(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-29
(45)【発行日】2024-06-06
(54)【発明の名称】活性エステル化合物
(51)【国際特許分類】
C08G 59/40 20060101AFI20240530BHJP
C08G 63/682 20060101ALI20240530BHJP
C08L 27/12 20060101ALI20240530BHJP
C08L 63/00 20060101ALI20240530BHJP
C08L 67/00 20060101ALI20240530BHJP
【FI】
C08G59/40 ZNM
C08G63/682
C08L27/12
C08L63/00
C08L67/00
(21)【出願番号】P 2019517513
(86)(22)【出願日】2018-04-10
(86)【国際出願番号】 JP2018015021
(87)【国際公開番号】W WO2018207532
(87)【国際公開日】2018-11-15
【審査請求日】2020-12-24
【審判番号】
【審判請求日】2022-09-15
(31)【優先権主張番号】P 2017095626
(32)【優先日】2017-05-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002886
【氏名又は名称】DIC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】弁理士法人ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岡本 竜也
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 泰
【合議体】
【審判長】細井 龍史
【審判官】小出 直也
【審判官】松本 直子
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-164651(JP,A)
【文献】Thermochimica Acta,2014年,586巻,45-51頁
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L, C08K
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
分子構造中に、フッ素化炭化水素構造部位(F)と、複数の芳香族エステル構造部位(E)とを有し、分子末端にアリールオキシカルボニル構造(P)又はアリールカルボニルオキシ構造(A)を有する活性エステル化合物
であって、
前記活性エステル化合物が、芳香族モノヒドロキシ化合物(a1)、芳香族ポリカルボン酸又はその酸ハロゲン化物(a2)及び分子構造中にフェノール性水酸基を2つ以上有する化合物(a3)のエステル化物であり、
前記化合物(a1)、(a2)、(a3)のいずれか一つ以上が分子構造中に前記フッ素化炭化水素構造部位(F)を有するものであり、
前記芳香族モノヒドロキシ化合物(a1)が有する水酸基のモル数と前記分子構造中にフェノール性水酸基を2つ以上有する化合物(a3)が有する水酸基のモル数との割合が10/90~75/25の範囲である活性エステル化合物。
【請求項2】
分子構造中に、フッ素化炭化水素構造部位(F)と、複数の芳香族エステル構造部位(E)とを有し、分子末端にアリールオキシカルボニル構造(P)又はアリールカルボニルオキシ構造(A)を有する活性エステル化合物であって、
前記活性エステル化合物が、芳香族ポリカルボン酸又はその酸ハロゲン化物(a2)、分子構造中にフェノール性水酸基を2つ以上有する化合物(a3)及び芳香族モノカルボン酸又はその酸ハロゲン化物(a4)のエステル化物であり、
前記化合物(a2)、(a3)、(a4)のいずれか一つ以上が分子構造中に前記フッ素化炭化水素構造部位(F)を有するものであり、
前記芳香族モノカルボン酸又はその酸ハロゲン化物(a4)が有するカルボキシル基又は酸ハライド基の合計1モルに対し、前記芳香族ポリカルボン酸又はその酸ハロゲン化物(a2)が有するカルボキシル基又は酸ハライド基の合計との割合が0.5~5モルの範囲であ
り、
前記活性エステル化合物が、下記一般式で示される繰り返し単位を有するポリアミド樹脂を含まない活性エステル化合物。
【化5】
(式中、XおよびYはそれぞれ有機基を示し、Zは炭素数10以下の有機基および水素から選ばれるものであり、前記炭素数10以下の有機基である割合は10%以上であり、nは5~10,000の整数である。)
【請求項3】
前記アリールオキシカルボニル構造(P)が、芳香族モノヒドロキシ化合物(a1)に由来する構造部位であり、前記アリールカルボニルオキシ構造(A)が、芳香族モノカルボン酸又はその酸ハロゲン化物(a4)に由来する構造部位である請求項1
又は2記載の活性エステル化合物。
【請求項4】
前記フッ素化炭化水素構造部位(F)が、炭素原子数1~6のパーフルオロアルキル基である請求項1
~3のいずれか1つに記載の活性エステル化合物。
【請求項5】
請求項1~
4のいずれか1つに記載の活性エステル化合物と硬化剤とを含有する硬化性組成物。
【請求項6】
更に、ポリ(フルオロアルキレン)樹脂を含有する請求項
5記載の硬化性組成物。
【請求項7】
請求項
5又は6記載の硬化性組成物の硬化物。
【請求項8】
請求項
5又は6記載の硬化性組成物を用いてなる半導体封止材料。
【請求項9】
請求項
5又は6記載の硬化性組成物を用いてなるプリント配線基板。
【請求項10】
請求項
5又は6記載の硬化性組成物を用いてなるビルドアップフィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、硬化物における誘電特性及び銅箔密着性に優れる活性エステル化合物、これを含有する硬化性組成物とその硬化物、前記硬化性組成物を用いてなる半導体封止材料、プリント配線基板及びビルドアップフィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
