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特許7495439リチウム二次電池用正極活物質、その製造方法およびこれを含むリチウム二次電池
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  • 特許-リチウム二次電池用正極活物質、その製造方法およびこれを含むリチウム二次電池 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-27
(45)【発行日】2024-06-04
(54)【発明の名称】リチウム二次電池用正極活物質、その製造方法およびこれを含むリチウム二次電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/525 20100101AFI20240528BHJP
   H01M 4/505 20100101ALI20240528BHJP
   H01M 4/36 20060101ALI20240528BHJP
【FI】
H01M4/525
H01M4/505
H01M4/36 C
H01M4/36 E
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2022034264
(22)【出願日】2022-03-07
(65)【公開番号】P2022184711
(43)【公開日】2022-12-13
【審査請求日】2022-03-07
(31)【優先権主張番号】10-2021-0070990
(32)【優先日】2021-06-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】590002817
【氏名又は名称】三星エスディアイ株式会社
【氏名又は名称原語表記】SAMSUNG SDI Co., LTD.
【住所又は居所原語表記】150-20 Gongse-ro,Giheung-gu,Yongin-si, Gyeonggi-do, 446-902 Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】孔 泳善
(72)【発明者】
【氏名】安 基鎔
(72)【発明者】
【氏名】權 善英
(72)【発明者】
【氏名】金 ▲ミン▼周
(72)【発明者】
【氏名】李 斗均
(72)【発明者】
【氏名】全 道▲ウク▼
(72)【発明者】
【氏名】洪 起柱
【審査官】井原 純
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-081626(JP,A)
【文献】国際公開第2015/151606(WO,A1)
【文献】特表2018-515884(JP,A)
【文献】特表2017-536686(JP,A)
【文献】特開2016-033906(JP,A)
【文献】特開2020-119787(JP,A)
【文献】特開2015-037067(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第103456933(CN,A)
【文献】特開2018-014326(JP,A)
【文献】特開2018-092931(JP,A)
【文献】特開2020-027800(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2016-0129764(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/00-4/62
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の一次粒子が凝集された二次粒子であるニッケル系複合金属酸化物である正極活物質であって、
前記ニッケル系複合金属酸化物とは、ニッケルを含有する複合金属酸化物を意味し、
前記ニッケル系複合金属酸化物は、コアおよびシェルを含み、
前記シェルの一次粒子の粒界は、マンガン-含有ニッケル系複合金属酸化物でコーティングされ、
前記マンガン-含有ニッケル系複合金属酸化物は、層状構造を有し、0.1モル%以上、1.5モル%未満のマンガンを含み、
前記ニッケル系複合金属酸化物は、リチウムおよび遷移金属を含み、層状構造を有する、正極活物質。
【請求項2】
前記コアは、マンガンを含まない、請求項1に記載の正極活物質。
【請求項3】
前記シェルの一次粒子の内部から表面までマンガンの濃度が増加する濃度勾配が現れる、請求項1に記載の正極活物質。
【請求項4】
前記シェルにコーティングされたマンガンのコーティング形態は、アイランド形態あるいは微細ナノ粒子形態である、請求項1に記載の正極活物質。
【請求項5】
前記ニッケル系複合金属酸化物内のマンガンの含有量が1.5モル%未満である、請求項1に記載の正極活物質。
【請求項6】
前記シェルの厚さは2μm以下である、請求項1に記載の正極活物質。
【請求項7】
前記ニッケル系複合金属酸化物のD50が8~18μmである、請求項1に記載の正極活物質。
【請求項8】
前記マンガン-含有ニッケル系複合金属酸化物は、下記の化学式1で表される、請求項1に記載の正極活物質:
[化学式1]
LiNi1-x-y-zCoMn
前記化学式1において、
0≦x≦0.5、0.001≦y<0.015、および0≦z≦0.3であり、Mは、Ni、Al、Cr、Fe、V、Mg、Ti、Zr、Nb、Mo、W、Cu、Zn、Ga、In、Sn、La、B、Ta、Pr、Si、BaおよびCeより選択される少なくとも1つの金属元素である。
【請求項9】
前記シェルの一次粒子の表面にLiMnOが含まれる、請求項1に記載の正極活物質。
【請求項10】
ニッケル系複合金属化合物および水酸化マンガンに水溶性溶媒を投入して混合し、
前記混合物を40℃~100℃で30分~1時間反応させて、マンガン-含有ニッケル系複合金属酸化物をシェルの一次粒子の粒界にコーティングし、
