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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-03
(45)【発行日】2024-06-11
(54)【発明の名称】光変調デバイスおよび自動車
(51)【国際特許分類】
   G02F 1/13 20060101AFI20240604BHJP
   G02F 1/13363 20060101ALI20240604BHJP
   G02F 1/1337 20060101ALI20240604BHJP
   B60J 3/04 20060101ALI20240604BHJP
【FI】
G02F1/13 505
G02F1/13363
G02F1/1337
B60J3/04
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2023500111
(86)(22)【出願日】2021-07-22
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-08-02
(86)【国際出願番号】 KR2021009498
(87)【国際公開番号】W WO2022019683
(87)【国際公開日】2022-01-27
【審査請求日】2023-01-05
(31)【優先権主張番号】10-2020-0092400
(32)【優先日】2020-07-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】500239823
【氏名又は名称】エルジー・ケム・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】弁理士法人RYUKA国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ギム、ミン ジュン
(72)【発明者】
【氏名】オー、ドン ヒュン
(72)【発明者】
【氏名】ユー、ジュン スン
(72)【発明者】
【氏名】キム、ジン ホン
(72)【発明者】
【氏名】キム、ジュン ウーン
【審査官】植田 裕美子
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-198750(JP,A)
【文献】特開2018-049260(JP,A)
【文献】特表2018-507443(JP,A)
【文献】特表2020-518013(JP,A)
【文献】特開2020-052276(JP,A)
【文献】特開2019-070780(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02F 1/13
G02F 1/1333
G02F 1/13363
G02F 1/1337
B60J 3/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車のサンルーフに含まれる光変調デバイスであって、
それぞれ第1表面を有し、相互の第1表面が対向配置されている第1異方性基板および第2異方性基板と、前記第1異方性基板および前記第2異方性基板の第1表面の間に配置される液晶層と、を含む光変調フィルム層を含み、
前記第1異方性基板または前記第2異方性基板の遅相軸は、前記自動車の幅方向と平行に配置されるように形成されており、
前記光変調デバイスには、前記サンルーフに装着可能な締結手段または締結部位が存在するか、または前記光変調デバイスが前記サンルーフと同じ形状を有し、
前記締結手段または締結部位によって、または前記形状に応じて前記光変調デバイスを前記サンルーフに装着する場合に、前記第1異方性基板または前記第2異方性基板の遅相軸が前記自動車の幅方向と平行に配置されるように、前記締結手段、締結部位または形状が形成されている光変調デバイス。
【請求項2】
自動車の前面、後方または側面ガラスに含まれている光変調デバイスであって、
それぞれ第1表面を有し、相互の第1表面が対向配置されている第1異方性基板および第2異方性基板と、前記第1異方性基板および前記第2異方性基板の第1表面の間に配置される液晶層と、を含む光変調フィルム層を含み、
前記第1異方性基板または前記第2異方性基板の遅相軸が前記自動車の長さ方向と平行に配置されるように形成されており、
前記光変調デバイスには、前記自動車の前面、後方または側面ガラスに装着可能な締結手段または締結部位が存在するか、または前記光変調デバイスが前記前面、後方または側面ガラスと同じ形状を有し、
前記締結手段または締結部位によって、または前記形状に応じて前記光変調デバイスを前記自動車の前面、後方または側面ガラスに装着する場合に、前記第1異方性基板または前記第2異方性基板の遅相軸が前記自動車の長さ方向と平行に配置されるように、前記締結手段、締結部位または形状が形成されている光変調デバイス。
【請求項3】
第1異方性基板および第2異方性基板の遅相軸が互いに平行である、請求項1又は2に記載の光変調デバイス。
【請求項4】
第1異方性基板および第2異方性基板は、それぞれ面内位相差が400nm以上である、請求項1からのいずれか一項に記載の光変調デバイス。
【請求項5】
第1異方性基板の第1表面と第2異方性基板の第1表面にそれぞれ液晶配向膜が存在する、請求項1からのいずれか一項に記載の光変調デバイス。
【請求項6】
第1異方性基板の第1表面には粘着剤層または接着剤層が存在し、第2異方性基板の第1表面には液晶配向膜が存在する、請求項1からのいずれか一項に記載の光変調デバイス。
【請求項7】
光変調フィルム層の一側にのみ配置された偏光層をさらに含み、液晶層は、液晶化合物と二色性染料を含む、請求項1からのいずれか一項に記載の光変調デバイス。
【請求項8】
偏光層の吸収軸と第1異方性基板または第2異方性基板の遅相軸は、互いに垂直または水平である、請求項に記載の光変調デバイス。
【請求項9】
光変調フィルム層の両側に配置された偏光層をさらに含み、液晶層は、液晶化合物とキラルドーパントを含む、請求項1からのいずれか一項に記載の光変調デバイス。
【請求項10】
偏光層の吸収軸と第1異方性基板または第2異方性基板の遅相軸は、互いに垂直または水平である、請求項に記載の光変調デバイス。
【請求項11】
光変調デバイスがサンルーフに含まれている自動車であって、
前記光変調デバイスは、光変調フィルム層を含み、
前記光変調フィルム層は、それぞれ第1表面を有し、相互の第1表面が対向配置されている第1異方性基板および第2異方性基板と、前記第1異方性基板および前記第2異方性基板の第1表面の間に配置される液晶層と、を含み、
前記第1異方性基板または前記第2異方性基板の遅相軸が自動車の幅方向と平行に配置されており、
前記光変調デバイスには、前記サンルーフに装着可能な締結手段または締結部位が存在するか、または前記光変調デバイスが前記サンルーフと同じ形状を有し、
前記締結手段または締結部位によって、または前記形状に応じて前記光変調デバイスを前記サンルーフに装着する場合に、前記第1異方性基板または前記第2異方性基板の遅相軸が前記自動車の幅方向と平行に配置されるように、前記締結手段、締結部位または形状が形成されている自動車。
【請求項12】
光変調デバイスが前面、後方または側面ガラスに含まれている自動車であって、
前記光変調デバイスは、光変調フィルム層を含み、
前記光変調フィルム層は、それぞれ第1表面を有し、相互の第1表面が対向配置されている第1異方性基板および第2異方性基板と、前記第1異方性基板および前記第2異方性基板の第1表面の間に配置される液晶層と、を含み、
前記第1異方性基板または前記第2異方性基板の遅相軸が自動車の長さ方向と平行に配置されており、
前記光変調デバイスには、前記自動車の前面、後方または側面ガラスに装着可能な締結手段または締結部位が存在するか、または前記光変調デバイスが前記前面、後方または側面ガラスと同じ形状を有し、
前記締結手段または締結部位によって、または前記形状に応じて前記光変調デバイスを前記自動車の前面、後方または側面ガラスに装着する場合に、前記第1異方性基板または前記第2異方性基板の遅相軸が前記自動車の長さ方向と平行に配置されるように、前記締結手段、締結部位または形状が形成されている自動車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2020年7月24日付で提出された韓国特許出願第10-2020-0092400号に基づいて優先権を主張し、当該韓国特許出願の文献に開示された内容は本明細書の一部として含まれる。
【0002】
本出願は、光変調デバイスおよび自動車に関する。前記光変調デバイスは、自動車のサンルーフまたはガラスに含まれ得る。
【背景技術】
【0003】
太陽光の照射量が多い季節や、熱帯地域など太陽光の照射量が多い地域では、自動車に装着されたサンルーフやガラスなどを通して多量の太陽光が車両に入ってくる。このような太陽光は、車両の温度上昇などを誘発する。
【0004】
