(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-27
(45)【発行日】2024-06-04
(54)【発明の名称】コネクタハウジング、コネクタ及びコネクタ付き電線、コネクタユニット、並びにコネクタ付き電線の製造方法
(51)【国際特許分類】
H01R 4/2433 20180101AFI20240528BHJP
H01R 13/502 20060101ALI20240528BHJP
H01R 13/6473 20110101ALI20240528BHJP
H01R 43/00 20060101ALI20240528BHJP
H01R 4/2452 20180101ALI20240528BHJP
H01R 43/01 20060101ALI20240528BHJP
【FI】
H01R4/2433
H01R13/502 Z
H01R13/6473
H01R43/00 B
H01R4/2452
H01R43/01 A
(21)【出願番号】P 2020162104
(22)【出願日】2020-09-28
【審査請求日】2023-06-22
(31)【優先権主張番号】P 2019177104
(32)【優先日】2019-09-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000005290
【氏名又は名称】古河電気工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】391045897
【氏名又は名称】古河AS株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121603
【氏名又は名称】永田 元昭
(74)【代理人】
【識別番号】100141656
【氏名又は名称】大田 英司
(74)【代理人】
【識別番号】100182888
【氏名又は名称】西村 弘
(74)【代理人】
【識別番号】100196357
【氏名又は名称】北村 吉章
(74)【代理人】
【識別番号】100067747
【氏名又は名称】永田 良昭
(72)【発明者】
【氏名】平岩 徹也
(72)【発明者】
【氏名】和田 卓十
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 清
【審査官】松原 陽介
(56)【参考文献】
【文献】実開平01-062661(JP,U)
【文献】実開平01-137091(JP,U)
【文献】特開2004-349024(JP,A)
【文献】特開平08-007968(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 4/2433
H01R 13/502
H01R 13/6473
H01R 43/00
H01R 4/2452
H01R 43/01
H01R 43/048
H01R 13/514
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に導体を備えた電線と接続される電線接続部を備えた導電性を有する接続端子と、該接続端子を保持する、誘電性を有するコネクタハウジングとが備えられたコネクタにおいて、
前記電線接続部が配置される接続部配置部が前記コネクタハウジングに設けられ、
前記接続部配置部に、配置された前記電線接続部と前記電線とを一対の加圧手段で挟み込んで接続する際の前記コネクタハウジングの破壊または変形が抑制される、他の部位に対して強度の高い高強度部が設けられ
、
前記高強度部には、前記他の部位よりも強度の高い高強度部材を備えた
コネクタ。
【請求項2】
前記コネクタハウジングにおける、前記他の部位は、非金属材料のみで形成され、
前記高強度部は、金属製部材である
請求項
1に記載のコネクタ。
【請求項3】
前記高強度部は、前記電線の前記コネクタハウジングへの接続部分の特性インピーダンスを所定の範囲内となるように整合する大きさ及び形状で設けられた
請求項1
又は2に記載のコネクタ。
【請求項4】
前記高強度部には、前記コネクタハウジングにおける、被加圧箇所を該被加圧箇所の周辺に対して前記一方の加圧手段の側へ隆起する隆起部が設けられた
請求項1
乃至3のいずれか1項に記載のコネクタ。
【請求項5】
前記コネクタハウジングにおいて、前記接続部配置部と対向する箇所に、
前記加圧手段が通過する、または一時的に存在することを許容する貫通孔を有する
請求項1乃至
4のいずれか1項に記載のコネクタ。
【請求項6】
前記コネクタハウジングと、該コネクタハウジングと共に前記接続端子を内部に収容するように前記コネクタハウジングに組み付けられるコネクタハウジングカバーとで組付け型コネクタハウジングを構成した
請求項1乃至
5のいずれか1項に記載のコネクタ。
【請求項7】
前記電線接続部に、前記導体が絶縁被覆によって被覆された前記電線の末端部に有する前記導体に当接するまで突き刺して圧接する圧接片を備えた
請求項1乃至
6のいずれか1項に記載のコネクタ。
【請求項8】
請求項1乃至
7のいずれか1項に記載のコネクタを複数備えるとともに、
複数の前記コネクタを保持するユニットハウジングが備えられ、
前記ユニットハウジングに、複数の前記コネクタが保持された
コネクタユニット。
【請求項9】
導電性を有する接続端子及び該接続端子を保持する、誘電性を有するコネクタハウジングを有するコネクタと、前記接続端子に末端部が接続される電線とを備え、前記接続端子に備えた電線接続部と前記電線とを電気的に接続するコネクタ付き電線の製造方法において、
前記コネクタハウジングに、前記接続端子を保持した状態で前記電線接続部が配置される接続部配置部が設けられるとともに、
前記接続部配置部に配置された前記電線接続部と前記電線とを一対の加圧手段で挟み込んで接続する際の前記コネクタハウジングの破壊または変形が抑制される、他の部位に対して強度の高い高強度部として
、前記他の部位よりも強度の高い高強度部材を備えた被加圧箇所が設けられ、
前記接続部配置部に前記電線接続部が配置されるように前記接続端子を前記コネクタハウジングに配置する端子配置工程と、
前記電線接続部に前記電線の前記末端部を配置する電線配置工程と、
一対の前記加圧手段により、これら電線接続部と電線とを両側から挟み込んで互いに接続する電線接続工程とをこの順に行い、
前記電線接続工程において、
一対の前記加圧手段のうち、これら加圧手段の挟み込み方向において前記接続部配置部を有する側と反対側に配置され、前記コネクタハウジングを介して前記電線接続部を加圧する一方の前記加圧手段によって、前記コネクタハウジングにおける前記被加圧箇所を介して該電線接続部を加圧する
コネクタ付き電線の製造方法。
【請求項10】
内部に導体を備えた電線と接続される電線接続部が設けられた、導電性を有する接続端子を保持する、誘電性を有するコネクタハウジングにおいて、
前記電線接続部が配置される接続部配置部が設けられ、
前記接続部配置部は、該接続部配置部に配置された前記電線接続部と前記電線とを一対の加圧手段で挟み込んで接続する際の前記コネクタハウジングの破壊または変形が抑制される、他の部位に対して強度の高い高強度部であ
り、
前記高強度部には、前記他の部位よりも強度の高い高強度部材を備えた
コネクタハウジング。
【請求項11】
内部に導体を有する電線と、前記電線と電気的に接続される電線接続部が設けられた、導電性を有する接続端子及び該接続端子を保持する、誘電性を有するコネクタハウジングとが備えられたコネクタ付き電線において、
前記コネクタハウジングに、前記電線接続部が配置される接続部配置部が設けられ、
前記接続部配置部は、該接続部配置部に配置された前記電線接続部と前記電線とを一対の加圧手段で挟み込んで接続する際の前記コネクタハウジングの破壊または変形が抑制される、他の部位に対して強度の高い高強度部であ
り、
前記高強度部には、前記他の部位よりも強度の高い高強度部材を備えた
コネクタ付き電線。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、内部に導体を備えた電線と接続される電線接続部を備えた接続端子を保持するコネクタハウジング、コネクタ及びコネクタ付き電線、コネクタユニット、並びにコネクタ付き電線の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車等の車両には、電気機器間で信号を送受信したり、これら電気機器に電力を供給したりするために、コネクタ付きケーブルが用いられている。
近年、車両制御の複雑化、高速化に伴って、電気機器が増加することに加えてコネクタ付きケーブルを構成する、電線やコネクタの数が増加する傾向にある。
【0003】
一方、車室内空間における乗員の快適性向上や、電気機器の配設スペースを確保するため、車両に配索されるコネクタ付きケーブルの省スペース化が求められている。
このような背景の下、電線の細径化やコネクタハウジングの小型化が検討されている。
【0004】
ところで、従来のコネクタ付き電線は、特許文献1に例示されるように、端子付き電線の端子部分(すなわち、電線に接続した接続端子)を、コネクタハウジングに貫通形成された端子挿入孔に挿入し、該端子挿入孔の一部を成す端子収容室(キャビティ)まで押し込んで該端子収容室に収容した状態で保持するものが知られている。
【0005】
しかしながら、端子付き電線の端子部分をコネクタハウジングの端子挿入孔に挿入する際に電線が座屈(屈曲)して電線の伝送特性や耐久性が低下するおそれがある。
例えば、一対の電線を互いに撚り合わされたツイストペア電線は、特性インピーダンスが規定される場合がある。このようなツイストペア電線に接続された接続端子を端子挿入孔に押し込む際に電線が座屈して、電線同士の間隔が変化する場合があった。このように、電線同士の間隔が変化すると、所定の特性インピーダンスが得られないおそれがある。
【0006】
特に、上述したように電線が細径化したり、コネクタハウジングが小型化したりすると、電線に接続された接続端子を端子挿入孔に、より一層挿入し難くなるとともに、電線の強度が低下する。そのため、例えば、導体断面積が0.35mm2未満の細径電線などは、コネクタハウジングの端子挿入孔に電線に接続された接続端子を挿入する際に電線が座屈するという上述した課題が顕著になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明はこのような課題に鑑みてなされたもので、座屈による電線の伝送特性や耐久性の低下を抑制できるコネクタハウジング、コネクタ及びコネクタ付き電線、コネクタユニット、並びにコネクタ付き電線の製造方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明は、内部に導体を備えた電線と接続される電線接続部を備えた導電性を有する接続端子と、該接続端子を保持する、誘電性を有するコネクタハウジングとが備えられたコネクタにおいて、前記電線接続部が配置される接続部配置部が前記コネクタハウジングに設けられ、前記接続部配置部に、配置された前記電線接続部と前記電線とを一対の加圧手段で挟み込んで接続する際の前記コネクタハウジングの破壊または変形が抑制される、他の部位に対して強度の高い高強度部が設けられ、前記高強度部には、前記他の部位よりも強度の高い高強度部材を備えたものである。
【0010】
