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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-29
(45)【発行日】2024-06-06
(54)【発明の名称】衛生陶器用の摩擦抵抗低減剤
(51)【国際特許分類】
   C09K 3/00 20060101AFI20240530BHJP
   B08B 17/02 20060101ALI20240530BHJP
   C11D 1/66 20060101ALI20240530BHJP
   E03D 9/02 20060101ALI20240530BHJP
【FI】
C09K3/00 Q
C09K3/00 R
B08B17/02
C11D1/66
E03D9/02
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2022183393
(22)【出願日】2022-11-16
(62)【分割の表示】P 2018105063の分割
【原出願日】2018-05-31
(65)【公開番号】P2023027080
(43)【公開日】2023-03-01
【審査請求日】2022-12-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000186588
【氏名又は名称】小林製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100124431
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 順也
(74)【代理人】
【識別番号】100174160
【弁理士】
【氏名又は名称】水谷 馨也
(74)【代理人】
【識別番号】100175651
【弁理士】
【氏名又は名称】迫田 恭子
(72)【発明者】
【氏名】田之畑 大二郎
(72)【発明者】
【氏名】森 悟
【審査官】黒川 美陶
(56)【参考文献】
【文献】特開昭50-010789(JP,A)
【文献】特開2001-329294(JP,A)
【文献】特開昭58-215497(JP,A)
【文献】特開2014-156611(JP,A)
【文献】国際公開第2015/075902(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C11D
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ノニオン性界面活性剤を含有し、
下記(1)~(4)の操作を行った後に、衛生陶器の薄板片の表面の平均摩擦係数(MIU)が1.25以下になる、トルネード式水洗トイレ用の摩擦抵抗低減剤(但し、泡洗式便所に使用されるものを除く)。
[操作]
(1)界面活性剤の濃度が14ppmとなるように摩擦抵抗低減剤を水に希釈した摩擦抵抗低減剤希釈液を準備する。また、平均摩擦係数(MIU)が1.40である衛生陶器の薄板片(1cm×5cm、厚み0.5cm)をアセトンで洗浄して自然乾燥したものを準備する。
(2)衛生陶器の薄板片を、摩擦抵抗低減剤希釈液に10秒間浸漬した後に取り出す。
(3)摩擦抵抗低減剤希釈液から取り出した状態で衛生陶器の薄板片を50秒間保持する。
(4)前記(2)及び(3)の操作を合計12回繰り返し行う。
【請求項2】
カチオン性界面活性剤を含有する、請求項1に記載の摩擦抵抗低減剤。
【請求項3】
前記(1)~(4)の操作を行った後に、衛生陶器の薄板片の表面の水接触角が65~100°になる、請求項2に記載の摩擦抵抗低減剤。
【請求項4】
ノニオン性界面活性剤、及びカチオン性界面活性剤を含有し、
下記(1)~(4)の操作を行った後に、衛生陶器の薄板片の表面の平均摩擦係数(MIU)が1.25以下になり、衛生陶器の薄板片の表面の水接触角が65~100°になる、衛生陶器用の摩擦抵抗低減剤(但し、泡洗式便所に使用されるものを除く)。
[操作]
(1)界面活性剤の濃度が14ppmとなるように摩擦抵抗低減剤を水に希釈した摩擦抵抗低減剤希釈液を準備する。また、平均摩擦係数(MIU)が1.40である衛生陶器の薄板片(1cm×5cm、厚み0.5cm)をアセトンで洗浄して自然乾燥したものを準備する。
(2)衛生陶器の薄板片を、摩擦抵抗低減剤希釈液に10秒間浸漬した後に取り出す。
(3)摩擦抵抗低減剤希釈液から取り出した状態で衛生陶器の薄板片を50秒間保持する。
(4)前記(2)及び(3)の操作を合計12回繰り返し行う。
【請求項5】
前記ノニオン性界面活性剤は、下記一般式(1)で示される化合物(A)、下記一般式(2)で示される化合物(B)、及び下記一般式(3)で示される化合物(C)よりなる群から選択される少なくとも一種である、請求項1~4のいずれかに記載の摩擦抵抗低減剤。
[化1]
1 -O-[(EO) a /(PO) b ]-H (1)
[一般式(1)中、R 1 は炭素数8~11の直鎖状又は分岐状のアルキル基、EOはオキシエチレン基、POはオキシプロピレン基、aはEOの平均付加モル数で5≦a、bはPOの平均付加モル数で0≦b、[(EO) a /(PO) b ]はEOとPOのランダム付加又はブロック付加を示す。]
[化2]
2 -O-[(EO) c /(PO) d ]-H (2)
[一般式(2)中、R 2 は炭素数12~14の直鎖状又は分岐状のアルキル基、EOはオキシエチレン基、POはオキシプロピレン基、cはEOの平均付加モル数で1≦c、dはPOの平均付加モル数で1≦d、[(EO) c /(PO) d ]はEOとPOのランダム付加又はブロック付加を示す。]
[化3]
H-O-[(EO) e /(BO) f /(PO) g /(BO) h /(EO) i ]-H (3)
[一般式(3)中、EOはオキシエチレン基、BOはオキシブチレン基、POはオキシプロピレン基、e、iはEOの平均付加モル数で1≦e、1≦i、f、hはBOの平均付加モル数で1≦f、1≦h、gはPOの平均付加モル数で1≦g、[(EO) e /(BO) f /(PO) g /(BO) h /(EO) i ]はEOとBOとPOのランダム付加又はブロック付加を示す。]
【請求項6】
前記カチオン性界面活性剤は、塩化ジデシルジメチルアンモニウム、及びジデシルジメチルアンモニウムメチルサルフェートからなる群より選択される少なくとも1種である、請求項2~5のいずれかに記載の摩擦抵抗低減剤。
【請求項7】
