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特許7496194無機EL素子、表示素子、画像表示装置、及びシステム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-29
(45)【発行日】2024-06-06
(54)【発明の名称】無機EL素子、表示素子、画像表示装置、及びシステム
(51)【国際特許分類】
   H05B 33/12 20060101AFI20240530BHJP
   C09K 11/64 20060101ALI20240530BHJP
   C09K 11/78 20060101ALI20240530BHJP
   G09F 9/30 20060101ALI20240530BHJP
   H05B 33/22 20060101ALI20240530BHJP
   H10K 59/00 20230101ALI20240530BHJP
   C09K 11/00 20060101ALN20240530BHJP
【FI】
H05B33/12 Z
C09K11/64
C09K11/78
G09F9/30 338
G09F9/30 365
H05B33/22 Z
H10K59/00
C09K11/00 F
【請求項の数】 18
(21)【出願番号】P 2019043381
(22)【出願日】2019-03-11
(65)【公開番号】P2020140946
(43)【公開日】2020-09-03
【審査請求日】2021-12-23
【審判番号】
【審判請求日】2023-04-27
(31)【優先権主張番号】P 2018050862
(32)【優先日】2018-03-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2019032268
(32)【優先日】2019-02-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】植田 尚之
(72)【発明者】
【氏名】中村 有希
(72)【発明者】
【氏名】安部 由希子
(72)【発明者】
【氏名】松本 真二
(72)【発明者】
【氏名】曽根 雄司
(72)【発明者】
【氏名】早乙女 遼一
(72)【発明者】
【氏名】新江 定憲
(72)【発明者】
【氏名】草柳 嶺秀
(72)【発明者】
【氏名】安藤 友一
【合議体】
【審判長】神谷 健一
【審判官】河原 正
【審判官】本田 博幸
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-340366(JP,A)
【文献】特開2008-244387(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第104124316(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第107331367(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05B 33/00-33/28
H10K 59/00-59/90
H01L 51/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
陽極と、正孔輸送層と、発光層と、電子輸送層と、陰極と、を積層した無機EL素子であって、
前記正孔輸送層が、p型酸化物半導体である酸化物膜であり、
前記発光層が、発光中心をドープした酸化物膜であり、
前記電子輸送層が、n型酸化物半導体である酸化物膜である、ことを特徴とする無機EL素子。
【請求項2】
前記正孔輸送層である前記酸化物膜が、発光中心をドープしたp型酸化物半導体であって、前記発光層を兼ねている請求項1に記載の無機EL素子。
【請求項3】
前記電子輸送層である前記酸化物膜が、発光中心をドープしたn型酸化物半導体であって、前記発光層を兼ねている請求項1に記載の無機EL素子。
【請求項4】
前記発光中心が、遷移金属イオン、又は希土類イオンである請求項1から3のいずれかに記載の無機EL素子。
【請求項5】
前記遷移金属イオンが、チタン(Ti)、クロム(Cr)、マンガン(Mn)、銅(Cu)、タングステン(W)の少なくともいずれか、又は、前記希土類イオンが、セリウム(Ce)、プラセオジウム(Pr)、ネオジウム(Nd)、サマリウム(Sm)、ユーロピウム(Eu)、ガドリニウム(Gd)、テルビウム(Tb)、ディスプロシウム(Dy)、ホルミウム(Ho)、エルビウム(Er)、ツリウム(Tm)及びイッテルビウム(Yb)の少なくともいずれかを含む請求項4に記載の無機EL素子。
【請求項6】
前記発光中心が、遷移金属イオンである請求項1から3のいずれかに記載の無機EL素子。
【請求項7】
前記遷移金属イオンが、チタン(Ti)、クロム(Cr)、マンガン(Mn)、銅(Cu)、及びタングステン(W)の少なくともいずれかを含む請求項6に記載の無機EL素子。
【請求項8】
前記発光層である前記酸化物膜において、前記発光中心の励起エネルギー以上のバンドギャップエネルギーを持つ酸化物が前記発光中心のホストである請求項1から7のいずれかに記載の無機EL素子。
【請求項9】
前記発光層である前記酸化物膜において、前記発光中心の発光エネルギー以上のバンドギャップエネルギーを持つ酸化物が前記発光中心のホストである請求項1から8のいずれかに記載の無機EL素子。
【請求項10】
前記発光層である前記酸化物膜が、ベリリウム(Be)、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)、バリウム(Ba)、スカンジウム(Sc)、イットリウム(Y)、ランタン(La)、ルテチウム(Lu)、ボロン(B)、アルミニウム(Al)、ガリウム(Ga)、シリコン(Si)、ゲルマニウム(Ge)、アンチモン(Sb)、ビスマス(Bi)及びテルル(Te)の少なくともいずれかを含む酸化物である請求項1から9のいずれかに記載の無機EL素子。
【請求項11】
前記正孔輸送層である前記酸化物膜が、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、亜鉛(Zn)、ルテニウム(Ru)、ロジウム(Rh)、タリウム(Tl)、スズ(Sn)、鉛(Pb)、アンチモン(Sb)、ビスマス(Bi)、及びテルル(Te)の少なくともいずれかを含むp型酸化物半導体である請求項1から10のいずれかに記載の無機EL素子。
【請求項12】
前記電子輸送層である前記酸化物膜が、亜鉛(Zn)、カドミウム(Cd)、ガリウム(Ga)、インジウム(In)、タリウム(Tl)、ゲルマニウム(Ge)、スズ(Sn)、鉛(Pb)、ビスマス(Bi)、チタン(Ti)、及びタングステン(W)の少なくともいずれかを含むn型酸化物半導体である請求項1から11のいずれかに記載の無機EL素子。
【請求項13】
前記電子輸送層である前記酸化物膜が、更に、ベリリウム(Be)、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)、バリウム(Ba)、スカンジウム(Sc)、イットリウム(Y)、ランタノイド(Ln)、ボロン(B)、アルミニウム(Al)、シリコン(Si)、アンチモン(Sb)、及びテルル(Te)の少なくともいずれかを含むn型酸化物半導体である請求項12に記載の無機EL素子。
【請求項14】
前記発光層である前記酸化物膜が、アモルファス酸化物膜であり、
前記正孔輸送層である前記酸化物膜が、アモルファス酸化物膜であり、
前記電子輸送層である前記酸化物膜が、アモルファス酸化物膜である、請求項1に記載の無機EL素子。
【請求項15】
直流駆動型である請求項1に記載の無機EL素子。
【請求項16】
請求項1から15のいずれかに記載の無機EL素子を有し、駆動信号に応じて光出力が制御される光制御素子と、
前記光制御素子を駆動する駆動回路と、を有することを特徴とする表示素子。
【請求項17】
画像データに応じた画像を表示する画像表示装置であって、
