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特許7497978発育性股関節形成不全を治療するための器具および方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-03
(45)【発行日】2024-06-11
(54)【発明の名称】発育性股関節形成不全を治療するための器具および方法
(51)【国際特許分類】
   A61B 17/17 20060101AFI20240604BHJP
【FI】
A61B17/17
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2019553981
(86)(22)【出願日】2018-03-30
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-10-22
(86)【国際出願番号】 US2018025407
(87)【国際公開番号】W WO2018183849
(87)【国際公開日】2018-10-04
【審査請求日】2021-03-17
【審判番号】
【審判請求日】2023-04-25
(31)【優先権主張番号】62/478,756
(32)【優先日】2017-03-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】502032219
【氏名又は名称】スミス アンド ネフュー インコーポレイテッド
(73)【特許権者】
【識別番号】519347100
【氏名又は名称】内田 宗志
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】内田 宗志
(72)【発明者】
【氏名】カンチャオ・リー
(72)【発明者】
【氏名】メイソン・ベッテンガ
(72)【発明者】
【氏名】ジェフリー・ワイマン
(72)【発明者】
【氏名】ポール・アレクサンダー・トリー
【合議体】
【審判長】内藤 真徳
【審判官】井上 哲男
【審判官】近藤 利充
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第6146385(US,A)
【文献】米国特許出願公開第2007/0270711(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2014/0200668(US,A1)
【文献】特開2016-185359(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 17/15-17/17
A61F 2/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
骨修復に使用されるドリルを案内するためのドリルガイドであって、長手方向に延在している扁平状の本体を有している前記ドリルガイドにおいて、
前記本体には、前記長手方向において前記本体を貫通している開口部であって、前記ドリルが、前記開口部の内部において前記ドリルガイドの長手方向及び横方向にスライド可能とされる、前記開口部が設けられており、
前記開口部の断面が、前記ドリルガイドが骨に固定されている場合に、前記ドリルが骨グラフトを挿入するための挿入スロットを前記骨に矩形状に形成することができるように形成されており、
前記ドリルガイドの遠位端が、骨に食い込むための2つの鋭い先端を備えていることを特徴とするドリルガイド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、概ね股関節手術に関し、より具体的には、発育性股関節形成不全を治療するためのインプラント、手術方法、および器具類に関する。
【背景技術】
【0002】
発育性股関節形成不全(DDH)は、主に乳幼児に見られる股関節の脱臼である。一部の患者では、寛骨臼(大腿骨頭が内側でフィットする寛骨のソケット)が浅すぎて、大腿骨頭が途中からまたは完全にソケットから抜け出すことがある。場合によっては、関節を所定の位置に保持するのに役立つ靭帯も伸びている。股関節の緩み、または不安定性の程度はDDHの子供によって異なるが、DDHは股関節の可動性の低下、関節炎、および痛みにつながる可能性がある。重症の場合、外科的寛骨臼再建が必要になる場合がある。
【0003】
寛骨臼棚関節形成術、または「寛骨臼棚形成術」は、DDHの治療における寛骨臼再建のための内視鏡技術の一例である。この技術は、寛骨臼上に皮質海綿骨グラフトを配置することにより、股関節部により広い重量荷担面をもたらす。現在の寛骨臼棚形成術は、骨グラフトをトリミングすることおよび穿孔することと、二つのパッシングピンで寛骨臼を位置決めすることと、骨刀を用いてピンの上部の挿入部位を形成することと、グラフトを固定するためにパッシングピンに沿ってグラフトをスライドさせることと、からなる。ただし、これらの工程は通常、フリーハンドで実行されるため、グラフトの作製、ピンの配置、挿入部位の作製、グラフトの固定に不整合が生じる可能性がある。
