(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-03
(45)【発行日】2024-06-11
(54)【発明の名称】熱交換器およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
F28D 7/06 20060101AFI20240604BHJP
B21D 53/04 20060101ALI20240604BHJP
F28D 7/16 20060101ALI20240604BHJP
F28F 9/22 20060101ALI20240604BHJP
F28F 19/04 20060101ALI20240604BHJP
H01M 10/613 20140101ALN20240604BHJP
H01M 10/625 20140101ALN20240604BHJP
H01M 10/655 20140101ALN20240604BHJP
【FI】
F28D7/06
B21D53/04 Z
F28D7/16 D
F28F9/22
F28F19/04 Z
H01M10/613
H01M10/625
H01M10/655
(21)【出願番号】P 2020126941
(22)【出願日】2020-07-28
【審査請求日】2023-06-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000004455
【氏名又は名称】株式会社レゾナック
(74)【代理人】
【識別番号】100109911
【氏名又は名称】清水 義仁
(74)【代理人】
【識別番号】100071168
【氏名又は名称】清水 久義
(74)【代理人】
【識別番号】100099885
【氏名又は名称】高田 健市
(72)【発明者】
【氏名】伊川 俊輔
【審査官】豊島 ひろみ
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2019/0301809(US,A1)
【文献】特開2020-003132(JP,A)
【文献】特開2013-002753(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0200429(US,A1)
【文献】実開平02-014586(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F28D 1/00-13/00
B21D 47/00-55/00
F28F 9/00-19/06
H01M 10/52-10/667
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属製の伝熱層の少なくとも片面に樹脂層が積層されたラミネート材によって表皮部が形成された外装体を備えた熱交換器であって、
前記外装体が、中間連結部と、その中間連結部の一方側に設けられた一方側伝熱部と、他方側に設けられた他方側伝熱部とに区分けされ、
折曲状に形成された前記中間連結部を介して、前記一方側伝熱部と前記他方側伝熱部とが互いに間隔をおいて並列に配置され、
前記一方側伝熱部の出入口から流入した熱交換媒体が、前記一方側伝熱部、前記中間連結部および前記他方側伝熱部を流通して前記他方側伝熱部の出入口から流出するように構成され
、
前記中間連結部の内部に、その内部の流路断面積を確保するためのスペーサが設けられ、
前記一方側伝熱部および前記他方側伝熱部の内部にインナーフィンが設けられ、
前記一方側伝熱部および前記他方側伝熱部と、前記インナーフィンとが接合されるとともに、
前記インナーフィンにおける前記中間連結部側の端縁に、前記一方側伝熱部および前記他方側伝熱部の前記外装体において対向し合う一対の表皮部のうち、内側の表皮部に対して接合されていない非接合部が設けられたことを特徴とする熱交換器。
【請求項2】
前記中間連結部の前記外装体において対向し合う一対の表皮部のうち、少なくとも内側の表皮部に、その表皮部の一部が弛んで内側に膨出した弛み変形部が設けられている請求項
1に記載の熱交換器。
【請求項3】
金属製の伝熱層の少なくとも片面に樹脂層が積層されたラミネート材によって表皮部が形成された外装体を備えた熱交換器であって、
前記外装体が、中間連結部と、その中間連結部の一方側に設けられた一方側伝熱部と、他方側に設けられた他方側伝熱部とに区分けされ、
折曲状に形成された前記中間連結部を介して、前記一方側伝熱部と前記他方側伝熱部とが互いに間隔をおいて並列に配置され、
