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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-03
(45)【発行日】2024-06-11
(54)【発明の名称】冷凍ゲル状食品
(51)【国際特許分類】
   A23L 3/36 20060101AFI20240604BHJP
   A23L 17/00 20160101ALI20240604BHJP
   A23G 3/34 20060101ALI20240604BHJP
   A23G 3/00 20060101ALI20240604BHJP
   A23L 9/10 20160101ALI20240604BHJP
   A23L 15/00 20160101ALI20240604BHJP
   A23L 35/00 20160101ALI20240604BHJP
   A23L 29/281 20160101ALI20240604BHJP
   A23L 29/20 20160101ALI20240604BHJP
   A23L 29/256 20160101ALI20240604BHJP
【FI】
A23L3/36 Z
A23L17/00 Z
A23G3/34 107
A23G3/00
A23L9/10
A23L15/00 Z
A23L35/00
A23L29/281
A23L29/20
A23L29/256
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2019210620
(22)【出願日】2019-11-21
(65)【公開番号】P2020089359
(43)【公開日】2020-06-11
【審査請求日】2022-05-11
(31)【優先権主張番号】P 2018219417
(32)【優先日】2018-11-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006035
【氏名又は名称】三菱ケミカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100086911
【弁理士】
【氏名又は名称】重野 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100144967
【弁理士】
【氏名又は名称】重野 隆之
(72)【発明者】
【氏名】小川 晃弘
(72)【発明者】
【氏名】片平 亮太
【審査官】村松 宏紀
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-195846(JP,A)
【文献】特開2009-297024(JP,A)
【文献】特開平02-048034(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L、A23G
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機酸モノグリセリドおよび有機酸モノグリセリドとは異なる乳化剤を含む製造原料液をゲル化してなり、内部に該有機酸モノグリセリドおよび有機酸モノグリセリドとは異なる乳化剤を含有するゲル状食品を、冷凍してなる冷凍ゲル状食品であって、
該有機酸モノグリセリドがコハク酸モノグリセリドであり、該有機酸モノグリセリドとは異なる乳化剤がショ糖ステアリン酸エステルであり、含水率が60~99重量%であり、さらに糖類を0.01~20重量%含有する、冷凍ゲル状食品。
【請求項2】
該有機酸モノグリセリドを0.0001~5重量%含有する、請求項1に記載の冷凍ゲル状食品。
【請求項3】
該有機酸モノグリセリドとは異なる乳化剤を0.0001~5重量%含有する、請求項1または2に記載の冷凍ゲル状食品。
【請求項4】
冷凍ゲル状食品が、ゼリー、プリン、ムース、水ようかん、茶わん蒸し、または煮こごりである、請求項1ないしのいずれか一項に記載の冷凍ゲル状食品。
【請求項5】
有機酸モノグリセリドおよび有機酸モノグリセリドとは異なる乳化剤を含有する分散液と、糖類を混合してゲル状食品の製造原料液を製造する工程と、
前記ゲル状食品の製造原料液をゲル化させてゲル状食品を製造する工程と、
前記ゲル状食品を冷凍して含水率が60~99重量%の冷凍ゲル状食品を製造する工程とを有し、
該有機酸モノグリセリドがコハク酸モノグリセリドであり、該有機酸モノグリセリドとは異なる乳化剤がショ糖ステアリン酸エステルである、冷凍ゲル状食品の製造方法。
【請求項6】
前記ゲル状食品を製造する工程において、前記ゲル状食品の製造原料液と、具材とを混ぜてゲル化させる、請求項に記載の冷凍ゲル状食品の製造方法。
【請求項7】
前記冷凍ゲル状食品が前記糖類を0.01~20重量%含有する、請求項又はに記載の冷凍ゲル状食品の製造方法。
【請求項8】
前記冷凍ゲル状食品が、前記有機酸モノグリセリドを0.0001~5重量%含有する、請求項ないしのいずれか一項に記載の冷凍ゲル状食品の製造方法。
【請求項9】
前記冷凍ゲル状食品が、前記有機酸モノグリセリドとは異なる乳化剤を0.0001~5重量%含有する、請求項ないしのいずれか一項に記載の冷凍ゲル状食品の製造方法。
【請求項10】