前記カチオン性界面活性剤の含有量は、前記ノニオン性界面活性剤1重量部に対して0.01~5重量部である、請求項2~6のいずれかに記載の摩擦抵抗低減剤。
【請求項8】
アニオン性界面活性剤を含有する、請求項1~7のいずれかに記載の摩擦抵抗低減剤。
【請求項9】
トイレ便器表面への便付着の防止用途に使用される、請求項1~のいずれかに記載の摩擦抵抗低減剤。
【請求項10】
請求項1~のいずれかに記載の摩擦抵抗低減剤の希釈液をトルネード式水洗トイレ表面又は衛生陶器表面に流水する、トルネード式水洗トイレ表面又は衛生陶器表面の摩擦抵抗を低減する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、衛生陶器用の摩擦抵抗低減剤に関する。具体的には、便器等の衛生陶器の表面の摩擦抵抗を低減させて、汚れの付着を抑制し得る、衛生陶器用の摩擦抵抗低減剤に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、容易に便器等の衛生陶器の表面を清浄に保ち、美観を高く保つ観点から、種々の洗浄剤が開発され使用されている。例えば、水洗トイレの場合、フラッシュ時に、フラッシュ水と混合して便器内に流れることにより、便器内を洗浄し得る水洗トイレ用洗浄剤が知られている(特許文献1)。このような洗浄剤は、高い洗浄力を有し、使用が容易であるため広く利用されている。
【0003】
また、第4級アンモニウム塩型界面活性剤等のカチオン性界面活性剤は、除菌作用があり、黒ずみ等の微生物由来の汚れを防ぐ目的で衛生陶器用の洗浄剤に配合されている。
【0004】
一方、衛生陶器の表面が撥水性になると、汚れが付着し易くなることが知られており、衛生陶器用の洗浄剤は、衛生陶器の表面の水接触角を小さくして、高い親水性を付与できるように設計されていることが望ましい。しかしながら、カチオン性界面活性剤は、除菌作用を有する反面、衛生陶器の表面の水接触角を増大させて親水性を低下させる作用があり、カチオン性界面活性剤を含む洗浄剤では、衛生陶器の表面に汚れを付着させ易くするという欠点がある。
【0005】
そこで、衛生陶器の表面に付与される親水性の度合いに拘わらず、衛生陶器の表面への汚れの付着を防止できる製剤の開発が望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2000-273486号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来、衛生陶器の表面への汚れの付着性と、衛生陶器の表面の摩擦抵抗との関連性については知られていない。このような状況の下、本発明者は、鋭意検討を行ったところ、衛生陶器の表面への汚れの付着性と衛生陶器の表面の摩擦抵抗とは相関があり、当該摩擦抵抗が小さい程、衛生陶器の表面に汚れが付着し難くなるという新たな知見を得た。
【0008】
そこで、本発明の目的の一つは、衛生陶器の表面の摩擦抵抗を低減させて、汚れの付着を抑制し得る衛生陶器用の摩擦抵抗低減剤を提供することである。また、本発明の他の目的は、カチオン性界面活性剤を含んでいながらも、衛生陶器の表面の摩擦抵抗を低減させることにより、衛生陶器の表面への汚れの付着を防止できる衛生陶器用の摩擦抵抗低減剤を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、前記課題を解決するために鋭意研究を行ったところ、少なくともノニオン性界面活性剤を含有し、以下の操作条件で、衛生陶器の薄板片の表面の平均摩擦係数(MIU)を1.25以下にできる摩擦抵抗低減剤は、衛生陶器の表面への汚れの付着を効果的に抑制できることを見出した。
[操作]
(1)界面活性剤の濃度が14ppmとなるように摩擦抵抗低減剤を水に希釈した摩擦抵抗低減剤希釈液を準備する。また、平均摩擦係数(MIU)が1.40である衛生陶器の薄板片(1cm×5cm、厚み0.5cm)をアセトンで洗浄して自然乾燥したものを準備する。
(2)衛生陶器の薄板片を、摩擦抵抗低減剤希釈液に10秒間浸漬した後に取り出す。
(3)摩擦抵抗低減剤希釈液から取り出した状態で衛生陶器の薄板片を50秒間保持する。
(4)前記(2)及び(3)の操作を合計12回繰り返し行う。
【0010】
更に、前記の平均摩擦係数(MIU)を満たす摩擦抵抗低減剤は、カチオン性界面活性剤を含有し、前記操作条件で衛生陶器の薄板片の表面の水接触角が65°以上になる場合であっても、衛生陶器の表面に対する汚れ(特に、糞便等の脂質汚れ)の付着を効果的に防止できることを見出した。
【0011】
本発明は、これらの知見に基づいて更に検討を重ねることにより完成したものである。即ち、本発明は、下記に掲げる態様の発明を提供する。
項1. ノニオン性界面活性剤を含有し、
下記(1)~(4)の操作を行った後に、衛生陶器の薄板片の表面の平均摩擦係数(MIU)が1.25以下になる、衛生陶器用の摩擦抵抗低減剤。
[操作]
(1)界面活性剤の濃度が14ppmとなるように摩擦抵抗低減剤を水に希釈した摩擦抵抗低減剤希釈液を準備する。また、平均摩擦係数(MIU)が1.40である衛生陶器の薄板片(1cm×5cm、厚み0.5cm)をアセトンで洗浄して自然乾燥したものを準備する。
(2)衛生陶器の薄板片を、摩擦抵抗低減剤希釈液に10秒間浸漬した後に取り出す。
(3)摩擦抵抗低減剤希釈液から取り出した状態で衛生陶器の薄板片を50秒間保持する。
(4)前記(2)及び(3)の操作を合計12回繰り返し行う。
項2. カチオン性界面活性剤を含有する、項1に記載の摩擦抵抗低減剤。
項3. アニオン性界面活性剤を含有する、項1に記載の摩擦抵抗低減剤。
項4. 前記(1)~(4)の操作を行った後に、衛生陶器の薄板片の表面の水接触角が65°以上になる、項2に記載の摩擦抵抗低減剤。
項5. ノニオン性界面活性剤が、界面活性剤総量100重量部に対して3~100重量部である、項1~4のいずれかに記載の摩擦抵抗低減剤。
項6. トイレ便器表面への便付着の防止用途に使用される、項1~5のいずれかに記載の摩擦抵抗低減剤。
項7. 項1~6のいずれかに記載の摩擦抵抗低減剤の希釈液を衛生陶器表面に流水する、衛生陶器表面の摩擦抵抗を低減する方法。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、便器等の衛生陶器の表面の摩擦抵抗を低減させることにより、当該表面への汚れの付着を効果的に防止することができる。
【0013】
