(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-27
(45)【発行日】2024-06-04
(54)【発明の名称】電子機器
(51)【国際特許分類】
H01L 23/36 20060101AFI20240528BHJP
H05K 7/20 20060101ALI20240528BHJP
【FI】
H01L23/36 D
H05K7/20 F
(21)【出願番号】P 2020040542
(22)【出願日】2020-03-10
【審査請求日】2023-01-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000005290
【氏名又は名称】古河電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大石 慧介
(72)【発明者】
【氏名】三浦 健輔
(72)【発明者】
【氏名】松嶋 禎央
【審査官】豊島 洋介
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-363183(JP,A)
【文献】特開2004-349176(JP,A)
【文献】特開平10-326984(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L23/29
H01L23/34 -23/36
H01L23/373-23/427
H01L23/44
H01L23/467-23/473
H05K 7/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気信号を送信または受信する電子部品と、
前記電子部品が実装された第一面を有した基板と、
前記第一面および前記電子部品と離隔して面した第二面を有し、前記第一面および前記電子部品を覆うカバーと、
前記基板と前記カバーとの間に介在し、前記第一面、前記第二面、および前記電子部品に接する様に配される熱伝達部材と、
を備え
、
前記熱伝達部材は、
可撓性を有し、前記第一面および前記電子部品と前記第二面との間に圧縮された状態で介在するとともに、
前記第一面と接した第一部位と、
前記電子部品と接した第二部位と、を有し、
前記第一部位の厚さは、前記第一面および前記電子部品と前記第二面との間に圧縮されていない状態では、前記第二部位の厚さ以上であり、
前記電子部品は、前記電気信号が伝送される端子を有し、
前記熱伝達部材には、前記端子との間に隙間をあける凹部が設けられた、電子機器。
【請求項2】
前記熱伝達部材は、前記第一面、前記第二面、および前記電子部品にそれぞれ面接触する様に配された、請求項1に記載の電子機器。
【請求項3】
前記カバーは、前記第一面および前記第二面の間に配されるとともに、前記電子部品の少なくとも1つの周囲を囲う様に構成された内周面を有し、
前記熱伝達部材は、前記内周面に接する様に配された、請求項1または2に記載の電子機器。
【請求項4】
前記熱伝達部材は、前記内周面に面接触する様に配された、請求項3に記載の電子機器。
【請求項5】
前記基板は、前記第一面に露出した導体を有し、
前記熱伝達部材は、前記導体と接した、請求項1~4のうちいずれか一つに記載の電子機器。
【請求項6】
前記導体は、グラウンド導体である、請求項5に記載の電子機器。
【請求項7】
前記基板は、前記電気信号の伝送線路を有し、
前記伝送線路は、前記基板内を通り前記熱伝達部材と離隔する様に配された、請求項1~6のうちいずれか一つに記載の電子機器。
【請求項8】
前記伝送線路は、前記熱伝達部材が前記第二面と接する領域において、前記基板内を通り前記熱伝達部材と離隔する様に配された、請求項7に記載の電子機器。
【請求項9】
前記熱伝達部材は、前記第一面と交差した方向に積層された複数の積層部材を有した、請求項
1~8のうちいずれか一つに記載の電子機器。
【請求項10】
前記熱伝達部材は、前記第一面と交差した方向に積層された複数の積層部材を有し、
前記第一部位では、前記第二部位よりも多くの前記積層部材が積層された、請求項
9に記載の電子機器。
【請求項11】
前記熱伝達部材は、ゲルである、請求項1~
10のうちいずれか一つに記載の電子機器。
【請求項12】
前記カバーは、前記第二面から前記第一面に向けて突出する突起を有した、請求項1~
11のうちいずれか一つに記載の電子機器。
【請求項13】
前記突起は、前記熱伝達部材を前記第一面に対し押圧するように、前記第二面から前記第一面に向けて突出する、
請求項
12に記載の電子機器。
【請求項14】
前記突起は、前記第一面と熱的に接続された第三面を有した、請求項
12または
13に記載の電子機器。
