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特許7495995ヨードシラン及びそれからのの組成物を調製する方法
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  • 特許-ヨードシラン及びそれからのの組成物を調製する方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-28
(45)【発行日】2024-06-05
(54)【発明の名称】ヨードシラン及びそれからのの組成物を調製する方法
(51)【国際特許分類】
   C07F 7/12 20060101AFI20240529BHJP
【FI】
C07F7/12 N
C07F7/12 Q
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2022564199
(86)(22)【出願日】2021-04-23
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-06-01
(86)【国際出願番号】 US2021028916
(87)【国際公開番号】W WO2021217048
(87)【国際公開日】2021-10-28
【審査請求日】2023-01-04
(31)【優先権主張番号】63/014,840
(32)【優先日】2020-04-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】505307471
【氏名又は名称】インテグリス・インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】レインマン, スコット エー.
(72)【発明者】
【氏名】キャメロン, トーマス エム.
(72)【発明者】
【氏名】カイパー, デーヴィッド
(72)【発明者】
【氏名】エルメルト, デビット エム.
(72)【発明者】
【氏名】バウム, トーマス エイチ.
(72)【発明者】
【氏名】ドゥベ, ジョナサン ダブリュ.
【審査官】吉森 晃
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第105294752(CN,A)
【文献】特表2018-519233(JP,A)
【文献】NIGEL JOHN CUSSANS,STUDIES RELATED TO THE SYNTHESIS OF TETRACYCLINE ,Thesis, University of London,英国,1978年,p.116,URL<https://core.ac.uk/download/77001288.pdf>
【文献】C. Eaborn ,583. Organosilicon compounds. Part I. The formation of alkyliodosilanes,Journal of the Chemical Society (Resumed),1949年,p.2755-2764
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07F 7/12
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)又は(II)
SiR(I)、又は
Si-Si R(II)
(式中、xは1又は2であり、yは1~3の整数であり、x+yの和は、各Si中心において式(I)では4、式(II)では3であり、Rは水素又はC~Cアルキル基である)
を有するヨードシランを調製するための方法であって、式
SiR又はDSi-SiR
(式中、Dはクロロ又はブロモである)
を有するハロシランを、アルミニウムを含むヨウ化物反応物と接触させることを含む、方法。
【請求項2】
アルミニウムを含むヨウ化物反応物は、式(A):
[M+q[Al(X)(A)
(式中、zは0又は1であり、wは0又は1であり、Mは(i)Li、Na、K、Rb及びCsから選択される第1族金属カチオン、(ii)Mg2+、Ca2+、Sr2+及びBa2+から選択される第2族金属カチオン、並びに(iii)アンモニウム、C~Cアルキル又はベンジルアンモニウムカチオンから選択され、qはMの価数で、1又は2であり、Xはクロロ、ブロモ、又はヨードであり、ただし、z及びwが0である場合、Xはヨードである)
を有する化合物である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
アルミニウムを含むヨウ化物反応物は、式
MAl
