(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-29
(45)【発行日】2024-06-06
(54)【発明の名称】組成物および成形体、並びにこれらの製造方法
(51)【国際特許分類】
C08L 23/06 20060101AFI20240530BHJP
C08L 1/02 20060101ALI20240530BHJP
C08L 23/12 20060101ALI20240530BHJP
C08L 67/02 20060101ALI20240530BHJP
【FI】
C08L23/06
C08L1/02
C08L23/12
C08L67/02
(21)【出願番号】P 2018083023
(22)【出願日】2018-04-24
【審査請求日】2021-02-25
【審判番号】
【審判請求日】2022-08-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000002886
【氏名又は名称】DIC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149445
【氏名又は名称】大野 孝幸
(74)【代理人】
【識別番号】100163290
【氏名又は名称】岩本 明洋
(74)【代理人】
【識別番号】100214673
【氏名又は名称】菅谷 英史
(74)【代理人】
【識別番号】100186646
【氏名又は名称】丹羽 雅裕
(72)【発明者】
【氏名】田尻 裕輔
【合議体】
【審判長】▲吉▼澤 英一
【審判官】細井 龍史
【審判官】藤井 勲
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2012/043558(WO,A1)
【文献】特開2007-186545(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L1/00-101/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性樹脂と、セルロース繊維と、分散剤と、を含む、組成物であって、
前記熱可塑性樹脂が、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂、ポリウレタン樹脂、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン樹脂、アクリロニトリル-スチレン樹脂、アクリル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、環状ポリオレフィン樹脂、ポリフェニレンスルフィド樹脂、ポリテトラフルオロエチレン樹脂、ポリサルフォン樹脂、ポリエーテルサルフォン樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂およびポリケトン樹脂から選択される1種以上であり、
前記分散剤が、1,2-ジカルボン酸およびグリコールをモノマー単位として含む重縮合物であり、
前記1,2-ジカルボン酸が、炭素原子数4~10の飽和脂肪族1,2-ジカルボン酸、炭素原子数8~12の芳香族1,2-ジカルボン酸、およびこれらの無水物からなる群から選択される1以上であり、
前記重縮合物は、数平均分子量(Mn)が350~3000の範囲であり、且つ、酸価が1.0以下であり、
前記重縮合物の末端が、それぞれ独立して、ヒドロキシル基、カルボキシル基、下記式(1):
【化1】
(上記式中、Rは、炭素原子数1~7のアルキル基、炭素原子数6~10のアリール基である。)
で表される基、および下記式(2):
【化2】
(上記式中、Rは、炭素原子数1~7のアルキル基、炭素原子数6~10のアリール基である。)
で表される基からなる群から選択される、組成物。
【請求項2】
前記分散剤が、さらに前記1,2-ジカルボン酸以外のジカルボン酸をモノマー単位として含み、
前記1,2-ジカルボン酸以外のジカルボン酸が、シュウ酸、マロン酸、グルタル酸、メチルマロン酸、エチルマロン酸、アジピン酸、メチルアジピン酸、エチルアジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、グルタコン酸、2-ペンテン-1,1-ジカルボン酸、イソフタル酸、テレフタル酸、5-メチルイソフタル酸、およびこれらの無水物からなる群から選択される1以上であり、
前記1,2-ジカルボン酸以外のジカルボン酸の含有率が、全カルボン酸のモル数の80mol%以下である請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記セルロース繊維の含有量が、組成物の固形分の全質量に対して、0.1~40質量%の範囲であり、
前記分散剤の含有量が、前記セルロース繊維100質量部に対して、5~200質量部の範囲である請求項
1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
請求項1~
3のいずれか1項に記載の組成物を成形してなる、成形体。
【請求項5】
請求項1~
3のいずれか1項に記載の組成物の製造方法であって、
熱可塑性樹脂と、セルロース繊維原料と、分散剤と、を含む、混合物を溶融混練することを含む、製造方法。
【請求項6】
請求項
5の方法で製造された組成物を成形することを含む、成形体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、組成物および成形体、並びにこれらの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、樹脂に繊維を添加した複合材料が注目されている。前記複合材料は、主成分が樹脂であることから軽量であり、繊維を添加していることから機械的強度等の物性に優れる。このため、複合材料を自動車、航空機等に適用することが検討されている。
【0003】
複合材料に添加する繊維としては、主にガラス繊維や炭素繊維をはじめとする無機繊維と、セルロースナノファイバー(CNF)等のセルロース繊維をはじめとする有機繊維と、が挙げられる。このうち、有機繊維、例えば前記セルロース繊維は、無機繊維よりも軽く、また、燃焼させても大気中に二酸化炭素を排出するのみであり環境負荷が少ないという観点から好ましい。しかしながら、セルロース繊維は、無機繊維と比べて、親水性基を有するため樹脂に分散しにくいという課題を有している。
【0004】
そこで、セルロース繊維を用いた複合材料を実用化するにあたり、樹脂とセルロース繊維との分散性を向上させる研究が進められている。例えば、特許文献1には、成分(a)樹脂と成分(b)セルロース系繊維と成分(c)水酸基価が30mgKOH/g以上である分散剤とを含有する樹脂組成物に係る発明が記載されている。特許文献1に記載の樹脂組成物によれば、セルロース系繊維を良好に分散することができ、高い機械的強度と衝撃強度とを有し、かつ成形性に優れることが記載されている。
【0005】
なお、特許文献1には、(c)水酸基価が30mgKOH/g以上である分散剤として、ポリエステルポリオールであること、具体的には、ヒマシ油由来ポリオール、ポリブタジエン系ポリオール、エポキシ樹脂に活性水素化合物を反応させて得られるエポキシポリオール樹脂、ポリイソプレン系ポリオールまたはその水素添加物等のポリオール;ヒマシ油水添物;リシノール酸誘導体等が挙げられることが記載されている。
【0006】
また、特許文献1の実施例は、成分(b)セルロース系繊維として、セルロースナノファイバー不織布のシートの切片を水中で高圧乳化処理をして得られたセルロース繊維を用いたことが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1に記載の組成物によれば、樹脂中に一定程度セルロース繊維を分散することができる。しかしながら、前記組成物に係るセルロース繊維の分散は必ずしも十分とはいえず改善の余地があることが判明した。
【0009】
