(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-27
(45)【発行日】2024-06-04
(54)【発明の名称】複合成型体の製造方法
(51)【国際特許分類】
B29C 65/50 20060101AFI20240528BHJP
B32B 27/00 20060101ALI20240528BHJP
B32B 27/30 20060101ALI20240528BHJP
B32B 37/12 20060101ALI20240528BHJP
C09J 7/30 20180101ALI20240528BHJP
C09J 133/00 20060101ALI20240528BHJP
【FI】
B29C65/50
B32B27/00 L
B32B27/00 E
B32B27/30 A
B32B37/12
C09J7/30
C09J133/00
(21)【出願番号】P 2019224519
(22)【出願日】2019-12-12
【審査請求日】2022-10-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000224101
【氏名又は名称】藤森工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【氏名又は名称】大浪 一徳
(74)【代理人】
【識別番号】100155066
【氏名又は名称】貞廣 知行
(72)【発明者】
【氏名】藤田 志朗
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 孝之
(72)【発明者】
【氏名】五町 勝義
【審査官】▲高▼村 憲司
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-051687(JP,A)
【文献】特開2003-127232(JP,A)
【文献】国際公開第2019/070063(WO,A1)
【文献】特開2016-012010(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 65/00 - 65/82
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
帯状の第1加飾フィルム原反と、前記第1加飾フィルム原反に貼合された帯状のセパレーターとを有する第1積層体から前記セパレーターを剥離し、前記第1加飾フィルム原反とする工程と、
前記第1加飾フィルム原反を枚葉加工し加飾フィルムを得る工程と、
前記加飾フィルムを成型体の表面に貼合する工程と、を有し、
前記第1加飾フィルム原反は、帯状の加飾層と、前記加飾層の前記セパレーター側の面に設けられた接着層とを有し、
前記接着層は、アクリル系モノマーとアクリル系オリゴマーとのいずれか一方または両方を予め重合させた重合体と、前記重合体とは異なるアクリル系ポリマーとを有する樹脂組成物を形成材料とし、
前記貼合する工程は、前記樹脂組成物の軟化温度以上の温度に加熱しながら前記加飾フィルムを前記成型体に押圧
し、前記加飾フィルムを変形させながら前記成型体に貼合する工程である複合成型体の製造方法。
【請求項2】
前記接着層は、前記アクリル系ポリマーと前記重合体とを有し、かつ前記アクリル系モノマーとアクリル系オリゴマーとのいずれか一方または両方と、重合開始剤とをさらに有し、
前記貼合する工程は、前記接着層をさらに硬化させる工程を含む請求項1に記載の複合成型体の製造方法。
【請求項3】
帯状の第2加飾フィルム原反と、前記第2加飾フィルム原反に貼合された帯状のセパレーターとを有する第2積層体を用い、
前記第2加飾フィルム原反は、常温で両面に粘着性を有する接着性樹脂層と、前記加飾層と、を有し、
前記接着性樹脂層は、少なくともアクリル系ポリマーと、前記アクリル系モノマーと前記アクリル系オリゴマーとのいずれか一方または両方と、重合開始剤とを有し、
前記第1加飾フィルム原反とする工程に先立って、前記アクリル系モノマーと前記アクリル系オリゴマーとのいずれか一方または両方を重合させ、前記第2加飾フィルム原反から前記第1加飾フィルム原反を得る工程を有する請求項1または2に記載の複合成型体の製造方法。
【請求項4】
前記重合開始剤が、熱重合開始剤である請求項2または3に記載の複合成型体の製造方法。
【請求項5】
前記熱重合開始剤が、過酸化物である請求項4に記載の複合成型体の製造方法。
【請求項6】
前記重合開始剤が、光重合開始剤である請求項2または3に記載の複合成型体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複合成型体の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、樹脂製の成型体を装飾するため、色や模様が付された加飾フィルムを成型体の表面に積層した複合成型体が検討されている(例えば、特許文献1参照)。このような成型体を製造する場合、例えば、成型体の表面に、粘着層を介して加飾フィルムを貼合する方法が採用されることがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述のような方法で複合成型体を製造する際、例えば、粘着層を有する帯状の加飾フィルム原反を連続的に搬送し、下流側で加飾フィルム原反を加工して、得られた加飾フィルムを成型体に貼合する工程を採用することがある。具体的には、加飾フィルム原反を搬送経路内で枚葉加工して加飾フィルムとし、得られた加飾フィルムを成型体に貼合することがある。得られた加飾フィルムを成型体に貼合する間、加飾フィルム原反は、搬送が停止され待機状態となる。
