(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-03
(45)【発行日】2024-06-11
(54)【発明の名称】処理液塗布装置及び画像形成システム
(51)【国際特許分類】
B05C 11/10 20060101AFI20240604BHJP
B41J 2/01 20060101ALI20240604BHJP
B05C 1/02 20060101ALI20240604BHJP
【FI】
B05C11/10
B41J2/01 123
B05C1/02 102
(21)【出願番号】P 2020012903
(22)【出願日】2020-01-29
【審査請求日】2022-11-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(72)【発明者】
【氏名】蛯原 隆司
【審査官】山本 晋也
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-129979(JP,A)
【文献】特開2020-006293(JP,A)
【文献】特開2016-060094(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B05C
B05D
B41J
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
処理液が貯留された供給カートリッジと、
処理液を貯留する供給パンと、
前記供給カートリッジと前記供給パンとを接続する第1供給経路および第2供給経路を通じて前記供給カートリッジから前記供給パンに処理液を送液する供給ポンプと、
前記供給パンが貯留する処理液を媒体に塗布する塗布手段と、
回収経路を通じて前記供給パンから回収した処理液が貯留されるリザーブタンクと、
前記リザーブタンクに貯留された処理液を前記第1供給経路に還流させる還流経路に設けられ、前記還流経路を通過する処理液から不純物を除去するフィルタと、
前記第1供給経路、前記第2供給経路及びバイパス経路の接続位置に配置され、前記供給ポンプによって送液される処理液を、前記第1供給経路および前記第2供給経路を通じて前記供給パンに供給する第1状態、及び前記バイパス経路を通じて前記リザーブタンクに供給する第2状態に切り替え可能な三方弁と、
を備え、
前記バイパス経路、前記リザーブタンク、前記還流経路は、前記供給パンより下方に配置されると共に、前記バイパス経路の一端は前記接続位置に接続され、前記バイパス経路の他端は前記リザーブタンクの底面に接続されている
ことを特徴とする処理液塗布装置。
【請求項2】
前記リザーブタンクは、前記供給パンより気密性が高いことを特徴とする請求項1に記載の処理液塗布装置。
【請求項3】
前記リザーブタンクは、
上面が開口したタンク本体と、
前記開口を閉塞する蓋と、
前記開口を囲むように前記タンク本体及び前記蓋の間に配置される弾性部材とを備える
ことを特徴とする請求項1または2に記載の処理液塗布装置。
【請求項4】
前記リザーブタンクは、
前記弾性部材及び前記蓋を貫通する連通穴に前記蓋側から挿入される筒体、及び前記筒体の上端から径方向外側に張り出して前記蓋の上面に当接するフランジを備えるカラーと、
前記フランジ側から前記筒体に挿入されて、先端が前記タンク本体のボルト穴に螺合し且つヘッドが前記フランジの上面に当接することによって、前記タンク本体及び前記蓋を締結するボルトとを備え、
前記筒体の軸方向の長さは、前記蓋の厚みと、自然状態の前記弾性部材の厚みとの合計より短いことを特徴とする請求項3に記載の処理液塗布装置。
【請求項5】
前記第1供給経路と前記還流経路との接続位置よりも前記供給カートリッジ側の前記第1供給経路を開閉する第1電磁弁と、
前記回収経路を開閉する第2電磁弁と、
前記還流経路を開閉する第3電磁弁と、
前記処理液塗布装置の動作を制御するコントローラとを備え、
前記コントローラは、
前記三方弁を前記第1状態にし、前記第1電磁弁を開放し、前記第2電磁弁及び前記第3電磁弁を閉塞した状態で前記供給ポンプを駆動することによって、前記供給カートリッジに貯留された処理液を前記供給パンに供給する第1供給モードと、
前記三方弁を前記第1状態にし、前記第1電磁弁及び前記第2電磁弁を閉塞し、前記第3電磁弁を開放した状態で前記供給ポンプを駆動することによって、前記リザーブタンクに貯留された処理液を前記供給パンに供給する第2供給モードと、
前記第1電磁弁及び前記第3電磁弁を閉塞し、前記第2電磁弁を開放することによって、前記供給パンから前記リザーブタンクに処理液を回収する回収モードと、