半導体や多層プリント基板等に用いられる絶縁材料の技術分野では、各種電子部材の薄型化や小型化に伴い、これらの市場動向に合わせた新たな樹脂材料の開発が求められている。具体的な要求性能としては、硬化物における耐熱性や耐吸湿性、銅箔密着性は勿論のこと、信号の高速化及び高周波数化対策として、硬化物における誘電率及び誘電正接値が低いこと、高温条件下での信頼性としてガラス転移温度(Tg)等の物性変化がないこと、薄型化に伴う反りや歪み対策として硬化収縮率や線膨張係数が低いこと等も重要である。
【0003】
硬化物における誘電特性に優れる樹脂材料として、ポリテトラフルオロエチレン分散体とエポキシ樹脂とを含有する主剤と、酸無水物硬化剤とからなる樹脂組成物が知られている(下記特許文献1参照)。特許文献1に記載されたエポキシ樹脂組成物はポリテトラフルオロエチレン分散体を含有することにより誘電率や誘電正接の値を低下させたものであるが、銅箔への密着性が十分ではなく、電子部材の小型化に伴う微細配線に適用できるものではなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従って、本発明が解決しようとする課題は、硬化物における誘電特性及び銅箔密着性に優れる活性エステル化合物、これを含有する硬化性組成物とその硬化物、前記硬化性組成物を用いてなる半導体封止材料、プリント配線基板及びビルドアップフィルムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは前記課題を解決すべく鋭意検討した結果、分子構造中にフッ素化炭化水素構造部位と複数の芳香族エステル構造部位とを有し、分子末端にアリールオキシカルボニル構造又はアリールカルボニルオキシ構造を有する活性エステル化合物は、硬化物における誘電特性に優れる上、銅箔への密着性も高く、電子部材用エポキシ樹脂の硬化剤等としての利用価値が高いことを見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
即ち、本発明は、分子構造中に、フッ素化炭化水素構造部位(F)と、複数の芳香族エステル構造部位(E)とを有し、分子末端にアリールオキシカルボニル構造(P)又はアリールカルボニルオキシ構造(A)を有する活性エステル化合物に関する。
【0008】
本発明は更に、前記活性エステル化合物と硬化剤とを含有する硬化性組成物に関する。
【0009】
本発明は更に、前記活性エステル化合物、硬化剤、及びポリ(フルオロアルキレン)樹脂を含有する硬化性組成物に関する。
【0010】
本発明は更に、前記硬化性組成物の硬化物に関する。
【0011】
本発明は更に、前記硬化性組成物を用いてなる半導体封止材料に関する。
【0012】
本発明は更に、前記硬化性組成物を用いてなるプリント配線基板に関する。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、硬化物における誘電特性及び銅箔密着性に優れる活性エステル化合物、これを含有する硬化性組成物とその硬化物、前記硬化性組成物を用いてなる半導体封止材料、プリント配線基板及びビルドアップフィルムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】
図1は、実施例1で得られた活性エステル化合物(1)のGPCチャート図である。
【
図2】
図2は、実施例2で得られた活性エステル化合物(2)のGPCチャート図である。
【
図3】
図3は、実施例3で得られた活性エステル化合物(3)のGPCチャート図である。
【
図4】
図4は、実施例4で得られた活性エステル化合物(4)のGPCチャート図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の活性エステル化合物は、分子構造中に、フッ素化炭化水素構造部位(F)と、複数の芳香族エステル構造部位(E)とを有し、分子末端アリールオキシカルボニル構造(P)又はアリールカルボニルオキシ構造(A)を有することを特徴とする。
【0016】
前記フッ素化炭化水素構造部位(F)とは、脂肪族炭化水素基、脂環構造含有炭化水素基、芳香環含有炭化水素基等の炭化水素基中の水素原子の一部乃至全部がフッ素原子で置き換わった構造を指す。前記脂肪族炭化水素基は直鎖型でも分岐型でもよく、不飽和結合を一つ乃至複数有していてもよい。また、アルキル基等1価の炭化水素基であってもよいし、アルキレン基等2価の炭化水素基であってもよい。前記アルキレン基は(ポリ)オキシアルキレン構造等、複数のアルキレン基が酸素原子や硫黄原子、カルボニル基、スルホニル基、エステル結合等にて結節された構造部位として存在していてもよい。
【0017】
前記脂環構造含有炭化水素基が有する脂環構造としては、シクロペンタン構造、シクロヘキサン構造、ノルボルナン構造、ノルボルネン構造、トリシクロデカン構造、ジシクロペンタジエン構造、アダマンタン構造等が挙げられる。前記脂環構造含有炭化水素基は、脂環構造の他、アルキル基やアルキレン基等の構造部位を有していてもよい。また、脂環構造含有炭化水素基はシクロアルキル基等1価の炭化水素基であってもよいし、シクロアルキレン基等2価の炭化水素基であってもよい。
【0018】
前記芳香環含有炭化水素基が有する芳香環構造としては、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環等が挙げられる。前記芳香環含有炭化水素基は、芳香環構造の他、アルキル基やアルキレン基等の構造部位を有していてもよい。また、芳香環含有炭化水素基はアリール基やアラルキル基等の1価の炭化水素基であってもよいし、アリーレン基やジアルキレンアレーン等2価の炭化水素基であってもよい。
【0019】
本発明の活性エステル化合物は、前記フッ素化炭化水素構造部位(F)を一つ乃至複数有するものである。前記フッ素化炭化水素構造部位(F)を複数有する場合には、其々の構造部位は同一であってもよいし、異なっていてもよい。中でも、銅箔密着性に一層優れる活性エステル化合物となることから、前記フッ素化炭化水素構造部位(F)における炭化水素構造が脂肪族炭化水素基であることが好ましく、炭素原子数1~6のアルキル基であることが好ましい。更に、炭素原子数1~6のパーフルオロアルキル基が好ましい。
