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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-31
(45)【発行日】2024-06-10
(54)【発明の名称】研磨液供給装置
(51)【国際特許分類】
   B24B 57/02 20060101AFI20240603BHJP
   H01L 21/304 20060101ALI20240603BHJP
【FI】
B24B57/02
H01L21/304 622E
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2020155606
(22)【出願日】2020-09-16
(65)【公開番号】P2022049411
(43)【公開日】2022-03-29
【審査請求日】2023-07-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】100075384
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 昂
(74)【代理人】
【識別番号】100172281
【弁理士】
【氏名又は名称】岡本 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100206553
【弁理士】
【氏名又は名称】笠原 崇廣
(74)【代理人】
【識別番号】100189773
【弁理士】
【氏名又は名称】岡本 英哲
(74)【代理人】
【識別番号】100184055
【弁理士】
【氏名又は名称】岡野 貴之
(72)【発明者】
【氏名】堀田 秀児
(72)【発明者】
【氏名】金子 智洋
(72)【発明者】
【氏名】田中 優也
【審査官】須中 栄治
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2011/0121031(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2007/0295063(US,A1)
【文献】特開2000-190222(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B24B57/02
H01L21/304
B23Q11/10
B67D7/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
研磨装置で用いられる研磨液を貯留するための容器に対して、複数の異なる該研磨液を選択的に供給できる研磨液供給装置であって、
複数の異なる該研磨液に応じて設けられた複数の注出ノズルと、
複数の該注出ノズルのいずれに対応する位置に該容器の被供給口が配置されているのかを検出するセンサと、
複数の該研磨液から選択された該研磨液の情報を記憶する記憶装置と、
該記憶装置に記憶されている該情報が示す該研磨液に対応する該注出ノズルと、該センサによって検出された該容器の該被供給口の位置と、が対応している場合に、該記憶装置に記憶されている該情報が示す該研磨液に対応する該注出ノズルから該研磨液を注出する制御を行う処理装置と、を含む研磨液供給装置。
【請求項2】
該容器の底部に設けられた凹部に嵌合し、該容器の該被供給口が配置される位置を制限する嵌合部材を更に含む請求項1に記載の研磨液供給装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の異なる研磨液を供給できる研磨液供給装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体等でなるインゴットから切り出されたウェーハの平坦度を高めるために、化学機械研磨(Chemical Mechanical Polishing)に代表される研磨技術が用いられている(例えば、特許文献1参照)。研磨によって平坦度が高められたウェーハの表面には、後に、半導体集積回路等のデバイスが形成される。
【0003】
化学機械研磨では、ウェーハと研磨パッドとの双方を回転させて、ウェーハの表面に研磨液を供給しながら研磨パッドを押し当てる。研磨液は、例えば、薬液と水とを混合することによって生成されており、研磨液に含まれる薬液の種類や濃度等が変わると、研磨の結果も変わる。したがって、化学機械研磨では、研磨液の取り違えを生じさせない管理が重要になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2012-253259号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述のような理由から、一般に、研磨液の生成には、各研磨液に対応した専用の研磨液生成装置が使用されている。しかしながら、例えば、1つの工場内で複数の異なる研磨液が使用される場合には、各研磨液に対応した複数の研磨液生成装置を工場内に配置する必要があり、コストやスペースの面で改善の余地があった。
