IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 古河電気工業株式会社の特許一覧 ▶ 古河AS株式会社の特許一覧

特許7495248レーダ装置、対象物検出方法およびプログラム
<>
  • 特許-レーダ装置、対象物検出方法およびプログラム 図1
  • 特許-レーダ装置、対象物検出方法およびプログラム 図2
  • 特許-レーダ装置、対象物検出方法およびプログラム 図3
  • 特許-レーダ装置、対象物検出方法およびプログラム 図4
  • 特許-レーダ装置、対象物検出方法およびプログラム 図5
  • 特許-レーダ装置、対象物検出方法およびプログラム 図6
  • 特許-レーダ装置、対象物検出方法およびプログラム 図7
  • 特許-レーダ装置、対象物検出方法およびプログラム 図8
  • 特許-レーダ装置、対象物検出方法およびプログラム 図9
  • 特許-レーダ装置、対象物検出方法およびプログラム 図10
  • 特許-レーダ装置、対象物検出方法およびプログラム 図11
  • 特許-レーダ装置、対象物検出方法およびプログラム 図12
  • 特許-レーダ装置、対象物検出方法およびプログラム 図13
  • 特許-レーダ装置、対象物検出方法およびプログラム 図14
  • 特許-レーダ装置、対象物検出方法およびプログラム 図15
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-27
(45)【発行日】2024-06-04
(54)【発明の名称】レーダ装置、対象物検出方法およびプログラム
(51)【国際特許分類】
   G01S 13/24 20060101AFI20240528BHJP
   G01S 13/931 20200101ALN20240528BHJP
【FI】
G01S13/24
G01S13/931
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020042646
(22)【出願日】2020-03-12
(65)【公開番号】P2021143930
(43)【公開日】2021-09-24
【審査請求日】2022-11-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000005290
【氏名又は名称】古河電気工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】391045897
【氏名又は名称】古河AS株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114292
【弁理士】
【氏名又は名称】来間 清志
(74)【代理人】
【識別番号】100205659
【弁理士】
【氏名又は名称】齋藤 拓也
(72)【発明者】
【氏名】並木 一
(72)【発明者】
【氏名】日比野 勉
(72)【発明者】
【氏名】大谷 栄介
【審査官】▲高▼場 正光
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-212414(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0192088(US,A1)
【文献】MOSES, Randolph L. 外1名,“AUTOREGRESSIVE MODELING OF RADAR DATA WITH APPLICATION TO TARGET IDENTIFICATION”,PROCEEDINGS OF THE 1988 IEEE NATIONAL RADAR CONFERENCE,1988年,Pages 220-224,<DOI: 10.1109/NRC.1988.10961 >
【文献】VAN GENDEREN, Piet 外1名,“Imaging of Stepped Frequency Continuous Wave GPR data using the Yule-Walker Parametric Method”,EUROPEAN RADAR CONFERENCE 2005,2005年,Pages 77-80,<DOI: 10.1109/EURAD.2005.1605568 >
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S 7/00 - G01S 7/42
G01S 13/00 - G01S 13/95
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
周波数帯の異なる複数の送信信号を送信する送信部と、
前記送信部によって送信され、前記周波数帯の異なる複数の送信信号が1または複数の物標によって反射されたそれぞれの受信信号を受信する受信部と、
前記受信部により受信された複数の受信信号に基づいて、前記受信部からの距離に対する第1振幅情報を前記周波数帯ごとに取得する取得部と、
前記取得部で取得した前記周波数帯ごとの前記第1振幅情報の中から、前記受信部から所定の距離に対応する前記第1振幅情報を前記周波数帯ごとに周波数別信号列情報として抽出する抽出部と、
前記周波数別信号列情報と、自己回帰モデルの係数とを用いて行った演算結果に基づいて、複数の前記受信信号をそれぞれの物標から反射された物標信号に分離する分離処理部と、
前記分離処理部で分離されたそれぞれの前記物標信号に基づいて、それぞれの物標の位置を推定する位置推定部とを備え
前記自己回帰モデルは、以下の式で表され、
=a n-1 +a n―2 +・・・+a n-p
(k=1~N)は、前記第1振幅情報であり、pは前記自己回帰モデルの次数である、レーダ装置。
【請求項2】
記周波数別信号列情報に基づいて前記自己回帰モデルの係数を算出する算出部と、
前記周波数別信号列情報と前記自己回帰モデルの係数とに基づいて、前記周波数別信号列情報を周波数方向に推定して拡張する拡張部と、を備え、
前記分離処理部は、前記拡張部により拡張された拡張周波数別信号列情報をフーリエ変換することにより、前記第1振幅情報を物標ごとに分離するように処理する、請求項1記載のレーダ装置。
【請求項3】
記周波数別信号列情報に基づいて、前記自己回帰モデルの係数を算出する第1算出部と、
前記自己回帰モデルの係数に基づいて、それぞれの前記物標信号に対応する位相情報と第2振幅情報とを算出する第2算出部とを備え、
前記分離処理部は、前記第2算出部で算出されたそれぞれの前記物標信号の前記位相情報と前記第2振幅情報とに基づいて、それぞれの前記物標信号を再構成し、
前記位置推定部は、前記分離処理部で再構成されたそれぞれの前記物標信号に基づいて、それぞれの物標の位置を推定する請求項1記載のレーダ装置。
【請求項4】
周波数帯の異なる複数の送信信号を送信する送信工程と、
前記送信工程によって送信され、前記周波数帯の異なる複数の送信信号が1または複数の物標によって反射されたそれぞれの受信信号を受信する受信工程と、
前記受信工程により受信された複数の受信信号に基づいて、前記受信信号を受信する受信部からの距離に対する第1振幅情報を前記周波数帯ごとに取得する取得工程と、
取得した前記周波数帯ごとの前記第1振幅情報の中から、前記受信部から所定の距離に対応する前記第1振幅情報を前記周波数帯ごとに周波数別信号列情報として抽出する抽出工程と、
前記周波数別信号列情報と、自己回帰モデルの係数とを用いて行った演算結果に基づいて、複数の前記受信信号をそれぞれの物標から反射された物標信号に分離する分離処理工程と、
前記分離処理工程で分離されたそれぞれの前記物標信号に基づいて、それぞれの物標の位置を推定する位置推定工程とを備え
前記自己回帰モデルは、以下の式で表され、
=a n-1 +a n―2 +・・・+a n-p
(k=1~N)は、前記第1振幅情報であり、pは前記自己回帰モデルの次数である、
対象物検出方法。
【請求項5】
コンピュータに、
周波数帯の異なる複数の送信信号を送信する送信工程と、
前記送信工程によって送信され、前記周波数帯の異なる複数の送信信号が1または複数の物標によって反射されたそれぞれの受信信号を受信する受信工程と、
