(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-31
(45)【発行日】2024-06-10
(54)【発明の名称】地山応力測定装置
(51)【国際特許分類】
G01L 5/00 20060101AFI20240603BHJP
【FI】
G01L5/00 A
(21)【出願番号】P 2020125093
(22)【出願日】2020-07-22
【審査請求日】2023-05-17
(73)【特許権者】
【識別番号】302060926
【氏名又は名称】株式会社フジタ
(73)【特許権者】
【識別番号】504173471
【氏名又は名称】国立大学法人北海道大学
(73)【特許権者】
【識別番号】595005905
【氏名又は名称】株式会社エーティック
(74)【代理人】
【識別番号】100089875
【氏名又は名称】野田 茂
(72)【発明者】
【氏名】新井 智之
(72)【発明者】
【氏名】村山 秀幸
(72)【発明者】
【氏名】池田 奈央
(72)【発明者】
【氏名】児玉 淳一
(72)【発明者】
【氏名】菅原 隆之
(72)【発明者】
【氏名】釣賀 雅人
【審査官】大森 努
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-257602(JP,A)
【文献】特開平07-260411(JP,A)
【文献】実開平05-014811(JP,U)
【文献】特開平11-304601(JP,A)
【文献】特開2020-066843(JP,A)
【文献】特開2015-004585(JP,A)
【文献】国際公開第2016/126222(WO,A1)
【文献】米国特許第04852262(US,A)
【文献】村山秀幸、新井智之、児玉淳一、菅原隆之、岡崎健治、山崎秀策、釣賀雅人,変状トンネルにおける初期応力測定の活用に関する考察,令和元年度土木学会全国大会第74回年次学術講演会,日本,公益社団法人土木学会,2019年09月03日,VI-550
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01L 5/00-5/28
E02D
E02F
E21B
E21D
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
細長の円筒状で、長手方向に間隔をおいて設けられた少なくとも第1開口部と第2開口部を有する筐体と、
前記第1開口部を介して前記筐体の周方向に間隔をおいて配設されその先端に前記筐体の半径方向外側に突出する測定ピンを有し前記筐体の径方向に弾性変形可能な複数の第1板ばねと、
前記各第1板ばねに取着され前記筐体の径方向に沿った地山の変位を測定する複数の第1ひずみゲージと、
前記第2開口部を介して前記筐体の周方向に間隔をおいて配設されその先端に前記筐体の半径方向外側に突出する測定ピンを有し前記筐体の長手方向および径方向に弾性変形可能な複数の第2板ばねと、
前記各第2板ばねに取着され前記筐体の長手方向に沿った地山の変位を測定する複数の第2ひずみゲージと、
前記各第1板ばねおよび前記各第2板ばねを
測定位置と退避位置とに変位させる変位部と、
を備え、
前記測定位置では、前記測定ピンが前記筐体の外周面の半径方向外側に突出し、
前記退避位置では、前記測定ピンが前記筐体の外周面の半径方向内側に位置している、
ことを特徴とする地山応力測定装置。
【請求項2】
前記変位部は、
前記各第1板ばねおよび前各記第2板ばねに取着された磁石と、
前記筐体の中心軸上を直線移動可能に支持された移動軸と、
前記移動軸を第1の位置と第2の位置とに切り換える切り換え部と、
前記移動軸に設けられ前記第1の位置で前記第1板ばねおよび前記第2板ばねに取着された磁石に反発し前記第1板ばねおよび前記第2板ばねを前記測定位置に変位させる反発部と、
前記移動軸に設けられ前記第2の位置で前記第1板ばねおよび前記第2板ばねに取着された磁石を吸引し前記第1板ばねおよび前記第2板ばねを前記退避位置に変位させる吸引部と、
を備えることを特徴とする請求項1記載の地山応力測定装置。
【請求項3】
前記移動軸は、その先端部に前記筐体の長手方向の一方の端部から突出する突出部を有し、
前記切り換え部は、
前記突出部が前記筐体の長手方向の前記一方の端部から突出する方向に前記移動軸を付勢する付勢部材と、
前記移動軸の前記第1の位置を決定する第1の位置決定部と、
前記移動軸の前記第2の位置を決定する第2の位置決定部と、
を備えることを特徴とする請求項2記載の地山応力測定装置。
【請求項4】
前記切り換え部は、前記移動軸の前記突出部を把持可能な治具を含んで構成され、
前記治具で前記突出部を把持することで、前記移動軸は前記筐体の内部に没入して前記第2の位置となる、
ことを特徴とする請求項3記載の地山応力測定装置。
【請求項5】
前記筐体の長手方向の一方の端部に、前記移動軸が移動可能に挿通される中空状の保持部材が取り付けられ、
前記保持部材の外周部に把持用凹部が設けられ、
前記治具は、前記把持用凹部に係脱可能に係合し前記保持部材を介して前記突出部を把持する複数の把持爪と、それら把持爪を支持しそれら把持爪が前記把持用凹部に係合した状態で前記移動軸を没入させて前記第2の位置とする軸部とを備えている、
ことを特徴とする請求項4記載の地山応力測定装置。
【請求項6】
前記筐体の下部に前記筐体の鉛直方向の直径を挟んで対称に設けられた一対のローラをさらに備える、
ことを特徴とする請求項1から5の何れか1項記載の地山応力測定装置。
【請求項7】
前記一対のローラは、
前記筐体の長手方向の他方の端部に設けられた第1の一対のローラと、
前記筐体の長手方向における前記第1開口部と前記第2開口部との間に設けられた第2の一対のローラと、
を備えることを特徴とする請求項6に記載の地山応力測定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地山応力測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
