(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-27
(45)【発行日】2024-06-04
(54)【発明の名称】バイポーラ型蓄電池の製造方法
(51)【国際特許分類】
H01M 10/18 20060101AFI20240528BHJP
H01M 4/68 20060101ALI20240528BHJP
H01M 10/04 20060101ALI20240528BHJP
H01M 10/12 20060101ALI20240528BHJP
H01M 50/103 20210101ALI20240528BHJP
H01M 4/64 20060101ALI20240528BHJP
【FI】
H01M10/18
H01M4/68 A
H01M10/04 Z
H01M10/12 K
H01M10/12 M
H01M50/103
H01M4/64 A
(21)【出願番号】P 2022581215
(86)(22)【出願日】2021-12-20
(86)【国際出願番号】 JP2021047000
(87)【国際公開番号】W WO2022172595
(87)【国際公開日】2022-08-18
【審査請求日】2023-02-21
(31)【優先権主張番号】P 2021020218
(32)【優先日】2021-02-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000005290
【氏名又は名称】古河電気工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000005382
【氏名又は名称】古河電池株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103850
【氏名又は名称】田中 秀▲てつ▼
(74)【代理人】
【識別番号】100115679
【氏名又は名称】山田 勇毅
(74)【代理人】
【識別番号】100066980
【氏名又は名称】森 哲也
(72)【発明者】
【氏名】田中 広樹
(72)【発明者】
【氏名】中島 康雄
(72)【発明者】
【氏名】須山 健一
(72)【発明者】
【氏名】田中 彰
(72)【発明者】
【氏名】平 芳延
(72)【発明者】
【氏名】廣田 憲治
【審査官】小森 重樹
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2009/0053601(US,A1)
【文献】特開平02-306549(JP,A)
【文献】特開昭56-149776(JP,A)
【文献】特開昭48-002031(JP,A)
【文献】特表2014-529175(JP,A)
【文献】特開平10-264255(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/00-04、06-34
H01M 4/64-84
H01M 50/10-198
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方の面に正極が設けられて他方の面に負極が設けられたバイポーラプレートと、前記バイポーラプレートの周縁部に設けられる内部リムと、から構成される内部用フレームユニットと、
対向する前記バイポーラプレートとの間でセルを構成するエンドプレートと、前記エンドプレートの周縁部に設けられる端部リムと、から構成される端部用フレームユニットと、を備え、
前記内部用フレームユニットが複数積層されると共に、積層方向両端側に前記端部用フレームユニットが配設され、
隣接する前記内部リム間及び隣接する前記内部リムと前記端部リムとの間
を溶着
する工程を含むバイポーラ型蓄電池
の製造方法であって、
前記バイポーラプレートは、前記一方の面と前記他方の面とを有して連通し、正極用集電体と負極用集電体とをその内部を介して接合させる連通穴が設けられるとともに、熱可塑性樹脂からなる前記内部リムの内側に一体化されており、
隣接する前記内部リム間及び隣接する前記内部リムと前記端部リムとの間を溶着する工程において、前記間の溶着の深さを示す値に対する、前記内部リム又は前記端部リムの幅の値の比率が、2.7倍以上16.0倍以下
となるように溶着することを特徴とするバイポーラ型蓄電池
の製造方法。
【請求項2】
前記バイポーラプレートの厚みを示す値に対する、前記内部リム又は前記端部リムの幅の値の比率が、2.0倍以上3.5倍以下であることを特徴とする請求項1に記載のバイポーラ型蓄電池