コーティングされた結果物とリチウムソースとを混合した後に焼成する工程を含む、正極活物質の製造方法であって、
前記マンガン-含有ニッケル系複合金属酸化物は、0.1モル%以上、1.5モル%未満のマンガンを含み、
前記水溶性溶媒は、NaOH、KOH、およびこれらの混合物のいずれか1つを含み、
前記正極活物質は、リチウムおよび遷移金属を含み、層状構造を有するニッケル系複合金属酸化物であり、
前記ニッケル系複合金属酸化物とは、ニッケルを含有する複合金属酸化物を意味する、正極活物質の製造方法。
【請求項11】
前記ニッケル系複合金属化合物は、ニッケル複合金属酸化物およびニッケル複合金属水酸化物のいずれか1つである、請求項10に記載の正極活物質の製造方法。
【請求項12】
前記混合物を40℃~100℃で30分~1時間反応させた後、前記混合物を100℃~200℃で乾燥する、請求項10に記載の正極活物質の製造方法。
【請求項13】
前記焼成温度は600℃~800℃、焼成時間が8~30時間または8~24時間である、請求項10に記載の正極活物質の製造方法。
【請求項14】
請求項1~9のいずれか1項に記載の正極活物質を含む、正極;
負極活物質を含む負極;および
電解質;
を含む、リチウム二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
リチウム二次電池用正極活物質、その製造方法およびこれを含むリチウム二次電池に関する。
【背景技術】
【0002】
各種機器の小型化、高性能化に符合するために、リチウム二次電池の小型化、軽量化のほかに高エネルギー密度化が重要になっている。また、電気車両(Electric Vehicle)などの分野への適用のために、リチウム二次電池の高容量および高温、高電圧での安全性が重要になっている。
【0003】
前記用途に符合するリチウム二次電池を実現するために多様な正極活物質が検討されている。
【0004】
Ni、Co、Mnなどを同時に含むニッケル系リチウム遷移金属酸化物は、従来のLiCoOに比べて単位重量あたり高い放電容量を提供するのに対し、低い充填密度によって単位体積あたりの容量および放電容量は相対的に低い。また、前記ニッケル系リチウム遷移金属酸化物は、高電圧での駆動時に安全性が低下しうる。
【0005】
そこで、ニッケル系リチウム遷移金属酸化物の構造安定性およびサイクル寿命改善のための方策が要求される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
一実施形態は、構造安定性に優れ、リチウム二次電池のサイクル寿命の改善に効果的な正極活物質を提供する。
【0007】
他の実施形態は、前記正極活物質の製造方法を提供する。
【0008】
さらに他の実施形態は、前記正極活物質を含む正極を採用して充放電効率とサイクル寿命特性が向上したリチウム二次電池を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
一実施形態は、複数の一次粒子が凝集された二次粒子であるニッケル系複合金属酸化物を含む正極活物質であって、前記正極活物質(即ち、ニッケル系複合金属酸化物)は、コアおよびシェルを含み、前記シェルの一次粒子は、マンガン-含有ニッケル系複合金属酸化物でコーティングされ、前記マンガン-含有ニッケル系複合金属酸化物は、層状構造を有する、正極活物質を提供する。
【0010】
前記コアは、マンガンを含まない。
【0011】
前記シェルの一次粒子の内部から表面までマンガンの濃度が増加する濃度勾配(gradient)が現れる。
【0012】
前記シェルに(即ち、シェルの一次粒子)コーティングされたマンガンのコーティング形態は、アイランド形態あるいは微細ナノ粒子形態であってもよい。
【0013】
前記正極活物質(例えば、シェルのマンガン-含有ニッケル系複合金属酸化物)内のマンガンのモル%が1.5モル%未満であってもよい。
【0014】
前記シェルの厚さは2μm以下であってもよい。
【0015】
前記正極活物質の粒径は8~18μmであってもよい。
【0016】
前記マンガン-含有ニッケル系複合金属酸化物は、下記の化学式1で表される:
【0017】
[化学式1]
LiNi1-x-y-zCoMn
【0018】
前記化学式1において、
0≦x≦0.5、0.001≦y<0.015、および0≦z≦0.3であり、Mは、Ni、Al、Cr、Fe、V、Mg、Ti、Zr、Nb、Mo、W、Cu、Zn、Ga、In、Sn、La、B、Ta、Pr、Si、BaおよびCeより選択される少なくとも1つの金属元素である。
【0019】
前記シェルの一次粒子の表面にLiMnOが含まれる。
【0020】
一実施形態において、前記正極活物質は、下記の方法により製造される:
ニッケル系複合金属化合物および水酸化マンガンに水溶性溶媒を投入して混合し、
前記混合物を40℃~100℃で30分~1時間反応させて、マンガンをシェルの一次粒子にコーティングし、
コーティングされた結果物とリチウムソースとを混合した後に焼成する工程。
【0021】
前記ニッケル複合金属化合物は、ニッケル系複合金属酸化物またはニッケル複合金属水酸化物であってもよい。
【0022】
前記水溶性溶媒は、NaOH、KOH、およびこれらの混合物のいずれか1つを含むことができる。
【0023】
前記混合物を40℃~100℃で30分~1時間反応させた後、前記混合物を100℃~200℃で乾燥することができる。例えば、上記方法は、混合物の反応後、混合物を約100℃~200℃で乾燥することをさらに含むことができる。
【0024】
前記焼成温度は600℃~800℃、焼成時間が8~30時間又は8~24時間であってもよい。
【0025】
他の実施形態は、前記正極活物質を含む正極;負極活物質を含む負極;および電解質;を含む、リチウム二次電池を提供する。
【0026】