マトリックス状に配置された複数の請求項16に記載の表示素子であって、前記駆動回路が電界効果型トランジスタを有する表示素子と、
複数の前記表示素子における各電界効果型トランジスタにゲート電圧と信号電圧とを個別に印加するための複数の配線と、
前記画像データに応じて、前記各電界効果型トランジスタの前記ゲート電圧と前記信号電圧とを前記複数の配線を介して個別に制御する表示制御装置とを有することを特徴とする画像表示装置。
【請求項18】
請求項17に記載の画像表示装置と、
表示する画像情報に基づいて画像データを作成し、該画像データを前記画像表示装置に出力する画像データ作成装置とを有することを特徴とするシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、直流駆動型無機EL素子、表示素子、画像表示装置、及びシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、照明光源やディスプレイ用途に有機EL(OLED)素子や化合物半導体LEDなどの開発が進められている。これらは直流駆動で発光する電流注入型発光素子であり、低電圧でも高輝度で発光するという特徴がある。しかし、OLEDは有機物で構成されていることから、耐久性が低いという欠点がある。また、LEDは単結晶基板上に化合物半導体をエピタキシャル成長させることから、広くディスプレイに用いられるアクティブマトリックス薄膜トランジスタ(AM-TFT)上にRGB素子を形成することができないという欠点がある。一方、酸化物又は酸硫化物発光材料からなる無機EL素子は、耐久性が高く、且つRGB素子をAM-TFT上に形成できる可能性があり、次世代ディスプレイ用発光素子として、期待される。
【0003】
無機EL素子は、駆動方法によって交流駆動型と直流駆動型に大別される。交流駆動型無機EL素子は、誘電体層間に無機発光層薄膜を挟むか、誘電体バインダー中に蛍光微粒子を分散させた層に対し、数百ボルトの交流電圧をかけることによって発光する。この方式は盛んに研究開発された結果、実用化されている。
【0004】
一方、直流駆動型無機EL素子は、従来、EL(Electroluminescence)の一種として、無機蛍光体を発光層として使用する直流駆動型無機EL素子が周知である。直流駆動型無機EL素子は、例えば一対の電極の間に発光層が設けられ、一対の電極の間に電圧を印加して発光層が光ることにより、周囲を照明する。直流駆動型無機ELは、コストが安く、発光に発熱を伴わないという利点があり、今後の普及が期待されている。無機EL素子蛍光体としては、酸化亜鉛に希土類元素を添加して直流駆動無機EL発光層として利用した技術が周知である(非特許文献1等参照)。
【0005】
また、希土類拡散防止膜を発光層と基板との間に設けた無機EL素子が提案されている(特許文献1等参照)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来の技術では低電圧で直流駆動し、高効率で発光する無機EL素子は実現できていない。
本発明は、充分に低電圧・高効率で発光する直流駆動型無機EL素子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するための手段としては、以下の通りである。即ち、
本発明の無機EL素子は、陽極と、正孔輸送層と、発光層と、電子輸送層と、陰極と、を積層した無機EL素子であって、
前記正孔輸送層が、酸化物膜であり、
前記発光層が、酸化物膜であり、
前記電子輸送層が、酸化物膜である、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明の無機EL素子によれば、低電圧・高効率で発光する耐久性のある発光素子を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、本発明の直流駆動型無機EL素子の一例を示す概略構成図である。
図2図2は、画像表示装置を説明するための図である。
図3図3は、本発明の表示素子の一例を説明するための図である。
図4図4は、表示素子における無機EL素子と電界効果型トランジスタの位置関係の一例を示す概略構成図である。
図5図5は、表示素子における無機EL素子と電界効果型トランジスタの位置関係の他の一例を示す概略構成図である。
図6図6は、表示制御装置を説明するための図である。
図7図7は、実施例1で作製した無機EL素子のI-V特性を示す図である。
図8図8は、実施例1で作製した無機EL素子のELスペクトルを示す図である。
図9図9は、実施例1、及び4で作製した無機EL素子のエネルギーダイアグラムを示す模式図である。
図10図10は、実施例2で作製した無機EL素子のエネルギーダイアグラムを示す模式図である。
図11図11は、実施例3で作製した無機EL素子のエネルギーダイアグラムを示す模式図である。
図12図12は、実施例5で作製した無機EL素子のエネルギーダイアグラムを示す模式図である。
図13図13は、実施例6で作製した無機EL素子のエネルギーダイアグラムを示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(無機EL素子)
本発明の無機EL素子は、発光層を少なくとも有し、更に必要に応じて、陽極、陰極、正孔輸送層、電子輸送層などのその他の部材を有する。
前記無機EL素子は、直流駆動型である。
【0011】
前記発光層は、酸化物膜であり、アモルファス酸化物膜であることが好ましい。
前記正孔輸送層は、酸化物膜であり、アモルファス酸化物膜であることが好ましい。
前記電子輸送層は、酸化物膜であり、アモルファス酸化物膜であることが好ましい。
【0012】
前記酸化物膜には微結晶が含まれていてもよい。
【0013】
前記発光層である前記酸化物膜は、発光中心をドープした酸化物から構成されることが好ましい。
前記発光中心は、遷移金属イオン、又は希土類イオンであることが好ましい。
前記発光中心は、チタン(Ti)、クロム(Cr)、マンガン(Mn)、タングステン(W)、セリウム(Ce)、プラセオジウム(Pr)、ネオジウム(Nd)、サマリウム(Sm)、ユーロピウム(Eu)、ガドリニウム(Gd)、テルビウム(Tb)、ディスプロシウム(Dy)、ホルミウム(Ho)、エルビウム(Er)、ツリウム(Tm)及びイッテルビウム(Yb)の少なくともいずれかを含むことが好ましい。
【0014】
前記発光層である前記酸化物膜においては、前記発光中心の励起エネルギー以上のバンドギャップエネルギーを持つ酸化物が前記発光中心のホストであることが好ましい。
前記発光層である前記酸化物膜においては、前記発光中心の発光エネルギー以上のバンドギャップエネルギーを持つ酸化物が前記発光中心のホストであることが好ましい。
【0015】
前記正孔輸送層である前記酸化物膜は、p型酸化物半導体であることが好ましい。
【0016】
前記電子輸送層である前記酸化物膜は、n型酸化物半導体であることが好ましい。
【0017】
前記正孔輸送層である前記酸化物膜は、発光中心をドープしたp型酸化物半導体であって、前記発光層を兼ねていることが好ましい。
前記電子輸送層である前記酸化物膜は、発光中心をドープしたn型酸化物半導体であって、前記発光層を兼ねていることが好ましい。
前記発光中心は、遷移金属イオン、又は希土類イオンであることが好ましい。
前記発光中心は、チタン(Ti)、クロム(Cr)、マンガン(Mn)、タングステン(W)、セリウム(Ce)、プラセオジウム(Pr)、ネオジウム(Nd)、サマリウム(Sm)、ユーロピウム(Eu)、ガドリニウム(Gd)、テルビウム(Tb)、ディスプロシウム(Dy)、ホルミウム(Ho)、エルビウム(Er)、ツリウム(Tm)及びイッテルビウム(Yb)の少なくともいずれかを含むことが好ましい。
【0018】
図1は、本発明の直流駆動型無機EL素子の一例を示す概略構成図である。
図1の無機EL素子350は、陰極312と、陽極314と、無機EL薄膜層340とを有する。
【0019】
<陰極>