またこの発明は、導電性を有する接続端子及び該接続端子を保持する、誘電性を有するコネクタハウジングを有するコネクタと、前記接続端子に末端部が接続される電線とを備え、前記接続端子に備えた電線接続部と前記電線とを電気的に接続するコネクタ付き電線の製造方法において、前記コネクタハウジングに、前記接続端子を保持した状態で前記電線接続部が配置される接続部配置部が設けられるとともに、前記接続部配置部に配置された前記電線接続部と前記電線とを一対の加圧手段で挟み込んで接続する際の前記コネクタハウジングの破壊または変形が抑制される、他の部位に対して強度の高い高強度部として、前記他の部位よりも強度の高い高強度部材を備えた被加圧箇所が設けられ、前記接続部配置部に前記電線接続部が配置されるように前記接続端子を前記コネクタハウジングに配置する端子配置工程と、前記電線接続部に前記電線の前記末端部を配置する電線配置工程と、一対の前記加圧手段により、これら電線接続部と電線とを両側から挟み込んで互いに接続する電線接続工程とをこの順に行い、前記電線接続工程において、一対の前記加圧手段のうち、これら加圧手段の挟み込み方向において前記接続部配置部を有する側と反対側に配置され、前記コネクタハウジングを介して前記電線接続部を加圧する一方の前記加圧手段によって、前記コネクタハウジングにおける前記被加圧箇所を介して該電線接続部を加圧するものである。
【0011】
またこの発明は、内部に導体を備えた電線と接続される電線接続部が設けられた、導電性を有する接続端子を保持する、誘電性を有するコネクタハウジングにおいて、前記電線接続部が配置される接続部配置部が設けられ、前記接続部配置部を、該接続部配置部に配置された前記電線接続部と前記電線とを一対の加圧手段で挟み込んで接続する際の前記コネクタハウジングの破壊または変形が抑制される、他の部位に対して強度の高い高強度部であり、前記高強度部には、前記他の部位よりも強度の高い高強度部材を備えたものである。
【0012】
またこの発明は、内部に導体を有する電線と、前記電線と電気的に接続される電線接続部が設けられた、導電性を有する接続端子及び該接続端子を保持する、誘電性を有するコネクタハウジングとが備えられたコネクタ付き電線において、前記コネクタハウジングに、前記電線接続部が配置される接続部配置部が設けられ、前記接続部配置部を、該接続部配置部に配置された前記電線接続部と前記電線とを一対の加圧手段で挟み込んで接続する際の前記コネクタハウジングの破壊または変形が抑制される、他の部位に対して強度の高い高強度部であり、前記高強度部には、前記他の部位よりも強度の高い高強度部材を備えたものである。
【0013】
この発明により、電線を、コネクタハウジングに保持された接続端子に接続する際に、該電線が座屈することなく電線と接続端子とを適切に接続することができる。
例えば、前記接続部配置部に配置された前記電線接続部と該電線接続部に配置された前記電線とは、これらの両側から一対の加圧手段により挟み込んで互いに接続される。その際、一対の前記加圧手段のうち、挟み込み方向の一方の前記加圧手段は、前記コネクタハウジングにおける前記接続部配置部を有する側と反対側に配置される。このため、前記電線接続部と前記電線とを接続する際、一方の前記加圧手段は、前記コネクタハウジングを介して前記電線接続部を間接的に加圧することになる。このとき、前記コネクタハウジングは、一方の前記加圧手段によって直接的に加圧される。
【0014】
そこで、本発明は、前記コネクタハウジングにおける、一方の前記加圧手段によって直接的に加圧される箇所を被加圧箇所として、該被加圧箇所を、接続部配置部に配置された前記電線接続部と前記電線とを一対の加圧手段で挟み込んで接続する際の前記コネクタハウジングの破壊または変形を抑制するために、前記接続配置部に、他の部位に対して強度の高い高強度部が設けられた構成を採用している。
【0015】
また、本発明によれば、電線の末端部と電線接続部とをコネクタハウジングの内部に配置した状態で、一対の加圧手段により挟み込んで接続できるため、接続部配置部に電線接続部を配置した後で、電線接続部に電線の末端部を配置することができる。すなわち、本発明によれば、電線の末端部と電線接続部とを、コネクタハウジングの内部へ別々に配置することが可能となるため、互いに接続された状態でコネクタハウジングの内部へ挿入する場合と比してスムーズに挿入することができる。
【0016】
より詳しくは、例えば、従来のコネクタ付き電線の製造方法のように、電線の末端部と電線接続部とを、互いに接続された状態でコネクタハウジングの内部にまとめて挿入した場合、挿入途中においてコネクタハウジングの内壁に引っ掛かり易くなり、座屈することが懸念される。
【0017】
これに対して、本発明においては、電線の末端部と電線接続部とを、コネクタハウジングの内部に互いに接続する前に配置することができるため、挿入途中において電線の末端部や電線接続部が座屈することがなくスムーズに挿入することできる。
【0018】
前記構成によれば、前記コネクタハウジングが破壊したり変形したりすることがなく、かつ電線が座屈することなく一対の加圧手段により前記電線接続部と前記電線とを接続することができる。したがって、コネクタに接続される電線の座屈による電線の伝送特性や耐久性の低下を抑制することができる。
【0019】
さらに、上述したように、前記高強度部に前記高強度部材を備えることで、被加圧箇所が他の部位と比して厚肉化することを抑制しながら該被加圧箇所の強度を高めることができる。
したがって、コネクタハウジングが大型化することなく、被加圧箇所の強度を高めることができる。
【0020】
ここで、前記一対の加圧手段とは、前記電線接続部と前記電線とを加圧(押圧)により接続する構成であれば特に限定しない。具体的には、一対の加圧手段は、一対の工具で構成するに限定せず、少なくとも一方の加圧手段を、例えば、接続端子を支持する治具や、作業台等における支持面(載置面)等、工具以外の加圧部材で形成してもよい。
【0021】
本発明は、前記一対の加圧手段のうち、一方の加圧手段を可動型(一方の工具として例えば可動型(アンビル))で構成し、他方の加圧手段を支持面(工具以外の固定された加圧部材)で構成する場合には、前記電線接続部と前記電線とをこれら一対の加圧手段とで挟み込んで互いに接続する際に、例えば、前記接続端子を支持面に固定型(他方の工具として例えば固定型(クリンパ))を介さずに直接載置した状態で、前記電線接続部と前記電線に対して支持面を有する側と反対側から可動型を支持面の側へ近接する側へ可動させて加圧する構成を採用してもよい。
【0022】
また、前記一対の加圧手段は、少なくとも一方の加圧手段として工具或いは、工具以外の加圧部材の何れを採用するか場合においても、前記一方の加圧手段と前記他方の加圧手段とのうち、少なくとも一方が可動する構成であればよく、例えば、前記一対の加圧手段の双方が可動する構成を採用してもよい。
なお、前記一対の加圧手段により前記電線接続部と前記電線とを挟み込む方向、すなわち加圧方向は、上下方向に限定せず、上下方向以外の他の方向であってもよい。
【0023】
また、前記高強度部材は、前記他の部位よりも強度の高い部材であれば、材質は特に限定しない。例えば、コネクタハウジングにおける前記高強度部と前記他の部位とが共に合成樹脂材料で形成された場合においても、前記高強度部は、前記他の部位よりも強度の高い性質を有する、該他の部位とは異なる種類の合成樹脂材料を採用することができる。
【0024】
また、前記高強度部は、例えば、コネクタハウジングの成形時に、前記高強度部に相当する部位に前記高強度部材を備えて他の部位の成形と共に一体に成形されたものであってもよく、或いは高強度部を有さずに他の部位のみを成形後に、接着や溶着等により他の部位に対して後付けで前記高強度部材を備えることで形成されたものであってもよい。
【0025】
さらにまた、前記高強度部として前記高強度部材を採用する場合、該高強度部材は、前記電線の前記コネクタハウジングへの接続部分の特性インピーダンスを所定の範囲内となるように整合する材質で形成されることが好ましい。
【0026】
またこの発明の態様として、前記コネクタハウジングにおける、前記他の部位は、非金属材料のみで形成され、前記高強度部を金属製部材としたものである。
この発明により、前記高強度部を金属製部材とすることで、例えば、合成樹脂材料で形成した場合と比して強度を格段に高めることができる。
【0027】
この発明の態様として、前記高強度部は、前記電線の前記コネクタハウジングへの接続部分の特性インピーダンスを所定の範囲内となるように整合する大きさ及び形状で設けられたものである。
【0028】
前記構成によれば、前記高強度部を、接続部分の特性インピーダンスを所定の範囲内となるように整合する大きさ及び形状とすることで、特性インピーダンスが所定の範囲内となるように整合をとることができる。
【0029】
すなわち、前記高強度部の大きさ(厚みも含む)や形状を変化させることで、接続部分の特性インピーダンスが変化するため、該特性インピーダンスが所定の範囲内となるように、前記高強度部の大きさ及び形状を設定することができる。
【0030】
またこの発明の態様として、前記高強度部には、前記コネクタハウジングにおける、被加圧箇所を該被加圧箇所の周辺に対して前記一方の加圧手段の側へ隆起する隆起部が設けられたものである。
この発明により、前記コネクタハウジングにおける前記高強度部に隆起部を設けることで、前記コネクタハウジングの被加圧箇所を厚肉化して補強することができる。
【0031】
さらにこの発明により、前記高強度部に隆起部を設けることで、隆起部を設けない場合と比較して接続部分の特性インピーダンスが低くなる傾向がある。
【0032】
このため、前記電線の前記コネクタハウジングへの接続部分における特性インピーダンスが所定の範囲よりも高い場合において、前記高強度部に隆起部を設けることで、接続部分の特性インピーダンスが所定の範囲を満たすまで低くなるように整合をとることができる。
【0033】
ここで、前記隆起部は、被加圧箇所の全体、すなわち前記高強度部の全体が他の部位と比して隆起した構成に限定せず、例えば、被加圧箇所(前記高強度部)がリブ状に部分的に隆起した構成を採用してもよい。
【0034】
このように、被加圧箇所をリブ状に隆起させることで、被加圧箇所の全体を隆起させる場合と比してコネクタハウジングが高重量化することを抑制しつつ、被加圧箇所の強度を効率的に高めることができる。
【0035】
またこの発明の態様として、前記コネクタハウジングにおいて、前記接続部配置部と対向する箇所に、前記加圧手段が通過する、または一時的に存在することを許容する貫通孔を有する構成としたものである。
【0036】
前記構成によれば、電線接続部と電線とを接続する際に、一方の前記加圧手段によって被加圧箇所に有する高強度部を介して電線接続部と電線とを、挟み込み方向の一方側から加圧することができるとともに、他方の前記加圧手段によって電線接続部と電線とを、挟み込み方向の他方側から貫通孔を通じて直接的に加圧することができる。
【0037】
これにより、前記コネクタハウジングは、後述するようにカバーを備えてハウジング本体に対して別体で形成した場合、ハウジング本体とカバーとのそれぞれに相当する部位が一体に形成されている場合の何れの場合においても、電線接続部と電線とは、前記コネクタハウジングの内部に配置されている状態において、互いに接続することができる。
【0038】
前記構成によれば、コネクタハウジングには、高強度部と貫通孔とを有することで、高強度部の大きさ及び形状のみではなく高強度部および貫通孔のそれぞれの大きさ及び形状に基づいて、前記電線の前記コネクタハウジングへの接続部分の特性インピーダンスを所定の範囲内となるように、よりきめ細かに整合をとることができる。
【0039】
またこの発明の態様として、前記コネクタハウジングと、該コネクタハウジングと共に前記接続端子を内部に収容するように前記コネクタハウジングに組み付けられるコネクタハウジングカバーとで組付け型コネクタハウジングを構成したものである。
この発明により、コネクタハウジングとコネクタハウジングカバーとの内部に接続端子を収容することで、接続端子と電線との接続部分を外的要因から保護することができる。
【0040】
またこの発明の態様として、前記電線接続部に、前記導体が絶縁被覆によって被覆された前記電線の末端部に有する前記導体に当接するまで突き刺して圧接する圧接片を備えたものである。