前記受信工程により受信された複数の受信信号に基づいて、前記受信信号を受信する受信部からの距離に対する第1振幅情報を前記周波数帯ごとに取得する取得工程と、
取得した前記周波数帯ごとの前記第1振幅情報の中から、前記受信部から所定の距離に対応する前記第1振幅情報を前記周波数帯ごとに周波数別信号列情報として抽出する抽出工程と、
前記周波数別信号列情報と、自己回帰モデルの係数とを用いて行った演算結果に基づいて、複数の前記受信信号をそれぞれの物標から反射された物標信号に分離する分離処理工程と、
前記分離処理工程で分離されたそれぞれの前記物標信号に基づいて、それぞれの物標の位置を推定する位置推定工程と、を実行させるためのプログラムであって、
前記自己回帰モデルは、以下の式で表され、
=a n-1 +a n―2 +・・・+a n-p
(k=1~N)は、前記第1振幅情報であり、pは前記自己回帰モデルの次数である、プログラム
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、レーダ装置、対象物検出方法およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
レーダ装置は、例えば、車両等において、当該車両からみた物標の相対位置を検知するために用いられる。この時、車両におけるアプリケーション(例えば、車両の駐車可能な領域を検知)において、これら複数の物標の位置が互いに分離された状態で検出することが好ましいが、一の物標に対応する信号によって他の物標に対応する信号が埋もれてしまう場合がある。
【0003】
特許文献1には、パルスレーダで周波数を変え、物標に関する複数の測定結果を合成帯域で処理する過程で、サイドローブに埋もれてしまう物標の信号を検出するレーダ装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2005-315738号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載のレーダ装置では、物標が距離方向に互いに接近したような場合において、これら互いの物標を分離するものではない。複数の物標が距離方向に互いに接近した地点にある場合において、それぞれ個別の物標として区別できるか否かは、レーダ装置の距離分解能に依存するため、送信信号の帯域幅を拡大することにより距離分解能の向上を図ることができる。しかしながら、帯域幅を広帯域化した場合、広帯域に対応した構成がレーダ装置に必要となり、また、帯域幅の広い信号を送信した場合、他のレーダ装置に影響を与える可能性もある。
【0006】
本願発明では、狭帯域下においても、距離方向についてターゲットの分離性能を向上させることができるレーダ装置、対象物検出方法およびプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本開示に係るレーダ装置は、周波数帯の異なる複数の送信信号を送信する送信部と、前記送信部によって送信され、前記周波数帯の異なる複数の送信信号が1または複数の物標によって反射されたそれぞれの受信信号を受信する受信部と、前記受信部により受信された複数の受信信号と、自己回帰モデルの係数とを用いて行った演算結果に基づいて、複数の前記受信信号をそれぞれの物標から反射された物標信号に分離する分離処理部と、前記分離処理部で分離されたそれぞれの前記物標信号に基づいて、それぞれの物標の位置を推定する位置推定部とを備える。
【0008】
本開示に係るレーダ装置は、上記開示において、前記複数の受信信号に基づいて、前記受信部からの距離に対する第1振幅情報を前記周波数帯ごとに取得する取得部と、前記取得部で取得した前記周波数帯ごとの前記第1振幅情報の中から、前記受信部から所定の距離に対応する前記第1振幅情報を前記周波数帯ごとに周波数別信号列情報として抽出する抽出部と、前記周波数別信号列情報に基づいて前記自己回帰モデルの係数を算出する算出部と、前記周波数別信号列情報と前記自己回帰モデルの係数とに基づいて、前記周波数別信号列情報を周波数方向に推定して拡張する拡張部と、を備え、前記分離処理部は、前記前記拡張部により拡張された拡張周波数別信号列情報をフーリエ変換することにより、前記第1振幅情報を物標ごとに分離するように処理する構成である。
【0009】
本開示に係るレーダ装置は、上記開示において、前記複数の受信信号に基づいて、前記受信部からの距離に対する第1振幅情報を前記周波数帯ごとに取得する取得部と、前記取得部で取得した前記周波数帯ごとの前記第1振幅情報の中から、前記受信部から所定の距離に対応する前記第1振幅情報を前記周波数帯ごとに周波数別信号列情報として抽出する抽出部と、前記周波数別信号列情報に基づいて、前記自己回帰モデルの係数を算出する第1算出部と、前記自己回帰モデルの係数に基づいて、それぞれの前記物標信号に対応する位相情報と第2振幅情報とを算出する第2算出部とを備え、前記分離処理部は、前記第2算出部で算出されたそれぞれの前記物標信号の前記位相情報と前記第2振幅情報とに基づいて、それぞれの物標信号を再構成し、前記位置推定部は、前記分離処理部で再構成されたそれぞれの前記物標信号に基づいて、それぞれの物標の位置を推定する構成である。
【0010】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本開示に係る対象物検出方法は、周波数帯の異なる複数の送信信号を送信する送信工程と、前記送信工程によって送信され、前記周波数帯の異なる複数の送信信号が1または複数の物標によって反射されたそれぞれの受信信号を受信する受信工程と、前記受信工程により受信された複数の受信信号と、自己回帰モデルの係数とを用いて行った演算結果に基づいて、複数の前記受信信号をそれぞれの物標から反射された物標信号に分離する分離処理工程と、前記分離処理工程で分離されたそれぞれの前記物標信号に基づいて、それぞれの物標の位置を推定する位置推定工程とを備える。
【0011】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本開示に係るプログラムは、コンピュータに、周波数帯の異なる複数の送信信号を送信する送信工程と、前記送信工程によって送信され、前記周波数帯の異なる複数の送信信号が1または複数の物標によって反射されたそれぞれの受信信号を受信する受信工程と、前記受信工程により受信された複数の受信信号と、自己回帰モデルの係数とを用いて行った演算結果に基づいて、複数の前記受信信号をそれぞれの物標から反射された物標信号に分離する分離処理工程と、前記分離処理工程で分離されたそれぞれの前記物標信号に基づいて、それぞれの物標の位置を推定する位置推定工程と、を実行させるためのプログラムである。
【発明の効果】
【0012】
本開示によれば、受信した複数のフレーム間の情報の解析を短い時間で効率的に処理することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は、第1実施例に係るレーダ装置の構成を示すブロック図である。
図2図2は、周波数偏移信号(絶対値)の時系列データを模式的に示す図である。
図3図3は、周波数領域と時間領域(IQ平面)における測定周波数による反射信号の特性を示す図である。
図4図4は、分離処理部により算出された拡張周波数別応答信号列を模式的に示す図である。
図5図5は、位置推定部によるピーク検出の結果を模式的に示す図である。
図6図6は、第1実施例に係るレーダ装置による信号処理の手順を示すフローチャートである。
図7図7は、図6に示すフローチャートに関する信号処理部の構成ついての説明に供する図である。
図8図8は、第2実施例に係るレーダ装置の構成を示すブロック図である。
図9図9は、第3実施例に係るレーダ装置の構成を示すブロック図である。
図10図10は、第2実施例に係るレーダ装置による信号処理の手順を示すフローチャートである。
図11図11は、図10に示すフローチャートに関する信号処理部の構成ついての説明に供する図である。
図12図12は、第4実施例に係るレーダ装置の構成を示すブロック図である。
図13図13は、対象物検出方法の手順を示すフローチャートである。