その他の本発明の実施形態に関する具体的な事項は以下の詳細な説明に含まれている。
【発明の効果】
【0027】
スピネル構造のニッケル系複合金属酸化物を含まず、層状構造のニッケル系複合金属酸化物だけを含むことで、スピネル構造を含むことに伴う比容量低下の問題を解消することができる。
【0028】
また、一実施形態による正極活物質を含む正極を含むリチウム二次電池は、充放電効率とサイクル寿命特性に優れている。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】一実施形態による正極活物質を示した概略断面図である。
図2】リチウム二次電池の代表的な構造を概略的に示した斜視図である。
図3】実施例1、および比較例1~4のコインセルの寿命(100サイクル)の評価結果を示したものである。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明の実施形態を詳細に説明する。ただし、これは例として提示されるものであり、これによって本発明が制限されず、本発明は後述する請求項の範疇によってのみ定義される。
【0031】
本明細書において特別な言及がない限り、層、膜、領域、板などの部分が他の部分の「上」にあるとする時、これは、他の部分の「直上」にある場合のみならず、その中間にさらに他の部分がある場合も含む。
【0032】
本発明において、「粒子サイズ」または「粒径」は、粒径分布曲線(cumulative size-distribution curve)において体積累積量の50%基準での平均粒径(D50)と定義することができる。前記粒径は、例えば、走査電子顕微鏡(scanning electron microscopy、SEM)または電界放出形走査電子顕微鏡(field emission scanning electron microscopy、FE-SEM)などを用いた電子顕微鏡観察や、またはレーザ回折法(laser diffraction method)を用いて測定することができる。レーザ回折法による測定時、より具体的には、測定しようとする粒子を分散媒中に分散させた後、市販のレーザ回折粒度測定装置(例えば、Microtrac社のMT3000)に導入して約28kHzの超音波を60Wの出力で照射した後、測定装置における粒径分布の50%基準での平均粒径(D50)を算出することができる。
【0033】
本明細書において、「中心」とは、粒子の最も長い軸を二等分した地点を意味する。
【0034】
「一次粒子」は、結晶性粒子(crystallite particle)またはグレーン(grain)であってもよい。複数の一次粒子は粒界をなして互いに共に凝集して二次粒子を形成し、一次粒子は球状または類似球状(フレーク形状など)の多様な形態を有することができる。
【0035】
「二次粒子」は、複数の一次粒子を含み、他の粒子の凝集体ではない粒子またはそれ以上凝集されない粒子をいい、二次粒子は球状または類似球状の形態を有することができる。
【0036】
以下、図1を参照して、リチウム二次電池用正極活物質を説明する。図1は、一実施形態による一次粒子が粒界コーティングされた正極活物質を示した概略断面図である。
【0037】
図1を参照すれば、一実施形態による正極活物質は、複数の一次粒子3が凝集された二次粒子1を含むニッケル系複合金属酸化物を含む。
【0038】
前記二次粒子1は、コア5bおよびシェル5aを含み、前記シェル5aは、複数の一次粒子3の粒界(grain boundary)7にコーティングされたマンガンが含有されたニッケル系複合金属酸化物(以下、マンガン-含有ニッケル系複合金属酸化物ともいう)を含む。つまり、前記正極活物質は、一定深さに相当するシェル5aの一次粒子3に粒界コーティングされたマンガン-含有ニッケル系複合金属酸化物を含むことができる。この時、二次粒子1のコア5bにはマンガン-含有ニッケル系複合金属酸化物が含まれない。即ち、コア5bはマンガンを含まなくてもよい。つまり、前記マンガン-含有ニッケル系複合金属酸化物は、前記二次粒子1のシェル5aの一次粒子3の粒界にのみコーティングされ、前記コア5bにはマンガンがコーティングされない。
【0039】
前記二次粒子1のコア5bは、前記二次粒子1の中心から最表面までの総距離(100長さ%)中、中心から50長さ%以下の領域乃至中心から80長さ%以下の領域、例えば、中心から75長さ%以下の領域、70長さ%以下の領域、65長さ%以下の領域、60長さ%以下の領域、55長さ%以下の領域、50長さ%以下の領域、または二次粒子1の最表面から2μm以内の領域を除いた残りの領域であってもよい。
【0040】
前記シェル5aは、コア5bを除いた部分で、中心から最表面までの総距離(100長さ%)中、最表面から20長さ%以下の領域乃至最表面から50長さ%以下の領域、例えば、最表面から25長さ%以下の領域、30長さ%以下の領域、35長さ%以下の領域、40長さ%以下の領域、45長さ%以下の領域、50長さ%以下の領域、または二次粒子1の最表面から2μm以内の領域をいう。
【0041】
つまり、前記シェル5aの厚さは2μm以下であってもよく、具体的には、前記シェル5aの厚さは2μm以下、1.5μm以下、1.0μm以下、または0.5μm以下であってもよい。
【0042】
前記シェル5aは、一次粒子3の粒界コーティングが形成された領域であってもよい。一実施形態において、前記一次粒子3の大きさは50nm~800nmであってもよい。前記一次粒子3の大きさは50nm以上、100nm以上、150nm以上、200nm以上、250nm以上、300nm以上、350nm以上、400nm以上、450nm以上、500nm以上、550nm以上、600nm以上、650nm以上、700nm以上、または750nm以上であってもよい。他の実施形態において、前記一次粒子3の大きさは800nm以下、750nm以下、700nm以下、650nm以下、600nm以下、550nm以下、500nm以下、450nm以下、400nm以下、350nm以下、300nm以下、250nm以下、200nm以下、または150nm以下であってもよい。
