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特許7498011チャンバ、塩素バイパス設備、セメントクリンカ製造設備、及びセメントクリンカの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-03
(45)【発行日】2024-06-11
(54)【発明の名称】チャンバ、塩素バイパス設備、セメントクリンカ製造設備、及びセメントクリンカの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C04B 7/60 20060101AFI20240604BHJP
   F27D 17/00 20060101ALI20240604BHJP
【FI】
C04B7/60
F27D17/00 104Z
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2020064289
(22)【出願日】2020-03-31
(65)【公開番号】P2021160980
(43)【公開日】2021-10-11
【審査請求日】2023-02-22
(73)【特許権者】
【識別番号】521297587
【氏名又は名称】UBE三菱セメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100145012
【弁理士】
【氏名又は名称】石坂 泰紀
(72)【発明者】
【氏名】末益 猛
(72)【発明者】
【氏名】大場 康太
【審査官】浅野 昭
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-141132(JP,A)
【文献】特開2006-137644(JP,A)
【文献】特開2013-159534(JP,A)
【文献】特開平09-309751(JP,A)
【文献】特開2017-119587(JP,A)
【文献】特開平09-175847(JP,A)
【文献】国際公開第2005/050114(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C04B 7/60
F27D 17/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
塩素バイパス設備に設けられ、複数の抽気ガスを本体部で合流させるチャンバであって、
前記本体部の導入口から前記抽気ガスをそれぞれ導入し、前記導入口の上流側に屈曲部をそれぞれ有する第1の導入管及び第2の導入管と、
前記本体部の導出口から前記抽気ガスを含む混合ガスを導出する導出管と、を備え、
前記屈曲部の下流において、前記第1の導入管及び前記第2の導入管の前記導入口から前記本体部の内部に導入される前記抽気ガスの導入方向に延びる仮想流路を、前記屈曲部の外側流域と内側流域とに均分したときに、
前記第1の導入管及び前記第2の導入管の前記導入口のそれぞれにおいて、前記外側流域の方が、前記内側流域よりもダスト濃度が高くなるように構成されるとともに、
前記第1の導入管の前記仮想流路における前記外側流域の少なくとも一部と、前記第2の導入管の前記仮想流路の前記内側流域の少なくとも一部とが、互いに衝突するように構成される、チャンバ。
【請求項2】
前記本体部において、前記第1の導入管と前記第2の導入管とから前記抽気ガスが対向するように導入され、
前記本体部内の前記仮想流路同士が衝突する衝突面において、前記外側流域と前記内側流域とに均分する均分線同士が交差するように、前記第1の導入管と前記第2の導入管とからの前記抽気ガスが導入される、請求項1に記載のチャンバ。
【請求項3】
前記本体部の対向面にそれぞれ接続される前記第1の導入管及び前記第2の導入管からの前記仮想流路同士が前記対向面の面内方向に沿って互いにずれており、
一方の仮想流路の前記外側流域の少なくとも一部が、他方の仮想流路の前記内側流域の少なくとも一部と衝突するように構成される、請求項1又は2に記載のチャンバ。
【請求項4】
前記第1の導入管及び前記第2の導入管からの前記仮想流路同士が交差するように衝突する衝突部において、一方の仮想流路の前記外側流域と、他方の仮想流路の前記内側流域とが合流するように衝突する、請求項1に記載のチャンバ。
【請求項5】
前記第1の導入管及び前記第2の導入管からの前記仮想流路は、いずれも、前記導出口からずれている、請求項1~4のいずれか一項に記載のチャンバ。
【請求項6】
前記本体部は冷却ガスを導入する導入口を有する、請求項1~5のいずれか一項に記載のチャンバ。
【請求項7】
前記本体部はダストを排出するダスト排出口を有する、請求項1~6のいずれか一項に記載のチャンバ。
【請求項8】
前記第1の導入管及び前記第2の導入管における前記屈曲部の屈曲角が30~150°である、請求項1~7のいずれか一項に記載のチャンバ。
【請求項9】
請求項1~のいずれか一項に記載のチャンバを備える塩素バイパス設備。
【請求項10】
予熱仮焼部と、セメントキルンと、ライジングダクトと、前記ライジングダクト及び/又は前記セメントキルンの窯尻に接続される抽気管を有する塩素バイパス設備とを備え、
前記塩素バイパス設備は、請求項1~のいずれか一項に記載のチャンバを備える、セメントクリンカ製造設備。
【請求項11】
セメント原料を予熱及び仮焼する予熱仮焼工程と、
予熱及び仮焼された前記セメント原料を焼成して、セメントクリンカを製造する焼成工程と、
前記焼成工程で発生するキルン排ガスに含まれる揮発成分の少なくとも一部を、請求項に記載の塩素バイパス設備でダストとして回収する回収工程と、を有する、セメントクリンカの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、チャンバ、塩素バイパス設備、セメントクリンカ製造設備、及びセメントクリンカの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
セメントクリンカ製造設備では多種多様の廃棄物が処理されている。近年、廃棄物処理量の増加に伴い、塩素及び硫黄等の揮発成分のセメントキルンへのインプット量が増加している。これらの揮発成分は、製造設備内に付着してコーチングを生成する要因となり、セメントクリンカ製造設備の操業に影響を及ぼす。このため、多くのセメントクリンカ製造設備には揮発成分を低減するために塩素バイパス設備が設置されている。