【発明の概要】
【0004】
寛骨臼棚形成術を標準化および合理化するための新規な外科技術および器具が、本明細書に記載される。本開示の方法は、1)標準化されたグラフトサイザーを用いて骨グラフトを作製することと、2)オフセット平行ガイドと、カニューレ状チゼル器具、例えば骨刀や修正ドリルガイドを用いて、挿入部位を位置決めして形成することと、3)プッシャーを用いて骨グラフトを固定することと、を含む。必要に応じて、縫合糸アンカーを用いて、骨グラフトを骨に更に固定することができる。本開示の方法のすべての態様は、制御された方法で一貫した外科的結果を再現するように意図されている。有利なことに、追加のアンカー固定は、グラフト固定強度を改善し、グラフトが関節空間内に後退するのを防ぎ、したがって周囲の組織を損傷するのを防ぐ。
【0005】
本開示のデバイスおよび方法の更なる例は、任意の好適な組み合わせで、以下のうちの一つまたは複数を含むことができる。
【0006】
例では、この開示の寛骨臼再建の方法は、1)グラフトサイザーの第一の側を用いて、予め選択された長さに骨グラフトをトリミングすることと、2)グラフトサイザーの第一の側と反対側の第二の側を用いて、骨グラフトを予め選択された幅と角度にトリミングすることと、3)骨グラフトを貫通する少なくとも二つの穴を形成することと、4)第一のピン部材の第一の端部および第二のピン部材の第一の端部を寛骨臼内に挿入することと、5)寛骨臼内に挿入部位を形成することと、6)第一のピン部材の第二の端部および第二のピン部材の第二の端部を骨グラフト内の少なくとも二つの穴のうちの個々の穴に通すことにより、骨グラフトを挿入部位に向かって進めることと、7)寛骨臼の挿入部位に骨グラフトを固定することと、を含む。例では、サイズ調整された骨グラフトの断面は実質的に長方形である。サイズ調整された骨グラフトの予め選択された長さは約30mmであり、サイズ調整された骨グラフトの予め選択された幅は約25mmである。骨グラフトの第一の側の予め選択された高さは約7mm~約8mmであり、骨グラフトの第二の側の予め選択された高さは約2mm~約3mmである。
【0007】
本方法の更なる例では、第一のピン部材の第一の端部および第二のピン部材の第一の端部を寛骨臼に挿入することは、第一のピン部材および第二のピン部材の正確な配置を確実にするためのガイド内の第一の開口部および第二の開口部にそれぞれ第一のピン部材および第二のピン部材を通過させることを含む。挿入部位を形成することは、例えば約20mmの予め選択された深さまで、骨刀で挿入部位を掘削することを含む。骨刀を用いて挿入部位を掘削することは、骨刀を第一のピン部材の第二の端部および第二のピン部材の第二の端部に通すことにより寛骨臼に向かって骨刀を進めることを含む。骨グラフトを寛骨臼に向かって進めることは、プッシャーを用いて骨グラフトを寛骨臼に向かって進めることを含み、プッシャーは、第一のピン部材の第二の端部および第二のピン部材の第二の端部を通過するように構成される。骨グラフトを挿入部位に固定することは、骨グラフトを縫合糸アンカーで固定することを含む。
【0008】
本開示の寛骨臼再建の別の方法の例は、1)グラフトサイザー用いて、予め選択された長さおよび幅に骨グラフトをトリミングすることと、2)第一のピン部材および第二のピン部材を骨グラフトに挿入することと、3)寛骨臼内に挿入部位を形成することと、4)骨グラフト、第一のピン部材、および第二のピン部材を挿入部位内に挿入することと、5)寛骨臼に向かって骨グラフトを進めることと、6)寛骨臼の挿入部位に骨グラフトを固定することと、を含む。例では、サイズ調整された骨グラフトの断面は実質的に台形である。サイズ調整された骨グラフトの予め選択された長さは、約25mm~約30mmである。骨グラフトの第一の端部の予め選択された幅は約16mm~約17mmであり、骨グラフトの第二の端部の予め選択された幅は約25mm~約28mmである。骨グラフトの第一の側の高さは約7mm~約8mmであり、骨グラフトの第二の側の高さは約2mm~約3mmである。
【0009】
この方法の更なる例は、寛骨臼内に第三のピン部材を挿入することを含む。第三のピン部材を寛骨臼に挿入することは、第三のピン部材をガイドの開口部に通すことを含み、このガイドは、第三のピン部材の正確な配置を確実にする。寛骨臼の挿入部位を形成することは、a)ドリルガイドを第三のピン部材に通すことと、b)寛骨臼およびドリルガイドから第三のピン部材を取り外すことと、c)ドリルをドリルガイドを通して挿入することと、d)第一の予め選択された深さまで挿入部位をドリル加工することと、を含む。例では、第一の予め選択された深さは約10mmである。この方法は、スロット拡張器で挿入部位を第二の予め選択された深さまで掘削することを更に含む。例では、第二の予め選択された深さは約20mmである。骨グラフトを寛骨臼に向かって進めることは、プッシャーを用いて骨グラフトを寛骨臼に向かって進めることを含み、プッシャーは、第一のピン部材および第二のピン部材を通過するように構成される。