また、本発明の一態様によれば、カチオン性界面活性剤を含有することにより衛生陶器表面の水接触角が大きくなっても、衛生陶器の表面の摩擦抵抗の低減によって汚れの付着を効果的に防止できるので、衛生陶器表面への汚れの付着防止作用と共に、カチオン性界面活性剤に基づく除菌作用を効果的に発揮させることもできる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
1.摩擦低減剤
本発明の衛生陶器用の摩擦低減剤は、ノニオン性界面活性剤を含有し、下記(1)~(4)の操作を行った後に、衛生陶器の薄板片の表面の平均摩擦係数(MIU)が1.25以下になることを特徴とする。以下、本発明の摩擦低減剤について詳述する。
[操作]
(1)界面活性剤の濃度が14ppmとなるように摩擦抵抗低減剤を水に希釈した摩擦抵抗低減剤希釈液を準備する。また、平均摩擦係数(MIU)が1.40である衛生陶器の薄板片(1cm×5cm、厚み0.5cm)をアセトンで洗浄して自然乾燥したものを準備する。
(2)衛生陶器の薄板片を、摩擦抵抗低減剤希釈液に10秒間浸漬した後に取り出す。
(3)摩擦抵抗低減剤希釈液から取り出した状態で衛生陶器の薄板片を50秒間保持する。
(4)前記(2)及び(3)の操作を合計12回繰り返し行う。
【0015】
[界面活性剤]
ノニオン性界面活性剤
本発明の摩擦低減剤は、界面活性剤として、少なくともノニオン性界面活性剤を含む。ノニオン性界面活性剤を含むことにより、便器等の衛生陶器の表面の摩擦抵抗を低減させることができる。
【0016】
本発明において使用するノニオン性界面活性剤は、後述する摩擦抵抗性を備えさせ得ることを限度として特に制限されず、公知のノニオン性界面活性剤を使用することができる。ノニオン性界面活性剤としては、具体的には、モノステアリン酸グリセリル、自己乳化型モノステアリン酸グリセリル、モノイソステアリン酸グリセリル等のグリセリン脂肪酸エステル;モノステアリン酸POEグリセリル、モノオレイン酸POEグリセリル等のポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル;モノステアリン酸ジグリセリル、トリステアリン酸テトラグリセリル、ペンタステアリン酸デカグリセリル等のポリグリセリン脂肪酸エステル;モノラウリン酸ソルビタン、セスキステアリン酸ソルビタン、モノオレイン酸ソルビタン等のソルビタン脂肪酸エステル;モノヤシ脂肪酸POEソルビタン、トリステアリン酸POEソルビタン、トリオレイン酸POEソルビタン等のポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル;モノラウリン酸POEソルビット、テトラオレイン酸POEソルビット等のポリオキシエチレンソルビット脂肪酸エステル;モノラウリン酸ポリエチレングリコール、モノステアリン酸ポリエチレングリコール、モノオレイン酸ポリエチレングリコール、ジステアリン酸ポリエチレングリコール等のポリエチレングリコール脂肪酸エステル;プロピレングリコールモノラウリン酸エステル、プロピレングリコールモノミリスチン酸エステル等のアルキレングリコールモノ脂肪酸エステル類;グリセリンモノドデシルエーテル、グリセリンモノセチルエーテル、グリセリンモノステアリルエーテル、ペンタエリスリトールモノドデシルエーテル等のアルキル多価アルコールエーテル;ポリオキシエチレンアルキルエーテル(ラウリルエーテル、POEセチルエーテル、POEステアリルエーテル等)、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル(POE・POPセチルエーテル、POE・POPデシルテトラデシルエーテル等)等のポリオキシアルキレンアルキルエーテル;ポリオキシアルキレンブロックポリマー;POEノニルフェニルエーテル、POEオクチルフェニルエーテル、POE分鎖オクチルフェニルエーテル等のポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル;POEステアリルアミン、POEオレイルアミン等のポリオキシエチレンアルキルアミン;ヤシ脂肪酸ジエタノールアミド、ラウリン酸ジエタノールアミド、パーム核油脂肪酸ジエタノールアミド等の脂肪酸アルカノールアミド;ラウリン酸メチルグルカミド、ヤシ脂肪酸メチルグルカミド等のアシルメチルグルカミド;その他アセチレングリコール、POEアセチレングリコール、POEラノリン、POEラノリンアルコール、POEヒマシ油、POE硬化ヒマシ油、POEフィトステロール、POEコレスタノール、POEノニルフェニルホルムアルデヒド縮合物、アルキルポリグルコシド等が挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。なお、POEはポリオキシエチレンを示し、POPはポリオキシプロプレンを示す。
【0017】
これらのノニオン性界面活性剤の中でも、後述する摩擦抵抗性を好適に備えさせるという観点から、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンブロックコポリマーが好ましい。
【0018】
本発明において使用されるポリオキシアルキレンアルキルエーテルの好適な例としては、下記一般式(1)で示される化合物(A)、及び一般式(2)で示される化合物(B)が挙げられる。
【0019】
(化合物(A))
1-O-[(EO)a/(PO)b]-H (1)
[一般式(1)中、R1は炭素数8~11の直鎖状又は分岐状のアルキル基、EOはオキシエチレン基、POはオキシプロピレン基、aはEOの平均付加モル数で5≦a、bはPOの平均付加モル数で0≦b、[(EO)a/(PO)b]はEOとPOのランダム付加又はブロック付加を示す。]
【0020】
一般式(1)中、R1は、炭素数8~11の直鎖状又は分岐状のアルキル基を示す。R1として、好ましくは炭素数9~10の直鎖状又は分岐状のアルキル基、更に好ましくは炭素数10の直鎖状又は分岐状のアルキル基、特に好ましくは炭素数10の分岐状のアルキル基、特に好ましくはイソデシル基が挙げられる。
【0021】
また、一般式(1)中、EOはオキシエチレン基を示す。また、aはEOの平均付加モル数を示し、a≧5である。EOの平均付加モル数aは、好ましくは5≦a≦30、更に好ましくは5≦a≦15が挙げられる。
【0022】
また、一般式(1)中、POはオキシプロピレン基を示す。また、bはPOの平均付加モル数を示し、0≦bである。POの平均付加モル数bは、好ましくは0≦b≦15、更に好ましくは0≦b≦10が挙げられる。
【0023】
