(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-03
(45)【発行日】2024-06-11
(54)【発明の名称】容器詰食用油及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
A23D 9/00 20060101AFI20240604BHJP
A23D 9/06 20060101ALI20240604BHJP
B65D 77/04 20060101ALI20240604BHJP
【FI】
A23D9/00
A23D9/06
B65D77/04 A
(21)【出願番号】P 2022151286
(22)【出願日】2022-09-22
(62)【分割の表示】P 2017199082の分割
【原出願日】2017-10-13
【審査請求日】2022-10-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000004189
【氏名又は名称】株式会社ニッスイ
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100188374
【氏名又は名称】一宮 維幸
(72)【発明者】
【氏名】坂本 紘子
【審査官】戸来 幸男
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-123295(JP,A)
【文献】特開2016-084420(JP,A)
【文献】特開2003-313578(JP,A)
【文献】最近話題の「オメガ3」、「中鎖脂肪酸」が入った食用油を新発売 ◆家庭用食用油 新商品/リニューアルのご案内◆ ~2015年2月23日(月)より全国で発売開始~,2015年01月15日,pp.1-4
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23D 7/00-9/06
FSTA/CAplus/AGRICOLA/BIOSIS/
MEDLINE/EMBASE(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
Google
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
逆止弁付き容器と、
前記逆止弁付き容器に収容され、生物油に由来するn-3系多価不飽和脂肪酸含有油及び植物油を混合して得られ、かつ、過酸化物価(POV)が
4.5meq/kg以下である油組成物と、
を含む容器詰食用油
であって、
逆止弁付き容器が遮光型容器であり、
n-3系多価不飽和脂肪酸含有油の過酸化物価(POV)が1.0meq/kg以下であり、
n-3系多価不飽和脂肪酸含有油が、脱臭処理済み油であり、
n-3系多価不飽和脂肪酸含有油における飽和脂肪酸の含有率が、全脂肪酸の全重量に対して30重量%以下である、容器詰食用油。
【請求項2】
n-3系多価不飽和脂肪酸含有油の過酸化物価(POV)が
0.8meq/kg以下である請求項1記載の容器詰食用油。
【請求項3】
逆止弁付き容器が
着色遮光型容器である請求項1または請求項2記載の容器詰食用油。
【請求項4】
n-3系多価不飽和脂肪酸含有油における飽和脂肪酸の含有率が、全脂肪酸の全重量に対して
20重量%以下である請求項1~
3のいずれか一項に記載の容器詰食用油。
【請求項5】
過酸化物価(POV)が1.0meq/kg以下であり、脱臭処理を含む精製処理後の、生物油に由来するn-3系多価不飽和脂肪酸含有油を用意すること、
用意されたn-3系多価不飽和脂肪酸含有油と植物油とを混合して、油組成物を得ること、
前記油組成物を、逆止弁付き容器に充填すること、
を含む容器詰食用油の製造方法であって、
逆止弁付き容器に充填された油組成物のPOVが
4.5meq/kg以下であ
り、
逆止弁付き容器が遮光型容器であり、
n-3系多価不飽和脂肪酸含有油における飽和脂肪酸の含有率が、全脂肪酸の全重量に対して30重量%以下である、製造方法。
【請求項6】
前記生物油が、魚油及び微生物油からなる群より選択される少なくとも1種の生物油である請求項
5記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、容器詰食用油及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ドコサヘキサエン酸(DHA)等の多価不飽和脂肪酸に代表される機能性成分を多く含む生物油、例えば魚油又は微生物油は、これらの機能性成分を効率よく摂取することができる観点から注目され、食用油として広く活用されている。その一方で、近年、消費者の食品に対する嗜好性が高まってきており、味、機能性だけでなく、香りに対する要求も高まっている。
【0003】
多価不飽和脂肪酸は酸化などによって劣化しやすく、また、劣化に伴って特有の臭いが発生することが知られている。このため、魚油等の酸化臭を低減させる技術が種々提案されている。
【0004】
例えば、特許文献1には、シソ科、フトモモ科、クスノキ科の香辛料及びそれらの抽出物からなる群より選択される少なくとも2種を配合してなることを特徴とするドコサヘキサエン酸、エイコサペンタエン酸、又はこれらを含む魚油用抗酸化矯臭剤が記載されている。
特許文献2には、DHA油に所定量のレモン油を添加することで、加熱時におけるDHA油の酸化を防止し、DHA油自体の有する臭気(魚臭)をマスキングした食用油が記載されている。
特許文献3には、魚の頭部を所定の処理に供して得られた抽出物を液部と固形分とに分離し、液分を静置して上澄みとして回収した魚油に、オリーブオイル及びゴマ油を配合してなることを特徴とする食用油が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開平7-236418号公報
【文献】特開平8-275728号公報
【文献】特開2009-291164号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、食用油の酸化を抑制して酸化臭を低減させても、供給源となる生物特有の臭いを完全に抑制することが困難であり、保存の間に臭いの不快感が増すことがわかった。供給源に由来する臭い、例えば魚特有の生臭さは、風味の点で商品価値を下げることがある。このため、風味の点で消費者の食用油に対する高い要求を満たすには改良の余地がある。
【0007】
従って、本開示の目的は、良好な風味を備えた容器詰食用油及びその製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示は以下を含む。
[1] 逆止弁付き容器と、前記逆止弁付き容器に収容され、魚油及び微生物油からなる群より選択される少なくとも1種の生物油に由来するn-3系多価不飽和脂肪酸含有油並びに植物油を混合して得られた油組成物と、を含む容器詰食用油。
[2] 油組成物の溶存酸素量が11mg/L以下である[1]に記載の容器詰食用油。
[3] n-3系多価不飽和脂肪酸含有油の過酸化物価(POV)が1.0meq/kg以下である[1]又は[2]に記載の容器詰食用油。
[4] 逆止弁付き容器が遮光型容器である[1]~[3]のいずれかに記載の容器詰食用油。