【0010】
本開示の骨グラフトサイザーの例としては、上面と、上面と反対側の底面とを有する略長方形の本体が挙げられる。略正方形の第一の開口部は、上面のほぼ中間点から本体の第一の側面を突き抜けて延在する。底面の略三角形の第二の開口部は、本体の前面を突き抜けて延在している。少なくとも二つの貫通孔は、第一の側面と反対側の本体の第二の側面を貫通し、第二の開口部と連通している。第一の開口部は、骨グラフトの長さを調整するように構成され、第二の開口部は、骨グラフトの幅と角度を調整するように構成される。
【0011】
本開示の別の骨グラフトサイザーの例としては、上面を有する略長方形の本体が挙げられる。上面の開口部は、本体の前面および後面を貫通し、本体の第一のブロック部分と第二のブロック部分との間に画定される。第一のブロック部分は、本体の外部と連通して貫通する溝を有する。二つの角度付きスロットは、第一のブロック部材および開口部の一部を貫通している。二つの角度付きスロットは、開口部内の横方向スロットで終端して、このスロットと連通している。二つの角度付きスロットおよび横方向スロットは、切断装置が通過するように構成されている。横方向スロットは、切断装置で骨グラフトの長さを調整するように構成され、二つの角度付きスロットは、切断装置で骨グラフトの幅を調整するように構成される。
【0012】
これらおよびその他の特徴および利点は、以下の詳細な説明および関連する図面のレビューから明らかであろう。前述の一般的説明および以下の詳細な説明はともに、説明するためのものであり、特許請求の範囲の態様は限定されないことが理解されるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0013】
本開示は、以下の図に関連して、詳細な説明を参照して更に十分に理解されるであろう。
図1-1】図1A~1Fは、本開示の例示的なグラフトサイザーを用いて骨グラフトを作製する第一の方法である。
図1-2】図1G~1Kは、本開示の例示的なグラフトサイザーを用いて骨グラフトを作製する第一の方法である。
図1-3】図1L~1Mは、本開示の例示的なグラフトサイザーを用いて骨グラフトを作製する第一の方法である。
図2図2は、本開示の第一の例示的なオフセットガイドである。
図3-1】図3Aおよび図3Bは、図1Mのサイズ調整された骨グラフト、および図2のオフセットガイドを用いてDDHを治療する第一の方法である。
図3-2】図3Cおよび図3Dは、図1Mのサイズ調整された骨グラフト、および図2のオフセットガイドを用いてDDHを治療する第一の方法である。
図3-3】図3Eおよび図3Fは、図1Mのサイズ調整された骨グラフト、および図2のオフセットガイドを用いてDDHを治療する第一の方法である。
図4-1】図4Aおよび図4Bは、本開示の例示的なグラフトサイザーを用いて骨グラフトを作製する第二の方法である。
図4-2】図4Cおよび図4Dは、本開示の例示的なグラフトサイザーを用いて骨グラフトを作製する第二の方法である。
図4-3】図4Eおよび図4Fは、本開示の例示的なグラフトサイザーを用いて骨グラフトを作製する第二の方法である。
図4-4】図4Gおよび図4Hは、本開示の例示的なグラフトサイザーを用いて骨グラフトを作製する第二の方法である。
図5図5Aおよび5Bは、本開示の第二の例示的なオフセットガイドである。
図6図6A図6Cは、本開示の例示的な修正ドリルガイドである。
図7-1】図7Aおよび図7Bは、図4Fのサイズ調整された骨グラフト、図5Aのオフセットガイド、および図6Aの修正ドリルガイドを用いてDDHを治療する第二の方法である。
図7-2】図7Cおよび図7Dは、図4Fのサイズ調整された骨グラフト、図5Aのオフセットガイド、および図6Aの修正ドリルガイドを用いてDDHを治療する第二の方法である。
図7-3】図7Eおよび図7Fは、図4Fのサイズ調整された骨グラフト、図5Aのオフセットガイド、および図6Aの修正ドリルガイドを用いてDDHを治療する第二の方法である。
図7-4】図7Gおよび図7Hは、図4Fのサイズ調整された骨グラフト、図5Aのオフセットガイド、および図6Aの修正ドリルガイドを用いてDDHを治療する第二の方法である。
図7-5】図7Iおよび図7Jは、図4Fのサイズ調整された骨グラフト、図5Aのオフセットガイド、および図6Aの修正ドリルガイドを用いてDDHを治療する第二の方法である。
