(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-30
(45)【発行日】2024-06-07
(54)【発明の名称】電波吸収体及びコンパウンド
(51)【国際特許分類】
H05K 9/00 20060101AFI20240531BHJP
H01F 1/113 20060101ALI20240531BHJP
H01F 1/34 20060101ALI20240531BHJP
H01F 1/375 20060101ALI20240531BHJP
【FI】
H05K9/00 M
H01F1/113
H01F1/34 180
H01F1/375
(21)【出願番号】P 2021519287
(86)(22)【出願日】2020-03-18
(86)【国際出願番号】 JP2020011872
(87)【国際公開番号】W WO2020230448
(87)【国際公開日】2020-11-19
【審査請求日】2021-10-05
【審判番号】
【審判請求日】2023-07-05
(31)【優先権主張番号】P 2019091587
(32)【優先日】2019-05-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】306037311
【氏名又は名称】富士フイルム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】橋本 浩一
【合議体】
【審判長】山澤 宏
【審判官】山内 裕史
【審判官】野崎 大進
(56)【参考文献】
【文献】特開平8-340191(JP,A)
【文献】特開2007-250823(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 9/00
H01F 1/34
H01F 1/375
H01F 1/113
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁性粉体とバインダーとを含む電波吸収層を有し、かつ、金属層を有しない電波吸収体であり、
前記電波吸収層における前記磁性粉体の充填率が、8体積%以上35体積%以下であり、
前記電波吸収層の厚みが3mm以上4.5mm以下であり、
前記電波吸収層における前記磁性粉体の充填率をP体積%とし、かつ、前記電波吸収層の厚みをQmmとしたときに、0.65≦(P/100)×Qの関係を満たし、
前記磁性粉体が、マグネトプランバイト型六方晶フェライトの粉体を含み、
前記磁性粉体は、レーザ回折散乱法により測定した個数基準の粒度分布において、最頻値をモード径、累積10%径をD
10、及び累積90%径をD
90としたときに、モード径が5μm以上10μm未満であり、かつ、(D90-D10)/モード径 ≦ 3.0である電波吸収体。
【請求項2】
前記充填率が15体積%以上35体積%以下である請求項
1に記載の電波吸収体。
【請求項3】
前記磁性粉体が、下記の式(1)で表されるマグネトプランバイト型六方晶フェライトの粉体を含む請求項1
又は請求項
2に記載の電波吸収体。
【化1】
式(1)中、Aは、Sr、Ba、Ca、及びPbからなる群より選ばれる少なくとも1種の金属元素を表し、xは、1.5≦x≦8.0を満たす。
【請求項4】
前記式(1)におけるAが、Srである請求項
3に記載の電波吸収体。
【請求項5】
前記式(1)におけるxが、1.5≦x≦6.0を満たす請求項
3又は請求項
4に記載の電波吸収体。
【請求項6】
シート状又はフィルム状の形状を有する請求項1~請求項
5のいずれか1項に記載の電波吸収体。
【請求項7】
立体形状を有する請求項1~請求項
5のいずれか1項に記載の電波吸収体。
【請求項8】
請求項1~請求項
7のいずれか1項に記載の電波吸収体の製造に用いられるコンパウンドであり、
磁性粉体とバインダーとを含み、かつ、前記磁性粉体の充填率が8体積%以上35体積%以下であり、
前記磁性粉体が、マグネトプランバイト型六方晶フェライトの粉体を含み、
前記磁性粉体は、レーザ回折散乱法により測定した個数基準の粒度分布において、最頻値をモード径、累積10%径をD
10、及び累積90%径をD
90としたときに、モード径が5μm以上10μm未満であり、かつ、(D90-D10)/モード径 ≦ 3.0であるコンパウンド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電波吸収体及びコンパウンドに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子料金収受システム(ETC:Electronic Toll Collection System)、走行支援道路システム(AHS:Advanced Cruise-Assist Highway Systems)、衛星放送等、高周波数帯域における電波の利用形態の多様化に伴い、電波干渉による電子機器の誤作動、故障等が問題となっている。このような電波干渉が電子機器へ与える影響を低減するため、電波吸収体に不要な電波を吸収させ、電波の反射を防止することが行われている。
【0003】
例えば、特許文献1には、粒子状の電波吸収材料と樹脂製バインダーとを含む可撓性を有する電波吸収層を備えた電波吸収シートであって、上記電波吸収材料がミリ波帯域以上の周波帯域で磁気共鳴する磁性酸化鉄であり、上記電波吸収材料の磁化容易軸が、上記電波吸収シートの面内の一方向に磁場配向されている電波吸収シートが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
電波吸収体には、反射減衰量及び透過減衰量が共に高いこと、具体的には、反射減衰量及び透過減衰量がいずれも10dB以上であることが求められる。
電波吸収体の反射減衰量を高める方法としては、電波吸収層の電波が入射する側とは反対側(所謂、背面側)に電波を反射する反射層を設ける方法がある。反射層には、一般的に、金属を含む層(所謂、金属層)が使用されるが、近年、リサイクルの観点から、金属層の使用を避ける傾向がある。また、金属層を有する電波吸収体では、電波吸収層と金属層とが剥離しやすい、金属層自体が劣化しやすい、コスト高となる等の問題がある。そのため、金属層を有しない電波吸収体の設計が望ましい。
【0006】
しかし、一般的に用いられる誘電体型の電波吸収体では、金属層を設けない場合には、透過減衰量を確保しようとすると反射減衰量が小さくなる。
金属層を有しない電波吸収体において、反射減衰量と透過減衰量とを共に向上させることは、従来困難であった。
【0007】
上述の点に関し、特許文献1では、金属層を有する場合の問題について、何ら着目しておらず、また、金属層を有しない電波吸収体において、反射減衰量及び透過減衰量を共に高めることについては、何ら言及していない。
【0008】
本発明の一実施形態が解決しようとする課題は、金属層を有しない電波吸収体であって、かつ、ミリ波帯域における透過減衰量及び反射減衰量が共に10dB以上である電波吸収体を提供することである。
本発明の他の実施形態が解決しようとする課題は、上記電波吸収体の製造に用いられるコンパウンドを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するための手段には、以下の態様が含まれる。
<1> 磁性粉体とバインダーとを含む電波吸収層を有し、かつ、金属層を有しない電波吸収体であり、
上記電波吸収層における上記磁性粉体の充填率が、35体積%以下であり、
上記電波吸収層における上記磁性粉体の充填率をP体積%とし、かつ、上記電波吸収層の厚みをQmmとしたときに、0.65≦(P/100)×Qの関係を満たす電波吸収体。
<2> 上記電波吸収層の厚みが10mm以下であり、かつ、上記充填率が8体積%以上35体積%以下である<1>に記載の電波吸収体。
<3> 上記電波吸収層の厚みが5mm以下であり、かつ、上記充填率が15体積%以上35体積%以下である<1>又は<2>に記載の電波吸収体。
<4> 上記磁性粉体が、マグネトプランバイト型六方晶フェライトの粉体を含む<1>~<3>のいずれか1つに記載の電波吸収体。
<5> 上記磁性粉体が、下記の式(1)で表されるマグネトプランバイト型六方晶フェライトの粉体を含む<1>~<4>のいずれか1つに記載の電波吸収体。
【0010】
【0011】
式(1)中、Aは、Sr、Ba、Ca、及びPbからなる群より選ばれる少なくとも1種の金属元素を表し、xは、1.5≦x≦8.0を満たす。
【0012】
<6> 上記式(1)におけるAが、Srである<5>に記載の電波吸収体。
<7> 上記式(1)におけるxが、1.5≦x≦6.0を満たす<5>又は<6>に記載の電波吸収体。
<8> 上記磁性粉体は、レーザ回折散乱法により測定した個数基準の粒度分布において、最頻値をモード径、累積10%径をD10、及び累積90%径をD90としたときに、モード径が5μm以上10μm未満であり、かつ、(D90-D10)/モード径 ≦ 3.0である<1>~<7>のいずれか1つに記載の電波吸収体。
<9> 平面形状を有する<1>~<8>のいずれか1つに記載の電波吸収体。
<10> 立体形状を有する<1>~<8>のいずれか1つに記載の電波吸収体。
<11> <1>~<10>のいずれか1つに記載の電波吸収体の製造に用いられるコンパウンドであり、磁性粉体とバインダーとを含み、かつ、上記磁性粉体の充填率が35体積%以下であるコンパウンド。
【発明の効果】
【0013】
