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特許7497989半導体チップの製造方法、及び、半導体チップ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-03
(45)【発行日】2024-06-11
(54)【発明の名称】半導体チップの製造方法、及び、半導体チップ
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/301 20060101AFI20240604BHJP
   H01L 21/52 20060101ALI20240604BHJP
【FI】
H01L21/78 R
H01L21/78 F
H01L21/52 A
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020023124
(22)【出願日】2020-02-14
(65)【公開番号】P2021129035
(43)【公開日】2021-09-02
【審査請求日】2022-12-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】100142804
【弁理士】
【氏名又は名称】大上 寛
(72)【発明者】
【氏名】横山 淳機
【審査官】境 周一
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-342896(JP,A)
【文献】特開2019-186491(JP,A)
【文献】特開2012-230955(JP,A)
【文献】特開2019-004053(JP,A)
【文献】特開平09-172029(JP,A)
【文献】特開2000-216193(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2007/0155055(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/301
H01L 21/52
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
裏面にダイアタッチ材層が積層された半導体チップの製造方法であって、
ウェーハと該ウェーハの裏面に積層されたダイアタッチ材層とを有した積層ウェーハを、該ダイアタッチ材層を上側に露出させて保持テーブルで保持する保持ステップと、
該保持テーブルで保持された該積層ウェーハを該ウェーハの分割予定ラインに沿って切削して半導体チップを形成する分割ステップと、を備え、
該分割ステップは、第一切削ブレードを該積層ウェーハの該ウェーハに至る所定の深さに切り込ませ該分割予定ラインに沿って切削し、第一の幅の刃厚を有する第一切削溝を形成するとともに該第一切削溝の下に切り残し部を形成する第一切削ステップと、
該第一の幅よりも狭い第二の幅の刃厚を有する第二切削ブレードで該切り残し部を切削する第二切削ステップと、を含み、
該分割ステップで形成される該半導体チップの裏面側の外周部には切り欠き部が形成され、
該半導体チップの該裏面において該切り欠き部で囲まれた領域よりも内側に該ダイアタッチ材層が積層され、
該切り欠き部の幅と深さは、該半導体チップのダイボンディング時に半導体チップの側方にはみ出そうとするダイアタッチ材を該切り欠き部で収容しうる値に設定される、
半導体チップの製造方法。
【請求項2】
該保持テーブルは該積層ウェーハを保持する保持部材であって、少なくとも一部に透明領域が形成される保持部材を有し、
該保持ステップを実施した後、該分割ステップを実施する前に、該透明領域を介して該積層ウェーハの表面を撮像した撮像画像をもとに該分割予定ラインを検出する分割予定ライン検出ステップを更に備える、
ことを特徴とする請求項1に記載の半導体チップの製造方法。
【請求項3】
裏面側にダイアタッチ材層を有した半導体チップであって、
表面と、裏面と、を備えた基材と、
該基材の該裏面側に積層されたダイアタッチ材層と、を備え、
該半導体チップの表面よりも裏面の面積が小さくなるように該基材の裏面側の外周部には切り欠き部が形成され、
該半導体チップの該裏面において該切り欠き部で囲まれた領域よりも内側に該ダイアタッチ材層が積層され、
