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特許7496839特にマイクロリソグラフィ投影露光装置用のミラー
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-30
(45)【発行日】2024-06-07
(54)【発明の名称】特にマイクロリソグラフィ投影露光装置用のミラー
(51)【国際特許分類】
   G03F 7/20 20060101AFI20240531BHJP
【FI】
G03F7/20 501
G03F7/20 521
【請求項の数】 23
(21)【出願番号】P 2021575412
(86)(22)【出願日】2020-06-09
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-08-31
(86)【国際出願番号】 EP2020065938
(87)【国際公開番号】W WO2020254147
(87)【国際公開日】2020-12-24
【審査請求日】2023-06-09
(31)【優先権主張番号】102019208934.8
(32)【優先日】2019-06-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】503263355
【氏名又は名称】カール・ツァイス・エスエムティー・ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100205833
【弁理士】
【氏名又は名称】宮谷 昂佑
(72)【発明者】
【氏名】ハンズ-マイケル ステパン
(72)【発明者】
【氏名】トラルフ グリューナー
【審査官】植木 隆和
(56)【参考文献】
【文献】特表2014-514742(JP,A)
【文献】特表2018-522280(JP,A)
【文献】特表2018-534602(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/027
G03F 7/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光学有効面(11、31)を有する、特にマイクロリソグラフィ投影露光装置用のミラーであって、
ミラー基板(12、32)と、
前記光学有効面(11、31)に入射した電磁放射線を反射する反射層系(21、41)と、
前記ミラー基板(12、32)と前記反射層系(21、41)との間に配置された少なくとも1つの圧電層(16、36)であり、該圧電層(16、36)の前記反射層系(21、41)側に位置する第1電極構成体及び前記圧電層(16、36)の前記ミラー基板(12、32)側に位置する第2電極構成体により局所的に可変の変形を発生させる電界を印加されることが可能な少なくとも1つの圧電層(16、36)と
を備え、前記電極構成体の一方に、該電極構成体に沿って電位の少なくとも領域的に連続したプロファイルを設定し、200ジーメンス/メートル未満の導電率を有するメディエータ層(17、37、51、52、53、71)が割り当てられ、且つ
該メディエータ層(17、37、51、52、53、71)は、少なくとも2つの相互に電気的に絶縁された領域(17a、17b、17c、…;37a、37b、37c、…)を有し、前記メディエータ層(17、37、51、52、53、71)のこれらの電気的に絶縁された領域(17a、17b、17c、…;37a、37b、37c、…)は、同一の連続的な圧電層(16、36)に割り当てられるミラー。
【請求項2】
請求項1に記載のミラーにおいて、前記メディエータ層(17、37、51、52、53、71)を割り当てられた前記電極構成体は、複数の電極(20、40、41、42、43、70)を有し、該電極のそれぞれに、他方の電極構成体(14、34)に対する電圧をリード線(19、39)により印加することが可能であることを特徴とするミラー。
【請求項3】
請求項2に記載のミラーにおいて、前記メディエータ層(17、37、51、52、53、71)は、複数の相互に電気的に絶縁された領域を提供するよう構造化され、該領域は、異なる電極(20、40、41、42、43、70)又は異なる電極(20、40、41、42、43、70)の集合体に割り当てられることを特徴とするミラー。
【請求項4】
請求項3に記載のミラーにおいて、前記構造化により、直接隣接した電極(20、40、41、42、43、70)間でのみ前記メディエータ層(17、37、51、52、53、71)を介して電流を流すことができることを特徴とするミラー。
【請求項5】
請求項3に記載のミラーにおいて、前記構造化により、同じ集合体にそれぞれ関連する電極(20、40、41、42、43、70)間でのみ前記メディエータ層(17、37、51、52、53、71)を介して電流を流すことができることを特徴とするミラー。
【請求項6】
