(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-28
(45)【発行日】2024-06-05
(54)【発明の名称】粒子状挽肉入りソースの製造方法
(51)【国際特許分類】
A23L 23/00 20160101AFI20240529BHJP
A23L 13/00 20160101ALI20240529BHJP
A23L 27/00 20160101ALI20240529BHJP
A23L 7/109 20160101ALN20240529BHJP
【FI】
A23L23/00
A23L13/00 Z
A23L27/00 D
A23L7/109 E
(21)【出願番号】P 2021537335
(86)(22)【出願日】2020-08-05
(86)【国際出願番号】 JP2020029948
(87)【国際公開番号】W WO2021025046
(87)【国際公開日】2021-02-11
【審査請求日】2023-01-26
(31)【優先権主張番号】P 2019144019
(32)【優先日】2019-08-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】398012306
【氏名又は名称】株式会社日清製粉ウェルナ
(74)【代理人】
【識別番号】110002170
【氏名又は名称】弁理士法人翔和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】廣瀬 葉
(72)【発明者】
【氏名】尾家 麻里子
(72)【発明者】
【氏名】鍋島 拓磨
【審査官】石田 傑
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-019468(JP,A)
【文献】国際公開第2016/159221(WO,A1)
【文献】特開2017-085913(JP,A)
【文献】ソーセージでつくるミートソースパスタ by demiさん,レシピブログ-料理ブログのレシピ満載!,2016年04月19日,[online], [検索日2020.09.04], URL<https://www.recipe-blog.jp/profile/60085/recipe/1050750>
【文献】ウインナーで簡単ミートソース風パスタ レシピ・作り方 by fairy Tale,楽天レシピ,2014年09月23日,[online], [検索日2020.09.04], URL<https://recipe.rakuten.co.jp/recipe/1700011699/>
【文献】リガトーニのソーセジボロネーゼソース[レシピあり],マーマレードキッチン♪,2014年09月23日,[online], [検索日2024.02.27], URL<http://marmaladekitchen.blog46.fc2.com/blog-entry-1270.html>
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
粒子状挽肉入りソースの製造方法であって、
前記粒子状挽肉の原料として燻煙肉ミンチを用
い、
前記燻煙肉ミンチが、挽肉機を用いて製造されたものであり、
前記挽肉機は、原料肉をカッターで切断し、その切断された肉を、該カッターに近接する押出しプレートに穿設された孔部から押し出すように構成されており、該孔部の直径が2~10mmである、粒子状挽肉入りソースの製造方法。
【請求項2】
前記粒子状挽肉の原料の50質量%以上に前記燻煙肉ミンチを用いる、請求項1に記載の粒子状挽肉入りソースの製造方法。
【請求項3】
前記燻煙肉ミンチが、塩漬け又は加熱殺菌されたものである、請求項1又は2に記載の粒子状挽肉入りソースの製造方法。
【請求項4】
前記燻煙肉ミンチが、ソーセージ、ハム又はベーコンをミンチにしたものである、請求項1~3の何れか1項に記載の粒子状挽肉入りソースの製造方法。