前記三方弁を前記第2状態にし、前記第1電磁弁及び前記第2電磁弁を閉塞し、前記第3電磁弁を開放した状態で前記供給ポンプを駆動することによって、前記
第1供給経路、前記バイパス経路、前記リザーブタンク、及び前記還流経路の間で処理液を循環させる循環モードと、に切り替え可能に構成されていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の処理液塗布装置。
【請求項6】
使用済みの処理液が貯留される廃液タンクと、
廃液経路を通じて前記リザーブタンクから前記廃液タンクに処理液を送液する廃液ポンプとを備え、
前記コントローラは、さらに、前記第2電磁弁及び前記第3電磁弁を閉塞した状態で前記廃液ポンプを駆動することによって、前記リザーブタンクに貯留された処理液を前記廃液タンクに廃棄する廃棄モードに切り替え可能に構成されていることを特徴とする請求項5に記載の処理液塗布装置。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれか1項に記載の処理液塗布装置と、
前記処理液塗布装置によって処理液が塗布された媒体に画像を形成する画像形成装置と、
を備えることを特徴とする画像形成システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、処理液塗布装置及び画像形成システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、インクのにじみ防止や浸透補助等の画質向上を目的として、インクジェット方式の画像形成装置で画像を形成するのに先立って、シートに前処理液を塗布する塗布装置が知られている。
【0003】
このような塗布装置は、例えば、処理液バッファタンクに貯留された処理液を塗布皿に供給し、塗布皿に残った処理液を処理液バッファタンクに還流させる(例えば、特許文献1参照)。ここで、塗布皿から還流した処理液には紙粉などの不純物が混入するので、再び塗布皿に供給する前に不純物を除去する必要がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の塗布装置には、処理液バッファタンクからフィルタ、供給ポンプ、第1の判定用タンクを通って、再び処理液バッファタンクに処理液を還流させる経路(以下、「循環経路」と表記する。)が設けられている。そのため、処理液が循環経路を通過することによって、処理液に混在する不純物が除去されると考えられる。
【0005】
しかしながら、特許文献1の塗布装置において、処理液バッファタンクと第1の判定用タンクとは、上下方向に大きく離間して配置されているので、循環経路に処理液を循環させる際の供給ポンプの負荷が大きくなるという課題がある。
【0006】
本発明は、媒体に塗布する処理液を供給する経路と独立して、処理液に混入した不純物を除去するための経路を備える処理液塗布装置において、処理液から不純物を除去する際のポンプの負荷を軽減する技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記技術的課題を解決するため、本発明の一態様は、処理液が貯留された供給カートリッジと、処理液を貯留する供給パンと、前記供給カートリッジと前記供給パンとを接続する第1供給経路および第2供給経路を通じて前記供給カートリッジから前記供給パンに処理液を送液する供給ポンプと、前記供給パンが貯留する処理液を媒体に塗布する塗布手段と、回収経路を通じて前記供給パンから回収した処理液が貯留されるリザーブタンクと、前記リザーブタンクに貯留された処理液を前記第1供給経路に還流させる還流経路に設けられ、前記還流経路を通過する処理液から不純物を除去するフィルタと、前記第1供給経路、前記第2供給経路及びバイパス経路の接続位置に配置され、前記供給ポンプによって送液される処理液を、前記第1供給経路および前記第2供給経路を通じて前記供給パンに供給する第1状態、及び前記バイパス経路を通じて前記リザーブタンクに供給する第2状態に切り替え可能な三方弁と、を備え、前記バイパス経路、前記リザーブタンク、前記還流経路は、前記供給パンより下方に配置されると共に、前記バイパス経路の一端は前記接続位置に接続され、前記バイパス経路の他端は前記リザーブタンクの底面に接続されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、処理液から不純物を除去する際のポンプの負荷を軽減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】実施形態に係る画像形成システムの全体概略を示す側面図。