これによって、太陽光の照射量が多い時期には、サンルーフやガラスに太陽光の遮断できる手段を物理的に設置する場合がある。
【0005】
しかしながら、前記のような光変調デバイスを適用する場合に、車両に搭乗した人の視野角によって光透過度の不均一が起こり、これによって、観測方向によって黒い線などの不均一が発生する問題がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本出願は、光変調デバイスおよび自動車に関する。具体的には、自動車のサンルーフ、前面または後方ガラスまたは側面ガラスに使用されたり、前記サンルーフ、前面または後方ガラスまたは側面ガラスに含まれる光変調デバイスまたは前記光変調デバイスを前記サンルーフ、前面または後方ガラスまたは側面ガラスに含む自動車であり、前記自動車に適用されて、自動車の搭乗者の視野と関係なく、均一な透過率の具現が可能に設計された光変調デバイスおよびそれを含む自動車を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本明細書において角度を定義する用語のうち垂直、平行、直交または水平などは、目的効果を損傷させない範囲での実質的な垂直、平行、直交または水平を意味し、前記垂直、平行、直交または水平の範囲は、製造誤差(error)または偏差(variation)などの誤差を含むものである。例えば、前記それぞれの場合は、約±15度以内の誤差、約±14度以内の誤差、約±13度以内の誤差、約±12度以内の誤差、約±11度以内の誤差、約±10度以内の誤差、約±9度以内の誤差、約±8度以内の誤差、約±7度以内の誤差、約±6度以内の誤差、約±5度以内の誤差、約±4度以内の誤差、約±3度以内の誤差、約±2度以内の誤差、約±1度以内の誤差または約±0.5度以内の誤差を含んでもよい。
【0008】
本明細書において言及する物性のうち測定温度が当該物性に影響を及ぼす場合に、特に別に規定しない限り、前記物性は、常温で測定した物性である。
【0009】
本明細書において用語「常温」は、特に加温または減温されない状態での温度であり、約10℃~30℃の範囲内のいずれか一つの温度、例えば、約15℃以上、18℃以上、20℃以上または約23℃以上であり、かつ、約27℃以下の温度を意味し得る。また、特に別に規定しない限り、本明細書において言及する温度の単位は、℃である。
【0010】
本明細書において言及する位相差および屈折率は、特に別に規定しない限り、波長約550nmの光に対する屈折率を意味する。
【0011】
特に別に規定しない限り、本明細書において言及するいずれか二つの方向が成す角度は、前記二つの方向が成す鋭角または鈍角のうち鋭角であるか、または時計回りにおよび反時計回りに測定された角度のうち小さい角度でありうる。したがって、特に別に規定しない限り、本明細書において言及する角度は、正数である。ただし、場合によって、時計回りにまたは反時計回りに測定された角度間の測定方向を表示するために、前記時計回りに測定された角度および反時計回りに測定された角度のうちいずれか一つの角度を正数で表記して、他の一つの角度を負数で表記することもできる。
【0012】
本出願は、自動車のサンルーフまたはガラスに適用されたり、前記サンルーフまたはガラスに含まれる光変調デバイスに関する。本出願は、また、光変調デバイスをサンルーフまたはガラスに含む自動車に関する。
【0013】
前記でガラスは、図1に示されたように、車両の前面ガラス100、側面ガラス200または後面ガラス300でありうる。前記サンルーフまたはガラスは、全体的に前記光変調デバイスで構成されたり、あるいは、少なくとも一部が前記光変調デバイスで構成されてもよい。
【0014】
本明細書において用語「光変調デバイス」は、少なくとも二つ以上の異なる光の状態の間をスイッチングできるデバイスを意味し得る。前記で異なる光の状態は、少なくとも透過率、色および/またはヘイズが異なる状態を意味し得る。
【0015】
光変調デバイスが具現できる状態の例としては、透過、遮断、高反射、低反射および/または特定色を示す色モード状態などがあるが、これらに限定されるものではない。
【0016】
一例として、前記光変調デバイスは、少なくとも前記透過および遮断モード状態の間をスイッチングできるデバイスであるか、あるいは、前記高反射および低反射モード状態の間をスイッチングできるデバイスでありうる。
【0017】
前記透過モード状態での光変調デバイスの透過率が少なくとも20%以上、25%以上、30%以上、35%以上、40%以上、45%以上、50%以上、55%以上、60%以上、65%以上、70%以上、75%以上または80%以上程度でありうる。
【0018】
前記遮断モード状態で光変調デバイスの透過率は、60%以下、55%以下、50%以下、45%以下、40%以下、35%以下、30%以下、25%以下、20%以下、15%以下、10%以下、5%以下、1%以下または0.5%以下でありうる。
【0019】
透過モードでは透過率が高いほど有利であり、遮断モードでは透過率が低いほど有利であるから、前記透過モード状態の透過率の上限と遮断モード状態の透過率の下限は、特に限定されず、一例として、前記透過モード状態での透過率の上限は、約100%であり、遮断モード状態での透過率の下限は、約0%でありうる。
【0020】
一例として、前記透過モード状態と遮断モード状態の間をスイッチングできる光変調デバイスにおいて前記透過モード状態での透過率と遮断モード状態での透過率の差(透過モード-遮断モード)は、15%以上、20%以上、25%以上、30%以上、35%以上または40%以上であるか、90%以下、85%以下、80%以下、75%以下、70%以下、65%以下、60%以下、55%以下、50%以下または45%以下でありうる。
【0021】
前記透過率は、直進光透過率でありうる。直進光透過率は、前記デバイスに入射した光に対する前記入射方向と同一方向に透過した光の比率の百分率である。例えば、前記デバイスがフィルムまたはシート形態であれば、前記フィルムまたはシート表面の法線方向に並んでいる方向の入射光のうち前記法線方向に並んでいる方向に前記デバイスを透過した光の百分率を前記透過率と定義できる。
【0022】
前記透過率は、可視光領域、例えば、約400~700nmまたは約380~780nmの範囲内のいずれか一つの波長に対する透過率であるか、前記可視光領域全体に対する透過率であるか、前記可視光領域全体に対する透過率のうち最大または最小透過率であるか、または、前記可視光領域内の透過率の平均値でありうる。
【0023】
本出願の光変調デバイスは、前記透過モード、遮断モードおよび色モード(color mode)状態から選択されたいずれか一つの状態および他の一つの状態の少なくとも二つ以上の状態の間をスイッチングできるように設計可能である。必要に応じて、前記状態の他に、他の第3の状態またはそれ以上の状態も具現されてもよい。
【0024】
前記光変調デバイスのスイッチングは、外部シグナルの印加、例えば、電圧シグナルの印加の有無によって調節できる。例えば、電圧のような外部シグナルの印加がない状態で、光変調デバイスは、前記に記述した状態のうちいずれか一つの状態を維持し、電圧が印加されると、他の状態にスイッチングされることができる。印加される電圧の強度、周波数および/または形態を変更することによって、また、モードの状態を変更したり、あるいは、前記第3の他のモード状態を具現することもできる。
【0025】
したがって、本出願の自動車は、前記光変調デバイスのスイッチングが可能な制御回路や外部シグナル印加手段などをさらに含んでもよい。このようなさらなる手段を構成する方式は、特に限定されず、公知の手段が適切に適用可能である。
【0026】
前記光変調デバイスは、対向配置された二つの基板と、前記基板の間に位置する光変調層とを備える光変調フィルム層を基本単位として含んでもよい。図2は、前記光変調フィルム層の一例を示す図である。図示のように、光変調フィルム層は、対向配置された第1基板100と第2基板200を含んでもよい。通常、前記第1基板100と第2基板200は、シルラント300により付着される。
【0027】
前記第1基板100の一つの表面(以下、第1表面という)上には、機能性層1001が形成され、他の第2基板200の一つの表面(以下、第1表面という)には、液晶配向膜2001が形成され、前記対向配置された第1基板100と第2基板200の間に光変調層が位置する。光変調層が液晶層である場合に、通常、第1および第2基板100、200の両表面ともに液晶配向膜が形成される。したがって、前記第1基板100の第1表面に形成される機能性層1001も、液晶配向膜でありうる。他の例として、前記機能性層1001は、粘着剤層または接着剤層でありうる。本発明者らは、前記第1基板100の機能性層1001として、液晶配向膜でなく、好適な粘着剤層または接着剤層を形成する場合にも、車両用に適した液晶配向が達成されることを確認した。また、図示されてはいないが、光変調フィルム層の第1および第2基板のうちいずれか一つの基板には、第1および第2基板の間隔(cell gap)を維持するスペーサーが設けられ、第1基板100上に、機能性層1001として、粘着剤層または接着剤層を形成する場合に、前記スペーサーに前記粘着剤層または接着剤層1001が付着されて、第1および第2基板間の合着力を大きく改善することができる。