【0020】
前記芳香族エステル構造部位(E)とは、芳香環に結合した水酸基と芳香環に結合したカルボキシ基とから形成されるエステル結合部位を指す。このような芳香族エステル構造部位(E)はエポキシ樹脂等の硬化剤との高い反応活性を有する。
【0021】
前記アリールオキシカルボニル構造(P)の具体例としては、下記構造式(1)で表される構造部位が挙げられる。また、前記アリールカルボニルオキシ構造(A)の具体例としては、下記構造式(2)で表される構造部位が挙げられる。
【0022】
【化1】
[式中Arは置換基を有していてもよい芳香環である。]
【0023】
前記構造式(1)、(2)中のArは芳香環を表す。具体的には、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環等が挙げられる。中でも、硬化物の諸物性に加え、硬化剤や他の樹脂成分との混合性にも優れる活性エステル化合物となることから、ナフタレン環であることが好ましい。
【0024】
芳香核上の置換基は、前記フッ素化炭化水素構造部位(F)の他、脂肪族炭化水素基、アルコキシ基、ハロゲン原子、アリール基、アリールオキシ基、アラルキル基等が挙げられる。前記脂肪族炭化水素基は直鎖型及び分岐型のいずれでもよく、構造中に不飽和結合を有していてもよい。具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、へキシル基、シクロへキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基等が挙げられる。前記アルコキシ基は、メトキシ基、エトキシ基、プロピルオキシ基、ブトキシ基等が挙げられる。前記ハロゲン原子は、フッ素原子、塩素原子、臭素原子等が挙げられる。前記アリール基は、フェニル基、ナフチル基、アントリル基、及びこれらの芳香核上に前記脂肪族炭化水素基やアルコキシ基、ハロゲン原子等が置換した構造部位等が挙げられる。前記アリールオキシ基は、フェニルオキシ基、ナフチルオキシ基、アントリルオキシ基、及びこれらの芳香核上に前記アルキル基やアルコキシ基、ハロゲン原子等が置換した構造部位等が挙げられる。前記アラルキル基は、ベンジル基、フェニルエチル基、ナフチルメチル基、ナフチルエチル基、及びこれらの芳香核上に前記アルキル基やアルコキシ基、ハロゲン原子等が置換した構造部位等が挙げられる。
【0025】
本発明の活性エステル化合物は、分子構造中に前記フッ素化炭化水素構造部位(F)及び前記複数の芳香族エステル構造部位(E)を有し、分子末端にアリールオキシカルボニル構造(P)又はアリールカルボニルオキシ構造(A)を有するものであれば、その他の具体構造は特に限定されず、多種多様な構造をとり得る。また、その分子量も特に制限がなく、単分子量の化合物であってもよいし、分子量分布を有するオリゴマー或いはポリマーであってもよい。活性エステル化合物の具体例としては以下(A1)~(A4)のようなものが挙げられる。なお、これらはあくまでも活性エステル化合物の一例であって、本発明の活性エステル化合物はこれに限定されるものではない。また、活性エステル化合物は一種類を単独で用いてもよいし、2種類以上を併用してもよい。
【0026】
活性エステル化合物(A1):芳香族モノヒドロキシ化合物(a1)と芳香族ポリカルボン酸又はその酸ハロゲン化物(a2)とのエステル化物であって、前記化合物(a1)又は(a2)のどちらか一方又は両方が分子構造中にフッ素化炭化水素構造部位(F)を有するものである活性エステル化合物
活性エステル化合物(A2):分子構造中にフェノール性水酸基を2つ以上有する化合物(a3)と芳香族モノカルボン酸又はその酸ハロゲン化物(a4)とのエステル化物であって、前記化合物(a3)又は(a4)のどちらか一方又は両方が分子構造中にフッ素化炭化水素構造部位(F)を有するものである活性エステル化合物
活性エステル化合物(A3):芳香族モノヒドロキシ化合物(a1)、芳香族ポリカルボン酸又はその酸ハロゲン化物(a2)及び分子構造中にフェノール性水酸基を2つ以上有する化合物(a3)のエステル化物であって、前記化合物(a1)、(a2)、(a3)のいずれか一つ以上が分子構造中にフッ素化炭化水素構造部位(F)を有するものである活性エステル化合物
活性エステル化合物(A4):芳香族ポリカルボン酸又はその酸ハロゲン化物(a2)、分子構造中にフェノール性水酸基を2つ以上有する化合物(a3)及び芳香族モノカルボン酸又はその酸ハロゲン化物(a4)のエステル化物であって、前記化合物(a2)、(a3)、(a4)のいずれか一つ以上が分子構造中にフッ素化炭化水素構造部位(F)を有するものである活性エステル化合物
【0027】
前記芳香族モノヒドロキシ化合物(a1)の具体例としては、フェノール或いはフェノールの芳香核上に一つ乃至複数の置換基を有するフェノール化合物、ナフトール或いはナフトールの芳香核上に一つ乃至複数の置換基を有するナフトール化合物、アントラセノール或いはアントラセノールの芳香核上に一つ乃至複数の置換基を有するアントラセノール化合物等が挙げられる。芳香核上の置換基は前記フッ素化炭化水素構造部位(F)、脂肪族炭化水素基、アルコキシ基、ハロゲン原子、アリール基、アリールオキシ基、アラルキル基等が挙げられ、其々の具体例は前述の通りである。前記芳香族モノヒドロキシ化合物(a1)は一種類を単独で用いてもよいし、2種類以上を併用して用いてもよい。
【0028】
これらの中でも、硬化物における誘電特性や銅箔密着性の他、耐熱性等の諸性能にも優れる活性エステル化合物となることから、フェノール化合物又はナフトール化合物が好ましく、フェノール、ナフトール或いはこれらの芳香核上に前述の置換基を1つ又は2つ有する化合物がより好ましい。芳香核上の置換基としては前記フッ素化炭化水素構造部位(F)、炭素原子数1~6の脂肪族炭化水素基又はアラルキル基が好ましい。
【0029】