の製造方法。
【請求項3】
前記正極は
前記正極用集電体を、前記負極は
前記負極用集電体をそれぞれ備え、前記正極用集電体および前記負極用集電体は、鉛又は鉛合金からなることを特徴とする請求項1
または請求項2に記載のバイポーラ型蓄電池
の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施の形態は、バイポーラ型蓄電池の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、太陽光や風力等の自然エネルギーを利用した発電設備が増えている。このような発電設備においては、発電量を制御することができないことから、蓄電池を利用して電力負荷の平準化を図るようにしている。すなわち、発電量が消費量よりも多いときには差分を蓄電池に充電する一方、発電量が消費量よりも小さいときには差分を蓄電池から放電するようにしている。上述した蓄電池としては、経済性や安全性等の観点から、鉛蓄電池が多用されている。
【0003】
このような鉛蓄電池では、例えば、額縁形をなす樹脂からなるフレーム(リム)の内側に、樹脂からなる基板(バイポーラプレート)が設けられており、基板の一方の面及び他方の面には、正極用鉛層及び負極用鉛層が配設されている。正極用鉛層には、正極用活物質層が隣接している。負極用鉛層には、負極用活物質層が隣接している。また、額縁形をなす樹脂からなるスペーサの内側には、電解液を含有するガラスマット(電解層)が配設されている。そして、フレームとスペーサとが交互に複数積層されて組み付けられている。
【0004】
さらに正極用鉛層と負極用鉛層とは、基板に複数形成された穿孔の内部で直接的に接合されている。すなわち、一方の面側と他方の面側とを連通させる穿孔(連通孔)を有する基板とセル部材とが交互に複数積層された双極(バイポーラ)型鉛蓄電池である。セル部材は、正極用鉛層に正極用活物質層を設けた正極と、負極用鉛層に負極用活物質層を設けた負極と、正極と負極との間に介在する電解層と、を有し、一方のセル部材の正極用鉛層と他方のセル部材の負極用鉛層とが基板の穿孔の内部に没入されて接合されることにより、セル部材同士が直列に接続されたものとなっている。
【0005】
ここでフレームとスペーサとの接合に際しては、以下の特許文献1に記載されているように、例えば超音波を用いた溶接が行われる。また、外部から接合部分に応力が加わらないように外装ケースの内部に収容されることでバイポーラ型蓄電池が構成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、このような構成で気密性や機械的強度を保持することとすると、場合によっては接合における強度を補うべく他の部品を用いる必要が出てくる等、バイポーラ型蓄電池を構成する部品点数が多くなってしまうことがあり得る。一方で、やみくもに部品点数を削減してしまうと、例えば、電解液が電池外部に漏洩してしまう等、外部応力に対する機械的強度の不足に起因した問題が生じてしまう可能性もある。
【0008】
本発明は、セル部材を保持する各プレートを強固に接合することで、電解液が外部に漏洩してしまうことや機械的強度が低下することを防止してセル内部の気密性や機械的強度を確保するとともに、部品点数を減らしつつコンパクト化を図ることができるバイポーラ型蓄電池の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様に係るバイポーラ型蓄電池の製造方法は、一方の面に正極が設けられて他方の面に負極が設けられたバイポーラプレートと、バイポーラプレートの周縁部に設けられる内部リムと、から構成される内部用フレームユニットと、対向するバイポーラプレートとの間でセルを構成するエンドプレートと、エンドプレートの周縁部に設けられる端部リムと、から構成される端部用フレームユニットと、を備え、内部用フレームユニットが複数積層されると共に、積層方向両端側に端部用フレームユニットが配設され、隣接する内部リム間及び隣接する内部リムと端部リムとを溶着する工程を含むバイポーラ型蓄電池の製造方法であって、バイポーラプレートは、一方の面と他方の面とを有して連通し、正極用集電体と負極用集電体とをその内部を介して接合させる連通穴が設けられるとともに、熱可塑性樹脂からなる内部リムの内側に一体化されており、隣接する内部リム間及び隣接する内部リムと端部リムとを溶着する工程において、間の溶着の深さを示す値に対する、内部リム又は端部リムの幅の値の比率が、2.7倍以上16.0倍以下となるように溶着することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、セル部材を保持する各プレートを強固に接合することができるので、電解液が外部に漏洩してしまうことや機械的強度が低下することを防止してセル内部の気密性や機械的強度を確保するとともに、部品点数を減らしつつコンパクト化を図ることができるバイポーラ型蓄電池の製造方法を提供することができる。