そこで、本発明は、樹脂中にセルロース繊維が好適に分散した組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は、上記課題を解決するべく、鋭意検討を行った。その結果、所定の分散剤を使用することにより、上記課題が解決されうることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0011】
すなわち、本発明は、熱可塑性樹脂と、セルロース繊維と、分散剤と、を含む、組成物に関する。この際、前記分散剤が、1,2-ジカルボン酸およびグリコールをモノマー単位として含む、重縮合物であり、かつ、前記重縮合物の末端が、それぞれ独立して、ヒドロキシル基、カルボキシル基、下記式(1)で表される基、および下記式(2)で表される基からなる群から選択されることを特徴とする。
【0012】
【0013】
なお、上記式(1)および(2)中、Rは、炭素原子数1~7のアルキル基、炭素原子数6~10のアリール基である。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、樹脂中にセルロース繊維が好適に分散した組成物が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】実施例1で製造した組成物のSEM画像である。
【
図2】比較例3で製造した組成物のSEM画像である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明を実施するための形態について詳細に説明する。
【0017】
<組成物>
本形態に係る組成物は、熱可塑性樹脂と、セルロース繊維と、分散剤と、を含む。この際、前記分散剤が、1,2-ジカルボン酸およびグリコールをモノマー単位として含む、重縮合体であり、かつ、前記重縮合体の末端が、それぞれ独立して、ヒドロキシル基、カルボキシル基、上記式(1)で表される基、および上記式(2)で表される基からなる群から選択される。
【0018】
前記分散剤は、熱可塑性樹脂と親和性を有するとともに、セルロース繊維とも親和性を有することから、熱可塑性樹脂中にセルロース繊維を好適に分散させることができる。
【0019】
[熱可塑性樹脂]
熱可塑性樹脂とは、ガラス転移温度(Tg)または融点で軟化する樹脂を意味する。
【0020】
熱可塑性樹脂としては、特に制限されないが、ポリエチレン(PE)樹脂(高密度ポリエチレン(HDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、超低密度ポリエチレン(VLDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、超高分子量ポリエチレン(UHMW-PE)、無水マレイン酸変性ポリエチレン等)、ポリプロピレン(PP)樹脂、ポリスチレン(PS)樹脂(ポリスチレン、ゴム変性ポリスチレン樹脂等)、ポリ酢酸ビニル(PVAc)樹脂、ポリウレタン(PU)樹脂、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン(ABS)樹脂、アクリロニトリル-スチレン(AS)樹脂、アクリル樹脂(ポリメタクリル酸メチル樹脂(PMMA)等)、ポリアミド樹脂(ナイロン等)、ポリアセタール樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂(ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリトリメチレンテレフタレート(PTT)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリブチレンナフタレート(PBN)等)、環状ポリオレフィン樹脂、ポリフェニレンスルフィド(PPS)樹脂、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)樹脂、ポリサルフォン(PSF)樹脂、ポリエーテルサルフォン(PES)樹脂、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)樹脂、ポリイミド(PI)樹脂、ポリアミドイミド(PAI)樹脂、ポリエーテルイミド(PEI)樹脂、ポリケトン樹脂等が挙げられる。これらの熱可塑性樹脂は単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0021】
上述のうち、ポリエチレン(PE)樹脂、ポリプロピレン(PP)樹脂、ポリエステル樹脂を用いることが好ましく、ポリエチレン(PE)樹脂、ポリプロピレン(PP)樹脂を用いることがより好ましい。
【0022】
熱可塑性樹脂の含有量としては、組成物の固形分の全質量に対して、60質量%以上であることが好ましく、60~99質量%であることがより好ましく、70~95質量%であることがさらに好ましい。熱可塑性樹脂の含有量が60質量%以上であると、組成物の溶融成型性が良好であることから好ましい。なお、本明細書において、「組成物の固形分」とは、組成物中に含有される溶媒を除く不揮発性の成分を意味する。組成物が溶媒を含まない場合には、組成物の全質量が組成物の固形分となる。
【0023】
[セルロース繊維]
セルロース繊維とは、セルロースが繊維状の形状を有する材料である。なお、本明細書において、「セルロース繊維」とは、セルロース繊維の幅が5μm以下、好ましくは3μm以下、より好ましくは1μm以下のセルロース繊維を意味する。なお、「セルロース繊維の幅」は、以下の方法により測定された値を採用するものとする。すなわち、セルロース繊維を走査型電子顕微鏡(SEM、倍率3000倍)にて観察したときに得られる画像に対して対角線を引き、この対角線と交差する全てのセルロース繊維について、観察画像内で最も数値が小さくなる2点間の距離を測定し、その平均値をセルロース繊維の幅とする。なお、組成物中に存在するセルロース繊維の幅の測定には、以下の方法により準備された測定用セルロース繊維を用いる。すなわち、まず、1cm×1cm×0.1mmの組成物のサンプルを準備する。次いで、サンプルに抽出溶媒に浸してサンプルの熱可塑性樹脂を抽出する。その際に加熱して煮沸してもよい。そして、残存したセルロース繊維を乾燥することで測定用セルロース繊維を得ることができる。なお、熱可塑性樹脂を抽出するための抽出溶媒は、用いる熱可塑性樹脂によって異なる。例えば、熱可塑性樹脂が高密度ポリエチレン(HDPE)、ポリプロピレン等である場合には、抽出溶媒としてトルエンやキシレンを用いる。また、熱可塑性樹脂がポリアミド、ポリエステル等である場合には、抽出溶媒としてo-クロロフェノールを用いる。
【0024】
セルロース繊維は、未変性セルロースであってもよいし、変性セルロースであってもよい。
【0025】
変性セルロースである場合には、セルロースを構成するβ-グルコース分子のC2位、C3位、およびC6位の水酸基の少なくとも1つがアシル基によって修飾される。この際、アシル基は、β-グルコース単位のC2位、C3位、およびC6位に平均的に置換していてもよいし、分布をもって置換していてもよい。
【0026】
前記アシル基としては、特に制限されないが、アセチル基、プロピオニル基、イソプロピオニル基、ブタノイル基(ブチリル基)、イソブタノイル基(イソブチリル基)、バレリル基、イソバレリル基、2-メチルバレリル基、3-メチルバレリル基、4-メチルバレリル基、t-ブチルアセチル基、ピバロイル基、カプロイル基、2-エチルヘキサノイル基、2-メチルヘキサノイル基、ヘプタノイル基、オクタノイル基、ベンゾイル基等の炭素原子数1~8のアシル基が挙げられる。これらのうち、炭素原子数2~4のアシル基であることが好ましく、アセチル基、プロピオニル基、ブタノイル基であることがより好ましく、アセチル基であることがさらに好ましい。
【0027】
変性セルロースである場合の置換度としては、2.5以下であることが好ましく、0.1~2.5であることがより好ましく、0.1~1.5であることがさらに好ましい。置換度が2.5以下であると、セルロース繊維の結晶性が保持されことにより樹脂組成物の補強効果が高くなることから好ましい。なお、本明細書において、「置換度」とは、β-グルコース単位あたりの水酸基の置換の程度の平均数を示し、下記式により算出されるものを意味する。この際、「β-グルコース単位あたりに有する水酸基の数」は、滴定法、核磁気共鳴(NMR)、赤外吸収スペクトルによって測定することができる。
