(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-27
(45)【発行日】2024-06-04
(54)【発明の名称】光ファイバケーブル及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
G02B 6/44 20060101AFI20240528BHJP
【FI】
G02B6/44 376
G02B6/44 366
(21)【出願番号】P 2020074050
(22)【出願日】2020-04-17
【審査請求日】2022-12-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000005290
【氏名又は名称】古河電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100096091
【氏名又は名称】井上 誠一
(72)【発明者】
【氏名】安冨 徹也
【審査官】林 祥恵
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-287221(JP,A)
【文献】特開2017-009922(JP,A)
【文献】特開2005-257752(JP,A)
【文献】特開2016-080747(JP,A)
【文献】特開平11-174291(JP,A)
【文献】特開2000-241679(JP,A)
【文献】特開2007-011018(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0140670(US,A1)
【文献】特開2009-053685(JP,A)
【文献】特開2009-042488(JP,A)
【文献】実公平6-25327(JP,Y2)
【文献】特開2011-102449(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 6/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の光ファイバ心線からなるコアと、
断面において、前記コアの両側方に設けられるテンションメンバと、
前記テンションメンバおよび前記光ファイバ心線を覆うように設けられる略円形の外被と、
を具備し、
前記コアは、複数の光ファイバユニットが撚り合わせられて形成され、押さえ巻きを介して外被内に収納され、
前記テンションメンバの圧縮弾性率が引張弾性率の1/2以下であり、
前記テンションメンバと前記外被との密着力が30N/10mm以上
42N/10mm以下であり、
前記テンションメンバが、ガラスFRP又はアラミドFRPであることを特徴とする光
ファイバケーブル。
【請求項2】
前記テンションメンバと前記外被との密着力が40N/10mm以上であることを特徴とする請求項1記載の光ファイバケーブル。
【請求項3】
前記テンションメンバはあらかじめ前記外被と同様の樹脂で被覆されていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の光ファイバケーブル。
【請求項4】
前記押さえ巻きが縦添え巻きで設けられていることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載の光ファイバケーブル。
【請求項5】
前記光ファイバユニットは、複数の光ファイバ心線が撚り合わせられて形成されることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれかに記載の光ファイバケーブル。
【請求項6】
前記光ファイバ心線は長手方向に対して間欠的に接着された間欠接着型光ファイバテープ心線であることを特徴とする請求項5記載の光ファイバケーブル。
【請求項7】
請求項3記載の光ファイバケーブルの製造方法であって、
あらかじめ樹脂で被覆されたテンションメンバとコアとを前記樹脂と同様の樹脂である外被で押し出し被覆することを特徴とする光ファイバケーブルの製造方法。
【請求項8】
あらかじめ樹脂で被覆された前記テンションメンバを押し出し前に予熱することを特徴とする請求項7記載の光ファイバケーブルの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、曲げ性に優れる光ファイバケーブルに関するものである。
【背景技術】
【0002】
光ファイバケーブルとしては、多数の光ファイバ心線およびテンションメンバが外被で被覆されたものが用いられている。
【0003】