また、一般式(1)中、[(EO)a/(PO)b]は、EOとPOのランダム付加又はブロック付加を示す。
【0024】
化合物(A)のHLB値としては、好ましくは14.3以下、より好ましくは12.0~14.3、更に好ましくは12.8~13.9が挙げられる。なお、本明細書において、(A)成分のHLB値は、グリフィン法によって算出される値である。
【0025】
化合物(A)に該当するポリオキシアルキレンアルキルエーテル型非イオン性界面活性剤については、例えば、「FINESURF D-1305」、「FINESURF D-1307」、「FINESURF NDB-1000」、「FINESURF D-65」、「FINESURF D-85」、「ワンダサーフ ID-1033」、「セフティカット ID-1055」、「セフティカット ID-1061」、「ワンダサーフ ID-90」(以上、青木油脂工業株式会社製)、「ナロアクティー ID70」(三洋化成工業株式会社製)、「ノイゲン LF-60X」、「ノイゲン LF-80X」、「ノイゲン SD-70」、「ノイゲン SD-80」(以上、第一工業製薬株式会社製)等が市販されており、本発明では、これらの市販品を使用することもできる。
【0026】
(化合物(B))
2-O-[(EO)c/(PO)d]-H (2)
[一般式(2)中、R2は炭素数12~14の直鎖状又は分岐状のアルキル基、EOはオキシエチレン基、POはオキシプロピレン基、cはEOの平均付加モル数で1≦c、dはPOの平均付加モル数で1≦d、[(EO)c/(PO)d]はEOとPOのランダム付加又はブロック付加を示す。]
【0027】
一般式(2)中、R2は、炭素数12~14の直鎖状又は分岐状のアルキル基を示す。R2として、好ましくは炭素数12~13の直鎖状又は分岐状のアルキル基が挙げられる。
【0028】
また、一般式(2)中、EOはオキシエチレン基を示す。また、cはEOの平均付加モル数を示し、1≦cである。EOの平均付加モル数cは、好ましくは1≦c≦30、更に好ましくは5≦c≦25が挙げられる。
【0029】
また、一般式(2)中、POはオキシプロピレン基を示す。また、dはPOの平均付加モル数を示し、1≦dである。POの平均付加モル数dは、好ましくは1≦d≦15、更に好ましくは1≦d≦10が挙げられる。
【0030】
また、一般式(2)中、[(EO)c/(PO)d]は、EOとPOのランダム付加又はブロック付加を示す。
【0031】
化合物(B)に該当するポリオキシアルキレンアルキルエーテル型非イオン性界面活性剤については、例えば、「サンノニック FN140」(三洋化成工業株式会社製)、「ワンダサーフ 140」、「ワンダサーフ S-1400」(以上、青木油脂工業株式会社製)、「ノイゲン TDX-120D」(第一工業製薬株式会社製)等が市販されており、本発明では、これらの市販品を使用することもできる。
【0032】
本発明において使用されるポリオキシアルキレンブロックコポリマーの好適な例としては、下記一般式(2)で示される化合物(C)が挙げられる。
【0033】
(化合物(C))
H-O-[(EO)e/(BO)f/(PO)g/(BO)h/(EO)i]-H (3)
[一般式(3)中、EOはオキシエチレン基、BOはオキシブチレン基、POはオキシプロピレン基、e、iはEOの平均付加モル数で1≦e、1≦i、f、hはBOの平均付加モル数で1≦f、1≦h、gはPOの平均付加モル数で1≦g、[(EO)e/(BO)f/(PO)g/(BO)h/(EO)i]はEOとBOとPOのランダム付加又はブロック付加を示す。]
【0034】
一般式(3)中、EOはオキシエチレン基を示す。e、iはEOの平均付加モル数を示し、1≦e、1≦iである。
【0035】
また、一般式(3)中、BOはオキシブチレン基を示す。f、hはEOの平均付加モル数を示し、1≦f、1≦hである。
【0036】
また、一般式(3)中、POはオキシプロピレン基を示す。また、gはPOの平均付加モル数を示し、1≦gである。
【0037】
また、一般式(3)中、[(EO)e/(BO)f/(PO)g/(BO)h/(EO)i]は、EOとPOのランダム付加又はブロック付加を示す。
【0038】
本発明におけるノニオン性界面活性剤としては、後述する摩擦抵抗性を好適に備えさせ得るという観点から、好ましくは前記化合物(A)、化合物(B)、及び化合物(C)よりなる群から選択される少なくとも一種が挙げられる。
【0039】
本発明の摩擦抵抗低減剤におけるノニオン性界面活性剤の含有量は、使用するノニオン性界面活性剤の種類や衛生陶器の表面に適用される際の希釈倍率等に応じて後述する摩擦抵抗性を備えさせ得る範囲で適宜設定すればよいが、通常0.1~80重量%、好ましくは1~70重量%、より好ましくは2~60重量%が挙げられる。
【0040】
カチオン性界面活性剤
本発明の摩擦抵抗低減剤は、後述する摩擦抵抗性を充足させることを限度として、カチオン性界面活性剤を含んでいてもよい。カチオン性界面活性剤には除菌作用があり、本発明の摩擦抵抗低減剤にカチオン性界面活性剤を含有させることによって、黒ずみ等の微生物由来の汚れが衛生陶器表面に付着するのを抑制する効果を具備させることが可能になる。カチオン性界面活性剤は、衛生陶器表面の水接触角を大きくする作用があるため、従来技術では、カチオン性界面活性剤の配合は、却って汚れが付着し易くなる一因になっていたが、本発明の摩擦抵抗低減剤では、衛生陶器表面の水接触角が大きくなっても、後述する摩擦抵抗性を備えることによって、汚れの付着を効果的に抑制することが可能になっている。
【0041】
本発明で使用されるカチオン性界面活性剤の種類については、特に制限されないが、例えば、塩化セチルトリメチルアンモニウム、塩化ステアリルトリメチルアンモニウム、塩化ジステアリルトリメチルアンモニウム、塩化セチルピリジニウム、塩化アルキルジメチルベンジルアンモニウム、塩化ジデシルジメチルアンモニウム、塩化ベンゼトニウム、塩化ベンザルコニウム、ジデシルジメチルアンモニウムアジペート等の第4級アンモニウム塩型界面活性剤;ステアリン酸ジエチルアミノエチルアミドグルタミン酸塩、ラノリン脂肪酸ジエチルアミノエチルアミドグルタミン酸塩等のアミドアミン塩型カチオン性界面活性剤;ラウリン酸アミドグアニジン塩酸塩等が挙げられる。これらのカチオン性界面活性剤は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0042】
