(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-29
(45)【発行日】2024-06-06
(54)【発明の名称】傾斜センサ及びウェアラブルセンサ
(51)【国際特許分類】
H01H 29/22 20060101AFI20240530BHJP
H01H 35/02 20060101ALI20240530BHJP
【FI】
H01H29/22 E
H01H35/02 D
(21)【出願番号】P 2020128485
(22)【出願日】2020-07-29
【審査請求日】2023-02-20
(31)【優先権主張番号】P 2020078347
(32)【優先日】2020-04-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)令和1年度、国立研究開発法人科学技術振興機構、戦略的創造研究推進事業(さきがけ)、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】519135633
【氏名又は名称】公立大学法人大阪
(74)【代理人】
【識別番号】100103034
【氏名又は名称】野河 信久
(74)【代理人】
【識別番号】100065248
【氏名又は名称】野河 信太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100159385
【氏名又は名称】甲斐 伸二
(74)【代理人】
【識別番号】100163407
【氏名又は名称】金子 裕輔
(74)【代理人】
【識別番号】100166936
【氏名又は名称】稲本 潔
(74)【代理人】
【識別番号】100174883
【氏名又は名称】冨田 雅己
(72)【発明者】
【氏名】竹井 邦晴
(72)【発明者】
【氏名】徐 凱臣
【審査官】荒木 崇志
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-103297(JP,A)
【文献】特開昭60-167219(JP,A)
【文献】特開2013-012611(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0318401(US,A1)
【文献】特表2011-501990(JP,A)
【文献】特開2006-277312(JP,A)
【文献】特開2010-191096(JP,A)
【文献】中国実用新案第206339255(CN,U)
【文献】米国特許出願公開第2018/0086893(US,A1)
【文献】特開2006-012692(JP,A)
【文献】特開2009-099521(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01H 29/00 - 29/32
H01H 35/02 - 35/42
A41D 13/00 - 13/02
A41D 20/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1凹部を有する第1基材と、第1凹部中に配置された導電性液体と、第1検出端子と、第2検出端子と、第3検出端子と、第4検出端子と、制御部とを備え、
前記導電性液体は、第1基材の傾きに応じて前記導電性液体が移動するように設けられ、
第1、第2、第3及び第4検出端子は、第1凹部の底を取り囲むように第1凹部の内側面上に配置され、
第1、第2、第3又は第4検出端子は、前記導電性液体と接触していると通電状態となるように設けられ、かつ、前記導電性液体と接触していないと非通電状態となるように設けられ、
前記制御部は、第1、第2、第3及び第4検出端子の通電状態又は非通電状態に基づき傾き及び傾き方向を検出するように設けられ
、
第1基材は、フレキシブル基板に接着されており、
第1、第2、第3及び第4検出端子並びに第1凹部の表面粗さ(最大高さRy)は、5μm以上100μm以下であることを特徴とする傾斜センサ。
【請求項2】
前記導電性液体は、液体金属である請求項1に記載の傾斜センサ。
【請求項3】
第1検出端子は、第1検出端子対に含まれ、かつ、前記導電性液体が第1検出端子対に接触していると通電状態となるように設けられ、かつ、前記導電性液体が第1検出端子対に接触していないと非通電状態となるように設けられ、
第2検出端子は、第2検出端子対に含まれ、かつ、前記導電性液体が第2検出端子対に接触していると通電状態となるように設けられ、かつ、前記導電性液体が第2検出端子対に接触していないと非通電状態となるように設けられ、
第3検出端子は、第3検出端子対に含まれ、かつ、前記導電性液体が第3検出端子対に接触していると通電状態となるように設けられ、かつ、前記導電性液体が第3検出端子対に接触していないと非通電状態となるように設けられ、
第4検出端子は、第4検出端子対に含まれ、かつ、前記導電性液体が第4検出端子対に接触していると通電状態となるように設けられ、かつ、前記導電性液体が第4検出端子対に接触していないと非通電状態となるように設けられた請求項1又は2に記載の傾斜センサ。
【請求項4】
共通端子をさらに備え、
第1検出端子は、前記導電性液体が第1検出端子及び前記共通端子に接触していると通電状態となるように設けられ、かつ、前記導電性液体が第1検出端子及び前記共通端子に接触していないと非通電状態となるように設けられ、
第2検出端子は、前記導電性液体が第2検出端子及び前記共通端子に接触していると通電状態となるように設けられ、かつ、前記導電性液体が第2検出端子及び前記共通端子に接触していないと非通電状態となるように設けられ、
第3検出端子は、前記導電性液体が第3検出端子及び前記共通端子に接触していると通電状態となるように設けられ、かつ、前記導電性液体が第3検出端子及び前記共通端子に接触していないと非通電状態となるように設けられ、
第4検出端子は、前記導電性液体が第4検出端子及び前記共通端子に接触していると通電状態となるように設けられ、かつ、前記導電性液体が第4検出端子及び前記共通端子に接触していないと非通電状態となるように設けられた請求項1又は2に記載の傾斜センサ。
【請求項5】
第1、第2、第3及び第4検出端子は、それぞれ第1グラフェン層である請求項1~4のいずれか1つに記載の傾斜センサ。
【請求項6】
第2凹部を有する第2基材をさらに備え、
第1及び第2基材は、第1凹部と第2凹部が向かい合いチャンバを形成するように設けられた請求項1~
5のいずれか1つに記載の傾斜センサ。
【請求項7】
第5検出端子と、第6検出端子と、第7検出端子と、第8検出端子とをさらに備え、
第5、第6、第7及び第8検出端子は、第2凹部の底を取り囲むように第2凹部の内側面上に配置され、
第5、第6、第7又は第8検出端子は、前記導電性液体と接触していると通電状態となるように設けられ、かつ、前記導電性液体と接触していないと非通電状態となるように設けられ、
前記制御部は、第1、第2、第3、第4、第5、第6、第7及び第8検出端子の通電状態又は非通電状態に基づき傾き及び傾き方向を検出するように設けられた請求項
6に記載の傾斜センサ。
【請求項8】
請求項1~
7のいずれか1つに記載の傾斜センサと、第1基材を搭載する
前記フレキシブル基板とを備えたウェアラブルセンサであって、
前記制御部は、第1、第2、第3及び第4検出端子の通電状態又は非通電状態に基づき前記ウェアラブルセンサを装着した人又は動物の体勢を検出するように設けられたウェアラブルセンサ。
【請求項9】
前記フレキシブル基板に搭載された歪みセンサをさらに備え、
前記歪みセンサは、伸縮性基材と、前記伸縮性基材上に設けられた第2グラフェン層とを含み、
前記伸縮性基材は、前記ウェアラブルセンサを装着した人又は動物の呼吸に伴う腹部の動きに応じて第2グラフェン層と共に伸縮するように設けられ、
前記制御部は、第2グラフェン層の導電性の変化に基づき前記呼吸を検出するように設けられた請求項
8に記載のウェアラブルセンサ。
【請求項10】
前記フレキシブル基板に搭載された湿度センサをさらに備え、
前記湿度センサは、感湿層を含み、
前記感湿層は、チオスピネル化合物を含み、
前記チオスピネル化合物の構成元素は、亜鉛、インジウム、硫黄を含み、
前記制御部は、前記感湿層の導電性の変化に基づき前記ウェアラブルセンサを装着した人又は動物の排尿、排便又は発汗を検出するように設けられた請求項
8又は
9に記載のウェアラブルセンサ。
【請求項11】
前記湿度センサは、前記感湿層を覆う防水通気フィルタを備える請求項
10に記載のウェアラブルセンサ。
【請求項12】
前記制御部は、前記フレキシブル基板上の配線に接続する測定部と、前記測定部により測定されたデータを無線伝送できるように設けられた無線通信部と、前記無線通信部と無線接続できるように設けられた情報機器とを含む請求項
