(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-27
(45)【発行日】2024-06-04
(54)【発明の名称】リチウム二次電池用セパレータ及びそれを備えたリチウム二次電池
(51)【国際特許分類】
H01M 50/451 20210101AFI20240528BHJP
H01M 50/414 20210101ALI20240528BHJP
H01M 50/434 20210101ALI20240528BHJP
H01M 50/443 20210101ALI20240528BHJP
H01M 50/446 20210101ALI20240528BHJP
H01M 50/463 20210101ALI20240528BHJP
H01M 50/489 20210101ALI20240528BHJP
【FI】
H01M50/451
H01M50/414
H01M50/434
H01M50/443 M
H01M50/446
H01M50/463 A
H01M50/489
(21)【出願番号】P 2022574286
(86)(22)【出願日】2022-01-25
(86)【国際出願番号】 KR2022001334
(87)【国際公開番号】W WO2022158951
(87)【国際公開日】2022-07-28
【審査請求日】2022-12-01
(31)【優先権主張番号】10-2021-0010310
(32)【優先日】2021-01-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】500239823
【氏名又は名称】エルジー・ケム・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100122161
【氏名又は名称】渡部 崇
(72)【発明者】
【氏名】ジュ-スン・イ
(72)【発明者】
【氏名】ビ-オ・リュ
(72)【発明者】
【氏名】キル-アン・ジュン
【審査官】冨士 美香
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2020/225018(WO,A1)
【文献】特開2020-068123(JP,A)
【文献】特開2012-119224(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 50/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
多孔性高分子基材と、
前記多孔性高分子基材の少なくとも一面に位置し、無機物粒子及びバインダー高分子を含む有機無機複合多孔性層と、を含み、
前記無機物粒子のBET比表面積が50m
2/g~150m
2/gであり、
前記無機物粒子の平均粒径(D
50
)が20nm~47nmであり、
前記有機無機複合多孔性層の厚さが前記多孔性高分子基材の厚さよりも厚く、
前記有機無機複合多孔性層の表面の算術平均粗さが100nm~500nmである、リチウム二次電池用セパレータ。
【請求項2】
前記無機物粒子のBET比表面積が50m
2/g~130m
2/gである、請求項1に記載のリチウム二次電池用セパレータ。
【請求項3】
前記無機物粒子のBET比表面積が50m
2/g~75m
2/gである、請求項1または2に記載のリチウム二次電池用セパレータ。
【請求項4】
前記有機無機複合多孔性層の表面の算術平均粗さが150nm~350nmである、請求項1から3の何れか一項に記載のリチウム二次電池用セパレータ。
【請求項5】
前記有機無機複合多孔性層の厚さが、前記多孔性高分子基材の厚さの1.01倍~5倍である、請求項1から4の何れか一項に記載のリチウム二次電池用セパレータ。
【請求項6】
前記有機無機複合多孔性層の厚さが、前記多孔性高分子基材の厚さの1.01倍~3倍である、請求項1から5の何れか一項に記載のリチウム二次電池用セパレータ。
【請求項7】
前記無機物粒子の平均粒径(D
50)が23nm~30nmである、請求項1から
6の何れか一項に記載のリチウム二次電池用セパレータ。
【請求項8】
前記無機物粒子がフュームドタイプの無機物粒子を含む、請求項1から
7の何れか一項に記載のリチウム二次電池用セパレータ。
【請求項9】
前記無機物粒子がフュームドアルミナ、フュームドシリカ、フュームド二酸化チタン、またはこれらのうちの二つ以上を含む、請求項
8に記載のリチウム二次電池用セパレータ。
【請求項10】
前記有機無機複合多孔性層の厚さが5μm~15μmである、請求項1から
9の何れか一項に記載のリチウム二次電池用セパレータ。
【請求項11】
前記多孔性高分子基材の厚さが3μm~10μmである、請求項1から
10の何れか一項に記載のリチウム二次電池用セパレータ。
【請求項12】
前記セパレータの全体厚さが8μm~25μmである、請求項1から
11の何れか一項に記載のリチウム二次電池用セパレータ。
【請求項13】
前記無機物粒子とバインダー高分子との重量比が、50:50~99.5:0.5である、請求項1から
12の何れか一項に記載のリチウム二次電池用セパレータ。
【請求項14】
前記無機物粒子とバインダー高分子との重量比が、70:30~97:3である、請求項1から
13の何れか一項に記載のリチウム二次電池用セパレータ。
【請求項15】
前記有機無機複合多孔性層の重量が、前記セパレータの全体重量に対して50重量%~99
重量%である、請求項1から
14の何れか一項に記載のリチウム二次電池用セパレータ。
【請求項16】
25℃で1時間放置した後の光透過度と190℃で1時間放置した後の光透過度との比が1.2以上である、請求項1から
15の何れか一項に記載のリチウム二次電池用セパレータ。
【請求項17】
190℃で1時間放置した後に測定した熱収縮率が、機械方向及び直角方向においてそれぞれ10%以下である、請求項1から
16の何れか一項に記載のリチウム二次電池用セパレータ。
【請求項18】
正極、負極、及び前記正極と負極との間に介在されたセパレータを含み、
前記セパレータが、請求項1から
17のいずれか一項に記載のセパレータである、リチウム二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2021年1月25日付け出願の韓国特許出願第10-2021-0010310号に基づく優先権を主張する。
【0002】
本発明は、リチウム二次電池用セパレータ及びそれを備えたリチウム二次電池に関する。より詳しくは、安全性が向上したリチウム二次電池用セパレータ及びそれを備えたリチウム二次電池に関する。
【背景技術】
【0003】
近年、エネルギー貯蔵技術に対する関心が益々高まっている。携帯電話、カムコーダー及びノートパソコン、さらには電気自動車のエネルギーまで適用分野が拡がるとともに、このような電子機器の電源として使われる電池の高エネルギー密度化に対する要求が高まっている。リチウム二次電池は、このような要求を最もよく満たすことができる電池であって、現在、これについての研究が活発に行われている。
【0004】
このようなリチウム二次電池は、正極、負極、電解液、セパレータから構成されており、そのうちのセパレータには、正極と負極とを分離して電気的に絶縁させるための絶縁性、及び高い気孔度に基づいてリチウムイオンの透過性を高めるための高いイオン伝導度が要求される。
【0005】
このようなセパレータとして、ポリオレフィンから形成された多孔性基材を適用したポリオレフィンセパレータが広く使われている。しかし、代表的なポリオレフィンセパレータであるポリエチレン(PE)セパレータの場合、融点(Tm)が低いため、電池の誤使用環境で電池温度がポリエチレンの融点以上に上昇すると、メルトダウン(melt-down)現象が発生して発火及び爆発を引き起こすおそれがある。