なかでも、除菌作用と汚れ付着防止作用とを好適に兼ね備えさせるという観点から、好ましくは、第4級アンモニウム塩型界面活性剤、更に好ましくは塩化ジデシルジメチルアンモニウム、ジデシルジメチルアンモニウムメチルサルフェートが挙げられる。また、このような第4級アンモニウム塩型界面活性剤を配合することによって、後述する水接触角特性を好適に充足させることもできる。
【0043】
本発明の摩擦抵抗低減剤にカチオン性界面活性剤を含有させる場合、その含有量は、後述する摩擦抵抗性を充足させることを限度として、使用するカチオン性界面活性剤の種類や衛生陶器の表面に適用される際の希釈倍率等に応じて適宜設定すればよいが、通常0.01~60重量%、好ましくは0.1~50量%、より好ましくは1~40重量%が挙げられる。
【0044】
本発明の摩擦抵抗低減剤にカチオン性界面活性剤を含有させる場合、ノニオン性界面活性剤とカチオン性界面活性剤の含有量比については、前述する両界面活性剤の含有量に応じて定まるが、例えば、ノニオン性界面活性剤1重量部に対してカチオン性界面活性剤が好ましくは0.01~5重量部、より好ましくは0.1~3重量部、更に好ましくは0.1~1重量部が挙げられる。
【0045】
他の界面活性剤
本発明の摩擦抵抗低減剤は、後述する摩擦抵抗性を充足させることを限度として、前記界面活性剤以外に更に他の界面活性剤を含んでいてもよい。他の界面活性剤としては、アニオン性界面活性剤、両イオン性界面活性剤が挙げられる。これらの中でも、好ましくはアニオン性界面活性剤が挙げられる。
【0046】
アニオン性界面活性剤としては、具体的には、セッケン用素地、ラウリン酸ナトリウム、パルミチン酸ナトリウム、ヤシカリセッケン等の脂肪酸塩;POEラウリルエーテルカルボン酸塩、POP・POEエーテルミリスチン酸塩;高級アルキル硫酸エステル塩(例えばラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸カリウム、ラウリル硫酸トリエタノールアミン等)等のアルキルエーテルカルボン酸塩;POEラウリル硫酸トリエタノールアミン、POEラウリル硫酸ナトリウム等のアルキルエーテル硫酸エステル塩;ラウロイルサルコシンナトリウム、ラウロイル-N-メチル-β-アラニンナトリウム、N-ラウロイルグルタミン酸モノナトリウム、N-ステアロイルグルタミン酸ジナトリウム、N-ミリストイル-L-グルタミン酸モノナトリウム、N-パルミトイルアスパラギン酸ジエタノールアミン等のN-アシルアミン酸塩;N-ミリストイル-N-メチルタウリンナトリウム、ヤシ脂肪酸メチルタウリンナトリウム、ラウロイルメチルタウリンナトリウム、POEラウリルアミドエーテルスルホン酸ナトリウム等の高級脂肪酸アミドスルホン酸塩;POEオレイルエーテルリン酸ナトリウム、POEステアリルエーテルリン酸、POEラウリルアミドエーテルリン酸ナトリウム等のリン酸エステル塩;ジ-2-エチルヘキシルスルホコハク酸ナトリウム、モノラウロイルモノエタノールアミドポリオキシエチレンスルホコハク酸ナトリウム、ラウリルポリプロピレングリコールスルホコハク酸ナトリウム等のスルホコハク酸塩;リニアドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、リニアドデシルベンゼンスルホン酸トリエタノールアミン、リニアドデシルベンゼンスルホン酸等のアルキルベンゼンスルホン酸塩;硬化ヤシ油脂肪酸グリセリン硫酸ナトリウム、ロート油などの硫酸化油、α-オレフィンスルホン酸塩、高級脂肪酸エステルスルホン酸塩、二級アルコール硫酸エステル塩等の高級脂肪酸エステル硫酸エステル塩;ラウロイルモノエタノールアミドコハク酸ナトリウム、及びカゼインナトリウム等の高級脂肪酸アルキロールアミド硫酸エステル塩;アルキル硫酸エステル塩、ポリオキシエチレンアルキル硫酸エステル塩、脂肪酸アミドエーテル硫酸エステル塩、アシルイセチオン酸塩、スルホコハク酸塩等の硫酸エステル塩型またはスルホン酸塩型界面活性剤;エーテルカルボン酸塩、脂肪酸アミドエーテルカルボン酸塩、N-アシルイミノジ酢酸、N-アシルアミノ酸塩等のカルボン酸型界面活性剤等が挙げられる。これらのアニオン性界面活性剤は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0047】
これらのアニオン性界面活性剤の中でも、後述する摩擦抵抗性を充足させるという観点から、好ましくは高級脂肪酸エステル硫酸エステル塩、更に好ましくはα-オレフィンスルホン酸塩が挙げられる。α-オレフィンスルホン酸塩としては、具体的には下記一般式(4)で示される化合物(D)が挙げられる。
(化合物(D))
n2n3SNa、Cn2n+14SNa (4)
[一般式(4)中、nは12~18の整数である。]
【0048】
一般式(4)中、nとしては、好ましくは12~14の整数が挙げられる。
【0049】
また、両性界面活性剤としては、ヤシ油脂肪酸アミドプロピルジメチルアミノ酢酸ベタイン、ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン、ラウリン酸アミドプロピルベタイン、2-アルキル-N-カルボキシメチル-N-ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン、ラウリルヒドロキシスルホベタイン等のベタイン型両性界面活性剤;β-ラウリルアミノプロピオン酸ナトリウム、ラウリルジアミノエチルグリシンナトリウム等のアミノ酸型両性界面活性剤;デシルジメチルアミンオキシド、ラウリルジメチルアミンオキシド等のアミンオキシド型両性界面活性剤等が挙げられる。これらの両性界面活性剤は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0050】
これらの界面活性剤は1種単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0051】
本発明の摩擦抵抗低減剤にアニオン性界面活性剤を含有させる場合、その含有量は、後述する摩擦抵抗性を充足させることを限度として、使用するアニオン性界面活性剤の種類や衛生陶器の表面に適用される際の希釈倍率等に応じて適宜設定すればよいが、通常0.1~70重量%、好ましくは1~60量%、より好ましくは1~50重量%が挙げられる。
【0052】
本発明の摩擦抵抗低減剤にアニオン性界面活性剤を含有させる場合、ノニオン性界面活性剤とアニオン性界面活性剤の含有量比については、前述する両界面活性剤の含有量に応じて定まるが、例えば、ノニオン性界面活性剤1重量部に対してアニオン性界面活性剤が好ましくは0.01~5重量部、より好ましくは0.1~3重量部、更に好ましくは0.1~1重量部が挙げられる。
