(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-28
(45)【発行日】2024-06-05
(54)【発明の名称】コアシェル架橋ゴム粒子およびメタクリル樹脂組成物
(51)【国際特許分類】
C08F 265/06 20060101AFI20240529BHJP
C08L 51/00 20060101ALI20240529BHJP
C08L 101/00 20060101ALI20240529BHJP
C08J 5/18 20060101ALI20240529BHJP
【FI】
C08F265/06
C08L51/00
C08L101/00
C08J5/18 CEY
(21)【出願番号】P 2021542836
(86)(22)【出願日】2020-08-21
(86)【国際出願番号】 JP2020031625
(87)【国際公開番号】W WO2021039628
(87)【国際公開日】2021-03-04
【審査請求日】2023-06-09
(31)【優先権主張番号】P 2019152881
(32)【優先日】2019-08-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000001085
【氏名又は名称】株式会社クラレ
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】平岡 伸崇
(72)【発明者】
【氏名】松橋 広大
【審査官】内田 靖恵
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/171008(WO,A1)
【文献】特開昭63-122748(JP,A)
【文献】特開2009-203348(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2014-0033831(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 265/06
C08L
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
軟質重合体(B)、および該軟質重合体(B)を囲む最外層に硬質重合体(C)を有し、軟質重合体(B)および硬質重合体(C)を構成する重合体に、(メタ)アクリル酸アラルキルエステル単量体単位を有し、
前記軟質重合体(B)が、アクリル酸アルキルエステル単位40~71質量%、アクリル酸ベンジル単位29~60質量%、メタクリル酸アルキルエステル単位0~19質量%、およびこれらと共重合可能な他の単量体単位30~0質量%から成る単官能単量体単位(b)、ならびに、単官能単量体単位(b)の合計量100質量部に対して多官能性単量体単位1.6~10質量部を構造単位とし、
且つ硬質重合体(C)が、メタクリル酸アルキルエステル単位45~89.9質量%、(メタ)アクリル酸アラルキルエステル単位10.1~39質量%、アクリル酸アルキルエステル単位0~19質量%、および、これらと共重合可能な他の単量体単位40~0質量%を含む、コアシェル架橋ゴム粒子(D)であって、
コアシェル架橋ゴム粒子(D)の、水中での粒子径(DW)が100~400nmであり、
コアシェル架橋ゴム粒子(D)の凝集粉体を、塩化メチレン中に分散させた分散粒子径(DM)が、前記水中での粒子径(DW)の10倍未満
であることを特徴とするコアシェル架橋ゴム粒子。
【請求項2】
前記コアシェル架橋ゴム粒子(D)が、最内層として硬質重合体(A)をさらに含み、且つ硬質重合体(A)が、メタクリル酸アルキルエステル単位45~89.9質量%、(メタ)アクリル酸アラルキルエステル単位10.1~39質量%、アクリル酸アルキルエステル単位0~19質量%、および、これらと共重合可能な他の単量体単位40~0質量%から成る単官能単量体単位(a)、ならびに、単官能単量体単位(a)の合計量100質量部に対して多官能性単量体単位0.01~5質量部を構造単位とする、請求項1に記載のコアシェル架橋ゴム粒子。
【請求項3】
前記コアシェル架橋ゴム粒子(D)における、軟質重合体(B)までの、水中での粒子径(DW
B)が、85~300nmである、請求項1~
2のいずれか一つに記載のコアシェル架橋ゴム粒子。
【請求項4】
|nd
B-nd
C|と、コアシェル架橋ゴム粒子(D)の水中での粒子径(DW)との関係が、|nd
B-nd
C|×DW ≦3である、請求項1~
3のいずれかに一つに記載のコアシェル架橋ゴム粒子。
(式中、nd
Bはコアシェル架橋ゴムの内層(b)までの屈折率であり、nd
Cはコアシェル架橋ゴムの最外層(c)までの屈折率である)
【請求項5】
光弾性係数が-4×10
-12Pa
-1から4×10
-12Pa
-1である、請求項1~
4のいずれか一つに記載のコアシェル架橋ゴム粒子。
【請求項6】
配向複屈折が-1.0×10
-4から1.0×10
-4である、請求項1~
5のいずれか一つに記載のコアシェル架橋ゴム粒子。
【請求項7】
請求項1に記載のコアシェル架橋ゴム粒子からなり、重量平均粒子径が100~1000μmである凝集粉体。
【請求項8】
熱可塑性樹脂(E)と請求項1~
6のいずれか一つに記載のコアシェル架橋ゴム粒子(D)とを含有して成る熱可塑性樹脂組成物。
【請求項9】
熱可塑性樹脂(E)が、下記の(i)~(v)
【化1】
のいずれかの基を含む環構造からなる群から選ばれる少なくとも一つの環構造を主鎖に有する構造単位(R)と、メタクリル酸メチルに由来する構造単位(M)とを含むものである、請求項
8に記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項10】
熱可塑性樹脂(E)が、芳香族ビニルモノマーに由来する構造単位(N)を0~19.9質量%含むものであり、コアシェル架橋ゴム粒子(D)に対する熱可塑性樹脂(E)の質量比(E)/(D)が98/2~10/90である、請求項
8または
9に記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項11】
熱可塑性樹脂(E)の重量平均分子量が、200,000以上である、
9又は10に記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項12】
請求項
8~
11いずれかに記載の熱可塑性樹脂組成物を含み、厚みが20μm以上、200μm以下のフィルム。
【請求項13】
請求項
8~
11いずれかに記載の熱可塑性樹脂組成物および有機溶剤を含むドープ。
【請求項14】
請求項
13に記載のドープを流延用支持体に流延させた後、前記有機溶剤を蒸発させる工程を含むフィルムの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抑制された位相差、高い透明性を有し、溶剤分散性を改善したコアシェル架橋ゴム粒子及びその凝集粉体、コアシェル架橋ゴム粒子を含有するメタクリル樹脂組成物及びそれを用いたフィルムなどの成形体、それを含むドープ及びフィルムの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
メタクリル樹脂は、高い透明性を有し、光学部材、照明部材、看板部材、装飾部材等に用いられる成形体の材料として有用である。しかし、メタクリル系樹脂は、割れやすく脆い性質があり、取扱いが困難であった。そこで、メタクリル系フィルムのもろさを解消するために、高分子量のメタアクリル樹脂に、架橋ゴム粒子を添加した、溶液製膜用メタクリル樹脂といった技術が開示されている。(特許文献1、2)。
【0003】
特許文献1、2では、架橋ゴムの溶剤への分散性を高める手法が記載されているが、架橋ゴム粒子の位相差に関して全く議論されていない。
【0004】
特許文献3には、位相差が抑制された架橋ゴム粒子を開示しているが、溶剤への分散性や溶液製膜時の乾燥速度に関して検討しておらず、改良の余地があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許第5484683号
【文献】WO2018/212227
【文献】WO2017/171008
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、抑制された位相差、十分な耐衝撃性、高い弾性率を付与しながらも、溶剤分散性を改善したコアシェル架橋ゴム粒子及びその凝集粉体、ゴム粒子を含有するメタクリル樹脂組成物及びそれを用いたフィルムなどの成形体、それを含むドープ及びフィルムの製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは上記目的を達成すべく検討した結果、以下の形態を包含する本発明を完成するに至った。
〔1〕
軟質重合体(B)、および該軟質重合体(B)を囲む最外層に硬質重合体(C)を有し、軟質重合体(B)および硬質重合体(C)を構成する重合体に、(メタ)アクリル酸アラルキルエステル単量体単位を有し、且つ硬質重合体(C)が、メタクリル酸アルキルエステル単位45~89.9質量%、(メタ)アクリル酸アラルキルエステル単位10.1~39質量%、アクリル酸アルキルエステル単位0~19質量%、および、これらと共重合可能な他の単量体単位40~0質量%を含む、コアシェル架橋ゴム粒子(D)であって、
コアシェル架橋ゴム粒子(D)の、水中での粒子径(DW)が100~400nmであり、
コアシェル架橋ゴム粒子(D)の凝集粉体を、塩化メチレン中に分散させた分散粒子径(DM)が、前記水中での粒子径(DW)の10倍未満
であることを特徴とするコアシェル架橋ゴム粒子。
〔2〕
前記コアシェル架橋ゴム粒子(D)が、最内層として硬質重合体(A)をさらに含み、且つ硬質重合体(A)が、メタクリル酸アルキルエステル単位45~89.9質量%、(メタ)アクリル酸アラルキルエステル単位10.1~39質量%、アクリル酸アルキルエステル単位0~19質量%、および、これらと共重合可能な他の単量体単位40~0質量%から成る単官能単量体単位(a)、ならびに、単官能単量体単位(a)の合計量100質量部に対して多官能性単量体単位0.01~5質量部を構造単位とする、〔1〕に記載のコアシェル架橋ゴム粒子。
〔3〕
前記軟質重合体(B)が、アクリル酸アルキルエステル単位40~71質量%、アクリル酸ベンジル単位29~60質量%、メタクリル酸アルキルエステル単位0~19質量%、およびこれらと共重合可能な他の単量体単位40~0質量%から成る単官能単量体単位(b)、ならびに、単官能単量体単位(b)の合計量100質量部に対して多官能性単量体単位1.6~10質量部を構造単位とする、〔1〕又は〔2〕に記載のコアシェル架橋ゴム粒子。
〔4〕
前記コアシェル架橋ゴム粒子(D)における、軟質重合体(B)までの、水中での粒子径(DW
B)が、85~300nmである、〔1〕~〔3〕のいずれか一つに記載のコアシェル架橋ゴム粒子。
〔5〕
|nd
B-nd
C|と、コアシェル架橋ゴム粒子(D)の水中での粒子径(DW)との関係が、|nd
B-nd
C|×DW ≦3である〔1〕~〔4〕いずれかに一つに記載のコアシェル架橋ゴム粒子。
(式中、nd
Bはコアシェル架橋ゴムの内層(b)までの屈折率であり、nd
Cはコアシェル架橋ゴムの最外層(c)までの屈折率である)
〔6〕
光弾性係数が-4×10
-12Pa
-1から4×10
-12Pa
-1である、〔1〕~〔5〕のいずれか一つに記載のコアシェル架橋ゴム粒子。
〔7〕
配向複屈折が-1.0×10
-4から1.0×10
-4である、〔1〕~〔6〕のいずれか一つに記載のコアシェル架橋ゴム粒子。
〔8〕
〔1〕に記載のコアシェル架橋ゴム粒子からなり、重量平均粒子径が100~1000μmである凝集粉体。
〔9〕
熱可塑性樹脂(E)と〔1〕~〔7〕のいずれか一つに記載のコアシェル架橋ゴム粒子(D)とを含有して成る熱可塑性樹脂組成物。
〔10〕
熱可塑性樹脂(E)が、下記の(i)~(v)
【化1】
のいずれかの基を含む環構造からなる群から選ばれる少なくとも一つの環構造を主鎖に有する構造単位(R)と、メタクリル酸メチルに由来する構造単位(M)とを含むものである、〔9〕に記載の熱可塑性樹脂組成物。
〔11〕
熱可塑性樹脂(E)が、芳香族ビニルモノマーに由来する構造単位(N)を0~19.9質量%含むものであり、コアシェル架橋ゴム粒子(D)に対する熱可塑性樹脂(E)の質量比(E)/(D)が98/2~10/90である、〔9〕または〔10〕に記載の熱可塑性樹脂組成物。
〔12〕
熱可塑性樹脂(E)の重量平均分子量が、200,000以上である、〔10〕~〔11〕いずれか一つに記載の熱可塑性樹脂組成物。
〔13〕
〔9〕~〔12〕いずれかに記載の熱可塑性樹脂組成物を含み、厚みが20μm以上、200μm以下のフィルム。
〔14〕
〔9〕~〔12〕いずれかに記載の熱可塑性樹脂組成物および有機溶剤を含むドープ。
〔15〕
〔14〕に記載のドープを流延用支持体に流延させた後、前記有機溶剤を蒸発させる工程を含むフィルムの製造方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明により、抑制された位相差、十分な耐衝撃性、高い弾性率を付与しながらも、溶剤分散性を改善したコアシェル架橋ゴム粒子を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
(1)コアシェル架橋ゴム粒子(D)
本発明のコアシェル架橋ゴム粒子(D)は、軟質重合体(B)、および該軟質重合体(B)を囲む最外層に硬質重合体(C)を有し、軟質重合体(B)および硬質重合体(C)を構成する重合体に、(メタ)アクリル酸アラルキルエステル単量体単位を有し、且つ硬質重合体(C)が、メタクリル酸アルキルエステル45~89.9質量%、(メタ)アクリル酸アラルキルエステル単位10.1~39質量%、アクリル酸アルキルエステル単位0~19質量%、および、これらと共重合可能な他の単量体40~0質量%を含むコアシェル架橋ゴム粒子であって、
コアシェル架橋ゴム粒子(D)の、水中での粒子径(DW)が100~400nmであり、
コアシェル架橋ゴム粒子(D)の凝集粉体を、塩化メチレン中に分散させた分散粒子径(DM)が、DM/DW<10であることを特徴とするコアシェル架橋ゴム粒子である。
本発明の好ましい実施形態のコアシェル架橋ゴム粒子において、内層(b)は軟質重合体(B)を含み、最外層(c)は硬質重合体(C)を含み、最内層(a)は硬質重合体(A)を含む。
【0010】
本明細書において、DWは、最内層(a)と内層(b)と最外層(c)もしくは、内層(b)と最外層(c)とを含有してなる重合後のラテックスを採取して光散乱法により水中で平均粒子径を測定したものであり、例えば堀場製作所社製レーザー回折/散乱式粒子径分布測定装置LA-300を用いて測定することができる。
【0011】
