(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-27
(45)【発行日】2024-06-04
(54)【発明の名称】半導体加工用テープ、及びこれを用いた半導体加工方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/301 20060101AFI20240528BHJP
H01L 21/304 20060101ALI20240528BHJP
C09J 7/38 20180101ALI20240528BHJP
C09J 133/00 20060101ALI20240528BHJP
【FI】
H01L21/78 M
H01L21/78 Q
H01L21/304 631
C09J7/38
C09J133/00
(21)【出願番号】P 2021161178
(22)【出願日】2021-09-30
【審査請求日】2023-02-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000005290
【氏名又は名称】古河電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002631
【氏名又は名称】弁理士法人イイダアンドパートナーズ
(74)【代理人】
【識別番号】100076439
【氏名又は名称】飯田 敏三
(74)【代理人】
【識別番号】100161469
【氏名又は名称】赤羽 修一
(72)【発明者】
【氏名】浅沼 匠
【審査官】久宗 義明
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-097075(JP,A)
【文献】特開2002-252308(JP,A)
【文献】特開2016-089045(JP,A)
【文献】特表2014-529182(JP,A)
【文献】再公表特許第2019/155970(JP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/301
H01L 21/304
C09J 7/38
C09J 133/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリエステル樹脂を含む基材と、該基材上の粘着剤層とを有し、
該粘着剤層が、(メタ)アクリルポリマーと、波長385nmにおけるモル吸光係数が0.010mM
-1・cm
-1以上0.050mM
-1・cm
-1未満の光重合開始剤とを含む光硬化性の粘着剤層であり、
150℃で5分間加熱し、次いで、高圧水銀ランプを用いて45mW/cm
2かつ1000mJ/cm
2の条件で紫外線照射した場合に、前記粘着剤層の粘着力が
0.5N/25mm以上である、半導体加工用テープ。
【請求項2】
前記粘着力が1.20N/25mm以下である、請求項1に記載の半導体加工用テープ。
【請求項3】
前記粘着力が
1.0N/25mm
以上である、請求項2に記載の半導体加工用テープ。
【請求項4】
前記ポリエステル樹脂がポリエチレンナフタレートを含む、請求項1~3のいずれか1項に記載の半導体加工用テープ。
【請求項5】
ダイシングビフォアグラインディング工法におけるダイシングテープとして用いるための、請求項1~4のいずれか1項に記載の半導体加工用テープ。
【請求項6】
前記粘着剤層が、前記光重合開始剤を励起するための光増感剤を含有しない、請求項1~5のいずれか1項に記載の半導体加工用テープ。
【請求項7】
半導体ウエハ裏面に請求項1~6のいずれか1項に記載の半導体加工用テープを貼合する工程、
前記半導体ウエハの表面側から前記半導体ウエハの厚み方向に切れ込みと入れる工程、
前記半導体ウエハ表面に樹脂フィルムを配する工程、
前記樹脂フィルムを加熱して軟化させることにより、前記樹脂フィルムを前記半導体ウエハ表面の凹凸に追従させる工程、
半導体ウエハ裏面に貼合した前記半導体加工用テープに紫外線を照射して前記粘着剤層に光重合反応を生じさせる工程、
前記半導体ウエハ裏面に貼合した前記半導体加工用テープを前記半導体ウエハ裏面から剥離する工程、及び
前記半導体ウエハの裏面を研削する工程
を含む、半導体加工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体加工用テープ、及びこれを用いた半導体加工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
シリコン、ガリウム、砒素などからなる半導体ウエハは、通常、大径の状態で製造され、表面にパターンを形成した後、裏面を研削(バックグラインド)して厚みを薄くし、さらに素子小片に切断分離(ダイシング)され、さらにマウント工程に移される。近年、ウエハの薄化、小チップ化が進み、バックグラインド後にダイシングする工法では、得られるチップにダメージが生じやすい。そこで、バックグラインドより先に、ウエハ裏面にダイシングテープを貼合してウエハを固定化し、ウエハの厚み方向に一定の深さまで切り込みを入れておき(ハーフカットダイシング)、その後、ウエハ表面(バンプ等を有する回路面)にバックグラインドテープを貼合してウエハ表面を保護し、ダイシングテープを剥がして、バックグラインドにてウエハの切り込み以外の部分を研削してウエハを個片化すること、すなわちダイシングビフォアグラインディング(Dicing Before Grinding、DBG)工法が提案されている(例えば特許文献1)。
