(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-31
(45)【発行日】2024-06-10
(54)【発明の名称】光学式変位センサ
(51)【国際特許分類】
G01B 11/00 20060101AFI20240603BHJP
【FI】
G01B11/00 G
(21)【出願番号】P 2020173442
(22)【出願日】2020-10-14
【審査請求日】2023-09-13
(31)【優先権主張番号】P 2020072431
(32)【優先日】2020-04-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000137694
【氏名又は名称】株式会社ミツトヨ
(74)【代理人】
【識別番号】100166545
【氏名又は名称】折坂 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】木村 彰秀
【審査官】眞岩 久恵
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-038654(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01B 11/00-11/30
G01D 5/26- 5/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
測定方向に沿って所定の周期で配置される回折格子を有する回折手段と、前記回折手段に向かって光を照射する光源と、前記回折手段を介した光を受光する受光手段と、を備える光学式変位センサであって、
前記光源から照射された光を第1光と前記第1光とは異なる第2光とに分割する分割手段と、
前記光源から照射された光を反射する第1反射部と、前記第1反射部に対して所定の角度を有して設けられる第2反射部と、を有する反射手段と、
前記反射手段を介した光を前記反射手段に向かって折り返して反射する折返し反射手段と、を備え、
前記反射手段は、
前記分割手段で分割され前記回折手段を介した前記第1光および前記第2光を前記第1反射部から前記第2反射部の順に反射し、前記折返し反射手段にて反射された前記第1光および前記第2光を前記第2反射部から前記第1反射部の順に反射し、
前記受光手段は、
前記反射手段および前記折返し反射手段を介した前記第1光および前記第2光を受光することを特徴とする光学式変位センサ。
【請求項2】
請求項
1に記載された光学式変位センサにおいて、
前記分割手段は、前記回折手段が有する前記回折格子であることを特徴とする光学式変位センサ。
【請求項3】
請求項1
または請求項
2に記載された光学式変位センサにおいて、
前記分割手段は、前記光源からの光を互いに異なる2つの光に分割するビームスプリッタであることを特徴とする光学式変位センサ。
【請求項4】
請求項1から請求項
3のいずれかに記載された光学式変位センサにおいて、
前記第1光と前記第2光を全反射して前記第1光と前記第2光の光路を所定の方向に変更する全反射手段を備えることを特徴とする光学式変位センサ。
【請求項5】
請求項1から請求項
4のいずれかに記載された光学式変位センサにおいて、
前記受光手段が受光した光に基づき測定対象における変位量を演算する演算手段を備え、
前記回折手段は、測定方向に移動する測定対象に取付けられ、測定対象の移動にともなって同期して移動し、
前記演算手段は、測定対象と同期して移動する前記回折手段の移動にともない、前記受光手段が受光する光から検出される測定対象の移動による変位量を演算することを特徴とする光学式変位センサ。
【請求項6】
請求項1から請求項
4のいずれかに記載された光学式変位センサにおいて、
前記受光手段が受光した光に基づき測定対象における変位量を演算する演算手段を備え、
前記回折手段は、所定の軸を回動軸として回動する測定対象に取付けられ、測定対象の回動にともなって同期して回動し、
前記演算手段は、測定対象と同期して回動する前記回折手段の回動にともない、前記受光手段が受光する光から検出される位相の変化に基づき角度の変位量を演算することを特徴とする光学式変位センサ。
【請求項7】
請求項1から請求項
6のいずれかに記載された光学式変位センサにおいて、
前記回折手段は、前記光源からの光を回折して透過させる透過型であることを特徴とする光学式変位センサ。
【請求項8】
請求項1から請求項
5のいずれかに記載された光学式変位センサにおいて、
前記回折手段は、前記光源からの光を回折して反射させる反射型であることを特徴とする光学式変位センサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学式変位センサに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、光を照射する光源と、光源からの光を受光する受光手段と、測定対象の変位量を演算する演算手段と、を備える光学式変位センサが知られている。
例えば特許文献1に記載の2次元角度センサ(光学式変位センサ)は、検出対象に光ビームを投光するための光源と、光ビームによる検出対象からの反射光の光路中に設けたレンズと、レンズの焦点付近に設けられたフォトダイオードによる検出素子(受光手段)と、を備える。2次元角度センサは、検出素子で検出した光電流を計算することで検出対象の角度を検出する。
【0003】
具体的には、2次元角度センサは、検出素子に投光される光の形状とその光の光量の大きさから検出対象の傾きを検出する。検出素子に投光される光の形状とその光の光量の大きさがレンズなどにより変化した場合、その変化は、ノイズとして検出結果に影響を与えることがある。したがって、2次元角度センサは、ノイズを抑制するために高品質かつ高価なレンズなどの光学部品を備えなければならず、コストがかかるという問題がある。
【0004】
このような問題に対して、例えば特許文献2では、レーザ干渉計を用いている。レーザ干渉計は、レーザ光の干渉を利用して測定対象の回動による角度の変化量を測定するものであり、レーザビームを照射するレーザ光源(光源)と、レーザ光源から照射されたレーザビームを伝達する第1光ファイバと、第1光ファイバからのレーザビームを平行にする第1レンズと、第1レンズにより平行になったレーザビームを分割し、2個のコーナーキューブを介した後、分割したレーザビームを合成する回転角度検出用偏光ビームスプリッタと、回転角度検出用偏光ビームスプリッタから照射されたレーザビームを偏光する偏光板と、偏光板を介したレーザビームを伝達する第2光ファイバの端面にレーザビームを収束させる第2レンズと、第2光ファイバを介したレーザビームを電気信号に変換する受光信号処理部(受光手段および演算手段)と、を備える。
【0005】
レーザ光源は、受光信号処理部にて検出される電気信号の可干渉性(コヒーレント性)が良好なレーザビームを照射するHe-Neレーザである。そして、回転角度検出用偏光ビームスプリッタを介して受光信号処理部に照射されるレーザビームは、受光信号処理部においてレーザビームが照射される照射面で干渉を生じさせる。レーザ干渉計は、回動に起因する光路長の変化で生じる干渉信号の強度変化を受光信号処理部にて電気信号に変換し演算することで、測定対象の回動による角度の変化量を測定することができる。
【0006】
具体的には、レーザ干渉計が備える2個のコーナーキューブが回動すると、回転角度検出用偏光ビームスプリッタにて分割された2本のレーザビームの光路長の差が変化し、干渉光(合成光)の明暗、すなわち、干渉信号の強度の変化が観測される。この際、光路長の差の変化は、2個のコーナーキューブの配列距離に回転角を乗じた長さの2倍となる。レーザ干渉計は、干渉信号の強度の変化量を検出することで2個のコーナーキューブの回動による角度を測定することができる。したがって、レーザ干渉計は、光の形状とその光の光量の大きさとによらずに検出をするため、高品質かつ高価なレンズなどの光学部品を備えなくとも、測定対象の回転角度を検出できる。なお、回転角度検出用偏光ビームスプリッタが回折格子であっても同様の効果が得られる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2003-156319号公報
【文献】特開平11-237207号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従来の光学式変位センサでは、2個のコーナーキューブの代わりに2個のプリズムが採用されることがある。プリズムは、例えばミラー等の2枚の反射板をそれぞれの反射面が互いに向かい合うように直交させて接続することで形成される光学部品である。そして、コーナーキューブは、例えば3枚の反射板をそれぞれの反射面が互いに向かい合うようにそれぞれ直交させて接続することで形成される光学部品である。このため、プリズムは、コーナーキューブと比較して安価に製造することができる。したがって、従来の光学式変位センサは、コーナーキューブの代わりにプリズムを採用することでコスト削減を図っている。
しかしながら、プリズムは、2枚の反射板を接続する際、直角ではなく、角度誤差を有して製造されることがある。
【0009】
図13は、従来の光学式変位センサ100における光の光路を示す概略図であり、
図14は、従来の光学式変位センサ100A,100Bにおいて2個のプリズムが角度誤差を有するときの光の光路を示す概略図である。具体的には、