本明細書において、DMは最内層(a)と内層(b)と最外層(c)もしくは、内層(b)と最外層(c)とを含有してなる重合後のラテックスを凝固、洗浄及び脱水して得た凝集粉末(凝固物)を塩化メチレン中へ5%の濃度で振とう機を用いて一晩、室温下で撹拌することで分散させ、塩化メチレン10mL中へ滴下していき、散乱強度が70~90%となった時点で、堀場製作所社製レーザー回折/散乱式粒子径分布測定装置LA-300を用い、粒子径を光散乱法(体積換算)にて測定することができる。なお、粒子径はメジアン径である。本発明のコアシェル架橋ゴム粒子は、重合後のラテックスを用いて測定したDWと該ラテックスを凝固させた凝集粉末を用いて測定したDMを用いて規定されるものであり、凝固物を包含する。凝固物は、凝集粉体、粒状体などが包含される。
【0012】
また、本明細書において、DWBは、最内層(a)と内層(b)もしくは、内層(b)からなる、内層(b)まで重合後のラテックスを採取して光散乱法により平均粒子径を測定したものであり、例えば堀場製作所社製レーザー回折/散乱式粒子径分布測定装置LA-300を用いて測定することができる。
本明細書において、多層構造は2層以上、好ましくは2~5層、より好ましくは2~4層、さらに好ましくは2~3層、溶剤分散性の観点から特に2層のコアシェル構造が好ましい。例えば多層構造が2層の場合、最外層(c)、内層(b)から構成されてもよく、3層の場合、最外層(c)、内層(b)、最内層(a)から構成されてもよく、4層の場合、2層の最外層(c)(c-1層とc-2層)、1層の内層(b)、1層の最内層(a)から構成されてもよく、1層の最外層(c)、2層の内層(b-1層とb-2層)、1層の最内層(a)から構成されてもよい。多層構造が5層の場合、2層の最外層(c)(c-1層とc-2層)、2層の内層(b-1層とb-2層)、1層の最内層(a)から構成されてもよく、1層の最外層(c)、2層の内層(b-1層とb-2層)、2層の最内層(a-1層とa-2層)から構成されてもよく、2層の最外層(c)(c-1層とc-2層)、1層の内層(b)、2層の最内層(a-1層とa-2層)から構成されてもよい。
【0013】
本発明のコアシェル架橋ゴム粒子は、内層(b)と最外層(c)に(メタ)アクリル酸アラルキルエステル単量体単位を含むことが特徴である。コアシェル架橋ゴム粒子が最内層(a)を含む場合、最内層(a)に(メタ)アクリル酸アラルキルエステル単量体単位を含むことが好ましい。内層(b)と最外層(c)に(メタ)アクリル酸アラルキルエステル単量体単位が含まれることにより、後述の溶剤乾燥速度が改善する。
【0014】
本発明の好ましい1つの実施形態において、コアシェル架橋ゴム粒子は、乳化重合により製造される多層構造のコアシェル架橋ゴム粒子であり、該ゴム粒子は凝集粉体で供給される。コアシェル架橋ゴム粒子の凝集粉体の製造法は、乳化重合等の重合工程で得られた多層構造の重合体のエマルジョンから凝集工程により該重合体を凝集させ、洗浄、乾燥する工程を含む。
コアシェル架橋ゴム粒子(D)の水中での粒子径(DW)は、好ましくは100~400nm、より好ましくは140~360nm、さらに好ましくは160~300nmである。DWが100nmよりも小さいと、耐衝撃性が出ず、400nmを超えると架橋ゴム粒子を用いて得られる成形体のヘイズが大きくなる。
コアシェル架橋ゴム粒子(D)の凝集粉体を塩化メチレン中に分散させた分散粒子径(DM)が、前記水中での分散粒子径(DW)の好ましくは10倍未満、より好ましくは0.1~9倍、さらに好ましくは0.2~8倍である。
【0015】
内層(b)まで重合した際の粒子径(DWB)は、好ましくは85~300nm、より好ましくは125~280nm、さらに好ましくは150~250nmである。DWが85nmよりも小さいと、耐衝撃性が出ず、300nmを超えると架橋ゴム粒子を用いて得られる成形体のヘイズが大きくなる。
【0016】
本発明のコアシェル架橋ゴム粒子(D)の平均粒子径の下限が、好ましくは0.01μm、より好ましくは0.04μm、さらに好ましくは0.07μm、よりさらに好ましくは0.1μmであり、平均粒子径の上限が、好ましくは1μm、より好ましくは0.5μm、さらに好ましくは0.4μm、よりさらに好ましくは0.3μmである。本発明のメタクリル樹脂組成物の成形体が光学フィルムの場合の耐応力白化性は コアシェル架橋ゴム粒子(D)の平均粒子径が大きいほど低下する傾向がある。なお、コアシェル架橋ゴム粒子(D)の平均粒子径は、光散乱法により得られる値である。
【0017】
本発明のコアシェル架橋ゴム粒子(D)からなり塩化メチレン中に分散させる前の凝集粉体の重量平均粒子径は、好ましくは100~1000μm、より好ましくは100~900μmである。なお、コアシェル架橋ゴム粒子(D)の重量平均粒子径は、以下の方法により測定することができる。すなわち、JIS-Z8801標準ふるい12段(14~200メッシュ)を受け皿上に目の細かい方から順次積み重ねた後、呼び径1190μm(14メッシュ)のふるい上に凝集粉体100gを置き、さらにこれに上蓋を載せる。ついで、これをシェーカ(HEIKOSEISAKUSOLTD製:MODEL MVS-200 VIBRATION SHAKER)に固定し、凝集粉体がふるい下に付着しないように振れ幅を調整して15分間運転する。この後各ふるい上および受け皿上の樹脂粉体量を測定し、それらの割合Xiを求める。JIS-K7369に準じて、求めたXiと各ふるいおよび受け皿の代表粒子径Diとの積の総和(ΣXi・Di)を求め、重量平均粒子径(μm)とする。
【0018】
コアシェル架橋ゴム粒子(D)は、屈折率(n23
D;ndD)が、1.495~1.535、好ましくは1.499~1.535、より好ましくは1.499~1.530である。コアシェル架橋ゴム粒子と熱可塑性樹脂(E)とを含有する熱可塑性樹脂組成物の透明性を高める観点から、コアシェル架橋ゴムの内層(b)までの屈折率ndBと、最外層(c)までの屈折率ndCとの差が好ましくは0.02以下、より好ましくは0.01以下、最も好ましくは0.005以下になるようにするのがよい。また、熱可塑性樹脂(E)とコアシェル架橋ゴム粒子との屈折率の差(|ndE-ndD|)が、好ましくは0.05以下、より好ましくは0.02以下、さらに好ましくは0.01以下、最も好ましくは0.005以下になるようにすることが好ましい。さらに、|ndB-ndC|と、コアシェル架橋ゴム粒子(D)の水中での粒子径(DW)との関係が、好ましくは|ndB-ndC|×DW ≦3であり、より好ましくは|ndB-ndC|×DW ≦1であり、さらに好ましくは|ndB-ndC|×DW ≦0.8、特に好ましくは|ndB-ndC|×DW ≦0.5である。
【0019】
本明細書において、硬質重合体(A)の屈折率(ndA)、軟質重合体(B)の屈折率(ndB)、硬質重合体(C)の屈折率(ndC)、コアシェル架橋ゴム粒子(D)の屈折率(ndD)、は、以下の意味を有する。
ndA:任意の層である最内層(a)として硬質重合体(A)を含む場合、23℃、ヘリウムd線(587.56nm)にて測定した最内層(A)の屈折率
ndB:23℃、ヘリウムd線(587.56nm)にて測定した内層(b)までの屈折率。最内層(a)を含まない場合、内層(b)の粒子の屈折率であり、最内層(a)を含む場合、最内層(a)+内層(b)の粒子の屈折率である。
ndC:23℃、ヘリウムd線(587.56nm)にて測定した最外層(c)までの屈折率。最内層(a)を含まない場合、内層(b)+最外層(c)の粒子の屈折率であり、最内層(a)を含む場合、最内層(a)+内層(b)+最外層(c)の粒子の屈折率である。
ndD:23℃、ヘリウムd線(587.56nm)にて測定した最外層(c)までの屈折率。最内層(a)を含まない場合、内層(b)+最外層(c)の粒子の屈折率であり、最内層(a)を含む場合、最内層(a)+内層(b)+最外層(c)の粒子の屈折率である。
【0020】
コアシェル架橋ゴム粒子(D)の光弾性係数は、好ましくは-4×10-12Pa-1から4×10-12Pa-1、より好ましくは-2×10-12Pa-1~3×10-12Pa-1である。
コアシェル架橋ゴム粒子(D)の配向複屈折は、好ましくは-1.0×10-4から1.0×10-4、より好ましくは-0.5×10-4~1.0×10-4である。
コアシェル架橋ゴム粒子(D)の曲げ弾性率は、好ましくは2600MPa以上、より好ましくは2700~3300MPaである。
コアシェル架橋ゴム粒子(D)のシャルピー衝撃強度は、好ましくは20kJ/m2以上、より好ましくは23kJ/m2以上である。
【0021】
本発明のコアシェル架橋ゴム粒子(D)が最内層(a)、内層(b)、最外層(c)の3層構成の場合の組成を以下に説明する。本発明のコアシェル架橋ゴム粒子(D)が内層(b)、最外層(c)の2層構成の場合の組成は、最内層(a)を含まない以外は以下の組成と同様である。
好ましい最内層(a)の硬質重合体は、メタクリル酸アルキルエステル単位、(メタ)アクリル酸アラルキルエステル単位、アクリル酸アルキルエステル単位0~19質量%および、これらと共重合可能な他の単量体単位を含む単官能単量体単位(a)、ならびに、多官能性単量体単位を構造単位とする。
【0022】
最内層(a)におけるメタクリル酸アルキルエステル単位の量は、最内層(a)の全構造単位に対して、好ましくは45~89.9質量%、より好ましくは70~89.5質量%である。メタクリル酸アルキルエステルに由来する構造単位の量が少ないほどフィルムの耐候性が低下する傾向があり、メタクリル酸アルキルエステルに由来する構造単位の量が多いほどフィルムの耐衝撃性が低下する傾向がある。
【0023】
最内層(a)における(メタ)アクリル酸アラルキルエステルに由来する構造単位の量は、最内層(a)の全構造単位に対して、好ましくは10.1~39質量%、より好ましくは10.5~30質量%である。メタ)アクリル酸アラルキルエステルは、位相差抑制の観点から(メタ)アクリル酸ベンジルが好ましい。(メタ)アクリル酸アラルキルエステルが上記の範囲にあると、得られる架橋ゴム粒子の位相差を抑制することができる。
本発明のコアシェル架橋ゴム粒子に含まれる(メタ)アクリル酸アラルキルエステルとしては、(メタ)アクリル酸ベンジルエステル、(メタ)アクリル酸フェノキシエチルエステル、(メタ)アクリル酸フェネチルエステルが挙げられる。
【0024】
最内層(a)におけるアクリル酸アルキルエステルに由来する構造単位の量は、最内層(a)の全構造単位に対して、好ましくは0~19質量%、より好ましくは0~10質量%である。
【0025】
最内層(a)における共重合可能な他の単量体に由来する構造単位の量は、最内層(a)の全単官能単量体単位に対して、好ましくは0~40質量%、より好ましくは0~30質量%である。
【0026】
最内層(a)における共重合性の多官能性単量体単位に由来する構造単位の量は、最内層(a)の単官能単量体単位(a)の合計量100質量部に対して、好ましくは0.01~5質量部、より好ましくは0.1~1.0質量部、最も好ましくは0.1~0.5質量部である。共重合性の多官能性単量体単位に由来する構造単位の量が少ないほど最内層(a)と内層(b)との結合力が低下する傾向があり、共重合性の多官能性単量体単位に由来する構造単位の量が多いほどフィルムの耐衝撃性が低下する傾向がある。
【0027】
好ましい内層(b)は、アクリル酸アルキルエステル、アクリル酸ベンジル、メタクリル酸アルキルエステルおよび、これらと共重合可能な二重結合を有する他の単量体単位から成る単官能単量体単位(b)、ならびに、多官能性単量体単位を含む。
【0028】
内層(b)におけるアクリル酸アルキルエステルに由来する構造単位の量は、内層(b)の全単官能性単量体単位に対して、好ましくは40~71質量%、より好ましくは50~70質量%である。
内層(b)におけるアクリル酸ベンジルに由来する構造単位の量は、内層(b)の全単官能性単量体単位に対して、好ましくは29~60質量%、より好ましくは30~55質量%である。上記の範囲にあると、得られる架橋ゴム粒子の位相差を抑制することができる。
【0029】
内層(b)におけるメタクリル酸アルキルエステルに由来する構造単位の量は、内層(b)の全単官能性単量体単位に対して、好ましくは0~19質量%、より好ましくは0~10質量%である。
内層(b)における共重合可能な他の単量体に由来する構造単位の量は、内層(b)の全単官能性単量体単位に対して、好ましくは40~0質量%、より好ましくは30~0質量%である。
【0030】
内層(b)における共重合性の多官能性単量体単位に由来する構造単位の量は、内層(b)の単官能単量体単位(b)の合計量100質量部に対して、好ましくは1.6~10質量部、より好ましくは1.75~7.5質量部、さらに好ましくは1.9~5質量部である。共重合性の多官能性単量体単位に由来する構造単位の量が上記の範囲にあると、位相差(光弾性係数)を抑制し、十分な耐衝撃性を付与し、高い弾性率を付与しながらも、DM/DWの比を前述の範囲にすることができ、溶剤分散性を改善したコアシェル架橋ゴム粒子が得られる。
【0031】
好ましい最外層(c)の硬質重合体は、必須成分としてメタクリル酸アルキルエステル単位と(メタ)アクリル酸アラルキルエステル単位を含み、任意成分としてアクリル酸アルキルエステル単位および、これらと共重合可能な他の単量体単位を含む。
最外層(c)の硬質重合体におけるメタクリル酸アルキルエステル単位の量は、硬質重合体の全構造単位に対して、好ましくは45~89.9質量%、より好ましくは70~89.9質量%である。
【0032】
最外層(c)の硬質重合体における(メタ)アクリル酸アラルキルエステル単位の量は、硬質重合体の全構造単位に対して、好ましくは10.1~39質量%、より好ましくは10.1~30質量%である。(メタ)アクリル酸アラルキルエステルは、位相差抑制の観点から(メタ)アクリル酸ベンジルが好ましい。(メタ)アクリル酸アラルキルエステルが上記の範囲にあると、抑制された位相差、高い弾性率を付与しながらも、DM/DWの比を前述の範囲にすることができ、溶剤分散性を改善したコアシェル架橋ゴム粒子を得ることが出来る。
【0033】
最外層(c)の硬質重合体におけるアクリル酸アルキルエステル単位の量は、硬質重合体の全構造単位に対して、好ましくは0~19質量%、より好ましくは0~10質量%である。
最外層(c)の硬質重合体における共重合可能な他の単量体に由来する構造単位の量は、硬質重合体の全構造単位に対して、好ましくは40~0質量%、より好ましくは30~0質量%である。
【0034】
本発明のコアシェル架橋ゴム粒子(D)が3層で構成されている場合の各層の質量比は、最内層(a)が0~40質量%であるのが好ましく、0~30質量%がより好ましく、0~20質量%がさらに好ましい。内層(b)は、30~70質量%であるのが好ましく、35~65質量%がより好ましく、45~65質量%がさらに好ましい。最外層(c)は、DM/DWの比を前述の範囲にすることができる点で30~70質量%であるのが好ましく、35~65質量%がより好ましく、35~55質量%がさらに好ましい。
【0035】