【0028】
本明細書において基板の第1表面は、基板の主表面とその反対側表面のうちいずれか一つの表面を意味し、第2表面は、基板の主表面とその反対側表面のうち他の一つの表面を意味する。
【0029】
前記基板としては、特別な制限なしで公知の基板素材が使用できる。例えば、基板としては、等方性基板または異方性基板が使用できる。用語「等方性基板」は、屈折率が波動の偏光方向に依存しない基板を意味し、異方性基板は、屈折率が光の偏光状態によって変わる基板を意味する。基板としては、ガラス基板、結晶性または非結晶性シリコーン基板または石英基板などの無機基板やプラスチック基板などが使用できる。プラスチック基板としては、TAC(triacetyl cellulose)基板;ノルボルネン誘導体基板などのCOP(cyclo olefin copolymer)基板;PMMA(poly(methyl methacrylate)基板;PC(polycarbonate)基板;PE(polyethylene)基板;PP(polypropylene)基板;PVA(polyvinyl alcohol)基板;DAC(diacetyl cellulose)基板;Pac(Polyacrylate)基板;PES(poly ether sulfone)基板;PEEK(polyetheretherketon)基板;PPS(polyphenylsulfone)、PEI(polyetherimide)基板;PEN(polyethylenemaphthatlate)基板;PET(polyethyleneterephtalate)基板などのポリエステル基板;PI(polyimide)基板;PSF(polysulfone)基板;PAR(polyarylate)基板または非晶質フッ素樹脂などを含む基板が使用できるが、これらに限定されるものではない。このような基板の厚さは、特に限定されず、好適な範囲で選択できる。
【0030】
本出願では、前記のような基板のうち車両用に適した機械的特性、柔軟性および光学的特性の確保の観点から、異方性基板を適用でき、具体的には、異方性プラスチック基板を適用できる。このような基板は、固有の属性上、車両用光変調デバイスに適した機械的特性、柔軟性および光学的特性を提供できる。
【0031】
異方性プラスチック基板のうち一定水準以上の光学的非等方性を有する基板は、特に車両用に適した機械的特性と柔軟性を示すことができる。例えば、本出願では、前記基板として、面内位相差が少なくとも400nm以上のプラスチック基板が適用可能である。
【0032】
本明細書において面内位相差(Rin)は、下記数式1で計算された値を意味し得る。
【0033】
[数式1]
Rin=d×(nx-ny)
【0034】
数式1で、Rinは、面内位相差であり、dは、基板の厚さであり、nxは、基板の遅相軸方向の屈折率であり、nyは、基板の進相軸方向の屈折率であり、前記遅相軸方向と直交する面内方向の屈折率である。
【0035】
前記面内位相差は、他の例として、400nm以上、450nm以上、550nm以上、600nm以上、650nm以上、700nm以上、750nm以上、800nm以上、850nm以上、900nm以上、950nm以上、1000nm以上、2000nm以上、3000nm以上、4,000nm以上、5,000nm以上、6,000nm以上、7,000nm以上、8,000nm以上、9,000nm以上、10,000nm以上、11,000nm以上、12,000nm以上、13,000nm以上、14,000nm以上または15,000nm以上程度でありうる。また、前記基板それぞれの面内位相差は、約50,000nm以下、約40,000nm以下、約30,000nm以下、20,000nm以下、18,000nm以下、16,000nm以下、15,000nm以下または12,000nm以下程度でありうる。
【0036】
前記位相差を有するプラスチック基板としては、代表的にPET(poly(ethylene terephthalate))基板などのようなポリエステルフィルム基板が知られているが、本出願において適用可能な基板の種類がこれらに限定されるものではなく、前記のような面内位相差を有する限り、多様な種類の基板が全部適用可能である。また、光変調フィルム層に適用される少なくとも二つの基板が全部前記のような面内位相差を有することもできるが、少なくとも一つの基板が前記のような面内位相差を有することができる。
【0037】
前記のような異方性を有する基板は、車両用に適した機械的特性または柔軟性と光学的特性を示すが、当該基板が有する固有の光学的異方性に起因して、車両に適用されたときに、搭乗者の視野角によって光学的不均一を提供できる。しかしながら、本出願によって設計された光変調デバイスは、前記基板の長所を取りながら、当該短所を改善または解消できる。
【0038】
例えば、前記光変調デバイスが自動車のサンルーフに適用されたり、あるいは、前記サンルーフに含まれる場合に、前記第1および/または第2異方性基板の遅相軸は、前記自動車の幅方向と平行に配置されるように形成されていてもよい。この際、前記遅相軸が前記自動車の幅方向と平行に配置されるように形成されているというのは、例えば、前記光変調デバイスに前記自動車のサンルーフ位置に装着可能な締結手段または締結部位が存在する場合に、当該締結手段または締結部位を使用して前記光変調デバイスを前記サンルーフ位置に装着すると、前記基板の遅相軸が前記自動車の幅方向と平行に配置されるように前記締結手段または締結部位が存在することを意味し得る。他の例として、前記光変調デバイスの形態が前記自動車のサンルーフの形態のような形態で構成されていて、その形態によって前記光変調デバイスを自動車のサンルーフに装着すると、前記基板の遅相軸が前記自動車の幅方向と平行に配置されるように、前記光変調デバイスの形態が製造されていることを意味し得る。
【0039】
したがって、一例として、前記光変調デバイスには、前記自動車のサンルーフに装着可能な締結手段または締結部位が存在したり、前記光変調デバイスが前記サンルーフと同じ形状を有し、前記締結手段、締結部位または形状に応じて前記光変調デバイスを前記自動車のサンルーフに装着すると、第1または第2異方性基板の遅相軸が前記自動車の幅方向と平行に配置されるように、前記締結手段、締結部位または形状が決定されていてもよい。
【0040】
光変調デバイスに前記のような締結手段または締結部位を形成したり、前記形状を有するように光変調デバイスを構成する方法は、特に限定されず、公知の方式が適用可能である。
【0041】
例えば、前記光変調デバイスが自動車の全面、後方または側面ガラスに適用されたり、あるいは、前記全面、後方または側面ガラスに含まれる場合に、前記第1および/または第2異方性基板の遅相軸は、前記自動車の長さ方向と平行に配置されるように形成されていてもよい。この際、前記遅相軸が前記自動車の長さ方向と平行に配置されるように形成されているというのは、例えば、前記光変調デバイスに前記自動車の前面または後方または側面ガラス位置に装着可能な締結手段または締結部位が存在する場合に、当該締結手段または締結部位を使用して前記光変調デバイスを前記前面または後方または側面ガラス位置に装着すると、前記基板の遅相軸が前記自動車の長さ方向と平行に配置されるように、前記締結手段または締結部位が存在することを意味し得る。他の例として、前記光変調デバイスの形態が前記自動車の前面または後方または側面ガラスの形態と同じ形態で構成されていて、その形態によって前記光変調デバイスを自動車の前面または後方または側面ガラスとして装着すると、前記基板の遅相軸が前記自動車の長さ方向と平行に配置されるように、前記光変調デバイスの形態が製造されていることを意味し得る。
【0042】
したがって、一例として、前記光変調デバイスには、自動車の全面、後方または側面ガラスとして装着可能な締結手段または締結部位が存在したり、前記光変調デバイスが前記全面、後方または側面ガラスと同じ形状を有し、前記締結手段、締結部位または形状に応じて前記光変調デバイスを前記自動車の全面、後方または側面ガラスに装着すると、第1または第2異方性基板の遅相軸が前記自動車の長さ方向と平行に配置されるように、前記締結手段、締結部位または形状が決定されていてもよい。
【0043】
光変調デバイスに前記のような締結手段または締結部位を形成したり、前記形状を有するように光変調デバイスを構成する方法は、特に限定されず、公知の方式が適用可能である。
【0044】
例えば、本出願の光変調フィルム層において二つの基板(例えば、図2で第1および第2基板100、200)として全部異方性基板が適用される場合には、前記二つの基板(第1および第2基板)は、相互の光学軸が互いに平行するように配置されることが好適である。本明細書において異方性基板の光学軸は、特に別に規定しない限り、当該異方性基板の遅相軸を意味し、偏光層の光学軸は、特に別に規定しない限り、当該偏光層の吸収軸を意味し得る。偏光層の吸収軸と第1または第2の異方性基板の遅相軸は、互いに垂直または水平である。