このように、電線接続部に備えた圧接片に電線を被覆導体ごと突き刺すことで、被覆導体を剥がすことなく、加圧により圧接片を塑性変形させることなく、また、電線接続部と電線とを接続することができる。そのため、電線接続部をコンパクトに構成でき、接続端子を加圧する加圧手段もコンパクト化することができる。さらに、コネクタハウジングにおいて、加圧手段によって加圧される高強度部もコンパクト化することができる。
【0041】
また、本発明は、上述したコネクタを複数備えるとともに、複数の前記コネクタを保持するユニットハウジングが備えられ、前記ユニットハウジングに、複数の前記コネクタが保持されたコネクタユニットを構成してもよい。
【0042】
前記構成によれば、複数のコネクタをユニットハウジングにより保持することで、コネクタ単品で用いる場合よりも極数を増やすことができる。
【0043】
従って、例えば、車載に搭載される電気機器の高性能化、高機能化に伴ってコネクタを多極化しても、確実かつ効率的に接続相手側のコネクタに接続することができる。
【0044】
また、コネクタハウジングに貫通孔が設けられているコネクタにおいては、該コネクタをユニットハウジングの内部に収容するように保持する構成を採用することで、貫通孔を通じて電線接続部と電線との接続部分が被水しないように貫通孔をユニットハウジングによって覆うことができ、結果として接続部分の防水性を高めることができる。
【発明の効果】
【0045】
この発明によれば、座屈による電線の伝送特性や耐久性の低下を抑制できるコネクタハウジング、コネクタ及びコネクタ付き電線、コネクタユニット、並びにコネクタ付き電線の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【
図1】第1実施形態のコネクタ付き電線の分解斜視図。
【
図2】第1実施形態のコネクタ付き電線を下方から視た斜視図。
【
図3】コネクタハウジングの平面図(a)、
図3(a)のA-A線矢視断面図(b)及び
図3(a)のB-B線矢視要部断面図(c)。
【
図4】第1実施形態における端子配置工程、及び電線配置工程の様子を
図3(a)に対応して示した平面図。
【
図5】第1実施形態における電線接続工程直前の様子を、それぞれ
図3(c)に対応して示した縦断面図(a)及び
図3(b)に対応して示した横断面図(b)。
【
図6】第1実施形態における電線接続工程の様子を、それぞれ
図3(c)に対応して示した縦断面図(a)、及び
図3(b)に対応して示した横断面図(b)。
【
図7】第1実施形態におけるコネクタ付き電線の組付け型コネクタハウジングの内部構成を
図3(a)に対応して示した平面図。
【
図8】第1実施形態におけるコネクタ付き電線の組付け型コネクタハウジングの内部構成を、それぞれ
図3(b)に対応して示した横断面図(a)、
図3(c)に対応して示した横断面図(b)、及び
図7のC-C線矢視断面図(c)。
【
図9】第2実施形態のコネクタ付き電線を、それぞれ
図3(a)に対応して示した平面図(a)、
図3(b)に対応して示した横断面図(b)、及び
図3(c)に対応して示した横断面図(c)。
【
図10】第3実施形態のコネクタ付き電線の分解斜視図。
【
図11】第3実施形態における電線接続工程直前の様子を、
図3(c)に対応して示した縦断面図(a)、第3実施形態における電線接続工程の様子を、
図3(c)に対応して示した縦断面図(b)。
【
図12】第3実施形態におけるコネクタ付き電線の組付け型コネクタハウジングの内部構成を、それぞれ
図3(c)に対応して示した横断面図(a)、
図3(b)に対応して示した横断面図(b)。
【
図13】
図13(b)のA’-A’線矢視断面図(a)、第4実施形態のコネクタ付き電線のコネクタハウジングを、それぞれ
図3(b)に対応して示した横断面図(b)、及び
図3(c)に対応して示した横断面図(c)。
【
図14】第3実施形態におけるコネクタ付き電線を備えたコネクタユニットおよび接続相手側コネクタユニットを示す分解斜視図。
【
図15】
図14に示すコネクタユニットを奥行方向の他方側から視た外観図。
【
図16】第1実施形態の変形例に係るコネクタ付き電線の分解斜視図。
【
図17】第1実施形態の変形例に係るコネクタ付き電線の
図3(a)に対応して示した平面図(a)及び
図3(b)に対応して示した横断面図(b)。
【
図18】第1実施形態の変形例に係るコネクタ付き電線の
図7に対応して示した平面図。
【
図19】第1実施形態の他の変形例に係るコネクタ付き電線の
図3(a)に対応して示した平面図(a)及び
図3(c)に対応して示した横断面図(b)。
【発明を実施するための形態】
【0047】
以下、図面に基づいて本発明の実施形態を詳述する。
(第1実施形態)
図1に示すように、コネクタ付き電線1は、組付け型コネクタハウジング2と、2本の被覆電線3と、2つの接続端子4とを備えている。これらのうち、組付け型コネクタハウジング2と、その内部に保持された接続端子4とによって、コネクタ5を構成している。
【0048】
なお、以下の説明において、組付け型コネクタハウジング2の長手方向、短手方向、厚み方向をそれぞれ前後方向、幅方向、上下方向とし、
図1中、矢印Fは前方向、矢印Uは上方向、矢印Rは右方向、矢印Lは左方向をそれぞれ示すものとする。
図1に示すように、被覆電線3は、導電性材料から成る導体31と、導体31の外周全体を被覆する、絶縁材料から成る絶縁被覆部32とを有している。
【0049】
導体31は、銅又はその合金から成る複数の素線を束ねて銅芯線として形成されたものを採用しているが、導体31は、一本の素線から形成されたものを採用してもよい。なお、導体31の材料は、目的等に応じ、銅又はその合金以外とすることができ、導体31は、表面のみ導電率の高い導体とすることができる。
【0050】
図1及び
図4に示すように、被覆電線3は、その長さ方向における、接続端子4と接続する側の末端部33(以下、「電線末端部33」と称する。)も含めて導体31の外周全体が絶縁被覆部32によって覆われている。
【0051】
また、コネクタ付き電線1は、上述した被覆電線3を2本備え、これら2本の被覆電線3は、互に撚り合されて形成されるツイストペア電線35を構成している。
そして、2本の被覆電線3のコネクタ5への接続側の各末端側には、撚りを戻して(解いて)、撚り戻し部35aが形成されている。この撚りを戻した撚り戻し部35aに、導体露出部31aが形成された電線末端部33を有している。
【0052】
接続端子4は、雌型の端子金具であって、導電性を有する金属板を所定の端子展開形状に打ち抜いた後に曲げ加工等により形成される。接続端子4は、ボックス部41、トランジション部42及び電線接続部43が備えられている。前方から後方へこの順に直列に配置されたボックス部41、トランジション部42及び電線接続部43が一体に形成され、接続端子4は細長い形状に形成されている。
【0053】
ボックス部41は角筒状に形成されている。ボックス部41の底面の前端から前方へ延出する延出部分を後方へ折り返された弾性接触片(図示省略)を内部に配置している。
そのため、不図示の相手側接続端子(雄型接続端子)に備えたタブがボックス部41の前方から挿入されると、ボックス部41の内部においてタブに対して弾性接触片が付勢された状態で接触することで、相手側接続端子と接続端子4とが電気的に接続される。
【0054】
トランジション部42はボックス部41と電線接続部43との間に介在され、これら各底面を一体に繋ぐ部位である。
電線接続部43は、前側に圧接部44を備え、後側にインシュレーションバレル部45とを備えている。
【0055】
圧接部44は、底壁44aと、底壁44aの左右両端から上方へ延びる側壁44bと、一対の圧接片44cとを有している。これら一対の圧接片44cは、前後方向に離間して互いに対峙するように配設されている。
【0056】
図1、
図4及び
図5(b)に示すように、圧接片44cは、被覆電線3の外径よりも幅広に形成されている。また、圧接片44cの幅方向の中央部に、上端から下方に延びる凹部44dが形成されている。凹部44dは導体31の外径よりも若干幅広に形成されている。
【0057】
図3及び
図4(a),(b)に示すように、インシュレーションバレル部45は、バレル底面45a(
図4(a),(b)参照)と、左右一対のバレル片45bとで一体構成されている。
左右一対のバレル片45bは、バレル底面45aに対して幅方向外側程上方へ延出するように形成されている。
【0058】
このように、バレル底面45aと、バレル片45bとで構成されたインシュレーションバレル部45はオープンバレル形状に形成されている。
インシュレーションバレル部45は、電線接続工程において電線末端部33側における被覆末端部32aを圧着する(
図5(a)参照)。
また、
図1及び
図4に示すように、コネクタ付き電線1は、2本の被覆電線3のそれぞれに対応して合計2つの接続端子4を備えている。
【0059】
図1及び
図2に示すように、組付け型コネクタハウジング2は、ハウジング本体2dと、ハウジング本体2dを上方から覆うカバー2uとで構成され、全体として直方体形状に形成されている。組付け型コネクタハウジング2を構成するハウジング本体2dと、カバー2uは何れも誘電性(絶縁性)を有する合成樹脂材料で構成されている。
【0060】
図1及び
図8(c)に示すように、組付け型コネクタハウジング2の内部には、少なくとも1つの端子収容室6が設けられている。1つの端子収容室6につき、1つの接続端子4が収容される。そのため、組付け型コネクタハウジング2の内部には、2つの接続端子4が収容できるように2つの端子収容室6が幅方向に並設されている(
図1及び
図3参照)。
【0061】
図8(c)に示すように、端子収容室6は、上側端子収容凹部6uと、下側端子収容凹部6dとで構成される。
上側端子収容凹部6uは、接続端子4の上側(厚み方向の一方側)を収容可能にカバー2u側に形成されている。下側端子収容凹部6dは、接続端子4の下側(厚み方向の他方側)を収容可能にハウジング本体2d側に形成されている。
【0062】
上側端子収容凹部6uは、カバー2uに対して下側から接続端子4を嵌め込み可能にカバー2uの下面が下方に向けて開口する凹状に形成されている。また、下側端子収容凹部6dは、ハウジング本体2dに対して上側から接続端子4を嵌め込み可能にハウジング本体2dの上面が上方に向けて開口する凹状に形成されている。
【0063】
なお、端子収容室6は、接続端子4を収容可能であれば、例えば、カバー2uについては下面を凹状に形成せずに平坦状に形成するとともにハウジング本体2dの上面のみを凹状に形成した構成を採用してもよい。
【0064】
この場合には、図示省略するが、下側端子収容凹部6dは、接続端子4をその上下方向の全体が嵌め込まれる深さで形成され、カバー2uとハウジング本体2dとを組み付ける際に、下側端子収容凹部6dの開口をカバー2uによって上方から塞ぐように構成される。
【0065】
また、
図1、
図2及び
図3(a),(b),(c)に示すように、ハウジング本体2dは、ベース部21、前壁部22、後壁部23、左右各側の側壁部24,24及び隔壁部25で構成され、一体形成されている。
ベース部21は、ハウジング本体2dの底板を形成し、ベース部21における、平面視で下側端子収容凹部6dに対応する部位の上面によって、下側端子収容凹部6dの底面が形成される。
【0066】
また、後壁部23、隔壁部25及び左右各側の側壁部24,24は、何れも、組付け型コネクタハウジング2の高さよりも若干低い高さの縦壁状に形成されている。一方、前壁部22は、組付け型コネクタハウジング2と略同じ高さとの縦壁状に形成されている。
【0067】
これにより、前壁部22の上部は、左右一対の側壁部24,24及び隔壁部25の各上面に対して上方へ段状に突き出して形成される(
図1参照)。また、側壁部24,24は、ハウジング本体2dの幅方向の両端において前後方向に延びている。そのため、側壁部24,24は、前壁部22及び後壁部23におけるそれぞれの幅方向の両端同士を連結する。隔壁部25は、左右各側の後述するボックス部配置領域61を幅方向に仕切るように前後方向に延びている。
