(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-31
(45)【発行日】2024-06-10
(54)【発明の名称】隙間ゲージ
(51)【国際特許分類】
B24B 47/22 20060101AFI20240603BHJP
G01B 3/30 20060101ALI20240603BHJP
B24B 7/04 20060101ALI20240603BHJP
B24B 47/26 20060101ALI20240603BHJP
H01L 21/304 20060101ALI20240603BHJP
【FI】
B24B47/22
G01B3/30
B24B7/04 A
B24B47/26
H01L21/304 631
(21)【出願番号】P 2019230320
(22)【出願日】2019-12-20
【審査請求日】2022-10-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】110003524
【氏名又は名称】弁理士法人愛宕綜合特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100113217
【氏名又は名称】奥貫 佐知子
(74)【代理人】
【識別番号】100202496
【氏名又は名称】鹿角 剛二
(74)【代理人】
【識別番号】100202692
【氏名又は名称】金子 吉文
(72)【発明者】
【氏名】田中 悠也
【審査官】須中 栄治
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-115975(JP,A)
【文献】特開昭63-138201(JP,A)
【文献】特開2008-087104(JP,A)
【文献】特開2018-159579(JP,A)
【文献】実開昭53-049191(JP,U)
【文献】米国特許第06106661(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B24B41/00-51/00
G01B3/30
B24B7/04
H01L21/304
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被加工物を保持する保持面を有するチャックテーブルと、該チャックテーブルに保持された被加工物を研削する研削砥石が環状に配設された研削ホイールを回転可能に備えた研削手段と、該研削手段を該チャックテーブルに接近及び離反させる研削送り手段と、を少なくとも備えた研削装置で使用される隙間ゲージであって、
所望の厚みに形成されチャックテーブルに載置される底面と該研削砥石に接触する上面とを備えたブロックと、該ブロックの上面に形成され少なくとも一部が消滅することにより誤差の許容値を超えて摩耗が進行し使用寿命であることを示す凹みと、を備え
、該誤差の許容値とは、チャックテーブルの保持面と研削手段の研削砥石との距離を該所望の厚みに制御した際に許容される誤差に基づき設定される値である隙間ゲージ。
【請求項2】
該ブロックには、厚みの異なる2以上の領域が形成され、各領域の上面に使用寿命を示す凹みが形成されている請求項1に記載の隙間ゲージ。
【請求項3】
該凹みは、溝である請求項1、又は2に記載の隙間ゲージ。
【請求項4】
該凹みは、くぼみである請求項1、又は2に記載の隙間ゲージ。
【請求項5】
該ブロックの側面に各領域に対応する厚みが印字されている請求項1乃至4のいずれかに記載の隙間ゲージ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、研削装置で使用される隙間ゲージに関する。
【背景技術】
【0002】
IC、LSI等の複数のデバイスが分割予定ラインによって区画され表面に形成されたウエーハは、研削装置によって裏面が研削され所定の厚みに形成された後、ダイシング装置、レーザー加工装置によって個々にデバイスチップに分割され、携帯電話、パソコン等の電気機器に利用される。
【0003】