図8図8A図Cは、縫合糸アンカーを用いて、サイズ調整された骨グラフトを寛骨臼に固定する方法である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下の説明では、異なる例で示されているかどうかにかかわらず、同一の構成要素には同一の参照番号が与えられている。明瞭かつ簡潔な方法で例を説明するために、図面は必ずしも縮尺ではない場合があり、ある特定の特徴が何らかの概略的形態で示され得る。一例に関して記述および/または図示された特徴は、一つまたは複数の他の例、および/または、他の例の特徴と組み合わせて、または、その代わりに、同一の方法または類似の方法で使用されてもよい。
【0015】
本明細書および請求項において使用される場合、本発明を説明および定義する目的のために、「約」および「実質的に」という用語は、任意の定量的比較、値、測定、またはその他の表現に起因しうる不確実性の固有の程度を表すのに使用される。「約」および「実質的に」という用語はまた、本明細書において、問題における主題の基本的機能の変化をもたらすことなく、定量的表現が指定された参照から変化し得る程度を表すのに使用される。「備える」、「含む」、および/またはそれぞれの複数形は非限定であり、列挙された部品を含み、列挙されていないさらなる部品を含み得る。「および/または」は非限定であり、列挙された部品および列挙された部品の組み合わせのうちの一つまたは複数を含む。
【0016】
ここで図1A~Mを参照すると、本開示の例示的なグラフトサイザー100を用いて骨グラフト112を形成する第一の方法が例示されている。示すように、本開示のグラフトサイザー100は、寛骨臼棚形成術で使用するための骨グラフトの制御されたトリミングおよび作製を提供する。しかし、グラフトサイザー100を他のタイプの外科的修復、例えば肩甲上腕不安定性の修復に使用できることが本開示により考えられる。本開示のグラフトサイザー100は、ポリマー、金属、または他の好適な材料から作製されることができ、再利用可能であることが意図される。
【0017】
ここで図1Aおよび1Bを参照すると、本開示の例示的なグラフトサイザー100は、上面114(図1A)および底面116(図1B)を有する略長方形のブロックの形態で示されている。上面114は、上面114のほぼ中間点から第一の側面120を突き抜けて延在する第一の略正方形の開口部118を備える。底面116は、前面110を突き抜けて延在する第二の略三角形の開口部122を備える。少なくとも二つの貫通孔124a、124bは、グラフトサイザー100の第二の側面126を貫通し、第二の開口部122と連通している。
【0018】
図1Cに示すように、骨グラフト112を成形するために、典型的には患者の腸骨稜から採取された骨片がグラフトサイザー100の第一の開口部118の内側に配置され、例えば矢状鋸(図示せず)で所望の長さL(図1D)にトリミングされる。図1Eに例示するように、トリミングされた骨グラフト112は、ここでグラフトサイザー100の第二の開口部122内に収まるようにサイズ調整される。骨グラフト112は、2.4mmのドリルピンであってもよい少なくとも二つのドリルピン128a、128bで骨グラフト112を穿孔することにより第二の開口部122に固定される(図1F)。図1Gに示すように、固定されると、骨グラフト112は、所望の幅W(図1H)および角度A(図1I)にトリミングされることができる。次に、少なくとも二つのドリルピン128a、128bは、例えばピンリムーバー(図示せず)を用いて骨グラフト112から取り外すことができる。
【0019】
図1Jおよび1Kは、サイズ調整の前(図1J)および後(図1K)の骨グラフト112を例示している。図1Kに見られるように、サイズ調整された骨グラフトの断面は実質的に長方形である。寛骨臼棚形成術の場合、以下で更に説明するように、サイズ調整された骨グラフト112のサイズおよび形状は股関節の大腿骨頭を覆うように選択される。例えば、サイズ調整された骨グラフトの長さLは約30mmであり、幅Wは約25mmとすることができる。高い方の端の高さHは約7~8mmとすることができ、短い方の端の高さHは約2~3mmとすることができる。しかし、骨グラフト112のサイズおよび形状は可変であり、それが用いられる用途に依存する。特に、ここでサイズ調整された骨グラフト112は、骨グラフト112を貫通する少なくとも二つの穴130a、130bを備える。図1Lおよび1Mに示す他の例では、三つの貫通穴124a、124b、124cを備えるグラフトサイザー100を使用すると、グラフトサイザー100の貫通穴124a、124b、124cに対応する三つの穴130a、130b、130cを備えるサイズ調整された骨グラフト112が得られる。
【0020】
