(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-03
(45)【発行日】2024-06-11
(54)【発明の名称】フロロシリコーンゴム積層体の製造方法およびフロロシリコーンゴム積層体
(51)【国際特許分類】
B05D 1/36 20060101AFI20240604BHJP
B05D 7/24 20060101ALI20240604BHJP
B05D 3/00 20060101ALI20240604BHJP
C08L 83/08 20060101ALI20240604BHJP
C08K 5/14 20060101ALI20240604BHJP
C08K 3/11 20180101ALI20240604BHJP
B32B 25/20 20060101ALI20240604BHJP
【FI】
B05D1/36 Z
B05D7/24 302L
B05D7/24 302Y
B05D7/24 303A
B05D3/00 D
C08L83/08
C08K5/14
C08K3/11
B32B25/20
(21)【出願番号】P 2021551356
(86)(22)【出願日】2020-09-30
(86)【国際出願番号】 JP2020037094
(87)【国際公開番号】W WO2021065990
(87)【国際公開日】2021-04-08
【審査請求日】2023-09-22
(31)【優先権主張番号】P 2019180800
(32)【優先日】2019-09-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】719000328
【氏名又は名称】ダウ・東レ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】小渕 喜一
(72)【発明者】
【氏名】石神 直哉
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 知一郎
【審査官】伊藤 寿美
(56)【参考文献】
【文献】特開平09-268257(JP,A)
【文献】特開平02-028259(JP,A)
【文献】特開2005-082669(JP,A)
【文献】特開平06-306333(JP,A)
【文献】特開2002-194103(JP,A)
【文献】特開平05-086352(JP,A)
【文献】特開昭61-278582(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B05D 1/00- 7/26
B32B 1/00- 43/00
C08L 83/00- 83/16
C08J 7/04- 7/06
C09D 5/00- 5/46,
183/00-183/16
C09J 5/00- 5/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記工程(1)~(2)から少なくともなる、フロロシリコーンゴム積層体の製造方法。
(1)基材にプライマー組成物を塗布し、次いで、乾燥または硬化により、前記基材の表面にプライマー層を形成する工程;
(2)前記プライマー層にフロロシリコーンゴム組成物を接触させ、次いで、該組成物の硬化により、前記プライマー層にフロロシリコーンゴムを接着する工程、
ここで、
前記フロロシリコーンゴム組成物は、白金系触媒および/またはケイ素原子結合水素原子含有フロロシロキサンを含有し、
前記プライマー組成物は、白金系触媒またはケイ素原子結合水素原子含有フロロシロキサンを含有し、
ただし、
前記プライマー組成物は白金系触媒およびケイ素原子結合水素原子含有フロロシロキサンを同時に含有せず、
前記プライマー組成物または前記フロロシリコーンゴム組成物のいずれか一方は、白金系触媒またはケイ素原子結合水素原子含有フロロシロキサンを含有
し、
前記フロロシリコーンゴム組成物が、
(a)(a1)一分子中に、少なくとも2個のアルケニル基を有し、ケイ素原子結合全有機基の少なくとも20モル%がフロロアルキル基であるオルガノポリシロキサン、または前記成分(a1)と(a2)一分子中に、少なくとも2個のアルケニル基を有し、フロロアルキル基を有さないか、またはフロロアルキル基を有するとしても、ケイ素原子結合全有機基の多くとも20モル%未満であるオルガノポリシロキサンとの混合物;
(b)有機過酸化物;および
(c)白金系触媒
から少なくともなり、ここで前記(b)有機過酸化物は、ベンゾイルパーオキサイド、ターシャリーブチルパーベンゾエート、オルトメチルベンゾイルパーオキサイド、パラメチルベンゾイルパーオキサイド、ジターシャリーブチルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、1,1-ビス(ターシャリーブチルパーオキシ)3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、2,5-ジメチル-2,5-ジ(ターシャリーブチルパーオキシ)へキサン、および2,5-ジメチル-2,5-ジ(ターシャリーブチルパーオキシ)へキシンからなる群から選択される少なくとも一つであり、
前記プライマー組成物が、
(d)ケイ素原子結合水素原子含有フロロシロキサン;
(e)アルコキシシランおよび/またはその部分加水分解縮合物;および
(f)縮合反応用触媒
から少なくともなる。
【請求項2】
基材が金属またはプラスチックである、請求項1記載の方法。
【請求項3】
(d)成分が、下記一般式:
R
1
3SiO(R
1R
fSiO)
m(R
1HSiO)
nSiR
1
3
(式中、R
1は同じかまたは異なる、脂肪族不飽和結合を有さない炭素原子数1~20の一価炭化水素基、R
fは同じかまたは異なるフロロアルキル基、mは1以上の整数、nは2以上の整数、かつ、mとnの合計は5~100の整数である。)
で表されるフロロシロキサン、または下記平均単位式:
[HR
1
2SiO
1/2]
a(R
fSiO
3/2)
b
(式中、R
1およびR
fは前記と同じであり、a、bは、それぞれ、0<a<1、0<b<1、かつa+b=1を満たす数である。)
で表されるフロロシロキサンから選ばれる少なくとも一種である、
請求項1記載の方法。
【請求項4】
下記工程(1)~(2)から少なくともなる、フロロシリコーンゴム積層体の製造方法。
(1)基材にプライマー組成物を塗布し、次いで、乾燥または硬化により、前記基材の表面にプライマー層を形成する工程;
(2)前記プライマー層にフロロシリコーンゴム組成物を接触させ、次いで、該組成物の硬化により、前記プライマー層にフロロシリコーンゴムを接着する工程、
ここで、
前記フロロシリコーンゴム組成物は、白金系触媒および/またはケイ素原子結合水素原子含有フロロシロキサンを含有し、
前記プライマー組成物は、白金系触媒またはケイ素原子結合水素原子含有フロロシロキサンを含有し、
ただし、
前記プライマー組成物は白金系触媒およびケイ素原子結合水素原子含有フロロシロキサンを同時に含有せず、
前記プライマー組成物または前記フロロシリコーンゴム組成物のいずれか一方は、白金系触媒またはケイ素原子結合水素原子含有フロロシロキサンを含有し、
前記フロロシリコーンゴム組成物が、
(a)(a1)一分子中に、少なくとも2個のアルケニル基を有し、ケイ素原子結合全有機基の少なくとも20モル%がフロロアルキル基であるオルガノポリシロキサン、または前記成分(a1)と(a2)一分子中に、少なくとも2個のアルケニル基を有し、フロロアルキル基を有さないか、またはフロロアルキル基を有するとしても、ケイ素原子結合全有機基の多くとも20モル%未満であるオルガノポリシロキサンとの混合物;