【0028】
置換度=3-(β-グルコース単位あたりに有する水酸基の数)
具体例を挙げると、β-グルコースのC2位、C3位、およびC6位の水酸基がすべてアシル基で置換されている場合には、当該置換度(最大値)は3.0となる。
【0029】
上記のうち、セルロース繊維は、セルロース繊維の修飾を行う必要がなく製造コストの面で有利であるという観点から、未変性セルロースであることが好ましい。
【0030】
なお、上述のセルロース繊維は、単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0031】
セルロース繊維の含有量としては、組成物の固形分の全質量に対して、0.1~40質量%であることが好ましく、1~30質量%であることがより好ましい。セルロース繊維の含有量が1質量%以上であると、セルロース繊維に由来した補強効果等が期待できることから好ましい。一方、セルロース繊維の含有量が30質量%以下であると、組成物の溶融成型性が確保できることから好ましい。
【0032】
[セルロース繊維原料]
組成物は、後述するセルロース繊維原料を含んでいてもよい。この際、セルロース繊維原料は意図的に添加したものであってもよいし、製造工程において残存したものであってもよい。
【0033】
[分散剤]
分散剤は、熱可塑性樹脂中にセルロース繊維を好適に分散させる機能を有する。前記分散剤は、1,2-ジカルボン酸およびグリコールをモノマー単位として含む、重縮合体である。また、前記分散剤は、その末端が、それぞれ独立して、ヒドロキシル基、カルボキシル基、下記式(1)で表される基、および下記式(2)で表される基からなる群から選択される。
【0034】
【0035】
上記式(1)および(2)中、Rは、炭素原子数1~7のアルキル基、炭素原子数6~10のアリール基である。
【0036】
前記炭素原子数1~7のアルキル基としては、特に制限されないが、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、1-メチルブチル基、2-メチルブチル基、3-メチルブチル基、ネオペンチル基、1,2-ジメチルプロピル基、ヘキシル、1-メチルペンチル基、3-メチルペンチル基、1,2-ジメチルブチル基、2,3-ジメチルブチル基、ヘプチル基、1-メチルヘキシル基、2-メチルヘキシル基、3-メチルヘキシル基、1,3-ジメチルペンチル基、1,4-ジメチルペンチル基、2,3-ジメチルペンチル基、1,1,2-トリメチルブチル基、シクロプロピル基、シクロブチル基、1-メチルシクロプロピル基、2-メチルシクロプロピル基、シクロペンチル基、1-メチルシクロブチル基、2-メチルシクロブチル基、1,2-ジメチルシクロプロピル基、シクロヘキシル基、1-メチルシクロペンチル基、2-メチルシクロペンチル基、3-メチルシクロペンチル基、1,2-ジメチルシクロブチル基、2,2-ジメチルシクロブチル基、2,4-ジメチルシクロブチル基、シクロヘプチル基、1-メチルシクロヘキシル基、2-メチルシクロヘキシル基、3-メチルシクロヘキシル基等が挙げられる。
【0037】
前記炭素原子数6~10のアリール基としては、特に制限されないが、フェニル基、2-メチルフェニル基、3-メチルフェニル基、4-メチルフェニル基、1-エチルフェニル基、2-エチルフェニル基、3-エチルフェニル基、2,3-ジメチルフェニル基、2,4-ジメチルフェニル基、2,6-ジメチルフェニル基、2,6-ジメチルフェニル基、1-プロピルフェニル基、2-プロピルフェニル基、3-プロピルフェニル基、1-イソプロピルフェニル基、2-イソプロピルフェニル基、3-イソプロピルフェニル基、2,4,6-トリメチルフェニル基、3-エチル-2-メチルフェニル基、4-エチル-2-メチルフェニル基、1-ブチルフェニル基、2-ブチルフェニル基、3-ブチルフェニル基等が挙げられる。
【0038】
これらのうち、Rとしては、炭素原子数1~5のアルキル基、炭素原子数6~9のアリール基であることが好ましく、炭素原子数1~4のアルキル基、炭素原子数6~8のアリール基であることがより好ましく、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、フェニル基、2-メチルフェニル基、3-メチルフェニル基、4-メチルフェニル基であることがさらに好ましく、メチル、プロピル、フェニルであることが特に好ましい。
【0039】
上述のRは単独で有していても、2種以上を組み合わせて有していてもよい。
【0040】
上述の分散剤は、1,2-ジカルボン酸およびグリコールをモノマー単位として含む。重縮合体において、前記1,2-ジカルボン酸および前記グリコールは主にエステル結合により連結されて重縮合体を形成するが、1,2-ジカルボン酸を用いていることから、前記重縮合体は、以下の構造単位を有することとなる。なお、1,2-ジカルボン酸由来構造の1位、2位の水素原子は置換基で置換されることがある。
【0041】
【0042】
1,2-ジカルボン酸を用いた重縮合物は、構造単位に由来する近接した、すなわち、2個の炭素鎖で連なるカルボニル基を主鎖に有する。その結果、セルロース繊維との親和性が高くなり、後述するセルロース繊維原料の解繊および熱可塑性樹脂中へのセルロース繊維の分散をさせることができると考えられる。
【0043】
また、前記分散剤は、その末端が、それぞれ独立して、ヒドロキシル基、カルボキシル基、上記式(1)で表される基、および上記式(2)で表される基からなる群から選択される。末端部分を前記基とすることで、分散剤の疎水度の過度な低下を抑制し、親水性を高くすることができる。その結果、セルロース繊維との親和性が高くなり、セルロース繊維を熱可塑性樹脂中に好適に分散させることができる。また、セルロース繊維の分散性を付与しつつ、熱可塑性樹脂への適切な相溶性を付与することができる。
【0044】
分散剤の酸価は、5.0以下であることが好ましく、3.0以下であることがより好ましく、1.0以下であることがさらに好ましく、0.1~0.75であることが特に好ましい。分散剤の酸価が5.0以下であるとオレフィン樹脂のような疎水性の高い熱可塑性樹脂への相溶性が良好となりブリードなどを生じにくくできることから好ましい。なお、分散剤の酸価が3.0以下であると、樹脂組成物の耐久性の観点から好ましい。なお、本明細書において、「酸価」の値は実施例で記載の方法により測定された値を採用するものとする。
【0045】
分散剤の水酸基価は、350以下であることが好ましく、250以下であることがより好ましく、200以下であることがさらに好ましく、1~175であることが特に好ましい。分散剤の水酸基価が350以下であると、オレフィン樹脂のような疎水性の高い熱可塑性樹脂への相溶性が良好となることから好ましい。更には、樹脂組成物の吸水率が小さくなることから好ましい。なお、本明細書において、「水酸基価」の値は実施例で記載の方法により測定された値を採用するものとする。
【0046】
分散剤の数平均分子量(Mn)は、350~15000であることが好ましく、350~10000であることがより好ましく、350~3000であることがさらに好ましく、350~1500であることが特に好ましい。分散剤の数平均分子量(Mn)が350以上であると、樹脂組成物の溶融成型時の発煙などが抑制されることから好ましい。一方、分散剤の数平均分子量(Mn)が15000以下であると、セルロース繊維の分散性、後述するパルプ解繊性等に優れることから好ましい。なお、本明細書において、「数平均分子量(Mn)」の値は、実施例に記載の方法により測定された値を採用するものとする。
【0047】
(1,2-ジカルボン酸)
1,2-ジカルボン酸は、カルボキシル基-炭素原子-炭素原子-カルボキシル基の構成を有する化合物、およびその酸無水物である。
【0048】
