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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-03
(45)【発行日】2024-06-11
(54)【発明の名称】トナーの製造方法
(51)【国際特許分類】
   G03G 9/08 20060101AFI20240604BHJP
   G03G 9/097 20060101ALI20240604BHJP
【FI】
G03G9/08 381
G03G9/08
G03G9/08 384
G03G9/097 375
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020182510
(22)【出願日】2020-10-30
(65)【公開番号】P2022072847
(43)【公開日】2022-05-17
【審査請求日】2023-09-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000229117
【氏名又は名称】日本ゼオン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000486
【氏名又は名称】弁理士法人とこしえ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】千葉 尊
(72)【発明者】
【氏名】大石 邦晃
【審査官】高草木 綾音
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-108181(JP,A)
【文献】特開2018-045004(JP,A)
【文献】特開2007-114304(JP,A)
【文献】国際公開第2011/040620(WO,A1)
【文献】特開平11-216347(JP,A)
【文献】特開2002-268277(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 9/00-9/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
結着樹脂および着色剤を含有する着色樹脂粒子と、無機微粒子とを混合する混合工程を有するトナーの製造方法であって、
前記混合工程が、混合槽と、回転可能な撹拌羽根とを含む混合装置を用いて、前記混合槽内で前記撹拌羽根を回転させることによって、前記着色樹脂粒子と前記無機微粒子とを混合することで、前記無機微粒子を、前記着色樹脂粒子に固着させる工程であり、
前記混合装置として、前記混合装置を構成する前記撹拌羽根が、本体部と、前記本体部の長手方向に沿って形成され、前記混合槽の底面に対して突出した突出部とを備え、かつ、前記突出部の突出高さが、1.0mm以上であるものを用い、
前記混合工程における混合条件を、下記式(1)に示す条件とするトナーの製造方法。
900≦L×R×N≦5000 (1)
(上記式(1)において、Lは、前記撹拌羽根の突出部の幅[mm]であり、Rは、前記撹拌羽根の1秒間当たりの回転数[rpm/60]であり、Nは、前記混合装置に含まれる撹拌羽根の枚数である。)
【請求項2】
前記撹拌羽根の前記突出部と前記混合槽の底面との距離が0.5~6mmである請求項1に記載のトナーの製造方法。
【請求項3】
前記着色樹脂粒子の円形度が0.980以上である請求項1または2に記載のトナーの製造方法。
【請求項4】
前記着色樹脂粒子が、懸濁重合法により得られたものである請求項1~3のいずれかに記載のトナーの製造方法。
【請求項5】
前記着色樹脂粒子の体積平均粒径が3~11μmであり、
前記無機微粒子の比表面積が1~400m/gである請求項1~4のいずれかに記載のトナーの製造方法。
【請求項6】
前記無機微粒子として、2種類以上の無機微粒子を使用する請求項1~5のいずれかに記載のトナーの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真法、静電記録法、および静電印刷法等において静電潜像を現像するために用いられる静電荷像現像用トナーなどのトナーの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真装置、静電記録装置、および静電印刷装置等の画像形成装置においては、感光体上に形成される静電潜像を、トナーで現像することで所望の画像を形成する方法が広く実施され、複写機、プリンター、ファクシミリ、およびこれら複合機等に適用されている。
【0003】
このようなトナーにおいては、所望の帯電性や流動性を付与するために、着色樹脂粒子表面に、無機微粒子などの外添剤を付着させる方法が一般的に採用されている。着色樹脂粒子表面に、無機微粒子などの外添剤を付着させる方法として、特許文献1に開示されているように、混合槽と、回転可能な撹拌羽根とを含む混合装置を用いて、着色樹脂粒子と無機微粒子などの外添剤とを混合する方法が採用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平11-216347号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一方で、上記特許文献1の技術のように、混合槽と、回転可能な撹拌羽根とを含む混合装置を用いて、着色樹脂粒子と無機微粒子などの外添剤とを混合する方法においては、これらを混合した際に、トナー同士が融着してしまい粗大粒子が発生し、これにより縦筋の発生の原因となったり、無機微粒子などの外添剤の分散が不十分であることにより、分散不良となった無機微粒子などの外添剤が原因ととなり感光体フィルミングが発生したりという課題があった。そのため、高い生産性を実現しながら、縦筋の発生および感光体フィルミングの発生が有効に抑制されたトナーの製造方法が求められていた。
【0006】
本発明の目的は、縦筋の発生および感光体フィルミングの発生が有効に抑制されたトナーを高い生産性にて製造できるトナーの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決すべく検討を行ったところ、結着樹脂および着色剤を含有する着色樹脂粒子と、無機微粒子とを混合する際に、混合装置として、混合装置を構成する撹拌羽根が、本体部と、本体部の長手方向に沿って形成され、混合槽の底面に対して突出した突出部とを備え、かつ、突出部の突出高さが、1.0mm以上であるものを用い、かつ、撹拌羽根の突出部の幅Lと、撹拌羽根の1秒間当たりの回転数Rと、混合装置に含まれる撹拌羽根の枚数Nとを特定の範囲とすることにより、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0008】
すなわち、本発明によれば、結着樹脂および着色剤を含有する着色樹脂粒子と、無機微粒子とを混合する混合工程を有するトナーの製造方法であって、
前記混合工程が、混合槽と、回転可能な撹拌羽根とを含む混合装置を用いて、前記混合槽内で前記撹拌羽根を回転させることによって、前記着色樹脂粒子と前記無機微粒子とを混合することで、前記無機微粒子を、前記着色樹脂粒子に固着させる工程であり、
前記混合装置として、前記混合装置を構成する前記撹拌羽根が、本体部と、前記本体部の長手方向に沿って形成され、前記混合槽の底面に対して突出した突出部とを備え、かつ、前記突出部の突出高さが、1.0mm以上であるものを用い、
前記混合工程における混合条件を、下記式(1)に示す条件とするトナーの製造方法が提供される。
900≦L×R×N≦5000 (1)
(上記式(1)において、Lは、前記撹拌羽根の突出部の幅[mm]であり、Rは、前記撹拌羽根の1秒間当たりの回転数[rpm/60]であり、Nは、前記混合装置に含まれる撹拌羽根の枚数である。)
【0009】
本発明のトナーの製造方法において、前記撹拌羽根の前記突出部と前記混合槽の底面との距離が0.5~6mmであることが好ましい。
本発明のトナーの製造方法において、前記着色樹脂粒子の円形度が0.980以上であることが好ましい。
本発明のトナーの製造方法において、前記着色樹脂粒子が、懸濁重合法により得られたものであることが好ましい。
本発明のトナーの製造方法において、前記着色樹脂粒子の体積平均粒径が3~11μmであり、前記無機微粒子の比表面積が1~400m/gであることが好ましい。