本発明の一実施形態によれば、金属層を有しない電波吸収体であって、かつ、ミリ波帯域における透過減衰量及び反射減衰量が共に10dB以上である電波吸収体が提供される。
本発明の他の実施形態によれば、上記電波吸収体の製造に用いられるコンパウンドが提供される。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を適用した電波吸収体の実施形態の一例について説明する。但し、本発明は、以下の実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の目的の範囲内において、適宜、変更を加えて実施できる。
【0015】
本開示において「~」を用いて示された数値範囲は、「~」の前後に記載される数値をそれぞれ最小値及び最大値として含む範囲を意味する。
本開示に段階的に記載されている数値範囲において、ある数値範囲で記載された上限値又は下限値は、他の段階的な記載の数値範囲の上限値又は下限値に置き換えてもよい。また、本開示に記載されている数値範囲において、ある数値範囲で記載された上限値又は下限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。
本開示において、2以上の好ましい態様の組み合わせは、より好ましい態様である。
本開示において、各成分の量は、各成分に該当する物質が複数種存在する場合には、特に断らない限り、複数種の物質の合計量を意味する。
【0016】
本開示において、「工程」の用語は、独立した工程だけではなく、他の工程と明確に区別できない場合であっても、その工程の所期の目的が達成されれば本用語に含まれる。
【0017】
本開示において、非SI単位「Oe」からSI単位「A/m」への変換係数は、「103/4π」とする。ここで、「π」は、3.1416とする。
【0018】
本開示において、非SI単位「emu」からSI単位「A・m2」への変換係数は、「10-3」とする。
【0019】
[電波吸収体]
本開示の電波吸収体は、磁性粉体とバインダーとを含む電波吸収層を有し、かつ、金属層を有しない電波吸収体であり、電波吸収層における磁性粉体の充填率が35体積%以下であり、電波吸収層における磁性粉体の充填率をP体積%とし、かつ、電波吸収層の厚みをQmmとしたときに、0.65≦(P/100)×Qの関係を満たす電波吸収体である。
本開示の電波吸収体は、磁性粉体とバインダーとを含む電波吸収層を有し、電波吸収層における磁性粉体の充填率が35体積%以下であり、電波吸収層における磁性粉体の充填率をP体積%とし、かつ、電波吸収層の厚みをQmmとしたときに、0.65≦(P/100)×Qの関係を満たすため、金属層を有しないにも関わらず、ミリ波帯域における透過減衰量及び反射減衰量が共に10dB以上となる。
透過減衰量及び反射減衰量が共に10dB以上である電波吸収体によれば、少なくとも90%の電波を吸収できる。
【0020】
~電波吸収体の構成~
本開示の電波吸収体は、電波吸収層を有し、金属層を有しない電波吸収体である。
本開示において、「金属層」は、金属を含む層であって、電波を実質的に反射する層を意味する。ここで、「電波を実質的に反射する」とは、例えば、入射した電波の90%以上を反射することを意味する。
金属層としては、金属板、金属箔等が挙げられ、例えば、蒸着によって形成された金属薄膜であってもよい。金属層は、一般的には、電波吸収層の電波が入射する側とは反対側に形成される。
なお、電波吸収層に該当する層は、本開示における「金属層」には、包含されない。
【0021】
本開示の電波吸収体は、本開示の電波吸収体の効果を損なわない範囲において、必要に応じて、電波吸収層以外の層(所謂、他の層)を有していてもよい。
他の層としては、保護層、粘着剤層、剥離層等が挙げられる。
また、本開示の電波吸収体は、本開示の電波吸収体の効果を損なわない範囲において、他の層として、金属を含まない反射層を有していてもよいが、金属を含まない反射層を有していない態様が好ましい。
【0022】
~電波吸収体の形状~
本開示の電波吸収体は、平面形状を有していてもよく、立体形状を有していてもよい。
平面形状としては、特に制限はなく、シート状、フィルム状等の形状が挙げられる。
立体形状としては、筒状(円筒状、角筒状等)、ホーン状、箱状(但し、面の1つが開放されている)などが挙げられる。
【0023】
〔電波吸収層〕
電波吸収層は、磁性粉体とバインダーとを含む。
電波吸収層に含まれる成分の詳細は、後述する。
【0024】
電波吸収層における磁性粉体の充填率は、35体積%以下であり、8体積%以上35体積%以下であることが好ましく、15体積%以上35体積%以下であることがより好ましく、20体積%以上35体積%以下であることが更に好ましく、25体積%以上35体積%以下であることが特に好ましい。
電波吸収層における磁性粉体の充填率が35体積%以下であると、電波吸収体は、金属層を有しない場合であっても、10dB以上の反射減衰量を実現し得る。
【0025】
電波吸収層における磁性粉体の充填率は、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて、以下の方法により測定し、算出した値である。
電波吸収層を5mm×5mmの大きさに切断する。切断した電波吸収層をステージに貼り付けた後、集束イオンビーム(FIB)を用いて、厚み方向に断面を加工する。加工した電波吸収層の断面が上部になるようにステージにセットした後、電界放出形走査電子顕微鏡(FE-SEM)を用いて、加圧電圧15kV、及び、観察倍率3,000倍の条件にて、視野が30μm×40μmの断面SEM像を得る。得られた断面SEM像を2値化処理し、磁性粉体の割合を求め、磁性粉体の充填率を算出する。
以上の操作を、電波吸収層の切断箇所を変えて5回行い、算出した値の算術平均値を電波吸収層における磁性粉体の充填率とする。なお、算術平均値は、小数点以下1桁目を四捨五入する。
【0026】
集束イオンビーム(FIB)装置としては、例えば、(株)日立製作所の高性能集束イオンビーム(FIB)装置(製品名:MI4050)を好適に用いることができる。但し、集束イオンビーム(FIB)装置は、これに限定されない。
電界放出形走査電子顕微鏡(FE-SEM)としては、例えば、(株)日立製作所の電界放出形走査電子顕微鏡(製品名:SU-8220)を好適に用いることができる。但し、電界放出形走査電子顕微鏡(FE-SEM)は、これに限定されない。
【0027】
電波吸収層は、電波吸収層における磁性粉体の充填率をP体積%とし、かつ、電波吸収層の厚みをQmmとしたときに、0.65≦(P/100)×Qの関係を満たし、0.65≦(P/100)×Q≦5.0の関係を満たすことが好ましく、0.65≦(P/100)×Q≦3.5の関係を満たすことがより好ましく、0.65≦(P/100)×Q≦1.75の関係を満たすことが更に好ましく、0.65≦(P/100)×Q≦1.0の関係を満たすことが特に好ましい。
0.65≦(P/100)×Qの関係を満たすと、電波吸収体は、10dB以上の透過減衰量を実現し得る。
【0028】
電波吸収層の厚みは、既述の「0.65≦(P/100)×Q」の関係を満たせば、特に限定されない。
電波吸収層の厚みは、例えば、設置場所の自由度の観点から、20mm以下であることが好ましく、10mm以下であることがより好ましく、5mm以下であることが更に好ましい。
電波吸収層の厚みの下限は、特に限定されないが、例えば、機械的特性の観点から、2mm以上が好ましい。
【0029】
電磁波吸収層の厚みは、デジタル測長機を用いて測定される値であり、具体的には、任意に選択した9箇所において測定した測定値の算術平均値である。
デジタル測長機としては、例えば、(株)ミツトヨのデジタル測長機〔製品名:Litematic(登録商標) VL-50A〕を好適に用いることができる。但し、デジタル測長機は、これに限定されない。
【0030】
0.65≦(P/100)×Qの関係を満たす態様としては、例えば、電波吸収層の厚みが10mm以下であり、かつ、電波吸収層における磁性粉体の充填率が8体積%以上35体積%以下である態様が好ましく、電波吸収層の厚みが5mm以下であり、かつ、電波吸収層における磁性粉体の充填率が15体積%以上35体積%以下である態様がより好ましく、電波吸収層の厚みが2mm以上5mm以下であり、かつ、電波吸収層における磁性粉体の充填率が20体積%以上35体積%以下である態様が更に好ましい。
【0031】
<磁性粉体>
電波吸収層は、磁性粉体を含む。
磁性粉体としては、特に限定されず、例えば、フェライト、酸化鉄、コバルト、酸化クロム等の粉体が挙げられる。
磁性粉体は、例えば、電波吸収性能の観点から、マグネトプランバイト型六方晶フェライトの粉体(以下、「マグネトプランバイト型六方晶フェライト粉体」ともいう。)を含むことが好ましく、マグネトプランバイト型六方晶フェライト粉体であることがより好ましい。
マグネトプランバイト型六方晶フェライトは、一般的には、組成式A1Fe12O19(式中、A1は、Sr、Ba、Ca、Pb等の金属元素を表す。)で表される化合物である。
但し、本開示における「マグネトプランバイト型六方晶フェライト」の概念には、組成式A1Fe12O19で表されるマグネトプランバイト型六方晶フェライト以外に、後述の式(1)で表されるマグネトプランバイト型六方晶フェライトも包含される。
A1は、例えば、操作性及び取り扱い性の観点から、Sr、Ba、Ca、及びPbからなる群より選ばれる少なくとも1種の金属元素であることが好ましい。
【0032】