8~
11のいずれか1つに記載のウェアラブルセンサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、傾斜センサ及びウェアラブルセンサに関する。
【背景技術】
【0002】
傾きセンサとして、MEMS型、静電容量型、導電球型、錘型などが知られている(例えば、特許文献1参照)。このうちMEMS型の傾きセンサの実用化が進んでいる。
また、フレキシブル基板上にセンサを形成したフレキシブルデバイスが知られている(例えば、特許文献2参照)。このようなフレキシブルデバイスを衣類などに取り付けることにより、人の動きなどをモニタリングすることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2009-99521号公報
【文献】特開2018-105775号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、従来の傾きセンサをフレキシブルデバイスに実装しようとすると、半田付けが必要となりフレキシブル基板に高い耐熱性が要求される。このため、製造コストが高くなる。また、従来の傾きセンサは硬いため、着心地をよくするために緩衝材が必要となり、フレキシブルデバイスが大きくなる。
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、フレキシブルデバイスに適した傾斜センサを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、第1凹部を有する第1基材と、第1凹部中に配置された導電性液体と、第1検出端子と、第2検出端子と、第3検出端子と、第4検出端子と、制御部とを備え、前記導電性液体は、第1基材の傾きに応じて前記導電性液体が移動するように設けられ、第1、第2、第3及び第4検出端子は、第1凹部の底を取り囲むように第1凹部の内側面上に配置され、第1、第2、第3又は第4検出端子は、前記導電性液体と接触していると通電状態となるように設けられ、かつ、前記導電性液体と接触していないと非通電状態となるように設けられ、前記制御部は、第1、第2、第3及び第4検出端子の通電状態又は非通電状態に基づき傾きを検出するように設けられたことを特徴とする傾斜センサを提供する。
【発明の効果】
【0006】
第1、第2、第3及び第4検出端子は、第1凹部の底を取り囲むように第1凹部の内側面上に配置される。また、導電性液体は、第1凹部中において第1基材の傾きに応じて前記導電性液体が移動するように設けられる。このため、第1基材が傾くと、導電性液体は第1、第2、第3及び第4検出端子に接触したり接触しなかったりする。導電性液体は定まった形状を有さないため、第1、第2、第3及び第4検出端子の形状に合わせて変形することができる。このため、第1、第2、第3又は第4検出端子と、導電性液体との接触面積を広くすることができ、接触抵抗を小さくすることができる。このため、傾斜センサの小型化や高感度化が可能になる。また、導電性液体は柔らかいため、第1、第2、第3又は第4検出端子が摩耗することを抑制することができ、傾斜センサを長寿命化すること、第1、第2、第3又は第4検出端子の厚さを薄くすることなどが可能になる。
第1、第2、第3又は第4検出端子は、導電性を有する導電性液体と接触していると通電状態となるように設けられ、かつ、導電性液体と接触していないと非通電状態となるように設けられる。このため、制御部を用いて第1、第2、第3及び第4検出端子の通電状態又は非通電状態に基づき対象物に装着されている第1基材の傾斜方向を高精度で検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本発明の一実施形態の傾斜センサの概略断面図である。
【
図2】
図1に示した傾斜センサに含まれる第1基材の概略平面図である。
【
図3】
図1に示した傾斜センサに含まれるフレキシブル基板の概略平面図である。
【
図6】上下逆さまにした傾斜センサの概略断面図である。
【
図7】本発明の一実施形態の傾斜センサの概略断面図である。
【
図8】
図7に示した傾斜センサに含まれる第1基材の概略平面図である。
【
図9】本発明の一実施形態の傾斜センサの概略断面図である。
【
図10】本発明の一実施形態のウェアラブルセンサの概略平面図である。
【
図11】ウェアラブルセンサが取り付けられているおむつの概略斜視図である。
【
図12】
図10の破線C-Cにおける歪みセンサの概略断面図である。
【
図13】ウェアラブルセンサに含まれる湿度センサの概略平面図である。
【
図14】
図13の破線D-Dにおける湿度センサの概略断面図である。
【
図15】傾斜センサ作製実験1で作製した傾斜センサの写真である。
【
図16】(a)~(c)は傾斜センサ作製実験1で作製した傾斜センサの写真である。
【
図17】(a)は通電状態検出実験で作製した素子の写真であり、(b)は通電状態検出実験の説明図である。
【
図18】通電状態検出実験の測定結果を示すグラフである。
【
図19】傾斜センサ作製実験2の測定結果を示すグラフである。
【
図21】感湿層の抵抗変化率の変化を示すグラフである。
【
図22】(a)はおむつに装着したウェアラブルセンサの写真であり、(b)は測定部(無線通信部)の写真であり、(c)はウェアラブルセンサの制御画面を表示したスマートフォンの写真である。
【
図23】ウェアラブルセンサを装着した人形の姿勢を変化させたときの傾斜センサの通電状態・非通電状態を表示するスマートフォン画面の写真である。
【
図24】ウェアラブルセンサを装着した成人男性が姿勢を変えたときの歪みセンサ、湿度センサ及び傾斜センサの測定結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の傾斜センサは、第1凹部を有する第1基材と、第1凹部中に配置された導電性液体と、第1検出端子と、第2検出端子と、第3検出端子と、第4検出端子と、制御部とを備える。前記導電性液体は、第1基材の傾きに応じて前記導電性液体が移動するように設けられる。第1、第2、第3及び第4検出端子は、第1凹部の底を取り囲むように第1凹部の内側面上に配置される。第1、第2、第3又は第4検出端子は、前記導電性液体と接触していると通電状態となるように設けられ、かつ、前記導電性液体と接触していないと非通電状態となるように設けられる。前記制御部は、第1、第2、第3及び第4検出端子の通電状態又は非通電状態に基づき傾き及び傾き方向を検出するように設けられる。
【0009】
前記導電性液体は、液体金属であることが好ましい。
第1、第2、第3、第4検出端子は、それぞれ第1、第2、第3、第4検出端子対に含まれることが好ましい。また、各検出端子対は、前記導電性液体がその検出端子対に接触していると通電状態となり、前記導電性液体がその検出端子対に接触していないと非通電状態となる。このことにより、対象物に装着されている傾斜センサの傾斜方向を高精度で検出することができる。
本発明の傾斜センサは共通端子を備えることが好ましい。第1、第2、第3又は第4検出端子は、前記導電性液体がその検出端子及び共通端子に接触していると通電状態となり、かつ、前記導電性液体がその検出端子及び共通端子に接触していないと非通電状態となる。共通端子を設けることにより、傾斜センサの製造コストを低減することができる。
第1、第2、第3及び第4検出端子は、それぞれグラフェン層であることが好ましい。
【0010】
第1、第2、第3及び第4検出端子並びに第1凹部の表面粗さ(最大高さRy)は、5μm以上100μm以下であることが好ましい。このことにより、導電性液体に対する濡れ性を悪くすることができ、第1凹部中において導電性液体が分割されたり引き伸ばされたりすることを抑制することができる。
本発明の傾斜センサは第2凹部を有する第2基材を備えることが好ましい。第1及び第2基材は、第1凹部と第2凹部が向かい合いチャンバを形成するように設けられる。このことにより、対象物に装着されている傾斜センサが上下逆さまになった場合でもこのことを検出することができる。
【0011】
本発明の傾斜センサは、第5検出端子と、第6検出端子と、第7検出端子と、第8検出端子とを備えることが好ましい。第5、第6、第7及び第8検出端子は、第2凹部の底を取り囲むように第2凹部の内側面上に配置される。第5、第6、第7又は第8検出端子は、前記導電性液体と接触していると通電状態となるように設けられ、かつ、前記導電性液体と接触していないと非通電状態となるように設けられる。また、前記制御部は、第1、第2、第3、第4、第5、第6、第7及び第8検出端子の通電状態又は非通電状態に基づき傾き及び傾き方向を検出するように設けられる。このような構成の傾斜センサにより、傾斜センサが上下逆さまになった場合でも、対象物に装着されている傾斜センサが水平であること、傾斜していること、及び傾斜方向を検出することが可能になる。
