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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-30
(45)【発行日】2024-06-07
(54)【発明の名称】捕集袋及び分析方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 1/22 20060101AFI20240531BHJP
【FI】
G01N1/22 C
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2023154078
(22)【出願日】2023-09-21
【審査請求日】2023-10-06
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】591203288
【氏名又は名称】日本アクア株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000224101
【氏名又は名称】藤森工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001531
【氏名又は名称】弁理士法人タス・マイスター
(72)【発明者】
【氏名】赤瀬川 清富
【審査官】森口 正治
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-250800(JP,A)
【文献】特開2019-182463(JP,A)
【文献】特開2002-059924(JP,A)
【文献】特開2008-265820(JP,A)
【文献】特開2010-215282(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 1/00-1/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
バリア性樹脂フィルムからなる袋体であり、サンプルを注入および/または排出する注出口を有する捕集袋であって、
注出口は、ポリオレフィン樹脂からなるスパウトを、捕集袋本体端部において、接着性フィルムを介してバリア性樹脂フィルムに接着して形成されたものであり、
バリア性樹脂フィルムは、二軸延伸ポリエステルフィルム又はフッ素樹脂フィルムであることを特徴とする捕集袋。
【請求項2】
接着性フィルムは、無水マレイン酸変性ポリオレフィン樹脂フィルムである請求項1記載の捕集袋。
【請求項3】
スパウトは、一端にねじを有する中空菅及びねじを有する羽部とからなり、これらをねじを締めることで一体化させることができるものである請求項1又は2記載の捕集袋。
【請求項4】
サンプルは、気体、液体、半固体又は粉体のものである請求項1又は2記載の捕集袋。
【請求項5】
請求項1又は2記載の捕集袋にサンプルを採取し、その後、捕集袋からサンプルを採取して分析することを特徴とする分析方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、捕集袋及び分析方法に関する。
【背景技術】
【0002】
下水処理場、工場における環境分析、排気ガス分析等、多くの局面において、分析サンプルを捕集袋に採取し、これを分析機関等の機器を有する場所にまで運び、その後分析を行うことが、多く行われている。
【0003】
このような分析に際しては、樹脂製の捕集袋にサンプルを採取し、これを密閉した状態で分析機器のある場所まで移動させることが必要となる。このような捕集袋としては、特許文献1,2に記載されたようなものが知られている。
【0004】
このような樹脂製の捕集袋は、袋を構成する樹脂がバリア性に優れること、化学物質の吸着能が低いこと、袋自体が強度に優れること等が要求される。特に、シール部は、強度が劣るものとなりやすく、このようなシール部にピンホールが生じた場合であっても分析結果に影響を与えてしまう。さらに、このような捕集袋はできるだけ安価であることが要求されるため、安価な材料によって、上述したような性能を有する捕集袋を得ることが求められる。
【0005】
更に、このような捕集袋は、サンプルの採取、分析時のサンプル取得を行う必要があるため、注出口を設けることが必要となる。従来の捕集袋は、このような注出口としては、袋の両側から抽出口となる樹脂成形体でフィルムを挟み、ねじによって固定することによって形成したものが一般的である。このような方法で注出口を設けた場合、注口部周辺のねじが緩みやすく、これによって隙間を生じやすいと考えられる。気体や液体を一部又は全部とする測定サンプルの場合、このような隙間からサンプルが漏れるという問題を生じることになる。
【0006】
無水マレイン酸変性ポリオレフィン樹脂は、接着性の樹脂として知られており、これをフィルム状の接着剤として使用することが特許文献3に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2017-58253号公報