磁性粉体は、例えば、磁気特性に優れ、かつ、高周波数帯域でも優れた電波吸収性能を示し得る点で、下記の式(1)で表されるマグネトプランバイト型六方晶フェライトの粉体を含むことが好ましく、式(1)で表されるマグネトプランバイト型六方晶フェライトの粉体であることが好ましい。
以下、式(1)で表されるマグネトプランバイト型六方晶フェライトを「特定マグネトプランバイト型六方晶フェライト」ともいう。また、特定マグネトプランバイト型六方晶フェライトの粉体を「特定マグネトプランバイト型六方晶フェライト粉体」ともいう。
【0033】
【0034】
式(1)中、Aは、Sr、Ba、Ca、及びPbからなる群より選ばれる少なくとも1種の金属元素を表し、xは、1.5≦x≦8.0を満たす。
【0035】
式(1)におけるAは、Sr、Ba、Ca、及びPbからなる群より選ばれる少なくとも1種の金属元素であれば、金属元素の種類及び数は、特に限定されない。
式(1)におけるAは、例えば、操作性及び取り扱い性の観点から、Sr、Ba、及びCaからなる群より選ばれる少なくとも1種の金属元素であることが好ましい。
また、式(1)におけるAは、例えば、79GHz付近で優れた電波吸収性能を示し得る点で、Srを含むことが好ましく、Srであることがより好ましい。
【0036】
式(1)におけるxは、1.5≦x≦8.0を満たし、1.5≦x≦6.0を満たすことが好ましく、1.5≦x≦4.0を満たすことがより好ましく、1.5≦x≦3.0を満たすことが更に好ましい。
式(1)におけるxが1.5以上であると、60GHzよりも高い周波数帯域の電波を吸収できる。
式(1)におけるxが8.0以下であると、マグネトプランバイト型六方晶フェライトが磁性を有する。
【0037】
特定マグネトプランバイト型六方晶フェライトとしては、SrFe(10.44)Al(1.56)O19、SrFe(10.00)Al(2.00)O19、SrFe(9.95)Al(2.05)O19、SrFe(9.85)Al(2.15)O19、SrFe(9.79)Al(2.21)O19、SrFe(9.74)Al(2.26)O19、SrFe(9.70)Al(2.30)O19、SrFe(9.58)Al(2.42)O19、SrFe(9.37)Al(2.63)O19、SrFe(9.33)Al(2.67)O19、SrFe(9.27)Al(2.73)O19、SrFe(7.88)Al(4.12)O19、SrFe(7.71)Al(4.29)O19、SrFe(7.37)Al(4.63)O19、SrFe(7.04)Al(4.96)O19、SrFe(6.25)Al(5.75)O19、BaFe(9.50)Al(2.50)O19、BaFe(10.05)Al(1.95)O19、CaFe(10.00)Al(2.00)O19、PbFe(9.00)Al(3.00)O19、Sr(0.80)Ba(0.10)Ca(0.10)Fe(9.83)Al(2.17)O19、Sr(0.80)Ba(0.10)Ca(0.10)Fe(8.85)Al(3.15)O19等が挙げられる。
例えば、SrFe(10.00)Al(2.00)O19は、76.5GHz付近に共鳴周波数を有する特定マグネトプランバイト型六方晶フェライトであり、SrFe(9.70)Al(2.30)O19は、85.0GHz付近に共鳴周波数を有する特定マグネトプランバイト型六方晶フェライトである。
【0038】
特定マグネトプランバイト型六方晶フェライト粉体の製造方法については、後述する。
【0039】
マグネトプランバイト型六方晶フェライトの組成は、高周波誘導結合プラズマ(ICP:Inductively Coupled Plasma)発光分光分析法により確認する。
具体的には、試料粉体12mg及び4mol/L(リットル;以下、同じ。)の塩酸水溶液10mLを入れた耐圧容器を、設定温度120℃のオーブンで12時間保持し、溶解液を得る。次いで、得られた溶解液に純水30mLを加えた後、0.1μmのメンブレンフィルタを用いてろ過する。このようにして得られたろ液の元素分析を、高周波誘導結合プラズマ(ICP)発光分光分析装置を用いて行う。得られた元素分析の結果に基づき、鉄原子100原子%に対する各金属原子の含有率を求める。求めた含有率に基づき、組成を確認する。
ICP発光分光分析装置としては、例えば、(株)島津製作所のICPS-8100(型番)を好適に用いることができる。但し、ICP発光分光分析装置は、これに限定されない。
【0040】
マグネトプランバイト型六方晶フェライトの結晶相は、単相でもよいし、単相でなくてもよいが、マグネトプランバイト型六方晶フェライトが特定マグネトプランバイト型六方晶フェライトである場合には、結晶相は、単相であることが好ましい。
結晶相が単相である特定マグネトプランバイト型六方晶フェライトの粉体は、アルミニウムの含有割合が同じである場合、結晶相が単相ではない(例えば、結晶相が二相である)特定マグネトプランバイト型六方晶フェライトの粉体と比較して、保磁力が高く、磁気特性により優れる傾向がある。
【0041】
本開示において、「結晶相が単相である」場合とは、粉末X線回折(XRD:X-Ray-Diffraction;以下、同じ。)測定において、任意の組成のマグネトプランバイト型六方晶フェライトの結晶構造を示す回折パターンが1種類のみ観察される場合をいう。
一方、本開示において、「結晶相が単相ではない」場合とは、任意の組成のマグネトプランバイト型六方晶フェライトが複数混在し、回折パターンが2種類以上観察されたり、マグネトプランバイト型六方晶フェライト以外の結晶の回折パターンが観察されたりする場合をいう。
【0042】
結晶相が単相ではない場合、主たるピークとそれ以外のピークとが存在する回折パターンが得られる。ここで、「主たるピーク」とは、観察される回折パターンにおいて、回折強度の値が最も高いピークを指す。
電波吸収層が、磁性粉体として、マグネトプランバイト型六方晶フェライト粉体を含む場合、マグネトプランバイト型六方晶フェライト粉体の粉末X線回折(XRD)測定により得られる、主たるピークの回折強度の値(以下、「Im」と称する。)に対する、それ以外のピークの回折強度の値(以下、「Is」と称する。)の比(Is/Im)は、例えば、電波吸収性能により優れる電波吸収体を製造できるという観点から、1/2以下であることが好ましく、1/5以下であることがより好ましい。
なお、2種以上の回折パターンが重なり、それぞれの回折パターンのピークが極大値を有している場合には、それぞれの極大値をIm及びIsと定義し、比を求める。また、2種以上の回折パターンが重なり、主たるピークの肩部として、それ以外のピークが観察される場合には、肩部の最大強度値をIsと定義し、比を求める。
また、それ以外のピークが2つ以上存在する場合には、それぞれの回折強度の合計値をIsと定義し、比を求める。
【0043】
回折パターンの帰属には、例えば、国際回折データセンター(ICDD:International Centre for Diffraction Data、登録商標)のデータベースを参照できる。
例えば、Srを含むマグネトプランバイト型六方晶フェライトの回折パターンは、国際回折データセンター(ICDD)の「00-033-1340」を参照できる。但し、特定マグネトプランバイト型六方晶フェライトのように、鉄の一部がアルミニウムに置換されると、ピーク位置はシフトする。
【0044】
マグネトプランバイト型六方晶フェライトの結晶相が単相であることは、既述のとおり、粉末X線回折(XRD)測定により確認する。
具体的には、粉末X線回折(XRD)装置を用い、以下の条件にて測定する。
粉末X線回折(XRD)装置としては、例えば、PANalytical社のX’Pert Pro(製品名)を好適に用いることができる。但し、粉末X線回折(XRD)装置は、これに限定されない。
【0045】
-条件-
X線源:CuKα線
〔波長:1.54Å(0.154nm)、出力:40mA,45kV〕
スキャン範囲:20°<2θ<70°
スキャン間隔:0.05°
スキャンスピード:0.75°/min
【0046】
電波吸収層が、マグネトプランバイト型六方晶フェライト粉体を含んでいることは、例えば、以下の方法により確認できる。
電波吸収層を細かく切り刻んだ後、溶剤(例えば、アセトン)中に1日間~2日間浸漬した後、乾燥させる。乾燥後の電波吸収層を更に細かく磨り潰し、粉末X線回折(XRD)測定を行うことにより、構造を確認できる。
また、電波吸収層の断面を切り出した後、例えば、エネルギー分散型X線分析装置を用いることで、組成を確認できる。
【0047】
磁性粉体を構成する粒子の形状としては、特に限定されず、例えば、球状、ロッド状、針状、平板状、不定形状等の形状が挙げられる。
マグネトプランバイト型六方晶フェライト粉体を構成する粒子の形状としては、例えば、平板状、不定形状等である。
【0048】
磁性粉体を構成する粒子の大きさは、特に限定されない。
磁性粉体(好ましくはマグネトプランバイト型六方晶フェライト粉体、より好ましくは特定マグネトプランバイト型六方晶フェライト粉体;以下、同じ。)は、レーザ回折散乱法により測定した個数基準の粒度分布において、最頻値をモード径、累積10%径をD10、及び累積90%径をD90としたときに、モード径が5μm以上10μm未満であり、かつ、(D90-D10)/モード径 ≦ 3.0であることが好ましく、モード径が5μm以上10μm未満であり、かつ、(D90-D10)/モード径 ≦ 2.5であることがより好ましく、モード径が5μm以上10μm未満であり、かつ、(D90-D10)/モード径 ≦ 2.0であることが更に好ましく、モード径が5μm以上10μm未満であり、かつ、(D90-D10)/モード径 ≦ 1.5であることが特に好ましく、モード径が5μm以上10μm未満であり、かつ、(D90-D10)/モード径 ≦ 1.0であることが最も好ましい。