本発明のコアシェル架橋ゴム粒子(D)が内層(b)と最外層(c)の2層で構成されている場合の各層の質量比は、内層(b)は、30~70質量%であるのが好ましく、35~65質量%がより好ましく、45~65質量%がさらに好ましい。最外層(c)は、DM/DWの比を前述の範囲にすることができる点で30~70質量%であるのが好ましく、35~65質量%がより好ましく、35~55質量%がさらに好ましい。
【0036】
本明細書において、「共重合可能な他の単量体」としては、例えば、スチレン、p-メチルスチレン、o-メチルスチレン、α-メチルスチレン、ビニルナフタレンなどの芳香族ビニル単量体、アクリロニトリルなどの不飽和ニトリル系単量体、エチレン、プロピレンなどのオレフィン系単量体、塩化ビニル、塩化ビニリデン、フッ化ビニリデンなどのハロゲン化ビニル系単量体、アクリル酸、メタクリル酸、無水マレイン酸などの不飽和カルボン酸系単量体、酢酸ビニル、N-プロピルマレイミド、N-シクロヘキシルマレイミド、N-o-クロロフェニルマレイミドなどのマレイミド系単量体、メタクリル酸フェニルなどのメタクリル酸アリールエステル;メタクリル酸シクロへキシル、メタクリル酸ノルボルニル、メタクリル酸トリシクロデカニルなどのメタクリル酸シクロアルキルエステル;アクリル酸フェニルなどのアクリル酸アリールエステル;アクリル酸シクロへキシル、アクリル酸ノルボルニルなどのアクリル酸シクロアルキルエステル;アクリルアミド;メタクリルアミド;アクリロニトリル;メタクリロニトリル;などの一分子中に重合性の炭素-炭素二重結合を一つだけ有するビニル系単量体を挙げることができ、これらの単量体は単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0037】
本明細書において、「メタクリル酸アルキルエステル」としては、アルキル基の炭素数が1~8であるメタクリル酸アルキルエステルが挙げられ、例えば、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、n-プロピルメタリレート、n-ブチルメタクリレート、s-ブチルメタクリレート、t-ブチルメタクリレート、n-ブチルメチルメタクリレート、n-ヘプチルメタクリレート、2-エチルヘキシルメタクリレート、n-オクチルメタクリレートなどが挙げられる。これらのメタクリル酸アルキルエステルは、1種単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。これらのうちでも、メチルメタクリレートが好ましい。
【0038】
本明細書において、「アクリル酸アルキルエステル」としては、アルキル基の炭素数が1~8であるアアクリル酸アルキルエステルが挙げられ、例えば、メチルアクリレート、エチルアクリレート、n-プロピルアクリレート、n-ブチルアクリレート、s-ブチルアクリレート、t-ブチルアクリレート、n-ブチルメチルアクリレート、n-ヘプチルアクリレート、2-エチルヘキシルアクリレート、n-オクチルアクリレートなどが挙げられる。これらのアクリル酸アルキルエステルは、1種単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。これらのうちでも、メチルアクリレートおよび/またはn-ブチルアクリレートが好ましい。
【0039】
本明細書において、「多官能性単量体」は、重合性基を2個以上有する単量体であり、例えば、アリルメタクリレート、アリルアクリレート、モノ-またはジ-アリルマレエート、モノ-またはジ-アリルフマレート、クロチルアクリレート、クロチルメタクリレートなどの異種の重合性基を有する単量体(またはグラフト化剤)、ジアクリル化合物、ジメタクリル化合物、ジアリル化合物、ジビニル化合物、ジエン化合物、トリビニル化合物などの同種の重合性基を有する単量体が挙げられる。同種の重合性基を有する多官能性単量体(又は架橋剤又はグラフト化剤)としては、例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジビニルベンゼン、トリビニルベンゼン、エチレングリコールジアリルエーテル、プロピレングリコールジアリルエーテル、ブタジエンなどが挙げられる。多官能性単量体は、1種単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0040】
本発明のコアシェル架橋ゴム粒子(D)の製造方法は、特に限定されない。例えば、架橋ゴム粒子(D)が3層構成の場合、最内層(a)、内層(b)、および最外層(c)を順次、シード乳化重合法によって形成させてコアシェル多層構造のコアシェル架橋ゴム粒子(D)を得ることができる。架橋ゴム粒子(D)が2層構成の場合、内層(b)、および最外層(c)を順次、シード乳化重合法によって形成させてコアシェル多層構造のコアシェル架橋ゴム粒子(D)を得ることができる。
【0041】
本発明のコアシェル架橋ゴム粒子(D)の凝集粉体の好ましい製造方法は、(メタ)アクリル系単量体の乳化重合を行ってコアシェル架橋ゴム粒子を含有するラテックスを得; 該架橋ゴム粒子を含有するラテックスを凝固させてゴム粒子(D)を含むスラリーを得; 該スラリーを洗浄および脱水し; 脱水されたスラリーを乾燥させる工程を含むものである。
【0042】
例えば、3層構成の本発明のコアシェル架橋ゴム粒子(D)のより好ましい製造方法は、乳化剤の存在下に、メタクリル酸アルキルエステル45~89.9質量%、より好ましくは70~89.5質量%、(メタ)アクリル酸アラルキルエステル10.1~39質量%、より好ましくは10.1~30質量%、アクリル酸アルキルエステル0~19質量%、より好ましくは0~10質量%、共重合可能な他の単量体0~40質量%、より好ましくは0~30質量、および多官能性単量体0.01~5質量部(メタクリル酸アルキルエステル、(メタ)アクリル酸アラルキルエステル及びアクリル酸アルキルエステルの合計100質量部に対して)、より好ましくは0.1~1.0質量部、最も好ましくは0.1~0.5質量部を含む単量体混合物を重合(1st重合)して、最内層(a)を含有するラテックス(I)を得; ラテックス(I)の存在下に、アクリル酸アルキルエステル40~71質量%、より好ましくは50~70質量%、アクリル酸ベンジル29~60質量%、より好ましくは30~50質量%、メタクリル酸アルキルエステル0~19質量%、より好ましくは0~10質量%、共重合可能な他の単量体0~40質量%、より好ましくは0~30質量%、および多官能性単量体(アクリル酸アルキルエステル、アクリル酸ベンジル、メタクリル酸アルキルエステル、共重合可能な他の単量体の合計量100質量部に対して)1.6~10質量部、より好ましくは1.75~7.5質量部、さらに好ましくは1.9~5質量部を含む単量体混合物を重合(2nd重合)して最内層(a)と内層(b)とを含有するラテックス(II)を得; ラテックス(II)の存在下に、メタクリル酸アルキルエステル45~89.9質量%、より好ましくは70~89.9質量%、(メタ)アクリル酸アラルキルエステル10.1~39質量%、より好ましくは10.1~30質量%、アクリル酸アルキルエステル0~19質量%、より好ましくは0~10質量%、およびこれらと共重合可能な他の単量体0~40質量%、より好ましくは0~30質量%を含む単量体混合物を重合(3rd重合)して最内層(a)と内層(b)と最外層(c)とを含有してなるラテックス(III)を得; ラテックス(III)を凝固させてスラリーを得; 該スラリーを洗浄および脱水し; 脱水されたスラリーを乾燥させる工程を含むものである。
【0043】
例えば、2層構成の本発明のコアシェル架橋ゴム粒子(D)のより好ましい製造方法は、アクリル酸アルキルエステル40~71質量%、より好ましくは50~70質量%、アクリル酸ベンジル29~60質量%、より好ましくは30~50質量%、メタクリル酸アルキルエステル0~19質量%、より好ましくは0~10質量%、共重合可能な他の単量体0~40質量%、より好ましくは0~30質量%、および多官能性単量体(アクリル酸アルキルエステル、アクリル酸ベンジル、メタクリル酸アルキルエステル、共重合可能な他の単量体の合計量100質量部に対して)1.6~10質量部、より好ましくは1.75~7.5質量部、さらに好ましくは1.9~5質量部を含む単量体混合物を重合(1st重合)して内層(b)を含有するラテックス(IIa)を得; ラテックス(IIa)の存在下に、メタクリル酸アルキルエステル45~89.9質量%、より好ましくは70~89.9質量%、(メタ)アクリル酸アラルキルエステル10.1~39質量%、より好ましくは10.1~30質量%、アクリル酸アルキルエステル0~19質量%、より好ましくは0~10質量%、およびこれらと共重合可能な他の単量体0~40質量%、より好ましくは0~30質量%を含む単量体混合物を重合(2nd重合)して内層(b)と最外層(c)とを含有してなるラテックス(IIIa)を得; ラテックス(IIIa)を凝固させてスラリーを得; 該スラリーを洗浄および脱水し; 脱水されたスラリーを乾燥させる工程を含むものである。
【0044】
重合は公知の方法で行うことができる。ラテックスの存在下に行う重合のうちシード乳化重合はコアシェル多層構造アクリル系重合体を得るために好ましく用いられる。乳化重合、またはシード重合は、当技術分野においてよく知られた方法であるので、常法に従い実施することができる。
【0045】
各重合において使用される単量体、具体的にはメタクリル酸アルキルエステル、アクリル酸アルキルエステル、(メタ)アクリル酸アラルキルエステルもしくはアクリル酸ベンジル、共重合可能な他の単量体、および多官能性単量体を前述した割合で混ぜ合わせたものを、反応系に供給する際の速度は、各重合において使用される単量体の合計量100質量%に対して、好ましくは0.05~3質量%/分、より好ましくは0.1~1質量%/分、さらに好ましくは0.2~0.8質量%/分である。このような速度で供給することによって、望ましくない重合体凝集物の生成や重合体スケールの反応槽への付着を防ぐことができ、重合体凝集物や重合体スケールの混入で生じることがあるフィッシュアイなどの外観不良を樹脂フィルムに生じさせないようにすることができる。
【0046】
各重合において使用される重合開始剤は、特に制限されない。重合開始剤としては、例えば、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウムなどの水溶性の無機系開始剤; 無機系開始剤に亜硫酸塩またはチオ硫酸塩などを併用してなるレドックス開始剤; 有機過酸化物に第一鉄塩またはナトリウムスルホキシレートなどを併用してなるレドックス開始剤などを挙げることができる。重合開始剤は重合開始時に一括して反応系に添加してもよいし、反応速度などを勘案して重合開始時と重合途中とに分割して反応系に添加してもよい。重合開始剤の使用量は、例えば、コアシェル架橋ゴム粒子(D)の水中での平均粒子径(DW)が前述の範囲になるように適宜設定できる。
【0047】
各重合において使用される乳化剤は、特に制限されない。乳化剤としては、例えば、長鎖アルキルスルホン酸塩、スルホコハク酸アルキルエステル塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩などのアニオン系乳化剤; ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテルなどのノニオン系乳化剤; ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル硫酸ナトリウムなどのポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸ナトリウムなどのポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、ポリオキシエチレントリデシルエーテル酢酸ナトリウムなどのアルキルエーテルカルボン酸塩などのノニオン・アニオン系乳化剤を挙げることができる。乳化剤の使用量は、例えば、コアシェル架橋ゴム粒子のDW,DMが前述の範囲になるように適宜設定できる。
【0048】
本発明においては、1st重合、2nd重合および3rd重合(2層構成の場合、1st重合および2nd重合)を一つの重合槽中で順次行ってもよいし、1st重合、2nd重合および3rd重合(2層構成の場合、1st重合および2nd重合)の度に重合槽を変えて順次行ってもよい。本発明においては各重合を一つの重合槽中で順次行うことが好ましい。また、重合を行っている間の反応系の温度は、好ましくは30~120℃、より好ましくは50~100℃である。
【0049】
また、1st重合、2nd重合および3rd重合(2層構成の場合、1st重合および2nd重合)のいずれかにおいて、必要に応じて、反応性紫外線吸収剤、例えば2-[2-ヒドロキシ-5-(2-メタクリロイルオキシエチル)フェニル]-2H-1,2,3-ベンゾトリアゾールなどを添加することができる。反応性紫外線吸収剤がコアシェル架橋ゴム粒子の分子鎖に導入され、コアシェル架橋ゴム粒子の耐紫外線性が向上する。反応性紫外線吸収剤の添加量は、重合に使用される単量体の合計量100質量部に対して、好ましくは0.05~5質量部である。
【0050】
連鎖移動剤は、分子量の調節のために、各重合において使用することができる。3rd重合(2層構成の場合、2nd重合)において、連鎖移動剤を反応系に添加して硬質重合体(c)の重量平均分子量を調節することができる。各重合に使用される連鎖移動剤は、特に限定されない。連鎖移動剤としては、例えば、n-オクチルメルカプタン、n-ドデシルメルカプタン、t-ドデシルメルカプタン、n-ヘキサデシルメルカプタンなどのアルキルメルカプタン類; ジメチルキサントゲンジスルフィド、ジエチルキサントゲンジスルフィドなどのキサントゲンジスルフィド類; テトラチウラムジスルフィドなどのチウラムジスルフィド類; 四塩化炭素、臭化エチレンなどのハロゲン化炭化水素などを挙げることができる。連鎖移動剤の使用量は、各重合において重合体を所定の分子量に調節できる範囲で適宜設定できる。3rd重合(2層構成の場合、2nd重合)において使用される連鎖移動剤の量は、硬質重合体の重量平均分子量およびDM/DWの比を前述の範囲にすることができる量である。3rd重合において使用される連鎖移動剤の量は、3rd重合に使用される重合開始剤の量などによっても変わるが、3rd重合において使用される単量体、具体的にはメチルメタクリレートおよびアルキルアクリレートの合計量100質量部に対して、好ましくは0.05~2質量部、より好ましくは0.08~1質量部である。
【0051】
本発明において、上記乳化ラテックスからのコアシェル架橋ゴム粒子(D)の回収は、該乳化ラテックスを凝固させることによって行われる。ラテックスの凝固は、公知の方法で行うことができる。凝固法としては、凍結凝固法、塩析凝固法、酸析凝固法などを挙げることができる。これらのうち、高品質な凝固物を連続的に生産することのできる塩析凝固法が好ましい。
【0052】
