(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-29
(45)【発行日】2024-06-06
(54)【発明の名称】食用組成物及び辛味低下抑制用又は辛味増強用組成物
(51)【国際特許分類】
A23L 27/10 20160101AFI20240530BHJP
A23L 27/12 20160101ALI20240530BHJP
A23L 19/00 20160101ALI20240530BHJP
【FI】
A23L27/10 C
A23L27/12
A23L19/00 Z
(21)【出願番号】P 2019208618
(22)【出願日】2019-11-19
【審査請求日】2022-08-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000111487
【氏名又は名称】ハウス食品グループ本社株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】713011603
【氏名又は名称】ハウス食品株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【氏名又は名称】服部 博信
(74)【代理人】
【識別番号】100196405
【氏名又は名称】小松 邦光
(72)【発明者】
【氏名】野平 友美
(72)【発明者】
【氏名】矢原 誠之
(72)【発明者】
【氏名】八木 徹哉
(72)【発明者】
【氏名】森下 泰
(72)【発明者】
【氏名】青柳 守紘
【審査官】厚田 一拓
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第105053967(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第104585723(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第103504282(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第105495424(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第105477274(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第105394619(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第105394588(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第105361088(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第105360491(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第105266042(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第105124662(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第105053833(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第105029460(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第104957682(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第104887808(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第104856098(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第104839763(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第104522577(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第104489021(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第104222932(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第104222774(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第104172248(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第104146307(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第104146288(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第104106813(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第104106677(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第104012616(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第104012596(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第104012595(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第102973808(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第102771744(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第102388948(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第105746696(CN,A)