該切り欠き部の幅と深さは、該半導体チップのダイボンディング時に半導体チップの側方にはみ出そうとするダイアタッチ材を該切り欠き部で収容しうる値に設定される、
半導体チップ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、裏面にダイアタッチ材層が積層された半導体チップの製造方法、及び、半導体チップに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体ウェーハの裏面にダイアタッチ材層が積層された積層ウェーハをダイシングにより分割し、ダイアタッチ材層が裏面に積層された半導体チップを製造する方法が知られている。ダイアタッチ材層は、金属や樹脂からなるものであり、ダイボンディング時には、半導体チップがダイアタッチ材層を介して支持体上に固着される。
【0003】
特許文献1では、ダイアタッチ材層として、100乃至200μm程度の厚さを有し、ビニル系接着剤やアクリル系接着剤などの熱可塑性樹脂から構成される接着用樹脂層が開示されている。
【0004】
特許文献2では、ダイアタッチ材層として、ダイアタッチフィルム(DAF)と称される接着フィルムに金属粒子が分散されシート状に成形されてなる金属層が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2002-359212号公報
【文献】特開2019-096762号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
近年の電子機器の小型化に伴って半導体チップの薄化が進んでおり、今後もさらなる薄化の要望が存在するものである。
【0007】
現段階において、例えば厚さが100μm以下の薄い半導体チップも存在するが、厚さが薄いため、ダイボンディング時において溶けて側方にはみ出したダイアタッチ材、あるいは、ダイシングの際にはみ出したダイアタッチ材が、表面側まで容易に回り込んでしまい、短絡等の不具合が生じる可能性が高いものとなる。
【0008】
本発明は、以上の問題に鑑み、ダイボンディング時にダイアタッチ材がはみ出して、半導体チップの表面側まで回り込んでしまう不具合を防止するための新規な技術を提案するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様によれば、
裏面にダイアタッチ材層が積層された半導体チップの製造方法であって、
ウェーハと該ウェーハの裏面に積層されたダイアタッチ材層とを有した積層ウェーハを、該ダイアタッチ材層を上側に露出させて保持テーブルで保持する保持ステップと、
該保持テーブルで保持された該積層ウェーハを該ウェーハの分割予定ラインに沿って切削して半導体チップを形成する分割ステップと、を備え、
該分割ステップは、第一切削ブレードを該積層ウェーハの該ウェーハに至る所定の深さに切り込ませ該分割予定ラインに沿って切削し、第一の幅の刃厚を有する第一切削溝を形成するとともに該第一切削溝の下に切り残し部を形成する第一切削ステップと、
該第一の幅よりも狭い第二の幅の刃厚を有する第二切削ブレードで該切り残し部を切削する第二切削ステップと、を含み、
該分割ステップで形成される該半導体チップの裏面側の外周部には切り欠き部が形成され、
該切り欠き部の幅と深さとは、該半導体チップのダイボンディング時に半導体チップの側方にはみ出そうとするダイアタッチ材を該切り欠き部で収容しうる値に設定される、
半導体チップの製造方法とする。
【0010】
また、本発明の一態様によれば、該保持テーブルは該積層ウェーハを保持する保持部材であって、少なくとも一部に透明領域が形成される保持部材を有し、該保持ステップを実施した後、該分割ステップを実施する前に、該透明領域を介して該積層ウェーハの表面を撮像した撮像画像をもとに該分割予定ラインを検出する分割予定ライン検出ステップを更に備える、こととする。
【0011】
また、本発明の一態様によれば、
裏面側にダイアタッチ材層を有した半導体チップであって、
表面と、裏面と、を備えた基材と、
該基材の該裏面側に積層されたダイアタッチ材層と、を備え、
該半導体チップの表面よりも裏面の面積が小さくなるように該基材の裏面側の外周部には切り欠き部が形成され、