本発明に用いることができる凝固剤としては、該乳化重合ラテックスを凝析・凝固し得る性質を有する無機酸若しくはその塩、または有機酸若しくはその塩の水溶液であればよい。
【0053】
具体的な前記無機酸溶液、無機酸の塩溶液、有機酸溶液または有機酸の塩溶液としては、例えば、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化リチウム、臭化ナトリウム、臭化カリウム、臭化リチウム、ヨウ化カリウム、ヨウ化ナトリウムなどのアルカリ金属ハロゲン化物; 硫酸カリウム、硫酸ナトリウムなどのアルカリ金属硫化物; 硫酸アンモニウム; 塩化アンモニウム; 硝酸ナトリウム、硝酸カリウムなどのアルカリ金属硝化物; 塩化カルシウム硫酸第一鉄、硫酸マグネシウム、酢酸カルシウム、硫酸亜鉛、硫酸銅、塩化バリウム、塩化第一鉄、塩化第二鉄、塩化マグネシウム、硫酸第二鉄、硫酸アルミニウム、カリウムミョウバン、鉄ミョウバンなどの無機塩類もしくは有機塩類の水溶液を単独または2種以上を混合したものを挙げることができる。これらの中でも、塩化ナトリウム、塩化カリウム、硫酸ナトリウム、塩化アンモニウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、硫酸マグネシウム、塩化バリウム、酢酸カルシウムなどの一価または二価の無機酸もしくは有機酸の塩の水溶液が好適に使用できる。前記凝固剤の添加方法には特に制限は無く、一括添加、分割添加、あるいは連続的添加を用いることができる。
【0054】
乳化ラテックスは、最内層(a)、内層(b)、および最外層(c)からなる3層または、内層(b)、および最外層(c)からなる2層構造アクリル系重合体ラテックス単独または2種以上を混合したもの、または最内層(a)、内層(b)、および最外層(c)または、内層(b)、および最外層(c)からなる多層構造アクリル系重合体ラテックスと、少なくとも1つの単層アクリル系重合体ラテックスを混合したもの、に凝固剤を添加させることで凝固させることができる。
【0055】
本発明のメタクリル樹脂組成物は、前記コアシェル架橋ゴム粒子(D)と、熱可塑性樹脂(E)とを含む。
(2)熱可塑性樹脂(E)
本発明に用いられる熱可塑性樹脂(E)は特に制限されないが、メタクリル系樹脂が好ましい。
本発明に係る樹脂組成物の熱可塑性樹脂(E)と架橋ゴム粒子(D)の質量比(E)/(D)は、耐衝撃性の観点から98/2~10/90が好ましく、90/10~30/70がより好ましく、85/15~40/60がさらに好ましい。
本発明の1つの好ましい実施形態において、熱可塑性樹脂(E)は、
熱可塑性樹脂(E)が、下記の(i)~(v)
【0056】
【化2】
のいずれかの基を含む環構造からなる群から選ばれる少なくとも一つの環構造を主鎖に有する構造単位(R)と、メタクリル酸メチルに由来する構造単位(M)とを含むメタクリル系樹脂である。
【0057】
上記(i)を含む環構造は、置換基を有するラクトン環を含む環構造であり、特開2004-168882に記載の構造を包含する。特開2004-168882の開示全体が参照により本明細書中に援用される。
上記(ii)を含む環構造は、ラクトン環を含む環構造であり、下記式(1)で表される環構造を包含する。
上記(iii)を含む環構造は、酸無水物基を含む環構造であり、下記の無水マレイン酸単位、無水グルタル酸単位を包含する。
上記(iv)を含む環構造は、イミド基を含む環構造であり、下記のN-置換マレイミド単位、グルタルイミド単位を包含する。
上記(v)を含む環構造は、エーテル基を含む環構造であり、下記のテトラヒドロピラン環構造単位を包含する。
【0058】
本発明の好ましい1つの実施形態において、熱可塑性樹脂(E)は、芳香族ビニルモノマーに由来する構造単位(N)を好ましくは0~19.9質量%、より好ましくは0~17.5質量%含む。芳香族ビニルモノマーとしては、スチレン、α-メチルスチレン、p-メチルスチレン、m-メチルスチレンなどが挙げられ、スチレンが好ましい。
【0059】
本発明に係る樹脂組成物に含有される熱可塑性樹脂(E)と架橋ゴム粒子(D)との合計量は、好ましくは40~100質量%、より好ましくは60~100質量%、さらに好ましくは70~100質量%、最も好ましくは80~100質量%である。
【0060】
熱可塑性樹脂としては、屈折率ndが1.495~1.550であれば特に限定は無い。
より好ましい熱可塑性樹脂もしくは樹脂組成物としては、以下の1)、2)が挙げられる。
1)本発明の1つの好ましい実施形態において、熱可塑性樹脂(E)は、メタクリル酸メチルに由来する構造単位(M)と、ラクトン環単位、無水マレイン酸単位、無水グルタル酸単位、グルタルイミド単位、N-置換マレイミド単位、およびテトラヒドロピラン環構造単位からなる群より選ばれた、主鎖に環構造を有する少なくとも1種の環構造単位(R)とを含むメタクリル系樹脂(E)が挙げられる。本発明の1つの好ましい実施形態の樹脂組成物は、このメタクリル系樹脂(E)と、架橋ゴム粒子(D)を含有し、メタクリル系樹脂(E)と架橋ゴム粒子(D)の質量比(E)/(D)が95/5~10/90である樹脂組成物である。
【0061】
2)本発明の他の1つの好ましい実施形態において、熱可塑性樹脂(E)は、メタクリル酸環式炭化水素エステルに由来する構造単位(e1)10~50質量%、メタクリル酸環式炭化水素エステル以外のメタクリル酸エステルに由来する構造単位(e2)50~90質量%、およびアクリル酸エステルに由来する構造単位(e3)0~20質量%を含有してなるメタクリル系樹脂(E)である。本発明の1つの好ましい実施形態の樹脂組成物は、このメタクリル系樹脂(E)と、架橋ゴム粒子(D)を含有し、メタクリル系樹脂(E)と架橋ゴム粒子(D)の質量比(E)/(D)が95/5~10/90である樹脂組成物である。
【0062】
以下に好ましい熱可塑性樹脂(E)であるメタクリル系樹脂(E)について詳しく説明する。
本発明の好ましい実施形態の熱可塑性樹脂組成物は、1種または2種以上のメタクリル系樹脂(E)を含むことができる。
【0063】
以下、メタクリル酸メチルに由来する構造単位(M)は、単に「メタクリル酸メチル単位(M)」と表記する場合がある。
他の単量体に由来する構造単位ついても、同様に表記する場合がある。
【0064】
メタクリル系樹脂(E)の製造方法は特に制限されず、公知方法を適用することができる。
メタクリル酸メチル、環構造単位(R)の原料単量体、必要に応じて他の単量体、および重合開始剤等の重合反応に必要な原料を用い、公知の重合法によりメタクリル系樹脂(E)の製造することができる。
公知の重合法としては、懸濁重合法、(連続)塊状重合法、溶液重合法、および乳化重合法等のラジカル重合法;およびアニオン重合法等が挙げられる。
【0065】
あらかじめ環構造を有する単量体を含む複数種の単量体を用いて重合を行う上記方法の他、公知方法により、メタクリル酸メチル単位(M)を含み、主鎖に環構造単位(R)を有さないメタクリル系樹脂を製造した後、主鎖に環構造を導入して、環構造単位(R)を形成する方法でもよい。
【0066】
メタクリル系樹脂(E)の製造方法は、環構造単位(R)の種類に応じて選定される。環構造単位(R)としては、ラクトン環単位、無水マレイン酸単位、無水グルタル酸単位、グルタルイミド単位、N-置換マレイミド単位、テトラヒドロピラン環構造単位が挙げられる。
【0067】
(ラクトン環単位)
ラクトン環単位としては特に制限されず、公知のものを1種または2種以上用いることができる。
【0068】
製造容易性、製造収率、および構造安定性等の点で、ラクトン環は好ましくは4~8員環、より好ましくは5~6員環、特に好ましくは6員環である。
【0069】
6員環のラクトン環単位としては、下記式(1)で表される構造、および特開2004-168882号公報に記載の構造等が挙げられる。中でも、下記式(1)で表される構造が特に好ましい。
【0070】
【0071】
式(1)中、R11~R13はそれぞれ独立に、水素原子または炭素数1~20の有機残基である。
上記有機残基は炭素数が1~20の範囲内であれば特には限定されず、例えば、直鎖若しくは分岐状のアルキル基、直鎖若しくは分岐状のアルキレン基(メチレン、エチレン、プロピレン、ブチレンなど)、アリール基(フェニル、トルイル、キシリル、ビフェニル、ナフチルなど)、-OAc基、および-CN基等が挙げられる。有機残基は酸素原子を含んでいてもよい。
本明細書において、「Ac」はアセチル基を示す。
R11~R13が有機残基である場合、その炭素数は好ましくは1~10であり、より好ましくは1~5である。R11は水素原子が好ましく、R12およびR13はメチル基が好ましい。
【0072】
ラクトン環単位を含むメタクリル系樹脂(E)の製造方法は特に制限されず、公知の方法を用いることができる。
重合工程によって分子鎖中に水酸基とエステル基とを有する重合体を得、得られた重合体を加熱処理してラクトン環構造を重合体に導入するラクトン環化縮合工程を行う方法が好ましい。
【0073】
(無水マレイン酸単位)
無水マレイン酸単位としては特に制限されず、公知のものを1種または2種以上用いることができる。
【0074】
例えば、国際公開第2014-021264号に記載の樹脂およびマレイン酸変性MAS樹脂(メタクリル酸メチル-アクリロニトリル-スチレン共重合体)の構成単位が好ましい。
【0075】
マレイン酸変性樹脂としては例えば、(無水)マレイン酸変性MS樹脂、(無水)マレイン酸変性MAS樹脂(メタクリル酸メチル-アクリロニトリル-スチレン共重合体)、(無水)マレイン酸変性MBS樹脂、(無水)マレイン酸変性AS樹脂、(無水)マレイン酸変性AA樹脂、(無水)マレイン酸変性ABS樹脂、エチレン-無水マレイン酸共重合体、エチレン-(メタ)アクリル酸-無水マレイン酸共重合体、および無水マレイン酸グラフトポリプロピレン等が挙げられる。
【0076】
無水マレイン酸単位としては、下記式(2)で表される構造が好ましい。
【0077】
【0078】
式(2)中、R21およびR22はそれぞれ独立に、水素原子または炭素数1~20の有機残基である。
【0079】
上記有機残基は炭素数が1~20の範囲内であれば特には限定されず、例えば、直鎖若しくは分岐状のアルキル基、直鎖もしくは分岐状のアルキレン基(メチレン、エチレン、プロピレン、ブチレンなど)、アリール基(フェニル、トルイル、キシリル、ビフェニル、ナフチルなど)、-OAc基、および-CN基等が挙げられる。有機残基は酸素原子を含んでいてもよい。
R21およびR22が有機残基である場合、その炭素数は好ましくは1~10であり、より好ましくは1~5である。
【0080】
R21およびR22はいずれも水素原子が好ましい。その場合、製造容易性の観点から、通常、スチレン等の共重合成分が用いられる。固有複屈折の調節の観点から、スチレン等の芳香族ビニルモノマーに由来する構造単位は20質量%未満であることが好ましい。
無水マレイン酸単位を含むメタクリル系樹脂(E)の製造方法は特に制限されず、公知の方法を用いることができる。
【0081】
(無水グルタル酸単位)
無水グルタル酸単位としては特に制限されず、公知のものを1種または2種以上用いることができる。
無水グルタル酸単位としては、下記式(3)で表される構造が好ましい。
【0082】
【0083】
式(3)中、R31およびR32はそれぞれ独立に、水素原子または炭素数1~5のアルキル基(メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル)である。
【0084】
R31およびR32が有機残基である場合、その炭素数は好ましくは1~4であり、より好ましくは1~3である。R31およびR32はメチル基が好ましい。
無水グルタル酸単位を含むメタクリル系樹脂(E)の製造方法は特に制限されず、公知の方法を用いることができる。
無水グルタル酸単位を与える不飽和カルボン酸単量体と不飽和カルボン酸アルキルエステル単量体とを共重合体とした後、この共重合体を必要に応じて触媒の存在下で加熱し、脱アルコールおよび/または脱水による分子内環化反応を行う方法が好ましい。
【0085】
(グルタルイミド単位)
グルタルイミド単位としては特に制限されず、公知のものを1種または2種以上用いることができる。
グルタルイミド単位としては、下記式(4)で表される構造が好ましい。
【0086】
【0087】
式(4)中、R41およびR42はそれぞれ独立に、水素原子または炭素数1~8のアルキル基(メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル)を示し、R43は、水素原子、炭素数1~18のアルキル基(メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、デシル、ウンデシル、ドデシル、テトラデシル、ヘキサデシル、オクタデシルなど)、炭素数3~12のシクロアルキル基(シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチルなど)、または炭素数6~10のアリール基(フェニル、トルイル、キシリル、ナフチル)、炭素数7~14のアリールアルキル基(ベンジル、フェネチル、ナフチルメチルなど)である。
【0088】
グルタルイミド単位としては、原料入手性、コスト、および耐熱性等の点から、R41およびR42がそれぞれ独立に水素原子またはメチル基であり、R43が水素原子、メチル基、n-ブチル基、シクロヘキシル基、またはベンジル基であることが好ましい。
R41がメチル基であり、R42が水素原子であり、R43がメチル基、n-ブチル基、またはシクロヘキシル基であることがより好ましく、R43はメチル基が特に好ましい。
【0089】
グルタルイミド単位を含むメタクリル系樹脂(E)の製造方法は特に制限されず、公知の方法を用いることができる。
【0090】
(N-置換マレイミド単位)
N-置換マレイミド単位としては特に制限されず、公知のものを1種または2種以上用いることができる。
N-置換マレイミド単位としては、下記式(5)で表される構造が好ましい。
【0091】
【0092】
式(5)中、R51は、炭素数1~12のアルキル基(メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、デシル、ウンデシル、ドデシルなど)、炭素数7~14のアリールアルキル基(ベンジル、フェネチル、ナフチルメチル、フルオレニルメチルなど)、炭素数6~14のアリール基(フェニル、トルイル、キシリル、ビフェニル、ナフチル、アントラセニル、フェナントリルなど)、又は置換基を有してもよい炭素数6~14のアリール基(置換基としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子などのハロゲン原子、メトキシ、エトキシ、ニトロ、アミノ、アセチルアミノ、カルバモイルなど)、炭素数3~12のシクロアルキル基(シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチルなど)であり、フェニル基またはシクロヘキシル基が好ましい。