1,2-カルボン酸としては、特に制限されないが、コハク酸、2-メチルコハク酸、2-エチルコハク酸、2,2-ジメチルコハク酸、2,3-ジメチルコハク酸、2-プロピルコハク酸、2-ブチルコハク酸、2,2-ジエチルコハク酸、2,3-ジエチルコハク酸、テトラメチルコハク酸、シクロヘキサン-1,2-ジカルボン酸、メチルシクロヘキサン-1,2-ジカルボン酸等の飽和脂肪族1,2-ジカルボン酸およびこれらの酸無水物(無水コハク酸等);フタル酸、3-メチルフタル酸、4-メチルフタル酸、3-エチルフタル酸、3-プロピルフタル酸、クロロフタル酸、ブロモフタル酸、テトラクロロフタル酸、テトラブロモフタル酸等の芳香族1,2-ジカルボン酸およびこれらの酸無水物(無水フタル酸等)等が挙げられる。
【0049】
これらのうち、炭素原子数4~10の飽和脂肪族1,2-ジカルボン酸、炭素原子数8~12の芳香族1,2-ジカルボン酸、およびこれらの酸無水物であることが好ましく、コハク酸、2-メチルコハク酸、シクロヘキサン-1,2-ジカルボン酸、メチルシクロヘキサン-1,2-ジカルボン酸、フタル酸、およびこれらの酸無水物であることがさらに好ましく、コハク酸、シクロヘキサン-1,2-ジカルボン酸、フタル酸、およびこれらの酸無水物であることが特に好ましい。
【0050】
一実施形態において、1,2-ジカルボン酸が、パルプの解繊性の観点から、飽和脂肪族1,2-ジカルボン酸、芳香族1,2-ジカルボン酸、およびこれらの酸無水物からなる群から選択される少なくとも1つを含むことが好ましく、セルロース繊維の分散性、後述するパルプ解繊性等に優れる観点から、飽和脂肪族1,2-ジカルボン酸、その酸無水物を含むことがより好ましく、コハク酸、フタル酸、これらの酸無水物を含むことがより好ましい。
【0051】
なお、上述の1,2-ジカルボン酸は単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0052】
分散剤中の1,2-ジカルボン酸由来のモノマー単位の含有率は、分散剤のモノカルボン酸成分を含む全カルボン酸のモル数に対して、15mol%以上であることが好ましく、20mol%以上であることがより好ましく、30mol%以上であることがさらに好ましい。1,2-ジカルボン酸由来のモノマー単位の含有率が15mol%以上であると、セルロース繊維の分散性、後述するパルプ解繊性等に優れる観点から好ましい。
【0053】
(グリコール)
グリコールは、分子中に2つのヒドロキシル基を有するジオール化合物である。
【0054】
グリコールとしては、特に制限されないが、エチレングリコ-ル(EG)、1,2-プロピレングリコ-ル(PG)、1,3-プロパンジオール、1,3-ブタンジオ-ル、1,4-ブタンジオ-ル、1,5-ペンタンジオール、ネオペンチルグリコ-ル、1,6-ヘキサンジオール、1,7-ヘプタンジオール、1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール、1,10-デカンジオール、1,11-ウンデカンジオール、1,12-ドデカンジオール、ジエチレングリコ-ル、トリエチレングリコ-ル、テトラエチレングリコール、ポリエチレングリコ-ル、ジプロピレングリコ-ル、トリプロピレングリコ-ル、ポリプロピレングリコ-ル、2-メチル-1,3-プロパンジオ-ル、2-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオール、2-メチル-1,4-ブタンジオール、2-エチル-1,4-ブタンジオール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、3-メチル-1,5-ヘプタンジオール、2,2’-ビス(4-ヒドロキシシクロヘキシル)プロパン、1,2-シクロヘキサングリコ-ル、1,3-シクロヘキサングリコ-ル、1,4-シクロヘキサングリコ-ル、1,4-シクロヘキサンジメタノ-ル、ビシクロヘキシル-4,4’-ジオ-ル等の脂肪族グリコール;1,4-ベンゼンジメタノール、ビスフェノ-ルAとプロピレンオキシドおよび/またはエチレンオキシドとの付加物等の芳香族グリコール等が挙げられる。
【0055】
これらのうち、炭素原子数2~4の脂肪族グリコール、炭素原子数6~8の芳香族グリコールであることが好ましく、セルロース繊維の分散性の観点から、炭素原子数2~4の脂肪族グリコールであることがより好ましく、エチレングリコ-ル、1,2-プロピレングリコ-ル、1,3-プロパンジオール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、ジエチレングリコールであることがさらに好ましい。
【0056】
上述のグリコールは、単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0057】
(他のジカルボン酸)
一実施形態において、上述の分散剤は、1,2-ジカルボン酸以外の他のジカルボン酸をモノマー単位として含んでいてもよい。
【0058】
当該他のジカルボン酸としては、特に制限されないが、シュウ酸、マロン酸、グルタル酸、メチルマロン酸、エチルマロン酸、アジピン酸、メチルアジピン酸、エチルアジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸等の飽和脂肪族ジカルボン酸およびこれらの酸無水物;グルタコン酸、2-ペンテン-1,1-ジカルボン酸等の不飽和脂肪族ジカルボン酸およびこれらの酸無水物;イソフタル酸、テレフタル酸、5-メチルイソフタル酸等の芳香族ジカルボン酸等が挙げられる。
【0059】
これらのうち、他のジカルボン酸としては、炭素原子数2~10のジカルボン酸であることが好ましく、セルロース繊維の分散性の観点から、炭素原子数2~8のジカルボン酸であることがより好ましく、アジピン酸、イソフタル酸、テレフタル酸であることがさらに好ましい。
【0060】
上述の他のジカルボン酸は、単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0061】
分散剤中の他のジカルボン酸由来のモノマー単位の含有率は、分散剤中の1,2-ジカルボン酸成分を含む全カルボン酸のモル数に対して、80mol%以下であることが好ましく、50mol%以下であることがより好ましく、40mol%以下であることがさらに好ましく、35mol以下%であることが特に好ましい。
【0062】
(ポリカルボン酸)
一実施形態において、上述の分散剤は、ポリカルボン酸をモノマー単位として含んでいてもよい。当該ポリカルボン酸は、分子内にカルボキシル基を3以上有する化合物を意味する。分散剤がポリカルボン酸をモノマー単位として含むことで、分岐構造を有する分岐剤となりうる。
【0063】
ポリカルボン酸としては、特に制限されないが、1,2,3-プロパントリカルボン酸、シクロヘキサン-1,2,4-トリカルボン酸等の飽和脂肪族トリカルボン酸およびこれらの酸無水物;アコニット酸等不飽和脂肪族トリカルボン酸およびこれらの酸無水物;1,2,3-ベンゼントリカルボン酸、1,2,4-ベンゼントリカルボン酸、1,3,4-ベンゼントリカルボン酸等の芳香族トリカルボン酸およびこれらの酸無水物;1,2,3,4-シクロブタンテトラカルボン酸等の飽和脂肪族テトラカルボン酸;エチレンテトラカルボン酸等の不飽和脂肪族テトラカルボン酸;1,2,3,4-ベンゼンテトラカルボン酸、1,2,3,5-ベンゼンテトラカルボン酸、ピロメリット酸等の芳香族テトラカルボン酸およびこれらの酸無水物;ベンゼンペンタカルボン酸等の芳香族ペンタカルボン酸およびこれらの酸無水物等が挙げられる。
【0064】
これらのポリカルボン酸は、単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0065】
(ポリオール)
一実施形態において、上述の分散剤は、ポリオールをモノマー単位として含んでいてもよい。当該ポリオールは、分子内にヒドロキシル基を3以上有する化合物を意味する。分散剤がポリオールをモノマー単位として含むことで、分岐構造を有する分岐剤となりうる。
【0066】