【請求項5】
前記粒子状挽肉の原料を加熱する工程を有する、請求項1~
4の何れか1項に記載の粒子状挽肉入りソースの製造方法。
【請求項6】
前記粒子状挽肉の原料以外の原材料を用いてベースソースを製造するベースソース製造工程を有し、
前記ベースソース製造工程において前記ベースソースの中間物に前記粒子状挽肉の原料を添加するか、又は、前記ベースソース製造工程で製造された前記ベースソースに前記粒子状挽肉の原料を添加する、請求項1~
5の何れか1項に記載の粒子状挽肉入りソースの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、挽肉が、塊状ではなく、より細かい粒子状の形態で含有された粒子状挽肉入りソースに関する。
【背景技術】
【0002】
挽肉入りソースとして、例えばミートボールのような、塊状に成形された挽肉(挽肉塊)を含むものと、より細かい粒子状の挽肉をばらばらの状態で含むものとが知られている。前者の挽肉塊入りソースは、挽肉塊の表面は焼けて香ばしく、挽肉塊の内部は肉汁があり、ソース付き肉料理のような風味と食感が楽しめる。これに対し、後者の粒子状挽肉入りソースは、ばらばらのまま焼けた挽肉の香ばしさがソースと一体となった風味が得られ、弾力のあるそぼろ状の食感と合わせて、ソースと肉の風味を合わせて楽しむことができる。粒子状挽肉入りソースの代表的な例として、ミートソース、ボロネーゼソースが挙げられる。
【0003】
粒子状挽肉入りソースの製造方法の代表的なものは、先ず、生挽肉を、必要に応じて他の食材とともに炒める等して加熱調理することで、水分をある程度飛ばしてそぼろ状に固めておき、次に、そのそぼろ状の挽肉をソースなどの他の食材と混合し、その混合物を加熱するというものである。この従来製法は、挽肉を他の食材よりも先に加熱するため、挽肉の加熱時間が長くなりやすく、そのため、挽肉が硬くなってそぼろ挽肉の弾力がある食感が低下するという問題がある。別の従来製法として、先ずソースを製造し、次にそのソースに生挽肉を入れて加熱する方法が知られているが、挽肉をソース中で加熱するため、挽肉の加熱条件が比較的温和なものとなり、その結果、挽肉から香ばしさが感じられ難く、また肉汁が抜けてしまい、挽肉の食感に乏しい粒子状挽肉入りソースとなってしまう場合が少なくない。
【0004】
挽肉入りソースの製造方法に関し、挽肉を加熱調理する調理器具としてオーブンを用いる方法が提案されている。例えば特許文献1には、大量調理においても肉の好ましい香りを有する挽肉入りソースを製造することを課題として、挽肉を加熱調理する調理器具として、ニーダーやソテー機に代えてオーブンを用い、挽肉を品温が70~105℃になるまで焼成する工程を含む製造方法が開示されている。しかしこの方法では、比較的高温になるまで挽肉を加熱調理するため、挽肉からの肉汁の流出が多く、弾力があって肉汁が多い挽肉を含むソースは得られない。
【0005】
特許文献2には、水蒸気が導入されたオーブンの庫内で生挽肉を加熱処理して水分含量58~70質量%の挽肉を得、該挽肉を用いて挽肉入りソースを製造する方法が開示されている。また特許文献3には、生挽肉をオーブンで加熱処理して水分含量74質量%以下の挽肉を得、さらに該挽肉をバーナーで加熱処理して挽肉入りソースを製造する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2014-113076号公報
【文献】国際公開第2016/159221号
【文献】国際公開第2016/159222号
【発明の概要】
【0007】
本発明の課題は、肉の香ばしい風味が十分に感じられるとともに、挽肉の弾力ある食感が楽しめる粒子状挽肉入りソースの製造方法を提供することである。
【0008】