前記一方側伝熱部の出入口から流入した熱交換媒体が、前記一方側伝熱部、前記中間連結部および前記他方側伝熱部を流通して前記他方側伝熱部の出入口から流出するように構成され
、
前記中間連結部の内部に、その内部の流路断面積を確保するためのスペーサが設けられ、
前記中間連結部の前記外装体において対向し合う一対の表皮部のうち、少なくとも内側の表皮部に、その表皮部の一部が弛んで内側に膨出した弛み変形部が設けられていることを特徴とする熱交換器。
【請求項4】
前記中間連結部の前記外装体において対向し合う一対の表皮部のうち、少なくとも外側の表皮部に前記スペーサが接合されている請求項
1~3のいずれか1項に記載の熱交換器。
【請求項5】
前記一対の表皮部のうち、内側の表皮部に前記スペーサが接合されていない請求項
4に記載の熱交換器。
【請求項6】
前記スペーサは、前記中間連結部における熱交換媒体流通方向の全域にわたって配置されている請求項
1~5のいずれか1項に記載の熱交換器。
【請求項7】
金属製の伝熱層の少なくとも片面に樹脂層が積層されたラミネート材によって表皮部が形成された外装体を備え、かつ平パネル状に形成された半製品を作製する工程と、
前記半製品における前記外装体を、中間連結部と、その中間連結部の一方側に設けられた一方側伝熱部と、他方側に設けられた他方側伝熱部とに区分けするとともに、前記中間連結部を折曲することによって、前記一方側伝熱部と前記他方側伝熱部とを互いに間隔をおいて並列に配置する工程とを含み、
前記一方側伝熱部の出入口から流入した熱交換媒体が、前記一方側伝熱部、前記中間連結部および前記他方側伝熱部を流通して前記外装体から流出するように構成され
、
前記中間連結部の内部に、その内部の流路断面積を確保するためのスペーサが設けられ、
前記一方側伝熱部および前記他方側伝熱部の内部にインナーフィンが設けられ、
前記一方側伝熱部および前記他方側伝熱部と、前記インナーフィンとが接合されるとともに、
前記インナーフィンにおける前記中間連結部側の端縁に、前記一方側伝熱部および前記他方側伝熱部の前記外装体において対向し合う一対の表皮部のうち、内側の表皮部に対して接合されていない非接合部が設けられた熱交換器を製造するようにしたことを特徴とする熱交換器の製造方法。
【請求項8】
金属製の伝熱層の少なくとも片面に樹脂層が積層されたラミネート材によって表皮部が形成された外装体を備え、かつ平パネル状に形成された半製品を作製する工程と、
前記半製品における前記外装体を、中間連結部と、その中間連結部の一方側に設けられた一方側伝熱部と、他方側に設けられた他方側伝熱部とに区分けするとともに、前記中間連結部を折曲することによって、前記一方側伝熱部と前記他方側伝熱部とを互いに間隔をおいて並列に配置する工程とを含み、
前記一方側伝熱部の出入口から流入した熱交換媒体が、前記一方側伝熱部、前記中間連結部および前記他方側伝熱部を流通して前記外装体から流出するように構成され
、
前記中間連結部の内部に、その内部の流路断面積を確保するためのスペーサが設けられ、
前記中間連結部の前記外装体において対向し合う一対の表皮部のうち、少なくとも内側の表皮部に、その表皮部の一部が弛んで内側に膨出した弛み変形部が設けられた熱交換器を製造するようにしたことを特徴とする熱交換器の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、金属製の伝熱層に樹脂層が積層されたラミネート材によって表皮部が形成された外装体を備えた熱交換器およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ハイブリッド自動車(HEV)、電気自動車(EV)等においては、電動機を駆動するための電力を供給するバッテリー装置が搭載されている。このようなバッテリー装置としては、リチウム二次電池等の各種の二次電池からなる複数個の小型単電池が直列または並列に多数接続されて組電池の形態としたものが一般に用いられている。特に近年になって電気自動車の航続距離を延長させるために、複数の組電池が直列または並列に組み合わされて、バッテリー装置のさらなる大容量化が進められている。
【0003】
一方、バッテリー装置として多く用いられるリチウム二次電池は、使用温度によって性能や寿命が大きく変化するため、長期間にわたって効率良く使用するには適正な温度に管理するのが好ましい。しかしながら、上記のような複数の組電池の形態で使用した場合、複数の組電池が密接して配置されているため、各組電池や各単電池から発生する熱を効果的に放出させることは困難であり、各組電池毎の温度が上昇してしまい、性能や寿命が低下してしまうおそれがある。