図14(A)は、2個のプリズムが角度誤差を有し、それぞれの2枚の反射板が鋭角αに接続されているときに光学式変位センサ100Aにて観測される光の光路であり、
図14(B)は、2個のプリズムが角度誤差を有し、それぞれの2枚の反射板が鈍角βに接続されているときに光学式変位センサ100Bにて観測される光の光路である。なお、
図13および
図14では、光源300から受光手段400までの光の光路を実線矢印にて記載する。
【0010】
図13および
図14に示すように、光学式変位センサ100,100A~100Bは、回折格子200と、光源300と、回折格子200を介した光源300からの光を受光する受光手段400と、2枚の反射板について反射面を向い合せて接続する2個のプリズム500,500A~500Bと、2個のプリズム500,500A~500Bを介した光を2個のプリズム500,500A~500Bに向かって再帰性反射する1個のプリズム600と、を備える。光源300から照射され回折格子200にて分割された2本の光は、2個のプリズム500,500A~500Bを介し、再び回折格子200に照射される。回折格子200に照射された2本の光は、プリズム600に向かって回折されて出射される。プリズム600に照射された2本の光は、紙面奥行き方向、若しくは紙面手前方向にオフセットされて再び回折格子200に照射される。回折格子200に照射された2本の光は、2個のプリズム500,500A~500Bを介し、再び回折格子200に照射される。2本の光は、回折格子200により回折されてオーバーラップした1本の合成光として受光手段400に照射される。
【0011】
そして、2個のプリズムが角度誤差を有するとき、すなわち、
図14(A)に示す2個のプリズム500Aの2枚の反射板が鋭角αに接続されている光学式変位センサ100Aと、
図14(B)に示す2個のプリズム500Bの2枚の反射板が鈍角βに接続されている光学式変位センサ100Bとにおいて、実線矢印で示す光の光路は変化する。
具体的には、
図14(A)に示すように、2個のプリズム500Aが鋭角αに形成されているとき、光源300から照射され回折格子200にて分割された2本の光は、2個のプリズム500Aを介することで光の進行方向が傾き、互いにオフセットされて、距離S1を有して受光手段400に照射される。
また、
図14(B)に示すように、2個のプリズム500Bが鈍角βに形成されているとき、光源300から照射され回折格子200にて分割された2本の光は、2個のプリズム500Bを介することで光の進行方向が傾き、互いにオフセットされて、距離S2を有して受光手段400に照射される。
【0012】
この際、
図14(A),(B)における受光手段400に照射される合成光における2本の光のオーバーラップ量は、
図11に示す光学式変位センサ100と比較して小さくなる。すなわち、
図14(A),(B)に示す角度誤差を有する2個のプリズム500A,500Bを備える光学式変位センサ100A,100Bは、
図13に示す角度誤差を有しない2個のプリズム500を備える光学式変位センサ100と比較して、受光手段400に生成される干渉光が少ないため、取得できる干渉信号の振幅が減衰する。したがって、従来の光学式変位センサは、直角ではなく鋭角や鈍角といった角度誤差を有するプリズムを備える場合、受光手段400に照射される合成光のオーバーラップ量が変化するため、安定的に検出することができないという問題がある。
【0013】
本発明の目的は、受光手段に照射される合成光のオーバーラップ量を安定させつつ測定対象の変位量を高精度に検出することができる光学式変位センサを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の光学式変位センサは、測定方向に沿って所定の周期で配置される回折格子を有する回折手段と、回折手段に向かって光を照射する光源と、回折手段を介した光を受光する受光手段と、を備える。光学式変位センサは、光源から照射された光を第1光と第1光とは異なる第2光とに分割する分割手段と、光源から照射された光を反射する第1反射部と、第1反射部に対して所定の角度を有して設けられる第2反射部と、を有する反射手段と、反射手段を介した光を反射手段に向かって折り返して反射する折返し反射手段と、を備える。反射手段は、分割手段で分割され回折手段を介した第1光および第2光を第1反射部から第2反射部の順に反射し、折返し反射手段にて反射された第1光および第2光を第2反射部から第1反射部の順に反射する。受光手段は、反射手段および折返し反射手段を介した第1光および第2光を受光することを特徴とする。
【0015】
このような本発明によれば、光学式変位センサにおける反射手段は、分割手段で分割され回折手段を介した第1光および第2光を第1反射部から第2反射部の順に反射し、折返し反射手段にて反射された第1光および第2光を第2反射部から第1反射部の順に反射している。また、折返し反射手段を介することで、回折手段は、光源から入射した光を反射手段に向かって出射する際と、反射手段から入射した光を折返し反射手段に向かって出射する際と、折返し反射手段から入射した光を反射手段に向かって出射する際と、反射手段から入射した光を受光手段に向かって出射する際と、合計4回、光を回折している。光学式変位センサは、光源からの光を回折手段で4回回折し、一度反射手段で反射した第1光および第2光を折返し反射手段を介して先の反射時とは逆の光路を辿らせることで、反射手段が角度誤差を有することによる光の進行方向の変動を相殺している。これにより、光学式変位センサは、反射手段が有する角度誤差により生じる第1光および第2光の光路のズレや受光手段への照射位置の変動を相殺することができる。光学式変位センサは、受光手段に照射される合成光を構成する第1光と第2光とがオフセットし、合成光のオーバーラップ量が減少することを抑制することができる。
したがって、光学式変位センサは、受光手段に照射される合成光のオーバーラップ量を安定させつつ測定対象の変位量を高精度に検出することができる。
【0016】
また、従来の光学式変位センサでは、分割手段にて分割された第1光と第2光とのそれぞれに対応した例えば2個のコーナーキューブ(光学部品)が設けられていた。しかしながら、本発明の構成によれば、光学式変位センサは、分割手段で分割され回折手段を介した第1光および第2光を第1反射部から第2反射部の順に反射し、折返し反射手段にて反射された第1光および第2光を第2反射部から第1反射部の順に反射しているため、1個の反射手段(光学部品)で第1光と第2光とに対応することができる。
したがって、光学式変位センサは、分割手段にて分割された光に対応する光学部品の数を減らすことができるため、コスト削減を図ることができる。
【0017】
本発明の光学式変位センサは、測定方向に沿って所定の周期で配置される回折格子を有する回折手段と、回折手段に向かって光を照射する光源と、回折手段を介した光を受光する受光手段と、を備える。光学式変位センサは、光源から照射された光を第1光と第1光とは異なる第2光とに所定の分割点において分割するとともに、分割点を含む平面で面対称となる方向に第1光および第2光をそれぞれ出射する分割手段と、光源から照射された光を反射する第1反射部と、第1反射部に対して所定の角度で設けられる第2反射部と、を有する反射手段と、を備える。反射手段は、第1反射部に対して所定の角度で設けられる第2反射部を備える第1反射手段と、第1反射部に対して第1の反射手段における所定の角度と同じ角度で設けられる第2反射部を備える第1反射手段とは異なる第2反射手段と、を備える。第1反射手段および第2反射手段は、分割点を含む平面を対称面として第1反射部と第2反射部との配置が面対称となるように設けられている。第1反射手段の第1反射部は、分割手段から出射された第1光または第2光のいずれか一方を入射し第1反射手段の第2反射部に反射する。第2反射手段の第1反射部は、分割手段から出射された第1光または第2光のいずれか他方を入射し第2反射手段の第2反射部に反射する。受光手段は、第1反射手段および第2反射手段を介した第1光および第2光を受光することを特徴とする。
【0018】
このような本発明によれば、光学式変位センサにおける分割手段は、分割点を含む平面で面対称となる方向に第1光および第2光をそれぞれ出射し、第1反射手段の第1反射部は、分割手段から出射された第1光または第2光のいずれか一方を入射し第1反射手段の第2反射部に反射し、第2反射手段の第1反射部は、分割手段から出射された第1光または第2光のいずれか他方を入射し第2反射手段の第2反射部に反射している。すなわち、第1反射手段および第2反射手段は、分割点を含む平面を対称面として第1反射部と第2反射部との配置が面対称となるように設けられ、それぞれにおいて第1光と第2光とを第1反射部から第2反射部の順に光路を辿らせて反射している。これにより、光学式変位センサは、第1反射手段および第2反射手段が有する共通する角度誤差により生じる第1光および第2光の光路のズレや受光手段への照射位置の変動を相殺することができる。光学式変位センサは、受光手段に照射される合成光を構成する第1光と第2光とがオフセットし、合成光のオーバーラップ量が減少することを抑制することができる。
したがって、光学式変位センサは、受光手段に照射される合成光のオーバーラップ量を安定させつつ測定対象の変位量を高精度に検出することができる。
【0019】
この際、光学式変位センサは、反射手段を介した光を反射手段に向かって折り返して反射する折返し反射手段を備えることが好ましい。