【
図5】カラーの有無によるタンク本体と蓋との締結部分の形状を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照しつつ実施形態に係る画像形成システム1について説明する。
図1は、実施形態に係る画像形成システム1の全体概略を示す側面図である。画像形成システム1は、シート供給装置10と、前処理装置(処理液塗布装置)20と、画像形成装置30と、乾燥装置40と、シート積載装置50とを主に備える。
【0011】
シート供給装置10は、画像が形成される前のシートPが積層される給紙スタック11と、給紙スタック11に積層されたシートPを1枚ずつピックアップして前処理装置20に供給するエアー分離部12とを主に備える。シートPは、例えば、紙(用紙)、OHPシート、糸、繊維、布帛、皮革、金属、プラスチック、ガラス、木材、セラミックスなど、インクを付着させて画像を形成することが可能なあらゆる媒体を指す。
【0012】
前処理装置20は、シート供給装置10から供給されたシートPの片面または両面に前処理液(処理液)を塗布し、前処理液が塗布されたシートPを画像形成装置30に供給する。前処理液は、インクを凝集させる機能を有する処理液であって、インクのにじみ防止や浸透補助等の画質向上を目的として、画像形成装置30によって画像が形成される前のシートPに塗布される。前処理装置20の詳細な構成は後述する。
【0013】
画像形成装置30は、シートPにインクを吐出することによって、当該シートPに画像を形成するインクジェット方式を採用している。画像形成装置30は、シートPを搬送する円筒形状ドラム31と、シートPにインクを吐出するヘッドモジュール32とを主に備える。
【0014】
円筒形状ドラム31は、前処理装置20から供給されるシートPを表面(ドラム円周面)に保持して、ヘッドモジュール32に対面する位置に搬送し、ヘッドモジュール32によって画像が形成されたシートPを乾燥装置40に供給する。
【0015】
ヘッドモジュール32は、円筒形状ドラム31の表面に沿って放射状に配置される複数のヘッドモジュール32C、32M、32Y、32Kを有する。ヘッドモジュール32C、32M、32Y、32Kは、それぞれC(シアン)、M(マゼンタ)、Y(イエロー)、K(ブラック)の各色のインクを吐出する。
【0016】
乾燥装置40は、画像形成装置30によって画像が形成されたシートPを乾燥させる。乾燥装置40は、シートPに温風を吹き付ける乾燥ユニット41と、シートPを反転させて再び画像形成装置30に供給するシート反転機構42とを備える。
【0017】
すなわち、シートPの片面にのみ画像を形成する場合、乾燥装置40は、画像形成装置30から供給されたシートPを、乾燥ユニット41によって乾燥させ、シート積載装置50に供給する。一方、シートPの両面に画像を形成する場合、乾燥装置40は、画像形成装置30から供給されたシートPを、乾燥ユニット41によって乾燥させ、シート反転機構42によって反転させて画像形成装置30に供給する。さらに、乾燥装置40は、画像形成装置に30によって両面に画像が形成されたシートPを、乾燥ユニット41によって乾燥させ、シート積載装置50に供給する。
【0018】
シート積載装置50は、画像形成装置30によって画像が形成され、乾燥装置40によって乾燥されたシートPを、積層した状態で保持する。また、シート積載装置50は、乾燥装置40から供給されたシートPに対して、パンチ孔を開ける孔あけ処理、複数のシートPを束ねて端部を綴じる端部綴じ処理、中綴じをする中綴じ処理などの所謂「後処理」を実行してもよい。
【0019】
図2は、前処理装置20の概略図である。前処理装置20は、供給カートリッジ201と、供給パン202と、リザーブタンク203と、廃液タンク204とを主に備える。供給カートリッジ201、供給パン202、リザーブタンク203、及び廃液タンク204は、前処理液を貯留することができる箱型の部材である。
【0020】
供給カートリッジ201は、未使用の前処理液が貯留されており、前処理装置20に対して着脱可能に構成されている。供給パン202には、シートPに塗布する前処理液が一時的に貯留される。リザーブタンク203には、シートPに塗布された後の前処理液が一時的に貯留される。廃液タンク204には、使用済みの前処理液が貯留されており、前処理装置20に対して着脱可能に構成されている。
【0021】