ポリオールとしては、特に制限されないが、グリセリン、トリメチロ-ルプロパン、ヘキサントリオール等の脂肪族トリオール;ヒドロキシキノール、フロログルシノール、ピロガロール等の芳香族トリオール;ペンタエリスリトール、1,2,3,4-テトラヒドロキシブタン、ヘキサン-1,2,5,6-テトラオール等の脂肪族テトラオール;1,2,4,5-ベンゼンテトラオール、ビベンジル-2,2’,4,4’-テトラオール等の芳香族テトラオール;ウンデカン-1,5,6,7,8-ペンタオール、1,2,3,4,5-シクロペンタンペンタオール等の脂肪族ペンタオール;1,2,3,4,5-ベンゼンペンタオール等の芳香族ペンタオール等が挙げられる。
【0067】
これらのポリオールは、単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0068】
(末端構造)
分散剤(重縮合体)の末端は、それぞれ独立して、ヒドロキシル基、カルボキシル基、下記式(1)で表される基、および下記式(2)で表される基からなる群から選択される。分散剤の末端が前記基であることにより、分散剤の疎水度の過度な低下を抑制し、親水性を高くすることができる。また、前記分散剤の末端を下記式(1)で表される基、および下記式(2)で表される基とすることで、セルロース繊維の分散性を付与しつつ、熱可塑性樹脂への相溶性を付与することができる。
【0069】
【0070】
上記式(1)および(2)中、Rは、炭素原子数1~7のアルキル基、炭素原子数6~10のアリール基であり、Rの具体例は上述の通りである。
【0071】
末端構造の式(1)で表される基の好ましい具体例としては、特に制限されないが、アセチルオキシ基、プロピオニルオキシ基、n-ブタノイルオキシ基、sec-ブタノイルオキシ基、n-ペンタノイルオキシ基、ピバロイルオキシ基、フェニルアセチルオキシ基、シクロヘキシルカルボニルオキシ基、ベンゾイルオキシ基、p-トルイルオキシ基、m-トルイルオキシ基、o-トルイルオキシ基等が挙げられる。これらのうち、アセチルオキシ基、プロピオニルオキシ基、ベンゾイルオキシ基、p-トルイルオキシ基、m-トルイルオキシ基、o-トルイルオキシ基であることが好ましい。
【0072】
また、末端構造の式(2)で表される基の好ましい具体例としては、特に制限されないが、メチルオキシカルボニル基、エチルオキシカルボニル基、プロピルオキシカルボニル基、イソプロピルオキシカルボニル基、ブチルオキシカルボニル基、イソブチルオキシカルボニル基、sec-ブチルオキシカルボニル基、tert-ブチルオキシカルボニル基、フェニルオキシカルボニル基、2-メチルフェニルオキシカルボニル基、3-メチルフェニルオキシカルボニル基、4-メチルフェニルオキシカルボニル基等が挙げられる。これらのうち、メチルオキシカルボニル基、エチルオキシカルボニル基、プロピルオキシカルボニル基、イソプロピルオキシカルボニル基、フェニルオキシカルボニル基であることが好ましい。
【0073】
なお、上記式(1)で表される基は、分散剤が有する末端のヒドロキシル基がモノカルボン酸で封止された構造である。また、上記式(2)で表される基は、分散剤が有するカルボキシル基がモノアルコールで封止された構造である。
【0074】
分散剤の末端構造は、ヒドロキシル基、カルボキシル基、上記式(1)で表される基、および上記式(2)で表される基がすべて同じものであっても、異なるものであってもよい。
【0075】
一実施形態において、分散剤は、炭素原子数4~9の飽和脂肪族1,2-ジカルボン酸、炭素原子数8~12の芳香族1,2-ジカルボン酸、およびこれらの無水物からなる群から選択される少なくとも1つの1,2-ジカルボン酸と、炭素原子数2~7の脂肪族グリコールおよび炭素原子数6~10の芳香族グリコールからなる群から選択される少なくとも1つのグリコールと、をモノマー単位として含む、重縮合体であり、かつ、前記重縮合体(分散剤)の末端が、それぞれ独立して、ヒドロキシル基、カルボキシル基、上記式(1)で表される基、および上記式(2)で表される基からなる群から選択されることが好ましい。前記分散剤は、1,2-ジカルボン酸、グリコール、および末端構造が同程度の親水性/疎水性を有することにより、セルロース繊維の分散性、後述するパルプ解繊性等に優れることから好ましい。
【0076】
なお、分散剤の末端構造は、1,2-ジカルボン酸、グリコール等を反応させて得られる重縮合体において、使用するモノマーの種類、添加量、封止剤の反応により制御することができる。例えば、使用するモノマーにおいて、カルボキシル基の量に対し、ヒドロキシル基の量が上回るようにした場合、通常、末端構造はヒドロキシル基となる。この際、得られるヒドロキシル基に対し、封止剤となるモノカルボン酸(酢酸、安息香酸等)を用いると、末端構造は、上記式(1)で表される基となる。他方、使用するモノマーにおいて、ヒドロキシル基の量に対し、カルボキシル基の量が上回るようにした場合、通常、末端構造はカルボキシル基となる。この際、得られるカルボキシル基に対し、封止剤となるモノアルコール(メタノール、フェノール等)を用いると、末端構造は上記式(2)で表される基となる。なお、使用する封止剤の量を制御することで、末端構造としてヒドロキシル基および式(1)で表される基を有する重縮合体、カルボキシル基および式(2)で表される基を有する重縮合体等を得ることができる。
【0077】
[他の分散剤]
一実施形態において、組成物は、他の分散剤を含んでいてもよい。当該「他の分散剤」とは、上述の分散剤以外の分散剤を意味する。
【0078】
他の分散剤としては、特に制限されないが、アルキルベンゼンスルホン酸塩、α-オレフィンスルホン酸塩、リン酸エステル等のアニオン性分散剤;アルキルトリメチルアンモニム塩、ジアルキルジメチルアンモニウム塩、アルキルジメチルベンジルアンモニウム塩、ピリジニウム塩、アルキルイソキノリニウム塩、塩化ベンゼトニウム等のカチオン性分散剤;ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレンブロック共重合体、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステル等の非イオン性分散剤;アラニン、ドデシルジ(アミノエチル)グリシン、ジ(オクチルアミノエチル)グリシン、N-アルキル-N,N-ジメチルアンモニウムベタイン等の両性分散剤等が挙げられる。
【0079】
これらの他の分散剤は単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0080】
[溶媒]
一実施形態において、組成物は、溶媒を含んでいてもよい。
【0081】
前記溶媒としては、特に制限されないが、水、有機溶媒が挙げられる。
【0082】
前記有機溶媒としては、特に制限されないが、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロピルアルコール、ブタノール等のアルコール;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;酢酸エチル、酢酸ブチル、セロソルブアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、カルビトールアセテート、エチルジグリコールアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等の酢酸エステル類;イソプロピルアルコール、ブタノール、セロソルブ、ブチルカルビトール等のアルコール類;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドン等のアミド類等が挙げられる。これらのうち、前記有機溶媒としては、アルコール、ケトン類を用いることが好ましく、ブタノール、アセトン、メチルエチルケトンを用いることがより好ましい。なお、これらの有機溶媒は、単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0083】
溶媒の含有量としては、組成物の固形分質量100部に対して、30部以下であることが好ましく、20部以下であることがより好ましい。
【0084】
[添加剤]
一実施形態において、組成物は添加剤を含んでいてもよい。
【0085】