【0006】
本発明はかかる問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、複数の異なる研磨液を、各研磨液に対応する容器に対して誤りなく供給できる研磨液供給装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一側面によれば、研磨装置で用いられる研磨液を貯留するための容器に対して、複数の異なる該研磨液を選択的に供給できる研磨液供給装置であって、複数の異なる該研磨液に応じて設けられた複数の注出ノズルと、複数の該注出ノズルのいずれに対応する位置に該容器の被供給口が配置されているのかを検出するセンサと、複数の該研磨液から選択された該研磨液の情報を記憶する記憶装置と、該記憶装置に記憶されている該情報が示す該研磨液に対応する該注出ノズルと、該センサによって検出された該容器の該被供給口の位置と、が対応している場合に、該記憶装置に記憶されている該情報が示す該研磨液に対応する該注出ノズルから該研磨液を注出する制御を行う処理装置と、を含む研磨液供給装置が提供される。
【0008】
本発明の一側面において、該容器の底部に設けられた凹部に嵌合し、該容器の該被供給口が配置される位置を制限する嵌合部材を更に含むことが好ましい。
【発明の効果】
【0009】
本発明の一側面にかかる研磨液供給装置は、複数の研磨液から選択された研磨液に対応する注出ノズルと、センサによって検出される容器の被供給口の位置と、が対応している場合にのみ、注出ノズルから研磨液を注出するので、複数の異なる研磨液を、各研磨液に対応する容器に対して誤りなく供給できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、研磨液供給装置を示す斜視図である。
図2図2は、研磨液供給装置の内部の構造を示す正面図である。
図3図3は、研磨液供給装置を構成する複数の要素の接続の関係を示す機能ブロック図である。
図4図4は、容器を示す斜視図である。
図5図5は、筐体から支持テーブルが引き出された状態の研磨液供給装置を示す斜視図である。
図6図6は、引き出された支持テーブルに容器が載せられた状態の研磨液供給装置を示す斜視図である。
図7図7は、支持テーブルとともに容器が筐体に収容された状態の研磨液供給装置を示す斜視図である。
図8図8は、第1研磨液生成ユニットから容器に第1研磨液が供給される様子を示す正面図である。
図9図9は、第2研磨液生成ユニットから容器に第2研磨液が供給される様子を示す正面図である。
図10図10は、容器に貯留された研磨液を使用する研磨装置を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
添付図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。図1は、本実施形態の研磨液供給装置2を示す斜視図であり、図2は、研磨液供給装置2の内部の構造を示す正面図であり、図3は、研磨液供給装置2を構成する複数の要素の接続の関係を示す機能ブロック図である。なお、図1図2、及び図3では、説明の便宜上、一部の要素が省略されている。また、図2では、一部の要素が機能ブロックで表現されている。
【0012】
図1及び図2に示すように、研磨液供給装置2は、例えば、各種の構成要素が搭載される直方体状の筐体4を有している。筐体4の前壁4aの下側の部分には、筐体4の内部と外部とを繋ぐ矩形状の開口4bが形成されている。筐体4の底壁4cの上面には、前後方向に所定の長さを持つ一対のガイドレール8が固定されている。
【0013】
一対のガイドレール8には、研磨液を貯留するための容器を支持できるように構成された支持テーブル10が、一対のガイドレール8に沿って前後にスライドできる態様で取り付けられている。支持テーブル10の前端の上部には、支持テーブル10をスライドさせる際に把持される把手12が設けられている。
【0014】
図4は、研磨液を貯留するための容器1を示す斜視図である。容器1は、例えば、ポリエチレン等の樹脂で中空に形成されている。図4に示すように、容器1の上壁には、この上壁を貫通する開口(被供給口)1aが設けられており、研磨液は、開口1aを通じて、容器1の外部から容器1の内部の空間に供給され、また、容器1の内部の空間から容器1の外部に排出される。容器1の底壁には、上向きに窪んだ凹部1bが形成されている。凹部1bの窪みの形状は、例えば、直方体状である。