請求項5に記載のミラーにおいて、各集合体の電極数は、前記メディエータ層(17、37、51、52、53、71)にわたって変わることを特徴とするミラー。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか1項に記載のミラーにおいて、前記メディエータ層(17)の前記相互に電気的に絶縁された領域(17a、17b、17c、…)は、該領域(17a、17b、17c、…)間に位置する電気絶縁材料により相互に分離されることを特徴とするミラー。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか1項に記載のミラーにおいて、前記メディエータ層(37)の前記相互に電気的に絶縁された領域(37a、37b、37c、…)は、1000を超える誘電率εを有する材料により相互に分離されることを特徴とするミラー。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか1項に記載のミラーにおいて、前記圧電層(36)は、前記メディエータ層(37)の前記相互に電気的に絶縁された領域(37a、37b、37c、…)間に延びることを特徴とするミラー。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか1項に記載のミラーにおいて、前記相互に電気的に絶縁された領域(17a、17b、17c、…;37a、37b、37c、…)を分離する電気絶縁部(25、45)が、前記圧電層(16、36)と平行な平面で、10μm未満の最大寸法を有することを特徴とするミラー。
【請求項11】
請求項2~10のいずれか1項に記載のミラーにおいて、各電位を少なくとも部分的に遮蔽する遮蔽電極(72)が、異なる電極(70)又は異なる電極(70)の集合体間にいずれの場合も配置されることを特徴とするミラー。
【請求項12】
請求項11に記載のミラーにおいて、場合によっては、規定電圧が前記遮蔽電極(72)に印加され得るか、又は該遮蔽電極(72)がゼロ電圧で作動され得ることを特徴とするミラー。
【請求項13】
光学面(11、31)を有する、特にマイクロリソグラフィ投影露光装置用のミラーであって、
ミラー基板(12、32)と、
前記光学有効面(11、31)に入射した電磁放射線を反射する反射層系(21、41)と、
前記ミラー基板(12、32)と前記反射層系(21、41)との間に配置された少なくとも1つの圧電層(16、36)であり、該圧電層(16)の前記反射層系(21)側に位置する第1電極構成体及び前記圧電層(16、36)の前記ミラー基板(12、32)側に位置する第2電極構成体により局所的に可変の変形を発生させる電界を印加されることが可能な少なくとも1つの圧電層(16、36)と
を備え、前記電極構成体の一方に、当該電極構成体に沿って電位の少なくとも領域的に連続したプロファイルを設定するためのメディエータ層(71)が割り当てられ、
該メディエータ層(71)を割り当てられた前記電極構成体は、複数の電極(70)を有し、該電極のそれぞれに、他方の電極構成体に対する電圧をリード線により印加することが可能であり、且つ
各電位を少なくとも部分的に遮蔽する遮蔽電極(72)が、異なる電極(70)又は異なる電極(70)の集合体間にいずれの場合も配置されるミラー。
【請求項14】
請求項1~13のいずれか1項に記載のミラーにおいて、前記メディエータ層(17、37、51、52、53、71)の材料は、酸化チタン、窒化ガリウム、酸化ガリウム、窒化アルミニウム、酸化アルミニウムと、ランタン(La)、マンガン(Mn)、コバルト(Co)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)、鉄(Fe)、銅(Cu)、又はニッケル(Ni)を含む混合酸化物とを含む群から選択されることを特徴とするミラー。
【請求項15】
請求項1~14のいずれか1項に記載のミラーにおいて、該ミラー(10、30)は、30nm未満の作動波長用に設計されることを特徴とするミラー。
【請求項16】
請求項1~15のいずれか1項に記載のミラーにおいて、既定の所望のプロファイルからの最大偏差が2%未満であるように電界が前記圧電層(16、36)に印加されることにより、局所的に可変の変位を発生させることが可能であることを特徴とするミラー。
【請求項17】
請求項1~16のいずれか1項に記載のミラーにおいて、該ミラーの前記光学使用面とミラーエッジとの間の距離が、10mm未満であることを特徴とするミラー。
【請求項18】
請求項1~17のいずれか1項に記載のミラーにおいて、前記メディエータ層(17、37)は、10kΩ未満の平均シート抵抗を有することを特徴とするミラー。
【請求項19】
請求項1~18のいずれか1項に記載のミラーにおいて、該ミラーは、マイクロリソグラフィ投影露光装置(600、700)用のミラー(10、30)であることを特徴とするミラー。
【請求項20】
マイクロリソグラフィ投影露光装置(600、700)の光学系であって、請求項1~19のいずれか1項に記載のミラー(10、30)を有することを特徴とする光学系。
【請求項21】
照明装置及び投影レンズを備えたマイクロリソグラフィ投影露光装置(600、700)であって、請求項20に記載の光学系を備えることを特徴とするマイクロリソグラフィ投影露光装置。
【請求項22】
ミラーを製造する方法であって、
ミラー基板(12、32)を用意するステップと、
