルボン酸基から水素原子を取り除いて誘導されるアルキルカルボニルオキシ基、アリールカルボニルオキシ基又はアラルキルカルボニルオキシ基が挙げられるが、これらに限定されない。このようなアルキルカルボン酸、アリールカルボン酸及びアラルキルカルボン酸におけるアルキル基、アリール基及びアラルキル基の具体例としては、上述したものと同じものが挙げられる。
アシルオキシ基の具体例としては、炭素原子数2~20のアシルオキシ基が挙げられる。例えばメチルカルボニルオキシ基、エチルカルボニルオキシ基、n-プロピルカルボニルオキシ基、i-プロピルカルボニルオキシ基、n-ブチルカルボニルオキシ基、i-ブチルカルボニルオキシ基、s-ブチルカルボニルオキシ基、t-ブチルカルボニルオキシ基、n-ペンチルカルボニルオキシ基、1-メチル-n-ブチルカルボニルオキシ基、2-メチル-n-ブチルカルボニルオキシ基、3-メチル-n-ブチルカルボニルオキシ基、1,1-ジメチル-n-プロピルカルボニルオキシ基、1,2-ジメチル-n-プロピルカルボニルオキシ基、2,2-ジメチル-n-プロピルカルボニルオキシ基、1-エチル-n-プロピルカルボニルオキシ基、n-ヘキシルカルボニルオキシ基、1-メチル-n-ペンチルカルボニルオキシ基、2-メチル-n-ペンチルカルボニルオキシ基、3-メチル-n-ペンチルカルボニルオキシ基、4-メチル-n-ペンチルカルボニルオキシ基、1,1-ジメチル-n-ブチルカルボニルオキシ基、1,2-ジメチル-n-ブチルカルボニルオキシ基、1,3-ジメチル-n-ブチルカルボニルオキシ基、2,2-ジメチル-n-ブチルカルボニルオキシ基、2,3-ジメチル-n-ブチルカルボニルオキシ基、3,3-ジメチル-n-ブチルカルボニルオキシ基、1-エチル-n-ブチルカルボニルオキシ基、2-エチル-n-ブチルカルボニルオキシ基、1,1,2-トリメチル-n-プロピルカルボニルオキシ基、1,2,2-トリメチル-n-プロピルカルボニルオキシ基、1-エチル-1-メチル-n-プロピルカルボニルオキシ基、1-エチル-2-メチル-n-プロピルカルボニルオキシ基、フェニルカルボニルオキシ基、及びトシルカルボニルオキシ基等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0042】
上記式(1)中、aは1を表し、bは0~2の整数を表し、4-(a+b)は1~3の整数を表す。
bは好ましくは0又は1を表し、より好ましくは0である。
【0043】
上記式(1)で表される化合物の具体例としては、例えば、[(3-トリメトキシシリル)プロピル]コハク酸無水物、[(3-トリエトキシシリル)プロピル]コハク酸無水物、[(3-トリメトキシシリル)エチル]コハク酸無水物、[(3-トリメトキシシリル)ブチル]コハク酸無水物等のコハク酸無水物骨格を含むシラン化合物が挙げられる。
【0044】
<<式(2)で表されるシラン化合物(加水分解性シラン)>>
本発明のレジスト下層膜形成用組成物に使用する加水分解縮合物は、下記式(2)で表されるシラン化合物を含む加水分解性シラン混合物の、加水分解縮合の生成物とすることができる。
【0045】
【化20】
【0046】
は、ケイ素原子に結合する基であって、下記式(2-1)で表される1価の基を表す。
【0047】
【化21】
【0048】
式(2-1)中、R201~R202は、互いに独立して、水素原子、置換されてもよいアルキル基を含む有機基を表し、R203は、置換されてもよいアルキレン基を表し、*はケイ素原子と結合する結合手を表す。
【0049】
式(2)中、Rの式(2-1)で表される1価の基において、置換されてもよいアルキル基としては、上記式(1)中のRにおいて説明した置換されてもよいアルキル基と同様である。
置換されてもよいアルキル基を含む有機基としては、例えば、置換されてもよいアルキル基が挙げられる。
【0050】
式(2)中、Rの式(2-1)で表される1価の基において、置換されてもよいアルキレン基とは、上記置換されてもよいアルキル基の水素原子を更に一つ取り除いて誘導される2価の基をいう。直鎖状、分岐鎖状、環状のいずれでもよい。
アルキレン基の具体例としては、例えば、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基、メチルエチレン基、テトラメチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基、ヘプタメチレン基、オクタメチレン基、ノナメチレン基、デカメチレン基等の直鎖状アルキレン基、1-メチルトリメチレン基、2-メチルトリメチレン基、1,1-ジメチルエチレン基、1-メチルテトラメチレン基、2-メチルテトラメチレン基、1,1-ジメチルトリメチレン基、1,2-ジメチルトリメチレン基、2,2-ジメチルトリメチレン基、1-エチルトリメチレン基等の分岐鎖状アルキレン基、1,2-シクロプロピパンジイル基、1,2-シクロブタンジイル、1,3-シクロブチタンジイル基、1,2-シクロヘキサンジイル、1,3-シクロヘキサンジイル等の環状アルキレン等、-CHOCH-、-CHCHOCH-、-CHCHOCHCH-、-CHCHCHOCHCH-、-CHCHOCHCHCH-、-CHCHCHOCHCHCH-、-CHSCH-、-CHCHSCH-、-CHCHSCHCH-、-CHCHCHSCHCH-、-CHCHSCHCHCH-、-CHCHCHSCHCHCH-、-CHOCHCHSCH-等のエーテル基等を含むアルキレン基が挙げられるが、これらに限定されない。
【0051】
式(2)中、Rは、上記式(1)のRと同様である。
【0052】
式(2)中、Rは、上記式(1)のRと同様である。
【0053】
上記式(2)中、aは1を表し、bは0~2の整数を表し、4-(a+b)は1~3の整数を表す。
bは好ましくは0又は1を表し、より好ましくは0である。
【0054】
上記式(2)で表される化合物の具体例としては、例えば、[(3-トリエトキシシリル)エチル]ホスホン酸ジエチル、等のアルキルホスホン酸を含むシラン化合物が挙げられる。
【0055】
<<式(3)で表されるシラン化合物(加水分解性シラン)>>
本発明のレジスト下層膜形成用組成物に使用する加水分解縮合物は、更に下記式(3)で表される加水分解性シランを含むことができる。
【0056】
【化22】
【0057】
は、ケイ素原子に結合する基であって、アルケニル基を含む有機基を表す。
【0058】
上記Rの有機基として、上記の基を含む有機基である限り特に限定されるものではない。
【0059】
例えば、アルケニル基を含む有機基は、該アルケニル基自体だけでなく、アルキル基における1以上の水素原子がアルケニル基で置換された有機基を挙げることができる。
【0060】
また、上記Rにおけるアルケニル基としては、上記式(1)のRにおいて説明したように、置換されていてもよいアルケニル基を挙げることができ、例えば炭素原子数2~10のアルケニル基が挙げられる。より具体的には、エテニル基(ビニル基)、1-プロペニル基、2-プロペニル基、1-メチル-1-エテニル基、1-ブテニル基、2-ブテニル基、3-ブテニル基、2-メチル-1-プロペニル基、2-メチル-2-プロペニル基、1-エチルエテニル基、1-メチル-1-プロペニル基、1-メチル-2-プロペニル基、1-ペンテニル基、2-ペンテニル基、3-ペンテニル基、4-ペンテニル基、1-n-プロピルエテニル基、1-メチル-1-ブテニル基、1-メチル-2-ブテニル基、1-メチル-3-ブテニル基、2-エチル-2-プロペニル基、2-メチル-1-ブテニル基、2-メチル-2-ブテニル基、2-メチル-3-ブテニル基、3-メチル-1-ブテニル基、3-メチル-2-ブテニル基、3-メチル-3-ブテニル基、1,1-ジメチル-2-プロペニル基、1-i-プロピルエテニル基、1,2-ジメチル-1-プロペニル基、1,2-ジメチル-2-プロペニル基、1-シクロペンテニル基、2-シクロペンテニル基、3-シクロペンテニル基、1-ヘキセニル基、2-ヘキセニル基、3-ヘキセニル基、4-ヘキセニル基、5-ヘキセニル基、1-メチル-1-ペンテニル基、1-メチル-2-ペンテニル基、1-メチル-3-ペンテニル基、1-メチル-4-ペンテニル基、1-n-ブチルエテニル基、2-メチル-1-ペンテニル基、2-メチル-2-ペンテニル基、2-メチル-3-ペンテニル基、2-メチル-4-ペンテニル基、2-n-プロピル-2-プロペニル基、3-メチル-1-ペンテニル基、3-メチル-2-ペンテニル基、3-メチル-3-ペンテニル基、3-メチル-4-ペンテニル基、3-エチル-3-ブテニル基、4-メチル-1-ペンテニル基、4-メチル-2-ペンテニル基、4-メチル-3-ペンテニル基、4-メチル-4-ペンテニル基、1,1-ジメチル-2-ブテニル基、1,1-ジメチル-3-ブテニル基、1,2-ジメチル-1-ブテニル基、1,2-ジメチル-2-ブテニル基、1,2-ジメチル-3-ブテニル基、1-メチル-2-エチル-2-プロペニル基、1-s-ブチルエテニル基、1,3-ジメチル-1-ブテニル基、1,3-ジメチル-2-ブテニル基、1,3-ジメチル-3-ブテニル基、1-i-ブチルエテニル基、2,2-ジメチル-3-ブテニル基、2,3-ジメチル-1-ブテニル基、2,3-ジメチル-2-ブテニル基、2,3-ジメチル-3-ブテニル基、2-i-プロピル-2-プロペニル基、3,3-ジメチル-1-ブテニル基、1-エチル-1-ブテニル基、1-エチル-2-ブテニル基、1-エチル-3-ブテニル基、1-n-プロピル-1-プロペニル基、1-n-プロピル-2-プロペニル基、2-エチル-1-ブテニル基、2-エチル-2-ブテニル基、2-エチル-3-ブテニル基、1,1,2-トリメチル-2-プロペニル基、1-t-ブチルエテニル基、1-メチル-1-エチル-2-プロペニル基、1-エチル-2-メチル-1-プロペニル基、1-エチル-2-メチル-2-プロペニル基、1-i-プロピル-1-プロペニル基、1-i-プロピル-2-プロペニル基、1-メチル-2-シクロペンテニル基、1-メチル-3-シクロペンテニル基、2-メチル-1-シクロペンテニル基、2-メチル-2-シクロペンテニル基、2-メチル-3-シクロペンテニル基、2-メチル-4-シクロペンテニル基、2-メチル-5-シクロペンテニル基、2-メチレン-シクロペンチル基、3-メチル-1-シクロペンテニル基、3-メチル-2-シクロペンテニル基、3-メチル-3-シクロペンテニル基、3-メチル-4-シクロペンテニル基、3-メチル-5-シクロペンテニル基、3-メチレン-シクロペンチル基、1-シクロヘキセニル基、2-シクロヘキセニル基及び3-シクロヘキセニル基等が挙げられ、またビシクロへプテニル基(ノルボルニル基)等の架橋環式のアルケニル基も挙げることができる。
上記の中でも、Rとしては、ビニル基を含む基であることが好ましい。
【0061】
式(3)中、Rは、上記式(1)のRと同様である。
【0062】
式(3)中、Rは、上記式(1)のRと同様である。
【0063】
上記式(3)中、aは1を表し、bは0~2の整数を表し、4-(a+b)は1~3の整数を表す。
bは好ましくは0又は1を表し、より好ましくは0である。
【0064】
上記式(3)で表される化合物の具体例としては、例えば、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリクロロシラン、ビニルトリアセトキシシラン、メチルビニルジメトキシシラン、メチルビニルジエトキシシラン、メチルビニルジクロロシラン、メチルビニルジアセトキシシラン、ジメチルビニルメトキシシラン、ジメチルビニルエトキシシラン、ジメチルビニルクロロシラン、ジメチルビニルアセトキシシラン、ジビニルジメトキシシラン、ジビニルジエトキシシラン、ジビニルジクロロシラン、ジビニルジアセトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルビニルジメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルビニルジエトキシシラン、アリルトリメトキシシラン、アリルトリエトキシシラン、アリルトリクロロシラン、アリルトリアセトキシシシラン、アリルメチルジメトキシシラン、アリルメチルジエトキシシラン、アリルメチルジクロロシラン、アリルメチルジアセトキシシラン、アリルジメチルメトキシシラン、アリルジメチルエトキシシラン、アリルジメチルクロロシラン、アリルジメチルアセトキシシラン、ジアリルジメトキシシラン、ジアリルジエトキシシラン、ジアリルジクロロシラン、ジアリルジアセトキシシラン、3-アリルアミノプロピルトリメトキシシラン、3-アリルアミノプロピルトリエトキシシラン、p-スチリルトリメトキシシラン等のアルケニル基(ビニル基)を含むシラン化合物を挙げることができる。
【0065】
<<式(4)で表されるシラン化合物(加水分解性シラン)>>
本発明のレジスト下層膜形成用組成物に使用する加水分解縮合物は、更に下記式(4)で表される加水分解性シランを含むことができる。
【0066】
【化23】
【0067】
10は、ケイ素原子に結合する基又は原子であって、互いに独立して、アルコキシ基、アラルキルオキシ基、アシルオキシ基、又はハロゲン原子を表す。
アルコキシ基、アラルキルオキシ基、及びアシルオキシ基の具体例としては、上述したものと同じものが挙げられる。
【0068】
式(4)で表される加水分解性シランの具体例としては、例えば、テトラメトキシシラン、テトラクロロシラン、テトラアセトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラn-プロポキシシラン、テトラi-プロポキシシラン、テトラn-ブトキシシランが挙げられる。
【0069】
本発明の組成物から得られる膜の架橋密度を向上させて、レジスト膜の成分の当該得られる膜への拡散等を抑制し、当該レジスト膜のレジスト特性の維持・改善する観点等から、式(4)で表されるテトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン等の4官能性のシランを用いることが好ましい。
【0070】
<<式(5)で表されるシラン化合物(加水分解性シラン)>>
本発明のレジスト下層膜形成用組成物に使用する加水分解縮合物は、更に下記式(5)で表される加水分解性シランを含むことができる。
【0071】
【化24】
【0072】
11は、ケイ素原子に結合する基であって、アリール基、置換されてもよいアミノ基、及び後述する式(5-2)で表される基からなる群から選択される少なくとも1種の基を含む有機基を表す。
【0073】
上記R11の有機基として、上記の基を含む有機基である限り特に限定されるものではない。
【0074】
例えば、アリール基、及び後述する式(5-2)で表される基を含む有機基は、該基自体だけでなく、アルキル基における1以上の水素原子がアリール基、及び後述する式(5-2)で表される基からなる群から選択される少なくとも1種で置換された有機基を挙げることができる。
また、R11で規定する置換されてもよいアミノ基における置換基としては、アルキル基が好ましく挙げられる。特に炭素原子数1~4のアルキル基が置換されていることが好ましい。
【0075】
上記R11におけるアリール基としては、置換されていてもよいアリール基を挙げることができ、例えば炭素原子数6~20のアリール基が挙げられる。より具体的には、アリール基としては、上記式(1)のRにおいて説明したように、フェニル基、o-メチルフェニル基、m-メチルフェニル基、p-メチルフェニル基、o-クロルフェニル基、m-クロルフェニル基、p-クロルフェニル基、o-フルオロフェニル基、p-メルカプトフェニル基、o-メトキシフェニル基、p-メトキシフェニル基、p-アミノフェニル基、p-シアノフェニル基、α-ナフチル基、β-ナフチル基、o-ビフェニリル基、m-ビフェニリル基、p-ビフェニリル基、1-アントリル基、2-アントリル基、9-アントリル基、1-フェナントリル基、2-フェナントリル基、3-フェナントリル基、4-フェナントリル基及び9-フェナントリル基等が挙げられる。
【0076】
また、上記アリール基を含む基としては、置換されていてもよいアラルキル基、置換されていてもよいハロゲン化アリール基、置換されていてもよいハロゲン化アラルキル基、置換されていてもよいアルコキシアリール基、置換されていてもよいアルコキシアラルキル基等を挙げることができる。
【0077】
上記アラルキル基は、アリール基により置換されたアルキル基であり、このようなアリール基及びアルキル基の具体例としては、上述したものと同じものが挙げられる。
アラルキル基の炭素原子数は、特に限定されるものではないが、好ましくは40以下、より好ましくは30以下、より一層好ましくは20以下である。
アラルキル基の具体例としては、上記式(1)のRにおいて説明したように、例えばフェニルメチル基(ベンジル基)、2-フェニルエチレン基、3-フェニル-n-プロピル基、4-フェニル-n-ブチル基、5-フェニル-n-ペンチル基、6-フェニル-n-ヘキシル基、7-フェニル-n-ヘプチル基、8-フェニル-n-オクチル基、9-フェニル-n-ノニル基、10-フェニル-n-デシル基等を挙げることができるが、これらに限定されない。
【0078】
上記ハロゲン化アリール基は、ハロゲン原子により置換されたアリール基であり、このようなアリール基の具体例としては上述したものと同じものが挙げられる。
上記ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられる。
ハロゲン化アリール基の炭素原子数は、特に限定されるものではないが、好ましくは40以下、より好ましくは30以下、より一層好ましくは20以下である。