【0004】
そこで下記特許文献1に示すような薄型の熱交換器を用いて、複数の組電池を冷却するようにした技術が開発されている。この熱交換器は、2枚の金属製皿状プレートを対向合致させて熱交換器(扁平チューブ)を形成し、複数の組電池の各間に扁平チューブがそれぞれ配置されることによって、組電池の各単電池から発せられる熱を、扁平チューブ内を流通する冷媒(冷却水)を介して外部に放出させるようにしている。
【0005】
このような技術背景の下、自動車バッテリー装置としての複数の組電池を冷却するための熱交換器は、他の自動車部品と同様、薄型化、小型軽量化、低コスト化が可及的に求められ、その一環として、柔軟性の高いラミネート材を用いた熱交換器の採用が検討されている。
【0006】
ラミネート材を用いた熱交換器は、金属製の伝熱層の両面に樹脂製の被覆層が積層されたラミネート材によって構成された外装体を備えている。外装体には出入口が設けられており、この出入口を介して、外装体の内部に冷却液が循環できるように構成されている。そして、熱交換器を組電池に接触した状態に配置しておき、組電池の単電池から放出される熱と、外装体内を循環する冷却液との間で熱交換されることによって、組電池を冷却するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、上記組電池等の自動車用バッテリー装置を冷却する熱交換器、特に上記ラミネート材を用いた熱交換器において、一対の熱交換器によって、冷却対象部材を両側から挟み込んだ状態で使用するものがある。このような使用形態では、一方側の熱交換器から他方側の熱交換器に冷媒(冷却水)を流通させるために、両熱交換器間に冷媒Uターン用の中間ヘッダー部材等を別途取り付ける必要がある。従ってこの中間ヘッダー部材を取り付ける分、部品点数が増加して、構造の複雑化を来すという課題があった。さらに中間ヘッダー部材を組み付ける分、組付作業数も増加するため、生産効率の低下を来すという課題があった。
【0009】
この発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、ラミネート材を用いた熱交換器において、部品点数および組付作業数を削減できて、構造の簡素化および生産効率の向上を図ることができる熱交換器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するため、本発明は、以下の手段を備えるものである。
【0011】
[1]金属製の伝熱層の少なくとも片面に樹脂層が積層されたラミネート材によって表皮部が形成された外装体を備えた熱交換器であって、
前記外装体が、中間連結部と、その中間連結部の一方側に設けられた一方側伝熱部と、他方側に設けられた他方側伝熱部とに区分けされ、
折曲状に形成された前記中間連結部を介して、前記一方側伝熱部と前記他方側伝熱部とが互いに間隔をおいて並列に配置され、
前記一方側伝熱部の出入口から流入した熱交換媒体が、前記一方側伝熱部、前記中間連結部および前記他方側伝熱部を流通して前記他方側伝熱部の出入口から流出するように構成されたことを特徴とする熱交換器。
【0012】
[2]前記中間連結部の内部に、その内部の流路断面積を確保するためのスペーサが設けられている前項1に記載の熱交換器。
【0013】
[3]前記中間連結部の前記外装体において対向し合う一対の表皮部のうち、少なくとも外側の表皮部に前記スペーサが接合されている前項2に記載の熱交換器。
【0014】
[4]前記一対の表皮部のうち、内側の表皮部に前記スペーサが接合されていない前項3に記載の熱交換器。
【0015】
[5]前記スペーサは、前記中間連結部における熱交換媒体流通方向の全域にわたって配置されている前項2~4のいずれか1項に記載の熱交換器。
【0016】
[6]前記一方側伝熱部および前記他方側伝熱部の内部にインナーフィンが設けられ、
前記一方側伝熱部および前記他方側伝熱部と、前記インナーフィンとが接合されるとともに、
前記インナーフィンにおける前記中間連結部側の端縁に、前記一方側伝熱部および前記他方側伝熱部の前記外装体において対向し合う一対の表皮部のうち、内側の表皮部に対して接合されていない非接合部が設けられている前項2~5のいずれか1項に記載の熱交換器。
【0017】
[7]前記中間連結部の前記外装体において対向し合う一対の表皮部のうち、少なくとも内側の表皮部に、その表皮部の一部が弛んで内側に膨出した弛み変形部が設けられている前項2~6のいずれか1項に記載の熱交換器。
【0018】