山岳トンネルの施工では、地質不良個所等において予期せぬ様々な変状に遭遇する。一方、施工時に顕著な変状が発生していない場合であっても、後に変状が発生するトンネルも少なくない。
このような地山変状は、初期の応力状態と地山の様々な地質特性(割れ目や地下水など)や力学特定(強度や物性、塑性化、膨張性、吸水率など)に依存していると考えられるため、初期の応力状態とその変化を適時把握することはぐ非常に重要である。
そこで、地山の初期応力を測定する方法の一つとして、応力解放による方法がある。例えば、応力を受けている地山に測定孔を掘削し、その測定孔を利用してひずみゲージを接着し、その部分を含む地山をオーバーコアリングすることで応力を解放し、その際に生じるひずみの測定によって三次元応力を算出する手法が開示されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
応力解放のうち国内で普及している手法は、円錐ひずみ孔底法および埋設ひずみ法であるが、測定装置を岩盤に密着させるためモルタルなどを充填するグラウトや接着を伴い養生期間が必要であったり、地下水があると測定が困難となってしまう。
これに対して、応力解放のうち孔径変化法は、小口径の測定孔において応力解放前後の孔径変化量を測定する手法であって、測定孔に測定装置を挿入した直後からオーバーコアリングによる応力解放が可能で即時性が高く測定が簡便であり、多少の地下水があっても測定が可能となっている。
【0005】
しかしながら、このような孔径変化法を用いる地山応力測定装置では、測定孔の変位を測定するための測定ピンが円筒状の筐体の半径方向外側に突出して設けられているが、測定孔に挿入する際に測定ピンが測定孔の内壁面(孔壁)に接触して引きずられると、地山応力測定装置の測定孔への挿入および抜き出しが困難になるとともに、測定ピンに引きずれられることによるひずみが発生するため、測定した変位に誤差が生じてしまう。
本発明は、上記事情に鑑みなされたものであり、測定孔への挿入および抜き出しを容易にするとともに、測定精度を向上させる地山応力測定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した目的を達成するため本発明は、細長の円筒状で、長手方向に間隔をおいて設けられた少なくとも第1開口部と第2開口部を有する筐体と、前記第1開口部を介して前記筐体の周方向に間隔をおいて配設されその先端に前記筐体の半径方向外側に突出する測定ピンを有し前記筐体の径方向に弾性変形可能な複数の第1板ばねと、前記各第1板ばねに取着され前記筐体の径方向に沿った地山の変位を測定する複数の第1ひずみゲージと、前記第2開口部を介して前記筐体の周方向に間隔をおいて配設されその先端に前記筐体の半径方向外側に突出する測定ピンを有し前記筐体の長手方向および径方向に弾性変形可能な複数の第2板ばねと、前記各第2板ばねに取着され前記筐体の長手方向に沿った地山の変位を測定する複数の第2ひずみゲージと、前記各第1板ばねおよび前記各第2板ばねを、それらの板ばねに設けられた前記測定ピンを前記筐体の外周面の半径方向外側に突出する測定位置と前記筐体の外周面の半径方向内側に位置する退避位置とに変位させる変位部とを備えることを特徴とする。
また、本発明は、前記変位部は、前記各第1板ばねおよび前各記第2板ばねに取着された磁石と、前記筐体の中心軸上を直線移動可能に支持された移動軸と、前記移動軸を第1の位置と第2の位置とに切り換える切り換え部と、前記移動軸に設けられ前記第1の位置で前記第1板ばねおよび前記第2板ばねに取着された磁石に反発し前記第1板ばねおよび前記第2板ばねを前記測定位置に変位させる反発部と、前記移動軸に設けられ前記第2の位置で前記第1板ばねおよび前記第2板ばねに取着された磁石を吸引し前記第1板ばねおよび前記第2板ばねを前記退避位置に変位させる吸引部とを備えることを特徴とする。
また、本発明は、前記移動軸は、その先端部に前記筐体の長手方向の一方の端部から突出する突出部を有し、前記切り換え部は、前記突出部が前記筐体の長手方向の前記一方の端部から突出する方向に前記移動軸を付勢する付勢部材と、前記突出部が前記筐体の長手方向の前記一方の端部から突出する前記移動軸の前記第1の位置を決定する第1の位置決定部と、前記突出部が前記筐体の長手方向において前記筐体の内部に没入する前記移動軸の前記第2の位置を決定する第2の位置決定部とを備えることを特徴とする。
また、本発明は、前記切り換え部は、前記移動軸の前記突出部を把持可能な治具を含んで構成され、前記治具で前記突出部を把持することで、前記移動軸は前記筐体の内部に没入して前記第2の位置となることを特徴とする。
また、本発明は、前記筐体の長手方向の一方の端部に、前記移動軸が移動可能に挿通される中空状の保持部材が取り付けられ、前記保持部材の外周部に把持用凹部が設けられ、前記治具は、前記把持用凹部に係脱可能に係合し前記保持部材を介して前記突出部を把持する複数の把持爪と、それら把持爪を支持しそれら把持爪が前記把持用凹部に係合した状態で前記移動軸を没入させて前記第2の位置とする軸部とを備えていることを特徴とする。
また、本発明は、前記筐体の下部に前記筐体の鉛直方向の直径を挟んで対称に設けられた一対のローラをさらに備えることを特徴とする。