【0015】
上述した支持テーブル10が開口4bを介して筐体4の前方に引き出された状態で、支持テーブル10の上面10aに容器1が載せられる。この支持テーブル10の上面10aには、容器1の凹部1bの窪みの形状に合う凸部材(嵌合部材)14が配置されている。凸部材14は、支持テーブル10の上面10aの異なる2つの位置のいずれかに配置できるように構成されており、容器1の凹部1bに嵌合することで、容器1の開口1aが配置される位置を制限する。
【0016】
筐体4の内部の上側の領域には、第1研磨液を生成して供給できる第1研磨液生成ユニット16と、第2研磨液を生成して供給できる第2研磨液生成ユニット18と、が左右に並んだ態様で配置されている。図2に示すように、第1研磨液生成ユニット16は、第1研磨液の元になる第1薬液が貯留される第1薬液容器20を含む。
【0017】
第1薬液容器20の上部には、第1ポンプ22が接続されており、第1薬液容器20に貯留されている第1薬液は、第1ポンプ22によって第1薬液容器20の外部に排出される。第1ポンプ22の下流側には、第1混合部24が接続されている。第1ポンプ22によって第1薬液容器20から排出された第1薬液は、第1混合部24に供給される。
【0018】
また、第1混合部24には、流路選択用のバルブ26や流量制御用のバルブ28等を介して、水(純水)を供給する供給源30が接続されている。バルブ28やバルブ26を通じて供給源30から第1混合部24に供給される水は、この第1混合部24において第1薬液と混合される。これにより、第1薬液を水で希釈した第1研磨液が生成される。
【0019】
第1混合部24には、第1注出ノズル32が設けられており、第1混合部24で生成された第1研磨液は、第1注出ノズル32を通じて、対応する容器1に供給される。なお、第1注出ノズル32の先端部32aは、例えば、柔軟性のある樹脂等によって形成されており、第1注出ノズル32が使用されない状況では、図2に示すように、先端部32aが巻かれるようにして収容される。
【0020】
第1注出ノズル32の傍には、第1注出ノズル32の下方に容器1の開口1aが配置されているか否かを検出するための第1センサ34が配置されている。第1センサ34は、例えば、対象を非接触で検出する光学式のセンサである。ただし、第1センサ34の種類等に制限はない。第1センサ34としては、接触式のセンサを含む任意の方式のセンサが用いられ得る。
【0021】
第2研磨液生成ユニット18の構造は、第1研磨液生成ユニット16の構造と同様である。すなわち、第2研磨液生成ユニット18は、第2研磨液の元になる第2薬液が貯留される第2薬液容器36を含む。第2薬液容器36の上部には、第2ポンプ38が接続されており、第2薬液容器36に貯留されている第2薬液は、第2ポンプ38によって第2薬液容器36の外部に排出される。
【0022】
第2ポンプ38の下流側には、第2混合部40が接続されている。第2ポンプ38によって第2薬液容器36から排出された第2薬液は、第2混合部40に供給される。この第2混合部40にも、流路選択用のバルブ26や流量制御用のバルブ28等を介して、供給源30が接続されている。バルブ28やバルブ26を通じて供給源30から第2混合部40に供給される水は、この第2混合部40において第2薬液と混合される。これにより、第2薬液を水で希釈した第2研磨液が生成される。
【0023】
第2混合部40には、第2注出ノズル42が設けられており、第2混合部40で生成された第2研磨液は、第2注出ノズル42を通じて、対応する容器1に供給される。なお、第2注出ノズル42の先端部42aも、例えば、柔軟性のある樹脂等によって形成されており、第2注出ノズル42が使用されない状況では、図2に示すように、先端部42aが巻かれるようにして収容される。
【0024】
第2注出ノズル42の傍には、第2注出ノズル42の下方に容器1の開口1aが配置されているか否かを検出するための第2センサ44が配置されている。第2センサ44は、例えば、対象を非接触で検出する光学式のセンサである。ただし、第2センサ44の種類等に制限はない。第2センサ44としては、接触式のセンサを含む任意の方式のセンサが用いられ得る。
【0025】
