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特許7496439自動分析装置、位置調整用治具及び位置調整方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-29
(45)【発行日】2024-06-06
(54)【発明の名称】自動分析装置、位置調整用治具及び位置調整方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 35/10 20060101AFI20240530BHJP
   G01N 35/00 20060101ALI20240530BHJP
【FI】
G01N35/10 C
G01N35/00 E
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2022571059
(86)(22)【出願日】2021-09-28
(86)【国際出願番号】 JP2021035667
(87)【国際公開番号】W WO2022137695
(87)【国際公開日】2022-06-30
【審査請求日】2023-04-28
(31)【優先権主張番号】P 2020214595
(32)【優先日】2020-12-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】501387839
【氏名又は名称】株式会社日立ハイテク
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】福士 雄大
【審査官】北条 弥作子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2012/157642(WO,A1)
【文献】国際公開第2012/111366(WO,A1)
【文献】特開2015-087329(JP,A)
【文献】特開2016-061617(JP,A)
【文献】特開平11-160327(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0345894(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 35/00~35/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転時の軌跡上に配置された収容部に収容された容器内の流体の吸引又は当該容器への流体の吐出の少なくとも一方を行うノズルを水平面内で周方向に回転させる回転機構と、
前記ノズルの駆動により、前記収容部に収容された位置調整用治具の高さ方向の位置決めを行う高さ位置決め機構と、
前記位置調整用治具の高さ位置の決定後、前記位置調整用治具への側方からの前記ノズルの接触により、前記位置調整用治具を収容した前記収容部の周方向の位置決めを行う周方向位置決め機構と、
前記回転機構、前記高さ位置決め機構及び前記周方向位置決め機構を制御する演算制御装置と、を備える
ことを特徴とする自動分析装置。
【請求項2】
前記高さ位置決め機構は、前記ノズルの降下により検出した前記位置調整用治具の上端面と前記ノズルとの接触位置を検出することで、前記位置調整用治具の高さ位置を決定し、
前記周方向位置決め機構は、前記ノズルの下端を前記位置調整用治具の前記上端面よりも下方に配置した状態で前記ノズルを前記位置調整用治具の側方から前記位置調整用治具に近づける
ことを特徴とする請求項1に記載の自動分析装置。
【請求項3】
前記演算制御装置は、前記位置調整用治具から離れた所定位置と、前記位置調整用治具と接触する時の前記ノズルの存在位置との間の所定距離の設計値と、前記周方向位置決め機構による前記ノズルの移動時における前記所定距離に関する実測値との差分である調整値を計算する
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の自動分析装置。
【請求項4】
前記周方向位置決め機構は、前記周方向のうちの一方向から前記ノズルを前記位置調整用治具に近づけるとともに他方向からも前記ノズルを前記位置調整用治具に近づけ、
前記演算制御装置は、それぞれの方向から近づけたときのそれぞれの前記調整値を計算する
ことを特徴とする請求項3に記載の自動分析装置。
【請求項5】
前記演算制御装置は、前記一方向及び前記他方向のそれぞれから前記設計値に前記調整値を加減した距離だけ前記ノズルを移動後の前記ノズルの位置に基づき、前記ノズルの径方向位置の妥当性を判断する
ことを特徴とする請求項4に記載の自動分析装置。
【請求項6】
前記演算制御装置は、前記調整値が所定範囲に含まれているか否かを判断することで、前記ノズルの径方向位置の妥当性を判断する
ことを特徴とする請求項4に記載の自動分析装置。
【請求項7】
前記ノズルは高さ方向で外径が変化する形状を有し、
前記演算制御装置は、前記ノズルの前記位置調整用治具への高さ方向の接触位置に基づき、前記収容部の周方向の位置決めを行う
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の自動分析装置。
【請求項8】
前記ノズルは下方に窄まる形状を有するチップを備える
ことを特徴とする請求項7に記載の自動分析装置。
【請求項9】
前記ノズルの径方向位置、又は、前記ノズルを回転させる回転軸に対する前記ノズルの角度の少なくとも一方を調整する調整機構を備える
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の自動分析装置。
【請求項10】
前記収容部は、
何れも前記流体としての検体及び試薬を収容可能な前記容器としての反応容器を周方向に連続的に配置したインキュベータ、又は、
何れも前記流体としての検体、試薬、又は前記ノズルの洗浄液、の少なくとも何れか1つを収容した前記容器を保持するホルダ、
の少なくとも何れかに備えられる
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の自動分析装置。