【文献】特開2015-073517(JP,A)
【文献】特開2019-122268(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第107319474(CN,A)
【文献】特開2000-236860(JP,A)
【文献】特開2003-033164(JP,A)
【文献】特開2017-055760(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L 2/00 - 35/00
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS/FSTA/AGRICOLA(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヤマモモ抽出物を含む、食用組成物中のサンショウ類香辛料の辛味低下抑制用又は辛味増強用組成物であって、
(1)前記食用組成物の水分量が、前記食用組成物の全質量に対して40質量%以上であり、及び/又は、
(2)前記食用組成物のpHが4.5以下、及び/又は、前記食用組成物の水分活性(Aw)が0.95以下である、
辛味低下抑制用又は辛味増強用組成物。
【請求項2】
ビタミンCをさらに含む、請求項
1に記載の辛味低下抑制用又は辛味増強用組成物。
【請求項3】
前記サンショウ類香辛料が、粉砕物の形態である、請求項1又は2に記載の辛味低下抑制用又は辛味増強用組成物。
【請求項4】
前記サンショウ類香辛料が、サンショウ、アサクラザンショウ、ブドウサンショウ、ヤマアサクラザンショウ、イヌザンショウ、及び花椒からなる群から選択される1種以上である、請求項1~3のいずれか一項に記載の辛味低下抑制用又は辛味増強用組成物。
【請求項5】
前記食用組成物がペースト状である、請求項1~4のいずれか一項に記載の辛味低下抑制用又は辛味増強用組成物。
【請求項6】
前記食用組成物の品温25℃における粘度が、1000~100000mPa・sである、請求項1~5のいずれか一項に記載の辛味低下抑制用又は辛味増強用組成物。
【請求項7】
前記食用組成物が光透過性の容器に充填されている、請求項1~6のいずれか一項に記載の辛味低下抑制用又は辛味増強用組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サンショウ類香辛料を含む食用組成物及びサンショウ類香辛料の辛味低下抑制用又は辛味増強用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
サンショウ類香辛料は、肉や魚の防腐やにおい消し又は食欲増進のためなどに、古くから利用されてきた食材である。特に、サンショウ類香辛料に特有の香りと辛味は、ある種の料理に欠かすことのできないものである。特許文献1には、サンショウ(山椒)の粉砕物及び植物油を混合して加熱した山椒香味油が記載されている。
【0003】
また、特許文献2には、ヤマモモ抽出物などのフラボノール類を含む植物抽出物が、特定の飲食品の香味劣化を防止することが記載されている。一方、サンショウ類香辛料とフラボノール類を含む植物抽出物とを含む食用組成物は、いずれの文献にも記載されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2015-73517号公報
【文献】特開2000-236860号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
香味油中のサンショウ類香辛料は、特有の辛味が保持されやすいものの、油の味が料理に影響を与えてしまうため、特に和食に使用するのには適していなかった。一方、サンショウ類香辛料を水系の調味料の形態とすると、保存中にサンショウ類香辛料の特有の辛味が損なわれてしまった。そこで、本発明は、サンショウ類香辛料の辛味の低下を抑えることができ、水系の調味料にも適用できる手段を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、ヤマモモ抽出物が、サンショウ類香辛料の辛味の低下を抑えたり、その辛味を強めたりできることを見出し、本発明を完成させた。すなわち、本発明は、以下に示す食用組成物及びサンショウ類香辛料の辛味低下抑制用又は辛味増強用組成物を提供するものである。
〔1〕サンショウ類香辛料及びヤマモモ抽出物を含む食用組成物。
〔2〕前記サンショウ類香辛料が、粉砕物の形態である、前記〔1〕に記載の食用組成物。
〔3〕前記サンショウ類香辛料が、サンショウ、アサクラザンショウ、ブドウサンショウ、ヤマアサクラザンショウ、イヌザンショウ、及び花椒からなる群から選択される1種以上である、前記〔1〕又は〔2〕に記載の食用組成物。
〔4〕水分量が、前記食用組成物の全質量に対して約40質量%以上である、前記〔1〕~〔3〕のいずれか一項に記載の食用組成物。
〔5〕pHが4.5以下、及び/又は、水分活性(Aw)が0.95以下である、前記〔1〕~〔4〕のいずれか一項に記載の食用組成物。
〔6〕ビタミンCをさらに含む、前記〔1〕~〔5〕のいずれか一項に記載の食用組成物。
〔7〕ペースト状である、前記〔1〕~〔6〕のいずれか一項に記載の食用組成物。
〔8〕品温25℃における粘度が、1000~100000Pa・sである、前記〔1〕~〔7〕のいずれか一項に記載の食用組成物。
〔9〕光透過性の容器に充填されている、前記〔1〕~〔8〕のいずれか一項に記載の食用組成物。