【請求項15】
前記第三面は、前記第一面と接触する、請求項
14に記載の電子機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、基板上に実装された電子部品と当該電子部品を覆うケースとの間に熱伝達部材が介在した電子機器が知られている(特許文献1)。このような構成によれば、電子部品で生じた熱を、熱伝達部材を介してケースに伝達することができ、ひいては、電子部品の温度上昇を抑制することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この種の電子機器は、たとえば情報通信やセンシング技術での信号処理等に用いられるが、電子部品の一層の集積化、当該電子部品の小型化に伴い、放熱性能の一層の効率化が必要とされている。そのため、電子部品の温度上昇をより一層抑制することができれば、有益である。
【0005】
そこで、本発明の課題の一つは、例えば、電子部品の温度上昇をより一層抑制することが可能な、新規な構成の電子機器を得ること、である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の電子機器は、例えば、電気信号を送信または受信する電子部品と、前記電子部品が実装された第一面を有した基板と、前記第一面および前記電子部品と離隔して面した第二面を有し、前記第一面および前記電子部品を覆うカバーと、前記基板と前記カバーとの間に介在し、前記第一面、前記第二面、および前記電子部品に接する様に配される熱伝達部材と、を備える。
【0007】
また、前記電子機器では、例えば、前記熱伝達部材は、前記第一面、前記第二面、および前記電子部品にそれぞれ面接触する様に配される。
【0008】
また、前記電子機器では、例えば、前記カバーは、前記第一面および前記第二面の間に配されるとともに、前記電子部品の少なくとも1つの周囲を囲う様に構成された内周面を有し、前記熱伝達部材は、前記内周面に接する様に配される。
【0009】
また、前記電子機器では、例えば、前記熱伝達部材は、前記内周面に面接触する様に配される。
【0010】
また、前記電子機器では、例えば、前記基板は、前記第一面に露出した導体を有し、前記熱伝達部材は、前記導体と接する。
【0011】
また、前記電子機器では、例えば、前記導体は、グラウンド導体である。
【0012】
また、前記電子機器では、例えば、前記基板は、前記電気信号の伝送線路を有し、前記伝送線路は、前記基板内を通り前記熱伝達部材と離隔する様に配される。
【0013】
また、前記電子機器では、例えば、前記伝送線路は、前記熱伝達部材が前記第二面と接する領域において、前記基板内を通り前記熱伝達部材と離隔する様に配される。
【0014】
また、前記電子機器では、例えば、前記熱伝達部材は、可撓性を有し、前記第一面および前記電子部品と前記第二面との間に圧縮された状態で介在する。
【0015】
また、前記電子機器では、例えば、前記熱伝達部材は、前記第一面と接した第一部位と、前記電子部品と接した第二部位と、を有し、前記第一部位の厚さは、前記第一面および前記電子部品と前記第二面との間に圧縮されていない状態では、前記第二部位の厚さ以上である。
【0016】
また、前記電子機器では、例えば、前記熱伝達部材は、前記第一面と交差した方向に積層された複数の積層部材を有する。
【0017】
また、前記電子機器では、例えば、前記熱伝達部材は、前記第一面と交差した方向に積層された複数の積層部材を有し、前記第一部位では、前記第二部位よりも多くの前記積層部材が積層される。
【0018】
また、前記電子機器では、例えば、前記電子部品は、前記電気信号が伝送される端子を有し、前記熱伝達部材には、前記端子との間に隙間をあける凹部が設けられる。
【0019】
また、前記電子機器では、例えば、前記熱伝達部材は、ゲルである。
【0020】
また、前記電子機器では、例えば、前記カバーは、前記第二面から前記第一面に向けて突出する突起を有する。
【0021】
また、前記電子機器では、例えば、前記突起は、前記熱伝達部材を前記第一面に対し押圧するように、前記第二面から前記第一面に向けて突出する。
【0022】
また、前記電子機器では、例えば、前記突起は、前記第一面と熱的に接続された第三面を有する。
【0023】
また、前記電子機器では、例えば、前記第三面は、前記第一面と接触する。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、熱伝達部材は、第一面、第二面、および電子部品と接した状態で、基板とカバーとの間に介在するため、電子部品で生じた熱が熱伝達部材を介してより広い範囲に伝達されるようになり、電子部品の温度上昇をより一層抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】