【0045】
光変調フィルム層において前記基板の間に存在する光変調層は、外部シグナルの印加の有無によって、単独であるいは、他の構成要素と連携して、光変調デバイスの光の透過度、反射度、ヘイズおよび/または色などを変更できる機能性層である。このような光変調層は、本明細書において能動光変調層と呼ばれる。
【0046】
本明細書において外部シグナルとは、光変調層内に含まれる物質、例えば光変調物質の挙動に影響を与えることができる外部の要因、例えば外部電圧などを意味し得る。したがって、外部シグナルがない状態とは、外部電圧などの印加がない状態を意味し得る。
【0047】
本出願において光変調層の種類は、前記に記述した機能を有するものであれば、特に限定されず、公知の光変調層が適用可能である。前記光変調層は、例えば、液晶層、電気変色物質層、光変色物質層、電気泳動物質層または分散粒子配向層でありうる。
【0048】
一例において、光変調層としては、前記液晶層が適用可能である。液晶層は、液晶化合物を含む層である。本明細書において用語「液晶層」の範囲には、液晶化合物を含んでいる層が全部含まれ、例えば、後述するように、液晶化合物(液晶ホスト)と二色性染料を含むいわゆるゲストホスト層やキラルドーパントなどその他添加剤を液晶化合物と共に含む層も、本明細書において規定する液晶層の一種である。前記液晶層は、能動液晶層であってもよく、したがって、前記液晶化合物は、外部シグナルの印加の有無によって配向方向が変わるように液晶層内に存在できる。液晶化合物としては、外部シグナルの印加によってその配向方向が変更されうるものであれば、すべての種類の液晶化合物が使用できる。例をあげて、液晶化合物としては、スメクチック(smectic)液晶化合物、ネマチック(nematic)液晶化合物またはコレステリック(cholesteric)液晶化合物などが使用できる。また、外部シグナルの印加によってその配向方向が変更されうるように、液晶化合物は、例えば重合性基または架橋性基を有しない化合物でありうる。
【0049】
液晶層は、誘電率異方性が正数または負数の液晶化合物を含んでもよい。液晶の誘電率異方性の絶対値は、本出願の目的を考慮して適宜選択できる。用語「誘電率異方性△ε」は、液晶の水平誘電率ε//と垂直誘電率ε⊥の差ε//-ε⊥を意味し得る。本明細書において用語「水平誘電率ε//」は、液晶分子のディレクターと印加電圧による電場の方向が実質的に水平となるように電圧を印加した状態で前記電場の方向に沿って測定した誘電率値を意味し、垂直誘電率ε⊥は、液晶分子のディレクターと印加電圧による電場の方向が実質的に垂直となるように電圧を印加した状態で前記電場の方向に沿って測定した誘電率値を意味し得る。
【0050】
液晶層の駆動モードは、例えば、DS(Dynamic Scattering)モード、ECB(Electrically Controllable Birefringence)モード、IPS(In-Plane Switching)モード、FFS(Fringe-Field Wwitching)モード、OCB(Optially Compensated Bend)モード、VA(Vertical Alignment)モード、MVA(Multi-domain Vertical Alignment)モード、PVA(Patterned Vertical Alignment)モード、HAN(Hybrid Aligned Nematic)モード、TN(Twisted Nematic)モード、STN(Super Twisted Nematic)モードまたはR-TN(Reversed Twisted Nematic)モードなどが挙げられる。
【0051】
液晶層である光変調層は、必要な場合に、前記液晶化合物と共に光透過度可変特性を調節するという観点から、二色性染料をさらに含んでもよい。例えば、光変調デバイスが1層の偏光層を含む場合に、前記液晶層である光変調層は、前記二色性染料をさらに含んでもよい。本明細書において用語「染料」は、可視光領域、例えば、400nm~700nmの波長範囲内で少なくとも一部または全体範囲内の光を集中的に吸収および/または変形させることができる物質を意味し、用語「二色性染料」は、前記可視光領域の少なくとも一部または全体範囲で光の異方性吸収が可能な物質を意味し得る。このような染料としては、例えば、アゾ染料またはアントラキノン染料などが公知となっているが、これらに限定されるものではない。
【0052】
一例において、前記光変調層は、例えば光変調デバイスが1層の偏光層を含む場合に、液晶化合物および二色性染料を含む液晶層であり、いわゆるゲストホスト液晶層(Guest host liquid crystal cell)でありうる。用語「GHLC層」は、液晶の配列によって二色性染料が共に配列されて、二色性染料の整列方向と前記整列方向に垂直な方向に対してそれぞれ非等方性光吸収特性を示す機能性層を意味し得る。例えば、二色性染料は、光の吸収率が偏光方向によって変わる物質であり、長軸方向に偏光された光の吸収率が大きいと、p型染料と呼び、短軸方向に偏光された光の吸収率が大きいと、n型染料と呼ぶことができる。一例において、p型染料が使用される場合、染料の長軸方向に振動する偏光は吸収され、染料の短軸方向に振動する偏光は、吸収が少ないため、透過させることができる。以下、特別な言及がない限り、二色性染料は、p型染料であると仮定する。
【0053】
ゲストホスト液晶層を光変調層として含む光変調フィルム層は、能動型偏光層(Active Polarizer)として機能することができる。本明細書において用語「能動型偏光層(Active Polarizer)」は、外部シグナルの印加によって非等方性光吸収を調節できる機能性素子を意味し得る。このような能動型偏光層は、後述する受動型偏光層が外部シグナルの印加と関係なく、一定の光吸収または光反射特性を有するものと区別できる。前記ゲストホスト液晶層は、液晶および二色性染料の配列を調節することによって、前記二色性染料の配列方向に平行な方向の偏光および垂直な方向の偏光に対する非等方性光吸収を調節できる。液晶および二色性染料の配列は、磁場または電場のような外部シグナルの印加によって調節できるので、ゲストホスト液晶層は、外部シグナルの印加によって非等方性光吸収を調節できる。
【0054】
光変調層である液晶層は、液晶化合物と共にいわゆるキラルドーパント(chiral dopant)を含むこともできる。このようなキラルドーパントは、液晶化合物にらせん構造の配向を誘導できる。
【0055】
キラルドーパント(Chiral dopant)としては、ネマチック規則性のような液晶性を損傷させることなく、目的とする回転(twisting)を誘導できるものであれば、特に限定されずに使用できる。液晶分子に回転を誘導するためのキラルドーパントは、分子構造中にキラルリティ(chirality)を少なくとも含む必要がある。キラルドーパントは、例えば、一つまたは二つ以上の非対称炭素(asymmetric carbon)を有する化合物、キラルアミンまたはキラルスルホキシドなどのヘテロ原子上に非対称点(asymmetric point)を有する化合物またはクムレン(cumulene)またはビナフトール(binaphthol)などの軸不斉を有する光学活性部位(axially asymmetric,optically active site)を有する化合物が挙げられる。キラルドーパントは、例えば、分子量が1,500以下の低分子化合物でありうる。キラルドーパントとしては、市販のキラルネマチック液晶などが適用可能である。
【0056】
キラルドーパントの比率も、特に限定されないが、光変調層の厚さd(cell gap)と前記キラルドーパントの添加によって発生する液晶化合物のらせん構造のピッチpの比率d/pが0.05以上、0.1以上、0.15以上、0.2以上、0.25以上、0.3以上、0.35以上、0.4以上程度、0.45以上程度、0.5以上程度、0.55以上程度、0.6以上程度、0.65以上程度、0.7以上程度、0.75以上程度または0.8以上程度になり得る比率で前記キラルドーパントが含まれ得る。このような比率d/pは、粘着剤層または接着剤層と液晶配向膜により誘導される液晶化合物の配向と関連して適用用途に適した配向状態を導き出すことができる。また、前記比率d/pが高いほど、光変調デバイスは、より効率的に透過および遮断状態を具現でき、特に遮断状態で透過率が効果的に抑制されるデバイスが具現されてもよい。しかしながら、前記比率d/pを高めるために、キラルドーパントを過量に添加すると、配向安定性、特に温度変化による配向安定性や、高温での配向安定性が低下する問題点がある。しかしながら、本出願によって後述するように2種のキラルドーパントを適用すると、前記比率d/pを高く維持した状態でも、優れた配向安定性を確保できる。前記比率d/pは、他の例として、2以下、1.5以下、1以下、1未満、0.95以下、0.9以下または0.85以下でありうる。