【0011】
具体的には、内部用フレームユニットと端部用フレームユニットとを溶着して積層する際に、溶着の深さを示す値に対する、内部リム又は端部リムの幅L1の値の比率が、2.7倍以上16.0倍以下とする。このような比率の下で接合を行うことによって、内部用フレームユニットと端部用フレームユニットとが強固に接合される。そのため、電解液が外部に漏洩してしまうことや機械的強度が低下することを防止してセル内部の気密性や機械的強度を確保することができる。
【0012】
また、バイポーラ型蓄電池を構成するに必須の構成要素のみを用いてバイポーラ型蓄電池の気密性や機械的強度を確保することができるので、部品点数を減らしつつコンパクト化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の実施の形態に係るバイポーラ型鉛蓄電池の構造の概略を示す概略断面図である。
【
図2】本発明の実施の形態に係るバイポーラ型鉛蓄電池において、特に内部用フレームユニットの構造を拡大して示す断面図である。
【
図3】本発明の実施の形態において用いられる溶着に関して、溶着の深さを説明する説明図である。
【
図4】本発明の実施の形態に関して得られた試験結果を示すグラフである。
【
図5】本発明の実施の形態に関して得られた試験結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。なお、以下に説明する実施の形態は、本発明の一例を示したものである。また、本実施の形態には種々の変更又は改良を加えることが可能であり、その様な変更又は改良を加えた形態も本発明に含まれ得る。この実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると共に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。なお、以下においては、様々な蓄電池の中から鉛蓄電池を例に挙げて説明する。
【0015】
本発明の実施の形態に係るバイポーラ型鉛蓄電池について、
図1を参照して説明する。
図1は、本発明の実施の形態に係るバイポーラ型鉛蓄電池1の構造の概略を示す概略断面図である。
【0016】
図1に示すバイポーラ型鉛蓄電池1は、内部用フレームユニット(フレームユニット)11と、第1の端部用フレームユニット12(フレームユニット)と、内部用フレームユニット11を挟んで第1の端部用フレームユニット12に対向する位置に配置される第2の端部用フレームユニット(フレームユニット)13とを備えている。
【0017】
そして、内部用フレームユニット11が第1の端部用フレームユニット12と第2の端部用フレームユニット13との間に複数積層されることによって、例えば、略直方体形状をなすバイポーラ型鉛蓄電池1が構成される。積層される内部用フレームユニット11の個数は、バイポーラ型鉛蓄電池1の蓄電容量が所望の数値になるように設定される。
【0018】
また、第1の端部用フレームユニット12には負極端子107が固定されており、当該第1の端部用フレームユニット12に固定された負極110と負極端子107とが電気的に接続されている。一方、第2の端部用フレームユニット13には正極端子108が固定されており、当該第2の端部用フレームユニット13に固定された正極120と正極端子108とが電気的に接続されている。
【0019】
内部用フレームユニット11は、平面形状が長方形で一方の面上に正極120が設けられ、他方の面上に負極110が設けられる基板(以下、このような基板を適宜、「バイポーラプレート」と表す)111と、バイポーラプレート111の周縁部に設けられる、例えば、四角状の枠形(額縁形)の内部リム112とを備える。
【0020】
内部用フレームユニット11のバイポーラプレート111は、セル部材130の積層方向(
図1における上下方向)で隣り合うセル部材130の間に配置されている。各内部用フレームユニット11の各内部リム112は、セル部材130の積層方向(
図1における上下方向)で互いに対向する接合面112aを備えている。
【0021】
