(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-31
(45)【発行日】2024-06-10
(54)【発明の名称】超音波切削装置
(51)【国際特許分類】
B28D 1/24 20060101AFI20240603BHJP
B06B 1/06 20060101ALI20240603BHJP
B24B 1/04 20060101ALI20240603BHJP
B26F 3/00 20060101ALI20240603BHJP
B28D 5/02 20060101ALI20240603BHJP
B23D 19/00 20060101ALI20240603BHJP
B23B 1/00 20060101ALN20240603BHJP
【FI】
B28D1/24
B06B1/06 Z
B24B1/04 C
B26F3/00 E
B28D5/02 Z
B23D19/00 Z
B23B1/00 A
(21)【出願番号】P 2020122430
(22)【出願日】2020-06-23
【審査請求日】2022-09-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000000239
【氏名又は名称】株式会社荏原製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100118500
【氏名又は名称】廣澤 哲也
(74)【代理人】
【氏名又は名称】渡邉 勇
(74)【代理人】
【識別番号】100174089
【氏名又は名称】郷戸 学
(74)【代理人】
【識別番号】100186749
【氏名又は名称】金沢 充博
(72)【発明者】
【氏名】大西 一正
【審査官】後藤 泰輔
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-080847(JP,A)
【文献】特開2010-171067(JP,A)
【文献】特開2004-351912(JP,A)
【文献】特開2018-192467(JP,A)
【文献】国際公開第2019/240268(WO,A1)
【文献】特開2000-210928(JP,A)
【文献】特開2017-042856(JP,A)
【文献】伊藤 勝彦,森 栄司,振動方向変換体の研究,日本音響学会誌,日本,日本音響学会,1973年05月01日,29巻5号,p.307-314
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B28D 1/24
B06B 1/06
B24B 1/04
B26F 3/00
B28D 5/02
B23D 19/00
B23B 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
超音波加工装置の回転軸に装着された切削具とランジュバン型超音波振動子を備え、前記切削具より先端側に前記ランジュバン型超音波振動子を位置させ、前記切削具と前記ランジュバン型超音波振動子のフロントマスは一体
化された一体構造物であり、前記ランジュバン型超音波振動子の圧電素子は、前記フロントマスより先端側に位置していることを特徴とする超音波加工装置。
【請求項2】
前記回転軸にオネジを設け、前記切削具と前記ランジュバン型超音波振動子を締付けることを特徴とする請求項1に記載の超音波加工装置。
【請求項3】
前記回転軸にメネジを設け、前記メネジに棒ネジを挿入して、前記切削具そして前記ランジュバン型超音波振動子を締付けることを特徴とする請求項1に記載の超音波加工装置。
【請求項4】
前記ランジュバン型超音波振動子の縦振動により前記切削具の径方向の振動を励起することを特徴とする請求項1に記載の超音波加工装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超音波振動を切削具に励起する構成とその駆動方法、支持方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、ガラス、シリコン、シリコンナイトライド、アルミナ-TiC(炭化チタン含有アルミナ)、希土類磁石材料、あるいは超硬金属に代表される硬く且つ脆い材料から形成された加工対象物を切削するため、円盤状の切削具を備えた切削装置が広く用いられている。この切削装置においては、円盤状の切削具をフランジのより挟み、そして回転させながら、その外周縁部の刃先を加工対象物に接触させることにより加工対象物の切削(例、切断あるいは溝入れ)が行われる。