ここで、本開示の例示的なオフセットガイド150を図2に関して説明する。図2に示す例では、オフセットガイド150は一般的に、長方形のヘッド部分152と細長い管状ハンドル156を備える。ハンドル156は、ユーザーがハンドル156をしっかりと握るのを助けるための表面形体を備えてもよい。ヘッド部152は、ヘッド部152を通って延在するいくつかの開口部154a、154b、154c、154dおよび154eを備える。図2には五つの開口部が示されているが、この開示では三つ以上の開口部が考えられる。中央開口部154cは、中空のエイマーシャフト158の近位端を受け入れるように構成されている。エイマーシャフト158は、以下で更に説明するように、ドリルピンが通過する大きさである。最初に、エイマーシャフト158が第一の長手方向軸Lに沿って延在するように、エイマーシャフト158はヘッド部152の中央開口部154c内に配置される。エイマーシャフト158の遠位端は、斜角開口部160および突出部材162を備える。突出部材160は、第二の長手方向軸Lに沿って延在する遠位方向に延びるフィンガー164を更に備える。図2では、フィンガー162の長手方向軸Lは、エイマーシャフト156の長手方向軸Lからオフセット距離Dだけずれていることが分かる。例では、オフセット距離Dは約7mmであってもよい。しかし、他の好適なオフセット距離Dが本開示により考えられる。以下で更に説明するように、オフセットガイド150を用いて、寛骨臼への骨グラフトの一貫した正確な配置を確実に行う。
【0021】
ここで、サイズ調整された骨グラフト112、例えば図1Mの三穴骨グラフト112、および寛骨臼棚形成中の図2のオフセットガイド150の用途について、図3A~Gを参照して説明する。図3Aには、人間の股関節10の一般的な詳細が示されている。簡略化のために、骨盤12、および大腿骨頭14aを備える大腿骨14を含む、股関節の解剖学的構造の主要領域のみが例示されている。上述のように、健康な解剖学的構造では、大腿骨頭14aは寛骨臼16と、より具体的には寛骨臼16の内側凹面16aとぴったりと係合する。大腿骨頭14aが寛骨臼16と接する場所は、一般的に股関節10と呼ばれる。
【0022】
ここで図3Bを参照すると、修復を開始するために、オフセットガイド150のエイマーシャフト156を、ポータルを通して寛骨臼16に向かって股関節10の中へ進める。エイマーシャフト156のフィンガー164の横方向の縁は、寛骨臼16の内側の縁にわずかに押し付けられてエイマーシャフト156を位置決めする。そして、ドリルピン174が斜角開口部160を出て寛骨臼16内に挿入されるように、2.4mmのドリルピンであってもよい第一のドリルピン174を、エイマーシャフト156を通して挿入する。次に、図3Cに示すように、2.4mmのドリルピンであってもよい第二のドリルピン180および第三のドリルピン182は、第二のドリルピン180および第三のドリルピン182のそれぞれが第一のドリルピン174の両側に配置されるようにオフセットガイド150の残りの開口部154a、154b、154d、154e(図2)のうちの二つに通されて寛骨臼16内へ挿入される。次いで、エイマーシャフト156を備えるオフセットガイド150を股関節10から取り外し、第一のドリルピン174、第二のドリルピン180、および第三のドリルピン182が寛骨臼16の所定の位置に残る。次に、第一のドリルピン174、第二のドリルピン180、および第三のドリルピン182のそれぞれを、寛骨臼16内の予め選択された深さまで、7mmドリルであってもよいカニューレドリル(図示せず)でオーバードリルする。事前に選択された深さは、寛骨臼16の表面から約20mmであってもよい。次に、股関節10から第一のドリルピン174を取り外し、寛骨臼16の所定の位置に第二のドリルピン180および第三のドリルピン182を残す。
【0023】
ここで図3Dを参照すると、次に第二のドリルピン180および第三のドリルピン182が骨刀132を貫通するように、カニューレ状チゼル機器、例えば骨刀132を第二のドリルピン180および第三のドリルピン182に通す。骨刀132は、骨刀132を股関節10に挿入する間に破片がチャネル140に入るのを防ぐために、中央チャネル140を通って延在するオブチュレーター134を備える。そして、骨刀132を、例えばマレット(図示せず)を用いて、上述の予め選択されたオーバードリル深さに対応する寛骨臼16内の深さまで進める。例では、深さは約20mmであってもよい。骨刀132は、骨刀132の挿入深さを示すための鋸歯状の縁144または他の表面マーキング形体を備えてもよい。したがって、以下で更に説明するように、骨刀132を用いて、挿入スロット142を寛骨臼16内に、予めサイズ調整された骨グラフトの挿入を可能にするのに十分な挿入深さまで掘削する。次に、オブチュレーター134を骨刀132のチャネル140から取り外す。次に、必要に応じて、縫合糸に取り付けられたアンカー(図示せず)を骨刀134のチャネル140を通して寛骨臼16に送ると、アンカーが寛骨臼16内に完全に装着され、取り付いている縫合糸の自由端が挿入スロット142内に押し出される。次に、骨刀134を股関節10から取り外す。
