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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-27
(45)【発行日】2024-06-04
(54)【発明の名称】加工装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/304 20060101AFI20240528BHJP
   B24B 49/10 20060101ALI20240528BHJP
   B24B 55/06 20060101ALI20240528BHJP
   H01L 21/683 20060101ALI20240528BHJP
【FI】
H01L21/304 622Q
B24B49/10
B24B55/06
H01L21/68 P
H01L21/304 643A
H01L21/304 651B
H01L21/304 648A
H01L21/304 648G
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2020138555
(22)【出願日】2020-08-19
(65)【公開番号】P2022034719
(43)【公開日】2022-03-04
【審査請求日】2023-06-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】110001014
【氏名又は名称】弁理士法人東京アルパ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大波 豪
(72)【発明者】
【氏名】中塚 敦
【審査官】湯川 洋介
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-031352(JP,A)
【文献】特開2006-222132(JP,A)
【文献】特開2018-140450(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/304
B24B 49/10
B24B 55/06
H01L 21/683
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウェーハを加工する加工手段と、加工されたウェーハをスピンナテーブルの保持面によって保持して洗浄するスピンナ洗浄機構と、を備える加工装置であって、
該加工手段によってウェーハを加工する加工条件に対応したスピンナテーブルの形状を選択する設定部と、
該スピンナ洗浄機構に設置されているスピンナテーブルの形状を認識する認識部と、
該設定部によって選択されたスピンナテーブルの形状と、該認識部によって認識されたスピンナテーブルの形状とを比較して、これらが不一致であると判断したときに、不一致であることを作業者に通知する通知部と、
を備える加工装置。
【請求項2】
該設定部によって選択されたスピンナテーブルの形状に基づいて、該スピンナテーブルからロボットハンドがウェーハを受け取る受け取り方法を選択する受け取り方法設定部と、
該受け取り方法とスピンナテーブル形状とが対応づけられているデータテーブルと、をさらに備え、
該通知部は、該受け取り方法設定部によって設定された受け取り方法に応じて該データテーブルを参照して抽出されるスピンナテーブル形状と、該認識部によって認識されたスピンナテーブル形状とを比較して、これらが不一致であると判断したときに、不一致であることを作業者に通知する、
請求項1記載の加工装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加工装置に関する。
【背景技術】
【0002】
研削砥石でウェーハを研削する研削装置は、特許文献1に開示のように、スピンナ洗浄機構を備えている。このスピンナ洗浄機構は、ウェーハを保持するスピンナテーブルを有し、洗浄水を供給しながらスピンナテーブルを高速回転させることによって、ウェーハを洗浄する。
【0003】
スピンナテーブルは、ウェーハを研削する加工条件に応じて変更される。加工条件は、ウェーハを100umに研削する、というような仕上げ厚みの条件、および、ウェーハの研削面にロボットハンドを接触させない、などの洗浄されたウェーハの取扱いに関する条件、などを含む。これらの加工条件に応じて、スピンナテーブルの形状(大きさを含む)が設定されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2017-224749号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のように、スピンナ洗浄機構は、その加工条件に対応して設定される形状のスピンナテーブルが装着されて使用される。