【0003】
小型のキルンが隣接して設置されている場合には、キルン毎に塩素バイパスを設けるよりも、複数のキルン排ガスを合流させて一括して処理する方が効率的である。例えば、特許文献1では、複数のガス入口ダクトで導かれる抽気ガスを合流させるチャンバを備えるガス合流装置が提案されている。この特許文献1では、ガス入口ダクトとガス出口ダクトの距離と、ダクトの内径との比を所定の範囲にすることが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2006-137644号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1のようなチャンバでは、導入されるガス同士が十分に混合されないこと、及び、入口ダクトから出口ダクトへの短絡流が生じることが懸念される。このような現象が生じると、出口ダクトから導出されるガスの温度やダスト濃度といった性状が変動し、塩素バイパス設備の運転が不安定になってしまうことが懸念される。
【0006】
そこで、本開示では、塩素バイパス設備の運転を安定化することが可能なチャンバを提供する。また、そのようなチャンバを備えることによって、安定的に運転することが可能な塩素バイパス設備及びセメントクリンカ製造設備を提供する。また、安定的にセメントクリンカを製造することが可能なセメントクリンカの製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一側面に係るチャンバは、塩素バイパス設備に設けられ、複数の抽気ガスを本体部で合流させるチャンバであって、本体部の導入口から抽気ガスをそれぞれ導入し、導入口の上流側に屈曲部をそれぞれ有する第1の導入管及び第2の導入管と、本体部の導出口から抽気ガスを含む混合ガスを導出する導出管と、を備える。このチャンバは、屈曲部の下流において、第1の導入管及び第2の導入管の導入口から本体部の内部に導入される抽気ガスの導入方向に延びる仮想流路を、前記屈曲部の外側流域と内側流域とに均分したときに、第1の導入管の仮想流路における外側流域の少なくとも一部と、第2の導入管の仮想流路の内側流域の少なくとも一部とが、互いに衝突するように構成される。
【0008】
塩素バイパス設備で処理される抽気ガスには通常ダストが含まれる。上記チャンバの本体部の導入口から抽気ガスを導入する第1の導入管及び第2の導入管は、導入口の上流側に屈曲部を有する。この屈曲部では、抽気ガスの流通に伴って生じる遠心力によって、抽気ガス内に含まれるダスト濃度の分布が生じる。すなわち、ダスト濃度は、屈曲部を流通すると、屈曲部の外側を流通する部分の方が、内側を流通する部分よりも高くなる。ここで、上記チャンバでは、第1の導入管の仮想流路における外側流域の少なくとも一部と、第2の導入管の仮想流路の内側流域の少なくとも一部とが、互いに衝突するように構成される。このため、ダスト濃度が高い外側流域とダスト濃度が低い内側流域とがチャンバの本体部内において衝突する。したがって、本体部において生成する混合ガスにおけるダスト濃度の均一性を向上し、導出管からの導出される混合ガスのダスト濃度のばらつきを抑制することができる。また、チャンバの本体部内でガス同士が衝突するため、混合ガスの温度の均一化も促進される。したがって、混合不良による混合ガスの性状変動を抑制し、塩素バイパス設備の運転を安定化することができる。
【0009】
上記チャンバでは、本体部において、第1の導入管と第2の導入管とから抽気ガスが対向するように導入され、本体部内の仮想流路同士が衝突する衝突面において、外側流域と内側流域とに均分する均分線同士が交差するように、第1の導入管と第2の導入管とからの抽気ガスが導入されてもよい。これによって、第1の導入管と第2の導入管から導入される抽気ガス同士の衝突による混合効率が十分に高くなり、混合ガスにおけるダスト濃度の均一性を一層向上することができる。したがって、導出管からの導出される混合ガスのダスト濃度のばらつきを一層抑制して、塩素バイパス設備の運転を十分に安定化することができる。
【0010】
なお、本開示における「仮想流路」とは、本体部の内部空間の一部を占める、抽気ガスの導入口から本体部内への導入方向に延びる3次元の仮想的な流路である。導入口の開口縁が円形である場合、仮想流路は、円柱形状となる。また、導入口の開口縁が矩形である場合、仮想流路は四角柱形状となる。本開示における「衝突面」は、仮想流路同士が衝突する面であることから仮想的なものである。実際に抽気ガス同士が衝突する衝突面は、仮想的な衝突面からずれていてよく、また、実際に抽気ガス同士は、面状に衝突しなくてもよい。
【0011】
本開示における「均分」とは、仮想流路における流路断面(流通方向に垂直な切断面)において、断面における面積が等しくなるように、仮想流路を流通方向に沿って二分することを意味する。仮想流路が直管状である場合、この仮想流路を外側流域と内側流域に均分すると、外側流域と内側流域はそれぞれ半円柱形状となる。ただし、導入口の開口縁は円形に限定されず、また、仮想流路も円柱形状に限定されるものではない。
【0012】
上記チャンバでは、本体部の対向面にそれぞれ接続される第1の導入管及び第2の導入管からの仮想流路同士が対向面の面内方向に沿って互いにずれており、一方の仮想流路の外側流域の少なくとも一部が、他方の仮想流路の内側流域の少なくとも一部と衝突するように構成されてもよい。このような構成であっても、本体部において混合ガスにおけるダスト濃度の均一性が向上し、導出管からの導出される混合ガスのダスト濃度のばらつきを抑制することができる。また、チャンバの本体部内でガス同士が衝突するため、混合ガスの温度の均一化も促進される。なお、本開示における面内方向とは、その面に含まれる任意の方向を意味する。
【0013】
上記チャンバでは、第1の導入管及び第2の導入管からの仮想流路同士が交差するように衝突する衝突部において、一方の仮想流路の前記外側流域と、他方の仮想流路の前記内側流域とが合流するように衝突してもよい。これによって、本体部において生成する混合ガスにおけるダスト濃度の均一性が向上し、導出管からの導出される混合ガスのダスト濃度のばらつきを抑制することができる。