【文献】特開2009-128223号公報
【文献】特開2023-3079号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上述したような問題を生じない注出口を有し、安価な材料によって得られた捕集袋及びこれを使用した分析方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、バリア性樹脂フィルムからなる袋体であり、サンプルを注入および/または排出する注出口を有する捕集袋であって、注出口は、ポリオレフィン樹脂からなるスパウトを、捕集袋本体端部において、接着性フィルムを介してバリア性樹脂フィルムに接着して形成されたものであり、バリア性樹脂フィルムは、二軸延伸ポリエステルフィルム又はフッ素樹脂フィルムであることを特徴とする捕集袋である。
【0010】
接着性フィルムは、無水マレイン酸変性ポリオレフィン樹脂フィルムであることが好ましい。
スパウトは、一端にねじを有する中空菅及びねじを有する羽部とからなり、これらをねじを締めることで一体化させることができるものであることが好ましい。
サンプルは、気体、液体、半固体又は粉体のものであることが好ましい。
本発明は、上記捕集袋にサンプルを採取し、その後、捕集袋からサンプルを採取して分析することを特徴とする分析方法でもある。
【発明の効果】
【0011】
本発明の捕集袋は、安価な材料によって簡便な方法で製造でき、特に注出口近傍における接着強度や、密閉性に優れたものである。これを使用した分析方法は、安定して正確な分析を行うことができる点で好ましいものである。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の捕集袋の一態様を示す模式図。
図2】本発明の捕集袋の一態様を示す模式図。
図3】本発明の捕集袋の一態様を示す模式図。
図4】実施例の捕集袋を示す模式図。
図5】本発明の捕集袋の注口部を示す模式図。
図6】引張試験の測定サンプルの形状を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、本発明を詳細に説明する。
本発明の捕集袋は、注出口を特定の方法によって形成したものであり、これによって、安価に密着性や密閉性に優れたものとすることができる。
【0014】
本発明の注出口は、ポリエチレンやポリプロピレン等のポリオレフィン樹脂からなるスパウトによって形成されたものである。当該スパウトは、食品包装容器等の分野において、広く使用されている汎用的なものであり、本発明においても汎用的なものを使用することができる。
【0015】
捕集袋を構成する基材フィルムは、二軸延伸ポリエステルフィルム又はフッ素樹脂フィルムである。このような樹脂は、ポリオレフィンとのシール性に劣るものが多い。
したがって、フィルム基材とスパウトとを直接接着することは困難である。さらに、特許文献1のように、ガスバリア樹脂フィルムに、シール性樹脂を積層した場合においても、当該文献に記載されたようなシール性樹脂では、ポリオレフィン樹脂と充分な接着を行うことはできない。
【0016】
本発明においては、特定の接着性フィルムを使用し、これによって、ガスバリア性フィルムに対してスパウトを接着することで、上述した問題を改善するものである。このような構造を有する捕集袋は、安価に製造ができ、密着性・接着性に優れ、各種測定サンプル用の捕集袋として特に好適に使用できるものである。
以下に、このような捕集袋に使用する各素材について説明する。
【0017】
(ガスバリア性フィルム)
本発明の捕集袋を構成する基材は、二軸延伸ポリエステルフィルム又はフッ素樹脂フィルムである。二軸延伸ポリエステルフィルムやフッ素樹脂フィルムは、ガスバリア性に優れ、フィルムへの各種成分の吸着や、アウトガスの発生もないため、分析サンプルの保管に適している点で好ましい。
【0018】
上記二軸延伸ポリエステルフィルムとしては特に限定されず、市販の一般的なものを使用することができる。
【0019】
上記フッ素樹脂フィルムとしては特に限定されず、ポリフッ化ビニル樹脂からなるテドラー(デュポン社商品名)等を挙げることができる。
【0020】
上記ガスバリア性フィルムは、必要に応じて、接着部または全部において、プラズマ処理、コロナ放電処理等の表面処理を施したものであってもよい。
【0021】
上記ガスバリア性フィルムは、単層の二軸延伸ポリエステルフィルム又はフッ素樹脂フィルムからなるものであってもよいし、金属層やEVOHフィルム層等のその他の層を更に有するものであってもよい。このような金属層としては、アルミニウム蒸着層等を使用することが好ましい。アルミニウム蒸着層を有するガスバリア性フィルムは、2層からなるものであってもよいし、アルミニウム蒸着層を中間層とする3層構造からなるものであってもよい。上述した以外の層構成を有するような2層又は3層以上の構造を有するものであってもよい。
【0022】
(接着性フィルム)