【0003】
DBG工法において、ダイシングテープはバックグラインドに先立ちウエハ裏面から剥がされる。この剥離の際にウエハ裏面に糊残りなどが生じると、その後のバックグラインドの精度が低下する。したがって、ダイシングテープには、ハーフカットダイシングにおいてはウエハとの強固な密着性が求められ、剥離の際には糊残りなくスムースに剥離できる粘着特性が求められる。
このような密着性と剥離性の両特性を備えた粘着テープとして、例えば特許文献2には、基材層と、該基材層の片面に配置された粘着剤層とを備え、前記基材層がポリエチレンナフタレート系樹脂を含み、前記粘着剤層が(メタ)アクリル系ポリマーと、波長385nmにおけるモル吸光係数が0.05(mM-1・cm-1)以上の光重合開始成分とを含む、粘着テープが開示されている。このように粘着テープを光重合性とすることにより、光照射によって粘着テープの粘着力を大きく低下させ、剥離性を高めることができる。なお、この粘着テープは特許文献2ではバックグラインドテープとして用いられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2005-209940号公報
【文献】特開2016-89045号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
最近では、ウエハ表面に様々な形状のパターン(バンプ等)を搭載したチップが増え、ウエハ表面の凸部の高さや形状が多様になっている。したがって、DBG工法のバックグラインドにおいてウエハ表面を保護する従来のバックグラインドテープでは、ウエハ表面の凹凸に追従しきれず、バックグラインド時のウエハの固定化が不十分となり、研削精度が低下する場合がある。
この問題に対処すべく、一定以上の高温下で軟化(溶融)する樹脂フィルムをウエハ表面に配し、加熱して樹脂フィルムを軟化してウエハ表面の凹凸に隙間なく追従させることが提案されている。加熱後に冷却すれば、樹脂フィルムをウエハ表面の凹凸に追従した状態で固定化でき、バックグラインドを高精度に行うことが可能になる。しかし、この方法を問題なく実施するためには、樹脂フィルムを軟化させるための加熱に対してダイシングテープが耐える必要がある。上記加熱によりダイシングテープが軟化するなど、粘着テープの物性が変化してしまうと、ウエハ裏面からダイシングテープを剥離した際に糊残り等を生じやすくなる。この問題に対処するために、特許文献2記載の技術のように、ダイシングテープを光重合性(光硬化性)にすることが考えられる。しかし、本発明者が検討したところ、ダイシングテープを光重合性にした場合、次の問題が生じることがわかってきた。
すなわち、DBG工法では、ハーフカットダイシング後、ウエハ表面に樹脂フィルムを配し、この樹脂フィルムを加熱して軟化させ、次いでダイシングテープに光照射した後に、バックグラインドの前の状態で、ウエハを一時保存することが行われる場合がある。また、製造工程において、何らかの不具合で生産ラインがストップし、ダイシングテープに光照射した後に、バックグラインドの前の状態で、やむなくウエハを一時保存することが必要になることもある。このような場合に、光重合反応によりダイシングテープの粘着性を大きく低下させると、ウエハの端部からダイシングテープが自然に剥がれてしまい、ウエハエッジ部分にダメージを生じ、歩留まりが低下してしまう。
【0006】
そこで本発明は、DBG工法への適用において、バックグラインドに先立ちウエハ表面に配する樹脂フィルムの軟化温度に耐える耐熱性を有し、光重合性の粘着剤層を有しながらも光照射後において一定以上の粘着性(ウエハへの密着性)を維持でき、その結果、光照射後もウエハ裏面からの自然な剥離現象が抑えられ、かつ、光照射後の剥離工程においてはウエハへの糊残りも十分に抑えることができる、半導体加工用テープを提供することを課題とする。また本発明は、この半導体加工用テープを用いた半導体加工方法に関する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の上記課題は下記の手段により解決される。
〔1〕
ポリエステル樹脂を含む基材と、該基材上の粘着剤層とを有し、
該粘着剤層が、(メタ)アクリルポリマーと、波長385nmにおけるモル吸光係数が0.010mM-1・cm-1以上0.050mM-1・cm-1未満の光重合開始剤とを含む光硬化性の粘着剤層であり、
150℃で5分間加熱し、次いで、高圧水銀ランプを用いて45mW/cm2かつ1000mJ/cm2の条件で紫外線照射した場合に、上記粘着剤層の粘着力が0.20N/25mm以上である、半導体加工用テープ。
〔2〕
前記粘着力が1.20N/25mm以下である、〔1〕に記載の半導体加工用テープ。
〔3〕
前記粘着力が0.30~1.00N/25mmである、〔2〕に記載の半導体加工用テープ。
〔4〕
前記ポリエステル樹脂がポリエチレンナフタレートを含む、〔1〕~〔3〕のいずれか1項に記載の半導体加工用テープ。