【0068】
以下、上述したように端子収容室6を構成する上側端子収容凹部6uと下側端子収容凹部6dとのうち、ハウジング本体2d側に形成された下側端子収容凹部6dの構成を中心に説明する。
図3(a),(b),(c)、
図4、
図7及び
図8(a),(b),(c)に示すように、下側端子収容凹部6dは、ボックス部配置領域61と、電線接続部配置領域62とを備えている。
【0069】
ボックス部配置領域61は、下側端子収容凹部6dに上方から嵌め込むように配置した接続端子4におけるボックス部41が配置される。
電線接続部配置領域62は、下側端子収容凹部6dに上方から嵌め込むように配置した接続端子4における電線接続部43及びトランジション部42が配置される。
【0070】
ハウジング本体2dにおいて、縦壁状の前壁部22、後壁部23、側壁部24,24及び隔壁部25によって、下側端子収容凹部6dの内壁が下側端子収容凹部6dの内部空間を臨むように形成されている。
【0071】
図1、
図3(a)及び
図8(c)に示すように、左右各側の下側端子収容凹部6dにおけるボックス部配置領域61は、上述したように隔壁部25によって幅方向に仕切られている。また、ボックス部配置領域61は、隔壁部25と左右それぞれに対応する側壁部24,24とによって、ボックス部41を嵌め込み可能にボックス部41の幅よりも若干幅広に形成されている(
図4及び
図8(c)参照)。
【0072】
これにより、2つの接続端子4のボックス部41は、ハウジング本体2dの上面の左右各側に凹状に設けられたボックス部配置領域61にそれぞれ嵌め込まれるように配置される。そして、この状態においてボックス部41は、左右それぞれに対応する側壁部24,24及び隔壁部25によって形成されるボックス部配置領域61の内壁によって幅方向に嵌合保持される。
【0073】
このように、ボックス部配置領域61においてボックス部41が幅方向に保持されることによって、ハウジング本体2dは、接続端子4自体を、下側端子収容凹部6dに嵌め込まれるように配置された状態で幅方向に保持することができる。
【0074】
なお、ハウジング本体2dによる接続端子4の保持形態は、下側端子収容凹部6dにおけるボックス部配置領域61にボックス部41を嵌合することにより接続端子4を保持する上述した構成に限定しない。
【0075】
例えば、図示省略するが、ハウジング本体2dに、下側端子収容凹部6dに嵌め込むように配置した接続端子4に係合する係合部等を、下側端子収容凹部6dの内壁に形成し、係合部等によって接続端子4を保持する構成を採用してもよい。
【0076】
図1及び
図3(a),(b),(c)に示すように、ハウジング本体2dにおける、左右各側のボックス部配置領域61よりも後部には、ハウジング本体2dの上面に対して凹状の幅広凹部7が形成されている。
【0077】
幅広凹部7は、左右各側の電線接続部配置領域62を一部に備え、これら電線接続部配置領域62と同じ深さになるように底面がベース部21の上面によって形成される。さらに、幅広凹部7の内壁は、左右各側の側壁部24,24、後壁部23及び隔壁部25の後端によって囲まれるように、これらによって形成される。
【0078】
図1及び
図3(a)に示すように、幅広凹部7は、左右各側の幅方向外端の内壁が、左右それぞれに対応するボックス部配置領域61の幅方向外端の内壁よりも幅方向外側へ位置するように幅広に形成されている。さらに、幅広凹部7は、ハウジング本体2dの幅方向に離間して有する左右各側の電線接続部配置領域62の間も含めて、これら電線接続部配置領域62を幅方向に跨ぐように形成されている。すなわち、幅広凹部7は、隔壁部25によって幅方向に仕切られることがなく幅方向に互いに連通して形成されている。
【0079】
なお、左右各側のボックス部配置領域61の後端は幅広凹部7に向けて開口し、これら左右各側のボックス部配置領域61と幅広凹部7は前後方向に連通している。換言すると、左右各側の電線接続部配置領域62を幅方向の一部に有する幅広凹部7をハウジング本体2dに形成している。
【0080】
このように、左右各側の電線接続部配置領域62を幅方向の一部に有する幅広凹部7をハウジング本体2dに形成することで、被覆電線3と接続端子4とを一対の加圧手段としての工具81,82(ここでは加圧型である上側工具81,下側工具82)を用いて接続する後述する電線接続工程において、ハウジング本体2dが一対の工具81,82のうち、特に上側工具81(可動型)との干渉を回避している。
【0081】
具体的には、被覆電線3と接続端子4とを接続するため、ハウジング本体2dに配置された電線接続部43に対して上方から上側工具81が降下する。降下した上側工具81は幅広凹部7の凹状空間へ侵入するため、上側工具81とハウジング本体2dとが干渉することを回避することができる(
図6(a),(b)参照)。
【0082】
また、
図1、
図2及び
図3(a)に示すように、ハウジング本体2dの前壁部22には、接続端子4と接続される相手側接続端子(雄型接続端子)のタブを挿入する挿入孔22aが形成されている。
具体的には、前壁部22における、正面視(前方から後方視)で下側端子収容凹部6dに対応する左右各側の部位に、相手側接続端子のタブが前方から挿入される挿入孔22aが、前後方向に貫通形成されている。
【0083】
図1及び
図3(a),(b),(c)に示すように、ハウジング本体2dの後壁部23には、被覆電線3が配置される電線配置凹部23aが形成されている。
詳しくは、後壁部23における、後面視(後方から前方視)で下側端子収容凹部6dに対応する左右各側の部位に、被覆電線3が配置される電線配置凹部23aが後壁部23の上面に対して凹状に形成されている。
【0084】
電線配置凹部23aは、後述する電線配置工程において、下側端子収容凹部6dに配置した接続端子4の電線接続部43に電線末端部33を配置した状態で、被覆電線3と後壁部23との干渉を回避するものである(
図4及び
図6(a)参照)。
【0085】
このように構成されることで、下側端子収容凹部6dに収容された接続端子4は前後方向に位置ズレしないように保持される。具体的には、下側端子収容凹部6dに収容された接続端子4の前端は前壁部22の後面に当接する。また、下側端子収容凹部6dに収容された接続端子4の後端は後壁部23の前面に当接する。このように、下側端子収容凹部6dに収容された接続端子4の前後端が前壁部22及び後壁部23に当接することで、下側端子収容凹部6dに対する接続端子4の前後方向の位置が規制される。
【0086】
図5(a),(b)に示すように、ハウジング本体2dの平面視で少なくとも左右各側の電線接続部配置領域62に相当する部位は、後述する電線接続工程の際に、一対の工具81,82のうち、ハウジング本体2dに対して下側に配置された下側工具82(固定型)と重複する部位に相当する。
【0087】
すなわち
図1、
図2及び
図3(a),(b),(c)に示すように、ハウジング本体2dの平面視で少なくとも左右各側の電線接続部配置領域62に相当する部位は、電線接続工程の際に、下側工具82によって、ハウジング本体2dの下側から加圧される箇所(以下、「被加圧箇所Zp」と称する。)に相当する(
図5(a),(b)参照)。
【0088】
ハウジング本体2dは、少なくとも左右各側の被加圧箇所Zpを、他の部位に対して強度の高い高強度部10として形成している。具体的には、高強度部10には、ハウジング本体2dの下面における、高強度部10に相当する部位の周辺に対して下方へ段状に隆起させた隆起部11が設けられている。
【0089】
この隆起部11によって、ベース部21は高強度部10に相当する部位が、周辺に対して厚肉化され、これにより高強度部10は、挟み込み(厚み方向への加圧)に対して強度が高い形状に形成されている。
【0090】
詳しくは、高強度部10は、ベース部21の高強度部10以外の部位、並びに、ハウジング本体2dにおける前壁部22、後壁部23、および左右各側の側壁部2のそれぞれの板厚と比して厚肉に形成されている。これにより、高強度部10は、後述する電線接続工程において、下側工具82によって、ハウジング本体2dの高強度部10を介して電線接続部43を下側から間接的に加圧した際に(
図5(a),(b)参照)、ハウジング本体2dの破壊または変形が抑制されるように、周辺に対して高強度に形成されている。換言すると、隆起部11によってハウジング本体2dにおける少なくとも左右各側の被加圧箇所Zpを補強している。
【0091】
隆起部11は、ハウジング本体2dの一部として、誘電性を有する合成樹脂材料により他の部位と一体形成されている。
隆起部11は、ハウジング本体2dの下面に少なくとも左右各側の被加圧箇所Zp(電線接続部配置領域62に相当する部位)を含めて、これらの間に亘って連続して形成されている。
【0092】
なお、隆起部11は、隆起部11の下面が平坦状になるようにハウジング本体2dの底面視で隆起部11の全体に亘って同じ隆起量(下方への突出量)で形成されている(
図2参照)。
【0093】
また、
図1、
図2、
図7及び
図8(a),(b),(c)に示すように、上述したカバー2uは、平板状の天板部27と、天板部27の幅方向両側から下方へ延びるカバー側壁部28,28とで一体形成されている。
天板部27は、前壁部22を含めてハウジング本体2dを上方から覆うよう構成されている。
カバー側壁部28,28は、側壁部24,24を幅方向外側から覆うよう構成されている。
【0094】
図1及び
図2に示すように、ハウジング本体2dの側壁部24,24の外面には、係合突起29dが形成されている。
また、カバー側壁部28,28における、係合突起29dと対応する部位には、ハウジング本体2dとカバー2uとを組み付けた状態において、係合突起29dと係合する係合孔29uが形成されている。なお、係合突起29dおよび係合孔29uは、
図1、
図2のみ図示するものとする。
【0095】
図2、
図7及び
図8(a),(b),(c)に示すように、コネクタ付き電線1は、ハウジング本体2dとカバー2uとを組み立てて一体化した組付け型コネクタハウジング2の内部に、接続端子4と電線末端部33とが接続された状態で収容される。
これにより、コネクタ付き電線1では、組付け型コネクタハウジング2の内部において、電線末端部33の導体露出部31aと接続端子4とが電気的に接続される。
【0096】
次に、上述したコネクタ付き電線1の製造方法について説明する。
コネクタ付き電線1の製造方法は、端子配置工程、電線配置工程、電線接続工程及びカバー組み付け工程を行う。
端子配置工程は、接続端子4をハウジング本体2dに配置する工程である。
【0097】
電線配置工程は、電線接続部43に電線末端部33を配置する工程である。
電線接続工程は、一対の工具81,82により、電線接続部43と被覆電線3とを圧接する工程である。
カバー組み付け工程は、ハウジング本体2dに対してカバー2uを組み付けてコネクタ付き電線1を完成させる工程である。
【0098】
以下において、各工程について詳しく説明する。
まず、接続端子4をハウジング本体2dに配置する端子配置工程を行う。
この端子配置工程において
図4に示すように、2つの接続端子4を、ハウジング本体2dに設けた、左右それぞれに対応する下側端子収容凹部6dに嵌め込まれるようにハウジング本体2dに対して上方から配置する。
【0099】
これにより、接続端子4におけるボックス部41は、下側端子収容凹部6dにおけるボックス部配置領域61において、ハウジング本体2dによって、すなわちボックス部配置領域61の内壁によって保持される。
【0100】
一方、接続端子4におけるトランジション部42及び電線接続部43は、電線接続部配置領域62、すなわち幅広凹部7に嵌め込まれた状態で配置される。