前記冷凍ゲル状食品が、ゼリー、プリン、ムース、水ようかん、茶わん蒸し、または煮こごりである、請求項ないしのいずれか一項に記載の冷凍ゲル状食品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷凍ゲル状食品に係り、詳しくは、冷凍ゲル状食品における解凍時の離水を抑制するとともに食感や風味を向上させ、ゲルのみならず中に含まれる具材の食味、食感も向上させた冷凍ゲル状食品に関する。
【背景技術】
【0002】
ゼリー、プリン、茶わん蒸し等のゲル状食品は、レンジアップや湯煎で解凍してすぐに食べられる便利さや調理時間短縮、長期保存のために、しばしば冷凍保存が行われる。このような冷凍ゲル状食品は、解凍時に離水してしまい、見た目が悪くなる上に食感や風味に劣ることが食品価値の低下につながる。
【0003】
特許文献1には、キサンタンガム、イオタカラギナン、ローカストビーンガム、及びβ-1,3-グルカンを主鎖とする高分子物質を含有することにより、冷解凍のヒートショックを受けても離水がなく、また、弾力性、保型性が保持され、冷凍時、解凍時の両方で喫食したときの食感が良好な耐冷凍ゼリーが開示されている。
【0004】
一方で、特許文献2には、平均重合度が1を超えて3以下のポリグリセリン脂肪酸エステルを含有する変性抑制剤を用いることで、食品の冷凍及び解凍時の品質低下を抑制することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開平4-71456号公報
【文献】特開2015-173622号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1においては、キサンタンガム等の増粘多糖類の添加量が多くなるとゼリーが糊っぽくなる、あるいはゲル強度が制御できず、ゼリー本来の食感を維持できなくなるといった問題がある。また、特許文献1では、水に砂糖とゲル化剤を溶解しただけのゼリーを対象としており、果肉などの具材を加えた場合の冷解凍における効果についての検討はなされていない。
また、特許文献2は、卵や乳を主原料としたゲル形成食品の凍結解凍時のタンパク質の変性抑制を課題としており、離水の直接原因となる氷結晶の制御については検討されていなかった。
【0007】
本発明は、冷凍ゲル状食品における凍結時の氷結晶形成を制御し解凍時の離水を抑制するとともに食感や風味を向上させ、ゲルのみならず中に含まれる具材の食味、食感も向上させることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、有機酸モノグリセリドと有機酸モノグリセリドとは異なる乳化剤との併用が、氷結晶サイズの制御、具材からの水分移行の制御に有効に機能し、上記課題を解決することができることを見出した。
即ち、本発明は以下を要旨とする。
【0009】
[1] 有機酸モノグリセリドおよび有機酸モノグリセリドとは異なる乳化剤を含有し、含水率が60~99重量%である、冷凍ゲル状食品。
【0010】
[2] 該有機酸モノグリセリドを0.0001~5重量%含有する、[1]に記載の冷凍ゲル状食品。
【0011】
[3] 該有機酸モノグリセリドとは異なる乳化剤を0.0001~5重量%含有する、[1]または[2]に記載の冷凍ゲル状食品。
【0012】
[4] さらに糖類を含有する、[1]ないし[3]のいずれかに記載の冷凍ゲル状食品。
【0013】
[5] 前記有機酸モノグリセリドとは異なる乳化剤が、ショ糖脂肪酸エステルおよびポリグリセリン脂肪酸エステルからなる群より選ばれる少なくとも1つである、[1]ないし[4]のいずれかに記載の冷凍ゲル状食品。
【0014】
[6] 冷凍ゲル状食品が、ゼリー、プリン、ムース、水ようかん、茶わん蒸し、または煮こごりである、[1]ないし[5]のいずれかに記載の冷凍ゲル状食品。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、冷凍ゲル状食品における凍結時の氷結晶形成を制御し解凍時の離水を抑制するとともに食感や風味を向上させ、ゲルのみならず中に含まれる具材の食味、食感も向上させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に、本発明の実施の形態を詳細に説明する。
以下に記載する構成要件の説明は、本発明の実施態様の一例(代表例)であり、本発明はその要旨を超えない限り、これらの内容に特定はされない。
【0017】
[メカニズム]
有機酸モノグリセリドと有機酸モノグリセリドとは異なる乳化剤とを含有させることで、冷凍ゲル状食品の解凍時の離水を抑制するとともに食感や風味を向上させることができるメカニズムの詳細は明らかではないが、これらの乳化剤が、凍結時の氷結晶のサイズを制御し、また、これらの乳化剤が具材表面に吸着して具材からの水分移行を制御することによるものと推定される。
【0018】
[冷凍ゲル状食品]
本発明の冷凍ゲル状食品は、有機酸モノグリセリドおよび有機酸モノグリセリドとは異なる乳化剤を含有し、含水率が60~99重量%のものであって、好ましくは更に糖類を含有する。
【0019】
<ゲル状食品>