[5] n-3系多価不飽和脂肪酸含有油が、脱臭処理済み油である[1]~[4]のいずれかに記載の容器詰食用油。
[6] n-3系多価不飽和脂肪酸含有油における飽和脂肪酸の含有率が、全脂肪酸の全重量に対して30重量%以下である[1]~[5]のいずれかに記載の容器詰食用油。
[7] 逆止弁付き容器と、前記逆止弁付き容器に収容され、生物油に由来するn-3系多価不飽和脂肪酸含有油及び植物油を混合して得られ、かつ、過酸化物価(POV)が19.0meq/kg以下である油組成物と、を含む容器詰食用油。
[8] 過酸化物価(POV)が1.0meq/kg以下であり、脱臭処理を含む精製処理後の、生物油に由来するn-3系多価不飽和脂肪酸含有油を用意すること、用意されたn-3系多価不飽和脂肪酸含有油と植物油とを混合して、油組成物を得ること、前記油組成物を、逆止弁付き容器に充填すること、を含む容器詰食用油の製造方法。
[9] 逆止弁付き容器に充填する前の油組成物に窒素を供給して、溶存酸素量が11mg/L以下である油組成物を得ることを含む[8]に記載の製造方法。
[10] 前記生物油が、魚油及び微生物油からなる群より選択される少なくとも1種である[8]又は[9]に記載の製造方法。
[11] 逆止弁付き容器に充填された油組成物のPOVが19.0meq/kg以下である[8]~[10]のいずれかに記載の容器詰食用油の製造方法。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、良好な風味を備えた容器詰食用油及びその製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、一実施形態に係る容器詰食用油の概略断面図であって、本体と内層体とが近接した状態から離間した状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本開示における容器詰食用油は、逆止弁付き容器と、前記逆止弁付き容器に収容され、魚油及び微生物油からなる群より選択される少なくとも1種の生物油に由来するn-3系多価不飽和脂肪酸含有油並びに植物油を混合して得られた油組成物と、を含む容器詰食用油である。以下、第一の容器詰食用油と称する場合がある。
本開示における他の容器詰食用油は、逆止弁付き容器と、前記逆止弁付き容器に収容され、生物油に由来するn-3系多価不飽和脂肪酸含有油及び植物油を混合して得られ、かつ、過酸化物価(POV)が19.0meq/kg以下である油組成物と、を含む容器詰食用油である。以下、第二の容器詰食用油と称する場合がある。
本開示における容器詰食用油の製造方法は、過酸化物価(POV)が1.0meq/kg以下であり、かつ脱臭処理を含む精製処理後の、生物油に由来するn-3系多価不飽和脂肪酸含有油を用意すること、用意されたn-3系多価不飽和脂肪酸含有油と植物油とを混合して、油組成物を得ること、前記油組成物を、逆止弁付き容器に充填すること、を含む容器詰食用油の製造方法である。
【0012】
第一及び第二の容器詰食用油は、上記構成とすることにより、n-3系多価不飽和脂肪酸含有油の供給源に由来する特有の臭いが抑制された良好な風味を有することができる。
本容器詰食用油の製造方法は、上記構成とすることにより、供給源に由来する特有の臭
いが抑制された良好な風味を有する容器詰食用油を、効率よく得ることができる。
なお、本開示において、第一及び第二の容器詰食用油を区別なく指し示す場合には、単に「容器詰食用油」と称する。
【0013】
更に詳細に説明すれば、食用油の風味を損ない得る供給源に特有の臭いには、食用油に含まれる多価不飽和脂肪酸の酸化による酸化臭だけでなく、それ以外の臭いも存在すること、及び、酸化臭以外の臭いが、保存中に不快感を増大させることがわかった。本開示に係る容器詰食用油は、酸化に起因しない供給源特有の臭いを効果的かつ安定的に抑制することができる。この結果、n-3系多価不飽和脂肪酸含有油を含む容器詰食用油であっても、良好な風味を安定して備えることができる。
【0014】
酸化臭以外の供給源に特有の臭いの発生の機構については不明であり、本容器詰食用油による臭いの抑制作用についても充分に解明されていない。本明細書では、保存後の容器詰食用油において、供給源に特有の臭いが不快と感じない又はやや不快であるが問題にならない程度であることを、「臭いが抑制される」などと表現する。
【0015】
本明細書における「n-3系多価不飽和脂肪酸含有油の供給源に由来する特有の臭い」等との表現における「特有の臭い」とは、供給源の種類に依存した不快と感じる臭いを意味する。例えば、魚類を供給源とした場合には魚に特有の生臭さに代表される臭い、微生物を供給源とした場合には、培地の臭いに代表される微生物に特有の不快な臭いが挙げられる。
【0016】
用語「油」又は「油脂」とは、本明細書では、トリグリセリドのみを含む油と、トリグリセリドを主成分とし、ジグリセリド、モノグリセリド、リン脂質、コレステロール、遊離脂肪酸等の他の脂質が含まれている油も含む。「油」又は「油脂」は、これらの脂質を含む組成物を意味する。
【0017】
用語「脂肪酸」には、遊離の飽和若しくは不飽和脂肪酸それら自体だけでなく、遊離の飽和若しくは不飽和脂肪酸、飽和若しくは不飽和脂肪酸アルキルエステル、トリグリセリド、ジグリセリド、モノグリセリド、リン脂質、ステリルエステル等中に含まれる構成単位としての脂肪酸も含まれ、構成脂肪酸とも言い換えられ得る。本明細書において、特に断らない限り、又は特に示さない限り、存在する若しくは使用する脂肪酸に関して言及する場合、如何なる形態の脂肪酸含有化合物の存在又は使用も含まれる。脂肪酸を含む化合物の形態としては、遊離脂肪酸形態、脂肪酸アルキルエステル形態、グリセリルエステル形態、リン脂質の形態、ステリルエステル形態等を挙げることができる。ある脂肪酸が特定された場合、ひとつの形態で存在してもよく、2つ以上の形態の混合物として存在してもよい。
【0018】
脂肪酸を表記する際に、炭素数、二重結合の数及び二重結合の場所を、それぞれ数字とアルファベットを用いて簡略的に表した表現を用いることがある。例えば、炭素数20の飽和脂肪酸は「C20:0」と表記され、炭素数18の一価不飽和脂肪酸は「C18:1」等と表記され、ドコサヘキサエン酸(DHA)は「C22:6,n-3」等と表記される。ここで、「n-3」はω-3としても表記されるが、これは、最後の炭素(ω)からカルボキシに向かって数えたときの最初の二重結合の結合位置が3番目であることを示す。この方法は当業者には周知であり、この方法に従って表記された脂肪酸については、当業者であれば容易に特定することができる。脂肪酸の炭素数は、構成脂肪酸の炭素数を意味する。
【0019】
本明細書において組成物中の脂肪酸の含有率は、特に断らない限り、脂肪酸組成に基づいて決定する。脂肪酸組成は、常法に従って求めることができる。具体的には、測定対象
となる組成物中の脂肪酸が脂肪酸低級アルキルエステル以外の場合には、測定対象となる脂肪酸を、低級アルコールと触媒を用いてエステル化して得た脂肪酸低級アルキルエステルを用いる。測定対象となる組成物中の脂肪酸が脂肪酸低級アルキルエステルの場合には、測定対象の脂肪酸をそのまま用いる。次いで、得られた脂肪酸低級アルキルエステルを試料として、ガスクロマトグラフィーを用いて分析する。得られたガスクロマトグラフィーのチャートにおいて各脂肪酸に相当するピークを同定し、Agilent ChemStation積分ア
