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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-27
(45)【発行日】2024-06-04
(54)【発明の名称】電線製造装置及び捩れ解消装置
(51)【国際特許分類】
   H01B 13/00 20060101AFI20240528BHJP
【FI】
H01B13/00 525H
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020145432
(22)【出願日】2020-08-31
(65)【公開番号】P2022040634
(43)【公開日】2022-03-11
【審査請求日】2023-03-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000005290
【氏名又は名称】古河電気工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】391045897
【氏名又は名称】古河AS株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121603
【弁理士】
【氏名又は名称】永田 元昭
(74)【代理人】
【識別番号】100141656
【弁理士】
【氏名又は名称】大田 英司
(74)【代理人】
【識別番号】100182888
【弁理士】
【氏名又は名称】西村 弘
(74)【代理人】
【識別番号】100196357
【弁理士】
【氏名又は名称】北村 吉章
(74)【代理人】
【識別番号】100067747
【弁理士】
【氏名又は名称】永田 良昭
(72)【発明者】
【氏名】田中 一弘
【審査官】神田 太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-210694(JP,A)
【文献】特開2016-195090(JP,A)
【文献】特開2012-131605(JP,A)
【文献】特開2008-284560(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01B 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電線を絶縁被覆材で被覆し、断面扁平状の扁平被覆電線を製造する電線製造装置であり、
前記電線を供給する電線供給装置と、
前記電線を被覆する前記絶縁被覆材を供給する被覆材供給装置と、
前記電線が前記絶縁被覆材で被覆された前記扁平被覆電線を巻取る巻取装置とがこの順で配置され、
前記巻取装置より上流側に、走行する前記扁平被覆電線の軸線を回動中心として、前記扁平被覆電線を回転させて捩れを解消する捩れ解消装置が設けられ、
前記被覆材供給装置は、溶融状態の前記絶縁被覆材を、供給された前記電線に対して押出し供給する押出機であり、
前記巻取装置より上流側に設けられた前記捩れ解消装置に加え、該押出機より下流に、前記扁平被覆電線を冷却する冷却装置が設けられ、
該冷却装置の下流に前記捩れ解消装置がさらに設けられた
電線製造装置。
【請求項2】
前記捩れ解消装置より上流側に、
前記扁平被覆電線を貯線するアキュームレータが設けられた
請求項1に記載の電線製造装置。
【請求項3】
前記扁平被覆電線の捩れを検出する捩れ検出装置が設けられた
請求項1又は請求項2に記載の電線製造装置。
【請求項4】
前記捩れ解消装置は、
走行する前記扁平被覆電線の走行方向に沿って配置された2つの走行ガイドローラと、前記走行方向において2つの前記走行ガイドローラの間に配置された中間ガイドローラとが設けられるとともに、前記中間ガイドローラが前記扁平被覆電線に対し、2つの前記走行ガイドローラとは反対側から前記扁平被覆電線の厚み方向に押圧するガイドローラユニットと、
前記ガイドローラユニットを、前記軸線を回動中心として、回転させる回転機構とが設けられた
請求項1乃至請求項3のうちいずれかに記載の電線製造装置。
【請求項5】
前記扁平被覆電線は、扁平方向に複数の前記電線が並列配置されたリボン電線である
請求項1乃至請求項4のうちいずれかに記載の電線製造装置。
【請求項6】
電線供給装置から供給された電線に対して、被覆材供給装置から供給された絶縁被覆材で被覆した扁平被覆電線の走行方向に沿って配置された2つの走行ガイドローラと、前記走行方向において2つの前記走行ガイドローラの間に配置された中間ガイドローラとが設けられるとともに、前記中間ガイドローラが前記扁平被覆電線に対し、2つの前記走行ガイドローラとは反対側から前記扁平被覆電線の厚み方向に押圧するガイドローラユニットと、
前記ガイドローラユニットを、前記扁平被覆電線の軸線を回動中心として、回転させる回転機構とが設けられ、
前記回転機構は、
所定箇所に固定される固定リングと、
前記固定リングの上流側で、前記固定リングに対して回転自在に支持された回転リングと、
前記固定リングに対する前記回転リングの回転を操作する回転操作部とが備えられ、
前記回転リングには、内部に配置された前記ガイドローラユニットが固定され、
前記回転リングの前記軸線を回動中心とした回転に伴い、前記軸線を回動中心として、前記回転リングに固定された前記ガイドローラユニットを回転させる
捩れ解消装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、リボン電線や扁平電線などの断面扁平状の扁平被覆電線を製造する電線製造装置及び捩れ解消装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1に示されるリボン電線のような断面扁平状の扁平被覆電線がある。このような扁平被覆電線は、電線製造装置において、電線の外側に対して絶縁被覆材が供給され、電線の外側を絶縁被覆材で被覆して構成される。