研削装置は、ウエーハを保持するチャックテーブルと、該チャックテーブルに保持されたウエーハを研削する研削砥石を環状に配設した研削ホイールを回転可能に備えた研削手段と、該研削手段を該チャックテーブルに接近及び離反させてる研削送り手段と、から概ね構成されていて、ウエーハを高精度に研削することができる(例えば特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記したような研削装置においては、ウエーハを研削する前に、隙間ゲージを用いてチャックテーブルの保持面と、研削砥石との隙間の間隔を精密に計測し、計測された隙間の間隔に基づいて研削手段の基準位置を特定し、研削送りする際の基準としている。しかし、研削砥石は、例えば、ダイヤモンド砥粒等をレジンボンドで固めた微細砥粒によって構成された硬い粗面で形成されており、このような研削砥石とチャックテーブルとの隙間に隙間ゲージを挿入し、該隙間の寸法が基準値となっているか否かを確認する作業を繰り返し行っていると、隙間ゲージの上面が徐々に摩耗し、摩耗量が許容範囲を超えると、その隙間ゲージでは、正確な隙間の寸法を計測できない状態となる。これに対し、研削装置を扱うオペレータは、その隙間ゲージを見ても、一見しただけでは許容量を超えて摩耗しているか否かの判断ができず、隙間ゲージが摩耗しているのか否かを確認するためには、別途の計測工具によって精密に計測する必要があり、煩に堪えないという問題がある。
【0006】
本発明は、上記事実に鑑みなされたものであり、その主たる技術課題は、摩耗状態を容易に把握することができる隙間ゲージを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記主たる技術課題を解決するため、本発明によれば、所望の厚みに形成されチャックテーブルに載置される底面と該研削砥石に接触する上面とを備えたブロックと、該ブロックの上面に形成され少なくとも一部が消滅することにより誤差の許容値を超えて摩耗が進行し使用寿命であることを示す凹みと、を備え、該誤差の許容値とは、チャックテーブルの保持面と研削手段の研削砥石との距離を該所望の厚みに制御した際に許容される誤差に基づき設定される値である隙間ゲージが提供される。
【0008】
該ブロックには、厚みの異なる2以上の領域が形成され、各領域の上面に使用寿命を示す凹みが形成されていることが好ましい。また、該凹みは、溝、又はくぼみで形成することができる。さらに、該ブロックの側面には、各領域に対応する厚みが印字されていることが好ましい。
【発明の効果】
【0009】
本発明の隙間ゲージは、所望の厚みに形成されチャックテーブルに載置される底面と該研削砥石に接触する上面とを備えたブロックと、該ブロックの上面に形成され少なくとも一部が消滅することにより誤差の許容値を超えて摩耗が進行し使用寿命であることを示す凹みと、を備え、該誤差の許容値とは、チャックテーブルの保持面と研削手段の研削砥石との距離を該所望の厚みに制御した際に許容される誤差に基づき設定される値であることから、計測できる許容値を超えて摩耗した場合に、隙間ゲージの寿命を知ることができ、オペレータが気付かない状態で正確な隙間を計測できなくなるという問題が解消する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本実施形態の隙間ゲージが使用される研削装置の全体斜視図である。
【
図2】
図1に示す研削手段によって半導体ウエーハが研削される態様を示す斜視図である。
【
図3】(a)新品状態の隙間ゲージの斜視図、(b)上面が摩耗して寿命に達した隙間ゲージの斜視図である。
【
図4】(a)隙間を計測する際に研削手段を下降させる態様を示す斜視図、(b)隙間ゲージを隙間に挿入させる態様を示す斜視図である。
【
図5】(a)隙間ゲージの第一の変形例、(b)隙間ゲージの第二の変形例、(c)隙間ゲージの第三の変形例である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明に基づいて構成される隙間ゲージに係る実施形態について添付図面を参照しながら、詳細に説明する。
【0012】
図1には、本実施形態の隙間ゲージが使用される研削装置の一例を示す斜視図が示されている。研削装置1は、基台2に配設された被加工物に研削加工を施す加工手段としての研削手段3と、研削手段3を研削送りする研削送り手段4と、被加工物を保持するチャックテーブル機構6とを備えている。研削装置1によって加工が施される被加工物は、例えば、図中左方に示すように、複数のデバイス12が、分割予定ライン14によって区画され表面10a側に形成された半導体ウエーハ10である。
【0013】