また、本発明は、前記一対のローラは、前記筐体の長手方向の他方の端部に設けられた第1の一対のローラと、前記筐体の長手方向における前記第1開口部と前記第2開口部との間に設けられた第2の一対のローラとを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、円筒状の筐体の長手方向に間隔をおいて第1開口部と第2開口部が設けられ、先端に測定ピンを有し第1開口部を介して筐体の周方向に間隔をおいて複数の第1板ばねが配設され、先端に測定ピンを有し第2開口部を介して筐体の周方向において複数の第2板ばねが配設されており、変位部により各第1板ばねおよび各第2板ばねを、それらの板ばねに設けられた測定ピンを筐体の外周面の半径方向外側に突出する測定位置と筐体の外周面の半径方向内側に位置する退避位置とに変位させる。これにより、測定孔に地山応力測定装置を挿入および抜き出しする場合には、各第1板ばねおよび各第2板ばねを筐体の半径方向内側に向けて変位させて測定ピンを筐体の内部に収納することで測定ピンが測定孔の内壁面に接触することを回避でき、測定孔に配置された地山応力測定装置による測定時には、各第1板ばねおよび各第2板ばねを筐体の半径方向外側に向けて変位させて測定ピンを筐体の半径方向外側に突出させることで測定ピンを測定孔の内壁面に接触させて地山の変位を測定可能にできるため、地山応力測定装置の測定孔への挿入および抜き出しを容易にするとともに、測定精度を向上させる上で有利となる。
また、本発明によれば、各第1板ばねおよび各第2板ばねに磁石を取着し、筐体の中心軸上を直線移動可能に支持された移動軸に磁石に反発し第1板ばねおよび第2板ばねを測定位置に変位させる反発部と、磁石を吸引し第1板ばねおよび第2板ばねを退避位置に変位させる吸引部とを備える。これにより、移動軸を移動させることで、磁石と反発部により第1板ばねおよび第2板ばねを測定位置に変位させ、磁石と吸引部により第1板ばねおよび第2板ばねを退避位置に変位させることができ、簡易な構成によって地山応力測定装置の測定孔への挿入および抜き出しを容易にするとともに、測定精度を向上させる上で有利となる。
また、本発明によれば、付勢部材と第1の位置決定部とにより移動軸の第1の位置を決定し、第2の位置決定部により移動軸の第2の位置を決定するため、地山応力測定装置を測定孔に挿入および抜き出しする際に移動軸の移動量を調整する手間を省略でき、地山応力測定装置の測定孔への挿入および抜き出しを容易にするとともに、測定精度を向上させる上で有利となる。
また、本発明によれば、移動軸の突出部を把持可能な治具で突出部を把持することで、移動軸が筐体の内部に没入して第2の位置となるため、移動軸の移動量を調整する手間を省略でき、地山応力測定装置の測定孔への挿入および抜き出しを容易にする上で有利となる。
また、本発明によれば、筐体の長手方向の一方の端部に外周部に把持用凹部が設けられた保持部材が取り付けられ、治具は、把持用凹部に係脱可能に係合し保持部材を介して突出部を把持する複数の把持爪と、それら把持爪を支持しそれら把持爪が把持用凹部に係合した状態で移動軸を没入させて第2の位置とする軸部とを備えているため、簡易な構成により突出部を把持できるともに移動軸を没入させることができ、地山応力測定装置の測定孔への挿入および抜き出しを容易にする上で有利となる。
また、本発明によれば、筐体の下部に筐体の鉛直方向の直径を挟んで対称に一対のローラが設けられているため、地山応力測定装置の自重を負担しつつ測定孔への挿入および抜き出しを補助することで、地山応力測定装置の挿入作業および抜き出し作業を円滑に行う上で有利となる。
また、本発明によれば、筐体の長手方向の他方の端部に第1の一対のローラが設けられ、第1開口部と第2開口部との間に第2の一対のローラが設けられているため、地山応力測定装置の挿入作業および抜き出し作業を安定させながら円滑に行う上で有利となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本実施の形態の地山応力測定装置の断面図である。
【
図2】本実施の形態の地山応力測定装置の
図1におけるA矢視図である。
【
図3】本実施の形態の地山応力測定装置の
図1におけるB矢視図である。
【
図4】本実施の形態の地山応力測定装置を測定孔に挿入する場合の説明図である。
【
図5】本実施の形態の地山応力測定装置により測定している場合の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態について
図1~5を参照して説明する。
本実施の形態の地山応力測定装置は、孔径変化法を用いて地山の初期応力を測定するものである。
地山応力測定装置10は、地山を掘削して設けられた測定孔Hに挿入して設置し、外側を掘削して応力を開放させた測定孔Hの変位を測定する。変位の測定後、地山応力測定装置10は測定孔Hから抜き出され、外部装置によって測定された変位に基づいて地山の初期応力が算出される。
【0010】
図1に示すように、地山応力測定装置10は、筐体12と、第1板ばね14と、第1ひずみゲージ16と、第2板ばね18と、第2ひずみゲージ20と、変位部30と、第1の一対のローラ60と、第2の一対のローラ62と、データロガー64とを備えて構成されている。
なお、
図1、4、5に示す地山応力測定装置10は、測定孔Hへの挿入方向をD1方向とし、測定孔Hからの抜き出し方向をD2方向とする。
【0011】
筐体12は、金属製で細長の円筒状に形成されている。
筐体12の長手方向に間隔をおいた複数箇所において、それぞれ周方向に間隔をおいて複数の開口部が設けられている。
本実施の形態では、筐体12の長手方向のほぼ中央部に第1開口部12Aが設けられ、筐体12の長手方向の一方の端部12C寄りの箇所に第2開口部12Bが設けられている。
第1開口部12Aは、筐体12の周方向に45度の位相をずらして8つ設けられ、第2開口部12Bは、筐体12の周方向に90度の位相をずらして4つ設けられている。
なお、第1開口部12Aと第2開口部12Bを、筐体12の周方向に60度の位相をずらして6つずつ設け、あるいは、120度の位相をずらして3つずつ設けるなど任意である。
筐体12の長手方向の一方の端部12Cには、地山応力測定装置10を測定孔Hに挿入する際に保持される中空状の保持部材1208が取り付けられており、保持部材1208の先部の外周部には把持用凹部1208Aが形成されている。
筐体12の長手方向の他方の端部12Dには、第1の一対のローラ60を取り付けるための取付部材1210が設けられている。