【0006】
このようなポリオレフィンセパレータの安全性をより強化するため、多様な試みが行われている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明が解決しようとする課題は、安全性が向上したリチウム二次電池用セパレータ及びそれを備えたリチウム二次電池を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するため、本発明の一様態によれば、下記の具現例のリチウム二次電池用セパレータが提供される。
【0009】
第1具現例は、
多孔性高分子基材と、前記多孔性高分子基材の少なくとも一面に位置し、無機物粒子及びバインダー高分子を含む有機無機複合多孔性層と、を含み、前記無機物粒子のBET比表面積が50m2/g~150m2/gであり、前記有機無機複合多孔性層の厚さが前記多孔性高分子基材の厚さよりも厚く、前記有機無機複合多孔性層の表面の算術平均粗さが100nm~500nmである、リチウム二次電池用セパレータに関する。
【0010】
第2具現例によれば、第1具現例において、
前記無機物粒子のBET比表面積が、50m2/g~130m2/gであり得る。
【0011】
第3具現例によれば、第1具現例または第2具現例において、
前記無機物粒子のBET比表面積が、50m2/g~75m2/gであり得る。
【0012】
第4具現例によれば、第1具現例~第3具現例のうちの一具現例において、
前記有機無機複合多孔性層の表面の算術平均粗さが、150nm~350nmであり得る。
【0013】
第5具現例によれば、第1具現例~第4具現例のうちの一具現例において、
前記有機無機複合多孔性層の厚さが、前記多孔性高分子基材の厚さの1.01倍~5倍であり得る。
【0014】
第6具現例によれば、第1具現例~第5具現例のうちの一具現例において、
前記有機無機複合多孔性層の厚さが、前記多孔性高分子基材の厚さの1.01倍~3倍であり得る。
【0015】
第7具現例によれば、第1具現例~第6具現例のうちの一具現例において、
前記無機物粒子の平均粒径(D50)が、20nm~47nmであり得る。
【0016】
第8具現例によれば、第1具現例~第7具現例のうちの一具現例において、
前記無機物粒子の平均粒径(D50)が、23nm~30nmであり得る。
【0017】
第9具現例によれば、第1具現例~第8具現例のうちの一具現例において、
前記無機物粒子が、フュームド(fumed)タイプの無機物粒子を含み得る。
【0018】
第10具現例によれば、第9具現例において、
前記無機物粒子が、フュームドアルミナ、フュームドシリカ、フュームド二酸化チタン、またはこれらのうちの二つ以上を含み得る。
【0019】
第11具現例によれば、第1具現例~第10具現例のうちの一具現例において、
前記有機無機複合多孔性層の厚さが、5μm~15μmであり得る。
【0020】
第12具現例によれば、第1具現例~第11具現例のうちの一具現例において、
前記多孔性高分子基材の厚さが、3μm~10μmであり得る。
【0021】
第13具現例によれば、第1具現例~第12具現例のうちの一具現例において、
前記セパレータの全体厚さが、8μm~25μmであり得る。
【0022】
第14具現例によれば、第1具現例~第13具現例のうちの一具現例において、
前記無機物粒子とバインダー高分子との重量比が、50:50~99.5:0.5であり得る。
【0023】
第15具現例によれば、第1具現例~第14具現例のうちの一具現例において、
前記無機物粒子とバインダー高分子との重量比が、70:30~97:3であり得る。
【0024】
第16具現例によれば、第1具現例~第15具現例のうちの一具現例において、
前記有機無機複合多孔性層の重量が、前記セパレータの全体重量に対して50重量%~99%重量であり得る。
【0025】
第17具現例によれば、第1具現例~第16具現例のうちの一具現例において、
25℃で1時間放置した後の光透過度と190℃で1時間放置した後の光透過度との比が、1.2以上であり得る。
【0026】
第18具現例によれば、第1具現例~第17具現例のうちの一具現例において、
190℃で1時間放置した後に測定した熱収縮率が、機械方向(MD、Machine Direction)及び直角方向(TD、Transverse Direction)においてそれぞれ10%以下であり得る。
【0027】
上記の課題を解決するため、本発明の一様態によれば、下記の具現例のリチウム二次電池が提供される。
【0028】
第19具現例は、
正極、負極、及び前記正極と負極との間に介在されたセパレータを含み、
前記セパレータが、第1具現例~第18具現例のうちの一具現例によるセパレータである、リチウム二次電池に関する。
【発明の効果】
【0029】
本発明の一実施形態によるリチウム二次電池用セパレータは、140℃以下の低い温度で気孔閉塞(shut down)が可能な多孔性高分子基材を含むことで、過充電に対する安全性を確保することができる。
【0030】
本発明の一実施形態によるリチウム二次電池用セパレータは、BET比表面積が50m2/g~150m2/gである無機物粒子を含むことで、耐熱性が非常に優れる。
【0031】
本発明の一実施形態によるリチウム二次電池用セパレータは、有機無機複合多孔性層の厚さが多孔性高分子基材の厚さよりも厚く、釘貫通による電池の内部短絡及び熱暴走を防止または緩和することができる。
【0032】
本発明の一実施形態によるリチウム二次電池用セパレータは、有機無機複合多孔性層の表面の算術平均粗さが100nm~500nmであるため、電池の寿命特性が向上することができる。
【0033】
本明細書に添付される図面は、本発明の望ましい実施形態を例示するものであり、発明の内容とともに本発明の技術的な思想をさらに理解させる役割を果たすものであるため、本発明は図面に記載された事項だけに限定されて解釈されてはならない。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【
図1】算術平均粗さを計算するときの粗さ曲線を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下、本発明の望ましい実施形態を詳しく説明する。これに先だち、本明細書及び特許請求の範囲において使われた用語や単語は通常的及び辞書的な意味に限定して解釈されてはならず、発明者自らは発明を最善の方法で説明するために用語の概念を適切に定義できるという原則に則して本発明の技術的な思想に応ずる意味及び概念で解釈されねばならない。
【0036】
したがって、本明細書に記載された実施形態に示された構成は、本発明のもっとも望ましい一実施形態に過ぎず、本発明の技術的な思想のすべてを代弁するものではないため、本出願の時点においてこれらに代替できる多様な均等物及び変形例があり得ることを理解せねばならない。
【0037】
本発明の一実施形態によるリチウム二次電池用セパレータは、多孔性高分子基材と、前記多孔性高分子基材の少なくとも一面に位置し、無機物粒子及びバインダー高分子を含む有機無機複合多孔性層と、を含み、前記無機物粒子のBET比表面積が50m2/g~150m2/gであり、前記有機無機複合多孔性層の厚さが前記多孔性高分子基材の厚さよりも厚く、前記有機無機複合多孔性層の表面の算術平均粗さが100nm~500nmであることを特徴とする。
【0038】