【0003】
そして、このように電線製造装置において、製造された扁平被覆電線は巻取り装置で巻取られる。なお、電線製造装置では、電線の供給から製造された扁平被覆電線の巻取りまで連続して製造され、その過程において、扁平被覆電線を冷却する冷却装置や、貯線するアキュームレータなど、仕様や構造に応じて様々な工程が組み込まれる。
【0004】
上述のように様々な処理を行う電線製造装置では、軸線方向に対して捩れ方向の負荷が扁平被覆電線に生じることがあった。通常の断面円形の電線の場合、捩れ方向の負荷が作用してもその影響は小さい。これに対し、扁平被覆電線は、上述したように断面扁平状であるため、捩れ方向の負荷によって捩れると、整列状態で巻取れなかったり、損傷が生じたり、さらには反りが発生したりするおそれがあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2012-204299号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、この発明は、断面扁平状の扁平被覆電線の製造過程において捩れが生じても捩れを解消することができる電線製造装置及び捩れ解消装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明は、電線を絶縁被覆材で被覆し、断面扁平状の扁平被覆電線を製造する電線製造装置であり、前記電線を供給する電線供給装置と、前記電線を被覆する前記絶縁被覆材を供給する被覆材供給装置と、前記電線が前記絶縁被覆材で被覆された前記扁平被覆電線を巻取る巻取装置とがこの順で配置され、前記巻取装置より上流側に、走行する前記扁平被覆電線の軸線を回動中心として、前記扁平被覆電線を回転させて捩れを解消する捩れ解消装置が設けられ、前記被覆材供給装置は、溶融状態の前記絶縁被覆材を、供給された前記電線に対して押出し供給する押出機であり、前記巻取装置より上流側に設けられた前記捩れ解消装置に加え、該押出機より下流に、前記扁平被覆電線を冷却する冷却装置が設けられ、該冷却装置の下流に前記捩れ解消装置がさらに設けられたことを特徴とする。
【0008】
この発明により、被覆材供給装置と巻取装置との間で、扁平被覆電線に捩れが生じても捩れを解消することができる。
詳述すると、電線供給装置から供給された前記電線に対して、被覆材供給装置から前記絶縁被覆材を供給し、前記絶縁被覆材で前記電線を被覆して構成した扁平被覆電線は、巻取装置で巻取られる。
【0009】
そして、電線製造装置において、扁平被覆電線の軸線を回動中心として、前記扁平被覆電線を回転させて捩れを解消する捩れ解消装置が、巻取装置の上流側に設けられている。つまり、被覆材供給装置から供給された前記絶縁被覆材で前記電線を被覆して構成した扁平被覆電線に生じた捩れを、巻取装置で巻取る前に解消するため、捩れた扁平被覆電線が巻取られることを防止することができる。したがって、巻取装置において、捩れた扁平被覆電線が巻取られることで生じる整列状態の悪化や、扁平被覆電線の損傷や折れ曲がりを防止することができる。
なお、被覆材供給装置と巻取装置との間に、他の処理を施す装置が設けられてもよい。
【0010】
また、前記被覆材供給装置は、溶融状態の前記絶縁被覆材を、供給された前記電線に対して押出し供給する押出機であり、該押出機より下流に、前記扁平被覆電線を冷却する冷却装置が設けられ、該冷却装置の下流に前記捩れ解消装置が設けられてもよい。あるいは、前記巻取装置より上流側に設けられた前記捩れ解消装置に加え、該冷却装置の下流に前記捩れ解消装置がさらに設けられている。
【0011】
これにより、冷却装置で冷却する扁平被覆電線に捩れ方向の負荷が作用していても、捩れ解消装置によって捩れを解消できるため、捩れ方向の負荷を解消した扁平被覆電線を冷却することができる。これにより、捩れ方向の負荷が作用した扁平被覆電線を冷却する場合に生じる反りの発生を防止できる。
【0012】
なお、冷却装置の上流側に捩れ解消装置を設けた場合であっても、冷却する扁平被覆電線に作用する捩れ方向の負荷を解消できる。しかしながら、冷却前の扁平被覆電線は絶縁被覆材が十分に硬化しておらず、捩れ解消装置によって捩れを解消する際に、絶縁被覆材が損傷するおそれがある。これに対し、冷却装置の下流側に設けられた捩れ解消装置によって捩れを解消する扁平被覆電線は絶縁被覆材が十分硬化しており、捩れ解消装置による捩れを解消によって絶縁被覆材が損傷することなく、確実に捩れを解消することができる。
【0013】
また、上述した前記巻取装置より上流側に設けられた捩れ解消装置や、前記巻取装置より上流側においてアキュームレータの下流側に設けられた捩れ解消装置に加え、該冷却装置の下流に前記捩れ解消装置がさらに設けられることで、反りが発生することがなく製造された扁平被覆電線に、冷却装置の下流に設けられた前記捩れ解消装置より下流側で捩れが生じたとしても、捻れを解消して巻取装置で巻取ることができる。
【0014】
この発明の態様として、前記捩れ解消装置より上流側に、前記扁平被覆電線を貯線するアキュームレータが設けられてもよい。
この発明により、前記捩れ解消装置と前記被覆材供給装置との間に、前記扁平被覆電線を貯線するアキュームレータが設けられているため、製造過程において、例えば段替えなどの処理速度が遅い過程が生じても、効率よく扁平被覆電線を製造することができる。
【0015】