〔5〕
ダイシングビフォアグラインディング工法におけるダイシングテープとして用いるための、〔1〕~〔4〕のいずれか1項に記載の半導体加工用テープ。
〔6〕
前記粘着剤層が、前記光重合開始剤を励起するための光増感剤を含有しない、〔1〕~〔5〕のいずれか1項に記載の半導体加工用テープ。
〔7〕
半導体ウエハ裏面に〔1〕~〔6〕のいずれか1項に記載の半導体加工用テープを貼合する工程、
前記半導体ウエハの表面側から前記半導体ウエハの厚み方向に切れ込みを入れる工程、
前記半導体ウエハ表面に樹脂フィルムを配する工程、
前記樹脂フィルムを加熱して軟化させることにより、前記樹脂フィルムを前記半導体ウエハ表面の凹凸に追従させる工程、
半導体ウエハ裏面に貼合した前記半導体加工用テープに紫外線を照射して前記粘着剤層に光重合反応を生じさせる工程、
前記半導体ウエハ裏面に貼合した前記半導体加工用テープを前記半導体ウエハ裏面から剥離する工程、及び
前記半導体ウエハの裏面を研削する工程
を含む、半導体加工方法。
【0008】
本発明において「~」を用いて表される数値範囲は、「~」前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む範囲を意味する。
本発明において、(メタ)アクリルとは、アクリル及びメタアクリルの一方又は両方を意味する。(メタ)アクリレートについても同様である。
【発明の効果】
【0009】
本発明の半導体加工用テープは、DBG工法への適用において、バックグラインドに先立ちウエハ表面に配する樹脂フィルムの軟化温度に耐える耐熱性を有し、光重合性の粘着剤を有しながらも光照射後において一定以上の粘着性(ウエハへの密着性)を維持でき、その結果、ウエハ裏面からの自然な剥離現象が抑えられ、かつ、光照射後の剥離工程においてはウエハへの糊残りも十分に抑えることができる。また、本発明の半導体加工方法によれば、DBG工法を適用した半導体生産工程の自由度を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、表面にバンプが形成された半導体ウエハの裏面に本発明の半導体加工用テープを貼合した状態を示す概略縦断面図である。断面を示すハッチングは省略した。
【
図2】
図2は、本発明の半導体加工用テープをダイシングテープとして用いて、半導体ウエハ表面(回路面)をハーフカットダイシングした状態を示す概略縦断面図である。断面を示すハッチングは省略した。
【
図3】
図3は、ハーフカットダイシングした半導体ウエハ表面に樹脂フィルムを配した状態を示す概略縦断面図である。樹脂フィルム以外は、断面を示すハッチングは省略した。
【
図4】
図4は、熱処理によって半導体ウエハ表面に樹脂フィルムを軟化させて、樹脂フィルムが半導体ウエハ表面の凹凸に追従した状態を示す概略縦断面図である。樹脂フィルム以外は、断面を示すハッチングは省略した。
【
図5】
図5は、軟化した樹脂フィルムを冷却・固化した後、この樹脂フィルムの表面にバックグラインドテープを貼合した状態を示す概略縦断面図である。樹脂フィルム以外は、断面を示すハッチングは省略した。
【
図6】
図6は、半導体ウエハ裏面に貼合した半導体加工用テープに紫外線を照射して粘着剤層に光重合反応を生じさせる工程を示す概略縦断面図である。樹脂フィルム以外は、断面を示すハッチングは省略した。
【
図7】
図7は、紫外線照射した後半導体ウエハ裏面に貼合した半導体加工用テープを半導体ウエハ裏面から剥離し、バックグラインドにより半導体ウエハを個片化した状態を示す概略縦断面図である。樹脂フィルム以外は、断面を示すハッチングは省略した。
【発明を実施するための形態】
【0011】
[半導体加工用テープ]
本発明の半導体加工用テープは、ポリエステル樹脂を含む基材と、該基材上の粘着剤層とを有し、この粘着剤層が(メタ)アクリルポリマーと、波長385nmにおけるモル吸光係数が0.010mM-1・cm-1以上0.050mM-1・cm-1未満の光重合開始剤とを含む光硬化性の粘着剤層である。また、本発明の半導体加工用テープは、150℃で5分間加熱し、次いで、高圧水銀ランプを用いて45mW/cm2かつ1000mJ/cm2の条件で紫外線照射した場合に、粘着剤層の粘着力が0.20N/25mm以上である。
本発明の半導体加工用テープは、半導体加工工程において、適宜に使用することができる。なかでも、ダイシング工程においてウエハを固定化するためのダイシングテープとして用いることが好ましく、DBG工法におけるダイシング工程(ハーフカットダイシング工程)においてウエハを固定化するためのダイシングテープとして用いることがより好ましい。なお、本発明において「ハーフカットダイシング」とは、ダイシングによりウエハを厚さ方向に完全に切断せずに、ある厚さまで切り込みを入れ、残りの厚さ部分はウエハが切断されていないことを意味する。つまり、ダイシングによって、ウエハを完全に切断しないことを、切り込みの深さにかかわらず、「ハーフカットダイシング」と称す。本発明の半導体加工用テープは、粘着剤層の表面に剥離フィルムを有する形態であってもよい。このような剥離フィルムとしては、ダイングテープに通常用いられるものを適宜に適用することができる。