本発明の一実施形態によるリチウム二次電池用セパレータは、多孔性高分子基材を備える。前記多孔性高分子基材は、電池の異常反応によって電池の温度が上昇するとき、気孔閉塞(シャットダウン現象)を起こすことができる。これにより、過充電による電池の発火及び爆発などの問題を防止または緩和することができる。
【0039】
本発明の一実施形態において、前記多孔性高分子基材としては、リチウム二次電池用セパレータの素材として通常使用されるものであれば、特に制限なく使用可能である。このような多孔性高分子基材は、高分子材料が含まれた薄膜であって、前記高分子材料の非制限的な例としては、ポリオレフィン樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリアセタール、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンオキサイド、ポリフェニレンスルフィド、ポリエチレンナフタレートのような高分子樹脂のうちの少なくともいずれか一つを含み得る。また、前記多孔性高分子基材は、上述したような前記高分子材料から形成された不織布、多孔性高分子フィルム、またはこのうちの二つ以上の積層物などが使用され得る。具体的には、前記多孔性高分子基材は、下記のa)~e)のうちのいずれか一つであり得る。
a)高分子樹脂を溶融及び押出して成膜した多孔性フィルム
b)a)の多孔性フィルムが2層以上積層された多層膜
c)高分子樹脂を溶融/紡糸して得たフィラメントを集積して製造された不織布ウェブ
d)c)の不織布ウェブが2層以上積層された多層膜
e)a)~d)のうちの二つ以上を含む多層構造の多孔性膜
【0040】
本発明の一実施形態において、前記多孔性高分子基材に存在する気孔サイズ及び気孔度は、特に制限されないが、それぞれ0.01μm~0.09μm及び10%~95%であり得る。
【0041】
本発明の一実施形態において、前記多孔性高分子基材の気孔度及び気孔サイズは、走査電子顕微鏡(SEM)イメージ、水銀ポロシメーター(mercury porosimeter)、キャピラリーフローポロメーター(capillary flow porometer)、または細孔分布測定装置(porosimetry analyzer;Bell Japan、Belsorp-II mini)を使用して窒素ガス吸着フローによってBET6点法で測定し得る。
【0042】
本発明の一実施形態によるリチウム二次電池用セパレータは、前記多孔性高分子基材の少なくとも一面に有機無機複合多孔性層を備える。
【0043】
前記有機無機複合多孔性層は、無機物粒子、及び前記無機物粒子同士が互いに結着した状態を維持できるようにこれらを互いに付着(すなわち、バインダー高分子が無機物粒子同士の間を連結及び固定)させるバインダー高分子を含み、前記バインダー高分子によって無機物粒子と多孔性高分子基材とが結着した状態を維持できる。前記有機無機複合多孔性層は、無機物粒子によって多孔性高分子基材が高温で甚だしい熱収縮挙動を見せることを防止してセパレータの安全性を向上させることができる。
【0044】
本発明の一実施形態において、前記有機無機複合多孔性層は、多孔性高分子基材の両面に位置し得る。有機無機複合多孔性層が多孔性高分子基材の両面に位置する場合、有機無機複合多孔性層が位置しない多孔性高分子基材の一面側でカーリングが起きてセパレータが一側に巻かれる現象をより容易に防止することができる。
【0045】
本発明において、前記無機物粒子は50m2/g~150m2/gのBET比表面積を有する。前記無機物粒子のBET比表面積が50m2/g~150m2/gである場合、セパレータの単位面積当り分布する無機物粒子がより緻密になるため、セパレータの熱的安全性を改善することができる。
【0046】
また、釘貫通の際、有機無機複合多孔性層内に含まれた無機物粒子が釘を囲んで正極と負極との直接的な短絡を防止することができる。
【0047】
また、無機物粒子のBET比表面積が上述した範囲を満足する場合、前記無機物粒子を含む有機無機複合多孔性層の気孔サイズが前記多孔性高分子基材の気孔サイズに相応するように100nm以下になり、セパレータの厚さ方向における気孔均一性を具現することができる。
【0048】
前記無機物粒子のBET比表面積が50m2/g未満であると、セパレータの熱的安全性を確保し難く、無機物粒子が釘を囲むことができず釘貫通安全性を確保し難い。また、無機物粒子を含む有機無機複合多孔性層の気孔サイズが100nmを超過する大きさで形成されるため電池の自己放電率が高く、満充電時に漏洩電流が過多になって充電深度を深くし難い。
【0049】
前記無機物粒子のBET比表面積が150m2/gを超過すると、無機物粒子同士の間の気孔が狭くなってイオン伝導度が低下し、これによって前記セパレータを含むリチウム二次電池を急速充電及び高速放電し難い。
【0050】
本発明の一実施形態において、前記無機物粒子のBET比表面積は、51m2/g以上、56m2/g以上、57m2/g以上、60m2/g以上、65m2/g以上、70m2/g以上、75m2/g以上、80m2/g以上、90m2/g以上、100m2/g以上、110m2/g以上、115m2/g以上、または120m2/g以上であり、130m2/g以下、120m2/g以下、115m2/g以下、110m2/g以下、100m2/g以下、90m2/g以下、80m2/g以下、75m2/g以下、70m2/g以下、65m2/g以下、60m2/g以下、57m2/g以下、または56m2/g以下であり得る。前記無機物粒子のBET比表面積が上述した範囲を満足する場合、セパレータの熱的寸法安全性及び釘貫通安全性をより容易に確保することができる。特に、前記無機物粒子のBET比表面積が50m2/g~75m2/gである場合、無機物粒子を分散させるとき、過度な量の分散剤を使用しなくても、無機物粒子の分散安定性の確保により有利である。
【0051】
前記無機物粒子のBET比表面積は、ASTM C1069法によって測定し得る。
【0052】
本発明の一実施形態において、前記無機物粒子の平均粒径(D50)は、20nm以上、23nm以上、24nm以上、30nm以上、または39nm以上であり、47nm以下、40nm以下、39nm以下、30nm以下、24nm以下、または23nm以下であり得る。前記無機物粒子の平均粒径が上述した範囲を満足する場合、セパレータの単位面積当り分布する無機物粒子がより緻密になるため、セパレータの熱的安全性をより容易に改善することができる。
【0053】
また、釘貫通の際、有機無機複合多孔性層内に含まれた無機物粒子が釘を囲んで正極と負極との直接的な短絡をより容易に防止することができる。
【0054】
また、前記無機物粒子を含む有機無機複合多孔性層の気孔サイズが前記多孔性高分子基材の気孔サイズに相応するように100nm以下になり、セパレータの厚さ方向における気孔均一性をより容易に具現することができる。
【0055】
このとき、前記無機物粒子の平均粒径は、D50粒径を意味し、「D50粒径」は、粒径に応じた粒子個数累積分布の50%地点での粒径を意味する。前記粒径は、レーザー回折法(laser diffraction method)を用いて測定可能である。具体的には、測定対象粉末を分散媒中に分散させた後、市販のレーザー回折粒度測定装置(例えば、マイクロトラックS3500)に導入し、粒子がレーザービームを通過するとき、粒子のサイズに応じた回折パターンの差を測定して粒度分布を算出する。測定装置における粒径に応じた粒子個数累積分布の50%になる地点での粒子径を算出することで、D50粒径を測定し得る。前記平均粒径は1次粒子の平均粒径を称するものであり得る。