【0043】
前記マンガン-含有ニッケル系複合金属酸化物は、層状構造である。正極活物質におけるニッケル系複合金属酸化物がスピネル構造を有する場合、安定性が増加するという効果があるが、スピネル構造のニッケル系複合金属酸化物は、層状構造のニッケル系複合金属酸化物より正極活物質内で大きな容量を占めるため、スピネル構造のニッケル系金属複合酸化物が多くなるほど、正極活物質の比容量(specific capacity)が低下する問題が発生する。
【0044】
そこで、本発明は、正極活物質内にスピネル構造のニッケル系複合金属酸化物を含まず、層状構造のニッケル系複合金属酸化物を含み、コア-シェル構造の正極活物質内のシェルに含まれている一次粒子の間に層状構造のニッケル系複合金属酸化物を含むことで、安定性に優れていながらも高い比容量を有するリチウム二次電池の正極活物質を提供することができる。
【0045】
つまり、前記二次粒子1には層状構造のマンガン-含有ニッケル系複合金属酸化物だけが含まれ、前記二次粒子1にスピネル構造の化合物または岩塩構造の化合物は全く含まれない。前記二次粒子1にスピネル構造の化合物が含まれない場合、正極活物質内にスピネル構造が含まれることによって発生する比容量が低下する問題を解決することができる。
【0046】
前記シェル5aは、一次粒子3の間(つまり、粒界)に層状構造のマンガン-含有ニッケル系複合金属酸化物を含み、前記シェル5aに存在する複数の一次粒子3の粒界7に存在するマンガンの含有量は、一次粒子3の内部に存在するマンガンの含有量、すなわち一次粒子3の内部にコーティングされる量より高い。つまり、前記シェル5aに含まれるマンガン-含有ニッケル系複合金属酸化物は、一次粒子3の内部から表面までマンガンの濃度が増加する濃度勾配を有することができる。
【0047】
前記「粒界(grain boundary)」は、2つの隣接した一次粒子3の界面(interface)を意味する。一実施形態において、前記粒界は、一次粒子3の中心から最表面(隣接する一次粒子3間の境界面)までの総距離中、最表面から20長さ%以下の領域乃至最表面から40長さ%以下の領域、例えば、最表面から25長さ%以下、30長さ%以下の領域または35長さ%以下の領域を意味することができる。前記一次粒子3の内部は、粒界を除いた部分を意味する。一実施形態において、前記一次粒子3の内部は、一次粒子の中心から最表面(隣接する一次粒子3間の境界面)までの総距離中、中心から60長さ%以下の領域乃至中心から80長さ%以下の領域、例えば、中心から40長さ%以下の領域、45長さ%以下の領域、50長さ%以下の領域、55長さ%以下の領域、60長さ%以下の領域、65長さ%以下の領域、70長さ%以下の領域、75長さ%以下の領域または80長さ%以下の領域を意味することができる。
【0048】
前記シェル5aの一次粒子3にコーティングされたマンガン-含有ニッケル系複合金属酸化物のコーティング形態は、アイランド形態または微細ナノ粒子形態であってもよい。前記「微細ナノ粒子」は、10~100nmサイズの球状、ロッド、針状またはプレート形状の粒子を意味することができる。
【0049】
一実施形態において、前記マンガン-含有ニッケル系複合金属酸化物は、前記ニッケル系複合金属酸化物の金属(リチウムを除いた金属、以下、同一である)の総量(モル%)に対して0.1モル%以上、1.5モル%未満のマンガンを含むことができる。前記正極活物質は、ニッケル系複合金属酸化物の金属の総量(モル%)に対して0.1モル%以上、1.5モル%未満のマンガンを含むことによって、正極活物質の構造的安定性およびサイクル特性を向上できる。
【0050】
一実施形態において、前記マンガン-含有ニッケル系複合金属酸化物の金属(リチウムを除いた金属)の総量(モル%)に対するマンガンの含有量は0.1モル%以上、0.2モル%以上、0.3モル%以上、0.4モル%以上、0.5モル%以上、0.6モル%以上、0.7モル%以上、0.8モル%以上、0.9モル%以上、1.0モル%以上、1.1モル%以上、1.2モル%以上、1.3モル%以上、または1.4モル%以上、および、1.5モル%未満、1.4モル%以下、1.3モル%以下、1.2モル%以下、1.1モル%以下、1.0モル%以下、0.9モル%以下、0.8モル%以下、0.7モル%以下、0.6モル%以下、0.5モル%以下、0.4モル%以下、0.3モル%以下、または0.2モル%以下であってもよい。
【0051】
上記で説明されたように、一実施形態による正極活物質は、二次粒子1の最表面から一定深さまで、つまり、シェル5aに存在する一次粒子の間にマンガンが高濃度に含有されたニッケル系複合金属酸化物を含む。これは、従来の二次粒子の表面をコーティングしたり、二次粒子のコアまでドーピングしたりする構成とは異なるもので、最表面から一定深さの一次粒子の粒界だけをマンガンでコーティングすることによって、正極活物質の比容量を改善させることができる。
【0052】
また、一次粒子3の粒界に前記マンガン-含有ニッケル系複合金属酸化物(7、ニッケル系リチウム金属酸化物)が含まれることによって、二次粒子1のコア5bまでリチウムの拡散が円滑に行われ、二次粒子1のコア5bからニッケルイオンが溶出することを抑制できる。さらに、二次粒子1のコア5bの一次粒子と電解液との副反応を抑制できる。したがって、前記構造を有する正極活物質を含むリチウム二次電池のサイクル特性を向上できる。
【0053】
