(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-27
(45)【発行日】2024-06-04
(54)【発明の名称】光モジュール
(51)【国際特許分類】
H01L 31/02 20060101AFI20240528BHJP
【FI】
H01L31/02 B
(21)【出願番号】P 2020572248
(86)(22)【出願日】2020-02-10
(86)【国際出願番号】 JP2020005157
(87)【国際公開番号】W WO2020166566
(87)【国際公開日】2020-08-20
【審査請求日】2022-12-22
(31)【優先権主張番号】P 2019024321
(32)【優先日】2019-02-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000005290
【氏名又は名称】古河電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】長島 和哉
(72)【発明者】
【氏名】石川 陽三
(72)【発明者】
【氏名】伊澤 敦
【審査官】吉岡 一也
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-036100(JP,A)
【文献】特開2008-251770(JP,A)
【文献】特開2017-098616(JP,A)
【文献】特開2014-204022(JP,A)
【文献】特開2011-216629(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 31/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アノード端子およびカソード端子を含む第1端子群を備える複数の光電素子と、
前記複数の光電素子のそれぞれの第1端子群と電気的に接続される複数の第2端子群と、前記複数の第2端子群のうちの2つの第2端子群の間にそれぞれが配置された複数のグラウンド端子とを備える集積回路と、
前記複数の光電素子が所定の配列方向に配列した状態にて実装されるキャリア基板と、
前記複数の光電素子、前記集積回路、および前記キャリア基板を収容する筐体と、
前記筐体内において、前記キャリア基板の前記配列方向における少なくとも一端側に設けられた共通グラウンドパッドと、
を備え、
前記複数の光電素子のそれぞれの第1端子群は、2つのアノード端子と1つのカソード端子との3つの端子からなり、
前記キャリア基板は、前記筐体に対して一つの面において固定されており、
前記キャリア基板は、前記複数の光電素子のそれぞれの第1端子群と前記集積回路のそれぞれの第2端子群との電気的接続に介在する複数の信号配線部と、グラウンド配線部とを有しており、
前記グラウンド配線部は、前記複数の信号配線部のそれぞれの間に配置され前記複数のグラウンド端子のそれぞれに電気的に接続される複数の端子パターン部と、前記キャリア基板における前記共通グラウンドパッドが設けられている側に配置された共通パターン部と、前記複数の端子パターン部と前記共通パターン部とを電気的に接続する連結部と、を有しており、
前記集積回路の複数のグラウンド端子が前記キャリア基板のグラウンド配線部を経由して前記共通グラウンドパッドに電気的に接続していることにより、前記キャリア基板と前記集積回路との隙間から前記筐体の底板部側に配線を通せないようにして、前記キャリア基板と前記集積回路との隙間を小さくした
ことを特徴とする光モジュール。
【請求項2】
前記グラウンド配線部において、前記複数の端子パターン部のいずれかから前記共通パターン部までの部分の経路の長さが、4.1mm以下または隣接するグラウンド端子パターン部間のピッチの9倍以下であることを特徴とする請求項1に記載の光モジュール。
【請求項3】
前記グラウンド配線部において、前記複数の端子パターン部のいずれかから前記共通パターン部までの部分の経路の長さが、3.5mm以下または隣接するグラウンド端子パターン部間のピッチの7倍以下であることを特徴とする請求項2に記載の光モジュール。
【請求項4】
前記複数の端子パターン部のいずれかから前記共通パターン部までの部分の面積が、1.2mm
2以下であることを特徴とする請求項1~3のいずれか一つに記載の光モジュール。
【請求項5】
前記連結部は、前記キャリア基板において前記複数の光電素子が実装される実装面に設けられていることを特徴とする請求項1~4のいずれか一つに記載の光モジュール。
【請求項6】
前記連結部は、前記キャリア基板において前記複数の光電素子が実装される実装面と対向する背面に設けられていることを特徴とする請求項1~4のいずれか一つに記載の光モジュール。
【請求項7】
前記連結部はボンディングワイヤからなることを特徴とする請求項1~6のいずれか一つに記載の光モジュール。
【請求項8】
前記連結部は導体ブロックからなることを特徴とする請求項1~6のいずれか一つに記載の光モジュール。
【請求項9】
前記連結部は前記キャリア基板に埋設されていることを特徴とする請求項1~6のいずれか一つに記載の光モジュール。
【請求項10】
前記グラウンド配線部の共通パターン部と前記共通グラウンドパッドとはボンディングワイヤにて電気的に接続されていることを特徴とする請求項1~9のいずれか一つに記載の光モジュール。
【請求項11】
前記筐体に収容された状態で固定されており、前記複数の光電素子と光学的に接続している光素子をさらに備え、
前記キャリア基板は前記光素子に固定されていることによって前記筐体に対して固定されていることを特徴とする請求項1~10のいずれか一つに記載の光モジュール。