【0056】
本発明の一実施形態において、前記無機物粒子は、フュームド(fumed)タイプの無機物粒子を含み得る。
【0057】
本発明において、フュームドタイプの無機物粒子とは、1,000℃以上の火炎内で加水分解されて形成される基本粒子が、衝突によって互いに連結されて2次粒子を形成し、このような2次粒子が3次元の凝集体(aggregates、agglomerate)を形成した無機物粒子を称する。
【0058】
前記無機物粒子がフュームドタイプの無機物粒子を含む場合、BET比表面積が50m2/g~150m2/gである無機物粒子の形成がより容易である。
【0059】
また、前記無機物粒子がフュームドタイプの無機物粒子を含む場合、1次粒子基準の平均粒径(D50)が20nm~47nmである無機物粒子の形成がより容易である。
【0060】
このようなフュームドタイプの無機物粒子は、例えば、フュームドアルミナ、フュームドシリカ、フュームド二酸化チタン、またはこれらのうちの二つ以上を含み得る。
【0061】
本発明の一実施形態において、前記バインダー高分子は、ポリ(フッ化ビニリデン)、ポリ(フッ化ビニリデン-ヘキサフルオロプロピレン)、ポリ(フッ化ビニリデン-クロロトリフルオロエチレン)、ポリ(フッ化ビニリデン-テトラフルオロエチレン)、ポリ(フッ化ビニリデン-トリクロロエチレン)、アクリル系共重合体、スチレン-ブタジエン共重合体、ポリ(アクリル酸)、ポリ(メチルメタクリレート)、ポリ(ブチルアクリレート)、ポリ(アクリロニトリル)、ポリ(ビニルピロリドン)、ポリ(ビニルアルコール)、ポリ(ビニルアセテート)、エチレンビニルアセテート共重合体、ポリ(エチレンオキサイド)、ポリ(アリレート)、セルロースアセテート、セルロースアセテートブチレート、セルロースアセテートプロピオネート、シアノエチルプルラン、シアノエチルポリビニルアルコール、シアノエチルセルロース、シアノエチルスクロース、プルラン、カルボキシメチルセルロース、またはこれらのうちの二つ以上を含み得る。
【0062】
前記アクリル系共重合体は、エチルアクリレート-アクリル酸-N,N-ジメチルアクリルアミド共重合体、エチルアクリレート-アクリル酸-2-(ジメチルアミノ)エチルアクリレート共重合体、エチルアクリレート-アクリル酸-N,N-ジエチルアクリルアミド共重合体、エチルアクリレート-アクリル酸-2-(ジエチルアミノ)エチルアクリレート共重合体、またはこれらのうちの二つ以上を含み得るが、これらに制限されることはない。
【0063】
本発明の一実施形態において、前記無機物粒子とバインダー高分子との重量比は、50:50~99.5:0.5、または70:30~97:3であり得る。前記無機物粒子とバインダー高分子との重量比が上述した範囲である場合、無機物粒子同士の間の十分な接着力を確保しながらも、無機物粒子同士の間に形成される空き空間を十分に確保することができる。また、無機物粒子が上述したBET比表面積を有しても無機物粒子を容易に結着できる。
【0064】
本発明の一実施形態において、前記有機無機複合多孔性層は、前記無機物粒子が充填されて互いに接触した状態で前記バインダー高分子によって互いに結着し、これにより無機物粒子同士の間にインタースティシャル・ボリューム(interstitial volume)が形成され、前記無機物粒子同士の間のインタースティシャル・ボリュームが空き空間になって気孔を形成する構造であり得る。
【0065】
本発明の一実施形態において、前記有機無機複合多孔性層の気孔サイズは、5nm~100nm、または10nm~90nmであり得る。前記有機無機複合多孔性層の気孔サイズが上述した範囲である場合、前記有機無機複合多孔性層の気孔サイズが前記多孔性高分子基材の気孔サイズに相応する大きさであるため、セパレータの厚さ方向における気孔均一性を容易に具現できる。また、電池の自己放電率を改善することができる。
【0066】
前記有機無機複合多孔性層の気孔サイズは、キャピラリーフローポロメトリー(capillary flow porometry)法によって測定し得る。キャピラリーフローポロメトリー法は、厚さ方向で最も小さい気孔の直径が測定される方式である。したがって、キャピラリーフローポロメトリー法によって有機無機複合多孔性層のみの気孔サイズを測定するためには、有機無機複合多孔性層を多孔性高分子基材から分離し、分離された有機無機複合多孔性層を支持可能な不織布で包んだ状態で測定しなければならず、このとき、前記不織布の気孔サイズは有機無機複合多孔性層の気孔サイズに比べて遥かに大きくなければならない。
【0067】
本発明の一実施形態において、前記有機無機複合多孔性層の気孔度(porosity)は、5~95%、10~95%、20~90%、または30~80%の範囲であり得る。前記気孔度は、前記有機無機複合多孔性層の厚さ、横長、及び縦長から計算した体積から、前記有機無機複合多孔性層の各構成成分の重量と密度から換算した体積を引き算(subtraction)した値に該当する。
【0068】
前記有機無機複合多孔性層の気孔度は、走査電子顕微鏡(SEM)イメージ、水銀ポロシメーター、キャピラリーフローポロメーター、または細孔分布測定装置(Bell Japan、Belsorp-II mini)を使用して窒素ガス吸着フローによってBET6点法で測定し得る。
【0069】
本発明の一実施形態によるリチウム二次電池用セパレータは、前記有機無機複合多孔性層の厚さが前記多孔性高分子基材の厚さよりも厚い。有機無機複合多孔性層の厚さが多孔性高分子基材よりも厚ければ、釘が有機無機複合多孔性層を貫通して多孔性高分子基材を損傷させても、正極と負極との間、または電極と釘との間の短絡を防止することができる。具体的には、釘貫通時に有機無機複合多孔性層内に含まれた無機物粒子が釘を囲むことができ、導電性を有する素材、例えば正極と負極との間、または電極と釘との間の直接的な短絡を防止することができる。
【0070】
本発明の一実施形態において、前記有機無機複合多孔性層の厚さは、前記多孔性高分子基材の厚さに比べて1.01倍以上、1.09倍以上、1.1倍以上、1.5倍以上、1.8倍以上、2.2倍以上、2.8倍以上、または3倍以上であり、5倍以下、3倍以下、2.8倍以下、2.2倍以下、1.8倍以下、1.5倍以下、1.1倍以下、または1.09倍以下であり得る。前記有機無機複合多孔性層の厚さが上述した範囲を満足する場合、多孔性高分子基材による気孔閉塞効果を維持しながらも、釘が有機無機複合多孔性層を貫通して多孔性高分子基材を損傷させて短絡を起こすことを防止し易い。特に、前記有機無機複合多孔性層の厚さが前記多孔性高分子基材の厚さに対して1.1倍~3倍である場合、多孔性高分子基材の機械的強度を確保可能であり、かつ、釘による短絡をより容易に防止できる。
【0071】
本発明の一実施形態において、前記有機無機複合多孔性層の厚さは、5μm~15μm、6μm~12μm、または7μm~10μmであり得る。前記有機無機複合多孔性層の厚さが上述した範囲である場合、釘が厚い有機無機複合多孔性層を貫通して多孔性高分子基材を損傷させることを防止するとともに、セパレータが過剰に厚くなって電池の容量が減少し抵抗が増加することを防止し易い。
【0072】
このとき、前記多孔性高分子基材の厚さは、3μm以上、3.5μm以上、4.5μm以上、5μm以上、5.5μm以上、6.5μm以上、または9μm以上であり、10μm以下、9μm以下、6.5μm以下、5.5μm以下、5μm以下、4.5μm以下、または3.5μm以下であり得る。多孔性高分子基材の厚さが上述した範囲である場合、電池の使用中にセパレータが損傷され易い問題を防止できるとともに、多孔性高分子基材による気孔閉塞効果を維持することができ、セパレータが過剰に厚くなって電池の容量が減少し抵抗が増加することを防止し易い。