本発明のトナーの製造方法において、前記無機微粒子として、2種類以上の無機微粒子を使用することが好ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、縦筋の発生および感光体フィルミングの発生が有効に抑制されたトナーを高い生産性にて製造できるトナーの製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、本発明の製造方法で用いられる一実施形態に係る混合装置を示す図である。
図2図2(A)は、本発明の製造方法で用いられる一実施形態に係る混合装置を構成する下側回転体の底面図、図2(B)は、本発明の製造方法で用いられる一実施形態に係る混合装置を構成する下側回転体のIIb-IIb線に沿った断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明のトナーの製造方法は、結着樹脂および着色剤を含有する着色樹脂粒子と、無機微粒子とを混合する混合工程を有するものであり、混合工程で用いる混合装置および混合工程における混合条件を、後述する特定の装置および条件とするものである。
【0013】
まず、本発明のトナーを構成する着色樹脂粒子の製造方法について説明する。
【0014】
本発明のトナーを構成する着色樹脂粒子の製造方法は、粉砕法等の乾式法と、乳化重合凝集法、分散重合法、懸濁重合法および溶解懸濁法等の湿式法とに大別され、画像再現性などの印字特性に優れたトナーが得られ易いことから湿式法が好ましい。湿式法の中でも、ミクロンオーダーで比較的小さい粒径分布を持つトナーを得やすいことから、乳化重合凝集法、分散重合法、および懸濁重合法等の重合法が好ましく、これらのなかでも懸濁重合法がより好ましい。
【0015】
上記乳化重合凝集法は、乳化させた重合性単量体を重合し、樹脂微粒子を得て、着色剤等と凝集させ、着色樹脂粒子を製造する方法である。また、上記溶解懸濁法は、結着樹脂や着色剤等のトナー成分を有機溶媒に溶解または分散した溶液を水系媒体中に滴下することで液滴形成し、次いで、有機溶媒を除去することで着色樹脂粒子を製造する方法であり、それぞれ公知の方法を用いることができる。
【0016】
本発明のトナーを構成する着色樹脂粒子は、湿式法、および乾式法のいずれでも製造することができるが、湿式法の中でも好ましい(A)懸濁重合法を採用し、または乾式法の中でも代表的な(B)粉砕法を採用して着色樹脂粒子を製造する場合、以下のようなプロセスにより行なわれる。まず、(A)懸濁重合法について説明する。
【0017】
(A)懸濁重合法
(A-1)重合性単量体組成物の調製工程
懸濁重合法においては、まず、重合性単量体、および着色剤、さらに必要に応じて用いられる帯電制御剤等のその他の添加物を混合、溶解して重合性単量体組成物の調製を行なう。重合性単量体組成物を調製する際の混合には、たとえば、メディア式分散機を用いて行なう。
【0018】
本発明において、重合性単量体とは、重合可能な化合物をいい、重合性単量体が重合することで結着樹脂となる。重合性単量体としては、重合性単量体を構成する主成分として、モノビニル単量体を使用することが好ましい。モノビニル単量体としては、たとえば、スチレン、ビニルトルエン、α-メチルスチレン、エチルスチレンなどのスチレン系単量体;アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ブチル、アクリル酸2-エチルヘキシル、アクリル酸ジメチルアミノエチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸2-エチルヘキシル、メタクリル酸ジメチルアミノエチルなどの(メタ)アクリレート系単量体;アクリル酸、およびメタクリル酸;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のニトリル化合物;アクリルアミド、メタクリルアミド等のアミド化合物;エチレン、プロピレン、ブチレン等のオレフィン;が挙げられる。これらのモノビニル単量体は、それぞれ単独で、あるいは2種以上組み合わせて用いることができる。これらのうち、スチレン系単量体、および(メタ)アクリレート系単量体が好ましく、スチレン、およびアクリル酸ブチルがより好ましい。
【0019】
ホットオフセットおよび保存性の改善のために、モノビニル単量体とともに、任意の架橋性の重合性単量体を用いることが好ましい。架橋性の重合性単量体とは、2つ以上の重合可能な官能基を持つモノマーのことをいう。架橋性の重合性単量体としては、たとえば、ジビニルベンゼン、ジビニルナフタレン、およびこれらの誘導体等の芳香族ジビニル化合物;エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート等の2個以上の水酸基を持つアルコールにカルボン酸が2つ以上エステル結合したエステル化合物;N,N-ジビニルアニリン、ジビニルエーテル等の、その他のジビニル化合物;3個以上のビニル基を有する化合物;等を挙げることができる。これらの架橋性の重合性単量体は、それぞれ単独で、あるいは2種以上組み合わせて用いることができる。架橋性の重合性単量体の使用量は、モノビニル単量体100質量部に対して、好ましくは0.1~5質量部、より好ましくは0.3~2質量部、さらに好ましくは0.4~1質量部である。
【0020】
また、重合性単量体の一部として、マクロモノマーを用いることができる。任意のマクロモノマーを用いると、得られるトナーの保存性と低温での定着性とのバランスが良好になるので好ましい。マクロモノマーとは、分子鎖の末端に重合可能な炭素-炭素不飽和結合を有するもので、数平均分子量(Mn)が、通常1,000~30,000の反応性の、オリゴマーまたはポリマーのことをいう。マクロモノマーは、マクロモノマーを重合せずに得られる重合体のTg(ガラス転移温度)よりも、高いTgを有する重合体を与えるものが好ましい。マクロモノマーの使用量は、モノビニル単量体100質量部に対して、好ましくは0.03~5質量部、より好ましくは0.05~1質量部である。
【0021】
マクロモノマーとしては、たとえば、ポリアクリル酸エステルマクロモノマー、ポリメタクリル酸エステルマクロモノマー、ポリスチレンマクロモノマー、ポリアクリロニトリルマクロモノマー、シリコーンマクロモノマー、および、これらマクロモノマーの共重合体等が挙げられる。これらの中でも、ポリアクリル酸エステルマクロモノマー、ポリメタクリル酸エステルマクロモノマーが好ましい。
【0022】
本発明では、着色剤を用いるが、カラートナーを製造する場合、ブラック着色剤、シアン着色剤、イエロー着色剤、マゼンタ着色剤をそれぞれ用いることができる。
【0023】
ブラック着色剤としては、たとえば、カーボンブラック、チタンブラック、ならびに酸化鉄亜鉛、および酸化鉄ニッケル等の磁性粉等の顔料や染料を用いることができる。
【0024】
シアン着色剤としては、たとえば、銅フタロシアニン顔料、その誘導体、およびアントラキノン顔料や染料等の化合物が用いられる。具体的には、C.I.Pigment Blue2、3、6、15、15:1、15:2、15:3、15:4、16、17:1、60等が挙げられる。
【0025】
イエロー着色剤としては、たとえば、モノアゾ顔料、およびジスアゾ顔料等のアゾ顔料、縮合多環顔料や染料等の化合物が用いられる。具体的には、C.I.Pigment Yellow3、12、13、14、15、17、62、65、73、74、83、93、97、120、138、151、155、180、181、185、186、214、219、C.I.Solvent Yellow98、162等が挙げられる。
【0026】
マゼンタ着色剤としては、たとえば、モノアゾ顔料、およびジスアゾ顔料等のアゾ顔料、縮合多環顔料や染料等の化合物が用いられる。具体的には、C.I.Pigment Red31、48、57:1、58、60、63、64、68、81、83、87、88、89、90、112、114、122、123、144、146、149、150、163、170、184、185、187、202、206、207、209、251、C.I.Solvent Violet31、47、59およびC.I.Pigment Violet19等が挙げられる。
【0027】