【請求項12】
前記複数の光電素子はフォトダイオードを含み、前記集積回路はトランスインピーダンスアンプを含むことを特徴とする請求項1~11のいずれか一つに記載の光モジュール。
【請求項13】
前記キャリア基板は、前記複数の信号配線部と前記グラウンド配線部とが表面に形成された直方体状の本体を有し、前記複数の光電素子と共に前記筐体に接着剤にて接着固定されている
ことを特徴とする請求項1~
12のいずれか一つに記載の光モジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光モジュールに関するものである。
【背景技術】
【0002】
大容量光通信システムにおいて、信号光の送受信を行う光モジュールである光トランシーバとして、デジタルコヒーレントトランシーバが用いられている。デジタルコヒーレントトランシーバは、複数の光コンポーネントおよび電子コンポーネントが1つの筐体に収容されて構成されている。たとえば、特許文献1では、互換性のある共通仕様の製品に関する取り決めであるMSA(Multi-Source Agreement)におけるCFP2規格に準拠するための光トランシーバが開示されている。
【0003】
また、光モジュールとして、信号光を導波する光素子である光導波路基板と、信号光を受光して電流信号を出力する光電素子とが接合された構成が開示されている(特許文献2)。光電素子は、キャリア基板としてのインターポーザ基板に実装されている。その結果、キャリア基板は光電素子を介在させて光導波路基板に固定されている。また、光電素子と信号増幅用の集積回路であるICとはキャリア基板を経由して電気的に接続している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2016-081060号公報
【文献】特開2015-191054号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、DQPSK(Differential Quadrature Phase Shift Keying)方式などでは、信号光を4つの信号光に分離し、4つの光電素子にて受光する。信号光は高周波信号で変調されているため、4つの光電素子が出力する電流信号にも高周波信号が含まれている。そのため、ICの電流信号入力段では、グラウンド端子によって信号入力端子間のアイソレーションを確保する構成が一般的である。このとき、グラウンド端子の電位を安定化させるために、筐体に設けられた共通のグラウンドパッドに電気的に接続することが好ましい。
【0006】
そこで、特許文献2の構成において、ICの電流信号入力段側のグラウンド端子から、ICとキャリア基板との間の隙間を通してベース側に配線を接続し、ベースに設けられたグラウンドパッドに接続する方法が考えられる。しかしながら、光モジュールの小型化のために、ICとキャリア基板との隙間は極めて狭くなっており、そこに配線を通すことは困難である。
【0007】
また、特許文献2の構成において、キャリア基板をベース側まで延伸してベースに固定するとともに、キャリア基板に形成したグラウンド配線用パターンを経由してICの電流信号入力段側のグラウンド端子からベースに設けられたグラウンドパッドに接続する方法が考えられる。しかしながら、この場合、キャリア基板は、互いに略直交する2面である、光電素子側の面とベース側の面とに固定されることとなる。その結果、環境温度などの温度変化などに応じてキャリア基板に2方向から応力が掛かることとなる。この場合、キャリア基板が剥離するおそれがあり、光モジュールの信頼性が低下するおそれがある。
【0008】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、小型かつ信頼性の低下が抑制された光モジュールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明の一態様に係る光モジュールは、アノード端子およびカソード端子を含む第1端子群を備える複数の光電素子と、記複数の光電素子のそれぞれの第1端子群と電気的に接続される複数の第2端子群と、前記複数の第2端子群のうちの2つの第2端子群の間にそれぞれが配置された複数のグラウンド端子とを備える集積回路と、前記複数の光電素子が所定の配列方向に配列した状態にて実装されるキャリア基板と、前記複数の光電素子、前記集積回路、および前記キャリア基板を収容する筐体と、前記筐体内において、前記キャリア基板の前記配列方向における少なくとも一端側に設けられた共通グラウンドパッドと、を備え、前記キャリア基板は、前記筐体に対して一つの面において固定されており、前記キャリア基板は、前記複数の光電素子のそれぞれの第1端子群と前記集積回路のそれぞれの第2端子群との電気的接続に介在する複数の信号配線部と、グラウンド配線部とを有しており、前記グラウンド配線部は、前記複数の信号配線部のそれぞれの間に配置され前記複数のグラウンド端子のそれぞれに電気的に接続される複数の端子パターン部と、前記キャリア基板における前記共通グラウンドパッドが設けられている側に配置された共通パターン部と、前記複数の端子パターン部と前記共通パターン部とを電気的に接続する連結部と、を有しており、前記集積回路の複数のグラウンド端子が前記キャリア基板のグラウンド配線部を経由して前記共通グラウンドパッドに電気的に接続していることを特徴とする。
【0010】
本発明の一態様に係る光モジュールは、前記グラウンド配線部において、前記複数の端子パターン部のいずれかから前記共通パターン部までの部分の経路の長さが、4.1mm以下または隣接するグラウンド端子パターン部間のピッチの9倍以下であることを特徴とする。