【0093】
R52およびR53はそれぞれ独立に、水素原子、炭素数1~12のアルキル基(メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、デシル、ウンデシル、ドデシルなど)または炭素数6~14のアリール基(フェニル、トルイル、キシリル、ビフェニル、ナフチル、アントラセニル、フェナントリルなど)であり、水素原子が好ましい。
【0094】
N-置換マレイミド単位を含むメタクリル系樹脂(E)の製造方法は特に制限されず、公知の方法を用いることができる。
【0095】
(テトラヒドロピラン環構造単位)
テトラヒドロピラン環構造単位としては特に制限されず、公知のものを1種または2種以上用いることができる。
テトラヒドロピラン環構造単位としては、下記式(6)で表される構造が好ましい。
【0096】
【0097】
式(6)中、R61およびR62はそれぞれ独立に、水素原子、炭素数1~20の直鎖状炭化水素基(メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、デシル、ウンデシル、ドデシル、テトラデシル、ヘキサデシル、オクタデシル、アイコシルなど)、炭素数1~20の分岐鎖状炭化水素基(イソブチル、tert-ブチル、イソヘキシル、イソオクチル、2-エチルヘキシル、イソデシル、イソドデシル、イソテトラデシル、イソヘキサデシル、イソオクタデシル、イソアイコシルなど)、または環構造を有する炭素数3~20の炭化水素基(シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル、フェニル、トルイル、キシリル、ビフェニル、ナフチル、アントラセニル、フェナントリルなど)である。
【0098】
ラクトン環単位、無水マレイン酸単位、無水グルタル酸単位、グルタルイミド単位、N-置換マレイミド単位、およびテトラヒドロピラン環構造単位の中でも、メタクリル系樹脂(E)の原料入手容易性および製造容易性等を考慮すれば、グルタルイミド単位、ラクトン環単位または無水マレイン酸単位が好ましい。
【0099】
上記したように、好ましい熱可塑性樹脂(E)であるメタクリル系樹脂(E)は、メタクリル酸メチル単位(M)および環構造単位(R)以外に、1種または2種以上の他の構造単位を含んでいてもよい。
【0100】
メタクリル系樹脂(E)は、メタクリル酸メチル単量体(M)以外の(メタ)アクリル系単量体に由来する構造単位((メタ)アクリル系単量体単位)を含んでいてもよい。
他の(メタ)アクリル系単量体としては例えば、
メタクリル酸エチル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸t-ブチル、メタクリル酸イソボルニル、メタクリル酸8-トリシクロ[5.2.1.02,6]デカニル、およびメタクリル酸4-t-ブチルシクロヘキシル等のメタクリル酸メチル以外のメタクリル酸アルキルエステル又はメタクリル酸シクロアルキルエステル;
アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ブチル、およびアクリル酸2-エチルへキシル等のアクリル酸アルキルエステル;
アクリル酸フェニル等のアクリル酸アリールエステル;
アクリル酸シクロへキシル、およびアクリル酸ノルボルネニル等のアクリル酸シクロアルキルエステル;
(メタ)アクリルアミド、および(メタ)アクリロニトリル等の一分子中に重合性の炭素-炭素二重結合を1つだけ有するビニル系単量体等が挙げられる。
これら(メタ)アクリル系単量体は、1種または2種以上用いることができる。
【0101】
メタクリル系樹脂(E)中のメタクリル酸メチル単位(M)および環構造単位(R)の含有量は特に制限されない。
環構造単位(R)の含有量が多い程、第1のメタクリル系樹脂(E)の耐熱性は向上するが、主鎖が剛直となり、樹脂の柔軟性が低下し、他の樹脂との相溶性および成形加工性が低下する傾向がある。
【0102】
熱可塑性樹脂組成物、特にメタクリル系樹脂組成物の耐熱性と成形加工性、およびメタクリル系樹脂(E)と他の樹脂との相溶性等の観点から、メタクリル系樹脂(E)中のメタクリル酸メチル単位(M)の含有量は、好ましくは20質量%以上、より好ましくは50質量%以上、さらに好ましくは70質量%以上である。
熱可塑性樹脂組成物、特にメタクリル系樹脂組成物の耐熱性およびメタクリル系樹脂(E)と他の樹脂との相溶性等の観点から、第1のメタクリル系樹脂(E)中の環構造単位(R)の含有量は、好ましくは50質量%以下、より好ましくは40質量%以下、さらに好ましくは30質量%以下である。
【0103】
熱可塑性樹脂(E)、特にメタクリル系樹脂(E)の重量平均分子量(Mw)、分子量分布、ガラス転移温度(Tg)、メルトフローレート(MFR)、および三連子表示のシンジオタクティシティ(rr)等の物性は特に制限されず、成形加工性および耐熱性等の樹脂特性に応じて、好ましい範囲に調整される。
【0104】
本明細書において、「重量平均分子量(Mw)および数平均分子量(Mn)」は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)で測定したクロマトグラムを標準ポリスチレンの分子量に換算した値である。
本明細書において、「分子量分布」は、重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比、すなわちMw/Mnにより定義される。
【0105】
熱可塑性樹脂(E)、の重量平均分子量(Mw)を「Mw(E)」とする。Mw(E)は、好ましくは200,000~2,000,000、より好ましくは250,000~2,000,000、特に好ましくは300,000~2,000,000である。
Mw(E)が200000以上であると、本発明の熱可塑性樹脂組成物の溶融製膜時の製膜安定性が高まり、また得られる成形体の強度および靭性等が向上する傾向となる。
Mw(E)が2000000以上であると、熱可塑性樹脂(E)、の製造が困難となる。
【0106】
熱可塑性樹脂(E)の分子量分布(Mw/Mn)は、好ましくは1.2~5.0、より好ましくは1.3~3.5である。
分子量分布(Mw/Mn)が1.2以上であることで、熱可塑性樹脂(E)の流動性や製膜安定性が向上し、得られるフィルムは表面平滑性等に優れる傾向となる。分子量分布(Mw/Mn)が5.0以下であることで、得られるフィルムは耐衝撃性および靭性等に優れる傾向となる。
【0107】
熱可塑性樹脂(E)のガラス転移温度(Tg)は特に制限されず、好ましくは120℃以上、より好ましくは123℃以上、特に好ましくは124℃以上である。ガラス転移温度(Tg)の上限は特に制限されず、通常160℃程度である。
ガラス転移温度(Tg)が上記範囲内にあると、熱可塑性樹脂(E)の耐熱性が良好であり、得られるフィルムの熱収縮等の変形が起こり難い。
【0108】
<熱可塑性樹脂組成物>
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、透明性や強度などの物性を損なわない範囲で、慣用の添加剤を含んでもよい。添加剤としては、例えば、紫外線吸収剤、安定剤、離型剤、帯電防止剤、難燃剤、可塑剤、分散剤、流動調整剤、レベリング剤、消泡剤、表面改質剤、耐熱性改良剤、脆性改質剤、撥水性改良剤又は光学発現剤などが利用できる。可塑剤としては、フタル酸エステル系、脂肪酸エステル系、トリメリット酸エステル系、リン酸エステル系、ポリエステル系、あるいはエポキシ系等が挙げられる。
紫外線吸収剤としては、ベンゾトリアゾール系、2 - ヒドロキシベンゾフェノン系又はサリチル酸フェニルエステル系のもの等が挙げられる。例えば、2-(5-メチル-2-ヒドロキシフェニル) ベンゾトリアゾール、2-[2-ヒドロキシ-3,5- ビス(α ,α-ジメチルベンジル)フェニル]-2H-ベンゾトリアゾール、2-(3,5-ジ-t-ブチル-2-ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール等のトリアゾール類、2-ヒドロキシ- 4-メトキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-オクトキシベンゾフェノン、2,2’-ジヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン等のベンゾフェノン類を例示することができる。
【0109】
離型剤としては、セチルアルコール、ステアリルアルコールなどの高級アルコール類;ステアリン酸モノグリセライド、ステアリン酸ジグリセライドなどのグリセリン高級脂肪酸エステルなどが挙げられる。 難燃剤としては、例えば、テトラブロモビスフェノールA、デカブロモジフェニルオキシド、臭素化ポリカーボネート等の有機ハロゲン系難燃剤;酸化アンチモン、水酸化アルミニウム、ホウ酸亜鉛、トリクレジルホスフェート等の非ハロゲン系難燃剤などが挙げられる。
【0110】
帯電防止剤としては、例えば、ステアロアミドプロピルジメチル-β-ヒドロキシエチルアンモニウムニトレートなどが挙げられる。
表面改質剤としてはポリブタジエン、CTBN(末端カルボン酸変性ニトリルブタジエンゴム)などが挙げられる。
安定剤としては2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェノール、6-エトキシ-1,2-ジヒドロ-2,2,4-トリメチルキノリンなどが挙げられる。
【0111】
レベリング剤としてはフッ素系界面活性剤などが挙げられる。
消泡剤としてはアクリル系共重合物、シリコーンなどが挙げられる。
これらの添加剤は、それぞれ、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。添加剤の割合は、メタクリル樹脂組成物100質量部に対して、例えば、0.01~10質量部、好ましくは0.05~5質量部、さらに好ましくは0.1~3質量部程度であってもよい。
【0112】
本発明のメタクリル樹脂組成物は、架橋ゴム粒子(D)と熱可塑性樹脂(E)、及び必要により他の成分を混合することにより製造又は調製できる。混合方法としては、特に限定されず、例えば、リボンブレンダ、タンブルミキサ、ヘンシェルミキサなどの混合機や、オープンローラ、ニーダ、バンバリーミキサ、押出機などの混練機による混合手段などを用いた溶融混練による方法が利用できる。これらの混合方法は、単独で又は2種以上組み合わせてもよい。
【0113】
また、熱可塑性樹脂組成物は、溶媒を混合した塗布液の形態であってもよい。塗布液を構成する溶媒としては、双方を溶解する事が可能であれば特に限定されず、例えば、炭化水素類(ベンゼン、トルエンなど)、ハロゲン系溶媒(ジクロロメタンなど)、エーテル類(ジエチルエーテル、テトラヒドロフランなど)、エステル類(酢酸エチルなど)、ケトン類(アセトン、エチルメチルケトン、ジイソプロピルケトン、シクロヘキサノンなど)など、アルコール類(メタノール、エタノール、ブタノールなど)が例示できる。これらの溶媒は、単独で又は二種以上組み合わせて用いてもよい。
【0114】
溶媒の割合は、塗布性を損なわない範囲であればよく、熱可塑性樹脂組成物の固形分1質量部に対して、溶媒1~100質量部、好ましくは2~50質量部、さらに好ましくは3~30質量部程度であってもよい。溶媒は、単独で又は二種以上組み合わせて用いてもよい。
【0115】
○ドープの作製(溶解工程)
本発明のドープは、前記熱可塑性樹脂組成物及び有機溶剤を含み、熱可塑性樹脂組成物はTgが125℃以上かつ分子量分布が1.0~1.4の樹脂である熱可塑性樹脂(E)を含む。
ドープは、0℃以上の温度(常温又は高温)で処理することからなる一般的な方法で調製することができる。ドープの調製は、通常のソルベントキャスト法におけるドープの調製方法及び装置を用いて実施することができる。なお、一般的な方法の場合は、有機溶剤としてハロゲン化炭化水素(特にジクロロメタン)とアルコール(特にメタノール、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、1-ブタノール、2-ブタノール、t-ブタノール、1-ペンタノール、2-メチル-2-ブタノール及びシクロヘキサノール)を用いることが好ましい。
【0116】
ドープにおける熱可塑性樹脂組成物の含有量は5~70質量%であることが好ましく、10~60質量%であることがより好ましく、15~50質量%であることが更に好ましい。
ドープにおける有機溶剤の含有量は30~95質量%であることが好ましく、40~90質量%であることがより好ましく、50~85質量%であることが更に好ましい。
ドープには、後述する任意の添加剤を添加しておいてもよい。
ドープは、熱可塑性樹脂組成物と有機溶剤と、必要に応じて添加物を攪拌することにより調製することができる。このとき、攪拌中の有機溶剤に各成分の混合物を添加して溶解させてもよいし、攪拌中の有機溶剤に各成分を順次添加して溶解させてもよいし、各成分の溶液を予め調製しておいてそれらの溶液を混合することによりドープを形成してもよい。熱可塑性樹脂組成物の溶解には、常圧で行う方法、主溶剤の沸点以下で行う方法、主溶剤の沸点以上で加圧して行う方法、特開平9-95544号公報、特開平9-95557号公報、または特開平9-95538号公報に記載の如き冷却溶解法で行う方法、特開平11-21379号公報に記載の如き高圧で行う方法等種々の溶解方法を用いることができるが、特に主溶剤の沸点以上の温度で加圧して溶解する方法が好ましい。
【0117】
<ドープの特性>
(ドープの乾燥速度)
本発明におけるドープの乾燥速度は以下の手順で測定される。
(1)熱可塑性樹脂組成物の濃度が16質量%になるようにドープを調製し、このドープを金属支持体上に56μmの厚みになるように流延を行う。
(2)ドープ中の残留溶媒量が20質量%になった時点で、そのドープによって形成されたフィルムを金属支持体から剥離する。
(3)剥離したフィルムを金属枠に四辺を固定し、140℃で乾燥を行う。
(4)5分間放置した後、フィルムを取り出し、フィルムの一部をサンプルとして採取する。
(5)採取したサンプルをクロロホルム溶液に溶解させ、ガスクロマトグラフィーでサンプルに残留している溶剤量の定量行う。
その後、(4)、(5)を繰り返すことによって5分ごとにサンプリングし、検量線を引くことによって、残留溶剤量が0.1質量%以下となる時間(ドープの乾燥時間)を確認する。
【0118】
ドープの乾燥時間は、フィルムの製造効率を上げる観点から、40分未満であることが好ましく、30分以下であることがより好ましく、25分以下であることがさらに好ましい。
【0119】
<フィルムの製造方法>
○流延工程
流延工程では、上記のように調製したドープを、流延用支持体上に流延してフィルム状とし、これを乾燥して流延フィルムを形成する。この流延工程は、ドープを、送液ポンプを通して加圧ダイに送液し、無限に移送する無端の金属ベルト等の支持体上の流延位置に、加圧ダイスリットからドープを流延する工程である。流延ダイ、減圧チャンバ、支持体などの構造、共流延、剥離法、延伸、各工程の乾燥条件、ハンドリング方法、カール、平面性矯正後の巻取方法から、溶剤回収方法、フィルム回収方法まで、特開2005-104148号公報の[0617]段落から[0889]段落に詳しく記述されている。