【0057】
キラルドーパントが適用されたいわゆるツイストまたはコレステリック配向モードの光変調層(液晶層)のピッチpは、Wedge cellを利用した計測方法で測定でき、D.PodolskyyなどのSimple method for accurate measurements of the cholesteric pitch using a stripe-wedge Grandjean-Cano cell(Liquid Crystals,Vol.35,No.7,July 8、2008,789-791)に記載された方式で測定できる。また、キラルドーパントの含有量(重量%)は、100/(HTP(Helixcal Twisting power)×ピッチ(nm))の数式によって計算され、目的とするピッチpを考慮して適正比率で選択できる。
【0058】
光変調層に液晶化合物と共に含まれる前記のようなさらなる成分(例えば、二色性染料やキラルドーパントなど)の種類は、特に限定されず、公知の成分が使用でき、光変調層は、前記の成分の他にも、必要な公知の成分をさらに含んでもよい。
【0059】
光変調フィルム層において第1および/または第2基板の第1表面上に形成されてもよい液晶配向膜の種類も、特に限定されない。液晶配向膜としては、目的とする初期配向を考慮して公知の垂直あるいは水平配向膜やその他配向膜が適用可能である。配向膜の類型も、ラビング配向膜のような接触式配向膜や、光配向膜のような非接触式配向膜が適用可能である。
【0060】
第1基板の表面に機能性層として適用可能な粘着剤層または接着剤層の種類も、特に限定されない。例えば、当業界においていわゆるOCA(Optically Clear Adhesive)またはOCR(Opticall Clear Resin)と公知となった多様な類型の粘着剤または接着剤は、液晶配向膜と組み合わせて液晶化合物の好適な配向を誘導できるという点を確認した。前記粘着剤または接着剤としては、例えば、アクリル系、シリコーン系、エポキシ系またはウレタン系の粘着剤または接着剤が適用可能である。
【0061】
好適な粘着剤または接着剤として、シリコーン系粘着剤または接着剤が挙げられる。シリコーン系粘着剤または接着剤が有する特有の表面特性は、液晶配向膜(特に、垂直配向膜)と組み合わせて目的に適した液晶化合物の配向状態を誘導できる。
【0062】
前記シリコーン系粘着剤または接着剤は、硬化性シリコーン接着剤または粘着剤組成物(以下、単に硬化性シリコーン組成物と呼ぶ)の硬化物が使用できる。硬化性シリコーン組成物の種類は、特に限定されず、例えば加熱硬化性シリコーン組成物または紫外線硬化性シリコーン組成物が使用できる。
【0063】
一例において、前記硬化性シリコーン組成物は、付加硬化性シリコーン組成物として、(1)分子中に二つ以上のアルケニル基を含有するオルガノポリシロキサンおよび(2)分子中に二つ以上のケイ素結合水素原子を含有するオルガノポリシロキサンを含んでもよい。前記のようなシリコーン化合物は、例えば、白金触媒などの触媒の存在下で、付加反応により硬化物を形成することができる。
【0064】
前記(1)オルガノポリシロキサンは、シリコーン硬化物を構成する主成分として、1分子中に少なくとも二つのアルケニル基を含む。この際、アルケニル基の具体的な例には、ビニル基、アリル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基またはヘプテニル基などが含まれ、このうち、ビニル基が通常適用されるが、これらに限定されるものではない。前記(1)オルガノポリシロキサンにおいて、前述したアルケニル基の結合位置は、特に限定されない。例えば、前記アルケニル基は、分子鎖の末端および/または分子鎖の側鎖に結合されていてもよい。また、前記(1)オルガノポリシロキサンにおいて、前述したアルケニルの他に含まれ得る置換基の種類としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基またはヘプチル基などのアルキル基;フェニル基、トリル基、キシリル基またはナフチル基などのアリール基;ベンジル基またはフェネチル基などのアラルキル基;クロロメチル基、3-クロロプロピル基または3,3,3-トリフルオロプロピル基などのハロゲン置換アルキル基などが挙げられ、これらのうち、メチル基またはフェニル基が通常適用されるが、これらに限定されるものではない。
【0065】
前記(1)オルガノポリシロキサンの分子構造は、特に限定されず、例えば、直鎖状、分岐状、環状、網状または一部が分岐状を成す直鎖状などのように、いかなる形状でも有することができる。通常、前記のような分子構造のうち、特に直鎖状の分子構造を有するものが適用されるが、これらに限定されるものではない。
【0066】
前記(1)オルガノポリシロキサンのより具体的な例としては、分子鎖両末端トリメチルシロキサン基封鎖ジメチルシロキサン-メチルビニルシロキサン共重合体、分子鎖両末端トリメチルシロキサン基封鎖メチルビニルポリシロキサン、分子鎖両末端トリメチルシロキサン基封鎖ジメチルシロキサン-メチルビニルシロキサン-メチルフェニルシロキサン共重合体、分子鎖両末端ジメチルビニルシロキサン基封鎖ジメチルポリシロキサン、分子鎖両末端ジメチルビニルシロキサン基封鎖メチルビニルポリシロキサン、分子鎖両末端ジメチルビニルシロキサン基封鎖ジメチルシロキサン-メチルビニルシロキサン共重合体、分子鎖両末端ジメチルビニルシロキサン基封鎖ジメチルシロキサン-メチルビニルシロキサン-メチルフェニルシロキサン共重合体、R SiO2/2で表されるシロキサン単位とR SiO1/2で表されるシロキサン単位とSiO4/2で表されるシロキサン単位を含むオルガノポリシロキサン共重合体、R SiO1/2で表されるシロキサン単位とSiO4/2で表されるシロキサン単位を含むオルガノポリシロキサン共重合体、RSiO2/2で表されるシロキサン単位とRSiO3/2で表されるシロキサン単位またはRSiO3/2で表されるシロキサン単位を含むオルガノポリシロキサン共重合体および前記のうち二つ以上の混合物が挙げられるが、これらに限定されるものではない。前記で、Rは、アルケニル基以外の炭化水素基であり、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基またはヘプチル基などのアルキル基;フェニル基、トリル基、キシリル基またはナフチル基などのアリール基;ベンジル基またはフェネチル基などのアラルキル基;クロロメチル基、3-クロロプロピル基または3,3,3-トリフルオロプロピル基などのハロゲン置換アルキル基などでありうる。また、前記でRは、アルケニル基であり、具体的には、ビニル基、アリル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基またはヘプテニル基などでありうる。
【0067】
前記付加硬化性シリコーン組成物において、(2)オルガノポリシロキサンは、前記(1)オルガノポリシロキサンを架橋させる役割を行うことができる。前記(2)オルガノポリシロキサンにおいて、水素原子の結合位置は、特に限定されず、例えば、分子鎖の末端および/または側鎖に結合されていてもよい。また、前記(2)オルガノポリシロキサンにおいて、前記ケイ素結合水素原子の他に含まれ得る置換基の種類は、特に限定されず、例えば、(1)オルガノポリシロキサンにおいて言及したような、アルキル基、アリール基、アラルキル基またはハロゲン置換アルキル基などが挙げられ、これらのうち、通常、メチル基またはフェニル基が適用されるが、これらに限定されるものではない。
【0068】
前記(2)オルガノポリシロキサンの分子構造は、特に限定されず、例えば、直鎖状、分岐状、環状、網状または一部が分岐状を成す直鎖状などのように、いかなる形状でも有することができる。前記のような分子構造のうち、通常、直鎖状の分子構造を有することが適用されるが、これらに限定されるものではない。
【0069】
前記(2)オルガノポリシロキサンのより具体的な例としては、分子鎖両末端トリメチルシロキサン基封鎖メチルハイドロジェンポリシロキサン、分子鎖両末端トリメチルシロキサン基封鎖ジメチルシロキサン-メチルハイドロジェン共重合体、分子鎖両末端トリメチルシロキサン基封鎖ジメチルシロキサン-メチルハイドロジェンシロキサン-メチルフェニルシロキサン共重合体、分子鎖両末端ジメチルハイドロジェンシロキサン基封鎖ジメチルポリシロキサン、分子鎖両末端ジメチルハイドロジェンシロキサン基封鎖ジメチルシロキサン-メチルフェニルシロキサン共重合体、分子鎖両末端ジメチルハイドロジェンシロキサン基封鎖メチルフェニルポリシロキサン、R SiO1/2で表されるシロキサン単位とR HSiO1/2で表されるシロキサン単位とSiO4/2で表されるシロキサン単位を含むオルガノポリシロキサン共重合体、R HSiO1/2で表されるシロキサン単位とSiO4/2で表されるシロキサン単位を含むオルガノポリシロキサン共重合体、RHSiO2/2で表されるシロキサン単位とRSiO3/2で表されるシロキサン単位またはHSiO3/2で表されるシロキサン単位を含むオルガノポリシロキサン共重合体および前記のうち二つ以上の混合物が挙げられるが、これらに限定されるものではない。前記で、Rは、アルケニル基以外の炭化水素基であり、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基またはヘプチル基などのアルキル基;フェニル基、トリル基、キシリル基またはナフチル基などのアリール基;ベンジル基またはフェネチル基などのアラルキル基;クロロメチル基、3-クロロプロピル基または3,3,3-トリフルオロプロピル基などのハロゲン置換アルキル基などでありうる。