上述した凸部材14が配置される2つの位置は、凹部1bに凸部材14が嵌合するように容器1を支持テーブル10の上面10aに載せて、この容器1を筐体4の内部に収容した場合に、第1注出ノズル32の直下又は第2注出ノズル42の直下に容器1の開口1aを配置できるように決められている。例えば、凸部材14は、上述した2つの位置の間を支持テーブル10の上面10aに沿って手動で又は自動で移動できるように、支持テーブル10に取り付けられている。
【0026】
図3に示すように、第1ポンプ22、流路選択用のバルブ26、流量制御用のバルブ28、第1センサ34、第2ポンプ38、第2センサ44等の要素には、これらを制御できる制御ユニット46が接続されている。制御ユニット46は、例えば、処理装置48と、記憶装置50と、入力装置52と、を含むコンピュータによって構成される。
【0027】
処理装置48は、代表的には、CPU(Central Processing Unit)であり、上述した要素を制御するために必要な種々の処理を行う。記憶装置50は、例えば、DRAM(Dynamic Random Access Memory)等の主記憶装置と、ハードディスクドライブやフラッシュメモリ等の補助記憶装置と、を含む。本実施形態の入力装置52は、筐体4の前壁4aに固定されたタッチパネルであり(図1)、出力装置(表示装置)を兼ねている。なお、キーボードやマウス等を入力装置52としても良い。
【0028】
制御ユニット46の機能は、例えば、記憶装置50に記憶されるソフトウェアに従い処理装置48が動作することによって実現される。ただし、制御ユニット46の機能は、ハードウェアのみによって実現されても良い。制御ユニット46の機能については、後に詳しく説明する。
【0029】
このように構成された研磨液供給装置2から容器1に第1研磨液を供給する際には、例えば、オペレーターは、上述した把手12を把持して支持テーブル10を筐体4の前方に引き出す。図5は、筐体4から支持テーブル10が引き出された状態の研磨液供給装置2を示す斜視図である。
【0030】
支持テーブル10を筐体4から引き出した後には、供給を希望する第1研磨液に対応した第1位置に凸部材14を位置付ける。ここで、第1位置は、凹部1bに凸部材14が嵌合するように容器1を支持テーブル10の上面10aに載せて、この容器1を筐体4の内部に収容した場合に、第1注出ノズル32の直下に容器1の開口1aを配置できる位置である。
【0031】
第1位置に凸部材14を位置付けた後には、容器1を支持テーブル10の上面10aに載せる。図6は、引き出された支持テーブル10に容器1が載せられた状態の研磨液供給装置2を示す斜視図である。例えば、支持テーブル10をスライドさせて筐体4の内部に収容した時に第1注出ノズル32の直下に容器1の開口1aが配置されるように、容器1の向きを合わせて支持テーブル10の上面10aに載せる。
【0032】
なお、凹部1b及び凸部材14は、回転対称な直方体状に形成されており、例えば、容器1の向きが左右に反対(鉛直な軸の周りに容器1を回転させた状態)でも、凹部1bに凸部材14を嵌合させることができる。一方で、本実施形態の研磨液供給装置2及び容器1は、容器1の向きや位置が適正でない場合に、第1注出ノズル32の直下又は第2注出ノズル42の直下に容器1の開口1aが配置されないように構成されている。
【0033】
容器1を支持テーブル10の上面10aに載せた後には、支持テーブル10をスライドさせて筐体4の内部に収容する。図7は、支持テーブル10とともに容器1が筐体4に収容された状態の研磨液供給装置2を示す斜視図である。図7に示すように、筐体4の内部に容器1が収容されると、第1注出ノズル32の直下に容器1の開口1aが配置される。
【0034】
なお、第1注出ノズル32の直下に容器1の開口1aが配置された後には、巻かれるように収容されていた第1注出ノズル32の先端部32aが下方に引き出され、開口1aに挿入される。図8は、第1研磨液生成ユニット16から容器1に第1研磨液が供給される様子を示す正面図である。
【0035】
筐体4の内部に容器1が収容された後には、例えば、オペレーターは、供給を希望する第1研磨液の情報を、入力装置52を介して処理装置48に入力する。入力装置52を介して処理装置48に第1研磨液の情報が入力されると、処理装置48は、この情報を記憶装置50に記憶させる。
【0036】
その後、処理装置48は、記憶装置50に記憶されている情報を参照し、供給の対象が第1研磨液であることを確認するとともに、この情報によって示される第1研磨液を供給するための第1注出ノズル32の下方に、容器1の開口1aが配置されているか否かを判定する。
【0037】