本発明が適用されるゲル状食品としては、含水率が60~99重量%のゲル状食品であればよく、特に制限はないが、具体的には、ゼリー(ジュレを含む)、プリン、ムース、水ようかん、茶碗蒸し、煮こごり(ゼリーに分類される場合もある。)、ババロア(ブラマンジェ、パンナコッタを含む)、豆腐(卵豆腐、杏仁豆腐を含む)、レアチーズケーキ、トコロテン、こんにゃく、カスタードクリーム、バニラクリーム等のクリーム類、マヨネーズ、ゲル状ドレッシング、などが挙げられる。これらのうち、ゼリー、プリン、ムース、水ようかん、茶碗蒸し、煮こごり、ババロア、豆腐、レアチーズケーキ、トコロテン、こんにゃくに好適であり、特に、ゼリー、プリン、ムース、水ようかん、茶碗蒸し、煮こごりに好適であり、解凍時の離水を抑制して食感や食味の低下を効果的に防止することができる。
【0020】
本発明に係るゲル状食品は、ゲル状の連続相(以下、「ゲル相」と称す場合がある。)中に具材が含まれるものであってもよく、その場合においても、凍結、解凍後の具材の食感や食味の低下を有効に防止することができる。
ゲル状食品に含まれる具材としては、当該ゲル状食品に応じて様々なものが挙げられ、例えば、ゼリーでは、主としてフルーツが具材として用いられる。
また、茶碗蒸しや煮こごりでは、鶏肉等の肉類、タラ、エビ等の魚介類、銀杏等の木の実類、三つ葉等の野菜類、蒲鉾等の練り物などが挙げられる。
【0021】
本発明の冷凍ゲル状食品の含水率は、具材を含む冷凍ゲル状食品にあっては、その具材をも含めての含水率であり、ゲル状食品の製造原料から計算により算出された含水率であってもよく、市販の水分測定計など分析機器により測定された含水率であってもよい。
凍結、解凍後の離水を抑制する効果が顕著に発揮される観点において、冷凍ゲル状食品の含水率は60重量%以上、好ましくは70重量%以上であり、ゲル状食品としての保形性の観点から、冷凍ゲル状食品の含水率は99重量%以下、好ましくは90重量%以下である。
【0022】
<有機酸モノグリセリド>
有機酸モノグリセリドは、グリセリン1分子に脂肪酸1分子と有機酸1分子が結合した構造を有し、一般的には、有機酸の酸無水物と脂肪酸モノグリセリドを反応させることにより得られる。反応は、通常、無溶媒条件下で行われ、例えば無水コハク酸と炭素数18のモノグリセリドの反応では、温度120℃前後において90分程度で反応が完了する。かくして得られた有機酸モノグリセリドは、通常、有機酸、未反応モノグリセリド、ジグリセリド、その他オリゴマーを含む混合物となっている。本発明においては、このような混合物をそのまま使用してもよく、有機酸モノグリセリドの純度を高めたい場合は、蒸留モノグリセリドとして市販されているものを使用してもよい。また、有機酸部分が一部中和されたものを使用してもよい。
【0023】
有機酸モノグリセリドを構成する有機酸としては、例えば、コハク酸、クエン酸、酒石酸、ジアセチル酒石酸、リンゴ酸、アジピン酸、グルタル酸、マレイン酸、フマル酸、酢酸、乳酸などが挙げられる。これらの中では、食品用途に使用されるコハク酸、クエン酸、ジアセチル酒石酸が好ましく、特に風味の点からコハク酸が好ましい。
【0024】
上記脂肪酸モノグリセリド由来の、有機酸モノグリセリドを構成する脂肪酸としては、例えば、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸、オレイン酸などの炭素数8~22の飽和または不飽和の脂肪酸が挙げられる。これらの中では風味の観点からステアリン酸を主成分とする脂肪酸が好ましく、特に構成脂肪酸の70重量%以上がステアリン酸であるものが好ましい。
【0025】
有機酸モノグリセリドとしては1種のみを用いてもよく、これを構成する有機酸や脂肪酸が異なるものを2種以上混合して用いてもよい。
【0026】
本発明の冷凍ゲル状食品は、有機酸モノグリセリドを0.0001~5重量%の割合で含有することが好ましい。有機酸モノグリセリドの含有量が上記下限以上であると、有機酸モノグリセリドを含むことによる本発明の効果を有効に得ることができる。有機酸モノグリセリドの含有量が上記上限以下であれば、風味に大きな影響を与えず、有機酸モノグリセリドを含むことによる本発明の効果を得ることができる。有機酸モノグリセリドの冷凍ゲル状食品中の含有量は0.001~3重量%であることがより好ましく、0.01~1重量%であることが更に好ましく、0.01~0.2重量%であることが特に好ましい。
【0027】
なお、有機酸モノグリセリドは、後述の通り、水分散液としてゲル状食品の製造に用いることで、有機酸モノグリセリドのラメラ構造体として冷凍ゲル状食品に配合される。
【0028】
<有機酸モノグリセリドとは異なる乳化剤>
有機酸モノグリセリドとは異なる乳化剤(以下、「その他の乳化剤」と称す場合がある。)としては特に制限されないが、ショ糖脂肪酸エステルやポリグリセリン脂肪酸エステルが好ましい。
【0029】
ショ糖脂肪酸エステルとしては、親水性が高く(HLB値が通常5~18、好ましくは8~15である。)、水分散性に優れ、高温で高粘性の水分散液の状態となるものが好ましい。構成脂肪酸として、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸、オレイン酸などの炭素数14~22の飽和または不飽和の脂肪酸が挙げられる。これらの中では、炭素数14~18の飽和脂肪酸が好ましい。また、構成脂肪酸の70重量%以上がステアリン酸である脂肪酸が更に好ましい。
【0030】