【0049】
モード径が5μm以上であり、(D90-D10)/モード径 ≦ 3.0である磁性粉体によれば、磁気特性が劣る微細な粒子が比較的少ないため、電波吸収性能により優れる電波吸収体を製造できる傾向がある。
モード径が10μm未満であり、(D90-D10)/モード径 ≦ 3.0である磁性粉体によれば、粗大な粒子が比較的少ないため、強度により優れる電波吸収体を製造できる傾向がある。
【0050】
磁性粉体の粒径(即ち、モード径、D10、及びD90)は、篩、遠心分離機等による分級、乳鉢及び乳棒、超音波分散機等による粉砕などにより、制御できる。例えば、磁性粉体の粒径を粉砕により制御する場合には、粉砕手段、粉砕時間、メディアの材質、メディア径等の選択により、目的の値に調整可能である。
例えば、メディアを用いる粉砕によれば、磁性粉体の粒径は、小さくなる傾向を示す。また、例えば、粉砕時間が長いほど、磁性粉体の粒径は、小さくなる傾向を示す。また、例えば、メディア径が小さいほど、磁性粉体の粒径は、小さくなる傾向を示す。
「(D90-D10)/モード径」の値は、粉砕後に、例えば、篩、遠心分離機等による分級により粒子を選別することで、目的の値に調整が可能である。
【0051】
磁性粉体の最頻値、累積10%径、及び累積90%径は、レーザ回折散乱法により測定した個数基準の粒度分布に基づいて求められる値である。具体的には、以下の方法により測定される値である。
磁性粉体10mgにシクロヘキサノン500mLを加えて希釈した後、振とう機を用いて30秒間撹拌し、得られた液を粒度分布測定用サンプルとする。次いで、粒度分布測定用サンプルを用いて、レーザ回折散乱法により粒度分布を測定する。測定装置には、レーザ回折/散乱式粒子径分布測定装置を用いる。
【0052】
レーザ回折/散乱式粒子径分布測定装置としては、例えば、(株)堀場製作所のPartica LA-960(製品名)を好適に用いることができる。但し、レーザ回折/散乱式粒子径分布測定装置は、これに限定されない。
【0053】
電波吸収層に含まれる磁性粉体の粒径は、例えば、以下の方法により確認できる。
電波吸収層を細かく切り刻んだ後、溶剤(例えば、アセトン)中に超音波分散させる。得られた分散液を試料とし、レーザ回折散乱法による測定を行うことにより、磁性粉体の粒径を確認できる。
【0054】
磁性粉体の保磁力(Hc)は、特に限定されないが、例えば、2.5kOe以上であることが好ましく、4.0kOe以上であることがより好ましく、5.0kOe以上であることが更に好ましい。
磁性粉体の保磁力(Hc)が2.5kOe以上であると、電波吸収性能により優れる電波吸収体を製造できる。
磁性粉体の保磁力(Hc)の上限は、特に限定されないが、例えば、18kOe以下であることが好ましい。
【0055】
磁性粉体の単位質量あたりの飽和磁化(δs)は、特に限定されないが、例えば、10emu/g以上であることが好ましく、20emu/g以上であることがより好ましく、30emu/g以上であることが更に好ましい。
磁性粉体の単位質量あたりの飽和磁化(δs)が10emu/g以上であると、電波吸収性能により優れる電波吸収体を製造できる。
磁性粉体の単位質量あたりの飽和磁化(δs)の上限は、特に限定されないが、例えば、60emu/g以下であることが好ましい。
【0056】
磁性粉体の保磁力(Hc)及び単位質量あたりの飽和磁化(δs)は、振動試料型磁力計を用いて、雰囲気温度23℃の環境下、最大印加磁界50kOe、及び磁界掃引速度25Oe/s(秒)の条件にて測定した値である。
振動試料型磁力計としては、例えば、(株)玉川製作所のTM-TRVSM5050-SMSL型(型番)を好適に用いることができる。但し、振動試料型磁力計は、これに限定されない。
【0057】
電波吸収層は、磁性粉体を1種のみ含んでいてもよく、2種以上含んでいてもよい。
【0058】
電波吸収層における磁性粉体の質量基準の含有量は、電波吸収層における磁性粉体の充填率が35体積%以下となる量であれば、特に限定されない。
【0059】
~特定マグネトプランバイト型六方晶フェライト粉体の製造方法~
特定マグネトプランバイト型六方晶フェライト粉体の製造方法は、特に限定されない。
特定マグネトプランバイト型六方晶フェライト粉体は、固相法及び液相法のいずれの方法でも製造できる。
特定マグネトプランバイト型六方晶フェライト粉体を固相法により製造する方法としては、例えば、SrCO3、Al2O3、α-Fe2O3等を原料として用いる方法が挙げられる。特定マグネトプランバイト型六方晶フェライト粉体の固相法による一般的な製造方法については、特許第4674380号公報の段落[0023]~[0025]を適宜参照できる。
特定マグネトプランバイト型六方晶フェライト粉体を製造する方法としては、磁気特性により優れる特定マグネトプランバイト型六方晶フェライト粉体を得やすいという観点から、以下で説明する方法(以下、「製造方法A」という。)が好ましい。
【0060】
製造方法Aは、液相法により、Feと、Alと、Sr、Ba、Ca、及びPbからなる群より選ばれる少なくとも1種の金属元素(以下、「特定金属元素」ともいう。)と、を含む反応生成物を得る工程Aと、工程Aにて得られた反応生成物を乾燥して乾燥物を得る工程Bと、工程Bにて得られた乾燥物を焼成して焼成物を得た後、得られた焼成物を粉砕する工程(以下、「c1工程」ともいう。)、又は、工程Bにて得られた乾燥物を粉砕して粉砕物を得た後、得られた粉砕物を焼成する工程(以下、「c2工程」ともいう。)のいずれか一方の工程Cと、を含む。
工程A、工程B、及び工程Cは、それぞれ2段階以上に分かれていてもよい。
また、製造方法Aは、必要に応じて、工程A、工程B、及び工程C以外の工程を含んでいてもよい。
以下、各工程について詳細に説明する。
【0061】
(工程A)
工程Aは、液相法により、Feと、Alと、Sr、Ba、Ca、及びPbからなる群より選ばれる少なくとも1種の金属元素(即ち、特定金属元素)と、を含む反応生成物を得る工程である。
工程Aでは、特定マグネトプランバイト型六方晶フェライト粉体の前駆体となる反応生成物を得ることができる。工程Aにて得られる反応生成物は、水酸化鉄、水酸化アルミニウム、鉄とアルミニウムと特定金属元素との複合水酸化物等であると推測される。
【0062】
工程Aは、Fe塩、Al塩、及び特定金属元素の塩を含む水溶液(以下、「原料水溶液」ともいう。)と、アルカリ水溶液と、を混合して反応生成物を得る工程(以下、「工程A1」ともいう。)を含むことが好ましい。
工程A1では、原料水溶液とアルカリ水溶液とを混合することにより、反応生成物の沈殿物が生じる。工程A1では、特定マグネトプランバイト型六方晶フェライト粉体の前駆体となる反応生成物を含む液(所謂、前駆体含有液)を得ることができる。
また、工程Aは、工程A1にて得られた反応生成物を固液分離する工程(以下、「工程A2」ともいう。)を含むことが好ましい。
工程A2では、特定マグネトプランバイト型六方晶フェライト粉体の前駆体となる反応生成物(即ち、工程Aにおける反応生成物)を得ることができる。
【0063】
-工程A1-
工程A1は、Fe塩、Al塩、及び特定金属元素の塩を含む水溶液(即ち、原料水溶液)と、アルカリ水溶液と、を混合して反応生成物を得る工程である。
Fe塩、Al塩、及び特定金属元素の塩における塩としては、特に限定されず、例えば、入手容易性及びコストの観点から、硝酸塩、硫酸塩、塩化物等の水溶性の無機酸塩が好ましい。
Fe塩の具体例としては、塩化鉄(III)六水和物〔FeCl3・6H2O〕、硝酸鉄(III)九水和物〔Fe(NO3)3・9H2O〕等が挙げられる。
Al塩の具体例としては、塩化アルミニウム六水和物〔AlCl3・6H2O〕、硝酸アルミニウム九水和物〔Al(NO3)3・9H2O〕等が挙げられる。
Sr塩の具体例としては、塩化ストロンチウム六水和物〔SrCl2・6H2O〕、硝酸ストロンチウム〔Sr(NO3)2〕、酢酸ストロンチウム0.5水和物〔Sr(CH3COO)2・0.5H2O〕等が挙げられる。
Ba塩の具体例としては、塩化バリウム二水和物〔BaCl2・2H2O〕、硝酸バリウム〔Ba(NO3)2〕、酢酸バリウム〔(CH3COO)2Ba〕等が挙げられる。
Ca塩の具体例としては、塩化カルシウム二水和物〔CaCl2・2H2O〕、硝酸カルシウム四水和物〔Ca(NO3)2・4H2O〕、酢酸カルシウム一水和物〔(CH3COO)2Ca・H2O〕等が挙げられる。
Pb塩の具体例としては、塩化鉛(II)〔PbCl2〕、硝酸鉛(II)〔Pb(NO3)2〕等が挙げられる。
【0064】
アルカリ水溶液としては、特に限定されず、水酸化ナトリウム水溶液、水酸化カリウム水溶液等が挙げられる。
アルカリ水溶液の濃度は、特に限定されず、例えば、0.1mol/L~10mol/Lとすることができる。
【0065】
原料水溶液とアルカリ水溶液とは、単に混合すればよい。
原料水溶液とアルカリ水溶液とは、全量を一度に混合してもよく、原料水溶液とアルカリ水溶液とを少しずつ徐々に混合してもよい。また、原料水溶液及びアルカリ水溶液のいずれか一方に、他方を少しずつ添加しながら混合してもよい。
例えば、電波吸収性能の再現性の観点からは、原料水溶液とアルカリ水溶液とを少しずつ徐々に混合することが好ましい。