本発明では、それぞれの着色剤は、単独もしくは2種以上を組み合わせて用いてもよく、着色剤の使用量は、結着樹脂100質量部(結着樹脂を得るための重合性単量体100質量部)に対して、好ましくは1~10質量部である。
【0028】
定着時におけるトナーの定着ロールからの離型性を改善する観点から、重合性単量体組成物には、離型剤を添加することが好ましい。離型剤としては、一般にトナーの離型剤として用いられるものであれば、特に制限無く用いることができる。
【0029】
離型剤は、エステルワックスおよび炭化水素系ワックスの少なくともいずれか1つを含有することが好ましい。これらのワックスを離型剤として使用することにより、低温定着性と保存性とのバランスを好適にすることができる。
【0030】
離型剤として好適に用いられるエステルワックスとしては、たとえば、ステアリルステアレート、ベヘニルベヘネート、ベヘニルステアレート、ステアリルベヘネート等のモノエステル化合物;ペンタエリスリトールテトラパルミテート、ペンタエリスリトールテトラベヘネート、ペンタエリスリトールテトラステアレート等のペンタエリスリトールエステル化合物;ヘキサグリセリンテトラベヘネートテトラパルミテート、ヘキサグリセリンオクタベヘネート、ペンタグリセリンヘプタベヘネート、テトラグリセリンヘキサベヘネート、トリグリセリンペンタベヘネート、ジグリセリンテトラベヘネート、グリセリントリベヘネート等のグリセリンエステル化合物;ジペンタエリスリトールヘキサミリステート、ジペンタエリスリトールヘキサパルミテート等のジペンタエリスリトールエステル化合物;等が挙げられ、中でもモノエステル化合物が好ましい。
【0031】
離型剤として好適に用いられる炭化水素系ワックスとしては、たとえば、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス、フィッシャートロプシュワックス、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、石油系ワックス等が挙げられ、中でも、フィッシャートロプシュワックス、石油系ワックスが好ましく、石油系ワックスがより好ましい。炭化水素系ワックスの数平均分子量は、300~800であることが好ましく、400~600であることがより好ましい。また、JIS K2235 5.4で測定される炭化水素系ワックスの針入度は、1~10であることが好ましく、2~7であることがより好ましい。
【0032】
上記離型剤の他にも、たとえば、ホホバ等の天然ワックス;オゾケライト等の鉱物系ワックス;等を用いることができる。
【0033】
離型剤は、上述した1種または2種以上のワックスを組み合わせて用いることが好ましい。離型剤の使用量は、結着樹脂100質量部(結着樹脂を得るための重合性単量体100質量部)に対して、好ましくは0.1~30質量部、さらに好ましくは1~20質量部である。
【0034】
その他の添加物として、トナーの帯電性を向上させるために、正帯電性または負帯電性の帯電制御剤を用いることができる。帯電制御剤としては、一般にトナー用の帯電制御剤として用いられているものであれば、特に限定されないが、帯電制御剤の中でも、重合性単量体との相溶性が高く、安定した帯電性(帯電安定性)をトナー粒子に付与させることができることから、正帯電性または負帯電性の帯電制御樹脂が好ましく、正帯電性トナーを得る観点からは、正帯電性の帯電制御樹脂がより好ましく用いられる。
【0035】
正帯電性の帯電制御剤としては、ニグロシン染料、4級アンモニウム塩、トリアミノトリフェニルメタン化合物、およびイミダゾール化合物、ならびに、好ましく用いられる帯電制御樹脂としてのポリアミン樹脂、ならびに、4級アンモニウム含有共重合体、および4級アンモニウム塩含有共重合体等が挙げられる。
【0036】
負帯電性の帯電制御剤としては、Cr、Co、Al、およびFe等の金属を含有するアゾ染料、サリチル酸金属化合物およびアルキルサリチル酸金属化合物、ならびに、好ましく用いられる帯電制御樹脂としてのスルホン酸含有共重合体、スルホン酸塩含有共重合体、カルボン酸含有共重合体およびカルボン酸塩含有共重合体等が挙げられる。
【0037】
帯電制御剤の使用量は、結着樹脂100質量部(結着樹脂を得るための重合性単量体100質量部)に対して、好ましくは0.01~10質量部、より好ましくは0.03~8質量部である。帯電制御剤の使用量を上記範囲とすることにより、カブリの発生、および印字汚れの発生を有効に抑制できる。
【0038】
その他の添加物として、重合して結着樹脂となる重合性単量体を重合する際に、分子量調整剤を用いることが好ましい。分子量調整剤としては、一般にトナー用の分子量調整剤として用いられているものであれば、特に限定されず、たとえば、t-ドデシルメルカプタン、n-ドデシルメルカプタン、n-オクチルメルカプタン、および2,2,4,6,6-ペンタメチルヘプタン-4-チオール等のメルカプタン類;テトラメチルチウラムジスルフィド、テトラエチルチウラムジスルフィド、テトラブチルチウラムジスルフィド、N,N’-ジメチル-N,N’-ジフェニルチウラムジスルフィド、N,N’-ジオクタデシル-N,N’-ジイソプロピルチウラムジスルフィド等のチウラムジスルフィド類;等が挙げられる。これらの分子量調整剤は、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0039】
分子量調整剤の使用量は、結着樹脂100質量部(結着樹脂を得るための重合性単量体100質量部)に対して、好ましくは0.01~10質量部、より好ましくは0.1~5質量部である。
【0040】
(A-2)懸濁液を得る懸濁工程(液滴形成工程)
次いで、上記(A-1)重合性単量体組成物の調製工程により得られた、重合性単量体および着色剤を含む重合性単量体組成物を、水系分散媒体中に分散させ、重合開始剤を添加した後、重合性単量体組成物の液滴形成を行う。ここで、懸濁とは、水系分散媒体中で重合性単量体組成物の液滴を形成させることを意味する。液滴形成のための分散処理は、たとえば、インライン型乳化分散機(大平洋機工社製、商品名:マイルダー)、高速乳化・分散機(プライミクス社製、商品名:T.K.ホモミクサー MARK II型)等の強攪拌が可能な装置を用いて行なうことができる。
【0041】
重合開始剤としては、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム等の過硫酸塩;4,4’-アゾビス(4-シアノバレリック酸)、2,2’-アゾビス(2-メチル-N-(2-ヒドロキシエチル)プロピオンアミド)、2,2’-アゾビス(2-アミジノプロパン)ジヒドロクロライド、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)、2,2’-アゾビスイソブチロニトリル等のアゾ化合物;ジ-t-ブチルパーオキシド、ベンゾイルパーオキシド、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、t-ヘキシルパーオキシ-2-エチルブタノエート、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ-t-ブチルパーオキシオキシイソフタレート、t-ブチルパーオキシイソブチレート等の有機過酸化物;等が挙げられる。これらは、それぞれ単独で、あるいは2種以上組み合わせて用いることができる。これらの中で、残留重合性単量体を少なくすることができ、印字耐久性も優れることから、有機過酸化物を用いるのが好ましい。また、有機過酸化物の中では、開始剤効率がよく、残留する重合性単量体も少なくすることができることから、パーオキシエステルが好ましく、非芳香族パーオキシエステルすなわち芳香環を有しないパーオキシエステルがより好ましい。
【0042】
重合開始剤は、前記のように、重合性単量体組成物が水系媒体中へ分散された後、液滴形成前に添加してもよいが、水系媒体(水を主成分とする媒体)中へ分散される前の重合性単量体組成物へ添加してもよい。
【0043】
重合性単量体組成物の重合に用いられる、重合開始剤の添加量は、結着樹脂100質量部(結着樹脂を得るための重合性単量体100質量部)に対して、好ましくは0.1~20質量部であり、より好ましくは0.3~15質量部であり、さらに好ましくは1~10質量部である。
【0044】