その反面、アキュームレータには貯線するための複数のプーリが設けられており、プーリによって走行方向が変更される扁平被覆電線には捩れ方向の負荷が作用して捩れが生じやすくなる。しかしながら、アキュームレータの下流側に捩れ解消装置を配置しているため、アキュームレータにおける捩れ方向の負荷による捩れを解消することができる。
【0016】
またこの発明の態様として、前記巻取装置より上流側に設けられた前記捩れ解消装置に加え、該冷却装置の下流に前記捩れ解消装置がさらに設けられてもよい。
【0017】
この発明により、冷却装置で冷却する扁平被覆電線に捩れ方向の負荷が作用していても、捩れ解消装置によって捩れを解消できるため、捩れ方向の負荷を解消した扁平被覆電線を冷却することができる。これにより、捩れ方向の負荷が作用した扁平被覆電線を冷却する場合に生じる反りの発生を防止できる。
【0018】
なお、冷却装置の上流側に捩れ解消装置を設けた場合であっても、冷却する扁平被覆電線に作用する捩れ方向の負荷を解消できる。しかしながら、冷却前の扁平被覆電線は絶縁被覆材が十分に硬化しておらず、捩れ解消装置によって捩れを解消する際に、絶縁被覆材が損傷するおそれがある。これに対し、冷却装置の下流側に設けられた捩れ解消装置によって捩れを解消する扁平被覆電線は絶縁被覆材が十分硬化しており、捩れ解消装置による捩れを解消によって絶縁被覆材が損傷することなく、確実に捩れを解消することができる。
【0019】
また、上述した前記巻取装置より上流側に設けられた捩れ解消装置や、前記巻取装置より上流側においてアキュームレータの下流側に設けられた捩れ解消装置に加え、該冷却装置の下流に前記捩れ解消装置がさらに設けられることで、反りが発生することがなく製造された扁平被覆電線に、冷却装置の下流に設けられた前記捩れ解消装置より下流側で捩れが生じたとしても、捻れを解消して巻取装置で巻取ることができる。
【0020】
またこの発明の態様として、前記冷却装置及び前記捩れ解消装置の下流側に、前記扁平被覆電線に引張力を付与する引取装置が設けられてもよい。
この発明により、引取装置で、冷却装置を扁平被覆電線が走行するための引張力を作用させる際に、捩れが解消した状態の扁平被覆電線に対して引張力を作用させることができる。したがって、捩れが生じた扁平被覆電線に引張力を作用させる場合に扁平被覆電線が損傷したり、折れ曲がったり、反りが発生したりすることを防止できる。
【0021】
またこの発明の態様として、前記扁平被覆電線の捩れを検出する捩れ検出装置が設けられてもよい。
この発明により、扁平被覆電線に生じた捩れを検出でき、捩れ検出装置で検出した捩れを確実に解消することができる。
【0022】
またこの発明の態様として、前記捩れ解消装置は、走行する前記扁平被覆電線の走行方向に沿って配置された2つの走行ガイドローラと、前記走行方向において2つの前記走行ガイドローラの間に配置された中間ガイドローラとが設けられるとともに、前記中間ガイドローラが前記扁平被覆電線に対し、2つの前記走行ガイドローラとは反対側から前記扁平被覆電線の厚み方向に押圧するガイドローラユニットと、前記ガイドローラユニットを、前記軸線を回動中心として、回転させる回転機構とが設けられてもよい。
【0023】
またこの発明は、電線供給装置から供給された電線に対して、被覆材供給装置から供給された絶縁被覆材で被覆した扁平被覆電線の走行方向に沿って配置された2つの走行ガイドローラと、前記走行方向において2つの前記走行ガイドローラの間に配置された中間ガイドローラとが設けられるとともに、前記中間ガイドローラが前記扁平被覆電線に対し、2つの前記走行ガイドローラとは反対側から前記扁平被覆電線の厚み方向に押圧するガイドローラユニットと、前記ガイドローラユニットを、前記扁平被覆電線の軸線を回動中心として、回転させる回転機構とが設けられ、前記回転機構は、所定箇所に固定される固定リングと、前記固定リングの上流側で、前記固定リングに対して回転自在に支持された回転リングと、前記固定リングに対する前記回転リングの回転を操作する回転操作部とが備えられ、前記回転リングには、内部に配置された前記ガイドローラユニットが固定され、前記回転リングの前記軸線を回動中心とした回転に伴い、前記軸線を回動中心として、前記回転リングに固定された前記ガイドローラユニットを回転させる捩れ解消装置であることを特徴とする。
なお、厚み方向とは、断面扁平状の扁平被覆電線において広い幅方向に対して直交する方向である。
【0024】
この発明により、扁平被覆電線に生じた捩れを確実に解消することができる。
詳しくは、走行方向に沿って配置された2つの走行ガイドローラに掛け渡された扁平被覆電線の中間部分を中間ガイドローラが厚み方向に押圧するため、ガイドローラユニットは3つのガイドローラで走行する扁平被覆電線を確実に保持することができる。
【0025】
そして、3つのガイドローラで走行する扁平被覆電線を確実に保持するガイドローラユニットを回転機構で前記軸線を回動中心として回転させるため、ガイドローラユニットで保持された扁平被覆電線を前記軸線を回動中心として回転させて、扁平被覆電線に生じた捩れを解消することができる。
【0026】
またこの発明の態様として、前記扁平被覆電線は、扁平方向に複数の前記電線が並列配置されたリボン電線であってもよい。
この発明により、扁平方向に複数の前記電線が並列配置されたリボン電線を、捩れが生じても解消して、確実に製造することができる。
【発明の効果】
【0027】
この発明により、断面扁平状の扁平被覆電線の製造過程において捩れが生じても捩れを解消することができる電線製造装置及び捩れ解消装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】扁平被覆電線の概略斜視図。
図2】電線製造装置の概略図。