(式中、Mはアルカリ金属であり、mは2であり、nは7であるか、又はmは3であり、nは10である)
の化合物である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
式(I)の化合物が、
SiHI
SiH
SiHCH
SiH(CHCH)I
SiH(CHCHCH)I
SiH((CHCH)I
SiH(CHCHCHCH)I
SiH((CHC)I
SiCH
Si(CHCH)I
Si(CHCHCH)I
Si((CHCH)I
Si(CHCHCHCH)I
Si((CHC)I
CHSi-SiCH
(CHCH)Si-Si(CHCH)I
(CHCHCH)Si-Si(CHCHCH)I
((CHCH)Si-Si((CHCH)I
(CHCHCHCH)Si-Si(CHCHCHCH)I
((CHC)Si-Si((CHC)I
ICHHSi-SiHCHI、
I(CHCH)HSi-SiH(CHCH)I、
I(CHCHCH)HSi-SiH(CHCHCH)I、
I((CHCH)HSi-SiH((CHCH)I、
I(CHCHCHCH)HSi-SiH(CHCHCHCH)I、及び
I((CHC)HSi-SiH((CHC)I
から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
式(I)の化合物がHSiIである、請求項1に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は化学の分野に属する。本発明は、アルミニウム媒介ハロゲン化物交換法を使用して、対応するクロロ又はブロモシランから特定のヨードシランを調製するための方法論に関する。
【背景技術】
【0002】
ハロシランは、マイクロ電子デバイスの製造における前駆体として有用である。特に、HSiI及びHSiIなどのハロシランは、マイクロ電子デバイスの製造に使用されるケイ素含有膜の堆積のための前駆体化合物として有用である。現在の溶液ベースの合成方法論は、HSiIと、i)アリールシラン(Keinan et al.J.Org.Chem.,Vol.52,No.22,1987,pp.4846-4851、Kerriganら、米国特許番号第10,106,425号、又はii)SiHClなどのハロシラン(米国特許第10,384,944号)からの他の選択ヨードシランとの合成を記載している。
【0003】
Keinanらは、酢酸エチルなどの触媒の存在下でヨウ素を用いて、アリールシランであるフェニル-SiHを化学量論的に処理することを使用する、SiH形成のための合成方法を記載している。反応副生成物は、ベンゼンとして遊離されるアリールシランからの芳香族官能基、及び酢酸エチル分解から生じる複雑な副生成物混合物である。所望のSiHからの反応副生成物の面倒な分離は、方法を複雑にする。さらに、ハロシランを調製するためのアリールシランベースの方法は、典型的には、所望のヨードシラン生成物に有害なヨウ素及び/又はヨウ化水素で汚染された生成物を生成し、そのために、ヨードシラン生成物を安定化するためにアンチモン、銀又は銅が利用されることが多い。
【0004】
米国特許第10,106,425号は、反応物としてアリールシラン(CH)SiHの使用を教示している。開示される方法は、トルエンを副生成物として生成し、したがって、フェニル-SiHからベンゼンを生成するKeinan法の危険性の低い代替法として特許請求されている。
【0005】
米国特許第10,384,944号は、例えば、LiIとSiHClとの間のハロゲン化物交換を記載しており、それにより、Finkelstein様反応でLiCl及びSiHが生成される。
【発明の概要】
【0006】
要約すると、本発明は、ハロゲン化物交換反応を介した、クロロシラン及びブロモシランから非常に望ましいヨードシラン、例えばHSiI及びHSiIへの変換に有用な特定の錯体を提供する。この反応を媒介する種は、アルミニウムを含むヨウ化物反応物である。特定の実施形態では、アルミニウムを含むヨウ化物反応物は、式(A):
[M+q[Al(X)(A)
(式中、zは0又は1であり、wは0又は1であり、Mは(i)Li、Na、K、Rb及びCsから選択される第1族金属カチオン、(ii)Mg2+、Ca2+、Sr2+及びBa2+から選択される第2族金属カチオン、並びに(iii)アンモニウム又はC~Cアルキル又はベンジルアンモニウムカチオンから選択され、qはMの価数で、1又は2であり、Xはクロロ、ブロモ、又はヨードであり、ただし、z及びwが0である場合、Xはヨードである。)
を有する化合物である。
【0007】