本発明の製造方法は、未延伸のフィルムを作製した場合に、フィルムの膜厚が、好ましくは20~200μmであるように流延するドープ量を調節する。この範囲より薄い膜厚では、流延膜の強度が低下し加工性が悪化する。一方、この範囲より厚い膜厚では、フィルムに有機溶剤が残存する可能性がある。
【0120】
○有機溶剤蒸発工程
次に、こうして得た流延フィルムを乾燥する。その際、通常は流延フィルムを金属支持体上で加熱し、金属支持体から流延フィルムが剥離可能になるまで有機溶剤を蒸発させる。
【0121】
上記の工程の後、剥離工程、予熱工程、熱処理工程、延伸工程;等を必要に応じ経ることにより、本発明の製造方法によるフィルムが製造される。
【0122】
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、成形体とすることができる。本発明の好ましい1つの実施形態において、成形体は光学部材である。本発明の成形体(又は光学部材)は、前記熱可塑性樹脂組成物の形態(樹脂ペレット、塗布液など)に応じて、公知の成形方法、例えば、真空成形法、射出成形法(インサート法、二色法、プレス法、コアバック法、サンドイッチ法など)、射出圧縮成形法、押出成形法(例えば、Tダイ法、ラミネート法、インフレーション法、共押出法など)、カレンダー法、熱成形法(特に、熱プレス法)、トランスファー成形法、カレンダー成形法、ブロー成形法、溶融成形法、キャスティング成形法などを利用して前記熱可塑性樹脂組成物を成形することにより得ることができる。
【0123】
本発明の成形体がフィルム状(又はシート状)の場合、未延伸フィルムであってもよいが、延伸(又は延伸処理)されたフィルムであってもよい。フィルム状成形体は光学フィルム又はシートを形成してもよい。延伸は、一軸延伸(例えば、縦延伸又は横延伸)又は二軸延伸(例えば、等延伸又は偏延伸)のいずれであってもよい。延伸倍率は、例えば、一軸延伸及び二軸延伸において各方向(又は一方向)にそれぞれ1.1~10倍程度であってもよく、好ましくは1.2~5倍、さらに好ましくは1.3~3倍程度である。本発明では、延伸処理を施しても、弾性率の向上が達成できる。フィルム膜厚は、例えば、1~1000μm、好ましくは10~800μm、さらに好ましくは20~500μm程度であってもよい。
【0124】
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、保存、運搬、または成形時の利便性を高めるために、ペレットなどの形態にすることができる。
【0125】
本発明の熱可塑性樹脂組成物を用いた成形体の用途としては、例えば、広告塔、スタンド看板、袖看板、欄間看板、屋上看板などの看板部品;ショーケース、仕切板、店舗ディスプレイなどのディスプレイ部品;蛍光灯カバー、ムード照明カバー、ランプシェード、光天井、光壁、シャンデリアなどの照明部品;ペンダント、ミラーなどのインテリア部品;ドア、ドーム、安全窓ガラス、間仕切り、階段腰板、バルコニー腰板、レジャー用建築物の屋根、樹脂サッシ、キッチン扉、ドア表層などの建築用部品;航空機風防、パイロット用バイザー、オートバイ、モーターボート風防、バス用遮光板、自動車用サイドバイザー、リアバイザー、ヘッドウィング、ヘッドライトカバーなどの輸送機関係部品;音響映像用銘板、ステレオカバー、テレビ保護マスク、自動販売機用ディスプレイカバーなどの電子機器部品;保育器、レントゲン部品などの医療機器部品;機械カバー、計器カバー、実験装置、定規、文字盤、観察窓などの機器関係部品;ディスプレイ装置のフロントライト用導光板およびフィルム、バックライト用導光板及びフィルム、液晶保護板、フレネルレンズ、レンチキュラーレンズ、各種ディスプレイの前面板、拡散板、反射材などの光学関係部品;道路標識、案内板、カーブミラー、防音壁などの交通関係部品;自動車内装用表面材、携帯電話の表面材、マーキングフィルムなどのフィルム部材;洗濯機の天蓋材やコントロールパネル、炊飯ジャーの天面パネルなどの家電製品用部材;その他、温室、大型水槽、箱水槽、時計パネル、バスタブ、サニタリー、デスクマット、遊技部品、玩具、熔接時の顔面保護用マスクなどが挙げられる。
【実施例】
【0126】
以下、実施例および比較例によって本発明を具体的に説明するが、本発明は下記実施例に限定されない。
【0127】
〈樹脂単量体組成〉
核磁気共鳴装置(Bruker社製 ULTRA SHIELD 400 PLUS)を用い、樹脂10mgに対して重水素化クロロホルム1mL、室温、積算回数64回の条件にて、1H-NMRスペクトルを測定し、そのスペクトルから樹脂中の単量体単位の組成を算出した。
【0128】
(重量平均分子量(Mw))
Mwは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)にて下記の条件でクロマトグラムを測定し、標準ポリスチレンの分子量に換算した値から算出した。
GPC装置:東ソー株式会社製、HLC-8320
検出器:示差屈折率検出器
カラム:東ソー株式会社製のTSKgel SuperMultipore HZM-Mの2本とSuperHZ4000を直列に繋いだものを用いた。
溶離剤: テトラヒドロフラン
溶離剤流量: 0.35ml/分
カラム温度: 40℃
検量線:標準ポリスチレン10点のデータを用いて作成
【0129】
(ガラス転移温度Tg)
JIS-K7121に準拠して、示差走査熱量測定装置(島津製作所製、DSC-50(品番))を用いて、室温から230℃まで一度昇温(1stラン)し、次いで室温まで冷却し、次いで室温から230℃までを10℃/分で昇温(2ndラン)させる条件にてDSC曲線を測定した。このDSC曲線から求められる2ndランの中間点ガラス転移温度を本発明におけるガラス転移温度とした。
【0130】
(全光線透過率)
プレス成形機を使用し、架橋ゴム粒子(D)を230℃にてプレス成形して得られた光路長3mmの試験片について、JIS-K7361-1に準じて、ヘイズメータ(村上色彩研究所製、HM-150)を用いて測定した全光線透過率を、耐衝撃性改良剤の全光線透過率とした。
【0131】
(ヘイズ)
プレス成形機を使用し、架橋ゴム粒子(D)を230℃にてプレス成形して得られた光路長3mmの試験片について、JIS-K7136に準拠して、ヘイズメータ(村上色彩研究所製、HM-150)を用いて測定したヘイズを、架橋ゴム粒子(D)のヘイズとした。
【0132】
(屈折率)
プレス成形機を使用し、架橋ゴム粒子(D)または、架橋ゴム粒子(D)の内層(b)までを重合したもの(D-b)を200℃にてプレス成形して、厚さ3mm板を得、この板から30mm×30mmの試験片を切り出した。この試験片について、精密屈折率計(島津製作所製 カルニュー KPR-20)を用いて、23℃、ヘリウムd線(587.56nm)にて測定した屈折率を、架橋ゴム粒子(D)または架橋ゴム粒子(D)の内層(b)までを重合したもの(D-b)の屈折率(ndCまたはndB)とした。
【0133】
(配向複屈折)
プレス成形機を使用し、架橋ゴム粒子(D)から、幅50mm×長さ40mmのサンプルを作製し、延伸倍率2倍で、ガラス転移温度より10℃高い温度で、加熱延伸を行った。この一軸延伸フィルムのTD方向の中央部から25mm×40mmの試験片を切り出した。この試験片を、自動複屈折計(王子計測機器株式会社製 KOBRA-WR)を用いて、温度23±2℃、湿度50±5%において、波長590nm、入射角0゜で位相差を測定した。この位相差を、デジマティックインジケーター(株式会社ミツトヨ製)を用いて測定した試験片の厚みで割った値を配向複屈折とした。
【0134】
(光弾性係数)
プレス成形機を使用し、架橋ゴム粒子(D)から、幅15mm×長さ60mmの短冊状の試験片を作製し、自動複屈折計(王子計測機器株式会社製KOBRA-WR)を用いて、温度23±2℃湿度50±5%において、波長590nmにて測定した。短冊の一方を固定し、他方は無荷重から1000gfまで100gfごとに順次荷重をかけた状態で複屈折を測定し、得られた結果から単位応力による複屈折の変化量を光弾性係数とした。
【0135】
(厚さ方向位相差Rth)
各実施例および比較例で得られたフィルムから幅40mm×長さ40mmのサンプルを作製し、延伸倍率1.3倍で、ガラス転移温度より10℃高い温度で、加熱延伸を行った。25mm×40mmの試験片を切り出し、この試験片を、自動複屈折計(王子計測機器社製 KOBRA-WR)を用いて、温度23±2℃、湿度50±5%において、波長590nm、40°傾斜方向の位相差値から3次元屈折率nx、ny、nzを求め、前述した式より厚さ方向位相差Rthを計算した。試験片の厚さd(nm)は、デジマティックインジケータ(ミツトヨ社製)を用いて測定し、屈折率nは、デジタル精密屈折計(カルニュー光学工業社製 KPR-20)で測定した。
【0136】
(曲げ弾性率)
ランニングソーを用いて3mm板を切削し、80mm×10mm×3mmの試験片を作製し、JIS-K7171に準拠して、温度23℃相対湿度47%の条件で曲げ弾性率を測定した。測定を5回行い、平均値を曲げ弾性率とした。
【0137】
(シャルピー衝撃強度)
ランニングソーを用いて3mm板を切削し、80mm×10mm×3mm(Vノッチなし)の試験片を作製し、JIS-K7111に準拠して、温度23℃相対湿度47%の条件で衝撃強度を測定した。測定を10回行い、平均値をシャルピー衝撃強度とした。
(コアシェル架橋ゴム粒子(D)の、水中での粒子径(DW))
重合後のエマルジョンを採取して、堀場製作所社製レーザー回折/散乱式粒子径分布測定装置LA-910を用い、光散乱法によりその平均粒子径を求めた。
(コアシェル架橋ゴム粒子(D)の塩化メチレン中での分散粒子径(DM))
コアシェル架橋ゴム粒子の凝集粉体を塩化メチレン中へ5%の濃度で振とう機を用いて一晩、室温下で撹拌することで分散させ、塩化メチレン10mL中へ滴下していき、散乱強度が70~90%となった時点で、堀場製作所社製レーザー回折/散乱式粒子径分布測定装置LA-300を用い、粒子径を光散乱法(体積換算)にて測定した。粒子径としてはメジアン径を採用した。
【0138】
(乾燥時間)
各実施例および比較例に用いた熱可塑性樹脂組成物を含むドープを用いて、本明細書の(ドープの乾燥速度)の欄で記載された手順と同様にフィルムを製膜し、得られたフィルムを6cm四方でサンプリングした。本明細書の(ドープの乾燥速度)の欄で記載された手順と同様に残留溶剤量が0.1質量部以下になる時間を見積もった。測定は2回行い平均値を乾燥時間として、乾燥速度の評価とした。
【0139】
(表面平滑性)
実施例および比較例で得られたフィルム表面に、蛍光灯を反射させた時の反射像について以下の基準で判断した。
<判断基準>
・×:蛍光灯の像が揺らぐ
・〇:蛍光灯の像が揺らがない
【0140】
製造例、実施例中の略号は以下の通りである。
MMA:メタクリル酸メチル
MA:アクリル酸メチル
BzMA:メタクリル酸ベンジル
BzA:アクリル酸ベンジル
BA:アクリル酸n-ブチル
St:スチレン
DVB:ジビニルベンゼン
M110:東亜合成(株)製アロニックスM110(パラクミルフェノールEO変性アクリレート)
ALMA:メタクリル酸アリル
1,3-BD:1,3-ブチレングリコールジメタクリレート
nOM : n-オクチルメルカプタン
phr:ゴム100質量部に対する質量部(parts by weight per 100 parts of rubber)
【0141】
熱可塑性樹脂(E)として以下のメタクリル系樹脂(E)のポリマーを用意した。
・ポリマー(E1);メチルメタクリレート(MMA)100.0質量%、Mw=110,000、懸濁重合により作製(屈折率:1.491)。
・ポリマー(E2);メチルメタクリレート(MMA)100.0質量%、Mw=420,000、懸濁重合により作製(屈折率:1.491)。
・ポリマー(E3);メチルメタクリレート(MMA)90.0質量%、スチレン(St)10.0質量%、Mw=400,000、懸濁重合により作製(屈折率:1.501)。
・ポリマー(E4);メチルメタクリレート(MMA)79.0質量%、スチレン(St)21.0質量%、Mw=400,000、懸濁重合により作製(屈折率:1.511)
【0142】
[製造例1]
[メタクリル系樹脂(E5)の製造]
耐圧硝子工業株式会社製TEM-V1000N(200mL耐圧容器)を用いて、トルエン100質量部/メチルアルコール10質量部にポリマー(E1)100質量部を溶解させた。ドライアイスメタノール混合溶液に反応容器を浸し、冷却した状態でモノメチルアミン12.5質量部を添加し、その後、230℃で2.5時間反応させた。放冷後、反応溶液混合物を塩化メチレンに溶解させ、メタノールを用いて沈殿させて生成物を回収し、屈折率1.501のメタクリル系樹脂(E5)を得た。
【0143】
[製造例2]
[メタクリル系樹脂(E6)の製造]
耐圧硝子工業株式会社製TEM-V1000N(200mL耐圧容器)を用いて、トルエン100質量部/メチルアルコール10質量部にポリマー(E2)100質量部を溶解させた。ドライアイスメタノール混合溶液に反応容器を浸し、冷却した状態でモノメチルアミン12.5質量部を添加し、その後、230℃で2.5時間反応させた。放冷後、反応溶液混合物を塩化メチレンに溶解させ、メタノールを用いて沈殿させて生成物を回収し、屈折率1.500のメタクリル系樹脂(E6)を得た。
【0144】
[製造例3]
[メタクリル系樹脂(E7)の製造]
耐圧硝子工業株式会社製TEM-V1000N(200mL耐圧容器)を用いて、トルエン100質量部/メチルアルコール10質量部にポリマー(E3)100質量部を溶解させた。ドライアイスメタノール混合溶液に反応容器を浸し、冷却した状態でモノメチルアミン12.5質量部を添加し、その後、230℃で2.5時間反応させた。放冷後、反応溶液混合物を塩化メチレンに溶解させ、メタノールを用いて沈殿させて生成物を回収し、屈折率1.510のメタクリル系樹脂(E7)を得た。
【0145】
[実施例1]
[コアシェル架橋ゴム粒子(D1)の製造]
撹拌機、温度計、窒素ガス導入部、単量体導入管および還流冷却器を備えた反応器内に、脱イオン水900質量部、アルキルジフェニルエーテルスルホン酸ナトリウム0.12質量部および炭酸ナトリウム0.30質量部を仕込み、容器内を窒素ガスで十分に置換して実質的に酸素がない状態にした後、内温を80℃に設定した。そこに、過硫酸カリウム3%水溶液10質量部を投入し、5分間撹拌した後、BA 66.2質量%、BzA 33.8質量%およびALMA 4.0phrからなる単量体混合物304質量部を80分かけて連続的に滴下供給し、滴下終了後、重合転化率が98%以上になるようにさらに60分間重合反応を行った。
【0146】