図1は、第1実施形態の電子機器の内部構成を示す例示的かつ模式的な断面図である。
【
図2】
図2は、第2実施形態の電子機器の内部構成を示す例示的かつ模式的な断面図である。
【
図3】
図3は、第3実施形態の電子機器の内部構成を示す例示的かつ模式的な断面図である。
【
図4】
図4は、第4実施形態の電子機器の内部構成を示す例示的かつ模式的な断面図である。
【
図5】
図5は、第5実施形態の熱伝達部材の例示的かつ模式的な側面図である。
【
図6】
図6は、第6実施形態の電子機器の内部構成を示す例示的かつ模式的な断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の例示的な実施形態が開示される。以下に示される実施形態の構成、ならびに当該構成によってもたらされる作用および結果(効果)は、一例である。本発明は、以下の実施形態に開示される構成以外によっても実現可能である。また、本発明によれば、構成によって得られる種々の効果(派生的な効果も含む)のうち少なくとも一つを得ることが可能である。
【0027】
以下に示される実施形態は、同様の構成を備えている。各実施形態の構成によれば、当該同様の構成に基づく同様の作用および効果が得られる。また、以下では、それら同様の構成には同様の符号が付与されるとともに、重複する説明が省略される場合がある。
【0028】
本明細書において、序数は、部品や部位等を区別するために便宜上付与されており、優先順位や順番を示すものではない。
【0029】
また、各図において、X方向を矢印Xで表し、Y方向を矢印Yで表し、Z方向を矢印Zで表す。X方向、Y方向、およびZ方向は、互いに交差するとともに互いに直交している。なお、X方向およびY方向は、横方向あるいは面内方向とも称され、Z方向は、厚さ方向、高さ方向、縦方向、法線方向、あるいは面外方向とも称されうる。
【0030】
[第1実施形態]
図1は、第1実施形態の電子機器1Aの内部構成を示す側面図である。
図1に示されるように、電子機器1Aは、基板10と、電子部品20と、カバー30と、熱伝達部材40と、を備えている。
【0031】
基板10は、絶縁層11と、導体12と、を有している。基板10は、多層基板である。また、基板10は、リジッド基板である。ただし、これには限定されず、基板10は、片面基板や両面基板であってもよいし、フレキシブル基板であってもよい。
【0032】
基板10は、Z方向と交差しかつ直交して広がっている。基板10は、Z方向に略一定の厚さで、X方向およびY方向に延びている。基板10は、例えば、四角形状かつ板状である。
【0033】
基板10は、面10aと、面10bと、を有している。
【0034】
面10aは、Z方向を向き、Z方向と交差しかつ直交している。面10aには、電子部品20が実装されている。よって、面10aは、実装面や表面とも称されうる。面10aは、第一面の一例である。
【0035】
また、面10bは、Z方向の反対方向を向き、Z方向と交差しかつ直交している。面10bには、電子部品20が実装されていない。面10bは、裏面とも称されうる。
【0036】
絶縁層11は、例えば、セラミックや、エポキシガラスで作られる。
【0037】
導体12は、例えば、銅や金のような導電性を有した金属材料で作られる。導体12は、Z方向と交差しかつ直交した層状導体12a1~12a4と、Z方向に延びた貫通導体12b1~12b3と、を有している。貫通導体12b1~12b3は、例えば、スルーホールやビアである。なお、貫通導体12b1~12b3は、基板10の面10aと面10bとの間において部分的にZ方向に延びたものであればよく、必ずしも基板10の面10aと面10bとの間で渡っていなくてもよい。
【0038】
電子部品20は、面10a上に実装されている。電子部品20は、本実施形態では、一例として、表面実装部品(チップ部品)である。ただし、これには限定されず、電子部品20は、挿入実装部品(リード付き部品)であってもよい。
【0039】
電子部品20は、ボディ21と、端子22と、を有している。
【0040】
ボディ21は、面21aと、面21bと、面21cと、を有している。
【0041】
面21aは、Z方向の反対方向を向き、Z方向と交差しかつ直交している。面21aは、面10aと面している。面21aは、裏面あるいは底面とも称されうる。
【0042】
なお、面21aには、端子22とは別に基板10の面10a上に設けられたパッドと熱的に接続された放熱部が設けられうる。また、面21aと面10aとの間には、アンダーフィルが充填されてもよい。