このようなヨウ化物反応物としては、例えば、LiAl(I)、NaAl(I)、KAl(I)、Mg[Al(I)、Ca[Al(I)、LiAl(Cl)I、LiAlCl(I)、NaAl(Cl)I、NaAlCl(I)、KAl(Cl)I、KAlCl(I)、Mg[Al(Cl)I]、Mg[Al(Cl)(I)、Ca[Al(Cl)I]、Ca[Al(Cl)(I)、NHAl(I)、NHAl(Cl)I、NHAl(Cl)(I)、NaAl、NaAl10、及びAl(I)が挙げられる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】in situ生成アルミネート試薬を使用するSiHClからSiHへの変換中の、溶液中のLiAl(I)(Cl)の形態のアルミネートの27Al NMRスペクトルである。アルミネートは、SiHClに対してAlCl及びLiIをそれぞれ3当量混合することによって生成した。反応物を60℃で1時間加熱し、NMRデータを取得した。さらなる詳細については実施例8を参照されたい。
【発明を実施するための形態】
【0009】
第1の態様において、本発明は、式(I)又は(II)
SiR(I)、又は
Si-Si R(II)
(式中、xは1又は2であり、yは1~3の整数であり、x+yの和は、各Si中心において式(I)では4、式(II)では3であり、Rは水素又はC~Cアルキル基である。)
を有するヨードシランを調製するための方法であって、式
SiR又はDSi-SiR
(式中、Dはクロロ又はブロモである。)
を有するハロシランを、アルミニウムを含むヨウ化物反応物と接触させることを含む、方法を提供する。
【0010】
この方法では、式(I)のヨードシランを形成するために、ハロシラン反応物は必ず式SiRの化合物になることを理解されたい。同様に、式(II)のヨードシランを形成するために、ハロシラン反応物は、式:DSi-SiRの化合物となる。
【0011】
上記で企図される例示的なヨードシランとしては、
SiHI
SiH
SiHI、
SiHCHI、
SiH(CHCH)I、
SiH(CHCHCH)I、
SiH((CHCH)I、
SiH(CHCHCHCH)I、
SiH((CHC)I、
SiHCH
SiH(CHCH)I
SiH(CHCHCH)I
SiH((CHCH)I
SiH(CHCHCHCH)I
SiH((CHC)I
SiCH
Si(CHCH)I
Si(CHCHCH)I
Si((CHCH)I
Si(CHCHCHCH)I
Si((CHC)I
Si-SiI
CHSi-SiCH
(CHCH)Si-Si(CHCH)I
(CHCHCH)Si-Si(CHCHCH)I
((CHCH)Si-Si((CHCH)I
(CHCHCHCH)Si-Si(CHCHCHCH)I
((CHC)Si-Si((CHC)I
ICHHSi-SiHCHI、
I(CHCH)HSi-SiH(CHCH)I、
I(CHCHCH)HSi-SiH(CHCHCH)I、
I((CHCH)HSi-SiH((CHCH)I、
I(CHCHCHCH)HSi-SiH(CHCHCHCH)I、及び
I((CHC)HSi-SiH((CHC)I
が挙げられる。
一実施形態では、式(I)のヨードシランはHSiIである。
【0012】
一実施形態では、アルミニウムを含むヨウ化物反応物は、式(A):
[M+q[Al(X)(A)
(式中、zは0又は1であり、wは0又は1であり、Mは(i)Li、Na、K、Rb及びCsから選択される第1族金属カチオン、(ii)Mg2+、Ca2+、Sr2+及びBa2+から選択される第2族金属カチオン、並びに(iii)アンモニウム、C~Cアルキルアンモニウム又はベンジルアンモニウムカチオンから選択され、qはMの価数で、1又は2であり、Xはクロロ、ブロモ、又はヨードであり、ただし、z及びwが0である場合、Xはヨードである)
を有する化合物である。
【0013】
一実施形態では、Mは、カチオン、例えば(CH、(CHCH、(CHCHCH、及び(CHCHCHCHから選択される。
【0014】
別の実施形態では、カチオンMの価数に応じて、zは1であり、wは1である。そのような場合、式(A)の化合物のアニオン性部分、すなわち[Al(X)は、アルミネートと呼ぶことができ、1:1のモル比の反応物(又は二価の第2族金属カチオンの場合は2:1)を使用して、溶液又は固体状態の親成分の反応によって生成することができる。例として、アルミネートLiAl(I)は、LiI及びAl(I)を溶液中で混合することによって、又は1:1のモル比で混合した場合には高温での反応によって調製することができる。アルミネートは、このような反応から容易に単離することができる。アルミネートは単離可能な化合物であるため、本明細書に記載されるように、クロロ及びブロモシランからヨードシランへの変化を引き起こすために反応混合物に添加することができる。代替的に、上記アルミネートをin situで調製し、続いて、上記のように、クロロ及びブロモシランを式(I)及び(II)のヨードシランに変換するために使用することができる。上記アルミネートの特性及び固体構造は、Braunstein(Braunstein,J.Advances in Molten Salt Chemistry,Volume 1,1971)及びProemper and Frank(Proemper S.W.and Frank,W.Acta Cryst。2017,E 73,1426)による文献で議論されている。