次いで、同反応器内に、過硫酸カリウム3%水溶液を4質量部投入して5分間撹拌した後、MMA 89質量%、BzA 11質量%およびnOM 0.3phrを含む単量体混合物312質量部を80分間かけて連続的に滴下供給した。滴下終了後、重合転化率が98%以上になるようにさらに30分間重合反応を行って、平均粒子径(DW)が266nmであるコアシェル架橋ゴム粒子(D1)を含むエマルジョンを得た。ポリマー中の残存モノマー量は0.5 質量%以下であることをガスクロマトグラムにて確認した。
続いて、コアシェル架橋ゴム粒子(D1)を含むエマルジョンを-30℃で4時間かけて凍結させた。凍結したエマルジョンの2倍量の80℃温水に凍結エマルジョンを投入、溶解してスラリーとした後、20分間80℃に保持した後、脱水し、70℃で乾燥してコアシェル架橋ゴム粒子(D1)の凝集粉体を得た。得られた凝集粉体について、塩化メチレン中の分散粒子径(DM)、を測定し、DM/DWを計算した。また、得られた(D1)の全光線透過率、ヘイズ(Haze)、屈折率、配向複屈折、光弾性係数の結果を表1に示す。
また、架橋ゴム粒子(D1)25質量部、およびメタアクリル系樹脂(E5)75質量部を、ラボブラストミル(東洋精機社製)を用いて温度230℃、回転数90rpmで混練した後、得られた樹脂を230℃で熱プレス成形し、所定の大きさの平板を製造した。シャルピー衝撃強度および曲げ弾性率を測定した。それらの結果を表2に示す。
【0147】
[実施例2]
[コアシェル架橋ゴム粒子(D2)の製造]
撹拌機、温度計、窒素ガス導入部、単量体導入管および還流冷却器を備えた反応器内に、脱イオン水900質量部、アルキルジフェニルエーテルスルホン酸ナトリウム0.60質量部および炭酸ナトリウム0.30質量部を仕込み、容器内を窒素ガスで十分に置換して実質的に酸素がない状態にした後、内温を80℃に設定した。そこに、過硫酸カリウム3%水溶液10質量部を投入し、5分間撹拌した後、BA 66.2質量%、BzA 33.8質量%およびALMA 4.0phrからなる単量体混合物312質量部を80分かけて連続的に滴下供給し、滴下終了後、重合転化率が98%以上になるようにさらに60分間重合反応を行った。
【0148】
次いで、同反応器内に、過硫酸カリウム3%水溶液を4質量部投入して5分間撹拌した後、MMA 89質量%、BzA 11質量%およびnOM 0.3phrを含む単量体混合物300.9質量部を80分間かけて連続的に滴下供給した。滴下終了後、重合転化率が98%以上になるようにさらに30分間重合反応を行って、平均粒子径(DW)が190nmであるコアシェル架橋ゴム粒子(D2)を含むエマルジョンを得た。ポリマー中の残存モノマー量は0.5 %以下であることをガスクロマトグラムにて確認した。
実施例1と同様の方法で、コアシェル架橋ゴム粒子(D2)の凝集粉体を得た後、得られた凝集粉体について、塩化メチレン中の分散粒子径(DM)、を測定し、DM/DWを計算した。また、得られた(D2)の全光線透過率、ヘイズ、屈折率、配向複屈折、光弾性係数の結果を表1に示す。
実施例1と同様の方法で所定の大きさの平板を製造し、シャルピー衝撃強度および曲げ弾性率を測定した。それらの結果を表2に示す。
【0149】
[実施例3]
[コアシェル架橋ゴム粒子(D3)の製造]
撹拌機、温度計、窒素ガス導入部、単量体導入管および還流冷却器を備えた反応器内に、脱イオン水900質量部、アルキルジフェニルエーテルスルホン酸ナトリウム0.24質量部および炭酸ナトリウム0.30質量部を仕込み、容器内を窒素ガスで十分に置換して実質的に酸素がない状態にした後、内温を80℃に設定した。そこに、過硫酸カリウム3%水溶液10質量部を投入し、5分間撹拌した後、MMA 1質量%、BA 65.5質量%、BzA 33.5質量%およびALMA 4.0phrからなる単量体混合物374.4質量部を100分かけて連続的に滴下供給し、滴下終了後、重合転化率が98%以上になるようにさらに60分間重合反応を行った。
【0150】
次いで、同反応器内に、過硫酸カリウム3%水溶液を4質量部投入して5分間撹拌した後、MMA 88.1質量%、BA 1.0質量%、BzA 10.9質量%およびnOM 0.3phrを含む単量体混合物240.72質量部を65分間かけて連続的に滴下供給した。滴下終了後、重合転化率が98%以上になるようにさらに30分間重合反応を行って、平均粒子径(DW)が247nmであるコアシェル架橋ゴム粒子(D3)を含むエマルジョンを得た。ポリマー中の残存モノマー量は0.5 %以下であることをガスクロマトグラムにて確認した。
実施例1と同様の方法で、コアシェル架橋ゴム粒子(D3)の凝集粉体を得た後、得られた凝集粉体について、塩化メチレン中の分散粒子径(DM)、を測定し、DM/DWを計算した。また、得られた(D3)の全光線透過率、ヘイズ、屈折率、配向複屈折、光弾性係数の結果を表1に示す。実施例1と同様の方法で所定の大きさの平板を製造し、シャルピー衝撃強度および曲げ弾性率を測定した。それらの結果を表2に示す。
【0151】
[実施例4]
[コアシェル架橋ゴム粒子(D4)の製造]
撹拌機、温度計、窒素ガス導入部、単量体導入管および還流冷却器を備えた反応器内に、脱イオン水900質量部、アルキルジフェニルエーテルスルホン酸ナトリウム0.60質量部および炭酸ナトリウム0.30質量部を仕込み、容器内を窒素ガスで十分に置換して実質的に酸素がない状態にした後、内温を80℃に設定した。そこに、過硫酸カリウム3%水溶液10質量部を投入し、5分間撹拌した後、MMA 1.0質量%、BA 65.5質量%、BzA 33.5質量%およびALMA 4.0phrからなる単量体混合物374.4質量部を100分かけて連続的に滴下供給し、滴下終了後、重合転化率が98%以上になるようにさらに60分間重合反応を行った。
【0152】
次いで、同反応器内に、過硫酸カリウム3%水溶液を4質量部投入して5分間撹拌した後、MMA 88.1質量%、BA 1.0質量%、BzA 10.9質量%およびnOM0.3phrを含む単量体混合物240.72質量部を65分間かけて連続的に滴下供給した。滴下終了後、重合転化率が98%以上になるようにさらに30分間重合反応を行って、平均粒子径(DW)が185nmであるコアシェル架橋ゴム粒子(D4)を含むエマルジョンを得た。ポリマー中の残存モノマー量は0.5 %以下であることをガスクロマトグラムにて確認した。
実施例1と同様の方法で、コアシェル架橋ゴム粒子(D4)の凝集粉体を得た後、得られた凝集粉体について、塩化メチレン中の分散粒子径(DM)、を測定し、DM/DWを計算した。また、得られた(D4)の全光線透過率、ヘイズ、屈折率、配向複屈折、光弾性係数の結果を表1に示す。実施例1と同様の方法で所定の大きさの平板を製造し、シャルピー衝撃強度および曲げ弾性率を測定した。それらの結果を表2に示す。
【0153】
[実施例5]
[コアシェル架橋ゴム粒子(D5)の製造]
撹拌機、温度計、窒素ガス導入部、単量体導入管および還流冷却器を備えた反応器内に、脱イオン水900質量部、アルキルジフェニルエーテルスルホン酸ナトリウム0.60質量部および炭酸ナトリウム0.30質量部を仕込み、容器内を窒素ガスで十分に置換して実質的に酸素がない状態にした後、内温を80℃に設定した。そこに、過硫酸カリウム3%水溶液10質量部を投入し、5分間撹拌した後、BA 52.0質量%、BzA 48.0質量%およびALMA2.0phrからなる単量体混合物306質量部を80分かけて連続的に滴下供給し、滴下終了後、重合転化率が98%以上になるようにさらに60分間重合反応を行った。
【0154】
次いで、同反応器内に、過硫酸カリウム3%水溶液を4質量部投入して5分間撹拌した後、MMA 75質量%、BzMA 14質量%、BzA 11質量%およびnOM0.3phrを含む単量体混合物300.9質量部を80分間かけて連続的に滴下供給した。滴下終了後、重合転化率が98%以上になるようにさらに30分間重合反応を行って、平均粒子径(DW)が179nmであるコアシェル架橋ゴム粒子(D5)を含むエマルジョンを得た。ポリマー中の残存モノマー量は0.5 %以下であることをガスクロマトグラムにて確認した。
実施例1と同様の方法で、コアシェル架橋ゴム粒子(D5)の凝集粉体を得た後、得られた凝集粉体について、塩化メチレン中の分散粒子径(DM)、を測定し、DM/DWを計算した。また、得られた(D5)の全光線透過率、ヘイズ、屈折率、配向複屈折、光弾性係数の結果を表1に示す。
実施例1と同様の方法で所定の大きさの平板を製造し、シャルピー衝撃強度および曲げ弾性率を測定した。それらの結果を表2に示す。
【0155】
[実施例6]
[コアシェル架橋ゴム粒子(D6)の製造]
撹拌機、温度計、窒素ガス導入部、単量体導入管および還流冷却器を備えた反応器内に、脱イオン水900質量部、アルキルジフェニルエーテルスルホン酸ナトリウム0.10質量部および炭酸ナトリウム0.30質量部を仕込み、容器内を窒素ガスで十分に置換して実質的に酸素がない状態にした後、内温を80℃に設定した。そこに、過硫酸カリウム3%水溶液10質量部を投入し、5分間撹拌した後、BA 66.2質量%、BzA 33.8質量%およびALMA2.0phrからなる単量体混合物306質量部を80分かけて連続的に滴下供給し、滴下終了後、重合転化率が98%以上になるようにさらに60分間重合反応を行った。
【0156】
次いで、同反応器内に、過硫酸カリウム3%水溶液を4質量部投入して5分間撹拌した後、MMA89.5質量%、BzMA 10.5質量%およびnOM0.3phrを含む単量体混合物300.9質量部を80分間かけて連続的に滴下供給した。滴下終了後、重合転化率が98%以上になるようにさらに30分間重合反応を行って、平均粒子径(DW)が311nmであるコアシェル架橋ゴム粒子(D6)を含むエマルジョンを得た。ポリマー中の残存モノマー量は0.5 %以下であることをガスクロマトグラムにて確認した。
実施例1と同様の方法で、コアシェル架橋ゴム粒子(D6)の凝集粉体を得た後、得られた凝集粉体について、塩化メチレン中の分散粒子径(DM)、を測定し、DM/DWを計算した。また、得られた(D6)の全光線透過率、ヘイズ、屈折率、配向複屈折、光弾性係数の結果を表1に示す。
実施例1と同様の方法で所定の大きさの平板を製造し、シャルピー衝撃強度および曲げ弾性率を測定した。それらの結果を表2に示す。
【0157】
[実施例7]
[コアシェル架橋ゴム粒子(D7)の製造]
撹拌機、温度計、窒素ガス導入部、単量体導入管および還流冷却器を備えた反応器内に、脱イオン水900質量部、アルキルジフェニルエーテルスルホン酸ナトリウム0.24質量部および炭酸ナトリウム0.30質量部を仕込み、容器内を窒素ガスで十分に置換して実質的に酸素がない状態にした後、内温を80℃に設定した。そこに、過硫酸カリウム3%水溶液10質量部を投入し、5分間撹拌した後、MMA83質量%、MA 6質量%、BzMA 11質量%およびALMA0.200phrからなる単量体混合物210.42質量部を45分かけて連続的に滴下供給し、滴下終了後、重合転化率が98%以上になるようにさらに60分間重合反応を行った。
【0158】
次いで、同反応器内に、過硫酸カリウム3%水溶液を4質量部投入して5分間撹拌した後、BA66.2質量%、BzA 33.8質量%およびALMA 2.0phrを含む単量体混合物264質量部を70分間かけて連続的に滴下供給した。滴下終了後、重合転化率が98%以上になるようにさらに30分間重合反応を行った。次いで、同反応器内に、過硫酸カリウム3%水溶液を4質量部投入して5分間撹拌した後、MMA89質量%、BzMA 11質量%およびnOM0.2phrを含む単量体混合物126.63質量部を30分間かけて連続的に滴下供給した。滴下終了後、重合転化率が98%以上になるようにさらに30分間重合反応を行い、平均粒子径(DW)が232nmであるコアシェル架橋ゴム粒子(D7)を含むエマルジョンを得た。ポリマー中の残存モノマー量は0.5 %以下であることをガスクロマトグラムにて確認した。
実施例1と同様の方法で、コアシェル架橋ゴム粒子(D7)の凝集粉体を得た後、得られた凝集粉体について、塩化メチレン中の分散粒子径(DM)、を測定し、DM/DWを計算した。また、得られた(D7)の全光線透過率、ヘイズ、屈折率、配向複屈折、光弾性係数の結果を表1に示す。
実施例1と同様の方法で所定の大きさの平板を製造し、シャルピー衝撃強度および曲げ弾性率を測定した。それらの結果を表2に示す。
【0159】
[比較例1]
[コアシェル架橋ゴム粒子(D8)の製造]
撹拌機、温度計、窒素ガス導入部、単量体導入管および還流冷却器を備えた反応器内に、脱イオン水900質量部、アルキルジフェニルエーテルスルホン酸ナトリウム1.0質量部および炭酸ナトリウム0.30質量部を仕込み、容器内を窒素ガスで十分に置換して実質的に酸素がない状態にした後、内温を80℃に設定した。そこに、過硫酸カリウム3%水溶液10質量部を投入し、5分間撹拌した後、BA 66.2質量%、BzA 33.8質量%およびALMA 4.0phrからなる単量体混合物312質量部を80分かけて連続的に滴下供給し、滴下終了後、重合転化率が98%以上になるようにさらに60分間重合反応を行った。
【0160】
次いで、同反応器内に、過硫酸カリウム3%水溶液を4質量部投入して5分間撹拌した後、MMA 89.0質量%、BzA 11.0質量%およびnOM0.3phrを含む単量体混合物300.9質量部を80分間かけて連続的に滴下供給した。滴下終了後、重合転化率が98%以上になるようにさらに30分間重合反応を行って、平均粒子径(DW)が94nmであるコアシェル架橋ゴム粒子(D8)を含むエマルジョンを得た。ポリマー中の残存モノマー量は0.5 %以下であることをガスクロマトグラムにて確認した。
実施例1と同様の方法で、コアシェル架橋ゴム粒子(D8)の凝集粉体を得た後、得られた凝集粉体について、塩化メチレン中の分散粒子径(DM)、を測定し、DM/DWを計算した。また、得られた(D8)の全光線透過率、ヘイズ、屈折率、配向複屈折、光弾性係数の結果を表1に示す。
実施例1と同様の方法で所定の大きさの平板を製造し、シャルピー衝撃強度および曲げ弾性率を測定した。それらの結果を表2に示す。
【0161】
[比較例2]
[コアシェル架橋ゴム粒子(D9)の製造]
撹拌機、温度計、窒素ガス導入部、単量体導入管および還流冷却器を備えた反応器内に、脱イオン水900質量部、アルキルジフェニルエーテルスルホン酸ナトリウム0.12質量部および炭酸ナトリウム0.30質量部を仕込み、容器内を窒素ガスで十分に置換して実質的に酸素がない状態にした後、内温を80℃に設定した。そこに、過硫酸カリウム3%水溶液10質量部を投入し、5分間撹拌した後、BA 72.2質量%、BzA 27.8質量%およびALMA 4.0phrからなる単量体混合物312質量部を80分かけて連続的に滴下供給し、滴下終了後、重合転化率が98%以上になるようにさらに60分間重合反応を行った。
【0162】
次いで、同反応器内に、過硫酸カリウム3%水溶液を4質量部投入して5分間撹拌した後、MMA 95.