また、隣接した一次粒子3間の粒界に配置されたマンガン-含有ニッケル系複合金属酸化物7が一次粒子の充放電による体積変化を収容して、一次粒子間の亀裂を抑制することによって、長期間充放電後にも正極活物質の機械的強度の低下を抑制してリチウム二次電池の劣化を防止することができる。さらに、一次粒子3にマンガンがコーティングされることによってニッケル系金属複合酸化物の結晶構造が安定化されて、正極活物質を含むリチウム二次電池のサイクル特性をさらに向上できる。
【0054】
前記マンガン-含有ニッケル系複合金属酸化物は、下記の化学式1で表される:
【0055】
[化学式1]
LiNi1-x-y-zCoMn
【0056】
前記化学式1において、
0≦x≦0.5、0.001≦y<0.015、および0≦z≦0.3であり、Mは、Ni、Al、Cr、Fe、V、Mg、Ti、Zr、Nb、Mo、W、Cu、Zn、Ga、In、Sn、La、B、Ta、Pr、Si、BaおよびCeより選択される少なくとも1つの金属元素である。
【0057】
一実施形態において、前記化学式1の化合物は、LiNi1-x-yCoMn、またはLiNi1-x-y-zCoMnAlであってもよい。
【0058】
前記マンガン-含有ニッケル系複合金属酸化物は、ニッケルを高含有量で含有するため、容量を極大化することができる。ニッケルを高含有量で含有する場合、容量は高いものの、寿命が低くなるという問題がありうるが、マンガンを一定量含有することによって寿命の劣化を解決することができる。
【0059】
一実施形態において、前記化学式1のyは、0.001≦y<0.015であってもよい。一実施形態において、前記マンガン-含有ニッケル系複合金属酸化物7は、Li[(NiCoAl)0.995Mn0.005]O、Li[(NiCoAl)0.99Mn0.01]O、Li[(NiCoAl)0.986Mn0.014]O、またはこれらの組み合わせであってもよい(上記の式において、Ni、Co、Alのモル量はマンガンの量に焦点を合わせるために簡略に表示されたものであり、互いに同一であるか、または異なっていてもよい) 。
【0060】
一実施形態において、前記シェル5aの一次粒子3の粒界7にリチウムマンガン酸化物がさらに含まれ、前記リチウムマンガン酸化物は、LiMnOであってもよい。
【0061】
前記正極活物質の粒径(D50)は8~18μmであってもよい。具体的には、前記正極活物質の粒径は8μm以上、9μm以上、10μm以上、11μm以上、12μm以上、13μm以上、14μm以上、15μm以上、16μm以上、または17μm以上、および18μm以下、17μm以下、16μm以下、15μm以下、14μm以下、13μm以下、12μm以下、11μm以下、10μm以下、または9μm以下であってもよい。
【0062】
前記正極活物質は、下記の製造方法により製造される。
【0063】
まず、複数の一次粒子が凝集された二次粒子を含むニッケル系複合金属化合物にマンガン化合物を混合させる。
【0064】
前記ニッケル系複合金属化合物は、ニッケル複合金属酸化物またはニッケル複合金属水酸化物であってもよく、一実施形態において、前記ニッケル系複合金属化合物は、下記の化学式2または化学式3で表される化合物であってもよい:
【0065】
[化学式2]
Ni1-x-yCo(OH)
【0066】
前記化学式2において、
0≦x≦0.5、0≦y≦0.3であり、Mは、Ni、Al、Cr、Fe、V、Mg、Ti、Zr、Nb、Mo、W、Cu、Zn、Ga、In、Sn、La、B、Ta、Pr、Si、BaおよびCeより選択される少なくとも1つの金属元素であり、
【0067】
[化学式3]
Ni1-x-yCo
【0068】
前記化学式3において、
0≦x≦0.5、0≦y≦0.3であり、Mは、Ni、Al、Cr、Fe、V、Mg、Ti、Zr、Nb、Mo、W、Cu、Zn、Ga、In、Sn、La、B、Ta、Pr、Si、BaおよびCeより選択される少なくとも1つの金属元素である。
【0069】
前記化学式2で表される化合物は、Ni1-xCo(OH)、またはNi1-x-yCoAl(OH)、前記化学式3で表される化合物は、Ni1-xCo、またはNi1-x-yCoAlであってもよい。
【0070】
前記マンガン化合物は、水酸化マンガン(Mn(OH))であってもよい。
【0071】
前記ニッケル系複合金属化合物とマンガン化合物とを混合する時、水溶性溶媒を投入して湿式混合方法によって混合しなければならないが、なぜなら、乾式で混合した時、マンガン化合物が前記ニッケル系複合金属化合物のシェルの一次粒子の粒界ではないシェルの表面に存在する確率が高いからである。
【0072】
前記水溶性溶媒は、NaOH、KOH、およびこれらの混合物のいずれか1つを含むことができる。
【0073】
前記ニッケル系複合金属化合物およびマンガン化合物を混合した後、前記混合物をコーティング反応器で反応させて、マンガンをニッケル系複合金属化合物のシェルの一次粒子の粒界に均一に分布、つまり、マンガンをシェルの一次粒子にコーティングさせる。
【0074】
前記コーティング反応器の温度は40℃~100℃であってもよく、具体的には、40℃以上、50℃以上、60℃以上、70℃以上、80℃以上、または90℃以上、および100℃以下、90℃以下、80℃以下、70℃以下、60℃以下、または50℃以下であってもよい。一実施形態において、前記反応器の温度は、反応時に均一に維持できる。
【0075】
前記反応時間は、30分~1時間であってもよい。
【0076】
前記反応させた混合物を乾燥する工程を追加的に含むことができ、前記乾燥工程によりニッケル系複合金属化合物のコアにマンガン-含有ニッケル系複合金属化合物のシェルが形成されたコア-シェル構造のニッケル系複合金属化合物を製造することができる。
【0077】
前記乾燥温度は100℃~200℃、120℃~180℃、または140℃~160℃であってもよい。
【0078】
その後、コーティングされた結果物にリチウムソースを混合した後に焼成して、ニッケル系複合金属酸化物である正極活物質を得ることができる。前記リチウムソースは、LiOH、LiCO、これらの水和物であってもよい。