本発明においては、水系媒体に、分散安定化剤を含有させることが好ましい。分散安定化剤としては、たとえば、硫酸バリウム、硫酸カルシウム等の硫酸塩;炭酸バリウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム等の炭酸塩;リン酸カルシウム等のリン酸塩;酸化アルミニウム、酸化チタン等の金属酸化物;水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化第二鉄等の金属水酸化物;等の無機化合物や、ポリビニルアルコール、メチルセルロース、ゼラチン等の水溶性高分子;アニオン性界面活性剤;ノニオン性界面活性剤;両性界面活性剤;等の有機化合物が挙げられる。上記分散安定化剤は1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。分散安定化剤の添加量は、結着樹脂100質量部(結着樹脂を得るための重合性単量体100質量部)に対して、好ましくは0.1~20質量部であり、より好ましくは0.2~10質量部である。
【0045】
上記分散安定化剤の中でも、無機化合物、特に難水溶性の金属水酸化物のコロイドが好ましい。無機化合物、特に難水溶性の金属水酸化物のコロイドを用いることにより、着色樹脂粒子の粒径分布を狭くすることができ、また、洗浄後の分散安定化剤残存量を少なくできるため、環境安定性を悪化させずに、得られるトナーによる画像の再現をより鮮明なものとすることができる。
【0046】
(A-3)重合工程
上記(A-2)懸濁液を得る工程(液滴形成工程)により得られた、所望の懸濁液(重合性単量体組成物の液滴を含有する水系分散媒体)を加熱し、重合を開始させることで、結着樹脂および着色剤を含む着色樹脂粒子の水分散液が得られる。
【0047】
本発明における重合温度は、50℃以上であることが好ましく、60~95℃であることがより好ましい。また、本発明における重合時間は、1~20時間であることが好ましく、2~15時間であることがより好ましい。
【0048】
なお、重合性単量体組成物の液滴を安定に分散させた状態で重合を行うという観点より、重合工程においては、上記(A-2)懸濁液を得る工程(液滴形成工程)に引き続いて、攪拌による分散処理を行ないながら重合反応を進行させてもよい。
【0049】
本発明において、このようにして得られる着色樹脂粒子は、そのまま後述する混合工程において無機微粒子と混合してトナーとして用いてもよいが、重合工程により得られる着色樹脂粒子をコア層とし、その外側にコア層と異なるシェル層を作ることで得られる、いわゆるコアシェル型(または、「カプセル型」ともいう)の着色樹脂粒子としてもよい。コアシェル型の着色樹脂粒子は、低軟化点の物質よりなるコア層を、それより高い軟化点を有する物質で被覆することにより、得られるトナーの保存安定性および低温定着性をより高めることができる。
【0050】
上記コアシェル型の着色樹脂粒子を製造する方法としては、特に制限はなく従来公知の方法によって製造することができるが、in situ重合法や相分離法が、製造効率の観点から好ましい。
【0051】
in situ重合法によるコアシェル型の着色樹脂粒子の製造法を以下に説明する。
in situ重合法においては、着色樹脂粒子が分散している水系分散媒体中に、シェル層を形成するための重合性単量体(シェル用重合性単量体)とシェル用重合開始剤を添加し、重合を行なうことでコアシェル型の着色樹脂粒子を得ることができる。
【0052】
シェル用重合性単量体としては、上述した重合性単量体と同様のものを用いることができる。その中でも、スチレン、メチルメタクリレート等のTgが80℃を超える重合体が得られる単量体を、単独であるいは2種以上組み合わせて使用することが好ましい。
【0053】
シェル用重合性単量体の重合に用いるシェル用重合開始剤としては、過硫酸カリウム、および過硫酸アンモニウム等の過硫酸金属塩;2,2’-アゾビス(2-メチル-N-(2-ヒドロキシエチル)プロピオンアミド)、および2,2’-アゾビス-(2-メチル-N-(1,1-ビス(ヒドロキシメチル)2-ヒドロキシエチル)プロピオンアミド)等の水溶性のアゾ化合物;等の重合開始剤を挙げることができる。シェル用重合開始剤の使用量は、シェル用重合性単量体100質量部に対して、好ましくは0.1~30質量部、より好ましくは1~20質量部である。
【0054】
シェル層の重合温度は、好ましくは50℃以上であり、より好ましくは60~95℃である。また、シェル層の重合時間は、好ましくは1~20時間、より好ましくは2~15時間である。
【0055】
(A-4)洗浄、濾過、脱水、および乾燥工程
上記(A-3)重合工程により得られる着色樹脂粒子の水分散液に対し、重合終了後に、常法に従い、洗浄、ろ過、脱水、および乾燥の一連の操作を、必要に応じて数回繰り返し行なうことが好ましい。
【0056】
まず、着色樹脂粒子の水分散液中に残存する分散安定化剤を除去するために、着色樹脂粒子の水分散液について、酸またはアルカリを添加し洗浄を行なうことが好ましい。使用した分散安定化剤が、酸に可溶な無機化合物である場合、着色樹脂粒子の水分散液へ酸を添加して、洗浄を行うことが好ましく、一方、使用した分散安定化剤が、アルカリに可溶な無機化合物である場合、着色樹脂粒子の水分散液へアルカリを添加して、洗浄を行うことが好ましい。
【0057】
また、分散安定化剤として、酸に可溶な無機化合物を使用した場合、着色樹脂粒子の水分散液へ酸を添加し、pHを、好ましくは6.5以下、より好ましくは6以下に調整することが好ましい。添加する酸としては、硫酸、塩酸、硝酸等の無機酸、および蟻酸、酢酸等の有機酸を用いることができるが、分散安定化剤の除去効率が大きいことや製造設備への負担が小さいことから、特に硫酸が好適である。
【0058】
脱水、ろ過の方法は、種々の公知の方法等を用いることができ、特に限定されない。たとえば、遠心ろ過法、真空ろ過法、加圧ろ過法等を挙げることができる。また、乾燥の方法も、特に限定されず、種々の方法が使用できる。
【0059】
(B)粉砕法
また、粉砕法を採用して着色樹脂粒子を製造する場合、以下のようなプロセスにより行なわれる。
まず、結着樹脂および着色剤、さらに必要に応じて添加される帯電制御剤等のその他の添加物を混合機、たとえば、ボールミル、V型混合機、ヘンシェルミキサー(商品名)、高速ディゾルバ、インターナルミキサー、フォールバーグ等を用いて混合する。次に、上記により得られた混合物を、加圧ニーダー、二軸押出混練機、ローラ等を用いて加熱しながら混練する。得られた混練物を、ハンマーミル、カッターミル、ローラミル等の粉砕機を用いて、粗粉砕する。さらに、ジェットミル、高速回転式粉砕機等の粉砕機を用いて微粉砕した後、風力分級機、気流式分級機等の分級機により、所望の粒径に分級することで、粉砕法により、着色樹脂粒子を得ることができる。
【0060】
なお、粉砕法で用いる結着樹脂、着色剤、帯電制御剤、及び、離型剤、さらに必要に応じて添加されるその他の添加物は、上述の(A)懸濁重合法で挙げたものを用いることができる。また、粉砕法により得られる着色樹脂粒子は、上述の(A)懸濁重合法により得られる着色樹脂粒子と同じく、in situ重合法等の方法によりコアシェル型の着色樹脂粒子とすることもできる。
【0061】
また、結着樹脂としては、上述した結着樹脂以外にも、従来からトナーに広く用いられている樹脂を使用することができる。粉砕法で用いられる結着樹脂としては、具体的には、ポリスチレン、スチレン-アクリル酸ブチル共重合体、ポリエステル樹脂、およびエポキシ樹脂等を例示することができる。
【0062】
(着色樹脂粒子)
上述の(A)懸濁重合法、または(B)粉砕法により着色樹脂粒子が得られる。
以下、着色樹脂粒子について述べる。なお、以下で述べる着色樹脂粒子は、コアシェル型のものとコアシェル型でないものの両方を含むものである。
【0063】
着色樹脂粒子の体積平均粒径(Dv)は、画像再現性の観点から、好ましくは3~11μmであり、より好ましくは5~10μm、さらに好ましくは6~9μm、特に好ましくは6.5~8μmである。着色樹脂粒子の体積平均粒径(Dv)を上記範囲とすることにより、トナーの流動性の低下、およびこれによるカブリ等による画質の劣化を有効に抑制しながら、得られる画像の解像度をより高めることができる。
【0064】