本発明の半導体加工用テープを構成する基材及び粘着剤層について、順に説明する。
【0012】
[基材]
本発明の半導体加工用テープを構成する基材は、DBG工法において半導体ウエハ
表面に配する樹脂フィルムの軟化温度に耐える耐熱性を有するものであり、この観点から、基材はポリエステル樹脂を含むことが好ましい。基材中のポリエステル樹脂の含有量は、50~100質量%が好ましく、70~100質量%がより好ましく、80~100質量%がさらに好ましく、90~100質量%がさらに好ましい。
基材は、例えば、150℃、5分間の熱処理前後において熱収縮率が、好ましくは0~1%が好ましく、0~0.5%がより好ましい。150℃、5分間の熱処理前後における熱収縮率は、次のようにして決定される。
基材を100mm角に打ち抜き、一方向とそれに垂直な方向のそれぞれにおいて、10mm間隔で各6点に印を付ける。次いで、150℃に加熱したタルクバスに基材を沈め、5分間加熱する。タルクバスから基材を取り出し、さきほどの2方向のそれぞれにおける6点について、隣接する2点間の距離を測定し、計10個の長さの測定値を得て、それらの平均値(I)(単位:mm)を算出する。熱収縮率(%)は次式により決定される。
熱収縮率(%)=100×[10-平均値(I)]/10
なお、基材が延伸フィルムの場合には、上記「一方向」は延伸方向(MD方向、2軸延伸の場合は延伸率の大きい方向)である。
【0013】
上記基材を構成するポリエステル樹脂は、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートなどが挙げられる。
より高い耐熱性基材とするために、基材にはポリエチレンナフタレートを含ませることができる。基材中のポリエチレンナフタレートの含有量は50~100質量%が好ましく、70~100質量%がより好ましく、80~100質量%がさらに好ましく、90~100質量%がさらに好ましい。基材はポリエチレンナフタレートで構成されていることも好ましい。ポリエチレンナフタレートは、エチレングリコールとナフタレンジカルボン酸とを脱水縮合させたポリマーであり、耐熱性に特に優れた樹脂である。
【0014】
基材の厚みは通常は100μm以下であり、75μm以下がより好ましい。基材の厚みをこのように抑えることにより、その上の粘着剤層に亀裂が生じにくく、半導体ウエハから剥離する際の糊残りをより確実に抑えることができる。基材の厚みは、ハンドリング性の観点から25μm以上が好ましい。
【0015】
[粘着剤層]
粘着剤層は、(メタ)アクリルポリマーと、波長385nmにおけるモル吸光係数が0.010mM-1・cm-1以上0.050mM-1・cm-1未満の光重合開始剤とを含み、光照射(通常は紫外線照射)により重合反応を生じる光硬化性の粘着剤層である。
【0016】
<(メタ)アクリルポリマー>
(メタ)アクリルポリマーの構成成分は、(メタ)アクリル酸エステル成分、(メタ)アクリル酸成分、(メタ)アクリルアミド成分、(メタ)アクリロニトリル成分などが挙げられ、なかでも(メタ)アクリル酸エステル成分を含むことが好ましい。(メタ)アクリルポリマーは、(メタ)アクリル酸エステル成分を50質量%以上含むことが好ましく、70質量%以上含むことがより好ましく、80質量%以上含むことがさらに好ましく、90質量%以上含んでいてもよい。
【0017】
(メタ)アクリルポリマーの(メタ)アクリル酸エステル成分を導くモノマーとしては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸s-ブチル、(メタ)アクリル酸t-ブチル、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸ヘプチル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ノニル、(メタ)アクリル酸イソノニル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸イソデシル、(メタ)アクリル酸ウンデシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸トリデシル、(メタ)アクリル酸テトラデシル、(メタ)アクリル酸ペンタデシル、(メタ)アクリル酸ヘキサデシル、(メタ)アクリル酸ヘプタデシル、(メタ)アクリル酸オクタデシル等の(メタ)アクリル酸アルキルエステル;(メタ)アクリル酸シクロヘキシル等の(メタ)アクリル酸シクロアルキルエステル;(メタ)アクリル酸フェニル等の(メタ)アクリル酸アリールエステルなどが挙げられる。これらは単独でまたは2種以上を組み合わせて用いられ得る。これらの中でも、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸オクチル等の(メタ)アクリル酸アルキルエステルが好適に用いられる。特に好ましいのは(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシルである。
【0018】