原料水溶液とアルカリ水溶液とを混合する方法は、特に限定されず、例えば、撹拌により混合する方法が挙げられる。
撹拌手段としては、特に限定されず、一般的な撹拌器具又は撹拌装置を用いることができる。
【0066】
撹拌時間は、混合する成分の反応が終了すれば、特に限定されず、原料水溶液の組成、撹拌器具又は撹拌装置の種類等に応じて、適宜設定できる。
原料水溶液とアルカリ水溶液とを混合する際の温度は、例えば、突沸を防ぐ観点から、100℃以下が好ましく、反応生成物が良好に得られるという観点から、95℃以下がより好ましく、15℃以上92℃以下が更に好ましい。
温度を調整する手段としては、特に限定されず、一般的な加熱装置、冷却装置等を用いることができる。
【0067】
原料水溶液とアルカリ水溶液との混合により得られる水溶液の25℃におけるpHは、例えば、反応生成物をより得やすいとの観点から、5~13が好ましく、6~12がより好ましい。
【0068】
原料水溶液とアルカリ水溶液との混合比率は、特に限定されず、例えば、原料水溶液1質量部に対して、アルカリ水溶液を0.1質量部~10.0質量部に設定できる。
【0069】
-工程A2-
工程A2は、工程A1にて得られた反応生成物を固液分離する工程である。
固液分離の方法は、特に限定されず、デカンテーション、遠心分離、濾過(吸引濾過、加圧濾過等)などの方法が挙げられる。
固液分離の方法が遠心分離である場合、遠心分離の条件は、特に限定されない。例えば、回転数2000rpm(revolutions per minute;以下、同じ)以上で、3分間~30分間遠心分離することが好ましい。また、遠心分離は、複数回行ってもよい。
【0070】
(工程B)
工程Bは、工程Aにて得られた反応生成物を乾燥して乾燥物(所謂、前駆体の粉体)を得る工程である。
工程Aにて得られた反応生成物を焼成前に乾燥させることにより、製造される電波吸収体の電波吸収性能の再現性が良好となる。また、工程Aにて得られた反応生成物を粉砕前に乾燥させることにより、特定マグネトプランバイト型六方晶フェライト粉体の粒度分布を粉砕により制御しやすくなる。
【0071】
乾燥手段は、特に限定されず、例えば、オーブン等の乾燥機が挙げられる。
乾燥温度としては、特に限定されないが、例えば、50℃~200℃が好ましく、70℃~150℃がより好ましい。
乾燥時間としては、特に限定されないが、例えば、2時間~50時間が好ましく、5時間~30時間がより好ましい。
【0072】
(工程C)
工程Cは、工程Bにて得られた乾燥物を焼成して焼成物を得た後、得られた焼成物を粉砕する工程(即ち、c1工程)、又は、工程Bにて得られた乾燥物を粉砕して粉砕物を得た後、得られた粉砕物を焼成する工程(即ち、c2工程)のいずれか一方の工程である。
工程Bにて得られた乾燥物を焼成して焼成物を得た後、得られた焼成物を粉砕するか、或いは、工程Bにて得られた乾燥物を粉砕して粉砕物を得た後、得られた粉砕物を焼成することにより、目的とする粒径の特定マグネトプランバイト型六方晶フェライト粉体を得ることができる。
【0073】
工程Cは、c1工程であってもよく、c2工程であってもよい。
例えば、焼成後の磁気特性をより均一にするという観点からは、工程Cは、c2工程であることが好ましい。
なお、工程Cがc2工程である場合、焼成した粉砕物を更に粉砕してもよい。
【0074】
焼成は、加熱装置を用いて行うことができる。
加熱装置は、目的の温度に加熱することができれば、特に限定されず、公知の加熱装置をいずれも用いることができる。加熱装置としては、例えば、電気炉の他、製造ラインに合わせて独自に作製した焼成装置を用いることができる。
焼成は、大気雰囲気下で行うことが好ましい。
焼成温度としては、特に限定されないが、例えば、900℃以上が好ましく、900℃~1400℃がより好ましく、1000℃~1200℃が更に好ましい。
焼成時間としては、特に限定されないが、例えば、1時間~10時間が好ましく、2時間~6時間がより好ましい。
【0075】
粉砕手段は、目的とする粒径の特定マグネトプランバイト型六方晶フェライト粉体を得ることができれば、特に限定されない。
粉砕手段としては、乳鉢及び乳棒、粉砕機(カッターミル、ボールミル、ビーズミル、ローラーミル、ジェットミル、ハンマーミル、アトライター等)などが挙げられる。
【0076】
メディアを用いる粉砕の場合、メディアの粒径(所謂、メディア径)は、特に限定されず、例えば、0.1mm~5.0mmが好ましく、0.5mm~3.0mmがより好ましい。
本開示において、「メディア径」とは、球状メディア(例えば、球状ビーズ)の場合は、メディア(例えば、ビーズ)の直径を意味し、非球状メディア(例えば、非球状ビーズ)の場合は、透過型電子顕微鏡(TEM)又は走査型電子顕微鏡(SEM)の観察像から複数個のメディア(例えば、ビーズ)の円相当径を測定し、測定値を算術平均して求められる直径を意味する。
【0077】
メディアの材質は、特に限定されず、例えば、ガラス製、アルミナ製、スチール製、ジルコニア製、セラミック製等のメディアを好適に用いることができる。
【0078】
<バインダー>
電波吸収層は、バインダーを含む。
バインダーとしては、例えば、熱可塑性樹脂及び熱硬化性樹脂が挙げられる。
熱可塑性樹脂としては、アクリル樹脂;ポリアセタール;ポリアミド;ポリエチレン;ポリプロピレン;ポリエチレンテレフタレート;ポリブチレンテレフタレート;ポリカーボネート;ポリスチレン;ポリフェニレンサルファイド;ポリ塩化ビニル;アクリロニトリルとブタジエンとスチレンとの共重合により得られるABS(acrylonitrile butadiene styrene)樹脂;アクリロニトリルとスチレンとの共重合により得られるAS(acrylonitrile styrene)樹脂等が挙げられる。
熱硬化性樹脂としては、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、ユリア樹脂、不飽和ポリエステル、ジアリルフタレート樹脂、ウレタン樹脂、シリコン樹脂等が挙げられる。
【0079】
バインダーとしては、例えば、ゴムが挙げられる。
ゴムとしては、例えば、磁性粉体との混合性が良好であり、かつ、耐久性、耐候性、及び耐衝撃性により優れる電波吸収体を製造できるという観点から、ブタジエンゴム;イソプレンゴム;クロロプレンゴム;ハロゲン化ブチルゴム;フッ素ゴム;ウレタンゴム;アクリル酸エステル(例えば、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、及びアクリル酸2-エチルヘキシル)と他の単量体との共重合により得られるアクリルゴム(ACM);チーグラー触媒を用いたエチレンとプロピレンとの配位重合により得られるエチレン-プロピレンゴム;イソブチレンとイソプレンとの共重合により得られるブチルゴム(IIR);ブタジエンとスチレンとの共重合により得られるスチレンブタジエンゴム(SBR);アクリロニトリルとブタジエンとの共重合により得られるアクリロニトリルブタジエンゴム(NBR);シリコーンゴム等が好ましい。
【0080】
バインダーとしては、例えば、熱可塑性エラストマー(TPE)も挙げられる。
熱可塑性エラストマーとしては、オレフィン系熱可塑性エラストマー(TPO)、スチレン系熱可塑性エラストマー(TPS)、アミド系熱可塑性エラストマー(TPA)、ポリエステル系熱可塑性エラストマー(TPC)等が挙げられる。
【0081】
電波吸収層は、バインダーとしてゴムを含む場合、ゴムに加えて、加硫剤、加硫助剤、軟化剤、可塑剤等の各種添加剤を含んでいてもよい。
加硫剤としては、硫黄、有機硫黄化合物、金属酸化物等が挙げられる。
【0082】
バインダーのメルトマススローレイト(以下、「MFR」ともいう。)は、特に限定されないが、例えば、1g/10min~200g/10minであることが好ましく、3g/10min~100g/10minであることがより好ましく、5g/10min~80g/10minであることが更に好ましく、10g/10min~50g/10minであることが特に好ましい。
バインダーのMFRが1g/10min以上であると、流動性が十分に高く、外観不良がより生じ難い。
バインダーのMFRが200g/10min以下であると、成形体の強度等の機械特性をより高めやすい。
バインダーのMFRは、JIS K 7210:1999に準拠して、測定温度230℃及び荷重10kgの条件で測定される値である。
【0083】
バインダーの硬度は、特に限定されないが、例えば、成形適性の観点から、5g~150gであることが好ましく、10g~120gであることがより好ましく、30g~100gであることが更に好ましく、40g~90gであることが特に好ましい。
バインダーの硬度は、JIS K 6253-3:2012に準拠して測定される瞬間値である。
【0084】
バインダーの密度は、特に限定されないが、例えば、成形適性の観点から、600kg/m3~1100kg/m3であることが好ましく、700kg/m3~1000kg/m3であることがより好ましく、750kg/m3~1050kg/m3であることが更に好ましく、800kg/m3~950kg/m3であることが特に好ましい。
バインダーの密度は、JIS K 0061:2001に準拠して測定される値である。
【0085】
バインダーの100%引張応力は、特に限定されないが、例えば、成形適性の観点から、0.2MPa~20MPaであることが好ましく、0.5MPa~10MPaであることがより好ましく、1MPa~5MPaであることが更に好ましく、1.5MPa~3MPaであることが特に好ましい。