【0012】
本発明は、本発明の傾斜センサと、第1基材を搭載するフレキシブル基板とを備えたウェアラブルセンサも提供する。また、前記制御部は、第1、第2、第3及び第4検出端子の通電状態又は非通電状態に基づき前記ウェアラブルセンサを装着した人又は動物の体勢を検出するように設けられる。本発明のウェアラブルセンサを用いると、人又は動物の体勢をモニタリングすることが可能になる。
本発明のウェアラブルセンサはフレキシブル基板に搭載された歪みセンサを備えることが好ましい。前記歪みセンサは、伸縮性基材と、伸縮性基材上に設けられた第2グラフェン層とを含み、伸縮性基材は、ウェアラブルセンサを装着した人又は動物の呼吸に伴う腹部の動きに応じて第2グラフェン層と共に伸縮するように設けられ、前記制御部は、第2グラフェン層の導電性の変化に基づき前記呼吸を検出するように設けられる。このことによりウェアラブルセンサを装着した人又は動物の呼吸をモニタリングすることが可能になる。
【0013】
本発明のウェアラブルセンサはフレキシブル基板に搭載された湿度センサを備えることが好ましい。前記湿度センサは感湿層を含み、感湿層はチオスピネル化合物を含み、前記チオスピネル化合物の構成元素は、亜鉛、インジウム、硫黄を含み、前記制御部は、感湿層の導電性の変化に基づきウェアラブルセンサを装着した人又は動物の排尿、排便又は発汗を検出するように設けられる。このことによりウェアラブルセンサを装着した人又は動物の排尿、排便又は発汗をモニタリングすることが可能になる。
前記湿度センサは、感湿層を覆う防水通気フィルタを備えることが好ましい。このことにより、尿などが感湿層に侵入し感湿層の電気抵抗変化に影響を与えることを抑制することができる。
前記制御部は、フレキシブル基板上の配線に接続する測定部と、測定部により測定されたデータを無線伝送できるように設けられた無線通信部と、無線通信部と無線接続できるように設けられた情報機器とを含むことが好ましい。このことにより、ウェアラブルセンサを装着した人又は動物の体勢、呼吸、排尿などを遠隔でモニタリングすることが可能になる。
【0014】
以下、複数の実施形態を参照して本発明をより詳細に説明する。図面や以下の記述中で示す構成は、例示であって、本発明の範囲は、図面や以下の記述中で示すものに限定されない。
【0015】
第1実施形態
図1は本実施形態の傾斜センサの概略断面図であり、
図2は本実施形態の傾斜センサに含まれる第1基材の概略平面図であり、
図3は本実施形態の傾斜センサに含まれるフレキシブル基板の概略平面図である。
図1は、
図2、3の破線A-Aにおける断面図である。また、
図10は、本実施形態の傾斜センサを含むウェアラブルセンサの概略平面図である。
本実施形態の傾斜センサ40は、第1凹部5を有する第1基材2と、第1凹部5中に配置された導電性液体6と、第1検出端子4(4a~4p)と、第2検出端子4(4a~4p)と、第3検出端子4(4a~4p)と、第4検出端子4(4a~4p)と、制御部7を備え、導電性液体6は、第1基材2の傾きに応じて導電性液体6が移動するように設けられ、第1、第2、第3及び第4検出端子4(4a~4p)は、第1凹部5の底24を取り囲むように第1凹部5の内側面25上に配置され、第1、第2、第3又は第4検出端子4(4a~4p)は、導電性液体6と接触していると通電状態となるように設けられ、かつ、導電性液体6と接触していないと非通電状態となるように設けられ、制御部7は、第1、第2、第3及び第4検出端子4(4a~4p)の通電状態又は非通電状態に基づき傾き及び傾き方向を検出するように設けられたことを特徴とする。
また、傾斜センサ40は、フレキシブル基板14を有してもよい。
【0016】
傾斜センサ40は、傾き及び傾き方向を検出するように設けられたセンサである。傾斜センサ40は、フレキシブル基板14にセンサ素子16が搭載された構成を有することができる。例えば、衣類、人体、ペットなど(対象物)が傾斜センサ40を装着することができる。
第1基材2は、センサ素子16の基材であり、第1凹部5を有する。第1基材2の材料は、センサ素子16の基材となりうる材料であれば特に限定されないが、エラストマー材料とすることができる。エラストマー材料は、例えば、シリコーンゴム(PDMSなど)、フッ素ゴム、ウレタンゴム、加硫ゴム(天然ゴム、合成ゴム)などの熱硬化性エラストマーである。このことにより、センサ素子16が柔軟性を有することができ、傾斜センサ40を衣類に装着した場合や、傾斜センサ40を人体やペットなどに装着した場合でも、不快感を生じさせることを抑制することができる。また、第1基材2の材料を熱硬化性エラストマーとすることにより、凹部の表面にレーザーを照射し第1凹部5の表面などに微細凹凸構造を形成することが可能になる。このような微細凹凸構造を形成することにより、導電性液体6に対する第1凹部5などの表面の濡れ性を悪くすることができる。
また、第1基材2の材料は、絶縁性材料とすることができる。
【0017】
第1凹部5は、第1基材2の上面に設けられた凹部である。第1凹部5は、例えば、底24を有するテーパ穴とすることができる。また、第1凹部5の開口部は円形とすることができる。また、第1凹部5は、底24を取り囲む内側面25を有することができる。内側面25は、第1基材2の上面に垂直な方向に対する角度が30度以上60度以下である傾斜面とすることができる。内側面25は、平面であってもよく曲面であってもよい。また、第1凹部5の開口部の大きさは、例えば、底24の大きさの1.2倍以上6倍以下とすることができる。また、底24の形状は、円形とすることができ、第1凹部5の開口部の相似形とすることができる。
【0018】
第1凹部5は、導電性液体6を移動可能な状態で閉じ込めるチャンバ22の一部となる。チャンバ22は、第1凹部5の上部をフレキシブル基板14などの樹脂膜で覆うことにより形成してもよい。また、チャンバ22は、
図1に示した傾斜センサ40のように、第1基材2の上部に第2凹部12を有する第2基材11を配置し第1凹部5と第2凹部12とを向かい合わせることにより形成してもよい。第2基材11の材料は、エラストマー材料とすることができる。上述の第1基材2についての説明は、矛盾がない限り第2基材11についても当てはまる。また、上述の第1凹部5についての説明は、矛盾がない限り第2凹部12についても当てはまる。
第2基材11は、第1基材2に直接接着されていてもよく、第1基材2に接着されたフレキシブル基板14に接着されていてもよい。
【0019】
傾斜センサ40は、少なくとも4つの検出端子4(4a~4p)を有する。これらの検出端子4は、第1凹部5の底24を取り囲むように第1凹部5の内側面25上に配置される。また、検出端子4は、その端部が底24側に位置し、端部から伸びる素子配線3が第1凹部5の外側に伸びるように設けることができる。また、検出端子4から伸びる素子配線3は、第1凹部の外側の第1基材2上に設けられた素子端子15(15a~15l)に接続することができる。2つの検出端子4が検出端子対8(8a~8h)を構成する。
【0020】
検出端子4、素子配線3及び素子端子15は、導電体層であり、例えば、グラフェン層、金属層などである。検出端子4、素子配線3及び素子端子15の形成方法は、例えば、印刷法、転写法、蒸着などである。検出端子4、素子配線3及び素子端子15がグラフェン層である場合、ポリイミドフィルムにCO2レーザービームを照射することにより形成したレーザー誘起グラフェン(LIG)層を第1基材2上に転写することにより検出端子4、素子配線3及び素子端子15を形成することができる。このことにより、第1凹部5の内側面25に適切な厚さの検出端子4を形成することができる。
【0021】
検出端子対8(8a~8h)は、2つの検出端子4から構成され、2つの検出端子4は、所定の間隔を開けて配置されている。このため、検出端子対8を構成する2つの検出端子4に導電性液体6が接触していない場合、2つの検出端子4は電気的に分離され、その検出端子対8は通電状態とはならない(非通電状態となる)。また、検出端子対8に導電性液体6が接触すると2つの検出端子4が電気的に接続され、その検出端子対8は通電状態となる。
例えば、傾斜センサ40が4つの検出端子対8を有する場合、4つの検出端子対8は、隣接する2つの検出端子対8の間の角度が約90度となるように第1凹部5の底24を取り囲む。例えば、傾斜センサ40が8つの検出端子対8を有する場合、8つの検出端子対8は、隣接する2つの検出端子対8の間の角度が約45度となるように第1凹部5の底24を取り囲む。このように傾斜センサ40が多くの検出端子対8を有することにより、傾斜センサ40による傾斜方向検出の精度を向上させることができる。