(c)白金系触媒;および
(d)ケイ素原子結合水素原子含有フロロシロキサン
から少なくともなり、
前記プライマー組成物が、
(d)ケイ素原子結合水素原子含有フロロシロキサン;
(e)アルコキシシランおよび/またはその部分加水分解縮合物;および
(f)縮合反応用触媒
から少なくともな
る。
【請求項5】
(d)成分が、下記一般式:
R
1
3SiO(R
1R
fSiO)
m(R
1HSiO)
nSiR
1
3
(式中、R
1は同じかまたは異なる、脂肪族不飽和結合を有さない炭素原子数1~20の一価炭化水素基、R
fは同じかまたは異なるフロロアルキル基、mは1以上の整数、nは2以上の整数、かつ、mとnの合計は5~100の整数である。)
で表されるフロロシロキサン、または下記平均単位式:
[HR
1
2SiO
1/2]
a(R
fSiO
3/2)
b
(式中、R
1およびR
fは前記と同じであり、a、bは、それぞれ、0<a<1、0<b<1、かつa+b=1を満たす数である。)
で表されるフロロシロキサンから選ばれる少なくとも一種である、
請求項4記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フロロシリコーンゴム積層体の製造方法、およびその製造方法で得られるフロロシリコーンゴム積層体に関する。
【背景技術】
【0002】
3,3,3-トリフロロプロピル基等のフロロアルキル基を有するオルガノポリシロキサンを主成分とするフロロシリコーンゴム組成物は、耐熱性、耐寒性、耐油性、耐燃料油性が優れるフロロシリコーンゴムを形成することから、定着ロールや紙送りロール等のゴム材料、または自動車用あるいは航空機用のゴム材料として使用されている。しかし、フロロシリコーンゴム組成物は金属やプラスチック等の基材に直接接着しにくいという課題があった。そのため、フロロシリコーンゴム組成物を金属やプラスチック等の基材に接着させるため、プライマー組成物の使用が提案されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、含フッ素有機基を有し、分子両末端にハイドロジェンシリル基を有する有機ケイ素化合物、および白金系触媒からなるプライマー組成物を用いることが提案されており、また、特許文献2には、ケイ素原子結合水素原子含有フロロシロキサン、および白金系触媒からなるプライマー組成物を用いることが提案されている。一方、特許文献3には、3,3,3-トリフロロプロピル基を所定量含有する、重合度1,000以上のオルガノポリシロキサン、微粉末状シリカ系充填剤、ケイ素原子結合水素原子の含有量が0.8重量%以上であるオルガノハイドロジェンポリシロキサン、および有機過酸化物からなるフロロシリコーンゴム組成物を、アルケニル基含有オルガノアルコキシシランを主成分とするプライマー組成物で処理した基材に接触させて硬化させる方法が提案されている。
【0004】
しかし、特許文献1、2で提案されるプライマー組成物は、ケイ素原子結合水素原子を有する化合物と白金系触媒が同時に含有しているので、ケイ素原子結合水素原子の脱水素反応等により、期待した程の接着性を向上することはできず、また、特許文献3で提案される接着方法では、フロロシリコーンゴムと基材との接着性を著しく向上させることは困難であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開平08-302198号公報
【文献】特開2005-060430号公報
【文献】特開平09-268257号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、フロロシリコーンゴム層と基材とが良好に接着しているフロロシリコーンゴム積層体の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のフロロシリコーンゴム積層体の製造方法は、下記工程(1)~(2)から少なくともなることを特徴とする。
(1)基材にプライマー組成物を塗布し、次いで、乾燥または硬化により、前記基材の表面にプライマー層を形成する工程;
(2)前記プライマー層にフロロシリコーンゴム組成物を接触させ、次いで、該組成物の硬化により、前記プライマー層にフロロシリコーンゴムを接着する工程、
ここで、
前記フロロシリコーンゴム組成物は、白金系触媒および/またはケイ素原子結合水素原子含有フロロシロキサンを含有し、
前記プライマー組成物は、白金系触媒またはケイ素原子結合水素原子含有フロロシロキサンを含有し、
ただし、
前記プライマー組成物は白金系触媒およびケイ素原子結合水素原子含有フロロシロキサンを同時に含有せず、
前記プライマー組成物または前記フロロシリコーンゴム組成物のいずれか一方は、白金系触媒またはケイ素原子結合水素原子含有フロロシロキサンを含有する。
【0008】
本方法において、基材は金属またはプラスチックであることが好ましい。
【0009】
本方法において、
フロロシリコーンゴム組成物は、
(a)(a1)一分子中に、少なくとも2個のアルケニル基を有し、ケイ素原子結合全有機基の少なくとも20モル%がフロロアルキル基であるオルガノポリシロキサン、または前記成分(a1)と(a2)一分子中に、少なくとも2個のアルケニル基を有し、フロロアルキル基を有さないか、またはフロロアルキル基を有するとしても、ケイ素原子結合全有機基の多くとも20モル%未満であるオルガノポリシロキサンとの混合物;
(b)有機パーオキサイド;および
(c)白金系触媒
から少なくともなり、
プライマー組成物は、
(d)ケイ素原子結合水素原子含有フロロシロキサン;
(e)アルコキシシランおよび/またはその部分加水分解縮合物;および
(f)縮合反応用触媒
から少なくともなることが好ましく、
上記(d)成分は、下記一般式:
R1
3SiO(R1RfSiO)m(R1HSiO)nSiR1
3
(式中、R1は同じかまたは異なる、脂肪族不飽和結合を有さない炭素原子数1~20の一価炭化水素基、Rfは同じかまたは異なるフロロアルキル基、mは1以上の整数、nは2以上の整数、かつ、mとnの合計は5~100の整数である。)
で表されるフロロシロキサン、または下記平均単位式:
[HR1
2SiO1/2]a(RfSiO3/2)b
(式中、R1およびRfは前記と同じであり、a、bは、それぞれ、0<a<1、0<b<1、かつa+b=1を満たす数である。)
で表されるフロロシロキサンから選ばれる少なくとも一種であることが好ましい。
【0010】
また、本方法において、
フロロシリコーンゴム組成物は、
(a)(a1)一分子中に、少なくとも2個のアルケニル基を有し、ケイ素原子結合全有機基の少なくとも20モル%がフロロアルキル基であるオルガノポリシロキサン、または前記成分(a1)と(a2)一分子中に、少なくとも2個のアルケニル基を有し、フロロアルキル基を有さないか、またはフロロアルキル基を有するとしても、ケイ素原子結合全有機基の多くとも20モル%未満であるオルガノポリシロキサンとの混合物;
(b)有機パーオキサイド;および
(d)ケイ素原子結合水素原子含有フロロシロキサン;
から少なくともなり、
プライマー組成物は、
(c)白金系触媒;
(e)アルコキシシランおよび/またはその部分加水分解縮合物;および
(f)縮合反応用触媒
から少なくともなることが好ましく、
上記(d)成分は、下記一般式:
R1
3SiO(R1RfSiO)m(R1HSiO)nSiR1
3
(式中、R1は同じかまたは異なる、脂肪族不飽和結合を有さない炭素原子数1~20の一価炭化水素基、Rfは同じかまたは異なるフロロアルキル基、mは1以上の整数、nは2以上の整数、かつ、mとnの合計は5~100の整数である。)