【0014】
上記第1の導入管及び上記第2の導入管からの仮想流路は、いずれも、導出口からずれていてよい。これによって、抽気ガスが十分に混合されずにそのまま導出口から導出される、所謂短絡流となることを抑制できる。これによって、混合ガスにおけるダスト濃度の経時的なばらつきを抑制することができる。
【0015】
本体部は冷却ガスを導入する導入口を有していてもよい。これによって、チャンバにおいて、抽気ガスを混合することのみならず、冷却することもできる。また、本体部では、導入されたガス同士を十分に混合できるため、冷却ガスを導入しても混合ガスの性状及び温度が変動することを抑制できる。
【0016】
上記本体部には、抽気ガスに含まれるダストを排出するダスト排出口が接続されていてもよい。これによって、チャンバの下流側に設けられるダスト回収設備の負荷を低減することができる。
【0017】
本開示の一側面に係る塩素バイパス設備は、上述のいずれかのチャンバを備える。これによって、塩素バイパスを安定的に運転することができる。また、複数の抽気ガスを導入口から導入することが可能であるため、抽気ガスを効率よく処理することができる。
【0018】
本開示の一側面に係るセメントクリンカ製造設備は、予熱仮焼部と、セメントキルンと、ライジングダクトと、ライジングダクト及び/又はセメントキルンの窯尻に接続される抽気管を有する上述の塩素バイパス設備とを備える。このセメントクリンカ製造設備は、上述のいずれかのチャンバを有する塩素バイパス設備を備えることから、安定的に運転することができる。また、上記塩素バイパス設備は、複数の抽気ガスをチャンバの導入口から導入することが可能であるため、抽気ガスを安定的に且つ効率よく処理することができる。したがって、セメントクリンカ製造設備を安定的に運転し、セメントクリンカの生産効率を向上することができる。
【0019】
本開示の一側面に係るセメントクリンカの製造方法は、セメント原料を予熱及び仮焼する予熱仮焼工程と、予熱及び仮焼された前記セメント原料を焼成して、セメントクリンカを製造する焼成工程と、焼成工程で発生するキルン排ガスに含まれる揮発成分の少なくとも一部を上述の塩素バイパス設備でダストとして回収する回収工程と、を有する。
【0020】
この製造方法では、上述の塩素バイパス設備でダストを回収する回収工程を有する。このため、安定的且つ効率的にダストを処理できることから、各工程が安定化し、安定的且つ効率的にセメントクリンカを製造することができる。
【発明の効果】
【0021】
本開示によれば、塩素バイパス設備の運転を安定化することが可能なチャンバを提供することができる。また、そのようなチャンバを備えることによって、安定的に運転することが可能な塩素バイパス設備及びセメントクリンカ製造設備を提供することができる。また、安定的にセメントクリンカを製造することが可能なセメントクリンカの製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】一実施形態に係る塩素バイパス設備の概要を示す図である。
図2】塩素バイパス設備に設けられるチャンバの一例を示す図である。
図3図2のチャンバの正面図である。
図4図2のチャンバの右側面図である。
図5】塩素バイパス設備に設けられるチャンバの別の例を示す図である。
図6図5のチャンバの正面図である。
図7図5のチャンバの右側面図である。
図8】衝突面CRを示す図である。
図9】塩素バイパス設備に設けられるチャンバのさらに別の例を示す図である。
図10図9のチャンバの正面図である。
図11図9のチャンバの右側面図である。
図12図9のチャンバの本体部を上方からみたときの、仮想流路と衝突面の関係を示す図である。
図13】塩素バイパス設備に設けられるチャンバのさらに別の例を示す図である。
図14図13のチャンバの正面図である。
図15】塩素バイパス設備に設けられるチャンバのさらに別の例を示す図である。
図16図15のチャンバの正面図である。
図17図15のチャンバの本体部を上方からみたときの、仮想流路と衝突部の関係を示す図である。
図18】一実施形態に係るセメントクリンカ製造設備を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、場合により図面を参照して、本開示の一実施形態について説明する。ただし、以下の実施形態は、本開示を説明するための例示であり、本開示を以下の内容に限定する趣旨ではない。説明において、同一要素又は同一機能を有する要素には同一符号を用い、場合により重複する説明は省略する。また、上下左右等の位置関係は、特に断らない限り、図面に示す位置関係に基づくものとする。更に、各要素の寸法比率は図示の比率に限られるものではない。
【0024】
図1は、一実施形態に係る塩素バイパス設備の概要を示す図である。塩素バイパス設備100はセメントキルン50と窯尻52とライジングダクト51を備えるセメントクリンカ製造設備200に設けられ、セメントクリンカの製造に伴って生じる塩素等の揮発成分を含むキルン排ガスを抽気して、抽気ガスに含まれる塩素等の揮発成分をダストとして回収し、セメントクリンカ製造設備内の揮発成分を低減する。
【0025】
塩素バイパス設備100は、ライジングダクト51及び/又はセメントキルン50の窯尻52から、キルン排ガスを抽気し、抽気したキルン排ガスに冷却ガスを混合してキルン排ガスと冷却ガスを含む抽気ガスを得る抽気管12と、抽気管12に冷却ガスを供給するための導入ファン14と、複数の抽気管12からの抽気ガスを混合するチャンバ20と、混合ガスを揮発性アルカリ塩の融点以下に冷却する熱交換器25と、冷却に伴って析出した、抽気ガスに含まれるダスト(塩素バイパスダスト)を、抽気ガスから分離する集塵器27と、チャンバ20、熱交換器25及び集塵器27を介して、抽気ガスを抽気する吸引ファン29とを備える。抽気管12は、抽気プローブと称されるものであってもよい。吸引ファン29としては、シロッコファン及びターボファンなどの通常の吸引ファンが挙げられる。
【0026】