また、第1開口部12Aより端部12D側の筐体12の内部には、軸方向の中心に端部12Dに向けて開放状の凹部が形成された円柱状の固定部材1202が取着されている。
固定部材1202の凹部の底壁の中心に貫通孔1202Aが形成されている。
固定部材1202は、例えば、ボルトや接着剤により筐体12に固定されている。
【0012】
第1板ばね14は、金属製で細長い矩形状の複数の板ばねであって、各第1板ばね14は、第1開口部12Aを介して筐体12の周方向に間隔をおいて配設されている。
本実施の形態の第1板ばね14は、筐体12の周方向に45度の位相をずらして8つ設けられており、筐体12の周方向の所定位置を0度として時計回りを正とすると、0度、45度、90度、135度、180度、225度、270度、315度の位置に設けられている。
また、第1板ばね14は、各第1開口部12A内に、それらの長手方向を筐体12の長手方向に沿わせて位置するように配設されている。
第1板ばね14の長手方向の一方の端部である基部は、固定部材1202の外周面にねじ1204によって取り付けられ、したがって、第1板ばね14は基部を支点として筐体12の径方向に弾性変形可能となっている。
各第1板ばね14の長手方向の他方の端部である先部に、第1開口部12Aから筐体12の外周面の半径方向外側に突出する測定ピン1402がそれぞれ設けられている。したがって、測定ピン1402は、第1板ばね14と同様に、筐体12の周方向に45度の位相をずらして8つ配置されていることになる。
測定ピン1402は、測定孔Hの変位の測定時には測定孔Hの内壁面W(孔壁)に当接する。
【0013】
第1ひずみゲージ16は、各第1板ばね14の長手方向の中央付近にそれぞれ取着されており、第1板ばね14と同様に、筐体12の周方向に45度の位相をずらして8つ配置されていることになる。
第1ひずみゲージ16は、測定ピン1402が測定孔Hの内壁面Wに当接している状態で、第1板ばね14の変形状態により筐体12の径方向に沿った地山の変位を測定する。
具体的には、第1ひずみゲージ16は、筐体12の周方向に180度離れて設けられた一対の測定ピン1402により筐体12の径方向に沿った地山の変位を測定する。
本実施の形態の第1ひずみゲージ16は、0度と180度の位置で1組、45度と225度の位置で1組、90度と270度の位置で1組、135度と315度の位置で1組の合計4組で相対変位を測定することで、筐体12の径方向に沿った地山の変位を測定する。
【0014】
第2板ばね18は、金属製で細長い矩形状の複数の板ばねであって、各第2板ばね18は、第2開口部12Bを介して筐体12の周方向に間隔をおいて配設されている。
本実施の形態の第2板ばね18は、筐体12の周方向に90度の位相をずらして4つ設けられており、第1の板ばね14と同様の所定位置を0度として時計回りを正とすると、0度、90度、180度、270度の位置に設けられている。つまり、第2板ばね18は、0度、90度、180度、270度に設けられた第1板ばね14の位相に合わせて配置されている。
また、第2板ばね18は、各第2開口部12B内に、それらの長手方向を筐体12の長手方向に沿わせて位置するように配設されている。
第2板ばね18の長手方向の半部は、ねじ1206により第2開口部12Bより端部12D側の筐体12の内周面に取り付けられている。
第2板ばね18が第2開口部12Bに露出する箇所に、筐体12の半径方向内側に突出する湾曲部18Aが設けられている。
第2板ばね18は、ねじ1206により筐体12の内周面に取り付けられた長手方向の半部を支点として、筐体12の径方向に弾性変形可能で、また、湾曲部18Aを有していることから、筐体12の長手方向に弾性変形可能となっている。
各第2板ばね18が第2開口部12Bに露出する先部に、第2開口部12Bから筐体12の外周面の半径方向外側に突出する測定ピン1802がそれぞれ設けられている。したがって、測定ピン1802は、第2板ばね18と同様に、筐体12の周方向に90度の位相をずらして4つ配置されていることになる。
測定ピン1802は、測定孔Hの変位の測定時には測定孔Hの内壁面W(孔壁)に当接する。
【0015】
第2ひずみゲージ20は、第2板ばね18の湾曲部18Aに一体形成されたパイ型ゲージであって、第2板ばね18と同様に、筐体12の周方向に90度の位相をずらして4つ配置されていることになる。
第2ひずみゲージ20は、測定ピン1802が測定孔Hの内壁面Wに当接している状態で、湾曲部18Aの変形状態により筐体12の長手方向に沿った地山の変位を測定する。
具体的には、0度、90度、180度、270度に設けられた第2ひずみゲージ20は、それぞれの位相に対応する第1板ばね14の測定ピン1402を基準として筐体12の長手方向に沿った地山の変位を測定する。
【0016】
変位部30は、各第1板ばね14および各第2板ばね18を、それらの板ばね14、18に設けられた測定ピン1402、1802を筐体12の外周面の半径方向外側に突出する測定位置と筐体12の外周面の半径方向内側に位置する退避位置とに変位させるものであって、磁石32A、32Bと、ロッド34と、切り換え部50と、反発部36A、36Bと、吸引部38A、38Bとから構成されている。
【0017】
磁石32A、32Bは、N極、S極を有する磁石であって、それぞれ第1板ばね14および第2板ばね18に取着されている。
具体的には、磁石32Aは、筐体12の半径方向内側に向いた第1板ばね14の先部の内面にN極を半径方向内側に向けて取着されている。
同様に、磁石32Bは、筐体12の半径方向内側に向いた第2板ばね18の先部の内面にN極を半径方向内側に向けて取着されている。
【0018】
ロッド34は、筐体12の中心軸上をD1方向およびD2方向に直線移動可能に支持された金属製の移動軸である。
ロッド34は、その先端部の突出部3402が、筐体12の長手方向の一方の端部12Cから突出し、端部12Cに設けられた保持部材1208内部を移動可能に貫通している。