[8]金属製の伝熱層の少なくとも片面に樹脂層が積層されたラミネート材によって表皮部が形成された外装体を備え、かつ平パネル状に形成された半製品を作製する工程と、
前記半製品における前記外装体を、中間連結部と、その中間連結部の一方側に設けられた一方側伝熱部と、他方側に設けられた他方側伝熱部とに区分けするとともに、前記中間連結部を折曲することによって、前記一方側伝熱部と前記他方側伝熱部とを互いに間隔をおいて並列に配置する工程とを含み、
前記一方側伝熱部の出入口から流入した熱交換媒体が、前記一方側伝熱部、前記中間連結部および前記他方側伝熱部を流通して前記外装体から流出するように構成された熱交換器を製造するようにしたことを特徴とする熱交換器の製造方法。
【発明の効果】
【0019】
発明[1]の熱交換器によれば、折曲状の中間連結部を介して両伝熱部が互いに略平行に配置されているため、両伝熱部間が中間連結部によって連通接続されている。このため、両伝熱部をそれぞれ熱交換器として利用しつつ、両伝熱部間を連通接続するための中間ヘッダー部材等の別途取り付ける必要がなくその分、部品点数を削減できて、構造の簡素化を図ることができる。さらに熱交換器を製作するに際して、中間ヘッダー部材等の別部品を組み付ける必要がなくその分、組付作業数を削減できて、生産効率を向上させることができる。
【0020】
発明[2]の熱交換器によれば、中間連結部内にスペーサを配置しているため、折曲状の中間連結部の流通路を広く確保でき、良好な流動特性を得ることができ、高い熱交換性能を確実に得ることができる。
【0021】
発明[3]の熱交換器によれば、スペーサが、少なくとも外側の表皮部に接合されているため、スペーサの位置ずれを確実に防止することができ、良好な流動特性をより確実に得ることができる。
【0022】
発明[4]の熱交換器によれば、中間連結部における内側の表皮部とスペーサとが非接合状態であるため、内側の表皮部が、スペーサ等の影響を受けずに所望の形状に折曲されることにより、所定の流通路を確保でき、熱交換媒体の流動特性をより向上させることができる。
【0023】
発明[5]の熱交換器によれば、中間連結部の全域にスペーサが設けられているため、中間連結部全域において良好な流通路を確実に確保でき、良好な流動特性をより一層確実に得ることができる。
【0024】
発明[6]の熱交換器によれば、インナーフィンにおける中間連結部側の端縁が、内側表皮部に接合されていない非接触部を形成しているため、内側表皮部のインナーフィン端縁との接触部に曲げ応力が集中するのを回避できて応力を分散でき、表皮部の破損を防止でき、耐久性を向上させることができる。
【0025】
発明[7]の熱交換器によれば、折曲状の中間連結部における内側の表皮部に形成される弛み変形部を、内側に膨出するように形成しているため、弛み変形部が流通路を閉塞するような不具合をより確実に防止でき、より一層流動特性を向上させることができる。
【0026】
発明[8]の熱交換器の製造方法によれば、上記の熱交換器の製造プロセスを特定しているため、上記の効果を有する熱交換器を確実に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】
図1はこの発明の第1実施形態である熱交換器を示す断面図である。
【
図2】
図2は第1実施形態の熱交換器を折り曲げる前の状態で示す図であって、図(a)は平面図、図(b)は断面図である。
【
図3】
図3はこの発明の第2実施形態である熱交換器における中間連結部の周辺を示す断面図である。
【
図4】
図4は第2実施形態の熱交換器に採用されたスペーサを示す斜視図である。
【
図5】
図5はこの発明の第3実施形態である熱交換器における中間連結部の周辺を示す断面図である。
【
図6】
図6は第3実施形態の熱交換器に採用されたスペーサを示す斜視図である。
【
図7】
図7はこの発明の第4実施形態である熱交換器における中間連結部の周辺を示す断面図である。
【
図8】
図8は第4実施形態の熱交換器に採用されたスペーサにおける折曲前の状態の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
<第1実施形態>
図1および
図2はこの発明の第1実施形態である熱交換器P1を示す図である。両図に示すように第1実施形態の熱交換器P1は、熱交換対象部材(冷却対象部材)Bとしての自動車用バッテリー装置等の冷却用に用いられるものであって、
図2に示すように平面視長方形状の熱交換器作製用の半製品(前製品)1を
図1に示すように2つ折りに折り曲げることによって形成されている。