このとき、電線接続部43は、圧接部44とインシュレーションバレル部45とが共に上方を臨む姿勢で電線接続部配置領域62に配置される(
図4及び
図5(a),(b)参照)。
【0101】
続いて行う電線配置工程において
図5(a),(b)に示すように、電線末端部33を電線接続部43に対して上方から配置する。
その際、
図5(a)に示すように、電線末端部33は、圧接部44とインシュレーションバレル部45とのそれぞれに対して上方から配置されるが、このうち、圧接部44に対応する部位は、圧接部44に備えた一対の圧接片44cを前後に跨ぐように配置される。
【0102】
続いて、電線接続工程を行うにあたり、一対の工具81,82のうち、電線接続部43及び被覆電線3の下方に下側工具82が配置され、上方に上側工具81が配置されるようにセットする(
図5(a),(b)参照)。
上側工具81は、圧接用上側工具81aと圧着用上側工具81bとを備えている。下側工具82は、圧接用下側工具82aと圧着用下側工具82bとを備えている。
【0103】
電線接続工程において
図5(a),(b)に示すように、圧接用上側工具81aと圧接用下側工具82aとによって圧接部44と電線末端部33を圧接するとともに、圧着用上側工具81bと圧着用下側工具82bとによってインシュレーションバレル部45と電線末端部33を圧着する。
【0104】
具体的には、同図に示すように、圧接用下側工具82aと圧着用下側工具82bとがハウジング本体2dの下側に配置されるようにセットする。圧接用下側工具82aの上面(加圧面82au)及び圧着用下側工具82bの上面(加圧面82bu)を、ハウジング本体2dの下面における、被加圧箇所Zpに対応する部位に当接させる。
【0105】
その状態から電線末端部33よりも上方に配置された上側工具81(圧接用上側工具81a及び圧着用上側工具81b)を降下させる。これにより、圧接用上側工具81aと圧接用下側工具82aとによって圧接部44と電線末端部33とを上下両側(挟み込み方向の両側)から挟み込むように互いに圧接接続する。また、圧着用上側工具81bと圧着用下側工具82bとによってインシュレーションバレル部45と電線末端部33とを上下両側(挟み込み方向の両側)から挟み込むように互いに圧着接続する。
【0106】
上述した電線接続工程において、圧接部44については、圧接片44cの凹部44dに導体31が嵌め込まれるとともに、圧接片44cによって絶縁被覆部32が切り裂かれ、凹部44dに嵌め込まれた導体31は、圧接片44cの凹部44dの周縁と接触することにより、被覆電線3と接続端子4とが電気的に接続される。
【0107】
インシュレーションバレル部45においては、被覆末端部32aの外周にバレル片45bが巻き付くようにインシュレーションバレル部45が塑性変形する。これにより、
図5(b)に示すように、被覆末端部32aはインシュレーションバレル部45によって加締められる。そのため、接続端子4が電線末端部33を保持する保持力を高めることができる。
【0108】
さらに上述した電線接続工程において、下側工具82(圧接用下側工具82a及び圧着用下側工具82b)は、ハウジング本体2dの高強度部10を介して電線接続部43を下側から間接的に加圧する(
図5(a),(b)参照)。
【0109】
これにより、ハウジング本体2dには、下側工具82Aから加圧力が作用するが、加圧力が作用する高強度部10は隆起部11によって補強されているため、ハウジング本体2dが破損することがない。
すなわち、被覆電線3と接続端子4とは、ハウジング本体2dに配置された状態のまま互いに接続することができる。
【0110】
図1、
図7及び
図8(a),(b),(c)に示すように、コネクタ付き電線1は、内部に導体31を有する被覆電線3と電気的に接続される電線接続部43が設けられた導電性を有する接続端子4及び接続端子4を保持する、誘電性(絶縁性)を有するハウジング本体2dとが備えられたコネクタ付き電線である。
ハウジング本体2dに、電線接続部43が配置される電線接続部配置領域62(接続部配置部)が設けられ、電線接続部配置領域62に配置された電線接続部43と電線接続部43に配置した被覆電線3とは、これらの両側から一対の工具81,82により挟み込んで互いに接続された構成である(
図6(a),(b)参照)。
具体的には、ハウジング本体2dにおいて、一対の工具81,82のうち、下側工具(一方の工具)は、ハウジング本体2dの下側(これら工具の挟み込み方向においてハウジング本体2dにおける電線接続部配置領域62を有する側と反対側)に配置され、ハウジング本体2dを介して電線接続部43を加圧する。
下側工具82によって加圧されるハウジング本体2dの被加圧箇所Zpを、他の部位に対して強度の高い高強度部10としたものである(
図2及び
図8(a),(b),(c)参照)。
【0111】
前記構成によれば、被覆電線3を、ハウジング本体2dに保持された接続端子4に接続する際に、被覆電線3が座屈することなく被覆電線3と接続端子4とを適切に接続することができる。したがって、ハウジング本体2dに接続される被覆電線3の伝送特性や耐久性の低下を抑制することができる。
【0112】
詳しくは、電線接続工程を行うにあたり、電線接続部配置領域62に配置された電線接続部43と電線接続部43に配置された被覆電線3とを、これらの両側から一対の工具81,82により挟み込んで互いに接続する。その際に、下側工具82は、ハウジング本体2dにおける被加圧箇所Zp(高強度部10)に対して下側から直接当接するように配置され、電線接続工程において、被加圧箇所Zpを介して電線接続部43を加圧する。
【0113】
このように、ハウジング本体2dに対して接続端子4と被覆電線3とを別々に配置し、一対の工具81,82により加圧接続することで、従来のように、接続端子4を接続した端子付き電線の端子部分をコネクタハウジングに挿入せずとも、ハウジング本体2dにおいて接続端子4と被覆電線3とを接続することができる。
【0114】
したがって、被覆電線3を、ハウジング本体2dに保持された接続端子4に接続する際に、被覆電線3が座屈することなく被覆電線3と接続端子4とを適切に接続することができる。
【0115】
また、被覆電線3と接続端子4とを一対の工具81,82により加圧接続するために一対の工具81,82のうち、下側工具82の加圧面82aに接続端子4を配置する作業と、ハウジング本体2dに接続端子4を保持するために、ハウジング本体2dに接続端子4を配置する作業の2つの端子配置作業を、接続端子4をハウジング本体2dに配置するという1つの端子配置作業にまとめることができ、端子配置作業の手間を簡略化することができる。
【0116】
詳述すると、ハウジング本体2dに被覆電線3と接続端子4とを接続するにあたり、例えば、予め接続端子4を接続した端子付き電線を作成しておき、この端子付き電線における端子部分を、コネクタハウジングの上面に設けた下側端子収容凹部6dに嵌め込むようにして配置することで互いに接続する方法が考えられる。
【0117】
この接続方法によれば、従来のように、予め接続端子4を接続した端子付き電線における端子部分を、コネクタハウジングに挿入する必要がなくなる。そのため、コネクタハウジングに被覆電線3を接続する際に被覆電線3の座屈のおそれを解消できる利点がある。
【0118】
しかし、予め接続端子4と被覆電線3とを接続した端子付き電線における端子部分を、コネクタハウジングに配置することにより、コネクタ付き電線を製造する場合には、その製造過程で行う接続端子4の配置作業に手間を要するという課題を有する。
【0119】
その理由を、一対の工具によって端子と電線とを挟み込むように加圧して接続する電線接続工程によって電線と端子とを接続し、続くコネクタへの端子取付け工程において、電線と端子とを接続した端子付き電線の端子部分をコネクタハウジングに接続するような、従来のコネクタ付き電線の作成方法に基づき説明する。
【0120】
このような従来のコネクタ付き電線の作成方法の場合、電線接続工程においては、一対の工具による加圧の前段階として、一対の工具81,82のうち、下側工具82(固定型)の加圧面に接続端子4を配置する作業を行う必要がある。さらにコネクタハウジングへの端子取付け工程においても、端子付き電線の端子部分を、コネクタハウジングに配置する作業を行う必要がある。
このため、このような従来のコネクタ付き電線の作成方法においては、工程ごとに端子の配置作業を行う必要があるため面倒であるという課題を有する。
【0121】
これに対して、上述の本発明の製造方法では、接続端子4をハウジング本体2dに配置するだけで、一対の工具81,82により接続端子4を加圧接続するために接続端子4をハウジング本体2dに配置する端子配置作業と、ハウジング本体2dに接続端子4を保持(取付け固定)するために接続端子4をハウジング本体2dに嵌め込むように配置する端子配置作業とを1つにまとめることができ、端子配置作業の手間を簡略化することができる。
【0122】
特に、コネクタ付き電線に複数の接続端子4を備えた場合には、端子配置作業において、接続端子4をその個数に応じて1つずつ配置する必要がある。このため、従来のコネクタ付き電線の作成方法のように端子配置作業を、工程ごとに行う必要がある場合には、接続端子4の数が増加するに伴って、全体として行う端子配置作業に要する労力が増大する。
【0123】
これに対して、上述の本発明の製造方法では、例えば、細径化された複数の被覆電線3をハウジング本体2dに接続する場合においても、複数の被覆電線3の数に応じて存在する複数の接続端子4の配置作業を、各工程間で1つにまとめることができ、コネクタ5と被覆電線3との接続作業効率を大幅に向上させることができる。
【0124】
さらにまた、上述した構成によれば、被覆電線3と接続端子4とを一対の工具81,82によって挟み込むようにして加圧接続のみを行う箇所と、ハウジング本体2dに接続端子4を保持した状態で配置したり、接続端子4に被覆電線3を配置する箇所とを1つにまとめることができ、コネクタ付き電線1の製造装置をコンパクトに構成することができる。
【0125】
また、
図2、
図5(a),(b)、
図7及び
図8(a),(b),(c)に示すように、高強度部10には、ハウジング本体2dにおける、被加圧箇所Zpを被加圧箇所Zpの周辺に対して下側、すなわち下側工具82の側(一方の工具の側)へ隆起させた隆起部11が設けられたものである。
前記構成によれば、ハウジング本体2dにおける高強度部10に隆起部11を設けることで、ハウジング本体2dの被加圧箇所Zpを厚肉化して補強できる。
【0126】
さらに、被加圧箇所Zpを補強するにあたり、被加圧箇所Zpのみを、その周辺に対して厚肉化することでハウジング本体2dを介した電線接続部の下側工具82による加圧に対してピンポイントでハウジング本体2dを補強しつつ、ハウジング本体2dの高重量化、大型化を抑制できる。
【0127】
さらにまた、前記構成によれば、高強度部10に隆起部11を設けることで、隆起部11の誘電率が空気の誘電率より大きくなることに起因して被覆電線3のハウジング本体2dへの接続部分3Cにおける特性インピーダンスが低下する傾向がある。
【0128】
したがって、被覆電線3の接続部分3Cにおける特性インピーダンスが所定の範囲よりも高い場合に、高強度部10に隆起部11を設けることで、所定の範囲内となるように特性インピーダンスを整合することができる。
【0129】
なお、第1実施形態のコネクタ付き電線1に備えた、一対の被覆電線3を撚り合わせて成るツイストペア電線35は、CAN方式の通信系で一般に用いられる。
また、
図1に示すように、2本の被覆電線3を撚り合されたツイストペア電線35の各電線末端部33に、撚りを戻して電線接続部43に配置される撚り戻し部35aが形成されたものである。
【0130】