【0053】
また、本発明の摩擦抵抗低減剤に両性界面活性剤を含有させる場合、その含有量は、後述する摩擦抵抗性を充足させることを限度として、使用する両性界面活性剤の種類や衛生陶器の表面に適用される際の希釈倍率等に応じて適宜設定すればよいが、通常0.01~50重量%、好ましくは0.1~40量%、より好ましくは1~30重量%が挙げられる。
【0054】
本発明の摩擦抵抗低減剤に両性界面活性剤を含有させる場合、ノニオン性界面活性剤と両性界面活性剤の含有量比については、前述する両界面活性剤の含有量に応じて定まるが、例えば、ノニオン性界面活性剤1重量部に対して両性界面活性剤が好ましくは0.01~3重量部、より好ましくは0.01~1重量部、更に好ましくは0.01~0.5重量部が挙げられる。
【0055】
界面活性剤の総含有量等
本発明の摩擦抵抗低減剤において、界面活性剤の総含有量(界面活性剤の全含有量)としては、使用する界面活性剤の種類や組み合わせ、前述する各界面活性剤の含有量等に応じて定まるが、例えば、0.1~80重量%、好ましくは1~70重量%、より好ましくは2~60重量%が挙げられる。
【0056】
本発明の摩擦抵抗低減剤において、界面活性剤全量に対するノニオン性界面活性剤の比率としては、使用する界面活性剤の種類や組み合わせ、前述する各界面活性剤の含有量等に応じて定まるが、後述する摩擦抵抗性を好適に充足させるという観点から、含有する界面活性剤の総量100重量部当たり、ノニオン性界面活性剤が、3~100重量部、好ましくは30~100重量部、より好ましくは50~100重量部が挙げられる。
【0057】
[その他の成分]
本発明の摩擦抵抗低減剤は、前述した界面活性剤以外に、必要に応じて他の成分を含んでいてもよい。
【0058】
(香料)
本発明の摩擦抵抗低減剤剤は、後述する摩擦抵抗性を充足できる限り、更に香料成分を含んでいてもよい。香料成分を含むことにより、トイレ等、本発明の摩擦低減剤を使用する空間に所望の香気を付与することができる。
【0059】
本発明の摩擦抵抗低減剤に含ませる香料成分としては、水洗トイレ用等の洗浄剤組成物に通常使用される香料であれば、特に制限されず、配合される香料成分は備えさせる香気に応じて適宜選択すればよい。本発明において使用される香料成分としては、例えば、天然香料の他、炭化水素系香料、エーテル系香料、エステル系香料、アルコール系香料、アルデヒド系香料、ケトン系香料等の合成香料が挙げられる。
【0060】
具体的には、天然香料としては、例えば、レモン油、オレンジ油、ベルガモット油、イランイラン油、パチュリ油、シトロネラ油、レモングラス油、ボアドローズ油、チョウジ油、ユーカリ油、セダー油、ラベンダー油、ビャクダン油、ベチバー油、ゼラニウム油、ラブダナム油、ミント油、ペパーミント油、ローズ油、ジャスミン油、リッツアキュベバ油等が挙げられる。また、炭化水素系香料としては、例えば、リモネン、α-ピネン、カンフェン、p-サイメン、フェンチェン等が挙げられる。また、エーテル系香料としては、例えば、テトラヒドロ-2,4-ジメチル-4-フェニルフラン、1,8-シネオール、ローズオキサイド、セドロールメチルエーテル(セドランバー)、p-クレジルメチルエーテル、イソアミルフエェニルエチルエーテル、4-フェニル-2,4,6-トリメチル-1,3-ジオキサン、アネトール等が挙げられる。また、エステル系香料としては、例えば、ゲラニルアセテート、エチルアセテート、エチルプロピオネート、メチルブチレート、エチルイソブチレート、エチルブチレート、ブチルアセテート、エチル2-メチルブチレート、イソアミルアセテート、エチル2-メチルペンタノエート(マンザネート)、ヘキシルアセテート、アリルヘキサノエート、トリシクロデセニルプロピオネート(VERTOPRO;フロロシクレン)、アリルヘプタノエート、イソボルニルアセテート、リナリルアセテート、シトロネリルアセテート、2-ter-ブチルシクロヘキシルアセテート(ナルシドール)等が挙げられる。また、アルコール系香料としては、例えば、リナノール、3-オクタノール、2,6-ジメチル-ヘプタノール、10-ウンデセノール、ゲラニオール、ネロール、シトロネロール、ロジノール、ミルセノール、テトラヒドロリナロール、ターピネオール、セドロール、2,4-ジメチル-3-シクロヘキサン-1-メタノール、4-イソプロピルシクロヘキサノール、ネロリドール、9-デセノール、シス-3-ヘキセノール、トランス-2-ヘキセノール、オイゲノール等が挙げられる。また、アルデヒド系香料としては、例えば、シトロネラール、オクタナール、パラアルデハイド、ベンズアルデヒド、アルデヒドC-6、アルデヒドC-7、 アルデヒドC-8、アルデヒドC-9、アルデヒドC-10、トリプラール、p-エチルジメチルヒドロシンナミックアルデヒド(フローラゾン)、2-トリデセナール、アルデヒドC11等が挙げられる。また、ケトン系香料としては、例えば、1-(5,5-ジメチル-1-シクロヘキセン-1-イル)-4-ペンテン-1-オン、アセトイン、メチルアミルケトン、エチルアミルケトン、メチルヘキシルケトン、メチルノニルケトン、メチルヘプテノン、コアボン、カンファー、カルボン、メントン、d-プレゴン、ピペリトン、フェンチョン、ゲラニルアセトン、マルトール、エチルマルトール、2,5-ジメチル-4-ヒドロキシフラノン、プリカトン、アセトフェノン、p-メチルアセトフェノン、ベンジルアセトン、ベンジルケトン等が挙げられる。
【0061】
これらの香料成分は、単品香料として1種単独で使用してもよく、また調合香料として2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0062】
本発明の摩擦抵抗低減剤において、香料成分の含有量については、後述する摩擦抵抗性を充足できることを限度として特に制限されず、香料成分の種類や備えさせる香気の強さ等に応じて適宜設定すればよいが、例えば0.1~20重量%、好ましくは1~15重量%、更に好ましくは2~15重量%が挙げられる。
【0063】
(基剤)
本発明の摩擦抵抗低減剤は、その形態、用途等に応じて、水、溶剤等の基剤を含んでいてもよい。溶剤の種類については、特に制限されないが、例えば、エタノール、プロパノール、ブタノール等の1価の低級アルコール;エチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、グリセリン等の多価アルコール等が挙げられる。基剤の含有量は、後述する摩擦抵抗性を充足できることを限度として特に制限されず、基剤の種類等に応じて適宜設計することができるが、例えば、水の場合、20~99.9重量%、好ましくは30~99重量%、より好ましくは40~98重量%が挙げられる。