【0003】
本発明者が発明した特許文献1には、円盤状の切削具(切断具)とその表面に固定された円環状の超音波振動子からなる円盤状の切削具(円盤状具)を備えた切削装置が開示されている。この切削装置においては、円盤状の切削工具を切削具と共に回転させながら、超音波振動子にて発生した超音波振動を切断具に付与し、この超音波振動が付与された切断具の外周縁部の刃先を加工対象物に接触させることにより加工対象物の切削が行なわれる。そして、同文献の切削工具は、その切削具に超音波振動を付与することにより、加工対象物を高速で、かつ高い精度で切削することができると記載されている。
【0004】
しかし切削具が拡縮振動するモードにおいては、切削具には振動の節がないため、切削具のどこを支持しても振動が大幅に減衰してしまう。そこで本発明者は特許文献2に示す切削具を考案した。その切削具は、支持位置より外側にスリットによる超音波反射部を備える。さらにスリットより外周部に圧電素子を接合する。そして、圧電素子に切削具が拡縮振動するモードの固有振動数の付近の電圧を印加することにより切削具に拡縮振動を励起することができる。
【0005】
しかし、切削具の支持位置より外側に設けたスリットが存在するため、切削具が高速回転すると、遠心力によりスリットが原因で切削具が破損する虞がある。また、切削具の質量が大きくなると遠心力が大きくなりスリットが原因で切削具が破損する虞がある。さらに切削具の半径が大きくなると遠心力が大きくなりスリットが原因で切削具が破損する虞がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特許 第4620370号
【文献】特開 2000-210928
【非特許文献】
【0007】
【文献】伊藤勝彦ほか、「振動方向変換体の研究」、日本音響学会誌、29巻5号p307~P314
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従って本発明の目的は、切削具に大きな機械的負荷が与えられても、破壊の恐れがない超音波振動を切削具に励起する構成、駆動方法そして支持方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、超音波加工装置の回転軸に切削具とランジュバン型超音波振動子を装着する際に切削具より先端側にランジュバン型超音波振動子を位置させるものである。
【0010】
本発明はまた、回転軸にオネジを設け切削具とランジュバン型超音波振動子を締付けるものである。
【0011】
本発明はまた、切削具とランジュバン型超音波振動子のフロントマスを一体で構成するものである。
【0012】
本発明はまた、棒状のオネジとランジュバン型超音波振動子のフロントマスを一体で構成するものである。
【0013】
本発明はまた、回転軸にメネジを設け、前記メネジにオネジを挿入して、切削具そしてランジュバン型超音波振動子を締付けるものである。
【0014】
本発明はまた、ランジュバン型超音波振動子の縦振動により切削具の径方向の振動を励起するものである。
【発明の効果】
【0015】
圧電素子を接合した切削具にスリットを設けることなく、切削具に拡縮する超音波振動を励起することができるため、切削具に大きな機械的負荷が加わる高速回転する、質量の大きい、そして切削具の半径の大きい切削具においても超音波加工ができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の回転軸に切削具とランジュバン型超音波振動子を装着した断面図である。
【
図2】
図1の振動モードを、矢印を用いて説明する図である。
【
図3】フロントマスと切削具を一体で構成した図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明に関わる第1の構成の超音波加工装置1に用いる回転軸8と切削具7及び超音波振動発生部であるランジュバン型超音波振動子2の断面を示す
図1を用いて説明する。
超音波加工装置1の回転軸8の先端にメネジを設ける。一方、6角穴を持つ棒ネジ6とフロントマス3を一体の金属で作製する。
【0018】