0質量%、BzA 5.0質量%およびnOM0.3phrを含む単量体混合物300.9質量部を80分間かけて連続的に滴下供給した。滴下終了後、重合転化率が98%以上になるようにさらに30分間重合反応を行って、平均粒子径(DW)が271nmであるコアシェル架橋ゴム粒子(D9)を含むエマルジョンを得た。ポリマー中の残存モノマー量は0.5 %以下であることをガスクロマトグラムにて確認した。
実施例1と同様の方法で、コアシェル架橋ゴム粒子(D9)の凝集粉体を得た後、得られた凝集粉体について、塩化メチレン中の分散粒子径(DM)、を測定し、DM/DWを計算した。また、得られた(D9)の全光線透過率、ヘイズ、屈折率、配向複屈折、光弾性係数の結果を表1に示す。
実施例1と同様の方法で所定の大きさの平板を製造し、シャルピー衝撃強度および曲げ弾性率を測定した。それらの結果を表2に示す。
【0163】
[比較例3]
[コアシェル架橋ゴム粒子(D10)の製造]
撹拌機、温度計、窒素ガス導入部、単量体導入管および還流冷却器を備えた反応器内に、脱イオン水900質量部、アルキルジフェニルエーテルスルホン酸ナトリウム0.24質量部および炭酸ナトリウム0.30質量部を仕込み、容器内を窒素ガスで十分に置換して実質的に酸素がない状態にした後、内温を80℃に設定した。そこに、過硫酸カリウム3%水溶液10質量部を投入し、5分間撹拌した後、MMA85.0質量%、St15.0質量%およびALMA 0.200phrからなる単量体混合物210.42質量部を45分かけて連続的に滴下供給し、滴下終了後、重合転化率が98%以上になるようにさらに60分間重合反応を行った。
【0164】
次いで、同反応器内に、過硫酸カリウム3%水溶液を4質量部投入して5分間撹拌した後、BA66.2質量%、St 33.8質量%およびALMA 2.0phrを含む単量体混合物264質量部を70分間かけて連続的に滴下供給した。滴下終了後、重合転化率が98%以上になるようにさらに30分間重合反応を行った。次いで、同反応器内に、過硫酸カリウム3%水溶液を4質量部投入して5分間撹拌した後、MMA43.0質量%、BzMA 57質量%およびnOM02phrを含む単量体混合物126.63質量部を30分間かけて連続的に滴下供給した。滴下終了後、重合転化率が98%以上になるようにさらに30分間重合反応を行い、平均粒子径(DW)が223nmであるコアシェル架橋ゴム粒子(D10)を含むエマルジョンを得た。ポリマー中の残存モノマー量は0.5 %以下であることをガスクロマトグラムにて確認した。
実施例1と同様の方法で、コアシェル架橋ゴム粒子(D10)の凝集粉体を得た後、得られた凝集粉体について、塩化メチレン中の分散粒子径(DM)、を測定し、DM/DWを計算した。また、得られた(D10)の全光線透過率、ヘイズ、屈折率、配向複屈折、光弾性係数の結果を表1に示す。
実施例1と同様の方法で所定の大きさの平板を製造し、シャルピー衝撃強度および曲げ弾性率を測定した。それらの結果を表2に示す。
【0165】
[比較例4]
[コアシェル架橋ゴム粒子(D11)の製造]
コンデンサー、温度計および撹拌機を備え且つグラスライニングの施された容量100Lの反応槽に、イオン交換水480質量部を投入し、次いでポリオキシエチレン(EO=3)酢酸ナトリウム(日光ケミカル社製 ニッコール3NEX)0.06質量部を添加し溶解させた。反応槽内の液を撹拌しながら80℃に上げて、スチレン46.7質量%、メタクリル酸メチル48.3質量%、アクリル酸メチル5.0質量%、メタクリル酸アリル1.437phrおよびn-オクチルメルカプタン1.2phrからなる混合物112.1質量部とポリオキシエチレン(EO=3)酢酸ナトリウム(日光ケミカル社製 ニッコール3NEX)0.78質量部とを含む溶液を添加した。その後、3%過硫酸カリウム水溶液4.26質量部を添加して80℃にて乳化重合反応を開始させた。反応熱による反応槽内の温度上昇が収まった後、80℃にて30分間保持して、シード粒子を含有するエマルジョンを得た。次いで第1段目重合で得られたエマルジョンに、3%過硫酸ナトリウム水溶液5.32質量部を添加した。その後、BA63.6質量%、M110 36.4質量%およびメタクリル酸アリル1.010phrからなる混合物142.7質量部とポリオキシエチレン(EO=3)酢酸ナトリウム(日光ケミカル社製 ニッコール3NEX)0.375質量部とを含む溶液を80℃にて60分間かけて滴下してシード乳化重合を行った。滴下終了後、80℃にて60分間保持して、シード粒子を含有するエマルジョンを得た。
【0166】
次いで、第2段目重合で得られたエマルジョンに、3%過硫酸カリウム水溶液2.72質量部を添加した。その後、MMA 55.1質量%、BzMA40.1質量%、MA 4.8質量%およびnOM 0.2phrからなる混合物65.9質量部を80℃にて30分間かけて添加してシード乳化重合を行った。添加終了後、80℃にて60分間保持して、体積基準平均粒径233nmのコアシェル架橋ゴム粒子を40%含有するエマルジョンを得た。
第3段目重合で得られたエマルジョンを室温まで冷やした。次いで該エマルジョンを-20℃にて2時間静置して凍結させた。凍結したエマルジョンをそれの2倍量の80℃の温水に投入し氷解させてスラリーを得た。該スラリーを80℃にて20分間保持し、次いで脱水し、残部を70℃で乾燥させて、コアシェル架橋ゴム粒子からなる凝集粉体(D11)を得た。得られた凝集粉体について、塩化メチレン中の分散粒子径(DM)、を測定し、DM/DWを計算した。また、得られた(D11)の全光線透過率、ヘイズ、屈折率、配向複屈折、光弾性係数の結果を表1に示す。
実施例1と同様の方法で所定の大きさの平板を製造し、シャルピー衝撃強度および曲げ弾性率を測定した。それらの結果を表2に示す。
【0167】
[比較例5]
[コアシェル架橋ゴム粒子(D12)の製造]
コンデンサー、温度計および撹拌機を備え且つグラスライニングの施された容量100Lの反応槽に、イオン交換水480質量部を投入し、次いでポリオキシエチレン(EO=3)酢酸ナトリウム(日光ケミカル社製 ニッコール3NEX)0.06質量部を添加し溶解させた。反応槽内の液を撹拌しながら80℃に上げて、St52.3質量%、BA47.7質量%、DVB3.413phrおよびn-オクチルメルカプタン1.1phrからなる混合物121.9質量部とポリオキシエチレン(EO=3)酢酸ナトリウム(日光ケミカル社製 ニッコール3NEX)0.78質量部とを含む溶液を添加した。その後、3%過硫酸カリウム水溶液4.26質量部を添加して80℃にて乳化重合反応を開始させた。反応熱による反応槽内の温度上昇が収まった後、80℃にて30分間保持して、シード粒子を含有するエマルジョンを得た。次いで第1段目重合で得られたエマルジョンに、3%過硫酸ナトリウム水溶液5.32質量部を添加した。その後、BA 69.3質量%、St 30.7質量%およびALMA2.041phrからなる混合物134.7質量部とポリオキシエチレン(EO=3)酢酸ナトリウム(日光ケミカル社製 ニッコール3NEX)0.375質量部とを含む溶液を80℃にて60分間かけて滴下してシード乳化重合を行った。滴下終了後、80℃にて60分間保持して、シード粒子を含有するエマルジョンを得た。
【0168】
次いで、第2段目重合で得られたエマルジョンに、3%過硫酸カリウム水溶液2.72質量部を添加した。その後、MMA 40.1質量%、BzMA5.9質量%、MA 4.9質量%、St49.1質量%およびnOM 0.2phrからなる混合物64.1質量部を80℃にて30分間かけて添加してシード乳化重合を行った。添加終了後、80℃にて60分間保持して、体積基準平均粒径242nmのコアシェル架橋ゴム粒子を40%含有するエマルジョンを得た。
第3段目重合で得られたエマルジョンを室温まで冷やした。次いで該エマルジョンを-20℃にて2時間静置して凍結させた。凍結したエマルジョンをそれの2倍量の80℃の温水に投入し氷解させてスラリーを得た。該スラリーを80℃にて20分間保持し、次いで脱水し、残部を70℃で乾燥させて、コアシェル架橋ゴム粒子からなる凝集粉体(D12)を得た。得られた凝集粉体について、塩化メチレン中の分散粒子径(DM)、を測定し、DM/DWを計算した。また、得られた(D12)の全光線透過率、ヘイズ、屈折率、配向複屈折、光弾性係数の結果を表1に示す。
実施例1と同様の方法で所定の大きさの平板を製造し、シャルピー衝撃強度および曲げ弾性率を測定した。それらの結果を表2に示す。
【0169】
[比較例6]
[コアシェル架橋ゴム粒子(D13)の製造]
撹拌機付き8L重合装置に、以下の物質を仕込んだ。脱イオン水180部ポリオキシエチレンラウリルエーテルリン酸 0.004部ホウ酸0.5部炭酸ナトリウム0.05部水酸化ナトリウム0.01を部重合機内を窒素ガスで充分に置換した後、内温を80℃にし、過硫酸カリウム0.03部を2%水溶液で入れ、次いでMMA 83.6質量%、BA6.0質量%、BzMA 10.4質量%、ALMA 0.5phrおよび、OM1.1phrからなる混合溶液、32.4部を81分かけて連続的に添加した。さらに60分重合を継続することにより、重合物を得た。重合転化率は98.3%であった。その後、水酸化ナトリウム0.03部を2%水溶液で添加し、過硫酸カリウム0.08部を2%水溶液で添加し、次いでBA68.2質量%、BzMA31.8質量%、ALMA1.5phrからなる混合溶液60部を150分かけて連続的に添加した。添加終了後、過硫酸カリウム純分0.02部を2%水溶液で添加し、120分重合を継続し重合物を得た。重合転化率は98.1%であり、平均粒子径は220nmであった。
【0170】
その後、過硫酸カリウム0.02部を2%水溶液で添加し、MMA80.0質量%、BA20.0質量%からなる混合溶液27.6部を70分かけて連続的に添加し、さらに60分重合を継続し、グラフト共重合体ラテックスを得た。重合転化率は99.6%であった。得られたラテックスを塩化マグネシウムで塩析、凝固し、 水洗、乾燥を行い、凝集粉体(D13)を得た。得られた凝集粉体について、塩化メチレン中の分散粒子径(DM)、を測定し、DM/DWを計算した。また、得られた(D13)の全光線透過率、ヘイズ、屈折率、配向複屈折、光弾性係数の結果を表1に示す。
実施例1と同様の方法で所定の大きさの平板を製造し、シャルピー衝撃強度および曲げ弾性率を測定した。それらの結果を表2に示す。
【0171】
[比較例7]
[コアシェル架橋ゴム粒子(D14)の製造]
撹拌機付き8L重合装置に、以下の物質を仕込んだ。脱イオン水180部ポリオキシエチレンラウリルエーテルリン酸 0.004部、ホウ酸0.5部炭酸ナトリウム0.05部、水酸化ナトリウム0.01部、重合機内を窒素ガスで充分に置換した後、内温を80℃にし、水酸化ナトリウム0.03部を2%水溶液で添加し、過硫酸カリウム0.12部を2%水溶液で添加し、BA68.2質量%、BzMA31.8質量%、ALMA0.974phrからなる混合溶液92.4部を231分かけて連続的に添加した。添加終了後、過硫酸カリウム純分0.03部を2%水溶液で添加し、120分重合を継続し重合物を得た。重合転化率は100.0%であり、平均粒子径は228.6nmであった。その後、過硫酸カリウム0.02部を2%水溶液で添加し、MMA80.0質量%、BA20.0質量%からなる混合溶液27.6部を70分かけて連続的に添加し、さらに60分重合を継続し、グラフト共重合体ラテックスを得た。重合転化率は100.0%であった。
【0172】
得られたラテックスを塩化マグネシウムで塩析、凝固し、水洗、乾燥を行い、白色粉末状の凝集粉体
D14)を得た。得られた凝集粉体について、塩化メチレン中の分散粒子径(DM)、を測定し、DM/DWを計算した。また、得られた(D14)の全光線透過率、ヘイズ、屈折率、配向複屈折、光弾性係数の結果を表1に示す。実施例1と同様の方法で所定の大きさの平板を製造し、シャルピー衝撃強度および曲げ弾性率を測定した。それらの結果を表2に示す。
【0173】
[比較例8]
[コアシェル架橋ゴム粒子(D15)の製造]
撹拌機付き8L重合装置に、以下の物質を仕込んだ。脱イオン水180部ポリオキシエチレンラウリルエーテルリン酸 0.003部ホウ酸0.5部炭酸ナトリウム0.05部水酸化ナトリウム0.01を部重合機内を窒素ガスで充分に置換した後、内温を80℃にし、過硫酸カリウム0.03部を2%水溶液で入れ、次いでMMA 93.2質量%、BA6.0質量%、St0.8質量%、ALMA 0.500phrおよび、OM1.1phrからなる混合溶液、32.4部を81分かけて連続的に添加した。さらに60分重合を継続することにより、重合物を得た。重合転化率は98.6%であった。その後、水酸化ナトリウム0.03部を2%水溶液で添加し、過硫酸カリウム0.08部を2%水溶液で添加し、次いでBA82.0質量%、St18.0質量%、ALMA1.500phrからなる混合溶液60部を150分かけて連続的に添加した。添加終了後、過硫酸カリウム純分0.02部を2%水溶液で添加し、120分重合を継続し重合物を得た。重合転化率は99.3%であり、平均粒子径は220nmであった。
【0174】
その後、過硫酸カリウム0.02部を2%水溶液で添加し、MMA80.0質量%、BA20.0質量%からなる混合溶液27.6部を70分かけて連続的に添加し、さらに60分重合を継続し、グラフト共重合体ラテックスを得た。重合転化率は99.7%であった。得られたラテックスを塩化マグネシウムで塩析、凝固し、 水洗、乾燥を行い、凝集粉体(D15)を得た。得られた凝集粉体について、塩化メチレン中の分散粒子径(DM)、を測定し、DM/DWを計算した。また、得られた(D15)の全光線透過率、ヘイズ、屈折率、配向複屈折、光弾性係数の結果を表1に示す。
実施例1と同様の方法で所定の大きさの平板を製造し、シャルピー衝撃強度および曲げ弾性率を測定した。それらの結果を表2に示す。
【0175】
【0176】
【0177】
[実施例8]
架橋ゴム粒子(D4)25質量部、熱可塑性樹脂(E6)75質量部、ジクロロメタン483質量部、メタノール42質量部をミキシングタンクに投入し、加熱しながら撹拌して、各成分を溶解し、ドープ(F1)を調製した。
【0178】
調製したドープ(F1)を用いて、本明細書の(ドープの乾燥速度)の欄で記載された手順と同様にフィルムを製膜し、得られたフィルムを6cm四方でサンプリングした。本明細書の(ドープ組成物の乾燥速度)の欄で記載された手順と同様に残留溶剤量が0.1質量部以下になる時間を見積もった。測定は2回行い平均値を乾燥時間として、乾燥速度の評価とした。このフィルムの物性(表面平滑性、厚さ方向位相差Rth)を表3に示す。
【0179】
[実施例9、比較例9~11]
架橋ゴム粒子(D)、熱可塑性樹脂(E)の組成を表3のように変更した以外は、実施例8と同様にして、成形体を得た。得られた成形体(表面平滑性、厚さ方向位相差Rth)の物性を表3に示す。
【0180】
【0181】
表1および2に記載の通り、本発明の架橋ゴム粒子は、抑制された位相差、高い透明性、十分な耐衝撃性、高い弾性率を付与しながらも、溶剤分散性を改善した架橋ゴム粒子であることが分かった。
【0182】
表3に示すように、本発明のメタクリル樹脂組成物を用いると、表面平滑性に優れ、光学特性に優れた成形品を得ることが出来る。また、本発明のメタクリル樹脂組成物からなるドープは、乾燥速度が速く、流延法による製造適性に優れることがわかった。