本発明は、粒子状挽肉入りソースの製造方法であって、前記粒子状挽肉の原料として燻煙肉ミンチを用いる、粒子状挽肉入りソースの製造方法である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の粒子状挽肉入りソースの製造方法は、粒子状挽肉の原料として燻煙肉ミンチを用いる点で特徴付けられる。燻煙肉ミンチは、燻煙肉をミンチにしたものである。本発明の所定の効果(肉の香ばしい風味が十分に感じられるとともに、挽肉の弾力ある食感が楽しめる)は、燻煙肉ミンチを用いることによるところが大きい。
【0010】
燻煙肉は、原料肉を燻煙処理することで製造される。原料肉の種類は特に制限されず、通常の挽肉の原料として使用可能なものを特に制限無く用いることができ、例えば、牛、豚、羊、猪、鶏、鴨等の畜肉が挙げられる。原料肉の燻煙処理は、典型的には、燻煙を充満させた空間に原料肉を一定時間配置することにより行われ、一般的な燻煙装置や燻煙機器を用いて行うことができる。燻煙処理に用いる燻材は特に制限されず、例えば、サクラ、カシ、ナラ、ヒッコリー、リンゴ、ホワイトオーク、ブナなどが挙げられ、原料肉の種類、燻煙肉ミンチが適用されるソースの種類等に応じて適宜選択することができる。また、燻煙処理の条件(燻煙を充満させた空間の温度、処理時間など)も特に制限されず、原料肉の種類等に応じて適宜調整すればよい。
【0011】
燻煙肉ミンチは、塩漬けされたものであることが好ましい。塩漬けは、肉を塩せき剤で処理する公知の肉加工法であり、塩せき(curing)などとも呼ばれる。塩せき剤は通常、少なくとも食塩を含み、更に必要に応じ、硝酸塩、亜硝酸塩、砂糖、香辛料、調味料などを含む。塩漬けされた燻煙肉ミンチは、塩漬けされていないものに比べて保存性、風味、色、保水性などに優れるため、これを用いることで本発明の所定の効果が一層奏されやすくなる。塩漬けは常法に従って行うことができる。塩漬けには乾塩法(dry salting, dry curing)と湿塩法(wet salting, brine curing)とがあり、塩漬け対象の肉の種類等に応じて適切な方法を選択すればよい。塩漬けは、ミンチにする前の肉塊(原料肉)に対して行ってもよく、ミンチ後に行ってもよい。また、前者の場合において、塩漬けは、燻煙処理よりも前に行ってもよく、燻煙処理の後に行ってもよい。
【0012】
燻煙肉ミンチは、加熱殺菌されたものであることが好ましい。燻煙肉ミンチは、塩漬けされ且つ加熱殺菌されたものであり得る。燻煙肉ミンチは前述のとおり燻煙処理が施されたものであり、また、燻煙処理には一定の殺菌効果があるが、病原体の除去、鮮度保持、保存性の向上等をより一層確実なものとする観点から、本発明で用いる燻煙肉ミンチは、加熱殺菌されたものであることが好ましい。加熱殺菌の条件(加熱手段、加熱温度、加熱時間など)は、被加工物(肉)の種類等に応じて適宜選択すればよく特に制限されないが、例えば、加熱手段として蒸気加熱又はボイル加熱を用い、被加工物(肉)の品温が好ましくは70~75℃の範囲となるよう、より好ましくは中心部品温が63℃を30分以上維持する条件を例示できる。加熱殺菌は、ミンチにする前の肉塊(原料肉)に対して行ってもよく、ミンチ後に行ってもよい。また、前者の場合において、加熱殺菌は、燻煙処理よりも前に行ってもよく、燻煙処理よりも後に行ってもよく、燻煙処理と同時に行ってもよい。
【0013】
本発明では燻煙肉(ミンチにされる前の肉塊)として、燻煙処理のみが施されたものを用いてもよく、燻煙処理に加えて更に他の処理(例えば、成型、細切り、混合、ケーシング、乾燥、塩漬け、加熱殺菌など)が施されたものを用いてもよい。後者の燻煙肉として、ソーセージ、ハム、ベーコンを例示できる。すなわち本発明で用いる燻煙肉ミンチは、ソーセージ、ハム又はベーコンをミンチにしたものであり得る。
【0014】