【請求項11】
前記回転機構は、静電容量の変化によって前記ノズルへの接触を検出する検出機構を備え、
前記ノズルは、前記流体としての検体、試薬、又は前記ノズルの洗浄液、のうちの少なくとも1つを吸引及び吐出可能に構成されるとともに、少なくとも下端部は樹脂により構成され、
前記演算制御装置は、前記位置調整用治具への前記検出機構による検出感度を、前記流体の吸引時の検出感度よりも高くする
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の自動分析装置。
【請求項12】
自動分析装置において水平面内で回転可能なノズルによって吸引又吐出が行われる流体を入れた容器の収容部に収容可能であり、
前記収容部に収容したときに前記収容部の上方に突出し、前記ノズルの回転時の軌跡を示した調整用目印を上端面に備える
ことを特徴とする位置調整用治具。
【請求項13】
前記上端面に露出するコアと、
前記コアの外側に配置されるとともに前記上端面に露出し、前記コアとは体積又は誘電率の少なくとも一方が異なる表層部と、
前記コアと前記表層部とを絶縁する絶縁層とを備える
ことを特徴とする請求項12に記載の位置調整用治具。
【請求項14】
前記コアは、前記容器の中央部に対応する位置に配置される
ことを特徴とする請求項13に記載の位置調整用治具。
【請求項15】
前記調整用目印は、前記上端面に形成された凸部である
ことを特徴とする請求項13に記載の位置調整用治具。
【請求項16】
自動分析装置における回転時の軌跡上に配置された収容部に収容された容器内の流体の吸引又は当該容器への流体の吐出の少なくとも一方を行うとともに水平面内で回転可能なノズルの駆動により、前記収容部に収容された位置調整用治具の高さ方向の位置決めを行う高さ位置決めステップと、
前記位置調整用治具の高さ位置の決定後、前記位置調整用治具への側方からの前記ノズルの接触により、前記位置調整用治具を収容した前記収容部の周方向の位置決めを行う周方向位置決めステップとを含む、
ことを特徴とする位置調整方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は自動分析装置、位置調整用治具及び位置調整方法に関する。
【背景技術】
【0002】
臨床検査における生化学分析装置、免疫分析装置等の化学分析に用いられる自動分析装置では、検体及び試薬を分注するノズルを備えた分注機構を有する。ノズルは各停止位置に対して中心に停止するように調整されることが好ましい。ここで、特許文献1には、分注プローブの下方への移動を繰り返し行うことで、治具の傾斜面を検出する技術が記載されている(段落0088~0105、図10)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2007-285957号公報(要約書)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1によれば、位置決めに時間がかかる、という課題がある。
本開示が解決しようとする課題は、短時間で位置決め可能な自動分析装置、位置調整用治具及び位置調整方法の提供である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の自動分析装置は、回転時の軌跡上に配置された収容部に収容された容器内の流体の吸引又は当該容器への流体の吐出の少なくとも一方を行うノズルを水平面内で周方向に回転させる回転機構と、前記ノズルの駆動により、前記収容部に収容された位置調整用治具の高さ方向の位置決めを行う高さ位置決め機構と、前記位置調整用治具の高さ位置の決定後、前記位置調整用治具への側方からの前記ノズルの接触により、前記位置調整用治具を収容した前記収容部の周方向の位置決めを行う周方向位置決め機構と、前記回転機構、前記高さ位置決め機構及び前記周方向位置決め機構を制御する演算制御装置と、を備える。その他の解決手段は発明を実施するための形態において後記する。
【発明の効果】
【0006】
本開示によれば、短時間で位置決め可能な自動分析装置、位置調整用治具及び位置調整方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】自動分析装置の上面図。
図2】ノズルによる検体及び試薬の分注を説明する図。
図3A】径方向のノズルの位置合わせを説明する図(位置合わせ前を示す図)。
図3B】位置調整用治具の斜視図。
図3C】径方向のノズルの位置合わせを説明する図(位置合わせ後を示す図)。
図4A】別の実施形態に係る位置調整用治具の上面図。
図4B】別の実施形態に係る位置調整用治具の側面図。
図5】ノズルを位置調整用治具の上端面に接触させた様子を示す図。
図6A】一方向からの周方向位置合わせ時の上面図。
図6B】一方向からの周方向位置合わせ時の側面図。
図7A】他方向からの周方向位置合わせ時の上面図。
図7B】他方向からの周方向位置合わせ時の側面図。
図8】高さ方向で外径が変化する形状を有するノズルの高さ位置と、ノズルと位置調整用治具の中心との間の距離との関係を説明する図。
図9A】位置合わせが正しいとき及び誤っているときを説明する上面図(一方向から接触させたときの様子を示す図)。
図9B】位置合わせが正しいとき及び誤っているときを説明する上面図(他方向から接触させたときの様子を示す図)。
図10】自動調整方法を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照しながら本開示を実施するための形態(実施形態と称する)を説明する。以下の一の実施形態の説明の中で、適宜、一の実施形態に適用可能な別の実施形態の説明も行う。本開示は以下の一の実施形態に限られず、異なる実施形態同士を組み合わせたり、本開示の効果を著しく損なわない範囲で任意に変形したりできる。また、同じ部材については同じ符号を付すものとし、重複する説明は省略する。更に、同じ機能を有するものは同じ名称を付すものとする。図示の内容は、あくまで模式的なものであり、図示の都合上、本開示の効果を著しく損なわない範囲で実際の構成から変更したり、図面間で一部の部材の図示を省略したり変形したりすることがある。