図3】電線製造方法のフローチャート。
図4】捩れ解消装置の概略斜視図。
図5】捩れ解消装置の概略正面図。
図6図5のA-A断面図。
図7】捩れ解消装置の概略正面図による説明図。
図8】他の扁平被覆電線の説明図。
【発明を実施するための形態】
【0029】
この発明の一実施形態を以下図面と共に説明する。
図1は扁平被覆電線Xの概略斜視図を示し、図2は電線製造装置1の概略図を示し、図3は電線製造装置1で扁平被覆電線Xを製造する製造方法のフローチャートを示している。図4は捩れ解消装置5の概略斜視図を示し、図5は捩れ解消装置5の概略正面図を示し、図6図5のA-A断面図を示している。
【0030】
また、図7は捩れ解消装置5の概略正面図による説明図を示し、詳しくは、図7(a)は回動途中の捩れ解消装置5の正面図を示し、図7(b)は反転状態の捩れ解消装置5の正面図を示している。
なお、図4乃至図7において扁平被覆電線Xは、簡略化して断面小判状に図示している。
【0031】
また、扁平被覆電線Xの断面において左右方向を幅方向Wとし、上下方向を高さ方向Hとしている。さらには、扁平被覆電線Xの長手方向に沿うとともに、扁平被覆電線Xの断面中心を通る方向を軸線方向Lとしている。
【0032】
扁平被覆電線Xは、図1に概略図示するように、複数本の電線X1と、電線X1の外側を被覆する絶縁被覆X2とが備えられている。
電線X1は、銅や銅合金などの導電性を有する電線導体であり、断面円形状に形成されている。なお、電線X1は、適度な可撓性を有している。
【0033】
そして、電線X1は、幅方向Wに適宜の間隔を隔てて複数本を並列配置している。本実施形態では、3本の電線X1を幅方向Wに適宜の間隔を隔てて3列状に並列配置しているが、2本の電線X1を適宜の間隔を隔てて並列配置してもよいし、4本以上の電線X1を適宜の間隔を隔てて並列配置してもよい。
さらには、電線X1の集合体における高さ方向Hの長さが幅方向Wの長さより短ければ、複数本の電線X1を幅方向Wに沿って並列配置するとともに、高さ方向Hに積層してもよい。
【0034】
絶縁被覆X2は、絶縁性を有する熱可塑性樹脂で構成され、幅方向Wに並列配置された複数本の電線X1の外側を一体的に被覆している。
詳しくは、各幅方向Wの外側を断面略円形状に被覆する円形被覆部X21と、円形被覆部X21同士の間を幅方向Wに連結する板状の板状連結部X22とで構成している。
【0035】
また、扁平被覆電線Xにおける幅方向Wの一方側の絶縁被覆X2の側面には、扁平被覆電線Xの向きを明示する明示部X3が形成されている(図1a部拡大図参照)。明示部X3は、絶縁被覆X2の側面にライン状にマーキングしているが、破線状や、凹凸状などで形成してもよい。さらには、一方側の円形被覆部X21の形状を他の円形被覆部X21の形状と異ならせて、扁平被覆電線Xの向きを明示するように形成してもよい。
なお、板状連結部X22は、円形被覆部X21の直径より厚みが薄く形成されている。
【0036】
このように構成された扁平被覆電線Xは、幅方向Wよりも高さ方向Hへの可撓性が高く、複数の回路を構成することができる、断面扁平状の被覆電線であり、例えば、後述の電線製造装置1で製造される。
続いて、扁平被覆電線Xを製造する電線製造装置1及び扁平被覆電線Xの製造方法について以下で説明する。
【0037】
電線製造装置1は、図2に示すように、上流側から下流側に向かって、電線供給装置2、押出機3、冷却槽4、第1捩れ解消装置5a、引取装置6、アキュームレータ7、第2捩れ解消装置5b、検出機8及び巻取装置9がこの順で配置され、構成されている。
【0038】
このように構成された電線製造装置1を用いて扁平被覆電線Xを製造する製造方法は、図3に示すように、電線供給工程S1、押出工程S2、冷却工程S3、第1捩れ解消工程S4、引張力付与工程S5、貯線工程S6、第2捩れ解消工程S7、検出工程S8及び巻取工程S9をこの順で行う。
【0039】
なお、電線製造装置1における捩れ解消装置5(5a,5b)以外の各装置については、従前から使用されている一般的な各装置であり、装置構成等の詳細な説明については省略し、以下において概略について説明する。
【0040】
電線供給工程S1を行う電線供給装置2は、コイル21に巻き回された電線X1を押出機3に向かって供給する装置である。上述したように、3本の電線X1を供給する場合、3つのコイル21を備えた電線供給装置2であってもよいし、3台の電線供給装置2からそれぞれ電線X1を供給し、3本の電線X1をまとめて押出機3に向かって供給するように構成してもよい。
【0041】
押出工程S2を行う押出機3は、供給された電線X1に対して、溶融された絶縁被覆材を供給する装置である。
具体的は、幅方向Wに複数本が並列配置された電線X1が、上流側の電線供給装置2から押出機3に供給され、それぞれの配置を維持したまま、押出機3の内部に導入される。
【0042】
押出機3は、それぞれの配置を維持したまま内部に導入された電線X1に対して、溶融状態の絶縁被覆材を押し出し、所定形状のダイスを通過させて、複数本の電線X1を絶縁被覆X2で一体的に被覆して下流側に導出する。
【0043】
冷却工程S3を行う冷却槽4は、軸線方向Lに長く、冷却水を貯めた水槽であり、押出機3から導出され、複数本の電線X1を絶縁被覆X2で被覆した扁平被覆電線Xを、水槽内部を通過させて冷却する装置である。なお、冷却槽4は、導入前に絶縁被覆X2が十分硬化していない扁平被覆電線Xが、水槽内部を通過することで冷却されて、絶縁被覆X2が十分に硬化する長さで構成している。
【0044】
冷却槽4の下流側に配置され、第1捩れ解消工程S4を行う第1捩れ解消装置5aについては、後ほど詳細に説明する。