前処理装置20の内部において、供給カートリッジ201及びリザーブタンク203は、供給パン202より重力方向の下方に配置されている。また、供給カートリッジ201及びリザーブタンク203は、ほぼ同一の高さに配置されているのが望ましい。例えば、供給カートリッジ201及びリザーブタンク203は、前処理装置20を水平方向から見たときに、少なくとも一部同士が重なるように配置されている。さらに、リザーブタンク203は、供給パン202より高い気密性を有する。リザーブタンク203の具体的な構成は後述する。
【0022】
供給カートリッジ201と供給パン202とは、第1供給経路L1及び第2供給経路L2を通じて接続されている。供給パン202とリザーブタンク203とは、回収経路L3を通じて接続されている。リザーブタンク203と第1供給経路L1とは、還流経路L4を通じて接続されている。第1供給経路L1及び第2供給経路L2の接続位置とリザーブタンク203とは、供給パン202をバイパスするバイパス経路L5を通じて接続されている。リザーブタンク203と廃液タンク204とは、廃液経路L6を通じて接続されている。
【0023】
各経路L1~L6は、前処理液が通過可能な管路(配管、チューブ)である。なお、前処理装置20内において、第1供給経路L1、還流経路L4、及びバイパス経路L5は、供給パン202より下方に配置される。また、第2供給経路L2及び回収経路L3は、供給パン202の底面に接続されているのが望ましい。さらに、還流経路L4、バイパス経路L5、及び廃液経路L6は、リザーブタンク203の底面に接続されているのが望ましい。
【0024】
前処理装置20は、三方弁205と、電磁弁206、207、208、209と、供給ポンプ210と、廃液ポンプ211と、フィルタ212と、液面検知センサ213、214と、退避センサ215とを備える。なお、電磁弁208、209の一方は省略可能である。
【0025】
三方弁205は、第1供給経路L1、第2供給経路L2、及びバイパス経路L5の接続位置に配置されている。三方弁205は、第1状態及び第2状態に切り替え可能に構成されている。三方弁205の状態は、後述するコントローラ100によって切り替えられる。
【0026】
第1状態は、第1供給経路L1と第2供給経路L2とを連通させ、第1供給経路L1とバイパス経路L5とを遮断する状態である。すなわち、三方弁205が第1状態のとき、第1供給経路L1内の前処理液は、第2供給経路L2に供給され、バイパス経路L5に供給されない。一方、第2状態は、第1供給経路L1とバイパス経路L5とを連通させ、第1供給経路L1と第2供給経路L2とを遮断する状態である。三方弁205が第2状態のとき、第1供給経路L1内の前処理液は、バイパス経路L5に供給され、第2供給経路L2に供給されない。
【0027】
電磁弁206(第1電磁弁)は、還流経路L4との接続位置より供給カートリッジ201側において、第1供給経路L1を開閉する。電磁弁207(第2電磁弁)は、回収経路L3を開閉する。電磁弁208(第3電磁弁)は、フィルタ212よりリザーブタンク203側において、還流経路L4を開閉する。電磁弁209(第3電磁弁)は、フィルタ212より第1供給経路L1側において、還流経路L4を開閉する。電磁弁206~209は、コントローラ100によって開閉される。
【0028】
なお、電磁弁206、208、209は、例えば、コントローラ100から制御電圧が印加されている間だけ開放され、制御電圧の印加が停止すると閉塞する。一方、電磁弁207は、例えば、コントローラ100から制御電圧が印加されている間だけ閉塞され、制御電圧の印加が停止すると開放される。これにより、前処理装置20の電源がOFFされた状態で回収経路L3を開放して、供給パン202からリザーブタンク203に前処理装置を回収することができる。
【0029】
供給ポンプ210は、還流経路L4との接続位置と三方弁205との間において、第1供給経路L1に設けられている。供給ポンプ210は、供給カートリッジ201またはリザーブタンク203に貯留されている前処理液を、供給パン202またはリザーブタンク203に送液する。廃液ポンプ211は、廃液経路L6に設けられている。廃液ポンプ211は、リザーブタンク203に貯留されている前処理液を、廃液タンク204に送液する。供給ポンプ210及び廃液ポンプ211の駆動は、コントローラ100によって制御される。
【0030】
フィルタ212は、電磁弁208、209の間において、還流経路L4に設けられている。フィルタ212は、還流経路L4を通過する前処理液から不純物を除去する。前処理液に混入した不純物とは、例えば、供給パン202を通過するシートPの紙粉、供給パン202に流入する空気に含まれる塵埃などである。フィルタ212は周知の素材を使用することができるので、詳細な説明は省略する。
【0031】