【0043】
面21bは、Z方向を向き、Z方向と交差しかつ直交している。面21bは、表面あるいは頂面とも称されうる。
【0044】
面21cは、面21aと面21bとの間でZ方向に沿い、面21a,21bと交差しかつ直交している。ただし、これには限定されず、面21cは、屈曲面であってもよい。面21cは、側面とも称されうる。
【0045】
端子22は、本実施形態では、一例として、面21b上に設けられている。ただし、これには限定されず、端子22は、例えば、面21cから突出してもよい。
【0046】
電子部品20は、例えば、RF(radio frequency)信号や、高速デジタル信号、クロックのような高周波信号を送信したり受信したりする高周波部品である。電子部品20は、一例としては、RFモジュールである。電子部品20のボディ21内には、信号を送信したり受信したりする信号処理部が設けられている。
【0047】
本実施形態では、二つの電子部品20の高周波信号の端子22aは、それぞれ、層状導体12a1と例えばはんだ付けによって接合され、電気的に接続されている。層状導体12a1は、パッドとも称されうる。
【0048】
また、二つの電子部品20の高周波信号の端子22aは、層状導体12a1、貫通導体12b1、層状導体12a2、貫通導体12b2、および層状導体12a2を介して電気的に接続されている。基板10において、層状導体12a1、貫通導体12b1、層状導体12a2、貫通導体12b2、および層状導体12a2は、高周波信号の伝送線路12Rを構成している。
【0049】
カバー30は、基板10の面10aおよび電子部品20を覆っている。カバー30は、天壁31と、周壁32と、を有している。
【0050】
天壁31は、Z方向と交差しかつ直交して広がっている。天壁31は、四角形状かつ板状の形状を有している。Z方向に見た場合、天壁31の周縁31aと、基板10の周縁10cとは、互いに重なっている。
【0051】
周壁32は、天壁31の周縁31aからZ方向の反対方向に突出し、当該周縁31aに沿って無端状に延びている。周壁32のZ方向の反対方向の端部としての周縁32aは、基板10の面10aに沿って延びている。本実施形態では、一例として、周縁32aと面10aの周縁10cとは、Z方向に互いに重なるとともに互いに接している。周縁32aと面10aの周縁10cとは、互いに接合されている。
【0052】
図1に示されるように、カバー30には、天壁31と周壁32とによって囲まれZ方向の反対方向に開放された凹部30aが設けられている。基板10がカバー30で覆われることにより、電子機器1Aには、基板10の面10aと、凹部30aの底面としての面31b、凹部30aの内周面としての面32bによって囲まれた、電子部品20の収容室Rが設けられる。面32bは、例えば、面10aおよび面31bの間に配される。尚、カバー30が基板10の周縁10cも内包するように構成してもよく、この場合、面32bが周縁10cを覆うように構成したり、周縁10cと当接するように構成したりしてもよい。
【0053】
面31bは、Z方向の反対方向を向き、基板10の面10aおよび電子部品20と間隔をあけて、すなわち離間して面している。面31bは、Z方向と交差しかつ直交している。面31bは、第二面の一例である。
【0054】
カバー30は、例えば、アルミニウム合金や、銅合金のような、導電性および熱伝導性を有する金属導体で作られる。よって、カバー30は、電子部品20で発生する熱を基板10、および後述する熱伝達部材40を介して授受し、電子部品20の温度を下げる機能を有するとともに、電磁波を遮蔽する電磁シールドとしても機能する。
【0055】
また、収容室R内には、電子部品20とともに、熱伝達部材40が収容されている。熱伝達部材40は、例えば、可撓性および弾性を有したシリコンベースの熱伝導シートである。熱伝達部材40は、収容室R内に弾性的に圧縮された状態で収容されている。この様な場合、基板10の面10aとカバー30の面31bとの間の幅以上の厚さを有する熱伝達部材40が、基板10の面10aとカバー30の面31bとに押圧されることで、弾性的に圧縮された状態で収容室R内に収容されることが好ましい。熱伝達部材40は、基板10の面10a、電子部品20の面21b,21c、およびカバー30の面31b,32bの間に介在し、これら面10a、21b,21c,31b,32bと接するとともに密着した状態で配され、収容されている。熱伝達部材40は、いずれの面にも密着することが好ましいが、これら面10a、21b,21c,31b,32bに対し面接触(例えば、各面の8割以上の範囲が熱伝達部材40と接触している状態)すればよい。
【0056】