研削手段3は、スピンドルユニット30を備えている。スピンドルユニット30は、スピンドルハウジング31と、スピンドルハウジング31に回転自在に配設された回転軸32と、回転軸32を回転駆動するための駆動源としてのサーボモータ33とを備えている。回転軸32は、下方側の先端部がスピンドルハウジング31の下端から突出するように配設され、該先端部には、円盤状のマウント35が配設されている。マウント35の下面には、研削ホイール36が配設され、研削ホイール36の下面には、複数の研削砥石37が環状に配設されている。
【0014】
研削送り手段4は、上記したスピンドルハウジング31を保持する保持ブロック41aを備えた移動基台41と、研削装置1の基台2上の後方端部から立ち上がる直立壁2aの前側に配設され実質上鉛直に延びる雄ねじロッド42及び雄ねじロッド42を回転駆動するための駆動源としてのパルスモータ43とを備えている。移動基台41は、直立壁2aの前面に配設された一対の案内レール44、44と摺動可能に係合している。移動基台41の背面には、図示しない雄ねじロッド42の軸受部材が形成されている。このパルスモータ43が正転すると案内レール44、44に沿って、移動基台41と共にスピンドルユニット30が上昇させられ、パルスモータ42が逆転すると移動基台41と共にスピンドルユニット30が下降させられる。研削手段3のZ軸方向(上下方向)の位置は、図示しない検出手段によって検出され、研削手段3は、研削送り手段4によって、所望の位置に位置付けられる。
【0015】
チャックテーブル機構6は、基台2上に配設されており、被加工物である半導体ウエーハ10を吸引保持する保持面60aを備えた保持手段としてのチャックテーブル60と、チャックテーブル60の周囲を覆う板状のカバー部材62と、カバー部材62の前後に配設された蛇腹手段64、65と、を備えている。チャックテーブル60は、図示しない駆動手段によって矢印Xで示す方向において所望の位置に移動させることができ、半導体ウエーハ10を搬入、搬出する図中手前側の搬出入領域と、スピンドルユニット30の直下でチャックテーブル60の保持面60aに保持された半導体ウエーハ10に対して研削加工を施す加工領域とに位置付けられる。なお、
図1では、チャックテーブル60は搬出入領域に位置付けられている。
【0016】
研削装置1には、図示しない制御手段が配設されている。該制御手段は、コンピュータにより構成され、制御プログラムに従って演算処理する中央演算処理装置(CPU)と、制御プログラム等を格納するリードオンリメモリ(ROM)と、検出した検出値、演算結果等を一時的に格納するための読み書き可能なランダムアクセスメモリ(RAM)と、入力インターフェース、及び出力インターフェースとを備えている。本実施形態における制御手段には、研削手段3、及び研削送り手段4が接続されており、該制御手段によって研削手段3を作動させると共に、研削送り手段4を作動させて、研削手段3の直下の加工領域に位置付けられたチャックテーブル60に対して、研削手段3を接近、及び離反させる。
【0017】
図1に示す研削装置1によって、半導体ウエーハ10の裏面10bを研削する際には、図に示すように、半導体ウエーハ10の表面10aに保護テープTを貼着して一体とし、半導体ウエーハ10の裏面10bを上方に、保護テープTを下方に向けて、チャックテーブル60の保持面60aに載置して、図示しない吸引源を作動して吸引保持する。チャックテーブル60に半導体ウエーハ10を吸引保持したならば、
図2に示すように、チャックテーブル60を駆動する図示しない回転駆動機構を作動して、チャックテーブル60を矢印R1で示す方向に、例えば300rpmの速度で回転させると共に、研削手段3のサーボモータ33を駆動して、研削ホイール36を矢印R2で示す方向に、例えば6000rpmの速度で回転させる。
【0018】
次いで、研削送り手段4のパルスモータ43を駆動して、研削手段3を、チャックテーブル60に保持された半導体ウエーハ10の裏面10b側、矢印R3で示す方向に向けて、比較的早い第一の送り速度(例えば10~50mm/秒)で下降させて、研削ホイール36に配設された研削砥石37を半導体ウエーハ10の裏面10b上の所定の位置まで移動させる。該所定の位置は、例えば、チャックテーブル60の保持面60aを基準として設定され、半導体ウエーハ10及び保護テープTの厚みを考慮して、半導体ウエーハ10の裏面10bから100μm上方の位置になるように設定される。半導体ウエーハ10の裏面10b上の該所定の位置に研削砥石37が達したならば、パルスモータ43の駆動速度を低下させて、第二の送り速度(例えば1.0μm/秒)として、さらに研削手段3を下降させて、研削砥石37を半導体ウエーハ10の裏面10bに第二の送り速度で接触させて、半導体ウエーハ10の研削加工を実施する。なお、半導体ウエーハ10の裏面10bの研削を実施するに際しては、図示しない被加工物の厚み検出手段を作用させて、半導体ウエーハ10の厚みを検出しながら研削加工を実施して、所望の厚みになるように研削加工を実施する。