セメントクリンカ製造設備200は2つのセメントキルン50及びこれに接続される窯尻52、ライジングダクト51を備える。このため、塩素バイパス設備100には、チャンバ20に2つの抽気管12から抽気ガスがそれぞれ導入されるようになっている。2つの抽気管12には冷却ガス導入部10がそれぞれ設けられている。冷却ガス導入部10には、導入ファン14から冷却ガスが供給される。冷却ガス導入部10は、抽気管12に冷却ガスを導入する。冷却ガスは、常温の空気であってよく、工場等で発生する排気ガスを含むものであってもよい。排気ガスとしては、例えば、セメント製造工場に持ち込まれた下水汚泥等の含水汚泥の受け入れ、貯蔵及び発酵時に発生する臭気ガス、吸引ファン29及び他工程の吸引ファンから排出される排出ガス等が挙げられる。
【0027】
チャンバ20では、2つの抽気ガスが混合される。チャンバ20で得られる混合ガス(抽気ガス)は、熱交換器25及び集塵器27を順次流通する。チャンバ20のダスト排出口からダストが排出されてもよい。抽気ガスに含まれる残りのダストは集塵器27で回収される。集塵器27は、バグフィルタであってよく、湿式スクラバ等の湿式集塵器であってもよい。チャンバ20ではダストを排出しなくてもよい。また、集塵器27とは別に分級器を集塵器27の上流又は下流に設けてもよい。
【0028】
図2は、塩素バイパス設備に設けられるチャンバの例を示す図である。チャンバ20は、複数の抽気ガス61,62を合流させて混合する内部空間を有する本体部40と、本体部40の面40a,40bに接続され、本体部40に抽気ガス61,62を導入する2つの導入管31,32(第1の導入管31,第2の導入管32)と、本体部40の面40cに接続され、本体部40で混合されたガスを本体部40から導出する導出管45と、を有する。本体部には、上述の導入管及び導出管の他に、抽気ガスを冷却する冷却ガスを導入する導入管、及び/又は抽気ガスから分離されるダストを排出するダスト排出管が接続されてもよい。
【0029】
本体部40と2つの導入管31,32との接続部には、導入口31A,32Aがそれぞれ形成され、本体部40と導出管45との接続部には、導出口45Bが形成されている。すなわち、チャンバ20は、本体部40に、導入口31A,導入口32A、及び導出口45Bを有している。2つの導入管31,32は、導入口31A,導入口32Aの上流側にそれぞれ屈曲部31C,32Cを有する。屈曲部31C,32Cは、抽気ガス61,62の流通方向に沿って、エルボ状に曲がっている。導入管31,32の屈曲部31C,32Cの上流側は、例えば抽気管12に接続される。屈曲部31C,32Cにおける屈曲角は、90°である。ただし、この角度は特に限定されず、例えば、30~150°であってよく、45~135°であってよく、60~120°であってもよい。
【0030】
導入管31,32を流通する抽気ガス61,62は、屈曲部31C,32Cを通過した後、導入口31A,32Aから本体部40にそれぞれ導入される。本体部40に導入された抽気ガス61,62は、本体部40において合流し、混合される。混合によって得られた混合ガス(抽気ガス)は、導出口45Bから導出管45に導出される。抽気ガス61,62に含まれるダストは、導出口45Bから混合ガス64に同伴されて排出される。導出口45Bから導出された混合ガス64は、例えば、図1の熱交換器25に導入されてよい。
【0031】
仮想流路VLは、導入管31の屈曲部31Cの下流において、導入口31Aから本体部40の内部に導入される抽気ガス61の導入方向に延びている。仮想流路VLは、導入管32の屈曲部32Cの下流において、導入口32Aから本体部40の内部に導入される抽気ガス62の導入方向に延びている。面40aに設けられる導入口31Aと、面40bに設けられる導入口32Aは互いに対向しており、且つ、仮想流路VLと仮想流路VLは互いに対向する方向に延びている。このため、仮想流路VLと仮想流路VLは、本体部40内において、正面衝突する。
【0032】
図3は、チャンバ20の正面図であり、図4は、チャンバ20の右側面図である。導入口31A,32Aは、本体部40の面40a,40bの中央部に形成されている。このため、導入口31Aから導入される抽気ガス61と、導入口32Aから導入される抽気ガス62の流速が同一である場合、両者が衝突する衝突面CRは、本体部40の中心部に生じる。
【0033】
導入管31を流通する抽気ガス61,62は、屈曲部31Cを通過すると、遠心力によって、固体のダストは流路の外側に寄り、流路の内寄りよりも外寄りの方が、ダスト濃度が高くなる。このため、導入口31Aから抽気ガス61の導入方向に延びる仮想流路VLを、外側流域HFと内側流域LFに均分すると、外側流域HFの方が内側流域LFよりもダスト濃度が高くなる。一方、導入口32Aから抽気ガス62の導入方向に延びる仮想流路VLを、外側流域HFと内側流域LFに均分すると、外側流域HFの方が内側流域LFよりもダスト濃度が高くなる。
【0034】
ここで、図3及び図4に示されるように、導入管31と導入管32は、本体部40を挟んで互いに逆方向に屈曲している。このため、図3に示されるように、仮想流路VLにおける外側流域HFと内側流域LFの位置関係と、仮想流路VLにおける外側流域HFと内側流域LFの位置関係が、互いに逆になっている。図4では、仮想流路VLにおける外側流域HFが手前側に位置し、仮想流路VLにおける内側流域LFが手前側に位置している。
【0035】
図3に示されるように、仮想流路VLにおける外側流域HFと内側流域LFの境界面VDと、仮想流路VLにおける外側流域HFと内側流域LFの境界面VDは、一つの平面を形成するように連なっている。衝突面CRでは、仮想流路VLにおける外側流域HFが、仮想流路VLにおける内側流域LFと衝突し、仮想流路VLにおける内側流域LFが、仮想流路VLにおける外側流域HFと衝突する。また、衝突面CRでは、仮想流路VLにおける外側流域HFと内側流域LFの境界面VDの一辺をなす均分線と、仮想流路VLにおける外側流域HFと内側流域LFの境界面VDの一辺をなす均分線とが整合するように衝突する。
【0036】