図14図14は、コンピュータの構成を示す図である。
図15図15は、コンピュータの他の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
次に、本発明の実施形態について説明する。
【0015】
(第1実施例について)
図1は、第1実施例に係るレーダ装置100の構成を示すブロック図である。第1実施例に係るレーダ装置100は、中心周波数が異なる複数のパルス信号を送信し、送信された信号が物標に反射され、この反射信号を受信するパルス方式を採用する。また、レーダ装置100は、例えば、自動車等の車両に搭載され、車両の周囲に存在する他の車両、歩行者、障害物等の対象物を検出する。具体的には、レーダ装置100は、自動車のリアバンパに配置される。レーダ装置100がリアバンパに配置された場合には、レーダ装置100によって検出された対象物の情報は、後方駐車支援および後方衝突予測になどに利用される。なお、レーダ装置100が配置される場所は、リアバンパに限定されず、フロントバンパでもよいし、リアバンパとフロントバンパの双方に配置されてもよい。
【0016】
レーダ装置100は、図1に示すように、送信部51と、受信部52と、直交復調部10と、ADC(Analog to Digital Converter)11と、メモリ12と、信号処理部13Aと、データ処理部14とを備える。
【0017】
送信部51は、周波数帯の異なる複数の送信信号を送信する。送信部51の具体的な構成について説明する。送信部51は、局発制御部1と、局部発振部2と、局発周波数モニタ部3と、変調信号生成部4と、変調部5と、増幅部6と、送信アンテナ7とを備える。
【0018】
局発制御部1は、レーダ装置100の各部を制御するとともに、局部発振部2が発生する局発信号の周波数を制御する。
【0019】
局部発振部2は、局発制御部1の制御に応じた周波数の局発信号を生成して出力する。変調信号生成部4は、局部発振部2から供給される局発信号をパルス波形に変調するための変調信号を生成して変調部5に供給する。なお、パルス変調以外にも、例えば、位相変調や周波数変調を行うようにしてもよく、周波数変調を行う場合の構成については、後述する。
【0020】
変調部5は、局部発振部2から供給される局発信号を、変調信号生成部4から供給される変調信号に基づいて変調し、増幅部6に供給する。
【0021】
増幅部6は、変調部5から供給されるパルス信号の電力を増幅して送信アンテナ7に供給する。
【0022】
送信アンテナ7は、1つまたは複数で構成され、増幅部6から供給されるパルス信号を対象物に向けて電磁波として送信する。
【0023】
受信部52は、送信部51によって送信され、周波数帯の異なる複数の送信信号が1または複数の物標によって反射されたそれぞれの受信信号を受信する。受信部52の具体的な構成について説明する。受信部52は、受信アンテナ8と、増幅部9とを備える。
【0024】
受信アンテナ8は、1つまたは複数で構成され、対象物によって反射された電磁波(反射信号)を捕捉し、電気信号に変換して増幅部9に供給する。増幅部9は、受信アンテナ8から供給される電気信号の電力を増幅して直交復調部10に供給する。
【0025】
直交復調部10は、増幅部9から供給される電気信号を局部発振部2から供給される局発信号によってダウンコンバート(低い周波数に周波数変換)するとともに、相互に直交する信号によって直交復調し、得られたI,Q成分をADC11に供給する。
【0026】
ADC11は、直交復調部10から供給されるアナログ信号としてのI,Q成分をデジタルデータにそれぞれ変換して出力する。
【0027】
メモリ12は、ADC11から供給されたデジタルデータを記憶する。
【0028】
信号処理部13Aは、局発周波数モニタ部3から供給される局発信号の周波数を示す情報に基づいて、メモリ12に記憶されているデジタルデータに対して所定の信号処理を行い、信号処理の結果をデータ処理部14に供給する。具体的には、信号処理部13Aは、分離処理部13A-5と、位置推定部13A-6とを備える。
【0029】
分離処理部13A-5は、受信部52により受信された複数の受信信号と、自己回帰モデルの係数とを用いて行った演算結果に基づいて、複数の受信信号をそれぞれの物標から反射された物標信号に分離する。
【0030】
位置推定部13A-6は、分離処理部13A-5で分離されたそれぞれの物標信号に基づいて、それぞれの物標の位置を推定する。
【0031】
データ処理部14は、信号処理部13Aから供給されるデジタルデータ(位置推定部13A-6により推定されたそれぞれの物標の位置に関する情報)に対して、クラスタリング処理およびトラッキング処理等を施し、対象物を検出する処理を実行する。なお、検出された対象物に関する情報は、図示しない上位装置(例えば、ECU(Electric Control Unit))に供給される。なお、データ処理部14は、上位装置に備えられる構成でもよい。
【0032】
このようにして、レーダ装置100は、分離処理部13A-5により複数の受信信号をそれぞれの物標から反射された物標信号に分離し、位置推定部13A-6によりそれぞれの物標信号に基づいて、それぞれの物標の位置を推定し、この推定した結果に基づいて、データ処理部14により対象物の検出処理を行う。よって、レーダ装置100は、狭帯域下においても、距離方向についてターゲットの分離性能を向上させることができる。
【0033】
ここで、信号処理部13Aの詳細な構成について説明する。信号処理部13Aは、上述した分離処理部13A-5および位置推定部13A-6に加えて、取得部13A-1と、抽出部13A-2と、算出部13A-3と、拡張部13A-4とを備える。
【0034】
取得部13A-1は、複数の受信信号に基づいて、受信部52(受信アンテナ8)からの距離に対する第1振幅情報を周波数帯ごとに取得する。第1実施例では、中心周波数が異なる8つの送信信号(以下、周波数偏移信号と称する場合がある)を所定のタイミングで送信部51から送信し、各送信信号をそれぞれ受信部52で受信する構成を一例として説明するが、偏移する周波数の数は8つに限定されない。
【0035】
距離に対する第1振幅情報Iは、メモリ12に格納することができ、(1)式の複素形式で示すことができる。
=AiΨ ・・・(1)
【0036】
は、振幅(実数)を示し、Ψは、第1振幅情報の位相を示している。このような第1振幅情報は、ターゲット距離からの反射信号の情報を含んでいる。取得部13A-1は、各周波数帯の第1振幅情報を取得する。なお、距離に対する第1振幅情報として、時間に対する各受信信号の振幅(複素振幅の場合を含む)を用いることができる。
【0037】
抽出部13A-2は、詳細は後述するが、取得部13A-1で取得した周波数帯ごとの第1振幅情報の中から、受信部52(受信アンテナ8)から所定の距離に対応する第1振幅情報を周波数帯ごとに周波数別信号列情報(以下では、周波数別信号列と称する場合がある)として抽出する。上述のように、距離に対する第1振幅情報として時間に対する各受信信号の振幅を用いる場合は、所定の距離に対応する第1振幅情報として、各周波数帯の送信信号を送信してから所定の時間において受信した受信信号の第1振幅情報を用いることができる。
【0038】
算出部13A-3は、周波数別信号列情報に基づいて自己回帰モデル(Auto Regressive Model)の係数(以下、AR係数と称することがある)を算出する。
【0039】
拡張部13A-4は、周波数別信号列情報とAR係数とに基づいて自己回帰モデルによる演算処理を行い、周波数別信号列情報を周波数方向に推定して拡張する。
【0040】
分離処理部13A-5は、拡張部13A-4により拡張された拡張周波数別信号列情報をフーリエ変換することにより、第1振幅情報を物標ごとに分離するように処理する。なお、分離処理部13A-5は、抽出部13A-2により抽出された周波数別信号列情報と、拡張部13A-4により拡張された拡張周波数別信号列情報をフーリエ変換することにより、第1振幅情報を物標ごとに分離するように処理してもよい。
【0041】