で表されるフロロシロキサン、または下記平均単位式:
[HR1
2SiO1/2]a(RfSiO3/2)b
(式中、R1およびRfは前記と同じであり、a、bは、それぞれ、0<a<1、0<b<1、かつa+b=1を満たす数である。)
で表されるフロロシロキサンから選ばれる少なくとも一種であることが好ましい。
【0011】
また、本方法において、
フロロシリコーンゴム組成物は、
(a)(a1)一分子中に、少なくとも2個のアルケニル基を有し、ケイ素原子結合全有機基の少なくとも20モル%がフロロアルキル基であるオルガノポリシロキサン、または前記成分(a1)と(a2)一分子中に、少なくとも2個のアルケニル基を有し、フロロアルキル基を有さないか、またはフロロアルキル基を有するとしても、ケイ素原子結合全有機基の多くとも20モル%未満であるオルガノポリシロキサンとの混合物;
(c)白金系触媒;および
(d)ケイ素原子結合水素原子含有フロロシロキサン
から少なくともなり、
プライマー組成物は、
(d)ケイ素原子結合水素原子含有フロロシロキサン;
(e)アルコキシシランおよび/またはその部分加水分解縮合物;および
(f)縮合反応用触媒
から少なくともなることが好ましく、
上記(d)成分は、下記一般式:
R1
3SiO(R1RfSiO)m(R1HSiO)nSiR1
3
(式中、R1は同じかまたは異なる、脂肪族不飽和結合を有さない炭素原子数1~20の一価炭化水素基、Rfは同じかまたは異なるフロロアルキル基、mは1以上の整数、nは2以上の整数、かつ、mとnの合計は5~100の整数である。)
で表されるフロロシロキサン、または下記平均単位式:
[HR1
2SiO1/2]a(RfSiO3/2)b
(式中、R1およびRfは前記と同じであり、a、bは、それぞれ、0<a<1、0<b<1、かつa+b=1を満たす数である。)
で表されるフロロシロキサンから選ばれる少なくとも一種であることが好ましい。
【0012】
また、本方法において、
フロロシリコーンゴム組成物は、
(a)(a1)一分子中に、少なくとも2個のアルケニル基を有し、ケイ素原子結合全有機基の少なくとも20モル%がフロロアルキル基であるオルガノポリシロキサン、または前記成分(a1)と(a2)一分子中に、少なくとも2個のアルケニル基を有し、フロロアルキル基を有さないか、またはフロロアルキル基を有するとしても、ケイ素原子結合全有機基の多くとも20モル%未満であるオルガノポリシロキサンとの混合物;
(c)白金系触媒;および
(d)ケイ素原子結合水素原子含有フロロシロキサン
から少なくともなり、プライマー組成物は、
(c)白金系触媒;
(e)アルコキシシランおよび/またはその部分加水分解縮合物;および
(f)縮合反応用触媒
から少なくともなることが好ましく、
上記(d)成分は、下記一般式:
R1
3SiO(R1RfSiO)m(R1HSiO)nSiR1
3
(式中、R1は同じかまたは異なる、脂肪族不飽和結合を有さない炭素原子数1~20の一価炭化水素基、Rfは同じかまたは異なるフロロアルキル基、mは1以上の整数、nは2以上の整数、かつ、mとnの合計は5~100の整数である。)
で表されるフロロシロキサン、または下記平均単位式:
[HR1
2SiO1/2]a(RfSiO3/2)b
(式中、R1およびRfは前記と同じであり、a、bは、それぞれ、0<a<1、0<b<1、かつa+b=1を満たす数である。)
で表されるフロロシロキサンから選ばれる少なくとも一種であることが好ましい。
【0013】
本発明のフロロシリコーンゴム積層体は、フロロシリコーンゴムと基材からなり、上記の製造方法により得られることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明の製造方法によれば、フロロシリコーンゴム層と基材とが良好に接着しているフロロシリコーンゴム積層体を製造できるという特徴がある。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の方法で得られるフロロシリコーンゴム積層体の一例の斜視図である。
【
図2】本発明の方法で得られるフロロシリコーンゴム積層体の他の一例の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明のフロロシリコーンゴム積層体の製造方法は、下記工程(1)~(2)から少なくともなることを特徴とする。
【0017】
[工程(1)]
初めに、基材にプライマー組成物を塗布する。この基材としては、鉄、銅、ニッケル、アルミニウム、亜鉛、ステンレススチール、チタン等の金属;アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン(ABS)樹脂、ポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂、ポリブチレンテレフタレート(PBT)樹脂、ナイロン樹脂、ポリフェニレンサルファイド(PPS)樹脂、ポリメチルメタクリレート(PMMA)樹脂、ポリカーボネート(PC)樹脂、ポリイミド(PI)樹脂、ポリアミド(PA)樹脂等のプラスチックが挙げられる。また、プライマー組成物の塗布方法としては、刷毛塗り、スプレー塗布、浸漬塗布等通常の方法を採用することができる。
【0018】
次いで、プライマー組成物を乾燥または硬化することにより、前記基材の表面にプライマー層を形成する。プライマー組成物の乾燥または硬化を促進するため、70℃以下に加熱してもよい。
【0019】
[工程(2)]
次に、前記プライマー層にフロロシリコーンゴム組成物を接触させる。この場合、上記プライマー組成物を基材に塗布した後、30分間以上風乾してから、上記フロロシリコーンゴム組成物を接触させることが好ましい。上記プライマー層に上記フロロシリコーンゴム組成物を積層する方法は限定されず、例えば、圧縮成型機中のプライマー層を有する基材上にフロロシリコーンゴム組成物を置き、圧縮成形する方法、型中に前記基材を置き、その型内にフロロシリコーンゴム組成物を射出する方法が挙げられる。
【0020】
次いで、上記フロロシリコーンゴム組成物を硬化することにより、前記プライマー層にフロロシリコーンゴムを接着する。上記フロロシリコーンゴム組成物を硬化する条件は限定されないが、圧力100~250kgf/cm2、温度170~190℃の条件下で5~20分間加熱圧着することが好ましい。また、フロロシリコーンゴム積層体を成型後、さらに、これを加熱処理することにより、二次加硫を行ってもよい。
【0021】
本方法では、前記プライマー組成物は、白金系触媒またはケイ素原子結合水素原子含有フロロシロキサンを含有し、
前記フロロシリコーンゴム組成物は、白金系触媒および/またはケイ素原子結合水素原子含有フロロシロキサンを含有し、
ただし、前記プライマー組成物は白金系触媒およびケイ素原子結合水素原子含有フロロシロキサンを同時に含有せず、前記プライマー組成物または前記フロロシリコーンゴム組成物のいずれか一方は、白金系触媒またはケイ素原子結合水素原子含有フロロシロキサンを含有する。
【0022】
このようなフロロシリコーンゴム組成物とプライマー組成物としては、次のような組み合わせが例示される。
【0023】
(組み合わせ1)
フロロシリコーンゴム組成物が、
(a)(a1)一分子中に、少なくとも2個のアルケニル基を有し、ケイ素原子結合全有機基の少なくとも20モル%がフロロアルキル基であるオルガノポリシロキサン、または前記成分(a1)と(a2)一分子中に、少なくとも2個のアルケニル基を有し、フロロアルキル基を有さないか、またはフロロアルキル基を有するとしても、ケイ素原子結合全有機基の多くとも20モル%未満であるオルガノポリシロキサンとの混合物;