このような例では、抽気ガス61,62のダスト濃度が異なっていても、本体部40において抽気ガス61,62が合流して生じる混合ガスにおけるダストの偏りが十分に抑制される。したがって、混合ガスのダスト濃度の均一性が向上し、導出管45からの導出される混合ガス64のダスト濃度のばらつきを十分に抑制することができる。また、チャンバ20の本体部40内で抽気ガス61,62同士が衝突するため、混合ガス64の温度の均一化も促進される。したがって、混合不良による混合ガス64の性状変動を抑制し、塩素バイパス設備100の運転を安定化することができる。なお、それぞれの導入管は、複数の屈曲部を有していてもよい。この場合、内側流域及び外側流域の境界面は、導入口に隣接する屈曲部によって画定される。
【0037】
図5は、塩素バイパス設備に設けられるチャンバの別の例を示す図である。チャンバ22は、複数の抽気ガス61,62を合流させて混合する内部空間を有する本体部40と、本体部40の面40a,40bに接続され、本体部40に抽気ガス61,62を導入する2つの導入管33,34(第1の導入管33,第2の導入管34)と、本体部40の面40cに接続され、本体部40で混合されたガスを本体部40から導出する導出管45と、を有する。
【0038】
本体部40と2つの導入管33,34との接続部には、導入口33A,34Aがそれぞれ形成され、本体部40と導出管45との接続部には、導出口45Bが形成されている。すなわち、チャンバ22は、本体部40に、導入口33A,導入口34A、及び導出口45Bを有している。2つの導入管33,34は、導入口33A,導入口34Aの上流側にそれぞれ屈曲部33C,34Cを有する。屈曲部33C,34Cは、抽気ガス61,62の流通方向に沿って、エルボ状に曲がっている。導入管33,34の屈曲部33C,34Cの上流側は、例えば抽気管12に接続される。
【0039】
導入管33,34を流通する抽気ガス61,62は、屈曲部33C,34Cを通過した後、導入口33A,34Aから本体部40にそれぞれ導入される。本体部40に導入された抽気ガス61,62は、本体部40において合流し、混合される。混合によって得られた混合ガス(抽気ガス)は、導出口45Bから導出管45に導出される。抽気ガス61,62に含まれるダストは、導出口45Bから混合ガスに同伴されて排出される。
【0040】
仮想流路VLは、導入管33の屈曲部33Cの下流において、導入口33Aから本体部40の内部に導入される抽気ガス61の導入方向に延びている。仮想流路VLは、導入管34の屈曲部34Cの下流において、導入口34Aから本体部40の内部に導入される抽気ガス62の導入方向に延びている。面40aに設けられる導入口33Aと、面40bに設けられる導入口34Aは互いに対向しており、且つ、仮想流路VLと仮想流路VLは互いに対向する方向に延びている。このため、仮想流路VLと仮想流路VLは、本体部40内において、正面衝突する。
【0041】
図6は、チャンバ22の正面図であり、図7は、チャンバ22の右側面図である。導入口33Aから導入される抽気ガス61と、導入口34Aから導入される抽気ガス62の流速が同一である場合、両者が衝突する衝突面CRは、本体部40の中心部に生じる。導入口33Aから抽気ガス61の導入方向に延びる仮想流路VLを、外側流域HFと内側流域LFに均分すると、屈曲部33Cにおける遠心力によって、外側流域HFの方が内側流域LFよりもダスト濃度が高くなる。一方、導入口34Aから抽気ガス62の導入方向に延びる仮想流路VLを、外側流域HFと内側流域LFに均分すると、外側流域HFの方が内側流域LFよりもダスト濃度が高くなる。
【0042】
ここで、図5図6及び図7に示されるように、導入管33と導入管34は、それぞれの屈曲部33C,34Cの上流側の管体部分が、所謂ねじれの関係にある。このため、図6及び図7に示されるように、仮想流路VLにおける外側流域HFと内側流域LFの配置と、仮想流路VLにおける外側流域HFと内側流域LFの配置が、仮想流路VL,VLの円周方向に沿って90°の角度でずれている。このため、外側流域HFと内側流域LFの境界面VD外側流域HFと内側流域LFの境界面VDは、衝突面CRにおいて直交している。
【0043】
図8は、衝突面CRを示す図である。この図に示されるように、本例では、衝突面CRと境界面VDの交線である均分線LDと、衝突面CRと境界面VDの交線である均分線LDとが直交している。すなわち、衝突面CRにおいて、外側流域HFと内側流域LFを均分する均分線LDと、外側流域HFと内側流域LFを均分する均分線LDとが直交している。したがって、衝突面CRの全体のうち、1/4の面積で内側流域LF,LF同士が衝突し、別の1/4の面積で外側流域HF,HF同士が衝突する。そして、残りの1/2の面積で内側流域LF(LF)と、外側流域HF(HF)が衝突する。このように、内側流域と外側流域の一部同士が衝突する場合であっても、本体部40内で生成する混合ガスにおけるダスト濃度の均一性を向上し、導出管45からの導出される混合ガス64のダスト濃度のばらつきを十分に抑制することができる。
【0044】
なお、均分線LDと均分線LDのなす角度θは90°に限定されず、150°以下であってよく、135°以下であってよく、90°以下であってもよい。角度θは、内側流域LFと内側流域LFとが衝突する領域である扇形の角度である。角度θが0°になると、図2図4に示される例のように、衝突面CRの全体において、内側流域と外側流域とが衝突することとなる。角度θを0°に近づけることによって、混合ガス64のダスト濃度のばらつきを一層低減することができる。
【0045】
図9は、塩素バイパス設備に設けられるチャンバのさらに別の例を示す図である。チャンバ24は、複数の抽気ガス61,62を合流させて混合する内部空間を有する本体部40と、本体部40の面40a,40bに接続され、本体部40に抽気ガス61,62を導入する2つの導入管31,34(第1の導入管31,第2の導入管34)と、本体部40の面40fに接続され、本体部40で混合されたガスを本体部40から導出する導出管45と、を有する。
【0046】
本体部40と2つの導入管31,34との接続部には、導入口31A,34Aがそれぞれ形成され、本体部40と導出管45との接続部には、導出口45Bが形成されている。導入管31,34は、本体部40において対向する面40a,40bに接続されている。すなわち、チャンバ24は、本体部40に、導入口31A,導入口34A、及び導出口45Bを有しており、導入口31Aと導入口34Aは、互いに対向する面40a,40bに形成されている。2つの導入管31,34は、導入口31A,導入口34Aの上流側にそれぞれ屈曲部31C,34Cを有する。屈曲部31C,34Cは、抽気ガス61,62の流通方向に沿って、エルボ状に曲がっている。導入管31,34の屈曲部31C,34Cの上流側は、例えば抽気管12に接続される。