【0064】
また、本発明の摩擦抵抗低減剤には、後述する摩擦抵抗性を充足できる限り、更に必要に応じて、酵素、殺菌剤、キレート剤、着色剤、顔料、消臭剤、油性成分の乳化可溶化剤、増量剤、溶解性調整剤、漂白剤、撥水剤、親水剤、充填剤、pH調整剤、増粘剤、成形性向上剤、滑沢剤、緩衝剤、白濁化剤、消泡剤等の添加剤を適量含むことができる。
【0065】
[形態]
本発明の摩擦抵抗低減剤は、固形状、ゲル状、半固形状、又は液状のいずれの形態であってもよく、用途に応じて適宜設定すればよい。
【0066】
[摩擦抵抗性]
本発明の摩擦抵抗低減剤では、下記(1)~(4)の操作を行った後に衛生陶器の薄板片の表面の平均摩擦係数(MIU)が1.25以下になることを特徴とする。
[操作]
(1)界面活性剤の濃度が14ppmとなるように摩擦抵抗低減剤を水に希釈した摩擦抵抗低減剤希釈液を準備する。また、平均摩擦係数(MIU)が1.40である衛生陶器の薄板片(1cm×5cm、厚み0.5cm)をアセトンで洗浄して自然乾燥したものを準備する。
(2)衛生陶器の薄板片を、摩擦抵抗低減剤希釈液に10秒間浸漬した後に取り出す。
(3)摩擦抵抗低減剤希釈液から取り出した状態で衛生陶器の薄板片を50秒間保持する。
(4)前記(2)及び(3)の操作を合計12回繰り返し行う。
【0067】
本発明の表面平滑剤は、前記(1)~(4)の操作を行うと、衛生陶器の表面の平均摩擦係数(MIU)が1.25以下になる特性を有していることに基づいて、衛生陶器の表面への汚れの付着を防止することが可能になっている。汚れの付着防止効果をより一層高めるという観点から、前記平均摩擦係数(MIU)として、好ましくは1.20以下、更に好ましくは1.15以下、特に好ましくは1.10以下が挙げられる。また、前記平均摩擦係数(MIU)の下限値については、特に制限されないが、例えば0.01以上、好ましくは0.1以上、更に好ましくは0.5以上が挙げられる。
【0068】
本発明において、平均摩擦係数(MIU)は、摩擦感テスターKES-SE(カトーテック株式会社製)を使用して、10mm角シリコンセンサーを用い、センサー重量25g、速度1mm/秒に設定して求められる値である。
【0069】
平均摩擦係数(MIU)を測定するための前記(1)~(4)の操作について説明する。
【0070】
(1)の操作では、摩擦抵抗低減剤を、摩擦抵抗低減剤に含まれる界面活性剤の合計濃度(全ての界面活性剤の合計濃度)が14ppmとなるように水で希釈し、希釈液を準備する。希釈に使用する水としては、特に制限されず、蒸留水、イオン交換水、純水のいずれであってもよいが、好ましくは蒸留水が挙げられる。
【0071】
また、(1)の操作では、平均摩擦係数(MIU)が1.40である衛生陶器の薄板片を準備する。衛生陶器の薄板片とは、衛生陶器に使用される陶器製の表面を有する薄板片である。衛生陶器とは、便器、洗面台、浴槽、ビデ等の衛生的な設備に用いられる陶器製の器具である。(1)の操作で準備する衛生陶器の薄板片(1cm×5cm、厚み0.5cm)としては、アセトン洗浄後の表面の平均摩擦係数(MIU)が1.40であればよいが、具体的には、陶器タイル(KYタイル P4-100、日本テストパネル株式会社製)を使用することができる。
【0072】
(2)の操作では、衛生陶器の薄板片を、摩擦抵抗低減剤希釈液に10秒間浸漬した後に取り出す。(2)の操作では、前記衛生陶器の薄板片を、前記(1)の操作で準備した摩擦抵抗低減剤希釈液に、例えば前記薄板片の表面が水平面に対して略70°になる状態で、10秒間浸漬した後、取り出せばよい。(2)の操作時の摩擦抵抗低減剤希釈液の温度は、測定値に影響を与えないと考えられるため、特に制限されないが、25℃程度が好ましい。
【0073】
(3)の操作では、取り出した衛生陶器の薄板片を大気中で50秒間保持することによって乾燥させる。(2)の操作時の温度は、測定値に影響を与えないと考えられるため、特に制限されないが、25℃程度が好ましい。
【0074】
(4)の操作では、前記(2)と(3)の操作を1サイクルとして、合計12サイクル行う。
【0075】
そして、(4)の操作完了後に、衛生陶器の薄板片の表面を十分に乾かした後に、当該表面の平均摩擦係数(MIU)を測定する。
【0076】
[水接触角特性]
本発明の摩擦抵抗低減剤の一態様として、ノニオン性界面活性剤と共にカチオン性界面活性剤を含み、前記平均摩擦係数(MIU)の測定の場合と同様の(1)~(4)の操作を行った後に、衛生陶器の薄板片の表面の水接触角が65°以上になるものが挙げられる。本発明の摩擦抵抗低減剤では、このようにカチオン性界面活性剤を含み、水接触角が大きくなっても、前述する摩擦抵抗低性を具備することによって、衛生陶器表面への汚れ(特に糞便)の付着を効果的に抑制することができる。
【0077】
本発明の摩擦抵抗低減剤がカチオン性界面活性剤を含む場合の好適な態様として、前記(1)~(4)の操作の後の衛生陶器の薄板片の表面の水接触角として、好ましくは65~100°、より好ましくは70~95°、更に好ましくは70~90°が挙げられる。
【0078】
前記水接触角は、前記平均摩擦係数(MIU)の測定の場合と同様の(1)~(4)の操作を行った後に、衛生陶器の薄板片の表面を十分に乾かした状態にして測定される。本発明において、水接触角は、液滴法を利用した接触角計を用いて測定される値である。
【0079】
[使用形態]
本発明の摩擦抵抗低減剤は、衛生陶器用であり、衛生陶器の表面の摩擦抵抗を低減させて、汚れが付着するのを抑制し得るものである。衛生陶器としては、特に制限されず、陶製の便器、洗面器、浴槽、ビデ等が挙げられる。これらの中でも、本発明の摩擦抵抗低減剤は、便器表面への糞便の付着や黒ずみ発生の抑制等に優れているので、好ましくは便器に適用される。
【0080】
本発明の摩擦抵抗低減剤は、洗浄対象となる便器等の衛生容器にそのまま塗布してもよいし、また、例えば、本発明の摩擦抵抗低減剤を水洗トイレに使用する場合は、水洗トイレのフラッシュ時にフラッシュ水に希釈されて流れることにより便器に塗布されるのであってもよい。本発明の摩擦抵抗低減剤が、水洗トイレのフラッシュ水に希釈されて使用される場合、その希釈倍率については、特に制限されないが、例えば1万~100万倍程度、好ましくは2万~50万倍程度が挙げられる。