【0079】
前記焼成温度は600℃~800℃であってもよく、具体的には、600℃以上、620℃以上、640℃以上、660℃以上、680℃以上、700℃以上、720℃以上、740℃以上、760℃以上、または780℃以上、および800℃以下、780℃以下、760℃以下、740℃以下、720℃以下、700℃以下、680℃以下、660℃以下、640℃以下、または620℃以下であってもよい。
【0080】
前記焼成時間は8~30時間、8~24時間、または10~24時間であってもよい。
【0081】
この時、前記ニッケル系複合金属化合物は、前記焼成工程のほか、追加的に500℃~800℃の温度で焼成されてもよい。
【0082】
他の実施形態において、前記正極活物質を含む正極;負極活物質を含む負極;および電解質;を含むリチウム二次電池を提供する。
【0083】
以下、一実施形態によるリチウム二次電池について図面を参照して説明する。図2は、一実施形態によるリチウム二次電池の代表的な構造を概略的に示した斜視図である。
【0084】
図2を参照すれば、リチウム二次電池31は、一実施形態による正極活物質を含む正極33、負極32およびセパレータ34を含む。上述した正極活物質を含む正極33、負極32およびセパレータ34がワインディングされるか折り畳まれて電池ケース35に収容される。次に、前記電池ケース35に有機電解液が注入され、キャップアセンブリ36を用いて密封されてリチウム二次電池31が完成する。前記電池ケース35は、円筒形、角型、薄膜型などであってもよい。
【0085】
前記リチウム二次電池は、リチウムイオン電池であってもよい。
【0086】
前記正極および負極は、集電体上に正極活物質層形成用組成物および負極活物質層形成用組成物をそれぞれ塗布し、これを乾燥して作製される。
【0087】
前記正極活物質形成用組成物は、正極活物質、導電剤、バインダーおよび溶媒を混合して製造されるが、前記正極活物質は上述した通りである。
【0088】
前記バインダーは、活物質と導電剤などの結合と集電体に対する結合に助力する成分であって、このようなバインダーの非制限的な例としては、ポリフッ化ビニリデン、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース(CMC)、デンプン、ヒドロキシプロピルセルロース、再生セルロース、ポリビニルピロリドン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-プロピレン-ジエンターポリマー(EPDM)、スルホン化EPDM、スチレンブタジエンゴム、フッ素ゴム、多様な共重合体などが挙げられる。その含有量としては、正極活物質の総重量100重量部を基準として1~5重量部を使用する。バインダーの含有量が前記範囲の時、集電体に対する活物質層の結着力が良好である。
【0089】
前記導電剤としては、当該電池に化学的変化を誘発することなく導電性を有するものであれば特に制限されるわけではなく、例えば、天然黒鉛や人造黒鉛などの黒鉛;カーボンブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、チャンネルブラック、ファーネスブラック、ランプブラック、サーマルブラックなどのカーボン系物質;炭素繊維や金属繊維などの導電性繊維;フッ化カーボン;アルミニウム、ニッケル粉末などの金属粉末;酸化亜鉛、チタン酸カリウムなどの導電性ウィスカー;酸化チタンなどの導電性金属酸化物;ポリフェニレン誘導体などの導電性素材などが使用できる。前記導電剤の含有量としては、正極活物質の総重量100重量部を基準として1~5重量部を使用する。導電剤の含有量が前記範囲の時、最終的に得られる電極の伝導度特性に優れている。
【0090】
前記溶媒の非制限的な例として、N-メチルピロリドンなどを使用する。前記溶媒の含有量としては、正極活物質100重量部を基準として10~200重量部を使用することができる。溶媒の含有量が前記範囲の時、活物質層を形成するための作業が容易である。
【0091】
前記正極集電体は、3~500μmの厚さであって、当該電池に化学的変化を誘発することなく高い導電性を有するものであれば特に制限されるわけではなく、例えば、ステンレススチール、アルミニウム、ニッケル、チタン、熱処理炭素、またはアルミニウムやステンレススチールの表面をカーボン、ニッケル、チタン、銀などで表面処理したものなどが使用できる。集電体は、その表面に微細な凹凸を形成して正極活物質の接着力を高めることもでき、フィルム、シート、箔、ネット、多孔質体、発泡体、不織布体など多様な形態が可能である。
【0092】
これとは別途に、負極活物質、バインダー、CMC(carboxymethyl cellulose)、溶媒を混合して負極活物質層形成用組成物を用意する。前記負極活物質としては、リチウムイオンを吸蔵および放出できる物質が使用される。前記負極活物質の非制限的な例として、黒鉛、炭素のような炭素系材料、リチウム金属、その合金、シリコンオキシド系物質などを使用することができる。本発明の一実施形態によれば、シリコンオキシドを使用する。
【0093】
前記バインダーおよび溶媒としては、正極の製造時と同じ種類の物質を使用することができる。CMCは増粘剤であって、接着を補助する役割およびコーティング時の粘度を調節する用途に使用できる。前記バインダーは、負極活物質の総重量100重量部を基準として1~5重量部添加される。前記CMCは、負極活物質の総重量100重量部を基準として1~5重量部使用される。CMCの含有量が前記範囲の時、接着力およびコーティング特性に優れている。前記溶媒の含有量としては、負極活物質の総重量100重量部を基準として10~200重量部を使用する。溶媒の含有量が前記範囲の時、負極活物質層を形成するための作業が容易である。
【0094】