陰極312の材質としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、アルミニウム(Al)、マグネシウム(Mg)-銀(Ag)合金、アルミニウム(Al)-リチウム(Li)合金、金(Au)-ゲルマニウム合金、ITO(Indium Tin Oxide)などが挙げられる。なお、マグネシウム(Mg)-銀(Ag)合金は、充分厚ければ高反射率電極となり、極薄膜(20nm程度未満)では半透明電極となる。図では陽極側から光を取りだしているが、陰極を透明、または半透明電極とすることによって陰極側から光を取り出すことができる。
【0020】
<陽極>
陽極314の材質としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ITO(Indium Tin Oxide)、IZO(Indium Zinc Oxide)、銀(Ag)-ネオジウム(Nd)合金、アルミニウム(Al)-シリコン(Si)-銅(Cu)合金、などが挙げられる。なお、銀合金を用いた場合は、高反射率電極となり、陰極側から光を取り出す場合に好適である。
【0021】
<無機EL薄膜層>
無機EL薄膜層340は、例えば、電子輸送層342と、発光層344と、正孔輸送層346とを有する。電子輸送層342は、陰極312に接続され、正孔輸送層346は、陽極314に接続されている。陽極314と陰極312との間に所定の電圧を印加すると、発光層344が発光する。
【0022】
ここで、電子輸送層342と発光層344が1つの層を形成してもよく、正孔輸送層346と発光層344が1つの層を形成してもよい。また、電子輸送層342と陰極312との間に電子注入層が設けられてもよく、更に、正孔輸送層346と陽極314との間に正孔注入層が設けられてもよい。
また、基材側(図1における下側)から光を取り出すいわゆる「ボトムエミッション」の場合について説明したが、基材(図1における下側)と反対側から光を取り出す「トップエミッション」であってもよい。
【0023】
<<発光層>>
本発明の無機EL素子に於ける発光層である酸化物膜は、発光中心をドープした酸化物から構成されることが好ましい。発光中心としては特に制限はなく、遷移金属イオンや希土類イオンを目的に応じて適宜選択することができ、例えば、Ti、Cr、Mn、Cu、W、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Ybなどが挙げられる。
ホスト酸化物としては、目的に応じて適宜選択することができるが、バンドギャップエネルギーが発光中心の励起エネルギー以上であることが好ましく、バンドギャップエネルギーが発光中心の発光エネルギー以上であることもまた好ましい。そのようなホスト酸化物としては、例えばAl、Ga、La、ZrO、YAO(Yttrium Aluminium Oxide)、YGO(Yttrium Gadolinium Oxide)、LAO(Lanthanum Aluminium Oxide)、などが挙げられる。
発光中心の濃度としては、目的に応じて適宜選択することができるが、例えばホスト陽イオンの10atom%以下が好ましく、1~5atom%程度が特に好ましい。
【0024】
前記発光層である前記酸化物膜は、ベリリウム(Be)、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)、バリウム(Ba)、スカンジウム(Sc)、イットリウム(Y)、ランタン(La)、ルテチウム(Lu)、ボロン(B)、アルミニウム(Al)、ガリウム(Ga)、シリコン(Si)、ゲルマニウム(Ge)、アンチモン(Sb)、ビスマス(Bi)及びテルル(Te)の少なくともいずれかを含む酸化物であることが好ましい。
【0025】
発光層の膜厚は、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば100nm以下が好ましく、5~30nm程度が特に好ましい。
【0026】
<<電子輸送層>>
本発明の無機EL素子に於ける電子輸送層である酸化物膜は、n型酸化物半導体から構成されることが好ましい。n型酸化物半導体の材質としては特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、InGaZnO(Indium Gallium Zinc Oxide)、IMO(Indium Magnesium Oxide)、ZTO(Zinc Tin Oxide)、IAO(Indium Aluminium Oxide)、ILO(Indium Lanthanum Oxide)、などが挙げられる。n型酸化物半導体の電子キャリアを制御するために、キャリアドーピングすることも好適である。
【0027】
前記電子輸送層である前記酸化物膜は、亜鉛(Zn)、カドミウム(Cd)、ガリウム(Ga)、インジウム(In)、タリウム(Tl)、ゲルマニウム(Ge)、スズ(Sn)、鉛(Pb)、ビスマス(Bi)、チタン(Ti)、及びタングステン(W)の少なくともいずれかを含むn型酸化物半導体であることが好ましい。
【0028】
前記電子輸送層である前記酸化物膜は、更に、ベリリウム(Be)、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)、バリウム(Ba)、スカンジウム(Sc)、イットリウム(Y)、ランタノイド(Ln)、ボロン(B)、アルミニウム(Al)、シリコン(Si)、アンチモン(Sb)、及びテルル(Te)の少なくともいずれかを含むn型酸化物半導体であることが好ましい。
【0029】
電子輸送層の膜厚は、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば100nm以下が好ましく、5~30nm程度が特に好ましい。
【0030】
<<正孔輸送層>>
本発明の無機EL素子に於ける正孔輸送層である酸化物膜は、p型酸化物半導体から構成されることが好ましい。p型酸化物半導体の材質としては特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、CuO、CuInO(Copper Indium Oxide)、CuAlO(Copper Aluminium Oxide)、MCO(Magnesium Copper Oxide)、CCO(Calcium Copper Oxide)、SCO(Strontium Copper Oxide)、ACO(Antimony Copper Oxide)、CTO(Copper Tin Oxide)、NiO、ZnIr(Zinc Iridium Oxide)、などが挙げられる。p型酸化物半導体の正孔キャリアを制御するために、キャリアドーピングすることも好適である。
【0031】
前記正孔輸送層である前記酸化物膜は、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、亜鉛(Zn)、ルテニウム(Ru)、ロジウム(Rh)、タリウム(Tl)、スズ(Sn)、鉛(Pb)、アンチモン(Sb)、ビスマス(Bi)、及びテルル(Te)の少なくともいずれかを含むp型酸化物半導体であることが好ましい。
【0032】
正孔輸送層の膜厚は、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば100nm以下が好ましく、5~30nm程度が特に好ましい。
【0033】
発光層と電子輸送層を1つの層で構成する場合には、前記電子輸送層に前記発光層の発光中心をドープすることが好ましい。
発光層と正孔輸送層を1つの層で構成する場合には、前記正孔輸送層に前記発光層の発光中心をドープすることが好ましい。
発光中心の種類と濃度、電子輸送層及び正孔輸送層の材質と膜厚、等の組合せは、適宜選択することができる。
【0034】
<<電子注入層>>