【0009】
図1は、自動分析装置100の上面図である。自動分析装置100の搬送ラック101には、検体(サンプル)を保持する検体容器102が架設されており、検体容器102は、ラック搬送ライン117によって、ノズル203(図2)の近傍の分注位置まで移動される。ノズル203は、詳細は後記するが、反応容器105(容器の一例)内の反応液(流体の一例)の吸引又は反応容器105への検体及び試薬(流体の一例)の吐出の少なくとも一方を行うものである。
【0010】
インキュベータ(反応ディスク)104には複数の反応容器105が設置可能であり、インキュベータ104は、円周方向に設置された反応容器105をそれぞれ所定位置まで移動させるため、水平面内での回転可能である。搬送機構106は、X軸、Y軸及びZ軸の3方向に移動可能である。搬送機構106は、保持部材107、攪拌機構108、廃棄孔109、チップ119(図3A)の装着位置110及びインキュベータ104の所定箇所の範囲を移動し、チップ119及び反応容器105の搬送を行う。
【0011】
保持部材107には、未使用の反応容器105及びチップ119(図3A)が複数設置されている。搬送機構106は、保持部材107の上方に移動し、下降して未使用の反応容器105を把持した後上昇し、さらに、インキュベータ104の所定位置上方に移動し、下降して反応容器105を設置する。次いで、搬送機構106は、保持部材107の上方に移動し、下降して未使用のチップ119を把持した後、上昇し、装着位置110の上方に移動し、下降してチップ119を設置する。
【0012】
ノズル203(図2)は、水平面内での回転及び上下動可能であり、装着位置110の上方に回転した後、下降して、ノズル203の先端にチップ119を圧入して装着する。チップ119を装着したノズル203は、搬送ラック101に載置された検体容器102の上方に移動した後、下降して、検体容器102に保持された検体を所定量吸引する。検体を吸引したノズル203は、インキュベータ104の上方に移動した後、下降して、インキュベータ104に保持された未使用の反応容器105に、検体を吐出する。吐出が終了すると、ノズル203は、廃棄孔109の上方に移動し、使用済みのチップ119を廃棄孔109から廃棄する。
【0013】
試薬ディスク111には、複数の試薬容器118が設置されている。試薬ディスク111の上部にはカバー112(図示の例では内部を可視化するため一部削除)が設けられ、試薬ディスク111内部は所定の温度に保温される。カバー112の一部には、開口部113が設けられている。ノズル114は水平面内での回転及び上下移動が可能であり、開口部113の上方に回転した後に下降し、ノズル114の先端を所定の試薬容器118内の試薬に浸漬して、所定量の試薬を吸引する。次いで、ノズル114は上昇した後に、インキュベータ104の所定位置の上方に回転して、反応容器105に試薬を吐出する。
【0014】
検体及び試薬が吐出された反応容器105は、インキュベータ104の回転によって所定位置に移動し、搬送機構106によって、攪拌機構108へと搬送される。攪拌機構108は、反応容器105に対して回転運動を加えることで反応容器105内の検体及び試薬を攪拌し、混和する。攪拌の終了した反応容器105は、搬送機構106によって、インキュベータ104の所定位置に戻される。
【0015】
ノズル115は水平面内での回転及び上下移動が可能であり、サンプル及び試薬を分注し、攪拌が終了し、インキュベータ104で所定の反応時間が経過した反応容器105の上方に移動し、下降し、反応容器105内の反応液を吸引する。ノズル115で吸引された反応液は、検出部ユニット116で分析される。反応液の吸引された反応容器105は、インキュベータ104の回転によって所定位置に移動し、搬送機構106によって、インキュベータ104から廃棄孔109の上方に移動し、廃棄孔119に廃棄する。
【0016】
なお、図示の例では、ノズル203,114,115により検体、試薬及び反応液の各流体の吸引及び吐出を独立して行い、本明細書ではノズル203の位置合わせが主に説明される。別の実施形態では、自動分析装置100は、洗浄液による洗浄を行うことで各流体の吸引及び吐出を1つのノズル(不図示)を備え、当該ノズルの位置合わせが以下のノズル203の位置合わせと同様にして行われる。更に別の実施形態では、ノズル114,115の位置合わせが、以下のノズル203の位置合わせと同様にして行われる。
【0017】
自動分析装置100は、回転機構400(図3A)、高さ位置決め機構500(図5)及び周方向位置決め機構600(図5)を制御する演算制御装置800を備える。演算制御装置800は、何れも図示はしないが、例えばCPU(Central Processing Unit)、
RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)等を備えて構成される。演算制御装置800は、ROMに格納されている所定の制御プログラムがRAMに展開され、CPUによって実行されることにより具現化される。
【0018】
図2は、ノズル203による検体及び試薬の分注を説明する図である。ノズル203は、回転時の軌跡である円周204上に配置された収容部120に収容された反応容器105内の反応液(流体の一例)の吸引又は反応容器105への検体及び試薬(流体の一例)の吐出の少なくとも一方を行う。ノズル203は、回転軸201に取り付けられたアーム202の先端下方に設置される。
【0019】
収容部120は、何れも流体としての検体及び試薬を収容可能な反応容器105(容器の一例)を周方向に連続的に配置したインキュベータ104、又は、何れも流体としての検体、試薬、又はノズル203を洗浄する洗浄液の少なくとも何れか1つを収容した容器を保持する搬送ラック101、試薬ディスク111、洗浄液ホルダ(不図示)(何れもホルダの一例)の少なくとも何れかに備えられる。このようにすることで、これらの収容部120に収容した検体容器102、反応容器105、試薬容器118等の各容器の位置合わせを行うことができる。