前記添加剤としては、特に制限されないが、リン系難燃剤、窒素系難燃剤、シリコーン系難燃剤、無機系難燃剤、有機金属塩系難燃剤等の難燃剤;炭素繊維、ガラス繊維等の無機繊維;酸化チタン、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、シリカ、窒化ケイ素等の充填剤;可塑剤;酸化防止剤;紫外線吸収剤;光安定化剤;帯電防止剤;導電性付与剤;応力緩和剤;離型剤;結晶化促進剤;加水分解抑制剤;潤滑剤;衝撃付与剤;摺動性改良剤;相溶化剤;核剤;強化剤;補強剤;流動調整剤;染料;増感材;着色用顔料;ゴム質重合体;増粘剤;沈降防止剤;タレ防止剤;消泡剤;カップリング剤;防錆剤;抗菌・防カビ剤;防汚剤;導電性高分子等が挙げられる。これらの添加剤は単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0086】
<組成物の製造方法>
組成物は、特に制限されず、公知の方法により製造することができる。
【0087】
例えば、セルロース繊維および分散剤を混合し、これを熱可塑性樹脂に混合して組成物を製造してもよいし、熱可塑性樹脂および分散剤を混合し、これにセルロース繊維を混合して組成物を製造してもよい。この際、前記セルロース繊維が変性セルロース繊維である場合には、セルロース繊維を変性してセルロース分散液を調製する工程をさらに含んでいてもよい。
【0088】
このうち、好ましい一実施形態において、組成物の製造方法は、熱可塑性樹脂と、セルロース繊維原料と、分散剤と、を含む、混合物を溶融混練することを含む。本実施形態によれば、溶融混練によりセルロース繊維原料の解繊および分散を同時に行うことができる。
【0089】
従来、セルロース繊維原料からセルロース繊維を得る場合、セルロースが親水性であることから、セルロース繊維は水分散液として調製されている。得られるセルロース繊維をそのまま(未変性セルロース繊維として)樹脂に混合しようとすると、水を除去する必要があるが、完全な水の除去が困難であり、また、水の除去に伴いセルロース繊維が凝集する等の問題が生じうる。また、得られるセルロース繊維を変性して(変性セルロース繊維として)樹脂に混合しようとすると、セルロース繊維を変性する工程が必要となるため、製造コストが高くなる。
【0090】
これに対し、上記実施形態は、セルロース繊維原料を熱可塑性樹脂に混合し、解繊および分散を同時に行うことができる。その結果、上述した脱水に係る問題、変性工程に伴う製造コストの上昇の問題が生じないことから好ましい
以下、上記好ましい一実施形態について詳細に説明する。
【0091】
[混合物]
混合物は、熱可塑性樹脂と、セルロース繊維原料と、分散剤と、を含む。
【0092】
(熱可塑性樹脂)
熱可塑性樹脂は、上述したものが用いられうることからここでは説明を省略する。
【0093】
熱可塑性樹脂の含有量は、混合物の固形分の全質量に対して、60~99質量%であることが好ましく、70~95質量%であることがより好ましい。なお、本明細書において、「混合物の固形分」とは、混合物中に含有される溶媒を除く不揮発性の成分を意味する。混合物が溶媒を含まない場合には、混合物の全質量が混合物の固形分となる。
【0094】
(セルロース繊維原料)
セルロース繊維原料は、解繊等によってセルロース繊維が得られるものを意味する。この際、「セルロース繊維原料」とは、セルロース繊維原料の幅が5μm超のものを意味し、好ましくは8μm以上である。この際、「セルロース繊維原料の幅」は、上述のセルロース繊維の幅と同様の方法で測定された値を採用するものとする。
【0095】
セルロース繊維原料としては、特に制限されないが、パルプ、合成繊維等が挙げられる。
【0096】
前記パルプとしては、モミ、マツ等を用いた針葉樹パルプ、ユーカリ、ポプラ等を用いた広葉樹パルプ等の木材パルプ;ワラパルプ、ケナフパルプ、バガスパルプ、バンブーパルプ、ヨシパルプ、クワパルプ、コットンリンターパルプ等の非木材パルプ;古紙等を脱墨等して得られる古紙パルプ等が挙げられる。
【0097】
前記合成繊維としては、レーヨン、ポリノジック、キュプラ、リヨセル、セロハン等が挙げられる。
【0098】
この際、前記セルロース繊維原料は、ヘミセルロース、リグニンを含んでいてもよい。セルロース繊維原料にリグニンを含む場合、リグニンの含有量は、セルロース繊維原料の全質量に対して、40質量%以下であることが好ましく、20質量%以下であることがより好ましく、10質量%以下であることがさらに好ましい。なお、本明細書において、リグニンの含有量は、Klason法により測定された値を採用するものとする。
【0099】
また、前記セルロース繊維原料は漂白処理をされたものであってよいし(晒パルプ等)、漂白処理されていないものであってもよい(未晒パルプ等)。
【0100】
上述のセルロース繊維原料のうち、パルプであることが好ましく、木材パルプであることがより好ましく、針葉樹未晒クラフトパルプ(NUKP)、針葉樹酸素漂白クラフトパルプ(NOKP)、針葉樹晒クラフトパルプ(NBKP)、広葉樹晒クラフトパルプ(LBKP)、広葉樹未晒クラフトパルプ(LUKP)、広葉樹酸素漂白クラフトパルプ(LOKP)であることがさらに好ましく、針葉樹未晒クラフトパルプ(NUKP)、針葉樹酸素漂白クラフトパルプ(NOKP)、針葉樹晒クラフトパルプ(NBKP)であることが特に好ましい。
【0101】
なお、上述のセルロース繊維は、単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0102】
上述のセルロース繊維原料は、機械的処理によって調製してもよいし、化学的処理によって調製してもよい。機械的処理によりセルロース繊維原料を調製する方法としては、高圧ホモジナイザー法、水中対向衝突法、グラインダー法、ボールミル法等が挙げられる。また、化学的処理によりセルロース繊維原料を調製する方法としては、TEMPO触媒酸化法等が挙げられる。これらの調製方法は、単独で適用しても、2種以上を組み合わせて適用してもよい。
【0103】
混合物中のセルロース繊維原料の含有量は、混合物の固形分の全質量に対して、0.1~40質量%であることが好ましく、1~30質量%であることがより好ましい。セルロース繊維原料の含有量が0.1質量%以上であると、開繊したセルロース繊維に由来した補強効果等が期待できることから好ましい。一方、セルロース繊維原料の含有量が40質量%以下であると、組成物の溶融成型性が確保できることから好ましい。
【0104】
(分散剤)
分散剤は、セルロース繊維原料と高い親和性を有し、セルロース繊維原料の解繊を促進する機能、および得られる組成物において、樹脂中にセルロース繊維を好適に分散させる機能を有する。すなわち、分散剤は、セルロース繊維原料の解繊を促進する機能をも有しうる。具体的には、分散剤は、セルロース繊維原料と高い親和性を有するため、セルロース繊維原料内に侵入し、セルロース繊維原料を膨潤させて、解繊しやすい形態にすることができる。
【0105】
分散剤は、上述したものが用いられうることからここでは説明を省略する。
【0106】
分散剤の含有量は、混合物中のセルロース繊維100質量部に対して、5~200質量部であることが好ましく、10~100質量部であることがより好ましい。分散剤の含有量が5質量部以上であると、セルロース繊維の分散性、およびパルプ解繊性に優れる観点から好ましい。一方、分散剤の含有量が200質量%以下であると、熱可塑性樹脂への相溶性の観点から好ましい。
【0107】
(他の分散剤、溶媒、添加剤)
混合物は、他の分散剤、溶媒、添加剤をさらに含んでいてもよい。用いられうる他の分散剤、溶媒、添加剤は上述と同様であるからここでは説明を省略する。
【0108】
ただし、製造コスト、組成物の性能等の観点から、溶媒については用いないことが好ましい。
【0109】
(混合物の調製方法)
混合物の調製方法は特に制限されない。例えば、セルロース繊維原料に分散剤を混合しこれを熱可塑性樹脂に混合して調製してもよいし、セルロース繊維原料および分散剤をそれぞれ独立に熱可塑性樹脂に混合して調製してもよい。
【0110】
[溶融混練]