【0005】
このような待機状態において、加飾フィルム原反は、自重で垂れ下がり製造装置に付着することがあった。加飾フィルム原反が製造装置に付着すると、待機状態から再度加飾フィルム原反の搬送を再開する際、搬送することができず生産性が低下する原因となっていた。
【0006】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであって、高い生産性で複合成型体を製造可能とする複合成型体の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するため、本発明の一態様は、帯状の第1加飾フィルム原反と、前記第1加飾フィルム原反に貼合された帯状のセパレーターとを有する第1積層体から前記セパレーターを剥離し、前記第1加飾フィルム原反とする工程と、前記第1加飾フィルム原反を枚葉加工し加飾フィルムを得る工程と、前記加飾フィルムを成型体の表面に貼合する工程と、を有し、前記第1加飾フィルム原反は、帯状の加飾層と、前記加飾層の前記セパレーター側の面に設けられた接着層とを有し、前記接着層は、アクリル系モノマーとアクリル系オリゴマーとのいずれか一方または両方を予め重合させた重合体と、前記重合体とは異なるアクリル系ポリマーとを有する樹脂組成物を形成材料とし、前記貼合する工程は、前記樹脂組成物の軟化温度以上の温度に加熱しながら前記加飾フィルムを前記成型体に押圧する工程である複合成型体の製造方法を提供する。
【0008】
また、本発明の一態様は、前記接着層は、前記アクリル系ポリマーと前記重合体とを有し、かつ前記アクリル系モノマーとアクリル系オリゴマーとのいずれか一方または両方と、重合開始剤とをさらに有し、前記貼合する工程は、前記接着層をさらに硬化させる工程を含む製造方法としてもよい。
【0009】
また、本発明の一態様は、帯状の第2加飾フィルム原反と、前記第2加飾フィルム原反に貼合された帯状のセパレーターとを有する第2積層体を用い、前記第2加飾フィルム原反は、常温で両面に粘着性を有する接着性樹脂層と、前記加飾層と、を有し、前記接着性樹脂層は、少なくともアクリル系ポリマーと、前記アクリル系モノマーと前記アクリル系オリゴマーとのいずれか一方または両方と、重合開始剤とを有し、前記第1加飾フィルム原反とする工程に先立って、前記アクリル系モノマーと前記アクリル系オリゴマーとのいずれか一方または両方を重合させ、前記第2加飾フィルム原反から前記第1加飾フィルム原反を得る工程を有する製造方法としてもよい。
【0010】
また、本発明の一態様は、前記重合開始剤が、熱重合開始剤である製造方法としてもよい。
【0011】
また、本発明の一態様は、前記熱重合開始剤が、過酸化物である製造方法としてもよい。
【0012】
また、本発明の一態様は、前記重合開始剤が、光重合開始剤である製造方法としてもよい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、高い生産性で複合成型体を製造可能とする複合成型体の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本実施形態の複合成型体の製造方法で用いる第1加飾フィルム原反1Aを示す概略断面図である。
【
図2】本実施形態の複合成型体の製造方法で用いる第2加飾フィルム原反2Aを示す概略断面図である。
【
図3】本実施形態の複合成型体の製造方法を示す工程図である。
【
図4】本実施形態の複合成型体の製造方法を示す工程図である。
【
図5】本実施形態の複合成型体の製造方法を示す工程図である。
【
図6】本実施形態の複合成型体の製造方法を示す工程図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、
図1~
図6を参照しながら、本実施形態に係る複合成型体の製造方法について説明する。なお、以下の全ての図面においては、図面を見やすくするため、各構成要素の寸法や比率などは適宜異ならせてある。
【0016】
<加飾フィルム>
図1は、本実施形態の複合成型体の製造方法で用いる第1加飾フィルム原反1Aを示す概略断面図である。
【0017】
第1加飾フィルム原反1Aは、帯状の加飾層10Aと、加飾層10Aの一面10aに設けられた接着層20Aとを有する。第1加飾フィルム原反1Aの接着層20A側の面20aには、帯状のセパレーター30が設けられている。第1加飾フィルム原反1Aとセパレーター30とは、合わせて積層体100を構成している。積層体100は、本発明における「第1積層体」に該当する。
【0018】
第1加飾フィルム原反1Aからは、枚葉加工することで複数枚の加飾フィルムが得られる。
【0019】