【0047】
導入管31,34を流通する抽気ガス61,62は、屈曲部31C,34Cを通過した後、導入口31A,34Aから本体部40にそれぞれ導入される。本体部40に導入された抽気ガス61,62は、本体部40において合流し、混合される。混合によって得られた混合ガス(抽気ガス)は、導出口45Bから導出管45に導出される。抽気ガス61,62に含まれるダストは、導出口45Bから混合ガス64に同伴されて排出される。
【0048】
仮想流路VLは、導入管31の屈曲部31Cの下流において、導入口31Aから本体部40の内部に導入される抽気ガス61の導入方向に延びている。仮想流路VLは、導入管34の屈曲部34Cの下流において、導入口34Aから本体部40の内部に導入される抽気ガス62の導入方向に延びている。面40aに設けられる導入口31Aと、面40bに設けられる導入口34Aは、導入口31A,34Aにおける抽気ガス61,62の導入方向とは垂直な方向に沿ってずれている。これによって、仮想流路VLと仮想流路VLは、対向する面40a,40bの面内方向に沿って互いにずれた状態で衝突する。したがって、仮想流路VLと仮想流路VLは正面衝突ではなく、仮想流路VLの先端の一部と、仮想流路VLの先端の一部とが衝突し、衝突面CRを形成している。
【0049】
図10は、チャンバ24の正面図であり、図11は、チャンバ24の右側面図である。図10及び図11に示されるように、導入管31と導入管34は、本体部40を挟んで同じ方向に屈曲している。このため、図10に示されるように、仮想流路VLにおける外側流域HFと内側流域LFの位置関係と、仮想流路VLにおける外側流域HFと内側流域LFの位置関係が同じになっている。すなわち、外側流域HFと内側流域LFの境界面VDと、仮想流路VLにおける外側流域HFと内側流域LFの境界面VDは、平行となる位置関係になっている。図11では、仮想流路VL1,VLの双方において、外側流域HF1,HFが手前側に位置し、内側流域LF1,LFが紙面奥側に位置している。
【0050】
図12は、チャンバ24の本体部40を上方からみたときの、仮想流路VL,VLと、衝突面CRの関係を示す図である。この図に示されるように、本例では、衝突面CRは、境界面VDを構成する均分線LDと、境界面VDを構成する均分線LDとの間に挟まれている。すなわち、衝突面CRを含む平面において、外側流域HFと内側流域LFを均分する均分線LDと、外側流域HFと内側流域LFを均分する均分線LDとが平行になっている。本体部40内の衝突面CRでは、仮想流路VLにおける内側流域LFの一部と、仮想流路VLにおける外側流域HFの一部とが衝突する。これによって、抽気ガス61,62のダスト濃度が異なっていても、本体部40において抽気ガス61,62が合流して生じる混合ガスにおけるダスト濃度の均一性が向上する。したがって、導出管45からの導出される混合ガス64のダスト濃度のばらつきを抑制することができる。
【0051】
また、本例では、導入管31,34を屈曲部31C,34Cにおいて同一方向に屈曲させている。このため、例えば、設置場所の制約等によって、図2又は図5の例のように2つの導入管を異なる方向に屈曲させることができない場合でも、混合ガス64のダスト濃度のばらつきを抑制することができる。さらに、導入管31の仮想流路VLと導入管34の仮想流路VLを延長した面に導出管45がないため、ガスの流れの複雑化によってガス同士の混合をより促進することができる。
【0052】
図13は、塩素バイパス設備に設けられるチャンバのさらに別の例を示す図である。チャンバ26は、複数の抽気ガス61,62を合流させて混合する内部空間を有する本体部40と、本体部40の面40a,40dに接続され、本体部40に抽気ガス61,62を導入する2つの導入管31,36(第1の導入管31,第2の導入管36)と、本体部40の面40eに接続され、本体部40で混合されたガスを本体部40から導出する導出管45と、を有する。
【0053】
本体部40と2つの導入管31,36との接続部には、導入口31A,36Aがそれぞれ形成され、本体部40と導出管45との接続部には、導出口45Bが形成されている。すなわち、チャンバ26は、本体部40に、導入口31A,導入口36A、及び導出口45Bを有している。2つの導入管31,36は、導入口31A,導入口36Aの上流側にそれぞれ屈曲部31C,36Cを有する。屈曲部31C,36Cは、抽気ガス61,62の流通方向に沿って、エルボ状に曲がっている。導入管31,36の屈曲部31C,36Cの上流側は、例えば抽気管12に接続される。
【0054】
導入管31,36を流通する抽気ガス61,62は、屈曲部31C,36Cを通過した後、導入口31A,36Aから本体部40にそれぞれ導入される。本体部40に導入された抽気ガス61,62は、本体部40において合流し、混合される。混合によって得られた混合ガス64(抽気ガス)は、導出口45Bから導出管45に導出される。抽気ガス61,62に含まれるダストは、導出口45Bから混合ガス64に同伴されて排出される。
【0055】
仮想流路VLは、導入管31の屈曲部31Cの下流において、導入口31Aから本体部40の内部に導入される抽気ガス61の導入方向に延びている。仮想流路VLは、導入管36の屈曲部36Cの下流において、導入口36Aから本体部40の内部に導入される抽気ガス62の導入方向に延びている。仮想流路VLと仮想流路VLは、本体部40内において直交する。
【0056】
図14は、チャンバ26の正面図である。導入口31Aから抽気ガス61の導入方向に沿って延びる仮想流路VLにおいて、外側流域HFは面40c側(導出口45B側)にあり、内側流域LFは面40d側(導入口36A側)にある。このため、導入口36Aから、抽気ガス62の導入方向に沿って延びる仮想流路VLは、内側流域LFと合流するように衝突する。この衝突部CRにおいて、外側流域HFと内側流域LFが合流するように衝突することから、本体部40内で生成する混合ガスにおけるダスト濃度の均一性を向上し、図13に示す導出管45からの導出される混合ガス64のダスト濃度のばらつきを抑制することができる。なお、本開示における「衝突部」は、仮想流路同士が衝突する部分であることから仮想的なものである。実際に抽気ガス同士が衝突する部分は、仮想的な衝突部からずれていてもよい。