上述の混合物を溶融混練することにより、組成物を製造することができる。溶融混練によって混合物中のセルロース繊維原料は解繊されてセルロース繊維となり、また、得られるセルロース繊維は熱可塑性樹脂中に分散される。
【0111】
溶融混練の温度は、使用する熱可塑性樹脂によっても異なるが、100~250℃であることが好ましく、120~200℃であることがより好ましい。
【0112】
溶融混練の時間は、使用する熱可塑性樹脂および成型方法によって適時選択できる。
【0113】
[組成物]
本実施形態に係る製造方法によれば、分散剤の存在下、セルロース繊維原料を熱可塑性樹脂で溶融混練することで、セルロース繊維原料を解繊させつつ、得られるセルロース繊維が熱可塑性樹脂中に分散される。よって、得られる組成物は、熱可塑性樹脂中にセルロース繊維が好適に分散されている。その結果、得られる成形体は、高い機械的物性を実現できる。
【0114】
なお、組成物の具体的な構成については、上述の通りであるので、ここでは説明を省略する。
【0115】
<成形体>
本発明の一形態によれば、成形体が提供される。この際、前記成形体は、上述の組成物を成形してなる。
【0116】
前記組成物は、樹脂中にセルロース繊維が好適に分散する。このため、前記組成物を成形して得られる成形体は、機械的特性(弾性率、引張強度等)に優れる。
【0117】
一実施形態において、セルロース繊維を含む成形体は、軽く、環境負荷が少ないことから、自動車、電車、船舶、飛行機等の内装材、外装材、構造材等;パソコン、テレビ、時計、電話、携帯電話、携帯音楽再生機器、映像再生機器、印刷機器、複写機器、スポーツ用品等の筺体、構造材、内部部品等;建築材;文具等の事務機器等、容器、コンテナー等に好適に適用することができる。
【0118】
<成形体の製造方法>
本発明の一形態によれば、成形体の製造方法が提供される。この際、前記成形体の製造方法は、上述の方法で製造された組成物を成形することを含む。
【0119】
一実施形態において、成形体の製造方法は、組成物を製造する工程(1)と、前記工程で製造された組成物を成形する工程(2)と、を含む。この際、前記工程(1)は好ましくは、熱可塑性樹脂と、セルロース繊維原料と、分散剤と、を含む、混合物を溶融混練することを含む。
【0120】
この際、前記組成物を製造する工程(1)は、好ましくは、熱可塑性樹脂と、セルロース繊維原料と、分散剤と、を含む、混合物を溶融混練することを含む。よって、好ましい一実施形態において、成形体の製造方法は、熱可塑性樹脂と、セルロース繊維原料と、分散剤と、を含む、混合物を溶融混練することを含む、組成物を製造する工程(1)と、前記工程で製造された組成物を成形する工程(2)と、を含む。
【0121】
なお、工程(2)においては、組成物をそのまま成形してもよいし、組成物と熱可塑性樹脂とを混合して成形してもよい。後者の場合、得られる成形体中の分散剤の含有率等は組成物中の含有率よりも小さくなることがある。また、工程(2)においては、別途添加剤を添加することもできる。
【0122】
組成物の成形方法としては、特に制限されないが、圧縮成形、射出成形、押出成形、中空成形、発泡成形等が挙げられる。これらの成形方法は、単独で適用しても、2種以上を組み合わせて適用してもよい。
【実施例】
【0123】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、実施例において「部」または「%」の表示を用いるが、特に断りがない限り「質量部」または「質量%」を表す。
【0124】
<合成例1>
温度計、撹拌器、および還流冷却器を備えた四つ口フラスコ(内容積:3リットル)に、1,2-ジカルボン酸であるコハク酸1230gと、グリコールであるエチレングリコール410gおよびプロピレングリコール510gと、エステル化触媒であるテトライソプロピルチタネート0.13gと、を仕込み、窒素気流下で撹拌しながら、220℃になるまで段階的に昇温した。220℃にて18時間縮合反応させることで、常温液体である分散剤1を合成した。なお、分散剤1における1,2-ジカルボン酸(コハク酸)の含有率は、全カルボン酸の仕込みモル数に対して、100mol%である。
【0125】
分散剤の酸価および水酸基価はJIS K 1577に準拠して決定した。その結果、分散剤1の酸価は0.33であり、水酸基価は158であった。
【0126】
また、分散剤1の数平均分子量(Mn)を下記条件におけるゲル浸透クロマトグラフィ(GPC)により測定した。その結果、分散剤1の数平均分子量(Mn)は970であった。
【0127】
測定装置:東ソー株式会社製高速GPC装置「HLC-8320GPC」
カラム:東ソー株式会社製「TSK GURDCOLUMN SuperHZ-L」+東ソー株式会社製「TSK gel SuperHZM-M」+東ソー株式会社製「TSK gel SuperHZM-M」+東ソー株式会社製「TSK gel SuperHZ-2000」+東ソー株式会社製「TSK gel SuperHZ-2000」
検出器:RI(示差屈折計)
データ処理:東ソー株式会社製「EcoSEC Data Analysis バージョン1.07」
カラム温度:40℃
展開溶媒:テトラヒドロフラン
流速:0.35mL/分
測定試料:試料7.5mgを10mlのテトラヒドロフランに溶解し、得られた溶液をマイクロフィルターでろ過したものを測定試料とした。
【0128】
試料注入量:20μl
標準試料:前記「HLC-8320GPC」の測定マニュアルに準拠して、分子量が既知の下記の単分散ポリスチレンを用いた。
【0129】
(単分散ポリスチレン)
東ソー株式会社製「A-300」
東ソー株式会社製「A-500」
東ソー株式会社製「A-1000」
東ソー株式会社製「A-2500」
東ソー株式会社製「A-5000」
東ソー株式会社製「F-1」
東ソー株式会社製「F-2」
東ソー株式会社製「F-4」
東ソー株式会社製「F-10」
東ソー株式会社製「F-20」
東ソー株式会社製「F-40」
東ソー株式会社製「F-80」
東ソー株式会社製「F-128」
東ソー株式会社製「F-288」
【0130】
<合成例2>
コハク酸1540g、プロピレングリコール1190g、およびテトライソプロピルチタネート0.16gを仕込み、反応温度を225℃に変更したことを除いては、合成例1と同様の方法で分散剤2を合成した。なお、分散剤2における1,2-ジカルボン酸(コハク酸)の含有率は、全カルボン酸の仕込みモル数に対して、100mol%である。
【0131】
合成例1と同様の方法で分散剤2の酸価、水酸基価、および数平均分子量(Mn)を測定したところ、酸価は0.60であり、水酸基価は8であり、数平均分子量(Mn)は11000であった。
【0132】
<合成例3>
温度計、撹拌器、および還流冷却器を備えた四つ口フラスコ(内容積:3リットル)に、1,2-ジカルボン酸である無水フタル酸360g、他のジカルボン酸であるアジピン酸119g、グリコールであるプロピレングリコール606g、封止剤として安息香酸879g、およびエステル化触媒であるテトライソプロピルチタネート0.12gを仕込み、230℃にて15時間反応させた。次いで、180℃に降温し、過剰のプロピレングリコールを減圧除去することで、常温液体である分散剤3を合成した。なお、分散剤3における1,2-ジカルボン酸(無水フタル酸)の含有率は、全カルボン酸の仕込みモル数に対して、23mol%である。
【0133】
合成例1と同様の方法で分散剤3の酸価、水酸基価、および数平均分子量(Mn)を測定したところ、酸価は0.18であり、水酸基価は14であり、数平均分子量(Mn)は450であった。
【0134】
<合成例4>
温度計、撹拌器、および還流冷却器を備えた四つ口フラスコ(内容積:3リットル)に、1,2-ジカルボン酸であるコハク酸1125g、グリコールであるプロピレングリコール875g、およびエステル化触媒であるテトライソプロピルチタネート0.06gを仕込み、反応温度を220℃にて18時間反応させた。次いで、反応温度を80℃まで降温し、封止剤として無水酢酸400gを添加し、発熱に注意しながら120℃まで昇温し、2時間反応させた。反応により生じた酢酸および過剰の無水酢酸を減圧除去することで、常温液体である分散剤4を合成した。なお、分散剤4における1,2-ジカルボン酸(コハク酸)の含有率は、全カルボン酸の仕込みモル数に対して、71mol%である。