粘着剤層を光重合性(光硬化性)とするために、粘着剤層には(メタ)アクリルポリマーに加えて、光重合性の炭素-炭素二重結合を有する化合物(好ましくは分子量500~20000の重合性化合物)を共存させることができる。また、(メタ)アクリルポリマー自体に光重合性の炭素-炭素二重結合を導入することも好ましい。また、(メタ)アクリルポリマー自体に光重合性の炭素-炭素二重結合を導入し、かつ、光重合性の炭素-炭素二重結合を有する化合物を共存させてもよい。
【0019】
なかでも、光重合性の炭素-炭素二重結合を(メタ)アクリルポリマーの側鎖に導入し、光重合性の炭素-炭素二重結合を有する低分子化合物を用いない形態が好ましい。光重合性の炭素-炭素二重結合を(メタ)アクリルポリマーの側鎖に導入する方法それ自体は広く知られている。例えば、官能基(I)を有する共重合性モノマーを用いて得られた(メタ)アクリルポリマーに対して、(メタ)アクリルポリマー中の官能基(I)と反応し得る官能基(II)と、炭素-炭素二重結合とを有する化合物とを縮合反応させたり、又は付加反応させたりして、光重合性の炭素-炭素二重結合を(メタ)アクリルポリマーの側鎖に導入することができる。
上記官能基(I)と(II)の組み合わせは特に制限されず、例えば、カルボキシ基とエポキシ基、カルボキシ基とアジリジル基、ヒドロキシ基とイソシアネート基との組み合わせが挙げられる。これらの中でも、反応追跡の容易さ等の観点から、ヒドロキシ基とイソシアネート基との組み合わせが好ましい。好ましい実施形態においては、ヒドロキシ基を有する(メタ)アクリルポリマーと、イソシアネート基と炭素-炭素二重結合とを有する化合物とを反応させる。この場合、イソシアネート基と炭素-炭素二重結合とを有する化合物としては、例えば、(メタ)アクリロイルイソシアネート、(メタ)アクリロイルオキシメチルイソシアネート、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルイソシアネート、2-(メタ)アクリロイルオキシプロピルイソシアネート、3-(メタ)アクリロイルオキシプロピルイソシアネート、4-(メタ)アクリロイルオキシブチルイソシアネート、m-プロペニル-α,α-ジメチルベンジルイソシアネート等が挙げられる。また、ヒドロキシ基を有する(メタ)アクリルポリマーは、例えば、その合成反応においてヒドロキシ基含有モノマーを配合することで得られる。ヒドロキシル基含有モノマーとしては、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシアルキルが好ましく、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチルを好適に用いることができる。
【0020】
好ましくは、上記粘着剤層は、(メタ)アクリルポリマーが、光硬化反応前において、ある程度の架橋構造を有することが好ましい。架橋構造を形成するための架橋剤としては、例えば、ポリイソシアネート化合物、エポキシ化合物、アジリジン化合物、メラミン樹脂、尿素樹脂、酸無水物化合物、ポリアミン化合物、カルボキシ基含有ポリマー等が挙げられる。
上記(メタ)アクリルポリマーが有する官能基に対応して架橋剤を選択することができる。例えば、上記(メタ)アクリルポリマーがヒドロキシ基を有する場合、架橋剤としてポリイソシアネート化合物が好ましく用いられる。
【0021】
架橋剤として用いる上記ポリイソシアネート化合物としては、例えば、脂肪族ポリイソシアネート、脂環族ポリイソシアネート、芳香族ポリイソシアネート、芳香脂環族ポリイソシアネートや、これらの二量体や三量体、反応生成物又は重合物等が挙げられる。具体例としては、トリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ポリメチレンポリフェニルイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネートの二量体、トリメチロールプロパンとトリレンジイソシアネートとの反応生成物、トリメチロールプロパンとヘキサメチレンジイソシアネートとの反応生成物、ポリエーテルポリイソシアネート、ポリエステルポリイソシアネート等が挙げられる。
【0022】
粘着剤層における架橋剤の使用量は、架橋剤の種類、架橋反応の種類に応じて適宜に設定される。例えば、上記(メタ)アクリルポリマー100質量部に対して、好ましくは0.01~20質量部とすることができ、0.1~10質量部としてもよく、0.1~5質量部とすることもできる。
【0023】
粘着剤層中、(メタ)アクリルポリマーの含有量((メタ)アクリルポリマーが炭素-炭素二重結合を有する場合は炭素-炭素二重結合を含めた(メタ)アクリルポリマーの含有量)は、80質量%以上が好ましく、90質量%以上がより好ましく、93質量%以上とすることも好ましい。
【0024】
<光重合開始剤>