(b)有機パーオキサイド;および
(c)白金系触媒
から少なくともなり、
プライマー組成物が、
(d)ケイ素原子結合水素原子含有フロロシロキサン;
(e)アルコキシシランおよび/またはその部分加水分解縮合物;および
(f)縮合反応用触媒
から少なくともなる。
【0024】
(組み合わせ2)
フロロシリコーンゴム組成物が、
(a)(a1)一分子中に、少なくとも2個のアルケニル基を有し、ケイ素原子結合全有機基の少なくとも20モル%がフロロアルキル基であるオルガノポリシロキサン、または前記成分(a1)と(a2)一分子中に、少なくとも2個のアルケニル基を有し、フロロアルキル基を有さないか、またはフロロアルキル基を有するとしても、ケイ素原子結合全有機基の多くとも20モル%未満であるオルガノポリシロキサンとの混合物;
(b)有機パーオキサイド;および
(d)ケイ素原子結合水素原子含有フロロシロキサン;
から少なくともなり、
プライマー組成物が、
(c)白金系触媒;
(e)アルコキシシランおよび/またはその部分加水分解縮合物;および
(f)縮合反応用触媒
から少なくともなる。
【0025】
(組み合わせ3)
フロロシリコーンゴム組成物が、
(a)(a1)一分子中に、少なくとも2個のアルケニル基を有し、ケイ素原子結合全有機基の少なくとも20モル%がフロロアルキル基であるオルガノポリシロキサン、または前記成分(a1)と(a2)一分子中に、少なくとも2個のアルケニル基を有し、フロロアルキル基を有さないか、またはフロロアルキル基を有するとしても、ケイ素原子結合全有機基の多くとも20モル%未満であるオルガノポリシロキサンとの混合物;
(c)白金系触媒;および
(d)ケイ素原子結合水素原子含有フロロシロキサン
から少なくともなり、
プライマー組成物が、
(d)ケイ素原子結合水素原子含有フロロシロキサン;
(e)アルコキシシランおよび/またはその部分加水分解縮合物;および
(f)縮合反応用触媒
から少なくともなる。
【0026】
(組み合わせ4)
フロロシリコーンゴム組成物が、
(a)(a1)一分子中に、少なくとも2個のアルケニル基を有し、ケイ素原子結合全有機基の少なくとも20モル%がフロロアルキル基であるオルガノポリシロキサン、または前記成分(a1)と(a2)一分子中に、少なくとも2個のアルケニル基を有し、フロロアルキル基を有さないか、またはフロロアルキル基を有するとしても、ケイ素原子結合全有機基の多くとも20モル%未満であるオルガノポリシロキサンとの混合物;
(c)白金系触媒;および
(d)ケイ素原子結合水素原子含有フロロシロキサン
から少なくともなり、
プライマー組成物が、
(c)白金系触媒;
(e)アルコキシシランおよび/またはその部分加水分解縮合物;および
(f)縮合反応用触媒
から少なくともなる。
【0027】
以下、各成分について詳述する。
成分(a)は上記フロロシリコーンゴム組成物の主剤であり、(a1)一分子中に、少なくとも2個のアルケニル基を有し、ケイ素原子結合全有機基の少なくとも20モル%がフロロアルキル基であるオルガノポリシロキサン、または前記成分(a1)と(a2)一分子中に、少なくとも2個のアルケニル基を有し、フロロアルキル基を有さないか、またはフロロアルキル基を有するとしても、ケイ素原子結合全有機基の多くとも20モル%未満であるオルガノポリシロキサンとの混合物である。
【0028】
成分(a1)は、一分子中に、少なくとも2個のアルケニル基を有し、ケイ素原子結合全有機基の少なくとも20モル%がフロロアルキル基であるオルガノポリシロキサンである。成分(a1)中のアルケニル基としては、ビニル基、アリル基、ブテニル基、ヘキセニル基等の炭素原子数が2~12のアルケニル基が例示され、好ましくは、ビニル基である。また、成分(a1)中のフロロアルキル基としては、3,3,3-トリフロロプロピル基、4,4,4,3,3-ペンタフロロブチル基、5,5,5,4,4,3,3-ヘプタフロロペンチル基、6,6,6,5,5,4,4,3,3-ノナフロロヘキシル基、7,7,7,6,6,5,5,4,4,3,3-ウンデカフロロヘプチル基等の炭素原子数が3~12のフロロアルキル基が例示され、好ましくは、3,3,3-トリフロロプロピル基、4,4,4,3,3-ペンタフロロブチル基、5,5,5,4,4,3,3-ヘプタフロロペンチル基である。成分(a1)中のフロロアルキル基の含有量は、ケイ素原子結合全有機基の少なくとも20モル%であり、好ましくは、少なくとも30モル%であり、一方、多くとも70モル%、あるいは多くとも60モル%である。このフロロアルキル基の含有量は、前記の上限と下限とを組み合わせた任意の範囲とすることができる。これは、成分(a1)中のフロロアルキル基の含有量が上記下限以上であると、得られるフロロシリコーンゴムの耐油性、耐燃料油性が向上するからであり、一方、上記上限以下であると、得られるフロロシリコーンゴムの耐熱性、耐寒性が向上するからである。成分(a1)中のアルケニル基およびフロロアルキル基以外のケイ素原子に結合する基としては、炭素原子数1~20、好ましくは炭素原子数1~8の一価炭化水素基が例示され、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等のアルキル基;シクロヘキシル基等のシクロアルキル基;フェニル基、トリル基等のアリール基;ベンジル基、フェネチル基等のアラルキル基が例示され、好ましくは、アルキル基、特にメチル基である。
【0029】
このような成分(a1)の分子構造は限定されず、例えば、直鎖状、一部分岐を有する直鎖状、分岐鎖状が挙げられる。また、成分(a1)の粘度は限定されず、好ましくは、25℃において、少なくとも1Pa・sの粘度を有する液状のものから生ゴム状である。液状のものとしては、特に、25℃における粘度が、少なくとも10Pa・sであり、一方、多くとも1,000Pa・sであるものが好ましい。なお、成分(a1)の25℃における粘度は、JIS K7117-1に準拠した回転粘度計によって測定することができる。一方、生ゴム状のものとしては、特に、JIS K 6249に規定される25℃におけるウイリアムス可塑度が100~800の生ゴム状、あるいはウイリアムス可塑度が100~400の生ゴム状、あるいはウイリアムス可塑度が200~400の生ゴム状のものが好ましい。
【0030】
成分(a2)は、一分子中に、少なくとも2個のアルケニル基を有し、フロロアルキル基を有さないか、またはフロロアルキル基を有するとしても、ケイ素原子結合全有機基の多くとも20モル%未満であるオルガノポリシロキサンである。成分(a2)中のアルケニル基としては、ビニル基、アリル基、ブテニル基、ヘキセニル基等の炭素原子数が2~12のアルケニル基が例示され、好ましくは、ビニル基である。成分(a2)は、フロロアルキル基を有さないか、または有しても、その含有量が、ケイ素原子結合全有機基の多くとも20モル%未満である。成分(a2)中の有してもよいフロロアルキル基としては、3,3,3-トリフロロプロピル基、4,4,4,3,3-ペンタフロロブチル基、5,5,5,4,4,3,3-ヘプタフロロペンチル基、6,6,6,5,5,4,4,3,3-ノナフロロヘキシル基、7,7,7,6,6,5,5,4,4,3,3-ウンデカフロロヘプチル基等の炭素原子数が3~12のフロロアルキル基が例示され、好ましくは、3,3,3-トリフロロプロピル基、4,4,4,3,3-ペンタフロロブチル基、5,5,5,4,4,3,3-ヘプタフロロペンチル基である。成分(a2)中のアルケニル基およびフロロアルキル基以外のケイ素原子に結合する基としては、炭素原子数1~20、好ましくは炭素原子数1~8の一価炭化水素基が例示され、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等のアルキル基;シクロヘキシル基等のシクロアルキル基;フェニル基、トリル基等のアリール基;ベンジル基、フェネチル基等のアラルキル基が例示され、好ましくは、アルキル基、特にメチル基である。