本発明の無機EL素子に於ける電子注入層は、陰極と電子輸送層の層間に存在し、陰極からの電子の注入を容易にする働きを持つ。前述のように発光層と電子輸送層を1つの層で構成する場合には特に有用である。本発明の無機EL素子に於ける電子注入層である酸化物膜は、n型酸化物半導体から構成されることが好ましい。n型酸化物半導体の材質としては特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、InGaZnO(Indium Gallium Zinc Oxide)、IMO(Indium Magnesium Oxide)、ZTO(Zinc Tin Oxide)、IAO(Indium Aluminium Oxide)、ILO(Indium Lanthanum Oxide)、などが挙げられる。
【0035】
前記電子注入層である前記酸化物膜は、亜鉛(Zn)、カドミウム(Cd)、ガリウム(Ga)、インジウム(In)、タリウム(Tl)、ゲルマニウム(Ge)、スズ(Sn)、鉛(Pb)、ビスマス(Bi)、チタン(Ti)、及びタングステン(W)の少なくともいずれかを含むn型酸化物半導体であることが好ましい。
【0036】
前記電子注入層である前記n型酸化物半導体は、陰極からの電子の注入障壁を下げるために、キャリアドーピングすることも好適である。キャリアドーパントとしては、前記n型酸化物半導体の構成元素よりも高い原子価を持つ元素を添加することが好ましい。例えば、IMO(Indium Magnesium Oxide)に対しては、スズ(Sn)、チタン(Ti)、ニオブ(Nb)、及びタングステン(W)などが好ましい。ZTO(Zinc Tin Oxide)に対しては、ニオブ(Nb)、モリブデン(Mo)、及びタングステン(W)などが好ましい。
【0037】
電子注入層の膜厚は、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば100nm以下が好ましく、5~30nm程度が特に好ましい。
【0038】
<<正孔注入層>>
本発明の無機EL素子に於ける正孔注入層は、陽極と正孔輸送層の層間に存在し、陽極からの正孔の注入を容易にする働きを持つ。前述のように発光層と正孔輸送層を1つの層で構成する場合には特に有用である。本発明の無機EL素子に於ける正孔注入層である酸化物膜は、p型酸化物半導体から構成されることが好ましい。p型酸化物半導体の材質としては特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、CuO、CuInO(Copper Indium Oxide)、CuAlO(Copper Aluminium Oxide)、MCO(Magnesium Copper Oxide)、CCO(Calcium Copper Oxide)、SCO(Strontium Copper Oxide)、ACO(Antimony Copper Oxide)、CTO(Copper Tin Oxide)、NiO、ZnIr(Zinc Iridium Oxide)、などが挙げられる。
【0039】
前記正孔注入層である前記酸化物膜は、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、亜鉛(Zn)、ルテニウム(Ru)、ロジウム(Rh)、タリウム(Tl)、スズ(Sn)、鉛(Pb)、アンチモン(Sb)、ビスマス(Bi)、及びテルル(Te)の少なくともいずれかを含むp型酸化物半導体であることが好ましい。
【0040】
前記正孔注入層である前記p型酸化物半導体は、陽極からの正孔の注入障壁を下げるために、キャリアドーピングすることも好適である。キャリアドーパントとしては、前記p型酸化物半導体の構成元素よりも低い原子価を持つ元素を添加することが好ましい。例えば、CuInO(Copper Indium Oxide)に対しては、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、及びストロンチウム(Sr)などが好ましい。
【0041】
正孔輸送層の膜厚は、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば100nm以下が好ましく、5~30nm程度が特に好ましい。
【0042】
無機EL薄膜層の成膜方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。例えば、CVD法やALD法などの真空成膜方法、スピンコート法、スリットダイコート法、などの印刷方法などが挙げられる。
【0043】
封止膜やその他の部材は、目的に応じて適宜選択することができる。
【0044】
基材としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ガラス基材、プラスチック基材などが挙げられる。
【0045】
電極層(陽極及び陰極)の成膜方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。例えば、スパッタ法、CVD法、真空蒸着法などの真空成膜方法、スピンコート法、スリットダイコート法、などの印刷方法などが挙げられる。
【0046】
<無機EL素子の製造方法>
前記無機EL素子の製造方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、無機EL薄膜形成用塗布液を用いて前記無機EL薄膜層を形成する工程を含み、更に必要に応じて、その他の工程を含む。
なお、前記無機EL薄膜形成用塗布液とは、前記無機EL薄膜層を構成する前記正孔輸送層、前記発光層、及び前記電子輸送層の少なくともいずれかを形成するための塗布液である。
【0047】
-無機EL薄膜形成用塗布液-
無機EL薄膜形成用塗布液は、発光層、p型、n型酸化物半導体を構成する金属元素を、酸化物、無機塩、カルボン酸塩、有機化合物、又は有機金属の少なくともいずれかとして溶媒に溶解させたものが好ましい。前記酸化物、無機塩、カルボン酸塩、有機化合物、又は有機金属は、前記溶媒中に均一に溶解すればよく、解離してイオンとなっていても構わない。前記酸化物、無機塩、カルボン酸塩、有機化合物、又は有機金属が前記無機EL薄膜形成用塗布液に溶解している場合には、前記無機EL薄膜形成用塗布液中の濃度の偏析などが生じにくいため、前記無機EL薄膜形成用塗布液は、長期の使用が可能である。またこの塗布液を用いて作製した薄膜も均一な組成であるため無機EL薄膜層に用いた場合の特性均一性も良好である。
【0048】
前記無機EL薄膜形成用塗布液の一例である発光層形成用塗布液を構成する発光中心原料としては、チタン(Ti)、クロム(Cr)、マンガン(Mn)、タングステン(W)等を含む遷移金属化合物、セリウム(Ce)、プラセオジウム(Pr)、ネオジウム(Nd)、サマリウム(Sm)、ユーロピウム(Eu)、ガドリニウム(Gd)、テルビウム(Tb)、ディスプロシウム(Dy)、ホルミウム(Ho)、エルビウム(Er)、ツリウム(Tm)及びイッテルビウム(Yb)等を含む希土類金属化合物等が好ましい。
【0049】
以下、発光層形成用塗布液を構成する発光中心原料である上記化合物について例示して説明する。
【0050】
<<マンガン(Mn)含有化合物>>
マンガン(Mn)含有化合物としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、有機マンガン化合物、無機マンガン化合物などが挙げられる。
【0051】
-有機マンガン化合物-
前記有機マンガン化合物としては、マンガンと、有機基とを有する化合物であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。前記マンガンと前記有機基とは、例えば、イオン結合、共有結合、又は配位結合で結合している。
【0052】
前記有機基としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、置換基を有していてもよいアルコキシ基、置換基を有していてもよいアシルオキシ基、置換基を有していてもよいアセチルアセトナート基などが挙げられる。前記アルコキシ基としては、例えば、炭素数1~6のアルコキシ基などが挙げられる。前記アシルオキシ基としては、例えば、炭素数1~10のアシルオキシ基などが挙げられる。
前記置換基としては、例えば、ハロゲン、テトラヒドロフリル基などが挙げられる。