粘着剤層に用いる光重合開始剤は、波長385nmにおけるモル吸光係数が0.010mM-1・cm-1以上0.050mM-1・cm-1未満である。例えば380nm以上の波長領域の光線(紫外線)の照射によって活性化され、上記(メタ)アクリルポリマーを含む粘着剤層の重合反応を開始させる成分である。光重合開始剤のモル吸光係数が上記範囲内にあることにより、光重合開始反応を生じながらも、粘着剤層の粘着性をある程度保つことができる。したがって、光硬化反応後に、半導体加工用テープのウエハからの自然な剥離現象が抑えられ、かつ、剥離時においては、糊残りなく、ウエハ表面から奇麗に剥離することができる。すなわち、バックグラインドにおける糊残りの影響を回避できる。
モル吸光係数ε(mM-1・cm-1)は、25℃において、下記式により求められる。
ε=A/(c×l)
(式中、Aは吸光度を表し、cはモル濃度(mM)を表し、lはセル厚み(cm)を表す。)
粘着剤層に用いる光重合開始剤は、波長385nmにおけるモル吸光係数が0.010~0.040mM-1・cm-1が好ましく、0.012~0.030mM-1・cm-1であることも好ましい。
【0025】
このような光重合開始剤としては、例えば、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルフォリノフェニル)-ブタノン-1、2-(ジメチルアミノ)-2-[(4-メチルフェニル)メチル]-1-[4-(4-モルホリニル)フェニル]-1-ブタノン、2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニル-フォスフィンオキサイド、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルフォスフィンオキサイド、1,2-オクタンジオン,1-[4-(フェニルチオ)-,2-(0-ベンゾイルオキシム)]、エタノン,1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]-,1-(0-アセチルオキシム)等が挙げられる。
【0026】
粘着剤層中、光重合開始剤の含有量は、1~10質量%が好ましく、2~8質量%がより好ましく、3~7質量%とすることも好ましい。このような配合量とすることにより、重合開始剤として十分な機能を示すことができ、かつ、加熱時の揮発量も抑えることができる。
本発明に用いる粘着剤層は、光増感剤を含有しないことが好ましい。
【0027】
<粘着剤層の粘着特性>
本発明の半導体加工用テープは、150℃で5分間加熱し、次いで、高圧水銀ランプを用いて45mW/cm2かつ1000mJ/cm2の条件で紫外線照射した場合に、粘着剤層の粘着力が0.20N/25mm以上である。この粘着力は、1.20N/25mm以下が好ましい。また、この粘着力は、0.30~1.00N/25mmであることがより好ましい。この粘着力は、単結晶シリコンウエハのミラー面(回路を形成する前の単結晶シリコンのスライス面)に対する粘着力であり、後述する実施例に記載の方法により決定することができる。
【0028】
本発明の半導体加工用テープは、DBG工法におけるダイシングテープとして好適に用いることができる。本発明の半導体加工用テープをDBG工法におけるダイシングテープとして用いる場合、次の半導体加工方法が提供される。
【0029】
半導体ウエハ裏面に本発明の半導体加工用テープを貼合する工程、
前記半導体ウエハの表面側から前記半導体ウエハの厚み方向に切れ込みを入れる工程(ハーフカットダイシング工程)、
前記半導体ウエハ表面に樹脂フィルムを配する工程、
前記樹脂フィルムを加熱して軟化させることにより、前記樹脂フィルムを前記半導体ウエハ表面の凹凸に追従させる工程、
半導体ウエハ裏面に貼合した前記半導体加工用テープに紫外線を照射して前記粘着剤層に光重合反応を生じさせる工程、
前記半導体ウエハ裏面に貼合した前記半導体加工用テープを前記半導体ウエハ裏面から剥離する工程、及び
前記半導体ウエハの裏面を研削する工程
を含む、半導体加工方法。
【0030】
上記半導体加工方法について、図面を参照して説明する。なお、図面は本発明の理解を容易にするための説明図ないし模式図であり、本発明は、本発明で規定すること以外はこれらの形態に何ら限定されるものではない。なお、図面において、樹脂フィルム以外は断面を示すハッチングを省略して示している。
【0031】
図1は、表面にバンプ3が形成された半導体ウエハ2の裏面に本発明の半導体加工用テープ1を貼合した状態を示す。
図2は、本発明の半導体加工用テープ1をダイシングテープとして用いて、半導体ウエハ2表面(回路面)をハーフカットダイシングした状態を示す。
図3は、ハーフカットダイシングした半導体ウエハ2表面に樹脂フィルム4を配した状態を示す。樹脂フィルム4は比較的低融点のものが好ましい。例えば、150℃5分間の熱処理によって軟化(溶融)するものが用いられる。一例として、ポリオレフィン(ポリエチレン等)、エチレン-酢酸ビニル共重合体、シクロオレフィンコポリマー、ポリビニリデンフロリドなどを主体とする樹脂フィルムを用いることができる。
図4は、熱処理によって半導体ウエハ2表面の樹脂フィルム4を軟化させて、樹脂フィルム4が半導体ウエハ2表面の凹凸に追従した状態を示す。
図5は、軟化した樹脂フィルム4を冷却・固化した後、この樹脂フィルム4の表面にバックグラインドテープ5を貼合した状態を示す。なお、
図4において半導体ウエハ表面に配した樹脂フィルム4自体がバックグラインドテープとして機能するものであれば、バックグラインドテープ5の貼合は必ずしも必要ではない。