【0022】
図1に示した傾斜センサ40は、
図2に示したように、8個の検出端子対8(8a~8h)及び16個の検出端子4(4a~4p)を有する。具体的には、傾斜センサ40は、検出端子4a、4bからなる検出端子対8a、検出端子4c、4dからなる検出端子対8b、検出端子4e、4fからなる検出端子対8c、検出端子4g、4hからなる検出端子対8d、検出端子4j、4iからなる検出端子対8e、検出端子4l、4kからなる検出端子対8f、検出端子4m、4nからなる検出端子対8g、検出端子4o、4pからなる検出端子対8hを有する。また、隣接する2つの検出端子対8は、隣接する2つの検出端子対8の間の角度が45度となっている。また、検出端子4a~4pのぞれぞれは、素子端子15a~15lのいずれかに接続している。
【0023】
検出端子対8に含まれる2つの検出端子4のうち一方は、素子端子15を介してグラウンドに接続することができる。このことにより、傾斜センサ40による傾斜方向検出の精度を向上させることができる。また、グラウンドに接続する複数の検出端子4は、同じ素子端子15に接続することができる。
【0024】
チャンバ22の底面、側面、天井面(
図1に示した傾斜センサ40では、第1凹部5の底24、内側面25、第2凹部12の底26、内側面27、検出端子4a~4pの表面)は、導電性液体6に対し濡れがわるい(はじきがよい)面とすることができる。このことにより、傾斜センサ40が傾斜した場合にチャンバ22中において導電性液体6が速やかに移動することができる。また、チャンバ22中において導電性液体6が分割されたり引き伸ばされたりすることを抑制することができる。チャンバ22の底面、側面又は天井面と導電性液体6との接触角は、例えば90度以上170度以下とすることができる。
チャンバ22の底面、側面、天井面の導電性液体6に対する濡れ性を悪くする方法としては、チャンバ22の底面、側面、天井面に濡れ性の悪い材料を用いること、チャンバ22の底面、側面、天井面をスプレーコーティングすること、チャンバ22の底面、側面、天井面に微細凹凸構造を形成することなどが挙げられる。
微細凹凸構造を形成する方法としては、例えば、検出端子4a~4pを形成した後に、第1凹部5の底24及び内側面25にレーザー走査加工を施し、また、第2凹部12の底26及び内側面27にレーザー走査加工を施す方法が挙げられる。
チャンバ22の底面、側面、天井面に微細凹凸構造を形成した場合、チャンバ22の底面、側面、天井面の表面粗さ(最大高さRy)は、5μm以上100μm以下とすることができる。
【0025】
フレキシブル基板14は、センサ素子16を搭載する基板である。フレキシブル基板14の材料は、例えば、ポリイミド、ポリエステル、ポリエチレンテレフタレート(PET)などのプラスチックである。フレキシブル基板14は、第1凹部5の開口を覆い、導電性液体6を収容するチャンバ22の天井となってもよい。また、第1基材2の第1凹部5と第2基材11の第2凹部12を向かい合わせてチャンバ22を形成する場合、フレキシブル基板14は、第1基材2と第2基材11の間に位置することができ、第1凹部5及び第2凹部12と重なる部分に開口を有することができる。また、フレキシブル基板14が第2基材11よりも大きい開口を有し、この開口において第1基材2と第2基材11とを接着してもよい。
フレキシブル基板14は、ウェアラブルセンサ60の基板であってもよい。この場合、フレキシブル基板14は、後述する歪みセンサ45又は湿度センサ55を搭載することができる。
【0026】
フレキシブル基板14上には、複数の基板端子18(18a~18l)と基板端子18と接続端子21とを接続する基板配線23を設けることができる。複数の基板端子18及び基板配線23は、例えば、金属層、グラフェン層などである。
基板端子18は、素子端子15、歪みセンサ端子、湿度センサ端子などと接続するための端子である。フレキシブル基板14は、各素子端子15a~15lと各基板端子18a~18lが重なるように第1基材2上に配置される。基板端子18は、接触接続、導電性ペースト、導電ゴムなどにより素子端子15に電気的に接続される。
図1~
図3では、基板端子18a、18b、18c、18d、18e、18f、18g、18h、18i、18j、18k、18lがそれぞれ素子端子15a、15l、15k、15j、15i、15h、15g、15f、15e、15d、15c、15bに接続する。
【0027】
接続端子21は、基板配線23と制御部7とを接続するための端子である。
制御部7は、傾斜センサ40を制御する部分である。また、制御部7は後述するウェアラブルセンサ60を制御する部分であってもよい。この場合、制御部7は、歪みセンサ45又は湿度センサ55を制御するように設けることができる。
制御部7は、例えば、CPU、メモリ、タイマー、入出力ポートなどを有するマイクロコントローラを含むことができる。また、制御部7は、検出端子対8に含まれる2つの検出端子4の間の通電状態又は非通電状態を検出するための電気回路又は電子回路を含むことができる。電気回路又は電子回路は、例えば、抵抗分圧回路、電圧計測回路などである。また、制御部7は、電池又は電源回路を含むことができる。また、制御部7は、スマートフォン、コンピュータなどの情報機器57で動作するように設けられたソフトフェアを含んでもよい。
【0028】
制御部7は、フレキシブル基板14上の基板配線23に接続する測定部56と、測定部56により測定されたデータを無線伝送できるように設けられた無線通信部52と、無線通信部52と無線接続できるように設けられた情報機器57とを含んでもよい。また、測定部56と情報機器57は、有線通信できるように設けられてもよい。情報機器57は、例えば、スマートフォン58、コンピュータ、スマートウォッチ、モバイル端末などである。
【0029】
導電性液体6は、導電性を有する液体(溶液や懸濁液も含む)であり、例えば、導電率が1S/m以上の液体又は懸濁液である。導電性液体6は、例えば、液体金属、イオン液体などである。導電性液体6は、傾斜センサ40の傾きに応じて移動できるようにチャンバ22内に収容される。液体金属は、常温で液体の金属である。液体金属は、例えば、インジウム-ガリウム-スズ合金(InGaSn)、インジウム-ガリウム合金(InGa)、水銀などである。
第1基材2が水平である場合、導電性液体6は、
図1に示した傾斜センサ40のように、すべての検出端子対8a~8hに接触する。この場合、すべての検出端子対8a~8hにおいて検出端子対8を構成する2つの検出端子4は、通電状態となる。従って、すべての検出端子対8a~8hの通電状態を検出することにより、制御部7は、対象物に装着された第1基材2が水平な状態にあることを検出することができる。
【0030】
図4に示した傾斜センサ40のように、第1基材2が検出端子対8gを配置した方向が下がり検出端子対8cを配置した方向が上がるように傾斜すると、重力により導電性液体6が検出端子対8gの方へ移動する。この移動により、導電性液体6は、検出端子対8b、8c、8dと接触しなくなり、これらの検出端子対8は非通電状態となる。また、導電性液体6は、他の検出端子対8a、8e~8hとは接触するため、これらの検出端子対8は通電状態となる。従って、制御部7を用いてこのような通電状態、非通電状態を検出することにより、制御部7は、対象物に装着されている第1基材2が傾斜していること及び傾斜方向を検出することができる。
【0031】
図5に示した傾斜センサ40のように、第1基材2が検出端子対8cを配置した方向が下がり検出端子対8gを配置した方向が上がるように傾斜すると、重力により導電性液体6が検出端子対8cの方へ移動する。この移動により、導電性液体6は、検出端子対8f、8g、8hと接触しなくなり、これらの検出端子対8は非通電状態となる。また、導電性液体6は、他の検出端子対8a~8eとは接触するため、これらの検出端子対8は通電状態となる。従って、制御部7を用いてこのような通電状態、非通電状態を検出することにより、制御部7は、対象物に装着されている第1基材2が傾斜していること及び傾斜方向を検出することができる。
他の方向の傾斜も同様に検出することができる。
【0032】
図6に示した傾斜センサ40のように、第1基材2が上下逆さまとなっている場合、重力により導電性液体6は、第2基材11の第2凹部12へと移動する。この移動により、導電性液体6は、すべての検出端子対8a~8hと接触しなくなり、これらの検出端子対8は非通電状態となる。従って、すべての検出端子対8a~8hの非通電状態を検出することにより、制御部7は、対象物に装着されている第1基材2が上下逆さまになっていることを検出することができる。
【0033】
第2実施形態
図7は本実施形態の傾斜センサの概略断面図であり、