加飾層10Aは、例えば、熱可塑性樹脂を形成材料とするシート状の基材に、色および模様のいずれか一方または両方が付されたものを用いることができる。また、加飾層10Aにおいて、色や模様は必須ではなく、無色で且つ模様の無い透明シートを加飾層として用いてもよい。
【0020】
加飾層10Aの形成材料である熱可塑性樹脂としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンナフタレート(PEN)等のポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリ塩化ビニル、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン樹脂(ABS樹脂)などを挙げることができる。
【0021】
加飾層10Aの色や模様は、基材を直接染色または成型することで設けられていてもよく、基材の表面に、色や模様を付した層を設けることとしてもよい。
【0022】
接着層20Aは、接着層20Aの厚さ方向の全体にわたり、少なくともアクリル系ポリマーと、アクリル系モノマーとアクリル系オリゴマーとのいずれか一方または両方を予め重合させた重合体と、を有する樹脂組成物からなる。また、接着層20Aを構成する樹脂組成物は、アクリル系モノマーとアクリル系オリゴマーとのいずれか一方または両方と、重合開始剤とを有してもよい。
接着層20Aの構成の詳細については、後述する。
【0023】
接着層20Aは、同種または異種の接着性樹脂組成物からなる2層以上から構成されてもよい。接着層20Aは、光透過性を有していてもよく、光透過性を有していなくてもよい。
【0024】
セパレーター30は、接着層20Aと接する側の面30aが剥離面となっている。セパレーター30の構成としては、樹脂フィルムの片面または両面に剥離剤層を設けた構成や、樹脂フィルムの樹脂内に剥離剤を含む構成など、通常知られた構成を採用することができる。樹脂フィルムの代わりに、紙、合成紙、金属箔などの各種シートを用いることもできる。セパレーター30が透明性を有すると、セパレーター30を剥離しない積層体100のまま、接着層20Aの光学的な検査を行うことができるため好ましい。
【0025】
本実施形態の複合成型体の製造方法において、上述した第1加飾フィルム原反1Aは、
図2に示す第2加飾フィルム原反2Aに熱エネルギーまたは光エネルギーを供給することで得られる。
【0026】
第2加飾フィルム原反2Aは、帯状の加飾層10Aと、加飾層10Aの一面10aに設けられた帯状の接着性樹脂層25Aとを有する。第2加飾フィルム原反2Aの接着性樹脂層25A側の面25aには、帯状のセパレーター30が設けられている。第2加飾フィルム原反2Aとセパレーター30とは、合わせて積層体200を構成している。積層体200は、本発明における「第2積層体」に該当する。
【0027】
接着性樹脂層25Aは、厚さ方向の全体にわたり、接着性樹脂組成物からなる。接着性樹脂層25Aは、単層であってもよく、同種または異種の接着性樹脂組成物からなる2層以上から構成されてもよい。接着性樹脂層25Aが単層の接着性樹脂層からなる場合、層構成を単純化してコストを低減できるので、好ましい。接着性樹脂組成物は、アクリル系の接着性樹脂(ポリマー)を含む。接着性樹脂組成物の光学特性は限定されないが、透明性を有してもよく、半透明や不透明でもよい。
【0028】
((A)アクリル系ポリマー)
(A)アクリル系ポリマーを構成するモノマーは、エステル基(-COO-)を有するアクリル系モノマー、カルボキシ基(-COOH)を有するアクリル系モノマー、アミド基(-CONR2,Rは水素原子またはアルキル基等の置換基)を有するアクリル系モノマー、ニトリル基(-CN)を有するアクリル系モノマー、オレフィン類、スチレン、ビニルエステル類、ビニルエーテル類、ビニルシラン等の非アクリル系モノマーが挙げられる。
【0029】
(A)アクリル系ポリマーは、2種以上のモノマーからなる共重合体が好ましい。光重合前における(A)アクリル系ポリマーの数平均分子量は、例えば5~100万程度が好ましい。粘度は、例えば1000~10000mPa・s程度が挙げられる。
【0030】
エステル基を有するアクリル系モノマーとしては、アルキル(メタ)アクリレート、ヒドロキシ基(水酸基)を有する(メタ)アクリレート、アルコキシ基またはポリエーテル基を有する(メタ)アクリレート、アミノ基または置換アミノ基を有する(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0031】
なお、本明細書において、「(メタ)アクリレート」とは、アクリレート及びメタクリレートの総称である。
【0032】
カルボキシ基を有するアクリル系モノマーとしては、アクリル酸、メタクリル酸、カルボキシ基を有する(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0033】
アミド基を有するアクリル系モノマーとしては、アクリルアミド、メタクリルアミド等が挙げられる。
【0034】
ニトリル基を有するアクリル系モノマーとしては、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等が挙げられる。