該切り欠き部の幅と深さとは、該半導体チップのダイボンディング時に半導体チップの側方にはみ出そうとするダイアタッチ材を該切り欠き部で収容しうる値に設定される、半導体チップとする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、ダイボンディング時において、半導体チップの側方にはみ出ようとするダイアタッチ材を切り欠き部で収容することが可能となり、ダイアタッチ材が半導体チップの表面まで回り込んでデバイスが損傷してしまうことを防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の実施に使用される切削装置の一実施形態の斜視図である。
図2】支持ボックス及び保持テーブル部分の分解斜視図である。
図3】(A)は支持ボックス上に搭載された保持テーブルの斜視図である。(B)は下方撮像カメラ及びその支持構造の斜視図である。
図4】保持テーブルの断面形状等について示す図である。
図5】(A)は被加工物の一例である積層ウェーハの表面を表す図である。(B)は被加工物の一例である積層ウェーハの裏面を表す図である。
図6】保持テーブルと下方撮像カメラの位置関係について説明する図である。
図7】第一切削ブレード、第二切削ブレードによる切削加工について説明する図である。
図8】第一切削ステップについて説明する図である。
図9】第二切削ステップについて説明する図である。
図10】(A)は半導体チップの実装について説明する図である。(B)は切り欠き部の体積について説明する図である。(C)はダイアタッチ材が切り欠き部に収容されることについて説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態を図面を参照して詳細に説明する。図1は、本発明の実施に使用される切削装置2の一実施形態について示す斜視図である。切削装置2は2つの切削ブレードが対向して配設されたフェイシングデュアルスピンドルタイプの切削装置として構成される。
【0015】
図1に示すように、切削装置2の基台4には、保持テーブル27が移動機構23(図3(A))によりX軸方向に往復動可能に配設されている。保持テーブル27の周囲にはウォーターカバー14が配設されており、このウォーターカバー14と基台4にわたり蛇腹16が連結されている。
【0016】
図1に示すように、基台4の前側角部には、後述する被加工物を収容するカセット20を載置するためのカセット載置台21が設けられる。
【0017】
図1に示すように、基台4上には門型形状のコラム24が立設されており、コラム24にはY軸方向に伸長する一対のガイドレール26が固定されている。コラム24には第一Y軸移動ブロック28が、ボールねじ30とパルスモータ(不図示)とからなる第一Y軸移動機構34によりガイドレール26に案内されてY軸方向に移動可能に搭載されている。
【0018】
図1に示すように、第一Y軸移動ブロック28にはZ軸方向に伸長する一対のガイドレール36が固定されている。第一Y軸移動ブロック28上には、第一Z軸移動ブロック38がボールねじ40とパルスモータ42とからなる第一Z軸移動機構44によりガイドレール36に案内されてZ軸方向に移動可能に搭載されている。
【0019】
図1に示すように、第一Z軸移動ブロック38には第一切削ユニット46及び上方撮像カメラ52が取り付けられている。第一切削ユニット46は、図7に示すように、モータ(不図示)により回転駆動されるスピンドル48の先端部に第一切削ブレードB1を着脱可能に装着して構成されている。
【0020】
図1に示すように、門型形状のコラム24には更に、第二Y軸移動ブロック28aがボールねじ30aとパルスモータ32aとからなる第二Y軸移動機構34aによりガイドレール26に案内されてY軸方向に移動可能に搭載されている。
【0021】
図1に示すように、第二Y軸移動ブロック28aにはZ軸方向に伸長する一対のガイドレール36aが固定されている。第二Y軸移動ブロック28a上には、第二Z軸移動ブロック38aがボールねじ40a及びパルスモータ42aからなる第二Z軸移動機構44aによりガイドレール36aに案内されてZ軸方向に移動可能に搭載されている。
【0022】
図1に示すように、第二Z軸移動ブロック38aには第二切削ユニット46aが取り付けられている。第二切削ユニット46aは、図7に示すように、モータ(不図示)により回転駆動されるスピンドル48aの先端部に第二切削ブレードB2が着脱可能に装着されて構成されている。