ルゴリズム(リビジョンC.01.03[37]、Agilent Technologies)を用いて、各脂肪酸のピ
ーク面積を求める。ピーク面積とは、各種脂肪酸を構成成分とする油脂をガスクロマトグラフィー、薄層クロマトグラフィー/水素炎イオン化検出器(TLC/FID)等を用いて分析したチャートのそれぞれの成分のピーク面積の全ピーク面積に対する割合(面積%)であり、そのピークの成分の含有比率を示すものである。上述の測定方法により得られた面積%による値は、試料中の脂肪酸の合計重量に対する各脂肪酸の重量%による値と同一として互換可能に使用できる。日本油化学会(JOCS)制定 基準油脂分析試験法 2013版 2.4.2.1-2013 脂肪酸組成(FID恒温ガスクロマトグラフ法)及び、同2.4.2.2-2013 脂肪酸組成(FID昇温ガスクロマトグラフ法)
を参照のこと。本明細書では、便宜上「重量%」として表記する。
【0020】
本明細書において「工程」との語は、独立した工程だけではなく、他の工程と明確に区別できない場合であってもその工程の所期の作用が達成されれば、本用語に含まれる。
また本明細書において数値範囲を示す「~」は、その前後に記載される数値をそれぞれ最小値および最大値として含む範囲を示すものとする。
【0021】
本明細書において組成物中の各成分の量は、組成物中に各成分に該当する物質が複数存在する場合、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数の物質の合計量を意味する。本明細書において、パーセントに関して「以下」又は「未満」との用語は、下限値を特に記載しない限り、0%又は、現状の手段では検出不可の値を含む範囲を意味する。
【0022】
[容器詰食用油]
第一の容器詰食用油は、逆止弁付き容器と、前記逆止弁付き容器に収容され、魚油及び微生物油からなる群より選択される少なくとも1種の生物油に由来するn-3系多価不飽和脂肪酸含有油並びに植物油を混合して得られた油組成物と、を含む容器詰食用油である。
以下に、本開示に係る第一の容器詰食用油について、図面を用いて説明する。
図1には、一実施形態に係る容器詰食用油10の、本体14と内層体16とが近接した状態から離間した状態が示されている。容器詰食用油10は、逆止弁付き容器12と、逆止弁付き容器12の内部の内層体16に収容された油組成物26とを有している。
【0023】
<逆止弁付き容器>
逆止弁付き容器12は、略有底円筒状の本体14と、本体14の内部に収容された内層体16とを備えている。本体14及び内層体16の材質については、特に制限はなく、通常、この用途に用いられる材質、構造等を備えているものであればよい。例えば、本体14は、ポリエチレン樹脂又はポリプロピレン樹脂で構成され、内層体16は、本体14に対して相溶性のないポリアミド系樹脂又はエチレンビニルアルコール共重合体で構成されている。
【0024】
本体14は、いわゆるデラミボトルであり、内層体16を収容した二重構造となっている。
本体14は、内層体16の内部の収容空間18に油組成物26を充填するための、又は収容空間18に充填された油組成物26を排出するための開口部15を備えており、開口部15の周辺で本体14と内層体16の開口部20とが一体化されている。本体14の開
口部15には、蓋部22が、ネジ構造によって着脱自在に装着されている。
【0025】
蓋部22は、開口部20に装着されたときに、内層体16の開口部20を封止可能な位置に逆止弁24を備えている。逆止弁24の一端は、内部の圧力に応じて開閉可能な状態で蓋部22に設けられている。逆止弁24は、本体14内部から外側へ開放して油組成物26を排出可能とし、その際に、外側から空気等の侵入を抑止する逆止機構となっている。逆止弁24は、内層体16の内側から開口部20を介して外側へ圧力が付加されていないときは、開口部20を閉止状態に維持する。
【0026】
内層体16は、本体14と同様に、全体が有底円筒状を有し、本体14とほぼ同じ大きさのボトル形状から構成されている。内層体16は、油組成物26が満充填された状態であって、蓋部22の逆止弁24によって空気が侵入しない状態が維持されている。このように油組成物26が満充填しているときは、逆止弁付き容器12内の収容空間18において、本体14と内層体16とが接触した状態となる(実線で示す)。
【0027】
収容空間18内の油組成物26を排出するときに本体14が押圧されると、本体14と共に内層体16が押しつぶされる(
図1、矢印方向)。内層体16が押しつぶされることによって、収容空間18内の油組成物26が、逆止弁24を内側から押し開け、開口部20から外側へ排出される。本体14へ付加された圧力が解除されると、開口部20からの油組成物26の排出が停止し、これに伴い逆止弁24が閉止状態となる。このとき空気が侵入しないため、内層体16が押しつぶされた状態のまま、排出後の残された油組成物26が満たされた状態となる(破線で示す)。本体14は、圧力の解除と共に元の形状に復帰することに伴い、内層体16は本体14から更に離間し、内層体16と本体14との間の空間が生じる。
【0028】
逆止弁付き容器12の形状については、油組成物26を収容し、開口部20から排出が可能であれば特に制限はない。逆止弁24は、油組成物26を排出するときに開口部20を開放状態とし、また、非排出時には閉止状態とすることができれば、形状、材質等に特に制限はない。逆止弁付き容器12は、開口部20に逆止弁24を有することにより、開口部20から収容空間18に空気等が侵入することを抑制することができる。
【0029】
逆止弁付き容器12は、遮光型容器であってよい。遮光型容器とすることによって、収容空間18内における油組成物26の光劣化を抑制することができる。遮光型容器は、紫外光、可視光、赤外光などの光が収容空間18内に透過することを抑制可能であればよい。例えば、本体14の周囲に遮光フィルムを有する遮光フィルム付き容器、本体14及び内層体16の少なくとも一方が光反射剤又は光吸収剤を含む遮光容器、本体14及び内層体16の少なくとも一方が着色されている着色容器等を挙げることができる。なお、遮光フィルム又は遮光容器は、着色フィルム又は着色遮光容器であってもよい。
【0030】
次に、油組成物26について、以下に説明する。なお、以下では符号を省略して説明する。
<油組成物>
油組成物は、魚油及び微生物油からなる群より選択される少なくとも1種の生物油に由来するn-3系多価不飽和脂肪酸含有油と、植物油とを混合して得られたものである。本開示では、魚油及び微生物油からなる群より選択される少なくとも1種の生物油に由来するn-3系多価不飽和脂肪酸含有油を、単に「(n-3)PUFA含有油」と称する場合がある。
【0031】
本明細書におけるn-3系多価不飽和脂肪酸とは、炭素数が20以上かつ二価以上のn-3系多価不飽和脂肪酸を意味する。(n-3)PUFA含有油に含まれるn-3系多価