図8は本実施形態の傾斜センサに含まれる第1基材の概略平面図である。
図7は、
図8の破線B-Bにおける断面図である。
第2実施形態の傾斜センサ40は、共通端子9を備える。
第1実施形態では、検出端子対8を構成する2つの検出端子4の通電状態又は非通電状態を検出することにより傾斜及び傾斜方向を検出していたが、第2実施形態では、共通端子9と検出端子4との通電状態又は非通電状態を検出することにより傾斜又は傾斜方向を検出する。他の構成は第1実施形態と同様である。
【0034】
共通端子9は、第1凹部5の底24に配置される。また、共通端子9は、素子配線3を介して第1凹部の外側の第1基材2上に設けられた素子端子15iに接続することができる。
傾斜センサ40は、少なくとも4つの検出端子4(4a~4h)を有する。これらの検出端子4は、第1凹部5の底24に配置された共通端子9を取り囲むように第1凹部5の内側面25上に配置される。また、検出端子4は、その端部が底24側に位置し、端部から伸びる素子配線3が第1凹部5の外側に伸びるように設けることができる。また、検出端子4から伸びる素子配線3は、第1凹部の外側の第1基材2上に設けられた素子端子15(15a~15h)に接続することができる。
【0035】
共通端子9は、各検出端子4(4a~4h)と所定の間隔を開けて配置される。このため、共通端子9と検出端子4とに導電性液体6が接触していない場合、共通端子9と検出端子4とは電気的に分離され、その検出端子4は通電状態とはならない(非通電状態となる)。また、共通端子9及び検出端子4に導電性液体6が接触すると、共通端子9と検出端子4とが導電性液体6により電気的に接続され、その検出端子4は通電状態となる。
例えば、傾斜センサ40が4つの検出端子4を有する場合、4つの検出端子4は、隣接する2つの検出端子4の間の角度が約90度となるように共通端子9を取り囲む。例えば、傾斜センサ40が8つの検出端子4を有する場合、8つの検出端子4は、隣接する2つの検出端子4の間の角度が約45度となるように共通端子9を取り囲む。このように傾斜センサ40が多くの検出端子4を有することにより、傾斜センサ40による傾斜方向検出の精度を向上させることができる。また、共通端子9を設けることにより、素子配線3、素子端子15、基板端子18及び基板配線23を少なくすることができ、傾斜センサ40の製造コストを低減することができる。
制御部7は、共通端子9と各検出端子4(4a~4h)の間の通電を検出するための電気回路又は電子回路を含むことができる。
【0036】
第1基材2が水平である場合、導電性液体6は、
図7に示した傾斜センサ40のように、共通端子9及びすべての検出端子4a~4hに接触する。この場合、すべての検出端子4a~4hが通電状態となる。従って、すべての検出端子4a~4hの通電状態を検出することにより、制御部7は、対象物に装着されている第1基材2が水平な状態にあることを検出することができる。
【0037】
第1基材2が検出端子4gを配置した方向が下がり検出端子4cを配置した方向が上がるように傾斜すると、重力により導電性液体6が検出端子4gの方へ移動する。この移動により、導電性液体6は、検出端子4b、4c、4dと接触しなくなり、これらの検出端子4は非通電状態となる。また、導電性液体6は、他の検出端子4a、4e~4hとは接触するため、これらの検出端子4は通電状態となる。従って、制御部7を用いてこのような通電状態、非通電状態を検出することにより、制御部7は、対象物に装着されている第1基材2が傾斜していること及び傾斜方向を検出することができる。
【0038】
第1基材2が検出端子4cを配置した方向が下がり検出端子4gを配置した方向が上がるように傾斜すると、重力により導電性液体6が検出端子4cの方へ移動する。この移動により、導電性液体6は、検出端子4f、4g、4hと接触しなくなり、これらの検出端子4は非通電状態となる。また、導電性液体6は、他の検出端子4a~4eとは接触するため、これらの検出端子4は通電状態となる。従って、制御部7を用いてこのような通電状態、非通電状態を検出することにより、制御部7は、対象物に装着されている第1基材2が傾斜していること及び傾斜方向を検出することができる。
他の方向の傾斜も同様に検出することができる。
【0039】
第1基材2が上下逆さまとなっている場合、重力により導電性液体6は、第2基材11の第2凹部12へと移動する。この移動により、導電性液体6は、すべての検出端子4a~4hと接触しなくなり、すべての検出端子4は非通電状態となる。従って、すべての検出端子4a~4hの非通電状態を検出することにより、制御部7は、対象物に装着されている第1基材2が上下逆さまになっていることを検出することができる。
その他の構成は第1実施形態と同様である。また、第1実施形態についての記載は矛盾がない限り第2実施形態についても当てはまる。
【0040】
第3実施形態
図9は、本実施形態の傾斜センサ40の概略断面図である。
第3実施形態では、
図2に示したような検出端子対8(8a~8h)、素子配線3及び素子端子15(15a~15l)が第2基材11にも設けられている。また、フレキシブル基板14の両面のそれぞれに、基板端子18(18a~18l)、基板配線23が設けられている。他の構成は第1又は第2実施形態と同様である。
【0041】
このような構成により、第1又は第2実施形態と同様に、導電性液体6が第1凹部5に位置するとき検出端子対8(8a~8h)(又は検出端子4a~4h)の通電状態、非通電状態を検出することにより制御部7は、対象物に装着されている第1基材2が水平であること又は傾斜していること及び傾斜方向を検出することができる。さらに、対象物に装着されている第1基材2が上下逆さまになっている(導電性液体6が第2凹部12に位置する)場合でも、第2基材11上に設けられた検出端子対8の通電状態、非通電状態を検出することにより制御部7は、対象物に装着されている第1基材2又は第2基材11が水平であること又は傾斜していること及び傾斜方向を検出することができる。
【0042】
ここでは、第1実施形態で説明した検出端子対8(8a~8h)、素子配線3及び素子端子15(15a~15l)を第2基材11上にも設けた場合について説明したが、第2実施形態で説明した共通端子9、検出端子4(4a~4h)、素子配線3及び素子端子15(15a~15i)を第2基材11上にも設けてもよい。このことによっても、対象物に装着されている第1基材2が上下逆さまになっている(導電性液体6が第2凹部12に位置する)場合でも、第2基材11上に設けられた検出端子4の通電状態、非通電状態を検出することにより制御部7は、対象物に装着されている第1基材2又は第2基材11が水平であること又は傾斜していること及び傾斜方向を検出することができる。
その他の構成は第1又は第2実施形態と同様である。また、第1又は第2実施形態についての記載は矛盾がない限り第3実施形態についても当てはまる。
【0043】
第4実施形態
第4実施形態はウェアラブルセンサに関する。
図10は本実施形態のウェアラブルセンサ60の概略平面図であり、
図11はウェアラブルセンサ60が取り付けられているおむつ59の概略斜視図である。
ウェアラブルセンサ60は、人又は動物が装着できるように設けられたセンサである。ウェアラブルセンサ60は、例えば、乳幼児のおむつの内部に取り付けることができるように設けられてもよく、被介護者のアンダーウェアの内部に取り付けることができるように設けられてもよい。このことにより、ウェアラブルセンサ60が装着後に外れたりずれたりすることを抑制することができる。
ウェアラブルセンサ60は、乳幼児モニタリング用センサであってもよく、介護用センサであってもよい。
【0044】
ウェアラブルセンサ60は、例えば、
図11のように、傾斜センサ40が下腹中央に位置し(腰のゴムベルト付近)、歪みセンサ45が腹部に位置し(腰のゴムベルト付近)、湿度センサ55が股部に位置するようにおむつ59やアンダーウェアに取り付けることができる。
フレキシブル基板14、傾斜センサ40、歪みセンサ45及び湿度センサ55は、フレキシブル材料から構成されるため、人又は動物が違和感なくウェアラブルセンサ60を装着することができる。
【0045】
ウェアラブルセンサ60は、第1、第2又は第3実施形態の傾斜センサ40と制御部7とを含む。傾斜センサ40は、ウェアラブルセンサ60を装着した人の姿勢センサとして機能する。傾斜センサ40は、フレキシブル基板14に搭載される。なお、第1~第3実施形態における傾斜センサ40、フレキシブル基板14、制御部7などについての説明は、第4実施形態でも同様である。
【0046】
本実施形態では、制御部7は傾斜センサ40、歪みセンサ45及び湿度センサ55を制御する。