また、着色樹脂粒子の体積平均粒径(Dv)と個数平均粒径(Dp)との比である粒径分布(Dv/Dp)は、画像再現性の観点から、好ましくは1.0~1.3あり、より好ましくは1.0~1.2である。上記着色樹脂粒子の粒径分布(Dv/Dp)を上記範囲とすることにより、トナーの流動性の低下、およびこれによるカブリ等による画質の劣化をより有効に抑制しながら、得られる画像の解像度をより高めることができる。なお、着色樹脂粒子の体積平均粒径(Dv)、および個数平均粒径(Dp)は、たとえば、粒度分析計(ベックマン・コールター製、商品名:マルチサイザー)等を用いて測定することができる。
【0065】
また、上述した着色樹脂粒子の平均円形度は、画像再現性の観点から、好ましくは0.980以上であり、より好ましくは0.980~1.000であり、さらに好ましくは0.985~1.000である。
【0066】
(無機微粒子)
本発明で用いる無機微粒子としては、トナーを構成するための外添剤として用いられるものを制限なく用いることができるが、シリカ、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化亜鉛、酸化錫、炭酸カルシウム、燐酸カルシウム、および酸化セリウム等が挙げられる。これらのなかでも、シリカが好ましい。また、無機微粒子としては、2種類以上を混合して用いてもよく、たとえば、シリカと、酸化チタンとの組み合わせなど、異なる化合物を混合して用いてもよいし、あるいは、粒径等の異なる2種類のシリカを混合してもよい。
【0067】
無機微粒子としては、トナーとした場合における流動性をより高めるという観点より、比表面積が1~400m/gであるものを用いることが好ましく、比表面積が2~300m/gであるものを用いることがより好ましく、比表面積が3~200m/gであるものを用いることがさらに好ましい。比表面積は、BET比表面積測定装置を使用し、窒素吸着法(BET法)により測定することができる。
【0068】
また、無機微粒子の粒子径は特に限定されないが、個数平均粒子径が異なる2種以上の無機微粒子を用いることが好ましく、小粒径の無機微粒子と大粒径の無機微粒子の組み合わせであることがより好ましい。具体的には、小粒径側の個数平均粒子径は、好ましくは5~35nm、より好ましくは7~30nm、さらに好ましくは10~25nmである。大粒径側の個数平均粒子径は、好ましくは40~200nm、より好ましくは45~150nm、さらに好ましくは48~100nmである。なお、無機微粒子の個数平均粒子径は、たとえば、粒度分析計(堀場製作所、商品名:Partica LA-960)等を用いて測定することができる。
【0069】
(有機微粒子)
本発明では、上記無機微粒子以外に、有機微粒子を使用してもよい。
有機微粒子としては、ステアリン酸亜鉛やステアリン酸マグネシウムなどの脂肪酸金属塩粒子、メタクリル酸エステル重合体粒子、アクリル酸エステル重合体粒子、スチレン-メタクリル酸エステル共重合体粒子、スチレン-アクリル酸エステル共重合体粒子、コアがスチレン重合体でシェルがメタクリル酸エステル重合体で形成されたコアシェル型粒子、メラミン樹脂粒子、シリコーン樹脂粒子等が挙げられる。
有機微粒子の粒子径は、特に限定されないが、個数平均粒子径が、好ましくは0.1~2μm、より好ましくは0.3~1.5μm、さらに好ましくは0.3~1.0μmである。なお、有機微粒子の個数平均粒子径は、たとえば、粒度分析計(堀場製作所、商品名:Partica LA-960)等を用いて測定することができる。
【0070】
(トナーの製造方法)
本発明のトナーの製造方法は、上記した着色樹脂粒子と、上記した無機微粒子とを混合する混合工程を有し、
前記混合工程が、混合槽と、回転可能な撹拌羽根とを含む混合装置を用いて、前記混合槽内で前記撹拌羽根を回転させることによって、前記着色樹脂粒子と前記無機微粒子とを混合することで、前記無機微粒子を、前記着色樹脂粒子に固着させる工程であり、
前記混合装置として、前記混合装置を構成する前記撹拌羽根が、本体部と、前記本体部の長手方向に沿って形成され、前記混合槽の底面に対して突出した突出部とを備え、かつ、前記突出部の突出高さが、1.0mm以上であるものを用い、
前記混合工程における混合条件を、下記式(1)に示す条件とするものである。
900≦L×R×N≦5000 (1)
(上記式(1)において、Lは、前記撹拌羽根の突出部の幅[mm]であり、Rは、前記撹拌羽根の1秒間当たりの回転数[rpm/60]であり、Nは、前記混合装置に含まれる撹拌羽根の枚数である。)
【0071】
ここで、図1は、本発明の製造方法で用いられる一実施形態に係る混合装置を示す図である。以下において、図1に示す混合装置を例示して、本発明のトナーの製造方法について説明するが、本発明は、図1に示す態様に特に限定されるものではない。
【0072】
図1に示すように、一実施形態に係る混合装置10は、混合槽20と、下側回転体30と、上側回転体40と、回転軸50と、デフレクター60とを備える。混合装置10においては、回転軸50が、混合槽20の下方に位置する不図示のモータにより回転することで、下側回転体30および上側回転体40が回転可能となっている。
【0073】
そして、本発明の製造方法においては、混合槽20内において、下側回転体30と、下側回転体30の上方に位置する上側回転体40とを回転させることにより、上記した着色樹脂粒子と、上記した無機微粒子とを混合し、着色樹脂粒子に、無機微粒子を固着させることで、トナーを製造するものである。すなわち、着色樹脂粒子と、無機微粒子とを混合し、着色樹脂粒子に、外添剤としての無機微粒子を固着させることで、着色樹脂粒子の外添処理を行い、着色樹脂粒子の表面に無機微粒子が固着してなるトナーを製造するものである。
【0074】
図2(A)に、混合装置10を構成する下側回転体30の底面図(混合槽20の底面から、Z軸方向をプラス側に見た図)を、図2(B)に、図2(A)のIIb-IIb線に沿った、下側回転体30の断面図を示す。図2(A)、図2(B)に示すように、下側回転体30は、2枚の撹拌羽根30a,30bを、回転軸を中心として、対称に備え、2枚の撹拌羽根30a,30bは、それぞれ、本体部31a,31bと、本体部31a,31bの長手方向に沿って形成され、本体部31a,31bから、混合槽20の底面側に突出した、突出部32a,32b(図2(A)、図2(B)中、ハッチング部分)とを備える。すなわち、2枚の撹拌羽根30a,30bは、混合槽20の底面から見て、突出部32a,32bが形成されている部分と、突出部32a,32bが形成されていない部分(突出部非形成部分)とを有する。
【0075】
本発明の製造方法においては、このような構成を有する下側回転体30を、図2(A)中に記載矢印方向(すなわち、時計回り)に回転させ、これにより、2枚の撹拌羽根30a,30bの突出部32a,32bの突出面と、混合槽20の底面との間に形成されるクリアランスCによって、着色樹脂粒子と、無機微粒子との間において摩擦を起こさせることで、無機微粒子の凝集を解砕しながら、着色樹脂粒子の表面に、無機微粒子を固着させ、これにより、着色樹脂粒子に対し、外添処理を行うものである。そして、この際に、突出部32a,32bの突出高さHを1.0mm以上とし、かつ、突出部32a,32bの幅L[mm]と、下側回転体30の1秒間当たりの回転数R[rpm/60]と、撹拌羽根の枚数Nとを下記式(1)を満たすようにすることで、トナー同士の融着を抑制しつつ、無機微粒子の凝集を充分に解砕することができ、さらには、着色樹脂粒子の表面への無機微粒子の固着を充分なものとするこができる。そして、これにより、縦筋の発生および感光体フィルミングの発生が有効に抑制されたトナーを高い生産性にて製造できるものとすることができるものである。
900≦L×R×N≦5000 (1)
【0076】
突出部32a,32bの幅Lと、下側回転体30の1秒間当たりの回転数Rと、撹拌羽根の枚数Nとは、上記式(1)を満たすものとすればよいが、本発明の効果をより一層顕著なものとすることができるというより、下記式(2)を満たすものとすることがより好ましく、下記式(3)を満たすものとすることがさらに好ましく、下記式(4)を満たすものとすることが特に好ましい。
925≦L×R×N≦4000 (2)
950≦L×R×N≦3000 (3)
975≦L×R×N≦2500 (4)
【0077】