【0020】
なお、1本のノズル203によって検体、試薬、又は洗浄液の少なくとも2つを吸引及び吐出する場合には洗浄液が使用され、検体、試薬、又は洗浄液の吸引及び吐出を行うノズル203がそれぞれ備えられる場合には洗浄液は使用されなくてもよい。図示の例では、洗浄液は使用されない。ノズル203は、回転時、装着位置110、搬送ラック101上の検体吸引位置207、インキュベータ104上の検体吐出位置209、廃棄孔109の各点を通過する
【0021】
図3Aは、径方向のノズル203の位置合わせを説明する図であり、位置合わせ前を示す図である。自動分析装置100は、ノズル203を水平面内で周方向に回転させる回転機構400を備え、回転機構400は、回転軸201、回転軸201を周方向に回転させるモータ(不図示)、アーム202、検出機構305等を備える。回転機構400は、電気信号線(不図示)により演算制御装置800(図1)に接続される。
【0022】
ノズル203は高さ方向で外径が変化する形状を有し、例えば、下方に窄まる例えば円錐の形状を有するチップ119を備える。チップ119を備えることで、先端を細くしての吸引圧力を小さくできるとともに、吐出時に流体の飛散を抑制できる。
【0023】
自動分析装置100では、ノズル203の径方向及び周方向の両位置合わせが行われる。ノズル203は反応容器105との接触抑制及びデッドボリュームを極力削減する観点から吸引及び吐出位置に対してより中心にあるほうがよい。しかしながら各機構が接地するベース(アーム202等)の機械加工の精度、ベースのたわみ、機構内の積み上げ公差、組立誤差、ノズル203の直角度等の影響により、設計上の検体吐出位置209に対してノズル203の回転半径Lがずれることがある。そこで、径方向の位置合わせを行うことで、実際の回転半径L1を、設計上の理想の回転半径L2(図3C)に近づけることができる。
【0024】
自動分析装置100は、ノズル203の径方向位置、又は、ノズル203を回転させる回転軸201に対するノズル203の角度の少なくとも一方を調整する調整機構302を備える。調整機構302を備えることで、ノズル203の径方向位置又は水平方向に対する角度を調整できる。中でも、調整機構302は径方向位置及び角度の双方を調整することが好ましい。角度を調整できることで、アーム202のたわみ及び回転軸201の倒れ、ノズル203の曲がりを吸収できる。調整機構302は、例えば、送りねじ、アクチュエータ等である。また、調整機構302は、例えば締結用のねじ穴を長円穴にして、長円穴の内部でねじをずらすことができるように構成できる。
【0025】
図3Bは、位置調整用治具303の斜視図である。位置調整用治具303は、自動分析装置100において水平面内で回転可能なノズル203(図3A)によって吸引又吐出が行われる反応液等の流体を入れた反応容器105(図1。容器の一例)の収容部120(図3A)に収容可能なものである。位置調整用治具303は、収容部120(図3A)に収容したときに収容部120の上方に突出し、突出した部分にフランジ状構造を有する。突出した部分は上面視で半径Rを有する円形である。
【0026】
位置調整用治具303は、ノズル203の回転時の軌跡である円周204(図2)の一部の円弧を示した調整用目印306を上端面304に備える。位置調整用治具303によれば、使用者が、調整用目印306の上方に目視でノズル203の先端が配置されるように、ノズル203の径方向位置又は角度の少なくとも一方を調整することで、容易に径方向の位置合わせを行うことができる。
【0027】
調整用目印306は、ノズルの回転半径L(図3A)の目安となる印であり、使用者は調整用目印306に合うよう調整機構302(図3A)を操作してノズル203の回転半径Lを調整する。調整用目印306はけがき線、溝、調整許容範囲を示す色分け、中心を示す穴、点等、視認性の良いものであれば良い。位置調整用治具303は、側壁、底面等に、位置調整用治具303の回転を抑制する凹凸(不図示)を備える。これにより、調整の目安となる調整用目印306がずれないようになっている。
【0028】
詳細は後記するが、位置合わせ完了後、位置合わせが妥当可能かの否かの判断が行われる。そこで、位置調整用治具303は、上端面304に露出するコア311と、表層部313と、絶縁層312とを備える。表層部313は、コア311の外側に配置されるとともに上端面304に露出し、コア311とは体積又は誘電率の少なくとも一方が異なる。絶縁層312は、コア311と表層部313とを絶縁する。
【0029】
回転機構400(図3A)は、静電容量の変化によってノズル203への接触を検出する検出機構305(図3A)を備え、ノズル203と位置調整用治具303との接触は、静電容量変化に基づいて検出される。位置調整用治具303がこのように構成されることで、コア311への接触によって位置調整用治具303の中央への接触を静電容量変化によって検出できるとともに、表層部313への接触によってノズル203が側方から接触したことを同じく静電容量変化によって検出できる。
【0030】
コア311及び表層部313のどちらに接触したのかは、例えば、検出機構305が検出した静電容量が閾値を超えるか否かに基づいて判断できる。判断は、例えば、検出機構305に対して電気信号線(不図示)を介して接続された演算制御装置800(図1)により行うことができる。
【0031】
コア311は、反応容器105(図1。容器の一例)の中央部(図3A。中央付近でもよい)に対応する位置に配置される。位置調整用治具303の中心線210は、反応容器105の中心線(不図示。矩形の場合には対角線の交点)と一致し、図示のように正確に位置合わせされた場合には検体吐出位置209に一致する。このようにすることで、コア311への接触検出により、反応容器105(図2)を収容部120(図3A)に収容したときにノズル203(図3A)が反応容器105の中央部に配置できる。
【0032】