【0015】
したがって、一実施形態では、式(A)の化合物において、zは1であり、「M」が存在することを示す。zが1である式(A)の化合物の例としては、LiAl(I)、NaAl(I)、KAl(I)、Mg[Al(I)、Ca[Al(I)、LiAl(Cl)I、LiAlCl(I)、NaAl(Cl)I、NaAlCl(I)、KAl(Cl)I、KAlCl(I)、Mg[Al(Cl)I]、Mg[Al(Cl)(I)、Ca[Al(Cl)I]、Ca[Al(Cl)(I)、NHAl(I)、NHAl(Cl)I、NHAl(Cl)(I)、NaAl、NaAl10などのアルミネートが挙げられる。
【0016】
一実施形態では、アルミニウムを含むヨウ化物反応物は、三ヨウ化アルミニウムである(すなわち、式(A)において、z及びwは0である)。これに関して、本発明者らは、置換反応が三ヨウ化アルミニウム単独の存在下で起こることを見出し、そのような三ヨウ化アルミニウムは、本明細書に記載のヨウ化物反応物として直接使用することができ、又はアルミニウム金属とヨウ素との反応によってin situで生成することができる。Al(I)(及びAlCl)は、四面体ベースのダイマーとして存在することが知られているが、本明細書では簡単にするために単量体種として表される。
【0017】
したがって、一実施形態では、本発明は、式HSiClの化合物をAl(I)と接触させることを含む、式HSiIの化合物を調製するための方法を提供する。別の実施形態では、そのように利用されるAl(I)は、元素状アルミニウム及びヨウ素からin situで生成される。
【0018】
さらに、Al(X)は、Xがクロロ、ブロモ(又はヨード)である場合、第1族又は第2族のヨウ化物と組み合わせて利用することができる。そのような場合、アルミネート種は、例えばAlClをMgIと反応させることによってin situで生成することができ、後者はマグネシウム金属とヨウ素との反応によってin situで形成することができる。
【0019】
これらの場合、多核NMR分析は、形成された種が実際に、このアルミニウム媒介ハロゲン置換反応における反応種であると考えられる、上記のような実験式MAl(X)Iを有するアルミネート錯体であるという仮説を支持する。このような反応に存在するアルミネート種は、27Al NMR分光法によって同定されている。特定の例では、AlClとLiIとの反応からin situで形成された3当量のアルミネート反応物でSiHClを処理した。この反応では、実施例8に要約されているように、SiHが59%の変換率で生成された。反応混合物の27Al NMRスペクトル(図1)は、SiHClからSiHへの変化を担う反応中のアルミネート種を示す。
【0020】
理論に束縛されることを望むものではないが、本発明者らは、このアルミネート構造がシラン上の塩素原子の置換を媒介して所望のヨードシランを提供するのに役立つと考えている。
【0021】
別の実施形態では、ヨウ化物反応物は、式MAl(式中、Mはアルカリ金属であり、
(i)mは2であり、nは7であり、又は
(ii)mは3であり、nは10である。)
の化合物である。
この実施形態では、ヨウ化物反応物は、式NaAl又はNaAl10を有する化合物であってもよい。これらの化合物は、Boef,G.;Brins Slot,H.;Van Leeuwen,R.A.W.;Wessels,H.;Van Spronsen,Johannes W.,Zeitschrift fuer Anorganische und Allgemeine Chemie(1967),353(1-2),93-102に教示されるように調製される。
【0022】
一般に、アルミネート種は、アルミネートアニオンが(AlXとして存在する形態で存在し、ハロゲン化アルミニウムAlXと対応するハロゲン化金属M+q(式中、「q」は金属カチオンの価数を表し、非荷電式を提供するのに必要なアニオン種の総数を表す。)との、第1族の同族元素について1:1のモル比での反応によって合成される。これらの場合、文献は、系を0.5:0.5/AlX:M+q系と称し、存在する実際の化学種はM+q[AlXである。したがって、一例として、LiAl(I)は、等モル量のLiIとAl(I)との反応から生成することができる。