【0020】
このような構成によれば、第1反射手段と第2反射手段とを有する光学式変位センサは、折返し反射手段を備えることで、一度反射手段で反射した第1光および第2光を折返し反射手段を介して先の反射時とは逆の光路を辿らせて反射している。これにより、光学式変位センサは、第1反射手段と第2反射手段とが有する角度誤差により生じる第1光および第2光の光路のズレや受光手段への照射位置の変動を相殺することができる。光学式変位センサは、受光手段に照射される合成光を構成する第1光と第2光とがオフセットし、合成光のオーバーラップ量が減少することを抑制することができる。
したがって、光学式変位センサは、受光手段に照射される合成光のオーバーラップ量を安定させつつ測定対象の変位量を高精度に検出することができる。
【0021】
この際、光学式変位センサにおいて、第1反射部および第2反射部は、光を反射する反射面を備える。第1反射手段および第2反射手段は、第1反射部と第2反射部とのそれぞれの反射面を延長した延長面上における交線である第1の交線を有する。第1反射手段の第1の交線および第2反射手段の第1の交線は、分割点を含む平面上に配置される。折返し反射手段は、光を反射する第1反射板と、第1反射板に対して所定の角度を有して設けられる第2反射板と、第1反射板と第2反射板とのそれぞれを延長した延長面上における交線である第2の交線と、を備える。折返し反射手段は、第2の交線が第1の交線に対して直交する方向と平行に配置されていることが好ましい。
【0022】
ここで、折返し反射手段は、前述の通り、光源からの光を回折手段で4回回折させ、一度反射手段で反射した第1光および第2光を先の反射時とは逆の光路を辿らせて反射することで光の進行方向の変動を相殺させるためのものである。このため、光の進行方向には、折返し反射手段を介することによる更なる変動が生じないことが好ましい。また、折返し反射手段が例えばミラー等の1枚の反射板である場合、オフセットさせることなく回折手段から入射した光をその光と逆方向に反射して先の反射時とは逆の光路を辿らせると、入射する光と出射する光とが干渉したり、光源と受光手段とを同じ位置に配置しなければならなくなる等の問題が生じることがある。
【0023】
しかしながら、このような構成によれば、折返し反射手段は、第2の交線が第1の交線に対して直交する方向と平行に配置されていることで、第1光と第2光とを第1の交線と平行な方向にオフセットすることができる。これにより、光学式変位センサは、入射する光と出射する光とが干渉することを防ぎ、光源と受光手段とを異なる位置、例えば第1の交線と平行な方向に離間した位置に配置することができる。また、このような構成の折返し反射手段を備えることで、光学式変位センサは、第1光と第2光との進行方向に新たな変動を生じさせることなく、第1の交線と平行な方向にオフセットして反射手段を介した光を反射手段に向かって折り返して反射することができる。したがって、光学式変位センサは、受光手段にて受光される合成光を安定させ、高精度化を図ることができる。
【0024】
この際、分割手段は、回折手段が有する回折格子であることが好ましい。
【0025】
このような構成によれば、分割手段は、回折手段が有する回折格子であるため、光源からの光を分割するための光学部品を新たに設ける必要がない。したがって、光学式変位センサは、回折手段が有する回折格子を分割手段として兼用することができるため、コスト削減を図ることができる。
【0026】
または、分割手段は、光源からの光を互いに異なる2つの光に分割するビームスプリッタであることが好ましい。
【0027】
ここで、分割手段が回折格子である場合、回折格子を介した光源からの光は、複数の回折光となる。複数の回折光は、光源から照射された光の光軸と同じ方向に進行する回折光と、光軸の両側を所定の回折角度で進行する回折光と、光軸の両側を所定の回折角度よりも大きな回折角度で進行する回折光と、を有する。複数の回折光は、光軸と同じ方向に進行する回折光を0次回折光とすると、0次回折光を基準として回折角度が大きくなる方向に向かって±1次回折光、±2次回折光と順序づけることができる。
光学式変位センサは、主に±1次回折光により生成される合成光から測定対象の変位量を検出する。このことから、±1次回折光以外の回折光は光学式変位センサにおいて用いられないため、測定対象の変位量の検出に用いられる光にロスが生じることがある。
【0028】
しかしながら、このような構成によれば、分割手段は、光源からの光を互いに異なる2つの光に分割するビームスプリッタであり、回折格子のように光源からの光を複数の回折光に分割しないため、測定対象の変位量の検出に用いられる光にロスが生じることを防ぐことができる。
具体的には、ビームスプリッタは、非偏光ビームスプリッタと偏光ビームスプリッタとがあり、次のような特性を有する。非偏光ビームスプリッタは、光源からの光を平均した非偏光の光として、2つの光に分割する光学部品である。偏光ビームスプリッタは、光源からの光を、Sランダム偏光の光であるS偏光と、Pランダム偏光の光であるP偏光と、の2つの偏光成分に分離する光学部品である。すなわち、非偏光ビームスプリッタと偏光ビームスプリッタとは、ともに光源からの光を2つの光に分割する光学部品である。したがって、光学式変位センサは、分割手段にビームスプリッタを採用することで、回折格子を採用した場合と比較して測定対象の変位量の検出に用いられる光にロスが生じることを抑制できるため、測定対象の変位量を高精度に検出することができる。
【0029】
この際、光学式変位センサは、第1光と第2光を全反射して第1光と第2光の光路を所定の方向に変更する全反射手段を備えることが好ましい。
【0030】
このような構成によれば、光学式変位センサは、第1光と第2光の光路を所定の方向に変更する全反射手段を備えるため、光学式変位センサ内の光の光路を自由に設計することができる。また、光学式変位センサは、全反射手段の配置によっては光学式変位センサの小型化を図ることができる。
【0031】
この際、光学式変位センサは、受光手段が受光した光に基づき測定対象における変位量を演算する演算手段を備える。回折手段は、測定方向に移動する測定対象に取付けられ、測定対象の移動にともなって同期して移動する。演算手段は、測定対象と同期して移動する回折手段の移動にともない、受光手段が受光する光から検出される測定対象の移動による変位量を演算することが好ましい。
【0032】
このような構成によれば、光学式変位センサは、測定方向に移動する測定対象の移動量を検出する直動センサとして機能することができる。
【0033】
また、光学式変位センサは、受光手段が受光した光に基づき測定対象における変位量を演算する演算手段を備える。回折手段は、所定の軸を回動軸として回動する測定対象に取付けられ、測定対象の回動にともなって同期して回動する。演算手段は、測定対象と同期して回動する回折手段の回動にともない、受光手段が受光する光から検出される位相の変化に基づき角度の変位量を演算することが好ましい。
【0034】
このような構成によれば、光学式変位センサは、所定の軸を回動軸として回動する測定対象の角度の変位量を検出する角度センサとして機能することができる。
【0035】
この際、回折手段は、光源からの光を回折して透過させる透過型であることが好ましい。
【0036】
このような構成によれば、回折手段は、透過型であることで、光学式変位センサを角度センサまたは直動センサ、どちらの機能を採用する場合であっても、それぞれに対応することができる。
【0037】
また、回折手段は、光源からの光を回折して反射させる反射型であることが好ましい。
【0038】
このような構成によれば、回折手段は、反射型であることで、光学式変位センサを直動センサとする場合において、効果的に機能させることができる。また、回折手段は、反射型であることで、取りつける光学部品等の機器の設計のしやすさの観点から、透過型である場合と比較して、光学式変位センサを容易に設計することができる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【
図1】第1実施形態に係る光学式変位センサを示す斜視図
【
図2】前記光学式変位センサが角度センサである場合における光の光路を示す概略図
【
図3】前記光学式変位センサにおいて反射手段が角度誤差を有するときの光の光路を示す概略図
【
図4】前記光学式変位センサが直動センサである場合における光の光路を示す概略図
【
図5】前記光学式変位センサにおける受光手段を示す概略図
【
図6】前記光学式変位センサにおける受光手段の変形例を示す概略図
【
図7】第2実施形態に係る光学式変位センサを示す概略図
【
図8】前記光学式変位センサにおいて反射手段が角度誤差を有するときの光の光路を示す概略図
【
図9】第3実施形態に係る光学式変位センサを示す斜視図
【
図10】前記光学式変位センサにおける光の光路を示す概略図
【
図11】第4実施形態に係る光学式変位センサにおける光の光路を示す斜視図
【
図12】第5実施形態に係る光学式変位センサを示す斜視図
【
図13】従来の光学式変位センサにおける光の光路を示す概略図
【
図14】従来の光学式変位センサにおいて2個のプリズムが角度誤差を有するときの光の光路を示す概略図
【発明を実施するための形態】
【0040】
〔第1実施形態〕
以下、本発明の第1実施形態を
図1から
図6に基づいて説明する。