しかし、加工条件に対応する形状のスピンナテーブルと、装置に装着されているスピンナテーブルとが異なると、ウェーハを傷付けたり、装置を破損させたりすることがある。
【0006】
したがって、本発明の目的は、スピンナ洗浄機構を備える加工装置に関し、加工条件に対応する形状のスピンナテーブルがスピンナ洗浄機構に取り付けられているか否かを判断することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の加工装置(本加工装置)は、ウェーハを加工する加工手段と、加工されたウェーハをスピンナテーブルの保持面によって保持して洗浄するスピンナ洗浄機構と、を備える加工装置であって、該加工手段によってウェーハを加工する加工条件に対応したスピンナテーブルの形状を選択する設定部と、該スピンナ洗浄機構に設置されているスピンナテーブルの形状を認識する認識部と、該設定部によって選択されたスピンナテーブルの形状と、該認識部によって認識されたスピンナテーブルの形状とを比較して、これらが不一致であると判断したときに、不一致であることを作業者に通知する通知部と、を備える。
【0008】
本加工装置は、該設定部によって選択されたスピンナテーブルの形状に基づいて、該スピンナテーブルからロボットハンドがウェーハを受け取る受け取り方法を選択する受け取り方法設定部と、該受け取り方法とスピンナテーブル形状とが対応づけられているデータテーブルと、をさらに備えてもよく、該通知部は、該受け取り方法設定部によって設定された受け取り方法に応じて該データテーブルを参照して抽出されるスピンナテーブル形状と、該認識部によって認識されたスピンナテーブル形状とを比較して、これらが不一致であると判断したときに、不一致であることを作業者に通知するように構成されていてもよい。
【発明の効果】
【0009】
本加工装置では、設定部が、加工条件に応じた適切なスピンナテーブルの形状を選択する。さらに、認識部が、実際にスピンナ洗浄機構に設置されているスピンナテーブルの形状を認識する。そして、通知部が、適切なスピンナテーブルの形状と実際に設置されているスピンナテーブルの形状とが異なる場合に、その旨を作業者に通知する。したがって、本加工装置では、不適切な形状のスピンナテーブルがスピンナ洗浄機構に設置されている場合、作業者は、そのことを事前に認識することができる。したがって、不適切な形状のスピンナテーブルが設置されていることに起因するウェーハあるいは装置の破損を、抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】一実施形態にかかる研削装置の構成を示す斜視図である。
図2】スピンナ洗浄機構の構成を示す斜視図である。
図3】スピンナ洗浄機構の構成を示す縦断面図である。
図4】小径のスピンナテーブルの構成を示す斜視図である。
図5】大径のスピンナテーブルの構成を示す斜視図である。
図6】他の形状のスピンナテーブルを示す斜視図である。
図7】データテーブルを示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1に示す本実施形態にかかる加工装置である研削装置1は、ウェーハ100に対して、搬入処理、研削処理、洗浄処理および搬出処理を含む一連の処理を実施するように構成されている。
【0012】
図1に示すウェーハ100は、被加工物の一例であり、たとえば、円形の半導体ウェーハである。ウェーハ100の表面101には、図示しないデバイスが形成されている。ウェーハ100の表面101は、図1においては下方を向いており、保護テープ103が貼着されることによって保護されている。ウェーハ100の裏面102は、研削処理が施される被研削面である。
【0013】
研削装置1は、略矩形の第1の装置ベース11、第1の装置ベース11の後方(+Y方向側)に連結された第2の装置ベース12、および、上方に延びるコラム13、を備えている。
【0014】
第1の装置ベース11の正面側(-Y方向側)には、第2のカセットステージ152が設けられている。第2のカセットステージ152には、加工後のウェーハ100が収容される第2のカセット154が載置されている。また、第2のカセットステージ152の+X側には、第2のカセットステージ152に隣接して、第1のカセットステージ151が取り付けられている。第1のカセットステージ151には、加工前のウェーハ100が収容される第1のカセット153が載置されている。
【0015】
第1のカセット153および第2のカセット154は、内部に複数の棚を備えており、各棚に一枚ずつウェーハ100が収容されている。