【0024】
ここで図3Eを参照すると、サイズ調整された骨グラフト112は、寛骨臼16への固定の準備ができている。第二のドリルピン180および第三のドリルピン182がそれぞれ骨グラフト112の側孔130a、130cおよびプッシャー144を貫通するように、骨グラフト112およびカニューレ状プッシャー144を、第二のドリルピン180および第三のドリルピン182に通す。縫合糸138の自由端が存在する場合、それを骨グラフト112の中央穴130bに通すことができる。骨グラフト112を、例えばプッシャー144の端部に打ち込む力を加えて骨グラフト112が挿入スロット142に十分に押し込まれるまで、寛骨臼16に向かって進める。次に、プッシャー144、第二のピン180、および第三のピン182を股関節10から取り外し、骨グラフト112を所定の位置に残す。ここで、骨グラフト112は大腿骨頭14a(図3F)を覆い、したがって股関節10に、より広い重量荷担面をもたらす。次に、縫合糸138の自由端が存在する場合、それに張力をかけて、補助アンカー、例えばボタン(図示せず)に通すことができる。骨グラフト112を寛骨臼16に更に固定するために、外科結びをボタン上に縫合糸138で結ぶことができる。そして、縫合糸138の自由端を切り取り、修復を完了することができる。
【0025】
ここで図4A~Eを参照すると、本開示の例示的なグラフトサイザー200を用いて骨グラフト212を形成する第二の方法が例示されている。示すように、本開示のグラフトサイザー200は、寛骨臼棚形成術で使用するための骨グラフトの制御されたトリミングおよび作製を提供する。しかし、グラフトサイザー200を他のタイプの外科的修復、例えば肩甲上腕不安定性の修復に使用できることが本開示により考えられる。本開示のグラフトサイザー200は、ポリマー、金属、または他の好適な材料から作製されることができ、再利用可能であることが意図される。
【0026】
ここで図4Aを参照すると、本開示の例示的なグラフトサイザー200は、上面214を有する略長方形のブロックの形態で示されている。上面214は、グラフトサイザー200の前面210および後面216を突き抜けて延びる略正方形の第一の開口部218を備え、第一のブロック206と第二のブロック208との間に画定される。第一のブロック206は、第一のブロック206を貫通し、グラフトサイザー200の外部と連通する溝204a、204bを更に備える。例では、溝204aと204bは約10mmの間隔を空けて離れている。第二のブロック208は、貫通穴224a、224bを更に備え、その目的は以下に説明される。切断装置、例えば矢状鋸が通過するためにサイズ調整された二つの角度付きスロット220は、第一のブロック206および開口部218の一部を貫通している。二つの角度付きスロット220は、横方向スロット222で終端してこれと連通し、スロット222も切断装置の通過用に構成される。スロット220、222の使用について、以下でより詳細に説明する。
【0027】
図4Bは、角度付きスロット220と横方向スロット222との間に画定される空間内のグラフトサイザー200の開口部218内に配置される骨グラフト212を例示している。骨グラフト212は、患者の腸骨稜から採取することができ、採取プロセス中に予め角度を付けることができる。骨グラフト212は、より高い端部が第一のブロック206に対して位置合わせされるように、手でグラフトサイザー200に押し付けられる。次に、骨グラフト212は、切断装置230を横方向スロット222を通して延長することにより、所望の長さにトリミングする。次に、図4Cに示すように、1.2mmのドリルピンであってもよい二つのドリルピン228a、228bは、第一のブロック206のそれぞれの溝204a、204b、骨グラフト212、および第二のブロック208を通って穿孔し、ドリルピン228a、228bは、第二のブロック208の貫通孔224a、224bから出て骨グラフト212をグラフトサイザー200に固定する。次に、骨グラフト212は、切断装置230を角度付きスロット220(図4D)を通して延長することにより、所望の幅にトリミングされることができる。角度付きスロット220の角度により、サイズ調整された骨グラフト212の断面は実質的に台形である。図4Eでは、溝204a、204bを通してドリルピン228a、228bを持ち上げることによりサイズ調整された骨グラフト212をグラフトサイザー200から自在に持ち上げることができるように、ドリルピン228a、228bは第二のブロック208から抜かれる。ここで、サイズ調整された骨グラフト212およびドリルピン228a、228bは、修復部位に挿入される準備ができた(図4F)。