図1は、第1実施形態に係る光学式変位センサ1を示す斜視図であり、
図2は、光学式変位センサ1が角度センサである場合における光の光路を示す概略図である。具体的には、
図2(A)は光学式変位センサ1において測定対象が回動する前の状態を示す図であり、
図2(B),(C)は光学式変位センサ1において測定対象が所定の方向に回動した状態を示す図である。
【0041】
光学式変位センサ1は、
図1および
図2に示すように、回折格子Mを有する回折手段2と、回折手段2に向かって光を照射する光源3と、回折手段2を介した光を受光する受光手段4と、を備える。
光学式変位センサ1は、回動する図示しない測定対象を測定する測定機器の内部に設けられている角度センサである。本実施形態では、回折手段2において回折格子Mが並設される方向を測定方向であるX方向とし、回折手段2において回折格子Mが並設される面においてX方向と直交する方向をY方向とする。そして、測定対象は、回折手段2とは後述する反射手段5を挟んで反対側(紙面右側)に配置され、Y方向と平行なY軸を回動軸AXとして回動する。なお、以降の説明においてY軸を測定対象の回動軸AXとして説明する。また、
図1では、説明の都合上、回折格子Mを省略し
図2に記載している。
【0042】
回折手段2は、光を透過する透過型回折格子であり、透光性を有するガラスにて形成されている。なお、回折手段2は、ガラスに限らず、任意の透光性の部材により形成されていてもよい。回折手段2は、所定の軸であるY軸を回動軸AXとして回動する測定対象に取付けられ、測定対象の回動にともなって同期して回動する。
回折格子Mは、本実施形態では、測定方向であるX方向に沿って所定の周期mで配置される。回折格子Mを介した光源3からの光は、複数の回折光となる。
【0043】
ここで、複数の回折光は、前述のように、光軸と同じ方向に進行する回折光を0次回折光とすると、0次回折光を基準として回折角度が大きくなる方向に向かって±1次回折光、±2次回折光と順序づけることができる。
受光手段4は、主に±1次回折光により生成される合成光から干渉信号を検出する。
なお、以下の図面では、受光手段4において合成光を生成する光の光路を実線矢印で表し、以下の説明では、実線矢印を受光手段4において合成光を生成する光の光路として説明する。
【0044】
光学式変位センサ1は、光源3から照射された光を第1光と第1光とは異なる第2光とに分割する分割手段20を備える。具体的には、分割手段20は、回折手段2が有する回折格子Mである。分割手段20は、1枚の回折手段2に設けられた回折格子Mのうち、光源3からの光が照射される領域内に設けられた回折格子Mである。なお、回折手段2は、1枚でなくてもよく複数枚であってもよい。この際、分割手段20は、回折手段2とは分離されて別体として設けられていてもよい。
【0045】
光源3は、一定の幅を有する光を回折手段2に向かって照射する。光源3は、例えば半導体レーザである。なお、光源3は半導体レーザに限らず、光学式変位センサにおいて干渉光を生じさせることができるコヒーレント長を有する光源であれば任意の光源であってもよい。
受光手段4については、
図5および
図6を用いて後述する。
【0046】
光学式変位センサ1は、光源3から照射された光を反射する反射手段5と、反射手段5を介した光を反射手段5に向かって折り返して反射する折返し反射手段6と、をさらに備える。
反射手段5および折返し反射手段6は、回動することなく光学式変位センサ1内に固定されて設けられている。
反射手段5は、光源3から照射された光を反射する板状の第1反射部51と、第1反射部51に対して所定の角度を有して設けられる板状の第2反射部52と、を備える。
【0047】
反射手段5は、具体的には、第1反射部51および第2反射部52の2面の反射面を有するプリズムである。反射手段5は、第1反射部51と第2反射部52の延長面上の交線であり、第1反射部51と第2反射部52を接続することで生じる直線状の接続部50を有する。
接続部50は、回折手段2の回折格子Mが並設される面において測定方向であるX方向と直交する方向であるY方向と平行になるように配置されている。なお、反射手段5は、第1反射部51と第2反射部52を有していればプリズムでなくてもよく、例えば、第1反射部51と第2反射部52は、接続部50にて接続されない、それぞれ別体の2枚のミラーにより構成されていてもよい。また、第1反射部51と第2反射部52は、板状でなくてもよく、例えばソリッド状であってもよい。さらに、反射手段5は、ビームスプリッタであってもよいし、球状のビーズを用いたキャッツアイ等であってもよい。
【0048】
折返し反射手段6は、第1光および第2光を反射手段5に向かって反射する単一の部材であり、直交する2面の反射面を有するプリズムである。なお、折返し反射手段6は、第1光および第2光を反射手段5に向かって反射することができればプリズムではなくミラーや、その他の反射部材であってもよい。折返し反射手段6がプリズムであることが好ましい理由は、後述する。
反射手段5は、分割手段20で分割され回折手段2を介した第1光および第2光を第1反射部51から第2反射部52の順に反射し、折返し反射手段6にて反射された第1光および第2光を第2反射部52から第1反射部51の順に反射する。そして、受光手段4は、反射手段5および折返し反射手段6を介した第1光および第2光を受光する。
【0049】
光学式変位センサ1は、受光手段4が受光した光に基づき回動軸AXで回動する測定対象における角度の変位量を演算する図示しない演算手段を備える。
演算手段は、測定対象と同期して回動する回折手段2の回動にともない、受光手段4が受光する合成光から検出される位相の変化に基づき角度の変位量を演算する。
【0050】
以下、光学式変位センサ1における光の光路について
図2に基づいて説明する。なお、
図2(B)および
図2(C)では、
図2(A)における測定対象が回動する前の回折手段2の位置を破線にて表している。
先ず、
図2に示すように、光源3から照射された光は、分割手段20の分割点P1にて第1光および第2光に分割されて回折し、分割点P1から反射手段5の第1反射部51に照射される。この際、
図2(B)に示すように、測定対象がγ方向に回動すると、回折手段2も同期してγ方向に回動し、第1光および第2光の進行方向も、回折手段2のγ方向への回動に応じて変動する。また、
図2(C)に示すように、測定対象が-γ方向に回動すると、回折手段2も同期して-γ方向に回動し、第1光および第2光の進行方向も、回折手段2の-γ方向への回動に応じて変動する。
【0051】
次に、第1光および第2光を入射した第1反射部51は、第2反射部52に向かって第1光および第2光を反射する。第2反射部52は、入射した第1光および第2光を回折手段2に反射する。第2反射部52にて反射した第1光および第2光は、回折手段2の回折格子Mにて回折され、折返し反射手段6に向かって出射される。回折手段2から出射された第1光および第2光は、折返し反射手段6によりY方向にオフセットされるとともに、回折手段2から出射された際の第1光および第2光のそれぞれの光と平行、かつ、逆方向に回折手段2に向かって再帰性反射される。
【0052】
折返し反射手段6で再帰性反射された第1光および第2光は、回折手段2の回折格子Mにおいて再び回折されて反射手段5の第2反射部52に出射される。第1光および第2光を入射した第2反射部52は、第1光および第2光を第1反射部51に向かって反射する。第1反射部51は、第2反射部52から入射した第1光および第2光を回折手段2に向かって反射する。第1反射部51から出射された第1光および第2光は、回折手段2の回折格子Mにて回折され合成光となり、受光手段4に向かって出射される。受光手段4は、反射手段5および折返し反射手段6を介した第1光および第2光からなる合成光を受光する。演算手段は、受光手段4が受光する合成光から検出される位相の変化に基づき角度の変位量を演算する。
【0053】
図3は、光学式変位センサ1において反射手段5が角度誤差を有するときの光の光路を示す概略図である。具体的には、
図3(A)は、反射手段5が角度誤差を有しないときに光学式変位センサ1にて観測される光の光路であり、
図3(B)は、反射手段5aが鋭角αで形成され角度誤差を有しているときに光学式変位センサ1aにて観測される光の光路であり、
図3(C)は、反射手段5bが鈍角βで形成され角度誤差を有しているときに光学式変位センサ1bにて観測される光の光路である。
【0054】
図3(A)に示すように、光学式変位センサ1において反射手段5が角度誤差を有しないとき、第1光および第2光は、折返し反射手段6に距離Sを有して照射される。そして、光学式変位センサ1aにおいて反射手段5aが鋭角αで形成され角度誤差を有しているとき、
図3(B)に示すように、第1光および第2光は、折返し反射手段6でオフセットし、距離Sとは異なる距離S1を有して照射される。また、光学式変位センサ1bにおいて反射手段5bが鈍角βで形成され角度誤差を有しているとき、
図3(C)に示すように、第1光および第2光は、折返し反射手段6でオフセットし、距離Sとは異なる距離S2を有して照射される。
光学式変位センサ1a,1bは、折返し反射手段6に到達した第1光および第2光を再び回折手段2にて回折させることで、受光手段4が受光する第1光および第2光による合成光の距離S1,S2によるオーバーラップ量の減少を相殺している。
【0055】