【0023】
しかしながら、上述のアルミネートはまた、反応物を所与の1:1の例から変化するモル比で混合した場合にも存在する場合がある。これらの場合、文献には、AlXリッチ、又はM+qリッチのいずれかであるAlX:M+q系などの系が記載されている。上記のNaAl又はNaAl10化合物は、両方の場合において、系がAl(I)に富む例である。二価の第2族金属カチオン系アルミネートについても同様の状況が存在する。本発明のこの実施形態では、AlX:M+v系が0.999:0.001~0.001:0.999の間の任意の比で存在する場合、ヨウ化物反応物のAlXリッチ及びM+qリッチな変形形態もハロシランからヨードシランへの変化を媒介することができる。
【0024】
別の実施形態では、Al(X)(Xはクロロ又はヨードである)は、クロロ及びブロモシランをヨードシランに変換するための前駆体として利用することができる。この実施形態では、クロロ又はブロモシランとM+q(q=Mの酸化状態であり、例えば、MgIではq=2)との等モル混合物を、5~25mol%のAl(X)で処理することができる。このように処理すると、クロロ又はブロモシランはヨードシランに変換される。これらの場合、AlX及びM+qは反応してアルミネート種を形成する。これに関して、Al(X)とM+qとの反応は、1:1の化学量論比である必要はない。アルミネートは、クロロ又はブロモシランからヨードシランへの変化を媒介することができ、アルミネートとM+qとの反応によって必要なAl-I官能基が再生される。上記のように、アルミニウムを含むヨウ化物反応物は、個別の材料として反応に添加することができ、又は可能な場合は、in situで生成することができる。
【0025】
したがって、さらなる実施形態では、アルミニウムを含むヨウ化物反応物は、in situで、
a.AlX及びM+q
b.Al、X及びM+q
c.AlX、M及びX、又は
d.Al、M、及びX(式中、qはM及びXの価数を表す。)
から生成される。
【0026】
本発明の方法論は、無溶媒で、又は出発物質若しくはヨードシラン生成物と非反応性の非プロトン性溶媒の存在下で実施することができる。そのような溶媒としては、酸素、エステル、カルボキシ基、及びケトンなどの部分を欠く炭化水素溶媒が挙げられる。例えば、ベンゼン、トルエン、ヘキサン、シクロヘキサン、テトラリン、デカリン、メシチレンなどが挙げられる。
【0027】
本発明の前駆体化合物を調製するための方法は、標準的なバッチ又は連続モードの反応器で行うことができる。当業者は、そのように製造された試薬及び生成物の文脈で利用することができる反応器の規模及び種類を認識するであろう。
【0028】
本発明の方法論がヨウ素もヨウ化水素も生成しない限り、得られるヨードシラン生成物を安定化するために銅、アンチモン又は銀化合物を利用する必要はない。さらに、ヨウ化物反応物がアルカリ金属カチオンを含まない場合、例えば、Al(I)、ヨウ化アンモニウム又はヨウ化アルキルアンモニウムの場合、結果として得られるヨードシラン生成物は、必然的にアルカリ金属不純物も含まない。したがって、第2の態様では、本発明は、1ppm(百万分率)未満のアンチモン、銀又は銅不純物及び約1ppm未満のナトリウム又はリチウム不純物を有する、式SiHの化合物を含む前駆体組成物を提供する。さらなる態様では、本発明は、約10ppb(十億分率)未満又は約5ppb未満のアルミニウム不純物を有する、式SiHの化合物を含む前駆体組成物を提供する。
【0029】
式(I)及び(II)の化合物は、原子層堆積などの方法によるマイクロ電子デバイスの表面上のケイ素含有膜の形成における前駆体として有用である。例えば、参照により本明細書に組み込まれる米国特許第10,580,645号及び第10,424,477号を参照されたい。
【0030】
化合物(I)及び(II)は、熱CVD若しくはALDの目的で、又はプラズマ強化ALD若しくはCVDを行う目的で、堆積チャンバに導入することができる。これらの場合、O、O、NO、又はそれらの混合物による酸化環境での酸化を介して、共反応ガスを導入してSiO膜を堆積させることができる。同様に、化合物(I)及び(II)は、熱CVD若しくはALDの目的で、又はプラズマ強化ALD若しくはCVDを行う目的で、堆積チャンバに導入することができる。これらの場合、N、NH、ヒドラジン又はアルキルヒドラジン含有混合物による窒化を介して、共反応ガスを導入してSN膜を堆積させることができる。堆積された膜は、マイクロ電子デバイス内の誘電体層として機能する。