該ミラー基板(12、32)に圧電層(16、36)と第1及び第2電極構成体とを施すステップであり、前記圧電層(16、36)の前記ミラー基板(12、32)とは反対側に位置する前記第1電極構成体及び前記圧電層(16、36)の前記ミラー基板(12、32)側に位置する前記第2電極構成体により、局所的に可変の変形を発生させる電界を前記圧電層(16、36)に印加することが可能であるステップと、
前記電極構成体の一方に沿った電位の少なくとも領域的に連続したプロファイルを設定し、200ジーメンス/メートル未満の導電率を有するメディエータ層(17、37)を、該メディエータ層(17、37)が少なくとも2つの相互に電気的に絶縁された領域(17a、17b、17c、…、37a、37b、37c、…)を有し、前記メディエータ層(17、37、51、52、53、71)のこれらの電気的に絶縁された領域(17a、17b、17c、…;37a、37b、37c、…)は、同一の連続的な圧電層(16、36)に割り当てられるように施すステップと、
光学有効面(11、31)に入射した作動波長を有する電磁放射線を反射する反射積層体(21、41)を施すステップと
を含む方法。
【請求項23】
請求項22に記載の方法において、前記メディエータ層(17、37)を施すステップは、該メディエータ層を構造化するステップを含み、該構造化は、リソグラフィにより又はレーザアブレーションを用いて実行されることを特徴とする方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、2019年6月19日に出願された独国特許出願第10 2019 208 934.8号の優先権を主張する。この出願の内容を参照により本明細書に援用する。
【0002】
本発明は、特にマイクロリソグラフィ投影露光装置用のミラーに関する。
【背景技術】
【0003】
マイクロリソグラフィは、例えば集積回路又はLCD等の微細構造コンポーネントの製造に用いられる。マイクロリソグラフィプロセスは、照明装置及び投影レンズを備えたいわゆる投影露光装置で実行される。この場合、照明装置により照明されたマスク(レチクル)の像を、投影レンズにより、感光層(フォトレジスト)で被覆されて投影レンズの像平面に配置された基板(例えばシリコンウェーハ)に投影することで、マスク構造を基板の感光コーティングに転写するようにする。
【0004】
EUV領域用に設計した投影レンズでは、すなわち例えば約13nm又は7nmの波長では、適当な光透過屈折材料が利用可能でないことにより、ミラーを結像プロセス用の光学コンポーネントとして用いる。
【0005】
この場合、圧電材料からなるアクチュエータ層を有するアダプティブミラーとしてEUVシステムの1つ又は複数のミラーを構成することも知られており、その場合、この圧電層に対して両側に配置された電極に電圧を印加することにより、強度が局所的に変わる電界が圧電層において発生する。圧電層が局所変形する場合、アダプティブミラーの反射層系も変形する結果として、例えば、結像収差を(場合によっては時間的に変化する結像収差も)電極の適当な駆動により少なくとも部分的に補償することができる。
【0006】
図8aは、原理上可能な従来のアダプティブミラー80の構造を単なる概略図で示す。ミラー80は、特にミラー基板82及び反射層系91を備え、本例ではチタン酸ジルコン酸鉛(Pb(Zr,Ti)O、PZT)から作製された圧電層86を有する。電極構成体が圧電層86の上下にそれぞれ位置し、これらの電極構成体により、局所的に可変の変形を発生させる電界をミラー80に印加することが可能である。上記電極構成体のうち、基板82側の第2電極構成体は、一定の厚さの連続した平面電極84として構成される一方で、第1電極構成体は複数の電極90を有し、そのそれぞれに、電極84に対する電圧をリード線89により印加することが可能である。電極90は、共通の平滑化層88に埋め込まれ、平滑化層88は、例えば石英(SiO)から作製され、電極90から形成された電極構成体を水平にするよう働く。さらに、ミラー80は、ミラー基板82と下部電極84のミラー基板82側との間に接着層83(例えば、チタンTiからなる)と、電極構成体84の基板82側と圧電層86との間に配置されたバッファ層85(例えば、LaNiOからなる)とを有し、バッファ層85は、最適な結晶構造のPZTの成長をさらに支持すると共に耐用寿命にわたって圧電層の一貫した偏光特性を確保する。
【0007】
ミラー80又は当該ミラー80を備えた光学系の動作中に、形成される電界により電極84及び90に電圧を印加すると、圧電層86が撓む。このように、例えば、例えば光学有効面81にEUV放射線が入射した場合の熱変形による光学収差の補償のために、ミラー80の駆動を達成することが可能である。
【0008】
図8a及び図8bによれば、ミラー80はさらにメディエータ層87を有する。当該メディエータ層87は、電極90(説明のためだけに図8aに平面図で示す)と直接電気的に接触する。上記メディエータ層87は、電位に関して電極90間を「媒介する」よう働き、低い導電率しか有しない結果として、隣接電極90間の電位差がメディエータ層87で実質的に下がる。
【0009】