なお、位置調整用治具303の形状は図示の例に限定されず、接触点405(図6B)から位置調整用治具303の中心線210までの距離を算出可能な形状であれば何でもよい。
【0033】
図3Cは、径方向のノズル203の位置合わせを説明する図であり、位置合わせ後を示す図である。使用者が目視により位置調整用治具303の調整用目印306(図3B)の上方にノズル203を調整すると、ノズル203による検体吐出位置209は、反応容器105の中央部と同位置である位置調整用治具303の中心線210と一致する。
【0034】
図4Aは、別の実施形態に係る位置調整用治具3031の上面図である。図4Bは、別の実施形態に係る位置調整用治具3031の側面図である。位置調整用治具3031では、調整用目印306は、図4Bに示すように上端面304に形成された凸部3061であり、凸部3061は、円周204の円弧の一部として形成される。凸部3061を備えることで、ノズル203が凸部3061以外の上端面304に接触したときに、高さの違いに基づき凸部3061に接触していないことを検出できる。凸部3061の径方向の幅は、例えばコア311(図3B)の大きさ(通常は直径)と同じにできる。使用者は、ノズル203を凸部3061の上方に配置するように調整機構302(図3A)を操作すればよい。なお、側方からの接触時の検出は、例えば、上記の図3Bを参照して説明したように、例えば、体積又は誘電率の少なくとも一方が凸部3061とは異なる材料で側面を構成することで、行うことができる。
【0035】
図5は、ノズル203を位置調整用治具303の上端面304に接触させた様子を示す図である。自動分析装置100(図1)は、ノズル203の駆動により収容部120に収容された位置調整用治具303の高さ方向の位置決めを行う高さ位置決め機構500を備える。高さ位置決め機構500は、図示の例では、回転軸201、アーム202、ノズル203を降下させる下降機構(不図示)及び検出機構305を備える。高さ位置決め機構500は、電気信号線(不図示)により演算制御装置800(図1)に接続される。
【0036】
決定する高さ位置は、例えば設計上の位置調整用治具303の上端面304の高さ位置に対する実際の高さ位置とのずれ(差分)である。このようなずれは、例えば、ノズル203の設計上の下降距離と実際の下降距離に基づいて決定でき、以下においては「高さ調整値」ということがある。高さ調整値は、例えば演算制御装置800(図1)により計算され、記憶される。また、検体の分析時には、設計値に対して高さ調整値を加減した量に基づき、ノズル203が高さ方向に移動する。
【0037】
高さ位置決め機構500は、ノズル203の降下により検出した位置調整用治具303の上端面304とノズル203との接触位置を検出することで、位置調整用治具303の高さ位置を決定する。即ち、ノズル203の径方向への位置合わせ調整後、高さ位置決め機構500は、ノズル203を下降機構(不図示)によって下降させ、ノズル203を位置調整用治具303に接触させる。これにより、位置調整用治具303の高さ位置を決定できる。なお、ノズル203は、径方向に正確に位置決めがされていれば、コア311(図3B)に接触する。ただし、位置調整が不良である場合には、ノズル203は表層部313に接触したり、位置調整用治具303に接触しなかったりする。この場合には、再度、径方向の位置合わせが行われる。
【0038】
ノズル203は、流体としての検体、試薬、又はノズル203の洗浄液、のうちの少なくとも1つを吸引及び吐出可能に構成される。従って、ノズル203は、検体、試薬又は洗浄液の少なくとも1つの流体の接触、及び、位置調整用治具303への接触の双方の検出に使用される。ノズル203は、少なくとも下端部は樹脂により構成され、具体的には例えば樹脂製のチップ119(図3A)を備える。演算制御装置800(図1)は、位置調整用治具303への検出機構305による検出感度を、上記流体の検出感度よりも高くする。
【0039】
金属製のノズル203にて高さ調整を実施する場合、接触に起因する静電容量変化が大きいため、固体の位置調整用治具303への接触を容易に検出できる。しかし、位置調整用治具303との接触部分が樹脂により構成される場合、流体への接触に起因する静電容量の変化を捉えるために調整された検出機構305によっては、接触面積が小さく、固体の位置調整用治具303との接触が検出され難い。そこで、接触検出時の検出感度を流体接触時の検出感度よりも上げることで、位置調整用治具303への接触を検出し易くできる。
【0040】
図6Aは、一方向(図示の例では反時計回り)からの周方向位置合わせ時の上面図である。図6Bは、一方向からの周方向位置合わせ時の側面図である。自動分析装置100(図1)は、位置調整用治具303の高さ位置の決定後、位置調整用治具303への側方からのノズル203の接触により、位置調整用治具303を収容した収容部120の周方向の位置決めを行う周方向位置決め機構600を備える。周方向位置決め機構600は、回転軸201(図5)、アーム202(図5)、下降機構(不図示)及び検出機構305(図5)を備える。周方向位置決め機構600は、電気信号線(不図示)により演算制御装置800(図1)に接続される。
【0041】
周方向位置決め機構600は、図6Bに示すように、ノズル203の下端211を位置調整用治具303の上端面304よりも下方に配置した状態で、図6Aに示すようにノズル203を位置調整用治具303の側方から位置調整用治具303に近づける。これにより、ノズル203を側方から位置調整用治具303に接触でき、接触位置に基づいて位置調整用治具303の周方向位置を決定できる。
【0042】
図6A及び図6Bに示すようにノズル203を反時計回りに回転させる場合、反時計周り方向へのノズル203の移動量調整は以下のようにして行われる。
【0043】