制御部7は、傾斜センサ40、歪みセンサ45及び湿度センサ55を用いた測定を行うことができるように設けられた測定部56と、測定部56により測定されたデータを無線伝送できるように設けられた無線通信部52と、無線通信部52と無線接続できるように設けられた情報機器57とを含んでもよい。測定部56及び無線通信部52は腰のゴムベルト付近に配置することができる。無線通信部52と情報機器57は、例えばBluetooth(登録商標)で接続することができる。
【0047】
制御部7は、傾斜センサ40の第1、第2、第3及び第4検出端子4(4a~4p)の通電状態又は非通電状態に基づきウェアラブルセンサ60を装着した人又は動物の体勢を検出するように設けることができる。
例えば、第1実施形態の傾斜センサ40が下腹中央に位置し第1基材2の下面が下腹と接触又は対向するように(検出端子対8aが頭側、検出端子対8eが足側、検出端子対8gが右側、検出端子対8cが左側)、人がウェアラブルセンサ60を装着した場合、ウェアラブルセンサ60を装着した人が仰向けで寝ていると、
図1に示した傾斜センサ40のように、導電性液体6はすべての検出端子対8a~8hに接触する。この場合、すべての検出端子対8a~8hにおいて検出端子対8を構成する2つの検出端子4は、通電状態となる。従って、すべての検出端子対8a~8hの通電状態を検出することにより、制御部7は、ウェアラブルセンサ60を装着した人が仰向けで寝ていることを検出することができる。
【0048】
ウェアラブルセンサ60を装着した人が右向きで寝ていると、
図4に示した傾斜センサ40のように、第1基材2の右側(検出端子対8gを配置された側)が下がり左側(検出端子対8cを配置された側)が上がるように傾斜する。この場合、重力により導電性液体6が検出端子対8gの方へ移動し、導電性液体6は、検出端子対8b、8c、8dと接触しなくなり、これらの検出端子対8b~8dは非通電状態となる。また、導電性液体6は、他の検出端子対8a、8e~8hとは接触するため、これらの検出端子対8は通電状態となる。従って、制御部7を用いてこのような通電状態、非通電状態を検出することにより、制御部7は、ウェアラブルセンサ60を装着した人が右向きで寝ていることを検出することができる。
【0049】
ウェアラブルセンサ60を装着した人が左向きで寝ていると、
図5に示した傾斜センサ40のように、第1基材2が左側(検出端子対8cを配置された側)が下がり右側(検出端子対8gを配置された側)が上がるように傾斜する。この場合、重力により導電性液体6が検出端子対8cの方へ移動し、導電性液体6は、検出端子対8f、8g、8hと接触しなくなり、これらの検出端子対8は非通電状態となる。また、導電性液体6は、他の検出端子対8a~8eとは接触するため、これらの検出端子対8は通電状態となる。従って、制御部7を用いてこのような通電状態、非通電状態を検出することにより、制御部7は、ウェアラブルセンサ60を装着した人が左向きで寝ていることを検出することができる。
【0050】
ウェアラブルセンサ60を装着した人がうつ伏せで寝ていると、
図6に示した傾斜センサ40のように、第1基材2が上下逆さまとなり、重力により導電性液体6は、第2基材11の第2凹部12へと移動する。この移動により、導電性液体6は、すべての検出端子対8a~8hと接触しなくなり、これらの検出端子対8は非通電状態となる。従って、すべての検出端子対8a~8hの非通電状態を検出することにより、制御部7は、ウェアラブルセンサ60を装着した人がうつ伏せで寝ていることを検出することができる。
このように制御部7は、傾斜センサ40を用いてウェアラブルセンサ60を装着した人の体勢を検出することができる。また、制御部7は、ウェアラブルセンサ60を装着した人がうつ伏せ寝となったときにアラームを鳴らし、保護者、介護者などにこのことを通知することができる。なお、乳幼児の寝姿勢がうつ伏せになると窒息の危険性がある。
【0051】
ウェアラブルセンサ60は、フレキシブル基板14に搭載された歪みセンサ45を含むことができる。歪みセンサ45は、ウェアラブルセンサ60を装着した人又は動物の呼吸センサとして機能する。ウェアラブルセンサ60は、人又は動物がウェアラブルセンサ60を装着したときに歪みセンサ45が人又は動物の腹部に位置するように設けられる。
腹式呼吸では、空気を肺に取り込むと腹部が膨らみ、空気を肺から吐き出すと腹部がへこむ。呼吸は、このような腹部の膨らみとへこみの繰り返しを伴う。歪みセンサ45によりこのような腹部の動きを検出することにより、ウェアラブルセンサ60を装着した人又は動物の呼吸を検出することができる。
【0052】
歪みセンサ45は、伸縮性基材41と、伸縮性基材41上に設けられたグラフェン層42とを含む。
図12は、
図10の破線C-Cにおける歪みセンサ45の概略断面図である。
伸縮性基材41は、伸縮性を有する基材であり、例えば、エラストマー製の基材(例えば、シリコーンゴムフィルム)であってもよく、切り紙構造により伸縮性を有する樹脂フィルムであってもよい。切り紙構造とは、フィルムが伸縮できるようにフィルムに切れ目を入れた構造である。
伸縮性基材41は、腹部に付着するように設けることができる。このことにより、呼吸に伴う腹部の動きに応じて伸縮性基材41を伸縮させることができる。伸縮性基材41の粘着性を利用して伸縮性基材41を腹部に付着させてもよく、伸縮性材料の表面に設けた粘着層を利用して伸縮性基材41を腹部に付着させてもよく、粘着テープ又は粘着剤を利用して伸縮性基材41を腹部に付着させてもよい。
【0053】
グラフェン層42は、多数のグラフェンを含む多孔質層であり、隣接する2つのグラフェンはファンデルワールス力により結合している。グラフェン層42は、伸縮性基材41上に設けられる。このため、伸縮性基材41が腹部の動きに応じて伸縮すると、グラフェン層42も伸縮性基材41と共に伸縮する。
グラフェン層42は、レーザー誘起グラフェン(LIG)層であってもよい。グラフェン層42は、例えば、樹脂フィルム(例えば、ポリイミドフィルム)にレーザー光を照射することにより樹脂フィルムの一部を焼成し炭化することによりレーザー誘起グラフェンを形成し、このレーザー誘起グラフェンを伸縮性基材41上に転写することによりグラフェン層42を形成することができる。また、伸縮性基材41が切り紙構造を有する樹脂フィルム(例えば、ポリイミドフィルム)である場合、この樹脂フィルムにレーザー光を照射してグラフェン層42を形成してもよい。
グラフェン層42の厚みは、例えば、0.1μm以上300μm以下とすることができる。
【0054】
グラフェン層42は、歪みセンサ端子43a、43bを有する。また、歪みセンサ端子43a、43bはそれぞれフレキシブル基板14の基板端子18と接続する。このことにより、制御部7が基板配線23及び基板端子18を介してグラフェン層42と電気的に接続することができ、制御部7によりグラフェン層42の導電性(電気抵抗)の変化を測定することが可能になる。
【0055】
呼吸に伴う腹部の動きにより伸縮性基材41が伸縮しグラフェン層42に歪みが生じると、ピエゾ抵抗効果によりグラフェン層42の電気抵抗(導電性)が変化する。このグラフェン層42の電気抵抗の変化を制御部7を用いて測定することにより、ウェアラブルセンサ60を装着した人又は動物が呼吸をしていることを検出することができる。
このように制御部7は、歪みセンサ45を用いてウェアラブルセンサ60を装着した人又は動物の呼吸を検出することができる。また、制御部7は、ウェアラブルセンサ60を装着した人又は動物の呼吸が10秒間以上停止したときにアラームを鳴らし、保護者、介護者などにこのことを通知することができる。
【0056】
ウェアラブルセンサ60は、フレキシブル基板14に搭載された湿度センサ55を備えることができる。
図13は湿度センサ55の概略平面図であり、
図14は
図13の破線D-Dにおける湿度センサ55の概略断面図である。湿度センサ55は抵抗式湿度センサである。また、湿度センサ55は排尿センサとして機能することができる。
湿度センサ55は、感湿層46と、感湿層46に電気的に接続した第1電極47及び第2電極48とを含む。感湿層46、第1電極47及び第2電極48は、フレキシブル基板14上に配置される。また、湿度センサ55は、感湿層46を覆う防水通気フィルタ49を備えることができる。
【0057】
第1電極47及び第2電極48は、感湿層46に電気的に接続した電極であり、感湿層46の電気抵抗(導電性)を測定するための電極である。感湿層46の電気抵抗の測定方法は二端子法であってもよく、四端子法であってもよい。第1電極47及び第2電極48は、例えば、カーボン電極、銀電極、金電極、白金電極、銅電極、アルミニウム電極などである。第1電極47又は第2電極48の厚さは、例えば30nm以上300μm以下とすることができる。第1電極47と第2電極48との間の電極間距離は、例えば100nm以上5mm以下とすることができる。第1電極47及び第2電極48は、対向した櫛形電極とすることができる。