【0035】
(A)アクリル系ポリマーは、構成モノマーの50質量%以上が、アクリル系モノマーからなることが好ましい。特に、構成モノマーの50質量%以上が、一般式CH2=CR1-COOR2(式中、R1は水素またはメチル基、R2は炭素数1~14のアルキル基を示す。)で表わされるアルキル(メタ)アクリレートの1種または2種以上からなることが好ましい。
【0036】
アルキル(メタ)アクリレートの具体例としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート、n-ペンチル(メタ)アクリレート、イソペンチル(メタ)アクリレート、n-ヘキシル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n-オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレートが挙げられる。特に、アルキル基R2の炭素数が4~12のアルキル(メタ)アクリレートを必須として、例えば50~100モル%用いることが好ましい。
【0037】
また、水酸基を含有する(メタ)アクリレートとしては、例えば、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、6-ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、8-ヒドロキシオクタン(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、シクロヘキサンジメタノールモノ(メタ)アクリレート等の1種または2種以上が挙げられる。
【0038】
((B)アクリル系モノマーとアクリル系オリゴマーとのいずれか一方または両方)
(B)アクリル系モノマーとアクリル系オリゴマーとのいずれか一方または両方のうち、アクリル系モノマーとしては、(A)アクリル系ポリマーを構成するモノマーと同様なモノマーを挙げることができる。例えば、アルキル(メタ)アクリレート、水酸基を含有する(メタ)アクリレート、アクリルアミド等の1種または2種以上が挙げられる。1分子中の(メタ)アクリロイル基等の重合性官能基の数は、ひとつでも2以上でもよい。
【0039】
以下、「(B)アクリル系モノマーとアクリル系オリゴマーとのいずれか一方または両方」を、「(B)成分」と称することがある。
【0040】
アクリル系モノマーとしては、水酸基を含有するアクリル系モノマーが好ましい。また、アクリル系モノマーとしては、硬化性ウレタンアクリレートも好ましい。これらは、それぞれ単独で用いてもよく、併用してもよい。
【0041】
特に、(B)成分の少なくとも一部として、水酸基を有する(メタ)アクリレートのモノマーを含有する場合、極性を有する水酸基が接着性樹脂層の全体に分散しやすくなる。これにより、湿度の高い(さらに高温の)環境でも、水分が凝集しにくく、接着性樹脂層の白濁が抑制されるため、好ましい。水酸基を有する(メタ)アクリレートにおいて、1分子中の水酸基の数は、ひとつでも2以上でもよい。
【0042】
また、(B)成分の少なくとも一部として、硬化性ウレタンアクリレートを用いることができる。
【0043】
ウレタンアクリレートは、同一分子中にウレタン結合(-NH-COO-)及び(メタ)アクリロイルオキシ基(X=HまたはCH3として、CH2=CX-COO-)を有する化合物である。
【0044】
硬化性ウレタンアクリレートは、ウレタンアクリレートのうち、重合性官能基である(メタ)アクリロイルオキシ基により硬化性を有する化合物である。1分子中のウレタン結合の数は、ひとつでも2以上でもよい。また、1分子中の(メタ)アクリロイルオキシ基の数は、ひとつでも2以上でもよい。
【0045】
ウレタンアクリレートとしては、例えば、水酸基を有する(メタ)アクリレート化合物とイソシアネート化合物とを反応させて得られる化合物、ポリオール化合物とポリイソシアネート化合物とを反応させて得られるウレタンプレポリマーに、水酸基を有する(メタ)アクリレート化合物を反応させて得られる化合物等が挙げられる。ポリオール化合物としては、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール等が挙げられる。
【0046】
(B)成分は、(C)重合開始剤による硬化によりポリマーの一部になり、かつポリマーよりも粘度が低い液体(流動体)であることが好ましい。アクリル系モノマー及びアクリル系オリゴマーを併用することも可能である。アクリル系オリゴマーとして、ウレタンアクリレートオリゴマー等のアクリレートオリゴマーが挙げられる。(B)成分の有する重合性官能基の数は、例えば1~10であり、2~5であってもよい。
【0047】
(B)成分は、平均分子量が大きいほど、(B)成分を重合させて得られる重合体の分子量が上がりやすく、接着層を十分に硬化させやすい。また、(B)成分の平均分子量が大きいと、接着性樹脂層を硬化させて得られる接着層を硬くするために、(B)成分の使用量を少なくすることができる。