ショ糖脂肪酸エステルは、それ自体既知の食品用乳化剤であり、市販されているものを使用できる。ショ糖脂肪酸エステルの市販品としては、例えば、「リョートーシュガーエステルS-1670」、「リョートーシュガーエステルP-1670」、「リョートーシュガーエステルM-1695」、「リョートーシュガーエステルO-1570」、「リョートーシュガーエステルS-1170」、「リョートーシュガーエステルS-570」、「リョートーシュガーエステルS-370」、「リョートーシュガーエステルB-370」、「リョートーシュガーエステルS-170」、「リョートーシュガーエステルER-190」、「リョートーシュガーエステルPOS-135」(以上、三菱ケミカルフーズ社製、商品名);「DKエステルF-160」、「DKエステルF-140」、「DKエステルF-110」、「DKエステルF-70」、「DKエステルF-50」(以上、第一工業製薬社製、商品名)等が挙げられる。
【0031】
ポリグリセリン脂肪酸エステルも、ショ糖脂肪酸エステルと同様に、親水性が高く(HLB値が通常5~18、好ましくは9~16である。)、水分散性に優れ、高温で高粘性の水分散液の状態となるものが好ましい。斯かるポリグリセリン脂肪酸エステルとしては、特に限定されないが、ポリグリセリンの平均重合度は通常2~20、好ましくは3~10であるものが挙げられる。また、構成脂肪酸は、通常、炭素数14~22の飽和または不飽和の脂肪酸であり、構成脂肪酸の70重量%以上がステアリン酸であるポリグリセリン脂肪酸エステルが好ましい。なお、ポリグリセリン脂肪酸エステルとしては、グリセリンの重合度の揃ったものを用いることも出来、重合度が2のものはジグリセリン脂肪酸エステル、重合度が3のものはトリグリセリン脂肪酸エステルと呼ばれ、これらも本発明におけるポリグリセリン脂肪酸エステルに包含される。
【0032】
ポリグリセリン脂肪酸エステルは、それ自体既知の食品用乳化剤であり、市販されているものを使用できる。ポリグリセリン脂肪酸エステルの市販品としては、例えば、「リョートーポリグリエステルS-10D」、「リョートーポリグリエステルM-10D」、「リョートーポリグリエステルS-24D」、「リョートーポリグリエステルS-28D」、「リョートーポリグリエステルO-50D」、「リョートーポリグリエステルB-100D」(以上、三菱ケミカルフーズ社製、商品名);「SYグリスターMSW-7S」、「SYグリスターMS-5S」、「SYグリスターMS-3S」、「SYグリスターTS-3S」、「SYグリスターMO-5S」、「SYグリスタML-750」、「SYグリスターHB-750」、「SYグリスターCR-500」(以上、阪本薬品工業社製、商品名);「サンソフトQ-18S」、「サンソフトQ-14S」、「サンソフトQ-12S」、「サンソフトA-141E」、「サンソフトA-17E」(以上、太陽化学社製、商品名)、「ポエムDP-95RF」、「ポエムTRP-97RF」(以上、理研ビタミン社製、商品名)等が挙げられる。
【0033】
上記のショ糖脂肪酸エステルおよびポリグリセリン脂肪酸エステルは1種を単独で用いてもよく、ショ糖脂肪酸エステルの1種または2種以上と、ポリグリセリン脂肪酸エステルの1種または2種以上を併用してもよい。
【0034】
なお、その他の乳化剤としては、上記のショ糖脂肪酸エステルおよびポリグリセリン脂肪酸エステルのほか、例えば、レシチン、リゾレシチン、モノグリセリド、ソルビタン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル等を用いることもできるが、ショ糖脂肪酸エステルおよび/又はポリグリセリン脂肪酸エステルを用いることが好ましく、その他の乳化剤のうちの少なくとも30重量%以上は、ショ糖脂肪酸エステルおよび/又はポリグリセリン脂肪酸エステルであることが好ましい。
【0035】
本発明の冷凍ゲル状食品に含まれるショ糖脂肪酸エステルやポリグリセリン脂肪酸エステル等のその他の乳化剤の含有量は、0.0001~5重量%であることが好ましい。その他の乳化剤の含有量が上記範囲内であると、本発明の製造に用いられる後述の分散液における有機酸モノグリセリドのラメラ構造体の水分散性、安定性を高め、本発明による効果を有効に発揮させることができる。
冷凍ゲル状食品中のその他の乳化剤の含有量は0.001~3重量%であることがより好ましく、0.01~1重量%であることが更に好ましく、0.01~0.2重量%であることが特に好ましい。
【0036】
また、有機酸モノグリセリドとその他の乳化剤とを併用することによる本発明の効果をより一層有効に得る上で、冷凍ゲル状食品中の有機酸モノグリセリドとその他の乳化剤との含有量比は、有機酸モノグリセリド:その他の乳化剤(重量比)=500:1~1:500、特に100:1~1:100、とりわけ3:1~1:3の範囲であることが好ましい。有機酸モノグリセリドとその他の乳化剤の含有量(重量比)は、1:1であることがより好ましい。
また、本発明の冷凍ゲル状食品中の有機酸モノグリセリドとその他の乳化剤の合計の含有量は0.01~20重量%であることが好ましく、0.1~10重量%であることがより好ましく、1~5重量%であることがさらに好ましい。
【0037】
<糖類>
本発明の冷凍ゲル状食品は、糖類の1種又は2種以上を含んでいてもよく、糖類を含むことにより、後述の分散液における有機酸モノグリセリドのラメラ構造体の分散安定性が良好となる。また、ゲル状食品の製造時に後述の有機酸モノグリセリド含有水分散液と共に別途糖類を添加することで有機酸モノグリセリド含有水分散液のみの場合よりも食感や味が良くなるため、好ましい。