【0057】
本例では、導入管31,36を、本体部40の対向面に接続する必要がない。このため、例えば、設置場所の制約等によって、図2又は図5の例のように2つの導入管を本体部40の対向面に接続することができない場合でも、混合ガス64のダスト濃度のばらつきを抑制することができる。さらに、導入管31の仮想流路VLと導入管36の仮想流路VLを延長した面に導出管45がないため、ガスの流れの複雑化によってガス同士の混合をより促進することができる。また例えば、本体部40の下方の面40bにダスト排出口を設けて抽気ガス61,62に同伴されるダストを排出できるようにしてもよい。なお、本例では、仮想流路VLと仮想流路VLが直交していたが、仮想流路同士が交差する角度は90°に限定されない。
【0058】
図15は、塩素バイパス設備に設けられるチャンバのさらに別の例を示す図である。チャンバ28は、複数の抽気ガス61,62を合流させて混合する内部空間を有する本体部40と、本体部40の面40a,40dに接続され、本体部40に抽気ガス61,62を導入する2つの導入管31,38(第1の導入管31,第2の導入管38)と、本体部40の面40cに接続され、本体部40で混合されたガスを本体部40から導出する導出管45と、を有する。
【0059】
本体部40と2つの導入管31,38との接続部には、導入口31A,38Aがそれぞれ形成され、本体部40と導出管45との接続部には、導出口45Bが形成されている。すなわち、チャンバ28は、本体部40に、導入口31A,導入口38A、及び導出口45Bを有している。2つの導入管31,38は、導入口31A,導入口38Aの上流側にそれぞれ屈曲部31C,38Cを有する。屈曲部31C,38Cは、抽気ガス61,62の流通方向に沿って、エルボ状に曲がっている。導入管31,38の屈曲部31C,38Cの上流側は、例えば抽気管12に接続される。
【0060】
導入管31,38を流通する抽気ガス61,62は、屈曲部31C,38Cを通過した後、導入口31A,38Aから本体部40にそれぞれ導入される。本体部40に導入された抽気ガス61,62は、本体部40において合流し、混合される。混合によって得られた混合ガス64(抽気ガス)は、導出口45Bから導出管45に導出される。抽気ガス61,62に含まれるダストは、導出口45Bから混合ガス64に同伴されて排出される。
【0061】
仮想流路VLは、導入管31の屈曲部31Cの下流において、導入口31Aから本体部40の内部に導入される抽気ガス61の導入方向に延びている。仮想流路VLは、導入管38の屈曲部38Cの下流において、導入口38Aから本体部40の内部に導入される抽気ガス62の導入方向に延びている。仮想流路VLと仮想流路VLは、本体部40内において直交する。
【0062】
図16は、チャンバ28の正面図である。導入口31Aから抽気ガス61の導入方向に沿って延びる仮想流路VLにおいて、外側流域HFは面40c側(導出口45B側)にあり、内側流域LFは面40d側(導入口38A側)にある。このため、導入口38Aから、抽気ガスの導入方向に沿って延びる仮想流路VLは、内側流域LFと合流するように衝突する。
【0063】
図17は、チャンバ28の本体部40を上方からみたときの、仮想流路VL,VLと、衝突部CRの関係を示す図である。本体部40内の衝突部CRでは、仮想流路VLにおける内側流域LFの一部と、仮想流路VLにおける外側流域HF一部とが、衝突部CRにおいて合流するように衝突する(円形の仮想流路VL1における左斜め上部分)。これによって、抽気ガス61,62のダスト濃度が異なっていても、本体部40において抽気ガス61,62が合流して生じる混合ガスにおけるダスト濃度の均一性を向上できる。したがって、導出管45からの導出される混合ガス64のダスト濃度のばらつきを抑制することができる。
【0064】
また、本例では、導入管31,38の屈曲部31C,38Cの上流側部分が所謂ねじれの関係にある。このため、例えば、設置場所の制約等によって、図13の例のように2つの導入管を異なる方向に屈曲させることができない場合でも、混合ガス64のダスト濃度のばらつきを抑制することができる。また例えば、本体部40の下方の面40bにダスト排出口を設けて抽気ガス61,62に同伴されるダストを排出できるようにしてもよい。なお、本例では、仮想流路VL及び仮想流路VLが直交していたが、仮想流路同士が交差する角度は90°に限定されない。
【0065】
上述のチャンバ20,22,24,26,28は、それぞれ、2つのガスの導入口と1つのガスの導出口を有していたが、これに限定されない。例えば、ガスの導入口を3つ以上有していてもよい。この場合、3つ以上の導入口の少なくとも2つにおける外側流域と内側流域とが衝突するようにすれば、導出管からの導出される混合ガスのダスト濃度のばらつきを低減することができる。
【0066】
上述のチャンバ20,22,24,26,28では、2つの導入口の形状及びサイズが同じであり、且つ、2つの導入口から導入される抽気ガスの流量(流速)が同一の前提で説明したが、これに限定されない。例えば、2つの導入口における抽気ガスの流速が互いに異なって衝突面(衝突部)の位置が変わっても、導出管からの導出される混合ガスのダスト濃度のばらつきを低減することができる。
【0067】
図18は、一実施形態に係るセメントクリンカ製造設備を示す図である。セメントクリンカ製造設備200は、セメント原料を予熱及び仮焼する予熱仮焼部70と、予熱及び仮焼されたセメント原料を焼成してセメントクリンカを得るセメントキルン50と、セメントキルン50で得られたセメントクリンカを冷却するクリンカクーラ80と、塩素バイパス設備100を備える。予熱仮焼部70は、4つのサイクロンC1,C2,C3,C4(プレヒータ)と仮焼炉72とを有する。
【0068】