【0023】
図1に示すように、基台4上には、スピンナーテーブル56を有するスピンナー洗浄ユニット54が設けられており、切削加工後の被加工物をスピンナーテーブル56で吸引保持してスピンナー洗浄するとともに、スピン乾燥できるようになっている。
【0024】
図2は、保持テーブル27の構成について説明する図である。
保持テーブル27は環状ベース62と、円盤状の保持部材74とを有する。環状ベース62は、嵌合部64と、嵌合部64より大径のベルト巻回部66と、嵌合部64軸方向に貫通する貫通部65と、貫通部65を塞ぐ透明部材68と、を有する。
【0025】
図2に示すように、環状ベース62の上面には、円盤状の保持部材74の枠部74bを載置して固定するための被装着領域70が設けられる。
【0026】
図2に示すように、保持部材74は、円盤状の保持部74aと、その周囲を取り囲む枠部74bを有して構成される。保持部74aは、石英ガラス、ホウケイ酸ガラス、サファイア、フッ化カルシウム、フッ化リチウム、フッ化マグネシウム等の透明部材にて構成されている。なお、透明部材の「透明」とは、「可視光の少なくとも一部の波長の光を透過し、吸収、散乱しない」ことをいうものであり、後述する外周凸部検出ステップや、分割予定ライン検出ステップの実行を可能とするものであればよく、着色されたものであってもよい。また、保持部材74の一部の必要な範囲にのみ透明領域を構成することとしてもよい。以上のようにして、保持部材74の保持部74aにて、保持テーブル27に透明領域が構成される。
【0027】
図4に示すように、保持部74aの上面は、積層ウェーハWを保持する保持面74cを形成する。保持面74cにおいて、保持部74aの外周縁に近い箇所には、環状の吸引溝76が同心状に複数設けられており(本実施例では3列)、この吸引溝76にテープTが吸着保持される。吸引溝76は、保持部材74が環状ベース62に取付けられた状態で吸引源89に接続される。
【0028】
図2及び図4に示すように、環状ベース62の上面には、保持部材74の周囲を取り囲むように、ウェーハユニット8の環状フレームFを下側から支持するフレーム支持部72が4箇所に設けられる。
【0029】
図2及び図4に示すように、フレーム支持部72は、環状フレームFを支持する支持面を構成する支持ブロック72aと、環状フレームFの下側から吸着保持する吸着部72bと、を有し、吸着部72bは、吸引源89に接続される。
【0030】
図2及び図4に示すように、保持テーブル27の環状ベース62には、保持部材74の保持部74aとほぼ同径の貫通部65が形成されており、貫通部65の下部が透明部材68(例えば、ガラス)にて閉鎖される。これにより、下側から順に、透明部材68、貫通部65、保持部材74の保持部74aが配置され、これらの部位において光が透過することで、詳しくは後述するように、保持テーブル27の下方からの撮像が可能となる。なお、透明部材68は省略することとしてもよい。
【0031】
図2に示すように、保持部材74を環状ベース62の被装着領域70上に搭載し、環状ベース62から下方に突設される環状の嵌合部64を支持ボックス15の円形開口15aに嵌合させることで、図3(A)に示すように保持テーブル27が支持ボックス15に回転可能に搭載された状態となる。
【0032】
図3(A)に示すように、支持ボックス15の連結板15bにはモータ17が取り付けられており、モータ17の出力軸に連結されたプーリー17aと環状ベース62のベルト巻回部66に渡りベルト29が巻回される。モータ17を駆動すると、ベルト29を介して保持テーブル27が回転される。
【0033】
図3(A)に示すモータ17は、例えばパルスモータから構成され、アライメント遂行時にモータ17を所定パルスで駆動すると、保持テーブル27が所定量回転(θ回転)されて、図5(A)に示す積層ウェーハWの分割予定ライン(ストリート)13のアライメントを行うことができる。
【0034】
図3(A)に示すように、支持ボックス15は、X軸方向に固定的に延在する一対のガイドレール31にスライド可能に載置されており、移動機構23によりX軸方向に移動される。移動機構23は、ガイドレール31の間に平行に配置されるボールネジ23aと、パルスモータ23bを有して構成される。
【0035】