【0011】
本発明の一態様に係る光モジュールは、前記グラウンド配線部において、前記複数の端子パターン部のいずれかから前記共通パターン部までの部分の経路の長さが、3.5mm以下または隣接するグラウンド端子パターン部間のピッチの7倍以下であることを特徴とする。
【0012】
本発明の一態様に係る光モジュールは、前記複数の端子パターン部のいずれかから前記共通パターン部までの部分の面積が、1.2mm2以下であることを特徴とする。
【0013】
本発明の一態様に係る光モジュールは、前記連結部は、前記キャリア基板において前記複数の光電素子が実装される実装面に設けられていることを特徴とする。
【0014】
本発明の一態様に係る光モジュールは、前記連結部は、前記キャリア基板において前記複数の光電素子が実装される実装面と対向する背面に設けられていることを特徴とする。
【0015】
本発明の一態様に係る光モジュールは、前記連結部はボンディングワイヤからなることを特徴とする。
【0016】
本発明の一態様に係る光モジュールは、前記連結部は導体ブロックからなることを特徴とする。
【0017】
本発明の一態様に係る光モジュールは、前記連結部は前記キャリア基板に埋設されていることを特徴とする。
【0018】
本発明の一態様に係る光モジュールは、前記グラウンド配線部の共通パターン部と前記共通グラウンドパッドとはボンディングワイヤにて電気的に接続されていることを特徴とする。
【0019】
本発明の一態様に係る光モジュールは、前記筐体に収容された状態で固定されており、前記複数の光電素子と光学的に接続している光素子をさらに備え、前記キャリア基板は前記光素子に固定されていることによって前記筐体に対して固定されていることを特徴とする。
【0020】
本発明の一態様に係る光モジュールは、前記複数の光電素子はフォトダイオードを含み、前記集積回路はトランスインピーダンスアンプを含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、小型かつ信頼性の低下が抑制された光モジュールを実現できるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】
図1は、実施形態に係る光モジュールの内部構成を示す模式図である。
【
図4】
図4は、キャリア基板の模式的な斜視図である。
【
図5】
図5は、キャリア基板の一部の模式的な展開図である。
【
図6】
図6は、第1変形例に係るキャリア基板の模式的な斜視図である。
【
図7】
図7は、第1変形例に係るキャリア基板の一部の模式的な展開図である。
【
図8】
図8は、第2変形例に係るキャリア基板の模式的な斜視図である。
【
図9】
図9は、第2変形例に係るキャリア基板の一部の模式的な展開図である。
【
図10】
図10は、計算例1~6における損失の周波数特性を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下に、図面を参照して実施形態について説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。また、図面の記載において、同一または対応する要素には適宜同一の符号を付している。また、図面は模式的なものであり、各要素の寸法の関係、各要素の比率などは、現実と異なる場合があることに留意する必要がある。図面の相互間においても、互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれている場合がある。また、図中で適宜xyz座標軸を示し、これにより方向を説明する。
【0024】
図1は、実施形態に係る光モジュールの内部構成を示す模式図である。この光モジュール100は、筐体1を備えている。筐体1は、信号光出力ポート1aと、信号光入力ポート1bと、側壁部1cと、底板部1dと、端子部1eと、上蓋部とを備えている。なお、
図1は、上蓋部を外した状態でz方向正側から上面視したものである。側壁部1cは、yz平面またはzx平面に平行な4面を有する枠板状の部材であり、各面は底板部1dと略直交している。信号光出力ポート1aと、信号光入力ポート1bとは、側壁部1cのx方向正側に設けられている。信号光出力ポート1aには外部に信号光を出力するための光ファイバが接続される。信号光入力ポート1bには外部から信号光を入力するための光ファイバが接続される。底板部1dは、xy平面に平行な板状の部材である。端子部1eは側壁部1cのx方向正側以外の部分に設けられている。端子部1eは光モジュール100の内部および外部に突出している。
【0025】
底板部1dは、銅タングステン(CuW)、銅モリブデン(CuMo)、酸化アルミニウム(Al2O3)などの熱伝導率が高い材料からなる。筐体1のその他の部分は、Fe-Ni-Co合金、酸化アルミニウム(Al2O3)などの熱膨張係数が低い材料からなる。
【0026】
端子部1eは絶縁性の材質からなり、その表面および内部に導体からなる配線パターンが形成されている。端子部1eの配線パターンは、光モジュール100の外部に設けられて光モジュール100の動作を制御する制御器に電気的に接続されている。制御器はたとえばICを含んで構成されている。
【0027】
光モジュール100の内部には、以下のコンポーネントが収容され、固定されている:チップオンサブマウント2、変調部3、変調器ドライバ4、コヒーレントミキサ5、バランスドフォトダイオード(PD)アレイ6、キャリア基板7、集積回路8、ビームスプリッタ9a、反射ミラー9b、である。
【0028】