【0016】
また、第1のカセット153および第2のカセット154の開口(図示せず)は、+Y方向側を向いている。これらの開口の+Y方向側には、ロボットハンド155が配設されている。ロボットハンド155は、ウェーハ100を保持する吸着面156(図3参照)を備えている。ロボットハンド155は、加工後のウェーハ100を第2のカセット154に搬入する。また、ロボットハンド155は、第1のカセット153から加工前のウェーハ100を取り出して、仮置きテーブル61に載置する。
【0017】
仮置きテーブル61は、ウェーハ100を仮置きするためのものであり、ロボットハンド155に隣接する位置に設けられている。仮置きテーブル61には、複数の位置合わせ手段63が配設されている。位置合わせ手段63は、縮径する位置合わせピンであり、仮置きテーブル61の径方向に沿って移動することにより、仮置きテーブル61に裏面102を上にして載置されたウェーハ100を、所定の位置に位置合わせ(センタリング)する。
【0018】
仮置きテーブル61に隣接する位置には、搬入機構41が設けられている。搬入機構41は、ウェーハ100の裏面102を吸引保持する吸引面を有する吸引パッドを備えている。搬入機構41は、仮置きテーブル61に仮置きされたウェーハ100を吸引パッドによって吸引保持してチャックテーブル30に搬送し、そのテーブル面である保持面32に載置する。
【0019】
チャックテーブル30は、保持面32によってウェーハ100を保持するように構成されている。保持面32は、吸引源(図示せず)に連通されており、保護テープ103を介してウェーハ100を吸引保持する。チャックテーブル30は、回転手段(図示せず)により、保持面32によってウェーハ100を保持した状態で、保持面32の中心を通るZ軸方向に延在する中心軸を中心として回転可能である。
【0020】
チャックテーブル30の周囲は、カバー39によって囲まれている。このカバー39には、Y軸方向に伸縮する蛇腹カバー40が連結されている。そして、カバー39および蛇腹カバー40の下方には、図示しないY軸方向移動手段が配設されている。チャックテーブル30は、このY軸方向移動手段によって、Y軸方向に往復移動することが可能となっている。
【0021】
第2の装置ベース12上の後方(+Y方向側)には、コラム13が立設されている。コラム13の前面には、ウェーハ100を研削する研削手段5、および、研削手段5を研削送り方向であるZ軸方向に移動させる研削送り手段2が設けられている。
【0022】
研削送り手段2は、Z軸方向に平行な一対のZ軸ガイドレール21、このZ軸ガイドレール21上をスライドするZ軸移動テーブル23、Z軸ガイドレール21と平行なZ軸ボールネジ20、Z軸モータ22、および、Z軸移動テーブル23の前面(表面)に取り付けられたホルダ24を備えている。ホルダ24は、研削手段5を保持している。
【0023】
Z軸移動テーブル23は、Z軸ガイドレール21にスライド可能に設置されている。図示しないナット部が、Z軸移動テーブル23の後面側(裏面側)に固定されている。このナット部には、Z軸ボールネジ20が螺合されている。Z軸モータ22は、Z軸ボールネジ20の一端部に連結されている。
【0024】
研削送り手段2では、Z軸モータ22がZ軸ボールネジ20を回転させることにより、Z軸移動テーブル23が、Z軸ガイドレール21に沿って、Z軸方向に移動する。これにより、Z軸移動テーブル23に取り付けられたホルダ24、および、ホルダ24に保持された研削手段5も、Z軸移動テーブル23とともにZ軸方向に移動する。
【0025】
研削手段5は、ウェーハを加工する加工手段の一例であり、チャックテーブル30に保持されたウェーハ100を加工する。研削手段5は、ホルダ24に固定されたスピンドルハウジング51、スピンドルハウジング51に回転可能に保持されたスピンドル50、スピンドル50を回転駆動するモータ52、スピンドル50の下端に取り付けられたホイールマウント53、および、ホイールマウント53に支持された研削ホイール54を備えている。
【0026】
スピンドルハウジング51は、Z軸方向に延びるようにホルダ24に保持されている。スピンドル50は、チャックテーブル30の保持面32と直交するようにZ軸方向に延び、スピンドルハウジング51に回転可能に支持されている。
【0027】
モータ52は、スピンドル50の上端側に連結されている。このモータ52により、スピンドル50は、Z軸方向に延びる回転軸を中心として回転する。
【0028】
ホイールマウント53は、円板状に形成されており、スピンドル50の下端(先端)に固定されている。ホイールマウント53は、研削ホイール54を支持する。