周方向位置決め機構600は、ノズル203を、位置調整用治具303から離れた所定位置である調整前停止位置402に移動させる。周方向位置決め機構600は、位置調整用治具303の上端面304よりも下方にノズル203の下端211を下降させる。その後、周方向位置決め機構600は、アーム202を回転軸201まわりに回転させてゆっくりと位置調整用治具303に近づけ、検出機構305(図5)が接触した時にノズル203の回転を停止する。このとき、ノズル203は、位置調整用治具303と接触する時のノズル230の存在位置である接触位置401に存在する。調整前停止位置402と接触位置401との間の所定距離の実測値θ2は、演算制御装置800(図1)に記録される。
【0044】
演算制御装置800(図1)は、接触位置401と調整前停止位置402との間の距離の設計値θ1と、周方向位置決め機構600によるノズル203の移動時における前記所定距離に関する実測値θ2との差分である調整値α,β(後記)を計算する。このようにすることで、実測値θ2に基づいて設計値θ1に対する実際のずれを差分として計算でき、周方向にどの程度ずれているのかを評価できる。ここでは、所定距離として円周角が使用され、演算制御装置800は、設計値θ1と実測値θ2との差分である調整値αを計算する。なお、また、検体の分析時には、設計値θ1,θ3に対してそれぞれ調整値α,βを加減した量に基づき、ノズル203が周方向に移動する。
【0045】
調整前停止位置402に位置するノズル203の中心線213(検体吐出位置209と一致する)と、位置調整用治具303の中心線210との間の距離の設計値はθccwであり、実測値はθccwに調整値αを加減したもの(θccw±α)である。ノズル203が接触位置401に存在するときのノズル203の中心線212と、位置調整用治具303とノズル203との接触点405との間の距離はθrである。位置調整用治具303中心線210と接触点405との間の距離はθRである。θccw=θ1+θr+θRを満たす。
【0046】
図7Aは、他方向(図示の例では時計回り)からの周方向位置合わせ時の上面図である。図7Bは、他方向からの周方向位置合わせ時の側面図である。周方向位置決め機構600は、近づける方向を反対にしたこと以外は図6A及び図6Bと同様にして、調整前停止位置404と接触位置403との間の距離を決定する。演算制御装置800(図1)は、接触位置403と調整前停止位置404との間の所定距離の設計値θ3と、周方向位置決め機構600によるノズル203の移動時における前記所定距離に関する実測値θ4との差分である調整値βを計算する。
【0047】
なお、調整前停止位置404の中心線214と、位置調整用治具303の中心線210との間の距離の設計値はθcwであり、実測値はθcwにβを加減したもの(θccw±β)である。ノズル203が接触位置403に存在するときのノズル203の中心線215と、接触点405との間の距離はθrである。位置調整用治具303の中心線210と接触点405との間の距離はθRである。θcw=θ3+θr+θRを満たす。
【0048】
このように、周方向位置決め機構600(図5)は、周方向のうちの一方向からノズル203を位置調整用治具303に近づけるとともに他方向からもノズル203を位置調整用治具303に近づける。演算制御装置800(図1)は、それぞれの方向から近づけたときのそれぞれの調整値α,βを計算する。ノズル203が適切な位置に配置されている場合、調整前停止位置402の中心線213(図6A)と位置調整用治具303の中心線210との間の距離と、調整前停止位置404の中心線214と位置調整用治具303の中心線210との間の距離とは、通常は一致する。従って、それぞれの方向から近づけた時の調整値α,βをそれぞれ計算することで、周方向の位置決めの精度を向上できる。
【0049】
回転機構400(図3A)、高さ位置決め機構500(図5)及び周方向位置決め機構600(図5)が、例えば歯車等を利用してノズル203を駆動させる場合、バックラッシュの影響を受ける可能性がある。また、回転機構400、高さ位置決め機構500及び周方向位置決め機構600が、例えば検知器及び検知板(何れも不図示)により停止を検出する場合、組立誤差により検知器が検知板を検知するタイミングが一方向への回転と他方向への回転とで異なる場合があり、ノズル203の停止位置がずれ得る。そこで、自動分析装置100では、ノズル203を一方向及び他方向の双方向から近付けることで、周方向の位置決めが行われる。これにより、一方向及び他方向のそれぞれで停止位置がずれることを抑制できる。ただし、ノズル203が接触位置401,403の何れかのみにしか停止できない場合には、対応する側のみの調整でもよい。
【0050】
設計値θ1,θ3(図6A及び図7A)の算出は、例えばノズル203の回転半径L(図3A)、接触点405から位置調整用治具303の中心線210までの距離、回転機構400(図3A)、高さ位置決め機構500(図5)及び周方向位置決め機構600(図5)の回転分解能等に基づき決定できる。設計値θ1,θ3は、それぞれ、図6Bに示すように設計値θ1=θccw-(θr+θR)、及び、図7Bに示すように設計値θ3=θcw-(θr+θR)で表すことができる。
【0051】
ノズル203が円筒状である場合、即ち、高さ方向で同じ形状を有する場合、ノズル203の半径は高さ方向によらず同じであるため、ノズル203の下降量によらず、接触点405からノズル203の中心線212,216までの距離θrを算出できる。また、接触点405から位置調整用治具303の中心線210までの距離θRも位置調整用治具303の半径に基づき算出できる。
【0052】
図8は、高さ方向で外径が変化する形状を有するノズル203の高さ位置と、ノズル203と位置調整用治具303の中心線210との間の距離とを説明する図である。ノズル203が例えばチップ119を備える場合、ノズル203は高さ方向で外径が変化し、具体的には下方に向かって窄まる形状を有する。このため、ノズル203の下降量によってノズル203における接触点405の高さ位置が変化し、中心線212と接触点405との間の距離が変化する。
【0053】