ツイストペア電線35は、CAN方式の通信系で一般に用いられ、CAN方式の通信系においては特性インピーダンスが95~140Ωの範囲に設定されることが多いが、被覆電線3のハウジング本体2dへの接続部分3Cに、撚り戻し部35aが形成されることに起因して特性インピーダンスが所定値に対してズレている、すなわち95~140Ωの範囲外となる場合がある。前記構成によれば、ハウジング本体2dに形成する隆起部11の大きさ及び形状に応じて被覆電線3のハウジング本体2dへの接続部分3Cの特性インピーダンスが95~140Ω、より好ましくは120Ω±10%の範囲になるように、整合をとることができる。
【0131】
なお、通信プロトコルが例えば、いわゆるイーサネット(登録商標)の場合は、接続部分3Cの特性インピーダンスが90~110Ω、すなわち100Ω±10%の範囲になるように、整合をとることが好ましい。
【0132】
また、
図1、
図4、
図6(a),(b)、
図7及び
図8(a),(b),(c)に示すように、電線末端部33を導体31に当接するまで突き刺して電線末端部33と圧接する圧接片44cを、電線接続部43に備えたものである。
【0133】
このように、電線末端部33を突き刺すことで電線末端部33と圧接する圧接片44cを電線接続部43に備えることで、電線末端部33と電線接続部43とを接続するにあたり、電線末端部33の絶縁被覆部32を剥がす必要がない。また、圧接片44cを、電線接続工程において加圧により塑性変形させる必要がない。
【0134】
このため、電線接続部43をコンパクトに構成でき、接続端子4を加圧する一対の工具81,82もコンパクト化することができるとともに、ハウジング本体2dにおいて、下側工具82によって加圧される高強度部10もコンパクト化することができる。
【0135】
また、
図1、
図2、
図7及び
図8(a),(b),(c)に示すように、上述したハウジング本体2dと、ハウジング本体2dと共に接続端子4を内部に収容するようにハウジング本体2dに組み付けられるカバー2u(コネクタハウジングカバー)とで組付け型コネクタハウジング2を構成したものである。
【0136】
前記構成によれば、ハウジング本体2dとカバー2uとの内部に被覆電線3と接続端子4とを接続した接続部分を収容することで、接続部分を外的要因から保護することができる。
【0137】
続いて、上述した第1実施形態のコネクタ付き電線1と異なる他の実施形態について説明する。但し、上述した実施形態と同様の構成については、同一の符号を付してその説明を省略する。
【0138】
(第2実施形態)
【0139】
図9(a),(b),(c)に示すように、第2実施形態のコネクタ付き電線1Aは、高強度部10Aに、上述の高強度部10のように隆起部11を設けず、ハウジング本体2Adの主な形成材料である合成樹脂材料よりも強度の高い材料として例えば、金属板12を備えている。
【0140】
金属板12は、ハウジング本体2Adのベース部21Aの板厚よりも薄肉に形成され、ハウジング本体2Adの内部に備えている。すなわち、ハウジング本体2Adは、ベース部21Aにおける被加圧箇所Zpに相当する部位に金属板12が埋設されるようにインサート成形されている(
図9(b),(c)参照)。
【0141】
これにより、ハウジング本体2Adは、金属板12によって被加圧箇所Zpを補強している。
金属板12は、ハウジング本体2Adにおける少なくとも被加圧箇所Zpに、換言すると、平面視で上述した隆起部11に一致する部位に配設されている。
【0142】
また、ベース部21Aは、高強度部10Aに金属板12が埋設されている形態においても、高強度部10Aとその周辺とが同じ板厚になるように形成されている(
図9(b),(c)参照)。すなわち、ハウジング本体2Adの下面は、高強度部10Aに相当する部位とその周辺とが面一になるように平坦状に形成されている。
【0143】
上述したように、コネクタ付き電線1Aは、ハウジング本体2Adにおける他の部位が合成樹脂(非金属材料)のみで形成され、高強度部10Aに他の部位よりも強度の高い金属板12(金属製部材)を備えたものである。
【0144】
前記構成によれば、高強度部10Aに金属板12を備えることで、被加圧箇所Zpが他の部位と比して厚肉化することなく、被加圧箇所Zpの強度を高めることができる。
したがって、ハウジング本体2Adが大型化することなく、被加圧箇所Zpの、下側工具82の加圧に対する強度を高めることができる。
【0145】
さらに、ハウジング本体2Adにおける、被加圧箇所Zpに金属板12を備えることで、被加圧箇所Zpの剛性を高めることができる。
したがって、電線接続工程において下側工具82からハウジング本体2Adにおける被加圧箇所Zpを介して電線接続部に間接的に入力される加圧力を、電線接続部に効率よく伝えることができる。
【0146】
さらに、金属板12を、ハウジング本体2Adから露出しないように内部に埋設した状態で備えることで、金属板12の防錆性を高めることができる。
さらにまた、ハウジング本体2Adにおける、被加圧箇所Zpに金属板12を介在させることで、高強度部10に隆起部11を設ける場合と同様、金属板12の配置箇所の特性インピーダンスが低下する傾向がある。この傾向を利用して、所定の範囲内となるように特性インピーダンスを整合することができる。
【0147】
(第3実施形態)
【0148】
図10に示すように、第3実施形態のコネクタ付き電線1B(コネクタ5B)に備えられた組付け型コネクタハウジング2B(以下、「コネクタハウジング2B」と略記する)のカバー2Buには、上下方向に貫通する貫通孔20が形成されている。
【0149】
貫通孔20は、カバー2Buにおける、ハウジング本体2dの左右各側の電線接続部配置領域62と対向する部位に亘って幅方向(左右方向)に形成されている。
【0150】
詳しくは、貫通孔20は、カバー2uによってハウジング本体2dを上方から覆った状態において後述する電線接続工程を行う際に、一対の工具81,82のうち、カバー2Buに対して上側に配置された上側工具81(可動型)が降下しても、上側工具81がカバー2Buに干渉しない大きさ及び形状でカバー2Buに対して形成されている。
【0151】
換言すると、貫通孔20は、カバー2Buにおける、電線接続工程の際に上側工具8が降下する際に、カバー2Buを上方から下方へ通過する、またはカバー2Buに相当する部位に一時的に存在することを許容する大きさ及び形状で形成されている。
【0152】
加えて、貫通孔20は、被覆電線3のコネクタハウジング2への接続部分3Cの特性インピーダンスが所定の範囲内となるように整合する大きさ及び形状で形成されている。
【0153】
第3実施形態のコネクタ付き電線1Bを製造する方法においては、カバー組み付け工程を、電線接続工程後ではなく、電線配置工程と電線接続工程との間に行う。
【0154】
具体的には、
図10中の矢印s1に示すように、端子配置工程において、接続端子4の電線接続部43を、下側端子収容凹部6dに上方から配置するとともに、
図10中の矢印s2に示すように、電線配置工程において、ハウジング本体2dにおける、下側端子収容凹部6dに配置した接続端子4の電線接続部43に対して電線末端部33を上方から配置する。
【0155】
なお、第3実施形態のコネクタ付き電線1Bを製造する方法については、端子配置工程と電線配置工程とを同時に行ってもよい。すなわち、接続端子4の電線接続部43の上方に電線末端部33を配置した状態で、電線末端部33と共に電線接続部43を下側端子収容凹部6dに配置してもよい。
【0156】
その後に行うカバー組み付け工程において、
図10中の矢印s3に示すように、ハウジング本体2dに対してカバー2Buを上方から覆うようにして組み付ける。
【0157】
これにより、電線接続部43および電線末端部33は、互いに接続されない状態でコネクタハウジング2Bの内部に収容されるとともに、カバー2Buに形成された貫通孔20を通じて外部に露出した状態となる。
【0158】
続いて行う電線接続工程において、下側工具82は、
図11(a)に示すように、下側端子収容凹部6dに配置した接続端子4の電線接続部43を、上述したようにハウジング本体2dの被加圧箇所Zp、換言すると高強度部10を介して下側から間接的に当接するように支持する。
【0159】
さらに、電線接続工程において、電線接続部43に配置された電線末端部33に対して、カバー2Buよりも上方から上側工具81を降下させる。
【0160】
ここで、ハウジング本体2dは、カバー2Buによって上方から覆われているが、カバー2Buにおける、下側端子収容凹部6dの直上部位には、貫通孔20が形成されている。このため、
図11(a)に示すように、電線接続部43に配置された電線末端部33に対して、カバー2Buよりも上方から上側工具81を降下させても
図11(b)に示すように、該上側工具81は、カバー2Buに干渉することがなく、電線接続部43と電線末端部33とを直接加圧することができる。一方、下側工具82は、上述したように、ハウジング本体2dの高強度部10を介して電線接続部43を下側から間接的に加圧する(
図11(b)参照)。
【0161】
これにより、上側工具81と下側工具82とで、電線接続部43と電線末端部33とを上下両側から挟み込むように互いに圧着接続することができ、
図12(a)(b)に示すように、第3実施形態のコネクタ付き電線1B(コネクタ5B)を得ることができる。
【0162】
上述した第3実施形態のコネクタ付き電線1Bにおいては、カバー2Buに貫通孔20を形成することで、カバー組み付け工程の後に電線接続工程を行うことが可能となる。換言すると、カバー2Buをハウジング本体2dに対して上方から覆うように組み付けた状態で接続端子4の電線接続部43と電線末端部33とを接続することが可能となる。
【0163】
これにより、下側端子収容凹部6dに配置した接続端子4や、接続端子4の電線接続部43に配置した電線末端部33が、電線接続工程の際に、下側端子収容凹部6dに対して位置ずれしたり、抜け出たりしないように、これら接続端子4や電線末端部33をカバー2Buによって上方から覆うように保持することができる。
【0164】
したがって、例えば、現場において電線接続工程を行う場合においても、上側工具81と下側工具82とで、電線接続部43と電線末端部33とを、カバー2Buで抑えない場合と比して、容易に、かつ精度よく接続(圧接)することができる。
【0165】
また、第3実施形態のコネクタハウジング2Bは、ハウジング本体2dにおける被加圧箇所Zpに高強度部10としての隆起部11を設けることに加えて、カバー2Buに貫通孔20を形成することで、隆起部11の大きさ及び形状のみならず、貫通孔20の大きさ及び形状に基づいて、被覆電線3のハウジング本体2dへの接続部分3Cの特性インピーダンスが所定の範囲内となるように整合をとることができる。
【0166】
具体的には、カバー2Buに形成した貫通孔10に相当する部位は、カバー2Buを形成する合成樹脂材料よりも誘電性が低い空気によって満たされるため、被覆電線3のハウジング本体2dへの接続部分3Cにおける特性インピーダンスが高くなる傾向にある。一方、ハウジング本体2dに高強度部10としての隆起部11を設けることで、隆起部11の誘電率が空気の誘電率より大きくなることに起因して前記特性インピーダンスが低下する傾向がある。
【0167】
このように、前記特性インピーダンスに関して、カバー2Buとハウジング本体2dとで、相反する作用が期待できるため、前記特性インピーダンスを、貫通孔10と隆起部11のそれぞれの大きさおよび形状に基づいて、きめ細かに整合をとることができる。
【0168】
また、第3実施形態のコネクタハウジング2Bは、第1実施形態のコネクタハウジング2と同様に、カバー2Buをハウジング本体2dとを単一の部材により一体に形成せずに、カバー2Buとハウジング本体2dとを組み付け可能に互いに別部材で構成したものである。
【0169】
このため、第3実施形態のコネクタハウジング2Bは、第1実施形態のコネクタハウジング2と同様に、端子配置工程において、ハウジング本体2dにカバー2Buを取り付けない状態として、接続端子4の電線接続部43を、下側端子収容凹部6dに上方から配置することができる(