【0029】
研削ホイール54は、ホイールマウント53と略同径を有するように形成されている。研削ホイール54は、金属材料から形成された円環状のホイール基台(環状基台)55を含む。ホイール基台55の下面には、全周にわたって、環状に配置された複数の研削砥石56が固定されている。研削砥石56は、チャックテーブル30に保持されたウェーハ100の裏面102を研削する。
【0030】
研削後のウェーハ100は、搬出機構42によって搬出される。搬出機構42は、ウェーハ100の裏面102を吸引保持する吸引面を有する吸引パッドを備えている。搬出機構42は、チャックテーブル30に載置されている研削処理後のウェーハ100の裏面102を吸引パッドによって吸引保持し、チャックテーブル30から搬出して、スピンナ洗浄機構70に搬送する。
【0031】
スピンナ洗浄機構70は、ウェーハ100を保持するスピンナテーブル80、および、スピンナテーブルに向けて洗浄水および乾燥エアを噴射する各種ノズルを備えている。スピンナ洗浄機構70は、スピンナテーブル80として、たとえば、ウェーハ100の直径以上の比較的に大径の保持面81を有するスピンナテーブル801、あるいは、ウェーハ100の半径以下の比較的に小径の保持面81を有するスピンナテーブル802を備えることができる。
【0032】
スピンナ洗浄機構70では、ウェーハ100の表面(下面)を保持面81で吸引保持しウェーハ100の裏面102(上面)に洗浄水が噴射されスピンナテーブル80を高速回転することにより洗浄水に遠心力が付与されウェーハ100の外周から放水されウェーハの裏面102がスピンナ洗浄される。その後、洗浄水の噴射を止めスピンナ洗浄よりもスピンナテーブル80を高速回転させウェーハ100に乾燥エアが吹き付けられて、ウェーハ100が乾燥される。
【0033】
スピンナ洗浄機構70によってウェーハ100が洗浄および乾燥された後、ロボットハンド155は、スピンナ洗浄機構70に保持されているウェーハ100を吸引保持し、スピンナ洗浄機構70から搬出して、第2のカセット154に搬入する。
【0034】
ここで、スピンナ洗浄機構70の構成について説明する。スピンナ洗浄機構70は、加工されたウェーハ100をスピンナテーブル80の保持面によって保持して洗浄するものである。
【0035】
図2および図3に示すように、スピンナ洗浄機構70は、下方の円筒部71、円筒部71を包囲する容器部72、円筒部71の内部から上方に延びる回転軸73、回転軸73の上端に取り付けられウェーハ100を吸引保持するスピンナテーブル80、スピンナテーブル80に保持されたウェーハ100に洗浄水を噴射する洗浄水ノズル76、および、洗浄水の飛散を抑制するためのカバー77を含んでいる。
【0036】
円筒部71は、主に、スピンナ洗浄機構70における装置ベースとして機能する。円筒部71の下端には、円筒部71の径方向外向きに延出するフランジ部150が設けられている。フランジ部150は、複数のネジ孔を有しており、ボルト等によって、研削装置1の第1の装置ベース11(図1参照)に固定される。
【0037】
容器部72は、円筒部71の上部側を包囲するように、円筒部71と一体的に形成されている。容器部72の外形は、たとえば多角形状に形成されている。図3に示すように、容器部72の底板520には、排水口200が形成されており、排水口200には、排水管201が接続されている。排水管201は、排水装置202に連通している。
【0038】
円筒部71の上部にはボルト401および402によって、上蓋300が固定されている。上蓋300は、円筒部71の内部に上方から洗浄液が入り込むことを抑制する。上蓋300の中央領域には、スピンナテーブル80を嵌め込むための中央円筒部301が形成されている。そして、上蓋300の中央および中央円筒部301の内部を貫通するように、挿通孔302が形成されている。この挿通孔302を介して、回転軸73が、円筒部71の内部から+Z方向に突出している。挿通孔302には、図示しないベアリング等が配設されている。
【0039】
回転軸73はZ軸方向に延びており、回転軸73の上端は、スピンナテーブル80の中心に固定されている。回転軸73の下端側は、回転軸73を回転させるモータ90に連結されている。このモータ90は、円筒部71の内部に収容されている。モータ90の下端には、モータ90(スピンナテーブル80)の回転角度を読み取るエンコーダ91が取り付けられている。
【0040】