【0029】
半製品1は、ケーシングとしての袋状の外装体2を備えている。半製品1としての外装体2は、細長い平パネル状を有しており、ラミネート材によって構成される一対の表皮フィルム(表皮部)2a,2bがその外周縁部が熱融着によって接合一体化されて形成されている。
【0030】
本実施形態においてラミネート材は、金属箔製の伝熱層と、その伝熱層の両面に積層一体化された熱可塑性樹脂製の樹脂層とを備えている。伝熱層を構成する金属は特に限定されるものではないが、アルミニウム(その合金を含む)等を好適に用いることができる。さらに樹脂層を構成する樹脂も特に限定されるものではないが、ポリエチレンやポリプロピレン等のポリオレフィン系の樹脂を好適に用いることができる。
【0031】
また本発明において用いられるラミネート材は、伝熱層の少なくとも片面側に樹脂製の層が形成された2層以上の構造であれば良く、本実施形態のように3層構造であっても、4層以上の構造であっても良い。
【0032】
本実施形態において、半製品1の外装体2における長さ方向の中間部は、中間連結部22として構成されて、その中間連結部22を境に、中間連結部22よりも一方側(例えば
図2の左側)が一方側伝熱部である一方側伝熱パネル21として構成されるとともに、他方側(例えば
図2の右側)が他方側伝熱部であるの他方側伝熱パネル21として構成されている。言うまでもなく本実施形態においては、
図2の右側を一方側伝熱パネル21とし、左側を他方側伝熱パネル21として構成しても良い。
【0033】
また外装体1の両端部における
図2の上側の表皮フィルム2bの両端部には、換言すると、両側伝熱パネル21,21の端部には、出入口25,25がそれぞれ設けられている。
【0034】
両伝熱パネル21,21の内部には、出入口25,25にそれぞれ対応してヘッダー部材3,3が設けられている。ヘッダー部材3,3は、半製品1の状態において出入口25,25を介して上方に突出するように一体成形されるパイプ部31,31と、伝熱パネル21,21内において中間連結部22側に向けて開口する開口部32,32とをそれぞれ備えている。パイプ部31および開口部32はヘッダー部材3の内部の中空部に連通しており、パイプ部31の先端は半製品1(熱交換器P1)の外部に開放されており、開口部32は伝熱パネル21内に開放されている。
【0035】
ヘッダー部材3は、硬質合成樹脂の成形品によって構成されており、ヘッダー部材3の外周面における外装体2との接触部が熱融着によって接合一体化されて、ヘッダー部材3が外装体2に固定されている。
【0036】
外装体2の伝熱パネル21内におけるヘッダー部材3および中間連結部22間には、内芯材としてのインナーフィン4が収容されている。
【0037】
インナーフィン4は、上記外装体2を構成するラミネート材と同様なラミネート材によって構成されている。すなわちインナーフィン4は、ラミネート材が波状に成形された成形品によって構成されている。この波状のインナーフィン4が、その谷筋方向および山筋方向が
図1の左右方向に沿うように配置された状態で、山頂面および谷底面が上下の表皮フィルム2a,2bに熱融着によって接合一体化されて、インナーフィン4が外装体2に固定されている。
【0038】
以上の構成の半製品1において、
図1に示すように中間連結部22の部分がU字状に折曲されて、一方側伝熱パネル21が他方側伝熱パネル21に対面するように折り返すように配置される。これにより、折曲状の中間連結部22を介して、一方側伝熱パネル21と他方側伝熱パネル21とが互いに間隔をおいて平行(並列)に配置された本第1実施形態の熱交換器P1が形成される。
【0039】
この構成の熱交換器P1においては例えば、両熱交換パネル21間にバッテリー装置等の冷却対象部材Bを配置した状態で使用する。すなわちその状態において、冷却水等の熱交換媒体(冷媒)を一方側のヘッダー部材3内にパイプ部31を介して流入し、その冷却水を開口部32から一方側伝熱パネル21内に流入させる。さらにその冷却水を一方側伝熱パネル21に通過させた後、中間連結部22を介して他方側伝熱パネル21に流入させる。さらにその冷却水を他方側伝熱パネル21に通過させた後、他方側のヘッダー部材3内に開口部32から流入させて、そこからパイプ部31を介して外部に流出させる。
【0040】
こうして冷却水を熱交換器P1内に循環させて、その循環する冷却水と、両伝熱パネル21,21に接触配置された冷却対象部材Bとの間で熱交換させることによって、冷却対象部材Bを冷却するものである。
【0041】