前記芳香族ポリカルボン酸又はその酸ハロゲン化物(a2)は、例えば、イソフタル酸、テレフタル酸等のベンゼンジカルボン酸;トリメリット酸等のベンゼントリカルボン酸;ナフタレン-1,4-ジカルボン酸、ナフタレン-2,3-ジカルボン酸、ナフタレン-2,6-ジカルボン酸、ナフタレン-2,7-ジカルボン酸等のナフタレンジカルボン酸;これらの酸ハロゲン化物;これらの芳香核上に一つ乃至複数の置換基を有する化合物等が挙げられる。前記酸ハロゲン化物は、酸塩化物、酸臭化物、酸フッ化物、酸ヨウ化物等が挙げられる。また、芳香核上の置換基は前記フッ素化炭化水素構造部位(F)、脂肪族炭化水素基、アルコキシ基、ハロゲン原子、アリール基、アリールオキシ基、アラルキル基等が挙げられ、其々の具体例は前述の通りである。前記芳香族ポリカルボン酸又はその酸ハロゲン化物(a2)はそれぞれ単独で用いても良いし、2種類以上を併用しても良い。中でも、硬化物における誘電特性や銅箔密着性の他、耐熱性等の諸性能にも優れる活性エステル化合物となることから、イソフタル酸やテレフタル酸等のベンゼンジカルボン酸又はその酸ハロゲン化物が好ましい。
【0030】
前記分子構造中にフェノール性水酸基を2つ以上有する化合物(a3)は、例えば、各種の芳香族ポリヒドロキシ化合物や、前記芳香族モノヒドロキシ化合物(a1)の一種乃至複数種を反応原料とするノボラック型樹脂、前記芳香族モノヒドロキシ化合物(a1)の一種乃至複数種と下記構造式(x-1)~(x-5)
【0031】
【化2】
[式中hは0又は1である。R
1はそれぞれ独立して前記フッ素化炭化水素構造部位(F)、脂肪族炭化水素基、アルコキシ基、ハロゲン原子、アリール基、アリールオキシ基、アラルキル基の何れかであり、iは0又は1~4の整数である。Zはビニル基、ハロメチル基、ヒドロキシメチル基、アルキルオキシメチル基の何れかである。Yは炭素原子数1~4のアルキレン基、酸素原子、硫黄原子、カルボニル基の何れかである。jは1~4の整数である。]
の何れかで表される化合物(x)とを必須の反応原料とする反応生成物等が挙げられる。
【0032】
前記各種の芳香族ポリヒドロキシ化合物は、例えば、ジヒドロキシベンゼン、トリヒドロキシベンゼン、テトラヒドロキシベンゼン、ジヒドロキシナフタレン、トリヒドロキシナフタレン、テトラヒドロキシナフタレン、ジヒドロキシアントラセン、トリヒドロキシアントラセン、テトラヒドロキシアントラセン、ポリヒドロキシビフェニル、ポリ(ヒドロキシフェニル)アルカン、その他のビスフェノール化合物等の他、これら化合物の炭素原子上に一つ乃至複数の置換基を有する化合物等が挙げられる。炭素原子上の置換基は前記フッ素化炭化水素構造部位(F)、脂肪族炭化水素基、アルコキシ基、ハロゲン原子、アリール基、アリールオキシ基、アラルキル基等が挙げられ、其々の具体例は前述の通りである。
【0033】
前記構造式(x-1)~(x-5)中のR1について、前記フッ素化炭化水素構造部位(F)、脂肪族炭化水素基、アルコキシ基、ハロゲン原子、アリール基、アリールオキシ基、アラルキル基の具体例は前述の通りである。また、前記芳香族モノヒドロキシ化合物(a1)と前記化合物(x)との反応は、酸触媒条件下、80~180℃程度の温度条件下で加熱撹拌する方法により行うことができる。
【0034】
前記分子構造中にフェノール性水酸基を2つ以上有する化合物(a3)はそれぞれ単独で用いても良いし、2種類以上を併用しても良い。中でも、硬化物における誘電特性や銅箔密着性の他、耐熱性等の諸性能にも優れる活性エステル化合物となることから、下記構造式(3)で表されるビス(ヒドロキシフェニル)フッ素化アルカンが好ましい。
【0035】
【化3】
[式中R
2はそれぞれ独立してフッ素化脂肪族炭化水素基である。R
3は前記フッ素化炭化水素構造部位(F)、脂肪族炭化水素基、アルコキシ基、ハロゲン原子、アリール基、アリールオキシ基、アラルキル基の何れかであり、nは0又は1~4の整数である。]
【0036】
前記構造式(1)中のR2について、脂肪族炭化水素基は直鎖型及び分岐型のいずれでもよく、構造中に不飽和結合を有していてもよい。中でも炭素原子数1~6のアルキル基であることがこのましい。
【0037】
前記芳香族モノカルボン酸又はその酸ハロゲン化物(a4)は、例えば、安息香酸やハロゲン化ベンゾイル、これら化合物の炭素原子上に一つ乃至複数の置換基を有する化合物等が挙げられる。炭素原子上の置換基は前記フッ素化炭化水素構造部位(F)、脂肪族炭化水素基、アルコキシ基、ハロゲン原子、アリール基、アリールオキシ基、アラルキル基等が挙げられ、其々の具体例は前述の通りである。これらはそれぞれ単独で用いても良いし、2種類以上を併用しても良い。
【0038】
これらの活性エステル化合物は、例えば、アルカリ触媒の存在下、40~65℃程度の温度条件下で各反応原料を混合撹拌する方法により製造することができる。反応は必要に応じて有機溶媒中で行っても良い。また、反応終了後は水洗や再沈殿等により反応生成物を精製しても良い。
【0039】
前記アルカリ触媒は、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、トリエチルアミン、ピリジン等が挙げられる。これらはそれぞれ単独で用いても良いし、2種類以上を併用しても良い。また、3.0~30%程度の水溶液として用いても良い。中でも、触媒能の高い水酸化ナトリウム又は水酸化カリウムが好ましい。
【0040】
前記有機溶媒は、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン溶媒、酢酸エチル、酢酸ブチル、セロソルブアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、カルビトールアセテート等の酢酸エステル溶媒、セロソルブ、ブチルカルビトール等のカルビトール溶媒、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素溶媒、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドン等が挙げられる。これらはそれぞれ単独で用いても良いし、2種類以上の混合溶媒としても良い。