前記有機マンガン化合物としては、例えば、酢酸マンガン(II)四水和物、安息香酸マンガン(II)四水和物、マンガン(III)アセチルアセトナート、2-エチルヘキサン酸マンガン(II)などが挙げられる。
【0053】
-無機マンガン化合物-
前記無機マンガン化合物としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、オキソ酸マンガン、ハロゲン化マンガン、酸化マンガンなどが挙げられる。
前記オキソ酸マンガンとしては、例えば、硝酸マンガン、硫酸マンガン、炭酸マンガンなどが挙げられる。
前記ハロゲン化マンガンとしては、例えば、フッ化マンガン、塩化マンガン、臭化マンガン、沃化マンガンなどが挙げられる。
これらの中でも、各種溶媒に対する溶解度が高い点で、硝酸マンガン(II)四水和物、塩化マンガン(II)四水和物がより好ましい。
【0054】
これらのマンガン含有化合物は、合成したものを用いてもよいし、市販品を用いてもよい。
【0055】
<<ユーロピウム(Eu)含有化合物>>
ユーロピウム(Eu)含有化合物としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、有機ユーロピウム化合物、無機ユーロピウム化合物などが挙げられる。
【0056】
-有機ユーロピウム化合物-
前記有機ユーロピウム化合物としては、ユーロピウムと、有機基とを有する化合物であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。前記ユーロピウムと前記有機基とは、例えば、イオン結合、共有結合、又は配位結合で結合している。
【0057】
前記有機基としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、置換基を有していてもよいアルコキシ基、置換基を有していてもよいアシルオキシ基、置換基を有していてもよいアセチルアセトナート基などが挙げられる。前記アルコキシ基としては、例えば、炭素数1~6のアルコキシ基などが挙げられる。前記アシルオキシ基としては、例えば、炭素数1~10のアシルオキシ基などが挙げられる。
前記置換基としては、例えば、ハロゲン、テトラヒドロフリル基などが挙げられる。
前記有機ユーロピウム化合物としては、例えば、酢酸ユーロピウム(III)水和物、ユーロピウム(III)アセチルアセトナート水和物、2-エチルヘキサン酸ユーロピウム(III)などが挙げられる。
【0058】
-無機ユーロピウム化合物-
前記無機ユーロピウム化合物としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、オキソ酸ユーロピウム、ハロゲン化ユーロピウム、酸化ユーロピウムなどが挙げられる。
前記オキソ酸ユーロピウムとしては、例えば、硝酸ユーロピウム、硫酸ユーロピウム、炭酸ユーロピウムなどが挙げられる。
前記ハロゲン化ユーロピウムとしては、例えば、フッ化ユーロピウム、塩化ユーロピウム、臭化ユーロピウム、沃化ユーロピウムなどが挙げられる。
これらの中でも、各種溶媒に対する溶解度が高い点で、硝酸ユーロピウム(III)六水和物、塩化ユーロピウム(III)六水和物、硫酸ユーロピウム(III)八水和物がより好ましい。
【0059】
これらのユーロピウム含有化合物は、合成したものを用いてもよいし、市販品を用いてもよい。
【0060】
以上では、マンガン(Mn)、ユーロピウム(Eu)に関し、それを含有する化合物について詳細に説明した。
同様の説明が、例えば、チタン(Ti)、クロム(Cr)、銅(Cu)、タングステン(W)、セリウム(Ce)、プラセオジウム(Pr)、ネオジウム(Nd)、サマリウム(Sm)、ガドリニウム(Gd)、テルビウム(Tb)、ディスプロシウム(Dy)、ホルミウム(Ho)、エルビウム(Er)、ツリウム(Tm)、イッテルビウム(Yb)等についても、当てはまる。
また、同様の説明が、前記発光層の一例を構成する、ベリリウム(Be)、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)、バリウム(Ba)、スカンジウム(Sc)、イットリウム(Y)、ランタン(La)、ルテチウム(Lu)、ボロン(B)、アルミニウム(Al)、ガリウム(Ga)、シリコン(Si)、ゲルマニウム(Ge)、アンチモン(Sb)、ビスマス(Bi)、テルル(Te)等についても、当てはまる。
また、同様の説明が、前記正孔輸送層の一例を構成する、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、亜鉛(Zn)、ルテニウム(Ru)、ロジウム(Rh)、タリウム(Tl)、スズ(Sn)、鉛(Pb)、アンチモン(Sb)、ビスマス(Bi)、テルル(Te)等についても、当てはまる。
また、同様の説明が、前記電子輸送層の一例を構成する、亜鉛(Zn)、カドミウム(Cd)、ガリウム(Ga)、インジウム(In)、タリウム(Tl)、ゲルマニウム(Ge)、スズ(Sn)、鉛(Pb)、ビスマス(Bi)、チタン(Ti)、タングステン(W)等についても、当てはまる。
【0061】
(表示素子)
本発明の表示素子は、少なくとも、光制御素子と、前記光制御素子を駆動する駆動回路とを有し、更に必要に応じて、その他の部材を有する。
【0062】
<光制御素子>
前記光制御素子としては、駆動信号に応じて光出力を制御する素子であり、本発明の無機EL素子を含んでいる限り、その他の種類の光制御素子を含んでいてもよい。その他種類の光制御素子としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、有機エレクトロルミネッセンス(EL)素子、エレクトロクロミック(EC)素子、液晶素子、電気泳動素子、及びエレクトロウェッティング素子などが挙げられる。
【0063】
<駆動回路>
前記駆動回路としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、a-Si、LTPS、或いは酸化物半導体を活性層とする薄膜トランジスタ(TFT)などの電界効果型トランジスタを含むことが好ましい。
【0064】
<その他の部材>
前記その他の部材としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0065】
本発明の前記表示素子は、本発明の無機EL素子を有しているため、低電圧で高効率に発光し、経時変化が少ないため、長寿命化の表示素子が実現する。
【0066】
(画像表示装置)
本発明の画像表示装置は、少なくとも、複数の表示素子と、複数の配線と、表示制御装置とを有し、更に必要に応じて、その他の部材を有する。
【0067】
<表示素子>
前記表示素子としては、マトリックス状に配置された本発明の前記表示素子である限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0068】
<配線>
前記配線は、前記表示素子における各電界効果型トランジスタにゲート電圧と画像データ信号とを個別に印加可能である限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0069】
<表示制御装置>
前記表示制御装置としては、画像データに応じて、前記各電界効果型トランジスタの前記ゲート電圧と前記信号電圧とを複数の前記配線を介して個別に制御可能である限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0070】
<その他の部材>
前記その他の部材としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0071】
本発明の画像表示装置は、本発明の前記表示素子を有しているため、長寿命で安定して動作する。
【0072】
本発明の画像表示装置は、携帯電話、携帯型音楽再生装置、携帯型動画再生装置、電子BOOK、PDA(Personal Digital Assistant)等の携帯情報機器、スチルカメラやビデオカメラ等の撮像機器における表示手段に用いることができる。また、車、航空機、電車、船舶等の移動体システムにおける各種情報の表示手段にも用いることができる。更に、計測装置、分析装置、医療機器、広告媒体における各種情報の表示手段を用いることができる。