【0070】
前記(2)オルガノポリシロキサンの含有量は、好適な硬化が行われ得るほどに含まれると、特に限定されない。例えば、前記(2)オルガノポリシロキサンは、前述した(1)オルガノポリシロキサンに含まれる一つのアルケニル基に対して、ケイ素結合水素原子が0.5~10個となる量で含まれ得る。このような範囲で硬化を十分に進行させ、耐熱性を確保できる。
【0071】
前記付加硬化性シリコーン組成物は、硬化のための触媒として、白金または白金化合物をさらに含んでもよい。このような、白金または白金化合物の具体的な種類は、特に限定されない。触媒の比率も、好適な硬化が行われ得るレベルに調節すればよい。
【0072】
前記付加硬化性シリコーン組成物は、貯蔵安定性、取り扱い性および作業性向上の観点から、必要な好適な添加剤を適正比率でさらに含むこともできる。
【0073】
他の例として、前記シリコーン組成物は、縮合硬化性シリコーン組成物であり、例えば(a)アルコキシ基含有シロキサンポリマー;および(b)水酸基含有シロキサンポリマーを含んでもよい。
【0074】
前記(a)シロキサンポリマーは、例えば、下記化学式1で表される化合物でありうる。
【0075】
[化学式1]
SiO(OR
【0076】
化学式1で、RおよびRは、それぞれ独立して、水素原子または置換あるいは非置換の一価炭化水素基を示し、Rは、アルキル基を示し、R、RおよびRがそれぞれ複数個存在する場合には、互いに同じでも異なっていてもよく、aおよびbは、それぞれ独立して、0以上、1未満の数を示し、a+bは、0超過、2未満の数を示し、cは、0超過、2未満の数を示し、dは、0超過、4未満の数を示し、a+b+c×2+dは、4である。
【0077】
化学式1の定義において、一価炭化水素基は、例えば、炭素数1~8のアルキル基、フェニル基、ベンジル基またはトリル基などであってもよく、この際、炭素数1~8のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基またはオクチル基などでありうる。また、化学式1の定義において、一価炭化水素基は、例えば、ハロゲン、アミノ基、メルカプト基、イソシアネート基、グリシジル基、グリシドキシ基またはウレイド基などの公知の置換基で置換されていてもよい。
【0078】
化学式1の定義において、Rのアルキル基の例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基またはブチル基などが挙げられる。アルキル基のうち、メチル基またはエチル基などが通常適用されるが、これらに限定されるものではない。
【0079】
化学式1のポリマーのうち、分岐状または3次架橋されたシロキサンポリマーが使用できる。また、この(a)シロキサンポリマーには、目的を損傷させない範囲内で、具体的には、脱アルコール反応を阻害しない範囲内で水酸基が残存していてもよい。
【0080】
前記(a)シロキサンポリマーは、例えば、多官能のアルコキシシランまたは多官能クロロシランなどを加水分解および縮合させることによって製造できる。この分野における平均的技術者は、目的とする(a)シロキサンポリマーによって好適な多官能アルコキシシランまたはクロロシランを容易に選択でき、それを使用した加水分解および縮合反応の条件も、容易に制御することができる。一方、前記(a)シロキサンポリマーの製造時には、目的によって、好適な一官能のアルコキシシランを併用使用することもできる。
【0081】
前記(a)シロキサンポリマーとしては、例えば、信越シリコーン社のX40-9220またはX40-9225、GE東レシリコーン社のXR31-B1410、XR31-B0270またはXR31-B2733などのような、市販のオルガノシロキサンポリマーが使用できる。
【0082】
前記縮合硬化性シリコーン組成物に含まれる、(b)水酸基含有シロキサンポリマーとしては、例えば、下記化学式2で表される化合物が使用できる。
【0083】
[化学式2]
【化1】
【0084】
化学式2で、RおよびRは、それぞれ独立して、水素原子または置換あるいは非置換の一価炭化水素基を示し、RおよびRがそれぞれ複数個存在する場合には、これらは互いに同じでも異なっていてもよく、nは、5~2,000の整数を示す。
【0085】
化学式2の定義において、一価炭化水素基の具体的な種類としては、例えば、前記化学式1の場合と同じ炭化水素基が挙げられる。
【0086】
前記(b)シロキサンポリマーは、例えば、ジアルコキシシランおよび/またはジクロロシランなどを加水分解および縮合させることによって製造できる。この分野における平均的技術者は、目的とする(b)シロキサンポリマーによって好適なジアルコキシシランまたはジクロロシランを容易に選択でき、それを使用した加水分解および縮合反応の条件も、容易に制御することができる。前記のような(b)シロキサンポリマーとしては、例えば、GE東レシリコーン社のXC96-723、YF-3800、YF-3804などのような、市販の二官能オルガノシロキサンポリマーが使用できる。
【0087】
前記に記述した付加硬化型あるいは縮合硬化型シリコーン組成物は、本出願において適用されるシリコーン粘着剤または接着剤を形成するための材料の一例である。すなわち、基本的に当業界においてOCAまたはOCRなどと知られたシリコーン粘着剤または接着剤が全部本出願において適用可能である。
【0088】
前記粘着剤または接着剤あるいはそれを形成する硬化性組成物の類型は、特に限定されず、目的とする用途によって適宜選択できる。例えば、固状、半固状または液状の粘着剤または接着剤または硬化性組成物が使用できる。固状または半固状の粘着剤または接着剤または硬化性組成物は、接着対象が合着される前に硬化することができる。液状の粘着剤または接着剤または硬化性組成物は、いわゆる光学透明レジン(OCR;Optical Clear Resin)と呼ばれ、接着対象が合着された後に硬化することができる。一例によれば、前記粘着剤または接着剤または硬化性組成物としては、いわゆるポリジメチルシロキサン系(Polydimethyl siloxane-based)粘着剤または接着剤または硬化性組成物またはポリメチルビニルシロキサン系(Polymethylvinyl siloxane-based)粘着剤または接着剤または硬化性組成物またはアルコキシシリコーン系(Alkoxy silicone-based)粘着剤または接着剤または硬化性組成物などが使用できるが、これらに限定されるものではない。
【0089】
前記粘着剤層または接着剤層の厚さは、特に限定されず、目的とする接着力または粘着力の確保のための適正範囲で選択できる。前記厚さは、略1μm~50μmの範囲内でありうる。前記厚さは、他の例として、2μm以上、3μm以上、4μm以上、5μm以上、6μm以上、7μm以上、8μm以上、9μm以上または10μm以上や、45μm以下、40μm以下、35μm以下、30μm以下、25μm以下、20μm以下、15μm以下または10μm以下程度であってもよい。
【0090】
光変調層である液晶層において前記粘着剤層または接着剤層および/または液晶配向膜により形成される、液晶化合物の初期配向は、垂直配向、水平配向、傾斜配向またはスプレー配向でありうる。また、前記垂直配向、水平配向、傾斜配向状態またはスプレー配向状態で液晶化合物は、ツイストされて、ツイスト配向またはコレステリック配向状態で存在したり、そうでなくてもよい。前記で初期配向は、液晶化合物を含む光変調層に電圧のような外部シグナルが印加されていない状態での配向を意味する。
【0091】
前記水平配向、傾斜配向、垂直配向またはスプレー配向の意味は、当業界において公知となった通りである。光変調層の液晶化合物は、初期状態で前記水平配向、傾斜配向、垂直配向またはスプレー配向の状態を維持し、外部シグナルによってそれとは異なる配向状態に変更されうる。
【0092】
一例において、前記光変調層における液晶化合物の初期配向は、垂直配向であるか、あるいは垂直配向と類似した配向状態でありうる。このような配向状態は、前記液晶配向膜として垂直配向膜を適用することによって得られる。このような配向は、いわゆるR-TN(Reversed Twisted Nematic)配向を具現する素子において有用である。