なお本実施形態の熱交換器P1は、複数並列に配置して使用することもできる。すなわち間隔をおいて並列に配置した複数の熱交換器P1において、上記したように各熱交換器P1の両伝熱パネル21,21間に冷却対象部材Bを配置する一方、隣り合う熱交換器P1の各間において対面し合う伝熱パネル21,21間に冷却対象部材Bを配置する。これにより、伝熱パネル21と冷却対象部材Bとを交互に多数配置し、その状態で、既述したように各伝熱パネル21に冷却水を循環させて、冷却対象部材Bを冷却することもできる。
【0042】
以上のように本実施形態の熱交換器P1によれば、半製品1としての外装体2を中間連結部22と、その両側の伝熱パネル21,21とに区分けして、中間連結部22を折り曲げることによって形成しているため、それぞれ熱交換部材(熱交換器)として機能する一対の伝熱パネル21,21が中間連結部22によって連通接続された構造となる。このため両側の伝熱パネル21,21間を連通接続するための冷媒Uターン用の中間ヘッダー部材等を別途取り付ける必要がなく、その分、部品点数を削減できて、構造の簡素化を図ることができる。その上さらに熱交換器P1を製作するに際して、中間ヘッダー部材等の別部品を組み付ける必要がなく、その分、組付作業数を削減できて、生産効率の向上を図ることができる。
【0043】
なお上記実施形態においては、外装体2の両表皮フィルム2a,2b同士を接合固定する際や、外装体2と、ヘッダー部材3およびインナーフィン4とを接合固定するに際して、熱融着によって溶着接合する場合を例に挙げて説明したが、熱融着だけに限られず、本発明においては、溶剤を用いて溶着(融着)しても良いし、接着剤を用いて接着接合するようにしても良い。さらにこれらの接合方式は、以下の第2~第4実施形態で説明するように、外装体2とスペーサ5とを接合する場合においても同様に採用することができる。
【0044】
<第2実施形態>
図3はこの発明の第2実施形態である熱交換器P2の中間連結部22の周辺を示す断面図、
図4は第2実施形態の熱交換器P2に採用されたスペーサ5を示す斜視図である。
【0045】
両図に示すように本第2実施形態の熱交換器P2においては、スペーサ5によって中間連結部22内の流路断面積を十分に確保して冷却水の流動特性を向上させて熱交換性能(冷却性能)を向上させるものである。
【0046】
すなわち
図1に示す第1実施形態の熱交換器P1において、中間連結部22を構成する外装体2の一対(両側)の表皮フィルム2a,2bのうち、外側に配置される表皮フィルム2bに対し、内側に配置される表皮フィルム2aの方は距離(寸法)が短くなるため、
図1の想像線に示すように、内側の表皮フィルム2aが外側に弛んで、その弛み変形部23が外側の表皮フィルム2b側に近接して一対の表皮フィルム2a,2b間の冷媒流通路が閉鎖される場合がある。こうして流通路が閉鎖されると、冷却水の流動特性が低下して熱交換性能が低下するおそれがある。
【0047】
そこで本第2実施形態の熱交換器P2においては、中間連結部22内の流通路が閉鎖されないように、一対の表皮フィルム2a,2b間にスペーサ5を介在して流通路の通路断面積を大きく確保するようにしている。
【0048】
図4に示すように本第2実施形態において、スペーサ5は、渦巻コイル(スプリング)状に形成された硬質合成樹脂の成形品によって構成されている。
【0049】
図3に示すようにこのスペーサ5が外装体2の中間連結部22内に収容された状態で、一対の表皮フィルム2a,2bのうち、外側の表皮フィルム2bに熱融着によって溶着接合されて、外装体2に固定されている。なおスペーサ5は、外装体2を折り曲げる前の半製品1の状態(
図2参照)で中間連結部22内に収容固定されており、そのスペーサ取付済の半製品1が折り曲げられて、熱交換器P2が製作されるものである(以下の第3実施形態でも同様である)。
【0050】
この第2実施形態の熱交換器P2において他の構成は、上記第1実施形態の熱交換器P1と実質的に同様であるため、同一または相当部分に同一符号を付して重複説明は省略する。
【0051】
この第2実施形態の熱交換器P2においても上記第1実施形態の熱交換器P1と同様の効果を得ることができる。
【0052】
その上さらに、第2実施形態の熱交換器P2においては、中間連結部22内にスペーサ5を配置して、中間連結部22の流通路を広く確保しているため、折り曲げによって中間連結部22の流通路が閉鎖されるような不具合を防止でき、良好な流動特性を得ることができ、高い熱交換性能を確実に得ることができる。
【0053】