【0081】
本発明の摩擦抵抗低減剤をフラッシュ水に希釈して使用する場合は、水洗トイレのオンタンク用として使用してもよく、またリム部用として使用してもよい。オンタンク用は、水洗トイレの手洗い部の上に設置して使用されるものであって、摩擦抵抗低減剤が収容された容器に、手洗い部に供給された洗浄用のフラッシュ水と接触することにより、当該摩擦抵抗低減剤が容器から流出され、摩擦抵抗低減剤が溶け込んだフラッシュ水が便器内に放出されることによって、塗布される。また、リム部用では、水洗トイレのリム部に取り付けられて使用され、摩擦抵抗低減剤が収容された容器に、便器に放出されるフラッシュ水が接触することにより、当該摩擦抵抗低減剤が容器から流出され、摩擦抵抗低減剤が溶け込んだフラッシュ水が便器内に放出されることによって、塗布される。
【0082】
本発明の摩擦抵抗低減剤を水洗トイレに適用する場合は、洗い落し式、サイホン式、サイホンゼット式、ブローアウト式、サイホンボルテックス式、パワードライブ式、トルネード式(リム吐出口からフラッシュ水を勢いよく渦巻き状に噴出する渦巻き流洗浄方式)等、いずれの洗浄方式の便器であってもよい。トルネード式の便器では、リム吐出口からフラッシュ水を勢いよく渦巻き状に噴出するため、便器内でフラッシュ水の乱流が起こり易い傾向があるが、本発明の摩擦抵抗低減剤をトルネード式の水洗トイレに使用することによって便器表面の摩擦抵抗を効果的に抑制し、フラッシュ水の乱流を低減して、設定通りの方向にフラッシュ水を吐出させることが可能になる。このような本発明の効果を鑑みれば、本発明の摩擦抵抗低減剤の適用対象となる水洗トイレとして、トルネード式の水洗トイレが好適であるといえる。
【0083】
以上のように、本発明の摩擦低減剤は、衛生陶器の表面を平滑化し、汚れの付着を抑制することができる。
【0084】
2.衛生陶器表面の摩擦低減方法
本発明の衛生陶器表面の摩擦低減方法は、前述の摩擦抵抗低減剤の希釈液を衛生陶器表面に流水することを特徴とする。
【0085】
前述の摩擦抵抗低減剤の希釈液を衛生陶器の表面に流水することにより、衛生陶器表面の摩擦抵抗を低減することができ、それによって衛生陶器の表面への汚れの付着を防止することができる。
【0086】
本発明の摩擦低減方法において、使用される摩擦低減剤、その希釈液、当該希釈液を流水させる方法、適用対象となる衛生陶器等については、前述の「1.摩擦低減剤」の欄に記載の通りである。
【実施例
【0087】
次に、本発明を実施例により、更に詳細に説明するが、本発明は、これらの例によってなんら限定されるものではない。
【0088】
試験例1
1.摩擦抵抗低減剤の調製
表1に示す組成となるように、各成分を混合して摩擦抵抗低減剤を調製した。
【表1】
【0089】
2.陶器タイルの表面の摩擦抵抗及び水接触角の評価
衛生陶器の薄板片として、1cm×5cm、厚み0.5cmの陶器タイル(KYタイルP4-100、日本テストパネル株式会社製)をアセトンで洗浄して自然乾燥したものを準備した。
【0090】
前記で調製した摩擦抵抗低減剤を、前記摩擦抵抗低減剤に含まれる界面活性剤の合計量が14ppmの濃度となるように蒸留水で適宜希釈して希釈液を調製した。この希釈液(25℃)中に、前記陶器タイルを、陶器表面が水平面に対して略70°になるような状態で10秒間浸漬した後、希釈液から引き上げて25℃で50秒間保持して乾燥させるのを1サイクルとし、計12サイクルの浸漬と乾燥を行った。その後、完全に表面が乾燥していることを確認し(一昼夜放置)、平均摩擦係数(MIU)及び水接触角を測定した。また、前記陶器タイルについて、前記操作を行わず、未処理の状態の表面の平均摩擦係数(MIU)及び水接触角についても求めた。
【0091】
平均摩擦係数(MIU)は、摩擦感テスターKES-SE(カトーテック株式会社製)を使用して、10mm角シリコンセンサーを用い、センサー重量25g、速度1mm/秒に設定した。合計20回(即ち、シリコンセンサーの移動回数が20回)の測定による平均値を算出した。
【0092】
水接触角は、衛生陶器の薄板片の表面に蒸留水を着滴させたときの水滴の接触角を接触角計(協和界面化学社製:DropMaster500、測定解析統合ソフト:FAMAS、水滴量:6μl、測定待ち時間:1000ms)を用いて測定した。
【0093】
結果を表2に示す。この結果、摩擦低減剤(実施例1)は、前記操作によって衛生陶器の表面の平均摩擦係数(MIU)を1.25以下にまで低減できていることが確認された。また、摩擦低減剤(実施例1)は、カチオン性界面活性剤(αオレフィンスルホン酸ナトリウム)を含んでいるため、前記操作によって衛生陶器の表面の水接触角は65°以上の高い値になっていた。
【0094】
【表2】
【0095】
試験例2
摩擦低減剤(実施例1)を、オンタンク用トイレ洗浄剤用の容器に収容し、以下の実使用試験を実施した。なお、当該容器は、オンタンク用トイレ洗浄剤用として一般的に使用されているものであり、前記摩擦低減剤を収容した容器は、水洗トイレの貯水タンクの上の手洗い部に設置され、フラッシュ後に水が供給されると、供給水によって7万倍程度に希釈されて、フラッシュ水として貯水タンクに貯留されるように構成されている。
【0096】
<実使用試験>
一般家庭の水洗トイレにて、摩擦低減剤(実施例1)を設置していない状態で、30日間、便器に大便が付着した回数を計測した。大便の付着回数の計測している間は、大便の付着が認められる度に磨き掃除を行った。次いで、大便の付着が認められた家庭を対象にして、水洗トイレの貯水タンクの上の手洗い部に、オンタンク用トイレ洗浄剤用の容器に収容した摩擦低減剤(実施例1)を設置し、前記と同条件で30日間、便器に大便が付着した回数を計測した。
【0097】
<結果>
大便の付着が認められた家庭を対象にして、摩擦低減剤(実施例1)の設置前と、設置中の糞便付着回数の平均値を求めた結果を表3に示す。摩擦低減剤(実施例1)は、カチオン性界面活性剤を含み、便器表面の水接触角を高くする性質があるので、便器の表面に対して汚れが付着し易くなると予測されるにも拘わらず、糞便の付着回数が大幅に低減されていた。即ち、本結果から、試験例1で評価した平均摩擦係数(MIU)が1.25以下にまで低減できる摩擦低減剤は、便器の表面に付与できる親水性の程度に拘わらず、汚れの付着を効果的に防止できることが明らかとなった。
【0098】
【表3】