また、ロッド34の後端部3404は、固定部材1202に形成された貫通孔1202Aを貫通している。
そして、筐体12の内部に位置するロッド34には、ロッド34に支持された支持体に反発部36Aおよび吸引部38Aが円筒形に取着された変位調整部40Aと、ロッド34に支持された支持体に反発部36Bおよび吸引部38Bが円筒形に取着された変位調整部40Bとが、所定の間隔をおいて固定されている。
【0019】
切り換え部50は、ロッド34を第1の位置と第2の位置とに切り換えるものであって、ばね(付勢部材)52と、ストッパ54と、治具56(
図4参照)とから構成されている。
ここで、第1の位置とは、地山応力測定装置10によって測定孔Hを測定している際のロッド34の位置であって(
図5参照)、第2の位置とは、地山応力測定装置10を測定孔Hへ挿入する際および測定孔Hから抜き出す際のロッド34の位置である(
図4参照)。
【0020】
ばね52は、コイルばねであって、ロッド34に巻装され固定部材1202と変位調整部材40Aとの間に設けられている。
ストッパ54は、固定部材1202の貫通孔1202Aを貫通し凹部内に位置するロッド34の後端部3404に固定されたリング状の部材である。
図1に示すように、ばね52によりロッド34は突出部3402が筐体14の一方の端部から突出する方向に付勢され、ストッパ54が固定部材1202の凹部の底壁に当接することでロッド34の第1の位置が決定される。すなわち、ストッパ54はロッド34の第1の位置を決定する第1の位置決定部を構成している。
また、
図4に示すように、治具56によりロッド34の突出部3402が筐体14の内部に押し込まれ、ばね52が最も圧縮された圧縮状態になることでロッド34の没入限界位置が決定され、これによりロッド34の第2の位置が決定される。すなわち、ばね52はロッド34の第2の位置を決定する第2の位置決定部を構成している。
本実施の形態では、付勢部材としてばねを用いているが、油圧ダンパなど公知の他の付勢部材を用いてもよいが、ばねを用いることで構成が簡易となる。
【0021】
治具56は、地山応力測定装置10を測定孔Hに挿入または抜き出す場合に、地山応力測定装置10を保持するものであって、
図4に示すように、金属製の棒状の軸部5602と、軸部5602の端部に設けられ開閉して他の部材を挟み込むように把持する金属製の複数の把持爪5604とから構成されている。
治具56は、本実施の形態では、複数の把持爪5604を開閉して、保持部材1208の把持用凹部1208Aを挟み込んで保持部材1208を把持することで地山応力測定装置10を保持する。
このとき、把持爪5604が保持部材1208を挟み込む際に軸部5602の先端によってロッド34が押し込まれることでロッド34がD1方向に移動して突出部3402が筐体12の内部に没入しロッド34は第2の位置となる。
【0022】
また、治具56で地山応力測定装置10を保持している場合に、把持爪5604を開き、先端部5604Aを保持部材1208の把持用凹部1208Aから外し、保持部材12の把持を解除して治具56を地山応力測定装置10から取り外す。
治具56による保持部材12の把持が解除されると、ばね52によってロッド34が付勢されてD2方向に移動し、ロッド34は第1の位置となる。
このように、切り換え部10は、ばね52およびストッパ54がロッド34を第1の位置に移動させ、治具56がロッド34を第2の位置に移動させる。
【0023】
反発部36A、36Bは、ロッド34に設けられ、ロッド34が第1の位置にある場合に、第1板ばね14および第2板ばね18に取着された磁石32A、32Bに反発する磁石である。
具体的には、反発部36Aは、ロッド34に固定された変位調整部40Aの外周面の周方向に設けられた磁石であって、N極が筐体12の半径方向外側に向いている。反発部36Aは、ロッド34が第1の位置にある場合に、各第1板ばね14に設けられた磁石32Aに対向する位置に設けられている。このため、N極が筐体12の半径方向外側に向いている反発部36Aは、N極が筐体12の半径方向内側に向いている磁石32Aに反発し、磁石32Aが取着されている第1板ばね14の先部を筐体12の半径方向外側に変位させ、測定ピン1402を筐体12の外周面の半径方向外側に突出する測定位置とする(
図5参照)。
また、反発部36Bは、ロッド34に固定された変位調整部40Bの外周面の周方向に設けられた磁石であって、N極が筐体12の半径方向外側に向いている。反発部36Bは、ロッド34が第1の位置にある場合に、各第2板ばね18に設けられた磁石32Bに対向する位置に設けられている。このため、N極が筐体12の半径方向外側に向いている反発部36Bは、N極が筐体12の半径方向内側に向いている磁石32Bに反発し、磁石32Bが取着されている第2板ばね18の先部を半径方向外側に変位させ、測定ピン1802を筐体12の外周面の半径方向外側に突出する測定位置とする(
図5参照)。
これにより、第1板ばね14に設けられた測定ピン1402および第2板ばね18に設けられた測定ピン1802が筐体12の外周面の半径方向外側に突出した測定位置となり、測定孔Hの内壁面Wに当接する。
【0024】
吸引部38A、38Bは、ロッド34に設けられ、ロッド34が第2の位置にある場合に、第1板ばね14および第2板ばね18に取着された磁石32A、32Bを吸引する磁石である。
具体的には、吸引部38Aは、ロッド34に固定された変位調整部40Aの外周面の周方向に反発部36Aと並んで設けられた磁石であって、S極が筐体12の半径方向外側に向いている。吸引部38Aは、ロッド34が第2の位置にある場合に、各第1板ばね14に設けられた磁石32Aに対向する位置に設けられている。このため、S極が筐体12の半径方向外側に向いている吸引部38Aは、N極が筐体12の半径方向内側に向いている磁石32Aを吸引し、磁石32Aが取着されている第1板ばね14の先部を筐体12の半径方向内側に変位させ、測定ピン1402を筐体12の外周面の半径方向内側に位置する退避位置とする(