【実施例
【0031】
本発明は、その特定の実施形態の以下の実施例によってさらに説明することができるが、これらの実施例は単に例示の目的で含まれ、特に明記しない限り本発明の範囲を限定することを意図しないことが理解されよう。すべての操作は不活性雰囲気下で行った。
【0032】
実施例1
LiAl(I)(0.13g、0.25mmol)に、SiHClのキシレン及びベンゼン-d6中溶液(0.025gのSiHCl、0.25mmolのSiHCl、1.0mlのベンゼン-d6、0.075gのキシレン)を添加した。混合物を60℃で45分間撹拌した。液体を固体pptからデカントし、NMRチューブに入れた。SiHClからSiHへの変換は、反応混合物のH NMRスペクトルの分析によって決定した。45分の反応時間後、反応生成物の分布は、92.4%がSiHであり、0.6%のSiHClを含んでいた。H NMR分光法によって決定すると、反応混合物中に7%の一置換生成物SiH(Cl)(I)も存在した。
【0033】
実施例2
Al(I)(0.02g、0.05mmol)及びMgI(0.275g、1.0mmol)の固体混合物に、SiHClのキシレン及びベンゼン-d6中溶液(0.10gのSiHCl、1.0mmolのSiHCl、1.0mlのベンゼン-d6、0.30gのキシレン)を添加した。混合物を60℃で50分間撹拌した。液体を固体pptからデカントし、NMRチューブに入れた。SiHClからSiHへの変換は、反応混合物のH NMRスペクトルの分析によって決定した。50分の反応時間後、反応生成物の分布は、92.3%がSiHであり、0.7%のSiHClを含んでいた。H NMR分光法によって決定すると、反応混合物中に7%の一置換生成物SiH(Cl)(I)も存在した。
【0034】
実施例3
LiAl(I)のin situ生成:3.0ml量のベンゼンd6に、Al(0.050g、1.85mmol)、I(0.375g、1.5mmol)、及びLiI(0.13g、1mmol)を添加して、暗赤色の混合物を得た。混合物を60℃で撹拌した。1時間後、混合物の初期の赤色が消散し、無色の混合物を得た。in situ生成したLiAl(I)に、SiHClのキシレン溶液(0.10gのSiHCl、1.0mmolのSiHCl、0.30gのキシレン)を添加した。混合物を60℃で撹拌した。SiHClからSiHへの変換は、反応混合物のH NMRスペクトルの分析によって決定した。60分の反応時間後、反応生成物の分布は、90%がSiHであり、1%のSiHClを含んでいた。H NMR分光法によって決定すると、反応混合物中に8.6%の一置換生成物SiH(Cl)(I)も存在した。
【0035】
実施例4
Al(I)のin situ生成:2.0ml量のベンゼンd6に、Al(0.030g、1.1mmol)及びI(0.375g、1.5mmol)を添加して、暗赤色の混合物を得た。70℃で1.5時間撹拌した後、色が消散して無色の混合物が得られた。in situで生成したAl(I)に、SiHClのキシレン溶液(0.025gのSiHCl、0.25mmolのSiHCl、0.075gのキシレン)を添加した。混合物を60℃で1時間撹拌した。SiHClからSiHへの変換は、反応混合物のH NMRスペクトルの分析によって決定した。60分の反応時間後、反応生成物の分布は、91%がSiHであり、0.5%のSiHClを含んでいた。H NMR分光法によって決定すると、反応混合物中に7%の一置換生成物SiH(Cl)(I)も存在した。
【0036】
実施例5
Al(I)(0.10g、0.25mmol)に、SiHClのキシレン及びベンゼン-d6中溶液(0.025gのSiHCl、0.25mmolのSiHCl、1.0mlのベンゼン-d6、0.075gのキシレン)を添加した。混合物を60℃で35分間撹拌した。混合物をNMRチューブに入れた。SiHClからSiHへの変換は、反応混合物のH NMRスペクトルの分析によって決定した。35分の反応時間後、反応生成物の分布は、79%がSiHであり、5%のSiHClを含んでいた。H NMR分光法によって決定すると、反応混合物中に16%の一置換生成物SiH(Cl)(I)も存在した。
【0037】
実施例6
1.0mlのベンゼン-d6中のLiAl(I)(0.40g、0.74mmol)に、SiHCl(0.10gのSiHCl、0.74mmolのSiHCl)を添加した。混合物を60℃で45分間撹拌した。混合物をNMRチューブに入れたところ、不溶性物質が存在した。SiHClからSiHIへの変換は、反応混合物のH NMRスペクトルの分析によって決定した。45分の反応時間後、反応生成物の分布は、61%がSiHIであり、23.3%のSiHClを含んでいた。以下の量で存在する混合配位子種も存在した:6.9%のSiH(Cl)(I)及び8.8%のSiH(Cl)(I)