ハロゲン化アリール基の具体例としては、上記式(1)のRにおいて説明したように、2-フルオロフェニル基、3-フルオロフェニル基、4-フルオロフェニル基、2,3-ジフルオロフェニル基、2,4-ジフルオロフェニル基、2,5-ジフルオロフェニル基、2,6-ジフルオロフェニル基、3,4-ジフルオロフェニル基、3,5-ジフルオロフェニル基、2,3,4-トリフルオロフェニル基、2,3,5-トリフルオロフェニル基、2,3,6-トリフルオロフェニル基、2,4,5-トリフルオロフェニル基、2,4,6-トリフルオロフェニル基、3,4,5-トリフルオロフェニル基、2,3,4,5-テトラフルオロフェニル基、2,3,4,6-テトラフルオロフェニル基、2,3,5,6-テトラフルオロフェニル基、ペンタフルオロフェニル基、2-フルオロ-1-ナフチル基、3-フルオロ-1-ナフチル基、4-フルオロ-1-ナフチル基、6-フルオロ-1-ナフチル基、7-フルオロ-1-ナフチル基、8-フルオロ-1-ナフチル基、4,5-ジフルオロ-1-ナフチル基、5,7-ジフルオロ-1-ナフチル基、5,8-ジフルオロ-1-ナフチル基、5,6,7,8-テトラフルオロ-1-ナフチル基、ヘプタフルオロ-1-ナフチル基、1-フルオロ-2-ナフチル基、5-フルオロ-2-ナフチル基、6-フルオロ-2-ナフチル基、7-フルオロ-2-ナフチル基、5,7-ジフルオロ-2-ナフチル基、ヘプタフルオロ-2-ナフチル基等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0079】
上記ハロゲン化アラルキル基は、ハロゲン原子により置換されたアラルキル基であり、このようなアラルキル基及びハロゲン原子の具体例としては、上述したものと同じものが挙げられる。
ハロゲン化アラルキル基の炭素原子数は、特に限定されるものではないが、好ましくは40以下、より好ましくは30以下、より一層好ましくは20以下である。
ハロゲン化アラルキル基の具体例としては、上記式(1)のRにおいて説明したように、2-フルオロベンジル基、3-フルオロベンジル基、4-フルオロベンジル基、2,3-ジフルオロベンジル基、2,4-ジフルオロベンジル基、2,5-ジフルオロベンジル基、2,6-ジフルオロベンジル基、3,4-ジフルオロベンジル基、3,5-ジフルオロベンジル基、2,3,4-トリフルオロベンジル基、2,3,5-トリフルオロベンジル基、2,3,6-トリフルオロベンジル基、2,4,5-トリフルオロベンジル基、2,4,6-トリフルオロベンジル基、2,3,4,5-テトラフルオロベンジル基、2,3,4,6-テトラフルオロベンジル基、2,3,5,6-テトラフルオロベンジル基、2,3,4,5,6-ペンタフルオロベンジル基等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0080】
上記アルコキシアリール基は、アルコキシ基により置換されたアリール基であり、このようなアリール基、アルコキシ基の具体例としては、上述したものと同じものが挙げられる。
【0081】
アルコキシアリール基の炭素原子数は、特に限定されるものではないが、好ましくは40以下、より好ましくは30以下、より一層好ましくは20以下である。
アルコキシアリール基の具体例としては、例えば、上記式(1)のRにおいて説明したように、2-メトキシフェニル基、3-メトキシフェニル基、4-メトキシフェニル基、2-(1-エトキシ)フェニル基、3-(1-エトキシ)フェニル基、4-(1-エトキシ)フェニル基、2-(2-エトキシ)フェニル基、3-(2-エトキシ)フェニル基、4-(2-エトキシ)フェニル基、2-メトキシナフタレン-1-イル基、3-メトキシナフタレン-1-イル基、4-メトキシナフタレン-1-イル基、5-メトキシナフタレン-1-イル基、6-メトキシナフタレン-1-イル基、7-メトキシナフタレン-1-イル基等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0082】
上記アルコキシアラルキル基は、アルコキシ基により置換されたアラルキル基であり、このようなアルコキシ基及びアラルキル基の具体例としては、上述したものと同じものが挙げられる。
アルコキシアラルキル基の炭素原子数は、特に限定されるものではないが、好ましくは40以下、より好ましくは30以下、より一層好ましくは20以下である。
アルコキシアラルキル基の具体例としては、3-(メトキシフェニル)ベンジル基、4-(メトキシフェニル)ベンジル基等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0083】
また、上記R11における置換されてもよいアミノ基としては、例えば、アミノ基、または炭素原子数1~4のアルキル基が置換したアルキルアミノ基が挙げられる。より具体的には、例えば、アミノ基、アミノメチル基、アミノエチル基、ジメチルアミノエチル基、ジメチルアミノプロピル基等が挙げられる。
【0084】
また、上記R11における下記式(5-2)で表される基としては、
【0085】
【化25】
において、X101は、互いに独立して、下記式(5-3)~式(5-5)のいずれかを表すとともに、下記式(5-4)及び式(5-5)におけるケトン基の炭素原子は、式(5-2)におけるR102が結合する窒素原子と結合する。
【0086】
【化26】
式(5-3)~式(5-5)中、R103~R107は、互いに独立して、水素原子、置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいアルケニル基、又はエポキシ基若しくはスルホニル基を含む有機基を表し、置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいアルケニル基の具体例及び好適な炭素原子数等は、Rに関し、コハク酸無水物骨格等によって水素原子が置換されるアルキル基として挙げたアルキル基や、またアルケニル基として上述したものと同じものが挙げられる。
また、エポキシ基を含む有機基としては、グリシドキシメチル基、グリシドキシエチル基、グリシドキシプロピル基、グリシドキシブチル基、エポキシシクロヘキシル基等が挙げられるが、これらに限定されない。
スルホニル基を含む有機基としては、例えばスルホニルアルキル基や、スルホニルアリール基が挙げられるがこれらに限定されない。
【0087】
上記式(5-2)中、R101は、互いに独立して、水素原子、置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいアルケニル基、又はエポキシ基若しくはスルホニル基を含む有機基を表し、R102は、互いに独立して、アルキレン基、ヒドロキシアルキレン基、スルフィド結合(-S-)、エーテル結合(-O-)又はエステル結合(-C(=O)-O-又は-O-C(=O)-)を表す。
ここで、置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいアルケニル基、エポキシ基若しくはエポキシ基を含む有機基の具体例、好適な炭素原子数等は、R103~R107に関して上述したものと同じものが挙げられる。これらの他、置換されていてもよいアルキル基としては、末端の水素原子がビニル基で置換されたアルキル基が好ましく、その具体例としては、アリル基、2-ビニルエチル基、3-ビニルプロピル基、4-ビニルブチル基等が挙げられる。
【0088】
上記アルキレン基は、上記アルキル基の水素原子を更に一つ取り除いて誘導される2価の基であり、直鎖状、分岐鎖状、環状のいずれでもよく、アルキレン基の炭素原子数は、特に限定されるものではないが、好ましくは40以下、より好ましくは30以下、より一層好ましくは20以下、更に好ましくは10以下である。
また、R102のアルキレン基は、スルフィド結合、エーテル結合及びエステル結合から選ばれる1種又は2種以上を、その末端又は途中、好ましくは途中に有していてもよい。
アルキレン基の具体例としては、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基、メチルエチレン基、テトラメチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基、ヘプタメチレン基、オクタメチレン基、ノナメチレン基、デカメチレン基等の直鎖状アルキレン基、1-メチルトリメチレン基、2-メチルトリメチレン基、1,1-ジメチルエチレン基、1-メチルテトラメチレン基、2-メチルテトラメチレン基、1,1-ジメチルトリメチレン基、1,2-ジメチルトリメチレン基、2,2-ジメチルトリメチレン基、1-エチルトリメチレン基等の分岐鎖状アルキレン基、1,2-シクロプロピパンジイル基、1,2-シクロブタンジイル、1,3-シクロブチタンジイル基、1,2-シクロヘキサンジイル、1,3-シクロヘキサンジイル等の環状アルキレン等、-CHOCH-、-CHCHOCH-、-CHCHOCHCH-、-CHCHCHOCHCH-、-CHCHOCHCHCH-、-CHCHCHOCHCHCH-、-CHSCH-、-CHCHSCH-、-CHCHSCHCH-、-CHCHCHSCHCH-、-CHCHSCHCHCH-、-CHCHCHSCHCHCH-、-CHOCHCHSCH-等のエーテル基等を含むアルキレン基が挙げられるが、これらに限定されない。
【0089】
ヒドロキシアルキレン基は、上記アルキレン基の水素原子の少なくとも1つが、ヒドロキシ基に置き換わったものであり、その具体例としては、ヒドロキシメチレン基、1-ヒドロキシエチレン基、2-ヒドロキシエチレン基、1,2-ジヒドロキシエチレン基、1-ヒドロキシトリメチレン基、2-ヒドロキシトリメチレン基、3-ヒドロキシトリメチレン基、1-ヒドロキシテトラメチレン基、2-ヒドロキシテトラメチレン基、3-ヒドロキシテトラメチレン基、4-ヒドロキシテトラメチレン基、1,2-ジヒドロキシテトラメチレン基、1,3-ジヒドロキシテトラメチレン基、1,4-ジヒドロキシテトラメチレン基、2,3-ジヒドロキシテトラメチレン基、2,4-ジヒドロキシテトラメチレン基、4,4-ジヒドロキシテトラメチレン基等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0090】
上記の中でも、R11としては、フェニル基、ジアミノプロピル基、及びイソシアヌル酸骨格(式(5-2)中、X101が式(5-5)で表される基を表す)からなる群から選択される少なくとも1種を含む基であることが好ましい。
【0091】
式(5)中、R12は、上記式(1)のRと同様である。
【0092】
式(5)中、R13は、上記式(1)のRと同様である。
【0093】
上記式(5)中、aは1を表し、bは0~2の整数を表し、4-(a+b)は1~3の整数を表す。
bは好ましくは0又は1を表し、より好ましくは0である。
【0094】
上記式(5)で表される化合物の具体例としては、例えば、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、フェニルトリクロロシラン、フェニルトリアセトキシシラン、フェニルメチルジメトキシシラン、フェニルメチルジエトキシシラン、フェニルメチルジクロロシラン、フェニルメチルジアセトキシシラン、フェニルジメチルメトキシシラン、フェニルジメチルエトキシシラン、フェニルジメチルクロロシラン、フェニルジメチルアセトキシシラン、ジフェニルメチルメトキシシラン、ジフェニルメチルエトキシシラン、ジフェニルメチルクロロシラン、ジフェニルメチルアセトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、ジフェニルジクロロシラン、ジフェニルジアセトキシシラン、トリフェニルメトキシシシラン、トリフェニルエトキシシラン、トリフェニルアセトキシシラン、トリフェニルクロロシラン、3-フェニルアミノプロピルトリメトキシシラン、3-フェニルアミノプロピルトリエトキシシラン、ジメトキシメチル-3-(3-フェノキシプロピルチオプロピル)シラン、ベンジルトリメトキシシラン、ベンジルトリエトキシシラン、ベンジルメチルジメトキシシラン、ベンジルメチルジエトキシシラン、ベンジルジメチルメトキシシラン、ベンジルジメチルエトキシシラン、ベンジルジメチルクロロシラン、フェネチルトリメトキシシラン、フェネチルトリエトキシシラン、フェネチルトリクロロシラン、フェネチルトリアセトキシシラン、フェネチルメチルジメトキシシラン、フェネチルメチルジエトキシシラン、フェネチルメチルジクロロシラン、フェネチルメチルジアセトキシシラン等のフェニル基を含むシラン化合物;メトキシフェニルトリメトキシシラン、メトキシフェニルトリエトキシシラン、メトキシフェニルトリアセトキシシラン、メトキシフェニルトリクロロシラン、メトキシベンジルトリメトキシシラン、メトキシベンジルトリエトキシシラン、メトキシベンジルトリアセトキシシラン、メトキシベンジルトリクロロシラン、メトキシフェネチルトリメトキシシラン、メトキシフェネチルトリエトキシシラン、メトキシフェネチルトリアセトキシシラン、メトキシフェネチルトリクロロシラン、エトキシフェニルトリメトキシシラン、エトキシフェニルトリエトキシシラン、エトキシフェニルトリアセトキシシラン、エトキシフェニルトリクロロシラン、エトキシベンジルトリメトキシシラン、エトキシベンジルトリエトキシシラン、エトキシベンジルトリアセトキシシラン、エトキシベンジルトリクロロシラン、i-プロポキシフェニルトリメトキシシラン、i-プロポキシフェニルトリエトキシシラン、i-プロポキシフェニルトリアセトキシシラン、i-プロポキシフェニルトリクロロシラン、i-プロポキシベンジルトリメトキシシラン、i-プロポキシベンジルトリエトキシシラン、i-プロポキシベンジルトリアセトキシシラン、i-プロポキシベンジルトリクロロシラン、t-ブトキシフェニルトリメトキシシラン、t-ブトキシフェニルトリエトキシシラン、t-ブトキシフェニルトリアセトキシシラン、t-ブトキシフェニルトリクロロシラン、t-ブトキシベンジルトリメトキシシラン、t-ブトキシベンジルトリエトキシシラン、t-ブトキシベンジルトリアセトキシシラン、t-ブトキシシベンジルトリクロロシラン、メトキシナフチルトリメトキシシラン、メトキシナフチルトリエトキシシラン、メトキシナフチルトリアセトキシシラン、メトキシナフチルトリクロロシラン、エトキシナフチルトリメトキシシラン、エトキシナフチルトリエトキシシラン、エトキシナフチルトリアセトキシシラン、エトキシナフチルトリクロロシラン等の置換されたアリール基を含むシラン化合物;ジメチルアミノプロピルトリメトキシシラン;などが挙げられる。
【0095】
また、上記式(5)で表されるシラン化合物の具体例として、該式中のR11が上記式(5-2)で表される基を含む有機基であるシラン化合物は、市販品を用いてもよく、国際公開第2011/102470号等に記載の公知方法で合成することもできる。
以下、上記式(5-2)で表される基を含む有機基を含むシラン化合物の具体例として下記例示の化合物が挙げられるが、これらに限定されない。
【0096】
【化27】
【0097】
【化28】
【0098】
【化29】
【0099】
さらに、上記式(5)で表されるシラン化合物として、式(A-1)~(A-41)で表されるアリール基含有シラン化合物等も挙げることができる。
【0100】
【化30】
【0101】
【化31】
【0102】
【化32】
【0103】
<<その他のシラン化合物(加水分解性シラン)>>
本発明においては、膜密度等の膜物性の調整等を目的として、上記加水分解性シラン混合物において、上記式(1)もしくは(2)、または所望により(3)、(4)、もしくは(5)で表されるシラン化合物とともに、下記式(6)で表されるその他のシラン化合物(その他の加水分解性シラン)を使用することができる。
【0104】
【化33】
式(6)中、R14は、ケイ素原子に結合する基であって、互いに独立して、置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいハロゲン化アルキル基、若しくは置換されていてもよいアルコキシアルキル基を表すか、又はエポキシ基、アクリロイル基、メタクリロイル基、メルカプト基、アミド基、アルコキシ基、スルホニル基、若しくはシアノ基を含む有機基、又はそれらの組み合わせを表す。
またR15は、ケイ素原子に結合する基又は原子であって、互いに独立して、アルコキシ基、アラルキルオキシ基、アシルオキシ基、又はハロゲン原子を表す。
そしてcは、1~3の整数を表す。
【0105】
上記R14における各基の具体例、及びそれらの好適な炭素原子数としては、Rについて上述した基及び炭素原子数を挙げることができる。
上記R15における各基の具体例、及びそれらの好適な炭素原子数としては、Rについて上述した基及び原子並びに炭素原子数を挙げることができる。