このような構成により、熱伝達部材40は、電子部品20で生じた熱を、面31b,32bを通じてカバー30に伝達するとともに、面10aを通じて基板10にも伝達する。
【0057】
ここで、面10aのうち、熱伝達部材40と接する部位には、層状導体12a3が設けられている。層状導体12a3は、面10aに露出している。層状導体12a3は、貫通導体12b3を介して、面10bに設けられた層状導体12a4と電気的に接続されている。導体12は、金属材料で作られており、絶縁層11よりも熱伝導性が高い。
【0058】
また、層状導体12a3、貫通導体12b3、および層状導体12a4は、グラウンド電位に維持された、グラウンド導体である。層状導体12a3は、面10aに露出した導体12の一例である。
【0059】
また、高周波信号が通る伝送線路12Rのうち、貫通導体12b1、層状導体12a2、および貫通導体12b2は、熱伝達部材40と離隔するように配されている。本実施形態では、貫通導体12b1、層状導体12a2、および貫通導体12b2は、熱伝達部材40が面31bと接する領域(XY平面に略平行な領域)において、基板10内を通り熱伝達部材40と離隔する。貫通導体12b1、層状導体12a2、および貫通導体12b2は、非接触部位の一例である。
【0060】
以上、説明したように、本実施形態では、熱伝達部材40は、基板10の面10a(第一面)、カバー30の面31b(第二面)、および電子部品20と接した状態で、基板10とカバー30との間に介在し、電子部品20からの熱を伝達する。
【0061】
このような構成によれば、熱伝達部材40は、電子部品20からの熱を、カバー30のみならず、基板10にも伝達することができる。よって、本実施形態によれば、電子部品20からの熱がカバー30のみに伝達される場合に比べて、より広い範囲から熱をカバー30に伝達することができるため、電子部品20の温度上昇をより一層抑制することができる。
【0062】
また、本実施形態では、例えば、熱伝達部材40は、カバー30の面32b(内周面)と接する。
【0063】
このような構成によれば、例えば、熱伝達部材40は、電子部品20からの熱を、カバー30の内周面32bに伝達することで、より広い範囲から熱をカバー30に伝達することができるため、電子部品20の温度上昇をより一層抑制することができる。
【0064】
また、本実施形態では、例えば、基板10は、面10aに露出した層状導体12a3(導体12)を有し、熱伝達部材40は、層状導体12a3と接している。
【0065】
このような構成によれば、例えば、熱伝達部材40は、電子部品20からの熱を、導体12に伝達することができるので、電子部品からの熱が絶縁層11のみに伝達される場合に比べて、熱がより伝達されやすくなり、ひいては、電子部品20の温度上昇をより一層抑制することができる。
【0066】
さらに、本実施形態では、例えば、層状導体12a3は、貫通導体12b3(導体12)を介して、面10aとは反対側の面10bに露出した層状導体12a4(導体12)と電気的に、すなわち機械的かつ熱的に、接続されている。
【0067】
このような構成によれば、例えば、熱伝達部材40から導体12に伝達された熱を、層状導体12a4から雰囲気中に伝達することができるので、電子部品20の温度上昇をより一層抑制することができる。
【0068】
また、本実施形態では、例えば、層状導体12a3は、グラウンド導体である。
【0069】
このような構成によれば、例えば、グラウンド導体を、熱を伝達する導体12として有効に利用することができる。また、例えば、グラウンド導体は、一般に、信号導体と比べて、より体積が大きい場合が多く、より広い範囲に熱を伝達することができるため、電子部品20の温度上昇をより一層抑制することができることがある。
【0070】
また、本実施形態では、例えば、基板10は、電気信号の伝送線路12Rを有し、伝送線路12Rは、基板10内を通り熱伝達部材40と接しない非接触部位として層状導体12a2および貫通導体12b1,12b2を有している。
【0071】
このような構成によれば、例えば、熱伝達部材40と近接することにより伝送線路12Rのインピーダンスが変化するのを、非接触部位において回避することができるため、伝送線路12Rにおける信号の劣化を抑制しやすい。
【0072】
また、本実施形態では、例えば、熱伝達部材40は、可撓性を有し、面10aおよび電子部品20と面31bとの間に、圧縮された状態で介在している。
【0073】
このような構成によれば、例えば、熱伝達部材40と、基板10、電子部品20、カバー30とが、より密着した状態で接するため、熱伝達部材40を介した熱の輸送量がより増大しやすくなり、ひいては、電子部品20の温度上昇をより一層抑制することができる。