不飽和脂肪酸は、炭素数20以上かつ三価以上のn-3系多価不飽和脂肪酸を含むことができ、例えば、炭素数20以上22以下のn-3系多価不飽和脂肪酸を挙げることができる。n-3系多価不飽和脂肪酸としては、具体的には、エイコサテトラエン酸(ETA)(C20:4,n-3)、エイコサペンタエン酸(EPA)(C20:5,n-3)、ドコサペンタエン酸(DPAn-3)(C22:5,n-3)、ドコサヘキサエン酸(DHA)(C22:6,n-3)等を挙げることができ、これらを単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0032】
(n-3)PUFA含有油は、所望される機能性の点で、DHA、EPA又はこれらの組み合わせを含むことが好ましい。(n-3)PUFA含有油がDHA、EPA又はこれらの組み合わせを含む場合、(n-3)PUFA含有油は、他のn-3系多価不飽和脂肪酸及び他の多価不飽和脂肪酸からなる群より選択された少なくとも1種を更に含むものであってもよい。
【0033】
(n-3)PUFA含有油は、魚油及び微生物油からなる群より選択される少なくとも1種の生物油に由来する。魚油及び微生物油は、n-3系多価不飽和脂肪酸を高含有率で含み得る。生物油とは、バイオマスを起源として得られたもの意味する。生物油は、遺伝子組換え体に由来する生物油であってもよい。「バイオマス」という用語は、所定の領域又は生態系で成長した所定の時点の個体、細胞の集合物又は塊を指す。(n-3)PUFA含有油は、魚油及び微生物油に加えて、後述する甲殻類、又は海産動物に由来する水産物原料油を含むものであってもよい。
【0034】
魚油としては、魚類に含まれる油脂、リン脂質、ワックスエステルなどを含む脂質が例示される。魚油としては、ニシン(herring)、イワシ(sardine)、カタクチイワシ(anchovy)、メンヘーデン(menhaden)、ピルチャード(pilchard)、サンマ(saury)、マグロ(tuna)、カツオ(bonito)、メルルーサ(hake)、ナマズ(catfish)、カラフト
シシャモ(capelin)、タイセイヨウアカウオ(red fish)、ホワイトフィッシュ(white
fish)、サバ(mackerel)、アジ(jack mackerel)、ブリ(yellowtail)、イカナゴ(sand eel)、ビブ(pout)、サケ(salmon)、ポラック(pollock)、タラ(cod)、オヒョウ(halibut)、マス(trout)、ブルーホワイトニング(blue whitening)、スプラットイワシ(sprat)、サメ(shark)、ドッグフィッシュ(dogfish)等の魚類由来の油、及
びこれらの油の混合物である。
【0035】
微生物油としては、微生物に含まれる油脂、リン脂質、ワックスエステルなどを含む脂質が例示される。微生物としては、脂質生産微生物又は脂質生産可能微生物であればよく、藻類(algae)、真菌、細菌類(bacteria)、菌類(fungi)及びストラメノパイルを挙げることができる。
藻類としては、ラビリンチュラ(Labyrinthulamycota)属、スラウストキトリウム(Thraustochytrium)属等を挙げることができる。
真菌としては、ヤロウィア属、カンジダ属、サッカロミセス属、シゾサッカロミセス属、ピキア属等を挙げることができる。
細菌類としては、アグロバクテリウム(Agrobacterium)、バチルス(Bacillus)、エ
スシェリキア(Escherichia)、シュードモーナス(Pseudomonas)、放線菌(Actinomyces)等を挙げることができる。
【0036】
菌類としては、モルティエレラ(Mortierella)属、コニディオボラス(Conidiobolus
)属、フィチウム(Pythium)属、フィトフトラ(Phytophthora)属、ペニシリューム(Penicillium)属、クラドスポリューム(Cladosporium)属、ムコール(Mucor)属、フザ
リューム(Fusarium)属、アスペルギルス(Aspergillus)属、ロードトルラ(Rhodotorula)属、エントモフトラ(Entomophthora)属、エキノスポランジウム(Echinosporangiu
m)属、及びサプロレグニア(Saprolegnia)属からなる群より選択される少なくとも1種を挙げることができる。なかでも、モルティエレラ(Mortierella)属に属する微生物が
更に好ましい。モルティエレラ属に属する微生物としては、例えば、モルティエレラ・エロンガタ(Mortierella elongata) 、モルティエレラ・エキシグア(Mortierella exigua) 、モルティエレラ・ヒグロフィラ(Mortierella hygrophila) 、モルティエレラ・アルピナ(Mortierella alpina)等のモルティエレラ亜属に属する微生物を挙げることができる。
【0037】
(n-3)PUFA含有油におけるn-3系多価不飽和脂肪酸は、遊離脂肪酸形態、脂肪酸エチルエステル、脂肪酸メチルエステル等の脂肪酸アルキルエステル形態、トリグリセリド、ジグリセリド、モノグリセリド等のグリセリルエステル形態、リン脂質の形態、ステリルエステル形態などとして、(n-3)PUFA含有油中に存在していてもよい。
【0038】
(n-3)PUFA含有油におけるn-3系多価不飽和脂肪酸の含有率は、n-3系多価不飽和脂肪酸が有する機能による利益を効率よく得る観点から、(n-3)PUFA含有油の全脂肪酸の全重量に対して、30重量%以上、40重量%以上、50重量%以上、60重量%以上、70重量%以上、80重量%以上、85重量%以上、90重量%以上、95重量%以上、又は98重量%以上とすることができる。(n-3)PUFA含有油におけるn-3系多価不飽和脂肪酸の含有比率が高いほど、臭い抑制効果による利益が大きくなる。
【0039】
(n-3)PUFA含有油における飽和脂肪酸の含有率は、容器詰食用油の製造工程及び流通時、保管時の沈殿物の発生抑制、にごり防止等の観点から、(n-3)PUFA含有油における全脂肪酸の全重量に対して、30重量%以下、20重量%以下、15重量%以下、10重量%以下、5重量%以下、又は2重量%以下とすることができる。(n-3)PUFA含有油における飽和脂肪酸の含有比率が低いほど、沈殿物の発生が抑制されて製品間における又は使用時におけるPUFA含有量のばらつきを少なくすることができ、また、容器詰食用油のにごりが抑制されて良好な外観が維持できる。
【0040】
(n-3)PUFA含有油における炭素数18以下の飽和又は不飽和脂肪酸の含有率は、沈殿物の発生抑制、にごりの抑制等の観点から、(n-3)PUFA含有油における全脂肪酸の全重量に対して、60重量%以下、50重量%以下、40重量%以下、30重量%以下、20重量%以下、15重量%以下、10重量%以下、5重量%以下、又は2重量%以下とすることができる。(n-3)PUFA含有油における飽和脂肪酸の含有比率が低いほど、製品間における又は使用時におけるPUFA含有量のばらつきを少なくすることができ、また、容器詰食用油のにごりが抑制されて良好な外観が維持できる。
【0041】