バインダーの引張強さは、特に限定されないが、例えば、成形適性の観点から、1MPa~20MPaであることが好ましく、2MPa~15MPaであることがより好ましく、3MPa~10MPaであることが更に好ましく、5MPa~8MPaであることが特に好ましい。
バインダーの切断時伸びは、特に限定されないが、例えば、成形適性の観点から、110%~1500%であることが好ましく、150%~1000%であることがより好ましく、200%~900%であることが更に好ましく、400%~800%であることが特に好ましい。
以上の引張特性は、JIS K 6251:2010に準拠して測定される値である。測定は、試験片としてJIS 3号ダンベルを用い、引張速度500mm/minの条件で行う。
【0086】
電波吸収層は、バインダーを1種のみ含んでいてもよく、2種以上含んでいてもよい。
【0087】
電波吸収層におけるバインダーの充填率は、特に限定されないが、例えば、65体積%以上であることが好ましく、65体積%以上92体積%以下であることがより好ましく、65体積%以上85体積%以下であることが更に好ましい。
【0088】
<他の添加剤>
電波吸収層は、磁性粉体及びバインダー以外に、本開示の電波吸収体の効果を損なわない範囲において、必要に応じて、種々の添加剤(所謂、他の添加剤)を含んでいてもよい。
他の添加剤としては、分散剤、分散助剤、防黴剤、帯電防止剤、酸化防止剤等が挙げられる。他の添加剤は、1つの成分が2つ以上の機能を担うものであってもよい。
【0089】
[電波吸収体の製造方法]
本開示の電波吸収体の製造方法は、特に限定されない。
本開示の電波吸収体は、磁性粉体と、バインダーと、必要に応じて、溶剤、他の添加剤等と、を用いて、公知の方法により製造できる。
【0090】
本開示の電波吸収体は、例えば、以下の方法Xにより製造できる。
磁性粉体と、バインダーと、必要に応じて、他の添加剤と、を含む混合物を、加熱しながら、混練機を用いて混練し、コンパウンドを得る。次いで、得られたコンパウンドを成形加工することにより、電波吸収層からなる電波吸収体を製造できる。
【0091】
方法Xにおける磁性粉体は、「電波吸収体」の項において説明した磁性粉体と同義であり、好ましい態様も同様であるため、ここでは説明を省略する。
混合物における磁性粉体の含有率は、最終的に得られる電波吸収層における磁性粉体の充填率が35体積%以下となるように調整すればよい。
【0092】
方法Xにおけるバインダーは、「電波吸収体」の項において説明したバインダーと同義であり、好ましい態様も同様であるため、ここでは説明を省略する。
混合物におけるバインダーの含有率は、特に限定されないが、例えば、最終的に得られる電波吸収層におけるバインダーの充填率が、既述の電波吸収層におけるバインダーの充填率になるように調整することが好ましい。
【0093】
方法Xにおける他の添加剤は、「電波吸収体」の項において説明した他の添加剤と同義であり、好ましい態様も同様であるため、ここでは説明を省略する。
【0094】
混合物中において、磁性粉体とバインダーとは、単に混合されていればよい。
磁性粉体とバインダーとを混合する方法は、特に限定されず、例えば、撹拌により混合する方法が挙げられる。
撹拌手段としては、特に限定されず、一般的な撹拌装置を用いることができる。
撹拌装置としては、パドルミキサー、インペラーミキサー等のミキサーが挙げられる。
撹拌時間は、特に限定されず、例えば、撹拌装置の種類、混合物の組成等に応じて、適宜設定できる。
【0095】
混合物の加熱温度は、特に限定されず、例えば、バインダーの種類に応じて、適宜設定できる。
加熱温度は、バインダーを溶融させることができる温度であることが好ましく、例えば、170℃~300℃とすることができる。
【0096】
混練手段としては、特に限定されず、一般的な混練装置を用いることができる。
混練装置としては、ミキサー、二本ロール、ニーダー等の装置が挙げられる。
混練条件は、特に限定されず、例えば、混練装置の種類、混合物の組成等に応じて、適宜設定できる。
【0097】
成形加工としては、例えば、プレス成形、押し出し成形、射出成形、インモールド成形、3次元造形機を用いる成形等による加工が挙げられる。
成形加工条件は、特に限定されず、例えば、成形加工装置の種類、混合物の組成、電波吸収層の厚み等に応じて、適宜設定できる。
【0098】
電波吸収層の厚みは、電波吸収層における磁性粉体の充填率をP体積%とし、かつ、電波吸収層の厚みをQmmとしたときに、0.65≦(P/100)×Qの関係を満たせば、特に限定されない。
電波吸収層の厚みは、例えば、コンパウンドの成形加工により、調整できる。
【0099】
また、本開示の電波吸収体は、例えば、以下の方法Yにより製造できる。
磁性粉体と、バインダーと、必要に応じて、溶剤、他の添加剤等と、を含む電波吸収層形成用組成物を、仮支持体上に塗布し、電波吸収層形成用組成物の塗布膜を形成する。次いで、電波吸収層形成用組成物の塗布膜を乾燥させることにより、電波吸収層を形成する。次いで、電波吸収層から仮支持体を剥離することにより、電波吸収層からなる電波吸収体を製造できる。
【0100】
方法Yにおける磁性粉体は、「電波吸収体」の項において説明した磁性粉体と同義であり、好ましい態様も同様であるため、ここでは説明を省略する。
電波吸収層形成用組成物における磁性粉体の含有率は、最終的に得られる電波吸収層における磁性粉体の充填率が35体積%以下となるように調整すればよい。
【0101】
方法Yにおけるバインダーは、「電波吸収体」の項において説明したバインダーと同義であり、好ましい態様も同様であるため、ここでは説明を省略する。
電波吸収層形成用組成物におけるバインダーの含有率は、特に限定されないが、例えば、最終的に得られる電波吸収層におけるバインダーの充填率が、既述の電波吸収層におけるバインダーの充填率になるように調整することが好ましい。
【0102】
方法Yにおける溶剤は、特に限定されず、例えば、水、有機溶媒、又は、水と有機溶媒との混合溶媒が挙げられる。
有機溶媒としては、メタノール、エタノール、n-プロパノール、i-プロパノール、メトキシプロパノール等のアルコール類、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサン、シクロヘキサノン等のケトン類、テトラヒドロフラン、アセトニトリル、酢酸エチル、トルエンなどが挙げられる。
【0103】
電波吸収層形成用組成物が溶剤を含む場合、電波吸収層形成用組成物における溶剤の含有率は、特に限定されず、例えば、電波吸収層形成用組成物に配合される成分の種類、量等により、適宜設定できる。
【0104】
方法Yにおける他の添加剤は、「電波吸収体」の項において説明した他の添加剤と同義であり、好ましい態様も同様であるため、ここでは説明を省略する。
【0105】
電波吸収層形成用組成物中において、磁性粉体とバインダーとは、単に混合されていればよい。
磁性粉体とバインダーとを混合する方法は、特に限定されず、例えば、撹拌により混合する方法が挙げられる。
撹拌手段としては、特に限定されず、一般的な撹拌装置を用いることができる。
撹拌装置としては、パドルミキサー、インペラーミキサー等のミキサーが挙げられる。
撹拌時間は、特に限定されず、例えば、撹拌装置の種類、電波吸収層形成用組成物の組成等に応じて、適宜設定できる。
【0106】
仮支持体は、特に限定されない。
仮支持体としては、金属板(アルミニウム、亜鉛、銅等の金属の板)、ガラス板、プラスチックシート〔ポリエステル(ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレート等)、ポリエチレン(直鎖状低密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン等)、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリイミド、ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリスルホン、ポリ塩化ビニル、ポリアクリロニトリル、ポリフェニレンスルフィド、ポリエーテルイミド、ポリエーテルスルホン、ポリビニルアセタール、アクリル樹脂等のシート〕などが挙げられる。
プラスチックシートは、表面に離型処理が施されていることが好ましい。
【0107】
仮支持体の大きさは、特に限定されず、例えば、電波吸収層の大きさに応じて、適宜設定できる。
【0108】
仮支持体の厚みは、特に限定されず、通常は、0.01mm~0.5mm程度であり、例えば、作業性の観点から、0.05mm~0.2mmであることが好ましい。
【0109】
仮支持体上に、電波吸収層形成用組成物を塗布する方法は、特に限定されず、例えば、ダイコーター、ナイフコーター、アプリケーター等を用いる方法が挙げられる。
【0110】
電波吸収層形成用組成物の塗布膜を乾燥させる方法としては、特に限定されず、例えば、オーブン等の加熱装置を用いる方法が挙げられる。
乾燥温度及び乾燥時間は、特に限定されず、電波吸収層形成用組成物の塗布膜に含まれる溶剤を揮発させることができればよい。
一例を挙げれば、70℃~90℃にて、1時間~3時間加熱する。
【0111】
電波吸収層の厚みは、電波吸収層における磁性粉体の充填率をP体積%とし、かつ、電波吸収層の厚みをQmmとしたときに、0.65≦(P/100)×Qの関係を満たせば、特に限定されない。