一体で製作したフロントマス3を持つ棒ネジ6に圧電素子4aを入れ、図示しないリン青銅板を入れ、圧電素子4bを入れ、リン青銅板を入れて棒ネジ6の6角穴に6角レンチを入れて、リアマス5の切欠きにスパナを掛けて締付け、棒ネジ6を持つランジュバン型超音波振動子2を作成する。
【0019】
作成した棒ネジ6を持つランジュバン型超音波振動子2の先端に切削具7を挿入して、回転軸8のメネジ穴にねじ込み、リアマス5の切欠きにスパナを掛けてねじ込む。
【0020】
ランジュバン型超音波振動子2の圧電素子4a、4bに
図2に示す矢印で示す縦振動を励起する周波数の電圧を印加する。ここで、棒ネジ6の中の黒丸と回転軸8の中の黒丸が縦振動の節である。
【0021】
円板状の切削具7の拡縮振動の固有振動数がランジュバン型超音波振動子2に印加した電圧の周波数とほぼ同じであると、切削具7に矢印で示す拡縮振動が発生する。ここで円板状の切削具の拡縮振動の節は棒ネジの中の黒丸であり、縦振動の節と同じである。
【0022】
上記の縦振動を径方向の振動に変換する研究は、非特許文献1に詳しく解説されている。また、縦振動を径方向の振動に変換する切削方法及び切削装置は特許文献2に詳しく記述してある。
【0023】
本発明の第1の構成の発明によれば、剛性の大きい切削具7の拡縮振動を励起することができる。そして、ランジュバン型超音波振動子2を超音波振動の駆動源とすることで切削具7に大きな振動を励起することができる。
【0024】
ここで、切削具7に超音波振動を励起する手段について詳しく説明する。
目的とするランジュバン振動子の縦振動モードの固有振動数付近の周波数の電圧を図示しない超音波発振回路19、ロータリートランスなどを経由してリード線9a、9bを通して圧電素子4a、4bに印加する。ランジュバン振動子2の縦振動モードは、非特許文献1に記載されている振動方向変換作用により、切削具7に径方向の拡縮振動を励起する。切削具7は、ランジュバン型超音波振動子2と回転軸8とで強く締付けられているため剛性の大きい切削具7の支持ができる。
【0025】
本発明に関わる第2の構成の超音波加工装置1に用いる回転軸8と円板状の切削具7及び超音波振動発生部であるランジュバン型超音波振動子2の断面を示す
図3を用いて説明する。
【0026】
超音波加工装置1の回転軸8の先端にメネジを設ける。そして、前記の回転軸8のメネジに6角穴を持つ棒ネジ6を締付ける。
【0027】
棒ネジ6に円板状の切削具7とフロントマス3を一体で製作した構成を挿入する。次に圧電素子4a、図示しないリン青銅板、圧電素子4b、図示しないリン青銅板の順序で挿入し、リアマス5を締付け、円板状の切削具7を回転軸8に接続する。
【0028】
フロントマス3と円板状の切削具7を一体化することで、ランジュバン型超音波振動子2の縦振動を円板状の切削具7の拡縮振動に効率高く変換することができる。フロントマス3と円板状の切削具7が接触しているだけであると接触面で振動ロスが大きくなる。
【0029】
本発明に関わる第3の構成の超音波加工装置1に用いる回転軸8と円板状の切削具7及び超音波発生部であるランジュバン型超音波振動子2の断面を示す
図4を用いて説明する。
【0030】
まず、金属製の回転軸8と棒ネジ6を一体で製作する。そして、棒ネジ6に一体で製作したフロントマス3と円板状の切削具7を挿入し、次に圧電素子4a、図示しないリン青銅板、圧電素子4b、図示しないリン青銅板の順序で挿入し、リアマス5を締付け、円板状の切削具7を回転軸8に接続する。
【0031】
棒ネジ6と回転軸8を一体化することで、ランジュバン型超音波振動子2の縦振動を回転軸に効率高く伝達することができる。円板状の切削具7の両側に縦振動がより等しくなるため、円板状の切削具7の平面に平行な中心面に対して対称である拡縮振動を励起できる。
【0032】
以上の説明では、金属製の円板状の切削具7としていたが、金属製の円板の外周に砥石などを装着にも使用できる。また円盤状の各種工具にも応用可能である。
【産業上の利用可能性】
【0033】
本発明の切削具とその駆動方法により切削具に大きな負荷が加わる場合にも切削具の破損の虞がない効率の高い超音波振動を励起することができるので様々な超音波切削装置に用いることができる。
【符号の説明】
【0034】
1 超音波加工装置
2 ランジュバン型超音波振動子
3 フロントマス
4 圧電素子
5 リアマス
6 棒ネジ
7 切削具
8 回転軸
9 リード線