【0041】
各反応原料の反応割合は得られる活性エステル化合物の所望の物性等に応じて適宜調整されるが、特に好ましくは以下の通りである。
【0042】
前記活性エステル化合物(A1)の製造において、前記芳香族モノヒドロキシ化合物(a1)と前記芳香族ポリカルボン酸又はその酸ハロゲン化物(a2)との反応割合は、目的の活性エステル化合物(A1)を高収率で得られることから、前記芳香族ポリカルボン酸又はその酸ハロゲン化物(a2)が有するカルボキシル基又は酸ハライド基の合計1モルに対し、前記芳香族モノヒドロキシ化合物(a1)が0.95~1.05モルとなる割合であることが好ましい。
【0043】
前記活性エステル化合物(A2)の製造において、前記分子構造中にフェノール性水酸基を2つ以上有する化合物(a3)と前記芳香族モノカルボン酸又はその酸ハロゲン化物(a4)とのエステル化物との反応割合は、目的の活性エステル化合物(A2)を高収率で得られることから、前記分子構造中にフェノール性水酸基を2つ以上有する化合物(a3)が有するフェノール性水酸基の合計1モルに対し、前記芳香族モノカルボン酸又はその酸ハロゲン化物(a4)が0.95~1.05モルとなる割合であることが好ましい。
【0044】
前記活性エステル化合物(A3)の製造において、前記芳香族モノヒドロキシ化合物(a1)、前記芳香族ポリカルボン酸又はその酸ハロゲン化物(a2)及び前記分子構造中にフェノール性水酸基を2つ以上有する化合物(a3)の反応割合は、前記芳香族モノヒドロキシ化合物(a1)が有する水酸基のモル数と前記分子構造中にフェノール性水酸基を2つ以上有する化合物(a3)が有する水酸基のモル数との割合が10/90~75/25となる割合であることが好ましく、20/80~60/40となる割合であることがより好ましい。また、前記芳香族ポリカルボン酸又はその酸ハロゲン化物(a2)が有するカルボキシル基又は酸ハライド基の合計1モルに対し、前記芳香族モノヒドロキシ化合物(a1)と前記分子構造中にフェノール性水酸基を2つ以上有する化合物(a3)とが有する水酸基の合計が0.9~1.1モルの範囲であることが好ましい。
【0045】
前記活性エステル化合物(A4)の製造において、前記芳香族ポリカルボン酸又はその酸ハロゲン化物(a2)、前記分子構造中にフェノール性水酸基を2つ以上有する化合物(a3)及び前記芳香族モノカルボン酸又はその酸ハロゲン化物(a4)の反応割合は、前記芳香族モノカルボン酸又はその酸ハロゲン化物(a4)が有するカルボキシル基又は酸ハライド基の合計1モルに対し、前記芳香族ポリカルボン酸又はその酸ハロゲン化物(a2)が有するカルボキシル基又は酸ハライド基の合計との割合が0.5~5モルの範囲であることが好ましく、0.8~3モルの範囲であることがより好ましい。また、前記分子構造中にフェノール性水酸基を2つ以上有する化合物(a3)が有する水酸基1モルに対し、前記芳香族ポリカルボン酸又はその酸ハロゲン化物(a2)と前記芳香族モノカルボン酸又はその酸ハロゲン化物(a4)とが有するカルボキシル基又は酸ハライド基の合計が0.9~1.1の範囲であることが好ましい。
【0046】
前記活性エステル化合物(A1)及び(A2)は、150℃における溶融粘度が0.01~5dPa・sの範囲であることが好ましい。なお、本発明において150℃における溶融粘度はASTM D4287に準拠し、ICI粘度計にて測定した値である。
【0047】
前記活性エステル化合物(A3)及び(A4)は、JIS K7234に基づいて測定される軟化点が40~200℃の範囲であることが好ましく、50~180℃の範囲であることがより好ましい。また、その官能基当量は、硬化性や硬化物における諸性能のバランスに優れることから150~350g/当量の範囲であることが好ましい。なお、本発明において活性エステル化合物中の官能基とは、活性エステル化合物中のエステル結合部位とフェノール性水酸基とのことを言う。また、活性エステル化合物の官能基当量は、反応原料の仕込み量から算出される値である。
【0048】
本発明の活性エステル化合物は、硬化物における誘電特性や銅箔密着性、その他諸性能のバランスに優れる活性エステル化合物となることから、酸価及び水酸基価が10mgKOH/g以下であることが好ましく、5mgKOH/g以下であることがより好ましい。
【0049】
本発明の活性エステル化合物は、硬化物における誘電特性や銅箔密着性、その他諸性能のバランスに優れる活性エステル化合物となることから、酸価及び水酸基価が10mgKOH/g以下であることが好ましく、5mgKOH/g以下であることがより好ましい。
【0050】
本発明の活性エステル化合物中のフッ素原子含有量は、硬化物における誘電特性や銅箔密着性、その他諸性能のバランスに優れる活性エステル化合物となることから5~40質量%の範囲であることが好ましく、10~30質量%の範囲であることがより好ましい。このフッ素原子含有量は、樹脂設計時の原料種、その割合から算出されるものではあるが、燃焼イオンクロマトグラフィーによって実測することもできる。本発明では後者の実測値において、前記範囲であることが好ましい。
【0051】
本発明の活性エステル化合物は、フッ素化炭化水素構造部位(F)を有さない活性エステル化合物と併用して用いてもよい。この場合、両者の合計中のフッ素原子含有量が5~40質量%の範囲であることが好ましく、10~30質量%の範囲であることがより好ましい。
【0052】
本発明の硬化性組成物は、前記活性エステル化合物と硬化剤とを含有する。前記硬化剤は本発明の活性エステル化合物と反応し得る化合物であれば良く、特に限定なく様々な化合物が利用できる。硬化剤の一例としては、例えば、エポキシ樹脂が挙げられる。前記エポキシ樹脂は、例えば、前記分子構造中にフェノール性水酸基を2つ以上有する化合物(a3)のポリグリシジルエーテル等が挙げられる。
【0053】