式(6)で表される加水分解性シランの具体例としては、メチルトリメトキシシラン、メチルトリクロロシラン、メチルトリアセトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリプロポキシシラン、メチルトリブトキシシラン、メチルトリアミロキシシラン、メチルトリベンジルオキシシラン、メチルトリフェネチルオキシシラン、グリシドキシメチルトリメトキシシラン、グリシドキシメチルトリエトキシシラン、α-グリシドキシエチルトリメトキシシラン、α-グリシドキシエチルトリエトキシシラン、β-グリシドキシエチルトリメトキシシラン、β-グリシドキシエチルトリエトキシシラン、α-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、α-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、β-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、β-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリプロポキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリブトキシシラン、α-グリシドキシブチルトリメトキシシラン、α-グリシドキシブチルトリエトキシシラン、β-グリシドキシブチルトリエトキシシラン、γ-グリシドキシブチルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシブチルトリエトキシシラン、δ-グリシドキシブチルトリメトキシシラン、δ-グリシドキシブチルトリエトキシシラン、(3,4-エポキシシクロヘキシル)メチルトリメトキシシラン、(3,4-エポキシシクロヘキシル)メチルトリエトキシシラン、β-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、β-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン、β-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリプロポキシシラン、β-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリブトキシシラン、γ-(3,4-エポキシシクロヘキシル)プロピルトリメトキシシラン、γ-(3,4-エポキシシクロヘキシル)プロピルトリエトキシシラン、δ-(3,4-エポキシシクロヘキシル)ブチルトリメトキシシラン、δ-(3,4-エポキシシクロヘキシル)ブチルトリエトキシシラン、グリシドキシメチルメチルジメトキシシラン、グリシドキシメチルメチルジエトキシシラン、α-グリシドキシエチルメチルジメトキシシラン、α-グリシドキシエチルメチルジエトキシシラン、β-グリシドキシエチルメチルジメトキシシラン、β-グリシドキシエチルエチルジメトキシシラン、α-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、α-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、β-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、β-グリシドキシプロピルエチルジメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルメチルジプロポキシシラン、γ-グリシドキシプロピルメチルジブトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルエチルジメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルエチルジエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、γ-クロロプロピルトリメトキシシラン、γ-クロロプロピルトリエトキシシラン、γ-クロロプロピルトリアセトキシシラン、3,3,3-トリフルオロプロピルトリメトキシシラン、γ-メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ-メルカプトプロピルトリエトキシシラン、β-シアノエチルトリエトキシシラン、クロロメチルトリメトキシシラン、クロロメチルトリエトキシシラン、ビシクロ(2,2,1)ヘプテニルトリエトキシシラン、ベンゼンスルホニルプロピルトリエトキシシラン、ベンゼンスルホンアミドプロピルトリエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、γ-クロロプロピルメチルジメトキシシラン、γ-クロロプロピルメチルジエトキシシラン、ジメチルジアセトキシシラン、γ-メタクリルオキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ-メタクリルオキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ-メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、γ-メルカプトメチルジエトキシシラン等が挙げられるがこれらに限定されない。
【0106】
また上記の例示以外にも、本発明の効果を損なわない範囲において、上記加水分解性シラン混合物には、上記の例示以外のその他のシラン化合物(加水分解性シラン)を含んでいてよい。
【0107】
上述の通り、本発明のレジスト下層膜形成用組成物は、上記加水分解性シラン混合物の加水分解縮合物を含む。
本発明の好ましい一態様においては、本発明のレジスト下層膜形成用組成物は、少なくとも上記加水分解性シラン混合物の加水分解縮合物を含む。
本発明の好ましい一態様において、本発明のレジスト下層膜形成用組成物が含む加水分解縮合物は、式(1)もしくは式(2)で表されるシランに加え、所望により式(3)で表される加水分解性シラン、式(4)で表される加水分解性シラン、式(5)で表される加水分解性シラン、式(6)で表されるその他の加水分解性シラン、またはこれらの式で表される以外のその他の加水分解性シランを用いて得られる加水分解縮合物を含む。
【0108】
加水分解性シラン混合物において、式(1)で表されるシラン化合物を用いる場合、式(1)で表されるシラン化合物の仕込み量は、加水分解性シラン混合物中に含まれる全てのシラン化合物(加水分解性シラン)の仕込み量100モル%に対して、例えば0.1~30モル%とすることができる。
加水分解性シラン混合物において、式(2)で表されるシラン化合物を用いる場合、式(2)で表されるシラン化合物の仕込み量は、加水分解性シラン混合物中に含まれる全てのシラン化合物(加水分解性シラン)の仕込み量100モル%に対して、例えば0.1~30モル%とすることができる。
加水分解性シラン混合物において、式(3)で表されるシラン化合物を用いる場合、式(3)で表されるシラン化合物の仕込み量は、加水分解性シラン混合物中に含まれる全てのシラン化合物(加水分解性シラン)の仕込み量100モル%に対して、例えば15~50モル%とすることができる。
加水分解性シラン混合物において、式(4)で表されるシラン化合物を用いる場合、式(4)で表されるシラン化合物の仕込み量は、加水分解性シラン混合物中に含まれる全てのシラン化合物(加水分解性シラン)の仕込み量100モル%に対して、例えば30~70モル%、又は25~45モル%とすることができる。
加水分解性シラン混合物において、式(5)で表されるシラン化合物を用いる場合(例えば、式(5)のうちR11がアリール基であるシラン化合物を用いる場合)、式(5)で表されるシラン化合物の仕込み量は、加水分解性シラン混合物中に含まれる全てのシラン化合物(加水分解性シラン)の仕込み量100モル%に対して、例えば0.01~5モル%とすることができる。
【0109】
上記の加水分解性シラン混合物の加水分解縮合物は、その重量平均分子量を例えば500~1,000,000とすることができる。組成物中での加水分解縮合物の析出等を抑制する観点等から、好ましくは重量平均分子量を500,000以下、より好ましくは250,000以下、より一層好ましくは100,000以下とすることができ、保存安定性と塗布性の両立の観点等から、好ましくは700以上、より好ましくは1,000以上とすることができる。
なお、重量平均分子量は、GPC分析によるポリスチレン換算で得られる分子量である。GPC分析は、例えばGPC装置(商品名HLC-8220GPC、東ソー(株)製)、GPCカラム(商品名Shodex(登録商標)KF803L、KF802、KF801、昭和電工(株)製)を用い、カラム温度を40℃とし、溶離液(溶出溶媒)としてテトラヒドロフランを用い、流量(流速)を1.0mL/分とし、標準試料としてポリスチレン(昭和電工(株)製)を用いて、行うことができる。
【0110】
上記加水分解性シラン混合物の加水分解縮合物は、上述のシラン化合物(加水分解性シラン)を加水分解及び縮合することで得られる。
上記シラン化合物(加水分解性シラン)は、ケイ素原子に直接結合するアルコキシ基、アラルキルオキシ基、アシルオキシ基、ハロゲン原子を、すなわち加水分解性基であるアルコキシシリル基、アラルキルオキシシリル基、アシロキシシリル基、ハロゲン化シリル基を含む。
これら加水分解性基の加水分解には、加水分解性基の1モル当たり、通常0.5~100モル、好ましくは1~10モルの水を用いる。
加水分解及び縮合の際、反応を促進する目的等で、加水分解触媒を用いてもよいし、用いずに加水分解及び縮合を行ってもよい。加水分解触媒を用いる場合は、加水分解性基の1モル当たり、通常0.0001~10モル、好ましくは0.001~1モルの加水分解触媒を用いることができる。
加水分解と縮合を行う際の反応温度は、通常、室温以上、加水分解に用いられ得る有機溶媒の常圧での還流温度以下の範囲であり、例えば20~110℃、また例えば20~80℃とすることができる
加水分解は完全に加水分解を行う、すなわち、全ての加水分解性基をシラノール基に変えてもよいし、部分加水分解する、即ち未反応の加水分解性基を残してもよい。
加水分解し縮合させる際に使用可能な加水分解触媒としては、金属キレート化合物、有機酸、無機酸、有機塩基、無機塩基を挙げることができる。
【0111】
加水分解触媒としての金属キレート化合物は、例えばトリエトキシ・モノ(アセチルアセトナート)チタン、トリ-n-プロポキシ・モノ(アセチルアセトナート)チタン、トリ-i-プロポキシ・モノ(アセチルアセトナート)チタン、トリ-n-ブトキシ・モノ(アセチルアセトナート)チタン、トリ-sec-ブトキシ・モノ(アセチルアセトナート)チタン、トリ-t-ブトキシ・モノ(アセチルアセトナート)チタン、ジエトキシ・ビス(アセチルアセトナート)チタン、ジ-n-プロポキシ・ビス(アセチルアセトナート)チタン、ジ-i-プロポキシ・ビス(アセチルアセトナート)チタン、ジ-n-ブトキシ・ビス(アセチルアセトナート)チタン、ジ-sec-ブトキシ・ビス(アセチルアセトナート)チタン、ジ-t-ブトキシ・ビス(アセチルアセトナート)チタン、モノエトキシ・トリス(アセチルアセトナート)チタン、モノ-n-プロポキシ・トリス(アセチルアセトナート)チタン、モノ-i-プロポキシ・トリス(アセチルアセトナート)チタン、モノ-n-ブトキシ・トリス(アセチルアセトナート)チタン、モノ-sec-ブトキシ・トリス(アセチルアセトナート)チタン、モノ-t-ブトキシ・トリス(アセチルアセトナート)チタン、テトラキス(アセチルアセトナート)チタン、トリエトキシ・モノ(エチルアセトアセテート)チタン、トリ-n-プロポキシ・モノ(エチルアセトアセテート)チタン、トリ-i-プロポキシ・モノ(エチルアセトアセテート)チタン、トリ-n-ブトキシ・モノ(エチルアセトアセテート)チタン、トリ-sec-ブトキシ・モノ(エチルアセトアセテート)チタン、トリ-t-ブトキシ・モノ(エチルアセトアセテート)チタン、ジエトキシ・ビス(エチルアセトアセテート)チタン、ジ-n-プロポキシ・ビス(エチルアセトアセテート)チタン、ジ-i-プロポキシ・ビス(エチルアセトアセテート)チタン、ジ-n-ブトキシ・ビス(エチルアセトアセテート)チタン、ジ-sec-ブトキシ・ビス(エチルアセトアセテート)チタン、ジ-t-ブトキシ・ビス(エチルアセトアセテート)チタン、モノエトキシ・トリス(エチルアセトアセテート)チタン、モノ-n-プロポキシ・トリス(エチルアセトアセテート)チタン、モノ-i-プロポキシ・トリス(エチルアセトアセテート)チタン、モノ-n-ブトキシ・トリス(エチルアセトアセテート)チタン、モノ-sec-ブトキシ・トリス(エチルアセトアセテート)チタン、モノ-t-ブトキシ・トリス(エチルアセトアセテート)チタン、テトラキス(エチルアセトアセテート)チタン、モノ(アセチルアセトナート)トリス(エチルアセトアセテート)チタン、ビス(アセチルアセトナート)ビス(エチルアセトアセテート)チタン、トリス(アセチルアセトナート)モノ(エチルアセトアセテート)チタン等のチタンキレート化合物;トリエトキシ・モノ(アセチルアセトナート)ジルコニウム、トリ-n-プロポキシ・モノ(アセチルアセトナート)ジルコニウム、トリ-i-プロポキシ・モノ(アセチルアセトナート)ジルコニウム、トリ-n-ブトキシ・モノ(アセチルアセトナート)ジルコニウム、トリ-sec-ブトキシ・モノ(アセチルアセトナート)ジルコニウム、トリ-t-ブトキシ・モノ(アセチルアセトナート)ジルコニウム、ジエトキシ・ビス(アセチルアセトナート)ジルコニウム、ジ-n-プロポキシ・ビス(アセチルアセトナート)ジルコニウム、ジ-i-プロポキシ・ビス(アセチルアセトナート)ジルコニウム、ジ-n-ブトキシ・ビス(アセチルアセトナート)ジルコニウム、ジ-sec-ブトキシ・ビス(アセチルアセトナート)ジルコニウム、ジ-t-ブトキシ・ビス(アセチルアセトナート)ジルコニウム、モノエトキシ・トリス(アセチルアセトナート)ジルコニウム、モノ-n-プロポキシ・トリス(アセチルアセトナート)ジルコニウム、モノ-i-プロポキシ・トリス(アセチルアセトナート)ジルコニウム、モノ-n-ブトキシ・トリス(アセチルアセトナート)ジルコニウム、モノ-sec-ブトキシ・トリス(アセチルアセトナート)ジルコニウム、モノ-t-ブトキシ・トリス(アセチルアセトナート)ジルコニウム、テトラキス(アセチルアセトナート)ジルコニウム、トリエトキシ・モノ(エチルアセトアセテート)ジルコニウム、トリ-n-プロポキシ・モノ(エチルアセトアセテート)ジルコニウム、トリ-i-プロポキシ・モノ(エチルアセトアセテート)ジルコニウム、トリ-n-ブトキシ・モノ(エチルアセトアセテート)ジルコニウム、トリ-sec-ブトキシ・モノ(エチルアセトアセテート)ジルコニウム、トリ-t-ブトキシ・モノ(エチルアセトアセテート)ジルコニウム、ジエトキシ・ビス(エチルアセトアセテート)ジルコニウム、ジ-n-プロポキシ・ビス(エチルアセトアセテート)ジルコニウム、ジ-i-プロポキシ・ビス(エチルアセトアセテート)ジルコニウム、ジ-n-ブトキシ・ビス(エチルアセトアセテート)ジルコニウム、ジ-sec-ブトキシ・ビス(エチルアセトアセテート)ジルコニウム、ジ-t-ブトキシ・ビス(エチルアセトアセテート)ジルコニウム、モノエトキシ・トリス(エチルアセトアセテート)ジルコニウム、モノ-n-プロポキシ・トリス(エチルアセトアセテート)ジルコニウム、モノ-i-プロポキシ・トリス(エチルアセトアセテート)ジルコニウム、モノ-n-ブトキシ・トリス(エチルアセトアセテート)ジルコニウム、モノ-sec-ブトキシ・トリス(エチルアセトアセテート)ジルコニウム、モノ-t-ブトキシ・トリス(エチルアセトアセテート)ジルコニウム、テトラキス(エチルアセトアセテート)ジルコニウム、モノ(アセチルアセトナート)トリス(エチルアセトアセテート)ジルコニウム、ビス(アセチルアセトナート)ビス(エチルアセトアセテート)ジルコニウム、トリス(アセチルアセトナート)モノ(エチルアセトアセテート)ジルコニウム等のジルコニウムキレート化合物;トリス(アセチルアセトナート)アルミニウム、トリス(エチルアセトアセテート)アルミニウム等のアルミニウムキレート化合物等などを挙げることをできるが、これらに限定されない。
【0112】
加水分解触媒としての有機酸は、例えば酢酸、プロピオン酸、ブタン酸、ペンタン酸、ヘキサン酸、ヘプタン酸、オクタン酸、ノナン酸、デカン酸、シュウ酸、マレイン酸、メチルマロン酸、アジピン酸、セバシン酸、没食子酸、酪酸、メリット酸、アラキドン酸、2-エチルヘキサン酸、オレイン酸、ステアリン酸、リノール酸、リノレイン酸、サリチル酸、安息香酸、p-アミノ安息香酸、p-トルエンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、モノクロロ酢酸、ジクロロ酢酸、トリクロロ酢酸、トリフルオロ酢酸、ギ酸、マロン酸、スルホン酸、フタル酸、フマル酸、クエン酸、酒石酸等を挙げることができるが、これらに限定されない。
【0113】
加水分解触媒としての無機酸は、例えば塩酸、硝酸、硫酸、フッ酸、リン酸等を挙げることができるが、これらに限定されない。
【0114】
加水分解触媒としての有機塩基は、例えばピリジン、ピロール、ピペラジン、ピロリジン、ピペリジン、ピコリン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、ジメチルモノエタノールアミン、モノメチルジエタノールアミン、トリエタノールアミン、ジアザビシクロオクタン、ジアザビシクロノナン、ジアザビシクロウンデセン、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、テトラプロピルアンモニウムヒドロキシド、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド、トリメチルフェニルアンモニウムヒドロキシド、ベンジルトリメチルアンモニウムヒドロキシド、ベンジルトリエチルアンモニウムヒドロキシド等を挙げることができるが、これらに限定されない。
加水分解触媒としての無機塩基は、例えばアンモニア、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化バリウム、水酸化カルシウム等を挙げることができるが、これらに限定されない。
【0115】
これらの触媒のうち、金属キレート化合物、有機酸、無機酸が好ましく、これらは1種を単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0116】
中でも、本発明では、加水分解触媒として硝酸を好適に用いることができる。硝酸を使用することにより、加水分解及び縮合の後の反応溶液の保存安定性を向上させることができ、特に、加水分解縮合物の分子量変化を抑制することができる。液中の加水分解縮合物の安定性は、溶液のpHに依存することが分かっている。鋭意検討した結果、硝酸を適量用いることで、溶液のpHが安定領域となることが見いだされた。
【0117】