液面検知センサ213は、供給パン202に貯留された前処理液の液面の位置(高さ)を検知し、検知結果を示す検知信号をコントローラ100に出力する。液面検知センサ214は、リザーブタンク203に貯留された前処理液の液面の位置(高さ)を検知し、検知結果を示す検知信号をコントローラ100に出力する。退避センサ215は、供給パン202内に前処理液がなくなったことを検知し、検知結果を示す検知信号をコントローラ100に出力する。
【0032】
供給パン202には、塗布装置(塗布手段)220が収容されている。塗布装置220は、供給パン202に貯留された前処理液をシートPに塗布する。塗布装置220は、汲み上げローラ221と、中間ローラ222と、塗布ローラ223と、加圧ローラ224と、サポートローラ225とを主に備える。塗布装置220は、周知の構成を採用することができる。
【0033】
汲み上げローラ221は、供給パン202に貯留された前処理液に浸漬された状態で回転することによって、前処理液を汲み上げる。中間ローラ222は、汲み上げローラ221によって汲み上げられた前処理液を塗布ローラ223に供給する。塗布ローラ223及び加圧ローラ224は、シートPを挟持して回転する。サポートローラ225は、加圧ローラ224をシートPに弾接させる。そして、塗布ローラ223がシートPに接触した状態で回転することによって、中間ローラ222を通じて供給される前処理液がシートPに塗布される。
【0034】
図3は、リザーブタンク203の概略図である。
図4は、タンク本体231と蓋232との締結部分の断面図である。
図5は、カラー234の有無によるタンク本体231と蓋232との締結部分の形状を示す図である。
図3及び
図4に示すように、リザーブタンク203は、タンク本体231と、蓋232と、シール材(弾性部材)233と、複数のカラー234と、複数のボルト238とで構成される。
【0035】
タンク本体231は、上面が開口した箱型である。より詳細には、タンク本体231は、底壁と、底壁の外縁に立設される側壁と、側壁の上端から外側に張り出し且つ周方向に連続するフランジ部とで構成される。そして、回収経路L3及び液面検知センサ214はタンク本体231の側壁に接続され、還流経路L4、バイパス経路L5、及び廃液経路L6はタンク本体231の底壁に接続されている。
【0036】
蓋232は、タンク本体231の上面の開口を閉塞するように、タンク本体231に取り付けられる。より詳細には、蓋232は、タンク本体231のフランジ部に、シール材233を挟んで載置される。
【0037】
シール材233は、タンク本体231の開口を囲むように、タンク本体231及び蓋232の間に配置される。すなわち、シール材233は、タンク本体231のフランジ部に載置される枠型である。シール材233は、例えば、スポンジ材、ゴム材などの弾性体で構成される。すなわち、シール材233は、タンク本体231のフランジ部と蓋232とで挟まれることによって、全体的に圧縮変形してリザーブタンク203の密閉性(気密性)を高める。
【0038】
すなわち、リザーブタンク203は、一部が開放されている供給パン202より密閉性(気密性)が高い。但し、リザーブタンク203は、水頭差によって供給パン202から前処理液が移動可能な程度に、空気の流出入が可能に構成されている。
【0039】
図4に示すように、タンク本体231には、フランジ部の上面にボルト穴231Aが形成されている。また、蓋232及びシール材233には、ボルト穴231Aに対面する位置に、厚み方向に貫通する貫通穴232A、233Aが形成されている。すなわち、貫通穴232A、233A(連通穴)は、相互に連通している。また、貫通穴232Aの直径は、貫通穴233Aより小さい。ボルト穴231A及び貫通穴232A、233Aは、フランジ部の周方向に離間した複数の位置に形成されている。
【0040】
貫通穴232A、233Aには、蓋232の側からカラー234が挿入される。カラー234は、円筒形状の筒体235と、筒体235の上端から径方向外側に張り出すフランジ236とを備える。筒体235の外径は貫通穴232Aより小さく、フランジ236の直径は貫通穴232Aより大きい。また、筒体235の軸方向の長さは、蓋232の厚みと、自然状態(圧縮されていない状態)のシール材233の厚みとの合計より短い。
【0041】
そのため、蓋232の側から筒体235を貫通穴232A、233Aに挿入すると、フランジ236が蓋232の上面に当接し、筒体235の先端(下端)とタンク本体231との間には隙間が形成される。
【0042】