【0093】
前記垂直配向または垂直配向と類似した配向状態で光変調層の面内位相差(波長550nm基準)は、例えば、約30nm以下、25nm以下、20nm以下、15nm以下、10nm以下または5nm以下であるか、0nm以上または0nm超過でありうる。
【0094】
前記面内位相差は、前記数式1によって求められる。
【0095】
光変調フィルム層は、前記第1および第2基板の間隔(spacer)を維持するスペーサーをさらに含んでもよい。スペーサーとしては、通常的に適用されるスペーサーであり、ボールスペーサーやカラムスペーサーまたは隔壁型スペーサーが適用可能である。好適な例として、前記スペーサーとしては、前記隔壁型スペーサーが使用でき、特に前記隔壁が少なくとも一つの閉図形を形成している隔壁型スペーサーが適用可能である。隔壁型スペーサーが形成する閉図形としては、六角形(例えば、正六角形など)や四角形(例えば、正方形または矩形)が挙げられる。前記閉図形が六角形、特に正六角形である隔壁型スペーサーは、いわゆるハニカム(honeycomb)型スペーサーとも呼ばれる。このようなハニカム型または四角形の隔壁型スペーサーは、公知のように、基板上に形成された隔壁型スペーサーの形態を基板の法線方向から観察したとき、前記隔壁型スペーサーにより形成される図形がハニカム型または四角形である場合を意味する。前記ハニカム型は、通常、正六角形の組み合わせからなり、四角形の場合、正方形、矩形または正方形と矩形の組み合わせなどがありえる。第1および第2基板間の付着力を考慮して、スペーサーとしては、隔壁型スペーサーを適用できるが、これらに限定されるものではない。
【0096】
スペーサーのピッチなども、目的とする付着力やセルギャップの維持効率などを考慮して適宜選択できる。例えば、隔壁型スペーサーが適用される場合、前記隔壁型スペーサーのピッチが50μm~2,000μmの範囲内でありうる。隔壁型スペーサーにおいてピッチを求める方式は公知となっている。例えば、隔壁型スペーサーがハニカム型であれば、前記ハニカムを成す六角形において向かい合う辺の間隔を通じてピッチを求め、四角形である場合に、四角形の辺の長さを通じてピッチを求める。前記ハニカムを成す六角形において向かい合う辺の間隔や、四角形の辺の長さが一定でない場合には、それらの平均値をピッチと規定することができる。
【0097】
前記隔壁型スペーサーが閉図形を構成する場合に、例えば、前記閉図形の面積(すなわち、例えば、六角形や四角形の面積)は、例えば、約1~200mmの範囲内でありうる。隔壁型スペーサーにより複数の閉図形が形成され、当該閉図形の面積がそれぞれ異なる場合には、前記面積は算術平均値である。
【0098】
前記隔壁型スペーサーの線幅、例えば、前記ハニカムを成す六角形や四角形の各辺の幅は、例えば、約5μm~50μmの範囲内にありえる。前記線幅は、他の例として、約10μm以上または15μm以上であるか、45μm以下、40μm以下、35μm以下、30μm以下、25μm以下または20μm以下程度であってもよい。
【0099】
前記のような範囲でセルギャップが適切に維持され、基板間の付着力も良好に維持できる。
【0100】
基板の間に前記のようなボールスペーサー、カラムスペーサーまたは隔壁型スペーサーを形成する方式は公知となっている。
【0101】
前記光変調フィルム層の各基板には、光変調層に外部シグナルを印加するための構成要素として、電極層が形成されていてもよい。例えば、第1基板において第1表面と前記粘着剤または接着剤層の間(図2で100と1001の間)および/または第2基板において第1表面と配向膜の間(図2で200と2001の間)(スペーサーが存在する場合、スペーサーおよび配向膜の間)には電極層が存在できる。第2基板の場合、第1表面にまず電極層を形成し、その上部にスペーサーおよび配向膜を順次形成することが一般的であるから、スペーサーが存在する場合、電極層は、第2基板の第1表面とスペーサーおよび配向膜の間に位置してもよい。
【0102】
前記電極層としては、公知の透明電極層が適用可能であり、例えば、いわゆる導電性高分子層、導電性金属層、導電性ナノワイヤー層またはITO(Indium Tin Oxide)などの金属酸化物層が前記電極層に使用できる。その他にも、透明電極層を形成できる多様な素材および形成方法が公知となっており、これを限定せずに適用できる。
【0103】
光変調デバイスは、前記光変調フィルム層を基本的に含み、必要に応じてさらなる他の構成を含むこともできる。すなわち、駆動モードによっては、前記光変調フィルム層単独でも、前述した透過、遮断、高反射および/または低反射モードの具現およびそれら間のスイッチングが可能であるが、このようなモードの具現またはスイッチングを容易にするために、さらなる構成を含むことも可能である。
【0104】
例えば、前記デバイスは、前記光変調フィルム層の一側または両側に配置された偏光層(受動偏光層)をさらに含んでもよい。図3は、前記構造の例示であり、図2の構造において光変調フィルム層の一面にのみ偏光層400が配置された場合であり、図4は、図2の構造において光変調フィルム層の両面に偏光層400が配置された場合である。また、スペーサーとして前記隔壁型スペーサーが適用され、その形態が四角形(正方形または矩形)の場合に、前記四角形の辺と前記偏光層の吸収軸は、互いに実質的に垂直または水平を成すように配置されることが好適である。
【0105】
用語「偏光層」は、自然光または非偏光を偏光に変化させる素子を意味し得る。一例において、前記偏光層は、直線偏光層でありうる。直線偏光層は、選択的に透過する光がいずれか一つの方向に振動する直線偏光であり、選択的に吸収または反射する光が前記直線偏光の振動方向と直交する方向に振動する直線偏光である場合を意味する。すなわち、前記直線偏光層は、面方向に互いに直交する透過軸および吸収軸または反射軸を有することができる。
【0106】
前記偏光層は、吸収型偏光層または反射型偏光層でありうる。前記吸収型偏光層としては、例えば、PVA(poly(vinyl alcohol))延伸フィルムなどのような高分子延伸フィルムにヨードを染着した偏光層または配向された状態で重合された液晶をホストとし、前記液晶の配向によって配列された二色性染料をゲストとするゲスト-ホスト型偏光層が使用できるが、これらに限定されるものではない。
【0107】
前記反射型偏光層としては、例えば、いわゆるDBEF(Dual Brightness Enhancement Film)と公知となっている反射型偏光層やLLC(Lyotropic liquid crystal)のような液晶化合物をコーティングして形成される反射型偏光層が使用できるが、これらに限定されるものではない。
【0108】
図4のように、光変調フィルム層の両側共に前記偏光層が配置された構造であってもよい。このような場合に、前記両側に配置された偏光層の透過軸が成す角度は、85度~95度の範囲内または略垂直でありうる。
【0109】
光変調デバイスは、前記構成にさらに必要な他の構成を含んでもよい。例えば、前記第1基板の第1表面上に形成されてもよい粘着剤層または接着剤層の他に、他の構成要素を付着させるための粘着剤層や接着剤層、ハードコーティングフィルム、反射防止フィルムおよび/またはNIR(Near-Infrared)遮断(cut)層などのように光変調デバイスの駆動または使用に必要な任意の他の構成を追加してもよい。
【0110】
前記光変調デバイスを製造する方式は、特に限定されず、各構成要素として前記要素が適用されること以外には、公知の方式を通じて前記デバイスを製造できる。
【0111】
本出願は、また、前記光変調デバイスを含む自動車に関する。本出願の自動車において、前記のような光変調デバイスがサンルーフまたはガラスに含まれる。前記でガラスは、図1に示されたように、車両の前面ガラス100、側面ガラス200または後面ガラス300でありうる。また、図1では、車両の天井部に一部領域にのみ形成されたサンルーフ400が例示されたが、本出願のサンルーフの形態が図1に例示されたものに限定されず、例えば、いわゆるパノラマサンルーフのように、車両の天井の相当部分がサンルーフで構成されたデザインも含まれる。また、本出願の光変調デバイスは、前記サンルーフや車両用ガラスを全体的に構成することもでき、その一部を形成することもできる。
【0112】
本出願の自動車では、前記のような構造において光変調デバイスが前述した基板として異方性基板を含む場合に、サンルーフの場合、当該基板の光学軸が前記自動車の幅方向(すなわち、図1に例示的に表示された点線方向)と平行することができる。また、車両用ガラスである場合に、前記基板の光学軸が地面方向(すなわち、図1に点線で示されたように、自動車が地面に四回りを接触した状態で地面に平行な方向または自動車の長さ方向)と平行することができる。
【0113】
このような構造によれば、搭乗者の視線の正面または移動方向と光変調デバイスの基板などの光学軸方向を一致させて前記異方性基板の長所を取りながらも、当該基板の適用を通じて現れることができる光学的不均一を改善または解消できる。