メディエータ層87の存在により得られる利点は、迷光比率を電極90の数の関数としてプロットした図9のグラフから明らかである。図9によれば、選択された例において、メディエータ層87がない場合に迷光比率が例示的な仕様に従った既定の上閾値未満になるためには、2つの相互に垂直な空間方向の一方で60個の電極、すなわち合計で60×60=3600個の電極が必要だが、メディエータ層87がある場合、電極数は2つの相互に垂直な空間方向の一方で10個未満に減らすことができ、その結果として電極90から形成された電極構成体の実現性が大幅に簡略化される。
【0010】
しかしながら、上述のアダプティブミラーの動作中に実際に起こる1つの問題は、上述のメディエータ層を用いても、いずれの場合にも望まれる変形プロファイルを不十分にしか実現することができないことが多く、その結果として電極の駆動により得られる結像収差の補正も十分な精度で達成可能でないことである。
【0011】
実際に起こるさらに別の問題として、メディエータ層の比較的高いシート抵抗(例えば、100kΩ)の設定は、電流が電極構成体に印加される結果としてメディエータ層87で発生する電力による望ましくない発熱を制限するために原理上は望ましいが、(例えば、リソグラフィプロセスでの熱誘起マスク変形を考慮した)特定の状況でのメディエータ層における電位の伝播が遅くなりすぎるという影響をもたらす。結果として、従来はメディエータ層の構成において、(メディエータ層の最大限の電気抵抗の設定による)熱的問題の回避を、(これに対してメディエータ層の低い電気抵抗の設定による)アダプティブミラーの所望の表面形状の設定時の即応性(例えば、ミリ秒(ms)以内)と調和させる必要があるという点で、概して妥協する必要がある。
【0012】
従来技術に関しては、単なる例として特許文献1及び特許文献2を参照されたい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【文献】独国特許出願公開第10 2013 219 583号明細書
【文献】独国特許出願公開第10 2015 213 273号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明の目的は、圧電層の局所的に異なる変形の原理に基づいて光学系の収差のできる限り最適な補正を可能にする、特にマイクロリソグラフィ投影露光装置用のミラーを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
この目的は、独立請求項の特徴により達成される。
【0016】
本発明によるミラーは、
光学有効面と、
ミラー基板と、
光学有効面に入射した電磁放射線を反射する反射層系と、
ミラー基板と反射層系との間に配置された少なくとも1つの圧電層であり、圧電層の反射層系側に位置する第1電極構成体及び圧電層のミラー基板側に位置する第2電極構成体により局所的に可変の変形を発生させる電界を印加されることが可能な少なくとも1つの圧電層と
を備え、上記電極構成体の一方に、当該電極構成体に沿って電位の連続したプロファイルを設定するためのメディエータ層が割り当てられ、且つ
上記メディエータ層は、少なくとも2つの相互に電気的に絶縁された領域を有する。
【0017】
本願の文脈において、用語「反射層系」は、多層系又は反射層の積層体及び単層の両方を包含すると考えるべきである。
【0018】
本発明の基礎となる概念は、局所的に可変の変形を発生させる電界を電極構成体により印加されることが可能な圧電層を備えたアダプティブミラーの場合、特に、電極構成体の各電極間を電位に関して媒介する比較的低い導電率を有するメディエータ層全体を平面状に構成するという概念ではなく、メディエータ層の個々の領域を相互に適切に電気的に絶縁することにより、それぞれ該当のメディエータ層に割り当てられた電極構成体の電極数のうち一部のみが相互に電気的に接続されるという点で「構造化メディエータ層」を用いるという概念である。
【0019】
換言すると、本発明によれば、該当の電極構成体の電極間の電位に関する媒介に用いられるメディエータ層は、上記電位に関する媒介が電極の小群又は「集合体」間でのみ(例えば、隣接する電極又は相互に比較的近接して配置された電極間でのみ)行われるように、すなわちメディエータ層を介して相互に比較的離れた電極間の「遠隔相互作用」が遮断されるように構成される。
【0020】
この場合、本発明は、図8a及び図8bに示す従来のアダプティブミラーに存在すると共に図4aの概略等価回路図に示すような、関連する電極構成体の全電極の相互に対する電気的接続の意味でのメディエータ層を介した「遠隔相互作用」による望ましくない結果として、メディエータ層の作用により各隣接電極間に生じた電圧が遠隔の電極の影響も受けるという考えに基づく。これにより、概して全電極の平均レベルへの対数的な電圧降下が起こり、これはさらに、いずれの場合も望まれる変形プロファイルへのアダプティブミラーの不十分な近似しか得られないという前述の問題に寄与する。
【0021】
そこで、この問題を克服するために、本発明によれば、メディエータ層を介した電極間の遠隔相互作用を遮断する結果として、図4bに等価回路図で概略的に示すような本発明により構造化されたメディエータ層は、例えば関連する電極構成体の各隣接電極又は相互に比較的近接して配置された電極間のみを電位に関して媒介する。結果として、隣接電極の場合、前述の対数的な電圧降下とは異なり、電極間の電圧の多項式プロファイルが得られる。結果として、本発明は、アダプティブミラーの所望の変形プロファイルへの近似化の大幅な改善の実現を可能にする。