引張力付与工程S5を行う引取装置6は、第1捩れ解消装置5aの下流側に配置され、引取装置6より上流側の扁平被覆電線Xに対して、上流側(図2において左側)から下流側(図2において右側)に向かう引張力を作用させるとともに、後続のアキュームレータ7に扁平被覆電線Xを送り出す装置である。
【0045】
貯線工程S6を行うアキュームレータ7は、引取装置6から送り出された扁平被覆電線Xを、後続の巻取装置9に送り出すまで貯線するための装置である。詳しくは、引取装置6から送り出され、アキュームレータ7に導入された扁平被覆電線Xをかけ渡すとともに、巻取装置9に向かって扁平被覆電線Xの方向を変更して送り出すための複数のプーリ71が設けられ、プーリ71同士の間隔を調整可能に構成している。
【0046】
具体的には、アキュームレータ7に導入される扁平被覆電線Xの速さよりも、巻取装置9に向かって扁平被覆電線Xを送り出す速度(巻取装置9が扁平被覆電線Xを巻取る速度)が速い場合、プーリ71同士が近づいて貯線量を減らして導入と送り出しの速度差を吸収する。
【0047】
逆に、アキュームレータ7に導入される扁平被覆電線Xの速さよりも、巻取装置9に向かって扁平被覆電線Xを送り出す速度(巻取装置9が扁平被覆電線Xを巻取る速度)が遅い場合、プーリ71同士が離間し、貯線量を増加させて導入と送り出しの速度差を吸収する。
【0048】
なお、アキュームレータ7は、製造過程において、引張力付与工程S5を行う引取装置6より下流側、後述する第2捩れ解消工程S7を行う第2捩れ解消装置5bより上流側に配置されているが、物理的に、引取装置6より下流側、後述する第2捩れ解消装置5bより上流側に配置される必要はなく、配置環境等によって適宜配置すればよい。
【0049】
アキュームレータ7の下流側に配置され、第2捩れ解消工程S7を行う第2捩れ解消装置5bについては、後ほど詳細に説明する。
アキュームレータ7の下流側に配置された第2捩れ解消装置5bよりもさらに下流側に設けられ、検出工程S8を行う検出機8は、走行する扁平被覆電線Xの向きを識別するセンサである。
【0050】
具体的には、検出機8は、走行する扁平被覆電線Xにおける幅方向Wの一方側の絶縁被覆X2の側面に明示した明示部X3を検出して、扁平被覆電線Xの向き、すなわち扁平被覆電線Xが捩れているかいないかを検出している。
【0051】
巻取工程S9を行う巻取装置9は、電線製造装置1における最下流に位置し、走行する扁平被覆電線Xを巻取コイル91に巻取る装置である。巻取装置9は、巻取コイル91で扁平被覆電線Xを巻取って、電線製造装置1での扁平被覆電線Xの製造を完了する。なお、アキュームレータ7より下流側の扁平被覆電線Xは、巻取コイル91の巻取速度で走行している。
【0052】
続いて、冷却槽4と引取装置6との間と、アキュームレータ7と検出機8との間との両方に配置され、捩れ解消工程(S4,S7)を行う捩れ解消装置5(5a,5b)について詳細に説明する。
捩れ解消装置5は、走行する扁平被覆電線Xに生じた、軸線方向Lの捩れを解消する装置である。
【0053】
捩れ解消装置5は、導入プーリ51、支持リング52、ガイドローラユニット53、回転ハンドル54、及び回転ベルト55とが備えられている。
導入プーリ51は、支持リング52の上流側に配置され、ガイドローラユニット53に導入する扁平被覆電線Xを案内するように、幅方向Wに平行な回転軸を中心として回転するプーリである。導入プーリ51は、扁平被覆電線Xが掛けられる外周溝が外周面に沿って形成されている。
【0054】
支持リング52は、導入プーリ51の下流側に配置され、幅方向W及び高さ方向Hに沿うリング体である。支持リング52は、下流側の固定リング521と、固定リング521の上流側で、固定リング521に対して回転自在な回転リング522とが備えられている。
【0055】
固定リング521は、捩れ解消装置5を設置箇所に固定する固定ブラケット523を備え、回転リング522を上流側で回転自在に支持している。
回転リング522は、外周面に回転ベルト55が掛けられる外周溝が形成されるとともに、内部にガイドローラユニット53を支持している。
なお、固定リング521と回転リング522は、リング内側を通過する扁平被覆電線Xの軸線方向Lが中心となる同心円である。
【0056】
ガイドローラユニット53は、固定リング521に対して回転支持された回転リング522のリング内側に配置され、固定されている。ガイドローラユニット53は、2つの走行ガイドローラ531と、中間ガイドローラ532と、走行ガイドローラ531及び中間ガイドローラ532を支持する支持板533とを備えている。
【0057】
詳述すると、走行ガイドローラ531は、支持リング52のリング内側を軸線方向Lに沿って走行する扁平被覆電線Xの底面側に配置されるとともに、軸線方向Lに所定間隔を隔てて配置されている。そして、走行ガイドローラ531は幅方向Wに沿う支持軸によって回転自在に支持され、走行ガイドローラ531を支持する支持軸は、支持板533に固定されている。
【0058】
中間ガイドローラ532は、幅方向Wに沿う支持軸によって回転自在に支持され、支持リング52のリング内側を軸線方向Lに沿って走行する扁平被覆電線Xの上面側に配置されている。さらに、中間ガイドローラ532は、軸線方向Lに所定間隔を隔てて配置された走行ガイドローラ531同士の間に配置されている。そして、中間ガイドローラ532を支持する支持軸は、支持板533に対して高さ方向Hに位置調整可能に固定されている。
【0059】
そして、走行ガイドローラ531及び中間ガイドローラ532は同形状のガイドローラであり、外周面に扁平被覆電線Xが掛けられる外周溝を形成している。