光モジュール100では、筐体1の内部にこれらのコンポーネントが実装され、上蓋部を取り付けて気密封止される。また、これらのコンポーネントは、変調器ドライバ4と集積回路8とバランスドPDアレイ6とキャリア基板7とを除き、筐体1の内部に配置されたベースまたは温度調節素子に実装されている。変調器ドライバ4と集積回路8とは端子部1eに実装されている。バランスドPDアレイ6およびキャリア基板7については後に詳述する。
【0029】
光モジュール100は、信号光出力ポート1aから出力信号光を出力し、信号光入力ポート1bから入力光信号光が入力される光トランシーバとして構成されている。以下、各コンポーネントの構成および機能について説明する。
【0030】
(光トランスミッタ)
まず、光トランスミッタとして機能するコンポーネントの構成および機能について説明する。
チップオンサブマウント2は、レーザ素子2aと、レーザ素子2aを搭載するサブマウント2bとを備える。レーザ素子2aはたとえば波長可変レーザ素子である。サブマウント2bは、熱伝導性が高い材質からなり、レーザ素子2aが発する熱を、サブマウント2bが搭載されるベースに効率良く放熱する。
【0031】
レーザ素子2aは、端子部1eに形成された配線パターンを通じて電力を供給されて、連続波(CW)かつ直線偏波のレーザ光L1を前端面からx方向負側に出力する。
【0032】
ビームスプリッタ9aは、レーザ光L1の一部をレーザ光L2として分岐する。
【0033】
変調部3は、レーザ光L1を変調して変調光を生成する変調器を備える。変調器は、たとえばInP(インジウムリン)を構成材料に用いたMZ(マッハツェンダ)型の位相変調器であり、変調器ドライバ4によって駆動されてIQ変調器として機能する公知のものである。このような位相変調器は、たとえば国際公開第2016/021163に開示されるものと同様のものである。変調器ドライバ4はたとえばICを含んで構成されており、制御器によってその動作を制御されている。
【0034】
変調器は、偏波面が互いに直交する直線偏波光であり、それぞれがIQ変調された変調光を生成する。2つの変調光は、変調部3が備える光学系によって偏波合成されて出力信号光L3となり、x方向正側に出力する。
【0035】
信号光出力ポート1aは、出力信号光L3の入力を受け付け、筐体1の外部に出力する。
【0036】
(光レシーバ)
つぎに、光レシーバとして機能するコンポーネントの構成および機能について説明する。
信号光入力ポート1bは、外部から入力信号光L4の入力を受け付け、コヒーレントミキサ5に入力させる。
【0037】
一方、反射ミラー9bは、レーザ光L1の一部であるレーザ光L2を反射し、局所光としてコヒーレントミキサ5に入力される。
【0038】
光素子であるコヒーレントミキサ5は、入力された局所光としてのレーザ光L2と入力信号光L4とを干渉させて処理し、処理信号光を生成し、バランスドPDアレイ6に出力する。処理信号光は、X偏波のI成分に対応するIx信号光、X偏波のQ成分に対応するQx信号光、Y偏波のI成分に対応するIy信号光、およびY偏波のQ成分に対応するQy信号光、の4つである。コヒーレントミキサ5は、たとえばPLCからなる公知のものである。
【0039】
バランスドPDアレイ6は、コヒーレントミキサ5と光学的に接続している。バランスドPDアレイ6は、バランスドPDを4つ有しており、4つの処理信号光のそれぞれを受光して、電流信号に変換して集積回路8に出力する。
【0040】
集積回路8は、トランスインピーダンスアンプ(TIA)を含んで構成されており、制御器によってその動作を制御されている。集積回路8は、4つのバランスドPDのそれぞれから入力された電流信号を電圧信号に変換して出力する。出力された電圧信号は、端子部1eに形成された配線パターンを通じて制御器またはさらに上位の制御装置に送信され、入力信号光L4の復調のために使用される。
【0041】
図2、3は、
図1の一部の詳細構成を示す模式図である。
図2は、特にコヒーレントミキサ5、バランスドPDアレイ6、キャリア基板7、集積回路8について、z方向正側から見た上面視で示している。また、
図3は、特にコヒーレントミキサ5、バランスドPDアレイ6、キャリア基板7について、y方向正側から見た側面視で示している。
【0042】
図2に示すように、バランスドPDアレイ6は、複数の光電素子として、y方向に配列された4つのバランスドPD6a、6b、6c、6dを有している。バランスドPD6aは、第1端子群6a1を備えている。第1端子群6a1は、3つの端子からなり、具体的には2つのアノード端子と1つのカソード端子からなる。y方向において、2つのアノード端子の間に、斜線を付された1つのカソード端子が配置されている。同様に、バランスドPD6b、6c、6dは、それぞれ、第1端子群6b1、6c1、6d1を備えている。第1端子群6b1、6c1、6d1は、それぞれ、2つのアノード端子と1つのカソード端子との3つの端子からなる。
【0043】
集積回路8は、y方向に配列された、4つの第2端子群8a、8b、8c、8dと、グラウンド端子8g1、8g5と、グラウンド端子8g2、8g3、8g4と、を備えている。
【0044】
第2端子群8aは、3つの信号入力端子からなる。3つの信号入力端子のそれぞれは、後述するようにバランスドPD6aの第1端子群6a1の3つの端子のそれぞれと電気的に接続されている。たとえば、第2端子群8aのうち斜線を付された信号入力端子には第1端子群6a1のカソード端子から出力された電流信号が入力される。同様に、第2端子群8b、8c、8dは、それぞれ、3つの信号入力端子からなる。3つの信号入力端子のそれぞれは、第1端子群6b1、6c1、6d1のそれぞれの3つの端子のそれぞれと電気的に接続されている。