【0073】
本発明の一実施形態において、前記有機無機複合多孔性層が多孔性高分子基材の両面に位置する場合、前記有機無機複合多孔性層の厚さは、多孔性高分子基材の一面にそれぞれ位置する有機無機複合多孔性層の厚さを足した値に該当する。
【0074】
本明細書において、前記有機無機複合多孔性層の厚さは、サンプルの9箇所で測定したセパレータの厚さの平均値から多孔性高分子基材の厚さを引いて計算し得る。
【0075】
本発明の一実施形態において、前記有機無機複合多孔性層の重量は、前記セパレータの全体重量に対して50重量%~99%重量、または70重量%~90重量%であり得る。前記有機無機複合多孔性層の重量が上述した範囲である場合、セパレータ内で有機無機複合多孔性層の占める比重が高くて、釘が有機無機複合多孔性層を貫通して多孔性高分子基材を損傷させて短絡を起こすことをより容易に防止できる。
【0076】
前記有機無機複合多孔性層の重量は、セパレータの全体重量から多孔性高分子基材の重量を引いて計算し得る。
【0077】
本発明において、前記有機無機複合多孔性層の表面の算術平均粗さ(Ra)は100nm~500nmである。例えば、前記有機無機複合多孔性層の表面の算術平均粗さは、150nm以上、210nm以上、230nm以上、350nm以上、355nm以上、または390nm以上であり、420nm以下、390nm以下、355nm以下、350nm以下、230nm以下、または210nm以下であり得る。前記有機無機複合多孔性層の表面の算術平均粗さが上述した範囲を満足する場合、有機無機複合多孔性層の厚さが均一に形成されて電極とセパレータとの間の界面抵抗を最小化でき、充放電時にリチウムイオンが均一に移動して電池の寿命特性を向上させることができる。
【0078】
前記有機無機複合多孔性層の表面の算術平均粗さが100nm未満であると、有機無機複合多孔性層の気孔が非常に小さくなって抵抗が上昇する問題がある。
【0079】
前記有機無機複合多孔性層の表面の算術平均粗さが500nmを超過すると、有機無機複合多孔性層の気孔が非常に大きくなって電流が漏洩し易くなる。これにより、自己放電が起きる問題がある。
【0080】
本明細書において、「算術平均粗さ」は、開始点から順次に測定された表面での粗さ分布で、粗さ曲線の平均線方向に、
図1のように、基準長さLほどを抜き取って、平均線方向をx軸とし、高さ方向をy軸として、粗さ曲線を下記の数式1で表した値を称する。
【0081】
【0082】
前記算術平均粗さは、例えば、Nano System社製のoptical profiler(NV-2700)を用いて測定し得る。
【0083】
本発明の一実施形態によるリチウム二次電池用セパレータは、耐熱性が非常に優れ、従来のセパレータのメルトダウン温度よりも遥かに高い温度である190℃でもセパレータが破断されない。
【0084】
本発明の一実施形態において、前記セパレータは耐熱性が非常に優れ、190℃で1時間放置した後に測定した熱収縮率が機械方向(MD)及び直角方向(TD)においてそれぞれ10%以下、0.1%~10%、0.2%~7%、または0.5%~3%であり得る。
【0085】
本発明の一実施形態において、前記セパレータはBET比表面積が50m2/g~150m2/gである無機物粒子を含むことで光の散乱が容易であり、多孔性高分子基材を含むことでシャットダウン現象を起こす一方、セパレータが190℃で破断されず、25℃で1時間放置した後の光透過度と190℃で1時間放置した後の光透過度との比が1.2以上、2.0以上、1.2~20.0、または2.0~20.0であり得る。
【0086】
前記光透過度は、190nm~900nmの波長領域帯で測定可能な紫外線-可視光線分光光度測定装置(UV-vis Spectrometer)を用いて測定し得る。
【0087】
本発明の一実施形態において、前記セパレータの全体厚さは、8μm~25μm、11μm~21μm、または13μm~19μmであり得る。前記セパレータの厚さが上述した範囲を満足する場合、安全性を高めるとともに、セパレータが過剰に厚くなって電池の容量が減少し抵抗が増加することを容易に防止できる。
【0088】
本発明によるリチウム二次電池用セパレータは、下記の方法で製造され得るが、これに限定されない。
【0089】
本発明の一実施形態によるリチウム二次電池用セパレータの製造方法は、
多孔性高分子基材を用意する段階と、
BET比表面積が50m2/g~150m2/gである無機物粒子、及びバインダー高分子を含む有機無機複合多孔性層形成用スラリーを前記多孔性高分子基材の少なくとも一面にコーティング及び乾燥させて、前記多孔性高分子基材の厚さよりも厚い有機無機複合多孔性層を形成する段階と、を含み得る。
【0090】
前記多孔性高分子基材については上述した内容を参考する。前記多孔性高分子基材は、上述した物質から優れた通気性及び気孔度を確保するため、当業界に公知の通常の方法、例えば溶媒、希釈剤または気孔形成剤を使用する湿式法、または、延伸方法を使用する乾式法を通じて気孔を形成することで製造され得る。
【0091】
前記無機物粒子及びバインダー高分子については上述した内容を参考する。
【0092】
前記有機無機複合多孔性層形成用スラリーは、前記バインダー高分子をバインダー高分子に対する溶媒に溶解または分散させた後、前記無機物粒子を添加し分散させて製造し得るが、前記スラリー製造方法がこれに限定されることはない。
【0093】
前記バインダー高分子に対する溶媒は、バインダー高分子の種類に応じてバインダー高分子を溶解させる溶媒の役割をしてもよく、バインダー高分子を溶解させずに分散させる分散媒の役割をしてもよい。
【0094】
本発明の一実施形態において、前記バインダー高分子に対する溶媒は、N-メチル-2-ピロリドン、アセトン、メチルエチルケトン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、またはこれらのうちの二つ以上の有機溶媒、若しくは水であり得る。
【0095】
前記有機無機複合多孔性層形成用スラリーは、多孔性高分子基材の一面にコーティングされ得、前記スラリーをコーティングする方法の非制限的な例としては、ディップコーティング法、ダイコーティング法、ロールコーティング法、コンマコーティング法、マイクログラビアコーティング法、ドクターブレードコーティング法、リバースロールコーティング法、ダイレクトロールコーティング法などが挙げられる。
【0096】
本発明の一実施形態において、前記有機無機複合多孔性層形成用スラリーが多孔性高分子基材の少なくとも一面にコーティングされた後、当業界に周知の通常の方法でバインダー高分子に対する非溶媒を用いて相分離する段階をさらに含み得る。前記相分離段階は、前記有機無機複合多孔性層内に気孔構造を形成するために行われ得る。
【0097】
前記コーティングされたスラリーの乾燥は、通常のセパレータ製造時の乾燥方法によって行われ得る。例えば、前記コーティングされたスラリーの乾燥は、空気によって10秒~30分、30秒~20分、または3分~10分間行われ得る。乾燥時間が上記の範囲内である場合、生産性を阻害せず、且つ、残留溶媒を除去する効果を果たすことができる。
【0098】
前記リチウム二次電池用セパレータを正極と負極との間に介在してリチウム二次電池を製造し得る。
【0099】