例えば、ノズル203が上方にある接触位置4011では、位置調整用治具303の上端面304とノズル203の下端211との間の距離はz1である。このとき、中心線2121と接触点405との間の距離はθr1である。一方、ノズル203が下方にある接触位置4012では、位置調整用治具303の上端面304とノズル203の下端211との間の距離はz2である。このとき、中心線2122と接触点405との間の距離はθr2である。従って、ノズル203の高さ位置によって距離θrが変化し、設計値θ1,θ3(図6A及び図7A)に対する調整値α,βを一義的に算出できない。
【0054】
そこで、自動分析装置100では、高さ位置決め機構500による高さ方向の位置決めが行われ、その後に、周方向位置決め機構600による周方向の位置決めが行われる。具体的には、演算制御装置800(図1)は、ノズル203の位置調整用治具303への高さ方向の接触位置、即ち、接触点405の高さ位置に基づき、位置調整用治具303の周方向の位置決めを行う。このようにすることで、調整前停止位置402,404(図6B及び図7B)で下降したノズル203の先端位置と位置調整用治具303の接触点405の高さ位置との位置関係を把握できる。そして、接触点405の高さ位置に基づいて中心線212,216と接触点405との間の距離θrを決定でき、調整値α,βを算出できる。決定した距離θrは、演算制御装置800(図1)の記憶部(不図示)に記憶される。
【0055】
図9Aは、位置合わせが正しいとき及び誤っているときを説明する上面図であり、一方向から接触させたときの様子を示す図である。図9Bは、位置合わせが正しいとき及び誤っているときを説明する上面図であり、他方向から接触させたときの様子を示す図である。図9A及び図9Bのそれぞれにおいて、一例として、外周側の円周421,431は位置合わせが正しいときのノズル203の軌跡、内周側の円周422,432は位置合わせが誤っているときのノズル203の軌跡を示す。
【0056】
適切な位置合わせ後、調整後停止位置406(図9A)と調整後停止位置407(図9B)とはほぼ一致する。調整後停止位置406は、ノズル203を接触位置401から一方向側に距離θr+θRだけ移動させた位置である。θr+θR=(θccw±α)-θ1を満たす。調整後停止位置407は、接触位置403から他方向側に距離θr+θRだけ移動させた位置である。θr+θR=(θcw±β)-θ3を満たす。しかし、調整機構302(図3A)によるノズル203の径方向位置調整が誤っていた場合、誤った基準位置441,443に基づいて調整値α,βを付与した場合の調整後停止位置426,427は、一方向から近付けた場合(図9A)と他方向から近付けた場合(図9B)とで異なる位置になる。
【0057】
そこで、演算制御装置800(図1)は、一方向及び他方向のそれぞれから設計値θ1,θ3に調整値α,βを加減した距離だけノズル203を移動後のノズル203の調整後停止位置406,407(位置の一例)に基づき、ノズル203の径方向位置の妥当性を判断する。これにより、実際のノズル203の駆動により得られた調整値α,βを用いて、使用者が行う径方向位置決めの適切性を判断できる。この妥当性の判断は、実際にノズル203を移動させて決定してもよく、計算により決定してもよい。例えば、ノズル203が1パルスごとに所定量移動するように構成されたパルスモータ(不図示)により駆動され、実際にノズル203を移動させて決定する場合には、位置合わせ開始時からの総パルス数を測定することで、どの程度移動したかを決定できる。また、エンコーダ(不図示)を使用して位置を決定してもよい。
【0058】
演算制御装置800は、演算制御装置800の記憶部(不図示)に記憶された距離θrから調整後停止位置406,407を決定する。そして、各調整値α,βを反映させた調整後停止位置406,407が異なっていた場合(例えば調整後停止位置426,427の各位置)、演算制御装置800は、演算制御装置800の警報部(不図示)を通じて使用者に警告する。これにより、使用者に対し、径方向の再度の位置合わせを促すことができる。なお、調整後停止位置406,407は厳密に一致する必要は無く、例えば径方向位置合わせに影響を及ぼさない程度のずれは許容することができる。
【0059】
別の実施形態では、演算制御装置800(図1)は、調整値α,βが所定範囲に含まれているか否かを判断することで、ノズル203の径方向位置の妥当性を判断する。調整値α,βが所定範囲に含まれているか否かを指標として判断するため、判断時間を短縮できる。所定範囲は、例えば、反応容器105への吐出時に内壁に検体等が付着しないような範囲、反応容器105への吐出時に内部で攪拌を促進できるような範囲等、任意に設定できる。
【0060】
図10は、自動調整方法を示すフローチャートである。自動調整方法は例えば自動分析装置100(図1)において行われ、各機構の制御は演算制御装置800(図1)により行われる。自動調整方法は、自動調整を実行するボタン(不図示)を押下することで、開始される。ボタンは、物理的なボタンでもよく、表示部等のユーザインターフェース(UI)に表示されたボタンでもよい。
【0061】
ボタン押下により、演算制御装置800は使用者に位置調整用治具303(図3B)の収容部120への設置を促し、使用者は位置調整用治具303を設置する(ステップS1)。使用者は、例えば、自動分析装置100の表示部(不図示)に表示された箇所の収容部120に設置できる。なお、位置調整用治具303は、例えば自動分析装置100を構成する任意の設置機構(不図示)により自動で設置されてもよい。設置後、使用者は、調整機構(図3A)302を操作し、調整用目印306(図3B)に沿ってノズル203の径方向位置合わせを行う。
【0062】
次いで、再度ボタンが押下されることで、演算制御装置800は、装着位置110にてチップ119(図3A)をノズル203に装着し、高さ調整のため検出機構305の感度を切り替える(ステップS2)。なお、チップ119を装着しない場合、又は、ノズル203の下部が例えば金属の場合には、ステップS2は省略できる。演算制御装置800は、ノズル203を位置調整用治具303の上方の高さ調整位置に移動させ(ステップS3)、下降させる(ステップS4)。移動及び下降は高さ位置決め機構500(図5)により行われる。