電波吸収層の厚みは、例えば、電波吸収層形成用組成物の塗布量により、調整できる。
【0112】
[コンパウンド]
本開示のコンパウンドは、本開示の電波吸収体の製造に用いられるコンパウンドであり、磁性粉体とバインダーとを含み、かつ、磁性粉体の充填率が35体積%以下である。
【0113】
本開示のコンパウンドにおける磁性粉体は、「電波吸収体」の項において説明した磁性粉体と同義であり、好ましい態様も同様であるため、ここでは説明を省略する。
【0114】
本開示のコンパウンドにおける磁性粉体の充填率は、35体積%以下であり、8体積%以上35体積%以下であることが好ましく、15体積%以上35体積%以下であることがより好ましく、20体積%以上35体積%以下であることが更に好ましい。
【0115】
本開示のコンパウンドにおける磁性粉体の充填率は、以下の方法により測定される値である。
本開示のコンパウンドを用いて、電波吸収層を作製する。作製した電波吸収層を用いて、「電波吸収体」の項において説明した電波吸収層における磁性粉体の充填率と同様の方法により測定する。
【0116】
本開示のコンパウンドにおけるバインダーは、「電波吸収体」の項において説明したバインダーと同義であり、好ましい態様も同様であるため、ここでは説明を省略する。
【0117】
本開示のコンパウンドにおけるバインダーの充填率は、特に限定されないが、例えば、65体積%以上であることが好ましく、65体積%以上92体積%以下であることがより好ましく、65体積%以上85体積%以下であることが更に好ましい。
【0118】
本開示のコンパウンドは、ペレット状であってもよい。
ペレット状のコンパウンドの大きさ(直径)は、特に限定されないが、例えば、0.5mm~20mmであることが好ましく、1mm~10mmであることがより好ましく、2mm~8mmであることが更に好ましく、3mm~6mmであることが特に好ましい。
ペレット状のコンパウンドの密度は、特に限定されないが、例えば、500kg/m3~5000kg/m3であることが好ましく、800kg/m3~4000kg/m3であることがより好ましく、1000kg/m3~3500kg/m3であることが更に好ましく、1200kg/m3~3000kg/m3であることが特に好ましい。
コンパウンドの密度は、JIS K 0061:2001に準拠して測定される値である。
【0119】
本開示のコンパウンドは、磁性粉体及びバインダー以外に、必要に応じて、種々の添加剤(所謂、他の添加剤)を含んでいてもよい。
本開示のコンパウンドにおける他の添加剤は、「電波吸収体」の項において説明した他の添加剤と同義であり、好ましい態様も同様であるため、ここでは説明を省略する。
【実施例】
【0120】
以下、本発明を実施例により更に具体的に説明するが、本発明はその主旨を超えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。
【0121】
[磁性粉体の作製]
〔磁性粉体1〕
35℃に保温した水400.0gを撹拌し、撹拌中の水に、塩化鉄(III)六水和物〔FeCl3・6H2O〕57.0g、塩化ストロンチウム六水和物〔SrCl2・6H2O〕27.8g、及び塩化アルミニウム六水和物〔AlCl3・6H2O〕10.2gを水216.0gに溶解して調製した原料水溶液と、5mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液181.3gに水113.0gを加えて調製した溶液と、をそれぞれ10mL/minの流速にて、添加のタイミングを同じくして、全量添加し、第1の液を得た。
次いで、第1の液の温度を25℃に変更した後、温度を保持した状態で、1mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液39.8gを添加し、第2の液を得た。得られた第2の液のpHは、10.5であった。なお、第2の液のpHは、(株)堀場製作所の卓上型pHメータ F-71(製品名)を用いて測定した(以下、同じ)。
次いで、第2の液を15分間撹拌し、反応を終了させて、マグネトプランバイト型六方晶フェライト粉体の前駆体となる反応生成物を含む液(即ち、前駆体含有液)を得た。
次いで、前駆体含有液に対し、遠心分離処理(回転数:3000rpm、回転時間:10分間)を3回行い、得られた沈殿物を回収した。
次いで、回収した沈殿物を内部雰囲気温度95℃のオーブン内で12時間乾燥させて、前駆体からなる粒子の集合体(即ち、前駆体の粉体)を得た。
次いで、前駆体の粉体をマッフル炉の中に入れ、大気雰囲気下において、炉内の温度を1100℃の温度条件に設定し、4時間焼成することにより、焼成体を得た。
次いで、得られた焼成体を、大阪ケミカル(株)のワンダークラッシャー WC-3(製品名)を用い、可変速度ダイアルを「5」に設定して90秒間粉砕することで、磁性粉体1を得た。
【0122】
〔磁性粉体2〕
35℃に保温した水400.0gを撹拌し、撹拌中の水に、塩化鉄(III)六水和物〔FeCl3・6H2O〕57.0g、塩化ストロンチウム六水和物〔SrCl2・6H2O〕27.8g、及び塩化アルミニウム六水和物〔AlCl3・6H2O〕10.2gを水216.0gに溶解して調製した原料水溶液と、5mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液181.3gに水113.0gを加えて調製した溶液と、をそれぞれ10mL/minの流速にて、添加のタイミングを同じくして、全量添加し、第1の液を得た。
次いで、第1の液の温度を25℃に変更した後、温度を保持した状態で、1mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液30.2gを添加し、第2の液を得た。得られた第2の液のpHを測定したところ、9.5であった。
次いで、第2の液を15分間撹拌し、反応を終了させて、マグネトプランバイト型六方晶フェライト粉体の前駆体となる反応生成物を含む液(即ち、前駆体含有液)を得た。
次いで、前駆体含有液に対し、遠心分離処理(回転数:3000rpm、回転時間:10分間)を3回行い、得られた沈殿物を回収した。
次いで、回収した沈殿物を内部雰囲気温度95℃のオーブン内で12時間乾燥させて、前駆体からなる粒子の集合体(即ち、前駆体の粉体)を得た。
次いで、前駆体の粉体をマッフル炉の中に入れ、大気雰囲気下において、炉内の温度を1100℃の温度条件に設定し、4時間焼成することにより、焼成体を得た。
次いで、得られた焼成体を、大阪ケミカル(株)のワンダークラッシャー WC-3(製品名)を用い、可変速度ダイアルを「5」に設定して60秒間粉砕することで、磁性粉体2を得た。
【0123】
<結晶構造の確認>
磁性粉体1及び磁性粉体2の各磁性粉体を形成する磁性体(以下、それぞれ「磁性体1及び磁性体2」ともいう。)の結晶構造を、X線回折(XRD)法により確認した。
具体的には、マグネトプランバイト型の結晶構造を有しているか、及び、単相であるか、又は、二相以上の異なる結晶相を有しているかについて確認した。
測定装置には、粉末X線回折装置であるPANalytical社のX’Pert Pro(製品名)を使用した。測定条件を以下に示す。
【0124】
-測定条件-
X線源:CuKα線
〔波長:1.54Å(0.154nm)、出力:40mA、45kV〕
スキャン範囲:20°<2θ<70°
スキャン間隔:0.05°
スキャンスピード:0.75°/min
【0125】
その結果、磁性体1及び磁性体2は、いずれもマグネトプランバイト型の結晶構造を有しており、マグネトプランバイト型以外の結晶構造を含まない単相のマグネトプランバイト型六方晶フェライトであることが確認された。
【0126】
<組成の確認>
磁性体1及び磁性体2の各磁性体の組成を、高周波誘導結合プラズマ(ICP)発光分光分析法により確認した。
具体的には、以下のような方法により確認した。
磁性粉体12mg及び4mol/Lの塩酸水溶液10mLを入れたビーカー(耐圧容器)を、設定温度120℃のオーブンで12時間保持し、溶解液を得た。得られた溶解液に純水30mLを加えた後、0.1μmのメンブレンフィルタを用いて濾過した。このようにして得られた濾液の元素分析を、高周波誘導結合プラズマ(ICP)発光分光分析装置〔型番:ICPS-8100、(株)島津製作所〕を用いて行った。
得られた元素分析の結果に基づき、鉄原子100原子%に対する各金属原子の含有率を求めた。そして、得られた含有率に基づき、磁性体の組成を確認した。各磁性体の組成を以下に示す。
【0127】
磁性体1:SrFe(10.00)Al(2.00)O19
磁性体2:SrFe(9.70)Al(2.30)O19
【0128】
その結果、磁性粉体1及び磁性粉体2は、いずれも式(1)で表されるマグネトプランバイト型六方晶フェライトの粉体(即ち、特定マグネトプランバイト型六方晶フェライト粉体)であることが確認された。
【0129】
<粒度分布の測定>
磁性粉体1及び磁性粉体2の各磁性粉体の個数基準の粒度分布を、レーザ回折散乱法により測定し、最頻値(所謂、モード径)、累積10%径、及び累積90%径を求めた。
具体的には、磁性粉体10mgにシクロヘキサノン500mLを加えて希釈した後、振とう機を用いて30秒間撹拌し、得られた液を粒度分布測定用サンプルとした。
次いで、粒度分布測定用サンプルの粒度分布を、レーザ回折/散乱式粒子径分布測定装置〔製品名:Partica LA-960、(株)堀場製作所〕を用いて測定した。