このように構成したガイドローラユニット53において、軸線方向Lに沿って所定間隔を隔てて配置された2つの走行ガイドローラ531に掛け渡され、軸線方向Lに走行する扁平被覆電線Xを、中間ガイドローラ532が上面側から高さ方向Hに押付けるように構成されている(図6参照)。
【0060】
回転ハンドル54は、上下流方向の位置が回転リング522と同じ位置に配置された操作リング541と、操作リング541を回転操作する回転ハンドル542とを備えている。
操作リング541は、軸線方向Lに平行な方向を回動中心として回転自在に構成されるとともに、回転ベルト55が掛けられる外周溝が外周に形成されている。なお、操作リング541は、回転リング522より小径で形成されている。
【0061】
回転ハンドル542は操作リング541の中心に設けられ、利用者によって操作リング541を回転するために回転ハンドル542を回転操作することができる。
回転ベルト55は、回転リング522の外周溝と、操作リング541の外周溝とに掛け渡される無端状のベルトである。
【0062】
上述のように、各要素が構成された捩れ解消装置5は、回転ハンドル54の回転ハンドル542を操作することで、軸線方向Lに走行する扁平被覆電線Xを保持するガイドローラユニット53を、軸線方向Lを回動中心として、扁平被覆電線Xとともに回動することができる。
【0063】
詳述すると、上述したように、回転リング522に支持されたガイドローラユニット53において、中間ガイドローラ532が支持板533に対して位置調整可能に支持されている。そして、中間ガイドローラ532は、2つの走行ガイドローラ531に掛け渡された扁平被覆電線Xを高さ方向H(厚み方向)に押付けている。
【0064】
より具体的には、冷却槽4と引取装置6との間に配置された第1捩れ解消装置5aを通過する扁平被覆電線Xは、引取装置6の引張力が作用し、張り詰めた状態である。また、アキュームレータ7と検出機8との間に配置された第2捩れ解消装置5bを通過する扁平被覆電線Xも、巻取装置9の巻取り力が作用し、張り詰めた状態である。このように張り詰めた状態の扁平被覆電線Xが、軸線方向Lに所定間隔隔てて配置された2つの走行ガイドローラ531に掛け渡されるとともに、2つの走行ガイドローラ531の間において中間ガイドローラ532によって高さ方向H(厚み方向)から押付けられている。
【0065】
したがって、張り詰めた状態で軸線方向Lに走行する扁平被覆電線Xは、断面扁平状における幅方向Wに直交する高さ方向Hの押付け力が作用し、走行ガイドローラ531及び中間ガイドローラ532の外周を支点として高さ方向Hに湾曲することとなる。そのため、走行する扁平被覆電線Xは走行ガイドローラ531及び中間ガイドローラ532によって保持され、幅方向W及び高さ方向Hにおいて扁平被覆電線Xの走行位置を規制することができる。
【0066】
このように構成されたガイドローラユニット53は、支持リング52において、固定リング521に回転支持された回転リング522に固定されている。また、回転リング522の外周溝と操作リング541の外周溝とに無端状の回転ベルト55が掛け渡され、回転ハンドル542を回転操作することで、回転ベルト55を介して、回転リング522は軸線方向Lを回動中心として回転する。したがって、回転ハンドル542を回転操作することで、図7(a)に図示するように、回転リング522に固定されたガイドローラユニット53を、軸線方向Lを回動中心として回転することができる。
【0067】
なお、外周溝に回転ベルト55が掛けられる操作リング541の外径が、外周溝に回転ベルト55が掛けられる回転リング522の外径より小径であるため、回転ハンドル542の回転操作による回転速度を減速してガイドローラユニット53を回転することができる。
【0068】
つまり、捩れ解消装置5は、回転ハンドル542の回転操作により、ガイドローラユニット53で幅方向W及び高さ方向Hの位置が規制された扁平被覆電線Xを、軸線方向Lを回動中心として回転することができる。また、回転ハンドル542の回転操作による回転速度を減速してガイドローラユニット53を回転するため、精度よくガイドローラユニット53で位置規制した扁平被覆電線Xを回転することができる。
【0069】
したがって、捩れ解消装置5を備えた電線製造装置1では、図7(b)に図示するように、軸線方向Lに対して捩れが生じた扁平被覆電線Xを180度回転(反転)して、捩れを解消することができる。
【0070】
詳述すると、冷却槽4の下流側に配置された第1捩れ解消装置5aでは、第1捩れ解消装置5aより上流側の扁平被覆電線Xに生じた捩れに対して、冷却槽4で冷却された扁平被覆電線Xを軸線方向Lに対して反転して捩れを解消することができる。したがって、捩れの影響がない状態の扁平被覆電線Xを冷却槽4で冷却することができる。
【0071】
また、アキュームレータ7と検出機8との間に配置された第2捩れ解消装置5bでは、複数のプーリ71によって捩れ方向の負荷が作用した扁平被覆電線Xに捩れが生じたとしても、検出機8で扁平被覆電線Xの捩れを検出し、扁平被覆電線Xを軸線方向Lに対して反転して捩れを解消することができる。したがって、捩れのない扁平被覆電線Xを巻取装置9で巻取ることができる。
【0072】
上述したように、電線製造装置1は、電線X1を絶縁被覆X2で被覆し、断面扁平状の扁平被覆電線Xを製造する装置である。電線製造装置1は、電線X1を供給する電線供給装置2(電線供給工程S1)と、電線X1を被覆する絶縁被覆X2を供給する押出機3(押出工程S2)と、電線X1が絶縁被覆X2で被覆された扁平被覆電線Xを巻取る巻取装置9(巻取工程S9)とがこの順で配置されている。電線製造装置1において巻取工程S9を行う巻取装置9より上流側に、走行する扁平被覆電線Xの軸線方向Lを回動中心として、扁平被覆電線Xを回転(反転)させて捩れを解消する捩れ解消装置5が設けられている。そのため、押出機3(押出工程S2)と巻取装置9(巻取工程S9)との間で、扁平被覆電線Xに捩れが生じても捩れを解消することができる。