図4参照)。
また、吸引部38Bは、ロッド34に固定された変位調整部40Bの外周面の周方向に反発部36Bと並んで設けられた磁石であって、S極が筐体12の半径方向外側に向いている。吸引部38Bは、ロッド34が第2の位置にある場合に、各第2板ばね18に設けられた磁石32Bに対向する位置に設けられている。このため、S極が筐体12の半径方向外側に向いている吸引部38Bは、N極が筐体12の半径方向内側に向いている磁石32Bを吸引し、磁石32Bが取着されている第2板ばね18の先部を筐体12の半径方向内側に変位させ、測定ピン1802を筐体12の外周面の半径方向内側に位置する退避位置とする(
図4参照)。
これにより、第1板ばね14に設けられた測定ピン1402および第2板ばね18に設けられた測定ピン1802が筐体12の内部に収納された退避位置となり、測定孔Hの内壁面Wへの当接を回避する。
なお、本実施の形態では、反発部36Aおよび吸引部38Aは単一の磁石のN極およびS極によって構成され、反発部36Bおよび吸引部38Bは単一の磁石のN極およびS極によって構成されている。
【0025】
第1の一対のローラ60は、
図1、2に示すように、筐体12の長手方向の他方の端部12Dの下部に、筐体12の鉛直方向の直径Lを挟んで対称に設けられている。
図2に示すように、取付部材1210は、直径L挟んで対称な斜面1202Aが形成されており、第1の一対のローラ60は、2つの斜面1202Aそれぞれにボルト6002により回転可能に取り付けられている。
第2の一対のローラ62は、
図3に示すように、筐体12の長手方向における第1開口部12Aと第2開口部12Bとの間の下部に、筐体12の鉛直方向の直径Lを挟んで対称に設けられている。
図3に示すように、筐体12は、直径Lを挟んで対称な下斜面1212Aおよび上斜面1212Bとからなる凹部1212が形成されており、第2の一対のローラ62は、2つの下斜面1212Aそれぞれにボルト6202により回転可能に取り付けられている。なお、
図3は
図1におけるB矢視図であるが、
図1では第2の一対のローラ62の記載が省略されている。
【0026】
第1の一対のローラ60および第2の一対のローラ62には、それぞれボルト6002、6202が挿通される長穴(不図示)が形成されているため、ボルト6002、6202によって取り付ける際に、第1の一対のローラ60および第2の一対のローラ62が筐体12の半径方向にわずかに移動可能となっており、取り付け位置の微調整が可能となっている。
これにより、第1の一対のローラ60および第2の一対のローラ62は、地山に掘削する測定孔Hの内壁面Wに接するとともに、測定孔Hの中心軸と地山応力測定装置10の中心軸とを一致させるように取り付けられ、センタライザとしての役割も担っている。
このように取り付けられた第1の一対のローラ60および第2の一対のローラ62は、地山応力測定装置10の挿入作業、および抜き出し作業の際、測定孔Hの中心軸と地山応力測定装置10の中心軸とを一致させながら、測定孔Hの内壁面Wに接することで回転する(
図4参照)。
そして、地山応力測定装置10が測定孔Hに挿入され地山の変位を測定する際には、測定ピン1402、1802が筐体12の外周面の半径方向外側に突出して内壁面Wに当接することで、第1の一対のローラ60および第2の一対のローラ62と内壁面Wとの間にわずかな隙間が形成される(
図5参照)。
【0027】
このような第1の一対のローラ60および第2の一対のローラ62は、地山応力測定装置10を測定孔Hに挿入する際および抜き出す際に測定孔Hの内壁面Wに当接し、地山応力測定装置10のD1方向およびD2方向への移動に連動し回転するため、地山応力測定装置10の挿入作業、抜き出し作業を補助して円滑に行わせることができる。
また、第1の一対のローラ60および第2の一対のローラ62は、筐体12の下部に設けられていることで、地山応力測定装置10の自重を負担でき、地山応力測定装置10の挿入作業および抜き出し作業を安定させることができる。
さらに、第1の一対のローラ60および第2の一対のローラ62は、測定孔Hの内壁面Wに接するとともに、測定孔Hの中心軸と地山応力測定装置10の中心軸とを一致させるように取り付けられることでセンタライザとしての役割も担っている。このため、地山応力測定装置10を測定孔Hに挿入する際および抜き出す際に測定孔Hの中心軸と地山応力測定装置10と中心軸とを一致させることができ、測定精度を向上させる上で有利となる。
また、地山応力測定装置10が測定孔Hに挿入され地山の変位の測定する際には、測定ピン1402、1802が筐体12の外周面の半径方向外側に突出して内壁面Wに当接することで、第1の一対のローラ60および第2の一対のローラ62と内壁面Wとの間にわずかな隙間が形成される。このため、測定時には測定ピン1402、1802のみが内壁面Wに接することとなり、測定精度を向上させる上で有利となる。
【0028】
データロガー64は、第1ひずみゲージ16および第2ひずみゲージ20に不図示のケーブルまたは無線により接続されており、第1ひずみゲージ16および第2ひずみゲージ20により測定された地山の測定孔Hの変位を所定間隔で時系列に記録するものである。
記録された測定孔Hの変位は、地山応力測定装置10が測定孔Hから抜き出された後に、応力を算出する外部装置に送信され、当該外部装置によって測定孔Hの変位から逆算して地山の応力が算出される。
データロガー64には、小型電池が内蔵されており、地山応力測定装置10を測定孔Hに挿入する前に、タイマーの時計を合わせ、測定頻度(測定間隔)などを設定しておく。これにより、測定時に測定孔Hにあるデータロガー64は、電力供給やデータ転送のために外部装置と有線で接続する必要がなく、測定中も独立してデータを取得できる。
【0029】
次に、
図1、4、5を参照して、地山応力測定装置10による地山の応力測定時の作業の流れについて説明する。