図6は、半導体ウエハ2裏面に貼合した前記半導体加工用テープ1に紫外線(UV)を照射して前記粘着剤層に光重合反応を生じさせる工程を示す。紫外線照射は通常、半導体加工用テープ1の基材側から行われる。紫外線照射の光源、波長は、重合反応を生じさせることができれば特に制限されない。例えば、高圧水銀ランプを用いて、好ましくは20~100mW/cm
2、より好ましくは30~60mW/cm
2、さらに好ましくは35~55mW/cm
2の条件で紫外線を照射することができる。また、高圧水銀ランプを用いて、好ましくは500~1500mJ/cm
2、より好ましくは700~1200mJ/cm
2の条件で紫外線を照射することができる。なお、この紫外線照射は、上記のバックグラインドテープ5の貼合の前に行ってもよい。
紫外線照射した後、前記半導体ウエハ2裏面に貼合した前記半導体加工用テープ1を前記半導体ウエハ裏面から剥離し、バックグラインドにより半導体ウエハを個片化する。この状態を示したのが
図7である。ハーフカットダイシングした深さまで研削していくことで、半導体ウエハ2を個片化することができる。
その後、半導体ウエハの研削面(裏面)に、実装用の接着剤層を設け、樹脂フィルムとバックグラインドテープを剥離してから、個片化された半導体チップをピックアップし、ピックアップされた半導体チップは接着剤層を介して実装基板上に実装される。
【実施例】
【0032】
以下、実施例及び比較例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。下記の記載において、量を示す「部」、「%」は、特に断りのない限り質量基準である。
【0033】
[実施例1]
<アクリルポリマーの調製>
冷却管、窒素導入管、温度計および撹拌装置を備えた反応容器に、アクリル酸2-エチルヘキシル(HA)100質量部、アクリル酸2-ヒドロキシエチル8質量部、アゾビスイソブチロニトリル0.3質量部、および、酢酸エチル60質量部を入れ、窒素気流中で65℃にて6時間重合反応を行った。
その後、2-メタクリロイルオキシエチルイソシアネート4質量部を加え、空気気流中で50℃にて24時間、付加反応処理をし、側鎖に炭素-炭素二重結合を有するアクリルポリマーの溶液を得た。
【0034】
<半導体加工用テープの作製>
上記アクリルポリマー100質量部に対し、架橋剤としてポリイソシアネート化合物(商品名「コロネートL」、日本ポリウレタン社製)0.4質量部、および、光重合開始剤(波長385nmにおけるモル吸光係数:0.02mM-1・cm-1、商品名「イルガキュア(Irg)651」、BASF社製)3質量部を加えて、粘着剤溶液を調製した。
片面がシリコーンで剥離処理された厚み38μmのセパレータ(ポリエステルフィルム、商品名「MRF」、三菱化学ポリエステル社製)の剥離処理面に、上記粘着剤溶液を塗布し、120℃で2分間加熱して架橋反応させ、厚み50μmの粘着剤層を形成した。次いで、得られた粘着剤層の表面に、基材として厚み50μmのポリエチレンナフタレートフィルム(PEN、商品名「テオネックスQ51」、帝人社製)を貼り合わせ、この状態で50℃にて48時間保存し、半導体加工用テープ(粘着テープ)を得た。
【0035】
[実施例2]
実施例1において、上記アクリルポリマー100質量部に対し、ポリイソシアネート化合物(商品名「コロネートL」、日本ポリウレタン社製)1質量部、および、光重合開始剤(波長385nmにおけるモル吸光係数:0.02mM-1・cm-1、商品名「イルガキュア651」、BASF社製)3質量部を加えて粘着剤溶液を調製したこと以外は、実施例1と同様にして半導体加工用テープを得た。
【0036】
[実施例3]
実施例1において、上記アクリルポリマー100質量部に対し、ポリイソシアネート化合物(商品名「コロネートL」、日本ポリウレタン社製)5質量部、および、光重合開始剤(波長385nmにおけるモル吸光係数:0.02mM-1・cm-1、商品名「イルガキュア651」、BASF社製)3質量部を加えて粘着剤溶液を調製したこと以外は、実施例1と同様にして半導体加工用テープを得た。
【0037】
[実施例4]
実施例1において、上記アクリルポリマー100質量部に対し、ポリイソシアネート化合物(商品名「コロネートL」、日本ポリウレタン社製)0.4質量部、および、光重合開始剤(波長385nmにおけるモル吸光係数:0.02mM-1・cm-1、商品名「イルガキュア651」、BASF社製)10質量部を加えて粘着剤液を調製したこと以外は、実施例1と同様にして半導体加工用テープを得た。
【0038】
[実施例5]
実施例1において、得られた粘着剤層表面に、厚み50μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(PET、商品名「ルミラーS-105」、東レ社製)を貼り合わせたこと以外は、実施例1と同様にして半導体加工用テープを得た。
【0039】
[比較例1]
実施例1において、ポリエチレンナフタレートフィルムに代えて、高密度ポリエチレン(HDPE、東ソー製ニポロンハード4010A)を厚さ50μmで押し出したフィルムを用いたこと以外は、実施例1と同様にして半導体加工用テープを得た。