加水分解及び縮合をする際、溶媒として有機溶媒を用いてもよく、その具体例としては、例えばn-ペンタン、i-ペンタン、n-ヘキサン、i-ヘキサン、n-ヘプタン、i-ヘプタン、2,2,4-トリメチルペンタン、n-オクタン、i-オクタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等の脂肪族炭化水素系溶媒;ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、トリメチルベンゼン、メチルエチルベンゼン、n-プロピルベンセン、i-プロピルベンセン、ジエチルベンゼン、i-ブチルベンゼン、トリエチルベンゼン、ジ-i-プロピルベンセン、n-アミルナフタレン等の芳香族炭化水素系溶媒;メタノール、エタノール、n-プロパノール、i-プロパノール、n-ブタノール、i-ブタノール、sec-ブタノール、t-ブタノール、n-ペンタノール、i-ペンタノール、2-メチルブタノール、sec-ペンタノール、t-ペンタノール、3-メトキシブタノール、n-ヘキサノール、2-メチルペンタノール、sec-ヘキサノール、2-エチルブタノール、n-ヘプタノール、sec-ヘプタノール、3-ヘプタノール、n-オクタノール、2-エチルヘキサノール、sec-オクタノール、n-ノニルアルコール、2,6-ジメチル-4-ヘプタノール、n-デカノール、sec-ウンデシルアルコール、トリメチルノニルアルコール、sec-テトラデシルアルコール、sec-ヘプタデシルアルコール、フェノール、シクロヘキサノール、メチルシクロヘキサノール、3,3,5-トリメチルシクロヘキサノール、ベンジルアルコール、フェニルメチルカルビノール、ジアセトンアルコール、クレゾール等のモノアルコール系溶媒;エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、2,4-ペンタンジオール、2-メチル-2,4-ペンタンジオール、2,5-ヘキサンジオール、2,4-ヘプタンジオール、2-エチル-1,3-ヘキサンジオール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコール、トリプロピレングリコール、グリセリン等の多価アルコール系溶媒;アセトン、メチルエチルケトン、メチル-n-プロピルケトン、メチル-n-ブチルケトン、ジエチルケトン、メチル-i-ブチルケトン、メチル-n-ペンチルケトン、エチル-n-ブチルケトン、メチル-n-ヘキシルケトン、ジ-i-ブチルケトン、トリメチルノナノン、シクロヘキサノン、メチルシクロヘキサノン、2,4-ペンタンジオン、アセトニルアセトン、ジアセトンアルコール、アセトフェノン、フェンチョン等のケトン系溶媒;エチルエーテル、i-プロピルエーテル、n-ブチルエーテル、n-ヘキシルエーテル、2-エチルヘキシルエーテル、エチレンオキシド、1,2-プロピレンオキシド、ジオキソラン、4-メチルジオキソラン、ジオキサン、ジメチルジオキサン、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールモノ-n-ブチルエーテル、エチレングリコールモノ-n-ヘキシルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル、エチレングリコールモノ-2-エチルブチルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールモノ-n-ブチルエーテル、ジエチレングリコールジ-n-ブチルエーテル、ジエチレングリコールモノ-n-ヘキシルエーテル、エトキシトリグリコール、テトラエチレングリコールジ-n-ブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル(1-メトキシ-2-プロパノール)、プロピレングリコールモノエチルエーテル(1-エトキシ-2-プロパノール)、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(1-メトキシ-2-プロパノールモノアセテート)、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフラン等のエーテル系溶媒;ジエチルカーボネート、酢酸メチル、酢酸エチル、γ-ブチロラクトン、γ-バレロラクトン、酢酸n-プロピル、酢酸i-プロピル、酢酸n-ブチル、酢酸i-ブチル、酢酸sec-ブチル、酢酸n-ペンチル、酢酸sec-ペンチル、酢酸3-メトキシブチル、酢酸メチルペンチル、酢酸2-エチルブチル、酢酸2-エチルヘキシル、酢酸ベンジル、酢酸シクロヘキシル、酢酸メチルシクロヘキシル、酢酸n-ノニル、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、酢酸エチレングリコールモノメチルエーテル、酢酸エチレングリコールモノエチルエーテル、酢酸ジエチレングリコールモノメチルエーテル、酢酸ジエチレングリコールモノエチルエーテル、酢酸ジエチレングリコールモノ-n-ブチルエーテル、酢酸プロピレングリコールモノメチルエーテル、酢酸プロピレングリコールモノエチルエーテル、酢酸プロピレングリコールモノプロピルエーテル、酢酸プロピレングリコールモノブチルエーテル、酢酸ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、酢酸ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジ酢酸グリコール、酢酸メトキシトリグリコール、プロピオン酸エチル、プロピオン酸n-ブチル、プロピオン酸i-アミル、シュウ酸ジエチル、シュウ酸ジ-n-ブチル、乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸n-ブチル、乳酸n-アミル、マロン酸ジエチル、フタル酸ジメチル、フタル酸ジエチル等のエステル系溶媒;N-メチルホルムアミド、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジエチルホルムアミド、アセトアミド、N-メチルアセトアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチルプロピオンアミド、N-メチル-2-ピロリドン等の含窒素系溶媒;硫化ジメチル、硫化ジエチル、チオフェン、テトラヒドロチオフェン、ジメチルスルホキシド、スルホラン、1,3-プロパンスルトン等の含硫黄系溶媒等を挙げることができるが、これらに限定されない。これらの溶媒は、1種単独で又は2種以上組み合わせて用いることができる。
【0118】
加水分解及び縮合反応の終了後、反応溶液をそのまま又は希釈若しくは濃縮し、それを中和し、イオン交換樹脂を用いて処理することで、加水分解及び縮合に用いた酸や塩基等の加水分解触媒を取り除くことができる。また、このような処理の前又は後に、減圧蒸留等によって、反応溶液から副生成物のアルコールや水、用いた加水分解触媒等を除去することができる。
【0119】
このようにして得られた加水分解縮合物(以下、ポリシロキサンとも称する)は、有機溶媒中に溶解しているポリシロキサンワニスの形態として得られ、これをそのまま後述するレジスト下層膜形成用組成物として用いることができる。得られたポリシロキサンワニスは溶媒置換してもよいし、また適宜溶媒で希釈してもよい。なお得られたポリシロキサンワニスは、その保存安定性が悪くなければ、有機溶媒を留去し、固形分濃度100%とすることもできる。
上記ポリシロキサンワニスの溶媒置換や希釈等に用いる有機溶媒は、加水分解性シラン混合物の加水分解及び縮合反応に用いた有機溶媒と同じでも異なってもよい。この希釈用溶媒は、特に限定されず、1種でも2種以上でも任意に選択して用いることができる。
【0120】
本発明のレジスト下層膜形成用組成物は、上記加水分解性シラン混合物の加水分解縮合物(ポリシロキサン)の他に、溶媒や、カチオンAX及びアニオンAZを含む化学構造を有する特定の添加剤(化合物A)や、その他の成分を含むことができる。
【0121】
<溶媒>
本発明のレジスト下層膜形成用組成物に使用される溶媒は、レジスト下層膜形成用組成物中の固形分を溶解できる溶媒であれば特に制限なく使用することができる。
このような溶媒は、上記の加水分解性シラン混合物の加水分解縮合物や特定の添加剤(化合物A)やその他の成分を溶解する限り制限されるものではない。
【0122】
その具体例としては、メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート、プロピレングリコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル(1-メトキシ-2-プロパノール)、プロピレングリコールモノエチルエーテル(1-エトキシ-2-プロパノール)、メチルイソブチルカルビノール、プロピレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(1-メトキシ-2-プロパノールモノアセテート)、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノプロピルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノブチルエーテルアセテート、トルエン、キシレン、メチルエチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、2-ヒドロキシプロピオン酸エチル、2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオン酸エチル、エトキシ酢酸エチル、ヒドロキシ酢酸エチル、2-ヒドロキシ-3-メチルブタン酸メチル、3-メトキシプロピオン酸メチル、3-メトキシプロピオン酸エチル、3-エトキシプロピオン酸エチル、3-エトキシプロピオン酸メチル、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノプロピルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジプロピルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテルプロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコールジプロピルエーテル、プロピレングリコールジブチルエーテル、乳酸エチル、乳酸プロピル、乳酸イソプロピル、乳酸ブチル、乳酸イソブチル、ギ酸メチル、ギ酸エチル、ギ酸プロピル、ギ酸イソプロピル、ギ酸ブチル、ギ酸イソブチル、ギ酸アミル、ギ酸イソアミル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸アミル、酢酸イソアミル、酢酸ヘキシル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸プロピル、プロピオン酸イソプロピル、プロピオン酸ブチル、プロピオン酸イソブチル、酪酸メチル、酪酸エチル、酪酸プロピル、酪酸イソプロピル、酪酸ブチル、酪酸イソブチル、ヒドロキシ酢酸エチル、2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオン酸エチル、3-メトキシ-2-メチルプロピオン酸メチル、2-ヒドロキシ-3-メチル酪酸メチル、メトキシ酢酸エチル、エトキシ酢酸エチル、3-メトキシプロピオン酸メチル、3-エトキシプロピオン酸エチル、3-メトキシプロピオン酸エチル、3-メトキシブチルアセテート、3-メトキシプロピルアセテート、3-メチル-3-メトキシブチルアセテート、3-メチル-3-メトキシブチルプロピオネート、3-メチル-3-メトキシブチルブチレート、アセト酢酸メチル、トルエン、キシレン、メチルエチルケトン、メチルプロピルケトン、メチルブチルケトン、2-ヘプタノン、3-ヘプタノン、4-ヘプタノン、シクロヘキサノン、N,N-ジメチルホルムアミド、N-メチルアセトアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチル-2-ピロリドン、4-メチル-2-ペンタノール、γ-ブチロラクトン等を挙げることができ、溶媒は1種単独で又は2種以上組み合わせて使用できる。
【0123】
また本発明のレジスト下層膜形成用組成物は、溶媒として水を含んでいてもよい。溶媒として水を含む場合、その含有量は、当該組成物が含む溶媒の合計質量に対して、例えば30質量%以下、好ましくは20質量%以下、より一層好ましくは15質量%以下とすることができる。
【0124】
<特定の添加剤(化合物A)>
上記加水分解性シラン混合物の加水分解縮合物(ポリシロキサン)を含むレジスト下層膜形成用組成物に、さらにカチオンAX及びアニオンAZを含む化学構造を有する特定の添加剤(化合物A)を含有させることにより、アルカリ性溶液(塩基性薬液)に対しより優れた可溶性を示すレジスト下層膜を形成することができる。
【0125】
特定の添加剤(化合物A)とは、カチオンAX及びアニオンAZを含む化学構造を有し、アニオンの分子量が65以上である化合物である。
【0126】
特定の添加剤(化合物A)において、「カチオン」とは、正電荷を有する原子、又は正電荷を有する原子団を意味し、「アニオン」とは、負電荷を有する原子、又は負電荷を有する原子団を意味する。
【0127】
特定の添加剤(化合物A)をレジスト下層膜形成用組成物に含有させることで、レジスト下層膜におけるアルカリ性溶液(塩基性薬液)に対する可溶性が増すのは、特定の添加剤(化合物A)におけるアニオン種が加水分解縮合物(ポリマー)の間に存在することによって、加水分解縮合物が架橋する結合を阻害したり、アニオン種自体が結合しキャッピングすることにより、3次元架橋が進まないためではないかと推測している。
【0128】
アニオンAZの分子量は、縮合抑制の観点から、65以上であることがより好ましい。また、ドライエッチング耐性維持の観点から、500以下であることがより好ましい。
【0129】
<<アニオンAZ>>
化合物Aにおいて、アニオンAZは、カチオンAXの分子外に存在していても分子内に存在してもよい。
「アニオンAZがカチオンAXの分子外に存在している」とは、アニオンAZが、カチオンAXと共有結合を介して結合しておらず、カチオンAXとは独立した構造単位として存在している状態をいう。上記のような化合物Aの形態としては、例えば、塩が挙げられる。以下、カチオンの分子外に存在するアニオンを対アニオンともいう。
また、化合物Aにおいて、アニオンAZは、カチオンAXと共有結合を介して結合していてもよい。すなわち、化合物Aの形態は、分子内塩(両性イオンともいう。)であってもよい。
【0130】
アニオンAZの種類は、上記アニオンの分子量が65以上であるという条件を満たせば特に制限されないが、例えば、下記(A)~(E)で表される化学構造を有するアニオンが挙げられる。
【0131】
【化34】
【0132】
【化35】
【0133】
【化36】
【0134】
【化37】
【0135】
【化38】
【0136】
【化39】
【0137】
式(A)~(E)中、R301は、置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいアリール基、置換されていてもよいハロゲン化アルキル基、置換されていてもよいアラルキル基、もしくはエステル結合(-C(=O)-O-又は-O-C(=O)-)を含む有機基、又はそれらの組み合わせを表し、
Zは、芳香族環、環状アルカン、または非芳香族環の環状アルケンを表し、
501は、一部または全部がフッ素原子で置換されてもよいアルキル基を表し、
302とR303は、互いに独立して、アルキル基を表し、
304とR305は、互いに独立して、アルキル基を表す。
上記アルキル基、アリール基、ハロゲン化アルキル基、アラルキル基の具体例としては上述したものと同じものが挙げられる。上記アルキル基等に置換されてもよい置換基の具体例としても、上述したものと同じものが挙げられる。
【0138】
特定の添加剤(化合物A)としては、例えば、上記式(A)で表されるスルホン酸アニオンを有する化合物が挙げられる。
上記式(A)で表されるスルホン酸アニオンを有する化合物としては、式(A)で表されるアニオンを分子外に有する化合物だけでなく、ラウリルスルホベタインやミリスチルスルホベタイン等のスルホベタインのように、式(A)で表されるアニオンを分子内に有する化合物であってもよい(下記(Add-6)、(Add-7)の化合物参照)。
【0139】
特定の添加剤(化合物A)としては、例えば、上記式(B-1)または上記式(B-2)で表されるトリアゾール骨格を含むアニオンを有する化合物が挙げられる。
式(B-2)中、Zは、炭素原子数1~6の芳香族環、環状アルカン、または非芳香族環の環状アルケンを表す。
特定の添加剤(化合物A)として、式(B-2)で表されるアニオンを有する化合物が好ましく、中でも式(B-2)中、Zは芳香族環であることが好ましい。つまり、特定の添加剤(化合物A)の好ましい実施態様として、例えば、下記(b-1)で表されるベンゾトリアゾール骨格を含むアニオンを有する化合物が挙げられる。
【0140】
【化40】
【0141】
特定の添加剤(化合物A)としては、例えば、上記式(C)で表される化合物が挙げられる。
式(C)中、R501は、炭素原子数1~4のアルキル基、該アルキル基の一部または全部がフッ素原子で置換されたフルオロアルキル基、またはパーフルオロアルキル基を表す。
中でもR501は、CF基やC基であることが好ましい。特に特定の添加剤(化合物A)としては、例えば、下記(c-1)で表されるビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドのアニオンを有する化合物であることがより好ましい。
【0142】
【化41】
【0143】
特定の添加剤(化合物A)としては、例えば、上記式(D)で表されるチオリン酸アニオンを有する化合物が挙げられる。
【0144】
特定の添加剤(化合物A)としては、例えば、上記式(E)で表されるリン酸アニオンを有する化合物等が挙げられる。
【0145】
特定の添加剤(化合物A)の具体例として、下記式(Add-1)~(Add-11)で表される化合物等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0146】
【化42】
・・・(Add-1)
【0147】
【化43】
・・・(Add-2)
【0148】
【化44】
・・・(Add-3)
【0149】
【化45】
・・・(Add-4)
【0150】
【化46】
・・・(Add-5)
【0151】
【化47】
・・・(Add-6)
【0152】
【化48】
・・・(Add-7)
【0153】
【化49】
・・・(Add-8)
【0154】
【化50】
・・・(Add-9)
【0155】
【化51】
・・・(Add-10)
【0156】
【化52】
・・・(Add-11)
【0157】
本発明のレジスト下層膜形成用組成物が、特定の添加剤を含む場合、その含有量は、レジスト下層膜形成用組成物100質量部に対して1~30質量部とすることができる。
【0158】
<その他の成分(その他の添加剤)>
本発明のレジスト下層膜形成用組成物には、組成物の用途に応じて、上記特定の添加剤以外のその他の成分である添加剤(その他の添加剤ともいう)を種々配合可能である。