治具56により保持されていない地山応力測定装置10は、
図1に示すように、ロッド34が第1の位置にあり、反発部36A、36Bがそれぞれ磁石32A、32Bに反発し、第1板ばね14の先部および第2板ばね18の先部が半径方向外側に変位し、測定ピン1402および測定ピン1802は、筐体12から突出している。
【0030】
まず、測定孔Hの初期応力を測定する場合、治具56により地山応力測定装置10を保持する。
具体的には、治具56の把持爪5604により保持部材1208を把持することで地山応力測定装置10を保持する。
このとき、軸部5602の先端によってロッド34が押し込まれることで、ロッド34がD1方向に移動し、把持爪5604が保持部材1208を把持するとロッド34の移動が停止し、ロッド34が第2の位置となる。つまり、吸引部38A、38Bが磁石32A、32Bそれぞれに対向する(
図4)。
そうすると、吸引部38A、38Bがそれぞれ磁石32A、32Bを吸引し、第1板ばね14の先部および第2板ばね18の先部が半径方向内側に変位し、測定ピン1402および測定ピン1802は、筐体12の外周面の半径方向内側に位置する退避位置となる。
【0031】
次に、保持された地山応力測定装置10を測定孔Hに挿入する。
具体的には、治具56により地山応力測定装置10を保持した状態で、治具56の軸部5602を測定孔Hに押し込むことで、筐体12の端部12D側を先頭に測定孔Hに挿入する。このとき、測定ピン1402および測定ピン1802は、筐体12の外周面の半径方向内側に位置する退避位置となっているため、測定孔Hの内壁面Wに接触することを回避できる。
また、第1の一対のローラ60および第2の一対のローラ62を測定孔Hの内壁面Wに当接させながら挿入することで、挿入作業を円滑に行うことができる。
【0032】
そして、地山応力測定装置10を所望の位置まで挿入したら、地山応力測定装置10を治具56から外し設置完了となる。
具体的には、治具56の把持爪5604による保持部材1208の把持を解除することで地山応力測定装置10を取り外す。これにより、ロッド34は移動可能となり、ばね52によってロッド34が付勢されてD2方向に移動し、ストッパ54によってその移動が停止され、ロッド34が第1の位置となる。つまり、反発部36A、36Bが磁石32A、32Bそれぞれに対向する(
図5)。
そうすると、反発部36A、36Bがそれぞれ磁石32A、32Bを反発し、第1板ばね14の先部および第2板ばね18の先部が半径方向外側に変位し、測定ピン1402および測定ピン1802は、筐体12の外周面の半径方向外側に突出した測定位置となり、測定孔Hの内壁面Wに当接する。これにより測定孔Hの変位が測定可能となる。
【0033】
データロガー64は、第1ひずみゲージ16および第2ひずみゲージ20により測定された地山の測定孔Hの変位を所定間隔で記録する。
このような地山の測定孔Hの変位の測定および記録は予め定められた測定時間行われる。測定時間が経過したならば、治具56により再度地山応力測定装置10を保持する。
この場合、地山応力測定装置10を測定孔Hに挿入する場合と同様であって、吸引部38A、38Bがそれぞれ磁石32A、32Bを吸引し、第1板ばね14の先部および第2板ばね18の先部が半径方向内側に変位し、測定ピン1402および測定ピン1802が筐体12の外周面の半径方向内側に位置する退避位置となり筐体12の内部に収納される(
図4)。
【0034】
そして、保持された地山応力測定装置10を測定孔Hから抜き出す。
具体的には、治具56により地山応力測定装置10を保持した状態で、治具56の軸部5602を測定孔Hから引き出すことで、測定孔Hから抜き出す。このとき、測定ピン1402および測定ピン1802は、筐体12の外周面の半径方向内側に位置する退避位置となっているため、測定孔Hの内壁面Wに接触することを回避できる。
また、第1の一対のローラ60および第2の一対のローラ62を測定孔Hの内壁面Wに当接させながら抜き出すことで、抜き出し作業を円滑に行うことができる。
抜き出された地山応力測定装置10からデータロガー64を取り出して、外部装置に測定孔Hの変位の記録を送信し、当該外部装置により測定孔Hの変位に基づいて測定孔Hの応力を算出する。
【0035】
このように、本実施の形態の地山応力測定装置10によれば、円筒状の筐体12の長手方向に間隔をおいて複数の第1開口部12Aおよび複数の第2開口部12Bが設けられ、先端に測定ピン1402を有し第1開口部12Aを介して筐体12の周方向に間隔をおいて複数の第1板ばね14が配設され、先端に測定ピン1802を有し第2開口部12Bを介して筐体12の周方向において複数の第2板ばね18が配設されており、変位部30により各第1板ばね14および各第2板ばね18を、それらの板ばね14、18に設けられた測定ピン1402、1802を筐体12の外周面の半径方向外側に突出する測定位置と筐体12の外周面の半径方向内側に位置する退避位置とに変位させる。
これにより、測定孔Hに地山応力測定装置10を挿入および抜き出しする場合には、各第1板ばね14および各第2板ばね18を筐体12の半径方向内側に向けて変位させて測定ピン1402、1802を筐体12の内部に収納することで測定ピン1402、1802が測定孔Hの内壁面Wに接触することを回避できる。一方、測定孔Hに配置された地山応力測定装置10による測定時には、各第1板ばね14および各第2板ばね18を筐体12の半径方向外側に向けて変位させて測定ピン1402、1802を筐体12の半径方向外側に突出させることで測定ピン1402、1802を測定孔Hの内壁面Wに接触させて地山の変位を測定可能にできる。このため、地山応力測定装置10の測定孔Hへの挿入および抜き出しを容易にするとともに、測定精度を向上させる上で有利となる。
【0036】