【0031】
このような成分(a2)の分子構造は限定されず、例えば、直鎖状、一部分岐を有する直鎖状、分岐鎖状が挙げられる。また、成分(a2)の粘度は限定されず、好ましくは、25℃において、少なくとも1Pa・sの粘度を有する液状のものから生ゴム状である。液状のものとしては、特に、25℃における粘度が、少なくとも10Pa・sであり、一方、多くとも1,000Pa・sであるものが好ましい。なお、(a2)成分の25℃における粘度は、JIS K7117-1に準拠した回転粘度計によって測定することができる。一方、生ゴム状のものとしては、特に、JIS K 6249に規定される25℃におけるウイリアムス可塑度が100~800の生ゴム状、あるいはウイリアムス可塑度が100~400の生ゴム状である。
【0032】
成分(a)は、上記成分(a1)のみ、または上記成分(a1)と成分(a2)の混合物である。成分(a)が上記成分(a1)と成分(a2)の混合物である場合、その混合割合は限定されないが、成分(a1):成分(a2)の質量比が50:50~99:1、60:40~99:1、70:30~99:1、80:20~99:1、あるいは85:15~99:1の範囲内であることが好ましい。これは、成分(a1)の割合が上記範囲の下限以上であると、得られるフロロシリコーンゴムの耐油性、耐燃料油性が向上するからであり、一方、上記範囲の上限以下であると、他の成分との親和性が良好となるからである。
【0033】
成分(b)は上記フロロシリコーンゴム組成物をラジカル反応で硬化させるための有機過酸化物である。成分(b)としては、フロロシリコーンゴム組成物を硬化させるために公知の有機過酸化物を用いることができる。このような成分(b)としては、ベンゾイルパーオキサイド、ターシャリーブチルパーベンゾエート、オルトメチルベンゾイルパーオキサイド、パラメチルベンゾイルパーオキサイド、ジターシャリーブチルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、1,1-ビス(ターシャリーブチルパーオキシ)3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、2,5-ジメチル-2,5-ジ(ターシャリーブチルパーオキシ)へキサン、2,5-ジメチル-2,5-ジ(ターシャリーブチルパーオキシ)へキシン、およびこれらの2種以上の組み合わせが例示される。
【0034】
成分(b)の含有量は限定されないが、好ましくは、上記成分(a)100質量部に対して、少なくとも0.1質量部、少なくとも0.5質量部、あるいは少なくとも1質量部であり、一方、多くとも10質量部、多くとも5質量部、あるいは多くとも3質量部であり、前記の上限と下限とを組み合わせた任意の範囲とすることができる。これは、成分(b)の含有量が上記範囲の下限以上であると、得られるフロロシリコーンゴム組成物が十分に硬化するからであり、一方、上記範囲の上限以下であると、得られるフロロシリコーンゴムの機械的特性が良好であるからである。
【0035】
成分(c)は、フロロシリコーンゴム組成物とプライマー層との接着性を向上させるための白金系触媒であり、上記の組み合わせ3および4におけるフロロシリコーンゴム組成物中の成分(c)は、該組成物をヒドロシリル化反応で硬化するための触媒としても作用する。成分(c)としては、塩化白金酸、塩化白金酸のアルコール溶液、白金のカルボニル錯体、白金のアルケニルシロキサン錯体、白金のオレフィン錯体が例示される。特に、成分(c)を上記フロロシリコーンゴム組成物に配合する場合には、成分(a)との相溶性が良好であることから、白金のアルケニルシロキサン錯体であることが好ましい。この白金のアルケニルシロキサン錯体において、アルケニルシロキサンとしては、例えば、1,3-ジビニルテトラメチルジシロキサン、1,1,3,3-テトラビニルジメチルジシロキサンが挙げられる。
【0036】
成分(c)を上記フロロシリコーンゴム組成物に配合する場合、その含有量は限定されないが、上記フロロシリコーンゴム組成物に対する成分(c)中の白金原子が質量単位で少なくとも0.1ppmとなる量、少なくとも1ppmとなる量、あるいは少なくとも5ppmとなる量であり、一方、多くとも1,000ppmとなる量、多くとも500ppmとなる量、多くとも250ppmとなる量、多くとも200ppmとなる量、あるいは多くとも100ppmとなる量であり、前記の上限と下限とを組み合わせた任意の範囲とすることができる。これは、成分(c)の含有量が、上記範囲の下限以上であると、上記フロロシリコーンゴム組成物とプライマー層との接着性を向上させ、また、上記フロロシリコーンゴム組成物がヒドロシリル化反応で硬化する場合には、その硬化が十分に促進されるからであり、一方、上記範囲の上限以下であると、得られるフロロシリコーンゴムに着色等の問題を生じにくいからである。
【0037】
一方、成分(c)を上記プライマー組成物に配合する場合、その含有量は限定されないが、成分(e)に対する成分(c)中の白金原子が質量単位で少なくとも0.1ppmとなる量、少なくとも1ppmとなる量、少なくとも10ppmとなる量、あるいは少なくとも100ppmとなる量であり、一方、多くとも2,000ppmとなる量、多くとも1,000ppmとなる量、多くとも1,500ppmとなる量、あるいは多くとも1,000ppmとなる量であり、前記の上限と下限とを組み合わせた任意の範囲とすることができる。これは、成分(c)の含有量が、上記範囲の下限以上であると、上記フロロシリコーンゴム組成物とプライマー層との接着性を向上させるからであり、一方、上記範囲の上限以下であると、得られるプライマー層に着色等の問題を生じにくいからである。
【0038】
成分(d)は、フロロシリコーンゴム組成物とプライマー層との接着性を向上させるためのケイ素原子結合水素原子含有フロロシロキサンであり、上記の組み合わせ3および4における上記フロロシリコーンゴム組成物中の成分(d)は、該組成物をヒドロシリル化反応で硬化するための架橋剤としても作用する。なお、上記の組み合わせ3において、上記のフロロシリコーンゴム組成物中の成分(d)と、上記プライマー組成物中の成分(d)は同じであっても、また、異なっていてもよい。このような(d)成分は、一分子中に、少なくとも2個のケイ素原子結合水素原子および少なくとも1個のフロロアルキル基を有するオルガノシロキサンが好ましい。成分(d)中のフロロアルキル基としては、3,3,3-トリフロロプロピル基、4,4,4,3,3-ペンタフロロブチル基、5,5,5,4,4,3,3-ヘプタフロロペンチル基、6,6,6,5,5,4,4,3,3-ノナフロロヘキシル基、7,7,7,6,6,5,5,4,4,3,3-ウンデカフロロヘプチル基等の炭素原子数が3~12のフロロアルキル基が例示され、好ましくは、3,3,3-トリフロロプロピル基、4,4,4,3,3-ペンタフロロブチル基、5,5,5,4,4,3,3-ヘプタフロロペンチル基である。