このような、光ファイバケーブルとしては、例えば、光ファイバ心線からなるコアの両側に引張り及び圧縮に対する耐力を有するテンションメンバ(抗張力体)が配置され、テンションメンバの材質として、金属線(鋼線など)、抗張力繊維(アラミド繊維など)、FRPなどが適用可能な光ファイバケーブルがある(例えば特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1のような光ファイバケーブルは、通常、必要に応じて分岐され、引き落とし用ケーブルに接続されて建物等に引き込まれる。なお、以下、特許文献1のような、長距離伝送やデータセンター間などの大量の情報を高密度に伝送するため一般的な超多心(例えば200心以上)のスロットケーブル又はスロットレスケーブルを単に光ファイバケーブルとし、これと区別するため、引き落とし用途の光ファイバケーブル(例えば断面が略矩形であって、外被にノッチが形成される光ファイバケーブル)をドロップケーブルと称する。
【0006】
ドロップケーブルと異なり、通常は、このような光ファイバケーブルは屋外で使用され、引き込み用途で使われることはなかった。したがって、落雷の影響でサージ電流が屋外から建物内に流れるような場面は想定されておらず、光ファイバケーブル自体が非誘導である必要はない。このため、テンションメンバには従来から鋼線も適用可能であった。
【0007】
しかし、近年、電力線と近接される場所にも本ケーブルの適用が検討され、非誘導であることの要求が高まり、本ケーブルのテンションメンバにガラスFRP(Fiber-Reinforced Plastics)やアラミドFRPを使用する必要に迫られてきた。
【0008】
特許文献1のように、スロットレスケーブルにおいては、ケーブルコアの中心から離れた位置に少なくとも2本のテンションメンバが配置されている。このため、光ファイバケーブルを曲げることができるのは、2本のテンションメンバを結ぶ線を曲げの中心とした方向に限定される。これに対し、2本のテンションメンバを結ぶ線を曲げの中心としない方向に光ファイバケーブルを曲げようとすると、光ファイバケーブルが回転し、結果的には2本のテンションメンバを結ぶ線を曲げの中心とした方向に光ファイバケーブルが曲がる。
【0009】
しかし、フィールドで光ファイバケーブルが敷設される際には、光ファイバケーブルの曲げや回転が阻害され、光ファイバケーブルが曲がらない方向に曲げられる場合がある。この場合には、テンションメンバには強い圧縮力が付与される場合があるが、従来の鋼線であれば、このような場合にも十分に耐えることができる。
【0010】
一方、ガラスFRPやアラミドFRPなどは、鋼線と異なり、引張弾性率に対し圧縮弾性率が低く、圧縮された際の耐力が低い。このため、上述したように、本来曲げられない方向に曲げられることにより、テンションメンバが座屈し、折れてしまうという課題があった。
【0011】
これに対し、テンションメンバを太くして強度を得ようとすると、光ファイバケーブルの径が太くなるとともに、光ファイバケーブルの可撓性が悪化するという問題がある。
【0012】
本発明は、このような問題に鑑みてなされたもので、鋼線以外のテンションメンバを用いた場合でも、テンションメンバの座屈等を抑制することが可能な光ファイバケーブルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
前述した目的を達するために第1の発明は、複数の光ファイバ心線からなるコアと、断面において、前記コアの両側方に設けられるテンションメンバと、前記テンションメンバおよび前記光ファイバ心線を覆うように設けられる略円形の外被と、を具備し、前記コアは、複数の光ファイバユニットが撚り合わせられて形成され、押さえ巻きを介して外被内に収納され、前記テンションメンバの圧縮弾性率が引張弾性率の1/2以下であり、前記テンションメンバと前記外被との密着力が30N/10mm以上42N/10mm以下であり、前記テンションメンバが、ガラスFRP又はアラミドFRPであることを特徴とする光ファイバケーブルである。
【0014】
前記テンションメンバと前記外被との密着力が40N/10mm以上であることが望ましい。
【0015】
前記テンションメンバはあらかじめ前記外被と同様の樹脂で被覆されていることが望ましい。
前記押さえ巻きが縦添え巻きで設けられていることが望ましい。
前記光ファイバユニットは、複数の光ファイバ心線が撚り合わせられて形成されることが望ましい。
前記光ファイバ心線は長手方向に対して間欠的に接着された間欠接着型光ファイバテープ心線であってもよい。