(n-3)PUFA含有油の過酸化物価(POV)は、1.0meq/kg以下であってもよい。POVが1.0meq/kg以下の低POV-PUFA含有油とすることによって、n-3系多価不飽和脂肪酸含有油の供給源に特有の臭いを、よりいっそう抑制し、安定的に維持することができる。(n-3)PUFA含有油のPOVは、臭い抑制効果の持続性の観点から、0.8meq/kg以下であることが好ましく、0.5meq/kg以下であることがより好ましい。POVは、日本油化学会(JOCS)制定 基準油脂分析試験法 2013版 2.5.2.1に従って決定する。POVが1.0meq/kg以下である(n-3)PUFA含有油は、少なくとも脱臭処理を含む所定の精製処理によって得ることができる。下限値については特に制限はなく、例えばこの測定方法における検出限界値であってもよい。
【0042】
(n-3)PUFA含有油は、臭い抑制効果の持続性の点で、脱臭処理済み油であることが好ましい。脱臭処理済み油であることは、脱臭処理済み油は官能評価によって臭いが
抑制されていることによって、又は市販品の場合には製品情報に基づいて、確認することができる。
【0043】
油組成物には植物油が含まれる。本明細書における植物油とは、起源を植物とするものであって、炭素数20以上の多価不飽和脂肪酸を含まないものを意味する。「炭素数20以上の多価不飽和脂肪酸を含まない」とは、植物油における炭素数20以上の不飽和脂肪酸の含有率が、例えば0.01重量%以下、又は測定機器の測定限界以下であることを意味する。
植物油としては、具体的には、起源を植物とするものであれば特に制限はなく、具体的には、大豆油、菜種油、綿実油、サフラワー油、ヒマワリ油、米油、コーン油、落花生油、紅花油、ヤシ油、パーム油、オリーブ油、亜麻仁油、ナッツ油、ココナッツ油、カメリア油、エゴマ油、ゴマ油、及び太白ゴマ油からなる群より選択される少なくとも1種を用いることができる。植物油の中でも、臭い抑制効果の持続性の点で、オリーブ油、ゴマ油、エゴマ油、及び太白ゴマ油からなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましく、特有の臭いを強く発する傾向にあるオリーブ油、ゴマ油及び太白ゴマ油からなる群より選択される少なくとも1種であることがより好ましい。
植物油は、いずれの採取方法で得られた植物油であってもよい。
【0044】
油組成物における(n-3)PUFA含有油の含有率は、所望される機能性の点で、油組成物の全重量に対して1重量%以上であることが好ましく、5重量%以上であることがより好ましく、10重量%以上であることが更に好ましい。油組成物における(n-3)PUFA含有油の含有率は、脂肪酸組成に基づいて、又は製品説明書中の配合量等に基づいて確認することができる。
【0045】
油組成物におけるn-3系多価不飽和脂肪酸の含有率は、n-3系多価不飽和脂肪酸に期待される機能性の発揮の観点から、油組成物の全重量に対する下限値として0.5重量%以上、1重量%以上、5重量%以上とすることができ、一方、油組成物の全重量に対する上限値として99重量%以下、95重量%以下、90重量%以下、80重量%以下、75重量%以下、60重量%以下、50重量%以下、40重量%以下、35重量%以下とすることができる。これらの上限値及び下限値は、(n-3)PUFA含有油中に含まれるn-3系多価不飽和脂肪酸の種類及び配合比等に基づいて、上述した範囲で適宜組み合わせることができる。
【0046】
例えば、(n-3)PUFA含有油に含まれるn-3系多価不飽和脂肪酸として、DHA、EPA又はこれらの組み合わせを用いる場合、油組成物全重量に対して、DHA及びEPAを単独で又は組み合わせの合計として、0.25重量%~50重量%、1重量%~40重量%、2重量%~35重量%、又は5重量%~20重量%とすることができる。
【0047】
油組成物における植物油の含有率は、n-3系多価不飽和脂肪酸の供給源特有の臭い抑制効果の観点から、油組成物の全重量に対する下限値として1重量%以上、5重量%以上、10重量%以上とすることができ、一方、油組成物の全重量に対する上限値として99.5重量%以下、99重量%以下、95重量%以下、90重量%以下とすることができる。これらの上限値及び下限値は、(n-3)PUFA含有油中に含まれるn-3系多価不飽和脂肪酸の種類及び配合比等に基づいて、上述した範囲で適宜組み合わせることができる。
【0048】
油組成物は、(n-3)PUFA含有油と植物油とを混合して得られたものである。
油組成物における、(n-3)PUFA含有油と植物油との含有比率は、重量比で1:99~80:20であることが好ましく、5:95~65:35であることがより好ましく、10:90~50:50であることが更に好ましい。n-3系多価不飽和脂肪酸含有
油と植物油との含有比率がこの範囲内であれば、臭いの抑制効果を安定して持続させることができる。油組成物を得るための(n-3)PUFA含有油と植物由との混合方法については、特に制限はない。
【0049】
油組成物の溶存酸素量は、臭い抑制効果の持続性の点で、11mg/L以下であることが好ましく、10mg/L以下であることがより好ましく、9mg/L以下であることがより好ましい。溶存酸素量は、ポータブルマルチメーター「HQ40d」(HACH社製)を用い、品温25℃で測定した値とする。
【0050】
油組成物は、追加の配合成分として香料を含むことができる。例えば、植物油としてゴマ油を使用し、逆止弁付き容器として非遮光型容器を用いる場合に、供給源に由来する臭いの低減効果の持続性の点で、特に好ましい。
油組成物に添加可能な香料には、バジル、ローズマリー、ディル、タイム、セージ、クミン、キャラウェイ、オレガノ、ラベンダー等のハーブ;レモン等の柑橘類;ニンニク、ネギ、シソ、ショウガ、トウガラシ、胡椒、ナツメグ等の香辛料抽出物又は香料などを挙げることができる。
【0051】
油組成物中の香料の含有率は、特に制限はなく、所望の香りづけの観点から適宜設定することができ、例えば、油組成物中の香料の含有率は、油組成物の全重量に対して0.1重量%以上、0.5重量%以上、又は1.0重量%以上とすることができる。
特有の香りを有する植物油、例えばゴマ油等を用いる場合には、植物油と組み合わせる香料の含有率を適宜変更することができる。例えば、植物油としてゴマ油のみを用いる場合には、ゴマ油由来の香りが付与されるため、香料を特に含まなくてもよく、含む場合には、(n-3)PUFA含有油と香料との含有比率、すなわち(n-3)PUFA含有油:香料として、重量比で10:0.002~10:0.3とすることができる。植物油としてゴマ油とゴマ油以外の植物油とを混合したゴマ油の含有率が例えば50質量%までの混合植物油の場合、又はゴマ油以外の植物油のみを用いる場合には、(n-3)PUFA含有油:香料は、重量比で10:0.1~10:0.5であることが好ましい。(n-3)PUFA含有油と香料との含有比率がこの範囲内であれば、香料特有の味又は香りを適度に付与して食味を向上させるという利点が得られ得る。
【0052】
油組成物は、風味の観点から、例えば、以下の配合成分の組み合わせを含むことができる:
(i)EPA及びDHAの少なくとも一方を含む(n-3)PUFA含有油と、オリーブ油;
(ii)EPA及びDHAの少なくとも一方を含む(n-3)PUFA含有油と、ゴマ油;
(iii)EPA及びDHAの少なくとも一方を含む(n-3)PUFA含有油と、オリ
ーブ油及びゴマ油;
(iv)EPA及びDHAの少なくとも一方を含む(n-3)PUFA含有油と、オリーブ油と、香料;