レジスト下層膜形成用組成物に配合し得るその他の成分(その他の添加剤)としては、例えば、硬化触媒(アンモニウム塩、ホスフィン類、ホスホニウム塩、スルホニウム塩、窒素含有シラン化合物等)、架橋剤、架橋触媒、安定化剤(有機酸、水、アルコール等)、有機ポリマー化合物、酸発生剤、界面活性剤(ノニオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、シリコン系界面活性剤、フッ素系界面活性剤、UV硬化型界面活性剤等)、pH調整剤、レオロジー調整剤、接着補助剤等、レジスト下層膜や、反射防止膜、パターン反転用膜など、半導体装置の製造に使用され得る各種膜を形成する材料(組成物)に配合される公知の添加剤を挙げることができる。
なお以下に各種添加剤を例示するが、これらに限定されるものではない。
【0159】
<<硬化触媒>>
上記硬化触媒としては、アンモニウム塩、ホスフィン類、ホスホニウム塩、スルホニウム塩等を用いることができる。なお硬化触媒として記載した下記の塩類は、塩の形態にて添加してもよいし、上記組成物中において塩を形成するもの(添加時には別化合物として添加され、系内で塩を形成するもの)のいずれであってもよい。
【0160】
上記アンモニウム塩としては、式(D-1):
【0161】
【化53】
(式中、mは2~11、nは2~3の整数を、R21はアルキル基又はアリール基を、Yは陰イオンを表す。)で表される構造を有する第4級アンモニウム塩、
式(D-2):
【0162】
【化54】
(式中、R22、R23、R24及びR25はアルキル基又はアリール基を、Nは窒素原子を、Yは陰イオンを表し、且つR22、R23、R24、及びR25はそれぞれC-N結合により窒素原子と結合されているものである)で表される構造を有する第4級アンモニウム塩、
式(D-3):
【0163】
【化55】
(式中、R26及びR27はアルキル基又はアリール基を、Nは窒素原子を、Yは陰イオンを表す)で表される構造を有する第4級アンモニウム塩、
式(D-4):
【0164】
【化56】
(式中、R28はアルキル基又はアリール基を、Nは窒素原子を、Yは陰イオンを表す)で表される構造を有する第4級アンモニウム塩、
式(D-5):
【0165】
【化57】
(式中、R29及びR30はアルキル基又はアリール基を、Nは窒素原子を、Yは陰イオンを表す)で表される構造を有する第4級アンモニウム塩、
式(D-6):
【0166】
【化58】
(式中、mは2~11、nは2~3の整数を、Hは水素原子を、Nは窒素原子を、Yは陰イオンを表す)で表される構造を有する第3級アンモニウム塩を挙げることができる。
【0167】
また、上記ホスホニウム塩としては、式(D-7):
【0168】
【化59】
(式中、R31、R32、R33、及びR34はアルキル基又はアリール基を、Pはリン原子を、Yは陰イオンを表し、且つR31、R32、R33、及びR34はそれぞれC-P結合によりリン原子と結合されているものである)で表される第4級ホスホニウム塩を挙げることができる。
【0169】
また、上記スルホニウム塩としては、式(D-8):
【0170】
【化60】
(式中、R35、R36、及びR37はアルキル基又はアリール基を、Sは硫黄原子を、Yは陰イオンを表し、且つR35、R36、及びR37はそれぞれC-S結合により硫黄原子と結合されているものである)で表される第3級スルホニウム塩を挙げることができる。
【0171】
上記の式(D-1)の化合物は、アミンから誘導される第4級アンモニウム塩であり、mは2~11、nは2~3の整数を示す。この第4級アンモニウム塩のR21は炭素原子数1~18、好ましくは2~10のアルキル基、又は炭素原子数6~18のアリール基を示し、例えば、エチル基、プロピル基、ブチル基等の直鎖アルキル基や、ベンジル基、シクロヘキシル基、シクロヘキシルメチル基、ジシクロペンタジエニル基等が挙げられる。また陰イオン(Y)は、塩素イオン(Cl)、臭素イオン(Br)、ヨウ素イオン(I)等のハロゲン化物イオンや、カルボキシラート(-COO)、スルホナト(-SO )、アルコラート(-O)等の酸基を挙げることができる。
【0172】
上記の式(D-2)の化合物は、R22232425で示される第4級アンモニウム塩である。この第4級アンモニウム塩のR22、R23、R24及びR25は炭素原子数1~18のアルキル基、又は炭素原子数6~18のアリール基である。陰イオン(Y)は、塩素イオン(Cl)、臭素イオン(Br)、ヨウ素イオン(I)等のハロゲン化物イオンや、カルボキシラート(-COO)、スルホナト(-SO )、アルコラート(-O)等の酸基を挙げることができる。この第4級アンモニウム塩は、市販品で入手することが可能であり、例えばテトラメチルアンモニウムアセテート、テトラブチルアンモニウムアセテート、塩化トリエチルベンジルアンモニウム、臭化トリエチルベンジルアンモニウム、塩化トリオクチルメチルアンモニウム、塩化トリブチルベンジルアンモニウム、塩化トリメチルベンジルアンモニウム等が例示される。
【0173】
上記の式(D-3)の化合物は、1-置換イミダゾールから誘導される第4級アンモニウム塩であり、R26及びR27の炭素原子数は1~18であり、R26及びR27の炭素原子数の総和が7以上であることが好ましい。例えばR26はメチル基、エチル基、プロピル基、フェニル基、ベンジル基を、R27はベンジル基、オクチル基、オクタデシル基を例示することができる。陰イオン(Y)は、塩素イオン(Cl)、臭素イオン(Br)、ヨウ素イオン(I)等のハロゲン化物イオンや、カルボキシラート(-COO)、スルホナト(-SO )、アルコラート(-O)等の酸基を挙げることができる。この化合物は、市販品で入手することもできるが、例えば1-メチルイミダゾール、1-ベンジルイミダゾール等のイミダゾール系化合物と、臭化ベンジル、臭化メチル等のハロゲン化アルキルやハロゲン化アリールを反応させて製造することができる。
【0174】
上記の式(D-4)の化合物は、ピリジンから誘導される第4級アンモニウム塩であり、R28は炭素原子数1~18、好ましくは炭素原子数4~18のアルキル基、又は炭素原子数6~18のアリール基であり、例えばブチル基、オクチル基、ベンジル基、ラウリル基を例示することができる。陰イオン(Y)は、塩素イオン(Cl)、臭素イオン(Br)、ヨウ素イオン(I)等のハロゲン化物イオンや、カルボキシラート(-COO)、スルホナト(-SO )、アルコラート(-O)等の酸基を挙げることができる。この化合物は、市販品として入手することもできるが、例えばピリジンと、塩化ラウリル、塩化ベンジル、臭化ベンジル、臭化メチル、臭化オクチル等のハロゲン化アルキル、又はハロゲン化アリールを反応させて製造することができる。この化合物は例えば、塩化N-ラウリルピリジニウム、臭化N-ベンジルピリジニウム等を例示することができる。
【0175】
上記の式(D-5)の化合物は、ピコリン等に代表される置換ピリジンから誘導される第4級アンモニウム塩であり、R29は炭素原子数1~18、好ましくは炭素原子数4~18のアルキル基、又は炭素原子数6~18のアリール基であり、例えばメチル基、オクチル基、ラウリル基、ベンジル基等を例示することができる。R30は炭素原子数1~18のアルキル基、又は炭素原子数6~18のアリール基であり、例えばピコリンから誘導される第4級アンモニウムである場合には、R30はメチル基である。陰イオン(Y)は、塩素イオン(Cl)、臭素イオン(Br)、ヨウ素イオン(I)等のハロゲン化物イオンや、カルボキシラート(-COO)、スルホナト(-SO )、アルコラート(-O)等の酸基を挙げることができる。この化合物は市販品として入手することもできるが、例えばピコリン等の置換ピリジンと、臭化メチル、臭化オクチル、塩化ラウリル、塩化ベンジル、臭化ベンジル等のハロゲン化アルキル、又はハロゲン化アリールを反応させて製造することができる。この化合物は例えば、N-ベンジルピコリニウムクロリド、N-ベンジルピコリニウムブロミド、N-ラウリルピコリニウムクロリド等を例示することができる。
【0176】
上記の式(D-6)の化合物は、アミンから誘導される第3級アンモニウム塩であり、mは2~11、nは2~3の整数を示す。また陰イオン(Y)は、塩素イオン(Cl)、臭素イオン(Br)、ヨウ素イオン(I)等のハロゲン化物イオンや、カルボキシラート(-COO)、スルホナト(-SO )、アルコラート(-O)等の酸基を挙げることができる。本化合物は、アミンとカルボン酸やフェノール等の弱酸との反応によって製造することができる。カルボン酸としてはギ酸や酢酸が挙げられ、ギ酸を使用した場合は、陰イオン(Y)は(HCOO)であり、酢酸を使用した場合は、陰イオン(Y)は(CHCOO)である。またフェノールを使用した場合は、陰イオン(Y)は(C)である。
【0177】
上記の式(D-7)の化合物は、R31323334の構造を有する第4級ホスホニウム塩である。R31、R32、R33、及びR34は炭素原子数1~18のアルキル基、又は炭素原子数6~18のアリール基であり、好ましくはR31~R34の4つの置換基の内で3つがフェニル基又は置換されたフェニル基であり、例えばフェニル基やトリル基を例示することができ、また残りの1つは炭素原子数1~18のアルキル基、炭素原子数6~18のアリール基である。また陰イオン(Y)は、塩素イオン(Cl)、臭素イオン(Br)、ヨウ素イオン(I)等のハロゲン化物イオンや、カルボキシラート(-COO)、スルホナト(-SO )、アルコラート(-O)等の酸基を挙げることができる。この化合物は市販品として入手することが可能であり、例えばハロゲン化テトラn-ブチルホスホニウム、ハロゲン化テトラn-プロピルホスホニウム等のハロゲン化テトラアルキルホスホニウム、ハロゲン化トリエチルベンジルホスホニウム等のハロゲン化トリアルキルベンジルホスホニウム、ハロゲン化トリフェニルメチルホスホニウム、ハロゲン化トリフェニルエチルホスホニウム等のハロゲン化トリフェニルモノアルキルホスホニウム、ハロゲン化トリフェニルベンジルホスホニウム、ハロゲン化テトラフェニルホスホニウム、ハロゲン化トリトリルモノアリールホスホニウム、或いはハロゲン化トリトリルモノアルキルホスホニウム(以上、ハロゲン原子は塩素原子又は臭素原子)が挙げられる。特に、ハロゲン化トリフェニルメチルホスホニウム、ハロゲン化トリフェニルエチルホスホニウム等のハロゲン化トリフェニルモノアルキルホスホニウム、ハロゲン化トリフェニルベンジルホスホニウム等のハロゲン化トリフェニルモノアリールホスホニウム、ハロゲン化トリトリルモノフェニルホスホニウム等のハロゲン化トリトリルモノアリールホスホニウムや、ハロゲン化トリトリルモノメチルホスホニウム等のハロゲン化トリトリルモノアルキルホスホニウム(ハロゲン原子は塩素原子又は臭素原子)が好ましい。
【0178】
また、ホスフィン類としては、メチルホスフィン、エチルホスフィン、プロピルホスフィン、イソプロピルホスフィン、イソブチルホスフィン、フェニルホスフィン等の第一ホスフィン、ジメチルホスフィン、ジエチルホスフィン、ジイソプロピルホスフィン、ジイソアミルホスフィン、ジフェニルホスフィン等の第二ホスフィン、トリメチルホスフィン、トリエチルホスフィン、トリフェニルホスフィン、メチルジフェニルホスフィン、ジメチルフェニルホスフィン等の第三ホスフィンが挙げられる。
【0179】
上記の式(D-8)の化合物は、R353637の構造を有する第3級スルホニウム塩である。R35、R36、及びR37は炭素原子数1~18のアルキル基又は炭素原子数6~18のアリール基であり、好ましくはR35~R37の3つの置換基の内で2つがフェニル基又は置換されたフェニル基であり、例えばフェニル基やトリル基を例示することができ、また残りの1つは炭素原子数1~18のアルキル基、又は炭素原子数6~18のアリール基である。また陰イオン(Y)は、塩素イオン(Cl)、臭素イオン(Br)、ヨウ素イオン(I)等のハロゲン化物イオンや、カルボキシラート(-COO)、スルホナト(-SO )、アルコラート(-O)、マレイン酸アニオン、硝酸アニオン等の酸基を挙げることができる。この化合物は市販品として入手することが可能であり、例えばハロゲン化トリn-ブチルスルホニウム、ハロゲン化トリn-プロピルスルホニウム等のハロゲン化トリアルキルスルホニウム、ハロゲン化ジエチルベンジルスルホニウム等のハロゲン化ジアルキルベンジルスルホニウム、ハロゲン化ジフェニルメチルスルホニウム、ハロゲン化ジフェニルエチルスルホニウム等のハロゲン化ジフェニルモノアルキルスルホニウム、ハロゲン化トリフェニルスルホニウム(以上、ハロゲン原子は塩素原子又は臭素原子)、トリn-ブチルスルホニウムカルボキシラート、トリn-プロピルスルホニウムカルボキシラート等のトリアルキルスルホニウムカルボキシラート、ジエチルベンジルスルホニウムカルボキシラート等のジアルキルベンジルスルホニウムカルボキシラート、ジフェニルメチルスルホニウムカルボキシラート、ジフェニルエチルスルホニウムカルボキシラート等のジフェニルモノアルキルスルホニウムカルボキシラート、トリフェニルスルホニウムカルボキシラートが挙げられる。また、ハロゲン化トリフェニルスルホニウム、トリフェニルスルホニウムカルボキシラートが好ましく用いることができる。
【0180】
また、本発明では硬化触媒として窒素含有シラン化合物を添加することができる。窒素含有シラン化合物としてはN-(3-トリエトキシシリプロピル)-4,5-ジヒドロイミダゾール等のイミダゾール環含有シラン化合物が挙げられる。
【0181】
硬化触媒が使用される場合、ポリシロキサン100質量部に対して、0.01質量部~10質量部、または0.01質量部~5質量部、または0.01質量部~3質量部である。
【0182】
<<安定化剤>>
上記安定化剤は、上記加水分解性シラン混合物の加水分解縮合物の安定化等の目的のために添加され得、その具体例として、有機酸、水、アルコール、又はそれらの組み合わせを添加することができる。
上記有機酸としては、例えばシュウ酸、マロン酸、メチルマロン酸、コハク酸、マレイン酸、リンゴ酸、酒石酸、フタル酸、クエン酸、グルタル酸、乳酸、サリチル酸等が挙げられる。中でも、シュウ酸、マレイン酸が好ましい。有機酸を添加する場合、その添加量は、上記加水分解性シラン混合物の加水分解縮合物の質量に対して0.1~5.0質量%である。これら有機酸はpH調整剤としても働き得る。
上記水としては、純水、超純水、イオン交換水等を用いることができ、使用する場合、その添加量は、レジスト下層膜形成用組成物100質量部に対して1質量部~20質量部とすることができる。
上記アルコールとしては塗布後の加熱により飛散(揮発)しやすいものが好ましく、例えばメタノール、エタノール、プロパノール、i-プロパノール、ブタノール等が挙げられる。アルコールを添加する場合、その添加量は、レジスト下層膜形成用組成物100質量部に対して1質量部~20質量部とすることができる。
【0183】
<<有機ポリマー>>
上記有機ポリマー化合物は、該レジスト下層膜形成用組成物に添加することにより、該組成物から形成される膜(レジスト下層膜)のドライエッチング速度(単位時間当たりの膜厚の減少量)や、また減衰係数や屈折率等を調整することができる。該有機ポリマー化合物としては特に制限はなく、その添加目的に応じて、種々の有機ポリマー(縮重合ポリマー及び付加重合ポリマー)の中から適宜選択される。
その具体例としては、ポリエステル、ポリスチレン、ポリイミド、アクリルポリマー、メタクリルポリマー、ポリビニルエーテル、フェノールノボラック、ナフトールノボラック、ポリエーテル、ポリアミド、ポリカーボネート等の付加重合ポリマー及び縮重合ポリマーが挙げられる。
本発明においては、吸光部位として機能するベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、トリアジン環、キノリン環、キノキサリン環等の芳香環や複素芳香環を含む有機ポリマーも、そのような機能が必要な場合には、好適に用い得る。そのような有機ポリマー化合物の具体例としては、ベンジルアクリレート、ベンジルメタクリレート、フェニルアクリレート、ナフチルアクリレート、アントリルメタクリレート、アントリルメチルメタクリレート、スチレン、ヒドロキシスチレン、ベンジルビニルエーテル及びN-フェニルマレイミド等の付加重合性モノマーをその構造単位として含む付加重合ポリマーや、フェノールノボラック及びナフトールノボラック等の縮重合ポリマーが挙げられるが、これらに限定されない。
【0184】
有機ポリマー化合物として付加重合ポリマーが使用される場合、そのポリマー化合物は、単独重合体、共重合体のいずれであってもよい。
付加重合ポリマーの製造には付加重合性モノマーが使用されるが、そのような付加重合性モノマーの具体例としては、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸エステル化合物、メタクリル酸エステル化合物、アクリルアミド化合物、メタクリルアミド化合物、ビニル化合物、スチレン化合物、マレイミド化合物、マレイン酸無水物、アクリロニトリル等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0185】
アクリル酸エステル化合物の具体例としては、メチルアクリレート、エチルアクリレート、ノルマルヘキシルアクリレート、i-プロピルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、ベンジルアクリレート、フェニルアクリレート、アントリルメチルアクリレート、2-ヒドロキシエチルアクリレート、3-クロロ-2-ヒドロキシプロピルアクリレート、2-ヒドロキシプロピルアクリレート、2,2,2-トリフルオロエチルアクリレート、2,2,2-トリクロロエチルアクリレート、2-ブロモエチルアクリレート、4-ヒドロキシブチルアクリレート、2-メトキシエチルアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、2-メチル-2-アダマンチルアクリレート、5-アクリロイルオキシ-6-ヒドロキシノルボルネン-2-カルボキシリック-6-ラクトン、3-アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、グリシジルアクリレート等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0186】