図3(A)に示すように、ボールネジ23aは支持ボックス15の下板15eの下面に設けた雌ネジ部に螺合され、パルスモータ23bを駆動してボールネジ23aを回転させることで、支持ボックス15がX軸方向に移動する。
【0036】
図3(A)に示すように、支持ボックス15の近傍には、保持テーブル27に保持された半導体ウェーハ等の被加工物を保持部材74の下側から撮像する下方撮像カメラ82が設けられている。
【0037】
図3(A)(B)に示すように、下方撮像カメラ82は、Y軸移動ブロック83に立設されるコラム96に設けられる。Y軸移動ブロック83は、Y軸方向に固定的に延在する一対のガイドレール81にスライド可能に載置されており、駆動手段85によりY軸方向に移動される。駆動手段85は、ガイドレール81の間に平行に配置されるボールネジ85aと、パルスモータ85bを有して構成される。
【0038】
図3(A)に示すように、ボールネジ85aはY軸移動ブロック83の下面に設けた雌ネジ部に螺合され、パルスモータ85bを駆動してボールネジ85aを回転させることで、Y軸移動ブロック83がY軸方向に移動する。
【0039】
図3(B)に示すように、下方撮像カメラ82は、低倍率カメラ86及び高倍率カメラ88を有するカメラユニット84を有する。カメラユニット84の側面にはカメラユニット84での撮像時に撮像箇所を照明するための2個の照明装置90,92が取り付けられる。
【0040】
図3(B)に示すように、カメラユニット84は支持プレート94により支持され、支持プレート94の基端部はZ軸移動ブロック98に固定されている。Y軸移動ブロック83(図3(A))に立設されるコラム96には、ボールねじ100及びパルスモータ102から構成されるZ軸移動手段104が設けられ、Z軸移動ブロック98が一対のガイドレール106に沿ってZ軸方向(上下方向)に移動され、これに伴って、カメラユニット84もZ軸方向(上下方向)に移動される。
【0041】
図6に示すように、支持ボックス15は、上板15c、下板15e、及び、連結板15bにて側面視において略コ字をなしており、連結板15bの反対側には、上板15cと下板15eの間の空間に下方撮像カメラ82の進入を可能とする開口部15gが形成される。
【0042】
次に、以上の装置構成を用いた本発明に係る加工方法の例について説明する。
<積層ウェーハ準備ステップ>
図5(A)(B)に示すような積層ウェーハWを準備するステップである。積層ウェーハWは、半導体にて構成されるウェーハ10の裏面10bに、ダイアタッチ材層12が積層されてなるものである。
【0043】
図5(A)に示すように、積層ウェーハWを構成するウェーハ10の表面10aには、デバイス11が格子状に配列され、分割予定ライン13(ストリート)に沿って切削加工が施されることにより、チップに分割されるものである。ウェーハ10は、例えば、厚さが100μmのSiCウェーハであるが、これに限定されるものではない。
【0044】
図5(B)は、積層ウェーハWの裏面側を示すものであり、積層ウェーハWを構成するウェーハ10の裏面10bに、ダイアタッチ材層12が形成されている。ダイアタッチ材層12は、例えば、銀粒子を主成分とするペースト素材を焼結結合させてウェーハ10の裏面10bに積層されるものであり、厚みは例えば1~10μmである。
【0045】
なお、ダイアタッチ材層12は、有機分子でコーティングされた銀粒子を有機溶剤に分散させたペースト素材、Agナノ粒子を有機溶剤に分散させたペースト素材、あるいは、銀粒子、Agナノ粒子などの金属粒子を含むシート、などにより形成することとしてもよく、特にここに記載されるものに限定されるものではない。
【0046】
また、図5(B)に示すように、積層ウェーハWの裏面Wb側のダイアタッチ材層12を上側にして露出させるとともに、積層ウェーハWの表面WaをテープTに貼着し、テープTを介して環状フレームFと積層ウェーハWを一体とするウェーハユニット8が構成される。このように、ウェーハユニット8を構成することで、表面Waのデバイス11をテープTにて保護しつつ、積層ウェーハWがハンドリング可能な状態とされる。なお、環状フレームFを用いずに、積層ウェーハWの表面Waにテープを貼着して保護することとしてもよい。
【0047】