〔10〕ヤマモモ抽出物を含む、サンショウ類香辛料の辛味低下抑制用又は辛味増強用組成物。
〔11〕ビタミンCをさらに含む、前記〔10〕に記載の組成物。
【発明の効果】
【0007】
本発明に従えば、サンショウ類香辛料にヤマモモ抽出物を配合することにより、たとえ水系の組成物中であっても、当該サンショウ類香辛料の辛味の低下を抑制したり、その辛味を増強したりすることができる。したがって、保存性の高いサンショウ類香辛料を含む食用組成物を提供することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明をさらに詳細に説明する。
本発明は、サンショウ類香辛料及びヤマモモ抽出物を含む食用組成物に関している。本明細書に記載の「サンショウ類香辛料」とは、ミカン科サンショウ属の植物の果実、種皮、葉、及び/又は茎から調製される香辛料のことをいう。前記ミカン科サンショウ属の植物としては、当技術分野で通常使用されるものを特に制限されることなく採用することができ、例えば、サンショウ(Zanthoxylum piperitum DC)、アサクラザンショウ(Z.piperitum DC.forma inerme Makino)及びそれから派生したとされるブドウサンショウ、ヤマアサクラザンショウ(Z.piperitum DC.forma brevispinosum Makino)、イヌザンショウ(Z.schinifolium)、並びに花椒(Z.bungeanum)などが例示され得る。前記サンショウ類香辛料としては、当技術分野で通常使用されるものを特に制限されることなく採用することができるが、例えば、前記サンショウ類香辛料は、粉砕物の形態、又は、熱水抽出物若しくはエタノール抽出物などの抽出物の形態などであってもよい。前記サンショウ類香辛料の配合量は、特に制限されないが、例えば、前記食用組成物の全質量に対して、生換算で約1質量%以上であってもよく、好ましくは約30~約60質量%である。
【0009】
本明細書に記載の「ヤマモモ抽出物」とは、当技術分野で酸化防止剤として使用されているヤマモモから得られる抽出物のことをいい、主成分としてミリシトリンを含んでいる。前記ヤマモモ抽出物は、当技術分野で通常使用されているものを特に制限されることなく採用することができるが、例えば、ヤマモモの果実、樹皮、又は葉の水抽出物、メタノール抽出物、又はエタノール抽出物などであってもよい。前記ヤマモモ抽出物は、食品添加物として使用されているものであってもよい。前記ヤマモモ抽出物の含有量は、特に制限されないが、例えば、前記食用組成物の全質量に対して、約0.0003質量%以上であってもよく、好ましくは約0.0015~約0.006質量%である。前記ヤマモモ抽出物は、無水物換算で95.0~105.0質量%のミリシトリンを含んでいる(第9版食品添加物公定書)。前記食用組成物中におけるミリシトリンの含有量を、液体クロマトグラフィーなどの測定方法により測定することで、当該組成物中におけるヤマモモ抽出物の含有量を推定することが可能である。前記ヤマモモ抽出物は、前記サンショウ類香辛料の辛味の低下を抑制又はその辛味を増強する作用を有している。
【0010】
本発明の食用組成物は、調味料又は食品などとして食用に供される。前記食用組成物は、食材や料理との相性などに応じて水系又は油系の組成物として適宜調製することができる。前記食用組成物が水系(水分が前記食用組成物の大部分を占めるが一部油を含む状態のものを含む)の組成物である場合には、その水分量は、前記食用組成物の全質量に対して約40質量%以上であってもよく、好ましくは約50~約80質量%である。前記食用組成物の水分量がこのような範囲にあると、当該食用組成物の形態を安定なペースト状にすることができる。また、水系の前記食用組成物においては、油の含有量を30質量%以下とすることが好ましく、実質的に油を含まないことがさらに好ましい。
【0011】
前記食用組成物の水分量は、当技術分野で通常採用される方法で測定することができるが、例えば、減圧乾燥器を用いて、減圧加熱乾燥法・乾燥助剤法(70℃、5時間)によって測定してもよい。
【0012】
前記食用組成物の形態は、特に制限されないが、例えば、ペースト状であってもよい。ある態様では、前記食用組成物の品温25℃における粘度が、約1000~約100000mPa・sであってもよく、好ましくは約40000~約60000mPa・sである。前記食用組成物の粘度がこのような範囲にあると、前記食用組成物を柔軟性ボトル容器などに充填した場合に、絞り出しなどで、その取り扱いが容易なものとなり、食材などに付着しやすいものとなる。
【0013】
前記食用組成物の粘度は、当技術分野で通常採用される方法で測定することができるが、例えば、B型粘度計(25℃、60回転で、粘度に応じたローターを使用)によって測定してもよい。
【0014】
ある態様では、本発明の食用組成物の保存性を高めるために、水分活性(Aw)及び/又はpHが低くなるように当該食用組成物を調製してもよい。前記食用組成物のAwは、特に制限されないが、例えば、約0.95以下であってもよい。また、前記食用組成物のpHは、特に制限されないが、例えば、約4.5以下であってもよい。
【0015】
なお、本明細書に記載の「水分活性」とは、食品成分と結合していない遊離状態にある自由水の割合を表す尺度であり、次の式により表される。
Aw=P/P0=RH/100
P:一定温度下での食品表面の水蒸気圧
P0:一定温度下での純水の水蒸気圧
RH:一定温度下での密閉用空間に食品を置いたときの空間中の相対湿度
本明細書においては、特に断らない限り、25℃での水分活性に言及している。水分活性は、例えば、重量平衡法や蒸気圧法(より具体的には電気抵抗式湿度測定法など)によって、具体的には、ノバシーナ社水分活性装置などで測定することができる。前記食用組成物のAwは、水分の少ない原料の配合量を増やしたり、自由水と結合し得る他の任意の水溶性成分(例えば食塩などの調味料)の配合量を増やしたりすることによって低下させることができる。