メタクリル酸エステル化合物の具体例としては、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、ノルマルヘキシルメタクリレート、i-プロピルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、ベンジルメタクリレート、フェニルメタクリレート、アントリルメチルメタクリレート、2-ヒドロキシエチルメタクリレート、2-ヒドロキシプロピルメタクリレート、2,2,2-トリフルオロエチルメタクリレート、2,2,2-トリクロロエチルメタクリレート、2-ブロモエチルメタクリレート、4-ヒドロキシブチルメタクリレート、2-メトキシエチルメタクリレート、テトラヒドロフルフリルメタクリレート、2-メチル-2-アダマンチルメタクリレート、5-メタクリロイルオキシ-6-ヒドロキシノルボルネン-2-カルボキシリック-6-ラクトン、3-メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、グリシジルメタクリレート、2-フェニルエチルメタクリレート、ヒドロキシフェニルメタクリレート、ブロモフェニルメタクリレート等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0187】
アクリルアミド化合物の具体例としては、アクリルアミド、N-メチルアクリルアミド、N-エチルアクリルアミド、N-ベンジルアクリルアミド、N-フェニルアクリルアミド、N,N-ジメチルアクリルアミド、N-アントリルアクリルアミド等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0188】
メタクリルアミド化合物の具体例としては、メタクリルアミド、N-メチルメタクリルアミド、N-エチルメタクリルアミド、N-ベンジルメタクリルアミド、N-フェニルメタクリルアミド、N,N-ジメチルメタクリルアミド、N-アントリルメタクリルアミド等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0189】
ビニル化合物の具体例としては、ビニルアルコール、2-ヒドロキシエチルビニルエーテル、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、ベンジルビニルエーテル、ビニル酢酸、ビニルトリメトキシシラン、2-クロロエチルビニルエーテル、2-メトキシエチルビニルエーテル、ビニルナフタレン、ビニルアントラセン等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0190】
スチレン化合物の具体例としては、スチレン、ヒドロキシスチレン、クロロスチレン、ブロモスチレン、メトキシスチレン、シアノスチレン、アセチルスチレン等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0191】
マレイミド化合物としては、マレイミド、N-メチルマレイミド、N-フェニルマレイミド、N-シクロヘキシルマレイミド、N-ベンジルマレイミド、N-ヒドロキシエチルマレイミド等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0192】
ポリマーとして縮重合ポリマーが使用される場合、そのようなポリマーとしては、例えば、グリコール化合物とジカルボン酸化合物との縮重合ポリマーが挙げられる。グリコール化合物としてはジエチレングリコール、ヘキサメチレングリコール、ブチレングリコール等が挙げられる。ジカルボン酸化合物としては、コハク酸、アジピン酸、テレフタル酸、無水マレイン酸等が挙げられる。また、例えば、ポリピロメリットイミド、ポリ(p-フェニレンテレフタルアミド)、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル、ポリアミド、ポリイミドが挙げられるが、これらに限定されない。
有機ポリマー化合物がヒドロキシ基を含む場合は、このヒドロキシ基は、加水分解縮合物等と架橋反応をし得る。
【0193】
上記有機ポリマー化合物の重量平均分子量は、通常1,000~1,000,000でとすることができる。有機ポリマー化合物を配合する場合、ポリマーとしての機能の効果を十分に得つつ、組成物中での析出を抑制する観点から、その重量平均分子量を例えば3,000~300,000、又は5,000~300,000、あるいは10,000~200,000などとすることができる。
このような有機ポリマー化合物は、1種単独で使用してもよいし、2種以上組み合わせて用いることができる。
【0194】
本発明のレジスト下層膜形成用組成物が有機ポリマー化合物を含む場合、その含有量は、その有機ポリマー化合物の機能等を考慮して適宜定まるため一概に規定できないが、通常、上記加水分解性シラン混合物の加水分解縮合物の質量に対して、1~200質量%の範囲とすることができ、組成物中での析出を抑制する観点等から、例えば100質量%以下、好ましくは50質量%以下、より好ましくは30質量%以下とすることができ、その効果を十分に得る観点等から、例えば5質量%以上、好ましくは10質量%以上、より好ましくは30質量%以上とすることができる。
【0195】
<<酸発生剤>>
酸発生剤としては、熱酸発生剤や光酸発生剤が挙げられ、光酸発生剤を好ましく用いることができる。
光酸発生剤としては、オニウム塩化合物、スルホンイミド化合物、ジスルホニルジアゾメタン化合物等が挙げられるが、これらに限定されない。
また熱酸発生剤としては、例えばテトラメチルアンモニウム硝酸塩などが挙げられるが、これに限定されない。
【0196】
オニウム塩化合物の具体例としては、ジフェニルヨードニウムヘキサフルオロホスフェート、ジフェニルヨードニウムトリフルオロメタンスルホネート、ジフェニルヨードニウムノナフルオロノルマルブタンスルホネート、ジフェニルヨードニウムパーフルオロノルマルオクタンスルホネート、ジフェニルヨードニウムカンファースルホネート、ビス(4-t-ブチルフェニル)ヨードニウムカンファースルホネート、ビス(4-t-ブチルフェニル)ヨードニウムトリフルオロメタンスルホネート等のヨードニウム塩化合物、トリフェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、トリフェニルスルホニウムノナフルオロノルマルブタンスルホネート、トリフェニルスルホニウムカンファースルホネート、トリフェニルスルホニウムトリフルオロメタンスルホネート、トリフェニルスルホニウム硝酸塩(ナイトレート)、トリフェニルスルホニウムトリフルオロ酢酸塩、トリフェニルスルホニウムマレイン酸塩、トリフェニルスルホニウムクロリド等のスルホニウム塩化合物等を挙げることができるが、これらに限定されない。
【0197】
スルホンイミド化合物の具体例としては、N-(トリフルオロメタンスルホニルオキシ)スクシンイミド、N-(ノナフルオロノルマルブタンスルホニルオキシ)スクシンイミド、N-(カンファースルホニルオキシ)スクシンイミド、N-(トリフルオロメタンスルホニルオキシ)ナフタルイミド等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0198】
ジスルホニルジアゾメタン化合物の具体例としては、ビス(トリフルオロメチルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(シクロヘキシルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(フェニルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(p-トルエンスルホニル)ジアゾメタン、ビス(2,4-ジメチルベンゼンスルホニル)ジアゾメタン、メチルスルホニル-p-トルエンスルホニルジアゾメタン等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0199】
本発明のレジスト下層膜形成用組成物が酸発生剤を含む場合、その含有量は、酸発生剤の種類等を考慮して適宜定まるため一概に規定できないが、通常、上記加水分解性シラン混合物の加水分解縮合物の質量に対して、0.01~5質量%の範囲であり、組成物中での酸発生剤の析出を抑制する観点等から、好ましくは3質量%以下、より好ましくは1質量%以下であり、その効果を十分に得る観点等から、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.5質量%以上である。
なお酸発生剤は、1種単独で又は2種以上組み合わせて用いることができ、また、光酸発生剤と熱酸発生剤とを併用してもよい。
【0200】
<<界面活性剤>>
界面活性剤は、上記レジスト下層膜形成用組成物を基板に塗布した際に、ピンホール、ストレーション等の発生を抑制するのに有効である。上記界面活性剤としては、ノニオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、シリコン系界面活性剤、フッ素系界面活性剤、UV硬化型界面活性剤等が挙げられる。より具体的には、例えば、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル等のポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンオクチルフェノールエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェノールエーテル等のポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル類、ポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレンブロックコポリマー類、ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノパルミテート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタンモノオレエート、ソルビタントリオレエート、ソルビタントリステアレート等のソルビタン脂肪酸エステル類、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノパルミテート、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート、ポリオキシエチレンソルビタントリオレエート、ポリオキシエチレンソルビタントリステアレート等のポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル類等のノニオン系界面活性剤、商品名エフトップ(登録商標)EF301、EF303、EF352(三菱マテリアル電子化成(株)(旧(株)トーケムプロダクツ)製)、商品名メガファック(登録商標)F171、F173、R-08、R-30、R-30N、R-40LM(DIC(株)製)、フロラードFC430、FC431(スリーエムジャパン(株)製)、商品名アサヒガード(登録商標)AG710(AGC(株)製)、サーフロン(登録商標)S-382、SC101、SC102、SC103、SC104、SC105、SC106(AGCセイミケミカル(株)製)等のフッ素系界面活性剤、及びオルガノシロキサンポリマ-KP341(信越化学工業(株)製)等を挙げることができるが、これらに限定されない。
界面活性剤は、1種単独で又は2種以上組み合わせて用いることができる。
【0201】
本発明のレジスト下層膜形成用組成物が界面活性剤を含む場合、その含有量は、上記加水分解性シラン混合物の加水分解縮合物の質量に対して、通常0.0001~5質量%であり、好ましくは0.001~4質量%、より好ましくは0.01~3質量%とすることができる。
【0202】
<<レオロジー調整剤>>
上記レオロジー調整剤は、主にレジスト下層膜形成用組成物の流動性を向上させ、特にベーキング工程において、形成される膜の膜厚均一性の向上や、ホール内部への組成物の充填性を高める目的で添加される。具体例としては、ジメチルフタレート、ジエチルフタレート、ジi-ブチルフタレート、ジヘキシルフタレート、ブチルi-デシルフタレート等のフタル酸誘導体、ジノルマルブチルアジペート、ジ-i-ブチルアジペート、ジ-i-オクチルアジペート、オクチルデシルアジペート等のアジピン酸誘導体、ジノルマルブチルマレート、ジエチルマレート、ジノニルマレート等のマレイン酸誘導体、メチルオレート、ブチルオレート、テトラヒドロフルフリルオレート等のオレイン酸誘導体、またはノルマルブチルステアレート、グリセリルステアレート等のステアリン酸誘導体等を挙げることができる。
これらのレオロジー調整剤が使用される場合、その添加量は、レジスト下層膜形成用組成物の全固形分に対して通常30質量%未満である。
【0203】
<<接着補助剤>>
上記接着補助剤は、主に基板あるいはレジストと、当該レジスト下層膜形成用組成物から形成される膜(レジスト下層膜)との密着性を向上させ、特に現像においてレジストの剥離を抑制・防止する目的で添加される。具体例としては、トリメチルクロロシラン、ジメチルビニルクロロシラン、メチルジフェニルクロロシラン、クロロメチルジメチルクロロシラン等のクロロシラン類、トリメチルメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、メチルジメトキシシラン、ジメチルビニルエトキシシラン等のアルコキシシラン類、ヘキサメチルジシラザン、N,N’-ビス(トリメチルシリル)ウレア、ジメチルトリメチルシリルアミン、トリメチルシリルイミダゾール等のシラザン類、γ-クロロプロピルトリメトキシシラン、γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン等のその他のシラン類、ベンゾトリアゾール、ベンズイミダゾール、インダゾール、イミダゾール、2-メルカプトベンズイミダゾール、2ーメルカプトベンゾチアゾール、2-メルカプトベンゾオキサゾール、ウラゾール、チオウラシル、メルカプトイミダゾール、メルカプトピリミジン等の複素環式化合物や、1,1-ジメチルウレア、1,3-ジメチルウレア等の尿素、またはチオ尿素化合物を挙げることができる。
これらの接着補助剤が使用される場合、その添加量は、レジスト下層膜形成用組成物の全固形分に対して通常5質量%未満、好ましくは2質量%未満である。
【0204】
<<pH調整剤>>
また、pH調整剤として、前述の<安定化剤>として挙げた有機酸などのカルボン酸基を1又は2以上有する酸の他、ビスフェノールS、又はビスフェノールS誘導体を添加することができる。ビスフェノールS、又はビスフェノールS誘導体は、上記加水分解性シラン混合物の加水分解縮合物の100質量部に対して、0.01~20質量部、又は0.01~10質量部、又は0.01~5質量部である。
【0205】
以下、ビスフェノールSやビスフェノールS誘導体の具体例を挙げるが、これらに限定されない。
【0206】
【化61】
【0207】
レジスト下層膜形成用組成物における固形分の濃度は、当該組成物の全質量に対して、例えば0.1~50質量%、0.1~30質量%、0.1~25質量%、0.5~20.0質量%とすることができる。固形分とは、当該組成物の全成分から溶媒成分を除いた成分を指す。
固形分中の上記加水分解性シラン混合物の加水分解縮合物の含有量は、通常20質量%~100質量%であるが、上述した本発明の効果を再現性よく得る観点等から、その下限値は、好ましくは50質量%、より好ましくは60質量%、より一層好ましくは70質量%、更に好ましくは80質量%であり、その上限値は、好ましくは99質量%であり、その余を、後述の特定の添加剤(化合物A)やその他の成分とすることができる。
また該組成物中の上記加水分解性シラン混合物の加水分解縮合物の含有量は、例えば0.5~20.0質量%とすることができる。
また当該レジスト下層膜形成用組成物は、好ましくはpH2~5を有し、より好ましくはpH3~4を有する。
【0208】
レジスト下層膜形成用組成物は、上記加水分解性シラン混合物の加水分解縮合物と、溶媒と、所望により特定の添加剤(化合物A)やその他の成分が含まれる場合には当該特定の添加剤(化合物A)やその他の成分とを混合することで製造できる。この際、加水分解縮合物等を含む溶液を予め準備し、この溶液を、溶媒や特定の添加剤(化合物A)やその他の成分と混合してもよい。
混合順序は特に限定されるものではない。例えば、加水分解縮合物等を含む溶液に、溶媒を加えて混合し、その混合物に特定の添加剤(化合物A)やその他の成分を加えてもよく、加水分解縮合物等を含む溶液と、溶媒と、特定の添加剤(化合物A)やその他の成分とを同時に混合してもよい。
必要であれば、最後に更に溶媒を追加で加えたり、溶媒に比較的溶けやすい一部の成分を混合物中に含めずにおき、最後にそれを加えたりしてもよいが、構成成分の凝集や分離を抑制し、均一性に優れる組成物を再現性よく調製する観点から、加水分解縮合物等が良好に溶解した溶液を予め準備し、これを用いて組成物を調製することが好ましい。なお、加水分解縮合物等は、共に混ぜられる溶媒の種類や量、その他の成分の量や性質等によっては、これらが混ぜられた際に凝集又は沈殿する可能性がある点に留意する。また、加水分解縮合物等が溶解した溶液を用いて組成物を調製する場合、最終的に得られる組成物中の加水分解縮合物等が所望の量となるように、加水分解縮合物等の溶液の濃度やその使用量を決める必要がある点も留意する。
組成物の調製において、成分が分解したり変質したりしない範囲で、適宜加熱してもよい。
【0209】
本発明において、レジスト下層膜形成用組成物を製造する途中の段階において、又は全ての成分を混合した後に、サブマイクロメートルオーダーのフィルタ等を用いてろ過してもよい。
【0210】
本発明のレジスト下層膜形成用組成物はリソグラフィー工程に使用されるレジスト下層膜形成用の組成物として、好適に用いることができる。