また、図5(B)において、テープTは透明、即ち、「可視光の少なくとも一部の波長の光を透過し、吸収、散乱しない」特性を有することとし、後述する分割予定ライン検出ステップの実行を可能とするものである。また、テープTは着色されたもであってもよく、伸縮性のある樹脂製のテープにて構成することができる。また、テープTを用いる代わりに、ガラスや樹脂等からなる板状のハードプレートにて積層ウェーハWの表面Waを保護してハンドリングすることとしてもよい。
【0048】
<保持ステップ>
図6に示すように、積層ウェーハWの裏面10b側のダイアタッチ材層12を上側にし、保持テーブル27にて積層ウェーハWを保持するステップである。
【0049】
積層ウェーハWは、テープTを介して保持テーブル27の保持部材74に吸引保持される。テープTと保持部材74の保持部74aは、上述したように透明にて構成されるものである。
【0050】
<分割予定ライン検出ステップ>
図6に示すように、Y軸移動ブロック83を移動させることで、下方撮像カメラ82を積層ウェーハWの下方に位置付け、保持テーブル27の保持部材74、テープTを介して、積層ウェーハWの表面Waを撮像するとともに、撮像画像をもとに積層ウェーハWの分割予定ライン13(図5(A))が検出される。
【0051】
<分割ステップ:第一切削ステップ>
図7に示すように、第一切削ユニット46の第一切削ブレードB1の位置を、分割予定ライン検出ステップで検出された分割予定ライン13(図5(A))の位置に合わせるとともに、図8に示すように、積層ウェーハWのウェーハ10に至る所定の深さに切り込ませ分割予定ライン13に沿って切削することで、第一の幅w1の刃厚を有する第一切削溝M1を形成するとともに、第一切削溝M1の下に切り残し部Kを形成するステップである。
【0052】
図8に示すように、第一切削溝M1を形成するための第一切削ブレードB1の切込み深さD1は、ダイアタッチ材層12の厚さ12dと、ウェーハ10の部分の深さ10dの合計である。
【0053】
<分割ステップ:第二切削ステップ>
図7及び図9に示すように、第二切削ユニット46aの第二切削ブレードB2の位置を、既に形成された第一切削溝M1の位置に合わせるとともに、図9に示すように、第一の幅w1よりも狭い第二の幅w2の刃厚を有する第二切削ブレードB2で切り残し部Kを切削し、第二切削溝M2を形成するステップである。
【0054】
図9に示すように、第二切削ブレードB2の切込み深さ切込み深さD2は、切り残し部Kを除去しつつ、テープTを残存させる深さに設定される。このようにして、第二切削ブレードB2で切り残し部Kが除去されることで、積層ウェーハWが半導体チップCに分割された状態とする。
【0055】
なお、半導体チップCへの分割は、まず、図5(A)において、第一の方向(例えば、X軸方向)について、第一・第二切削ステップを実施した後、保持テーブル27を90度回転させ、図5(A)において第二の方向(例えば、Y軸方向)について、第一・第二切削ステップを実施することで行われる。
【0056】
そして、図9に示すように、第二切削ステップを終えた状態では、ウェーハ10において、深さ10d、幅10wとする切り欠き部10kが形成される。
【0057】
図10(A)は、分割された半導体チップCを、ダイアタッチ材層12を下にして支持体の実装面99に載置する様子を示しており、デバイス11が上側に露出するとともに、半導体チップCの下部の外周部Cg(下部角部)には、切り欠き部10kが形成されることが示されている。
【0058】
この切り欠き部10kは、図10(B)に示すように、高さ10d、幅10wを有し、半導体チップの周方向(4辺)に連続して形成されるものであり、切り欠き部10kの部分の体積Vは、たとえは半導体チップが一辺の長さLを有する平面正方形をなす場合において、以下の式で算出することができる。
V={(L×L―(L―(10w×2))×(L―(10w×2)}×10d (式1)
【0059】
図10(C)は、半導体チップCを実装面99にダイボンドした後の状態を示すものであり、半導体チップCの側方にはみ出ようとするダイアタッチ材12kを切り欠き部10kで収容することが可能となる。これにより、ダイアタッチ材12kがウェーハ10の表面10a(半導体チップCの表面Ca)まで回り込み、デバイス11に付着してデバイス11が損傷することを防ぐことができる。
【0060】