第2の発明は、第1の発明にかかる光ファイバの製造方法であって、あらかじめ樹脂で被覆されたテンションメンバとコアとを前記樹脂と同様の樹脂である外被で押し出し被覆することを特徴とする光ファイバケーブルの製造方法である。
あらかじめ樹脂で被覆された前記テンションメンバを押し出し前に予熱してもよい。
【0016】
本発明によれば、圧縮弾性率が引張弾性率の1/2以下のテンションメンバを用いた際に、テンションメンバと外被との密着力が所定以上であるため、テンションメンバの圧縮時の座屈の発生を抑制することができる。
【0017】
特に、テンションメンバが、ガラスFRP又はアラミドFRP等の場合に、本発明は特に有効である。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、鋼線以外のテンションメンバを用いた場合でも、テンションメンバの座屈等を抑制することが可能な光ファイバケーブルを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図2】テンションメンバ9の圧縮強度の測定方法を示す図。
【
図3】テンションメンバ9と外被13との密着力を測定する方法を示す図。
【
図4】(a)は、光ファイバケーブル1の曲げ試験方法を示す図、(b)は(a)のC部の拡大断面図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態について説明する。
図1は、光ファイバケーブル1の断面図である。光ファイバケーブル1は、スロットを用いないスロットレス型ケーブルであり、コア4、テンションメンバ9、外被13等により構成される。
【0021】
コア4は、複数の光ファイバユニット5が撚り合わせられて形成される。また、光ファイバユニット5は、複数の光ファイバ心線3が撚り合わせられて形成される。なお、光ファイバ心線3は、例えば、長手方向に対して間欠的に接着された、間欠接着型の光ファイバテープ心線である。
【0022】
図1に示すように、複数の光ファイバユニット5の外周には、押さえ巻き7が設けられる。押さえ巻き7は、テープ状の部材や不織布等であり、例えば縦添え巻きによって複数の光ファイバユニット5の外周を一括して覆うように配置される。すなわち、押さえ巻き7の長手方向が光ファイバケーブル1の軸方向と略一致し、押さえ巻き7の幅方向が光ファイバケーブル1の周方向となるように複数の光ファイバユニット5の外周に縦添え巻きされる。なお、押さえ巻き7は必ずしも必須ではなく、また、押さえ巻き7を含めてコア4と呼ぶ場合がある。
【0023】
光ファイバケーブル1の長手方向に垂直な断面図において、コア4の両側方にはテンションメンバ9が設けられる。すなわち、一対のテンションメンバ9がコア4を挟んで対向する位置に設けられる。テンションメンバ9の詳細については後述する。また、テンションメンバ9の対向方向と略直交する方向に、コア4を挟んで対向するように引き裂き紐11が設けられる。
【0024】
コア4の外周には、外被13が設けられる。テンションメンバ9および引き裂き紐11は、外被13に埋設される。すなわち、コア4(複数の光ファイバ心線3)及びテンションメンバ9等を覆うように外被13が設けられる。外被13の外形は略円形である。外被13は、例えばポリオレフィン系の樹脂である。
【0025】
次に、テンションメンバ9について説明する。テンションメンバ9は、光ファイバケーブル1の張力を負担する。テンションメンバ9は、例えば、アラミド繊維、ガラス繊維等による繊維補強プラスチック(FRP)等が使用できる。このようなFRPは、引張弾性率に対して、圧縮弾性率が小さい。例えば、テンションメンバ9の圧縮弾性率は、引張弾性率の1/2以下である。
【0026】
なお、テンションメンバ9の引張弾性率はJIS K7161によって測定することができる。一方、テンションメンバ9の圧縮弾性率は、
図2に示す方法で測定される。まず、テンションメンバ9を切断して20本束ねた状態で、上下端部をエポキシ樹脂15で固めたサンプルを作る。樹脂15間の距離は15mm(例えば、テンションメンバ9の束の外径と略同じ)とする。このサンプルを、インストロン社製の試験機で圧縮させた際(図中A)の荷重と変位量から、圧縮弾性率を測定することができる。
【0027】
また、テンションメンバ9と外被13との密着力は30N/10mm以上であることが望ましく、より好ましくは、40N/10mm以上である。なお、テンションメンバ9と外被13の密着力は、
図3に示す方法で測定することができる。まず、外被13の一部を残した状態で、テンションメンバ9の外周の外被13を除去する。残した外被13の長さ(テンションメンバ9の長さ方向の長さ)は10mmとする。
【0028】