ここで、中心周波数が異なる8つの測定周波数によりレーダ計測を行い、距離方向に対する信号強度を解析した結果について説明する。
【0042】
図2は、複数のターゲットが存在する場合において、各周波数帯の受信信号(周波数偏移信号)の強度の時系列変化の例を示す図である。横軸は、時系列情報を距離(cm)に換算した値となっている。この例では、互いに中心周波数がΔf異なる8つの送信信号f~fを用い、レーダ装置から1[m]離れている場所に信号強度が「1」となるターゲットT0を配置し、また、レーダ装置から2[m]離れている場所に信号強度が「2」となるターゲットT1を配置して、レーダ計測を行った場合のシミュレーション結果を示している。なお、図2の横軸は、パルス信号を送信部51から送信し、受信部52で受信するまでの相対的な時間差を距離に換算したものである。以下では、図2の横軸は、距離または時間(時系列)として説明する。Δfは、例えば、5MHz、または、10MHz程度としてもよい。
【0043】
理想的な状態であれば、それぞれのターゲットが分離されて、1[m]の距離に信号強度が「1」となる信号波形が示され、また、2[m]の距離に信号強度が「2」となる信号波形が示されることとなる。しかしながら、図2では、ターゲットが合成され、一つのピークを有する信号波形しか示されておらず、この状態ではターゲットを分離できておらず、各ターゲットの正しい距離が不明となる。
【0044】
ここで、本発明に係るレーダ装置100の処理について説明する。受信した周波数偏移信号のそれぞれは、当該信号の周波数と、ターゲット距離とに応じて位相が変化している。この結果、図2に示されるように、受信した周波数偏移信号の周波数ごとに振幅に変化が生じている。
【0045】
(2)式は、パルス方式の場合の複素信号強度を示すモデルを示している。
【数1】
【0046】
図3は、測定周波数による反射信号の特性を示す図である。図3(a)は、周波数領域における測定周波数による反射信号の特性を示す図を示す。図3(b)は、時間領域(IQ平面)における測定周波数による反射信号の特性を示す図である。測定周波数を変更してレーダ計測を行うと、図3(b)に示すように、ターゲット距離に応じた位相変化を生じさせることができる。本発明に係るレーダ装置100は、このターゲット距離に応じた位相変化を利用してAR処理を行う。
【0047】
測定周波数f1による反射信号および測定周波数f2による反射信号は、図3(a)に示すように、スペクトルマスク内において、中心周波数がシフトしている。また、IQ平面において、同じターゲット距離において反射された測定周波数f1による反射信号と測定周波数f2による反射信号の間の角度(回転量θ)は、(3)式で定義される。
θ=2π(f1-f2)r/C ・・・(3)
cは、光速を示している。
【0048】
また、抽出部13A-2により時系列のj番目(例えば、図2に示す距離R)の信号を周波数別の信号列としてメモリ12から抽出した1次元(1D)縦ベクトルを(4)式に示す。なお、図2に示す距離Rとは、所定の距離範囲(例えば、10cm~20cmなど)を含む概念である。また、(4)式では、周波数偏移数を示すNが添え字になっており、本実施例では、「N=8」であるが、「N=8」に限定されない。縦ベクトル(4)の各x(k=1~N)は、各周波数偏移信号で得られた距離Rにおける第1振幅情報を示す。
(x~x ・・・(4)
【0049】
ここで、AR係数を1次元縦ベクトルとし、ARモデルをこの信号列に適用する。(5)式は、AR係数を示す。(6)式は、ARモデルの例を示す。
(a~a ・・・(5)
=an-1+an-2+・・・+an-p ・・・(6)
【0050】
AR係数の個数pは、ARモデルの次数を表し、表現できるターゲットの数に対応するものである。本実施例では、「p=3」とした。なお、次数は予め定めておいてもよいし、例えば、文献(菊間信良著 アダプティブアンテナ技術 第一版 平成15年10月)のp139,p148に記載されているAIC(Akaike Information Criteria)やMDL(Minimum Description Length)を利用して決定されてもよい。
【0051】
AR係数を算出するため、行列形式の方程式を立式する。
b=XA ・・・(7)
【数2】
【0052】
また、行列サイズは、以下の通りである。
b:(n-p)行1列
X:(n-p)行p列
A:p行1列
【0053】
算出部13A-3は、Xの一般化逆行列を用いてAR係数を算出する。ここで、AR係数の算出には、Xの一般化逆行列以外の一般化逆行列を利用してもよい。例えば、共役転置(Hで表示)を左からかけたとき、XXが正則であれば逆行列が存在するため、これを対角化することでAR係数を求めることができる。ここで、Xb=XXa、を正規方程式という。よって、XXの一般化逆行列を用いてもよい。
【0054】
一般化逆行列は、Xの特異値分解から計算できる。(8)式は、特異値分解を示す。(9)式は、一般化逆行列を示す。
X=USV ・・・(8)
=VS ・・・(9)
【0055】
なお、本実施例では、(7)式に示す立式について説明したが、相関行列を用いた立式を行い、上述した文献に示されている線形予測法を用いてもよい。また、Yule-Walker方程式として計算し、AR係数を求めてもよい。
【0056】
拡張部13A-4は、算出部13A-3により算出したAR係数と周波数別信号列に基づいて(6)式のARモデルにより周波数別信号を推定し、信号列を拡張する。拡張する信号列の数は、分離したいターゲット間の距離と測定周波数間隔によって決定することができる。拡張部13A-4は、例えば、256ポイント(640MHz相当)まで拡張した周波数別の拡張信号列(拡張周波数別信号列)を作成する。
【0057】
分離処理部13A-5は、拡張周波数別信号列をFFT(Fast Fourier Transform)処理して拡張周波数別応答信号列を算出する。位置推定部13A-6は、分離処理部13A-5により算出された拡張周波数別応答信号列に対してピーク検出処理を行う。
【0058】
ここで、拡張周波数別応答信号列について説明する。図4は、分離処理部13A-5により算出された拡張周波数別応答信号列を模式的に示す図である。図4の縦軸は、時系列番号を示し、横軸は、周波数応答ビン番号、すなわち、上述したFFT処理によりピークをとるターゲット距離に対応する情報を示している。図4の例では、ターゲットの数(すなわち、2個)に対応して、2つの周波数応答ビン番号においてピークが得られ、ターゲットT0とターゲットT1がそれぞれ区別されている。なお、図4には示されていないが、偽信号による偽ターゲットも含まれることがある。
【0059】
また、位置推定部13A-6は、時系列方向における極値検出による処理によりピーク検出を行う。本実施例では、位置推定部13A-6は、ターゲットT0(レーダ装置100から1[m]離れた位置に配置されたターゲット)とターゲットT1(レーダ装置100から2[m]離れた位置に配置されたターゲット)との距離を、時系列方向(時系列番号)においてピークとなる距離により検出する。なお、ピーク検出は、極値検出による処理に限定されず、閾値判定処理やCFAR(Constant False Alarm Rate)による処理により行われてもよい。
【0060】
図5は、位置推定部13A-6によるピーク検出の結果を模式的に示す図である。図5では、位置推定部13A-6により検出されたピークに対応する周波数応答ビン番号の全時系列番号のデータを取り出し、取り出したデータをプロットしたものである。本発明に係るレーダ装置100は、図5に示すように、ターゲットT0とターゲットT1とを分離して区別することができる。なお、図5中の「Tx」は、偽信号による偽ターゲットを示している。このような場合、例えば、所定の信号強度以下のデータは、偽信号であると判断することができる。
【0061】
このようにして、レーダ装置100は、分離処理部13A-5により拡張周波数別信号列をFFT処理して拡張周波数別応答信号列を算出し、位置推定部13A-6により拡張周波数別応答信号列に基づいてピークを検出することにより、ターゲットを分離し、レーダ装置100からターゲットまでの距離をより正確に求めることができる。また、レーダ装置100は、受信部52を構成するすべての受信アンテナ8に対して上述した処理を行うことにより、各ターゲットの方位角も分離した状態で算出(推定)することができる。