【0038】
糖類としては、例えば上白糖、粉糖、液糖、砂糖、麦芽糖、乳糖、転化糖、異性化糖、ブドウ糖、果糖、水飴、トレハロース、ソルビトール、マルチトール、ラクチトール、エリスリトール、マンニトール、はちみつ等の糖および糖アルコール、各種オリゴ糖、それらの混合物を使用することができる。
【0039】
これらの中ではオリゴ糖が好ましい。
オリゴ糖としては、マルトオリゴ糖(好ましくは重合度3~7)、ニゲロオリゴ糖、イソマルトオリゴ糖、パノースオリゴ糖、ゲンチオオリゴ糖、フラクトオリゴ糖、ガラクトオリゴ糖、キシロオリゴ糖、乳果オリゴ糖、それらのシラップ等が挙げられる。
【0040】
本発明の冷凍ゲル状食品が糖類を含む場合、後述の有機酸モノグリセリド含有水分散液に用いる糖類の量は、冷凍ゲル状食品中の糖類の含有量として、0.001~30重量%、特に0.01~20重量%、とりわけ0.1~10重量%で、有機酸モノグリセリドに対する糖類の含有量は、有機酸モノグリセリド:糖類(重量比)=10:7~1:850の範囲であることが好ましく、1:4~1:20の範囲であることが好ましい。糖類の含有量が上記下限以上であることにより、後述の分散液における有機酸モノグリセリドのラメラ構造体の分散安定性が向上し、上記上限以下であることにより、糖の種類によって結晶が析出し、粘度が高くなるなどの問題点が生じ難くなる。
【0041】
ゲル状食品の調製時に有機酸モノグリセリド含有水分散液と共に更に糖類を添加混合する場合の糖類の添加量については、後述する。
【0042】
<ゲル形成物質>
本発明のゲル状食品は、水と共に、必要に応じてゲル相形成のためのゲル形成物質として、グルコマンナン、ガラクトマンナン、寒天、ゼラチン、ペクチン、カラギーナン、カードラン、キサンタンガム、ジェランガム、アラビアガム、タマリンドガム、カルボキシメチルセルロース、アルギン酸類、ポリグルタミン酸類等のゲル化剤や、コーンスターチ、小麦澱粉、米澱粉、タピオカ澱粉、ハイアミロースコーンスターチ、ワキシーコーンスターチ、さご澱粉、馬鈴薯澱粉、葛澱粉、甘藷澱粉等の天然澱粉、エステル化澱粉、エーテル化澱粉、架橋澱粉、過ヨウ素酸酸化澱粉、ヒドロキシプロピル化澱粉等の化工澱粉、粒状化澱粉、アルファ化澱粉、湿熱処理澱粉などの加工澱粉等の澱粉を含有していてもよい。
これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
これらのゲル形成物質は、当該ゲル状食品の種類に応じて、その必要量が配合されるが、これらのうち、特にゼラチンを用いることで、離水抑制効果を向上させることができ、好ましい。
【0043】
<その他の成分>
本発明の冷凍ゲル状食品は、有機酸モノグリセリド、その他の乳化剤および必要に応じて配合される具材や糖類およびゲル形成物質の他、その他の成分を含有するものであってもよい。
その他の成分は、冷凍ゲル状食品の種類に応じて適宜配合される。
【0044】
その他の成分としては、調味料、塩類、さらに必要に応じて卵や乳成分、油脂類などが挙げられる。
【0045】
調味料としては、食塩(塩類を兼ねる。)、砂糖(糖類を兼ねる。)、コショウ、味噌、正油、だし(かつおだし、昆布だし)、化学調味料などが挙げられる。
【0046】
塩類としては、食塩、重曹、重炭酸アンモニウムなどの1種または2種以上が挙げられる。
【0047】
卵は、特に限定はしないが、全卵、生卵黄、生卵白、凍結卵黄、凍結卵白等が挙げられる。
【0048】
乳成分としては、生乳、牛乳、特別牛乳、部分脱脂乳、脱脂乳、加工乳、クリーム、濃縮ホエイ、濃縮乳、脱脂濃縮乳、無糖れん乳、加糖脱脂れん乳、全粉乳、脱脂粉乳、クリームパウダー、ホエイパウダー、たん白質濃縮ホエイパウダー、バターミルクパウダー、調整粉乳、はっ酵乳などが挙げられる。
【0049】
油脂類としては、特に限定されないが、例えば、ナタネ油、ナタネ硬化油、コメ油、大豆油、コーン油、サフラワー油、ヒマワリ油、綿実油、ゴマ油、オリーブ油、パーム油、パーム核油、ヤシ油、ヤシ硬化油等の植物油;バターオイル、牛脂、豚脂、鶏脂、魚油等の動物油;それらの水素添加油、それらの1種以上の混合物によるエステル交換油;これら油脂類を用いて製造されるマーガリンやショートニング等が挙げられる。
【0050】
本発明の冷凍ゲル状食品には必要に応じて、さらにイースト、甘味料、香料、ビタミン、抗酸化剤、着色剤、食品繊維、増粘剤、膨張剤などの公知の配合剤を加えてもよい。
【0051】
任意の配合成分としては、有機酸(例えば、フマル酸、コハク酸、クエン酸、酒石酸、ジアセチル酒石酸、リンゴ酸、アジピン酸、グルタル酸、マレイン酸等)、リポ蛋白(例えば、乳性蛋白とレシチンと水の混合物、卵黄蛋白とレシチンと水の混合物、大豆蛋白とレシチンと水の混合物、トウモロコシ蛋白とリン脂質と水の混合物等)、甘味料、香料(例えば、オレンジフラワーウオーター、バターフレーバー、ミルクフレーバー、バニラフレーバー等)、ビタミン、抗酸化剤などが挙げられる。
整粉乳、はっ酵乳などが挙げられる。
【0052】
[冷凍ゲル状食品の製造方法]