前記負極集電体は、一般に3~500μmの厚さに作られる。このような負極集電体は、当該電池に化学的変化を誘発することなく導電性を有するものであれば特に制限されるわけではなく、例えば、銅、ステンレススチール、アルミニウム、ニッケル、チタン、熱処理炭素、銅やステンレススチールの表面をカーボン、ニッケル、チタン、銀などで表面処理したもの、アルミニウム-カドミウム合金などが使用できる。また、正極集電体と同様に、表面に微細な凹凸を形成して負極活物質の結合力を強化させることもでき、フィルム、シート、箔、ネット、多孔質体、発泡体、不織布体など多様な形態で使用できる。
【0095】
前記正極および負極の間にセパレータが配置されて巻取られるか積層されて電極組立体が形成される。前記セパレータとしては、気孔径が0.01~10μmであり、厚さは一般に5~300μmのものを使用する。具体例として、ポリプロピレン、ポリエチレンなどのオレフィン系ポリマー;またはガラス繊維で作られたシートや不織布などが使用される。電解質としてポリマーなどの固体電解質が使用される場合には、固体電解質がセパレータを兼ねることもできる。
【0096】
前記電極組立体がケースに収容されて、電解質を注入し、得られた結果物が密封されると、リチウム二次電池が完成する。前記電解質としては、非水性溶媒とリチウム塩を含む非水系電解質、有機固体電解質、無機固体電解質などが使用できる。前記非水性溶媒としては、例えば、N-メチル-2-ピロリジノン、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、ブチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ガンマ-ブチロラクトン、1,2-ジメトキシエタン、2-メチルテトラヒドロフラン、ジメチルスルホキシド、1,3-ジオキソラン、ホルムアミド、N,N-ジメチルホルムアミド、ジオキソラン、アセトニトリル、ニトロメタン、ギ酸メチル、酢酸メチル、リン酸トリエステル、トリメトキシメタン、ジオキソラン誘導体、スルホラン、メチルスルホラン、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン、プロピレンカーボネート誘導体、テトラヒドロフラン誘導体、エーテル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチルなどの非プロトン性有機溶媒が使用できる。前記リチウム塩は、前記非水系溶媒に溶解しやすい物質であって、非制限的な例として、LiPF、LiBF、LiSbF、LiAsF、LiN(SO、Li(CFSON、LiN(SO、Li(FSON(リチウムビスフルオロスルホニルイミド(lithium bis(fluorosulfonyl)imide):LiFSI)、LiCSO、LiClO、LiAlO、LiAlCl、LiPO、LiN(C2x+1SO)(C2y+1SO)(ここで、xおよびyは自然数であり、例えば、1~20の整数である)、リチウムジフルオロビスオキサラトホスフェート(lithium difluoro(bisoxolato)phosphate)、LiCl、LiI、LiB(C(リチウムビス(オキサラト)ボレート(lithium bis(oxalato)borate):LiBOB)、およびリチウムジフルオロ(オキサラト)ボレート(LiDFOB)からなる群より選択される1つ以上であってもよい。
【0097】
前記有機固体電解質としては、非制限的な例として、ポリエチレン誘導体、ポリエチレンオキシド誘導体、ポリプロピレンオキシド誘導体、リン酸エステルポリマー、ポリエステルスルフィド、ポリビニルアルコール、ポリフッ化ビニリデンなどが使用できる。
【0098】
前記無機固体電解質としては、非制限的な例として、LiN、LiI、LiNI、LiN-LiI-LiOH、LiSiS、LiSiO、LiSiO-LiI-LiOH、LiPO-LiS-SiSなどが使用できる。
【0099】
前記リチウム二次電池が回路で構成されて電池パックを形成し、必要に応じて、単一または複数からなるパックが、高容量および高出力が要求されるすべての機器に使用可能である。例えば、ノートパソコン、スマートフォン、電気車両などに使用できる。また、前記リチウム二次電池は、高温で保存安定性、寿命特性および高率特性に優れているので、電気車両(electric vehicle、EV)に使用可能である。例えば、プラグインハイブリッド車両(plug-in hybrid electric vehicle、PHEV)などのハイブリッド車両に使用できる。
【0100】
以下の実施例および比較例を通じて本発明がより詳細に説明される。ただし、実施例は本発明を例示するためのものであって、これらのみに本発明の範囲が限定されるものではない。
【0101】
実施例1
(正極活物質の製造)
ニッケル系複合金属水酸化物(Ni0.94Co0.04Al0.02(OH))と蒸留水を入れた反応器に、Nガスを4000sccmの速度で供給し、反応器内の水溶液の温度を45℃に維持させながら300~600rpmで撹拌した。2M濃度の水酸化マンガンと5.5MのNaOH水溶液を反応槽に30分~1時間連続的に投入した。反応器内の温度を50℃~80℃の間に維持しながら30分間撹拌して、ニッケル系複合金属水酸化物にマンガン1mol%をコーティングした。その後、150℃の温度で真空乾燥機において乾燥して、ニッケル系複合金属水酸化物のコアにマンガン-含有ニッケル系複合金属水酸化物のシェルが形成されたコア-シェル構造のニッケル系複合金属水酸化物を製造した。この時、マンガンは、シェル内のリチウムを除いた金属の総量に対して1mol%の量で含まれる。
【0102】
その後、前記コア-シェル構造のニッケル系複合金属水酸化物と水酸化リチウムとを1:1のモル比で混合した後、720℃で12時間焼成させて、Li[Ni0.94Co0.04Al0.02]OコアおよびLi[Ni0.93Co0.04Al0.02Mn0.01]Oシェルを含む正極活物質粉末を得た。