【0045】
グラウンド端子8g2は、第2端子群8aと第2端子群8bとの間に配置されており、第2端子群8aと第2端子群8bとの間のアイソレーションを確保する。同様に、グラウンド端子8g3は、第2端子群8bと第2端子群8cとの間に配置されている。グラウンド端子8g4は、第2端子群8cと第2端子群8dとの間に配置されている。グラウンド端子8g1は第2端子群8aのy方向負側に配置されている。グラウンド端子8g5は第2端子群8dのy方向正側に配置されている。
【0046】
キャリア基板7は、セラミックやガラスや樹脂などからなる直方体状の本体7eの表面に、後述する各種配線部が形成された構成を有する。高周波特性の観点から、本体7eは誘電率が低い方が好ましい。キャリア基板7には、バランスドPDアレイ6の4つのバランスドPD6a、6b、6c、6dがy方向を所定の配列方向として配列した状態にて実装されている。本体7eにおけるバランスドPDアレイ6が実装される面を実装面7eaとすると、
図3に示すように、キャリア基板7は実装面7eaにおいてコヒーレントミキサ5に接着剤11にて接着固定されている。なお、本実施形態ではバランスドPDアレイ6も、コヒーレントミキサ5に接着剤11にて接着固定されている。接着剤11はたとえば紫外線硬化樹脂を含むものである。
【0047】
また、筐体1内において、共通グラウンドパッド10a、10bが、キャリア基板7の両端側に設けられている。ここで、両端側とは、キャリア基板7におけるバランスドPD6a、6b、6c、6dの配列方向、すなわちy方向における両端側である。共通グラウンドパッド10a、10bは、筐体1内に収容されたコンポーネントに対する共通のグラウンドパッドとして機能しており、たとえば筐体1のケースグラウンドなどのグラウンドに電気的に接続されている。
【0048】
なお、
図3では、コヒーレントミキサ5が備える光導波路5aを示している。光導波路5aは4つの光導波路からなり、光導波路5aが導波した4つの処理信号光のそれぞれがバランスドPDアレイ6のバランスドPD6a、6b、6c、6dのそれぞれに出力される。
【0049】
キャリア基板7についてより具体的に説明する。
図4は、キャリア基板7の模式的な斜視図である。
図5は、キャリア基板7の一部の模式的な展開図である。キャリア基板7は、本体7eと、本体7eの表面に形成された、4つの信号配線部7a、7b、7c、7dおよびグラウンド配線部7gとを有する。
【0050】
本体7eは、表面として、yz平面に平行な実装面7eaと、xy平面に平行な上面7ebと、実装面7eaと対向する背面7ecとを有する。
【0051】
信号配線部7a、7b、7c、7dおよびグラウンド配線部7gは、パターン状の導体配線膜であり、本実施形態では金属配線膜である。
【0052】
信号配線部7a、7b、7c、7dは、それぞれ、実装面7eaから上面7ebにわたって延在する3本の金属配線膜からなる。
図2にも示すように、信号配線部7aの3本の金属配線膜のそれぞれは、実装面7eaに存在する部分において、バランスドPD6aの第1端子群6a1の3つの端子のそれぞれと、半田などで電気的に接続している。同様に、信号配線部7b、7c、7dの3本の金属配線膜のそれぞれは、実装面7eaに存在する部分において、バランスドPD6b、6c、6dの3つの端子のそれぞれと、半田などで電気的に接続している。信号配線部7a、7b、7c、7dの幅はたとえば0.1mmであるが、特に限定はされない。
【0053】
さらに、信号配線部7aの3本の金属配線膜のそれぞれは、集積回路8の第2端子群8aの3つの信号入力端子のそれぞれと、金(Au)などのボンディングワイヤBW1でワイヤボンディングされることによって電気的に接続されている。すなわち、信号配線部7aは、バランスドPD6aの第1端子群6a1と集積回路8の第2端子群8aとの電気的接続に介在する。
【0054】
同様に、信号配線部7b、7c、7dの3本の金属配線膜のそれぞれは、集積回路8の第2端子群8b、8c、8dの3つの信号入力端子のそれぞれと、ボンディングワイヤBW1でワイヤボンディングされることによって電気的に接続されている。すなわち、信号配線部7b、7c、7dは、バランスドPD6b、6c、6dの第1端子群6b1、6c1、6d1と集積回路8の第2端子群8b、8c、8dとの電気的接続に介在する。
【0055】
グラウンド配線部7gは、3つの端子パターン部7g1、7g2、7g3と、2つの共通パターン部7g4、7g5と、連結部7g6と、を有する。
【0056】
端子パターン部7g1、7g2、7g3は、それぞれ、実装面7eaから上面7ebにわたって延在する3本の金属配線膜からなり、信号配線部7a、7b、7c、7dのそれぞれの間に配置されている。具体的には、端子パターン部7g1は信号配線部7aと信号配線部7bとの間に配置されている。端子パターン部7g2は信号配線部7bと信号配線部7cとの間に配置されている。端子パターン部7g3は信号配線部7cと信号配線部7dとの間に配置されている。端子パターン部7g1、7g2、7g3の幅はたとえば0.1mmであるが、特に限定はされない。また、端子パターン部7g1、7g2、7g3はy方向において等間隔で並んでおり、隣接するグラウンド端子パターン部間のピッチPを0.3~0.6mmとする。
【0057】
また、端子パターン部7g1、7g2、7g3は、それぞれ、グラウンド端子8g2、8g3、8g4のそれぞれとボンディングワイヤBW1でワイヤボンディングされることによって電気的に接続されている。
【0058】