図2および図3に示すように、スピンナテーブル80は、円形の外形を有しており、その中央に保持面81を備えている。保持面81は、ポーラス材等からなり、ウェーハ100を吸着する。保持面81には、回転軸73の内部を通り、図示しない吸引源に連通されている吸引路731が連通されている。吸引源の吸引力により、スピンナテーブル80は、保持面81によってウェーハ100を吸引保持する。スピンナテーブル80は、その下方に、連結部材83を有している。連結部材83が、上蓋300の中央円筒部301内の挿通孔302に嵌合されることにより、スピンナテーブル80が、上蓋300によって回転可能に支持される。また、連結部材83は、洗浄水が円筒部71の内部に進入することを抑制する。
【0041】
ウェーハ100に洗浄水を供給する洗浄水ノズル76は、容器部72の内部において、Z軸方向に延びるシャフト760(図2参照)の上端に、旋回可能に取り付けられている。この洗浄水ノズル76は、図示しない洗浄水供給源に連通している。洗浄水ノズル76の近傍には、図示しないエア供給源に連通するエア供給ノズル761が設けられている。洗浄水ノズル76とエア供給ノズル761とは、共に、スピンナテーブル80の上方から退避位置にまで旋回移動できる。
【0042】
洗浄水の飛散を抑制するためのカバー77は、容器部72の上方を覆う上部カバー570、スピンナテーブル80の側部を包囲可能な側部カバー580、および、ブラケットカバー590を備えている。
【0043】
側部カバー580は、筒状に形成されており、容器部72の内側に位置している。側部カバー580の上縁には、外向きに延出されるフランジ部581が形成されている。そして、側部カバー580は、エアシリンダ79によって、容器部72に対してZ軸方向に沿って上下に移動可能である。
【0044】
エアシリンダ79は、容器部72の側面に固定されたシリンダチューブ791、および、シリンダチューブ791に挿入されるピストンロッド790を備える。ピストンロッド790の上端は、側部カバー580のフランジ部581に固定されている。シリンダチューブ791の内圧が変化することで、ピストンロッド790がZ軸方向に沿って上下動し、これに伴って側部カバー580が上下動する。
【0045】
側部カバー580は、スピンナテーブル80に対してウェーハ100を着脱する際には、下降して、スピンナテーブル80を開放する開状態となる。一方、側部カバー580は、ウェーハ100を洗浄および乾燥する際には、上昇して、スピンナテーブル80の側部を覆う閉状態となり、洗浄水の飛散を抑制する。
【0046】
板状のブラケットカバー590は、容器部72の-X方向側の側面上部に、ボルト等の止め具によって固定されている。ブラケットカバー590の中央部には、たとえば、エアシリンダ79を配設するための図示しない切り欠き部が設けられている。エアシリンダ79のピストンロッド790は、この切り欠き部内において上下動する。
【0047】
上部カバー570は、容器部72と同様の多角形状に形成されており、ブラケットカバー590の上端部に、ボルト等の止め具によって固定されている。上部カバー570の略中央部には、アクリル板等の透明材料からなる覗き窓571が設けられている。ユーザは、覗き窓571を介して、洗浄中のウェーハ100の状態を、+Z方向から確認することができる。
【0048】
また、スピンナテーブル80を回転可能に支持する上蓋300の内部には、テーブルセンサー93が設けられている。すなわち、上蓋300は、その上部に、-Z方向に延びるように形成された穴部を有しており、この穴部内にテーブルセンサー93が配置されている。
【0049】
テーブルセンサー93は、非接触センサーであり、スピンナ洗浄機構70に設置されているスピンナテーブル80の連結部材83における第1円筒部831(図4参照)の下面を視認可能なように設けられている。
【0050】
また、図1に示すように、研削装置1は、研削装置1の動作の一部を制御するための部材として、設定部111、認識部112、受け取り方法設定部113、および、通知部115を備えている。
【0051】
以下に、これらの部材の機能とともに、研削装置1におけるスピンナ洗浄機構70の準備動作について説明する。
【0052】
研削装置1では、作業者が、研削装置1のタッチパネルなどの図示しない入力部材を用いて、加工手段としての研削手段5によってウェーハ100を加工する加工条件を入力する。
【0053】
ここで、加工条件は、たとえば、ウェーハ100を100umに研削する、というような仕上げ厚みの条件、および、ウェーハ100の裏面102にロボットハンド155を接触させない、などのウェーハ100の取扱いに関する条件などを含む。
研削装置1では、これらの加工条件に応じて、適切なスピンナテーブル80の形状が設定されている。そして、設定部111は、研削装置1に入力された加工条件に対応した、適切なスピンナテーブルの形状を選択する。
【0054】