成分(d)中のフロロアルキル基の含有量は限定されないが、ケイ素原子結合全有機基の少なくとも5モル%、少なくとも10モル%、少なくとも15モル%であり、一方、多くとも70モル%、多くとも60モル%、多くとも50モル%、あるいは多くとも40モル%である。このフロロアルキル基の含有量は、前記の上限と下限とを組み合わせた任意の範囲とすることができる。これは、成分(d)中のフロロアルキル基の含有量が上記下限以上であると、成分(d)を上記フロロシリコーンゴム組成物に配合する場合に、得られるフロロシリコーンゴムの耐油性、耐燃料油性が向上し、また、得られるフロロシリコーンゴムの接着性が向上するからであり、一方、上記上限以下であると、得られるフロロシリコーンゴムの耐熱性、耐寒性が向上するからである。成分(d)中の水素原子およびフロロアルキル基以外のケイ素原子に結合する基としては、脂肪族不飽和結合を有さない炭素原子数1~20、好ましくは炭素原子数1~8の一価炭化水素基が例示され、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等のアルキル基;シクロヘキシル基等のシクロアルキル基;フェニル基、トリル基等のアリール基;ベンジル基、フェネチル基等のアラルキル基が例示され、好ましくは、アルキル基、特にメチル基である。
【0039】
成分(d)の分子構造は限定されず、例えば、直鎖状、一部分岐を有する直鎖状、分岐鎖状、網目状、環状が例示され、これらの分子構造を有する2種以上の混合物であってもよい。このような成分(d)としては、一般式:
R1
3SiO(R1RfSiO)m(R1HSiO)nSiR1
3
で表されるオルガノポリシロキサン、および平均単位式:
[HR1
2SiO1/2]a(RfSiO3/2)b
で表されるオルガノポリシロキサンが例示される。
【0040】
式中、R1は同じかまたは異なる、脂肪族不飽和結合を有さない炭素原子数1~20の一価炭化水素基であり、前記と同様の基が例示され、好ましくはアルキル基、特にメチル基である。
【0041】
また、式中、Rfは同じかまたは異なるフロロアルキル基であり、前記と同様の基が例示される。
【0042】
また、式中、mは1以上の整数であり、nは2以上の整数であり、かつ、mとnの合計が5~100の範囲内の整数であり、好ましくは、mとnの合計は10~50の範囲内の整数である。また、一分子中、R1とRfの合計に対するRfの割合は少なくとも5モル%、少なくとも10モル%、少なくとも15モル%であり、一方、多くとも70モル%、多くとも60モル%、多くとも50モル%、あるいは多くとも40モル%であることが好ましい。このRfの割合は、前記の下限と上限とを組み合わせた任意の範囲内とすることができる。
【0043】
また、式中、a、bは、それぞれ、0<a<1、0<b<1、かつa+b=1を満たす数である。また、一分子中、R1とRfの合計に対するRfの割合は少なくとも5モル%、少なくとも10モル%、少なくとも15モル%であり、一方、多くとも70モル%、多くとも60モル%、多くとも50モル%、あるいは多くとも40モル%であることが好ましい。このRfの割合は、前記の下限と上限とを組み合わせた任意の範囲内とすることができる。
【0044】
成分(d)を、上記の組み合わせ2におけるフロロシリコーンゴム組成物に配合する際、その含有量は限定されないが、好ましくは、上記成分(a)100質量部に対して、少なくとも0.1質量部、少なくとも0.5質量部、あるいは少なくとも1質量部であり、一方、多くとも20質量部、多くとも10質量部、あるいは多くとも5質量部であり、前記の上限と下限とを組み合わせた任意の範囲とすることができる。これは、成分(d)の含有量が上記範囲の下限以上であると、得られるフロロシリコーンゴムのプライマーに対する接着性が向上するからであり、一方、上記範囲の上限以下であると、高温環境下に曝された後の積層体における、得られるフロロシリコーンゴムの耐熱性が向上するからである。
【0045】
また、成分(d)を、上記の組み合わせ3および4におけるフロロシリコーンゴム組成物に配合する際、その含有量は限定されないが、成分(a)中のアルケニル基の合計1モルに対して、好ましくは、成分(d)中のケイ素原子結合水素原子が少なくとも1モルとなる量、少なくとも2モルとなる量、あるいは少なくとも3モルとなる量であり、一方、多くとも30モルとなる量、多くとも20モルとなる量、多くとも10モルとなる量、あるいは多くとも5モルとなる量であり、前記の下限と上限とを組み合わせた任意の範囲とすることができる。これは、成分(d)の含有量が上記範囲の下限以上であると、得られるフロロシリコーンゴム組成物が十分に硬化するからであり、一方、上記範囲の上限以下であると、高温環境下に曝された後の積層体における、得られるフロロシリコーンゴムの耐熱性が向上するからである。
【0046】
さらに、成分(d)を、プライマー組成物に配合する際、その含有量は限定されないが、好ましくは、上記成分(e)100質量部に対して、少なくとも1質量部、少なくとも5質量部、あるいは少なくとも10質量部であり、一方、多くとも500質量部、多くとも400質量部、多くとも300質量部、あるいは多くとも250質量部であり、前記の上限と下限とを組み合わせた任意の範囲とすることができる。これは、成分(d)の含有量が上記範囲の下限以上であると、得られるフロロシリコーンゴムのプライマーに対する接着性が向上するからであり、一方、上記範囲の上限以下であると、プライマー層の機械的強度が向上するからである。
【0047】
成分(e)は上記プライマー組成物の主剤であり、下記成分(f)により縮合反応して、基材の表面にプライマー層を形成するためのアルコキシシランおよび/またはその部分加水分解縮合物である。このような成分(e)としては、トリメトキシシラン、トリエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、メチルビニルジメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(β-メトキシエトキシ)シラン、アリルトリメトキシシラン、アリルトリエトキシシラン、アリルメチルジエトキシシラン、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、これらのアルコキシシランの部分加水分解縮合物であるメチルポリシリケート、エチルポリシリケートが例示される。
【0048】
成分(f)は上記プライマー組成物を架橋するための縮合反応用触媒であり、具体的には、有機チタン化合物、有機スズ化合物が例示され、好ましくは有機チタン化合物である。この有機チタン化合物としては、テトライソプロピルチタネート、テトラ(n-プロピル)チタネート、テトラ(n-ブチル)チタネート、テトラ(2-エチルヘキシル)チタネート、ジブチルジイソプロピルチタネート、トリエタノールアミンチタネート、エチレングリコールチタネート、ビス(アセチルアセトン)ジイソプロポキシチタン、ビス(エチルアセチルアセトナート)ジイソプロポキシチタン、テトラ(トリメチルシロキシ)チタネートれる。
【0049】
成分(f)の含有量は特に限定されないが、好ましくは、成分(e)100質量部に対して、少なくとも1質量部、少なくとも10質量部、あるいは少なくとも50質量部であり、一方、多くとも200質量部、多くとも150質量部、あるいは多くとも100質量部であり、前記の上限と下限とを組み合わせた任意の範囲とすることができる。これは、成分(f)の含有量が上記範囲の下限以上であると、得られるプライマーの基材に対する接着性が向上するからであり、一方、上記範囲の上限以下であると、プライマー層の機械的強度が向上するからである。