具体的には、光学式変位センサ1a,1bは、折返し反射手段6を介することで、折返し反射手段6に到達するまでの第1光および第2光の光路と同じ光路を逆方向に辿らせ、第1光および第2光を回折手段2で合計4回回折させている。これにより、光学式変位センサ1a,1bは、反射手段5a,5bが有する角度誤差による回折光の進行方向の変動を相殺している。
折返し反射手段6は、第1光および第2光を、平行、かつ逆方向に再び回折手段2に再帰性反射する。そして、回折手段2で回折された第1光および第2光は、反射手段5a,5bにおいて再帰性反射し、折返し反射手段6に到達するまでの第1光および第2光の光路と同じ光路を逆方向に辿らせて、回折手段2で回折されて合成光となる。
【0056】
このとき、折返し反射手段6がミラーであり、第1光および第2光をY方向にオフセットすることなく反射し、第1光および第2光が折返し反射手段6に到達するまでの光路と同じ光路を逆方向に辿らせると、合成光は、光源3から照射される光と同軸上を進行する。この場合、光源3からの光と折返し反射手段6を介した第1光および第2光とが干渉してしまうため、受光手段4は、合成光を受光することができない。また、第1光および第2光をY方向と異なる方向にオフセットして反射すると、オフセットする方向によっては、第1光および第2光とは受光手段4から外れた方向に照射されることがある。この場合においても、第1光および第2光が受光手段4に照射されなければ、受光手段4は、合成光を受光することができないことがある。
【0057】
このため、
図1に示すように、プリズムである折返し反射手段6は、測定方向であるX方向と平行な直線上で2枚の反射面を接続している。これにより、折返し反射手段6は、第1光と第2光とをY方向にオフセットして反射するため、合成光が光源3からの光と同軸を進行することを防ぐとともに、第1光および第2光とが受光手段4から外れた方向に照射されることを防止することができる。なお、折返し反射手段は、第1光と第2光とをY方向にオフセットしなくともよく、受光手段が合成光を受光できれば、どの方向にオフセットしてもよい。このため、折返し反射手段は、プリズムではなくミラーや、他の反射部材であってもよく、第1光および第2光を反射できれば、どのようなものであってもよい。
【0058】
図4は、光学式変位センサ1cが直動センサである場合における光の光路を示す概略図である。
具体的には、
図4(A)は光学式変位センサ1cにおいて測定対象が測定方向に移動する前の状態を示す図であり、
図4(B),(C)は光学式変位センサ1cにおいて測定対象が測定方向に移動した状態を示す図である。なお、
図4(B),(C)では、移動する前の位置の回折手段2を破線にて記載する。
前記第1実施形態では、光学式変位センサ1,1a~1bは、角度センサであったが、光学式変位センサ1cは、直動センサであってもよい。この場合、回折手段2は、測定方向であるX方向に移動する測定対象に取付けられ、測定対象の移動にともなって同期して移動し、光学式変位センサ1cは、測定対象の移動による変位量を検出する。なお、測定対象は、回折手段2とは反射手段5を挟んで反対側(紙面右側)に配置されていてもよいし、回折手段2とは折返し反射手段6を挟んで反対側(紙面左側)に配置されていてもよい。
【0059】
以下、光学式変位センサ1cについて
図4に基づいて説明する。
図4(A)に示すように、光源3から照射された光は、分割手段20の分割点P1にて第1光および第2光に分割されて回折し、分割点P1から反射手段5の第1反射部51に照射される。この際、
図4(B)に示すように、測定対象が+X方向(紙面上方向)に移動すると、回折手段2も同期して+X方向に移動し、第1光および第2光の進行方向も、回折手段2の+X方向への移動に応じて変動する。また、
図4(C)に示すように、測定対象が-X方向(紙面下方向)に移動すると、回折手段2も同期して-X方向に移動し、第1光および第2光の進行方向も、回折手段2の-X方向への移動に応じて変動する。そして、反射手段5および折返し反射手段6を介し、回折手段2で4回回折された第1光および第2光は、合成光として受光手段4に照射される。演算手段は、受光手段4が受光した合成光に基づいて、測定対象の移動による変位量を演算する。
【0060】
図5は、光学式変位センサ1,1a~1cにおける受光手段4を示す概略図である。
光学式変位センサ1,1a~1cは、
図1から
図4に示すように、回折手段2から反射手段5および折返し反射手段6までの間における第1光と第2光とのいずれか一つ、または、複数の光路上に配置される第1の1/4波長板11を備える。本実施形態では、第1の1/4波長板11は、回折手段2から折返し反射手段6までの間の第1光の光路上に配置されている。なお、第1の1/4波長板11は、回折手段2から反射手段5および折返し反射手段6までの間における第1光と第2光とのいずれか一つ、または、複数の光路上であれば、どこに配置されていてもよい。
【0061】
そして、受光手段4は、
図5に示すように、第2の1/4波長板12と、第3の1/4波長板13と、分割ビームスプリッタ31と、第1分割光偏光ビームスプリッタ32と、第2分割光偏光ビームスプリッタ33と、複数の受光部41~44と、を備える。
具体的には、分割ビームスプリッタ31は、合成光を第1分割光31aと第2分割光31bとに分割する。第2の1/4波長板12は、分割ビームスプリッタ31により分割された第1分割光31aと第2分割光31bとの光路上に配置され、第1分割光偏光ビームスプリッタ32は、第2の1/4波長板12を介した第1分割光31aを第1偏光32aと第2偏光32bとに分割する。また、第3の1/4波長板13は、第2の1/4波長板12を介した第2分割光31bの光路上に配置され、第2分割光偏光ビームスプリッタ33は、第3の1/4波長板13を介した第2分割光31bを第3偏光33aと第4偏光33bとに分割する。
また、第1受光部41は、第1偏光32aから位相が0度の光を受光し、第2受光部42は、第2偏光32bから位相が180度の光を受光する。第3受光部42は、第3偏光33aから位相が90度の光を受光し、第4受光部44は、第4偏光33bから位相が270度の光を受光する。
【0062】
分割ビームスプリッタ31は、非偏光ビームスプリッタであり、平均した非偏光の光として、第2回折部22からの合成光を第1分割光31aと第2分割光31bとに分割する。
第1分割光偏光ビームスプリッタ32と第2分割光偏光ビームスプリッタ33とは、分割ビームスプリッタ31からの分割光31a,31bを、Sランダム偏光の光であるS偏光と、Pランダム偏光の光であるP偏光と、の2つの偏光成分に分離する光学部品である。
第1分割光偏光ビームスプリッタ32は、P偏光である第1偏光32aを透過し、S偏光である第2偏光32bを反射する。第2分割光偏光ビームスプリッタ33は、P偏光である第3偏光33aを透過し、S偏光である第4偏光33bを反射する。本実施形態では、S偏光を第2偏光32bと第4偏光33bとし、P偏光を第1偏光32aと第3偏光33aとして説明するが、どの偏光がS偏光かP偏光であるかは任意である。
【0063】
以下、分割ビームスプリッタ31以降の光の光路について説明する。
第1分割光31aは、第2の1/4波長板12を介することで第1分割光31aとは90度位相がずれた光となり第1分割光偏光ビームスプリッタ32に照射される。第1分割光偏光ビームスプリッタ32に照射された第1分割光31aは、S偏光である第1偏光32aと、P偏光である第2偏光32bと、に偏光され分割される。そして、第1受光部41は、第1偏光32aを受光して位相が0度の光である干渉光を受光し、第2受光部42は、第2偏光32bを受光して位相が180度の光である干渉光を受光する。
【0064】
第2分割光31bは、第2の1/4波長板12および第3の1/4波長板13を介することで第2分割光31bとは180度位相がズレた光となり第2分割光偏光ビームスプリッタ33に照射される。第2分割光偏光ビームスプリッタ33に照射された第2分割光31bは、S偏光である第3偏光33aと、P偏光である第4偏光33bと、に偏光され分割される。そして、第3受光部43は、第3偏光33aを受光して位相が90度の光である干渉光を受光し、第4受光部44は、第4偏光33bを受光して位相が270度の光である干渉光を受光する。
これにより、光学式変位センサ1,1a~1cは、合成光から4相信号を検出することができ、高精度に測定対象の変位量を検出することができる。
【0065】
図6は、光学式変位センサ1,1a~1cにおける受光手段4の変形例を示す概略図である。
光学式変位センサ1,1a~1cには、受光手段4の他に、以下の構成を有する受光手段4Aを採用することができる。
具体的には、受光手段4Aは、
図6に示すように、合成光が照射される照射面80と、合成光を複数の回折光とする所定の方向に沿って設けられる回折格子811と、を有する第2回折手段81と、照射面80において第2回折手段81の回折格子811が設けられる所定の方向と直交する方向に沿って設けられる回折格子822を有し、第2回折手段81による複数の回折光をさらに複数の回折光とする第3回折手段82と、第3回折手段82による複数の回折光の光路上に配置され、複数の回折光をそれぞれ位相の異なる複数の偏光にする複数の偏光子91~94と、複数の偏光子91~94のそれぞれに対応する複数の受光部41A~44Aと、を備える点で受光手段4と異なる。
【0066】
第2回折手段81および第3回折手段82は、第2回折部22からの合成光を平均した非偏光の光として4つの回折光に分割する。