【0073】
(システム)
本発明のシステムは、少なくとも、本発明の前記画像表示装置と、画像データ作成装置とを有する。
前記画像データ作成装置は、表示する画像情報に基づいて画像データを作成し、該画像データを前記画像表示装置に出力する。
【0074】
本発明のシステムは、本発明の前記画像表示装置を備えているため、画像情報を高精細に表示することが可能となる。
【0075】
次に、本発明の画像表示装置について説明する。
本発明の画像表示装置としては、例えば、特開2010-074148号公報の段落〔0059〕~〔0060〕、図2、及び図3に記載の構成などを採ることができる。
【0076】
以下、本発明の実施態様の一例を、図を用いて説明する。
図2は、表示素子がマトリックス上に配置されたディスプレイを表す図である。図2に示されるように、ディスプレイは、X軸方向に沿って等間隔に配置されているn本の走査線(X0、X1、X2、X3、・・・、Xn-2、Xn-1)と、Y軸方向に沿って等間隔に配置されているm本のデータ線(Y0、Y1、Y2、Y3、・・・、Ym-1)、Y軸方向に沿って等間隔に配置されているm本の電流供給線(Y0i、Y1i、Y2i、Y3i、・・・・・、Ym-1i)とを有する。なお、図3、及び図6において、同じ符号(例えば、X1、Y1)は、同じ意味を有する。
よって、走査線とデータ線とによって、表示素子302を特定することができる。
【0077】
図3は、本発明の表示素子の一例を示す概略構成図である。
前記表示素子は、一例として図3に示されるように、無機EL(エレクトロルミネッセンス)素子350と、該無機EL素子350を発光させるためのドライブ回路320とを有している。即ち、ディスプレイ310は、いわゆるアクティブマトリックス方式の無機ELディスプレイである。また、ディスプレイ310は、カラー対応の55インチ型のディスプレイである。なお、大きさは、これに限定されるものではない。
【0078】
図3におけるドライブ回路320について図4を用いて説明する。
ドライブ回路320は、2つの電界効果型トランジスタ10及び20と、キャパシタ30とを有する。
【0079】
電界効果型トランジスタ10は、スイッチ素子として動作する。電界効果型トランジスタ10のゲート電極Gは、所定の走査線に接続され、電界効果型トランジスタ10のソース電極Sは、所定のデータ線に接続されている。また、電界効果型トランジスタ10のドレイン電極Dは、キャパシタ30の一方の端子に接続されている。
電界効果型トランジスタ20は、無機EL素子350に電流を供給する。電界効果型トランジスタ20のゲート電極Gは、電界効果型トランジスタ10のドレイン電極Dと接続されている。そして、電界効果型トランジスタ20のドレイン電極Dは、無機EL素子350の陽極に接続され、電界効果型トランジスタ20のソース電極Sは、所定の電流供給線に接続されている。
【0080】
キャパシタ30は、電界効果型トランジスタ10の状態、即ちデータを記憶する。キャパシタ30の他方の端子は、所定の電流供給線に接続されている。
【0081】
そこで、電界効果型トランジスタ10が「オン」状態になると、信号線Y2を介して画像データがキャパシタ30に記憶され、電界効果型トランジスタ10が「オフ」状態になった後も、電界効果型トランジスタ20を画像データに対応した「オン」状態に保持することによって、無機EL素子350は駆動される。
【0082】
図4には、表示素子における無機EL素子350とドライブ回路としての電界効果型トランジスタ20との位置関係の一例が示されている。ここでは、電界効果型トランジスタ20の横に無機EL素子350が配置されている。なお、電界効果型トランジスタ及びキャパシタ(図示せず)も同一基材上に形成されている。
【0083】
図4には図示されていないが、活性層22の上部に保護膜を設けることも好適である。前記保護膜の材料としては、SiO、SiNx、Al、フッ素系ポリマーなどが適宜利用できる。
また、例えば、図5に示されるように、電界効果型トランジスタ20の上に無機EL素子350が配置されてもよい。この場合には、ゲート電極26に透明性が要求されるので、ゲート電極26には、ITO、In、SnO、ZnO、Gaが添加されたZnO、Alが添加されたZnO、Sbが添加されたSnOなどの導性を有する透明な酸化物が用いられる。なお、符号360は層間絶縁膜(平坦化膜)である。この絶縁膜にはポリイミドやアクリル系の樹脂等を利用できる。
【0084】
ここで、図4及び図5において、電界効果型トランジスタ20は、基材21と、活性層22と、ソース電極23と、ドレイン電極24と、ゲート絶縁層25と、ゲート電極26とを有する。無機EL素子350は、陰極312と、陽極314と、無機EL薄膜層340とを有する。
【0085】
図6は、本発明の画像表示装置の他の一例を示す概略構成図である。
図6において、画像表示装置は、表示素子302と、配線(走査線、データ線、電流供給線)と、表示制御装置400とを有する。
表示制御装置400は、画像データ処理回路402と、走査線駆動回路404と、データ線駆動回路406とを有する。
画像データ処理回路402は、映像出力回路の出力信号に基づいて、ディスプレイにおける複数の表示素子302の輝度を判断する。
走査線駆動回路404は、画像データ処理回路402の指示に応じてn本の走査線に個別に電圧を印加する。
データ線駆動回路406は、画像データ処理回路402の指示に応じてm本のデータ線に個別に電圧を印加する。
【0086】
以上、本発明のシステムがテレビジョン装置である場合について説明したが、これに限定されるものではなく、画像及び情報を表示する装置として画像表示装置を備えていればよい。例えば、コンピュータ(パソコンを含む)と画像表示装置とが接続されたコンピュータシステムであってもよい。
【0087】
本発明のシステムは、本発明の画像表示装置を有しているため、長寿命で安定して動作する。
【実施例
【0088】
以下、本発明の実施例について説明するが、本発明は下記実施例に何ら限定されるもの
ではない。
【0089】
(製造例1-1)
<発光層形成用塗布液の作製>
2-エチルヘキサン酸ランタン50mmolと2-エチルヘキサン酸ユーロピウム2mmolを秤量し、2-エチルヘキサン酸(オクチル酸)1000mLとを室温で混合して溶解させ、発光層形成用塗布液(塗布液1-1)を作製した。
【0090】
(製造例2-1)
<電子輸送層形成用塗布液の作製>
酢酸亜鉛二水和物、硝酸ガリウム八水和物、硝酸インジウム三水和物、各10mmolを秤量し、エチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコール、エタノール、各300mLと室温で混合して溶解させ、電子輸送層形成用塗布液(塗布液2-1)を作製した。
【0091】
(製造例3-1)
<正孔輸送層形成用塗布液の作製>
硝酸銅三水和物25mmolと硝酸マグネシウム六水和物25mmolを秤量し、エチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコール、エタノール、各400mLとを室温で混合して溶解させ、正孔輸送層形成用塗布液(塗布液3-1)を作製した。
【0092】
(実施例1)
<無機EL素子の作製>
UVオゾン洗浄済みの無アルカリガラス基板(パターニングITO電極膜100nm付き)上に、スピンコート装置で塗布液3-1を印刷した。ホットプレートで120℃、3分間に乾燥させた後、大気雰囲気中400℃で1時間焼成して、40nm厚みの正孔輸送層を得た。
【0093】
更に、前記基板をUVオゾン洗浄し、スピンコート装置で塗布液1-1を印刷した。ホットプレートで120℃、3分間に乾燥させた後、大気雰囲気中400℃で1時間焼成して、20nm厚みの発光層を積層した。
【0094】