【0062】
なお、ターゲットがレーダ装置100に対して相対的に静止している場合には、分離処理部13A-5により算出された拡張周波数別応答信号列に基づいて、各ターゲットの位置を推定することが可能である。しかしながら、上述のように時系列方向における極値検出による処理によりピーク検出を行うことで、各ターゲットがレーダ装置100に対して相対的に移動する場合においてもターゲット同士を分離して位置を推定することができるためより好ましい。
【0063】
つぎに、レーダ装置100(特に信号処理部13A)の具体的な動作について説明する。図6は、レーダ装置100による信号処理の手順を示すフローチャートである。図7は、図6に示すフローチャートに関する信号処理部13Aの構成ついての説明に供する図である。
【0064】
以下では、信号処理部13Aで信号処理を行う前の工程である、周波数偏移データを取得する周波数偏移データ取得工程ST1と、信号処理部13Aにより行われる、ARによる拡張処理を行うAR拡張処理工程ST2と、ターゲット信号の分離処理を行うターゲット信号分離処理工程ST3とについて説明する。まず、周波数偏移データ取得工程ST1の詳細について説明する。
【0065】
ステップST11において、送信部51は、最初の送信信号の番号(測定周波数の番号)を設定する。本工程では、送信部51は、i=0、に設定する。
【0066】
ステップST12において、送信部51は、設定された測定周波数の番号「i」に基づいて、測定周波数「f」を設定する。本実施例では、8種類の中心周波数が異なる測定周波数を用いるので、測定周波数「f」は、f~fである。
【0067】
ステップST13において、レーダ装置100は、レーダ計測を開始する。送信部51は、設定された測定周波数の信号を送信する。受信部52は、対象物により反射された反射信号を受信する。
【0068】
ステップST14において、受信部52は、対象物により反射された反射信号を受信信号として受信する。直交復調部10は、送信信号と受信信号とを混合して、I,Q成分を生成する。I,Q成分は、時系列(距離)の信号である。ADC11は、アナログ信号としてのI,Q成分をデジタル信号に変換する。
【0069】
ステップST15において、メモリ12は、直交復調された信号を測定周波数ごとに格納する。
【0070】
ステップST16において、送信部51は、測定周波数の番号「i」を繰り上げる。測定周波数の番号「i」の繰り上げを「i=i+1」と表現する。
【0071】
ステップST17において、送信部51は、ステップST16で更新した測定周波数の番号「i」が所定の数である「N-1」に達したか否かを判断する。Nは、周波数偏移数を示し、本実施例では「8」であるが、「8」に限定されない。「i=N-1」の場合(Yes)には、ステップST18に進み、「i=N-1」ではない場合(No)には、ステップST12に戻る。
【0072】
ステップST18において、すべての測定周波数に関する周波数別信号列の取得が完了し、メモリ12には、周波数別信号列が格納される。
【0073】
このようにして、周波数偏移データ取得工程ST1では、測定周波数を順次切り替えて複数回レーダ計測を行い、すべての測定周波数に関する周波数別信号列を取得(メモリ12に格納)する。
【0074】
次に、AR拡張処理工程ST2の詳細について説明する。
【0075】
ステップST21において、配列抽出部15は、最初の周波数別信号列の時系列上の番号「j」を設定する。本工程では、配列抽出部15は、j=0、に設定する。配列抽出部15は、上述した取得部13A-1および抽出部13A-2に相当する。
【0076】
ステップST22において、配列抽出部15は、設定された時系列のj番目の周波数別信号列をメモリ12から取り出す。配列抽出部15は、取り出した周波数別信号列をAR係数算出部16と信号拡張部19に送信する。AR係数算出部16は、上述した算出部13A-3に相当する。信号拡張部19は、上述した拡張部13A-4に相当する。
【0077】
ステップST23において、AR係数算出部16は、配列抽出部15から送信されてきた周波数別信号列から行列形式の方程式を生成する。行列形式の方程式は、上述した(7)式に相当する。AR係数算出部16は、記憶部17に格納されているAR次数(AR係数の個数p)に基づいて生成した方程式からAR係数を算出する。本実施例では、p=3、として説明するが、p=3、に限定されない。なお、記憶部17は、メモリ12と同一であってもよい。
【0078】
ステップST24において、AR係数算出部16は、ステップST23の工程で算出したAR係数をAR係数格納部18に格納する。AR係数格納部18は、メモリ12と同一であってもよい。
【0079】
ステップST25において、信号拡張部19は、AR係数格納部18に格納されているAR係数と、配列抽出部15により抽出された周波数別信号列に基づいて、ARモデルにより周波数方向に信号を拡張した拡張信号列を算出する。この拡張信号列は、ターゲット距離に依存した周波数変化に対する位相変化を推定した信号列である。信号拡張部19は、上述した拡張部13A-4に相当する。
【0080】
ステップST26において、信号拡張部19は、拡張信号列を時系列順にメモリ12に格納する。
【0081】
ステップST27において、配列抽出部15は、周波数別信号列の時系列上の番号「j」を繰り上げる。周波数別信号列の時系列上の番号「j」の繰り上げを「j=j+1」と表現する。
【0082】
ステップST28において、配列抽出部15は、ステップST27で更新した時系列信号の番号「j」が所定の数である「M-1」に達したか否かを判断する。Mは、時系列信号のサンプル数を示している。「j=M-1」の場合(Yes)には、ステップST29に進み、「j=M-1」ではない場合(No)には、ステップST22に戻る。
【0083】
ステップST29において、周波数別の拡張時系列信号(拡張周波数別信号列)の取得が完了し、メモリ12には、この拡張周波数別信号列が格納される。
【0084】
このようにして、AR拡張処理工程ST2では、周波数偏移データ取得工程ST1で取得したすべての周波数別信号列をAR拡張し、拡張周波数別信号列を取得する。
【0085】
つぎに、ターゲット信号分離処理工程ST3の詳細について説明する。
【0086】
ステップST31において、FFT計算部20は、拡張周波数別信号列をFFT処理して拡張周波数別応答信号列を算出する。FFT計算部20は、上述した分離処理部13A-5に相当する。
【0087】
ステップST32において、ピーク検出部21は、拡張周波数別応答信号列の絶対値からピークを検出する処理を行う。ピーク検出部21は、上述の位置推定部13A-6に相当する。
【0088】
ステップST33において、配列抽出部22は、ピークに対応した拡張周波数別応答信号列を全距離について抽出する。ステップST33の工程で抽出された拡張周波数別応答信号列は、単一のターゲットとして区別された信号列である。配列抽出部22は、上述の位置推定部13A-6に相当する。
【0089】
ステップST34において、メモリ23は、ステップST33の工程により抽出された拡張周波数別応答信号列を単一のターゲットとして区別された信号列として格納する。なお、メモリ23は、メモリ12と同一でもよい。
【0090】
ステップST35において、配列抽出部22は、ステップST32の工程で検出したすべてのピークに対応した拡張周波数別応答信号列を抽出したかどうかを判断する。すべてのピークに対応した拡張周波数別応答信号列を抽出した場合(Yes)には、ステップST36に進み、すべてのピークに対応した拡張周波数別応答信号列を抽出していない場合(No)には、ステップST33に戻る。
【0091】
ステップST36において、単一のターゲットとして区別された信号列の取得がすべて完了し、メモリ23にはすべての単一のターゲットとして区別された信号列が格納される。
【0092】