ソーセージは、典型的には、ミンチ肉を、必要に応じ味付けして、ケーシングに充填した食品である。本発明で用いるソーセージは、斯かる典型的なソーセージに限定されず、本発明では、燻煙処理されていることを前提として、ソーセージと呼ばれる食品(ミンチ肉の筒状成形体)を広く用いることができる。例えば本発明では、ソーセージの肉の種類は限定されず、前述した畜肉の1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。また、ケーシングの種類も限定されず、羊腸などの天然腸でもよく、人工可食ケーシング(コラーゲンによりチューブ状に形成されたケーシング)でもよく、さらには、ケーシングのないいわゆる皮なしソーセージを用いることもできる。例えば本発明では、燻煙肉として、ウインナーソーセージ、フランクフルトソーセージ、スモークドソーセージ、ドライソーセージの1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。本発明で用いる燻煙肉ミンチは、これらのソーセージであって且つ塩漬け及び/又は加熱殺菌されたものをミンチにしたものが好ましい。一方、ソーセージであっても、燻煙処理を行わないホワイトソーセージや、燻煙処理も加熱処理も行わないフレッシュソーセージは、本発明に係る燻煙肉には含まれない。
【0015】
ハムは、典型的には、豚肉を原料としたくん肉製品であり、少なくとも燻煙処理されている。本発明で用いるハムは、斯かる典型的なハムに限定されず、本発明では、燻煙処理されていることを前提として、ハムと呼ばれる食品を広く用いることがでる。例えば本発明では、燻煙肉として、ボンレスハム、骨付きハム、ロースハム、ラックスハムの1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。本発明で用いる燻煙肉ミンチは、これらのハムであって且つ塩漬け及び/又は加熱殺菌されたものをミンチにしたものが好ましい。
【0016】
ベーコンは、典型的には、豚の脇腹肉を整形し、塩せきし、燻煙して製造される食品であり、塩漬け及び燻煙処理が施されている。本発明で用いるベーコンは、斯かる典型的なベーコンに限定されず、本発明では、燻煙処理されていることを前提として、ベーコンと呼ばれる食品を広く用いることがでる。
【0017】
本発明で用いる燻煙肉ミンチは、原料肉として燻煙肉を用いる点以外は、通常の挽肉の製造方法と同様の方法で製造することができる。すなわち燻煙肉ミンチは、ミートチョッパー、ミートミンサー、グラインダーなどとも呼ばれる公知の挽肉機を用いて、常法に従って製造することができる。
【0018】
挽肉機は、典型的には、原料肉(燻煙肉)をカッターで切断し、その切断された肉を、該カッターに近接する押出しプレートに穿設された孔部(ダイ孔)から押し出すように構成されている。挽肉機は通常、前記カッター及び前記押出しプレートに加えて更に、螺旋状のねじ山を備えるフィード・スクリューを具備し、該フィード・スクリューの前方に、複数のブレードを有する該カッターが配置され、更に該カッターに接触するように該押出しプレートが配置されている。前記孔部の大きさは、挽肉(燻煙肉ミンチ)の品質を左右する要素の1つであり、一般に、該孔部の直径が小さくなると、得られる挽肉の風味は増加するが、粒状感、弾力感といった食感は低下し、逆に該孔部の直径が大きくなると、得られる挽肉の食感は高まるが、風味は低下する。風味と食感とのバランスに優れた燻煙肉ミンチを得る観点から、前記孔部の直径は、好ましくは2~10mm、より好ましくは3.4~7.4mm、更に好ましくは4.8~6.8mmである。
【0019】
本発明の粒子状挽肉入りソースの製造方法において、粒子状挽肉の原料(以下、「挽肉原料」ともいう。)に占める燻煙肉ミンチの割合は特に制限されないが、本発明の所定の効果をより一層確実に奏させるようにする観点から、好ましくは50質量%以上、より好ましくは60質量%以上、更に好ましくは70質量%以上である。斯かる割合が100質量%、すなわち挽肉原料の全部が燻煙肉ミンチでもよいが、製造コストの観点から、燻煙肉ミンチとこれ以外の挽肉原料とを併用するのが一般的である。燻煙肉ミンチ以外の挽肉原料としては、通常の生挽肉等を用いることできる。