セメントキルン50の窯尻52と予熱仮焼部70の仮焼炉72とは、ライジングダクト51で接続されている。ライジングダクト51と窯尻52の接続部近傍には、セメントキルン50で発生するキルン排ガスを抽気して、キルン排ガスに含まれるダストを回収する塩素バイパス設備100の抽気管12が接続されている。抽気管12には、その周面の周方向に沿うように冷却ガスを導入する冷却ガス導入部10が接続されている。セメントクリンカ製造設備200は、塩素バイパス設備100を備えることによって、セメントクリンカ製造設備200内の揮発成分を低減することができる。
【0069】
抽気管12で抽気された抽気ガスはチャンバ20に導入される。チャンバ20には、セメントキルン50とは別系統のセメントキルンの窯尻、ライジングダクト又はその接続部に接続される抽気管から抽気ガスが導入される。2つの抽気管12から導入される抽気ガスの温度及びダスト濃度等が異なっていても、チャンバ20からは、温度及びダスト濃度の変動が抑制された混合ガスが導出される。
【0070】
サイクロンC1とサイクロンC2との接続部から導入されるセメント原料は、サイクロンC1、サイクロンC2、サイクロンC3、ライジングダクト51、仮焼炉72、及びサイクロンC4を流通してセメントキルン50の窯尻52に導入される。セメントキルン50では、予熱及び仮焼されたセメント原料が、窯尻52とは反対側に設けられたバーナ54の燃焼によって加熱されセメントクリンカとなる。得られたセメントクリンカは、クリンカクーラ80で冷却される。クリンカクーラ80によって冷却された後、セメントクリンカが得られる。
【0071】
セメントクリンカ製造設備200は、チャンバ20を有する塩素バイパス設備100を備えることから、安定的に塩素バイパス設備100及びセメントクリンカ製造設備200を運転することができる。なお、本実施形態では、塩素バイパス設備100がチャンバ20を有しているが、チャンバ20の代わりに、チャンバ22,24,26,28又はその変形例を有していてもよい。また、ライジングダクト51又は窯尻52に2つの抽気管12を接続し、チャンバ20(22,24,26,28)によって、2つの抽気ガスを混合するようにしてもよい。また、チャンバ20に、直接冷却ガスを導入してもよい。
【0072】
一実施形態に係るセメントクリンカの製造方法は、セメントクリンカ製造設備200を用いて行うことができる。この製造方法は、予熱仮焼部70でセメント原料を予熱及び仮焼する予熱仮焼工程と、予熱及び仮焼されたセメント原料を、窯尻52からセメントキルン50に導入し、セメントクリンカを製造する焼成工程と、焼成工程で発生するキルン排ガスに含まれる揮発成分の少なくとも一部を塩素バイパス設備100でダストとして回収する回収工程と、を有する。また、焼成工程で得られたセメントクリンカを、クリンカクーラ80で冷却するクリンカ冷却工程を有してよい。
【0073】
予熱仮焼工程では、セメント原料がサイクロンC1とサイクロンC2の間の流路から導入される。セメント原料は、サイクロンC1、サイクロンC2及びサイクロンC3を流通して予熱される。その後、ライジングダクト51を経由して仮焼炉72に導入され、仮焼される。仮焼炉72には、石炭等の燃料を燃焼するバーナが設けられていてよい。仮焼炉72で仮焼されたセメント原料(仮焼原料)は、サイクロンC4に導入され加熱される。
【0074】
焼成工程では、サイクロンC4で加熱された仮焼原料が窯尻52に導入される。その後、セメントキルン50において焼成されセメントクリンカとなる。回収工程では、抽気管12において、キルン排ガスと冷却ガスとを混合して抽気ガスとする。この抽気ガスをチャンバ20に導入し、冷却ガスと混合する。また、チャンバ20では、抽気ガスに含まれるダストを回収する。このダストが原料ダストを含む場合、セメント原料として用いてもよい。
【0075】
チャンバ20でダストが除去された抽気ガスは、熱交換器25で冷却される。冷却に伴って生じるダストを含む抽気ガスは、集塵器27に導入され、ダストが塩素バイパスダストとして回収される。このように回収工程でチャンバ20を用いていることから、チャンバ20の下流側に流出する抽気ガス(混合ガス)の温度及び性状の変動を抑制できる。したがって、熱交換器25及び集塵器27の負荷変動が抑制され、各工程を安定的に運転することができる。
【0076】
上述の塩素バイパス設備100及びセメントクリンカ製造設備200に関する説明内容は、上記製造方法にも適用される。
【0077】
以上、本開示の幾つかの実施形態について説明したが、本開示は上記実施形態に何ら限定されるものではなく、各実施形態及び各変形例の各構成を組み合わせてもよいし、入れ替えてもよい。チャンバの本体部の形状は、立方体又は直方体の形状に限定されず、例えば、円柱状、五角柱状、又は四角錐状であってよい。また、ダスト排出口を、本体部の下部に形成された下方に向かって細くなるすり鉢部分の下端に設けてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0078】
本開示によれば、塩素バイパス設備の運転を安定化することが可能なチャンバを提供することができる。また、そのようなチャンバを備えることによって、安定的に運転することが可能な塩素バイパス設備及びセメントクリンカ製造設備を提供することができる。また、安定的にセメントクリンカを製造することが可能なセメントクリンカの製造方法を提供することができる。
【符号の説明】
【0079】
10…冷却ガス導入部、12…抽気管、14…導入ファン、20,22,24,26,28…チャンバ、25…熱交換器、27…集塵器、29…吸引ファン、31,32,33,34,36,38…導入管、31A,32A,33A,34A,36A,38A…導入口、31C,32C,33C,34C,36C,38C…屈曲部、40…本体部、40a,40b,40c,40d,40e,40f…面、45…導出管、45B…導出口、50…セメントキルン、51…ライジングダクト、52…窯尻、54…バーナ、61,62…抽気ガス、64…混合ガス、70…予熱仮焼部、72…仮焼炉、80…クリンカクーラ、100…塩素バイパス設備、200…セメントクリンカ製造設備、VD,VD,VD,VD…境界面、VL,VL,VL,VL,VL,VL…仮想流路,LD,LD,LD…均分線。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18