その後、孔を有するダイス17にテンションメンバ9を挿通する。ダイス17の孔のサイズは、テンションメンバ9が抵抗なく通過できる程度にテンションメンバ9の外径よりもわずかに大きく、テンションメンバ9の外周に残した外被13のサイズよりも小さい。例えば、2mmφのテンションメンバ9に対して、孔の内径は2.3mm程度とする。
【0029】
外被13の付いたテンションメンバ9をダイス17に通した状態から、50mm/分の速度でテンションメンバ9を引き抜く(図中矢印B)。これにより、ダイス17によって外被13をテンションメンバ9から引き剥がすことができる。この際の最大応力をテンションメンバ9と外被13との密着力とする。
【0030】
ここで、テンションメンバ9と外被13との密着力が低いと、光ファイバケーブル1を曲げた際、内部のテンションメンバ9が曲がると、テンションメンバ9と外被13とが剥がれるおそれがある。この際、一方のテンションメンバ9に圧縮力がかかるように光ファイバケーブル1が曲げられると、テンションメンバ9と外被13とが剥がれているため、外被13によるテンションメンバ9の外周からの拘束力が小さくなる。このため、テンションメンバ9が座屈する恐れがある。
【0031】
しかし、テンションメンバ9と外被13との密着力が高く、テンションメンバ9と外被13とが密着していると、テンションメンバ9に曲げ力がかかった際にも、外被13によるテンションメンバ9の外周からの拘束力が高く、これによりテンションメンバ9の座屈が抑制される。本実施形態のように、特に、テンションメンバ9に、引張弾性率に対して圧縮弾性率が低いFRPなどの材質を適用する場合においては効果的である。
【0032】
次に、光ファイバケーブル1の製造方法について説明する。光ファイバケーブル1は、通常の光ファイバケーブルと略同様の製造方法で製造することが可能であるが、前述したように、テンションメンバ9と外被13との密着力を高める必要がある。特に、ガラスやアラミド繊維を熱硬化性樹脂で固めたFRPは、低密度ポリエチレン(LDPE)などの外被13との密着力を上げにくい。
【0033】
このため、テンションメンバに用いられるFRP素線の外周に、あらかじめ外被13と同様の樹脂で被覆しておくことが望ましい。この樹脂が被覆されたテンションメンバ9を用いて外被13を押し出すことで、テンションメンバ9と外被13との密着力を上げることができる。この際、押し出し温度を通常よりも上げることが望ましい。例えば、通常、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)の外被13を押し出す場合、押し出し温度は180程度であるが、200度程度とすることが望ましい。
【0034】
さらに、テンションメンバ9と外被13との密着力を上げるため、押出前に、テンションメンバ9を予熱することが望ましい。例えば、通常だと常温のテンションメンバ9を用いるが、60℃程度(例えば40℃以上押し出し温度以下)に予熱しておくことで、外被押出時の密着力を高めることができる。
【0035】
さらに、外被13を押出被覆後の冷却までの時間を長くすることが望ましい。例えば、通常の押出被覆後、冷却水槽までの距離は100mm程度であるが、この距離を500mm程度と長くすることで、テンションメンバ9と外被13との融着時間を確保して、テンションメンバ9と外被13との密着力を上げることができる。これらを組みわせることで、より確実にテンションメンバ9と外被13との密着力が高い光ファイバケーブル1を得ることができる。
【0036】
以上説明したように、本実施形態によれば、テンションメンバ9と外被13との密着力が高いため、テンションメンバ9の圧縮弾性率が引張弾性率、鋼線と比較して小さい場合でも、曲げた際のテンションメンバ9の座屈を抑制することができる。
【実施例】
【0037】
テンションメンバの構成を変化させて、光ファイバケーブルの曲げ試験を行った。評価に供した光ファイバケーブル、概ね
図1に示す断面形態である。まず、直径250umの光ファイバ8本を間欠的に接着し、8心の光ファイバテープ心線を作成した。また、それを10本撚り合わせ、2mm幅のプラスチックテープを巻付けた80心の光ファイバユニットを構成した。
【0038】
この80心の光ファイバユニットを25本サプライし、撚り合わせた上で、吸水性不織布を縦添えし、フォーミング治具で丸めた上に、ナイロン製の押え糸を巻付け、2000心のコアを作成した。こうして作成したコアと、φ2.0mmのFRPを使用したテンションメンバと、外被を切裂く切裂き紐を外被材にて円筒状にシースしケーブルを作成した。外被材はLLDPEとした。外被厚は3.0mmとした。
【0039】