本発明の硬化性組成物において活性エステル化合物と硬化剤との配合割合は特に限定なく、所望の硬化物性能等に応じて適宜調整することができる。硬化剤としてエポキシ樹脂を用いる場合の配合の一例としては、エポキシ樹脂中のエポキシ基の合計1モルに対して、前記活性エステル化合物中の官能基の合計が0.7~1.5モルとなる割合であることが好ましい。
【0054】
硬化剤としてエポキシ樹脂を用いる場合には、本発明の活性エステル化合物の他、通常一般的にエポキシ樹脂の硬化剤として用いられるフェノール樹脂やアミン化合物、酸無水物等を併用してもよい。これらを用いる場合の配合割合は特に限定されないが、本発明の活性エステル化合物を含むエポキシ樹脂硬化剤中のフッ素原子含有量が5~40質量%の範囲であることが好ましく、10~30質量%の範囲であることがより好ましい。
【0055】
本発明の硬化性組成物は、更に硬化促進剤を含有しても良い。前記硬化促進剤は、例えば、リン系化合物、第3級アミン、イミダゾール化合物、ピリジン化合物、有機酸金属塩、ルイス酸、アミン錯塩等が挙げられる。中でも、硬化性、耐熱性、誘電特性、耐吸湿性等に優れる点から、リン系化合物ではトリフェニルホスフィン、第3級アミンでは1,8-ジアザビシクロ-[5.4.0]-ウンデセン(DBU)、イミダゾール化合物では2-エチル-4-メチルイミダゾール、ピリジン化合物では4-ジメチルアミノピリジン、2-フェニルイミダゾールが好ましい。これら硬化促進剤の添加量は、硬化性組成物100質量部中0.01~15質量%の範囲であることが好ましい。
【0056】
本発明の硬化性組成物は、更にその他の樹脂成分を含有しても良い。その他の樹脂成分は、例えば、前記前記分子構造中にフェノール性水酸基を2つ以上有する化合物(a3)等のフェノール性水酸基含有化合物;ジアミノジフェニルメタン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、ジアミノジフェニルスルホン、イソホロンジアミン、イミダゾ-ル、BF3-アミン錯体、グアニジン誘導体等のアミン化合物;ジシアンジアミド、リノレン酸の2量体とエチレンジアミンとより合成されるポリアミド樹脂等のアミド化合物;ベンゾオキサジン化合物;シアン酸エステル樹脂;ビスマレイミド樹脂;スチレン-無水マレイン酸樹脂;ジアリルビスフェノールやトリアリルイソシアヌレートに代表されるアリル基含有樹脂;ポリリン酸エステルやリン酸エステル-カーボネート共重合体;テトラフルオロエチレン、トリフルオロプロペン、ヘキサフルオロプロピレン等のフルオロアルキレン化合物を必須のモノマー成分とする重合体であるポリ(フルオロアルキレン)樹脂等が挙げられる。これらはそれぞれ単独で用いても良いし、2種類以上を併用しても良い。中でも、硬化物における誘電特性及び銅箔密着性に一層優れる硬化性組成物となることから、前記ポリ(フルオロアルキレン)樹脂が好ましい。
【0057】
これらその他の樹脂成分の配合割合は特に限定なく、所望の硬化物性能等に応じて適宜調整することができる。配合割合の一例としては、本発明の硬化性組成物の樹脂固形分に対し1~50質量%の範囲で用いることが好ましい。なお、硬化性組成物の樹脂固形分とは、硬化性組成物の溶剤を除く成分のことをいう。
【0058】
本発明の硬化性組成物は必要に応じて難燃剤、無機質充填材、シランカップリング剤、離型剤、顔料、乳化剤等の各種添加剤を含有しても良い。
【0059】
前記難燃剤は、例えば、赤リン、リン酸一アンモニウム、リン酸二アンモニウム、リン酸三アンモニウム、ポリリン酸アンモニウム等のリン酸アンモニウム、リン酸アミド等の無機リン化合物;リン酸エステル化合物、ホスホン酸化合物、ホスフィン酸化合物、ホスフィンオキシド化合物、ホスホラン化合物、有機系含窒素リン化合物、9,10-ジヒドロ-9-オキサ-10-ホスファフェナントレン-10-オキシド、10-(2,5―ジヒドロオキシフェニル)―10H-9-オキサ-10-ホスファフェナントレン-10-オキシド、10―(2,7-ジヒドロオキシナフチル)-10H-9-オキサ-10-ホスファフェナントレン-10-オキシド等の環状有機リン化合物、及びそれをエポキシ樹脂やフェノール樹脂等の化合物と反応させた誘導体等の有機リン化合物;トリアジン化合物、シアヌル酸化合物、イソシアヌル酸化合物、フェノチアジン等の窒素系難燃剤;シリコーンオイル、シリコーンゴム、シリコーン樹脂等のシリコーン系難燃剤;金属水酸化物、金属酸化物、金属炭酸塩化合物、金属粉、ホウ素化合物、低融点ガラス等の無機難燃剤等が挙げられる。これら難燃剤を用いる場合は、硬化性組成物中0.1~20質量%の範囲であることが好ましい。
【0060】
前記無機質充填材は、例えば、本発明の硬化性組成物を半導体封止材料用途に用いる場合などに配合される。前記無機質充填材は、例えば、溶融シリカ、結晶シリカ、アルミナ、窒化珪素、水酸化アルミ等が挙げられる。中でも、無機質充填材をより多く配合することが可能となることから、前記溶融シリカが好ましい。前記溶融シリカは破砕状、球状のいずれでも使用可能であるが、溶融シリカの配合量を高め、且つ、硬化性組成物の溶融粘度の上昇を抑制するためには、球状のものを主に用いることが好ましい。更に、球状シリカの配合量を高めるためには、球状シリカの粒度分布を適当に調整することが好ましい。その充填率は硬化性組成物100質量部中、0.5~95質量部の範囲で配合することが好ましい。
【0061】
この他、本発明の硬化性組成物を導電ペーストなどの用途に使用する場合は、銀粉や銅粉等の導電性充填剤を用いることができる。
【0062】
本発明の活性エステル化合物及びこれを用いた硬化性組成物は、硬化性が高く、誘電特性や耐熱性、耐吸湿性等の硬化物諸物性に優れる特徴を有する。この他、汎用有機溶剤への溶解性や保存安定性等、樹脂材料に求められる一般的な要求性能も十分に高いものである。したがって、半導体封止材料やプリント配線基板、レジスト材料等の電子材料用途の他、塗料や接着剤、成型品等の用途にも広く利用することができる。
【0063】