本発明の冷凍ゲル状食品は、45~100℃で有機酸モノグリセリドおよびその他の乳化剤を分散させて分散液(以下、「有機酸モノグリセリド含有水分散液」と称す場合がある。)を調製し、この有機酸モノグリセリド含有水分散液の所定量をゲル化前のゲル状食品の製造原料液に配合して用いること、好ましくは有機酸モノグリセリド含有水分散液と共に有機酸モノグリセリド含有水分散液中の糖類とは別に前述の糖類を添加混合すること以外は、通常の冷凍ゲル状食品の製造方法と同様に製造することができる。
【0053】
本発明において、有機酸モノグリセリドおよびその他の乳化剤を直接ゲル状食品の製造原料液に分散させて分散液としてもよいが、好ましくは、有機酸モノグリセリドおよびその他の乳化剤を水に分散させて以下の通り有機酸モノグリセリドのラメラ構造体を形成させ、有機酸モノグリセリドのラメラ構造体を形成させた有機酸モノグリセリド含有水分散液を混合することが、有機酸モノグリセリドのラメラ構造体の形成、形成されたラメラ構造体の安定化の面で好ましい。
【0054】
以下においては、水に有機酸モノグリセリドとその他の乳化剤を分散させて有機酸モノグリセリド含有水分散液を製造し、ゲル状食品の製造原料液に混合する方法について説明するが、何らこの方法に限定されるものではない。
【0055】
有機酸モノグリセリドとその他の乳化剤を45~100℃で水に分散させると、水分散液中に有機酸モノグリセリドのラメラ構造体(ラメラ液晶構造体)が形成される。
【0056】
ラメラ構造体とは、有機酸モノグリセリドを水に分散させた際に有機酸モノグリセリド2分子が親水基部分を水側に向け、疎水基部分(脂肪酸)が互いに向き合い、これが2次元的に広がった構造のことである。
【0057】
有機酸モノグリセリドは低濃度から高濃度領域の広い範囲でラメラ構造を形成し易いことが知られている。例えば、コハク酸ステアリン酸モノグリセリドは、ナトリウム塩の状態において、濃度が約35~85重量%のような高濃度領域で且つ温度が50℃以上の条件でラメラ構造体を形成する。この場合、ラメラ構造体が何層にも重なった状態が認められ、水溶液の粘度も高くなる。濃度が85重量%よりも高い場合は固体状態となり、濃度が35重量%よりも低い場合は水溶液にラメラ構造体が分散して粘性が比較的小さい状態となる。作業性などを考慮すると、低濃度かつ高温領域でラメラ構造体を形成させることが好ましい。
【0058】
ラメラ構造体は、有機酸モノグリセリドを水などの分散媒中に分散させ、物理的に撹拌し加熱することにより、分散液として調製することができる。この際の加熱温度は、分散液の温度で、通常45℃以上、好ましくは50℃以上、通常100℃以下、好ましくは80℃以下、更に好ましくは70℃以下である。上記の物理的分散には、例えば、気泡の混入を避けるため、アンカーミキサー等を使用してゆっくりと撹拌することが好ましい。
【0059】
このようにして得られるラメラ構造体を製造するための分散液(以下、ラメラ構造体分散液という場合がある)中の有機酸モノグリセリドの含有量は、通常0.1重量%以上、好ましくは1重量%以上、より好ましくは5重量%以上、通常99.9重量%以下、好ましくは60重量%以下、より好ましくは40重量%以下、さらに好ましくは30重量%以下、特に好ましくは20重量%以下である。
【0060】
上記の通り、有機酸モノグリセリドを水に分散させる際に、ショ糖脂肪酸エステルやポリグリセリン脂肪酸エステル等その他の乳化剤の1種又は2種以上を用いることで、有機酸モノグリセリドのラメラ構造体の安定性が高められ、また、水中での分散性が向上する。安定化されたラメラ構造体は、親水基部分の強い水和力により層間に多量の水を保持する。
【0061】
その他の乳化剤は、エタノール、水、糖類の水溶液などの分散媒に分散させた分散液として、上記ラメラ構造体水分散液と混合してもよいし、直接、ラメラ構造体水分散液にその他の乳化剤を添加してもよい。
【0062】
有機酸モノグリセリドとその他の乳化剤の水分散液である有機酸モノグリセリド含有水分散液中の有機酸モノグリセリドの含有量は、通常0.1重量%以上、好ましくは1重量%以上、より好ましくは3重量%以上、通常50重量%以下、好ましくは20重量%以下、より好ましくは10重量%以下、特に好ましくは5重量%以下である。有機酸モノグリセリドの含有量が過度に少ない場合は、本発明による効果が不十分となり、過度に多い場合は、有機酸モノグリセリドが水(分散媒)中に均一に分散しなくなる場合がある。
【0063】
また、有機酸モノグリセリド含有水分散液中のショ糖脂肪酸エステルやポリグリセリン脂肪酸エステル等のその他の乳化剤の含有量は、通常0.1重量%以上、好ましくは1重量%以上、より好ましくは2重量%以上、更に好ましくは3重量%以上、通常50重量%以下、好ましくは20重量%以下、より好ましくは10重量%以下、更に好ましくは5重量%以下である。その他の乳化剤の含有量がこの範囲にあることにより、有機酸モノグリセリドのラメラ構造体の水分散性がより向上する。
【0064】
この有機酸モノグリセリド含有水分散液には糖類を含むことがラメラ構造体の分散安定性の向上の観点から好ましい。
【0065】
糖類を用いる場合、その他の乳化剤の乳化剤の分散液と糖類の水溶液を混合した後、ラメラ構造体水分散液などの有機酸モノグリセリドが分散した水分散液と混合してもよいし、その他の乳化剤の分散液に糖類を添加または糖類の水溶液にその他の乳化剤を添加した後に、これらの分散液または水溶液とラメラ構造体水分散液などの有機酸モノグリセリドが分散した水分散液とを混合してもよい。