【0058】
フレキシブル基板14がポリイミドフィルムなどの樹脂フィルムである場合、第1電極47及び第2電極48は、樹脂フィルムの表面のレーザー誘起グラフェン層であってもよい。このことにより、感湿層46の電気抵抗を安定して測定することができる。また、第1電極47及び第2電極48は、基板配線23の一部であってもよい。また、第1電極47及び第2電極48は、基板配線23を介して制御部7と電気的に接続することができる。
【0059】
感湿層46は、湿度に応じて電気抵抗が変化する層であり、チオスピネル化合物を含む。チオスピネル化合物は、スピネル型結晶構造を有する物質であり、化学式:AB2X4(A,Bは陽性元素、Xは陰性元素(硫黄元素))で示される結晶構造を有する。
感湿層46は、チオスピネル化合物からなる層であってもよく、チオスピネル化合物を90%以上含む層であってもよい。また、感湿層46は多孔質構造を有してもよい。また、感湿層46の厚さは、例えば30nm以上100μm以下とすることができる。また、感湿層46は、例えば塗布法、印刷法などで形成することができる。
【0060】
例えば、感湿層46に含まるチオスピネル化合物は、ZnIn2S4で表される化合物(四硫化二インジウム亜鉛)である。化学量論比はスピネル型結晶構造を維持することができる範囲でずれていてもよい。AB2X4中のAは亜鉛(Zn)であるが、カドミウム(Cd)、鉄(Fe)、ニッケル(Ni)、マンガン(Mn)、他の遷移金属元素又は不純物が少量(例えば5%以下)含まれてもよい。AB2X4中のBはインジウム(In)であるが、アルミニウム(Al)、ガリウム(Ga)、他の遷移金属元素又は不純物が少量(例えば5%以下)含まれてもよい。AB2X4中のXは硫黄(S)であるが、酸素(O)、セレン(Se)又は不純物が少量(例えば5%以下)含まれてもよい。また、感湿層46は、感湿層46の電気抵抗を低下させるための不純物を含んでもよい。また、感湿層46は、ZnIn2S4を合成する際に混入する不純物を含んでもよい。
【0061】
防水通気フィルタ49は、気体は通過できるが水は通過できないフィルタである。防水通気フィルタ49は、感湿層46を覆うように設けられる。このことにより、ウェアラブルセンサ60を装着した人の尿などが感湿層46に侵入することを防止することができ、尿などが感湿層46の電気抵抗変化に影響を与えることを抑制することができる。
【0062】
湿度センサ55は、ウェアラブルセンサ60を装着した人の股部に位置するように配置される。ウェアラブルセンサ60を装着した人がおむつ内又はアンダーウェアの内部で排尿をしたとき、股部付近の湿度が上昇し、感湿層46の電気抵抗(導電性)が変化する。この電気抵抗の変化を制御部7を用いて検出することにより、ウェアラブルセンサ60を装着した人の排尿を検出することができる。
このように制御部7は、湿度センサ55を用いてウェアラブルセンサ60を装着した人の排尿を検出することができる。また、制御部7は、ウェアラブルセンサ60を装着した人の排尿を検出したときにアラームを鳴らし、保護者、介護者などに排尿を通知することができる。
また、湿度センサ55を配置する位置を代えることにより、ウェアラブルセンサ60を装着した人や動物の発汗や排便も検出することが可能である。
また、第1~第3実施形態についての記載は矛盾がない限り第4実施形態についても当てはまる。
【0063】
傾斜センサ作製実験1
テーパ穴(第1凹部)を有するシリコーンゴム(PDMS)製の第1基材を作製した。第1凹部の開口は、直径1cmの円形とした。また、第1基材の上面に垂直な方向と第1凹部の内側面の傾斜方向との角度は約50度とした。
次に、ポリイミドフィルムにCO2レーザービームを照射することにより形成したレーザー誘起グラフェン(LIG)層を第1基材上(第1凹部の内側面を含む)に転写することにより8つの検出端子対、素子配線及び素子端子を形成した。そして、第1凹部の底、内側面及び検出端子にレーザースキャン加工を施し、これらの表面に微細凹凸構造を形成した。その後、第1凹部中にインジウム-ガリウム-スズ合金である液体金属を入れて傾斜センサを作製した。
検出端子の表面粗さ(最大高さRy)は、30μmであった。
【0064】
図15は第1凹部中に液体金属を入れる前の傾斜センサの写真であり、
図16(a)~(c)は第1凹部中に液体金属を入れた後の傾斜センサの写真である。また、
図16(a)は傾斜センサを水平な状態にしたときの写真であり、
図16(b)は、
図16(a)の傾斜センサを傾けたときの写真であり、
図16(c)は、
図16(b)のように傾けた傾斜センサを水平に戻したときの写真である。
図16(a)に示したように、傾斜センサを水平にすると、液体金属は8つの検出端子対のすべてに接触した。
図16(b)に示したように傾斜センサを傾けると、重力により液体金属が移動し、液体金属は4つの検出端子対と接触しなくなった。さらに、傾斜センサを水平に戻すと、
図16(c)に示したように液体金属は重力により第1凹部の中心に戻り8つの検出端子対のすべてに接触した。また、傾斜センサをこのように動かしても、液体金属は接触角が大きいままで移動した。このため、傾斜センサの傾きに応じて、液体金属がスムーズに移動し、液体金属が分離したり引き伸ばされたりすることがないことがわかった。
【0065】
通電状態検出実験
検出端子対の通電状態を検出するための試験素子を作製した。
図17(a)は、作製した試験素子の写真である。具体的には、ポリイミドフィルムにCO
2レーザービームを照射することにより形成したレーザー誘起グラフェン(LIG)層をシリコーンゴム(PDMS)プレート上に転写することにより、検出端子4a、4b、素子端子15a、15bを形成した。
【0066】
図17(b)に示した説明図のように、作製した試験素子を傾斜角15度の傾斜面上に設置し、素子端子15a、15bに抵抗分圧回路を接続した。そして、
図17(b)に示したように、インジウム-ガリウム-スズ合金である液体金属を試験素子上に滴下し、重力により液体金属を検出端子4a、4b上を移動させた。このときの検出端子4a、4bの通電状態を抵抗分圧回路を用いて検出した。
測定結果を
図18に示す。
図18のグラフでは、測定電圧が約1Vのとき検出端子4a、4bが非通電状態であることを示し、測定電圧が約0.25Vのとき検出端子4a、4bが通電状態であることを示す。
図18のように、滴下した液体金属が検出端子4a、4b上を通過する際液体金属が検出端子4a、4b間の導電経路となり検出端子4a、4bが通電状態となった。
【0067】
傾斜センサ作製実験2
図1~
図3に示したような傾斜センサを作製した。
まず、テーパ穴(第1凹部)を有するシリコーンゴム(PDMS)製の第1基材を作製した。第1凹部の開口は、直径1cmの円形とした。また、第1基材の上面に垂直な方向と第1凹部の内側面の傾斜方向との角度は約50度とした。また、テーパ穴(第2凹部)を有するシリコーンゴム(PDMS)製の第2基材を作製した。第2凹部の開口は、直径1cmの円形とした。また、第2基材の上面に垂直な方向と第2凹部の内側面の傾斜方向との角度は約50度とした。
【0068】
次に、ポリイミドフィルムにCO2レーザービームを照射することにより形成したレーザー誘起グラフェン(LIG)層を第1基材上(第1凹部の内側面を含む)に転写することにより8つの検出端子対、素子配線及び素子端子を形成した。
次に、第1凹部の底、内側面、検出端子、第2凹部の底、内側面にレーザースキャン加工を施し、これらの表面に微細凹凸構造を形成した。
また、ポリイミドフィルムに銀ペーストを印刷することにより基板端子及び基板配線を有するフレキシブル基板を作製した。
そして、第1凹部にインジウム-ガリウム-スズ合金である液体金属を入れた後、第1基材、フレキシブル基板、第2基材を重ね合わせ、素子端子と基板端子とを電気的に接続させた。また、基板配線に抵抗分圧回路を接続して、検出端子対の通電状態又は非通電状態を検出できるようにした。また、検出端子対を構成する2つの検出端子のうち一方をグラウンドに接続した。
【0069】
作製した傾斜センサを水平、傾斜又は上下逆さまにして検出端子対の分圧を測定し、検出端子対の通電状態又は非通電状態を検出した。測定結果を
図19に示す。
図19の上図の検出端子対(1)、(2)、(3)、(4)、(5)、(6)、(7)、(8)の測定結果が、それぞれ
図19の下図のグラフ(1)、(2)、(3)、(4)、(5)、(6)、(7)、(8)である。
図19の下図の各グラフでは、測定電圧が約1Vのとき検出端子対は非通電状態であり、測定電圧が0.2V~0.6Vのとき検出端子対が通電状態である。