【0022】
本発明によれば、この場合、メディエータ層の構造化に関して、生産工学的観点から支出の増加を甘受するのと引き替えに、電極間の電位に関する媒介に際する遠隔相互作用の抑制により、いずれの場合も望まれる目標プロファイルへの変形プロファイルの近似化の改善を達成する。
【0023】
本発明によるメディエータ層の構造化のさらに別の利点は、本発明による比較的近接した(且つ通常は同様の電位の)電極への電位に関する媒介の制限により、(連続的な構成のメディエータ層を介した、割り当てられた電極構成体の全電極間に関する従来の媒介と比べて)メディエータ層に全体として流れる電流の低減が得られることである。これによりさらに、同様に前述した熱的問題を、ひいては各変形プロファイルに関するアダプティブミラーの「即応性」と望ましくない熱変形の回避との間の適当な妥協点の設定の困難も、軽減することができる。
【0024】
一実施形態によれば、メディエータ層を割り当てられた電極構成体は、複数の電極を有し、電極のそれぞれに、他方の電極構成体に対する電圧をリード線により印加することが可能である。
【0025】
一実施形態によれば、メディエータ層は、複数の相互に電気的に絶縁された領域を提供するよう構造化され、上記領域は、異なる電極又は異なる電極の集合体に割り当てられる。
【0026】
一実施形態によれば、この構造化により、直接隣接した電極間でのみメディエータ層を介して電流を流すことができる。
【0027】
一実施形態によれば、この構造化により、同じ集合体にそれぞれ関連する電極間でのみメディエータ層を介して電流を流すことができる。
【0028】
一実施形態によれば、各集合体の電極数は、メディエータ層にわたって変わる。
【0029】
一実施形態によれば、メディエータ層の相互に電気的に絶縁された領域は、当該領域間に位置する電気絶縁材料、特に二酸化ケイ素(SiO)又はAlにより相互に分離される。
【0030】
一実施形態によれば、メディエータ層の相互に電気的に絶縁された領域は、1000を超える誘電率εを有する材料により相互に分離される。
【0031】
一実施形態によれば、メディエータ層の相互に電気的に絶縁された領域は、圧電層が当該領域間に延びることにより相互に分離される。
【0032】
一実施形態によれば、相互に電気的に絶縁された領域を分離する電気絶縁部は、圧電層と平行な平面で、10μm未満、特に2μm未満の最大寸法を有する。
【0033】
一実施形態によれば、各電位を少なくとも部分的に遮蔽する遮蔽電極が、異なる電極又は異なる電極の集合体間にいずれの場合も配置される。
【0034】
一実施形態によれば、場合によっては、規定電圧が上記遮蔽電極に印加され得るか、又は上記遮蔽電極がゼロ電圧で作動され得る。
【0035】
本発明はさらに、光学有効面を有する、特にマイクロリソグラフィ投影露光装置用のミラーであって、
ミラー基板と、
光学有効面に入射した電磁放射線を反射する反射層系と、
ミラー基板と反射層系との間に配置された少なくとも1つの圧電層であり、圧電層の反射層系側に位置する第1電極構成体及びそのミラー基板側に位置する第2電極構成体により局所的に可変の変形を発生させる電界を印加されることが可能な少なくとも1つの圧電層と
を備え、上記電極構成体の一方に、当該電極構成体に沿って電位の少なくとも領域的に連続したプロファイルを設定するためのメディエータ層が割り当てられ、
メディエータ層を割り当てられた電極構成体は、複数の電極を有し、電極のそれぞれに、他方の電極構成体に対する電圧をリード線により印加することが可能であり、且つ
各電位を少なくとも部分的に遮蔽する遮蔽電極が、異なる電極又は異なる電極の集合体間にいずれの場合も配置されるミラーに関する。
【0036】
一実施形態によれば、メディエータ層の材料は、酸化チタン、窒化ガリウム、酸化ガリウム、窒化アルミニウム、酸化アルミニウムと、ランタン(La)、マンガン(Mn)、コバルト(Co)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)、鉄(Fe)、銅(Cu)、又はニッケル(Ni)を含む混合酸化物とを含む群から選択される。メディエータ層の材料は、定比又は不定比、ドープ又はノンドープ化合物であり得る。例示的な適当な化合物又は混合酸化物は、特に、二酸化チタン(TiO)、LaCoO、LaMnO、LaCaMnO、LaNiO、La0.7Sr0.3FeO、LaCu0.4(Mn0.5Co0.50.6、La0.7Sr0.3MnO、GaN、Ga、AlN、SrCoO、又はCaMnOである。
【0037】
一実施形態によれば、ミラーは、30nm未満、特に15nm未満の作動波長用に設計される。
【0038】
一実施形態によれば、既定の所望のプロファイルからの最大偏差が2%未満であるように電界が圧電層に印加されることにより、局所的に可変の変位を発生させることが可能である。
【0039】
一実施形態によれば、ミラーの光学使用面とミラーエッジとの間の距離が、10mm未満、特に3mm未満である。ミラーエッジの近くに延びる光学使用面を有するミラーのこのような構成では、本発明により可能となる「急峻な」変形プロファイルの設定は、非構造化メディエータ層を備えたミラーと比べて明らかに特に有利である。