更に、前記基板をUVオゾン洗浄し、スピンコート装置で塗布液2-1を印刷した。ホットプレートで120℃、3分間に乾燥させた後、大気雰囲気中400℃で1時間焼成して、40nm厚みの電子輸送層を積層した。
【0095】
最後に、真空蒸着によりアルミニウムをメタルマスク製膜して、100nm厚みのAl陰極を積層した。
【0096】
<評価>
実施例1で作製した無機EL素子の発光特性を測定した。
直流電圧を電極間に印加したところ、図7に示すような電圧-電流特性を示した。また、4Vでユーロピウムに特有の良好な赤色発光を示した。
なお、図7において、「e」は10のべき乗を表す。即ち、「e-6」は、「10-6」を表す。
また、実施例1で作製した無機EL素子のELスペクトルを測定した。結果を図8に示した。
【0097】
(製造例1-2~製造例1-6)
<発光層形成用塗布液の作製>
製造例1-1において、原料を、表1に記載の原料に変えた以外は、製造例1-1と同様にして、発光層形成用塗布液(塗布液1-2~塗布液1-6)を作製した。
【0098】
【表1】
【0099】
(製造例2-2~製造例2-4)
<電子輸送層形成用塗布液の作製>
製造例2-1において、原料を、表2に記載の原料に変えた以外は、製造例2-1と同様にして、電子輸送層形成用塗布液(塗布液2-2~塗布液2-4)を作製した。
【0100】
【表2】
【0101】
(製造例3-2~製造例3-4)
<正孔輸送層形成用塗布液の作製>
製造例3-1において、原料を、表3に記載の原料に変えた以外は、製造例3-1と同様にして、正孔輸送層形成用塗布液(塗布液3-2~塗布液3-4)を作製した。
【0102】
【表3】
【0103】
(製造例4-1~製造例4-2)
<正孔注入層形成用塗布液及び電子注入層形成用塗布液の作製>
製造例1-1において、原料を、表4に記載の原料に変えた以外は、製造例1-1と同様にして、正孔注入層形成用塗布液(塗布液4-1)及び電子注入層形成用塗布液(塗布液4-2)を作製した。
【0104】
【表4】
【0105】
表1~表4の原料は、以下の通りである。
<表1・原料A>
La(C15 : 2-エチルヘキサン酸ランタン
Y(NO・6HO : 硝酸イットリウム六水和物
Al(NO・9HO : 硝酸アルミニウム九水和物
LaCl・7HO : 塩化ランタン七水和物
AlCl・6HO : 塩化アルミニウム六水和物
La(NO・6HO : 硝酸ランタン六水和物
<表1・原料B>
Mg(NO・6HO : 硝酸マグネシウム六水和物
CaCl・2HO : 塩化カルシウム二水和物
SrCl・6HO : 塩化ストロンチウム六水和物
<表1・原料C>
Eu(C15 : 2-エチルヘキサン酸ユーロピウム
Tb(NO・6HO : 硝酸テルビウム六水和物
EuCl・6HO : 塩化ユーロピウム六水和物
W(CO) : タングステンカルボニル
CrCl・6HO : 塩化クロム六水和物
Tm(NO・6HO : 硝酸ツリウム六水和物
【0106】
<表2・原料A>
Zn(CHCOO)・2HO : 酢酸亜鉛二水和物
Zn(NO・6HO : 硝酸亜鉛六水和物
Mg(NO・6HO : 硝酸マグネシウム六水和物
La(NO・6HO : 硝酸ランタン六水和物
<表2・原料B>
Ga(NO・8HO : 硝酸ガリウム八水和物
In(NO・3HO : 硝酸インジウム三水和物
SnCl・5HO : 塩化スズ五水和物
<表2・原料C>
Tb(NO・6HO : 硝酸テルビウム六水和物
TmCl・7HO : 塩化ツリウム七水和物
【0107】
<表3・原料A>
Cu(NO・3HO : 硝酸銅三水和物
Cu(C1019 : ネオデカン酸銅
Tl(C15) : 2-エチルヘキサン酸タリウム
CuCl・2HO : 塩化銅二水和物
<表3・原料B>
Mg(NO・6HO : 硝酸マグネシウム六水和物
Sn(C15 : 2-エチルヘキサン酸スズ
Bi(C15 : トリス(2-エチルヘキサン酸)ビスマス
BaCl・2HO : 塩化バリウム二水和物
<表3・原料C>
Cr(C15 : トリス(2-エチルヘキサン酸)クロム
TbCl・6HO : 塩化テルビウム六水和物
<表4・原料A>
Cu(C1019 : ネオデカン酸銅
Cd(NO・2HO : 硝酸カドミウム二水和物
<表4・原料B>
Ca(C15 : 2-エチルヘキサン酸カルシウム
InCl・4HO : 塩化インジウム四水和物
<表4・原料C>
SnCl・5HO : 塩化スズ五水和物
【0108】
<表1~表4・溶媒D>
オクチル酸
EGME : エチレングリコールモノメチルエーテル
PGME : プロピレングリコール1-モノメチルエーテル
DMF : N,N-ジメチルホルムアミド
EGIPE : エチレングリコールモノイソプロピルエーテル
Toluene : トルエン
Xylene : キシレン
<表1~表4・溶媒E>
EG : エチレングリコール
PG : プロピレングリコール
CHB : シクロヘキシルベンゼン
<表1~表4・溶媒F>
MeOH : メタノール
EtOH : エタノール
IPA : イソプロパノール
O : 水
【0109】
(実施例2)
<無機EL素子の作製>
実施例1において、ホール輸送層(HTL)、発光層(EML)、電子輸送層(ETL)を表5に記載の塗布液を用いて作製した以外は、実施例1と同様にして、無機EL素子を作製した。
作製した無機EL素子について、実施例1と同様に評価した。
なお、実施例2の無機EL素子は、正孔輸送層である酸化物膜が、発光中心をドープしたp型酸化物半導体であって、発光層を兼ねている。
【0110】
(実施例3及び4)
<無機EL素子の作製>
実施例1において、陽極(Anode)、及び陰極(Cathode)を表5のとおりとし、更に、ホール輸送層(HTL)、発光層(EML)、電子輸送層(ETL)を表5に記載の塗布液を用いて作製した以外は、実施例1と同様にして、無機EL素子を作製した。
作製した無機EL素子について、実施例1と同様に評価した。
なお、実施例3の無機EL素子は、電子輸送層である酸化物膜が、発光中心をドープしたn型酸化物半導体であって、発光層を兼ねている。
【0111】
【表5】
【0112】
表5において、「ITO」は、「スズドープ酸化インジウム」を表し、「ASC」は、「アルミニウム(Al)-シリコン(Si)-銅(Cu)合金」を表す。
【0113】
図9に、実施例1、及び4で作製した無機EL素子のエネルギーダイアグラムの模式図を示した。
図10に、実施例2で作製した無機EL素子のエネルギーダイアグラムの模式図を示した。
図11に、実施例3で作製した無機EL素子のエネルギーダイアグラムの模式図を示し
た。
【0114】
(実施例5)
<無機EL素子の作製>
UVオゾン洗浄済みの無アルカリガラス基板(パターニングITO電極膜100nm付き)上に、スピンコート装置で塗布液4-1を印刷した。ホットプレートで120℃、3分間に乾燥させた後、大気雰囲気中400℃で1時間焼成して、30nm厚みの正孔注入層(HIL)を得た。
【0115】
更に、前記基板をUVオゾン洗浄し、スピンコート装置で塗布液3-3を印刷した。ホットプレートで120℃、3分間に乾燥させた後、大気雰囲気中400℃で1時間焼成して、30nm厚みの正孔輸送層を兼ねる発光層(発光層を兼ねる正孔輸送層)を積層した。
【0116】
更に、前記基板をUVオゾン洗浄し、スピンコート装置で塗布液2-2を印刷した。ホットプレートで120℃、3分間に乾燥させた後、大気雰囲気中400℃で1時間焼成して、60nm厚みの電子輸送層を積層した。
【0117】
最後に、真空蒸着によりアルミニウムをメタルマスク製膜して、100nm厚みのAl陰極を積層した。
【0118】
(実施例6)
<無機EL素子の作製>
UVオゾン洗浄済みの無アルカリガラス基板(パターニングITO電極膜100nm付き)上に、スピンコート装置で塗布液3-2を印刷した。ホットプレートで120℃、3分間に乾燥させた後、大気雰囲気中400℃で1時間焼成して、60nm厚みの正孔輸送層を得た。
【0119】
更に、前記基板をUVオゾン洗浄し、スピンコート装置で塗布液2-3を印刷した。ホットプレートで120℃、3分間に乾燥させた後、大気雰囲気中400℃で1時間焼成して、30nm厚みの電子輸送層を兼ねる発光層(発光層を兼ねる電子輸送層)を積層した。