このようにして、レーダ装置100は、AR拡張処理工程ST2において、周波数偏移データ取得工程ST1で取得したすべての測定周波数に関する周波数別信号列に対してAR処理を適用することで、ターゲット距離に依存した、周波数変化に対する位相変化を推定した結果である拡張周波数別信号列を生成し、ターゲット信号分離処理工程ST3において、この拡張周波数別信号列をFFT処理することで、距離方向においてターゲット別に分離する。よって、レーダ装置100は、狭帯域下においても、距離方向についてターゲットの分離性能を向上させることができる。
【0093】
(第2実施例について)
第1実施例では、パルス方式を採用したレーダ装置100の構成と動作について説明したが、本発明は、パルス方式に限定されず、時間の経過に応じて周波数が直線的に上昇するように変調を行った電波を送信するFMCW(Frequency Modulated Continuous Wave)方式や、周波数が連続的に増加または減少するチャープ波を送信するFCM(Fast Chirp Modulation)方式を採用してもよい。以下に、FMCW方式またはFCM方式を採用した第2実施例について説明する。なお、第1実施例に係るレーダ装置100と同一の構成要素については同一の番号を付し、詳細な説明を省略する。
【0094】
図8は、第2実施例に係るレーダ装置200の構成を示すブロック図である。レーダ装置200は、送信部61と、受信部62と、直交復調部10と、ADC11と、メモリ12と、信号処理部13Aと、データ処理部14と、距離FFT処理部30とを備える。
【0095】
送信部61は、局発制御部1と、局部発振部2と、局発周波数モニタ部3と、変調信号生成部4と、増幅部6と、送信アンテナ7とを備え、時間の経過に応じて周波数が直線的に上昇するように変調を行った電波、または、周波数が連続的に増加または減少するチャープ波を送信する。
【0096】
受信部62は、受信アンテナ8と、増幅部9とを備え、送信部61によって送信され、1または複数の物標によって反射された信号を受信信号として受信する。
【0097】
直交復調部10は、受信部62で受信した受信信号と送信部61から送信された送信信号をミキシング(混合)し、レーダ装置200とターゲットとの距離に比例したビート周波数をもつビート信号を生成する。
【0098】
ADC11は、直交復調部10から供給されたアナログ信号のビート信号をデジタル信号に変換し、変換後の信号をメモリ12に格納する。
【0099】
距離FFT処理部30は、メモリ12に格納されているデジタル信号をFFT処理することにより、レーダ装置200とターゲットの距離情報を算出し、算出した距離情報をメモリ12に格納する。以下では、距離情報は、距離信号と称することがある。
【0100】
信号処理部13Aは、メモリ12に格納されている距離情報に対して所定の信号処理を行い、信号処理の結果をデータ処理部14に供給する。
【0101】
レーダ装置200は、第1実施例に係るレーダ装置100と同様に、すべての測定周波数に関する周波数別信号列に対してAR処理を適用することでターゲット距離に依存した周波数変化に対する位相変化を推定した結果である拡張周波数別信号列を生成し、この拡張周波数別信号列をFFT処理することで、距離方向においてターゲット別に分離することができる。よって、レーダ装置200は、狭帯域下においても、距離方向についてターゲットの分離性能を向上させることができる。
【0102】
(第3実施例について)
つぎに、ARモデルによる周波数別信号列情報の拡張処理を行わず、ターゲット別信号の再構成を行う実施例について説明する。
【0103】
図9は、第3実施例に係るレーダ装置300の構成を示すブロック図である。レーダ装置300は、第1実施例に係るレーダ装置100と同様に、パルス方式を採用する。なお、第1実施例に係るレーダ装置100と同一の構成要素については同一の番号を付し、詳細な説明を省略する。
【0104】
レーダ装置300は、送信部51と、受信部52と、直交復調部10と、ADC11と、メモリ12と、信号処理部13Bと、データ処理部14とを備える。
【0105】
信号処理部13Bは、メモリ12に記憶されているデジタルデータに対して所定の信号処理を行い、信号処理の結果をデータ処理部14に供給する。具体的には、信号処理部13Bは、分離処理部13B-5と、位置推定部13B-6とを備える。
【0106】
分離処理部13B-5は、受信部52により受信された複数の受信信号と、自己回帰モデルの係数とを用いて行った演算結果に基づいて、複数の受信信号をそれぞれの物標から反射された物標信号に分離する。
【0107】
位置推定部13B-6は、分離処理部13B-5で分離されたそれぞれの物標信号に基づいて、それぞれの物標の位置を推定する。
【0108】
データ処理部14は、信号処理部13Bから供給されるデジタルデータ(位置推定部13B-6により推定されたそれぞれの物標の位置に関する情報)に対して、クラスタリング処理およびトラッキング処理等を施し、対象物を検出する処理を実行する。なお、検出された対象物に関する情報は、図示しない上位装置(例えば、ECU)に供給される。なお、データ処理部14は、上位装置に備えられる構成でもよい。
【0109】
ここで、信号処理部13Bの詳細な構成について説明する。信号処理部13Bは、上述した分離処理部13B-5および位置推定部13B-6に加えて、取得部13B-1と、抽出部13B-2と、第1算出部13B-3と、第2算出部13B-4とを備える。
【0110】
取得部13B-1は、複数の受信信号に基づいて、受信部52(受信アンテナ8)からの距離に対する第1振幅情報を周波数帯ごとに取得する。取得部13B-1は、第1実施例に係るレーダ装置100の取得部13A-1と同様の構成である。第3実施例では、中心周波数が異なる8つの送信信号(以下、周波数偏移信号と称する場合がある)を所定のタイミングで送信部51から送信し、各送信信号をそれぞれ受信部52で受信する構成を一例として説明するが、偏移する周波数の数は8つに限定されない。
【0111】
距離に対する第1振幅情報は、実数成分の振幅情報と、虚数成分の振幅情報を含んでいる。取得部13B-1は、距離に対する振幅情報および距離に対する位相情報のいずれか一方または双方を周波数ごとに取得する。
【0112】
抽出部13B-2は、取得部13B-1で取得した周波数帯ごとの第1振幅情報の中から、受信部52(受信アンテナ8)から所定の距離に対応する第1振幅情報を周波数帯ごとに周波数別信号列情報(以下では、周波数別信号列と称する場合がある)として抽出する。抽出部13B-2は、第1実施例に係るレーダ装置100の抽出部13A-2と同様の構成である。
【0113】
第1算出部13B-3は、周波数別信号列情報に基づいて、自己回帰モデルの係数(AR係数)を算出する。
【0114】
第2算出部13B-4は、AR係数に基づいて、それぞれの物標信号に対応する位相情報と第2振幅情報とを算出する。第2振幅情報は、物標信号に対応する振幅情報を意味する。
【0115】
分離処理部13B-5は、第2算出部13B-4で算出されたそれぞれの物標信号の位相情報と第2振幅情報とに基づいて、それぞれの物標信号を再構成する。
【0116】
位置推定部13B-6は、分離処理部13B-5で再構成されたそれぞれの物標信号に基づいて、それぞれの物標の位置を推定する。
【0117】
このようにして、レーダ装置300は、ARモデルによる周波数別信号列情報の拡張処理を行わず、ターゲット別信号の再構成を行うことができる。
【0118】
つぎに、レーダ装置300(特に信号処理部13B)の具体的な動作について説明する。図10は、レーダ装置300による信号処理の手順を示すフローチャートである。図11は、図10に示すフローチャートに関する信号処理部13Bの構成ついての説明に供する図である。なお、図6を用いて説明した第1実施例に係るレーダ装置100による信号処理の手順に含まれている工程と同一の工程には、同一のステップ番号を付し、詳細な説明は省略する。
【0119】