【0040】
一実施形態によれば、メディエータ層は、10kΩ未満、特に5kΩ未満の平均シート抵抗を有する。結果として、既に説明したように、(連続的な構成のメディエータ層を介した、割り当てられた電極構成体の全電極間の電位に関する従来の媒介と比べて)本発明により構造化されたメディエータ層に全体として流れる電流の低減により、(例えばメディエータ層における高い電気抵抗の設定の結果としての)望ましくない熱変形の回避をあまり考慮する必要がないという状況を利用して、各変形プロファイルに関してアダプティブミラーの即応性を得ることが可能である。
【0041】
一実施形態によれば、ミラーは、マイクロリソグラフィ投影露光装置用のミラーである。
【0042】
本発明はさらに、上述の特徴を有する少なくとも1つのミラーを備えた、マイクロリソグラフィ投影露光装の光学系、特に照明装置又は投影レンズに関し、マイクロリソグラフィ投影露光装置にも関する。
【0043】
本発明はさらに、ミラーを製造する方法であって、
ミラー基板を用意するステップと、
ミラー基板に圧電層と第1及び第2電極構成体とを施すステップであり、圧電層のミラー基板とは反対側に位置する第1電極構成体及び圧電層のミラー基板側に位置する第2電極構成体により、局所的に可変の変形を発生させる電界を圧電層に印加することが可能であるステップと、
上記電極構成体の一方に沿って電位の少なくとも領域的に連続したプロファイルを設定するためのメディエータ層を、少なくとも2つの相互に電気的に絶縁された領域を有するように施すステップと、
光学有効面に入射した作動波長を有する電磁放射線を反射する反射積層体を施すステップと
を含む方法に関する。
【0044】
一実施形態によれば、メディエータ層を施すステップは、メディエータ層を構造化するステップを含み、上記構造化は、リソグラフィにより又はレーザアブレーションを用いて実行される。
【0045】
本発明のさらに他の構成は、説明及び従属請求項から得ることができる。
【0046】
添付図面に示す例示的な実施形態に基づいて、本発明を以下でより詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0047】
図1】本発明の一実施形態によるアダプティブミラーの構成を説明する概略図を示す。
図2】本発明のさらに別の実施形態によるアダプティブミラーの構成を説明する概略図を示す。
図3】本発明のさらに別の実施形態によるアダプティブミラーの構成を説明する概略図を示す。
図4】本発明のさらに別の実施形態によるアダプティブミラーの構成を説明する概略図を示す。
図5】本発明のさらに別の実施形態によるアダプティブミラーの構成を説明する概略図を示す。
図6】EUVで動作するよう設計されたマイクロリソグラフィ投影露光装置の可能な構成を説明する概略図を示す。
図7】VUVで動作するよう設計されたマイクロリソグラフィ投影露光装置の可能な構成を説明する概略図を示す。
図8a】従来のアダプティブミラーの可能な構成を説明する概略図を示す。
図8b】従来のアダプティブミラーの可能な構成を説明する概略図を示す。
図9図8a及び図8bに示す従来のアダプティブミラーのメディエータ層の影響を説明するグラフを示す。
【発明を実施するための形態】
【0048】
図1は、本発明によるミラーの例示的な構成を説明する概略図を示す。ミラー10は、特にミラー基板12を備え、ミラー基板12は、任意所望の適当なミラー基板材料から作製される。適当なミラー基板材料は、例えば二酸化チタン(TiO)ドープ石英ガラスであり、単なる例として(本発明をそれに制限することなく)、商品名ULE(登録商標)(Corning Inc.製)で市販されている材料を用いることができる。さらに他の適当な材料は、例えば商品名Zerodur(登録商標)(Schott AG製)又はClearceram(登録商標)(株式会社オハラ製)で市販されているアルミノケイ酸リチウムガラスセラミックである。特にEUVマイクロリソグラフィ以外の用途では、例えばケイ素(Si)等の他の材料も考えられる。
【0049】
さらに、ミラー10は、原理上は自体公知の方法で、図示の実施形態では単なる例としてモリブデン-ケイ素(Mo-Si)積層体を含む反射層系21を有する。本発明を上記反射層系の特定の構成に制限することなく、単なる例としての適当な一構成は、それぞれ層厚2.4nmのモリブデン(Mo)層及びそれぞれ層厚3.3nmのケイ素(Si)層を含む層系の約50個のプライ又は層パケットを含み得る。さらに他の実施形態において、反射層系は単層とすることもできる。
【0050】
ミラー10は、特に光学系のEUVミラー、特にマイクロリソグラフィ投影露光装置の投影レンズ又は照明装置のEUVミラーであり得る。
【0051】