【0135】
合成例1と同様の方法で分散剤4の酸価、水酸基価、および数平均分子量(Mn)を測定したところ、酸価は0.26であり、水酸基価は6であり、数平均分子量(Mn)は1200であった。
【0136】
なお、無水酢酸添加前に得られた生成物の酸価および水酸基価を測定したところ、酸価は0.28であり、水酸基価は112であった。
【0137】
<合成例5>
温度計、撹拌器、および還流冷却器を備えた四つ口フラスコ(内容積:3リットル)に、コハク酸547g、アジピン酸677g、エチレングリコール349g、プロピレングリコール427g、およびテトライソプロピルチタネート0.06gを仕込み、反応温度を220℃にて18時間反応させた。次いで、反応温度を80℃まで降温し、封止剤として無水プロピオン酸510gを添加し、発熱に注意しながら120℃まで昇温し、2時間反応させた。反応により生じたプロピオン酸および過剰の無水プロピオン酸を減圧除去することで、常温液体である分散剤5を合成した。なお、分散剤5における1,2-ジカルボン酸(コハク酸)の含有率は全カルボン酸の仕込みモル数に対し35mol%である。
【0138】
合成例1と同様の方法で分散剤5の酸価、水酸基価、および数平均分子量(Mn)を測定したところ、酸価は0.25であり、水酸基価は0であり、数平均分子量(Mn)は1200であった。
【0139】
なお、無水プロピオン酸添加前に得られた生成物の酸価および水酸基価を測定したところ、酸価は0.25であり、水酸基価は112であった。
【0140】
<合成例6>
アジピン酸524g、プロピレングリコール626g、封止剤である安息香酸872g、およびテトライソプロピルチタネート0.12gを仕込んだことを除いては、合成例3と同様の方法で分散剤6を合成した。なお、なお、分散剤6における1,2-ジカルボン酸の含有率は全カルボン酸の仕込みモル数に対し0mol%である。
【0141】
合成例1と同様の方法で分散剤6の酸価、水酸基価、および数平均分子量(Mn)を測定したところ、酸価は0.19であり、水酸基価は6.0であり、数平均分子量(Mn)は1200であった。
【0142】
<合成例7>
温度計、撹拌器、および還流冷却器を備えた四つ口フラスコ(内容積:3リットル)に、コハク酸1322g、エチレングリコール318g、プロピレングリコール390g、封止剤として2-エチル-1-ヘキサノール(2-EH)591g、およびテトライソプロピルチタネート0.06gを仕込み、反応温度230℃で17時間反応させた。次いで、200℃に降温し、過剰の2-エチル-1-ヘキサノールを減圧除去することで、分散剤7を合成した。なお、分散剤7における1,2-ジカルボン酸(コハク酸)の含有率は全カルボン酸の仕込みモル数に対し100mol%である。
【0143】
合成例1と同様の方法で分散剤7の酸価、水酸基価、および数平均分子量(Mn)を測定したところ、酸価は0.19であり、水酸基価は6.0であり、数平均分子量(Mn)は1200であった。
【0144】
合成例1~7で合成した分散剤を下記表1に示す。
【0145】
【0146】
<実施例1>
セルロース繊維原料であるKCフロック W50GK(針葉樹パルプ(NBPK)、日本製紙株式会社製)10部、および分散剤1 5部を150℃で混合することで、分散剤がパルプに混合された粉末状の混合物を得た。
【0147】
次いで、前記混合物15部、熱可塑性樹脂であるサンテックJ320(高密度ポリエチレン(HDPE)、旭化成株式会社製)90部、および酸化防止剤であるイルガノックス1010(ペンタエリトリトールテトラキス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオナート]、BASF製)0.3部を、ラボプラストミル(東洋精機株式会社製)を用いて、170℃、160rpmの条件で溶融混練し、組成物を製造した。
【0148】
なお、実施例1で製造した組成物のSEM画像を
図1に示す。
【0149】
<実施例2>
分散剤1に代えて、分散剤2を用いたことを除いては、実施例1と同様の方法で組成物を製造した。
【0150】
<実施例3>
分散剤1に代えて、分散剤3を用いたことを除いては、実施例1と同様の方法で組成物を製造した。
【0151】
<実施例4>
分散剤1に代えて、分散剤4を用いたことを除いては、実施例1と同様の方法で組成物を製造した。
【0152】
<実施例5>
分散剤1に代えて、分散剤5を用いたことを除いては、実施例1と同様の方法で組成物を製造した。
【0153】
<比較例1>
分散剤1を添加しなかったことを除いては、実施例1と同様の方法で組成物を製造した。
【0154】
<比較例2>
分散剤1に代えて、ドデシルコハク酸無水物(DSA)8部を用いたことを除いては、実施例1と同様の方法で組成物を製造した。
【0155】
<比較例3>
分散剤1に代えて、分散剤6を用いたことを除いては、実施例1と同様の方法で組成物を製造した。
【0156】
なお、比較例3で製造した組成物のSEM画像を
図2に示す。
【0157】
<比較例4>
分散剤1に代えて、分散剤7を用いたことを除いては、実施例1と同様の方法で組成物を製造した。
【0158】
<実施例6>
サンテックJ320に代えて、ノバテックMA04A(ポリプロピレン(PP)、日本ポリプロ株式会社製)を用い、溶融混練の温度を140℃に変更したことを除いては、実施例1と同様の方法で組成物を製造した。
【0159】
<実施例7>
分散剤1に代えて、分散剤2を用いたことを除いては、実施例6と同様の方法で組成物を製造した。
【0160】
<実施例8>
分散剤1に代えて、分散剤3を用いたことを除いては、実施例6と同様の方法で組成物を製造した。
【0161】
<実施例9>
分散剤1に代えて、分散剤4を用いたことを除いては、実施例6と同様の方法で組成物を製造した。
【0162】
<実施例10>
分散剤1に代えて、分散剤5を用いたことを除いては、実施例6と同様の方法で組成物を製造した。
【0163】
<比較例5>
分散剤1を添加しなかったことを除いては、実施例6と同様の方法で組成物を製造した。
【0164】
<比較例6>
分散剤1に代えて、ドデシルコハク酸無水物(DSA)8部を用いたことを除いては、実施例6と同様の方法で組成物を製造した。
【0165】
<比較例7>
分散剤1に代えて、分散剤6を用いたことを除いては、実施例6と同様の方法で組成物を製造した。
【0166】
<性能評価>
実施例1~10および比較例1~7で製造した組成物について、パルプ解繊性について性能評価を行った。
【0167】
具体的には、組成物を熱トルエン(還流)中で熱可塑性樹脂を溶解除去し、得られたセルロース繊維をサンプルとした。前記サンプルのSEM観察(倍率:3000倍)によって得られた画像(例えば,
図1)に対して対角線と交差するセルロース繊維の数を測定した。パルプの解繊性が良好な組成物ほど対角線と交差するセルロース繊維の数が多いことを示す。セルロース繊維の2本の対角線に対し交差したセルロース繊維の数の平均を以下の基準に従い評価を行った。
【0168】
◎:交差するセルロース繊維の数が25本以上
○:交差するセルロース繊維の数が20本以上25本未満
△:交差するセルロース繊維の数が15本以上20本未満
×:交差するセルロース繊維の数が15本未満
【0169】
実施例1~10および比較例1~7で製造した組成物、および評価結果を下記表2に示す。
【0170】
【0171】
表2の結果からも明らかなように、実施例1~10で製造した組成物は、パルプ解繊性に優れることが分かる。実施例1~10の組成物は、上記の通り、分散剤の存在下、針葉樹パルプ(NBPK)を熱可塑性樹脂中で溶融混練することで、針葉樹パルプ(NBPK)を解繊させつつ、得られるセルロース繊維が熱可塑性樹脂中に分散される。よって、実施例1~10で得られた組成物は樹脂中にセルロース繊維が好適に分散していることが分かる。そして、前記組成物によれば、得られる成形体は、高い機械的物性を実現できるものと考えられる。