【0028】
図4Gおよび4Hに示すように、二つの異なるグラフトサイザー200を用いて二つの異なるサイズ調整された骨グラフト212を形成することができることが本開示により考えられる。例では、「中」サイズに調整された骨グラフト212の(上面から見た)長さLは約25mmであってもよい。狭い端の幅Wは約16mmであってもよく、広い端の幅Wは約25mmであってもよい。例では、「大きい」サイズに調整された骨グラフト212の長さLは約30mmであってもよい。狭い端の幅Wは約17mmであってもよく、広い端の幅Wは約28mmであってもよい。両方の例で、(側面から見た)狭い端の高さHは約2mmであってもよく、広い端の高さHは約7~8mmであってもよい。
【0029】
ここで、本開示のオフセットガイド250の第二の例を、図5Aおよび5Bに関して説明する。図5Aの例では、オフセットガイド250は一般的に、カニューレ状のヘッド部分252および細長いハンドル256を備える。ハンドル256は、図示のようにフィンガーノッチ、またはユーザーがハンドル256をしっかりと握るのを助けるための他の表面形体を備えることができる。ヘッド部分252は、中空のエイマーシャフト258の近位端を受け入れるように構成されている。エイマーシャフト258は、2.4mmのドリルピンであってもよいドリルピン274の通過のためにサイズ調整されており、その目的は以下により詳細に記載される。最初に、エイマーシャフト258が第一の縦軸Lに沿って延在するように、エイマーシャフト258はヘッド部分252内に配置される。エイマーシャフト258の遠位端は、斜角開口部260および突出部材262を備える。突出部材260は、第二の長手方向軸Lに沿って延在する遠位方向に延びるフィンガー264を更に備える。図2では、フィンガー262の長手方向軸Lは、エイマーシャフト256の長手方向軸Lからオフセット距離Dだけずれていることが分かる。例では、オフセット距離Dは約7mmであってもよい。しかし、他の好適なオフセット距離Dが本開示により考えられる。以下で更に説明するように、オフセットガイド250を用いて、寛骨臼への骨グラフトの一貫した正確な配置を確実に行う。図5Bでは、ドリルピン274の表面に多数のマーキング254が設けられ、ドリルピン274がオフセットガイド250から遠位方向に延びる長さを示すことも分かる。
【0030】
本開示の修正ドリルガイド232の例を、図6A~Cに関して説明する。図6Aに示すように、ドリルガイド232は、近位端268および遠位端270を有するほぼ細長い平坦な本体236を備え、開口したカニュレーション器具226(図6B)が近位端268から遠位端270まで延在する。オブチュレーター234は、カニュレーション器具226内にスライド可能に配置されるように構成され、ドリルガイド232の遠位端270からわずかに遠位まで延在するが遠位端270を通ってスライドできない。オプチュレーター234は、以下で更に説明するように、ドリルピン274が通過するための内部チャネル240を更に備える。
【0031】
図6Bは、オブチュレーター234がカニュレーション器具226から取り外された状態のドリルガイド232の遠位端270の詳細図である。図6Bでは、ドリルガイド232の遠位端270は、図示のように骨に食い込むための二つの点であることができる少なくとも一つの鋭い先端272を備えることが分かる。ドリルガイド232および先端272は、図6Cの上面図から更に例示されている。図6Cに示すように、オブチュレーター234がカニュレーション器具226から取り外されると、ドリルガイド232は、4.5mmのドリルであってもよいドリル280が通過するように構成される。ドリル280は近位の環状リム276を備え、その直径は、ドリルガイド232に入ることができないように選択される。ドリル280がドリルガイド232内に完全に装着されると、環状リム276はドリルガイド232の近位端268に当接し、ドリルビット278はドリルガイド232の遠位端270から約10mm延びる。この構成の目的については、以下で詳しく説明する。
【0032】
寛骨臼棚形成術中の図4Fのサイズ調整された骨グラフト212、図5Aのオフセットガイド250、および図6Aの修正ドリルガイド232の使用について、図7A~Jを参照して説明する。以下に説明する方法は、多くの点で、図3A~Gに関して上記で説明した方法に類似している。ただし、オフセットガイド150に最初に挿入された第二のドリルピン180および第三のドリルピン182がサイズ調整された骨グラフト212と予め組み立てられている点で異なる。修正ドリルガイド232およびスロット拡張器は、以下により詳細に説明されるように、挿入スロット142を予め選択された深さまで掘削するために、骨刀132の代わりとなる。どちらの場合も、方法のすべての態様は、制御された方法で一貫した外科的結果を再現するように意図されている。