ミラー10は、本例ではチタン酸ジルコン酸鉛(Pb(Zr,Ti)O、PZT)から作製された圧電層16を有する。電極構成体が、圧電層16の上下にそれぞれ位置し、これらの電極構成体により、局所的に可変の変形を発生させる電界をミラー10に印加することが可能である。上記電極構成体のうち、基板12側の第2電極構成体は、一定の厚さの連続した平面電極14として構成される一方で、第1電極構成体は複数の電極20を有し、そのそれぞれに、電極14に対する電圧をリード線19により印加することが可能である。電極20は、共通の平滑化層18に埋め込まれ、平滑化層18は、例えば石英(SiO)から作製され、電極20から形成された電極構成体を水平にするよう働く。さらに、ミラー10は、ミラー基板12とミラー基板12側の下部電極84との間に接着層33(例えば、チタンTiからなる)と、基板12側の電極構成体14と圧電層16との間に配置されたバッファ層15とを有し、バッファ層15は、最適な結晶構造のPZTの成長をさらに支持すると共に耐用寿命にわたって圧電層の一貫した偏光特性を確保する。
【0052】
ミラー10又は当該ミラー10を備えた光学系の動作中に、形成される電界により電極14及び20に電圧を印加すると、圧電層16が撓む。このように、(例えば、例えば光学有効面11にEUV放射線が入射した場合の熱変形による光学収差の補償のために)ミラー10の駆動を達成することが可能である。
【0053】
図1によれば、ミラー10はさらにメディエータ層17を有する。当該メディエータ層17は、電極20(説明のためだけに図1に平面図で示す)と直接電気的に接触し、電位に関して電極20間を「媒介する」よう働き、隣接電極20間の電位差がメディエータ層17を介して実質的に下がるように低い導電率(好ましくは200ジーメンス/メートル(S/m)未満)しか有しない。
【0054】
そこで、本発明によれば、図1の例示的な実施形態のアダプティブミラー10の場合、メディエータ層17は、連続した平面状の導電性の層として具現されるのではなく、複数の相互に電気的に絶縁された領域17a、17b、17c、…を有するという点で構造化される。この構造化は、例示的な実施形態において、但し本発明をそれに制限することなく、アダプティブミラー10の製造中にメディエータ層17をリソグラフィにより対応して構造化することにより実現され、例えばSiO又はAl等の電気絶縁材料が、上記構造化中に相互に分離された領域17a、17b、17c、…に導入される。メディエータ層17の個々の領域17a、17b、17c、…を相互に分離する電気絶縁部を、図1に「25」で示す。さらなる実施形態において、メディエータ層17の上記構造化は、例えばレーザアブレーションを用いて実行することもできる。
【0055】
本発明によれば、メディエータ層17の上記構造化により、特に、上記メディエータ層17を介した電流の流れによるメディエータ層17に割り当てられた電極構成体の電極20間の電位に関する媒介が、全ての電極20間で行われるのではなく、メディエータ層17の同一の領域17a、17b、17c、…に割り当てられた電極20間で群毎にしか行われなくなる。この場合、メディエータ層17の構造化の特定の構成に応じて、電極20の該当の群又は集合体それぞれが、電極20のうち任意所望の一部の数を含み得る。
【0056】
特に、構造化は、電位に関する媒介が直接隣接する電極20間のみで行われるように行われ得る。さらなる実施形態において、上記媒介は、電極20のうち(隣同士の電極それぞれではなくさらに離れた1つ又は複数の電極も含む)より多くの数でも行われ得る。さらに、実施形態において、特定の用途に応じて、各目標プロファイルへのアダプティブミラー10により設定された変形プロファイルの最良の近似と、特にできる限り「急峻な」変形プロファイルの設定とを可能にするために、群又は集合体に含まれる(且つ上記の意味で電位に関して媒介された又はメディエータ層17の同一の領域17a、17b、17c、…に割り当てられた)電極20の数は、メディエータ層17の全体にわたって変わり得る。
【0057】
【表1】
【0058】
図3a~図3cは、本発明による構造化の単なる実現例を概略的且つ簡易的な図で示し、該当のメディエータ層をそれぞれ「51」、「52」、及び「53」で示し、上記メディエータ層にそれぞれ割り当てられた電極構成体の電極をそれぞれ「41」、「42」、及び「43」で示す。図3a~図3cの黒実線は、電気絶縁部(例えば、上述のようにSiOから形成される)にそれぞれ対応する。メディエータ層の対応領域を介して電気的結合が行われる電極数は、図3a及び図3bによればそれぞれ4つだが、この数は図3cによれば5つである。上記説明に沿って、さらなる実施形態では、この数はより多く又はより少なく選択することもでき(例えば、三角形セルの場合は3つ)、原理上は任意であり得る。
【0059】
図2は、さらに別の実施形態を示し、図1と類似の又は実質的に機能的に同一のコンポーネントは「20」を足した参照符号で示す。図1とは異なり、図2の実施形態の場合、メディエータ層37の構造化は、相互に電気的に絶縁すべきメディエータ層37の領域37a、37b、37c、…間に圧電層36が延びることにより実現され、すなわち圧電層36の材料自体が電気絶縁体として働く。これは例えば、圧電層36を施した後に当該圧電層の材料を例えばレーザアブレーションにより部分的に除去して、メディエータ層37の材料を対応する中間領域に堆積させることにより、アダプティブミラー30の製造中に実現され得る。
【0060】