L×R×Nの値が小さすぎると、無機微粒子の分散が不十分となり、分散不良となった無機微粒子が原因ととなり感光体フィルミングが発生し易くなってしまう。一方、L×R×Nの値が大きすぎると、トナー同士が融着してしまい粗大粒子が発生してしまい、これにより縦筋が発生してしまう。
【0078】
突出部32a,32bの幅Lは、図2(A)に示すように、突出部32a,32bの長手方向に垂直な方向の幅である。また、突出部32a,32bの長手方向に垂直な方向の幅が一様ではない場合には、突出部32a,32bの全体の幅について平均値を算出し、これを突出部32a,32bの幅Lとすればよい。突出部32a,32bの幅Lは、下側回転体30の1秒間当たりの回転数Rと、撹拌羽根の枚数Nとの関係で、上記式(1)を満たすものとすればよいが、突出部32a,32bの幅Lは、好ましくは10~100mm、より好ましくは12~70mm、さらに好ましくは15~50mmである。
【0079】
下側回転体30の1秒間当たりの回転数R[rpm/60](すなわち、1分間の回転数[rpm]を60秒で除すことにより求められる値)は、突出部32a,32bの幅Lと、撹拌羽根の枚数Nとの関係で、上記式(1)を満たすものとすればよいが、好ましくは16.67~83.33rpm/60であり、より好ましくは20~75rpm/60、さらに好ましくは21.67~66.67rpm/60である。また、下側回転体30の1分間当たりの回転数[rpm]としては、好ましくは1000~5000rpmであり、より好ましくは1200~4500rpm、さらに好ましくは1300~4000rpmである。
【0080】
また、図2(A)に示す態様は、撹拌羽根30aおよび撹拌羽根30bの2枚の撹拌羽根を有するものであるため、枚数N=2となる。なお、撹拌羽根の枚数Nは、図2(A)に示す態様のように、N=2である態様に特に限定されず、N=3以上であってもよく、撹拌羽根の枚数Nは、突出部32a,32bの幅Lと、下側回転体30の1秒間当たりの回転数Rとの関係で、上記式(1)を満たすものとすればよいが、N=2~6であることが好ましく、N=2~4であることがさらに好ましい。
【0081】
また、2枚の撹拌羽根30a,30bにおいて、突出部32a,32bの突出高さH(すなわち、突出部32a,32bが形成されていない部分(突出部非形成部分)に対する、突出部32a,32bの高さ)は、1.0mm以上であり、好ましくは1.2~12mm、より好ましくは1.5~10mmである。本発明によれば、L×R×Nを上記範囲とすることに加え、突出部32a,32bの突出高さHを1.0mm以上とすることにより、撹拌羽根30a,30bの摩耗による劣化を適切に抑制することができ、これにより、縦筋の発生および感光体フィルミングの発生が有効に抑制されたトナーを、高い生産性にて製造できるものである。一方で、突出部32a,32bの突出高さHが小さすぎる場合や、突出部32a,32bを形成しない場合には、撹拌羽根30a,30bの摩耗による劣化が起こりやすく、撹拌羽根30a,30bの交換頻度が多くなり、生産性が低下してしまう。
【0082】
混合工程における混合時間Tは、特に限定されず、基本的には短い程好ましいが、好ましくは1200秒未満、より好ましくは60~1000秒、さらに好ましくは60~600秒である。
【0083】
また、突出部32a,32bの突出面と、混合槽20の底面との間の距離、すなわち、突出部32a,32bの突出面と、混合槽20の底面とにより形成されるクリアランスCは、用いる着色樹脂粒子および無機微粒子のサイズ等によって適宜調整すればよいが、好ましくは0.5~6mmであり、より好ましくは1.0~5mm、さらに好ましくは1.5~4mmである。突出部32a,32bの突出面と、混合槽20の底面との間の距離(クリアランスC)を上記範囲とすることにより、下側回転体30の摩耗を有効に抑制しながら、外添処理に要する時間を短くすることができ、これにより、生産性のさらなる向上を可能とすることができる。
【0084】
また、撹拌羽根30a,30bにおいて、突出部32a,32bを形成する箇所としては、特に限定されないが、本発明の作用効果をより一層高めることができるという観点より、図2(A)に示すように、回転方向に対し、前方側となる位置に、撹拌羽根30a,30bの長手方向に沿って形成することが好ましい。また、撹拌羽根30a,30bの長手方向に対する、突出部32a,32bの形成長さLは、特に限定されないが、撹拌羽根30a,30bの回転中心から先端位置(回転中心から最も離れた位置)までの長さを、撹拌羽根30a,30bの長さLとした場合に、本発明の作用効果をより一層高めることができるという観点より、突出部32a,32bの形成長さLは、撹拌羽根30a,30bの長さLに対して、50%以上の長さであることが好ましく、60%以上の長さであることがより好ましく、70%以上の長さであることが好ましい。また、突出部32a,32bは、撹拌羽根30a,30bの先端位置を起点として、先端位置から中心部に向かって、形成長さLにて形成されたものであることが好ましい。
【0085】
なお、突出部32a,32bは、撹拌羽根30a,30bを構成する本体部31a,31b上に、たとえば、本体部31a,31bと同じ材質、あるいは異なる材質を溶射することで形成することができる。
【0086】
混合工程における、無機微粒子の使用量は、着色樹脂粒子100質量部に対して、好ましくは0.5~5質量部、より好ましくは0.6~4.5質量部、さらに好ましくは0.8~4質量部である。無機微粒子の使用量を上記範囲とすることにより、トナーの印字性能に対する悪影響を抑制しながら、得られるトナーを、経時的に安定した帯電性および流動性を備えるものとすることができる。
【0087】
また、無機微粒子として、シリカを用いる場合には、シリカ表面を疎水化するという観点より、シランカップリング剤、シリコーンオイル、脂肪酸、脂肪酸金属石鹸等の表面処理剤を併用してもよい。
【0088】
シランカップリング剤としては、たとえば、ヘキサメチルジシラザン等のジシラザン;環状シラザン;トリメチルシラン、トリメチルクロルシラン、ジメチルジクロルシラン、メチルトリクロルシラン、アリルジメチルクロルシラン、ベンジルジメチルクロルシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、イソブチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、トリメチルメトキシシラン、ヒドロキシプロピルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、n-ブチルトリメトキシシラン、n-ヘキサデシルトリメトキシシラン、n-オクタデシルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、γ-メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、およびビニルトリアセトキシシラン等のアルキルシラン化合物;γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、γ-(2-アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、γ-(2-アミノエチル)アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-(2-アミノエチル)3-アミノプロピルトリメトキシシラン、およびN-β-(N-ビニルベンジルアミノエチル)-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン等のアミノシラン化合物;等が挙げられる。
【0089】
シリコーンオイルとしては、たとえば、ジメチルポリシロキサン、メチルハイドロジェンポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、及びアミノ変性シリコーンオイル等が挙げられる。
【0090】
表面処理剤の使用量は、無機微粒子100質量部に対して、好ましくは0.5~5質量部、より好ましくは0.8~4質量部、さらに好ましくは1.0~3質量部である。
【0091】