具体的には、第1センサ34及び第2センサ44によって、第1注出ノズル32と第2注出ノズル42とのいずれに対応する位置に容器1の開口1aが配置されているかを検出する。そして、第1研磨液を供給するための第1注出ノズル32の位置と、検出された容器1の開口1aの位置と、が対応しているか否かを判定する。
【0038】
第1センサ34によって開口1aが検出されない場合、例えば、第2センサ44によって開口1aが検出された場合や、第1センサ34と第2センサ44とのいずれによっても開口1aが検出されない場合には、処理装置48は、第1研磨液の供給にかかる動作(及び第2研磨液の供給にかかる動作)を開始しない。なお、処理装置48は、出力装置(表示装置)を兼ねる入力装置52等によって、その旨をオペレーターに報知することが望ましい。これにより、オペレーターによる迅速な対応が可能になる。
【0039】
第1センサ34によって開口1aが検出された場合、処理装置48は、第1研磨液を生成するために必要な第1薬液を供給するための第1ポンプ22を動作させて、第1薬液を第1混合部24に供給する。また、処理装置48は、第1研磨液に必要な第1薬液の濃度等に応じて流量制御用のバルブ28を制御し、第1混合部24に水が流れるように流路選択用のバルブ26を制御して、第1研磨液の生成に必要な量の水を第1混合部24に供給する。
【0040】
第1混合部24は、供給された第1薬液と水とを混合し、第1研磨液を生成する。生成された第1研磨液は、第1注出ノズル32から注出される。上述のように、第1注出ノズル32の位置と、容器1の開口1aの位置と、は対応しており、容器1の開口1aは、第1注出ノズル32の下方に配置されている。そのため、第1注出ノズル32から注出される第1研磨液は、開口1aを通じて容器1の内部に供給される。
【0041】
研磨液供給装置2から容器1に第2研磨液を供給する際の手順や動作等も同様である。具体的には、オペレーターは、支持テーブル10を筐体4から引き出し、供給を希望する第2研磨液に対応した第2位置に凸部材14を位置付け、凹部1bに凸部材14を嵌合させるように容器1を支持テーブル10の上面10aに載せ、支持テーブル10をスライドさせて筐体4の内部に収容する。
【0042】
なお、第2注出ノズル42の直下に容器1の開口1aが配置された後には、巻かれるように収容されていた第2注出ノズル42の先端部42aが下方に引き出され、開口1aに挿入される。図9は、第2研磨液生成ユニット18から容器1に第2研磨液が供給される様子を示す正面図である。
【0043】
その後、オペレーターは、供給を希望する第2研磨液の情報を、入力装置52を介して処理装置48に入力する。処理装置48に第2研磨液の情報が入力されると、処理装置48は、この情報を記憶装置50に記憶させる。その後、処理装置48は、記憶装置50に記憶されている情報を参照し、供給の対象が第2研磨液であることを確認するとともに、この情報によって示される第2研磨液を供給するための第2注出ノズル42の下方に、容器1の開口1aが配置されているか否かを判定する。
【0044】
すなわち、第1センサ34及び第2センサ44によって、第1注出ノズル32と第2注出ノズル42とのいずれに対応する位置に容器1の開口1aが配置されているかを検出する。そして、第2研磨液を供給するための第2注出ノズル42の位置と、検出された容器1の開口1aの位置と、が対応しているか否かを判定する。
【0045】
第2センサ44によって開口1aが検出されない場合、例えば、第1センサ34によって開口1aが検出された場合や、第1センサ34と第2センサ44とのいずれによっても開口1aが検出されない場合には、処理装置48は、第2研磨液の供給にかかる動作(及び第1研磨液の供給にかかる動作)を開始しない。なお、この場合にも、処理装置48は、出力装置(表示装置)を兼ねる入力装置52等によって、その旨をオペレーターに報知することが望ましい。
【0046】
第2センサ44によって開口1aが検出された場合、処理装置48は、第2研磨液を生成するために必要な第2薬液を供給するための第2ポンプ38を動作させて、第2薬液を第2混合部40に供給する。また、処理装置48は、第2研磨液に必要な第2薬液の濃度等に応じて流量制御用のバルブ28を制御し、第2混合部40に水が流れるように流路選択用のバルブ26を制御して、第2研磨液の生成に必要な量の水を第2混合部40に供給する。
【0047】
第2混合部40は、供給された第2薬液と水とを混合し、第2研磨液を生成する。生成された第2研磨液は、第2注出ノズル42から注出される。上述のように、第2注出ノズル42の位置と、容器1の開口1aの位置と、は対応しており、容器1の開口1aは、第2注出ノズル42の下方に配置されている。そのため、第2注出ノズル42から注出される第2研磨液は、開口1aを通じて容器1の内部に供給される。