図2に示す実施形態及び図1に示す実施形態の両方において、メディエータ層17及び37の上記構造化後に、さらなる層配列を施す前にできる限り平滑又は平坦な幾何学的形状を確保するために、CMPステップ(CMP=化学機械研磨)を用いることができる。
【0061】
本発明によれば、メディエータ層の構造化に関して、生産工学的観点から支出の増加を甘受するのと引き替えに、電極間の電位に関する媒介に際する遠隔相互作用の抑制により、いずれの場合も望まれる目標プロファイルへの変形プロファイルの近似化の改善を達成する。
【0062】
さらなる実施形態において、(追加として又は代替として)図5に単に概略的且つ非常に簡易的に示すように、メディエータ層に割り当てられた電極構成体の電極間の電位に関する媒介に際する遠隔相互作用の抑制は、1つ又は複数の遮蔽電極を用いて達成することもできる。この場合、メディエータ層71(ここでは連続した平面状の構成であり、すなわち構造化されていない)に割り当てられた電極構成体の電極を「70」で示し、対応する遮蔽電極を「72」で示す。場合によっては、規定電圧が上記遮蔽電極72に印加され得るか、又は遮蔽電極72がゼロ電圧で作動され得る。図5に取り消し線付きの横矢印で示すように、遮蔽電極72の効果は、特に、遮蔽電極72の異なる側に配置された電極70間の電流の流れを抑制することである。この場合、遮蔽電極72は、電極70と同じ平面内に位置する(すなわち、図1及び図2をそれぞれ参照して説明した電気絶縁部25及び45とは異なり、メディエータ層の平面内ではない)。
【0063】
特に、遮蔽電極は、ほぼ閉曲線(内部電極の接触を依然として可能にするために「ほぼ」)として具現されることにより、内部電極と外部電極との間で非常に高い抵抗を得るようにすることもできる。
【0064】
図6は、EUVでの動作用に設計され本発明を実現できる例示的な投影露光装置の概略図を示す。
【0065】
図6によれば、EUV用に設計された投影露光装置600の照明装置が、視野ファセットミラー603及び瞳ファセットミラー604を含む。プラズマ光源601及びコレクタミラー602を含む光源ユニットからの光は、視野ファセットミラー603へ指向される。第1望遠鏡ミラー605及び第2望遠鏡ミラー606が、瞳ファセットミラー604の下流の光路に配置される。偏向ミラー607が光路の下流に配置され、当該偏向ミラーは、入射した放射線を6つのミラー651~656を含む投影レンズの物体平面の物体視野へ指向させる。物体視野の場所では、反射構造担持マスク621がマスクステージ620上に配置され、上記マスクは投影レンズを用いて像平面に結像され、像平面では、感光層(フォトレジスト)でコーティングされた基板661がウェーハステージ660上に位置する。
【0066】
図7は、VUVで動作するよう設計されたマイクロリソグラフィ投影露光装置700の原理上可能な構成を示す。投影露光装置700は、照明装置710及び投影レンズ720を備える。照明装置710は、構造担持マスク(レチクル)730を光源ユニット701からの光で照明する働きをし、光源ユニット701は、例えば193nmの作動波長用のArFエキシマレーザ及び平行光ビームを生成するビーム整形光学ユニットを含む。照明装置710は、光学ユニット711を含み、光学ユニット711は、図示の例では特に偏向ミラー712を含む。光学ユニット711は、異なる照明設定(すなわち、照明装置710の瞳平面の強度分布)を生成するために、例えば回折光学素子(DOE)及びズームアキシコン系を含み得る。光混合装置(図示せず)が、光伝播方向で光学ユニット711の下流のビーム経路に位置し、この光混合装置は、例えば、自体公知の方法で、光混合の達成に適した微小光学素子からなる構成体と、レンズ素子群713とを有することができ、レンズ素子群713の下流には、レチクルマスキングシステム(REMA)を含む視野平面があり、これは、光伝播方向で下流に配されたREMAレンズ714によりさらに別の視野平面に配置された構造担持マスク(レチクル)730に結像され、それによりレチクル上の照明領域を画定する。
【0067】
投影レンズ720により、構造担持マスク730は、感光層(フォトレジスト)が設けられた基板に又はウェーハ740に結像される。特に、投影レンズ720は、液浸動作用に設計され得るものであり、その場合、浸液が光伝播方向に関してウェーハ又はその感光層の上流に位置する。さらに、投影レンズ720は、例えば0.85を超える、特に1.1を超える開口数NAを有し得る。
【0068】
原理上、図6及び図7をそれぞれ参照して説明した投影露光装置600及び700の任意所望のミラーを、本発明による方法でアダプティブミラーとして構成することができる。
【0069】
本発明は特定の実施形態に基づいて説明されているが、例えば個々の実施形態の特徴の組み合わせ及び/又は交換により、多数の変形形態及び代替的な実施形態が当業者には明らかとなるであろう。したがって、当業者には言うまでもなく、かかる変形形態及び代替的な実施形態も本発明に包含され、本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲及びその等価物の意味の範囲内にのみ制限される。
図1
図2
図3a)】
図3b)】
図3c)】
図4a)】
図4b)】
図5
図6
図7
図8a
図8b
図9