さらに、貫通穴232A、233Aに挿入したカラー234の貫通穴237に、フランジ236の側からボルト238を挿入する。ボルト238は、ねじ部239と、ヘッド240とで構成される。ねじ部239の直径は筒体235の内径より小さく、ヘッド240の直径は筒体235の内径より大きい。
【0043】
そして、
図5(A)に示すように、シール材233を圧縮しながらボルト238のねじ部239をボルト穴231Aに螺合させることによって、タンク本体231と蓋232とがシール材233を挟んで締結される。なお、シール材233をある程度圧縮すると、カラー234の先端(下端)がタンク本体231の上面に当接する。すなわち、カラー234の長さによって、シール材233の圧縮量を管理することができる。
【0044】
一方、
図5(B)に示すように、カラー234を挿入せずに、タンク本体231と蓋232とをボルト238で締結すると、ボルト238の近傍のシール材233が過剰に潰れて、蓋232に撓みが生じる可能性がある。その結果、ボルト238から離れた部分では、タンク本体231と蓋232との間に隙間が生じることになる。なお、
図5(B)の例でも、ボルト238の締め付けトルクの管理を徹底すれば、シール材233の圧縮量を適正値に保つことができる。但し、この方法では、蓋232の着脱の度にトルク管理が必要となり、作業工数が増大してしまう。
【0045】
図6は、前処理装置20のハードウェア構成を示す図である。
図6に示すように、前処理装置20は、CPU(Central Processing Unit)110、RAM(Random Access Memory)120、ROM(Read Only Memory)130、HDD(Hard Disk Drive)140、及びI/F160が共通バス180を介して接続されている構成を備える。CPU110、RAM120、ROM130、HDD140は、コントローラ100の一例である。
【0046】
CPU110は演算手段であり、前処理装置20全体の動作を制御する。RAM120は、情報の高速な読み書きが可能な揮発性の記憶媒体であり、CPU110が情報を処理する際の作業領域として用いられる。ROM130は、読み出し専用の不揮発性の記憶媒体であり、ファームウェア等のプログラムが格納されている。HDD140は、情報の読み書きが可能であって記憶容量が大きい不揮発性の記憶媒体であり、OS(Operating System)や各種の制御プログラム、アプリケーションプログラムなどが格納される。
【0047】
前処理装置20は、ROM130に格納された制御用プログラム、HDD140などの記憶媒体からRAM120にロードされた情報処理プログラム(アプリケーションプログラム)などをCPU110が備える演算機能によって処理する。その処理によって、前処理装置20の種々の機能モジュールを含むソフトウェア制御部が構成される。このようにして構成されたソフトウェア制御部と、前処理装置20に搭載されるハードウェア資源との組み合わせによって、前処理装置20の機能を実現する機能ブロックが構成される。
【0048】
I/F160は、三方弁205、電磁弁206~209、供給ポンプ210、廃液ポンプ211、液面検知センサ213、214、及び退避センサ215を、共通バス180に接続するインタフェースである。すなわち、コントローラ100は、I/F160を通じて、三方弁205及び電磁弁206~209に制御電圧を印加し、供給ポンプ210及び廃液ポンプ211に駆動電流を供給し、液面検知センサ213、214及び退避センサ215から検知信号を取得する。
【0049】
コントローラ100は、三方弁205、電磁弁206~209、供給ポンプ210、及び廃液ポンプ211を制御することによって、第1供給モード、第2供給モード、回収モード、循環モード、及び廃棄モードに切り替え可能に構成されている。
【0050】
コントローラ100は、第1供給モードにおいて、三方弁205を第1状態にし、電磁弁206を開放し、電磁弁207、208、209を閉塞した状態で、供給ポンプ210を駆動する。これにより、供給カートリッジ201に貯留されている前処理液が、第1供給経路L1及び第2供給経路L2を通じて、供給パン202に供給される。
【0051】
また、コントローラ100は、第2供給モードにおいて、三方弁205を第1状態にし、電磁弁206、207を閉塞し、電磁弁208、209を開放した状態で、供給ポンプ210を駆動する。これにより、リザーブタンク203に貯留されている前処理液が、還流経路L4、第1供給経路L1、及び第2供給経路L2を通じて、供給パン202に供給される。
【0052】