混合工程において、有機微粒子を使用する場合の使用量は、着色樹脂粒子100質量部に対して、好ましくは0.05~2質量部、より好ましくは0.07~1.5質量部、さらに好ましくは0.1~1.2質量部である。有機微粒子の使用量を上記範囲とすることにより、トナーの印字性能に対する悪影響を抑制しながら、得られるトナーを、経時的に安定した帯電性および流動性を備えるものとすることができる。
【0092】
以上のようにして得られる本発明の製造方法によりトナーを得ることができ、本発明の製造方法によれば、縦筋の発生および感光体フィルミングの発生が有効に抑制されたトナーを、高い生産性にて製造できるものである。
【0093】
本発明の製造方法により得られるトナーの体積平均粒径は、画像再現性の観点から、好ましくは3~11μmであり、より好ましくは5~10μm、さらに好ましくは6~9μm、特に好ましくは6.5~8μmである。着色樹脂粒子の体積平均粒径を上記範囲とすることにより、トナーの流動性の低下、およびこれによるカブリ等による画質の劣化を有効に抑制しながら、得られる画像の解像度をより高めることができる。トナーの体積平均粒径は、たとえば、粒度分析計(ベックマン・コールター製、商品名:マルチサイザー)等を用いて測定することができる。
【0094】
また、本発明の製造方法により得られるトナーの平均円形度は、画像再現性の観点から、好ましくは0.980以上であり、より好ましくは0.980~1.000であり、さらに好ましくは0.985~1.000である。
【実施例
【0095】
以下に、実施例および比較例を挙げて、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は、これらの実施例のみに限定されるものではない。なお、「部」および「%」は、特に断りのない限り質量基準である。
本実施例および比較例において行った試験方法は以下のとおりである。
【0096】
(1)トナーのBET比表面積
トナーについて、全自動BET比表面積測定装置(マウンテック社製、商品名:Macsorb HM model-1208)を用いて、窒素吸着法(BET法)によりBET比表面積を測定した。
【0097】
(2)トナーのせん断応力(5kPa)
トナーに対し、粉体流動性分析装置(freeman technology社製、商品名:パウダーレオメーターFT-4)を用いて、せん断応力測定を行うことで、トナーの内部摩擦角を求めた。具体的には、粉体流動性分析装置に付帯の50mm×85mmのVesselを組み、トナー15gを、篩を用いて均一にVessel内に投入した。トナー投入後、粉体流動性分析装置専用の48mmせん断応力測定用のブレードを使用して、せん断応力測定を行った。この際、垂直荷重を1kPa→2KPa→4KPa→8KPa→10kPaと変化させ、各垂直荷重におけるせん断荷重を測定した。そして、得られた測定結果について、横軸を垂直荷重、縦軸をせん断荷重として、原点(X,Y=0,0)を通過する近似直線求め、求めた近似直線の5kPaでのせん断荷重を、せん断応力(5kPa)とした。
【0098】
(3)トナーのブローオフ帯電量
キャリア(パウダーテック社製、商品名:NZ-3)9.5gと、トナー0.5gを秤量し、容積100ccのガラス瓶に入れ、30分間、150回転/分の回転数で回転させた。次に、ブローオフメーター(京セラケミカル社製、商品名:TB-203)を用い、窒素ガスを4.5kPaの圧力でブローし、9.5kPaの圧力で吸引することにより、トナーのブローオフ帯電量(μQ/g)を測定した。測定は、温度23℃、相対湿度50%で行った。
【0099】
(4)トナーの保存性(59℃)
トナー10gを容器に入れて、密閉した後、温度を59℃にした恒温水槽の中に該容器を沈め、5時間経過した後に取り出した。取り出した容器からトナーを42メッシュの篩いの上にできるだけ振動を与えないように移し、粉体測定機(ホソカワミクロン社製、商品名:パウダテスタPT-R)にセットした。篩いの振幅を1.0mmに設定して、30秒間振動した後、篩い上に残ったトナーの重量を測定し、これを凝集したトナーの重量とした。測定したトナーの重量(20g)に対する、篩い上に残ったトナーの重量(凝集したトナーの重量に相当。)の割合(重量%)から、トナーの高温保存性(%)を算出した。トナーの高温保存性(%)は、数値が小さい程、凝集したトナーが少なく、高温保存性が良いことを示す。
【0100】
(4)トナーの体積平均粒径、粗大粒子量
トナーの体積平均粒径は、粒度分布測定機(ベックマン・コールター社製、商品名:マルチサイザー)により測定した。このマルチサイザーによる測定は、アパーチャー径:100μm、分散媒体:アイソトンII(商品名)、濃度10%、測定粒子個数:100,000個の条件で行った。具体的には、トナーサンプル0.2gをビーカーに取り、その中に分散剤として界面活性剤水溶液(富士フィルム社製、商品名:ドライウェル)を加えた。そこへ、さらに分散媒体を2ml加え、トナーを湿潤させた後、分散媒体を10ml加え、超音波分散器で1分間分散させてから上記の粒径測定器による測定を行なった。
そして、上記測定により測定された粒子径を、トナーの体積平均粒径とし、体積平均での20μm以上の粒子の比率を粗大粒子量とした。
【0101】
(5)トナーの平均円形度
容器中に、予めイオン交換水10mlを入れ、その中に分散剤として界面活性剤水溶液(富士フィルム社製、商品名:ドライウェル)0.2gを加え、さらにトナー0.2gを加え、超音波分散機で60W、3分間分散処理を行った。測定時のトナー濃度を3,000~10,000個/μLとなるように調整し、0.4μm以上の円相当径のトナー1,000~10,000個についてフロー式粒子像分析装置(シスメックス社製、商品名:FPIA-2100)を用いて測定した。測定値から平均円形度を求めた。円形度は下記式に示され、平均円形度は、その平均を取ったものである。
(円形度)=(粒子の投影面積に等しい円の周囲長)/(粒子投影像の周囲長)
【0102】
(6)トナー中のシリカ凝集物量
トナー約10mgを目開き45μmの篩の上に落とし、逆側より粉体用掃除機で吸引し、トナーの篩処理を行った。トナー除去後、マイクロスコープで45μmの篩の目に詰まったシリカ凝集物の数を目視でカウントし、カウントした個数を、計りとったトナーのmg数で割り返すことで、1mg当たりのシリカ凝集物の個数を求めた。
【0103】
(7)縦筋発生枚数、感光体フィルミング発生枚数
市販の非磁性一成分現像方式プリンター(解像度600dpi、印刷速度28枚/分)を用いて、印字用紙をセットし、現像装置にトナーを入れた。温度23℃、湿度50%RHの常温常湿(N/N)環境の各環境下で24時間放置した後、同環境にて、5%印字濃度で最大10,000枚まで連続印字を行なった。1000枚毎に白ベタ印字(印字濃度0%)とベタ印字(印字濃度100%)を交互に3回ずつ行うと共に、現像ロールの状態を確認した。
この際、白ベタ印字(印字濃度0%)またはベタ印字(印字濃度100%)物に筋が2枚以上発生していた場合、縦筋が発生したと判断し、その時点での印字枚数を縦筋発生枚数とした。
また、この際、併せて感光体の表面に光を照らし目視観察した。感光体の表面に外添剤として用いたシリカが付着したことが確認された場合、外添剤による感光体フィルミングが発生したと判断し、その時点での印字枚数を感光体フィルミング発生枚数とした。
本試験においては、縦筋発生枚数、感光体フィルミング発生枚数のいずれも5,000枚以上である場合に良好であると判断できる。また、本試験は、最大印字枚数の10,000枚に達した時点で終了とした。
【0104】
[製造例1]
重合性単量体としてスチレン78部およびn-ブチルアクリレート22部、ブラック着色剤としてカーボンブラック(三菱化学社製、商品名:#25B)5部を、インライン型乳化分散機(大平洋機工株式会社製、商品名:マイルダー)を用いて分散させて、重合性単量体混合物を得た。次いで、得られた重合性単量体混合物に、帯電制御剤として帯電制御樹脂(4級アンモニウム基含有スチレンアクリル樹脂)1.0部、離型剤として脂肪酸エステルワックス(ベヘニルベヘネート)5.0部、マクロモノマーとしてポリメタクリル酸エステルマクロモノマー(東亜合成化学工業社製、商品名:AA6)0.3部、架橋性の重合性単量体としてジビニルベンゼン0.6部、および分子量調整剤としてt-ドデシルメルカプタン1.6部を添加し、混合、溶解して、重合性単量体組成物を調製した。