【0074】
また、本実施形態では、例えば、熱伝達部材40は、ゲルであっても良い。
【0075】
このような構成によれば、例えば、収容室R内にゲルを注入したり、ゲルを塗布した状態で基板10上にカバー30を載せたりするなどにより、面10a、面31b、および電子部品20と接した熱伝達部材40を備えた電子機器1Aを、比較的容易に実現することができる。
【0076】
[第2実施形態]
図2は、第2実施形態の電子機器1Bの内部構成を示す側面図である。
図2に示されるように、電子機器1Bのカバー30は、二つの電子部品20の間において、カバー30の天壁31の面32b(第二面)から基板10の面10a(第一面)に向けて突出する突起31cを有している。突起31cは、例えば、熱伝達部材40を面10aに対し押圧するように、面32bから面10aに向けて突出してもよい。
【0077】
このような構成により、例えば、熱伝達部材40の厚さの場所によるばらつきを低減することができるため、熱伝達部材40を略一定の厚さとなるよう比較的容易に製造することができたり、弾性的に圧縮された状態で収容室R内に収容される場合には熱伝達部材40に生じる応力が場所によってばらつくのを抑制できたり、突起31cと隣接する部位において基板10の面10aの面圧を高めて面10aへの熱輸送量を高めることができたり、といった利点が得られる。
【0078】
[第3実施形態]
図3は、第3実施形態の電子機器1Cの内部構成を示す側面図である。
図3に示されるように、電子機器1Cのカバー30も、上記第2実施形態と同様、二つの電子部品20の間において、カバー30の天壁31の面32bから基板10の面10aに向けて突出する突起31cを有している。
【0079】
ただし、本実施形態では、突起31cの先端、言い換えるとZ方向の反対方向の端部の端面31c1が、基板10の面10aと機械的に接し、かつ熱的に接している。端面31c1が面10aと接している点を除き、本実施形態の電子機器1Cは、第2実施形態の電子機器1Bと同様の構成を備えている。
【0080】
端面31c1は、面10aおよび層状導体12a3と、熱的に接続されている。この場合、端面31c1は、例えば、はんだ付け等によって層状導体12a3と接合されてもよいし、端面31c1と面10a(層状導体12a3)との間に可撓性を有した熱伝導シートのような熱伝達部材が介在してもよい。端面31c1は、第三面の一例である。
【0081】
また、層状導体12a3は、上記第1実施形態と同様に、貫通導体12b3を介して、面10bに露出した状態で設けられた層状導体12a4と接続されている。
【0082】
以上説明したように、本実施形態では、突起31cは、面10a(第一面)と接触するかあるいは近接して当該面10aと熱的に接続された端面31c1(第三面)を有している。
【0083】
このような構成によれば、例えば、電子部品20で生じた熱を、熱伝達部材40およびカバー30を介してさらに基板10に伝達することができる。よって、より広い範囲に熱を伝達することができるため、電子部品20の温度上昇をより一層抑制することができることがある。
【0084】
さらに、本実施形態では、端面31c1は、面10aに露出した層状導体12a3(導体12)と接し、さらに当該層状導体12a3は、貫通導体12b3(導体12)を介して、面10bに露出した層状導体12a4(導体12)と電気的に、すなわち機械的かつ熱的に、接続されている。
【0085】
このような構成によれば、例えば、カバー30から導体12に伝達された熱を、層状導体12a4から雰囲気中に伝達することができるので、電子部品20の温度上昇をより一層抑制することができる。
【0086】
さらに、突起31cが電磁シールドとして機能することにより、電磁波を介した二つの電子部品20の相互干渉を抑制することができるという利点も得られる。
【0087】
[第4実施形態]
図4は、第4実施形態の電子機器1Dの内部構成を示す側面図である。
図4に示されるように、本実施形態では、基板10の面10a,10bの双方が、電子部品20が実装された実装面である。そして、電子機器1Dは、面10bおよび当該面10bに実装された電子部品20を覆うカバー30を備えている。
【0088】
基板10のZ方向(厚さ方向)の中央部には、層状導体12a4が設けられている。電子機器1Dは、層状導体12a4の中心を通る仮想平面Pvに対して、面対称の構造を有しており、層状導体12a4よりも上側(面10a側)の構成は、第2実施形態と同じである。すなわち、電子機器1Dは、所謂両面実装の構成を有している。ただし、電子機器1Dは、面対称の構造でなくてもよい。本実施形態の電子機器1Dにあっても、第2実施形態と同様の効果が得られる。