【0020】
本発明の粒子状挽肉入りソースの製造方法において、燻煙肉ミンチを含む挽肉原料の使用量は特に制限されず、製造目的物である粒子状挽肉入りソースの種類、該ソースに要求される風味や食感等に応じて適宜調整すればよい。粒子状挽肉入りソースの好ましい一実施形態として、挽肉原料の含有量が、該ソースの全質量に対して湿重量基準で、好ましくは5~60質量%、より好ましくは10~30質量%であるものを例示できる。斯かる好ましい一実施形態となるよう、燻煙肉ミンチを含む挽肉原料の使用量を調整することができる。
【0021】
本発明の粒子状挽肉入りソースの製造方法では、典型的には、燻煙肉ミンチを含む挽肉原料に加えて更に、ベースソースを用いる。ベースソースは、典型的には、製造目的物である粒子状挽肉入りソースにおいて主体をなす、常温常圧で流動性を有する部分である。ベースソースとしては、例えば、ミートソースやボロネーゼソース等のベースソースとして用いられるトマト系ソース;デミグラスソース等のブラウン系ソース;チリソース等のエスニック系ソース;麻婆豆腐のあん等として用いられる中華系ソース;和食のあんやたれのような和食系ソースが挙げられ、製造目的物である粒子状挽肉入りソースの種類等に応じて適宜選択することができる。
【0022】
本発明で用いるベースソースは、当該ベースソースの通常の製造方法又はその変法によって製造されるものであり得る。ベースソースの含有成分は、当該ベースソースの種類によって異なるが、例えば、一般的にソースの製造に用いられる原材料として、野菜エキス、肉エキス、乾燥ハーブ等の天然スパイス、塩、胡椒、糖類、澱粉類、穀粉類、調味料、固形スープ、油脂、水が挙げられる。本発明の製造方法によって製造される粒子状挽肉入りソースは、燻煙肉ミンチ由来の粒子状挽肉に加えて更に、これらの成分を含有し得る。
【0023】
本発明の粒子状挽肉入りソースの製造方法では、燻煙肉ミンチを含む挽肉原料及びベースソースに加えて更に、挽肉原料以外の具材を用いることもできる。具材はベースソースの種類や嗜好性に応じて選択すればよく、例えば、鶏、豚、牛等の畜肉類の塊肉;魚、貝、イカ、タコ等の魚介類、ニンジン、ジャガイモ等の野菜・根菜類;エリンギ等のキノコ類、卵類が挙げられ、これらの1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0024】
本発明の粒子状挽肉入りソースの製造方法は、燻煙肉ミンチを含む挽肉原料を加熱する工程を有しなくてもよいが、典型的には、斯かる加熱工程を有する。挽肉原料の加熱方法は特に制限されず、公知の加熱方法を用いることができ、例えば、焼成、蒸煮等が挙げられ、製造目的物である粒子状挽肉入りソースの種類等に応じて、加熱方法の1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0025】
本発明の粒子状挽肉入りソースの製造方法は、挽肉原料以外の原材料を用いてベースソースを製造するベースソース製造工程を有していてもよい。その場合、ベースソース製造工程において、ベースソースの中間物(ベースソースの未完成品)に、燻煙肉ミンチを含む挽肉原料を添加し、更に必要に応じ、該中間物を該挽肉原料ごと加熱してもよい。以下、この方法を「製法A」ともいう。あるいは、ベースソース製造工程で製造されたベースソース(ベースソースの完成品)に、燻煙肉ミンチを含む挽肉原料を添加し、更に必要に応じ、該ベースソースを該挽肉原料ごと加熱してもよい。以下、この方法を「製法B」ともいう。前記製法Bにおいて、燻煙肉ミンチを含む挽肉原料をベースソースに添加する前に予め、該挽肉原料を炒め、スチーム、ボイル等の加熱手段で予備加温しておくと、肉の風味が低下することを防止できるため好ましい。