【0073】
詳述すると、電線供給工程S1で電線供給装置2から供給された電線X1に対して、押出工程S2で押出機3から絶縁被覆X2を供給し、電線X1を絶縁被覆X2で被覆して構成した扁平被覆電線Xは、電線製造装置1において巻取工程S9を行う巻取装置9で巻取られる。
【0074】
そして、電線製造装置1において、巻取工程S9を行う巻取装置9の上流側に、扁平被覆電線Xの軸線方向Lを回動中心として、扁平被覆電線Xを回転(反転)させて捩れを解消する捩れ解消装置5(捩れ解消工程(S4,S7))が設けられている。つまり、押出機3から供給された絶縁被覆X2で電線X1を被覆して構成した扁平被覆電線Xに生じた捩れを、巻取工程S9を行う巻取装置9で巻取る前に解消するため、捩れた扁平被覆電線Xが巻取られることを防止できる。したがって、巻取工程S9を行う巻取装置9において、捩れた扁平被覆電線Xが巻取られることで生じる整列状態の悪化や、扁平被覆電線Xの損傷や折れ曲がりを防止できる。
【0075】
また、第2捩れ解消工程S7を行う第2捩れ解消装置5bより上流側である、押出工程S2を行う押出機3と第2捩れ解消工程S7を行う第2捩れ解消装置5bとの間に、扁平被覆電線Xを貯線するアキュームレータ7(貯線工程S6)が設けられているため、製造過程において、処理速度が遅い過程が生じても、効率よく扁平被覆電線Xを製造することができる。
【0076】
その反面、アキュームレータ7には貯線するための複数のプーリ71が設けられており、プーリ71によって走行方向が変更される扁平被覆電線Xには捩れ方向の負荷が作用して捩れが生じやすくなる。しかしながら、貯線工程S6を行うアキュームレータ7の下流側に、第2捩れ解消工程S7を行う第2捩れ解消装置5bを配置しているため、アキュームレータ7における捩れ方向の負荷による捩れを解消することができる。
【0077】
また、扁平被覆電線Xの捩れを検出する検出機8が設けられている。そのため、扁平被覆電線Xに生じた捩れを検出工程S8で検出でき、第2捩れ解消工程S7を行う第2捩れ解消装置5bにより扁平被覆電線Xに生じた捩れを確実に解消することができる。
【0078】
また、押出工程S2を行う押出機3は、溶融状態の絶縁被覆X2を、供給された電線X1に対して押出し供給する装置である。押出工程S2を行う押出機3より下流に、扁平被覆電線Xを冷却する冷却槽4が設けられ、冷却工程S3を行う冷却槽4の下流に、第1捩れ解消工程S4を行う第1捩れ解消装置5aが設けられている。そのため、冷却工程S3において冷却槽4で冷却する扁平被覆電線Xに捩れ方向の負荷が作用していても、第1捩れ解消工程S4において第1捩れ解消装置5aによって捩れを解消できるため、捩れ方向の負荷を解消した扁平被覆電線Xを冷却することができる。これにより、捩れ方向の負荷が作用した扁平被覆電線Xを冷却する場合に生じる反りの発生を防止できる。
【0079】
なお、冷却槽4の上流側に第1捩れ解消装置5aを設けた場合であっても、冷却する扁平被覆電線Xに作用する捩れ方向の負荷を解消できる。しかしながら、冷却前の扁平被覆電線Xは絶縁被覆X2が十分に硬化しておらず、第1捩れ解消装置5aによって捩れを解消する際に、絶縁被覆X2が損傷するおそれがある。
【0080】
これに対し、冷却槽4の下流側に設けられた第1捩れ解消装置5aによって捩れを解消する扁平被覆電線Xは絶縁被覆X2が十分硬化しており、第1捩れ解消装置5aによる捩れを解消によって絶縁被覆X2が損傷することなく、確実に捩れを解消することができる。
【0081】
また、巻取装置9より上流側において引取装置6の下流側に設けられた第2捩れ解消装置5bに加え、冷却槽4の下流に第1捩れ解消装置5aがさらに設けられているため、反りが発生することがなく製造された扁平被覆電線Xに第1捩れ解消装置5aより下流側で捩れが生じたとしても、第2捩れ解消装置5bで捻れを解消し、巻取装置9で巻取ることができる。
【0082】
また、冷却工程S3を行う冷却槽4及び第1捩れ解消工程S4を行う第1捩れ解消装置5aより下流側に、扁平被覆電線Xに引張力を付与する引取装置6が設けられている。そのため、引張力付与工程S5において引取装置6で、冷却槽4を扁平被覆電線Xが走行するための引張力を作用させる際に、捩れが解消した状態の扁平被覆電線Xに対して引張力を作用させることができる。したがって、捩れが生じた扁平被覆電線Xに対して引張力を作用させる場合に扁平被覆電線Xが損傷したり、折れ曲がったり、反りが発生したりすることを防止できる。
【0083】
また、捩れ解消工程(S4,S7)を行う捩れ解消装置5は、走行する扁平被覆電線Xの軸線方向Lに沿って配置された2つの走行ガイドローラ531と、軸線方向Lにおいて2つの走行ガイドローラ531の間に配置された中間ガイドローラ532とが設けられている。また、捩れ解消装置5は、中間ガイドローラ532が、2つの走行ガイドローラ531の間を走行する扁平被覆電線Xを、2つの走行ガイドローラ531とは反対側から、高さ方向H(厚み方向)に押圧するガイドローラユニット53を備えている。さらに、捩れ解消装置5は、ガイドローラユニット53を、軸線方向Lを回動中心として、回転(反転)させる支持リング52及び回転ハンドル54とが設けられている。そのため、捩れ解消工程(S4,S7)で扁平被覆電線Xに生じた捩れを確実に解消することができる。
【0084】