バイポーラプレート111は内部リム112の内側に一体化されている。また、バイポーラプレート111は、内部リム112の厚さ方向(
図1における上下方向)の中程に位置している。内部リム112は、バイポーラプレート111の厚さよりも厚い厚さとなっている。
【0022】
内部用フレームユニット11は、熱可塑性樹脂(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリメチルメタクリレート(アクリル樹脂)、アクリルニトリルーブタンジエンースチレン共重合体(ABS)、ポリアミド(ナイロン)、ポリカーボネート等)で形成されている。これらの熱可塑性樹脂は、成形性が優れているとともに耐硫酸性も優れている。よって、例えばバイポーラプレート111に電解液が接触したとしても、バイポーラプレート111に分解、劣化、腐食等が生じにくい。
【0023】
バイポーラプレート111には、一方の面と他方の面とを連通させる図示しない連通孔が設けられている。そして、当該連通孔の内部を介して正極用鉛層101と負極用鉛層102とが接合されることによって、両者が電気的に接続され、正極120と負極110との導通が図られる。
【0024】
正極120は、鉛又は鉛合金からなり且つバイポーラプレート111の一方の面の上に配置される正極用鉛層101と、正極用鉛層101の上に配置される正極用活物質層103と、を備えている。この正極用鉛層101は、バイポーラプレート111の一方の面と正極用鉛層101の間に設けられる、図示しない接着剤等の接着層によってバイポーラプレート111の一方の面に接着されている。従って、バイポーラプレート111の一方の面(
図1等の図面においては、紙面における下方を向く面)の上に、接着層、正極用鉛層101、正極用活物質層103が、この記載順に積層されている。
【0025】
負極110は、鉛又は鉛合金からなり且つバイポーラプレート111の他方の面(
図1等の図面においては、紙面における上方を向く面)の上に配置される負極用鉛層102と、負極用鉛層102の上に配置される負極用活物質層104と、を備えている。この負極用鉛層102は、バイポーラプレート111の他方の面と負極用鉛層102の間に設けられる、図示しない接着剤等の接着層によってバイポーラプレート111の他方の面に接着されている。そしてこれら正極120と負極110は、上述した連通孔を介して電気的に接続されている。
【0026】
第1の端部用フレームユニット12は、平面形状が長方形の第1のエンドプレート121と、第1のエンドプレート121の周縁部に設けられる、例えば、四角状の枠形(額縁形)の第1の端部リム122とからなる。第1のエンドプレート121は第1の端部リム122の内側に一体化されている。第1の端部用フレームユニット12も、耐硫酸性を有する熱可塑性樹脂製である。
【0027】
第1の端部用フレームユニット12は、バイポーラ型鉛蓄電池1の一方端側(
図1における下方端側)において、セル部材130の側面と負極110側を囲うものである。第1のエンドプレート121がセル部材130の負極110側を囲い、第1の端部リム122が、セル部材130の側面を囲っている。
【0028】
第1のエンドプレート121は、内部用フレームユニット11のバイポーラプレート111と平行に配置され、第1の端部リム122は、隣に位置する内部用フレームユニット11の内部リム112と接するように配列されている。つまり、第1の端部リム122は、セル部材130の積層方向(
図1における上下方向)で、内部用フレームユニット11の内部リム112と対向する接合面122aを備えている。
【0029】
第1のエンドプレート121は、バイポーラプレート111の厚さよりも厚い厚さとなっている。第1の端部リム122は、第1のエンドプレート121の厚さよりも厚い厚さとなっている。第1のエンドプレート121は、第1の端部リム122の厚さ方向(
図1における上下方向)で一方端(
図1における下方端)に位置するように設定されている。
【0030】
そして、第1のエンドプレート121の他方の面上には、負極用鉛層102が設けられている。第1のエンドプレート121上の負極用鉛層102には、負極用活物質層104が設けられている。第1のエンドプレート121上の負極用活物質層104と、対向するバイポーラプレート111の正極用活物質層103との間には、硫酸等の電解液が含浸されたガラス繊維マット等からなる電解層105が設けられている。
【0031】