【0120】
更に、前記基板をUVオゾン洗浄し、スピンコート装置で塗布液4-2を印刷した。ホットプレートで120℃、3分間に乾燥させた後、大気雰囲気中400℃で1時間焼成して、30nm厚みの電子注入層(EIL)を積層した。
【0121】
最後に、真空蒸着によりアルミニウムをメタルマスク製膜して、100nm厚みのAl陰極を積層した。
【0122】
実施例5及び6の無機EL素子の層構造を表6に示した。
【0123】
【表6】
【0124】
図12に、実施例5で作製した無機EL素子のエネルギーダイアグラムの模式図を示した。
図13に、実施例6で作製した無機EL素子のエネルギーダイアグラムの模式図を示し
た。
【0125】
実施例2~6の無機EL素子も実施例1の無機EL素子と同様に、良好な電圧-電流特性及び発光スペクトルを示した。すなわち、充分に低電圧・高効率で発光する直流駆動型無機EL素子であった。
【0126】
以上説明したように、本発明の無機EL素子によれば、低電圧高効率で安定な発光素子を提供することができる。また、本発明の画像表示装置によれば、大画面で高品質の画像を表示するのに適している。また、本発明のシステムは、画像情報を高精細に表示することができ、テレビジョン装置、コンピュータシステム、スマートフォンなどに好適に使用できる。
【0127】
本発明の態様は、例えば、以下のとおりである。
<1> 陽極と、正孔輸送層と、発光層と、電子輸送層と、陰極と、を積層した無機EL素子であって、
前記正孔輸送層が、酸化物膜であり、
前記発光層が、酸化物膜であり、
前記電子輸送層が、酸化物膜である、ことを特徴とする無機EL素子である。
<2> 前記正孔輸送層である前記酸化物膜が、p型酸化物半導体である前記<1>に記載の無機EL素子である。
<3> 前記電子輸送層である前記酸化物膜が、n型酸化物半導体である前記<1>から<2>のいずれかに記載の無機EL素子である。
<4> 前記発光層である前記酸化物膜が、発光中心をドープした酸化物から構成される前記<1>から<3>のいずれかに記載の無機EL素子である。
<5> 前記正孔輸送層である前記酸化物膜が、発光中心をドープしたp型酸化物半導体であって、前記発光層を兼ねている前記<1>から<4>のいずれかに記載の無機EL素子である。
<6> 前記電子輸送層である前記酸化物膜が、発光中心をドープしたn型酸化物半導体であって、前記発光層を兼ねている前記<1>から<5>のいずれかに記載の無機EL素子である。
<7> 前記発光中心が、遷移金属イオン、又は希土類イオンである前記<4>から<6>のいずれかに記載の無機EL素子である。
<8> 前記発光中心が、チタン(Ti)、クロム(Cr)、マンガン(Mn)、銅(Cu)、タングステン(W)、セリウム(Ce)、プラセオジウム(Pr)、ネオジウム(Nd)、サマリウム(Sm)、ユーロピウム(Eu)、ガドリニウム(Gd)、テルビウム(Tb)、ディスプロシウム(Dy)、ホルミウム(Ho)、エルビウム(Er)、ツリウム(Tm)及びイッテルビウム(Yb)の少なくともいずれかを含む前記<4>から<7>のいずれかに記載の無機EL素子である。
<9> 前記発光層である前記酸化物膜において、前記発光中心の励起エネルギー以上のバンドギャップエネルギーを持つ酸化物が前記発光中心のホストである前記<4>から<6>のいずれかに記載の無機EL素子である。
<10> 前記発光層である前記酸化物膜において、前記発光中心の発光エネルギー以上のバンドギャップエネルギーを持つ酸化物が前記発光中心のホストである前記<4>から<6>のいずれかに記載の無機EL素子である。
<11> 前記発光層である前記酸化物膜が、ベリリウム(Be)、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)、バリウム(Ba)、スカンジウム(Sc)、イットリウム(Y)、ランタン(La)、ルテチウム(Lu)、ボロン(B)、アルミニウム(Al)、ガリウム(Ga)、シリコン(Si)、ゲルマニウム(Ge)、アンチモン(Sb)、ビスマス(Bi)及びテルル(Te)の少なくともいずれかを含む酸化物である前記<1>から<10>のいずれかに記載の無機EL素子である。
<12> 前記正孔輸送層である前記酸化物膜が、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、亜鉛(Zn)、ルテニウム(Ru)、ロジウム(Rh)、タリウム(Tl)、スズ(Sn)、鉛(Pb)、アンチモン(Sb)、ビスマス(Bi)、及びテルル(Te)の少なくともいずれかを含むp型酸化物半導体である前記<1>から<11>のいずれかに記載の無機EL素子である。
<13> 前記電子輸送層である前記酸化物膜が、亜鉛(Zn)、カドミウム(Cd)、ガリウム(Ga)、インジウム(In)、タリウム(Tl)、ゲルマニウム(Ge)、スズ(Sn)、鉛(Pb)、ビスマス(Bi)、チタン(Ti)、及びタングステン(W)の少なくともいずれかを含むn型酸化物半導体である前記<1>から<12>のいずれかに記載の無機EL素子である。
<14> 前記電子輸送層である前記酸化物膜が、更に、ベリリウム(Be)、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)、バリウム(Ba)、スカンジウム(Sc)、イットリウム(Y)、ランタノイド(Ln)、ボロン(B)、アルミニウム(Al)、シリコン(Si)、アンチモン(Sb)、及びテルル(Te)の少なくともいずれかを含むn型酸化物半導体である前記<13>に記載の無機EL素子である。
<15> 前記発光層である前記酸化物膜が、アモルファス酸化物膜であり、
前記正孔輸送層である前記酸化物膜が、アモルファス酸化物膜であり、
前記電子輸送層である前記酸化物膜が、アモルファス酸化物膜である、前記<1>に記載の無機EL素子である。
<16> 直流駆動型である前記<1>に記載の無機EL素子である。
<17> 前記<1>から<16>のいずれかに記載の無機EL素子を有し、駆動信号に応じて光出力が制御される光制御素子と、
前記光制御素子を駆動する駆動回路と、を有することを特徴とする表示素子である。
<18> 画像データに応じた画像を表示する画像表示装置であって、
マトリックス状に配置された複数の前記<17>に記載の表示素子であって、前記駆動回路が電界効果型トランジスタを有する表示素子と、
前記複数の表示素子における各電界効果型トランジスタにゲート電圧と信号電圧とを個別に印加するための複数の配線と、
前記画像データに応じて、前記各電界効果型トランジスタの前記ゲート電圧と前記信号電圧とを前記複数の配線を介して個別に制御する表示制御装置とを有することを特徴とする画像表示装置である。
<19> 前記<18>に記載の画像表示装置と、
表示する画像情報に基づいて画像データを作成し、該画像データを前記画像表示装置に出力する画像データ作成装置とを有することを特徴とするシステムである。
【符号の説明】
【0128】
10、20 電界効果型トランジスタ
21 基材
22 活性層
23 ソース電極
24 ドレイン電極
25 ゲート絶縁層
26 ゲート電極
302 表示素子
310 ディスプレイ
320 画素回路
340 無機EL薄膜層
342 電子輸送層
344 発光層
346 正孔輸送層
350 無機EL素子
400 表示制御装置
【先行技術文献】
【特許文献】
【0129】
【文献】特開2014-35827号公報
【非特許文献】
【0130】
【文献】J. C. Ronfard-Haret, J. Kossanyi,”Electro- and photoluminescence of the Tm3+ion in Tm3+-and Li+-doped ZnO ceramics. Influence of the sintering temperature“, Chem. Phys. 241 (1999) 339-349
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13