【0019】
上記した研削加工を実施するに際しては、加工効率を考慮して、研削砥石37が半導体ウエーハ10の裏面10bから離れた位置にある場合には、研削手段3を下降させる速度はできるだけ速い速度(第一の送り速度)に設定される。また、研削砥石37が半導体ウエーハ10の裏面10bに接近して所定の位置に達した後は、研削砥石37が半導体ウエーハ10に当接した際に半導体ウエーハ10が破損しないように、研削手段3を下降させる際の送り速度を第一の送り速度に対して遅い速度(第二の送り速度)に設定される。
【0020】
ここで、該所定の位置が半導体ウエーハ10の裏面10bに近すぎると、研削手段3の送り速度を第一の送り速度から減速して第二の送り速度とする際に、その慣性力による各部材の撓みに起因して研削ホイール36に配設された研削砥石37が半導体ウエーハ10の裏面10bに当接して、半導体ウエーハ10を損傷させるおそれがあることから、該所定の位置はそのような問題が起きない安全な位置に設定される。しかし、該所定の位置を上方に設定しすぎると、第二の送り速度に送り速度を低下させてから、実際に研削砥石37が半導体ウエーハ10の裏面10bに当接して研削加工が開始されるまでに時間がかかり、加工効率が低下する。また、研削加工を繰り返し実施することにより、研削手段3の研削砥石37の研削面(下端面)が摩耗することから、研削手段3のZ軸方向の位置を図示しない検出手段によって検出していたとしても、研削砥石37とチャックテーブル60の保持面60aとの位置関係、すなわち、研削砥石37の下端面と半導体ウエーハ10の裏面10bとの位置関係は次第に変化する。よって、上記したように半導体ウエーハ60を損傷させることなく、且つ適切な加工効率を確保すべく、研削手段3の送り速度を変化させる位置を適切に管理するためには、チャックテーブル60の保持面60aと研削砥石37との距離を適切に管理することが必要である。
【0021】
そこで、本実施形態においては、
図3に示す隙間ゲージ50を使用して、半導体ウエーハ10を保持するチャックテーブル60の保持面60aと、研削手段3の研削砥石37との隙間を定期的に計測して、研削送り手段4によって研削手段3の移動を制御する際の基準位置(原点)を記憶する作業を実施する。
【0022】
図3(a)を参照しながら、本実施形態の隙間ゲージ50について説明する。なお、
図3(a)に示す隙間ゲージ50は、隙間ゲージとして使用される前の新品状態を示している。隙間ゲージ50は、金属製(例えばステンレススチール)のブロックであり、後述する設定厚みに精密に加工された例えば3つの領域、第一の領域51、第二の領域52、第三の領域53から構成されている。第一の領域51は、上面51aと、底面51bと、側面58aとを備え、側面58aには、第一の領域51の設定厚みを示す数値(5.05[mm])が印字されている。第二の領域52は、上面52aと、底面52bと、側面58bとを備え、側面58bには、第二の領域52の設定厚みを示す数値(5.02[mm])が印字されている。さらに、第三の領域53は、上面53aと、底面53bと、側面58cとを備え、側面58cには、第三の領域53の設定厚みを示す数値(5.00[mm])が印字されている。第一の領域51の上面51aと第二の領域52の上面52aとの間には、第一の領域51と第二の領域52とを区分するくびれ部57aが形成され、第二の領域52の上面52aと第三の領域53の上面53aとの間には、第二の領域52と第三の領域53とを区分するくびれ部57bが形成されている。各領域の底面51b~53bは同一平面内で形成され、底面51b~53bに対して上面51a、上面52a、上面53aの高さがぞれぞれ異なるように形成されている。なお、本実施形態の隙間ゲージ50はステンレススチールで形成されるが、例えば、真鍮で形成されてもよく、特に材質には限定されない。
【0023】