【0103】
(正極の製造)
前記正極活物質94重量%、ケッチェンブラック3重量%およびポリビニリデンフルオライド3重量%をN-メチルピロリドン溶媒中で混合して、正極活物質スラリーを製造した。前記正極活物質スラリーをAl箔にコーティング、乾燥および圧延して、正極を製造した。
【0104】
(コインセルの製造)
上記で製造された正極を用いて、リチウム金属を対電極とし、PTFEセパレータ(separator)と、1.15M LiPFがEC(エチレンカーボネート)、DEC(ジエチルカーボネート)およびEMC(エチルメチルカーボネート)の混合溶媒(3:4:3体積比)に溶けている溶液を電解質として用いて、コインセルを製造した。
【0105】
実施例2
(正極活物質の製造)
ニッケル系複合金属酸化物(Ni0.94Co0.04Al0.02)と蒸留水を入れた反応器に、Nガスを4000sccmの速度で供給し、反応器内の水溶液の温度を45℃に維持させながら300~600rpmで撹拌した。2M濃度の水酸化マンガンと5.5MのNaOH水溶液を反応槽に30分~1時間連続的に投入した。反応器内の温度を50℃~70℃の間に維持しながら30分間撹拌して、ニッケル系複合金属酸化物にマンガン1mol%をコーティングした。その後、150℃の温度で真空乾燥機において乾燥して、ニッケル系複合金属酸化物のコアにマンガン-含有ニッケル系複合金属酸化物のシェルが形成されたコア-シェル構造のニッケル系複合金属酸化物を製造した。この時、マンガンは、シェル内のリチウムを除いた金属の総量に対して1mol%の量で含まれる。
【0106】
その後、前記コア-シェル構造のニッケル系複合金属酸化物と水酸化リチウムとを1:1のモル比で混合した後、720℃で12時間焼成させて、Li[Ni0.94Co0.04Al0.02]OコアおよびLi[Ni0.93Co0.04Al0.02Mn0.01]Oシェルを含む正極活物質粉末を得た。
【0107】
(正極の製造)
前記正極活物質94重量%、ケッチェンブラック3重量%およびポリビニリデンフルオライド3重量%をN-メチルピロリドン溶媒中で混合して、正極活物質スラリーを製造した。前記正極活物質スラリーをAl箔にコーティング、乾燥および圧延して、正極を製造した。
【0108】
(コインセルの製造)
上記で製造された正極を用いて、リチウム金属を対電極とし、PTFEセパレータ(separator)と、1.15M LiPFがEC(エチレンカーボネート)、DEC(ジエチルカーボネート)およびEMC(エチルメチルカーボネート)の混合溶媒(3:4:3体積比)に溶けている溶液を電解質として用いて、コインセルを製造した。
【0109】
比較例1
水酸化マンガン水溶液を投入しないことを除けば、実施例と同様に進行させて正極活物質を製造し、これを用いて正極とコインセルを製造した。
【0110】
比較例2
ニッケル系複合金属水酸化物Ni0.94Co0.04Al0.02(OH)と水酸化マンガンを乾式混合したことを除けば、実施例と同様に進行させて正極活物質を製造し、これを用いて正極とコインセルを製造した。
【0111】
比較例3
Mnが1mol%コーティングされるとはいえ、反応器で1時間30分間撹拌してコーティングをし、乾燥後に水酸化リチウムを1:1のモル比で混合した後、720℃で24時間焼成を進行させてコアまでマンガンがドーピングされることを除けば、実施例1と同様に進行させて正極活物質を製造し、これを用いて正極とコインセルを製造した。
【0112】
比較例4
Mnが1.5mol%コーティングされたことを除けば、実施例1と同様に進行させて正極活物質を製造し、これを用いて正極とコインセルを製造した。
【0113】
評価1.初期充放電容量および充放電効率の評価
実施例1および2、および比較例1~4で製造されたコインセルに対して0.2Cで1回充放電を実施して、充電容量、放電容量および充放電効率を求めた。これを下記表1に示した。
【0114】
【表1】
【0115】
前記表1に示しているように、実施例1で製造されたコインセルの充放電容量が比較例1~4より優れており、充放電効率が比較例1~4に比べてより優れていることが分かる。
【0116】
評価2.サイクル寿命特性の評価
実施例1、および比較例1~4で製造されたコインセルを、45℃で1.0C rateの電流で電圧が4.30V(vs.Li)に至るまで定電流充電し、次に、定電圧モードで4.30Vを維持しながら0.05C rateの電流でカットオフ(cut-off)した。次に、放電時に電圧が3.0V(vs.Li)に至るまで1.0C rateの定電流で放電するサイクルを50thサイクルまで繰り返した。前記すべての充放電サイクルにおいて1つの充電/放電サイクル後、10分間停止時間をおいた。100thサイクルでの寿命(容量維持率)を下記表2および図3に示した。
【0117】
容量維持率は下記式1により計算した:
【0118】
[式1]
100thサイクルでの容量維持率[%]=[100thサイクルでの放電容量/1stサイクルでの放電容量]×100[%]
【0119】
【表2】
【0120】
表2および図3に示しているように、実施例で製造されたコインセルのサイクル寿命が比較例1~4に比べてより優れていることが分かる。
【0121】
以上、本発明の好ましい実施形態について詳細に説明したが、本発明の権利範囲はこれに限定されるものではなく、添付した特許請求の範囲で定義している本発明の基本概念を利用した当業者の様々な変形および改良形態も本発明の権利範囲に属する。
【符号の説明】
【0122】
1 二次粒子
3 一次粒子
5a シェル
5b コア
7 粒界、マンガン-含有ニッケル系複合金属酸化物
31 リチウム二次電池
32 負極
33 正極
34 セパレータ
35 電池ケース
36 キャップアセンブリ
図1
図2
図3