また本第2実施形態の熱交換器P2においては、スペーサ5を中間連結部22における一対の表皮フィルム2a,2bのうち、外側の表皮フィルム2bにのみ溶着し、内側の表皮フィルム2aに対しては溶着等を行わずに非接合状態(非固定状態)とし、内側の表皮フィルム2aがスペーサ5に対し拘束されずフリーな状態となっている。このため、中間連結部22を所望の折曲形状に形成することができる。
【0054】
すなわち折曲加工される中間連結部22における内側の表皮フィルム2aは弛み等によって、スペーサ5に対し大きく変位するため、仮に内側の表皮フィルム2aをスペーサ5に溶着固定していると、スペーサ5の影響により内側の表皮フィルム2aをスムーズに変形できず、内側表皮フィルム2aを所望の形状に折曲することが困難になるおそれがある。
【0055】
そこで本実施形態のように、内側の表皮フィルム2aとスペーサ5とを非接合状態とすることにより、内側の表皮フィルム2aを、スペーサ5の存在にかかわらず自由に変形できて、内側表皮フィルム2aを所望の形状に折曲することができる。従って、中間連結部22を良好な折曲形状に形成でき、冷却水の流動特性をより向上させることができる。
【0056】
なおスペーサ5は、外側の表皮フィルム2bに溶着固定されているため、スペーサ5の位置ずれを確実に防止することができ、良好な流動特性をより確実に得ることができる。
【0057】
もっとも本発明においては、スペーサ5を、内側および外側の表皮フィルム2a,2bの両側に溶着固定しても良いし、内側の表皮フィルム2aにのみ溶着固定しても良いし、両表皮フィルム2a,2bのいずれにも溶着固定せずに非接合としても良い(以下の第3および第4実施形態においても同じ)。
【0058】
<第3実施形態>
図5はこの発明の第3実施形態である熱交換器P3の中間連結部22の周辺を示す断面図、
図6は第3実施形態の熱交換器P3に採用されたスペーサ6を示す斜視図である。
【0059】
両図に示すようにこの第3実施形態の熱交換器P3においては、スペーサ6の形状が、上記第2実施形態のスペーサ5と異なっている。
【0060】
すなわち本第3実施形態に採用されるスペーサ6は、断面山型形状(逆U時形状)の合成樹脂の成形品によって構成されている。さらにこのスペーサ6には、山筋方向に沿って(
図5の紙面に対し垂直方向に沿って)多数の開口部61が所定の間隔おきに形成されている。
【0061】
このスペーサ6が外装体2の中間連結部22内に収容された状態で、一対の表皮フィルム2a,2bのうち、外側の表皮フィルム2bにのみ熱溶着によって溶着接合されて、外装体2に固定されている。
【0062】
この第3実施形態の熱交換器P3において他の構成は、上記第2実施形態の熱交換器P2と実質的に同様であるため、同一または相当部分に同一符号を付して重複説明は省略する。
【0063】
この第3実施形態の熱交換器P3においても、上記第2実施形態の熱交換器P2と同様の効果を得ることができる。
【0064】
なお上記第2および第3実施形態においては、スペーサ5,6を中間連結部22の中間位置に一つ配置する場合を例に挙げて説明したが、それだけに限られず、本発明においては、スペーサ5,6を中間連結部22の冷媒流通方向に沿って複数並べて配置するようにしても良い。この場合には、スペーサ5,6が中間連結部22の折曲部の広い範囲にわたって形成されるため、以下に説明する第4実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0065】
<第4実施形態>
図7はこの発明の第4実施形態である熱交換器P4の中間連結部22の周辺を示す断面図、
図8は第4実施形態の熱交換器P4に採用されたスペーサ7を曲げ変形前の状態で示す斜視図である。
【0066】
両図に示すようにこの第4実施形態の熱交換器P4においては、スペーサ7が中間連結部22の冷媒流通方向の全域にわたって配置されている。
【0067】
このスペーサ7は、波形形状を有する合成樹脂の成形品によって構成されている。さらにこのスペーサ7は、山頂部および谷底部間の立ち上がり部に、山筋方向(谷筋方向)に沿って所定の間隔おきに多数の開口部61が形成されている。
【0068】
このスペーサ7が、外装体2の中間連結部22内に収容される。この際、スペーサ7の山筋方向(谷筋方向)は、インナーフィン4の山筋方向(谷筋方向)と直交するように配置されるとともに、折曲された中間連結部22の全域にわたって配置されている。
【0069】