そして、得られた個数基準の粒度分布に基づき、最頻値であるモード径(単位:μm)、累積10%径であるD10(単位:μm)、及び累積90%径であるD90(単位:μm)を求めた。また、「(D90-D10)/モード径」の値を算出した。
【0130】
その結果、磁性粉体1は、モード径が6.7μmであり、D10が4.1μmであり、D90が9.5μmであり、「(D90-D10)/モード径」の値が0.81であった。また、磁性粉体2は、モード径が8.8μmであり、D10が5.5μmであり、D90が12.5μmであり、「(D90-D10)/モード径」の値が0.80であった。
【0131】
<磁気特性の測定>
磁性粉体1及び磁性粉体2の各磁性粉体について、磁気特性として、保磁力(Hc)及び飽和磁化(δs)を測定した。
具体的には、以下のような方法により測定した。
測定装置として、振動試料型磁力計〔型番:TM-TRVSM5050-SMSL型、(株)玉川製作所〕を用い、雰囲気温度23℃の環境下、最大印加磁界50kOe、及び磁界掃引速度25Oe/s(秒)の条件にて、印加した磁界に対する磁性粉体の磁化の強度を測定した。測定結果より、磁性粉体の磁界(H)-磁化(M)曲線を得た。得られた磁界(H)-磁化(M)曲線に基づき、磁性粉体の保磁力(Hc)(単位:kOe)及び飽和磁化(δs)(単位:emu/g)を求めた。
【0132】
その結果、磁性粉体1は、保磁力(Hc)が10.5kOeであり、飽和磁化(δs)が43.2emu/gであった。また、磁性粉体2は、保磁力(Hc)が10.0kOeであり、飽和磁化(δs)が40.2emu/gであった。
【0133】
[電波吸収体(1)の作製]
〔実施例1〕
1.コンパウンドの作製
磁性粉体1及びバインダー〔商品名:ミラストマー(登録商標)7030NS、オレフィン系熱可塑性エラストマー(TPO)、三井化学(株)〕を用いて、コンパウンドを作製した。具体的には、以下のようにして作製した。
磁性粉体1と上記バインダーとを混合し、混合物を得た。磁性粉体1及び上記バインダーの配合量は、最終的に得られるコンパウンドにおける磁性粉体1の充填率が15体積%となる量とした。次いで、得られた混合物を、ラボプラストミル〔製品名、(株)東洋精機製作所〕を用いて、設定温度200℃及び回転数50rpmで、20分間混練し、コンパウンドを得た。
【0134】
2.電波吸収体の作製
得られたコンパウンドを、加熱プレス装置を用いて、成形圧力:20MPa、プレス温度:200℃、及びプレス時間:10分間の条件で成形することにより、シート状の電波吸収体(大きさ:100mm×100mm)を得た。コンパウンドの使用量は、最終的に得られる電波吸収体の厚みが4.5mmとなる量とした。
【0135】
〔実施例2〕
磁性粉体1及び上記バインダーの配合量を、最終的に得られるコンパウンドにおける磁性粉体1の充填率が30体積%となる量に変更したこと、並びに、コンパウンドの使用量を、最終的に得られる電波吸収体の厚みが3mmとなる量に変更したこと以外は、実施例1と同様の操作を行い、シート状の電波吸収体(大きさ:100mm×100mm)を得た。
【0136】
〔比較例1〕
コンパウンドの使用量を、最終的に得られる電波吸収体の厚みが3mmとなる量に変更したこと以外は、実施例1と同様の操作を行い、シート状の電波吸収体(大きさ:100mm×100mm)を得た。
【0137】
〔比較例2〕
磁性粉体1及び上記バインダーの配合量を、最終的に得られるコンパウンドにおける磁性粉体1の充填率が30体積%となる量に変更したこと、並びに、コンパウンドの使用量を、最終的に得られる電波吸収体の厚みが2mmとなる量に変更したこと以外は、実施例1と同様の操作を行い、シート状の電波吸収体(大きさ:100mm×100mm)を得た。
【0138】
〔比較例3〕
磁性粉体1及び上記バインダーの配合量を、最終的に得られるコンパウンドにおける磁性粉体1の充填率が40体積%となる量に変更したこと、並びに、コンパウンドの使用量を、最終的に得られる電波吸収体の厚みが2mmとなる量に変更したこと以外は、実施例1と同様の操作を行い、シート状の電波吸収体(大きさ:100mm×100mm)を得た。
【0139】
〔比較例4〕
磁性粉体1及び上記バインダーの配合量を、最終的に得られるコンパウンドにおける磁性粉体1の充填率が40体積%となる量に変更したこと、並びに、コンパウンドの使用量を、最終的に得られる電波吸収体の厚みが3mmとなる量に変更したこと以外は、実施例1と同様の操作を行い、シート状の電波吸収体(大きさ:100mm×100mm)を得た。
【0140】
〔比較例5〕
磁性粉体1及び上記バインダーの配合量を、最終的に得られるコンパウンドにおける磁性粉体1の充填率が50体積%となる量に変更したこと、並びに、コンパウンドの使用量を、最終的に得られる電波吸収体の厚みが2mmとなる量に変更したこと以外は、実施例1と同様の操作を行い、シート状の電波吸収体(大きさ:100mm×100mm)を得た。
【0141】
実施例1、実施例2、及び比較例1~比較例5の各電波吸収体の「電波吸収層における磁性粉体の充填率(単位:体積%)」、「電波吸収層の厚み(単位:mm)」、及び「(P/100)×Q」を表1に示す。
【0142】
[電波吸収体(2)の作製]
〔実施例3〕
1.コンパウンドの作製
磁性粉体2及びバインダー〔商品名:ミラストマー(登録商標)7030NS、オレフィン系熱可塑性エラストマー(TPO)、三井化学(株)〕を用いて、コンパウンドを作製した。具体的には、以下のようにして作製した。
磁性粉体2と上記バインダーとを混合し、混合物を得た。磁性粉体2及び上記バインダーの配合量は、最終的に得られるコンパウンドにおける磁性粉体2の充填率が15体積%となる量とした。次いで、得られた混合物を、ラボプラストミル〔製品名、(株)東洋精機製作所〕を用いて、設定温度200℃及び回転数50rpmで、20分間混練し、コンパウンドを得た。
【0143】
2.電波吸収体の作製
得られたコンパウンドを、加熱プレス装置を用いて、成形圧力:20MPa、プレス温度:200℃、及びプレス時間:10分間の条件で成形することにより、シート状の電波吸収体(大きさ:100mm×100mm)を得た。コンパウンドの使用量は、最終的に得られる電波吸収体の厚みが4.5mmとなる量とした。
【0144】
〔実施例4〕
磁性粉体2及び上記バインダーの配合量を、最終的に得られるコンパウンドにおける磁性粉体2の充填率が30体積%となる量に変更したこと、並びに、コンパウンドの使用量を、最終的に得られる電波吸収体の厚みが3mmとなる量に変更したこと以外は、実施例3と同様の操作を行い、シート状の電波吸収体(大きさ:100mm×100mm)を得た。
【0145】
〔比較例6〕
磁性粉体2及び上記バインダーの配合量を、最終的に得られるコンパウンドにおける磁性粉体2の充填率が40体積%となる量に変更したこと、並びに、コンパウンドの使用量を、最終的に得られる電波吸収体の厚みが2mmとなる量に変更したこと以外は、実施例3と同様の操作を行い、シート状の電波吸収体(大きさ:100mm×100mm)を得た。
【0146】
実施例3、実施例4、及び比較例6の各電波吸収体の「電波吸収層における磁性粉体の充填率(単位:体積%)」、「電波吸収層の厚み(単位:mm)」、及び「(P/100)×Q」を表2に示す。
【0147】
[測定]
1.透過減衰量及び反射減衰量の測定(1)
実施例1~実施例4及び比較例1~比較例6の各電波吸収体の透過減衰量(単位:dB)及び反射減衰量(単位:dB)を測定した。
具体的には、以下のようにして測定した。
測定装置として、keysight社のベクトルネットワークアナライザ(製品名:N5225B)及びキーコム(株)のホーンアンテナ(製品名:RH12S23)を用い、自由空間法により、入射角度を0°とし、掃引周波数を60GHz~90GHzとして、Sパラメータを測定し、実施例1、実施例2、及び比較例1~比較例5の電波吸収体については、76.5GHzにおける透過減衰量及び反射減衰量を求め、実施例3、実施例4、及び比較例6の電波吸収体については、85.0GHzにおける透過減衰量及び反射減衰量を求めた。結果をそれぞれ表1及び表2に示す。
【0148】
【0149】
【0150】
表1及び表2に示すように、実施例1~実施例4の電波吸収体は、いずれもミリ波帯域における透過減衰量及び反射減衰量が共に10dB以上であることが確認された。
一方、比較例1~比較例6の電波吸収体は、いずれも透過減衰量及び反射減衰量の少なくとも一方が10dB未満であることが確認された。
【0151】
[電波吸収体(3)の作製]
〔実施例5〕
1.コンパウンドの作製
磁性粉体1及びバインダー〔商品名:ミラストマー(登録商標)7030NS、オレフィン系熱可塑性エラストマー(TPO)、三井化学(株)〕を用いて、コンパウンドを作製した。具体的には、以下のようにして作製した。
磁性粉体1と上記バインダーとを混合し、混合物を得た。磁性粉体1及び上記バインダーの配合量は、最終的に得られるコンパウンドにおける磁性粉体1の充填率が30体積%となる量とした。次いで、得られた混合物を、ラボプラストミル〔製品名、(株)東洋精機製作所〕を用いて、設定温度200℃及び回転数50rpmで、20分間混練し、コンパウンドを得た。
【0152】
2.電波吸収体の作製
得られたコンパウンドを、二軸混練押出機〔型式:KZW15TW、(株)テクノベル〕を用いて、スクリュー温度を200℃に設定し、溶融したコンパウンドをダイから円筒状に押出し、円筒状の電波吸収体(円内径:100mm、高さ:150mm、厚み:3mm)を得た。