複数の偏光子91~94は、偏光レンズである。なお、複数の偏光子91~94は、入射した光を偏光することができればよく、どのようなものを用いて偏光してもよい。
受光手段4Aは、複数の偏光子91~94に対向して同一面上に設けられている。第2回折手段81および第3回折手段82により分割された複数の回折光は、複数の偏光子91~94を透過すると、それぞれ位相の異なる偏光となる。具体的には、第1受光部41Aは、第1偏光子91を介した位相が0度の光を受光する。第2受光部42Aは、第2偏光子92を介した位相が90度の光を受光する。第3受光部43Aは、第3偏光子93を介した位相が180度の光を受光する。第4受光部44Aは、第4偏光子94を介した位相が270度の光を受光する。
【0067】
演算手段は、複数の受光部41A~44Aが受光したそれぞれ位相の異なる複数の光から4相信号を取得し、4相信号に基づいて測定対象の移動の方向および測定対象の変位量を演算する。
このような構成により、受光手段4Aは、複数の偏光子91~94に対向する同一面上に設けられているため、モジュール化することができる。また、前述の受光手段4のように光が照射される位置ごとに複数の受光部41~44を備える必要がないため、コスト削減を図るとともに省スペース化を図ることができる。
【0068】
なお、受光手段4,4Aでは、複数の受光部41~44,41A~44Aを備えて複数の光を受光し、演算手段は、4相信号を取得して測定対象の変位量を演算していた。しかしながら、受光手段は、回折手段を介した光を受光することができればどのような受光手段を採用してもよく、演算手段は、回折手段の移動にともない、受光手段が受光する合成光による干渉信号の変化に基づき測定対象の変位量を演算することができれば、どのように測定対象の変位量を演算してもよい。
また、光学式変位センサ1,1a~1cは、第1の1/4波長板11を備えていたが、受光手段4,4Aを採用しない等の場合には、第1の1/4波長板11を備えなくてもよい。
【0069】
このような第1実施形態によれば、以下の作用・効果を奏することができる。
(1)光学式変位センサ1,1a~1cにおける回折手段2は、折返し反射手段6を介することで、光源3から入射した光を反射手段5,5a~5bに向かって出射する際と、反射手段5,5a~5bから入射した光を折返し反射手段6に向かって出射する際と、折返し反射手段6から入射した光を反射手段5,5a~5bに向かって出射する際と、反射手段5,5a~5bから入射した光を受光手段4に向かって出射する際と、合計4回、光を回折している。光学式変位センサ1,1a~1cは、光源3からの光を回折手段2で4回回折し、一度反射手段5,5a~5bで反射した第1光および第2光を折返し反射手段6を介して先の反射時とは逆の光路を辿らせることで、反射手段5,5a~5bが角度誤差を有することによる光の進行方向の変動を相殺している。これにより、光学式変位センサ1,1a~1cは、反射手段5,5a~5bが有する角度誤差により生じる第1光および第2光の光路のズレや受光手段への照射位置の変動を相殺することができる。光学式変位センサ1,1a~1cは、受光手段4に照射される合成光を構成する第1光と第2光とがオフセットし、合成光のオーバーラップ量が減少することを抑制することができる。
したがって、光学式変位センサ1,1a~1cは、受光手段4に照射される合成光のオーバーラップ量を安定させつつ測定対象の変位量を高精度に検出することができる。
【0070】
(2)光学式変位センサ1,1a~1cは、分割手段20で分割され回折手段2を介した第1光および第2光を第1反射部51,51a~51bから第2反射部52,52a~52bの順に反射し、折返し反射手段6にて反射された第1光および第2光を第2反射部52,52a~52bから第1反射部51,51a~51bの順に反射しているため、1個の反射手段5,5a~5bで第1光と第2光とに対応することができる。
したがって、光学式変位センサ1,1a~1cは、分割手段20にて分割された光に対応する光学部品の数を減らすことができるため、コスト削減を図ることができる。
(3)分割手段20は、回折手段2が有する回折格子Mであるため、光源3からの光を分割するための光学部品を新たに設ける必要がない。したがって、光学式変位センサ1,1a~1cは、回折手段2が有する回折格子Mを分割手段20として兼用することができるため、コスト削減を図ることができる。
【0071】
〔第2実施形態〕
以下、本発明の第2実施形態を
図7および
図8に基づいて説明する。なお、以下の説明では、既に説明した部分については、同一符号を付してその説明を省略する。
【0072】
図7は、第2実施形態に係る光学式変位センサ1Aを示す概略図である。
前記第1実施形態では、光学式変位センサ1,1a~1cにおける反射手段5,5a~5bは、分割手段20で分割され回折手段2を介した第1光および第2光を第1反射部51,51a~51bから第2反射部52,52a~52bの順に反射し、折返し反射手段6にて反射された第1光および第2光を第2反射部52,52a~52bから第1反射部51,51a~51bの順に反射していた。また、反射手段5,5a~5bは、1個の光学部品であるプリズムであった。
【0073】
第2実施形態における光学式変位センサ1Aは、折返し反射手段6を備えず、反射手段5Aは、第1反射手段51Aと第2反射手段52Aを備える点で前記第1実施形態と異なる。
また、前記第1実施形態では、分割手段20は、回折手段2が有する回折格子Mであった。具体的には、光学式変位センサ1,1a~1cは、回折手段2に設けられた回折格子Mのうち、光源3からの光が照射される領域内に設けられた回折格子Mを分割手段20としていた。
第2実施形態では、光学式変位センサ1Aの分割手段20Aは、光源3からの光を互いに異なる2つの光に分割するビームスプリッタである点で前記第1実施形態と異なる。
具体的には、分割手段20Aは、偏光ビームスプリッタであり、光源3からの光を、Sランダム偏光の光であるS偏光と、Pランダム偏光の光であるP偏光と、の2つの偏光成分に分離する。そして、分割手段20Aは、P偏光を透過し、S偏光を反射する。
【0074】
図7に示すように、分割手段20Aは、光源3から照射された光を第1光と第1光とは異なる第2光とに所定の分割点P1において分割する。また、分割手段20Aは、回折格子Mが配置される回折手段2の面と直交する分割点P1を含む平面9で面対称となる方向に第1光および第2光をそれぞれ出射する。なお、分割手段20Aは、分割点P1を含む平面9で面対称となる方向に第1光および第2光をそれぞれ出射できればよいため、偏光ビームスプリッタと非偏光ビームスプリッタとのどちらを採用してもよく、また、他の光学部品を採用してもよい。
【0075】
第1反射手段51Aは、第1反射部510に対して所定の角度で設けられる第2反射部520を備える。第2反射手段52Aは、第1反射手段51Aとは異なる別部材であり、第1反射部510に対して第1の反射手段51Aにおける所定の角度と同じ角度で設けられる第2反射部520を備える。
第1反射手段51Aおよび第2反射手段52Aは、分割点P1を含む平面9を対称面として第1反射部510と第2反射部520との配置が面対称となるように設けられる。
【0076】
第1反射手段51Aの第1反射部510は、分割手段20Aから出射された第1光または第2光のいずれか一方を入射し第1反射手段51Aの第2反射部520に反射し、第2反射手段52Aの第1反射部510は、分割手段20Aから出射された第1光または第2光のいずれか他方を入射し第2反射手段52Aの第2反射部520に反射する。本実施形態では、第1反射手段51Aに入射する光を第1光として説明し、第2反射手段52Aに入射する光を第2光として説明する。また、以下の説明において、P偏光を第1光とし、S偏光を第2光として説明する。
【0077】
図8は、光学式変位センサ1Aaにおいて反射手段5Aaが角度誤差を有するときの光の光路を示す概略図である。具体的には、反射手段5Aaは、第1反射部510と第2反射部520とが鋭角αに接続され、角度誤差を有している。
以下、光学式変位センサ1A,1Aaにおける光の光路について
図7および
図8に基づいて説明する。
図7および
図8に示すように、先ず、光源3から照射された光は、分割手段20Aの分割点P1にて第1光であるP偏光と第2光であるS偏光とに分割される。第1光は、分割点P1にて透過し回折手段2に向かって反射される。第2光は、分割点P1にて反射し回折手段2に向かって反射される。
【0078】
次に、回折手段2で回折された第1光は、第1反射手段51Aにて平行、かつ、逆方向に反射され、再び回折手段2に入射する。具体的には、第1光は、第1反射手段51Aの第1反射部510に向かって回折される。第1反射手段51Aの第1反射部510で反射した第1光は、第1反射手段51Aの第2反射部520にて反射し、回折手段2に向かって照射される。
また、回折手段2で回折された第2光は、第2反射手段52Aにて平行、かつ、逆方向に反射され、再び回折手段2に入射する。具体的には、第2光は、第2反射手段52Aの第1反射部510に向かって回折される。第2反射手段52Aの第1反射部510で反射した第2光は、第2反射手段52Aの第2反射部520にて反射し、回折手段2に向かって照射される。
【0079】
反射手段5Aを介した第1光および第2光は、回折手段2で回折され、分割手段20Aの平面9の合成点P2にて合成光となり、受光手段4に照射される。演算手段は、受光手段4が受光する合成光に基づいて測定対象の変位量を演算する。