【0040】
[比較例2]
実施例1において、アクリルポリマーの調製ではアクリル酸2-エチルヘキシル100質量部に代えてアクリル酸ブチル(BA)100質量部を用い、光重合開始剤としてイルガキュア651に代えてイルガキュア369(商品名、波長385nmにおけるモル吸光係数:0.12mM-1・cm-1、BASF社製)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして半導体加工用テープを得た。
【0041】
[比較例3]
比較例2において、光重合開始剤としてイルガキュア651に代えてイルガキュア907(商品名、波長385nmにおけるモル吸光係数:0.00mM-1・cm-1、BASF社製)3質量部を用い、さらに、光増感剤として2-イソプロピルチオキサントン(波長385nmにおけるモル吸光係数:6.49mM-1・cm-1、商品名「ITX」、BASF社製)0.3重量部を配合したこと以外は、比較例2と同様にして半導体加工用テープを得た。
【0042】
[比較例4]
比較例2において、光重合開始剤としてイルガキュア369に代えてイルガキュア651を用いたこと以外は、比較例2と同様にして半導体加工用テープを得た。
【0043】
[試験例]
<150℃で5分間の加熱~光硬化後の粘着力>
各実施例及び比較例で作製した各半導体加工用テープを25mm幅に切断し、セパレータ(ポリエステルフィルム)を剥がして、粘着剤層の側を、直径6インチのSiウエハ(六甲電子社製シリコンウエハを、DISCO製グラインダDGP8760にてドライポリッシュを行ったウエハ)のミラー面(ドライポリッシュした面)に貼り付けた。その後、貼合面に対して基材側から2kgローラーを3往復させて半導体加工用テープをSiウエハのミラー面に密着させた。
次いで、テープの基材側をホットプレートの側に向けて置き、150℃で5分間加熱した。その後、自然冷却し、半導体加工用テープの粘着剤層の側から高圧水銀ランプ(ウシオ電機社製、商品名:UVL-2000RS)を用いて、45mW/cm2、1000mJ/cm2の条件で紫外線を照射した。そして、ストログラフVG1F(商品名、東洋精機社製)を用いて、半導体加工用テープの片端を50mm/minの速度で90度の方向へ剥離し、剥離強度(90°ピール強度、単位:N/25mm)を測定し、150℃で5分間の加熱~光硬化後の粘着力とした。
【0044】
<チャックテーブル汚染性>
各実施例及び比較例で作製した各半導体加工用テープからセパレータを剥離し、粘着剤層の側を8インチウエハに貼合後、基材の側をチャックテーブルの側に向けて置き、150℃で5分間加熱した。その後、自然冷却して、ウエハを半導体加工用テープごとチャックテーブルから取り上げた際に、チャックテーブルの半導体加工用テープが接していた部分を目視観察した。チャックテーブルに汚染がない場合を〇、テープの溶融によりチャックテーブルに付着物がある場合を×として評価した。
【0045】
<紫外線照射後の剥離の有無>
上記の<チャックテーブル汚染性>の評価の後、8インチウエハ及びSUS製リングフレームに貼合された半導体加工用テープの基材側から高圧水銀ランプ(ウシオ電機製、UVL-2000RS)を用いて、45mW/cm2、1000mJ/cm2の条件で紫外線を照射した。この紫外線照射の後、カセットに収納し、ウエハを立てた状態にして23℃、相対湿度65%の状態で保管した。24時間後に目視観察し、ウエハのエッジ部分における半導体加工用テープの剥離の有無を調べた。剥離がない場合を〇、ウエハのエッジから1mm未満の範囲内にのみ剥離が認められた場合を△、ウエハのエッジから1mm以上の範囲に亘り剥離が認められた場合を×として評価した。
【0046】
<紫外線照射後の剥離時汚染性>
上記の<紫外線照射後の剥離の有無>の評価の後、半導体加工用テープをウエハから剥離した際に、ウエハ表面への糊残りの有無を目視で調べた。糊残りがない場合を〇、糊残りが認められるが、最大径が1mm2以上の糊残りが認められなかった場合を△、最大径が1mm2以上の糊残りが認められた場合を×として評価した。「最大径」とは、平面観察において、糊残り部分の外周上のある一点から別の点までの距離が最大になる当該距離を意味する。
【0047】
結果を下表に示す。
【0048】
【0049】
上記表に示されるように、硬化後の粘着力が本発明の規定よりも低い粘着剤層を有する半導体加工用テープ(比較例2~4)では、紫外線照射後、一定時間保管した後には、ウエハのエッジ部分において剥離が顕著であった。このような粘着特性の場合には、例えば、DBG工法への適用において紫外線照射後の状態で保管することができず、生産計画の柔軟性を制約してしまう。また、比較例2及び3の半導体加工用テープは、硬化後の粘着力が低いにもかかわらす、紫外線照射後の剥離時には糊残りを生じやすいものであった。
これに対し、実施例1~5の半導体加工用テープはいずれも、すべての評価項目において優れた結果となった。
【符号の説明】
【0050】
1 半導体加工用テープ(ダイシングテープ)
2 半導体ウエハ
3 バンプ
4 樹脂フィルム
5 バックグラインドテープ