【0038】
実施例7
アルミネート共反応物を用いて、ジクロロシラン(dichorosilane)からジヨードシランを生成する反応及び条件の概要を表1に提示する。反応は、1当量のジクロロシランを2当量の示された、in situで生成されたヨードアルミネートに記載の条件下で添加することによって行った。ジヨードシランへの変換率パーセントは、反応混合物のH NMRスペクトルの分析によって決定した。
【0039】
実施例8
様々な試薬を用いてジクロロシラン(dichorosilane)からジヨードシランを生成する反応及び条件の概要を表2に提示する。反応は、示されたベンゼン-d6中のヨウ化物源に25%のジクロロシラン/キシレン溶液を添加することによって行った。反応時間及び温度を示し、ジヨードシランへの変換率パーセントをH NMR分光法によって決定した。使用される試薬の示された当量(eq)は、提示される各反応において1当量のジクロロシランを使用することに関する。
【0040】
実施例9
Al(I)又はアルミネート試薬を使用してトリクロロシランをトリヨードシランに変換するための反応条件の概要を表3に提示する。反応は、密閉容器内で100℃において、C中で16時間行った。シラン生成物のパーセント分布をH NMR分光法によって決定した。使用される試薬の示された当量(eq)は、各反応において1当量のジクロロシランを使用することに関する。
【0041】
実施例10
様々なin situ生成アルミネートを使用して、トリクロロシランをトリヨードシランに変換するための反応条件の要約を、関連する反応条件と共に表4に示す。等モル比の反応物を使用し、示されたシランへの変換率パーセントをH NMR分光法によって決定した。
【0042】
実施例11
溶液中の「唯一の」反応物としてMgI、CaI、ZnI及びAlIを使用する、トリクロロシランのトリヨードシランへの変換の反応パラメータの要約である。示された変換率パーセントをH NMR分光法によって決定した。使用されるヨウ素含有試薬の示された当量(eq)は、各反応における1当量のジクロロシランの使用に対するものである。AlI試薬のみがこれらの反応条件下でSiHIを生成する。
【0043】
実施例12
SiHを生成するために使用される典型的な手順で、ヨウ素(335グラム、1.32mol)をフラスコに投入し、トルエンを添加して濃縮溶液を作製した。別のフラスコにアルミニウム(25グラム、0.926mol、20~40メッシュ)を投入し、トルエンを加えてスラリーを作製した。45℃の内部温度で、ヨウ素溶液を3時間にわたってゆっくりとアルミニウムに添加し、内部温度を45~55℃に維持した。残留未溶解ヨウ素をトルエンに溶解させ、ヨウ素が残存しなくなるまで反応混合物に繰り返し投入した。ヨウ素の添加が完了した後、反応混合物を45~50℃で2時間撹拌し、続いて室温で12時間撹拌した。揮発性物質を真空中で、40℃で除去して濃縮混合物を残した。ヘキサン類を混合物に添加して、固体Al(I)をさらに沈殿させた。固体Al(I)をヘキサン類で2回すすぎ、ヘキサン類に再懸濁してAl(I)懸濁液を得た。Al(I)懸濁液に、SiHCl(135グラム、1.33mol)を5分間にわたって添加した。反応混合物を20℃で1時間撹拌した後、35℃に3時間加熱した。反応混合物を20℃に冷却し、濾過した。固体をヘキサン類で3回すすぎ、濾液を混合した。濾液を分析し、SiHへの75%の変換が明らかになった。揮発性物質を50~300torr及び35~50℃の内部温度の蒸留系で除去した。生成物を45~50℃、8~20Torrで蒸留して、192グラムのSiHを収率52%で得た。
【0044】
本発明は、その特定の実施形態を特に参照して詳細に説明されているが、本発明の精神及び範囲内で変形形態及び修正形態が影響を受け得ることが理解されよう。このように本開示のいくつかの例示的な実施形態を説明してきたが、当業者は、添付の特許請求の範囲内でさらに他の実施形態を作成及び使用することができることを容易に理解するであろう。本文書が包含する本開示の多くの利点は、前述の説明に記載されている。しかしながら、本開示は、多くの点で例示にすぎないことが理解されよう。本開示の範囲を超えることなく、詳細に、特に部品の形状、サイズ、及び配置に関して変更を加えることができる。本開示の範囲は、当然のことながら、添付の特許請求の範囲が表現される言語で定義される。
図1