そのため、(B)成分は、アクリル系オリゴマーを含むことが好ましい。
【0048】
一方で、(B)成分は、平均分子量が大きいほど重合時の反応性が低くなる。これに対し、(B)成分が重合性官能基を複数有すると、重合しやすく、接着性樹脂層が硬化しやすい。そのため、得られる接着層が変形しにくくなり、剥離しにくくなる。
【0049】
(B)成分が有する重合性官能基が多すぎると、得られる接着層が固くなりすぎて反応時の収縮で逆に剥がれてしまうことがある。
【0050】
そのため、(B)成分が有する重合性官能基の量は、重合して得られる接着層の固さと、反応時の収縮性とを考慮して選択すると好ましい。
【0051】
成膜後の厚みの均一性を保ちつつ、ロール状に巻き取ることができるようにする場合、接着性樹脂組成物は、接着性樹脂組成物の全体に対して、(B)成分を1~40質量%含むことが好ましい。
【0052】
接着性樹脂組成物は、(A)アクリル系ポリマー100質量部に対して、(B)成分を5~50質量部含有することが好ましい。
【0053】
((C)重合開始剤)
本実施形態においては、(C)重合開始剤は、エネルギーを供給することにより自身が分解し、重合を開始させる活性種を生じる材料を指す。別表現によれば、(C)重合開始剤は、(C)重合開始剤の活性化エネルギーを供給することで、重合を開始させる活性種を生じる材料を指す。(C)重合開始剤を分解させる因子は、熱エネルギーであってもよく、光エネルギーであってもよく、電子線エネルギーであってもよい。熱エネルギーにより分解する(C)重合開始剤は、一般に熱重合開始剤と呼ばれることが多い。光エネルギーにより分解する(C)重合開始剤は、一般に光重合開始剤と呼ばれることが多い。
【0054】
(C)重合開始剤として熱反応開始剤を用いると、例えば、一定温度に保たれている加熱空間に接着性樹脂層25Aを通過させて加熱することで、接着性樹脂層25A全体に均一に熱を伝えやすい。これにより、接着性樹脂層25Aにおける(B)成分の重合反応を、均一に開始させることができる。
【0055】
一方、(C)重合開始剤として光重合開始剤を用いる場合、短時間の光照射でも重合を開始させることができる。そのため、積層体200の搬送中に、搬送経路内で短時間光照射することでも、好適に接着性樹脂層25Aにおける(B)成分の重合反応を開始させるやすい。
【0056】
(C)重合開始剤としては、重合反応の制御が容易である熱重合開始剤がより好ましい。また、熱重合開始剤は、用いる加飾層10Aやセパレーター30の色によらず、反応を開始可能である点からも好ましい。
さらには、接着性樹脂層25Aは、(B)成分として分子量が高いアクリル系オリゴマーを用い、(C)重合性開始剤として熱反応開始剤を用いることが好ましい。
【0057】
熱重合開始剤としては、分解して、モノマーの重合と樹脂の硬化を開始するラジカル開始剤が挙げられる。ラジカル開始剤としては、低温で作用するレドックス開始剤や有機金属化合物なども知られているが、接着性樹脂層の取り扱い性の点では、より高温で作用する、(有機)過酸化物系、アゾ系等が好ましい。
【0058】
熱重合開始剤の半減期が1分間となる温度(以下、「1分間半減期温度」と称する場合がある。)は、接着性樹脂組成物が含有する有機溶剤の沸点よりも高いことが好ましい。このような(C)重合開始剤を用いると、後述する接着性樹脂層の製造過程において、特に、溶媒の乾燥工程において反応しにくいため好ましい。
【0059】
(有機)過酸化物系の熱重合開始剤の具体例としては、過酸化ベンゾイル、過酸化アセチル、過酸化デカノイル、過酸化ラウロイル等のジアシルペルオキシド、ジクミルペルオキシド、ジ-t-ブチルペルオキシド等のジアルキルペルオキシド、t-ブチルペルオキシベンゾエート、t-ブチルペルオキシ-2-エチルヘキサノエート等のアルキルペルオキシエステル、クメンヒドロペルオキシド、t-ブチルヒドロペルオキシド等のヒドロペルオキシド等が挙げられる。中でも、上記の1分間半減期温度が100℃以上である有機過酸化物が好ましく、1分間半減期温度が200℃以下である有機過酸化物がより好ましい。
【0060】
このような有機過酸化物としては、t-ヘキシルペルオキシネオデカノエート、t-ブチルペルオキシネオデカノエート、t-ブチルペルオキシネオヘプタノエート、t-ヘキシルペルオキシピバレート、t-ブチルペルオキシピバレート、ジラウロイルペルオキシド、1,1,3,3-テトラメチルブチルペルオキシ-2-エチルヘキサノエート、ジスクシニックアシッドペルオキシド、t-ヘキシルペルオキシ-2-エチルヘキサノエート、t-ブチルペルオキシ-2-エチルヘキサノエート、1,1-ビス(t-ヘキシルペルオキシ)シクロヘキサン、1,1-ビス(t-ブチルペルオキシ)シクロヘキサン、t-ヘキシルペルオキシイソプロピルモノカーボネート、t-ブチルペルオキシマレイン酸、t-ブチルペルオキシ3,5,5-トリメチルヘキサノエート、t-ブチルペルオキシイソプロピルモノカーボネート、t-ブチルペルオキシ2-エチルヘキシルモノカーボネート、t-ブチルペルオキシラウレート、t-ヘキシルペルオキシベンゾエート、t-ブチルペルオキシアセテート、t-ブチルペルオキシベンゾエート、n-ブチル4,4-ビス(t-ブチルペルオキシ)バレレート、ジクミルペルオキシド、ジ-t-ヘキシルペルオキシド、ジ-t-ブチルペルオキシド、p-メンタンヒドロペルオキシド等が挙げられる。