【0211】
(第2の態様のシリコン含有レジスト下層膜形成用組成物)
本発明のレジスト下層膜形成用組成物は、加水分解性シラン混合物の加水分解縮合物とカチオンAX及びアニオンAZを含む化学構造を有する特定の添加剤(化合物A)とを含む。
加水分解性シラン混合物の加水分解縮合物(ポリシロキサン)を含むレジスト下層膜形成用組成物に、カチオンAX及びアニオンAZを含む化学構造を有する特定の添加剤(化合物A)を含有させることにより、アルカリ性溶液(塩基性薬液)に対し優れた可溶性を示すレジスト下層膜を形成することができる。
【0212】
<加水分解性シラン混合物の加水分解縮合物>
第2の態様のシリコン含有レジスト下層膜形成用組成物に含まれる加水分解性シラン混合物の加水分解縮合物を形成する加水分解性シランとしては、特に制限はなく、上記(第1の態様のシリコン含有レジスト下層膜形成用組成物)の上記<加水分解性シラン混合物の加水分解縮合物>の欄で記載した全てのシラン化合物(加水分解性シラン)が使用可能である。つまり、式(1)で表される加水分解性シラン、式(2)で表される加水分解性シラン、式(3)で表される加水分解性シラン、式(4)で表される加水分解性シラン、及び式(5)で表される加水分解性シランのいずれを含んでいてもよく、あるいはそれらの式で表される加水分解性シラン以外の加水分解シランを含んでいてもよい。
第2の態様の加水分解縮合物と第1の態様の加水分解縮合物の違いは、加水分解性シラン混合物に含まれる加水分解性シランの種類が、第1の態様では特定の加水分解性シランを含むよう規定されているのに対し、第2の態様では特に制限はないという点である。特定の添加剤(化合物A)をレジスト下層膜形成用組成物に含有させることにより、レジスト下層膜のアルカリ性溶液(塩基性薬液)に対する可溶性を向上させることができるため、第2の態様では、加水分解性シラン混合物に含まれる加水分解性シランの種類としては特に制限はない。第2の態様では、いずれの加水分解性シランも使用可能である。
第2の態様における「加水分解性シラン混合物の加水分解縮合物」としては、上記(第1の態様のシリコン含有レジスト下層膜形成用組成物)の上記<加水分解性シラン混合物の加水分解縮合物>の欄に記載した、各種加水分解性シランが使用可能である。
【0213】
<特定の添加剤(化合物A)>
第2の態様における「特定の添加剤(化合物A)」としては、上記(第1の態様のシリコン含有レジスト下層膜形成用組成物)の上記<特定の添加剤(化合物A)>の欄に記載したとおりである。
【0214】
第2の態様のレジスト下層膜形成用組成物においても、加水分解性シラン混合物の加水分解縮合物(ポリシロキサン)と特定の添加剤(化合物A)の他に、溶媒や、その他の成分を含むことができる。
【0215】
<溶媒>
第2の態様における「溶媒」としては、上記(第1の態様のシリコン含有レジスト下層膜形成用組成物)の上記<溶媒>の欄に記載したとおりである。
【0216】
<その他の成分(その他の添加剤)>
第2の態様における「その他の成分」としては、上記(第1の態様のシリコン含有レジスト下層膜形成用組成物)の上記<その他の成分(その他の添加剤)>の欄に記載したとおりである。
【0217】
第2の態様におけるレジスト下層膜形成用組成物の固形分濃度や好ましいpH値、該レジスト下層膜形成用組成物の製造方法についての説明は、上記(第1の態様のシリコン含有レジスト下層膜形成用組成物)の欄に記載したとおりである。
【0218】
[パターン形成方法及び半導体装置の製造方法]
以下、本発明の一態様として、本発明のレジスト下層膜形成用組成物を使用したパターン形成方法、並びに半導体装置の製造方法について説明する。
【0219】
まず、精密集積回路素子の製造に使用される基板〔例えば、酸化珪素膜、窒化珪素膜又は酸化窒化珪素膜で被覆されたシリコンウエハー等の半導体基板、窒化珪素基板、石英基板、ガラス基板(無アルカリガラス、低アルカリガラス、結晶化ガラスを含む。)、ITO(インジウムスズ酸化物)膜やIZO(インジウム亜鉛酸化物)膜が形成されたガラス基板、プラスチック(ポリイミド、PET等)基板、低誘電率材料(low-k材料)被覆基板、フレキシブル基板等〕の上に、スピナー、コーター等の適当な塗布方法により、本発明のレジスト下層膜形成用組成物を塗布し、その後、ホットプレート等の加熱手段を用いて焼成することによって組成物を硬化物とし、レジスト下層膜を形成する。本明細書において、レジスト下層膜とは、本発明のレジスト下層膜形成用組成物より形成される膜をいう。
焼成する条件としては、焼成温度40℃~400℃、又は80℃~250℃、焼成時間0.3分間~60分間の中から適宜選択される。好ましくは、焼成温度150℃~250℃、焼成時間0.5分間~2分間である。
ここで形成されるレジスト下層膜の膜厚としては、例えば、10nm~1,000nmであり、又は20nm~500nmであり、又は50nm~300nmであり、又は100nm~200nm、または10~150nmである。
【0220】
本発明では、上記基板上に有機下層膜を形成した後、この上に上記レジスト下層膜を形成した態様とするが、場合によって有機下層膜を設けない態様とすることもあり得る。
ここで使用する有機下層膜としては、特に制限はなく、これまでリソグラフィープロセスにおいて慣用されているものの中から任意に選択して使用することができる。
基板上に、有機下層膜、その上にレジスト下層膜、さらにその上に後述するレジスト膜を設けた態様とすることにより、フォトレジスト膜のパターン幅が狭くなり、パターン倒れを防ぐ為にフォトレジスト膜を薄く被覆した場合でも、後述する適切なエッチングガスを選択することにより基板の加工が可能になる。例えば、フォトレジスト膜に対して十分に早いエッチング速度を有するフッ素系ガスをエッチングガスとして用いて、本発明のレジスト下層膜の加工が可能であり、また本発明のレジスト下層膜に対して十分に早いエッチング速度を有する酸素系ガスをエッチングガスとして用いて、有機下層膜の加工が可能であり、更に有機下層膜に対して十分に早いエッチング速度を有するフッ素系ガスをエッチングガスとして用いて、基板の加工を行うことができる。
なお、この際に用い得る基板及び塗布方法は、上述したものと同じものが挙げられる。
【0221】
次いで、上記レジスト下層膜の上に、例えばフォトレジスト材料の層(レジスト膜)が形成される。レジスト膜の形成は周知の方法にて、すなわち、レジスト下層膜の上に、塗布型レジスト材料(例えばフォトレジスト膜形成用組成物)を塗布し焼成することによって行なうことができる。
レジスト膜の膜厚は、例えば10nm~10,000nmであり、又は100nm~2,000nmであり、又は200nm~1,000nmであり、又は30nm~200nmである。
【0222】
上記レジスト下層膜上に形成されるレジスト膜に使用されるフォトレジスト材料としては、露光に使用される光(例えば、KrFエキシマレーザー、ArFエキシマレーザー等)に感光するものであれば特に限定はされず、ネガ型フォトレジスト材料及びポジ型フォトレジスト材料のいずれも使用できる。例えば、ノボラック樹脂と1,2-ナフトキノンジアジドスルホン酸エステルとからなるポジ型フォトレジスト材料、酸により分解してアルカリ溶解速度を上昇させる基を有するバインダーと光酸発生剤からなる化学増幅型フォトレジスト材料、酸により分解してフォトレジスト材料のアルカリ溶解速度を上昇させる低分子化合物とアルカリ可溶性バインダーと光酸発生剤とからなる化学増幅型フォトレジスト材料、及び酸により分解してアルカリ溶解速度を上昇させる基を有するバインダーと酸により分解してフォトレジスト材料のアルカリ溶解速度を上昇させる低分子化合物と光酸発生剤からなる化学増幅型フォトレジスト材料等がある。
市販品として入手可能な具体例としては、シプレー社製商品名APEX-E、住友化学(株)製商品名PAR710、JSR(株)製;商品名AR2772JN、及び信越化学工業(株)製商品名SEPR430等が挙げられるが、これらに限定されない。また、例えば、Proc.SPIE,Vol.3999,330-334(2000)、Proc.SPIE,Vol.3999,357-364(2000)、やProc.SPIE,Vol.3999,365-374(2000)に記載されているような、含フッ素原子ポリマー系フォトレジスト材料を挙げることができる。
【0223】
また、上記レジスト下層膜上に形成されるレジスト膜には、フォトレジスト膜に替えて電子線リソグラフィー用レジスト膜(電子線レジスト膜とも称する)、又はEUVリソグラフィー用レジスト膜(EUVレジスト膜とも称する)を用いることができ、すなわち、本発明のシリコン含有レジスト下層膜形成用組成物は、電子線リソグラフィー用レジスト下層膜形成用又はEUVリソグラフィー用レジスト下層膜形成用として用いることができる。特にEUVリソグラフィー用レジスト下層膜形成用組成物として好適である。
上記電子線レジスト材料としては、ネガ型材料、ポジ型材料いずれも使用できる。その具体例としては、酸発生剤と酸により分解してアルカリ溶解速度を変化させる基を有するバインダーからなる化学増幅型レジスト材料、アルカリ可溶性バインダーと酸発生剤と酸により分解してレジスト材料のアルカリ溶解速度を変化させる低分子化合物からなる化学増幅型レジスト材料、酸発生剤と酸により分解してアルカリ溶解速度を変化させる基を有するバインダーと酸により分解してレジスト材料のアルカリ溶解速度を変化させる低分子化合物からなる化学増幅型レジスト材料、電子線によって分解してアルカリ溶解速度を変化させる基を有するバインダーからなる非化学増幅型レジスト材料、電子線によって切断されアルカリ溶解速度を変化させる部位を有するバインダーからなる非化学増幅型レジスト材料などがある。これらの電子線レジスト材料を用いた場合も、照射源を電子線としてフォトレジスト材料を用いた場合と同様にレジスト膜のパターンを形成することができる。
また上記EUVレジスト材料としては、メタクリレート樹脂系レジスト材料を用いることができる。
【0224】
次に、レジスト下層膜の上層に形成されたレジスト膜に対して、所定のマスク(レクチル)を通して露光を行う。露光には、KrFエキシマレーザー(波長248nm)、ArFエキシマレーザー(波長193nm)、F2エキシマレーザー(波長157nm)、EUV(波長13.5nm)、電子線等を使用することができる。
露光後、必要に応じて露光後加熱(post exposure bake)を行なうこともできる。露光後加熱は、加熱温度70℃~150℃、加熱時間0.3分間~10分間から適宜選択された条件で行われる。
【0225】
次いで、現像液(例えばアルカリ現像液)によって現像が行なわれる。これにより、例えばポジ型フォトレジスト膜が使用された場合は、露光された部分のフォトレジスト膜が除去され、フォトレジスト膜のパターンが形成される。
現像液(アルカリ現像液)としては、水酸化カリウム、水酸化ナトリウムなどのアルカリ金属水酸化物の水溶液、水酸化テトラメチルアンモニウム、水酸化テトラエチルアンモニウム、コリンなどの水酸化四級アンモニウムの水溶液、エタノールアミン、プロピルアミン、エチレンジアミンなどのアミン水溶液等のアルカリ性水溶液(アルカリ現像液)等を例として挙げることができる。さらに、これらの現像液に界面活性剤などを加えることもできる。現像の条件としては、温度5~50℃、時間10秒~600秒から適宜選択される。
【0226】
また本発明では、現像液として有機溶剤を用いることができ、露光後に現像液(溶剤)によって現像が行なわれる。これにより、例えばネガ型フォトレジスト膜が使用された場合は、露光されていない部分のフォトレジスト膜が除去され、フォトレジスト膜のパターンが形成される。
現像液(有機溶剤)としては、例えば、酢酸メチル、酢酸ブチル、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸アミル、酢酸イソアミル、メトキシ酢酸エチル、エトキシ酢酸エチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノプロピルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノフェニルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノプロピルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノフェニルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、2-メトキシブチルアセテート、3-メトキシブチルアセテート、4-メトキシブチルアセテート、3-メチル-3-メトキシブチルアセテート、3-エチル-3-メトキシブチルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノプロピルエーテルアセテート、2-エトキシブチルアセテート、4-エトキシブチルアセテート、4-プロポキシブチルアセテート、2-メトキシペンチルアセテート、3-メトキシペンチルアセテート、4-メトキシペンチルアセテート、2-メチル-3-メトキシペンチルアセテート、3-メチル-3-メトキシペンチルアセテート、3-メチル-4-メトキシペンチルアセテート、4-メチル-4-メトキシペンチルアセテート、プロピレングリコールジアセテート、ギ酸メチル、ギ酸エチル、ギ酸ブチル、ギ酸プロピル、乳酸エチル、乳酸ブチル、乳酸プロピル、炭酸エチル、炭酸プロピル、炭酸ブチル、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル、ピルビン酸プロピル、ピルビン酸ブチル、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸プロピル、プロピオン酸イソプロピル、2-ヒドロキシプロピオン酸メチル、2-ヒドロキシプロピオン酸エチル、メチル-3-メトキシプロピオネート、エチル-3-メトキシプロピオネート、エチル-3-エトキシプロピオネート、プロピル-3-メトキシプロピオネート等を例として挙げることができる。さらに、これらの現像液に界面活性剤などを加えることもできる。現像の条件としては、温度は5℃~50℃、時間は10秒~600秒から適宜選択される。
【0227】
このようにして形成されたフォトレジスト膜(上層)のパターンを保護膜としてレジスト下層膜(中間層)の除去を行い、次いでパターン化されたフォトレジスト膜とパターン化されたレジスト下層膜(中間層)からなる膜を保護膜として、有機下層膜(下層)の除去を行い、最後に、パターン化されたフォトレジスト膜(上層)、パターン化されたレジスト下層膜(中間層)及び、パターン化された有機下層膜(下層)を保護膜として、基板の加工を行う。
【0228】
レジスト膜(上層)のパターンを保護膜として行われるレジスト下層膜(中間層)の除去はドライエッチングによって行われ、テトラフルオロメタン(CF)、パーフルオロシクロブタン(C)、パーフルオロプロパン(C)、トリフルオロメタン、一酸化炭素、アルゴン、酸素、窒素、六フッ化硫黄、ジフルオロメタン、三フッ化窒素、三フッ化塩素、塩素、トリクロロボラン及びジクロロボラン等のガスを使用することができる。
なおレジスト下層膜のドライエッチングには、ハロゲン系ガスを使用することが好ましい。ハロゲン系ガスによるドライエッチングでは、基本的に有機物質からなるレジスト膜(フォトレジスト膜)は除去されにくい。それに対し、ケイ素原子を多く含むシリコン含有レジスト下層膜はハロゲン系ガスによって速やかに除去される。そのため、該レジスト下層膜のドライエッチングに伴うフォトレジスト膜の膜厚の減少を抑えることができる。そして、その結果、フォトレジスト膜を薄膜で使用することが可能となる。従って、レジスト下層膜のドライエッチングはフッ素系ガスによることが好ましく、フッ素系ガスとしては、例えば、テトラフルオロメタン(CF)、パーフルオロシクロブタン(C)、パーフルオロプロパン(C)、トリフルオロメタン、ジフルオロメタン(CH)等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0229】
基板とレジスト下層膜の間に有機下層膜を有している場合、次いで(残存している場合にはパターン化されたレジスト膜(上層)と)パターン化されたレジスト下層膜(中間層)からなる膜を保護膜として行われる有機下層膜(下層)の除去は、酸素系ガス(酸素ガス、酸素/硫化カルボニル(COS)混合ガス等)によるドライエッチングによって行なわれることが好ましい。これは、ケイ素原子を多く含む本発明のレジスト下層膜は、酸素系ガスによるドライエッチングでは除去されにくいことによる。
【0230】
最後に、パターン化されたレジスト下層膜(中間層)、及び所望によりパターン化された有機下層膜(下層)を保護膜として行われる(半導体)基板の加工は、フッ素系ガスによるドライエッチングによって行なわれることが好ましい。
フッ素系ガスとしては、例えば、テトラフルオロメタン(CF)、パーフルオロシクロブタン(C)、パーフルオロプロパン(C)、トリフルオロメタン、及びジフルオロメタン(CH)等が挙げられる。
【0231】
本発明では、有機下層膜のエッチング(除去)する工程の後に、レジスト下層膜の除去を薬液によって行うことが可能である。なお、薬液によるレジスト下層膜の除去は、パターン化された有機下層膜による基板の加工後に行うこともできる。本発明にあっては、上記の加水分解縮合物(ポリシロキサン)を含むレジスト下層膜形成用組成物を用いることにより、該縮合物から形成した膜において、アルカリ性条件下で可溶性を高めることができる。例えば、アンモニアおよび過酸化水素を含む水溶液のようなアルカリ性溶液(塩基性薬液)に対し、優れた溶解性を示す。そのため、当該膜はアルカリ性溶液で処理した場合に良好な剥離性を示し、シリコン含有レジスト下層膜等のシリコン系のマスク残渣であっても薬液により容易に除去可能となるレジスト下層膜により、基板ダメージの少ない半導体デバイスを製造することができる。
上記薬液としては、希フッ酸、バッファードフッ酸、塩酸と過酸化水素を含む水溶液(SC-2薬液)、硫酸と過酸化水素を含む水溶液(SPM薬液)、弗酸と過酸化水素を含む水溶液(FPM薬液)や、アンモニアと過酸化水素を含む水溶液(SC-1薬液)等のアルカリ性溶液が挙げられ、基板への影響を少なくできる観点からアルカリ性薬液(塩基性薬液)の使用が好適である。