【0070】
また、測定において、時間帯Aでは検出端子対(5)が下がるように傾斜センサを傾斜させ、時間帯Bでは検出端子対(1)が下がるように傾斜センサを傾斜させ、時間帯Cでは傾斜センサを上下逆さまとし、時間帯Dでは検出端子対(3)が下がるように傾斜センサを傾斜させ、時間帯Eでは傾斜センサを上下逆さまとし、時間帯Fでは検出端子対(2)と検出端子対(3)の中間が下がるように傾斜センサを傾斜させ、時間帯Gでは検出端子対(4)と検出端子対(5)の中間が下がるように傾斜センサを傾斜させた。また、2つの時間帯の間では傾斜センサを水平状態とした。
【0071】
時間帯Aでは、検出端子対(1)、(2)、(8)が非通電状態であり他の検出端子対は通電状態であった。従って、傾斜センサの傾斜方向を検出することができた。
時間帯Bでは、検出端子対(4)、(5)、(6)が非通電状態であり他の検出端子対は通電状態であった。従って、傾斜センサの傾斜方向を検出することができた。
時間帯Cでは、すべての検出端子対が非通電状態であった。従って、傾斜センサが上下逆さまになっていることを検出できた。
時間帯Dでは、検出端子対(6)、(7)、(8)が非通電状態であり他の検出端子対は通電状態であった。従って、傾斜センサの傾斜方向を検出することができた。
時間帯Eでは、すべての検出端子対が非通電状態であった。従って、傾斜センサが上下逆さまになっていることを検出できた。
時間帯Fでは、検出端子対(5)、(6)、(7)、(8)が非通電状態であり他の検出端子対は通電状態であった。従って、傾斜センサの傾斜方向を検出することができた。
時間帯Gでは、検出端子対(1)、(2)、(7)、(8)が非通電状態であり他の検出端子対は通電状態であった。従って、傾斜センサの傾斜方向を検出することができた。
このように、本発明の傾斜センサにより傾斜方向を高精度で検出できることがわかった。
【0072】
湿度センサ作製実験
図13、
図14に示したような湿度センサを作製した。
ZnCl
2(0.25mmol)、InCl
3・4H
2O(0.5mmol)、チオアセトアミド(Thioacetamide)(1.6mmol)を150mlの水に溶解させた。その後、95℃の水槽を用いて攪拌しながら約5時間アニールした。冷却後、遠心分離機にて生成したZnIn
2S
4と余分な溶液を分離させた。このようにして、ZnIn
2S
4を合成した。
厚さ130μmのポリイミドフィルム(フレキシブル基板14)にCO
2レーザー(レーザー出力:3W)を照射することによりポリイミドフィルムの表面を炭化し、第1電極47及び第2電極48(レーザー誘起グラフェン(LIG)層)を形成した。第1電極47及び第2電極48はそれぞれ櫛型電極であり、第1電極47の櫛歯部分が第2電極48の2つの櫛歯部分の間に位置し、第2電極48の櫛歯部分が第1電極47の2つの櫛歯部分の間に位置するように設けられている。
【0073】
合成したZnIn
2S
4を含む溶液(10mg/mL)を第1電極47及び第2電極48上に塗布し100℃で乾燥させて、感湿層46(厚さ:0.7μm)を形成した。その後、感湿層46上に防水通気フィルタ(日東電工株式会社製)を貼り付け
図13、
図14に示したような湿度センサを作製した。
図20(1)は感湿層46を形成した後の湿度センサの写真であり、
図20(2)は防水通気フィルタを貼り付けた後の湿度センサの写真である。
【0074】
防水通気フィルタ上に水を滴下し、水滴を形成した。水滴の量は5μL~100μLの範囲で徐々に増やしていった。その後、防水通気フィルタ上の水滴を除去した。この際の感湿層の電気抵抗の変化率ΔR/R
0(R
0:測定開始時の感湿層の電気抵抗値、ΔR=R-R
0、R:感湿層の電気抵抗値)を測定した。測定結果を示すグラフを
図21に示す。
図21に示すように、水滴の量に応じて感湿層の電気抵抗変化率は変化した。そして、水滴を除去すると、感湿層の電気抵抗変化率は測定開始時の値に戻った。従って、作製した湿度センサを用いて排尿などを適切に検出することができることがわかった。
【0075】
ウェアラブルセンサ作製実験
図10、12に示したようなウェアラブルセンサを作製した。傾斜センサは「傾斜センサ作製実験2」と同様に作製し、湿度センサは「湿度センサ作製実験」と同様に作製した。
歪みセンサに関しては、まず、ポリイミドフィルムにCO
2レーザー光を照射することによりポリイミドフィルムの一部を焼成し炭化することによりレーザー誘起グラフェンを形成し、このレーザー誘起グラフェンをPDMS(シリコーンゴム、伸縮性基材)上に転写することによりグラフェン層を形成した。このグラフェン層が基板端子と接合するようにPDMSをポリイミドフィルム(フレキシブル基板)に取り付けることにより歪みセンサを作製した。
【0076】
作製したウェアラブルセンサをおむつに取り付けた。
図22(a)はおむつに装着したウェアラブルセンサの写真である。また、
図22(b)に示したような測定部(無線通信部)をフレキシブル基板に取り付けた。また、
図22(c)に示したようなスマートフォンを用いてウェアラブルセンサを制御した。
【0077】
傾斜センサが下腹中央に位置し、歪みセンサが腹部に位置し、湿度センサが股部に位置するように、作製したウェアラブルセンサを取り付けたおむつを人形に装着させ、人形の体勢を変化させた。傾斜センサは、第1基材の下面が腹部と接触するように配置されている。
図23(1)~(5)に、各体勢の人形の写真と、傾斜センサの検出端子対8a~8hの通電状態・非通電状態を表示するスマートフォン画面の写真とを示す。スマートフォン画面では、検出端子対が通電状態にあるときランプが光り(Sensor ON)、検出端子対が非通電状態にあるときランプが消える(Sensor OFF)。
【0078】
図23(1)のように人形を仰向け寝させたとき、すべてのランプが光りスマートフォンを介して人形が仰向け寝していることが確認できた。
図23(2)のように人形を右向き寝させたとき、右側の3つのランプ、頭側のランプ及び足側のランプが光り、スマートフォンを介して人形が右向き寝していることが確認できた。
図23(3)のように人形を左向き寝させたとき、左側の3つのランプ、頭側のランプ及び足側のランプが光り、スマートフォンを介して人形が左向き寝していることが確認できた。
図23(4)のように人形をうつ伏せ寝させたとき、すべてのランプが消え、スマートフォンを介して人形がうつ伏せ寝していることが確認できた。
図23(5)のように人形を直立させたとき、足側の3つのランプ、右側のランプ及び左側のランプが光り、スマートフォンを介して人形が直立していることが確認できた。
このように、ウェアラブルセンサを装着している人形の体勢をスマートフォンを用いて遠隔で確認することができた。
【0079】
次に、作製したウェアラブルセンサをアンダーウェアに取り付け、傾斜センサが下腹中央に位置し(第1基材の下面が腹部に接触する)、歪みセンサが腹部に位置し、湿度センサが股部に位置するように、成人男性がアンダーウェアを装着した。そして、成人男性が寝姿勢を変えながら傾斜センサ(体勢センサ)、歪みセンサ(呼吸センサ)、湿度センサ(排尿センサ)による測定を行った。
仰向け寝、左向き寝、右向き寝をしているとき、歪みセンサを用いて腹部の動きを検出することができ、呼吸を検出することができた。うつ伏せ寝をしているとき、歪みセンサでは呼吸に伴う腹部の動きを検出できなかった。うつ伏せ寝をすると、腹部が身体と寝床との間に挟まれ腹部が動きにくくなるためと考えられる。
湿度センサにより検出される湿度はほぼ変化がなかった。
傾斜センサにより測定される検出端子対の通電状態は、人形を用いた上記の実験と同様の結果が得られた。
このように、ウェアラブルセンサを装着した人の体勢、呼吸、排尿を同時にモニタリングすることができることがわかった。
【符号の説明】
【0080】
2:第1基材 3:素子配線 4、4a~4p:検出端子 5:第1凹部 6:導電性液体 7:制御部 8、8a~8h:検出端子対 9:共通端子 11:第2基材 12:第2凹部 14:フレキシブル基板 15、15a~15l:素子端子 16:センサ素子 18、18a~18l:基板端子 20:開口 21:接続端子 22:チャンバ 23:基板配線 24:第1凹部の底 25:第1凹部の内側面 26:第2凹部の底 27:第2凹部の内側面 40:傾斜センサ 41:伸縮性基材 42:グラフェン層 43a、43b:歪みセンサ端子 45:歪みセンサ 46:感湿層 47:第1電極 48:第2電極 49:防水通気フィルタ 50a、50b:湿度センサ端子 51a、51b:湿度センサ配線 52:無線通信部 53:ウエストまわり 54:脚まわり 55:湿度センサ 56:測定部 57:情報機器 58:スマートフォン 59:おむつ 60:ウェアラブルセンサ