【0026】
前記製法Aに従い、粒子状挽肉入りソースとしてミートソースを製造する場合、例えば以下の手順で製造することができる。先ず、フライパンに大さじ1の油をひき、燻煙肉ミンチを含む挽肉原料200gを加えてほぐしながら炒め、香味野菜等の挽肉以外の原材料を加えてさらに炒める。次に、フライパンの内容物に小麦粉を振って軽く混ぜ合わせ、更に、水カップ1、ざく切りしたホールトマトの缶詰400g、コンソメの素、ケチャップ、ソース、砂糖を入れ、煮立ったら中火にして、煮詰まってとろみがつくまでかき混ぜながら加熱し、味をととのえる。こうして、目的のミートソース(粒子状挽肉の原料として燻煙肉ミンチを用いた粒子状挽肉入りソース)が得られる。
【実施例】
【0027】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0028】
〔実施例1〕
市販の挽肉機(ミナト電機工業製、商品名「電動ミンサー SG-50」、押出しプレートの孔部の直径4.8mm)を用い、市販のフランクフルトソーセージ(燻製肉)をミンチにして燻煙肉ミンチを製造した。ここで使用したフランクフルトソーセージは、豚の生挽肉を塩漬け、ケーシング、燻煙、加熱殺菌処理して製造されたものであった。挽肉原料としてこの燻煙肉ミンチ(ソーセージミンチ)のみを用いて、粒子状挽肉入りソースの一種であるナポリタンソースを製造した。具体的には、先ず、オリーブオイルを入れて加熱したフライパンに、みじん切りにしたニンニク10gを入れ、香りが立ったら、みじん切りにしたタマネギ200gとニンジン50gを加え、タマネギ全体が透明になるまで炒めた。次に、フライパンの内容物にソーセージミンチ200gを加え、さらにざく切りしたホールトマト缶詰100gを加えて炒めた。全体に火が通ったら、ケチャップと塩、コショウで味をととのえ、目的のナポリタンソース(粒子状挽肉入りソース)を製造した。
【0029】
〔実施例2~5〕
挽肉原料として燻煙肉ミンチ(ソーセージミンチ)に加えて更に豚の生挽肉(非燻煙肉ミンチ)を用いた以外は、実施例1と同様にしてナポリタンソースを製造した。
【0030】
〔比較例1〕
挽肉原料として燻煙肉ミンチ(ソーセージミンチ)に代えて豚の生挽肉(非燻煙肉ミンチ)を用いた以外は、実施例1と同様にしてナポリタンソースを製造した。ここで使用した生挽肉は、実施例1で燻煙肉ミンチの製造に使用した挽肉機を用いて常法に従って製造したものであった。
【0031】
〔比較例2~3〕
挽肉原料として燻煙肉ミンチ(ソーセージミンチ)に代えてホワイトソーセージミンチ(非燻煙肉ミンチ)を用いた以外は、実施例1又は3と同様にしてナポリタンソースを製造した。ここで使用したホワイトソーセージミンチは、実施例1で燻煙肉ミンチの製造に使用した挽肉機を用いて常法に従って製造したものであった。また、このホワイトソーセージミンチの原料肉であるホワイトソーセージは、塩漬けされているが、燻煙処理はされていない。
【0032】
〔比較例4~5〕
挽肉原料として燻煙肉ミンチ(ソーセージミンチ)に代えてチャーシューミンチ(非燻煙肉ミンチ)を用いた以外は、実施例1又は3と同様にしてナポリタンソースを製造した。ここで使用したチャーシューミンチは、実施例1で燻煙肉ミンチの製造に使用した挽肉機を用いて常法に従って製造したものであった。また、このチャーシューミンチの原料肉であるチャーシューは、豚の枝肉を醤油で煮たものであり、燻煙処理はされていない。
【0033】
〔試験例1〕