なお、密着力の調整は以下のように行った。実施例1~4については、外被を押し出す前にFRP素線の外周を0.15mm厚のLDPEで被覆して、FRPの熱硬化性樹脂とポリエチレンを予め密着させた。また、テンションメンバの予熱等の有無、押出温度や押出後の冷却までの時間を調整することで、密着力の異なるサンプルを作成した。一方、比較例1、2は、従来の条件で製造した。
【0040】
それぞれの光ファイバケーブルに対して、テンションメンバの引張弾性率を、JIS K 7161に則った方法で測定し、圧縮弾性率は
図2に示す方法で測定した。また、得られた引張弾性率と圧縮弾性率の比を算出した。また、テンションメンバと外被との密着力を
図3に示す方法で測定した。
【0041】
光ファイバケーブルの曲げ試験は、(1)捻回なしの曲げ試験、(2)捻回ありの曲げ試験の2種類の試験を行った。
図4(a)は、曲げ試験の方法を示す図である。
【0042】
光ファイバケーブル1をφ500mmのマンドレル19にあて、光ファイバケーブル1を90度の角度に曲げた。この際、マンドレル19に当てた場所から両側30cmの位置で光ファイバケーブル1を把持し、光ファイバケーブル1が回転しないように手で補助した。
【0043】
図4(b)は、
図4(a)のC部の拡大断面図である。テンションメンバ9がマンドレル19側に来るように配置して、光ファイバケーブル1の曲げ方向としては、テンションメンバ9の併設方向とした。すなわち、通常であれば光ファイバケーブル1の曲がる方向と垂直な方向を曲げ方向とした。
【0044】
このようにして曲げた後、外被13の破損の有無によって、テンションメンバ9の座屈や破損の有無を判断した。すなわち、テンションメンバ9の座屈等が生じると、これに伴い、テンションメンバ9の周囲の外被13が破損するため、これによりテンションメンバ9の座屈の有無を判断した。なお、外被13としては、曲げの内側の外被13の割れ(図中Dであって曲げ内側のテンションメンバのコア4側の外被13)と、曲げの外側の外被13の割れ(図中Eであって曲げ外側のテンションメンバの外周側の外被13)を確認した。
【0045】
上記の試験を、(1)捻回せずに行った場合と、(2)180度/mの捻回を与えた状態で行った場合とで評価した。なお、捻回を行った場合には、テンションメンバ9がちょうどマンドレル19上に位置するようにして、曲げ試験を行った。捻回を行うことで、テンションメンバ9に捻じりが加わるため、より厳しい条件での評価となる。結果を表1に示す。
【0046】
【0047】
表1に示すように、テンションメンバ9が、ガラスFRPの場合には、圧縮弾性率/引張弾性率は、0.48であり、アラミドFRPの場合には、圧縮弾性率/引張弾性率は、0.43であった。
【0048】
実施例1は、テンションメンバ9と外被との密着力は30N/10mであった。実施例1は、(1)の曲げ試験においては、外被13の割れは確認されなかった。また、実施例2は、実施例1に対して、押出温度を上げ、さらに冷却までの時間を長くすることで、テンションメンバ9と外被13との密着力が41N/10mとなった。実施例2は、(1)の曲げ試験に加え、(2)の曲げ試験でも外被の割れは確認されなかった。
【0049】
実施例3は、実施例1と略同様の条件で製造したが、テンションメンバをアラミドFRPと変えたものであるが、実施例1と同様の結果となった。同様に、実施例4は、実施例4と略同様の条件で製造したが、テンションメンバをアラミドFRPと変えたものであるが、実施例2と同様の結果となった。
【0050】
一方、従来の製造方法で製造した比較例1、2は、テンションメンバ9と外被との密着力は30N/10m未満であり、(1)、(2)の曲げ試験のいずれも外被の割れが確認された。
【0051】
以上より、テンションメンバ9と外被との密着力は30N/10m以上であれば、(1)の曲げ試験における割れの発生を抑制することができ、テンションメンバ9と外被との密着力は40N/10m以上であれば、(1)の曲げ試験に加え、(2)の曲げ試験における割れの発生を抑制することができた。
【0052】
以上、添付図を参照しながら、本発明の実施の形態を説明したが、本発明の技術的範囲は、前述した実施の形態に左右されない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【符号の説明】
【0053】
1………光ファイバケーブル
3………光ファイバ心線
4………コア
5………光ファイバユニット
7………押さえ巻き
9………テンションメンバ
11………引き裂き紐
13………外被
15………樹脂
17………ダイス
19………マンドレル