前記食用組成物のpHは、例えば、ガラス電極法で測定してもよい。
【0016】
ある態様では、本発明の食用組成物は、ビタミンC(アスコルビン酸)をさらに含んでもよい。前記食用組成物にビタミンCが含まれていると、サンショウ類香辛料の変色が抑制され、サンショウ類香辛料の色調が維持されやすくなる。
【0017】
本発明の食用組成物は、本発明の目的を損なわない限り、当技術分野で通常使用される任意の調味料若しくは香辛料、任意の食品原料、及び/又は他の酸化防止剤などの任意の添加剤などをさらに含んでもよい。本発明の食用組成物は、和風味のものとするのがよい。また、本発明の食用組成物は、当技術分野で通常採用される方法で適宜調整することができる。ある態様では、前記食用組成物は、光透過性又は光不透過性の容器に充填されてもよい。一般には、サンショウ類香辛料の辛味の低下を抑えるために、光不透過性の容器を使用することが好まれるが、本発明の食用組成物は、ヤマモモ抽出物を含んでいるため、たとえ光透過性の容器に充填してもサンショウ類香辛料の辛味の低下が生じにくくなっている。
【0018】
別の態様では、本発明は、ヤマモモ抽出物を含む、サンショウ類香辛料の辛味低下抑制用又は辛味増強用組成物にも関している。ある態様では、前記辛味低下抑制用又は辛味増強用組成物は、ビタミンCをさらに含んでいる。前記辛味低下抑制用又は辛味増強用組成物にビタミンCが含まれていると、前記サンショウ類香辛料の辛味低下抑制作用又は辛味増強作用に加えて、前記サンショウ類香辛料の変色抑制作用も奏される。
【0019】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明の範囲はこれら実施例に限定されるものではない。
【実施例】
【0020】
〔製造例1〕
後掲の表1に記載の原料を常法により混合して、実施例1及び2並びに比較例1~5のペースト状食用組成物を調製した。サンショウ粉砕物としては、生のサンショウの全果を常法により粉砕した、水分量が約50質量%のものを使用した。また、各食用組成物の水分活性(AW)をノバシーナ社水分活性装置LabMASTER-awで測定し、pHを東亜ディーケーケー株式会社 PH/ION METER HM-42Xで測定し、水分量を減圧加熱乾燥法・乾燥助剤法(70℃、5時間)で測定し、品温25℃における粘度を、東機産業株式会社 RC100型粘度計(10rpm、ローターNO.H6)で測定した。結果を表1に示す。
【0021】
【0022】
〔試験例1〕(辛味低下抑制効果)
実施例1及び2並びに比較例1~5のペースト状食用組成物100gを、半透明の柔軟なポリエチレン製ボトルにコールドパック充填し、ヘッドスペースを設けて密封した。これらを40℃で保管して、2週間後及び4週間後に、各食用組成物の辛味を5名のパネラーが10段階(10:製造直後の比較例1、0:辛味なし)で評価した。結果を表2及び表3に示す。
【0023】
【0024】
【0025】
サンショウ粉砕物に加えてヤマモモ抽出物を含む実施例1及び2の食用組成物は、4週間保管後でもサンショウに特有の辛味を有していたが、ヤマモモ抽出物を含まない比較例1の食用組成物においては、保管日数が経過するにつれて、サンショウに特有の辛味が低減していた。このサンショウに特有の辛味の低下は、ヤマモモ抽出物以外のフラボノール類を含む植物抽出物又は抗酸化作用が知られている成分の添加によっては、十分には抑制されなかった(比較例2~5)。このように、ヤマモモ抽出物による顕著な辛味低下抑制効果は、フラボノール類又は抗酸化剤による公知の作用からは予測することのできない優れたものである。
【0026】
また、ビタミンCを含む実施例2の食用組成物においては、茶褐色の変色が起こらず、サンショウの新鮮な緑色の色調が維持されていた。すなわち、実施例2の食用組成物は、サンショウに特有の辛味と新鮮な緑色の色調の両方が維持されており、辛味及び外観の両面において極めて保存安定性の高いものだった。
さらに、実施例1及び2の食用組成物は、保管後に、前記ボトルの口部から、容易に絞り出すことができ、食材に帯状などで付着することができるものであった。
【0027】
〔試験例2〕(辛味増強効果)
実施例1及び2の食用組成物と、比較例1の食用組成物との製造直後の辛味を、3名のパネラーが10段階(10:製造直後の実施例1、0:辛味なし)で評価した。結果を表4に示す。
【0028】
【0029】
サンショウ粉砕物に加えてヤマモモ抽出物を含む実施例1及び2の食用組成物は、ヤマモモ抽出物を含まない比較例1の食用組成物よりも強い辛味を有していた。
【0030】
〔製造例2〕
植物油脂20質量%を含むように原料を配合した以外は、実施例2と同様にして、実施例3のペースト状食用組成物を調製した。この食用組成物は、水分量が約50質量%、油分量が約20質量%で、Aw、pH及び粘度は、実施例2の食用組成物と同様のものであり、前記した実施例2の食用組成物と同様の性能を有していた。
【0031】
〔製造例3〕(別のサンショウ類香辛料)
サンショウ粉砕物に代えて、花椒の乾燥粉砕物を20質量%含む以外は、実施例2と同様にして、実施例4のペースト状食用組成物を調製した。この食用組成物は、水分量が約70質量%で、Aw、pH及び粘度は、実施例2の食用組成物と同様のものであった。
【0032】
実施例4の食用組成物について、前記したと同様の、製造直後における辛味増強効果、2週間後及び4週間後における辛味低下抑制効果を調べたところ、実施例2の食用組成物と同様の性能を有していた。
【0033】
以上より、サンショウ類香辛料にヤマモモ抽出物を配合することにより、当該サンショウ類香辛料の辛味の低下を抑制したり、その辛味を増強したりできることが分かった。したがって、保存性の高いサンショウ類香辛料を含む食用組成物を提供することが可能となる。