【0063】
検出機構305(図3A)がノズル203と位置調整用治具303との接触を検出すると(ステップS5のYes)、演算制御装置800は高さ調整値を計算及び記憶する(ステップS6)。一方で、検出されない場合(ステップS6のNo)、演算制御装置800は、警報部(不図示)を通じ、位置調整用治具303が正しく設置されていない旨を使用者に警告する(ステップS7)。これらのステップS3~S7は高さ位置決めステップであり、ノズル203の駆動により、収容部120(図2)に収容された位置調整用治具303の高さ方向の位置決めを行うものである。
【0064】
接触検出後、演算制御装置800は、周方向位置決め機構600(図5)を制御して、ノズル203を一方の調整前停止位置402(図6A)に移動させ(ステップS8)、所定量下降させる(ステップS9)。この所定量は、位置調整用治具303から離れた位置で下降させれば位置調整用治具303に接触しないが、位置調整用治具303に近い位置で下降させれば位置調整用治具303に接触する距離である。所定量下降できれば(ステップS9のYes)、演算制御装置800は、周方向位置決め機構600を制御して、ノズル203を位置調整用治具303に向けて移動させる(ステップS10)。一方で、所定量下降中にノズル203が位置調整用治具303に接触して所定量下降できない場合には(ステップS9のNo)、演算制御装置800は、警報部(不図示)を通じ使用者に警告する(ステップS11)。
【0065】
一方向から位置調整用治具303に向けて移動中、検出機構305(図3A)が接触を検出すると(ステップS12のYes)、演算制御装置800は、検出までのノズル203の移動量を記憶する(ステップS14)。なお、移動量は、設計値θ1(図6A)に対応する実測値θ2(図6A)であり、設計値θ1に調整値αを付与した値と一致する。一方で、所定量移動しても接触を検出できない場合には(ステップS12のNo)、演算制御装置800は、警報部(不図示)を通じ使用者に警告する(ステップS13)。
【0066】
一方向からの移動による接触検出後、同様にして他方からノズル203を移動することで、接触が検出される。即ち、演算制御装置800は、周方向位置決め機構600を制御して、ノズル203を他方の調整前停止位置404(図7A)に移動させ(ステップS15)、所定量下降させる(ステップS16)。この所定量は、ステップS9と同義である。所定量下降できれば(ステップS16のYes)、演算制御装置800は、周方向位置決め機構600を制御して、ノズル203を位置調整用治具303に向けて移動させる(ステップS17)。一方で、所定量下降中にノズル203が位置調整用治具303に接触して所定量下降できない場合には(ステップS16のNo)、演算制御装置800は、警報部(不図示)を通じ使用者に警告する(ステップS18)。
【0067】
他方向から位置調整用治具303に向けて移動中、検出機構305(図3A)が接触を検出すると(ステップS19のYes)、演算制御装置800は、検出までのノズル203の移動量を記憶する(ステップS20)。なお、移動量は、設計値θ3(図6B)に対応する実測値θ4(図6B)であり、設計値θに調整値βを付与した値と一致する。一方で、所定量移動しても接触を検出できない場合には(ステップS19のNo)、演算制御装置800は、警報部(不図示)を通じ使用者に警告する(ステップS21)。
【0068】
演算制御装置800は、設計値θ1,θ3及び実測値θ2,θ4に基づき、調整値α,βを算出する(ステップS22)。演算制御装置800は、調整値α,βに基づき、位置合わせが適切であるか否かを判断する(ステップS23)。判断は、例えば、調整値α,βが所定範囲外であるか否か、又は、調整後停止位置406,407(図9A及び図9B)の相対的位置等によって実行できる。適切であれば(Yes)、調整が終了し、演算制御装置800は、使用者に対して位置調整用治具303を取り外すように促す。不適切であれば(No)、演算制御装置800は、警報部(不図示)を通じ使用者に警告する(ステップS24)。
【0069】
これらのステップS8~S24は周方向位置決めステップであり、位置調整用治具303の高さ位置の決定後、位置調整用治具303への側方からのノズル203の接触により、位置調整用治具303を収容した収容部120の周方向の位置決めを行うものである。
【0070】
以上の自動分析装置100及び位置調整方法によれば、位置決めを短時間で行うことができる。
【符号の説明】
【0071】
100 自動分析装置
101 搬送ラック
102 検体容器
104 インキュベータ
105 反応容器
106 搬送機構
107 保持部材
108 攪拌機構
109 廃棄孔
110 装着位置
111 試薬ディスク
112 カバー
113 開口部
114,115 ノズル
116 検出部ユニット
117 ラック搬送ライン
118 試薬容器
119 チップ
120 収容部
201 回転軸(回転機構、高さ位置決め機構、周方向位置決め機構)
202 アーム(回転機構、高さ位置決め機構、周方向位置決め機構)
203 ノズル
204 円周
207 検体吸引位置
209 検体吐出位置
210,212,2121,2122,213,214,215,216 中心線
211 下端
230 ノズル
302 調整機構
3021 凸部
303,3031 位置調整用治具
304 上端面
305 検出機構(回転機構、高さ位置決め機構、周方向位置決め機構)
3061 凸部
306 調整用目印
311 コア
312 絶縁層
313 表層部
400 回転機構
401,4011,4012,403 接触位置
402,404 調整前停止位置
405 接触点
406,408,418 調整後停止位置
421,422,431 円周
441,443 基準位置
500 高さ位置決め機構
600 周方向位置決め機構
800 演算制御装置
L,L1,L2 回転半径
図1
図2
図3A
図3B
図3C
図4A
図4B
図5
図6A
図6B
図7A
図7B
図8
図9A
図9B
図10