また、認識部112は、実際にスピンナ洗浄機構70に設置されているスピンナテーブル80の形状を認識する。
【0055】
ここで、スピンナテーブル80の構成について説明する。
図4に、スピンナテーブル80として用いられる、比較的に小径の保持面81を有するスピンナテーブル802を示す。この図に示すようにスピンナテーブル80(802)の連結部材83は、外側に形成されている第1円筒部831、および、第1円筒部831の内側に形成されている第2円筒部832を有している。
【0056】
第2円筒部832には、その内部を貫通するように、回転軸73(図3参照)を嵌入(たとえばネジ固定)するための嵌入穴833が設けられている。また、第1円筒部831と第2円筒部832との間には、上蓋300の中央円筒部301(図3参照)が挿入される環状隙間部834が設けられている。
【0057】
さらに、第1円筒部831の下方(下面)には、1つの(単独の)凹部835が形成されている。この図に示す例では、この凹部835は、小径のスピンナテーブル802に固有の印である。すなわち、連結部材83に1つの凹部835が形成されていることに基づいて、スピンナテーブル80が、小径のスピンナテーブル802であることがわかる。
【0058】
また、図5に、スピンナテーブル80として用いられる、比較的に大径の保持面81を有するスピンナテーブル801を示す。この図に示すように、大径のスピンナテーブル801の連結部材83は、小径のスピンナテーブル802と同様に、第1円筒部831、第2円筒部832、嵌入穴833、および環状隙間部834を有している。さらに、第1円筒部831の下面には、一対の凹部835が形成されている。この一対の凹部835は、180度の角度間隔をおいて、互いに対向するように形成されていれる。
【0059】
この図に示す例では、この一対の凹部835は、大径のスピンナテーブル801に固有の印である。すなわち、連結部材83に一対の凹部835が形成されていることに基づいて、スピンナテーブル80が、大径のスピンナテーブル801であることがわかる。
【0060】
このように、スピンナテーブル80(801,802)の連結部材83には、第1円筒部831、第2円筒部832、嵌入穴833、環状隙間部834および凹部835からなるラビリンスが形成されている。そして、たとえば凹部835の数に基づいて、連結部材83の属するスピンナテーブル80の形状を認識することができる。
なお、凹部の代わりに凸部を形成していてもよい。凸部の数に基づいてスピンナテーブル80の形状を認識するように構成されていてもよい。
【0061】
図1に示した認識部112は、モータ90およびエンコーダ91(図2参照)を制御してスピンナテーブル80を回転させながら、図2および図3に示したテーブルセンサー93を用いて、連結部材83における第1円筒部831の下方を視認する。
【0062】
そして、認識部112は、たとえば、スピンナテーブル80が1回転する間に視認される凹部835の数を検知し、検知結果に基づいて、スピンナテーブル80の形状を判定する。たとえば、認識部112は、検知結果に基づいて、スピンナテーブル80が、比較的に大径の保持面81を有するスピンナテーブル801、あるいは、比較的に小径の保持面81を有するスピンナテーブル802のいずれであるかを認識する。
【0063】
次に、図1に示した通知部115が、設定部111によって選択されたスピンナテーブル80の形状と、認識部112によって認識されたスピンナテーブル80の形状とを比較して、これらが不一致であるか否かを判断する。そして、通知部115は、これらが不一致である判断したときに、不一致であることを、図示しない表示画面あるいはスピーカなどの通知手段を用いて、作業者に通知する。
【0064】
たとえば、通知部115は、設定部111によって選択されたスピンナテーブル80が比較的に小径の保持面81を有するスピンナテーブル802である一方、認識部112によって認識されたスピンナテーブル80が比較的に大径の保持面81を有するスピンナテーブル801である場合、加工条件に応じたスピンナテーブル80の形状と、実際にスピンナ洗浄機構70に設置されているスピンナテーブル80の形状とが異なることを、作業者に通知する。
【0065】
以上のように、本実施形態では、設定部111が、加工条件に応じた適切なスピンナテーブル80の形状を選択する。さらに、認識部112が、テーブルセンサー93を用いて、実際にスピンナ洗浄機構70に設置されているスピンナテーブル80の形状を認識する。そして、通知部115が、適切なスピンナテーブル80の形状と実際に設置されているスピンナテーブル80の形状とが異なる場合に、その旨を作業者に通知する。
【0066】