第2の端部用フレームユニット13は、平面形状が長方形の第2のエンドプレート131と、第2のエンドプレート131の周縁部に設けられる、例えば、四角状の枠形(額縁形)の第2の端部リム132とからなる。第2のエンドプレート131は第2の端部リム132の内側に一体化されている。第2の端部用フレームユニット13も耐硫酸性を有する熱可塑性樹脂製である。
【0032】
第2の端部用フレームユニット13は、バイポーラ型鉛蓄電池1の他方端側(
図1における上方端側)において、セル部材130の側面と正極120側を囲うものである。第2のエンドプレート131がセル部材130の正極120側を囲い、第2の端部リム132が、セル部材130の側面を囲っている。
【0033】
第2のエンドプレート131は、内部用フレームユニット11のバイポーラプレート111と平行に配置され、第2の端部リム132は、隣に位置する内部用フレームユニット11の内部リム112と接するように配列されている。つまり、第2の端部リム132は、セル部材130の積層方向(
図1における上下方向)で、内部用フレームユニット11の内部リム112と対向する接合面132aを備えている。
【0034】
第2のエンドプレート131は、バイポーラプレート111の厚さよりも厚い厚さとなっている。第2の端部リム132は、第2のエンドプレート131の厚さよりも厚い厚さとなっている。第2のエンドプレート131は、第2の端部リム132の厚さ方向(
図1における上下方向)で他方端(
図1における上方端)に位置するように設定されている。
【0035】
第2のエンドプレート131の一面上には、正極用鉛層101が設けられている。第2のエンドプレート131上の正極用鉛層101には、正極用活物質層103が設けられている。第2のエンドプレート131上の正極用活物質層103と、対向するバイポーラプレート111の負極用活物質層104との間には、上述した電解層105が設けられている。
【0036】
このような構成を有する本発明の実施の形態のバイポーラ型鉛蓄電池1においては、上述したように、バイポーラプレート111、正極用鉛層101、正極用活物質層103、負極用鉛層102、及び負極用活物質層104によって、バイポーラ電極140が構成されている。バイポーラ電極とは、1枚の電極で正極、負極両方の機能を有する電極である。そして、本発明の実施の形態のバイポーラ型鉛蓄電池1は、正極120と負極110との間に電解層105を介在させてなるセル部材130を交互に複数積層して組み付けることにより、セル部材130同士を直列に接続した電池構成を有している。
【0037】
上述したセル部材130は、
図1に示すように、積層方向(
図1における上下方向)に、間隔を空けて積層して配置されている。そして、内部用フレームユニット11、第1の端部用フレームユニット12、及び第2の端部用フレームユニット13は、複数のセル部材130を個別に収容する複数のセル(空間)Cを形成する。
【0038】
そして、積層方向に隣接するセル部材130同士は電気的に直列に接続されている。このため、積層方向に隣接するセル部材130同士の間に介在するバイポーラプレート111は、正極用鉛層101と負極用鉛層102とを電気的に接続する、上述した連通孔が設けられている。
【0039】
また、隣接する内部用フレームユニット11の内部リム112の接合面112a間、第1の端部用フレームユニット12の端部リム122の接合面122aと隣接する内部用フレームユニット11の内部リム112の接合面112aとの間、第2の端部用フレームユニット13の端部リム132の接合面132aと隣接する内部用フレームユニット11の内部リム112の接合面112aとの間は、それぞれ溶着接合されている。
【0040】
ここで、溶着の方法としては、例えば、振動溶着、超音波溶着、熱板溶着といった、各種溶着の方法を挙げることができる。このうち振動溶着は、接合の際に接合の対象となる面を加圧しながら振動させることで溶着するものであり、溶着のサイクルが早く、再現性も良い。そこでより好適には、振動溶着が用いられる。
【0041】
ここで
図2は、本発明の実施の形態に係るバイポーラ型鉛蓄電池1において、特に内部用フレームユニット11の構造を拡大して示す断面図である。すなわち、
図2に示す内部用フレームユニット11は、図面方向下から積層された内部用フレームユニット11にさらに積層する形で接合される。
【0042】
具体的には、隣接する内部用フレームユニット11の内部リム112の接合面112a同士を接合するに当たって振動溶着を行い、一方の接合面112aを他方の接合面112aに対して押圧し、振動させて摩擦熱を発生させ、一方の接合面112aと他方の接合面112aとを溶融接合させる。