【0066】
ラメラ構造体水分散液などの有機酸モノグリセリドが分散した水分散液と、その他の乳化剤の分散液、糖類の水溶液またはこれらの混合物とを混合する場合は、その他の乳化剤の分散液、糖類の水溶液またはこれらの混合物を通常45℃以上、好ましくは50℃以上、通常100℃以下、好ましくは80℃以下、更に好ましくは70℃以下に加熱して用いてもよい。
【0067】
糖類を用いる場合、有機酸モノグリセリド含有水分散液中の糖類の含有量は、通常35重量%以上、好ましくは40重量%以上、通常85重量%以下、好ましくは60重量%以下である。糖類の含有量が上記下限以上であることにより、よりラメラ構造体の分散安定性が向上し、上記上限以下であることにより、糖の種類によって結晶が析出したり、粘度が高くなるなどの問題点が生じ難くなる。
【0068】
有機酸モノグリセリド含有水分散液中の有機酸モノグリセリドに対するその他の乳化剤、糖類の含有割合は、前述の本発明の冷凍ゲル状食品中の有機酸モノグリセリドに対するその他の乳化剤、糖類の含有割合と同様である。
【0069】
このようにして調製した有機酸モノグリセリド含有水分散液を、ゲル状食品の製造原料液中に添加混合して常法に従ってゲル状食品を製造する。
なお、この有機酸モノグリセリド含有水分散液の混合時に、更に糖類を混合することで食感や味をより良くすることができ、好ましい。この場合、風味の観点から、有機酸モノグリセリド含有水分散液とは別に添加混合する糖類は、冷凍ゲル状食品中の含有量として0.1~30重量%、特に1~10重量%とすることが好ましい。
【0070】
このようにして、有機酸モノグリセリド含有水分散液、好ましくは有機酸モノグリセリド含有水分散液と糖類を添加して調製したゲル状食品の製造原料液と、必要に応じて具材とを適当な容器に入れて、常法に従って、例えば必要に応じて冷却したり蒸したり加熱したりすることにより、ゲル状食品の製造原料液をゲル化させてゲル状食品を製造し、製造されたゲル状食品を常法に従って-18℃~-60℃に冷却して冷凍し、冷凍ゲル状食品とする。この際、緩慢冷凍、急速冷凍のいずれをも採用することができるが、急速冷凍の方が氷晶の粗大化を抑制できることから好ましい。
【0071】
冷凍ゲル状食品の解凍法としては、室温での放置による自然解凍、冷蔵庫の中で一晩から一昼夜置く庫内解凍、電子レンジでの加熱解凍、湯煎或いは蒸し器での加熱解凍などを採用することができる。
【実施例
【0072】
以下、本発明を実施例により更に詳細に説明するが、本発明は、その要旨を超えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。なお、以下において「%」および「部」は何れも重量基準を意味する。
【0073】
[製造例1:有機酸モノグリセリド含有水分散液の製造]
HLB11のショ糖ステアリン酸エステル(三菱ケミカルフーズ社製「リョートー(登録商標)シュガーエステルS-1170」)3.5部を室温で糖類の水溶液としてマルトオリゴ糖水溶液(三和澱粉工業社製「オリゴトース」、マルトオリゴ糖固形分72重量%)60部と水8部の混合液68部に分散し、撹拌しながら加温して75℃まで昇温した(以下「オリゴ糖液」と呼ぶ)。
一方、コハク酸モノグリセリド(理研ビタミン社製「ポエムB-30」、脂肪酸としてステアリン酸を用いたもの)3.5部を脱塩水25部に分散し、60℃まで昇温しながら撹拌し、ラメラ構造体の水分散液を得た。
前記のオリゴ糖液を55℃まで冷却し、上記のコハク酸モノグリセリドのラメラ構造体の水分散液を加えて20分間撹拌した。次いで、45℃まで冷却することにより、ラメラ構造体の水分散液を調製した(以下「組成物A」と呼ぶ)。なお、組成物Aのコハク酸モノグリセリドのラメラ構造体の確認は偏光顕微鏡による観察によって行った。偏光顕微鏡の写真中に偏光十字が観察され、組成物Aがラメラ構造体を有していることがわかった。
この組成物Aは、ショ糖ステアリン酸エステルを3.5重量%、マルトオリゴ糖を43重量%、コハク酸モノグリセリドのラメラ構造体を3.5重量%含むものである。
【0074】
[試験1:缶詰のフルーツを使用した冷凍フルーツゼリーについての検討]
<実施例1,2、比較例1,2>
ゲル化剤としてゼラチンまたは寒天を使用し、具材として缶詰のフルーツ(桃、リンゴ、ミカン)の刻んだものを用いてフルーツゼリーを試作した。
【0075】
ゼラチン液は、ゼラチン10gに砂糖50gを加えて混合したものを水500gに入れ、加熱混合して溶解させて調製した。
寒天液は、寒天4gに砂糖50gを加え混合したものを水500gに入れ、湯煎で加温溶解させて調製した。
このようにして調製したゼラチン液または寒天液を用いて、下記表1に示す配合でそれぞれゼリー液を調製し、調製したゼリー液をカップに約40g注ぎ、刻みフルーツ50gを加えた後ラップで蓋をし、冷蔵庫で1日保管して冷やすことでゲル化させた。ゲル化したフルーツゼリーを-20℃で凍結した。
なお、糖類としては、三和澱粉工業社製「オリゴトース」(マルトオリゴ糖固形分72重量%)を用いた。後掲の実施例でも同様である。
【0076】
各フルーツゼリーの含水率、コハク酸モノグリセリド含有率、ショ糖ステアリン酸エステル含有率、糖類含有率を表1に併記した。
【0077】
【表1】
【0078】
上記凍結前のフルーツゼリーと、凍結後、冷蔵庫内に2日間放置して解凍したフルーツゼリーの食感・食味をそれぞれ評価し、結果を表2に示した。