したがって、本実施形態では、不適切な形状のスピンナテーブル80がスピンナ洗浄機構70に設置されている場合、作業者は、そのことを事前に認識することができる。したがって、不適切な形状のスピンナテーブル80が設置されていることに起因するウェーハ100あるいは装置の破損を、抑制することができる。
【0067】
また、本実施形態では、認識部112は、テーブルセンサー93による検知結果に基づいて、スピンナテーブル80が回転軸73に正常に装着されているか否かを判断するように構成されていることが好ましい。そして、スピンナテーブル80が回転軸73に正常に装着されていないときには、通知部115が、その旨を作業者に通知することが好ましい。
【0068】
このために、たとえば、回転軸73に正常にスピンナテーブル80が装着されていないときには、テーブルセンサー93がスピンナテーブル80の最下面(第1円筒部831の最下面)を検知することができないように、テーブルセンサー93の感度を調整してもよい。
つまり、テーブルセンサー93は、スピンナテーブル80の下面に検知光を投光する投光部と、検知光が下面で反射した反射光を受光する受光部とを備えた反射型光電センサである。
また、テーブルセンサー93は、近接センサであってもよい。例えば、上蓋300が樹脂で形成され、金属で形成されたスピンナテーブル80の下面を近接センサが検知するように構成されていてもよい。
【0069】
この場合、認識部112は、テーブルセンサー93によって第1円筒部831の最下面を認識(検知)できないときに、スピンナテーブル80が回転軸73に正常に装着されていないと判断することができる。
つまり、回転軸73に嵌入穴833を嵌入させている量が不足していると判断する事ができる。
また、スピンナテーブルの形状を認識するために凹部の代わりに凸部を形成している場合には、テーブルセンサー93が凸部を認識(検知)できないときに、スピンナテーブル80が回転軸73に正常に装着されていないと判断する事ができる。
【0070】
この構成では、スピンナテーブル80が回転軸73に正常に取り付けられていないために、保持面81に吸引力が伝達されないため、保持面81でウェーハ100を吸引保持することができないというトラブルを抑制することができる。
【0071】
なお、本実施形態に示した例では、認識部112が、テーブルセンサー93による検知される第1円筒部831に形成されている凹部835の数に基づいて、スピンナテーブル80が、比較的に大径の保持面81を有するスピンナテーブル801、あるいは、比較的に小径の保持面81を有するスピンナテーブル802のいずれであるかを判定している。
【0072】
これに関し、認識部112は、第1円筒部831に形成されている凹部835の数だけでなく、第1円筒部831における凹部835の位置に基づいて、スピンナテーブル80の形状を認識してもよい。たとえば、図6に示すように、第1円筒部831の下面に、90度の角度間隔をおいて、2つの凹部835が形成されていてもよい。
【0073】
この場合、認識部112は、スピンナテーブル80が1回転する間に視認される凹部835の数および位置(すなわち、凹部835のパターン)を検知し、検知されたパターンに基づいて、スピンナテーブル80の形状を判定する。
【0074】
また、スピンナテーブル80の形状は、保持面81の大きさだけでなく、保持面81の材質を含んでもよい。保持面81の材質としては、たとえば、ポーラス材、および、ステンレスなどの金属を挙げられる。
【0075】
この場合、認識部112が、テーブルセンサー93によって検知される凹部835のパターンに基づいて、スピンナテーブル80の形状として、保持面81の大きさ、および、保持面81の材質を認識してもよい。
【0076】
また、本実施形態にかかる研削装置1では、ロボットハンド155によってウェーハ100を受け取る受け取り方法の確認を実施することも可能である。これには、図1に示した受け取り方法設定部113が用いられる。
【0077】
この場合、設定部111は、上述したように、研削装置1に入力された加工条件に対応した、適切なスピンナテーブルの形状を選択する。また、認識部112は、実際にスピンナ洗浄機構70に設置されているスピンナテーブル80の形状を認識する。
【0078】
受け取り方法設定部113は、スピンナテーブル80からロボットハンド155がウェーハ100を受け取る受け取り方法を選択する。受け取り方法設定部113は、たとえば、図7に示すようなデータテーブル10を用いて、ウェーハ100を受け取る受け取り方法を選択する。
【0079】
図7に示すデータテーブル10では、ロボットハンド155の吸着面156の形状(U型、しゃもじ型)と、スピンナ洗浄機構70のスピンナテーブル80の保持面81のサイズ(大径、小径)とに応じて、受け取り方法が定められている。