【0050】
成分(g)は上記プライマー組成物の塗工性を向上させるための任意の有機溶剤である。このような成分(g)としては、トルエン、キシレン等の芳香族系溶剤;n-ヘプタン、n-ヘキサン、シクロヘキサン等の脂肪族炭化水素系溶媒;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン系溶媒;酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系溶媒テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル等のエーテル系溶媒が例示される。
【0051】
成分(g)の含有量は特に限定されず、塗工性を調整するため適宜変更すればよいが、好ましくは、成分(e)100質量部に対して、多くとも5,000質量部であることが好ましい。
【0052】
上記フロロシリコーンゴム組成物には、得られるフロロシリコーンゴムの機械的特性を向上させるためにシリカ微粉末を含有してもよい。このシリカ微粉末としては、ヒュームドシリカ等の乾式法シリカ、沈澱シリカ等の湿式法シリカが挙げられ、さらにそれらの表面が、オルガノシラン、ヘキサオルガノジシラザン、ジオルガノポリシロキサン、ジオルガノシクロポリシロキサン等の有機ケイ素化合物で疎水化処理された微粉末状シリカも使用できる。このシリカ微粉末のBET比表面積は限定されないが、好ましくは、50m2/g~400m2/gの範囲内、あるいは100~400m2/gの範囲内である。
【0053】
シリカ微粉末の含有量は限定されないが、得られるフロロシリコーンゴムの機械的特性が良好であることから、成分(a)100質量部に対して10質量部以上であることが好ましく、一方、得られるフロロシリコーンゴム組成物の成形性が良好であることから、成分(a)100質量部に対して100質量部以下であることが好ましい。
【0054】
また、上記の組み合わせ3および4におけるフロロシリコーンゴム組成物において、その硬化速度を調節するため反応抑制剤を含有してもよい。この反応抑制剤としては、2-メチル-3-ブチン-2-オール、3,5-ジメチル-1-ヘキシン-3-オール、3-メチル-1-ペンチン-3-オール、2-フェニル-3-ブチン-2-オール、1-エチニル-1-シクロヘキサノール、2-エチニルイソプロパノール、2-エチニルブタン-2-オール等のアルキンアルコール;トリメチル(3,5-ジメチル-1-ヘキシン-3-オキシ)シラン、ジメチルビス(3-メチル-1-ブチノキシ)シラン、メチルビニルビス(3-メチル-1-ブチン-3-オキシ)シラン、および[(1,1-ジメチル-2-プロピニル)オキシ]トリメチルシラン等のシリル化アセチレンアルコール;2-イソブチル-1-ブテン-3-イン、3,5-ジメチル-3-ヘキセン-1-イン、3-メチル-3-ペンテン-1-イン、3-メチル-3-ヘキセン-1-イン、1-エチニルシクロヘキセン、3-エチル-3-ブテン-1-イン、および3-フェニル-3-ブテン-1-イン等とエンイン化合物;ジアリルマレエート、ジメチルマレエート、ジエチルフマレート、ジアリルフマレート、ビス-2-メトキシ-1-メチルエチルマレエート、モノオクチルマレエート、モノイソオクチルマレエート、モノアリルマレエート、モノメチルマレエート、モノエチルフマレート、モノアリルフマレート、および2-メトキシ-1-メチルエチルマレエート等の不飽和カルボン酸エステル;1,3,5,7-テトラメチル-1,3,5,7-テトラビニルシクロテトラシロキサン、1,3,5,7-テトラメチル-1,3,5,7-テトラヘキセニルシクロテトラシロキサン等のアルケニルシロキサン;その他、ベンゾトリアゾールが例示される。
【0055】
反応抑制剤の含有量は限定されないが、好ましくは、成分(a)100質量部に対して、少なくとも0.01質量部、あるいは少なくとも0.1質量部であり、一方、多くとも5質量部、あるいは多くとも3質量部であり、前記の下限と上限とを組み合わせた任意の範囲とすることができる。
【0056】
また、上記フロロシリコーンゴム組成物には、本発明の目的を損なわない程度で、その他にフロロシリコーンゴム組成物に通常使用される各種の配合剤を配合してもよい。この配合剤としては、例えば、けいそう土、石英粉末、炭酸カルシウム等の増量充填剤;酸化チタン、カーボンブラック、弁柄等の顔料;希土類酸化物、セリウムシラノレート、セリウム脂肪酸塩等の耐熱剤;ステアリン酸、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウムなどの脂肪酸及びそれらの金属塩等の金型離型剤が例示される。
【0057】
[フロロシリコーンゴム積層体]
本発明のフロロシリコーンゴム積層体は、フロロシリコーンゴムと基材からなり、上記の製造方法により得られることを特徴とする。本積層体において、プライマー層上に積層されたフロロシリコーンゴムの厚さは限定されず、また、その形状も限定されない。本積層体としては、
図1で示されるような、基材1の片面にプライマー層2を有し、そのプライマー層2を介してフロロシリコーンゴム層3を有する積層体、あるいは
図2で示されるような、基材1の両面にプライマー層2を有し、そのプライマー層2を介してフロロシリコーンゴム層3を有する積層体が例示される。
【実施例】
【0058】
本発明のフロロシリコーンゴム積層体の製造方法およびフロロシリコーンゴム積層体を実施例および比較例を用いて詳細に説明する。なお、本発明は、これらの実施例に限定されるものではない。また、実施例中、粘度や可塑度等の特性は、特に限定しない限り、室温(25℃)における値である。なお、粘度(Pa・s)は、JIS K7117-1に準拠した回転粘度計を使用して測定した値であり、動粘度(mm2/s)は、JIS Z8803に準拠したウベローデ型粘度計によって測定した値であり、ウイリアムス可塑度はJIS K 6249に規定される方法によって測定した値である。
【0059】
[参考例1]
ニーダーミキサーに、ウイリアムス可塑度が300であり、分子鎖両末端がヒドロキシ基で封鎖されたメチルビニルシロキサン・メチル(3,3,3-トリフロロプロピル)シロキサン共重合体(ビニル基の含有量=0.01質量%;ケイ素原子結合全有機基に対する3,3,3-トリフロロプロピルの含有量=約50モル%) 100質量部、ウイリアムス可塑度が165であり、分子鎖両末端が実質的にジメチルビニルシロキシ基で封鎖され、その一部がヒドロキシ基で封鎖されたジメチルシロキサン・メチルビニルシロキサン共重合体(ビニル基の含有量=0.07質量%) 5.6質量部、ウイリアムス可塑度が160であり、分子鎖両末端がヒドロキシ基で封鎖されたジメチルシロキサン・メチルビニルシロキサン共重合体(ビニル基の含有量=1.4質量%) 5.6質量部、BET比表面積が130m2/gであるヒュームドシリカ 41質量部、動粘度が30mm2/sであり、分子鎖両末端がヒドロキシ基で封鎖されたメチル(3,3,3-トリフロロプロピル)シロキサンオリゴマー 5.6質量部を投入して、50℃で2時間混合した後、さらに、減圧下、120℃で2時間混練して、フロロシリコーンゴムベースコンパウンドを調製した。
【0060】