本発明においては、接着フィルムを使用して、スパウトをガスバリア性フィルムに接着し、これによって注出口を備えた袋形状としたものである。上述したように、スパウトは、周知の物品であり、これを樹脂フィルムからなる袋に接着して飲食品用容器とすることが広く行われている。
【0023】
しかし、このようなスパウトを他素材とのシールが困難であるようなガスバリア性フィルムに接着することは困難であった。本発明においてはこのような点についての検討を行い、接着フィルムを使用して、スパウトとガスバリア性フィルムを接着することで、このような問題が改善され、注出口を備えたガスバリア性フィルムからなる袋体とすることができることを見出すことによって完成したものである。
【0024】
このような方法で接着することで、アウトガスの発生を気にすることなく接着剤を使用することができ、接着部位においても均一な接着を行うことができるものとなり、ピンホールの発生を抑制することができる。さらに、接着部における接着不良を生じることもなく、本発明の捕捉袋に収納されたサンプルは、保管中に内容物が変化することもない。
【0025】
更に、このような方法で得た捕集袋は、使用後に加熱することで、分解することが容易となる。このように加熱して分解することで、それぞれの部品を再利用できるという点でも好ましいものである。
【0026】
上記接着性フィルムは、無水マレイン酸変性ポリオレフィン樹脂からなる接着性フィルムであることが好ましい。
【0027】
シート状フィルムは、単層であってもよいし、基材層の両面に無水マレイン酸変性ポリオレフィン樹脂を形成した複層タイプであってもよい。複層タイプとすることで、ガスバリア性フィルムが有する強度等の性能を得ることができる点で好ましい。さらに、使用時に気体を発生することがないため、樹脂からの揮散物が分析に悪影響を与えることもない。
【0028】
このようなシート状フィルムとしては市販のものを使用することもできる。市販のものとしては、メタシール(登録商標;藤森工業株式会社)を使用することができる。
【0029】
無水マレイン酸変性ポリオレフィン樹脂は、公知の重合体であり、ポリプロピレン樹脂、ポリエチレン樹脂等のポリオレフィン樹脂に対して、無水マレイン酸を反応させることによって変性された樹脂を好適に使用することができる。
【0030】
(スパウト)
スパウトは、パウチ状容器等において汎用されているものであり、その形状などを特に限定されるものではない。
具体的には、気体や液体を注入・排出できる孔を有する樹脂成型品であることが好ましい。そして、容器を構成する樹脂フィルムと接着できるものとするため、図1~5に示したような羽部を有することが好ましい。このような形状とすることで、羽部と樹脂フィルムとの接触面積が広くなり、強固に接着できる点で好ましい。
【0031】
スパウトは、一般には、樹脂製の中空筒部を有するものである。このような中空筒を通じて、サンプルの捕集・排出を行うことができる。このようなものとして具体的には、スパウトパウチと呼ばれる飲食品用の容器において広く使用されているものが好適に使用される。
【0032】
このような樹脂成形体であるスパウトを捕集袋に設ける場合、樹脂部品であるスパウトを袋状部の口部に接着することでスパウトを有する捕集袋を得ることができる。
【0033】
スパウトを備えた捕集袋は、更に、端部を密栓することができることが好ましい。すなわち、捕集袋で採取したサンプルの内容物は、測定までの間、密封された状態であることが好ましい。このため、サンプル採取後に密栓できるものであることが好ましい。
【0034】
このような密栓方法としては特に限定されるものではないが、例えば、二方弁を設置し、サンプル採取時には、二方弁を開いてサンプルを導入し、導入を終えたところで、二方弁を閉じて密封する方法等を挙げることができる。
【0035】
このような二方弁は、スパウトに直接設けたものであってもよいし、スパウトと二方弁とをチューブで連結し、二方弁を閉栓することで密閉するものであってもよい。上述したように、ねじなどで着脱可能な二方弁としてもよい。この場合、使用後にこれを分解して、二方弁のみを再利用できるものとしてもよい。
【0036】
また、スパウトをシリコーンゴム等からなるゴム栓によって栓をするものであってよい。この場合、測定においてサンプルを採取する際は、ゴム栓にシリンジ針を刺して、シリンジにより採取することが好ましい。
【0037】
本発明の捕集袋は、上記スパウトによる注出口を2有するものであってもよい。注出口が2あると、サンプル採集前に袋内を置換することができる点で好ましい。すなわち、一の注出口からサンプルを導入し、他方の注出口から排出することで、捕集袋内に存在する気体等を置換することができる。
【0038】
このようなスパウトとして具体的な態様を図1~3に示した。