ここで、反射手段5Aが角度誤差を有しない場合、
図7に示すように、分割点P1と合成点P2とは距離Sを有している。そして、反射手段5Aaが鋭角αに形成され角度誤差を有する場合、
図8に示すように分割点P1と合成点P2とは距離S1を有し、距離Sと比較して短い距離となっている。光学式変位センサ1A,1Aaは、反射手段5A,5Aaが有する角度誤差により生じる影響を、合成点P2を平面9上で移動させることで相殺することができる。
【0080】
このような第2実施形態によれば、以下の作用・効果を奏することができる。
(4)光学式変位センサ1A,1Aaにおける第1反射手段51A,51Aaおよび第2反射手段52A,52Aaは、分割点P1を含む平面9を対称面として第1反射部510と第2反射部520との配置が面対称となるように設けられ、それぞれにおいて第1光と第2光とを第1反射部510から第2反射部520の順に光路を辿らせて反射している。これにより、光学式変位センサ1A,1Aaは、第1反射手段51A,51Aaおよび第2反射手段52A,52Aaが有する共通する角度誤差により生じる第1光および第2光の光路のズレや受光手段4への照射位置の変動を相殺することができる。したがって、光学式変位センサ1A,1Aaは、受光手段4に照射される合成光のオーバーラップ量を安定させつつ測定対象の変位量を高精度に検出することができる。
(5)光学式変位センサ1A,1Aaは、分割手段20Aにビームスプリッタを採用することで、前記第1実施形態の分割手段20である回折格子Mを採用した場合と比較して光にロスが生じることを抑制できるため、測定対象の変位量を高精度に検出することができる。
【0081】
〔第3実施形態〕
以下、本発明の第3実施形態を
図9および
図10に基づいて説明する。なお、以下の説明では、既に説明した部分については、同一符号を付してその説明を省略する。
【0082】
図9は、第3実施形態に係る光学式変位センサ1Bを示す斜視図である。
第3実施形態では、
図9に示すように、光学式変位センサ1Bにおける分割手段20Bは、前記第2実施形態と同様に偏光ビームスプリッタである点で前記第1実施形態と異なり、反射手段5は、前記第1実施形態と同様に1個の光学部品であるプリズムである点で前記第2実施形態と異なる。
また、光学式変位センサ1Bは、第1光と第2光を全反射して第1光と第2光の光路を所定の方向に変更する全反射手段10を備える点で前記第1実施形態および前記第2実施形態と異なる。
【0083】
具体的には、全反射手段10は、分割手段20Bである偏光ビームスプリッタの側面であり、分割手段20Bにて分割された第1光と第2光とを回折手段2に向かって全反射したり、回折手段2を介した第1光と第2光とを折返し反射手段6に向かって全反射する。なお、分割手段20Bである偏光ビームスプリッタの側面にて光が全反射しないとき等は、全反射手段10は、偏光ビームスプリッタの側面ではなく、第1光と第2光との光路を変更できる位置に設けられるミラーやハーフミラー、ビームスプリッタ等であってもよい。要するに、全反射手段は、第1光と第2光を全反射して第1光と第2光の光路を所定の方向に変更することができれば、どのようなものが採用されてもよい。
【0084】
図10は、光学式変位センサ1Bにおける光の光路を示す概略図である。
反射手段5の接続部50は、前記第1実施形態ではY方向と平行となるように配置されていた。第3実施形態における反射手段5における第1反射部51と第2反射部52は、
図10に示すように、光を反射する反射面Hを備える。反射手段5は、第1反射部51と第2反射部52とのそれぞれの反射面Hを延長した延長面上における交線である第1の交線として接続部50を有する。第1の交線である接続部50は、分割点P1,P3および合成点P2,P4を含む平面9B上に配置される点で前記第1実施形態と異なる。
【0085】
第3実施形態における折返し反射手段6は、具体的には、
図9に示すように、光を反射する第1反射板61と、第1反射板61に対して所定の角度を有して設けられる第2反射板62と、第1反射板61と第2反射板62とのそれぞれを延長した延長面上における交線である第2の交線としての接続部63と、を備える。折返し反射手段6は、第2の交線である接続部63が第1の交線である接続部50に対して直交する方向と平行に配置されている。
【0086】
分割手段20Bは、
図10に示すように、回折格子Mが配置される回折手段2の面と直交する分割点P1,P3および合成点P2,P4を含む平面9Bで面対称となる方向に第1光および第2光をそれぞれ出射する。なお、分割手段20Bは、分割点P1,P3および合成点P2,P4を含む平面9Bで面対称となる方向に第1光および第2光をそれぞれ出射できればよく、また、第1光と第2光とが回折手段2にて互いに干渉しなければよいため、偏光ビームスプリッタと非偏光ビームスプリッタとのどちらを採用してもよく、また、他の光学部品を採用してもよい。
【0087】
分割手段20Bで分割された第1光と第2光は、1個の光学部品である反射手段5を介して、前記第2実施形態における第1反射手段51Aおよび第2反射手段52Aにおける光路と略同様の光路を辿り、受光手段4に照射される。すなわち、光学式変位センサ1Bは、第1の交線である接続部50を平面9B上に配置することで、第2実施形態において平面9を対称面として面対称に配置される2個の反射手段5A(第1反射手段51A,第2反射手段52A)を重ねて1個の反射手段5として用いている。これにより、光学式変位センサ1Bは、前記第2実施形態と同様の効果を得つつ反射手段の個数を減らし、コスト削減を図ることができる。また、光学式変位センサ1Bは、前記第1実施形態における折返し反射手段6を備えるため、折返し反射手段6を介して、回折手段2で第1光および第2光をそれぞれ4回回折することができる。したがって、光学式変位センサ1Bは、前記第2実施形態における光学式変位センサ1Aと比較して、安定的に変位量を検出することができる。
【0088】
以下、光学式変位センサ1Bにおける光の光路について
図10に基づいて説明する。なお、
図10では、説明の都合上、P偏光を破線で表し、S偏光を実線で表している。
図10に示すように、光源3から照射された光は、分割手段20Bの分割点P1にて第1光であるP偏光と第2光であるS偏光とに分割される。第1光は、分割点P1にて透過し、全反射手段10で回折手段2に向かって反射される。第2光は、分割点P1にて反射し、さらに全反射手段10で回折手段2に向かって反射される。
【0089】
回折手段2に向かって反射された第1光および第2光は、回折格子Mにて回折され、反射手段5に出射される。第1光は、第1反射部51から第2反射部52の順に反射し、第2光は、第2反射部52から第1反射部51の順に反射し、再び回折手段2に向かって反射される。回折手段2に向かって反射された第1光および第2光は、回折格子Mにて回折され、全反射手段10にて全反射されて合成点P2にて合成されて折返し反射手段6に向かって照射される。
【0090】
折返し反射手段6を介し、Y方向にオフセットされた第1光および第2光は、分割点P3にて再び分割され、それぞれ全反射手段10にて全反射し、回折手段2に向かって照射される。回折手段2に向かって反射された第1光および第2光は、回折格子Mにて回折され、反射手段5に出射される。第1光は、第2反射部52から第1反射部51の順に反射し、第2光は、第1反射部51から第2反射部52の順に反射し、再び回折手段2に向かって反射される。回折手段2に向かって反射された第1光および第2光は、回折格子Mにて回折され、全反射手段10にて全反射されて合成点P4にて合成されて合成光として受光手段4に照射される。演算手段は、受光手段4が受光する合成光に基づき測定対象の変位量を演算する。
【0091】
このような第3実施形態においても、前記第1実施形態および前記第2実施形態における(1),(4),(5)と同様の作用、効果を奏することができる他、以下の作用、効果を奏することができる。
(6)光学式変位センサ1Bは、第1光と第2光の光路を所定の方向に変更する全反射手段10を備えるため、光学式変位センサ1B内の光の光路を自由に設計することができる。また、光学式変位センサ1Bは、全反射手段10の配置によっては光学式変位センサ1Bの小型化を図ることができる。
(7)反射手段5の接続部50は、平面9B上に配置されているため、前記第2実施形態において2個必要となった反射手段5A(第1反射手段51A,第2反射手段52A)を1個の反射手段5にて対応することができる。したがって、光学式変位センサ1Bは、コスト削減を図ることができる。
【0092】
(8)光学式変位センサ1Bは、折返し反射手段6を備えることで、一度反射した第1光および第2光を折返し反射手段6を介して先の反射時とは逆の光路を辿らせて反射している。これにより、光学式変位センサ1Bは、反射手段5が有する角度誤差により生じる光の光路のズレや受光手段への変動を相殺することができる。光学式変位センサ1Bは、受光手段4に照射される合成光を構成する第1光と第2光とがオフセットし、合成光のオーバーラップ量が減少することを抑制することができる。
したがって、光学式変位センサ1Bは、受光手段4に照射される合成光のオーバーラップ量を安定させつつ測定対象の変位量を高精度に検出することができる。
【0093】