【0043】
さらに本実施形態おいては、振動溶着を行う際の溶着の深さと内部リム112の幅との間に以下の関係が成り立つように溶着の深さの値を設定している。
【0044】
ここで溶着の深さについて、
図3を用いて説明する。
図3は、本発明の実施の形態において用いられる溶着に関して、溶着の深さを説明する説明図である。
図3では、上下に示される2つの部材を振動溶着を用いて溶着する様子を示しており、左から(a)接触時、(b)振動溶着中、(c)溶着後、を示している。すなわち、(a)から(c)に向けて溶着処理の推移が示されている。なお、以下の説明においては、適宜上側の部材を「上部材」、下側の部材を「下部材」と表す。
【0045】
(a)では、上部材と下部材とが接触した状態が示されている。この状態ではまだ振動溶着は行われておらず、ただ上部材と下部材とが接触しているだけである。また、
図3においては、上部材の端部と下部材の端部のそれぞれに破線を引いている。すなわち、破線と破線との間が溶着前の上部材と下部材との高さ、ということになる。
【0046】
この状態から、上部材及び下部材の両者を上下方向に加圧しつつ、部材を振動させる。但し、振動させる部材は上部材、下部材のいずれでもよく、或いは、両者であっても良い。
図3(b)の矢印に示すように、ここでは上部材を振動させる。この際、下部材は固定されている。上部材が振動することにより上部材と下部材とが接触する接合部において摩擦による剪断発熱が生じ、上部材と下部材とが溶着する。なお、振動溶着を行う際の条件としては、周波数、振幅、時間、応力等を挙げることができる。
【0047】
このように上部材と下部材とは互いの接合面が溶けることによって接合される。そのため、(c)に示すように、接合後には接合面が溶けることによって、上部材と下部材との高さが接合前に比べて短くなる。この接合前の上部材と下部材との高さと接合後の上部材と下部材との高さの差が、
図3において符号Wで示される溶着の深さである。この溶着の深さも上述した振動溶着を行う際の条件の1つであり、本実施の形態において以下のように設定する。
【0048】
すなわち、隣接するリム間の溶着の深さを示す値wに対する、内部リム112、或いは、第1の端部リム122及び第2の端部リム132(以下、第1の端部リム122と第2の端部リム132とをまとめて表す際には、「端部リム」と表す。)の幅の値L1の比率を2.7倍以上16.0倍以下となるように設定している。
【0049】
この比率は、振動溶着を行う際に設定される条件の1つである。この比率が上記範囲外であると、十分な溶着強度を得ることが難しくなってしまう。
【0050】
上記比率は、引張試験を行って、破断強度を未溶着の破断強度から引張強度維持率を算出することで導き出すことができる値である。具体的には、引張試験を行うためのサンプルを用意した後、引張試験機を用いて、引張速度から標線間を除して求められる歪速度が0.285min-1となるようにサンプルを引っ張り、引張破断力から断面積計算を行って強度を求めたものである。上述した隣接するリム間の溶着の深さを示す値wに対する、内部リム、或いは、端部リムの幅の値L1の比率は、維持率が80%以上となった値である。
【0051】
具体的には、以下の表1に示す通りである。表1において左欄には溶着の深さを示す値wに対するリムの幅の値の比率、すなわち、リムの幅(L1)/溶着の深さ(w)が示されている。一方、右欄には上記各比率に対応する引張強度維持率(%)が示されている。
【0052】
【0053】
表1によると、引張強度維持率(%)が80%を超える溶着の深さを示す値wに対するリムの幅の値の比率は、2.7倍以上16.0倍以下である。また、この関係をグラフに表すと
図4の通りである。
【0054】
図4は、本発明の実施の形態に関して得られた引張試験の試験結果を示すグラフである。
図4に示すグラフにおいて横軸は溶着の深さを示す値wに対するリムの幅の値の比率を示している。一方縦軸は当該比率に対応する引張強度維持率(%)が示されている。グラフでは上述した引張強度維持率(%)が80%を示す横軸を強調して示しているが、グラフに現れているように、引張強度維持率(%)が80%を超える溶着の深さを示す値wに対するリムの幅の値の比率は、2.7倍以上16.0倍以下である。
【0055】
また、ここでは溶着の深さを示す値wに対する、内部リム又は端部リムの幅の値L1の比率が、2.7倍以上16.0倍以下としたが、特に、2.7以上8.0以下の比率となるように溶着の深さを設定すると好ましい。