図1に示したのは、一般的な周知のスパウトを使用したものである。すなわち、フィルムと接着するための羽部と注出口を形成する中空部とを一体成型した樹脂成型体からなる。これを樹脂フィルムと接着させて注出口を備えた補修袋としたものである。図1の態様においては、スパウト抽出口の一端には、ねじによって着脱可能な蓋が設けられている。この蓋によって捕集袋を密閉し、採取したサンプルの漏出や外部成分の侵入を防ぐものである。
【0039】
図2に示した態様は、スパウトとして、注出口と羽部とをそれぞれ別個の部品として、これらをねじによって一体化させる形態のものである。このような形態とすることで、使用後に注出口を形成する中空部を形成する中空菅を容易に取り外し、再利用できるという点で好ましいものである。
【0040】
図3に示した態様は、図2と同様にスパウトとして、注出口と羽部とをそれぞれ別個の部品として、これらをねじによって一体化させる形態のものである。そして、注出口を形成する中空菅において、弁を備えるものとしたものである。
【0041】
すなわち、図3に示したスパウトは、ねじを設けた孔を有する羽部、及び、一端にねじ部を有し、更に中間部に弁を備えた中空菅からなるものである。
【0042】
上述したように、本発明の捕集袋は、袋内にサンプルを導入した後、密閉することが好ましい。このような密閉は弁によって行うことが最も好ましい。図1の態様のように、蓋によって密閉すると、蓋をはめる作業に一定の時間を要するために、この間にサンプルの漏出や外気の侵入を生じてしまう。図2のような注出口を有するものは、更に、別個に容器を密閉するための密閉手段を連結したり、フィルム等によって口を閉じる作業が必要となってしまう。
【0043】
これらの方法に対して、図3に示した態様の場合は、サンプル導入後に二方弁を閉じることで、サンプルの漏出や外気の侵入を生じることがない。そして、この二方弁は、ねじによって羽部に連結されたものであることから、使用後には容易に取り外し、再利用することができる。二方弁は、コスト増の原因となる部品であるから、これを再利用可能なものとすることで、大幅なコスト減を図ることができる。
【0044】
(捕集袋)
本発明の捕集袋の形状の一例を図1、2として示した。
図1,2の捕集袋は、端部の切欠部にスパウト1を接着させ、これによって注出口3を設けたものである。このスパウトの設置位置は特に限定されるものではないが、長方形形状の袋の一つの角において、切欠部を形成し、当該部位にスパウトを設けることが好ましい。
【0045】
角部にスパウトを設けることで、捕集したサンプルを取り出す際に、取り出しやすくなる点で好ましい。特に、液状や半固形物がサンプルである場合の取り出しが容易である。
【0046】
本発明の捕集袋は、測定用サンプルを保存するために使用するものであるから、サンプルの漏出、外部成分の侵入を防ぐためにも、強力な接着強度を有することが好ましい。さらに、サンプルの運搬中に種々の環境にさらされたり、作業者が誤って落としてしまったりした場合でも、袋が破れたりすることを防ぐために、接着強度が高いことが好ましい。
【0047】
(捕集袋の製造方法)
本発明の捕集袋は、その製造方法を特に限定するものではないが、例えば、以下に記載したような方法で製造することができる。
【0048】
フィルムを袋形状とするには、長方形形状の4辺のうち3辺又は4辺をシールする必要がある。4辺のうち、1辺はフィルムの折り返し部であってもよい。シールする辺のうち、1か所において、上述したスパウトを設けることとなる。その他の2か所又は3か所においては、ヒートシール、又は、スパウトを設ける箇所と同様に、接着性フィルムを挟み込んで接着する方法等で接着することができる。
【0049】
捕集袋の形状が、長方形のうち一つの角部に切欠部を設けて五角形とした場合も、同様に、スパウトを設ける切欠部以外の4辺のすべて、又は3辺を接着することで、得ることができる。
【0050】
二軸延伸ポリエステルフィルムをガスバリア性フィルムとして使用する場合、ヒートシールを行うことができないため、上述した接着フィルムを挟み込んで熱プレスする方法によって接着することが好ましい。この場合、接着強度20N/10mm以上であることが好ましい。なお、ここでの接着強度は、実施例に記載した方法で測定したものである。
【0051】
そして、上述したように、スパウト設置部においては、図2に示したように、ガスバリア性フィルム5/接着性フィルム4/スパウト1/接着性フィルム4/ガスバリア性フィルム5の順に積層して、当該部位をヒートプレスすることで、接着することができる。
【0052】
接着の際には、ガスバリア性フィルム、スパウト、シール性樹脂フィルムのそれぞれの接着面について、プラズマ処理、コロナ放電処理等の表面処理を事前に行ったものであってもよい。このような処理を行うことでより強力な接着を行い、上述したような強度で接着することができる点で好ましい。
【0053】
上記ガスバリア性フィルムがフッ素樹脂フィルムである場合、フィルムから袋体を製造する際のフィルム同士の接着は、フッ素樹脂フィルム同士をヒートシールすることによって行うことができる。このようなヒートシールは一般的な方法によって行うことができる。なお、フッ素樹脂フィルム同士の接着を上述した接着性フィルムを用いて行うものであっても差し支えない。