さらに、隙間ゲージ50の第一の領域51の上面51aには、隙間ゲージ50の使用寿命を示す凹みとして機能する溝54が形成されている。同様に、第二の領域52の上面52a、第三の領域53の上面53aにも、使用寿命を示す凹みとして機能する溝55、溝56が形成されている。各溝は、例えば、ダイシング装置を使用して、円盤状のダイシングブレードを使用して形成される。本実施形態の溝54~溝56の深さは、いずれも、5μmに設定されている。各溝の深さは、各領域の設定厚みに対して誤差として許容される許容値に基づいて設定され、例えば、3μm~10μmの範囲、又は各領域の設定厚みに対して0.1~0.2%の範囲で設定されることが好ましい。
【0024】
図1、
図3、及び
図4を参照しながら、本実施形態の隙間ゲージ50を使用して研削手段3の基準位置を学習して記憶する手順について説明する。チャックテーブル60の保持面60aに半導体ウエーハ10を載置して裏面10bを研削する前に、研削送り手段4を作動して、
図4(a)に示すように、研削手段3を矢印R3で示す方向に下降させる。この際、研削手段3を下降させる際の目標位置は、研削砥石37の下面と、チャックテーブル60の保持面60aとの間隔が5.00mmとなる位置であり、図示しない検出手段によって研削手段3のZ軸方向(上下方向)の位置を検出しながら下降させる。
【0025】
上記したように、研削手段3を下降させたならば、チャックテーブル60の保持面60a上に、隙間ゲージ50の底面51b~53b側を載置して、チャックテーブル60の保持面60aと研削砥石37との隙間に対して隙間ゲージ50をゆっくりと挿入する。この際、隙間ゲージ50を構成す領域のうち、最も厚みが小さい第三の領域53側から該隙間に挿入する。ここで、研削送り手段4の調整誤差や、研削砥石37の摩耗等により、チャックテーブル60の保持面60aと研削砥石37との隙間が5.00mmでない場合がある。例えば、該間隔が5.00mmよりも小さい場合は、第三の領域53は該隙間に入らない。その場合は、オペレータの指示によって、研削送り手段4を作動して、研削手段3を僅かに上昇させる。その上昇量はオペレータによって適宜設定されるが、例えば0.05mm(50μm)である。
【0026】
研削手段3を0.05mm上昇させたならば、再び該隙間に隙間ゲージ50を挿入する。そして、例えば、第三の領域53のみならず、第二の領域52も挿入され、且つ第一の領域51が入らなかった場合は、該隙間が5.02mm~5.04mmであると見込まれるため、オペレータの指示により研削送り手段4を作動して、研削手段3を、例えば、0.03mm低下させて、再度、隙間ゲージ50を該隙間に挿入する。ここで、隙間ゲージ50の第三の領域53の上面53aが、研削砥石37と擦れるように当接しながら該隙間に挿入され、且つ第二の領域52が挿入されない状態となった場合、研削手段3の研削砥石37と、チャックテーブル60の保持面60aとの隙間がちょうど5.00mmになったことが計測される。このとき該検出手段によって検出される研削手段3の位置を、チャックテーブル60の保持面60aと研削砥石37との距離が5.00mmである基準位置として、上記した制御手段に記憶する。そして、半導体ウエーハ10に対して研削加工を実施する際には、この基準位置に基づいて、研削送り手段4を作動する。これにより、第一の送り速度から第二の送り速度に変化させる際の所定の位置が適切に管理され、研削手段3を適切に移動させることが可能になる。
【0027】
また、研削砥石37の摩耗が進行した場合、研削砥石37が摩耗する前に計測して記憶した基準位置に基づいて研削送り手段4を作動して、研削砥石37の下面と、チャックテーブル60の保持面60aとの間隔が5.00mmとなるように制御しても、研削砥石37の下面と、チャックテーブル60の保持面60aとの間隔が5.05mmより大きくなる場合がある。その場合は、チャックテーブル60の保持面60aと研削砥石37との隙間に対して隙間ゲージ50を挿入した場合、第三の領域53、第二の領域52、第一の領域51のすべてが該隙間に入り込んでしまうことから、オペレータの指示により、研削送り手段4を作動して、研削手段3を少しずつ下降させて、隙間ゲージ50を使用して、チャックテーブル60の保持面60aと研削砥石37との間隔を5.00mmになるように調整して、その際の研削手段3の位置を基準位置として学習して、該制御手段に記憶する。なお、チャックテーブル60の保持面60aと研削砥石37との間隔を5.00mm以外の間隔に調整する場合は、第二の領域52、第三の領域53を基準とするか、その他の設定厚みで構成された別の隙間ゲージを使用する。