【0061】
アゾ系の熱重合開始剤としては、2,2’-アゾビス(イソブチロニトリル)、2,2’-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)、2,2’-アゾビス(4-シアノバレロニトリル)、2,2’-アゾビス(4-メトキシ-2,4-ジメチルバレロニトリル)、2,2’-アゾビス(メチルイソブチレート)、1,1’-アゾビス(1-シクロヘキサンカルボニトリル)等が挙げられる。
【0062】
また、重合開始剤は反応性の制御のために、かご状の分子を有する分子カプセルの中に封入された熱重合開始剤を用いることができる。かご状分子はアントラセン構造であることが好ましい。
【0063】
光重合開始剤は、特に限定されないが、例えば、アセトフェノン系光重合開始剤、ベンゾイン系光重合開始剤、ベンゾフェノン系光重合開始剤、チオキサントン系光重合開始剤、チオキサントン系光重合開始剤等が挙げられる。
【0064】
アセトフェノン系光重合開始剤としては、アセトフェノン、p-(tert-ブチル)1’,1’,1’-トリクロロアセトフェノン、クロロアセトフェノン、2’,2’-ジエトキシアセトフェノン、ヒドロキシルアセトフェノン、2,2-ジメトキシ-2’-フェニルアセトフェノン、2-アミノアセトフェノン、ジアルキルアミノアセトフェノン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニル-プロパン-1-オン等が挙げられる。
【0065】
ベンゾイン系光重合開始剤としては、ベンジル、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニル-2-メチルプロパン-1-オン、1-(4-イソプロピルフェニル)-2-ヒドロキシ-2-メチルプロパン-1-オン、ベンジルジメチルケタール、2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オン等が挙げられる。
【0066】
ベンゾフェノン系光重合開始剤としては、ベンゾフェノン、ベンゾイル安息香酸、ベンゾイル安息香酸メチル、メチル-o-ベンゾイルベンゾエート、4-フェニルベンゾフェノン、ヒドロキシルベンゾフェノン、ヒドロキシルプロピルベンゾフェノン、アクリルベンゾフェノン、4,4’-ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン等が挙げられる。
【0067】
チオキサントン系光重合開始剤としては、チオキサントン、2-クロロチオキサントン、2-メチルチオキサントン、ジエチルチオキサントン、ジメチルチオキサントン等が挙げられる。
【0068】
その他の光重合開始剤としては、α-アシルオキシムエステル、ベンジル-(o-エトキシカルボニル)-α-モノオキシム、アシルホスフィンオキサイド、フェニルグリオキシル酸エステル、3-ケトクマリン、2-エチルアンスラキノン、カンファーキノン、テトラメチルチウラムスルフィド、アゾビスイソブチロニトリル、ベンゾイルペルオキシド、ジアルキルペルオキシド、tert-ブチルペルオキシピバレート等が挙げられる。
【0069】
なお、「t-ブチルペルオキシピバレート」については、熱重合開始剤としても光重合開始剤としても使用可能である。
【0070】
(B)成分100質量部に対して、(C)重合開始剤の添加量は0.001~1質量部であることが好ましく、0.001~0.5質量部であることがより好ましい。
【0071】
接着性樹脂層25Aは、重合遅延剤を含むことができる。重合遅延剤の使用により、重合度の制御が容易になる。また、基材の変形に対する追従性を向上させる観点から好ましい。なお、重合遅延剤は、過度に使用すると成形加工時に反応が終了せずに、剥がれる可能性が生じる。そのため、重合遅延剤を用いた場合には、成形加工時に重合反応が終了するための十分な反応時間を確保できるよう、加工時間を調整するとよい。
【0072】
重合遅延剤としては、例えば、ヒドロキシアニソール類、ジアルコキシフェノール類、カテコール類、ヒドロキノン類、ベンゾキノン類が挙げられ、3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシアニソールなどのヒドロキシアニソール類が特に好ましい。重合遅延剤は1種単独また2種以上を組み合わせて用いてもよい。重合遅延剤の含有量は、重合開始剤と重合遅延剤とのモル比(重合開始剤:重合遅延剤)で、通常1:0.001~1:1、好ましくは1:0.01~1:1である。
【0073】
その他、重合遅延剤としては、p-メトキシフェノール、ピロガロール、レソルシノール、フェナントラキノン、2,5-トルキノン、ベンジルアミノフェノール、2,4,6-トリメチルフェノール、ブチルヒドロキシトルエン(BHT)等のフェノール類;
o-ジニトロベンゼン、p-ジニトロベンゼン、m-ジニトロベンゼンなどのニトロベンゼン類;