またスペーサ7はその折曲部外側が、中間連結部22における一対の表皮フィルム2a,2bのうち、外側の表皮フィルム2bにのみ熱融着によって溶着接合されている。なお内側の表皮フィルム2aは、スペーサ7の折曲部内側に対し非接合状態であり、拘束されずにフリーな状態となっている。
【0070】
さらに本実施形態において、インナーフィン4における中間連結部22側の端縁には、両伝熱パネル21,21における一対の表皮フィルム2a,2bのうち、内側の表皮フィルム2aに対して溶着等によって接合されてない非接合部(非固定部)41が設けられており、その非接合部41において、表皮フィルム2aはインナーフィン4に対し拘束されずフリーな状態となっている。
【0071】
また本実施形態の熱交換器P4においては、折曲された中間連結部22における内側の表皮フィルム2aに、その弛みによって形成される弛み変形部24が、内側に膨出するように形成されている。
【0072】
なおこの第4実施形態の熱交換器P4においても上記と同様、平パネル状の半製品1の段階(
図2参照)で外装体2内にヘッダー部材3、インナーフィン4およびスペーサ7が収容されて所要部分が溶着固定されている。そしてその半製品1が中間連結部22においてスペーサ7と共に折曲されることによって、本第4実施形態の熱交換器P4が製作されるものである。
【0073】
この第4実施形態の熱交換器P4において他の構成は、上記各実施形態と実質的に同様であるため、同一または相当部分に同一符号を付して重複説明は省略する。
【0074】
この第4実施形態の熱交換器P4においても上記各実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0075】
その上さらに本第4実施形態の熱交換器P4においては、中間連結部22の全域にわたってスペーサ7が配置されているため、冷媒の流動特性をより一層向上させることができる。
【0076】
すなわち
図3の想像線に示すように中間連結部22におけるスペーサ5が設置されていない部分においては、内側の表皮フィルム2aが弛んでその弛み変形部23が外側の表皮フィルム2bに近接配置されて、流通路の一部を閉塞して冷媒の流動特性を低下させるおそれがある。
【0077】
そこで本実施形態においては、中間連結部(折曲部)22の全域にスペーサ5を設置することによって、中間連結部22の全域において流通路断面を大きく確保でき、良好な流動特性をより確実に得ることができる。
【0078】
また第4実施形態の熱交換器P4においては、折曲された中間連結部22における内側の表皮フィルム2aに形成される弛み変形部24を、内側に膨出するように形成しているため、弛み変形部24が冷媒流通路を閉塞するような不具合をより確実に防止でき、より一層流動特性を向上させることができる。
【0079】
また第4実施形態の熱交換器P4においては、インナーフィン4の中間連結部22側の端縁に、両伝熱パネル21,21における内側の表皮フィルム2aに対して溶着接合しない非接合部41を形成しているため、インナーフィン4の端縁による内側表皮フィルム2aの傷付き等の不具合を確実に防止することができる。
【0080】
すなわちインナーフィン4の端縁を内側表皮フィルム2aに溶着接合している状態では、中間連結部22を折曲加工した際に、内側表皮フィルム2aのインナーフィン端縁との接触部に曲げ応力が集中して、その接触部の表皮フィルム2aが破損し、場合によっては液漏れが発生して耐久性を低下させるおそれがある。
【0081】
そこで本実施形態においては、インナーフィン4の端縁に、内側表皮フィルム2aに接合されていない非接触部41を形成しているため、中間連結部22を折曲加工した際に、内側表皮フィルム2aのインナーフィン端縁との接触部に曲げ応力が集中するのを回避できて応力を分散でき、表皮フィルム2aの破損を防止でき、耐久性を向上させることができる。
【0082】
なお上記実施形態においては、この発明の熱交換器を冷却器として使用する場合を例に挙げて説明したが、それだけに限られず、本発明に採用される熱交換器は、加熱装置(加熱器)として使用することもできる。
【産業上の利用可能性】
【0083】
この発明の熱交換器の連結構造は、例えばハイブリッド自動車、電気自動車等に採用される電動機駆動用バッテリー装置等の発熱体を冷却するための冷却装置として好適に用いることができる。
【符号の説明】
【0084】
1:半製品
2:外装体
2a:内側表皮フィルム(内側表皮部)
2b:外側表皮フィルム(外側表皮部)
21:伝熱パネル
22:中間連結部
24:弛み変形部
25:出入口
4:インナーフィン
41:非接合部
5~7:スペーサ
P1~P4:熱交換器