次に、このフロロシリコーンゴムベースコンパウンド 100質量部に、2,5-ジメチル-2,5-ジ(ターシャルブチルパーオキシ)ヘキサン 0.9質量部、白金の1,3-ジビニル-1,1,3,3-テトラメチルジシロキサン錯体を、ウイリアムス可塑度が165であり、分子鎖両末端が実質的にジメチルビニルシロキシ基で封鎖され、その一部がヒドロキシ基で封鎖されたジメチルシロキサン・メチルビニルシロキサン共重合体(ビニル基の含有量=0.07質量%)で希釈したヒドロシリル化反応用触媒(白金含有量=0.06質量%) 2.9質量部、および酸化鉄(III)の顔料ペースト(ダウ・東レ株式会社製XIAMETERTM CP-21 Brown Rubber Additive Pigment) 0.2質量部を均一に混合して、フロロシリコーンゴム組成物(1)を調製した。
【0061】
[参考例2]
参考例1で調製したフロロシリコーンゴムベースコンパウンド 100質量部に、平均単位式:
[H(CH3)2SiO1/2]0.65(CF3C2H4SiO3/2)0.35
で表されるオルガノポリシロキサン 2.8質量部、2,5-ジメチル-2,5-ジ(ターシャルブチルパーオキシ)ヘキサン 0.9質量部、および酸化鉄(III)の顔料ペースト(ダウ・東レ株式会社製XIAMETERTM CP-21 Brown Rubber Additive Pigment) 0.2質量部を均一に混合して、フロロシリコーンゴム組成物(2)を調製した。
【0062】
[参考例3]
参考例1で調製したフロロシリコーンゴムベースコンパウンド 100質量部に、平均単位式:
[H(CH3)2SiO1/2]0.65(CF3C2H4SiO3/2)0.35
で表されるオルガノポリシロキサン 2.8質量部(フロロシリコーンゴムベースコンパウンド中の全ビニル基1モルに対して、ケイ素原子結合水素原子が3.5モルとなる量)、白金の1,3-ジビニル-1,1,3,3-テトラメチルジシロキサン錯体を、ウイリアムス可塑度が165であり、分子鎖両末端が実質的にジメチルビニルシロキシ基で封鎖され、その一部がヒドロキシ基で封鎖されたジメチルシロキサン・メチルビニルシロキサン共重合体(ビニル基の含有量=0.07質量%)で希釈したヒドロシリル化反応用触媒(白金含有量=0.02質量%) 2.9質量部、1-エチニル-シクロヘキサノール 0.6質量部、および酸化鉄(III)の顔料ペースト(ダウ・東レ株式会社製XIAMETERTM CP-21 Brown Rubber Additive Pigment) 0.2質量部を均一に混合して、フロロシリコーンゴム組成物(3)を調製した。
【0063】
[参考例4]
参考例1で調製したフロロシリコーンゴムベースコンパウンド 100質量部に、2,5-ジメチル-2,5-ジ(ターシャルブチルパーオキシ)ヘキサン 0.9質量部、および酸化鉄(III)の顔料ペースト(ダウ・東レ株式会社製XIAMETERTM CP-21 Brown Rubber Additive Pigment) 0.2質量部を均一に混合して、フロロシリコーンゴム組成物(4)を調製した。
【0064】
[参考例5]
n-ヘプタン 92質量部、テトラエトキシシラン 0.2質量部、エチルポリシリケート 4質量部、テトラ(n-ブチル)チタネート 4質量部、および平均単位式:
[H(CH3)2SiO1/2]0.65(CF3C2H4SiO3/2)0.35
で表されるオルガノポリシロキサン 10.2質量部を均一に混合して、プライマー組成物(1)を調製した。
【0065】
[参考例6]
n-ヘプタン 94質量部、アリルトリメトキシシラン 4.2質量部、白金の1,3-ジビニル-1,1,3,3-テトラメチルジシロキサン錯体の1,3-ジビニル-1,1,3,3-テトラメチルジシロキサン溶液(この溶液中の白金含有量=0.6質量%) 0.5質量部、およびテトラ(n-ブチル)チタネート 1.4質量部を均一に混合して、プライマー組成物(2)を調製した。
【0066】
[参考例7]
n-ヘプタン 92質量部、テトラエトキシシラン 0.2質量部、エチルポリシリケート 4質量部、およびテトラ(n-ブチル)チタネート 4質量部を均一に混合して、プライマー組成物(3)を調製した。
【0067】
[参考例8]
n-ヘプタン 94質量部、アリルトリメトキシシラン 4.2質量部、白金の1,3-ジビニル-1,1,3,3-テトラメチルジシロキサン錯体の1,3-ジビニル-1,1,3,3-テトラメチルジシロキサン溶液(この溶液中の白金含有量=0.6質量%) 0.5質量部、テトラ(n-ブチル)チタネート 1.4質量部、および平均単位式:
[H(CH3)2SiO1/2]0.65(CF3C2H4SiO3/2)0.35
で表されるオルガノポリシロキサン 10.1質量部を均一に混合して、プライマー組成物(4)を調製した。
【0068】
[実施例1~4、比較例1~6]
縦6cm,横2.5cmのステンレススチール板の片面の片端に、テフロン(登録商標)粘着テープを貼付けて被着体を作製した。そしてそのテフロン(登録商標)粘着テープが貼られていない部分にプライマー組成物を塗布し、室温にて60分間放置して風乾させた。風乾後、フロロシリコーンゴム組成物を該ステンレススチール板全面に厚さ2mmとなるような量塗布し、次いで圧力200kgf/cm2、温度170℃の条件で10分間加熱圧着して硬化させて、接着試験体を得た。得られた接着試験体についてテフロン(登録商標)粘着テープをはがしたところ、プライマー組成物を予め塗布していた部分にのみフロロシリコーンゴムが接着していた。このフロロシリコーンゴムのステンレススチールに対する90°の剥離接着強さを、JIS K 6854で定められた方法に準じて測定した。また、試験後のフロロシリコーンゴムの接着部分の剥離状態を観察した。凝集破壊した場合には凝集破壊率(凝集破壊部分面積/全接着面積)を測定した。測定結果から硬化接着性を次に示す4段階に分けて評価し、この結果を表1および表2に示した。
◎:100%凝集破壊(100%ゴム層で破断)
○:50~99%凝集破壊
△:0~49%凝集破壊
×:100%界面剥離
【0069】
【0070】
【0071】
[実施例5~8]
縦6cm,横2.5cmのポリブチレンテレフタレート(PBT)樹脂板の片面の片端に、テフロン(登録商標)粘着テープを貼付けて被着体を作成した。そしてそのテフロン(登録商標)粘着テープが貼られていない部分にこのプライマー組成物を塗布し、室温にて60分間放置して風乾させた。風乾後、フロロシリコーンゴム組成物を該PBT樹脂板全面に厚さ2mmとなるような量塗布し、次いで圧力200kgf/cm2、温度170℃の条件で10分間加熱圧着して硬化させて、接着試験体を得た。得られた接着試験体についてテフロン(登録商標)粘着テープをはがしたところ、プライマー組成物を予め塗布していた部分にのみフロロシリコーンゴムが接着していた。このフロロシリコーンゴムのPBT樹脂板に対する90°の剥離接着強さを、JIS K 6854で定められた方法に準じて測定した。また、試験後のフロロシリコーンゴムの接着部分の剥離状態を観察した。凝集破壊した場合には凝集破壊率(凝集破壊部分面積/全接着面積)を測定した。測定結果から硬化接着性を次に示す4段階に分けて評価し、この結果を表3に示した。
◎:100%凝集破壊(100%ゴム層で破断)
○:50~99%凝集破壊
△:0~49%凝集破壊
×:100%界面剥離
【0072】
【産業上の利用可能性】
【0073】
本発明の製造方法で得られるフロロシリコーンゴム積層体は、フロロシリコーンゴム層と基材との接着性が優れており、フロロシリコーンゴムが耐熱性および耐燃料油性が優れているので、定着ロールや紙送りロール等のロール部品;自動車、航空機等の輸送機部品や石油海運機器部品;ダイヤフラム部品として好適である。
【符号の説明】
【0074】
1 基材
2 プライマー層
3 フロロシリコーンゴム層