前記リチウム二次電池は、リチウム金属二次電池、リチウムイオン二次電池、リチウムポリマー二次電池、またはリチウムイオンポリマー二次電池などを含み得る。
【0100】
本発明のリチウム二次電池用セパレータとともに適用される電極としては、特に制限されず、当業界で周知の通常の方法で電極活物質、導電材、及びバインダーを含む電極活物質層が電流集電体に結着した形態で製造され得る。
【0101】
前記電極活物質のうちの正極活物質の非制限的な例としては、リチウムコバルト複合酸化物(LiCoO2)、リチウムニッケル酸化物(LiNiO2)などの層状化合物、または、一つまたはそれ以上の遷移金属で置換された化合物;化学式Li1+xMn2-xO4(x=0~0.33)、LiMnO3、LiMn2O3、LiMnO2などのリチウムマンガン酸化物;リチウム銅酸化物(Li2CuO2);LiV3O5、LiV3O4、V2O5、Cu2V2O7などのバナジウム酸化物;化学式LiNi1-xMxO2(M=Co、Mn、Al、Cu、Fe、Mg、BまたはGa、x=0.01~0.3)で表されるNiサイト型リチウムニッケル酸化物;化学式LiMn2-xMxO2(M=Co、Ni、Fe、Cr、ZnまたはTa、x=0.01~0.1)またはLi2Mn3MO5(M=Fe、Co、Ni、CuまたはZn)で表されるリチウムマンガン複合酸化物;化学式のLiの一部がアルカリ土類金属イオンで置換されたLiMn2O4;ジスルフィド化合物;Fe2(MoO4)3などが挙げられるが、これらに限定されることはない。
【0102】
負極活物質の非制限的な例としては、従来のリチウム二次電池の負極に使用される通常の負極活物質が使用可能であり、特にリチウム金属またはリチウム合金、炭素、石油コークス(petroleum coke)、活性化炭素、グラファイト、またはその他の炭素類などのようなリチウム吸着物質などが使用され得る。
【0103】
正極電流集電体の非制限的な例としては、アルミニウム、ニッケルまたはこれらの組合せによって製造されるホイルなどがあり、負極電流集電体の非制限的な例としては、銅、金、ニッケルまたは銅合金、またはこれらの組合せによって製造されるホイルなどがある。
【0104】
本発明の一実施形態において、負極及び正極で使用される導電材は、通常それぞれの活物質層の全体重量を基準にして1重量%~30重量%で添加され得る。このような導電材は、当該電池に化学的変化を誘発せず導電性を有するものであれば特に制限されず、例えば、天然黒鉛や人造黒鉛などの黒鉛;アセチレンブラック、ケッチェンブラック、チャンネルブラック、ファーネスブラック、ランプブラック、サーマルブラックなどのカーボンブラック類;炭素繊維や金属繊維などの導電性繊維;フッ化カーボン、アルミニウム、ニッケル粉末などの金属粉末;酸化亜鉛、チタン酸カリウムなどの導電性ウィスカー;酸化チタンなどの導電性金属酸化物;ポリフェニレン誘導体などの導電性素材などが使用され得る。
【0105】
本発明の一実施形態において、負極及び正極で使用されるバインダーは、活物質と導電材などとの結合、及び集電体に対する結合を補助する成分であって、通常、それぞれの活物質層の全体重量を基準にして1重量%~30重量%で添加され得る。このようなバインダーの例としては、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、ポリアクリル酸(PAA)、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース(CMC)、澱粉、ヒドロキシプロピルセルロース、再生セルロース、ポリビニルピロリドン、テトラフルオロエチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-プロピレン-ジエンターポリマー(EPDM)、スルホン化EPDM、スチレンブタジエンゴム、フッ素ゴム、多様な共重合体などが挙げられる。
【0106】
本発明の一実施形態において、前記リチウム二次電池は、電解液を含み、前記電解液は有機溶媒及びリチウム塩を含むものであり得る。また、前記電解液としては、有機固体電解質、または無機固体電解質などが使用され得る。
【0107】
前記有機溶媒としては、例えば、N-メチル-2-ピロリドン、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、γ-ブチロラクトン、1,2-ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフラン、ジメチルスルホキシド、1,3-ジオキソラン、ホルムアミド、ジメチルホルムアミド、ジオキソラン、アセトニトリル、ニトロメタン、ギ酸メチル、酢酸メチル、リン酸トリエステル、トリメトキシメタン、ジオキソラン誘導体、スルホラン、メチルスルホラン、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン、プロピレンカーボネート誘導体、テトラヒドロフラン誘導体、エーテル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチルなどの非プロトン性有機溶媒が使用され得る。
【0108】
前記リチウム塩は、前記有機溶媒に溶解され易い物質であって、例えば、LiCl、LiBr、LiI、LiClO4、LiBF4、LiB10Cl10、LiPF6、LiCF3SO3、LiCF3CO2、LiAsF6、LiSbF6、LiAlCl4、CH3SO3Li、CF3SO3Li、(CF3SO2)2NLi、クロロボランリチウム、低級脂肪族カルボン酸リチウム、4-フェニルホウ酸リチウム、イミドなどが使用され得る。
【0109】
また、充放電特性、難燃性などの改善を目的として、前記電解液に、例えば、ピリジン、トリエチルホスファイト、トリエタノールアミン、環状エーテル、エチレンジアミン、n-グライム(glyme)、ヘキサリン酸トリアミド、ニトロベンゼン誘導体、硫黄、キノンイミン染料、N-置換オキサゾリジノン、N,N-置換イミダゾリジン、エチレングリコールジアルキルエーテル、アンモニウム塩、ピロール、2-メトキシエタノール、三塩化アルミニウムなどが添加され得る。場合によっては、不燃性を付与するため、四塩化炭素、三フッ化エチレンなどのハロゲン含有溶媒をさらに含んでもよく、高温保存特性を向上させるため、二酸化炭素ガスをさらに含んでもよい。
【0110】
前記有機固体電解質としては、例えば、ポリエチレン誘導体、ポリエチレンオキサイド誘導体、ポリプロピレンオキサイド誘導体、リン酸エステルポリマー、ポリエジテーションリシン(polyagitation lysine)、ポリエステルスルフィド、ポリビニルアルコール、ポリフッ化ビニリデン、イオン性解離基を含む重合体などが使用され得る。
【0111】
前記無機固体電解質としては、例えば、Li3N、LiI、Li5NI2、Li3N-LiI-LiOH、LiSiO4、LiSiO4-LiI-LiOH、Li2SiS3、Li4SiO4、Li4SiO4-LiI-LiOH、Li3PO4-Li2S-SiS2などのLiの窒化物、ハロゲン化物、硫酸塩などが使用され得る。
【0112】
前記電解液の注入は、最終製品の製造工程及び要求物性に応じて電池製造工程における適切な段階で行われ得る。すなわち、電池組み立ての前、または、電池組み立ての最終段階などで行われ得る。
【0113】
本発明の一実施形態において、前記リチウム二次電池用セパレータを電池に適用する工程としては、通常の工程である巻取(winding)の他にも、セパレータと電極との積層(lamination、stack)及び折畳み(folding)工程が適用可能である。