上記アルカリ性溶液としては、前述のアンモニアと過酸化水素水と水の混合によるアンモニア過水(SC-1薬液)のほか、アンモニア、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、テトラプロピルアンモニウムヒドロキシド、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド、コリンヒドロキシド、ベンジルトリメチルアンモニウムヒドロキシド、ベンジルトリエチルアンモニウムヒドロキシド、DBU(ジアザビシクロウンデセン)、DBN(ジアザビシクロノネン)、ヒドロキシルアミン、1-ブチル-1-メチルピロリジニウムヒドロキシド、1-プロピル-1-メチルピロリジニウムヒドロキシド、1-ブチル-1-メチルピペリジニウムヒドロキシド、1-プロピル-1-メチルピペリジニウムヒドロキシド、メピクアトヒドロキシド、トリメチルスルホニウムヒドロキシド、ヒドラジン類、エチレンジアミン類、又はグアニジンを1~99質量%含有する水溶液を挙げることができる。
【0232】
またレジスト下層膜の上層には、レジスト膜の形成前に有機系の反射防止膜を形成することができる。そこで使用される反射防止膜組成物としては特に制限はなく、例えば、これまでリソグラフィープロセスにおいて慣用されているものの中から任意に選択して使用することができ、また、慣用されている方法、例えば、スピナー、コーターによる塗布及び焼成によって反射防止膜の形成を行なうことができる。
【0233】
また、本発明のレジスト下層膜形成用組成物が塗布される基板は、その表面にCVD法などで形成された有機系又は無機系の反射防止膜を有するものであってもよく、その上にレジスト下層膜を形成することもできる。基板上に有機下層膜を形成した後、この上に本発明のレジスト下層膜を形成する場合も、用いる基板は、その表面にCVD法などで形成された有機系又は無機系の反射防止膜を有するものであってもよい。
【0234】
本発明のレジスト下層膜形成用組成物より形成されるレジスト下層膜はまた、リソグラフィープロセスにおいて使用される光の波長によっては、その光に対する吸収を有することがある。そして、そのような場合には、基板からの反射光を防止する効果を有する反射防止膜として機能することができる。
さらに上記レジスト下層膜は、基板とレジスト膜(フォトレジスト膜等)との相互作用の防止するための層、レジスト膜に用いられる材料又はレジスト膜への露光時に生成する物質の基板への悪作用を防ぐ機能を有する層、加熱焼成時に基板から生成する物質の上層レジスト膜への拡散を防ぐ機能を有する層、及び半導体基板誘電体層によるレジスト膜のポイズニング効果を減少させるためのバリア層等として使用することも可能である。
【0235】
上記レジスト下層膜は、デュアルダマシンプロセスで用いられるビアホールが形成された基板に適用され得、ホールを隙間なく充填することができる穴埋め材(埋め込み材)として使用できる。また、凹凸のある半導体基板の表面を平坦化するための平坦化材として使用することもできる。
また上記レジスト下層膜は、EUVレジスト膜の下層膜として、ハードマスクとしての機能以外にも、例えばEUVレジスト膜とインターミキシングすることなく、EUV露光(波長13.5nm)に際して好ましくない露光光、例えばUV(紫外)光やDUV(深紫外)光(:ArF光、KrF光)の基板又は界面からの反射を防止することができる、EUVレジスト膜の下層反射防止膜として、用いることができる。すなわちEUVレジスト膜の下層として効率的に反射を防止することができる。EUVレジスト下層膜として用いた場合は、そのプロセスはフォトレジスト用下層膜と同様に行うことができる。
【0236】
以上説明した本発明のレジスト下層膜と、半導体基板とを備える半導体加工用基板は、これを用いることによって、好適に半導体基板を加工することができる。
また、上述した通りの、有機下層膜を形成する工程と、該有機下層膜上に、本発明のシリコン含有レジスト下層膜形成用組成物を用いてシリコン含有レジスト下層膜を形成する工程と、該シリコン含有レジスト下層膜上に、レジスト膜を形成する工程とを含む、半導体素子の製造方法によれば、精度の高い半導体基板の加工を再現性よく実現できるため、半導体素子の安定的な製造を期待できる。
【実施例
【0237】
以下、本発明の内容および効果を実施例により更に詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるわけではない。
上記の加水分解性シランの加水分解縮合物(ポリオルガノシロキサン)は、重量平均分子量1,000~1,000,000、又は、1,000~100,000の縮合物を得ることができる。これらの分子量はGPC分析によるポリスチレン換算で得られる分子量である。
GPCの測定条件は、例えばGPC装置(商品名HLC-8220GPC、東ソー株式会社製)、GPCカラム(商品名Shodex(登録商標)KF803L、KF802、KF801、昭和電工(株)製)、カラム温度は40℃、溶離液(溶出溶媒)はテトラヒドロフラン、流量(流速)は1.0mL/min、標準試料はポリスチレン(昭和電工(株)製)を用いて行うことができる。
【0238】
[1]合成例1~11、および比較合成例1~2:加水分解縮合物(ポリシロキサン)の合成
各合成で使用した化合物1~8を下記に示す。
【0239】
【化62】
上記式中、Meはメチル基を、Etはエチル基をそれぞれ表す。
【0240】
<合成例1>
化合物1を20.8g、化合物2を21.9g、化合物3を8.8g、化合物4を0.1g、化合物5を0.9gおよび1-エトキシ-2-プロパノール83gを200mLのフラスコに入れて撹拌し、得られた溶液をマグネチックスターラーにて撹拌しながら、そこへ0.2mol/Lの硝酸37g水溶液を滴下した。
滴下後、65℃に調整されたオイルバスにフラスコを移し、20時間反応させた。その後、反応溶液を室温まで冷却し、その反応溶液に1-エトキシ-2-プロパノールを56g加え、減圧下で、水および硝酸、並びに反応副生物であるメタノールおよびエタノールを留去することによって、1-エトキシ-2-プロパノールを溶媒とする加水分解縮合物(ポリマー)の濃縮液を得た。なお、得られた濃縮液の固形分濃度は、150℃で加熱した場合における固形残物換算で20質量%を超えるものであった。
得られた加水分解縮合物(ポリシロキサン)は下記式に相当し、GPCによる重量平均分子量(Mw)はポリスチレン換算で2,000であった。
なお以下の合成例・比較合成例に記載の化学式において、シロキサン単位の横に付された数字はモル比(合計100)を表す。
【0241】
【化63】
【0242】
合成例1と同様の条件で表1に示してある化合物(モノマー)を使用して、<合成例2>から<合成例11>まで行い、それぞれ目的物である加水分解縮合物(ポリシロキサン化合物)2~11を得た。
【0243】
【表1】
【0244】
<比較合成例1>
化合物1を20.8g(70mol%)、化合物7を7.6g(30mol%)および1-エトキシ-2-プロパノール42gを100mLのフラスコに入れて撹拌し、得られた溶液をマグネチックスターラーにて撹拌しながら、そこへ0.2mol/Lの硝酸水溶液19gを滴下した。
滴下後、65℃に調整されたオイルバスにフラスコを移し、16時間反応させた。その後、反応溶液を室温まで冷却し、その反応溶液に1-エトキシ-2-プロパノールを100g加え、減圧下、水および硝酸、並びに反応副生物であるエタノールを反応溶液から減圧留去することによって、1-エトキシ-2-プロパノールを溶媒とする加水分解縮合物(ポリマー)の濃縮液を得た。なお、得られた濃縮液の固形分濃度は、150℃で加熱した場合における固形残物換算で20質量%を超えるものであった。
得られた加水分解縮合物(ポリシロキサン)は下記式に相当し、GPCによる重量平均分子量(Mw)はポリスチレン換算で2,700であった。
【0245】
【化64】
【0246】
<比較合成例2>
化合物1を12.5g(40mol%)、化合物7を12.0g(45mol%)、化合物3を3.6g(12mol%)、化合物8を1.9g(3mol%)および1-エトキシ-2-プロパノール45gを100mLのフラスコに入れて撹拌し、得られた溶液をマグネチックスターラーにて撹拌しながら、そこへマグネチックスターラーにて撹拌しながら、0.2mol/Lの硝酸水溶液18gを滴下した。
滴下後、65℃に調整されたオイルバスにフラスコを移し、16時間反応させた。その後、反応溶液を室温まで冷却し、その反応溶液に1-エトキシ-2-プロパノールを100g加え、減圧下、水および硝酸、並びに反応副生物であるメタノールおよびエタノールを反応溶液から減圧留去することによって、1-エトキシ-2-プロパノールを溶媒とする加水分解縮合物(ポリマー)の濃縮液を得た。なお、得られた濃縮液の固形分濃度は、150℃で加熱した場合における固形残物換算で20質量%を超えるものであった。
得られた加水分解縮合物ポリシロキサンは下記式に相当し、GPCによる重量平均分子量(Mw)はポリスチレン換算で1,900であった。
【0247】
【化65】
【0248】
[2]調製例1~34および比較調製例1~2:シリコン含有レジスト下層膜形成用組成物(塗布液)の調製
上記合成例で得られた加水分解縮合物(ポリマー)1~11および比較合成例1~2の加水分解縮合物(ポリマー)に対し、添加剤、溶媒を表2-1および表2-2に示す割合で混合し、0.02μmのポリエチレン製フィルターで濾過することによって、ポリシロキサン下層膜形成用組成物溶液をそれぞれ調製した。表2中の各添加量は質量部で示した。
なお表2中、組成物の欄に記載の各合成例が2質量部とあるのは、加水分解縮合物が2質量部との意味である。また、表2中、MAはマレイン酸を、TPSNO3は硝酸トリフェニルスルホニウムを、PGEEはプロピレングリコールモノエチルエーテルを、PGMEはプロピレングリコールモノメチルエーテルを、それぞれ意味する。
また、表2中、Add-1~11は、それぞれ下記構造式で示される添加剤である。
【0249】
【化66】
【0250】
【化67】
【0251】
【表2-1】
【0252】
【表2-2】
【0253】
[3]有機下層膜形成用組成物の調製
窒素下、100mLの四口フラスコにカルバゾール(6.69g、0.040mol、東京化成工業(株)製)、9-フルオレノン(7.28g、0.040mol、東京化成工業(株)製)およびパラトルエンスルホン酸一水和物(0.76g、0.0040mol、東京化成工業(株)製)を入れ、そこへ1,4-ジオキサン(6.69g、関東化学(株)製)を入れて撹拌した後、混合物を100℃まで昇温して固体を溶解させ、重合を開始させた。
24時間後、反応混合物を60℃まで放冷し、クロロホルム(34g、関東化学(株)製)を加え希釈し、希釈した反応混合物をメタノール(168g、関東化学(株)製)に滴下し、再沈殿を行った。得られた沈殿物をろ過で回収し、回収した固体を80℃で24時間乾燥し、目的とする式(X)で表されるポリマー(以下、PCzFLと略す)9.37gを得た。
なお、PCzFLのH-NMRの測定結果は以下の通りであった。
H-NMR(400MHz,DMSO-d):δ7.03-7.55(br,12H),δ7.61-8.10(br,4H),δ11.18(br,1H)
また、PCzFLの重量平均分子量(Mw)は、GPCによるポリスチレン換算で2,800で、多分散度Mw/Mnは1.77であった。
【0254】
【化68】
【0255】
PCzFL 20gと、架橋剤としてテトラメトキシメチルグリコールウリル(日本サイテック・インダストリーズ(株)(旧 三井サイテック(株))製、商品名パウダーリンク1174)3.0gと、触媒としてピリジニウムパラトルエンスルホネート0.30gと、界面活性剤としてメガファックR-30(DIC(株)製、商品名)0.06gとを混合し、混合物をプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート88gに溶解させ溶液とした。その後、該溶液を孔径0.10μmのポリエチレン製ミクロフィルタを用いてろ過し、更に、孔径0.05μmのポリエチレン製ミクロフィルタを用いてろ過して、有機下層膜形成用組成物を調製した。
【0256】
[4]実施例1~34、比較例1~2:ArF露光によるレジストパターン評価(PTD)
上記有機下層膜形成用組成物を、スピナーを用いてシリコンウエハー上に塗布し、ホットプレート上で240℃で60秒間加熱することで、有機下層膜(A層)(膜厚200nm)を形成した。
その上に、調製例1で得られた塗布液をスピンコートし、ホットプレート上で215℃で1分間加熱することにより、シリコン含有レジスト下層膜(B層)(20nm)を形成した。
更にその上に、市販のArF用レジスト(JSR(株)製、商品名:AR2772JN)をスピンコートし、ホットプレート上で110℃で90秒間加熱することにより、レジスト膜(C層)(120nm)を形成した後、(株)ニコン製NSR-S307Eスキャナー(波長:193nm、NA:0.85、σ:0.85/0.93)を用い、下記現像後にフォトレジストのライン幅およびライン間の幅が0.065μmとなるように、すなわち0.065μmのラインアンドスペース(L/S)=1/1のデンスラインが形成されるように設定されたマスクを通して露光を行った。
露光後、露光後加熱(110℃1分間)を行い、クーリングプレート上で室温まで冷却し、2.38%アルカリ水溶液を用いて60秒間現像し、リンス処理をし、レジストパターンを形成した。
同様の手順にて、調製例2~34及び比較調製例1~2で得られた各塗布液を用いて、レジストパターンをそれぞれ形成した。
調製例1~34を用いた実験結果を、それぞれ実施例1~34と、比較調製例1~2を用いた実験結果を、それぞれ比較例1~2とした。
得られたフォトレジストパターンについて、パターン断面観察によるパターン形状を確認することにより評価し、パターン倒れ(著しいパターン剥がれやアンダーカット、ライン底部の太り(フッティング))が発生していないものを「良好」、パターン倒れが発生しているものを「不良」と評価した。得られた結果を表3に示す。
なお、以降の説明において、使用したレジスト下層膜形成用組成物の例番号を、当該組成物を用いて実施した各種評価の例番号としても扱うものとする。
【0257】
[5]実施例1~34、比較例1~2:FT-IRによるシロキサン結合強度比の評価
シリコンウエハー上に、調製例1で得られた塗布液をスピンコートし、ホットプレート上で215℃で1分間加熱することにより、シリコン含有レジスト下層膜(B層)を形成した。形成したB層上に、同様の工程でB層をさらに2回積層し、3回積層されたB層(80nm膜厚)を得た。
同様の手順にて、調製例2~34及び比較調製例1~2で得られた各塗布液を用いて、シリコン含有レジスト下層膜をそれぞれ形成した。
得られた各シリコン含有レジスト下層膜について、フーリエ変換赤外分光法(FT/IR-6600(日本分光(株)製))を用い、波数1000~1250cm-1に観察されるシロキサン結合のピーク強度を比較した。ピーク強度は、比較例2のシリコン含有レジスト下層膜の強度を100として規格化した値を用いて比較した。比較例2に対する結合強度比が比較的高い(例えば90以上など)場合、溶解性が低下する傾向がある。得られた結果を表3に示す。
【0258】
[6]実施例1~34、比較例1~2:SC-1薬液(アンモニア/過酸化水素水溶液)による除去性評価
シリコンウエハー上に、調製例1で得られた塗布液をスピンコートし、ホットプレート上で215℃で1分間加熱することにより、シリコン含有レジスト下層膜(B層)(20nm)を形成した。
同様の手順にて、調製例2~34及び比較調製例1~2で得られた各塗布液を用いて、シリコン含有レジスト下層膜をそれぞれ形成した。
得られた各シリコン含有レジスト下層膜が形成されたシリコンウエハーを、液温60℃に調整したSC-1薬液(28%アンモニア水/33%過酸化水素水/水=1/1/10(v/v/v))に180秒間または300秒間浸漬し、次いで水で60秒間リンスした後、乾燥させた。そして、SC-1薬液への300秒間の浸漬後におけるシリコン含有レジスト下層膜の厚さを測定し、膜厚の変化率(%)を算出した。浸漬前のシリコン含有レジスト下層膜の膜厚に対して浸漬後の膜厚の変化率が90%以上のものを「良好」、90%未満のものを「不良」と評価した。また、300秒間の浸漬において「良好」と評価されたもののうち、180秒間の浸漬後におけるシリコン含有レジスト下層膜の膜厚の変化率が90%以上のものを「非常に良好」と評価した。得られた結果を表3に示す。
【0259】
[7]実施例1~34、比較例1~2:ドライエッチング後の残渣評価
シリコンウエハー上に、上記有機下層膜形成用組成物を、スピナーを用いてシリコンウエハー上に塗布し、ホットプレート上で240℃で60秒間加熱することで、有機下層膜(A層)(膜厚70nm)を形成した。
その上に、調製例1で得られた塗布液をスピンコートし、ホットプレート上で215℃で1分間加熱することにより、シリコン含有レジスト下層膜(B層)(20nm)を形成した。
ラムリサーチ(株)製ドライエッチャー(LAM-2300)を用い、CF4系ガス条件下、ドライエッチングを20秒間実施し、得られた膜付きシリコンウエハーからシリコン含有レジスト下層膜(B層)を除去した。その後、O/COS系ガス条件下、ドライエッチングを5秒間実施し、有機下層膜(A層)を除去した。
同様の手順にて、調製例2~34並びに比較調製例1~2で得られた各塗布液を用いて、シリコン含有レジスト下層膜を形成し、シリコン含有レジスト下層膜(B層)および有機下層膜(A層)を除去した。
有機下層膜(A層)およびシリコン含有レジスト下層膜(B層)が除去されたシリコンシリコンウエハー表面を走査型プローブ顕微鏡((株)日立ハイテク製、AFM5000)を用いて観察した。幅0.05μm以上、高さ2nm以上の凸型のエッチング残渣が確認された場合は「不良」、確認されない場合は「良好」と評価した。得られた結果を表3に示す。
【0260】
【表3】