本発明の硬化性組成物を半導体封止材料用途に用いる場合、一般には無機質充填材を配合することが好ましい。半導体封止材料は、例えば、押出機、ニーダー、ロール等を用いて配合物を混合して調製することができる。得られた半導体封止材料を用いて半導体パッケージを成型する方法は、例えば、該半導体封止材料を注型或いはトランスファー成形機、射出成型機などを用いて成形し、更に50~200℃の温度条件下で2~10時間加熱する方法が挙げられ、このような方法により、成形物である半導体装置を得ることが出来る。
【0064】
本発明の硬化性組成物をプリント配線基板用途やビルドアップ接着フィルム用途に用いる場合、一般には有機溶剤を配合して希釈して用いることが好ましい。前記有機溶剤は、メチルエチルケトン、アセトン、ジメチルホルムアミド、メチルイソブチルケトン、メトキシプロパノール、シクロヘキサノン、メチルセロソルブ、エチルジグリコールアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等が挙げられる。有機溶剤の種類や配合量は硬化性組成物の使用環境に応じて適宜調整できるが、例えば、プリント配線板用途では、メチルエチルケトン、アセトン、ジメチルホルムアミド等の沸点が160℃以下の極性溶剤であることが好ましく、不揮発分が40~80質量%となる割合で使用することが好ましい。ビルドアップ接着フィルム用途では、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン溶剤、酢酸エチル、酢酸ブチル、セロソルブアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、カルビトールアセテート等の酢酸エステル溶剤、セロソルブ、ブチルカルビトール等のカルビトール溶剤、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素溶剤、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドン等を用いることが好ましく、不揮発分が30~60質量%となる割合で使用することが好ましい。
【0065】
また、本発明の硬化性組成物を用いてプリント配線基板を製造する方法は、例えば、硬化性組成物を補強基材に含浸し硬化させてプリプレグを得、これと銅箔とを重ねて加熱圧着させる方法が挙げられる。前記補強基材は、紙、ガラス布、ガラス不織布、アラミド紙、アラミド布、ガラスマット、ガラスロービング布などが挙げられる。硬化性組成物の含浸量は特に限定されないが、通常、プリプレグ中の樹脂分が20~60質量%となるように調製することが好ましい。
【実施例】
【0066】
次に本発明を実施例、比較例により具体的に説明する。実施例中の「部」及び「%」の記載は、特に断わりのない限り質量基準である。
【0067】
本実施例におけるGPC測定条件は以下の通りである。
測定装置 :東ソー株式会社製「HLC-8220 GPC」、
カラム:東ソー株式会社製ガードカラム「HXL-L」
+東ソー株式会社製「TSK-GEL G2000HXL」
+東ソー株式会社製「TSK-GEL G2000HXL」
+東ソー株式会社製「TSK-GEL G3000HXL」
+東ソー株式会社製「TSK-GEL G4000HXL」
検出器: RI(示差屈折計)
データ処理:東ソー株式会社製「GPC-8020モデルIIバージョン4.10」
測定条件: カラム温度 40℃
展開溶媒 テトラヒドロフラン
流速 1.0ml/分
標準 : 前記「GPC-8020モデルIIバージョン4.10」の測定マニュアルに準拠して、分子量が既知の下記の単分散ポリスチレンを用いた。
(使用ポリスチレン)
東ソー株式会社製「A-500」
東ソー株式会社製「A-1000」
東ソー株式会社製「A-2500」
東ソー株式会社製「A-5000」
東ソー株式会社製「F-1」
東ソー株式会社製「F-2」
東ソー株式会社製「F-4」
東ソー株式会社製「F-10」
東ソー株式会社製「F-20」
東ソー株式会社製「F-40」
東ソー株式会社製「F-80」
東ソー株式会社製「F-128」
試料 : 樹脂固形分換算で1.0質量%のテトラヒドロフラン溶液をマイクロフィルターでろ過したもの(50μl)
【0068】
実施例1 活性エステル化合物(1)の製造
温度計、滴下ロート、冷却管、分留管、撹拌器を取り付けたフラスコに、1-ナフトール144g、ビスフェノールAF168g、イソフタル酸クロリド203g及びトルエン1500gを仕込み、系内を減圧窒素置換しながら溶解させた。テトラブチルアンモニウムブロマイド0.7gを溶解させ、窒素ガスパージを施しながら、系内を60℃以下に制御して、20%水酸化ナトリウム水溶液412gを3時間かけて滴下した。滴下終了後、更に1時間撹拌を続けた。反応混合物を静置して分液し、水層を取り除いた。残った有機層に水440gを加えて約15分間撹拌混合した後、静置して分液し、水層を取り除いた。水層のpHが7になるまでこの操作を繰り返した後、加熱減圧条件下で乾燥させて活性エステル化合物(1)340gを得た。活性エステル化合物(1)の官能基当量は221g/当量、フッ素原子含有量は12.9質量%、JIS K7234に基づいて測定した軟化点は121℃であった。活性エステル化合物(1)のGPCチャートを
図1に示す。
【0069】
実施例2 活性エステル化合物(2)の製造
温度計、滴下ロート、冷却管、分留管、撹拌器を取り付けたフラスコに、1-ナフトール86g、ビスフェノールAF202g、イソフタル酸クロリド182g及びトルエン1200gを仕込み、系内を減圧窒素置換しながら溶解させた。テトラブチルアンモニウムブロマイド0.6gを溶解させ、窒素ガスパージを施しながら、系内を60℃以下に制御して、20%水酸化ナトリウム水溶液371gを3時間かけて滴下した。滴下終了後、更に1時間撹拌を続けた。反応混合物を静置して分液し、水層を取り除いた。残った有機層に水400gを加えて約15分間撹拌混合した後、静置して分液し、水層を取り除いた。水層のpHが7になるまでこの操作を繰り返した後、加熱減圧条件下で乾燥させて活性エステル化合物(2)400gを得た。活性エステル化合物(2)の官能基当量は225g/当量、フッ素原子含有量は16.9質量%、JIS K7234に基づいて測定した軟化点は140℃であった。活性エステル化合物(2)のGPCチャートを