N-フェニル-1-ナフチルアミン、N-フェニル-2-ナフチルアミン、クペロン、フェノチアジン、タンニン酸、p-ニトロソアミン、クロラニル、アニリン、ヒンダードアニリン、塩化鉄(III)、塩化銅(II)、トリエチルアミンなどを挙げることができる。
【0074】
接着性樹脂層25Aは、(A)~(C)以外の任意成分をさらに含有することができる。
【0075】
例えば、接着性樹脂層25Aは、任意成分として、(D)架橋剤(硬化剤)を含有することができる。(D)架橋剤(硬化剤)としては、イソシアネート系架橋剤、エポキシ系架橋剤、金属キレート化合物等を挙げることができる。
【0076】
(D)架橋剤(硬化剤)は、(A)アクリル系ポリマー、または(B)成分を架橋させるため、好適に用いられる。この場合、必要に応じて、(A)アクリル系ポリマーまたは(B)成分の少なくとも一部に、(D)架橋剤と反応する官能基を有するポリマーまたはモノマーが使用される。
【0077】
(D)架橋剤と反応する官能基は、例えばイソシアネート系架橋剤の場合、水酸基やカルボキシ基等である。
【0078】
(D)架橋剤の添加量は、ポリマーの官能基に対して例えば1.5当量以下が好ましい。
【0079】
(D)架橋剤(硬化剤)による(A)アクリル系ポリマーの硬化は、被着体に貼合する前の接着性樹脂層25Aを製造する段階で、エージングにより進行させてもよい。
【0080】
その他の任意成分としては、例えば、酸化防止剤、充填剤、可塑剤等が挙げられる。接着性樹脂層の製造に用いられる接着性樹脂組成物は、水や有機溶剤等の溶剤を含んでもよく、無溶剤のシロップ状組成物でもよい。基材上にITO等の酸化物導電膜や卑金属等、腐食の可能性がある材料が存在し、これに接着性樹脂層25Aが接触する場合、接着性樹脂組成物の材料としては酸等の腐食性成分を削減し、例えば酸価の低いポリマーを使用することが好ましい。
【0081】
また、(B)成分としてアクリル系オリゴマーを用いる場合、アクリル系ポリマーもアクリル系オリゴマーも分子量が大きく、塗料としての相溶性が悪くなることがしばしば発生する。そのため、接着性樹脂層25Aは、任意成分として相溶剤を添加することが望ましい。
【0082】
相溶剤は、熱反応時にアクリル系オリゴマーと一緒に硬化可能な、反応性基を有する材料が好ましい。
【0083】
<複合成型体の製造方法>
図3~6は、本実施形態の複合成型体の製造方法を示す工程図である。以下の製造方法においては、接着性樹脂層25Aが有する(C)重合性開始剤が、熱重合性開始剤であることとして説明する。
【0084】
まず、
図3に示すように、第2加飾フィルム原反2Aに熱エネルギーを供給し、接着性樹脂層25Aに含まれる(B)成分(アクリル系モノマーとアクリル系オリゴマーとのいずれか一方または両方を)の少なくとも一部を予め重合させ、硬化させる。接着性樹脂層25Aに含まれる(B)成分は、全て重合させてもよい。これにより、接着層20Aを有する第1加飾フィルム原反1Aが得られる。
【0085】
図4~6には、本実施形態の複合成型体の製造方法で用いる製造装置500の模式図を示す。
図4~6の説明においては、水平面内をx軸方向、鉛直方向をz軸方向とする直交座標系を使用して、部材の位置、動作を説明することがある。
【0086】
図4に示すように、製造装置500では、ロール状に巻き取られた積層体100が、供給ロール501に取り付けられている。供給ロール501は、ロール502と協働し、積層体100を積層体100の長手方向に順次供給する。
【0087】
積層体100は、ロール503,504の位置でセパレーター30が剥離される。製造装置500は、セパレーター30の剥離を補助するための公知の冶具を有していてもよい。剥離されたセパレーター30は、巻き取りロール505に巻き取られる。
【0088】
第1加飾フィルム原反1Aの先端は、上下方向(z軸方向)に並んで配置された冶具510,511の間を通り、引取部520に保持される。引取部520は、x軸方向に冶具510,511に近づいたり、冶具510,511から遠ざかったりする往復移動が可能に構成されている。引取部520は、第1加飾フィルム原反1Aの先端を保持した状態で+x方向に移動することで、第1加飾フィルム原反1Aを+x方向にけん引する。
【0089】
次いで、
図5に示すように、製造装置500は、供給ロール501による積層体100の供給を停止する。また、製造装置500は、第1加飾フィルム原反1Aを枚葉加工し、加飾フィルム1を得る。本実施形態においては、把持部530が第1加飾フィルム原反1Aの一部を把持した状態で、切断部540が第1加飾フィルム原反1Aを切断することで、加飾フィルム1を得る。加飾フィルム1は、加飾層10と接着層20とを有する。
【0090】
切断部540としては、レーザー加工装置、切断刃など公知の構成を採用することができる。
【0091】
ここで、枚葉加工がされた後の第1加飾フィルム原反1Aは、先端が自重で垂れ下がり、第1加飾フィルム原反1Aの下方に位置する冶具511に接する(図中、符号αで示す)。第1加飾フィルム原反1Aの冶具511に接する面は、接着層20Aが露出している。本実施形態においては、