以下では、信号処理部13Bで信号処理を行う前の工程である、周波数偏移データを取得する周波数偏移データ取得工程ST1と、信号処理部13Bにより行われる、ターゲット信号の分離処理を行うターゲット信号分離処理工程ST5とについて説明する。
【0120】
周波数偏移データ取得工程ST1(ステップST11~ステップST18)は、第1実施例に係るレーダ装置100による信号処理の手順に係る周波数偏移データ取得工程ST1(ステップST11~ステップST18)と同様である。よって、周波数偏移データ取得工程ST1では、測定周波数を順次切り替えて複数回レーダ計測を行い、すべての測定周波数に関する周波数別信号列を取得(メモリ12に格納)する。
【0121】
次に、ターゲット信号分離処理工程ST5の詳細について説明する。
【0122】
ステップST21~ステップST24は、第1実施例に係るレーダ装置100による信号処理の手順(AR拡張処理工程ST2)に係るステップST21~ステップST24と同様である。
【0123】
ステップST41において、特性多項式演算部31は、AR係数格納部18に格納されているAR係数に基づいて特性多項式を生成し、根を算出する。特性多項式演算部31は、根を算出することにより、ターゲット別信号(物標信号)の位相情報(位相項)を得ることができる。特性多項式演算部31は、上述した第2算出部13B-4に相当する。
【0124】
ステップST42において、特性多項式演算部31は、ターゲット別信号の位相情報を時系列順にメモリ32に格納する。メモリ32は、メモリ12と同一であってもよい。
【0125】
ステップST43において、ターゲット振幅算出部33は、ターゲット別信号の位相情報と、信号列からターゲット別信号の第2振幅情報(振幅項)を算出するための行列形式の方程式を生成する。ターゲット振幅算出部33は、上述した第2算出部13B-4に相当する。
【0126】
ステップST44において、ターゲット振幅算出部33は、ステップST43の工程で生成した方程式から最小二乗法によりターゲット別信号の第2振幅情報を算出する。
【0127】
ステップST45において、ターゲット振幅算出部33は、ステップST44の工程で算出したターゲット別信号の第2振幅情報を時系列順にメモリ34に格納する。メモリ34は、メモリ12と同一であってもよい。
【0128】
ステップST46において、分離信号再構成処理部35は、メモリ32に格納されているターゲット別信号の位相情報と、メモリ34に格納されているターゲット別信号の第2振幅情報とに基づいて、ターゲット別信号を再構成する。分離信号再構成処理部35は、上述した分離処理部13B-5および位置推定部13B-6に相当する。
【0129】
ステップST47において、配列抽出部15は、周波数別信号列の時系列上の番号「j」を繰り上げる。周波数別信号列の時系列上の番号「j」の繰り上げを「j=j+1」と表現する。
【0130】
ステップST48において、配列抽出部15は、ステップST27で更新した時系列信号の番号(j)が所定の数である「M-1」に達したか否かを判断する。Mは、時系列信号のサンプル数を示している。「j=M-1」の場合(Yes)には、ステップST49に進み、「j=M-1」ではない場合(No)には、ステップST22に戻る。
【0131】
ステップST49において、ターゲット別信号(物標信号)の取得が完了し、メモリ12には、この物標信号が格納される。
【0132】
ここで、AR拡張処理工程ST2の具体的な演算処理の手順について説明する。
【0133】
ステップST41の工程で生成する特性多項式は、(10)式に示すように、時系列「j」についてのAR係数を有する多項式である。
s(v)=a+ a+・・・+a-1 ・・・(10)
【0134】
上述した特性多項式は、AR係数から(11)式に示す同伴行列の固有値を求めるための多項式である。これを対角化することで固有値が求まる。この固有値がp個の特性多項式の根λ(mは、1~pの整数)となる。
【数3】
【0135】
また、ターゲット毎の振幅を並べた縦ベクトルを(12)式のように置く。
(B~B ・・・(12)
【0136】
p個の特性多項式の根λ(mは、1~pの整数)のべき乗を並べた行列を作り、(13)式に示される方程式を考える。
【数4】
【0137】
この方程式を解くことでターゲット別振幅Bを推定することができる。p個の特性多項式の根λとターゲット別振幅Bからターゲットが分離された状態の信号を再構成することができる。この方程式を解く際には、例えば、最小二乗法を用いることができる。
【0138】
このようにして、レーダ装置300は、ターゲット信号分離処理工程ST5において、AR係数から特性多項式を生成し、根を求めることでターゲット別信号の位相情報を算出し、ターゲット別信号の位相情報と計測データの最小二乗法による演算によりターゲット別信号の第2振幅情報を算出し、算出したターゲット別信号の位相情報と第2振幅情報とに基づいて、ターゲット別信号を再構成する。よって、レーダ装置300は、狭帯域下においても、距離方向についてターゲットの分離性能を向上させることができる。
【0139】
(第4実施例について)
第3実施例では、パルス方式を採用したレーダ装置300の構成と動作について説明したが、パルス方式に限定されず、時間の経過に応じて周波数が直線的に上昇するように変調を行った電波を送信するFMCW方式や、周波数が連続的に増加または減少するチャープ波を送信するFCM方式を採用してもよい。以下に、FMCW方式またはFCM方式を採用した第4実施例について説明する。なお、第1実施例に係るレーダ装置100および第3実施例に係るレーダ装置300と同一の構成要素については同一の番号を付し、詳細な説明を省略する。
【0140】
図12は、第4実施例に係るレーダ装置400の構成を示すブロック図である。レーダ装置400は、送信部61と、受信部62と、直交復調部10と、ADC11と、メモリ12と、信号処理部13Bと、データ処理部14と、距離FFT処理部30とを備える。
【0141】
送信部61は、局発制御部1と、局部発振部2と、局発周波数モニタ部3と、変調信号生成部4と、増幅部6と、送信アンテナ7とを備え、時間の経過に応じて周波数が直線的に上昇するように変調を行った電波、または、周波数が連続的に増加または減少するチャープ波を送信する。
【0142】
受信部62は、受信アンテナ8と、増幅部9とを備え、送信部61によって送信され、1または複数の物標によって反射された信号を受信信号として受信する。
【0143】
直交復調部10は、受信部62で受信した受信信号と送信部61から送信された送信信号をミキシング(混合)し、レーダ装置200とターゲットとの距離に比例したビート周波数をもつビート信号を生成する。
【0144】
ADC11は、直交復調部10から供給されたアナログ信号のビート信号をデジタル信号に変換し、変換後の信号をメモリ12に格納する。
【0145】
距離FFT処理部30は、メモリ12に格納されているデジタル信号をFFT処理することにより、レーダ装置200とターゲットの距離情報を算出し、算出した距離情報をメモリ12に格納する。以下では、距離情報は、距離信号と称することがある。
【0146】
信号処理部13Bは、メモリ12に記憶されているデジタルデータに対して所定の信号処理を行い、信号処理の結果をデータ処理部14に供給する。
【0147】
レーダ装置400は、第3実施例に係るレーダ装置300と同様に、AR係数から特性多項式を生成し、根を求めることでターゲット別信号の位相情報を算出し、ターゲット別信号の位相情報と計測データの最小二乗法による演算によりターゲット別信号の第2振幅情報を算出し、算出したターゲット別信号の位相情報と第2振幅情報とに基づいて、ターゲット別信号を再構成する。よって、レーダ装置300は、狭帯域下においても、距離方向についてターゲットの分離性能を向上させることができる。
【0148】
(対象物検出方法について)
つぎに、狭帯域下においても、距離方向についてターゲットの分離性能を向上させるレーダ装置100の対象物検出方法について説明する。図13は、狭帯域下においても、距離方向についてターゲットの分離性能を向上させる対象物検出方法の手順を示すフローチャートである。
【0149】