【0089】
[第5実施形態]
図5は、第5実施形態の熱伝達部材40Eの側面図である。
図5の熱伝達部材40Eは、第1実施形態の電子機器1Aに適用される。
図5は、電子機器1Aに収容されていない自由状態を示している。
【0090】
図5に示されるように、熱伝達部材40Eは、複数の熱伝導シート41をZ方向(面10aと交差した方向)に積層し接着等により接合することによって構成されている。熱伝導シート41は、例えば、可撓性および弾性を有したシリコンベースの熱伝導シートである。熱伝導シート41は、積層部材の一例である。
【0091】
このような構成によれば、例えば、熱伝達部材40Eを、比較的容易に製造することができる。
【0092】
また、本実施形態では、熱伝達部材40Eは、第一部位40aと、第二部位40bと、を有している。
図5を
図1と比較すれば明らかとなるように、第一部位40aは、面10aと接する部位であり、第二部位40bは、電子部品20と接する部位である。そして、
図5に示される自由状態、すなわち、熱伝達部材40Eが、面10a(第一面)および電子部品20とカバー30の面31b(第二面)との間に圧縮されていない状態において、第一部位40aの厚さT1は、第二部位40bの厚さT2以上であり、本実施形態では厚さT2よりも大きい。
【0093】
このような構成によれば、例えば、回路基板10の面形状および電子部品20の配置に合わせて、容易に熱伝達部材の形状を設計することができる。また、例えば、基板10とカバー30との間で圧縮された熱伝達部材40Eに生じる応力が場所によってばらつくのを抑制できるという利点が得られる。また、例えば、熱伝達部材の厚さが一定の場合に比べて基板10の面10aにおいて熱伝達部材40Eの押圧による所要の面圧を確保して熱伝達部材40Eから面10aへの所要の熱輸送量を確保しやすくなるという利点が得られる。
【0094】
また、本実施形態では、第一部位40aでは、第二部位40bよりも多くの前記積層部材が積層されている。
【0095】
このような構成によれば、例えば、厚さが異なる第一部位40aと第二部位40bとを有した熱伝達部材40Eを、比較的に容易に製造することができる。
【0096】
[第6実施形態]
図6は、第6実施形態の電子機器1Fの内部構成を示す側面図である。
図6と
図1とを比較すれば明らかとなるように、本実施形態の電子機器1Fは、熱伝達部材40Fに凹部40cが設けられている点を除き、第1実施形態の電子機器1Aと同じ構成を備えている。
【0097】
凹部40cは、熱伝達部材40Fの面10aおよび電子部品20のボディ21の面21cと接する部位に設けられている。この凹部40cにより、熱伝達部材40Fが電子部品20の高周波信号の端子22aと接触するのが、回避されている。
【0098】
このような構成によれば、例えば、熱伝達部材40Fと近接することにより伝送線路12Rのインピーダンスが変化するのを、非接触部位において回避することができるため、伝送線路12Rにおける信号の劣化をより一層抑制できる。
【0099】
以上、本発明の実施形態が例示されたが、上記実施形態は一例であって、発明の範囲を限定することは意図していない。上記実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、組み合わせ、変更を行うことができる。また、各構成や、形状、等のスペック(構造や、種類、方向、型式、大きさ、長さ、幅、厚さ、高さ、数、配置、位置、材質等)は、適宜に変更して実施することができる。
【符号の説明】
【0100】
1A~1D,1F…電子機器
10…基板
10a…面(第一面、実装面、表面)
10b…面(裏面)
10c…周縁
11…絶縁層
12…導体
12a1…層状導体(伝送線路)
12a2…層状導体(伝送線路、非接触部位)
12a3…層状導体(グラウンド導体)
12a4…層状導体(グラウンド導体)
12b1…貫通導体(伝送線路、非接触部位)
12b2…貫通導体(伝送線路、非接触部位)
12b3…貫通導体(グラウンド導体)
12R…伝送線路
20…電子部品
21…ボディ
21a…面(裏面、底面)
21b…面(表面、頂面)
21c…面(側面)
22…端子
22a…端子
30…カバー
30a…凹部
31…天壁
31a…周縁
32b…面(内周面)
31c…突起
31c1…端面(第三面)
32…周壁
32a…周縁
31b…面(第二面、底面)
40,40E,40F…熱伝達部材
40a…第一部位
40b…第二部位
40c…凹部
41…熱伝導シート
Pv…仮想平面
R…収容室
T1…(第一部位の)厚さ
T2…(第二部位の)厚さ
X…方向
Y…方向
Z…方向