【0028】
ところで、上記したように隙間ゲージ50を繰り返し使用すると、隙間ゲージ50の各領域の上面51a~53aが、研削砥石37と当接して擦れることにより摩耗する。このように摩耗した隙間ゲージ50’を
図3(b)に示す。摩耗が進行して、各領域の設定厚みに対して実際の厚みが減少すると、新品状態の隙間ゲージ50の各領域の上面51a~53aに、深さ5μmで形成されていた溝54~溝56が、図に示すように、浅い溝54’、溝55’、溝56’となる。特に、摩耗量が5μmに達すると、
図3(b)の第二の領域52の溝55’のように、その溝の一部が消滅した状態となる。このような溝の変化(消滅)は、オペレータの目視によって確認することができ、第二の領域52の上面52aの摩耗が、隙間ゲージ50によって計測できる隙間寸法の誤差の許容値を超える5μm進行し、隙間ゲージとしての寿命に達したことが容易に把握される。そして、このような隙間ゲージ50は、研削手段3の基準位置を精密に計測するための隙間ゲージとしては不適格であり、使用が禁じられる。
【0029】
本実施形態の隙間ゲージ50によれば、所定の厚みを計測できる許容値を超えて摩耗した場合に、隙間ゲージとしての寿命が来たことを容易に知ることができ、オペレータが気付かないまま正確な隙間が計測できなくなるという問題が解消する。また本実施形態においては、各第一の領域51~53の側面に厚みが印字されており、隙間ゲージ50によって計測している隙間の寸法が容易に把握される。また、本実施形態の隙間ゲージ50には、厚みの異なる複数の領域が形成されており、異なる隙間寸法を計測することが可能である。
【0030】
本発明は、上記した実施形態に限定されない。上記した実施形態の隙間ゲージ50は、厚みの異なる3つの領域が形成されていたが、本発明はこれに限定されず、1つの領域で形成されていてもよいし、2つ、さらには、4つ以上の領域で構成されていてもよい。
【0031】
また、上記した実施形態では、隙間ゲージ50の使用寿命を示す凹みとして、研削砥石37とチャックテーブル60の保持面60aとの隙間に挿入する方向に沿うように溝54~56を形成したが、本発明はこれに限定されない。例えば、
図5(a)に示す第一の変形例の隙間ゲージ50Aのように、上面51a~53aに対して、研削砥石37とチャックテーブル60の保持面60aとの隙間に挿入する方向(図中矢印R4で示す)に対して直角をなす方向に溝54A~56Aを形成してもよく、また、
図5(b)に示す第二の変形例の隙間ゲージ50Bのように、研削砥石37とチャックテーブル60の保持面60aとの隙間に挿入する方向R4に対して斜めとなる方向に溝54B~56Bを形成してもよい。さらに、使用寿命を示す凹みとしては、上記した溝形状に限定されず、例えば、
図5(c)に示す第三の変形例のように、上面51a~53aに対して、ドリル加工等によりくぼみ54C~56Cを形成してもよい。このような各領域に形成されるくぼみ54C~56Cの数は任意であり、一つ、又は3つ以上であってもよい。上記した第一~第三の変形例に示された溝54A~56A、溝54B~56B、くぼみ54C~56Cによっても、その深さを適切に設定(例えば5μm~10μm)することにより、オペレータは、各隙間ゲージの上面51a~53aが摩耗して隙間ゲージとしての使用寿命に達したことを容易に把握することができる。
【符号の説明】
【0032】
1:研削装置
2:基台
3:研削手段
30:スピンドルユニット
32:回転軸
33:サーボモータ
36:研削ホイール
37:研削砥石
4:研削送り手段
41:移動基台
41a保持ブロック
43:パルスモータ
6:チャックテーブル機構
60:チャックテーブル
10:半導体ウエーハ
10a:表面
10b:裏面
12:デバイス
14:分割予定ライン
50:隙間ゲージ
50A:隙間ゲージ(第一の変形例)
50B:隙間ゲージ(第二の変形例)
50C:隙間ゲージ(第三の変形例)
51:第一の領域
51a、52a、53a:上面
51b、52b、53b:底面
52:第二の領域
53:第三の領域
54、55、56:溝
54A、55A、56A:溝
54B、55B、56B:溝
54C、55C、56C:くぼみ
58a、58b、58c:側面
T:保護テープ