ステップST51において、送信部51は、周波数帯の異なる複数の送信信号を送信する(送信工程)。
【0150】
ステップST52において、受信部52は、送信工程によって送信され、周波数帯の異なる複数の送信信号が1または複数の物標によって反射されたそれぞれの受信信号を受信する(受信工程)。
【0151】
ステップST53において、分離処理部13A-5は、受信工程により受信された複数の受信信号と、自己回帰モデルの係数とを用いて行った演算結果に基づいて、複数の受信信号をそれぞれの物標から反射された物標信号に分離する(分離処理工程)。
【0152】
ステップST54において、位置推定部13A-6は、分離処理工程で分離されたそれぞれの物標信号に基づいて、それぞれの物標の位置を推定する(位置推定工程)。
【0153】
このような構成によれば、対象物検出方法は、分離処理工程により複数の受信信号をそれぞれの物標から反射された物標信号に分離し、位置推定工程によりそれぞれの物標信号に基づいて、それぞれの物標の位置を推定し、この推定した結果に基づいて、対象物の検出処理を行う。よって、対象物検出方法は、狭帯域下においても、距離方向についてターゲットの分離性能を向上させることができる。
【0154】
(プログラムについて)
狭帯域下においても、距離方向についてターゲットの分離性能を向上させるためのプログラムは、主に以下の工程で構成されており、コンピュータ500(ハードウェア)によって実行される。
【0155】
工程1(送信工程):周波数帯の異なる複数の送信信号を送信する工程。
工程2(受信工程):送信工程によって送信され、周波数帯の異なる複数の送信信号が1または複数の物標によって反射されたそれぞれの受信信号を受信する工程。
工程3(分離処理工程):受信工程により受信された複数の受信信号と、自己回帰モデルの係数とを用いて行った演算結果に基づいて、複数の受信信号をそれぞれの物標から反射された物標信号に分離する工程。
工程4(位置推定工程):分離処理工程で分離されたそれぞれの物標信号に基づいて、それぞれの物標の位置を推定する工程。
【0156】
ここで、コンピュータ500の構成と動作について図14を用いて説明する。図14は、コンピュータ500の構成を示す図である。コンピュータ500は、図14に示すように、プロセッサ501と、メモリ502と、ストレージ503と、入出力I/F504と、通信I/F505とがバスA上に接続されて構成されている。これらの各構成要素の協働により、本開示に記載される機能、および/または、方法を実現する。
【0157】
メモリ502は、RAM(Random Access Memory)で構成される。RAMは、揮発メモリまたは不揮発性メモリで構成されている。
【0158】
ストレージ503は、ROM(Read Only Memory)で構成される。ROMは、不揮発性メモリで構成されており、例えば、HDD(Hard Disc Drive)やSSD(Solid State Drive)、Flash Memoryにより実現される。ストレージ503は、上述したメモリ12に相当する。ストレージ503には、上述した工程1~工程4で実現されるプログラムなどの各種のプログラムが格納されている。
【0159】
入出力I/F504には、RF回路600が接続されている。RF回路600には、1または複数の送信アンテナ7と、1または複数の受信アンテナ8とが接続されている。RF回路600は、局発制御部1と、局部発振部2と、局発周波数モニタ部3と、変調信号生成部4と、変調部5と、増幅部6,9などの機能を有する。
【0160】
プロセッサ501は、コンピュータ500全体の動作を制御する。プロセッサ501は、ストレージ503からオペレーティングシステムや多様な機能を実現する様々なプログラムをメモリ502にロードし、ロードしたプログラムに含まれる命令を実行する演算装置である。
【0161】
具体的には、プロセッサ501は、ユーザの操作を受け付けた場合、ストレージ503に格納されているプログラム(例えば、本発明に係るプログラム)を読み出し、読み出したプログラムをメモリ502に展開し、プログラムを実行する。また、プロセッサ501が処理プログラムを実行することにより、信号処理部13Aと、データ処理部14などの各機能が実現される。
【0162】
ここで、プロセッサ501の構成について説明する。プロセッサ501は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、MPU(Micro Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、これら以外の各種演算装置、またはこれらの組み合わせにより実現される。
【0163】
また、本開示に記載される機能、および/または、方法を実現するために、プロセッサ501、メモリ502およびストレージ503などの機能の一部または全部は、専用のハードウェアであるコンピュータ(以下、処理回路という)700で構成されてもよい。図15は、処理回路700の構成を示す図である。処理回路700は、例えば、単一回路、複合回路、プログラム化されたプロセッサ、並列プログラム化されたプロセッサ、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field-Programmable Gate Array)、又はこれらを組み合わせたものである。処理回路700には、RF回路600が接続されている。RF回路600には、1または複数の送信アンテナ7と、1または複数の受信アンテナ8とが接続されている。
【0164】
また、プロセッサ501は、単一の構成要素として説明したが、これに限られず、複数の物理的に別体のプロセッサの集合により構成されてもよい。本明細書において、プロセッサ501によって実行されるとして説明されるプログラムまたは当該プログラムに含まれる命令は、単一のプロセッサ501で実行されてもよいし、複数のプロセッサにより分散して実行されてもよい。また、プロセッサ501によって実行されるプログラムまたは当該プログラムに含まれる命令は、複数の仮想プロセッサにより実行されてもよい。
【0165】
通信I/F505は、所定の通信規格(例えば、CAN(Controller Area Network))に準拠したインターフェースであり、有線または無線により外部の上位装置(例えば、ECUなど)と通信を行う。
【0166】
このようにして、プログラムは、コンピュータ500,700で実行されることにより、分離処理工程により複数の受信信号をそれぞれの物標から反射された物標信号に分離し、位置推定工程によりそれぞれの物標信号に基づいて、それぞれの物標の位置を推定し、この推定した結果に基づいて、対象物の検出処理を行う。よって、プログラムは、狭帯域下においても、距離方向についてターゲットの分離性能を向上させることができる。
【0167】
以上、本願の実施の形態のいくつかを図面に基づいて詳細に説明したが、これらは例示であり、本発明の開示の欄に記載の態様を始めとして、当業者の知識に基づいて種々の変形、改良を施した他の形態で本発明を実施することが可能である。
【符号の説明】
【0168】
1局発制御部
2 局部発振部
3 局発周波数モニタ部
4 変調信号生成部
5 変調部
6 増幅部
7 送信アンテナ
8 受信アンテナ
9 増幅部
10 直交復調部
11 ADC
12,23,32,34 メモリ
13A,13B 信号処理部
13A-1,13B-1 取得部
13A-2,13B-2 抽出部
13A-3 算出部
13A-4 拡張部
13A-5,13B-5 分離処理部
13A-6,13B-6 位置推定部
13B-3 第1算出部
13B-4 第2算出部
14 データ処理部
15,22 配列抽出部
16 AR係数算出部
17 記憶部
18 AR係数格納部
19 信号拡張部
20 FFT計算部
21 ピーク検出部
30 距離FFT処理部
31 特性多項式演算部
33 ターゲット振幅算出部
35 分離信号再構成処理部
51,61 送信部
52,62 受信部
100,200,300,400 レーダ装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15