共通パターン部7g4、7g5は、それぞれ、実装面7eaから上面7ebにわたって延在する金属配線膜であり、キャリア基板7において、共通グラウンドパッド10a、10bが設けられている側、すなわちy方向の両側に配置されている。共通パターン部7g4と共通グラウンドパッド10aとはボンディングワイヤBW2aでワイヤボンディングされることによって電気的に接続されている。共通パターン部7g5と共通グラウンドパッド10bとはボンディングワイヤBW2bでワイヤボンディングされることによって電気的に接続されている。
【0059】
連結部7g6は、実装面7eaにおいてy方向に延在するように設けられた金属配線膜であり、端子パターン部7g1、7g2、7g3と共通パターン部7g4、7g5とを電気的に接続している。なお、
図4に示す、連結部7g6と信号配線部7aとの間のスペースS1は、実装面7eaに実装されたバランスドPD6aの3つの端子が連結部7g6と短絡しないように設けられている。連結部7g6と信号配線部7b、7c、7dのそれぞれとの間にも同様のスペースが設けられている。
【0060】
このように構成された光モジュール100では、キャリア基板7は実装面7eaにおいてコヒーレントミキサ5に固定されている。コヒーレントミキサ5は筐体1に固定されているので、キャリア基板7は筐体1に対して実装面7eaという一つの面において固定されており、他の面では固定されていないこととなる。その結果、温度変化などがあってもキャリア基板7に2方向から応力が掛かることが抑制され、光モジュール100の信頼性の低下が抑制される。
【0061】
また、集積回路8のグラウンド端子8g2、8g3、8g4はキャリア基板7のグラウンド配線部7gを経由して共通グラウンドパッド10a、10bに電気的に接続している。これにより、キャリア基板7と集積回路8との隙間から筐体1の底板部1d側に配線を通す必要がない。その結果、キャリア基板7と集積回路8との隙間を最小限にすることができるので、光モジュール100を小型化できる。なお、集積回路8のグラウンド端子8g2、8g3、8g4が共通グラウンドパッド10a、10bに電気的に接続していることによって、グラウンド端子8g2、8g3、8g4の電位が安定する。
【0062】
以上のように、本実施形態に係る光モジュール100は、小型かつ信頼性の低下が抑制されたものである。
【0063】
なお、高周波特性上、集積回路8のグラウンド端子8g2、8g3、8g4から共通グラウンドパッド10aまたは10bまでの電気的経路の長さや面積は小さい方が好ましい。
【0064】
たとえば、キャリア基板7の本体7eがアルミナ(誘電率:9.8)であり、信号配線部7a、7b、7c、7dおよびグラウンド配線部7gが厚さ8μmのAu膜であるとする。この場合、たとえば、グラウンド配線部7gにおいて、端子パターン部7g1、7g2、7g3のいずれかから共通パターン部7g4、7g5のいずれかまでの部分の経路の長さが、4.1mm以下が好ましく、3.5mm以下であることがより好ましい。もしくは、端子パターン部7g1、7g2、7g3のいずれかから共通パターン部7g4、7g5のいずれかまでの部分の経路の長さが、端子パターン部7g1、7g2、7g3のうち隣接するグラウンド端子パターン部間のピッチPの9倍以下であることが好ましく、7倍以下であることがより好ましい。または、端子パターン部7g1、7g2、7g3のいずれかから共通パターン部7g4、7g5のいずれかまでの部分の面積が1.2mm2以下であることが好ましい。
【0065】
キャリア基板7の場合、
図5に3本の矢線Arで示すように、端子パターン部7g2の背面側の端部から、端子パターン部7g2の幅方向(y方向)中央を通り、連結部7g6の幅方向(y方向と垂直な方向)中央を通り、共通パターン部7g4のy方向負側の縁を通って背面側の端部に到る経路が最も長い経路である。したがって、この経路の長さが3.5mm以下またはグラウンドピッチPの7倍以下であれば、他の端子パターン部7g1、7g3のいずれかから共通パターン部7g4、7g5のいずれかまでの部分の経路の長さも3.5mm以下またはグラウンドピッチPの7倍以下となるので好ましい。また、グラウンド配線部7gにおいて斜線で示した部分の面積、すなわち、端子パターン部7g2の面積と、共通パターン部7g4の面積と、連結部7g6のうち端子パターン部7g2と接続している部分から共通パターン部7g4と接続している部分までに亘る部分の面積との総和が1.2mm
2以下であれば、他の端子パターン部7g1、7g3のいずれかから共通パターン部7g4、7g5のいずれかまでの部分の面積も1.2mm
2以下となるので好ましい。なお、共通パターン部7g4、7g5は互いに面積が等しいとする。面積が異なる場合であっても、端子パターン部7g1、7g2、7g3のいずれかから共通パターン部7g4、7g5のいずれかまでの部分の面積が1.2mm
2以下であることが好ましい。
【0066】
また、経路の長さについては、3.0mm以下またはグラウンドピッチPの6倍以下がより好ましい。面積については、0.8mm2以下がより好ましい。
【0067】
(キャリア基板の第1変形例)
実施形態に係る光モジュール100において、キャリア基板7は以下に説明する第1変形例に係るキャリア基板に置き換えることができる。
【0068】
図6は、第1変形例に係るキャリア基板の模式的な斜視図である。
図7は、第1変形例に係るキャリア基板の一部の模式的な展開図である。キャリア基板7Aは、
図4、5などに示すキャリア基板7の構成において、グラウンド配線部7gをグラウンド配線部7Agに置き換えた構成を有する。
【0069】
グラウンド配線部7Agは、3つの端子パターン部7Ag1、7Ag2、7Ag3と、2つの共通パターン部7Ag4、7Ag5と、連結部7Ag6と、を有する。