【0054】
(捕集袋の使用方法)
本発明の捕集袋によって採集することができるサンプルとしては、気体、液体、半固体物、粉体等を挙げることができる。
すなわち、気体サンプル以外に、気体や液体を一部に含むようなサンプルの捕集袋として特に好適に使用することができる。
【0055】
気体サンプルの捕集袋として使用する場合は特に好適に使用することができる。また、液体や液体を一部に含むスラリー状物の捕集袋としても使用することができる。このような液状のサンプルは、そのなかに一部気体成分を含む場合も多く、分析に際しては、気体成分も同時に分析することが求められる場合も多い。よって、本発明のような密閉性に優れた捕集袋を好適に使用することができる。
【0056】
また、液体成分も、捕集袋に入れた場合に、漏れやフィルムへの吸着等が生じると、良好な分析を行うことができなくなってしまう。さらに、接着部にサンプル重量がかかることでシール部の剥離やピンホールの発生等の問題も生じやすい。このため、このような分野において特に好適に使用することができる。
【0057】
より具体的には、下水処理場、工場における環境分析、排気ガス分析等の気体、汚泥、排水等各種の分析において、本発明の捕集袋を使用することができる。
【実施例
【0058】
以下、本発明を実施例に基づいて具体的に説明する。ただし、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。以下の実施例においては特に言及しない場合は、「部」「%」はそれぞれ「質量部」「質量%」を表す。
【0059】
(実施例1)
二軸延伸ポリエステルを図4に示したような形状に切断したものを2枚用意し、その周縁部の接着部には、所定の形状に切断したメタシール(登録商標:藤森工業社製)を挟む。さらに、角の切欠部の略中央には、ポリエチレン製のスパウトを挟み、二軸延伸ポリエステル/メタシール/スパウト/メタシール/二軸延伸ポリエステルとの構成となるようにした。このような状態で、それぞれを熱プレスによって接着し、本発明の採取袋を製造した。
【0060】
(比較例1)
350mm×350mmの正方形の二軸延伸ポリエステルフィルムを2枚準備し、これらを重ね合わせる。そして、その四辺を熱溶融させることによって融着させる。さらに、中間部がねじで締めることができる2つの部品からなる中空管を準備しこれを一つの辺の中間部付近に孔をあけてねじを締めることによって、設置した。
【0061】
(評価)
(気密性テスト)
三菱ガス化学社製のシールチェックによって、テストを行った、シールチェックは、スプレー缶中に充填された着色された液体であり、これをシール箇所に吹き付けて、しばらく放置することで、着色された液体のシール部への浸透状態、漏出状態を確認することによって、試験を行う。実施例のサンプルにおいては、シール部の液の浸透は観察されなかった。周縁部のシール部においても、注出口を設けた図4の1近傍においても、同様に液の浸透は観察されなかった。
一方、比較例のサンプルにおいては、周縁のシール部において液の浸透が確認され、密閉性が充分でないことが確認された。
【0062】
(耐久性テスト)
実施例1の容器に、水を750mlを充填し、蓋を締めた状態で高さ80cm及び100cmでの落下試験を行った。試験は3回行い、試験後に水の漏れの有無について確認をした。これらの落下試験においては水の漏れを生じず、充分な強度が得られていることが明らかとなった。
【0063】
(引張試験)
日本計測システム社製Analoge Force Gauge NK-100を用いて測定を行った。
袋周縁部におけるシール部近傍を図4に示した形状にカットして、測定サンプルを得た。図4の挟持部5として示された2か所を装置のサンプル固定部に固定させ、引張試験を行った。破断したときの破断強度を測定した。測定は5回行い、その平均値は、20N/cmであった。これによって、充分なシール強度が得られていることが明らかである。
【0064】
本発明の捕集袋は、接着部の強度に優れ、ピンホールの発生が少ないものとすることができ、これによって、サンプルを安定して密閉することができる。
【産業上の利用可能性】
【0065】
本発明の捕集袋は、分析対象サンプルを捕集する目的で使用することができる。
【符号の説明】
【0066】
1 スパウト
2 接着部
3 注出口
4 基材フィルム
5 接着性フィルム
6 引張試験における挟み位置

【要約】
【課題】ガスバリア性やシール部の強度等に優れ、安価な材料によって得られた捕集袋及びこれを使用した分析方法を提供する。
【解決手段】 サンプルを注入および/または排出する注出口を有する捕集袋であって、該捕集袋の袋本体は、二軸延伸ポリエステルフィルムによって構成され、これを無水マレイン酸変性ポリオレフィン樹脂からなる接着性フィルムによって接着することで袋形状を構成したものであることを特徴とする捕集袋。
【選択図】なし

図1
図2
図3
図4
図5
図6