また、コントローラ100は、回収モードにおいて、電磁弁206、208、209を閉塞し、電磁弁207を開放する。これにより、供給パン202に貯留されている前処理液が、回収経路L3を通じてリザーブタンク203に回収される。なお、供給パン202の前処理液は、水頭差によってリザーブタンク203へ移動するので、ポンプ210、211を駆動する必要はない。
【0053】
また、コントローラ100は、循環モードにおいて、三方弁205を第2状態にし、電磁弁206、207を閉塞し、電磁弁208、209を開放した状態で、供給ポンプ210を駆動する。これにより、第1供給経路L1、バイパス経路L5、リザーブタンク203、還流経路L4の間(以下、この経路を「循環経路」と表記する。)で前処理液が循環する。
【0054】
循環経路は、供給パン202をバイパスして前処理液を循環させる経路である。すなわち、循環モードのときの前処理液は、気密性の低い供給パン202を通過せずに、循環経路を循環する。そして、循環する前処理液がフィルタ212を繰り返し通過することによって、前処理液に混入した不純物が除去される。
【0055】
さらに、コントローラ100は、廃棄モードにおいて、電磁弁207、208、209を閉塞した状態で、廃液ポンプ211を駆動する。これにより、リザーブタンク203に貯留された処理液が、廃液経路L6を通じて、廃液タンク204に廃棄される。
【0056】
図7は、塗布処理のフローチャートである。コントローラ100は、例えば、シートPに画像を形成する画像形成指示が画像形成システム1に入力されたタイミングで、
図7に示す塗布処理を実行する。なお、塗布処理の一部は、前処理装置20のコントローラ100ではなく、画像形成システム1のコントローラによって実行されてもよい。
【0057】
まず、コントローラ100は、貯留期間が経過したか否かを判定する(S701)。貯留期間とは、リザーブタンク203に前処理液を貯留しておける期間である。換言すれば、貯留期間は、供給カートリッジ201から前処理液が排出されてからの経過時間である。貯留期間は、前処理液の性能が所定のレベルまで低下するまでの期間であって、予め定められている。そこで、コントローラ100は、後述するステップS703の処理を実行した時点からの経過時間を計測する。
【0058】
次に、コントローラ100は、既に貯留期間が経過したと判定した場合に(S701:Yes)、廃棄モードに切り替えて、リザーブタンク203内の前処理液を廃液経路L6を通じて廃液タンク204に廃棄する(S702)。そして、コントローラ100は、液面検知センサ214によってリザーブタンク203内の前処理液が全て廃棄されたことを検知したタイミングで、廃液ポンプ211の駆動を停止する。
【0059】
次に、コントローラ100は、第1供給モードに切り替えて、供給カートリッジ201内の前処理液を第1供給経路L1及び第2供給経路L2を通じて供給パン202に供給する(S703)。そして、コントローラ100は、液面検知センサ213によって供給パン202に所定量の前処理液が貯留されたことを検知したタイミングで、供給ポンプ210の駆動を停止する。また、コントローラ100は、新たな貯留期間の計測を開始する。
【0060】
一方、コントローラ100は、未だ貯留期間が経過していないと判定した場合に(S701:No)、第2供給モードに切り替えて、リザーブタンク203内の前処理液を還流経路L4、第1供給経路L1、及び第2供給経路L2を通じて供給パン202に供給する(S704)。そして、コントローラ100は、液面検知センサ213によって供給パン202に所定量の前処理液が貯留されたことを検知したタイミングで、供給ポンプ210の駆動を停止する。
【0061】
すなわち、コントローラ100は、貯留期間が経過したか否かによって、ステップS702とステップS703の処理、及びステップS704の処理の一方を選択的に実行して、供給パン202に前処理液を供給する。次に、コントローラ100は、塗布装置220を駆動して、シート供給装置10から供給されるシートPに前処理液を塗布する(S705)。
【0062】
次に、コントローラ100は、シートPに対する前処理液の塗布が終了すると(S705:Yes)、塗布装置220を停止すると共に、回収モードに切り替えて、供給パン202内の前処理液を回収経路L3を通じてリザーブタンク203に回収する(S706)。なお、電磁弁207は制御電圧が印加されていないときに開放され、供給パン202からリザーブタンク203への前処理液の移動は水頭差によって行われる。そのため、ステップS706の処理は、前処理装置20の電源がOFFされても実行される。
【0063】