図10参照)。
【0170】
さらに、第3実施形態のコネクタハウジング2Bは、電線配置工程において、ハウジング本体2dにカバー2Buを取り付けない状態として電線接続部43に対して電線末端部33を配置することができる(同図参照)。
【0171】
すなわち、第3実施形態のコネクタハウジング2Bは、ハウジング本体2dとカバー2Buとが一体化されたコネクタハウジングのように、製造時において、電線接続部43と電線末端部33とを、該コネクタハウジングの内部に挿入する必要がない。このため、電線接続部43と電線末端部33とを、コネクタハウジングの内部に挿入する場合のように座屈するおそれがなく、ハウジング本体2dに対して上方から容易に配置することができる。
【0172】
また、第3実施形態のコネクタ付き電線1Bを製造する方法においても、第1実施形態のコネクタ付き電線1を製造する方法と同様に、従来のコネクタ付き電線の製造方法の場合と比して端子配置作業の手間を簡略化することができる。
【0173】
具体的には、従来のコネクタ付き電線の製造方法においては、接続端子4に備えた電線接続部43と電線末端部33とを接続(圧接)する際に、下側工具82の加圧面82a,82bに接続端子4を配置する作業を要する。さらに、従来のコネクタ付き電線の製造方法においては、電線接続部43と電線末端部33との接続部位にコネクタを取り付けるため、電線末端部33に接続した接続端子4を、コネクタハウジングの内部に挿入する作業を行う必要がある。
【0174】
これに対して、第3実施形態のコネクタ付き電線1Bを製造する方法においては、従来のコネクタ付き電線の製造方法において行っていた、上述した2つの端子配置作業を、接続端子4および電線末端部33をコネクタハウジング2Cに配置するという1つの端子配置作業にまとめることができる。
【0175】
(第4実施形態)
図13(a)(b)(c)に示すように、第4実施形態のコネクタ付き電線1C(コネクタ5C)に備えられた一体型コネクタハウジング2C(以下、「コネクタハウジング2C」と略記する)は、第1実施形態のコネクタハウジング2における、ハウジング本体2dとカバー2Buとのそれぞれに相当する部位が一体に形成されている。
【0176】
コネクタハウジング2Cは、第1実施形態のコネクタハウジング2と同様に内部に端子収容室6を有して形成されている。
【0177】
具体的には、コネクタハウジング2Cは、2つの接続端子4が収容できるように少なくとも幅方向(左右方向)に並設された2つの端子収容室6を有して中空状に形成されている。また、
図13(b)(c)に示すように、コネクタハウジング2Cは、カバー2Bu(上面)に相当する部位が上壁部27’として形成されている。さらに、後壁部23’、隔壁部25’及び左右各側の側壁部24’,24’は、何れも、前壁部22と略同じ高さを有する縦壁状に形成されている。端子収容室6は、上側端子収容凹部6uと、下側端子収容凹部6dとに区分けせずに構成されている。
【0178】
そして、第4実施形態のコネクタハウジング2Cについても、第3実施形態のコネクタハウジング2Bと同様に、下壁部に相当するベース部21には、高強度部10としての隆起部11が設けられるとともに、上壁部27’には貫通孔20が形成されている。
【0179】
第4実施形態のコネクタ付き電線1Cを製造する方法については、端子配置工程において、接続端子4を、後壁部23’に貫通形成された電線配置凹部23aを通じて、コネクタハウジング2Cの内部に有する端子収容室6に挿入する。
【0180】
これにより、接続端子4のボックス部41は、端子収容室6におけるボックス部配置領域61に配置されるとともに、接続端子4の電線接続部43は、端子収容室6における電線接続部配置領域62に配置される。
【0181】
さらに、電線配置工程において、後壁部23’に貫通形成された電線配置凹部23aを通じて、コネクタハウジング2Cの内部に有する端子収容室6(電線接続部配置領域62)に電線末端部33を挿入する。これにより、電線末端部33は、接続端子4の電線接続部43の上方に配置される。この状態で、電線末端部33および電線接続部43は、互いに接続されていない状態でコネクタハウジング2Cの内部に収容(格納)される。
【0182】
なお、第4実施形態のコネクタ付き電線1Cを製造する方法については、端子配置工程と電線配置工程とを同時に行ってもよい。すなわち、接続端子4の電線接続部43の上方に電線末端部33を配置した状態で、これら接続端子4と電線末端部33とを電線配置凹部23aを通じて端子収容室6に同時に挿入してもよい。
【0183】
続いて行う電線接続工程において、上側工具81がコネクタハウジング2Cの上壁に干渉することがなく、貫通孔20を通じて、電線接続部43と電線末端部33とに対して直接的に上方から加圧するとともに、下側工具82が電線接続部43と電線末端部33とに対してハウジング本体2dの高強度部10を介して間接的に下方から加圧する。これにより、電線接続部43と電線末端部33とを上下両側から挟み込むように互いに圧着接続することができる。
【0184】
なお、上述した端子配置工程において、接続端子4を端子収容室6に配置するに際して、電線配置凹部23aを通じて挿入するに限らず、貫通孔20を通じて端子収容室6に挿入してもよい。
【0185】
上述した第4実施形態のコネクタ付き電線1Cを製造する方法においては、端子配置工程においては電線接続部43を、電線配置工程においては電線末端部33を、それぞれ電線配置凹部23aを通じて端子収容室6に挿入する点で、第3実施形態のコネクタ付き電線1Bを製造する方法とは異なる。
【0186】
しかしながら、第4実施形態のコネクタ付き電線1Cを製造する方法においても、従来のコネクタ付き電線の製造方法の場合と比して端子配置作業の手間を簡略化することができる。
【0187】
詳しくは、第4実施形態のコネクタ付き電線1Cを製造する方法においては、電線接続工程の前に、接続端子4を、電線配置凹部23aを通じてコネクタハウジング2Cの内部に挿入する。その後、電線末端部33を、電線配置凹部23aを通じてコネクタハウジング2Cの内部に挿入し、電線接続部43の上に配置する。
【0188】
これにより、電線末端部33と電線接続部43とが予め接続された状態で挿入する場合と比して電線配置凹部23aを通じて端子収容室6にスムーズに挿入することができる。
【0189】
より詳しくは、例えば、従来のコネクタ付き電線の製造方法のように、電線末端部33と電線接続部43とが予め接続された状態でコネクタハウジング2Cの内部にまとめて挿入した場合、挿入途中において端子収容室6や電線配置凹部23aの各内壁に引っ掛かり易くなり、座屈することが懸念される。
【0190】
これに対して、第4実施形態のコネクタ付き電線1Cを製造する方法においては、電線末端部33と電線接続部43とを、電線配置凹部23aを通じて端子収容室6に互いに別々に挿入できるため、それぞれの挿入途中において電線末端部33や接続端子4が座屈することがなくスムーズに挿入することできる。
【0191】
また、上述した第4実施形態のコネクタ付き電線1Cにおいては、カバー2Buを備えずに、ハウジング本体2dとカバー2Buとのそれぞれに相当する部位が一体に形成された一体型の構成を採用したため、組付け型の構成と比して部品点数を削減できるとともに、製造時にカバー組み付け工程を省略することができる。
【0192】
さらにまた、第4実施形態のコネクタ付き電線1Cについても、第3実施形態のコネクタハウジング2Bと同様に、ハウジング本体2dのベース部21に高強度部10としての隆起部11を設けることに加えて、上壁部27’に貫通孔20を形成することで、隆起部11の大きさ及び形状のみならず、貫通孔20の大きさ及び形状に基づいて、被覆電線3のハウジング本体2dへの接続部分3Cの特性インピーダンスが所定の範囲内となるように整合をとることができる。
【0193】
すなわち、前記特性インピーダンスを、隆起部11の大きさ及び形状のみに基づいて整合する場合と比して、よりきめ細かに整合をとることができる。
【0194】
(第5実施形態)
本発明の第5実施形態として、コネクタユニット50について
図14、
図15を用いて説明する。
【0195】
図14、
図15に示すように、本実施形態のコネクタユニット50は、上述した第3実施形態のコネクタ付き電線1Bを複数(当例では2つ)備えるとともに、複数のコネクタ付き電線1Bのそれぞれに備えたコネクタ5B(コネクタハウジング2B)を保持するユニットハウジング51とを有して構成されている。
【0196】
なお、
図14、
図15中の矢印Yは、ユニットハウジング51の奥行方向を示し、矢印Y1は、奥行方向の一方側を示し、矢印Y2は、奥行方向の他方側を示す。また、
図14において、コネクタ5Bの外側からコネクタハウジング2Bに設けられたカバー側貫通孔10uを通じて視認される内部構造(接続端子4と電線末端部33との接続部分)の図示は省略する。
【0197】
ユニットハウジング51は、合成樹脂材料により形成されるとともに、複数(当例では2つ)のコネクタ5Bの略全体を嵌め込んで保持する内部空間としてのコネクタ嵌込み部55を備えている。
【0198】
コネクタ嵌込み部55は、複数のコネクタ5Bに対応して幅方向において複数(当例では2つ)配設され、それぞれが同一形状に形成されるとともに区分けされている。
【0199】
コネクタ嵌込み部55は、ユニットハウジング51の内部において奥行方向に貫通形成されている。
【0200】
コネクタ嵌込み部55の奥行方向の一方側には、コネクタ5Bを該コネクタ嵌込み部55に差し込むコネクタ差込み口55aが形成されている。コネクタ嵌込み部55の奥行方向の他方側には、後述する接続相手側コネクタユニット60に備えた雄型端子65を差し込み可能な端子差込み口54(
図15参照)が形成されている。
【0201】
図15に示すように、端子差込み口54は、コネクタハウジング2Bの前壁部22に設けた2つの挿入孔22a(
図1参照)に対応して1つのコネクタ嵌込み部55につき幅方向に2つが配設されている。
【0202】
すなわち、端子差込み口54は、ユニットハウジング51の奥行方向の他方側の端面に、2つのコネクタ嵌込み部55に対応して幅方向に4つが配設されている(
図15参照)。
【0203】
これにより、本実施形態のコネクタユニット50は、コネクタ嵌込み部55にコネクタ5Bを嵌め込んだ状態において、コネクタハウジング2Bに設けた挿入孔22aとユニットハウジング51に設けた端子差込み口54とが奥行方向に連通する。
【0204】
そして、本実施形態のコネクタユニット50は、2つのコネクタハウジング2Bに対応して多極(当例では4極、すなわち、4つの端子差込み口54)を有する雌型コネクタユニットとして構成される。
【0205】
また、
図14中の符号60は、接続相手側コネクタユニットを示している。接続相手側コネクタユニット60は、本実施形態のコネクタユニット50に奥行方向の他方側から接続可能に4極を有する雄型コネクタユニットとして構成されている。なお、本実施形態の接続相手側コネクタユニット60は、ケーブル61の先端部に接続されているが、基板上に搭載されたコネクタや端子に接続されてもよい。
【0206】
上述したコネクタユニット50のコネクタ嵌込み部55に、コネクタ5Bを嵌め込んだ状態とし、さらに、該コネクタユニット50に、接続相手側コネクタユニット60を奥行方向の他方側から接続した状態において、接続相手側コネクタユニット60に備えた雄型端子65は、先端に有する突出片65a(タブ)が、端子差込み口54(
図15参照)および挿入孔22a(
図15参照)を通じてコネクタ5Bの内部に備えた接続端子4のボックス部41(
図1,
図7参照)に挿入され、接続端子4と電気的に接続される。
【0207】