図2に示す。
【0070】
実施例3 活性エステル化合物(3)の製造
温度計、滴下ロート、冷却管、分留管、撹拌器を取り付けたフラスコに、ビスフェノールAF168g、塩化ベンゾイル141g及びトルエン800gを仕込み、系内を減圧窒素置換しながら溶解させた。テトラブチルアンモニウムブロマイド0.4gを溶解させ、窒素ガスパージを施しながら、系内を60℃以下に制御して、20%水酸化ナトリウム水溶液206gを3時間かけて滴下した。滴下終了後、更に1時間撹拌を続けた。反応混合物を静置して分液し、水層を取り除いた。残った有機層に水270gを加えて約15分間撹拌混合した後、静置して分液し、水層を取り除いた。水層のpHが7になるまでこの操作を繰り返した後、加熱減圧条件下で乾燥させて活性エステル化合物(3)270gを得た。活性エステル化合物(3)の官能基当量は272g/当量、フッ素原子含有量は20.9質量%、JIS K7234に基づいて測定した軟化点は61℃であった。活性エステル化合物(3)のGPCチャートを
図3に示す。
【0071】
実施例4 活性エステル化合物(4)の製造
温度計、滴下ロート、冷却管、分留管、撹拌器を取り付けたフラスコに、ビスフェノールAF182g、イソフタル酸クロリド73g塩化ベンゾイル51g及びトルエン800gを仕込み、系内を減圧窒素置換しながら溶解させた。テトラブチルアンモニウムブロマイド0.4gを溶解させ、窒素ガスパージを施しながら、系内を60℃以下に制御して、20%水酸化ナトリウム水溶液223gを3時間かけて滴下した。滴下終了後、更に1時間撹拌を続けた。反応混合物を静置して分液し、水層を取り除いた。残った有機層に水270gを加えて約15分間撹拌混合した後、静置して分液し、水層を取り除いた。水層のpHが7になるまでこの操作を繰り返した後、加熱減圧条件下で乾燥させて活性エステル化合物(4)265gを得た。活性エステル化合物(4)の官能基当量は246g/当量、フッ素原子含有量は23.2質量%、JIS K7234に基づいて測定した軟化点は145℃であった。活性エステル化合物(4)のGPCチャートを
図4に示す。
【0072】
製造例1 活性エステル化合物(5)の製造
温度計、滴下ロート、冷却管、分留管、撹拌器を取り付けたフラスコに、1-ナフトール72g、ジシクロペンタジエン付加型フェノール樹脂(JFEケミカル製「J-DPP-85」、軟化点86℃、水酸基当量:165g/当量)165g、イソフタル酸クロリド152g及びトルエン1000gを仕込み、系内を減圧窒素置換し溶解させた。テトラブチルアンモニウムブロマイド0.5gを溶解させ、窒素ガスパージを施しながら、系内を60℃以下に制御して、20%水酸化ナトリウム水溶液310gを3時間かけて滴下した。滴下終了後、更に1時間撹拌を続けた。反応混合物を静置して分液し、水層を取り除いた。残った有機層に水330gを加えて約15分間撹拌混合した後、静置して分液し、水層を取り除いた。水層のpHが7になるまでこの操作を繰り返した後、加熱減圧条件下で乾燥させて活性エステル化合物(5)330gを得た。活性エステル化合物(5)の官能基当量は223g/当量、JIS K7234に基づいて測定した軟化点は150℃であった。
【0073】
この他、本願実施例及び比較例で用いた各化合物は以下の通り。
・エポキシ樹脂:DIC株式会社製「HP-7200H」、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、エポキシ基当量は275g/当量
・ポリテトラフルオロエチレン分散液:三菱鉛筆株式会社製「MPT-M11」、ポリテトラフルオロエチレンのメチルエチルケトン分散液、不揮発分30質量%
【0074】
実施例5~8及び比較例1
下記要領で硬化性組成物を調整し、各種評価試験を行った。結果を表1に示す。
【0075】
硬化性組成物の製造
下記、表1記載の配合に従い、エポキシ樹脂および活性エステル化合物を配合し、メチルエチルケトンを加えて溶解させた。次いで、硬化性組成物の樹脂固形分に対するポリテトラフルオロエチレン量が10質量%になるように前記ポリテトラフルオロエチレン分散液を配合した。更に、硬化性組成物の樹脂固形分に対し0.2質量%のジメチルアミノピリジンを加え、メチルエチルケトンで不揮発分を58質量%に調整して、硬化性組成物を得た。得られた硬化性組成物について、下記要領で各種評価試験を行った。結果を表1に示す。
【0076】
硬化性組成物の保存安定性
硬化性組成物を製造した直後から室温(25℃)条件下に放置し、ポリテトラフルオロエチレンの凝集が観測されるまでの時間を測定した。
【0077】
積層板の作成
下記条件で積層板を作成した。
基材:日東紡績株式会社製ガラスクロス「#2116」(210×280mm)
銅箔:JX日鉱日石金属株式会社製「JTC箔」(18μm)
プライ数:6
プリプレグ化条件:160℃
硬化条件:200℃、2.0MPaで1.5時間
成型後板厚:0.8mm
【0078】
ガラス転移温度(Tg)の測定
先で得た積層板の銅箔をエッチングにより除去した後、幅5mm、長さ55mmのサイズに切り出し、これを試験片として、粘弾性測定装置(エスアイアイ・ナノテクノロジー株式会社製「DMS-6100」)を用い、レクタンギュラーテンション法、周波数1Hz、昇温速度3℃/分の測定条件で、弾性率変化が最大となる(tanδ変化率が最も大きい)温度をガラス転移温度として評価した。
【0079】
誘電率及び誘電正接の測定
先で得た積層板の銅箔をエッチングにより除去した後、幅1.5mm、長さ100mmのサイズに切り出し、これを試験片とした。
加熱真空乾燥後、23℃、湿度50%の室内に24時間保管した試験片について、JIS-C-6481に準拠し、アジレント・テクノロジー株式会社製インピーダンス・マテリアル・アナライザ「HP4291B」を用い、1GHzでの誘電率および誘電正接を測定した。
【0080】
銅箔密着性の評価
積層板から幅10mm、長さ200mmのサイズに切り出した試験片について、JIS-6911に準拠し、銅箔との密着性を測定した。
【0081】