なお、半導体チップCの側方にはみ出ようとするダイアタッチ材12kの最大体積は、ダイアタッチ材12kの厚みと、半導体チップCの面積(表面、又は、裏面)の積にて求めることができる。即ち、半導体チップCに貼着されているダイアタッチ材12kの体積となる。したがって、切り欠き部10kの合計の体積V(図10B)は、このダイアタッチ材12kの体積(はみ出ようとするダイアタッチ材12kの最大体積)以下に設定されることが好ましい。
【0061】
以上のようにして本発明を実施することができる、
図4図5(A)、図6図9図10(A)に示すように、裏面Cbにダイアタッチ材層12が積層された半導体チップCの製造方法であって、
ウェーハ10とウェーハ10の裏面10bに積層されたダイアタッチ材層12とを有した積層ウェーハWを、ダイアタッチ材層12を上側に露出させて保持テーブル27で保持する保持ステップと、
保持テーブル27で保持された積層ウェーハWをウェーハ10の分割予定ライン13に沿って切削して半導体チップCを形成する分割ステップと、を備え、
分割ステップは、第一切削ブレードB1を積層ウェーハWのウェーハ10に至る所定の深さに切り込ませ分割予定ライン13に沿って切削し、第一の幅w1の刃厚を有する第一切削溝M1を形成するとともに第一切削溝M1の下に切り残し部Kを形成する第一切削ステップと、
第一の幅w1よりも狭い第二の幅w2の刃厚を有する第二切削ブレードB2で切り残し部Kを切削する第二切削ステップと、を含み、
分割ステップで形成される半導体チップCの裏面Cb側の外周部Cgには切り欠き部10kが形成され、
切り欠き部10kの幅10wと深さ10dとは、半導体チップCのダイボンディング時に半導体チップCの側方にはみ出そうとするダイアタッチ材12kを切り欠き部10kで収容しうる値に設定される、半導体チップCの製造方法とするものである。
【0062】
これにより、ダイボンディング時において、半導体チップCの側方にはみ出ようとするダイアタッチ材12kを切り欠き部10kで収容することが可能となり、ダイアタッチ材12kが半導体チップCの表面Caまで回り込んでデバイス11が損傷してしまうことを防ぐことができる。
【0063】
また、図4乃至図6に示すように、保持テーブル27は積層ウェーハWを保持する保持部材74であって、少なくとも一部に透明領域(保持部74a)が形成される保持部材74を有し、保持ステップを実施した後、分割ステップを実施する前に、透明領域(保持部74a)を介して積層ウェーハWの表面Waを撮像した撮像画像をもとに分割予定ライン13を検出する分割予定ライン検出ステップを更に備える、こととするものである。
【0064】
これにより、ダイアタッチ材層12を上側に露出させた状態で、分割ステップを実施することができる。
【0065】
また、図10(A)及び図10(C)に示すように、
裏面Cb側にダイアタッチ材層12を有した半導体チップCであって、
表面10aと、裏面10bと、を備えた基材10n(ウェーハ10)と、
基材10nの裏面10b側に積層されたダイアタッチ材層12と、を備え、
半導体チップCの表面Caよりも裏面10bの面積が小さくなるように基材10nの裏面10b側の外周部Cgには切り欠き部10kが形成され、
切り欠き部10kの幅10wと深さ10dとは、半導体チップCのダイボンディング時に半導体チップCの側方にはみ出そうとするダイアタッチ材12kを切り欠き部10kで収容しうる値に設定される、半導体チップCとするものである。
【0066】
これにより、ダイボンディング時において、半導体チップCの側方にはみ出ようとするダイアタッチ材12kを切り欠き部10kで収容することが可能となり、ダイアタッチ材12kが半導体チップCの表面Caまで回り込んでデバイス11が損傷してしまうことを防ぐことができる。
【符号の説明】
【0067】
2 切削装置
8 ウェーハユニット
10 ウェーハ
10a 表面
10b 裏面
10k 切り欠き部
10n 基材
11 デバイス
12 ダイアタッチ材層
12k ダイアタッチ材
13 分割予定ライン
B1 第一切削ブレード
B2 第二切削ブレード
C 半導体チップ
Ca 表面
Cb 裏面
Cg 外周部
K 切り残し部
M1 第一切削溝
M2 第二切削溝
T テープ
W 積層ウェーハ
w1 第一の幅
w2 第二の幅
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10