【0079】
【表2】
【0080】
以上の結果から、組成物Aとオリゴトースを添加したものは冷凍前後ともにフルーツ感があり、また離水が抑制され、添加効果が認められる。
【0081】
[試験2:生フルーツを使用した冷凍フルーツゼリーについての検討]
缶詰のフルーツの代りに生のフルーツ(桃、リンゴ、ミカン)を刻んだものを用いて試験1と同様にフルーツゼリーを試作し、同様に評価を行い、結果を表3に示した。なお、ゼリー液の配合は、実施例1と実施例3、実施例2と実施例4、比較例1と比較例3、比較例2と比較例4でそれぞれ同一である。
【0082】
【表3】
【0083】
以上の結果から、組成物Aとオリゴトースを添加したものは冷凍前後もフルーツ感があり、解凍時においてもゲルの離水を抑制し、フルーツの食感や味も生のフルーツ感があり、添加効果が認められる。
【0084】
[試験3:離水抑制のためにゲルの配合を変えた冷凍フルーツゼリーについての検討]
<実施例5、比較例5>
ゲル化剤としてゼラチンと寒天を併用して生のフルーツ(桃、梨、キュウイ、リンゴ)の刻んだものを用いてフルーツゼリーを試作した。
【0085】
下記配合でゼラチンと寒天、砂糖を乳鉢ですり合わせてから水を加え、湯煎で溶解させることでゲル化液を調製した。
(ゲル化液の配合)
ゼラチン :2.1g
寒天 :8.1g
砂糖 :60g
水 :530g
レスブラウンP50:3g(果物(特に桃)の変色抑制剤:アサマ化成製)
【0086】
このようにして調製したゲル化液を用いて、下記表4に示す配合でそれぞれゼリー液を調製し、調製したゼリー液をカップに約40g注ぎ、刻みフルーツ50gを加えた後ラップで蓋をし冷蔵庫で冷やした。ゲル化したフルーツゼリーを-20℃で凍結した。
表4には、フルーツゼリーの含水率、コハク酸モノグリセリド含有率、ショ糖ステアリン酸エステル含有率、糖類含有率を併記した。
【0087】
【表4】
【0088】
このようにして作製したフルーツゼリーの冷蔵庫に1日保管してゲル化させた凍結前のフルーツゼリーと、凍結後、冷蔵庫内に1日間放置して解凍したフルーツゼリーの食感・食味をそれぞれ評価し、結果を表5に示した。
【0089】
【表5】
【0090】
以上の結果から、組成物Aとオリゴトースを添加したものは冷凍前後もフルーツ感があり、解凍後においてもゲルの離水を抑制しており、添加効果が認められる。特にゲル化剤にゼラチンを加えることで離水をより抑制するゲルとなった。
【0091】
[試験4:冷凍蒸しプリンについての検討]
<実施例6,7、比較例6>
以下の手順で冷凍蒸しプリンを試作した。
【0092】
下記配合のベース液の配合原料を混合した後、こし器でこしてベース液を調製した。
(ベース液の配合)
牛乳 :500g
生卵 :208g
砂糖 :125g
バニラフレーバー :0.5g
【0093】
調製したベース液を用いて、下記表6に示す配合で、プリン液を調製し、それぞれ約70gをプリンカップに注いだ。このプリンカップにラップで蓋をして90~95℃で50分間蒸した後、放置冷却してから、-20℃で冷凍し、冷凍プリンを作製した。
【0094】
なお、20%ゼラチン液としては、ゼラチンを20重量%濃度で水に加え、湯煎で溶解したものを用いた。
各プリンの含水率、コハク酸モノグリセリド含有率、ショ糖ステアリン酸エステル含有率、糖類含有率を表6に併記した。
【0095】
【表6】
【0096】
このようにして作製した冷凍プリンを10℃の冷蔵庫内に1晩放置して解凍し、その食感・食味をそれぞれ評価し、結果を表7に示した。また、各プリンについて順位づけを行い、評価として1~3(1が最も良く、3が最も悪い)で示した。
【0097】
【表7】
【0098】
以上の結果より、組成物Aとオリゴトースを添加することで、これらを添加しないものよりも食感・食味を改善できるが、これらに加えてゼラチン液を配合することで、離水を抑制してより食感・食味のよいものとすることができることがわかる。
【0099】
[試験5:冷凍茶碗蒸しについての検討]
<実施例8、比較例7,8>
以下の手順で冷凍茶碗蒸しを試作した。
【0100】
下記配合で、だし汁の原料を全て水に溶かし、一度沸騰させた後に冷却することで、だし汁を調製した。
(だし汁の配合)
粉末かつお風味だし :10g
粉末焼きアゴだし :2g
水 :750g
【0101】
調製しただし汁を用いて、下記表8に示す配合で茶碗蒸し液を調製した。
茶碗蒸し用容器に具材50g(蒲鉾、鶏胸肉、椎茸、銀杏、三つ葉)を入れた後、ここへ、各々、茶碗蒸し液を100g入れ、85~95℃の蒸し器で45分間蒸した。得られた茶碗蒸しを冷却した後、-20℃で冷凍した。
【0102】
なお、表8には、各茶碗蒸しの含水率、コハク酸モノグリセリド含有率、ショ糖ステアリン酸エステル含有率、糖類含有率を併記した。
【0103】
【表8】
【0104】
このようにして作製した冷凍茶碗蒸しを蒸し器で15分間蒸して解凍・加熱し(55℃)、それぞれ、卵ゲル、各具材の離水の状態を調べ、結果を表9に示した。
なお、離水評価は「+」が多い程、離水の状態が悪いことを示す。「-」は離水感がないことを示す。
【0105】
【表9】
【0106】
以上の結果より、組成物Aとオリゴトースを添加したものは離水状態が改善されており、具材についても、食感・食味ともに良好となることが分かる。