【0048】
このように、本実施形態にかかる研磨液供給装置2は、複数の研磨液(第1研磨液及び第2研磨液)から選択された研磨液に対応する注出ノズル(第1注出ノズル32及び第2注出ノズル42)と、センサ(第1センサ34及び第2センサ44)によって検出される容器1の開口(被供給口)1aの位置と、が対応している場合にのみ、注出ノズルから研磨液を注出するので、複数の異なる研磨液を、各研磨液に対応する容器1に対して誤りなく供給できる。
【0049】
上述のようにして研磨液が供給された後の容器1は、研磨装置に搬入して使用される。図10は、容器1に貯留された研磨液を使用する研磨装置102を示す斜視図である。なお、以下の説明で用いられるX軸方向(左右方向)、Y軸方向(前後方向)、及びZ軸方向(鉛直方向)は、互いに垂直である。
【0050】
図10に示すように、研磨装置102は、各要素が搭載される基台104を備えている。基台104の上面には、X軸方向に長い開口104aが形成されている。開口104a内には、ボールネジ式のX軸移動機構108と、X軸移動機構108の上方を覆う第1カバー108aと、第1カバー108aに連結された蛇腹状の第2カバー108bと、が配置されている。X軸移動機構108は、第1カバー108aによって覆われたX軸移動テーブル(不図示)を備えており、このX軸移動テーブルをX軸方向に移動させる。
【0051】
X軸移動テーブルの上方には、板状の被加工物11を保持するためのチャックテーブル110が設けられている。被加工物11は、例えば、シリコン(Si)等の半導体でなる円盤状のウェーハであり、その一方の面には、例えば、樹脂等でなる保護部材13が貼付されている。
【0052】
なお、本実施形態では、シリコン等の半導体でなる円盤状のウェーハを被加工物11としているが、被加工物11の材質、形状、構造、大きさ等に制限はない。例えば、他の半導体、セラミックス、樹脂、金属等の材料でなる基板を被加工物11として用いることもできる。また、この被加工物11には、IC(Integrated Circuit)等のデバイスが形成されていても良い。
【0053】
チャックテーブル110の上面の一部は、被加工物11を保持するための保持面110aになっている。保持面110aは、例えば、セラミックス等を用いて多孔質状に形成されており、チャックテーブル110の内部に形成された吸引路(不図示)等を介して吸引源(不図示)に接続されている。
【0054】
保持面110aに被加工物11(保護部材13)を載せ、吸引源の負圧を作用させることで、被加工物11をチャックテーブル110により吸引し、保持できる。このチャックテーブル110は、モーター等の回転駆動源(不図示)に連結されており、Z軸方向に対して概ね平行な回転軸の周りに回転する。また、チャックテーブル110は、上述したX軸移動機構108によって、X軸移動テーブルとともにX軸方向に移動する。
【0055】
基台104の後方には、柱状の支持構造112が設けられている。支持構造112の前面には、Z軸移動機構114が設けられている。Z軸移動機構114は、Z軸方向に対して概ね平行な一対のZ軸ガイドレール116を備えており、Z軸ガイドレール116には、Z軸移動プレート118がスライドできる態様で取り付けられている。
【0056】
Z軸移動プレート118の後面側(裏面側)には、ボールネジを構成するナット(不図示)が固定されており、このナットには、Z軸ガイドレール116に対して概ね平行なネジ軸120が回転できる態様で連結されている。ネジ軸120の一端部には、Z軸パルスモータ122が連結されている。Z軸パルスモータ122によってネジ軸120を回転させることにより、Z軸移動プレート118はZ軸ガイドレール116に沿ってZ軸方向に移動する。
【0057】
Z軸移動プレート118の前面(表面)には、支持具124が設けられている。支持具124には、被加工物11を研磨するための研磨ユニット126が支持されている。研磨ユニット126は、支持具124に固定されたスピンドルハウジング128を含む。スピンドルハウジング128には、回転軸となるスピンドル130が回転できるように収容されている。
【0058】
スピンドル130の下端部は、スピンドルハウジング128の下端部から外部に露出している。このスピンドル130の下端部には、円盤状のホイールマウント132が設けられている。ホイールマウント132の下面には、ホイールマウント132と概ね同径に構成された円盤状の研磨パッド134が装着されている。また、スピンドル130の上端側には、モーター等の回転駆動源(不図示)が連結されている。
【0059】