【0080】
受け取り方法は、下取りおよび上取りを含んでいる。下取りは、スピンナテーブル80に保持されたウェーハ100の下にロボットハンド155を差し込み、ウェーハ100の下面の外周部分を、ロボットハンド155の吸着面156によって吸引保持することを意味する。
一方、上取りは、スピンナテーブル80に保持されたウェーハ100の上面を、ロボットハンド155の吸着面156によって吸引保持することを意味する。
【0081】
そして、図7示すデータテーブル10には、ロボットハンド155の吸着面156の形状がU型である場合であって、スピンナテーブル80の保持面81のサイズが小径である場合、下取りが可能であること、および、ウェーハ100の厚さが100μm以上であれば、上取りも可能であることが示されている。
【0082】
また、このデータテーブル10には、ロボットハンド155の吸着面156の形状がU型である場合であって、スピンナテーブル80の保持面81のサイズが大径である場合、ウェーハ100の厚さが100μm以上であれば上取りが可能である一方、下取りは困難であることが示されている。
【0083】
さらに、ロボットハンド155の吸着面156の形状がしゃもじ型である場合であって、スピンナテーブル80の保持面81のサイズが小径である場合、下取りは困難であるものの、ウェーハ100の厚さが100μm以上であれば、上取りが可能であることが示されている。
【0084】
そして、ロボットハンド155の吸着面156の形状がしゃもじ型である場合であって、スピンナテーブル80の保持面81のサイズが大径である場合、下取りは困難であるものの、上取りが可能であることが示されている。
【0085】
また、データテーブル10によれば、可能な受け取り方法(下取り、上取り)とロボットハンド155の吸着面156の形状(U型、しゃもじ型)とに応じて、スピンナテーブル80の形状(保持面81のサイズ)が決まる。したがって、データテーブル10は、受け取り方法とスピンナテーブル形状とが対応づけられているテーブルである。
【0086】
この構成では、受け取り方法設定部113が、設定部111によって選択された加工条件に対応したスピンナテーブル80の形状を取得する。さらに、受け取り方法設定部113は、ロボットハンド155の吸着面156の形状を取得する。そして、受け取り方法設定部113は、取得したスピンナテーブル80の形状および吸着面156の形状に基づいて、データテーブル10を用いて、ロボットハンド155がウェーハ100を受け取る受け取り方法を選択する。
【0087】
また、通知部115は、受け取り方法設定部113によって設定された受け取り方法に応じてデータテーブル10を参照して、スピンナテーブル80の形状を抽出する。そして、抽出したスピンナテーブル80の形状と、認識部112によって認識されたスピンナテーブル80の形状とを比較して、これらが不一致であると判断したときに、不一致であることを作業者に通知する。
【0088】
この構成では、作業者は、ロボットハンド155がウェーハ100を受け取る受け取り方法、あるいは、実際に設置されているスピンナテーブル80の形状に誤りがあることを、事前に認識することができる。
【0089】
なお、図7に示したデータテーブル10では、吸着面156の形状について、しゃもじ型およびU型を示している。これに関し、吸着面156の形状は、吸盤型(細長い平板状を有し、先端に、ウェーハ100の中心を吸着する吸盤を備えている)であってもよい。
【符号の説明】
【0090】
1:研削装置、2:研削送り手段、10:データテーブル、
11:第1の装置ベース、12:第2の装置ベース、13:コラム、
30:チャックテーブル、32:保持面、39:カバー、40:蛇腹カバー、
41:搬入機構、42:搬出機構、
5:研削手段、50:スピンドル、54:研削ホイール、56:研削砥石、
70:スピンナ洗浄機構、71:円筒部、72:容器部、73:回転軸、
76:洗浄水ノズル、77:カバー、
90:モータ、91:エンコーダ、93:テーブルセンサー、
80:スピンナテーブル、81:保持面、
801:スピンナテーブル、802:スピンナテーブル、
83:連結部材、831:第1円筒部、832:第2円筒部、
833:嵌入穴、834:環状隙間部、835:凹部
100:ウェーハ、101:表面、102:裏面、103:保護テープ、
111:設定部、112:認識部、
113:受け取り方法設定部、115:通知部、
155:ロボットハンド、156:吸着面
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7