(v)EPA及びDHAの少なくとも一方を含む(n-3)PUFA含有油と、ゴマ油と、香料;又は、
(vi)EPA及びDHAの少なくとも一方を含む(n-3)PUFA含有油と、オリーブ油及びゴマ油と、香料。
【0053】
(i)~(iv)の油組成物では、風味の観点から、EPA及びDHAの少なくとも一方を含む(n-3)PUFA含有油と、オリーブ油と、ゴマ油との含有比率、すなわち、EPA及びDHAの少なくとも一方を含む(n-3)PUFA含有油:オリーブ油:ゴマ油の配合成分比を、例えば、重量比で以下のようにすることができる:
(i-1)80:20:0
(i-2)35:65:0
(i-3)20:80:0
(i-4) 1:99:0
(ii-1)80:0:20
(ii-2)35:0:65
(ii-3)20:0:80
(ii-4) 1:0:99
(iii-1)35:30:35
(iii-2) 1:40:59。
【0054】
容器詰食用油は、風味の観点から、例えば、以下の組み合わせとすることが好ましい:
(I)上記(i)、(iii)~(vi)のいずれかの油組成物と、非遮光型容器;
(II)上記(i)~(vi)のいずれかの油組成物と、遮光フィルム付き容器;
(III)上記(i)~(vi)のいずれかの油組成物と、遮光容器;又は、
(IV)上記(i)~(vi)のいずれかの油組成物と、着色容器。
なかでも、(II)~(IV)の容器詰食用油であることが好ましい。
【0055】
油組成物は、(n-3)PUFA含有油及び植物油の機能又は本開示に係る容器詰食用油の機能を損わない範囲で、追加の配合成分を含むことができる。追加可能な他の配合成分としては、アスコルビン酸パルミテート、ゴマ油残渣抽出物等の酸化防止剤;甘味料;pH調整剤;増粘剤;乳化剤;醤油、味噌等の各種調味料;香味食材又は各種野菜のおろし、ペースト状物、裁断物等の具材の粉砕物などを挙げることができる。
【0056】
次に、第二の容器詰食用油について説明する。
第二の容器詰食用油は、逆止弁付き容器と、前記逆止弁付き容器に収容され、生物油に由来するn-3系多価不飽和脂肪酸含有油及び植物油を混合して得られ、かつ、過酸化物価(POV)が19.0meq/kg以下である油組成物と、を含む容器詰食用油である。
【0057】
第二の容器詰食用油における逆止弁付き容器としては、第一の容器詰食用油における逆止弁付き容器と同一のものが適用可能である。したがって、第一の容器詰食用油における逆止弁付き容器に関する記載が変更なくそのまま援用される。
【0058】
第二の容器詰食用油における油組成物は、逆止弁付き容器に収容され、n-3系多価不飽和脂肪酸含有油及び植物油を混合して得られ、かつ、過酸化物価(POV)が19.0meq/kg以下である油組成物である。第二の容器詰食用油における油組成物を、第二の油組成物と称する。
【0059】
第二の油組成物におけるn-3系多価不飽和脂肪酸含有油の起源については、生物油であれば特に制限はなく、魚類等の水産物原料油、微生物に由来する微生物油等の生物油を挙げることができる。魚類に由来する魚油、微生物に由来する微生物油については、前述したものを挙げることができる。他の水産原料油としては、甲殻類又は海産動物に含まれる油脂、リン脂質、ワックスエステルなどを含む脂質を挙げることができる。他の水産原料油としては、具体的には、イカ(squid)、二枚貝(clam)、アワビ(abalone)等の軟体動物由来の油、オキアミ(krill)等の甲殻類由来の油、及びアシカ(seal)、アザラ
シ(sealion)、オットセイ(sea bear)、セイウチ(warlus)等の動物由来の油、及び
これらの油の混合物が含まれる。したがって、第二の油組成物におけるn-3系多価不飽和脂肪酸含有油としては、これらの魚油、微生物油、及び魚油以外の他の水産原料油からなる群より選択される少なくとも1種が挙げられる。
【0060】
第二の油組成物におけるn-3系多価不飽和脂肪酸含有油に関するその他の事項には、第一の油組成物におけるn-3系多価不飽和脂肪酸含有油について既述した事項を、変更なくそのまま援用できる。
第二の油組成物における植物油については、油組成物における植物油の含有率、種類を含め、第一の油組成物における植物油に関して既述した事項を、変更なくそのまま援用できる。特に、第二の油組成物における植物油としては、オリーブ油、ゴマ油、米油、大豆油、菜種油が好ましい。
【0061】
第二の油組成物の過酸化物価(POV)は、5.5meq/kg以下である。第二の油組成物のPOVが19.0meq/kg以下であれば、得られた容器詰食用油において、供給源に由来する臭いを効果的に低減することができる。POVの測定方法については、前述した測定方法と同様に、日本油化学会(JOCS)制定 基準油脂分析試験法 2013版 2.5.2.1に従って決定する。第二の油組成物のPOVとしては、供給源に由来する臭い低減効果の点で、15.0meq/kg以下であることが好ましく、10.0meq/kg以下であることがより好ましく、8.0meq/kg以下であることが更に好ましく、5.5meq/kg以下であることが更により好ましく、4.5meq/kg以下であることが更により好ましく、4.0meq/kg以下であることが更により好ましい。
【0062】
第二の油組成物に関するその他の事項については、油組成物におけるn-3系多価不飽和脂肪酸含有油と植物油との含有比率、溶存酸素量、追加成分の種類及び含有率、n-3系多価不飽和脂肪酸含有油と香料との含有比率を含め、既述した事項を、変更なくそのまま援用できる。
【0063】
第二の油組成物は、風味の観点から、例えば、POVが19.0meq/kg以下であって、以下の配合成分の組み合わせを含むものとすることができる:
(i)EPA及びDHAの少なくとも一方を含む(n-3)PUFA含有油と、オリーブ油;
(ii)EPA及びDHAの少なくとも一方を含む(n-3)PUFA含有油と、ゴマ油;
(iii)EPA及びDHAの少なくとも一方を含む(n-3)PUFA含有油と、オリ
ーブ油及びゴマ油;
(iv)EPA及びDHAの少なくとも一方を含む(n-3)PUFA含有油と、オリーブ油と、香料;
(v)EPA及びDHAの少なくとも一方を含む(n-3)PUFA含有油と、ゴマ油と、香料;又は、
(vi)EPA及びDHAの少なくとも一方を含む(n-3)PUFA含有油と、オリーブ油及びゴマ油と、香料。
【0064】
POVが19.0meq/kg以下である(i)~(iv)の第二の油組成物では、風味の観点から、EPA及びDHAの少なくとも一方を含む(n-3)PUFA含有油と、オリーブ油と、ゴマ油との含有比率、すなわち、EPA及びDHAの少なくとも一方を含む(n-3)PUFA含有油:オリーブ油:ゴマ油の配合成分比を、例えば、重量比で以下のようにすることができる:
(i-1)80:20:0
(i-2)35:65:0
(i-3)20:80:0
(i-4) 1:99:0
(ii-1)80:0:20
(ii-2)35:0:65
(ii-3)20:0:80
(ii-4) 1:0:99
(iii-1)35:30:35
(iii-2) 1:40:59。
【0065】
第二の油組成物を含む容器詰食用油は、風味の観点から、例えば、以下の組み合わせとすることが好ましい:
(I)POVが19.0meq/kg以下である上記(i)、(iii)~(vi)のいず