詳しくは、軸線方向Lに沿って配置された2つの走行ガイドローラ531に掛け渡された扁平被覆電線Xの中間部分を中間ガイドローラ532が高さ方向H(厚み方向)に押圧するため、ガイドローラユニット53は3つのガイドローラ(531,532)で走行する扁平被覆電線Xを確実に保持することができる。
【0085】
そして、3つのガイドローラ(531,532)で走行する扁平被覆電線Xを確実に保持するガイドローラユニット53を支持リング52及び回転ハンドル54で軸線方向Lを回動中心として回転(反転)させるため、ガイドローラユニット53で保持された扁平被覆電線Xを、軸線方向Lを回動中心として回転(反転)させて、扁平被覆電線Xに生じた捩れを解消することができる。
【0086】
以上、この発明の構成と前述の実施形態との対応において、この発明の電線は電線X1に対応し、
以下同様に、
絶縁被覆材は絶縁被覆X2に対応し、
扁平被覆電線及びリボン電線は扁平被覆電線Xに対応し、
電線製造装置は電線製造装置1に対応し、
電線供給装置は電線供給工程S1を行う電線供給装置2に対応し、
被覆材供給装置及び押出機は押出工程S2を行う押出機3に対応し、
巻取装置は巻取工程S9を行う巻取装置9に対応し、
軸線及び走行方向は軸線方向Lに対応し、
捩れ解消装置は捩れ解消工程(S4,S7)を行う捩れ解消装置5に対応し、
アキュームレータは貯線工程S6を行うアキュームレータ7に対応し、
冷却装置は冷却工程S3を行う冷却槽4に対応し、
引取装置は引張力付与工程S5を行う引取装置6に対応し、
検出装置は、検出機8に対応し、
走行ガイドローラは走行ガイドローラ531に対応し、
中間ガイドローラは中間ガイドローラ532に対応し、
厚み方向は高さ方向Hに対応し、
ガイドローラユニットはガイドローラユニット53に対応し、
回転機構は支持リング52及び回転ハンドル54に対応するも、この発明は、前述の実施形態に限定されるものではない。
【0087】
例えば、上述の電線製造装置1では、第1捩れ解消装置5aと第2捩れ解消装置5bとの2台の捩れ解消装置5を備えたが、第1捩れ解消装置5aと第2捩れ解消装置5bとのうち一方のみを備えてもよい。
また、第1捩れ解消装置5aの上流側あるいは下流側に検出機8を配置し、検出機8で扁平被覆電線Xの捩れを検出し、第1捩れ解消装置5aで捩れを解消してもよい。さらに、上述の説明では、第2捩れ解消装置5bの下流側に検出機8を設けたが、当該検出機8は第2捩れ解消装置5bの上流側に配置されてもよい。
【0088】
また、上述の電線製造装置1では、検出機8で扁平被覆電線Xの捩れを検出し、第2捩れ解消装置5bで捩れを解消したが、検出機8を備えず、利用者が扁平被覆電線Xの捩れを目視確認して、第2捩れ解消装置5bで捩れを解消してもよい。
【0089】
また、上述の捩れ解消装置5では、回転ハンドル54における回転ハンドル542で回転操作して、軸線方向Lを回動中心としてガイドローラユニット53を回転(反転)したが、モータなどの回転駆動装置でガイドローラユニット53を回転(反転)させるように構成してもよい。
【0090】
さらには、検出機8による捩れ検出結果によって回転駆動装置を駆動制御するように構成してもよいし、検出結果に基づき回転駆動装置を駆動制御する場合、検出機は捩れ方向を検出できるとより好ましい。
【0091】
さらに、上述の説明では、電線X1と絶縁被覆X2とで構成された扁平被覆電線Xを電線製造装置1で製造したが、高さ方向Hに対して幅方向Wに広い断面扁平状となる被覆電線であればこれに限定されない。例えば、図8(a)に図示するフレキシブルフラットケーブルXaや図8(b)に図示する扁平電線Xbを、捩れ解消装置5で捩れを解消しながら電線製造装置1で製造してもよい。
【0092】
また、電線X1は、被覆のない裸導体でも被覆電線でもよい。すなわち電線X1は単芯の導体でも、撚線でもよく、電線X1が被覆電線であり、これを絶縁被覆X2で覆った扁平被覆電線Xであってもよい。電線X1の本数も特に限定されない。
【0093】
なお、図8(a)に示すフレキシブルフラットケーブルXaは、平角導体で構成された電線X1aを幅方向Wに複数並列配置し、並列配置した電線X1aを高さ方向Hの両側から絶縁シートX2aで挟み込んで構成している。したがって、フレキシブルフラットケーブルXaを製造する電線製造装置は、溶融した絶縁樹脂を押し出す電線供給装置2の代わりに、絶縁シートX2aを供給する装置となる。フレキシブルフラットケーブルXaを製造する電線製造装置であっても、捩れ解消装置5を備えることで、上述の扁平被覆電線Xを製造する電線製造装置1と同様の効果を奏することができる。
【0094】
また、図8(b)に示す扁平電線Xbは、断面小判状の電線X1bの外側を溶融した絶縁樹脂で被覆して構成している。扁平電線Xbを製造する電線製造装置であっても、捩れ解消装置5を備えることで、上述の扁平被覆電線Xを製造する電線製造装置1と同様の効果を奏することができる。
【0095】
また、電線製造装置1の構成は、上述の構成のみならず、例えば、電線X1を焼鈍する焼鈍装置が電線供給装置2と押出機3との間に配置されてもよいし、幅方向Wに並列配置した複数本の被覆電線を樹脂で連結して扁平被覆電線Xを構成するための連結装置が電線供給装置2の代わりに設けられてもよい。
【符号の説明】
【0096】
1…電線製造装置
2…電線供給装置
3…押出機
4…冷却槽
5…捩れ解消装置
6…引取装置
7…アキュームレータ
8…検出機
9…巻取装置
52…支持リング
53…ガイドローラユニット
54…回転ハンドル
531…走行ガイドローラ
532…中間ガイドローラ
L…軸線方向
H…高さ方向
X…扁平被覆電線
X1…電線
X2…絶縁被覆
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8