【0070】
端子パターン部7Ag1、7Ag2、7Ag3は、それぞれ、実装面7eaから上面7ebにわたって延在する3本の金属配線膜からなり、信号配線部7a、7b、7c、7dのそれぞれの間に配置されている。端子パターン部7Ag1、7Ag2、7Ag3の幅はたとえば0.1mmであるが、特に限定はされない。また、端子パターン部7Ag1、7Ag2、7Ag3はy方向において等間隔で並んでいる。また、端子パターン部7Ag1、7Ag2、7Ag3は、それぞれ、集積回路8のグラウンド端子8g2、8g3、8g4のそれぞれとボンディングワイヤでワイヤボンディングされることによって電気的に接続されている。
【0071】
共通パターン部7Ag4、7Ag5は、それぞれ、上面7ebから背面7ecにわたって延在する金属配線膜であり、キャリア基板7Aのy方向の両側に配置されている。共通パターン部7Ag4と共通グラウンドパッド10aとはボンディングワイヤでワイヤボンディングされることによって電気的に接続されている。共通パターン部7Ag5と共通グラウンドパッド10bとはボンディングワイヤでワイヤボンディングされることによって電気的に接続されている。
【0072】
連結部7Ag6は、背面7ecにおいてy方向に延在するように設けられた金属配線膜であり、端子パターン部7Ag1、7Ag2、7Ag3と共通パターン部7Ag4、7Ag5とを電気的に接続している。
【0073】
このように構成されたキャリア基板7Aを用いて構成した光モジュールでも、キャリア基板7Aは実装面7eaにおいてコヒーレントミキサ5に固定されているので、信頼性の低下が抑制される。
【0074】
また、集積回路8のグラウンド端子8g2、8g3、8g4はキャリア基板7Aのグラウンド配線部7Agを経由して共通グラウンドパッド10a、10bに電気的に接続しているので、光モジュールを小型化できる。
【0075】
また、キャリア基板7Aでは、連結部7Ag6が背面7ecに設けられている。これにより、キャリア基板7のようにスペースS1を取る必要が無い。これにより、グラウンド配線部7Agにおける端子パターン部7Ag1、7Ag2、7Ag3のいずれかから共通パターン部7Ag4、7Ag5のいずれかまでの部分の経路の長さや面積を小さくできる。その結果、光モジュールの高周波特性がより良くなる。
【0076】
(キャリア基板の第2変形例)
実施形態に係る光モジュール100において、キャリア基板7は以下に説明する第2変形例に係るキャリア基板に置き換えることができる。
【0077】
図8は、第2変形例に係るキャリア基板の模式的な斜視図である。
図9は、第2変形例に係るキャリア基板の一部の模式的な展開図である。キャリア基板7Bは、
図4、5などに示すキャリア基板7の構成において、グラウンド配線部7gをグラウンド配線部7gに置き換えた構成を有する。
【0078】
グラウンド配線部7Bgは、3つの端子パターン部7Bg1、7Bg2、7Bg3と、2つの共通パターン部7Bg4、7Bg5と、4つの連結部7Bg6、7Bg7、7Bg8、7Bg9と、を有する。
【0079】
端子パターン部7Bg1、7Bg2、7Bg3は、それぞれ、上面7ebに延在する3本の金属配線膜からなり、信号配線部7a、7b、7c、7dのそれぞれの間に配置されている。端子パターン部7Bg1、7Bg2、7Bg3の幅はたとえば0.1mmであるが、特に限定はされない。また、端子パターン部7Bg1、7Bg2、7Bg3はy方向において等間隔で並んでいる。また、端子パターン部7Bg1、7Bg2、7Bg3は、それぞれ、集積回路8のグラウンド端子8g2、8g3、8g4のそれぞれとボンディングワイヤでワイヤボンディングされることによって電気的に接続されている。
【0080】
共通パターン部7Bg4、7Bg5は、それぞれ、上面7ebに延在する金属配線膜であり、キャリア基板7Bのy方向の両側に配置されている。共通パターン部7Bg4と共通グラウンドパッド10aとはボンディングワイヤでワイヤボンディングされることによって電気的に接続されている。共通パターン部7Bg5と共通グラウンドパッド10bとはボンディングワイヤでワイヤボンディングされることによって電気的に接続されている。
【0081】
連結部7Bg6、7Bg7、7Bg8、7Bg9は、Auなどのボンディングワイヤからなる。連結部7Bg6は、上面7eb側において端子パターン部7Bg1と共通パターン部7Bg4とを電気的に接続している。連結部7Bg7は、上面7eb側において端子パターン部7Bg1と端子パターン部7Bg2とを電気的に接続している。連結部7Bg8は、上面7eb側において端子パターン部7Bg2と端子パターン部7Bg3とを電気的に接続している。連結部7Bg9は、上面7eb側において端子パターン部7Bg3と共通パターン部7Bg5とを電気的に接続している。
【0082】
このように構成されたキャリア基板7Bを用いて構成した光モジュールでも、キャリア基板7Bは実装面7eaにおいてコヒーレントミキサ5に固定されているので、信頼性の低下が抑制される。
【0083】
また、集積回路8のグラウンド端子8g2、8g3、8g4はキャリア基板7Bのグラウンド配線部7Bgを経由して共通グラウンドパッド10a、10bに電気的に接続しているので、光モジュールを小型化できる。
【0084】
また、キャリア基板7Bでも、キャリア基板7のようにスペースS1を取る必要が無い。これにより、グラウンド配線部7Bgにおける端子パターン部7Bg1、7Bg2、7Bg3のいずれかから共通パターン部7Bg4、7Bg5のいずれかまでの部分の経路の長さや面積を小さくできる。その結果、光モジュールの高周波特性がより良くなる。
【0085】
(計算例1~6)