れかの第二の油組成物と、非遮光型容器;
(II)POVが19.0meq/kg以下である上記(i)~(vi)のいずれかの第二の油組成物と、遮光フィルム付き容器;
(III)POVが19.0meq/kg以下である上記(i)~(vi)のいずれかの第
二の油組成物と、遮光容器;又は
(IV)上記(i)~(vi)のいずれかの第二の油組成物と、着色容器。
なかでも、(II)~(IV)の容器詰食用油であることが好ましく、このうち第二の油組
成物が、ゴマ油を植物油として含む(ii)及び(v)である場合が、更に好ましい。
【0066】
容器詰食用油は、上述した第一の油組成物又は第二の油組成物を得て、これを逆止弁付き容器内に充填することによって製造することができれば、如何なる方法で製造してもよい。
以下に、第一の油組成物を含む第一の容器詰食用油を例に、容器詰食用油の製造方法の一態様について説明する。
【0067】
[容器詰食用油の製造方法]
容器詰食用油の製造方法は、過酸化物価(POV)が1.0meq/kg以下であり、脱臭処理を含む精製処理後の、生物油に由来するn-3系多価不飽和脂肪酸含有油を用意すること(以下、「用意工程」という)、用意されたn-3系多価不飽和脂肪酸含有油と植物油とを混合して、油組成物を得ること(以下、「混合工程」という)、前記油組成物を、逆止弁付き容器に充填すること(以下、「充填工程」という)を含み、必要に応じて他の工程を含む。
本製造方法によれば、本開示に係る容器詰食用油を、例えば効率よく得ることができる。
【0068】
用意工程で用意されるn-3系多価不飽和脂肪酸含有油は、生物油、例えば魚油及び微生物油からなる群より選択される少なくとも1種の生物油に由来すると共に、過酸化物価(POV)が1.0meq/kg以下であり、脱臭処理を含む精製処理後のものである。このようなn-3系多価不飽和脂肪酸含有油は、適切な製造元又は供給元から入手したものであってもよく、前記生物油に由来する未精製油に対して、少なくとも脱臭処理を含む精製処理を行うことによって製造したものであってもよい。
【0069】
未精製油は、少なくとも1種のn-3系多価不飽和脂肪酸を含む生物油に由来する未精製油であれば、別途入手した未精製油であってもよく、原材料から直接製造したものであってもよい。未精製油は、トリグリセリド形態のn-3系多価不飽和脂肪酸を含有するものであってよく、脂肪酸アルキルエステル形態のn-3系多価不飽和脂肪酸を含有するものであってもよい。また、未精製油は、生物油から抽出した後に精製処理を行っていない粗油であってもよく、一部のみ精製処理を行ったものであってもよい。生物油については、前述した事項をそのまま適用できる。第一の容器詰食用油の場合、生物油としては、魚油及び微生物油からなる群より選択される少なくとも1種の生物油を用いる。
【0070】
精製処理では、一般に、脱ガム工程、脱酸工程、及び脱色工程をこの順で含み、脱色工程の後に、脱臭処理を行う脱臭工程が実施される。なお、精製処理では、水洗工程を含んでもよい。
【0071】
脱ガム工程では、リン酸、クエン酸等の有機酸又は熱水などを用いて、リン脂質を主体とするガム質及び水和物質、微量金属等を除去する。脱酸工程では、水酸化ナトリウム等のアルカリを用いて、油中の遊離脂肪酸等を除去する。脱色工程では、活性白土等を用いて着色物質、酸化物質、酸化促進物質等を吸着させて除去する。これらの工程における処理は、それぞれ、当該技術分野において通常用いられる方法により行うことができる。
【0072】
脱臭工程では、高温、高真空下で揮発性物質を除去する。脱臭方法としては、分子蒸留、短行程蒸留、水蒸気蒸留等がある。これらの脱臭工程を行うことによって、POVが1.0meq/kg以下である(n-3)PUFA含有油が得られる。なかでも、原料中の臭気成分を効率よく除去できる点で脱臭処理は、水蒸気蒸留で行うことが好ましい。水蒸気蒸留は、所定のPOVのn-3系多価不飽和脂肪酸含有油を確実にかつ効率よく得る観点から、常圧又は100mmHg以下の減圧下において、120~200℃の温度及び圧力条件で、水蒸気を吹き込みながら行うことが好ましい。水蒸気蒸留によって脱臭処理を行うことにより、供給源に由来する臭いを長期安定して抑制することができる。
【0073】
精製処理は、更に、アルキルエステル化工程を含むものであってもよい。アルキルエステル化工程では、処理対象の未精製油又は精製油を、低級アルコールを用いたアルコール分解により、低級アルキルエステルに分解する。低級アルコールとしては、脂肪酸のアルキルエステル化に一般的に用いられるもの、例えば、炭素数1~3の低級アルコールが挙げられる。アルコール分解は原料油に、低級アルコール例えばエタノールと触媒又は酵素を加え反応させ、グリセリンに結合した脂肪酸からエチルエステルを生成させるものである。触媒としては、アルカリ触媒、酸触媒などを用いる。酵素としてはリパーゼが用いられる。
【0074】
精製処理は、更に濃縮処理を含むことができる。濃縮処理を行うことにより、より高い濃度でn-3系多価不飽和脂肪酸を含有する(n-3)PUFA含有油を得ることができる。濃縮処理としては、ウィンタリング処理、酵素処理等を挙げることができる。
【0075】
更に、n-3系多価不飽和脂肪酸が脂肪酸アルキルエステル形態である場合には、濃縮処理として、蒸留、精留、カラムクロマトグラフィー、低温結晶化法、尿素包接法、液々向流分配クロマトグラフィー等を、1種単独で、又は2種以上を組み合わせて使用することができる。蒸留又は精留とカラムクロマトグラフィー又は液々向流分配クロマトグラフィーとの組み合わせが好ましい。
【0076】
例えば、精留を用いる場合、精留工程としては、蒸留塔の塔頂部の圧力を10mmHg(1333Pa)以下の減圧とし、塔底温度を165℃~210℃、好ましくは170℃~195℃とする条件で蒸留することが、熱による脂肪酸の変性を抑え、精留効率を高める点で好ましい。蒸留塔の塔頂部の圧力は、低いほどよく、0.1mmHg(13.33Pa)以下であることがより好ましい。塔頂部の温度については特に制限はなく、例えば、160℃以下とすることができる。
【0077】
カラムクロマトグラフィーとしては逆相分配系のカラムクロマトグラフィーが好ましい。逆相カラムクロマトグラフィーとしては、当業界で公知の逆相カラムクロマトグラフィーを挙げることができ、特にオクタデシルシリル基(ODS)で修飾された基材を固定相とした高速液体クロマトグラフィー(HPLC)が好ましく挙げられる。
【0078】
用意すべきn-3系多価不飽和脂肪酸含有油を、適切な製造元又は供給元から入手した場合には、入手後に、上述したアルキルエステル化処理及び濃縮処理からなる群より選択されるいずれか一方を更に行ってもよい。アルキルエステル化処理については、前述した事項をそのまま適用可能であり、アルキルエステル化処理に用いる低級アルコールとしては、脂肪酸のアルキルエステル化に一般的に用いられるもの、例えば、炭素数1~3の低級アルコールが挙げられる。アルコール分解は原料油に、低級アルコール例えばエタノールと触媒又は酵素を加え反応させ、グリセリンに結合した脂肪酸からエチルエステルを生成させるものである。触媒としては、アルカリ触媒、酸触媒などを用いる。酵素としてはリパーゼが用いられる。濃縮方法としては、前述した事項をそのまま適用可能であり、ウィンタリング処理、酵素処理等を挙げることができる。n-3系多価不飽和脂肪酸が脂肪酸アルキルエステル形態である場合には、蒸留、精留、カラムクロマトグラフィー、低温結晶化法、尿素包接法、液々向流分配クロマトグラフィー等を、1種単独で、又は2種以上を組み合わせて使用することができる。蒸留又は精留とカラムクロマトグラフィー又は液々向流分配クロマトグラフィーとの組み合わせが好ましい。