【0114】
前記のような自動車を構成する方式は、特に限定されず、通常的に自動車のサンルーフまたはガラスを施工する方式を採用し、前記施工時に光変調デバイスの光学軸方向を考慮して、前記に記述した配置が達成されるように工程を進めればよい。
その他、本出願の自動車を具現する方式も、特に限定されず、公知の方式が適用可能である。
【発明の効果】
【0115】
本出願は、異方性プラスチック基板を含む光変調デバイスおよびその光変調デバイスがサンルーフおよび/またはガラスに適用された自動車を提供し、前記光変調デバイスの長所を取りながらも、前記異方性プラスチック基板の適用による短所を解消または改善できる自動車を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0116】
図1】例示的な自動車の外観を示す図である。
図2】本出願の例示的な光変調デバイスの模式図である。
図3】本出願の例示的な光変調デバイスの模式図である。
図4】本出願の例示的な光変調デバイスの模式図である。
図5】光変調デバイスが車両のサンルーフまたはガラスに適用された場合を仮定して光学特性の均一性を評価した結果を示す写真である。
図6】光変調デバイスが車両のサンルーフまたはガラスに適用された場合を仮定して光学特性の均一性を評価した結果を示す写真である。
図7】光変調デバイスが車両のサンルーフまたはガラスに適用された場合を仮定して光学特性の均一性を評価した結果を示す写真である。
図8】光変調デバイスが車両のサンルーフまたはガラスに適用された場合を仮定して光学特性の均一性を評価した結果を示す写真である。
図9】光変調デバイスが車両のサンルーフまたはガラスに適用された場合を仮定して光学特性の均一性を評価した結果を示す写真である。
図10】光変調デバイスが車両のサンルーフまたはガラスに適用された場合を仮定して光学特性の均一性を評価した結果を示す写真である。
図11】光変調デバイスが車両のサンルーフまたはガラスに適用された場合を仮定して光学特性の均一性を評価した結果を示す写真である。
図12】光変調デバイスが車両のサンルーフまたはガラスに適用された場合を仮定して光学特性の均一性を評価した結果を示す写真である。
図13】光変調デバイスが車両のサンルーフまたはガラスに適用された場合を仮定して光学特性の均一性を評価した結果を示す写真である。
図14】光変調デバイスが車両のサンルーフまたはガラスに適用された場合を仮定して光学特性の均一性を評価した結果を示す写真である。
図15】光変調デバイスが車両のサンルーフまたはガラスに適用された場合を仮定して光学特性の均一性を評価した結果を示す写真である。
図16】光変調デバイスが車両のサンルーフまたはガラスに適用された場合を仮定して光学特性の均一性を評価した結果を示す写真である。
【発明を実施するための形態】
【0117】
以下、実施例を通じて本出願を具体的に説明するが、本出願の範囲が下記実施例によって限定されるものではない。
【0118】
製造例1.光変調デバイス(A)の製作
第1および第2基板として、それぞれの第1表面にITO(Indium Tin Oxide)層が厚さで蒸着された厚さ145μm程度のポリエステルフィルム(SKC、高延伸PET、面内位相差(波長550nm基準):約10,000nm)を使用した。前記第1および第2基板のITO層の表面に水平光配向膜(AMP21、LG化学、norbornene系)をそれぞれ形成した。この際、第2基板のITO層の表面に配向膜を形成するときには、配向膜材料に平均直径(D50直径)が約12μmレベルのボールスペーサーを分散させて、最終製品での液晶層の厚さ(cell gap)が前記ボールスペーサーにより維持されるようにした。前記光配向膜の配向は、直線偏光された紫外線の照射により行い、前記光配向膜による液晶化合物の配向が基板の遅相軸と略水平になるようにした。次に、前記第2基板の配向膜上に二色性染料を含む液晶組成物(MDA-14-1235,Merck社製)をコーティングし、前記第1基板の配向膜が形成された表面を前記液晶組成物のコーティングされた面と対向するようにしてラミして、光変調フィルム層を製作した。次に、前記光変調フィルム層の一面にPVA(poly(vinyl alcohol))系の吸収型直線偏光層を付着して、光変調デバイスを製作した。前記付着時に、前記直線偏光層の吸収軸と基板の遅相軸は、互いに水平になるようにした。
【0119】
実施例1および比較例1
製造例1の光変調デバイス(A)を自動車のサンルーフに適用して、光透過度の不均一性を評価した。
【0120】
前記光変調デバイスの後面に面光源を配置し、光変調デバイスを車両のサンルーフ位置に前記光変調デバイスを前記デバイスの基板の遅相軸が前記車両の幅に水平となるように装着した後に、正面で観察しつつ、視線を左側および右側に移動させた場合における不均一性を評価(試験1)した。
【0121】
前記光変調デバイスの後面に面光源を配置し、光変調デバイスを車両のサンルーフ位置に前記デバイスの基板の遅相軸が前記車両の幅に垂直となるように装着した後に、正面で観察しつつ、視線を左側および右側に移動させた場合における不均一性を評価(試験2)した。
【0122】
前記試験1は、実施例1に該当し、試験2は、比較例1に該当する。
【0123】
図5図7は、それぞれ前記試験1の正面、左側および右側観察の場合であり、図8図10は、それぞれ前記試験2の正面、左側および右側観察の場合である。
【0124】
図示のように、試験1の場合、観察者の視線が移動しても、正面観察時と均一な透過率が維持されたが、試験2の場合、観察者の視線の移動につれて領域別に透過率の偏差が発生して、光変調デバイスの光学的均一性が確保されなかった。
【0125】
製造例2.光変調デバイス(B)の製作
第1基板として、第1表面にITO(Indium Tin Oxide)層が厚さで蒸着された厚さ145μm程度のポリエステルフィルム(SKC、高延伸PET、面内位相差(波長550nm基準):約10,000nm)を使用した。前記第1基板の第1表面上に粘着剤層を形成した。粘着剤層は、シリコーン粘着剤組成物(Shinetsu社、KR3700)をバーコーティングし、約150℃程度で5分間乾燥して、10μm程度の厚さで形成した。第2基板として、前記第1基板と同じ基板を適用した。前記第2基板のITO層上にまずハニカム型隔壁型スペーサーとして、ハニカムを構成する正六角形(閉図形)のピッチが約350μm程度であり、高さ(cell gap)が約6μm程度であり、線幅が約10μm程度である隔壁型スペーサーを約9%の面積比で形成し、前記形成されたスペーサー上に垂直配向膜(5661LB3、Nissan社)を形成した。前記垂直配向膜は、一方向にラビング処理して形成した。次に、前記第2基板の垂直配向膜の表面に液晶組成物をコーティングし、前記第1基板の粘着剤層を前記液晶組成物のコーティングされた面と対向するようにしてラミネートして、光変調フィルム層を製作した。前記液晶組成物としては、液晶化合物(MAT-19-1261、Merck社製)にキラルドーパント(S811、Merck社製)を混合して、略20μm程度のピッチが具現されるように作成した組成物を使用した。次に、前記光変調フィルム層の両面にPVA(poly(vinyl alcohol))系の吸収型直線偏光層を2層付着して、光変調デバイスを製作した。前記付着時に、前記直線偏光層の吸収軸と基板の遅相軸は、互いに垂直または水平になるようにし、2層の偏光層間の吸収軸は、互いに垂直となるようにした。
【0126】
実施例2および比較例2
製造例2の光変調デバイス(A)を自動車のサンルーフに適用して、光透過度の不均一性を評価した。
【0127】
前記光変調デバイスの後面に面光源を配置し、光変調デバイスを車両のサンルーフ位置に前記光変調デバイスを前記デバイスの基板の遅相軸が前記車両の幅に水平となるように装着した後に、正面で観察しつつ、視線を左側および右側に移動させた場合における不均一性を評価(試験3)した。
【0128】
前記光変調デバイスの後面に面光源を配置し、光変調デバイスを車両のサンルーフ位置に前記デバイスの基板の遅相軸が前記車両の幅に垂直となるように装着した後に、正面で観察しつつ、視線を左側および右側に移動させた場合における不均一性を評価(試験4)した。
【0129】
前記試験3は、実施例2に該当し、試験4は、比較例2に該当する。
【0130】
図11図13は、それぞれ前記試験3の正面、左側および右側観察の場合であり、図14~16は、それぞれ前記試験4の正面、左側および右側観察の場合である。
【0131】
図示のように、試験3の場合、観察者の視線が移動しても、正面観察時と均一な透過率が維持されたが、試験4の場合、観察者の視線の移動につれて領域別に透過率の偏差が発生して、光変調デバイスの光学的均一性が確保されなかった。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16