また、ユニットハウジング51には、一対のコネクタ嵌込み部55を、幅方向の両側および上方から取り囲むようにシールドシェル57が配設されている。なお、シールドシェル57は、ユニットハウジング51の奥行方向に延びる中心軸周りの全方向を取り囲むなど、全方向のうち少なくとも一方向に配設した構成を採用することができる。
【0208】
本実施形態のシールドシェル57は、上壁部および左右の側壁部のそれぞれの略全面に対応する大きさを有するように曲げ加工された金属板で形成されており、ユニットハウジング51の上壁部および左右の側壁部のそれぞれの内部に埋設されるようにインサート成形されている。なお、シールドシェル57は、ユニットハウジング51に圧入されていてもよく、ユニットハウジング51の外周を覆うように形成されていてもよい。
【0209】
コネクタユニット50は、ユニットハウジング51に金属製のシールドシェル57を備えることにより、コネクタハウジング2Bとコネクタ保持部54との接続部位、および接続相手側コネクタユニット60との接続部位を電磁シールドすることができる。
【0210】
一方、ユニットハウジング51に保持される2つのコネクタハウジング2Bに対応する2組のツイストペア電線35は、それぞれのツイストペア電線35の外周側から編組線58によって長手方向に沿って覆われている。そして、シールドシェル57は、被覆電線3の外周を長手方向に沿って覆う編組線58の末端部と電気的に接続されている。
【0211】
なお、シールドシェル57は、ユニットハウジング51の他、コネクタハウジング2Bに設けられていてもよく、コネクタハウジング2Bのみに設けられていてもよい。
【0212】
また、シールドシェル57は、ユニットハウジング51のコネクタ嵌込み部55の内周と、コネクタハウジング2Bの外周との両方に設けられた構成を採用してもよい。
【0213】
この構成においては、ユニットハウジング51のコネクタ嵌込み部55の内周のシールドシェル57と、コネクタハウジング2Bの外周のシールドシェル(図示せず)が電気的に接続されることとなる。さらに、この構成においては、編組線58はコネクタハウジング2Bの外周に設けられたシールドシェル(図示せず)と接続されることが好ましい。
【0214】
また、上述した構成によれば、コネクタ5Bをユニットハウジング51のコネクタ嵌込み部55に嵌め込んだ状態において、コネクタハウジング2Bの上壁部27’に形成された貫通孔20をコネクタ嵌込み部55の内壁によって覆うことができる。
【0215】
よって、コネクタ5Bは、ユニットハウジング51のコネクタ嵌込み部55に嵌め込まれることで、嵌め込まずに単品で用いる場合と比して電線接続部43と電線末端部33との接続部分の防水性を高めることができる。
【0216】
また、本実施形態のコネクタユニット50は、ユニットハウジング51のコネクタ保持部54において複数のコネクタを保持することで、多極(当例では4極)を有する構造を容易に構成することができる。
【0217】
また、本発明のコネクタユニットは、上述したように、複数のコネクタ嵌込み部55を、ユニットハウジング51の幅方向に配設した構成に限定せず、ユニットハウジングの幅方向および上下方向のうち、少なくとも一方の方向に複数備えた構成とすることができる。
【0218】
また、本発明のコネクタユニットは、上述したユニットハウジング51のように、コネクタ5Bを収容するコネクタ嵌込み部55のみが設けられた構成に限定せず、図示省略するが、コネクタ5Bを介さずに接続端子4を単独で嵌め込み可能な端子嵌め込み部が設けられた構成を採用してもよい。
【0219】
この発明は、上述した第1~第5の実施形態の構成のみに限定されるものではなく様々な実施形態で形成することができる。
【0220】
例えば、上述した実施形態のコネクタ付き電線1,1A,1B,1Cに備えられた被覆電線3は、2本の前記電線を撚り合されて形成されるツイストペア電線を採用したが、ツイストペア電線に限らず、ツイストされていないペア電線を採用してもよい。
【0221】
具体的には、電線は、互いの間隔が長手方向に沿って略一定になるように、すなわち略並列(平行)に配置された一対の導体31が備えられたペア電線を採用してもよい。
【0222】
ペア電線は、ツイストされているか否かに関わらず、例えば、リボン電線のように、長手方向に沿って互いの間隔が略一定になるように略並列(平行)に配置された一対の導体31を絶縁被覆部32で一体に被覆したものであってもよい。
【0223】
或いは、ペア電線は、例えば、電源ケーブルのように、一対の導体31のそれぞれが互いに独立して絶縁被覆部32で被覆したものであってもよい。
【0224】
さらに、ペア電線は、ツイストされているか否かに関わらず、編組線や金属箔等から成る電磁シールド部材で覆った構成が好ましいが、電磁シールド部材は必須ではなく、電磁シールド部材で覆われていない構成であってもよい。
【0225】
また、本発明に備えられたコネクタハウジングは、上述した第1実施形態の組付け型コネクタハウジング2のように、ハウジング本体2dとカバー2uとのうち、主にハウジング本体2d(下側端子収容凹部6d)によって接続端子4を保持する構成を採用したが、この構成に限らず、主にカバー2u(上側端子収容凹部6u)によって接続端子4を保持する構成を採用してもよい。
【0226】
すなわち、本発明に備えられたコネクタハウジングは、接続端子4が、実質的にハウジング本体2d側ではなく、カバー2u側に嵌め込まれた状態で保持される構成を採用してもよい。
【0227】
また、例えば、被加圧箇所Zpに設けた第1実施形態の隆起部11や、被加圧箇所Zpに備えた第2実施形態の金属板12は、左右の電線接続部配置領域62に対応する被加圧箇所Zpごとに離間するようにそれぞれ独立して設けてもよい。
【0228】
また、本発明の電線接続部は、上述した電線接続部43のように圧接片44cを備えた構成に限定せず、図示省略するが、電線の末端部を絶縁被覆部32で被覆されずに導体31を露出させた形態とし、被覆電線3の末端部を配置した状態で一対の工具により加締めて圧着する圧着片(バレル片)を備えた構成を採用してもよい。
【0229】
このように、電線接続部に圧着片を備えることで、端子をコネクタハウジングに配置した状態において、電線の末端部において絶縁被覆部32に対して露出させた導体31を圧着片によって覆うように加締めることで、被覆電線3と接続端子4とをしっかりと接続することができる。
【0230】
また、本発明は、第3実施形態のコネクタ付き電線1Bに備えたカバー2Buのように、カバーに貫通孔を設けた構成を採用することができる。但し、本発明は、カバーに貫通孔を設ける場合は、電線接続工程において、一対の工具81,82のうち、少なくとも上側工具81が通過する、または一時的に存在することを許容する様々な態様(大きさ、形状、部位、数等)で設けることができる。
【0231】
すなわち、カバー側貫通孔は、電線接続工程において、カバーuによってハウジング本体2dを上方から覆った状態において被覆電線3と接続端子4とを圧接する際に、一対の工具81,82(特に、上側工具81)と干渉しない大きさおよび形状であれば、第3実施形態のカバー側貫通孔20uと異なる形状で形成されたものであってもよい。
【0232】
また言うまでもなく、本発明は、カバーに貫通孔を設ける構成を、第2実施形態のコネクタ付き電線1Aに備えたカバー2uに適用してもよい。
【0233】
また、第5実施形態のコネクタユニット50のユニットハウジング51に備えたシールドシェル57は、上述したように、コネクタハウジング2B、すなわち、第1実施形態のコネクタハウジング2Bの外周に備えてもよいが、本発明は、この構成に限定されず、第2実施形態のコネクタハウジング2Aの外周、第3実施形態のコネクタハウジング2Bの外周、或いは第4実施形態のコネクタハウジング2Cの外周に備えた構成を採用してもよい。
【0234】
また、例えば、第1実施形態の組付け型コネクタハウジング2に備えた隔壁部25は、左右各側の後述するボックス部配置領域61を幅方向に仕切るように形成されたものであるが(
図1参照)、本発明のコネクタハウジングは、隔壁部25が、端子収容室6(下側端子収容凹部6d)を仕切る構成であれば、電線接続部配置領域62を幅方向に仕切るように縦壁状に形成された構成を採用してもよい。
【0235】
詳しくは、例えば、
図16、
図17(a)(b)、
図18に示すように、第1実施形態の変形例に係るコネクタ付き電線1’(コネクタハウジング2’)は、隔壁部25が、ボックス部隔壁部25aと電線接続部隔壁部25bとを備えて形成され、前壁部22と後壁部23とを前後方向に連結するように直線状に連続して延びている。
【0236】
電線接続部隔壁部25bは、電線接続部配置領域62(接続部配置部)に配置された電線接続部43を幅方向の内側(中央側)からガイドする構成としている。但し、電線接続部隔壁部25bは、一対の工具81,82により圧接部44と電線末端部33とを上下両側から挟み込むように互いに圧接接続する際に、降下する上側工具81に干渉しないようにボックス部隔壁部25aよりも低背かつ幅小に形成されている。
【0237】
上記構成によれば、電線接続部隔壁部25bによって、電線接続部配置領域62に配置された電線接続部43のガイド機能を高めることができるため、一対の工具81,82により圧接部44と電線末端部33とを上下両側から圧接接続する際に、接続端子4が位置ずれすることを抑制することができる。
【0238】
従って、電線末端部33と電線接続部43との接続部分は、コネクタハウジング2’の内部に、幅方向に並んだ状態で収容されるが、これら一対の接続部分の相対位置は、接続前の相対位置に対して変動しないため、接続部分3Cの特性インピーダンスを、ねらい通りの値、又はその値に極力近似した値とすることができる。
【0239】
本発明の隔壁部は、一対の工具81,82により圧接部44と電線末端部33とを上下両側から挟み込むように互いに圧接接続する際に、降下する上側工具81に干渉しない配置、形状(大きさ)であれば、上述した電線接続部隔壁部25bの形態に限定せず、他の形態で形成することができる。
【0240】
例えば、
図19(a)(b)に示すように、電線接続部隔壁部25bは、前後方向における、電線接続部43のインシュレーションバレル部45に相当する部位に形成せず、圧接部44に相当する部位のみに形成された構成を採用してもよい。
【0241】
また、電線接続部に圧着片(バレル片)を備えた構成を採用した場合においても、電線接続部隔壁部25bは、一対の工具により圧接部44と電線末端部33とを上下両側から挟み込むように互いに圧着接続する際に、上側工具に干渉しない配置、形状(大きさ)で形成することができる。
【0242】
また、高強度部10,10Aは、ベース部21に設けることに限定せず、コネクタハウジングにおける、カバー2u(上壁部)、前壁部22、後壁部23、左右各側の側壁部24,24のうち少なくとも一部に設けてもよい。
【0243】
また、高強度部10,10Aは、少なくとも被加圧箇所Zpに設けた構成であれば、被加圧箇所Zpのみに設けることに限定しない。例えば、高強度部10は、ベース部21に被加圧箇所Zpから側壁部24,24に至るまで幅広凹部7を一体的に補強するように設けてもよい。
【符号の説明】
【0244】
1,1’,1A,1B,1C…コネクタ付き電線
2,2’,2A,2B…組付け型コネクタハウジング(コネクタハウジング)
2C…一体型コネクタハウジング(コネクタハウジング)
2d,2d’,2Ad…ハウジング本体
2u,2Bu…カバー(コネクタハウジングカバー)
3…被覆電線
4…接続端子
5,5B,5C…コネクタ
62…電線接続部配置領域(接続部配置部)
10,10A…高強度部
11…隆起部
12…金属板(金属製部材)
20…貫通孔
31…導体
43…電線接続部
44c…圧接片
32…絶縁被覆部
33…電線末端部(電線の末端部)
50…コネクタユニット
51…ユニットハウジング
81,82…一対の工具(一対の加圧手段)
Zp…被加圧箇所