図3に示す工程によって接着性樹脂層25Aに含まれる(B)成分が重合し、あらかじめ硬化している。そのため、接着性樹脂層25Aと比べると、接着層20A表面の粘着性が低下しており、冶具511に接触しても容易に剥離することができる。
【0092】
前述の
図3に示す工程においては、
図5に示す工程において接着層20Aの冶具511への粘着を抑制可能となる程度に、(B)成分を予め重合させるとよい。
図3に示す工程における(B)成分の重合量は、接着層20Aの粘着力が冶具511に接触しても容易に剥離することができる程度となるように、予め予備実験を行って決定するとよい。
【0093】
次いで、
図6に示すように、加飾フィルム1を成型体Mの表面に貼合する。これにより、複合成型体M1が得られる。
【0094】
貼合の際には、接着層20を構成する樹脂組成物の軟化温度以上の温度に加熱しながら、加飾フィルム1を成型体Mに押圧する。押圧の方法は、プレス加工(熱プレス)のように機械的に加圧する方法であってもよく、真空成型のように気圧差を利用して加圧する方法であってもよい。図では、ステージ550に載置された成型体Mを不図示の加熱装置で加熱しながら、金型560を用いてプレス加工することとして示している。
【0095】
上述したように、接着層20は、
図3に示す工程によって接着性樹脂層25Aに含まれる(B)成分が重合し、あらかじめ硬化している。しかし、本工程においては、接着層20の軟化温度以上に加熱しながらプレス加工することで、加飾フィルム1と成型体Mとを好適に貼合することができる。
【0096】
複合成型体M1を製造した後には、再度
図4に示す工程に戻り、
図4~6に示す工程を繰り返す。その際、上述したように、冶具511に接触した接着層20Aは容易に剥離することができるため、作業の妨げにならず、好適に製造を続けることができる。
【0097】
以上のような構成の複合成型体の製造方法によれば、高い生産性で複合成型体を製造可能となる。
【0098】
なお、上述の実施形態においては、第2加飾フィルム原反2Aを予め加熱し接着性樹脂層25Aの少なくとも一部を予め硬化させた後に、製造装置500に取り付け、複合成型体M1の製造を行うこととしたが、これに限らない。第2加飾フィルム原反2Aが有する接着性樹脂層25Aの硬化反応は、製造装置500に取り付けた後であってもよい。
【0099】
具体的には、供給ロール501から切断部540までの搬送経路内に加熱装置を設け、積層体200の搬送中に、搬送経路内で加熱することで接着性樹脂層25Aを硬化させるとよい。
【0100】
また、上述の実施形態においては、(C)重合開始剤として熱重合開始剤を用いることとしたが、光重合開始剤を用いてもよい。光重合開始剤を用いる場合、接着性樹脂層を硬化させる際に熱を加える代わりに光を照射し、光重合開始剤を分解する光エネルギーを供給する。
【0101】
光重合開始剤を用いる場合、セパレーター30は、照射する波長の光に対して透過性を有することが好ましい。
【0102】
光重合開始剤は、熱重合開始剤と比べて反応速度が速く、接着性樹脂層の硬化反応を素早く完了させることができる。そのため、上述のように、製造装置500において接着性樹脂層25Aを硬化させる場合に好適である。例えば、セパレーター30を剥離した後、露出した接着性樹脂層25Aに下方(-z方向)から光エネルギーを照射することで接着性樹脂層25Aを硬化させることができる。
【0103】
また、成型体Mへの貼合前に接着性樹脂層25Aを硬化させる際、発明の効果を損なわない範囲において、接着性樹脂層25Aに含まれる(B)成分の硬化反応(重合反応)を完了させず、一部を未反応のまま残すとよい。得られる接着層20Aは、(A)アクリル系ポリマーと、(B)成分の硬化物とを有し、かつ(B)成分と、(C)重合開始剤とをさらに有する組成物となる。
【0104】
得られる接着層は(B)成分が残存する。そのため、このような接着層を有する加飾フィルムを成型体Mへ貼合すると、貼合時の加熱により、接着層に含まれる(B)成分の重合反応が生じ、成型体Mの表面へ強固に接着される。これにより、得られる複合成型体M1からの加飾フィルム1の剥離を抑制することができる。
【0105】
図3に示す工程において、接着性樹脂層25Aに含まれる(B)成分をどの程度未反応のまま残すかについては、予め予備実験を行い設定するとよい。その際には、例えば、硬化後に得られる接着層20Aの冶具511に対する付着を抑制できる程度、または接着層20Aが冶具511に付着したとしても、引取部520によって容易にけん引可能な程度に接着性樹脂層25Aの硬化反応を制御するとよい。
【0106】
以上、添付図面を参照しながら本発明に係る好適な実施の形態例について説明したが、本発明は係る例に限定されない。上述した例において示した各構成部材の諸形状や組み合わせ等は一例であって、本発明の主旨から逸脱しない範囲において設計要求等に基づき種々変更可能である。
【符号の説明】
【0107】
1…加飾フィルム、1A…第1加飾フィルム原反、2A…第2加飾フィルム原反、10,10A…加飾層、20,20A…接着層、20a,25a,30a…面、25A…接着性樹脂層、30…セパレーター、100…積層体(第1積層体)、200…積層体(第2積層体)、M…成型体、M1…複合成型体