【0105】
他方、室温下で、イオン交換水250部に塩化マグネシウム(水溶性多価金属塩)15.2部を溶解した水溶液に、イオン交換水50部に水酸化ナトリウム(水酸化アルカリ金属)9.3部を溶解した水溶液を攪拌下で徐々に添加して、水酸化マグネシウムコロイド(難水溶性の金属水酸化物コロイド)分散液を調製した。
【0106】
上記重合性単量体組成物の液滴が分散した懸濁液(重合性単量体組成物分散液)を、攪拌翼を装着した反応器内に投入し、90℃に昇温し、重合反応を開始させた。重合転化率が、ほぼ100%に達したときに、シェル用重合性単量体としてメチルメタクリレート1部、およびイオン交換水10部に溶解したシェル用重合開始剤である2,2’-アゾビス(2-メチル-N-(2-ヒドロキシエチル)-プロピオンアミド)(和光純薬社製、商品名:VA-086、水溶性)0.3部を添加し、90℃で4時間反応を継続した後、水冷して反応を停止し、コアシェル型構造を有する着色樹脂粒子を含む水系媒体分散液を得た。この時の着色樹脂粒子の平均体積粒径は7.0μmであり、円形度は0.988であった。なお、平均体積粒径および円形度は、上記(4)、(5)と同様の方法により測定した。
【0107】
上記着色樹脂粒子の水分散液に、室温下で攪拌しながら、硫酸を滴下し、pHが6.5以下となるまで酸洗浄を行った。次いで、濾過分離を行い、得られた固形分にイオン交換水500部を加えて再スラリー化させて、水洗浄処理(洗浄・濾過・脱水)を数回繰り返し行った。次いで、濾過分離を行い、得られた固形分を乾燥機の容器内に入れ、45℃で48時間乾燥を行い、乾燥した着色樹脂粒子を得た。
【0108】
[実施例1]
製造例1において得られた着色樹脂粒子100部に、外添剤として、無機微粒子2種類:個数平均粒径20nmのシリカ(キャボット社製、商品名:TG-7120、BET比表面積:140m/g)0.90部、個数平均粒径50nmのシリカ(ワッカー社製、商品名:HDKH05TA、BET比表面積:50m/g)1.1部、および、有機微粒子として、ステアリン酸亜鉛(堺化学社製、商品名:SPZ-100F)0.20部を添加し、図1に示す撹拌装置(高速撹拌機(日本コークス社製、商品名:150L FMミキサー)の撹拌羽根30a,30bとして、図2(A)、図2(B)に示すような突出部32a,32bを設けたものを用いた撹拌装置)を用いて、混合を行うことで、トナーを得た。なお、実施例1においては、撹拌装置として、図2(A)、図2(B)に示すように、下側回転体30が、2枚の撹拌羽根30a,30bからなり(撹拌羽根の枚数N=2)、図2(A)に示す態様で突出部32a,32bを備え(突出部32a,32bの形成長さLが、撹拌羽根30a,30bの長さLに対して、約80%の長さ)、突出部32a,32bの幅L=19mm、突出部32a,32bの突出高さH=8mmであるものを使用した。また、混合時間Tを480秒、下側回転体30の回転速度を1540rpm(1秒間の回転速度R=25.67rpm/60)とし、2枚の撹拌羽根30a,30bの突出部32a,32bと、混合槽20との間の距離(クリアランスC)は2mmとした。
そして、得られたトナーについて、上記した方法に従って、各測定を行った。また、同様の混合処理を繰り返し行ったところ、生産レート:300kg/hにてトナーの生産が可能であり、また、摩耗による下側回転体30の交換頻度は、700h/回であった。
【0109】
[実施例2]
下側回転体30の回転速度を1440rpm(1秒間の回転速度R=24rpm/60)とした以外は、実施例1と同様にして、トナーを製造し、同様に評価を行った。また、実施例2においても、同様の混合処理を繰り返し行ったところ、生産レート:300kg/hにてトナーの生産が可能であり、また、摩耗による下側回転体30の交換頻度は、700h/回であった。
【0110】
[実施例3]
下側回転体30として、4枚の撹拌羽根を有するもの(各撹拌羽根は、実施例1と同様の構成を有し、各撹拌羽根が90°ごとに配置された構成とした)を使用した以外は、実施例1と同様にして、トナーを製造し、同様に評価を行った。また、実施例3においても、同様の混合処理を繰り返し行ったところ、生産レート:300kg/hにてトナーの生産が可能であり、また、摩耗による下側回転体30の交換頻度は、700h/回であった。
【0111】
[実施例4]
2枚の撹拌羽根30a,30bの突出部32a,32bと、混合槽20との間の距離(クリアランスC)を5mmとした以外は、実施例1と同様にして、トナーを製造し、同様に評価を行った。また、実施例3においても、同様の混合処理を繰り返し行ったところ、生産レート:300kg/hにてトナーの生産が可能であり、また、摩耗による下側回転体30の交換頻度は、700h/回であった。
【0112】
[実施例5]
混合時間Tを960秒とした以外は、実施例1と同様にして、トナーを製造し、同様に評価を行った。また、実施例5においても、同様の混合処理を繰り返し行ったところ、生産レート:150kg/hにてトナーの生産が可能であり、また、摩耗による下側回転体30の交換頻度は、700h/回であった。
【0113】
[比較例1]
下側回転体30を構成する2枚の撹拌羽根30a,30bとして、突出部32a,32bを有しないものを使用した以外は、実施例1と同様にして、トナーを製造し、同様に評価を行った。なお、比較例1においては、2枚の撹拌羽根30a,30bの本体部31a,31bと、混合槽20との間の距離(クリアランスC)を2mmとした以外は、また、比較例1においても、同様の混合処理を繰り返し行ったところ、生産レート:300kg/hにてトナーの生産が可能であったが、その一方で、摩耗による下側回転体30の交換頻度は、100h/回であった。
【0114】
[比較例2]
2枚の撹拌羽根30a,30bの突出部32a,32bの幅Lが10mmであるものを使用した以外は、実施例1と同様にして、トナーを製造し、同様に評価を行った。また、比較例2においても、同様の混合処理を繰り返し行ったところ、生産レート:300kg/hにてトナーの生産が可能であり、また、摩耗による下側回転体30の交換頻度は、700h/回であった。
【0115】
[比較例3]
下側回転体30の回転速度を1240rpm(1秒間の回転速度R=20.67rpm/60)とした以外は、実施例1と同様にして、トナーを製造し、同様に評価を行った。また、比較例3においても、同様の混合処理を繰り返し行ったところ、生産レート:300kg/hにてトナーの生産が可能であり、また、摩耗による下側回転体30の交換頻度は、1000h/回であった。
【0116】
[比較例4]
下側回転体30として、4枚の撹拌羽根を有するもの(各撹拌羽根は、比較例1と同様の構成を有し、各撹拌羽根が90°ごとに配置された構成とした)を使用した以外は、比較例1と同様にして、トナーを製造し、同様に評価を行った。また、比較例4においても、同様の混合処理を繰り返し行ったところ、生産レート:300kg/hにてトナーの生産が可能であったが、その一方で、摩耗による下側回転体30の交換頻度は、100h/回であった。
【0117】
【表1】
表1中、比較例1,4は、撹拌羽根として突出部を有しないものを用いたため、本体部の幅を突出部の幅Lとした。
【0118】
表1に示すように、混合装置を構成する撹拌羽根として、突出高さHが1.0mm以上である突出部を備えるものを使用し、かつ、撹拌羽根の突出部の幅L[mm]、撹拌羽根の1秒間当たりの回転数R[rpm/60]、撹拌羽根の枚数Nを、900≦L×R×N≦5000となる範囲とすることにより、縦筋発生枚数、感光体フィルミング発生枚数のいずれも5,000枚以上で、縦筋の発生および感光体フィルミングの発生が有効に抑制されたものであり、また、生産レートが高く、撹拌羽根の交換頻度も低いことから、生産性にも優れる結果であった(実施例1~5)。
一方、混合装置を構成する撹拌羽根として、突出部を備えないものを用いた場合には、撹拌羽根の交換頻度が高く、生産性に劣るものであった(比較例1,4)。
また、L×R×Nの値が900未満である場合には、シリカの凝集物量が多くなり、これにより、感光体フィルミングの発生が顕著となる結果となった(比較例2,3)。
さらに、L×R×Nの値が5000超である場合には、トナーにおける粗大粒子量が多くなり、これにより、縦筋の発生が顕著となる結果となった(比較例4)。
図1
図2