(9)折返し反射手段9は、第2の交線である接続部63が第1の交線である接続部50に対して直交する方向と平行に配置されていること、第1光と第2光とを第1の交線である接続部50と平行な方向にオフセットすることができる。これにより、光学式変位センサ1Bは、光源3と受光手段4とを同じ位置に配置することなく、入射する光と出射する光とが干渉することを防ぐことができる。また、光学式変位センサ1Bは、第1光と第2光との進行方向に新たな変動を生じさせることなく、反射手段5において第1の交線である接続部50と平行な方向にオフセットして回折手段2に照射させることができる。したがって、光学式変位センサ1Bは、受光手段4にて受光される合成光を安定させ、高精度化を図ることができる。
【0094】
〔第4実施形態〕
以下、本発明の第4実施形態を
図11に基づいて説明する。なお、以下の説明では、既に説明した部分については、同一符号を付してその説明を省略する。
【0095】
図11は、第4実施形態に係る光学式変位センサ1Cにおける光の光路を示す斜視図である。
前記第1実施形態では、回折手段2は、光源3からの光を回折して透過させる透過型であった。
第4実施形態における光学式変位センサ1Cが備える回折手段2Cは、光源3からの光を回折して反射させる反射型である点で前記第1実施形態と異なる。なお、第4実施形態では、光学式変位センサ1Cは、測定方向に移動する測定対象の移動量を検出する直動センサとして機能する。
【0096】
以下、光学式変位センサ1Cにおける光の光路について
図11に基づいて説明する。なお、
図11において、回折格子Mは、説明の都合上、省略する。
先ず、
図11に示すように、光源3から照射された光は、分割手段20Cの分割点P1にて第1光および第2光に分割されて回折し、分割点P1から反射手段5の第1反射部51に照射される。
次に、第1光および第2光を入射した第1反射部51は、第2反射部52に向かって第1光および第2光を反射する。第2反射部52は、入射した第1光および第2光を回折手段2Cに反射する。第2反射部52にて反射した第1光および第2光は、回折手段2Cの回折格子M(後述する
図12参照)にて回折され、折返し反射手段6に向かって反射する。回折手段2Cを反射した第1光および第2光は、折返し反射手段6によりY方向にオフセットされるとともに、回折手段2Cを反射した際の第1光および第2光のそれぞれの光と平行、かつ、逆方向に回折手段2Cに向かって再帰性反射される。
【0097】
折返し反射手段6で再帰性反射された第1光および第2光は、回折手段2Cの回折格子Mにおいて再び回折されて反射手段5の第2反射部52に反射する。第1光および第2光を入射した第2反射部52は、第1光および第2光を第1反射部51に向かって反射する。第1反射部51は、第2反射部52から入射した第1光および第2光を回折手段2Cに向かって反射する。第1反射部51にて反射された第1光および第2光は、回折手段2Cの回折格子Mにて回折され合成光となり、受光手段4に向かって反射する。受光手段4は、反射手段5および折返し反射手段6を介した第1光および第2光からなる合成光を受光する。演算手段は、受光手段4が受光する合成光から測定対象の移動量を演算する。
【0098】
このような第4実施形態においても、前記第1実施形態と同様の作用、効果を奏することができる他、以下の作用、効果を奏することができる。
(10)回折手段2Cは、反射型であることで、光学式変位センサ1Cを直動センサとして、効果的に機能させることができる。また、回折手段2Cは、反射型であることで、取りつける光学部品等の機器の設計のしやすさの観点から、透過型である場合と比較して、光学式変位センサ1Cを容易に設計することができる。
【0099】
〔第5実施形態〕
以下、本発明の第5実施形態を
図12に基づいて説明する。なお、以下の説明では、既に説明した部分については、同一符号を付してその説明を省略する。
【0100】
図12は、第5実施形態に係る光学式変位センサを示す斜視図である。
前記第3実施形態では、回折手段2は、光源3からの光を回折して透過させる透過型であった。また、1個の光学部品である反射手段5は、回折手段2を挟んで分割手段20Bの反対側に配置されていた。
第5実施形態における光学式変位センサ1Dが備える回折手段2Cは、前記第4実施形態と同様に、光源3からの光を回折して反射させる反射型である点で前記第3実施形態と異なる。
【0101】
また、第5実施形態における反射手段5Dは、1個の光学部品ではなく、反射面Hを備える第1反射部51Dおよび第2反射部52Dは、前記第3実施形態と比較した場合、回折手段2,2Cの回折手段Mが配置される面において、面対称となるように配置されている点で前記第3実施形態と異なる。具体的には、第1反射部51Dおよび第2反射部52Dは、板状のミラーであり、分割手段20Bを通過する光を阻害しない位置に設けられている。第5実施形態では、光学式変位センサ1Dは、測定方向に移動する測定対象の移動量を検出する直動センサとして機能する。なお、第1反射部51Dおよび第2反射部52Dは、板状のミラーでなく、薄膜状の反射部材を採用してもよく、光を所定の方向に反射することができる反射部材であれば、どのようなものを採用してもよい。
【0102】
以下、光学式変位センサ1Dにおける光の光路について
図12に基づいて説明する。なお、
図12では、説明の都合上、P偏光を破線で表し、S偏光を実線で表している。
図12に示すように、光源3から照射された光は、分割手段20Bの分割点P1にて第1光であるP偏光と第2光であるS偏光とに分割される。第1光は、分割点P1にて透過し、全反射手段10で回折手段2Cに向かって反射される。第2光は、分割点P1にて反射し、さらに全反射手段10で回折手段2Cに向かって反射される。
【0103】
回折手段2Cに向かって反射された第1光および第2光は、回折格子Mにて回折され、反射手段5Dに反射する。第1光は、第1反射部51Dから第2反射部52Dの順に反射し、第2光は、第2反射部52Dから第1反射部51Dの順に反射し、再び回折手段2Cに向かって反射される。回折手段2Cに向かって反射された第1光および第2光は、回折格子Mにて回折されて全反射手段10に向かって反射し、全反射手段10にて全反射されて合成点P2にて合成され、折返し反射手段6に向かって照射される。
【0104】
折返し反射手段6を介し、Y方向にオフセットされた第1光および第2光は、分割点P3にて再び分割され、それぞれ全反射手段10にて全反射し、回折手段2Cに向かって照射される。回折手段2Cに向かって反射された第1光および第2光は、回折格子Mにて回折され、反射手段5Dに反射する。第1光は、第2反射部52Dから第1反射部51Dの順に反射し、第2光は、第1反射部51Dから第2反射部52Dの順に反射し、再び回折手段2Cに向かって反射される。回折手段2Cに向かって反射された第1光および第2光は、回折格子Mにて回折されて全反射手段10に向かって反射し、全反射手段10にて全反射されて合成点P4にて合成され、合成光として受光手段4に照射される。演算手段は、受光手段4が受光する合成光から測定対象の移動量を演算する。
【0105】
このような第5実施形態においても、前記第3実施形態および前記第4実施形態と同様の作用、効果を奏することができる。
【0106】
〔実施形態の変形〕
なお、本発明は、前記各実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
例えば、前記各実施形態では、光学式変位センサ1,1a~1c,1A,1Aa,1B,1C,1Dは測定機器に設けられていたが、測定機器ではなく、その他のものに設けられていてもよい。すなわち、光学式変位センサがどのようなものに設けられるかは特に限定されるものではない。
このため、例えば前記第1実施形態の角度センサである光学式変位センサ1,1a~1bでは、測定対象は、回折手段2とは反射手段5を挟んで反対側(
図2において紙面右側)に配置されていたが、測定対象は、回折手段2とは折返し反射手段6を挟んで反対側(
図2において紙面左側)に配置されていてもよい。すなわち、測定対象は、Y方向と平行なY軸を回動軸として回動すれば、どのような位置に配置されていてもよい。また、前記第2実施形態および前記第3実施形態における光学式変位センサ1A,1Bは、角度センサであってもよいし、直動センサであってもよい。
【0107】
前記各実施形態では、光学式変位センサ1,1a~1c,1A,1Aa,1B,1C,1Dは、±1次回折光から測定対象の変位量を検出していたが、光学式変位センサがどの光に基づき変位量を検出するかについては設計事項である。要するに、演算手段は、回折手段の移動にともない、合成光に基づき測定対象の変位量を演算することができればよい。
【0108】
前記第2実施形態では、分割手段20Aは、偏光ビームスプリッタであったが、非偏光ビームスプリッタであってもよい。要するに、分割手段は、光源からの光を互いに異なる2つの光に分割するビームスプリッタであればよい。
【産業上の利用可能性】
【0109】
以上のように、本発明は、光学式変位センサに好適に利用できる。
【符号の説明】
【0110】
1,1a~1c,1A,1Aa,1B,1C,1D 光学式変位センサ
2,2C 回折手段
20,20A~20B 分割手段
3 光源
4,4A 受光手段
5,5a~5b,5A,5Aa,5D 反射手段
51,51D 第1反射部
51A 第1反射手段
510 第1反射部
52,52D 第2反射部
52A 第2反射手段
520 第2反射部
6 折返し反射手段
M 回折格子