基台104の内部には、上述した容器1を収容できる収容室(不図示)が設けられている。収容室に容器1が収容された状態で、容器1の開口1aには、例えば、ポンプが接続される。このポンプを動作させることによって、チャックテーブル110上の被加工物11や、研磨パッド134等に、研磨液を供給できる。
【0060】
なお、本発明は、上述した実施形態の記載に制限されず種々変更して実施可能である。例えば、上述した実施形態では、容器1の開口(被供給口)1aの位置を第1センサ34及び第2センサ44を用いて直接的に検出する態様を例示したが、第1センサ34及び第2センサ44を用いて容器1の位置や向き等を検出することにより、間接的に開口1aの位置を検出することもできる。
【0061】
また、上述した実施形態では、2つの異なる研磨液を選択的に供給できる研磨液供給装置2を例示したが、本発明の研磨液供給装置は、3つ以上の異なる研磨液を選択的に供給できるように構成されても良い。その場合には、例えば、第1研磨液生成ユニット16及び第2研磨液生成ユニット18と同等の研磨液生成ユニットを、研磨液の数に応じて配置する。また、この場合には、凸部材14は、研磨液の数に応じた複数の異なる位置のいずれかに配置できるように構成される。
【0062】
また、上述した実施形態では、2種類の薬液(第1薬液及び第2薬液)を用いてそれぞれ生成される2つの研磨液(第1研磨液及び第2研磨液)を選択的に供給する研磨液供給装置2を例示したが、本発明の研磨液供給装置は、1種類の薬液を用いて生成される複数の研磨液(薬液の希釈率が異なる複数の研磨液)を選択的に供給できるように構成されても良い。
【0063】
また、本発明の研磨液供給装置は、薬液や水、環境等の温度に応じて薬液や水の供給量を自動で微調整する機能を備えても良い。この場合には、例えば、研磨液供給装置は、薬液容器(第1薬液容器20又は第2薬液容器36)に貯留されている薬液(第1薬液又は第2薬液)の温度や供給源30から供給される水の温度等を測定する温度センサを備え、制御ユニット46は、測定によって得られる温度の情報に応じて薬液や水の供給量を調整できるように構成される。これにより、薬液や水の温度の変化の影響を受けることなく、薬液の濃度が所望の値の研磨液を供給できる。
【0064】
また、上述した実施形態では、研磨液を生成して供給する機能を持つ研磨液供給装置2を例示したが、本発明の研磨液供給装置は、研磨液を生成する機能を有しなくても良い。すなわち、本発明の研磨液供給装置は、複数の研磨液を選択的に供給する機能を少なくとも有していれば良い。例えば、本発明の研磨液供給装置は、予め生成しておいた複数の研磨液を選択的に供給できるように構成されることがある。
【0065】
また、上述した実施形態では、容器1を筐体4の内部に収容した後に、供給を希望する研磨液(第1研磨液又は第2研磨液)の情報を、入力装置52を介して処理装置48に入力しているが、情報を処理装置48に入力した後に、容器1を筐体4の内部に収容しても良い。
【0066】
その他、上述の実施形態及び変形例にかかる構造、方法等は、本発明の目的の範囲を逸脱しない限りにおいて適宜変更して実施できる。
【符号の説明】
【0067】
1 :容器
1a :開口(被供給口)
1b :凹部
2 :研磨液供給装置
4 :筐体
4a :前壁
4b :開口
4c :底壁
8 :ガイドレール
10 :支持テーブル
10a :上面
12 :把手
14 :凸部材(嵌合部材)
16 :第1研磨液生成ユニット
18 :第2研磨液生成ユニット
20 :第1薬液容器
22 :第1ポンプ
24 :第1混合部
26 :バルブ
28 :バルブ
30 :供給源
32 :第1注出ノズル
32a :先端部
34 :第1センサ
36 :第2薬液容器
38 :第2ポンプ
40 :第2混合部
42 :第2注出ノズル
42a :先端部
44 :第2センサ
46 :制御ユニット
48 :処理装置
50 :記憶装置
52 :入力装置
102 :研磨装置
104 :基台
104a :開口
108 :X軸移動機構
108a :第1カバー
108b :第2カバー
110 :チャックテーブル
110a :保持面
112 :支持構造
114 :Z軸移動機構
116 :Z軸ガイドレール
118 :Z軸移動プレート
120 :ネジ軸
122 :Z軸パルスモータ
124 :支持具
126 :研磨ユニット
128 :スピンドルハウジング
130 :スピンドル
132 :ホイールマウント
134 :研磨パッド
11 :被加工物
13 :保護部材
図1
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