ここで、実施形態のキャリア基板7やその変形例のキャリア基板7A、7Bにおける信号配線部7aのうち、y方向負側の金属配線膜に対して、実装面7ea側から背面7ec側へ高周波信号を流したときの、損失の周波数特性についてシミュレーション計算を行った。なお、計算は、グラウンド配線部の3つの端子パターン部および2つの共通パターン部のそれぞれを、長さ200μmのボンディングワイヤにて集積回路8のグラウンド端子8g2、8g3、8g4または共通グラウンドパッド10aまたは10bにグラウンド接続した条件で行った。また、本体7eはアルミナとし、信号配線部およびグラウンド配線部は厚さ8μmのAu膜として計算した。なお、計算にはApplied Wave Research社のMicrowave Officeを使用した。
【0086】
計算例1~4は、実施形態のキャリア基板7を用いて計算を行ったものである。計算例1~4は、それぞれ、
図5に3本の矢線Arで示す経路の長さ(括弧内は隣接するグラウンド電極ピッチ(ピッチP)の倍数)が3.2mm(7)、3.3mm(7.3)、3.5mm(7.7)、4.1mm(9)の場合に相当する。計算例5は、第1変形例に係るキャリア基板7Aを用いて計算を行ったものである。計算例6は、第2変形例に係るキャリア基板7Bを用いて計算を行ったものである。なお、
図8のように各電極がワイヤで接続されている場合は、
図5の3本の矢線Arで示す経路の長さは、ワイヤ7Bg6と7Bg7を経由する経路で特定される。
【0087】
図10は、計算例1~6における損失の周波数特性を示す図である。なお、損失は、キャリア基板を筐体の底板部まで延ばして底板部でグラウンドを取った場合の損失を基準値とした相対値で示してある。計算例1、2では、損失が48GHz程度まで滑らかな形状であり、光通信で使用される高周波信号の周波数の一例である40GHzにおいても良好な特性であった。計算例3では、45GHz辺りにディップが見られたが、40GHzにおいて良好な特性であった。計算例4では、34GHz辺りにディップが見られたが、光通信で使用される高周波信号の周波数の一例である20GHzにおいて良好な特性であった。また、計算例5、6では、50GHz程度まで滑らかな形状であり、良好な特性であった。
【0088】
なお、上記実施形態または変形例において、キャリア基板のグラウンド配線部の共通パターン部と共通グラウンドパッド10a、10bとはボンディングワイヤでワイヤボンディングされることによって電気的に接続されているが、樹脂ブリッジで電気的に接続されていてもよい。この場合、樹脂ブリッジによってキャリア基板が筐体に固定されないようにすることが好ましい。
【0089】
また、上記実施形態または変形例において、キャリア基板がバランスドPDアレイ6のみを介在させて実装面7eaにおいてコヒーレントミキサ5に接着剤11にて固定されていてもよいし、バランスドPDアレイ6を介在させずに実装面7eaにおいてコヒーレントミキサ5に接着剤11にて固定されていてもよい。
【0090】
また、上記実施形態または変形例において、共通グラウンドパッドはキャリア基板の両端側に設けられているが、一端側に設けられていてもよい。
【0091】
また、上記実施形態または変形例において、キャリア基板のグラウンド配線部の連結部は金属膜またはボンディングワイヤからなるが、たとえば直方体状などの形状の導体ブロックからなるものでもよい。また、キャリア基板が積層基板であり、連結部はキャリア基板に埋設されていてもよい。この場合、連結部と端子パターン部または共通パターン部とはたとえばビアで電気的に接続されている。
【0092】
また、上記実施形態または変形例において、キャリア基板がコヒーレントミキサ5を介在させて筐体1に対して固定されているが、筐体1に対して固定されていればその固定態様は限定されない。
【0093】
また、上記実施形態により本発明が限定されるものではない。上述した各構成要素を適宜組み合わせて構成したものも本発明に含まれる。また、さらなる効果や変形例は、当業者によって容易に導き出すことができる。よって、本発明のより広範な態様は、上記の実施形態に限定されるものではなく、様々な変更が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0094】
本発明は、光モジュールに利用することができる。
【符号の説明】
【0095】
1 筐体
1a 信号光出力ポート
1b 信号光入力ポート
1c 側壁部
1d 底板部
1e 端子部
2 チップオンサブマウント
2a レーザ素子
2b サブマウント
3 変調部
4 変調器ドライバ
5 コヒーレントミキサ
5a 光導波路
6 バランスドPDアレイ
6a、6b、6c、6d バランスドPD
6a1、6b1、6c1、6d1 第1端子群
7、7A、7B キャリア基板
7g、7Ag、7Bg グラウンド配線部
7g1、7g2、7g3、7Ag1、7Ag2、7Ag3、7Bg1、7Bg2、7Bg3 端子パターン部
7g4、7g5、7Ag4、7Ag5、7Bg4、7Bg5 共通パターン部
7g6、7Ag6、7Bg6、7Bg7、7Bg8、7Bg9 連結部
7a、7b、7c、7d 信号配線部
7e 本体
7ea 実装面
7eb 上面
7ec 背面
8 集積回路
8a、8b、8c、8d 第2端子群
8g1、8g5 グラウンド端子
8g2、8g3、8g4 グラウンド端子
9a ビームスプリッタ
9b 反射ミラー
10a、10b 共通グラウンドパッド
11 接着剤
100 光モジュール
Ar 矢線
BW1、BW2a、BW2b ボンディングワイヤ
P ピッチ
L1、L2 レーザ光
L3 出力信号光
L4 入力信号光
S1 スペース