次に、コントローラ100は、退避センサ215によって供給パン202内の前処理液が全て回収されたことを検知した場合に、循環モードに切り替えて、第1供給経路L1、バイパス経路L5、リザーブタンク203、還流経路L4の間で前処理液を循環させる(S707)。これにより、前処理液がフィルタ212を繰り返し通過するので、前処理液に混入した不純物が除去される。
【0064】
なお、前処理装置20の電源がOFFされた場合、ステップS707の処理は実行されない。その場合、コントローラ100は、次に前処理装置20の電源がONされたタイミング、または次に実行するステップS704の処理の直前のタイミングで、ステップS707の処理を実行すればよい。すなわち、ステップS707の処理の実行タイミングは、
図7の例に限定されない。
【0065】
上記の実施形態によれば、例えば以下の作用効果を奏する。
【0066】
上記の実施形態によれば、第1供給経路L1、バイパス経路L5、リザーブタンク203、及び還流経路L4の間で前処理液を循環させることによって、リザーブタンク203に貯留された前処理液から不純物を除去することができる。このとき、リザーブタンク203、還流経路L4、及びバイパス経路L5が供給パン202より下方に配置されているので、循環モードにおける供給ポンプ210の負荷を低減することができる。
【0067】
また、上記の実施形態によれば、リザーブタンク203の気密性を供給パン202より高めることによって、リザーブタンク203に貯留された前処理液に含まれる水分の蒸発を抑制することができる。その結果、前処理液の粘土の上昇が抑制されるので、前処理液の寿命(すなわち、貯留期間)を延伸することができる。
【0068】
また、上記の実施形態によれば、タンク本体231と蓋232と締結する際のシール材233の圧縮量を、カラー234の長さによって管理することができる。これにより、ボルト238の締め付けトルクを管理する方法と比較して、簡単且つ確実にリザーブタンク203の隙間を埋めることができる。
【0069】
さらに、上記の実施形態によれば、第1供給モード、第2供給モード、回収モード、循環モード、廃棄モードの切り替えを、三方弁205及び電磁弁206~209の切り替えによって実現できる。これにより、
図7に示す塗布処理を、シンプルな構成で実現することができる。
【0070】
なお、上記の実施形態では、処理液塗布装置の例として、画像が形成される前のシートPに前処理液を塗布する前処理装置20を説明した。しかしながら、処理液塗布装置の具体例は、前処理装置20に限定されない。他の例として、処理液塗布装置は、画像が形成された後のシートPに後処理液(処理液)を塗布する後処理装置であってもよい。
【0071】
なお、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、その技術的要旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能であり、特許請求の範囲に記載された技術思想に含まれる技術的事項の全てが本発明の対象となる。上記実施形態は、好適な例を示したものであるが、当業者であれば、開示した内容から様々な変形例を実現することが可能である。そのような変形例も、特許請求の範囲に記載された技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0072】
1 画像形成システム
10 シート供給装置
11 給紙スタック
12 エアー分離部
20 前処理装置(処理液塗布装置)
30 画像形成装置
31 円筒形状ドラム
32 ヘッドモジュール
40 乾燥装置
41 乾燥ユニット
42 シート反転機構
50 シート積載装置
100 コントローラ
110 CPU
120 RAM
130 ROM
140 HDD
160 I/F
180 共通バス
201 供給カートリッジ
202 供給パン
203 リザーブタンク
204 廃液タンク
205 三方弁
206,207,208,209 電磁弁
210 供給ポンプ
211 廃液ポンプ
212 フィルタ
213,214 液面検知センサ
215 退避センサ
220 塗布装置(塗布手段)
221 汲み上げローラ
222 中間ローラ
223 塗布ローラ
224 加圧ローラ
225 サポートローラ
231 タンク本体
231A ボルト穴
232 蓋
232A,233A,237 貫通穴
233 シール材(弾性部材)
234 カラー
235 筒体
236 フランジ
238 ボルト
239 ねじ部
240 ヘッド
L1 第1供給経路
L2 第2供給経路
L3 回収経路
L4 還流経路
L5 バイパス経路
L6 廃液経路
【先行技術文献】
【特許文献】
【0073】