【0114】
本発明の一実施形態において、前記リチウム二次電池用セパレータは、リチウム二次電池の正極と負極との間に介在され、複数のセルまたは電極を集合させて電極組立体を構成するとき、隣接するセルまたは電極の間に介在され得る。前記電極組立体は、単なるスタック型、ゼリーロール型、スタックフォールディング型、ラミネーションスタック型などの多様な構造を有し得る。
【0115】
以下、本発明の理解を助けるため、実施例を挙げて詳しく説明する。しかし、本発明による実施例は多くの他の形態に変形され得、本発明の範囲が後述する実施例に限定されると解釈されてはならない。本発明の実施例は当業界で平均的な知識を持つ者に本発明をより完全に説明するために提供されるものである。
【0116】
実施例1
溶媒として水を、無機物粒子としてフュームドアルミナ(Evonik社製、Alu65、BET比表面積:65m2/g、1次粒子基準平均粒径(D50):24nm)を、分散剤としてクエン酸、バインダー高分子としてアクリル系水分散エマルション(東洋インキ社製、CSB-130)を使用し、これらを96:1:3の重量比で混合して有機無機複合多孔性層形成用スラリーを用意した。前記有機無機複合多孔性層形成用スラリーにおいて固形分は40%であった。
【0117】
多孔性高分子基材としてポリオレフィン多孔性フィルム(Asahi社製、ND506、厚さ:5.5μm)を用意し、多孔性高分子基材の両面に前記有機無機複合多孔性層形成用スラリーをディップコーティング法でコーティングした後、60℃で3分間乾燥してセパレータを製造した。
【0118】
このとき、前記多孔性高分子基材の一面に形成された有機無機複合多孔性層の厚さはそれぞれ5μmであり、多孔性高分子基材の両面に形成された有機無機複合多孔性層の厚さは総10μmであった。
【0119】
実施例2
無機物粒子をフュームドアルミナ(Cabot社、FA51、BET比表面積:51m2/g、1次粒子基準平均粒径(D50):23nm)に変更したことを除き、実施例1と同様にセパレータを製造した。
【0120】
このとき、前記多孔性高分子基材の一面に形成された有機無機複合多孔性層の厚さはそれぞれ5.0μmであり、多孔性高分子基材の両面に形成された有機無機複合多孔性層の厚さは総10μmであった。
【0121】
実施例3
多孔性高分子基材をポリオレフィン多孔性フィルム(Senior社、SW506、厚さ:6.5μm)に変更したことを除き、実施例1と同様にセパレータを製造した。
【0122】
このとき、前記多孔性高分子基材の一面に形成された有機無機複合多孔性層の厚さはそれぞれ5.0μmであり、多孔性高分子基材の両面に形成された有機無機複合多孔性層の厚さは総10μmであった。
【0123】
実施例4
有機無機複合多孔性層形成用スラリーの固形分を25%に変更したことを除き、実施例1と同様にセパレータを製造した。
【0124】
このとき、前記多孔性高分子基材の一面に形成された有機無機複合多孔性層の厚さはそれぞれ3.0μmであり、多孔性高分子基材の両面に形成された有機無機複合多孔性層の厚さは総6μmであった。
【0125】
実施例5
多孔性高分子基材としてのポリオレフィン多孔性フィルム(Asahi社、ND506、厚さ:5.5μm)を、123℃で機械方向(MD)及び直角方向(TD)にそれぞれ1.3倍にさらに延伸して最終厚さを3.5μmに薄膜化したことを除き、実施例1と同様にセパレータを製造した。
【0126】
このとき、前記多孔性高分子基材の一面に形成された有機無機複合多孔性層の厚さはそれぞれ5.0μmであり、多孔性高分子基材の両面に形成された有機無機複合多孔性層の厚さは総10μmであった。
【0127】
実施例6
実施例1で使用したスラリーを第1スラリーにして多孔性高分子基材の一面にマイクログラビア法で塗布した。その後、実施例1で使用した無機物粒子90重量%、粉砕型アルミナ(大韓セラミックス社、ALK-N1、BET比表面積:8.9m2/g、1次粒子基準平均粒径(D50):280nm)10重量%を混合したことを除いて第1スラリーと同様に製造したスラリーを第2スラリーにして多孔性高分子基材の他面にマイクログラビア法で塗布したことを除き、実施例1と同様にセパレータを製造した。
【0128】
前記第2スラリーに含まれた無機物粒子全体のBET比表面積は56m2/gであった。
【0129】
このとき、前記多孔性高分子基材の一面に形成された有機無機複合多孔性層の厚さはそれぞれ5.0μmであり、多孔性高分子基材の両面に形成された有機無機複合多孔性層の厚さは総10μmであった。
【0130】
実施例7
多孔性高分子基材としてのポリオレフィン多孔性フィルム(Senior社、SW506、厚さ:6.5μm)を、123℃で機械方向(MD)及び直角方向(TD)にそれぞれ1.2倍にさらに延伸して最終厚さを4.5μmに薄膜化したことを除き、実施例1と同様にセパレータを製造した。
【0131】
実施例8
実施例1で使用した無機物粒子95重量%、粉砕型アルミナ(大韓セラミックス社、ALK-N1、BET比表面積:8.9m2/g、1次粒子基準平均粒径(D50):280nm)5重量%を混合し、無機物粒子全体のBET比表面積を57m2/gに変更したことを除き、実施例1と同様にセパレータを製造した。
【0132】
このとき、前記多孔性高分子基材の一面に形成された有機無機複合多孔性層の厚さはそれぞれ5.0μmであり、多孔性高分子基材の両面に形成された有機無機複合多孔性層の厚さは総10μmであった。
【0133】
実施例9
無機物粒子をフュームドアルミナ(Evonik社、Alu130、BET比表面積:130m2/g、1次粒子基準平均粒径(D50):20nm)に変更したことを除き、実施例1と同様にセパレータを製造した。
【0134】
このとき、前記多孔性高分子基材の一面に形成された有機無機複合多孔性層の厚さはそれぞれ5.0μmであり、多孔性高分子基材の両面に形成された有機無機複合多孔性層の厚さは総10μmであった。
【0135】
実施例10
実施例9で使用した無機物粒子90重量%、粉砕型アルミナ(大韓セラミックス社、ALK-N1、BET比表面積:8.9m2/g、1次粒子基準平均粒径(D50):280nm)10重量%を混合し、無機物粒子全体のBET比表面積を115m2/gに変更したことを除き、実施例1と同様にセパレータを製造した。
【0136】
このとき、前記多孔性高分子基材の一面に形成された有機無機複合多孔性層の厚さはそれぞれ5.0μmであり、多孔性高分子基材の両面に形成された有機無機複合多孔性層の厚さは総10μmであった。
【0137】
比較例1
多孔性高分子基材としてポリオレフィン多孔性フィルム(Senior社、SW309H、厚さ:9μm)を使用したことを除き、実施例4と同様にセパレータを製造した。
【0138】
このとき、前記多孔性高分子基材の一面に形成された有機無機複合多孔性層の厚さはそれぞれ3μmであり、多孔性高分子基材の両面に形成された有機無機複合多孔性層の厚さは総6μmであった。
【0139】
比較例2
実施例9で使用した無機物粒子40重量%、粉砕型アルミナ(大韓セラミックス社、ALK-N1、BET比表面積:8.9m2/g、1次粒子基準平均粒径(D50):280nm)60重量%を混合し、無機物粒子全体のBET比表面積を58m2/gに変更したことを除き、実施例1と同様にセパレータを製造した。
【0140】
このとき、前記多孔性高分子基材の一面に形成された有機無機複合多孔性層の厚さはそれぞれ5.0μmであり、多孔性高分子基材の両面に形成された有機無機複合多孔性層の厚さは総10μmであった。
【0141】