【0033】
ここで図7Aを参照すると、修復を開始するために、オフセットガイド250のエイマーシャフト256を、ポータルを通して寛骨臼16に向かって股関節10の中へ進める。エイマーシャフト256のフィンガー264(図5A)の横方向の縁は、寛骨臼16の内側の縁にわずかに押し付けられてエイマーシャフト256を位置決めする。次に、ドリルピン274はエイマーシャフト256を通して挿入され、寛骨臼16内に約15mmの深さの穴を開けるために使用される。そして、エイマーシャフト256を備えるオフセットガイド250を股関節10から取り外し、ドリルピン274を寛骨臼16の所定の位置に残す(図7B)。
【0034】
次に、図7Cに示すように、オブチュレーター234を備える修正ドリルガイド232は、ドリルピン274がオブチュレーター234を通って延在するように、ドリルピン274を通す。そして、ドリルガイド232が寛骨臼16内に進むように、ドリルガイド232は、例えばマレット(図示せず)で寛骨臼16内に打ち込まれる。ドリルガイド232を寛骨臼16内に進めると、ドリルガイド232の先端272が骨と係合し、オブチュレーター234がドリルガイド232の遠位端270から突き出る(図7D)。そして、オブチュレーター234およびドリルピン274を股関節10から取り外して、ドリルガイド232を寛骨臼16から延在させる。そして、図7Eに示すように、ドリル280はドリルガイド232に挿入され、ハードストップ、即ち寛骨臼16内の約10mmの深さまで穿孔する。図7Fに示すように、ドリル280は、ドリル280の届く範囲内のすべての骨質材料が除去されて挿入スロット242を形成するまで、ドリルガイド232内で左右に動かされる。そして、ドリル280およびドリルガイド232は股関節10から取り外される。
【0035】
ここで図7Gを参照すると、次にスロット拡張器282が挿入スロット242に導入される。図7Hにより詳細に示すように、スロット拡張器282は、スロット拡張器282の挿入深さを示すための鋸歯状の縁244または他の表面マーキング形体を備えてもよい。スロット拡張器282の20mmマーキング(図示せず)が寛骨臼16のすぐ下に達するまで、スロット拡張器282は、例えばマレット(図示せず)で挿入スロット242内に進められる。そして、スロット拡張器282が股関節10から取り外される。
【0036】
ここで図7Iを参照すると、サイズ調整された骨グラフト212は、寛骨臼16への固定の準備ができている。ドリルピン228a、228bを用いて、骨グラフト212を挿入スロット242内に進める。そして、ドリルピン228a、228bがプッシャー244を貫通するように、カニューレ状のプッシャー244をドリルピン228a、228bに通す。骨グラフト212を、例えばプッシャー244の端部に打ち込む力を加えて骨グラフト212が寛骨臼16内に十分に押し込まれるまで、寛骨臼16に向かって進める。次に、プッシャー244、およびドリルピン228a、228bを股関節10から取り外し、骨グラフト212を所定の位置に残す。ここで、骨グラフト212は大腿骨頭14a(図7J)を覆い、したがって股関節10に、より広い重量荷担面をもたらす。
【0037】
寛骨臼16への骨グラフト212の追加の固定は、必要に応じて、ドリルピン228a、228bによって形成された骨グラフト212内の穴を通して、挿入スロット242内に縫合糸に取り付けられる一つまたは複数のアンカー(図示せず)を配置することによって達成される。この目的のために、当該技術分野で公知の任意の好適なアンカーを使用することができる。例として、アンカーは生体吸収性アンカーであってもよい。図8Aに示すように、縫合糸238を、縫合糸パサー290または他の器具によって骨グラフト212を通して引っ張ってもよい。次に、縫合糸238の自由端には張力がかけられ、補助アンカー、例えばボタン246に通される(図8B)。骨グラフト212を寛骨臼16に更に固定するために、外科結び248をボタン246上に縫合糸238で結ぶ(図8C)。そして、縫合糸238の自由端を切り取り、修復を完了することができる。
【0038】
本開示はその好ましい実施形態の参照により特に示され、記述されてきたが、当業者は、添付の請求項により定義される本出願の趣旨および範囲から逸脱することなく、その中に形態や詳細において様々な変更を行うことができることを理解するであろう。そのような変形は、本出願の範囲に含まれることが意図されている。このように、本出願の実施形態の前述の説明は、制限することを意図しておらず、むしろ、添付の特許請求によって全範囲が伝えられる。
図1-1】
図1-2】
図1-3】
図2
図3-1】
図3-2】
図3-3】
図4-1】
図4-2】
図4-3】
図4-4】
図5
図6
図7-1】
図7-2】
図7-3】
図7-4】
図7-5】
図8