また、本実施の形態の地山応力測定装置10によれば、各第1板ばね14および各第2板ばね18にそれぞれ磁石32A、32Bを取着し、筐体12の中心軸上を直線移動可能に支持されたロッド34に磁石32A、32Bに反発し第1ばね14および第2板ばね18を測定位置に変位させる反発部36A、36Bと、磁石32A、32Bを吸引し第1板ばね14および第2板ばね18を退避位置に変位させる吸引部38A、38Bとを備える。
これにより、ロッド34を移動させることで、磁石32A、32Bと反発部36A、36Bにより第1板ばね14および第2板ばね18を測定位置に変位させ、磁石32A、32Bと吸引部38A、38Bにより第1板ばね14および第2板ばね18を退避位置に変位させることができる。
このため、簡易な構成によって地山応力測定装置10の測定孔Hへの挿入および抜き出しを容易にするとともに、測定精度を向上させる上で有利となる。
【0037】
また、本実施の形態の地山応力測定装置10によれば、ばね52とストッパ54とによりロッド34をD2方向に移動させるとともに第1の位置を決定し、治具56によりロッド34をD1方向に移動させるとともにロッド34の第2の位置を決定するため、地山応力測定装置10を測定孔Hに挿入および抜き出しする際にロッド34の移動量を調整する手間を省略でき、地山応力測定装置10の測定孔Hへの挿入および抜き出しを容易にする上で有利となる。
【0038】
また、本実施の形態の地山応力測定装置10によれば、ロッド34の突出部3402を把持可能な治具56で突出部3402を把持することで、ロッド34が筐体12の内部に没入して第2の位置となるため、ロッド34の移動量を調整する手間を省略でき、地山応力測定装置10の測定孔Hへの挿入および抜き出しを容易にする上で有利となる。
また、本実施の形態の地山応力測定装置10によれば、筐体12の長手方向の一方の端部12Cに外周部に把持用凹部1208Aが設けられた保持部材1208が取り付けられ、治具56は、把持用凹部1208Aに係脱可能に係合し保持部材1208を介して突出部3402を把持する複数の把持爪5604と、それら把持爪5604を支持しそれら把持爪5604が把持用凹部1208Aに係合した状態でロッド34を没入させて第2の位置とする軸部5602とを備えているため、簡易な構成により突出部3402を把持できるともにロッド34を没入させることができ、地山応力測定装置10の測定孔Hへの挿入および抜き出しを容易にする上で有利となる。
【0039】
また、本実施の形態の地山応力測定装置10によれば、筐体12の下部に筐体12の鉛直方向の直径Lを挟んで対称に設けられた第1の一対のローラ60および第2の一対のローラ62が、地山応力測定装置10を測定孔Hに挿入する際および抜き出す際に測定孔Hの内壁面Wに当接し、地山応力測定装置10のD1方向およびD2方向への移動に連動し回転するため、地山応力測定装置10の挿入作業、抜き出し作業を補助して円滑に行わせることができる。
また、第1の一対のローラ60および第2の一対のローラ62は、筐体12の下部に設けられていることで、地山応力測定装置10の自重を負担でき、地山応力測定装置10の挿入作業および抜き出し作業を安定させることができる。
さらに、第1の一対のローラ60および第2の一対のローラ62は、センタライザとしての役割も担っているため、地山応力測定装置10を測定孔Hに挿入する際および抜き出す際に測定孔Hの中心軸と地山応力測定装置10と中心軸とを一致させることができ、測定精度を向上させる上で有利となる。
また、地山応力測定装置10が測定孔Hに挿入され地山の変位の測定する際には、第1の一対のローラ60および第2の一対のローラ62と内壁面Wとの間にわずかな隙間が形成されるため、測定時には測定ピン1402、1802のみが内壁面Wに接することとなり、測定精度を向上させる上で有利となる。
【0040】
また、本実施の形態の地山応力測定装置10を乗せる台車を作成し、治具56付近にカメラを設けることで、カメラにより撮像された映像を見ながら地山応力測定装置10を測定孔に挿入および抜き出しする構成としてもよい。これにより、作業者の目視のみに頼ることなく、地山応力測定装置10の態勢や状態などを確認しながら円滑に挿入作業や抜き出し作業を行うことができる。
【0041】
なお、変位部30には、カム機構などの従来公知の様々な構造が採用可能であるが、実施の形態のように変位部30を、磁石32A、32B、反発部36A、36B、吸引部38A、38Bを含んで構成すると、第1板ばね14と第2板ばね18を測定位置と退避位置との間で確実に変位させる上で有利となり、また、変位部30の構造の簡単化、軽量化を図る上で有利となる。
また、筐体12に第1開口部12Aと第2開口部12Bをそれぞれ複数設けた場合について説明したが、第1開口部12Aと第2開口部12Bをそれぞれ筐体12の周方向全周に延在させ、第1開口部12Aと第2開口部12Bをそれぞれ単一の開口部としてもよい。その場合には、筐体12の内周面で第1開口部12Aを跨いだ箇所と第2開口部12Bを跨いだ箇所とをそれぞれ連結部材で連結すればよい。
【0042】
10 地山応力測定装置
12 筐体
12A 第1開口部
12B 第2開口部
12C 端部(一方の端部)
12D 端部(他方の端部)
1202 固定部材
1202A 貫通孔
1204、1206 ねじ
1208 保持部材
1208A 把持用凹部
1210 取付部材
1210A 斜面
1212 凹部
1212A 下斜面
1212B 上斜面
14 第1板ばね
1402 測定ピン
16 第1ひずみゲージ
18 第2板ばね
18A 湾曲部
1802 測定ピン
20 第2ひずみゲージ
30 変位部
32A、32B 磁石
34 ロッド(移動軸)
3402 突出部
3404 後端部
36A、36B 反発部
38A、38B 吸引部
40A,40B 変位調整部
50 切り換え部
52 ばね
54 ストッパ
56 治具
5602 軸部
5604 把持爪
60 第1の一対のローラ
6002 ボルト
62 第2の一対のローラ
6202 ボルト
64 データロガー
D1 挿入方向
D2 抜き出し方向
H 測定孔
W 内壁面