比較例3
多孔性高分子基材を使用せず、厚さ20μmの離型処理されたPETフィルムの一面に有機無機複合多孔性層形成用スラリーをドクターブレード法でコーティングした後、80℃で5分間乾燥して厚さ15μmの有機無機複合多孔性層を形成し、前記PETフィルムから前記有機無機複合多孔性層を剥離することを除き、実施例1と同様にセパレータを製造した。
【0142】
比較例4
無機物粒子としてアルミナ(大韓セラミックス社、ALK-N1、BET比表面積:8.9m2/g、1次粒子基準平均粒径(D50):280nm)を使用したことを除き、実施例1と同様にセパレータを製造した。
【0143】
比較例5
無機物粒子としてアルミナ(大韓セラミックス社、ALK-N1、BET比表面積:8.9m2/g、1次粒子基準平均粒径(D50):280nm)とフュームドアルミナ(Evonik社、Alu65、BET比表面積:65m2/g、1次粒子基準平均粒径(D50):24nm)とを50:50で混合して使用したことを除き、実施例1と同様にセパレータを製造した。
【0144】
評価例1:セパレータの物性測定
実施例1~10及び比較例1~5で製造したセパレータの多孔性高分子基材の厚さ及び重量、有機無機複合多孔性層の厚さ及び重量、セパレータ全体厚さに対する有機無機複合多孔性層の厚さ、セパレータ全体重量に対する有機無機複合多孔性層の重量、有機無機複合多孔性層のBET比表面積、無機物粒子の平均粒径(D50)、及び有機無機複合多孔性層の表面の算術平均粗さ(Ra)を下記の表1に示した。
【0145】
(1)有機無機複合多孔性層の厚さ
有機無機複合多孔性層の厚さは、サンプルの9箇所で測定したセパレータの厚さの平均値から多孔性高分子基材の厚さを引いて計算した。
【0146】
(2)セパレータの全体重量に対する有機無機複合多孔性層の重量の測定
セパレータの全体重量は、単位面積(5cm×5cm)のサンプルで5回繰り返して測定したときの平均重量で測定し、有機無機複合多孔性層の重量はセパレータの全体重量を測定する方法と同じ方式で測定された多孔性高分子基材の重量をセパレータ全体の重量から引いて計算した。
【0147】
(3)BET比表面積の測定
無機物粒子のBET比表面積は、ASTM C1069の方法を用いて測定した。
【0148】
(4)有機無機複合多孔性層の表面の算術平均粗さ(Ra)
有機無機複合多孔性層の表面の算術平均粗さは、Nano System社のoptical profiler(NV-2700)を用いて次の方法で測定した。
【0149】
機械方向及び直角方向において各5cmの正方形状にセパレータのサンプルを裁断し、23℃に維持されるステージ上に載置した後、WSIフィルタで設定して表面算術平均粗さを測定した。その後、Nanomapプログラムを用いて表面算術平均粗さを算出し、同じ測定を5回繰り返して中央値を代表値として提示した。
【0150】
【0151】
評価例2:セパレータの安全性測定
実施例1~10及び比較例1~5で製造したセパレータに対する190℃における機械方向(MD)及び直角方向(TD)の熱収縮率、釘貫通安全性、過充電安全性、及びHi-potテスト結果を下記の表2に示した。
【0152】
釘貫通安全性及び過充電安全性の結果は、電池の発火が発生しない場合を○、発火が発生する場合を×で示した。
【0153】
(1)190℃における機械方向(MD)及び直角方向(TD)の熱収縮率
実施例1~10及び比較例1~5で製造したセパレータに対する190℃における機械方向(MD)及び直角方向(TD)の熱収縮率は、実施例1~10及び比較例1~5で製造したセパレータをそれぞれMD10cm×TD10cmの正方形状に裁断し、190℃に維持される恒温オーブンに1時間放置した後、変化する長さを定木で測定して確認した。
【0154】
(2)釘貫通安全性の測定
実施例1~10及び比較例1~5で製造したセパレータを使用してリチウム二次電池を製作した。該リチウム二次電池を4.2V電圧下で満充電し、直径2.5mmの釘(nail)を用いて電池の中央を貫通させた後、発火如何を観察した。発火が起きない場合を○、発火が起きた場合を×で示した。
【0155】
リチウム二次電池は、下記のように製作した。
【0156】
負極の製造
負極活物質として人造黒鉛(Shanshan社、QCG-X)、導電材としてデンカブラック、バインダーとして水分散エマルション(Zeon社、BM-L301)、分散剤としてCMC(Daicel社2200)を96.0:0.2:1.2:2.3の重量比で混合し、溶媒である水を添加して負極スラリーを製造した。
【0157】
前記負極スラリーを3.8mAh/cm2のローディング量で銅集電体にコーティング及び乾燥して負極を用意した。
【0158】
正極の製造
正極活物質としてLiNi0.8Co0.1Mn0.1O2、導電材としてデンカブラック、バインダーとしてポリフッ化ビニリデン(PVdF)を96:2:2の重量比で溶媒であるN-メチル-2-ピロリドン(NMP)に添加し、正極活物質スラリーを用意した。前記正極活物質スラリーをシート状のアルミニウム集電体上にコーティングし乾燥して、最終的な正極ローディング量が3.4mAh/cm2になるように正極活物質層を形成した。
【0159】
リチウム二次電池の製造
上記のように製作した負極と正極との間に、実施例及び比較例のセパレータをそれぞれ介在させ、非水電解液(1M LiPF6、エチレンカーボネート(EC)/プロピレンカーボネート(PC)/ジエチルカーボネート(DEC))(体積比:3:3:4)を注入してリチウム二次電池を製作した。
【0160】
(3)過充電安全性の測定
実施例1~10及び比較例1~5で製造したセパレータを使用してリチウム二次電池を製作し、前記リチウム二次電池を4.2V電圧下で満充電した後、満充電された電池を常温で0.2Cの定電流で充電し、電圧が8.5Vに到達する時点、または充電量が設計容量の200%になる時点まで充電し続けて過充電安全性を測定した。過充電安全性を満足した場合を○、過充電安全性を満足していない場合を×で示した。
【0161】
リチウム二次電池の制作方法は、上述した通りである。
【0162】
(4)Hi-potテスト
実施例1~10及び比較例1~5で製造したセパレータサンプルの上下に導電板を設け、ランプオン(ramp on)条件で1000Vで電流が流れない場合を○、電流が流れる場合を×で示した。
【0163】
【0164】
表2から、実施例1~10で製造したセパレータは190℃におけるMD及びTD方向の熱収縮率、釘貫通安全性、過充電安全性、及びHi-potテストの結果がすべて優れることを確認できる。
【0165】
一方、比較例1で製造したセパレータは、有機無機複合多孔性層の厚さが多孔性高分子基材よりも薄いため、釘貫通安全性が確保されないことが確認できる。また、190℃におけるMD及びTD方向の熱収縮率も劣ることが確認できる。
【0166】
比較例2で製造したセパレータは、有機無機複合多孔性層の表面の算術平均粗さが100nm~500nmを満たさないため釘貫通安全性及び過充電安全性が確保されず、Hi-potテストをパスできなかったことが確認できる。また、190℃におけるMD及びTD方向の熱収縮率も劣ることが確認できる。
【0167】
比較例3で製造したセパレータは、多孔性高分子基材を含まないため過充電安全性が確保されず、Hi-potテストをパスできなかったことが確認できる。
【0168】
比較例4及び比較例5で製造したセパレータは、無機物粒子のBET比表面積が50m2/g未満であるため釘貫通安全性が確保されず、190℃におけるMD及びTD方向の熱収縮率が劣ることが確認できる。