【0056】
なお、この比率については、内部用フレームユニット11の内部リム112同士の間の溶着接合の場合のみならず、内部リム112と第1の端部用フレームユニット12を構成する第1の端部リム122との間の溶着接合の場合や、内部リム112と第2の端部用フレームユニット13を構成する第2の端部リム132との間の溶着接合の場合にも適用される。
【0057】
また、内部リム、或いは、端部リムの幅の値L1においては、さらにバイポーラプレート111の厚みとの関係を考慮することができる。ここでバイポーラプレート111の厚みとは、正極120が設けられる一方の面と負極110が設けられる他方の面との間、
図2において符号L2で示す値である。具体的には、バイポーラプレート111の厚みを示す値L2に対する内部リム112の幅の値L1の比率が、2.0倍以上3.5倍以下である。
【0058】
このようなバイポーラプレート111の厚みを示す値L2に対する内部リム112の幅の値L1の比率と引張強度維持率(%)との関係を示すのが、以下に示す表2である。
【0059】
【0060】
表2において左欄にはバイポーラプレート111の厚みを示す値L2に対する内部リム112の幅の値L1の比率、すなわち、L1/L2が示されている。一方、右欄には上記各比率に対応する引張強度維持率(%)が示されている。表2に示されているように、引張強度維持率(%)が80%を超える値を示すのは、上記比率が2.0倍以上3.5倍以下のときである。
【0061】
そして当該表2をグラフで表すと
図5の通りである。
図5は、本発明の実施の形態に関して得られた試験結果を示すグラフである。
図4と同様に、引張強度維持率(%)が80%を示す横軸を強調して示しているが、引張強度維持率(%)が80%を超えるのは上記比率が2.0倍以上3.5倍以下のときである。
【0062】
上記比率が、3.5倍以上であると、強度の低下を引き起こし易くなって好ましくなく、2.0倍以下であると、放熱し難くなって好ましくない。他方、上記比率が、2.0倍以上3.5倍以下であると、強度低下の抑制及び放熱性の低下を抑制しつつ、軽量化及び小型化を図ることができ、高エネルギー密度のバイポーラ型蓄電池を提供することができるので、非常に好ましい。
【0063】
なお、ここでリムの幅の値L1は、
図2を示して説明しているため、内部用フレームユニット11における内部リム112の幅を例に挙げているが、リムの幅の値L1は、第1の端部用フレームユニット12の第1の端部リム122の幅の値、或いは、第2の端部用フレームユニット13の第2の端部リム132の幅の値であっても同様である。
【0064】
また、リム幅については様々な長さがあるが、好適には例えば、2.0mmから10.0mmの範囲の中から選択することができる。
【0065】
以上説明した通り、リム間を上述した比率の下で接合することによって、また、当該接合が行われる際における、リムの厚みとバイポーラプレートの厚みとを上述した比率を満たすように設定することによって、セル部材を保持する各プレートを強固に接合することができる。そして各プレートが強固に接合されることによって、電解液が外部に漏洩してしまうことや機械的強度が低下することを防止してセル内部の気密性や機械的強度を確保することができる。
【0066】
また、バイポーラ型蓄電池を構成するに必須の構成要素のみを用いてバイポーラ型蓄電池の気密性や機械的強度を確保することができるので、部品点数を減らしつつコンパクト化を図ることができる。
【0067】
また、上述したように、本発明の実施の形態においては双極型鉛蓄電池を例に挙げて説明した。但し、集電体に鉛ではなく他の金属(例えば、アルミニウム、銅、ニッケル)や合金、導電性樹脂を用いるような他の蓄電池においても上記説明内容が当てはまる場合には、当然その適用を排除するものではない。
【符号の説明】
【0068】
1・・・バイポーラ型鉛蓄電池
11・・・内部用フレームユニット
12・・・第1の端部用フレームユニット
13・・・第2の端部用フレームユニット
101・・・正極用鉛層
102・・・負極用鉛層
103・・・正極用活物質層
104・・・負極用活物質層
105・・・電解層
110・・・負極
111・・・バイポーラプレート
112・・・リム
120・・・正極
121・・・第1のエンドプレート
122・・・第1の端部リム
130・・・セル部材
131・・・第2のエンドプレート
132・・・第2の端部リム
140・・・バイポーラ電極