各実施例及び比較例のナポリタンソース(粒子状挽肉入りソース)100gを金網で濾して挽肉(粒子状挽肉)を分離し、該挽肉に残るソース(液状物)をよく切って該挽肉の質量を測定し、ナポリタンソースにおける挽肉の含有量を算出した。その結果を下記表1に示す。また、各実施例及び比較例のナポリタンソース100gを、規定通り茹でたスパゲティ200gに絡めてナポリタンスパゲティを製造し、10名の専門パネラー(スパゲティの食味食感を評価する業務に5年以上従事している者)に喫食してもらい、該ナポリタンソースに含まれる挽肉(粒子状挽肉)の風味及び食感を下記評価基準により評価してもらった。その評価結果を、10名のパネラーの平均点として下記表1に示す。
【0034】
<挽肉の風味の評価基準>
5点:挽肉を噛みしめると香ばしい肉の香りが広がり、極めて良好。
4点:挽肉を噛みしめると香ばしい肉の香りが広がり、良好。
3点:挽肉を噛みしめると香ばしい肉の香りがやや感じられ、やや良好。
2点:挽肉を噛みしめても香ばしい肉の香りが少なく、不良。
1点:挽肉を噛みしめても香ばしい肉の香りが感じられず、極めて不良。
<挽肉の食感の評価基準>
5点:ふんわりとした弾力があり、口中で非常にほぐれやすく、極めて良好。
4点:弾力があり、口中でほぐれやすく、良好。
3点:やや弾力に物足りないが、咀嚼でほぼほぐれ、やや良好。
2点:弾力に乏しく、咀嚼しても粒が残る感じがあり、不良。
1点:弾力がほとんど無く、硬い粒感があり、極めて不良。
【0035】
【0036】
表1に示すとおり、各実施例は、粒子状挽肉の原料として燻煙肉ミンチ(ソーセージミンチ)を用いたため、燻煙肉ミンチを用いなかった各比較例に比べて、挽肉の風味及び食感に優れていた。
【0037】
〔実施例6~11〕
市販の挽肉機(ミナト電機工業製、商品名「電動ミンサー SG-50」)を用い、市販のフランクフルトソーセージ(燻製肉)をミンチにして燻煙肉ミンチを製造した。その際、挽肉機における押出しプレートの孔部の直径を種々変更した。ここで使用したフランクフルトソーセージは、豚の生挽肉を塩漬け、ケーシング、燻煙、加熱殺菌処理して製造されたものであった。挽肉原料としてこの燻煙肉ミンチ(ソーセージミンチ)のみを用いて、粒子状挽肉入りソースの一種である粒子状挽肉入りデミグラスソースを製造した。具体的には、先ず、サラダ油を入れて加熱したフライパンに、ソーセージミンチ200gを加え、よくほぐしながら炒めて取り出し、余分な油を紙に吸わせて除去した。また別途、常法によりデミグラスソースを製造した。次に、このデミグラスソースに、炒めたソーセージミンチを加えて加熱しながらよく混ぜ、塩で味をととのえ、目的の粒子状挽肉入りデミグラスソース(粒子状挽肉入りソース)を製造した。
【0038】
〔比較例6〕
挽肉原料として燻煙肉ミンチ(ソーセージミンチ)に代えて豚の生挽肉(非燻煙肉ミンチ)を用いた以外は、実施例8と同様にして粒子状挽肉入りデミグラスソースを製造した。ここで使用した生挽肉は、実施例8で燻煙肉ミンチの製造に使用した挽肉機を用いて常法に従って製造したものであった。
【0039】
〔試験例2〕
各実施例及び比較例の粒子状挽肉入りデミグラスソース(粒子状挽肉入りソース)100gを金網で濾して挽肉(粒子状挽肉)を分離し、該挽肉に残るソース(液状物)をよく切って該挽肉の質量を測定し、デミグラスソースにおける挽肉の含有量を算出した。その結果を下記表2に示す。また、各実施例及び比較例の粒子状挽肉入りデミグラスソース50gを、プレーンオムレツにかけてデミグラスオムレツを製造し、10名の専門パネラー(洋食の食味食感を評価する業務に5年以上従事している者)に喫食してもらい、該デミグラスソースに含まれる挽肉(粒子状挽肉)の風味及び食感を前記評価基準により評価してもらった。その評価結果を、10名のパネラーの平均点として下記表2に示す。
【0040】
【0041】
表2は、挽肉原料(燻煙肉ミンチ、非燻煙肉ミンチ)の製造に使用した挽肉機の押出しプレートの孔部の直径が、粒子状挽肉入りソースにおける挽肉の品質の与える影響を示すものである。
【産業上の利用可能性】
【0042】
本発明によれば、肉の香ばしい風味が十分に感じられるとともに、挽肉の弾力ある食感が楽しめる粒子状挽肉入りソースが提供される。