【0079】
混合工程では、用意された(n-3)PUFA含有油と、植物油とを混合して、油組成物を得る。混合方法は、特に制限はないが、蓋付き撹拌タンク等を用いて各配合成分が均一になるまで混合することが好ましい。混合は、一度に行ってもよく、連続的に行ってもよい。なお、各成分の混合比率と油組成物中の含有比率とは、ほぼ同視することができる。
【0080】
(n-3)PUFA含有油と植物油との混合比率は、重量比で1:99~80:20であることが好ましく、5:95~65:35であることがより好ましく、10:90~50:50であることが更に好ましい。この混合比率は、上述した油組成物における(n-3)PUFA含有油と植物油との配合比率とほぼ同等とすることができる。
【0081】
混合工程中又は混合工程後では、油組成物の溶存酸素量を低減させるために、窒素供給を行うことが好ましく、各配合成分を混合しながら供給を行うことが好ましい。これにより、油中の溶存酸素量を迅速かつ均一に低減することができる。窒素供給の供給速度は、2L/分~20L/分であることが好ましく、5L/分~15L/分であることがより好ましい。この範囲とすることにより、上述した所望の範囲、例えば11mg/L以下、10mg/L以下、又は9mg/L以下の溶存酸素量の油組成物を効率よく得ることができる。
溶存酸素量の低減処理は、上記に限定されない。例えば、混合工程中に、真空装置、脱気装置等を用いて脱気しながら各配合成分を混合することによっても溶存酸素量を低減させることができる。
【0082】
充填工程では、前記油組成物が、逆止弁付き容器に充填される。充填方法は特に制限はなく、通常用いられる自動充填機を用いて行うことができる。充填後は、逆止弁付き容器を密封する。これにより、本開示に係る第一の容器詰食用油が得られる。
【0083】
次に、第二の容器詰食用油の製造方法について説明する。第二の容器詰食用油の製造方法は、以下に述べる点以外は、第一の容器詰食用油の製造方法と同様の方法で得ることができる。
第二の容器詰食用油を得る場合には、n-3系多価不飽和脂肪酸含有油の起源となる生物油には特に制限は無く、第二の油組成物に関して既述した起源の生物油に由来する未精製油を用意する。
【0084】
第二の容器詰食用油の製造方法における用意工程については、用意すべきn-3系多価不飽和脂肪酸含有油を入手して用意する場合及び製造して用意する場合の双方とも、特に
記載した事項以外は、第1の容器詰食用油の製造方法にて関して既述した事項をそのまま適用することができる。
【0085】
混合工程では、前記精製処理で得られたn-3系多価不飽和脂肪酸含有油と植物油とを混合して、POVが19.0meq/kg以下である第二の油組成物が得られる。第二の容器詰食用油を得る製造方法における混合工程については、第一の容器詰食用油の製造方法における混合工程に関して記述した事項を、変更することなくそのまま援用することができる。
【0086】
第二の油組成物におけるPOVの調整は、当業者であれば、混合工程で用いる植物油の種類、混合比率等を適宜選択することによって行うことができる。第二の油組成物におけるPOVの調整は、植物油の種類等の選択に代えて、又はこれと併せて、精製工程での精製処理及び混合工程における混合処理の条件を調整することによっても、行うことができる。これにより、充填工程後に得られる第二の容器詰食用油における油組成物のPOVを19.0meq/kg以下にすることができる。
【0087】
混合工程中又は混合工程後では、第二の油組成物の溶存酸素量を低減させるために、窒素供給を行うことが好ましく、各配合成分を混合しながら供給を行うことが好ましい。これにより、油中の溶存酸素量を迅速かつ均一に低減することができる。窒素供給の供給速度は、2L/分~20L/分であることが好ましく、5L/分~15L/分であることがより好ましい。この範囲とすることにより、上述した所望の範囲、例えば11mg/L以下、10mg/L以下、又は9mg/L以下の溶存酸素量の第二の油組成物を効率よく得ることができる。
溶存酸素量の低減処理は、上記に限定されない。例えば、混合工程中に、真空装置、脱気装置等を用いて脱気しながら各配合成分を混合することによっても溶存酸素量を低減させることができる。
【0088】
充填工程では、得られた又は用意された第二の油組成物を逆止弁付き容器に充填する。これにより、第二の容器詰食用油、即ち、逆止弁付き容器と、逆止弁付き容器に収容され、過酸化物価(POV)が19.0meq/kg以下である第二の油組成物と含む容器詰食用油を得ることができる。ここで、逆止弁付き容器に充填された油組成物のPOVは、臭い抑制の観点から、15.0meq/kg以下であることが好ましく、10.0meq/kg以下であることがより好ましく、8.0meq/kg以下であることが更に好ましく、8.0meq/kg以下であることが更により好ましく、5.5meq/kg以下であることが更により好ましく、4.5meq/kg以下であることが更により好ましく、4.0meq/kg以下であることが更により好ましい。
【0089】
本開示に係る容器詰食用油は、機能性に富むn-3系多価不飽和脂肪酸を、保存後でも風味が安定して良好な食用油の一成分として効率よく摂取することができる。このため、容器詰食用油は、n-3系多価不飽和脂肪酸の機能性を備えた機能性容器詰食用油として好ましく用いることができる。
【0090】
例えば、n-3系多価不飽和脂肪酸としてEPA及びDHAの少なくとも一方を含む場合、抗炎症;末梢への酸素運搬機能回復;血小板凝集作用の減弱による抗凝固能;eNOSを介した血管拡張作用;血管内皮機能改善;心拍出量増加;不整脈抑制(抗不整脈);心筋細胞のNaチャネル抑制若しくはNa/Ca交換機構の抑制;酸素利用効率(エクササイズ・エコノミー)の向上;認知機能向上;基礎代謝向上及び内臓脂肪低下;血中中性脂肪値の低下作用;抗酸化能;アテローム性動脈硬化症の進展抑制若しくは動脈硬化プラークの安定化作用:インスリン抵抗性改善作用:血圧低下作用;精神的安定化作用;小児の眼、脳若しくは神経機能の発達促進作用;病気の予防若しくは改善作用;イヌ又はネコ
の眼、脳若しくは神経機能の発達促進作用などの機能の発揮が期待される。予防若しくは改善作用の対象となり得る疾病には、ドライアイ;黄斑変性;うつ病、ADHD、統合失調症若しくは境界性人格障害;認知症;尋常性乾癬;潰瘍性大腸炎;クローン病;慢性腎臓病;がん;関節リウマチ;関節痛;アレルギー性疾患;血中脂質異常;心臓病;高血圧症;糖尿病;月経痛の改善などが挙げられる。予防若しくは改善作用の対象となり得るイヌ又はネコの疾病には、血中脂質異常;肥満症;認知症;腎臓病;心臓病;アトピー性皮膚炎;皮膚疾患;動脈硬化症;不整脈;関節炎;慢性炎症性疾患などが挙げられる。中でも、中性脂肪値の低減機能;認知機能の一部である記憶力、注意力、判断力、空間認識力の維持等の認知機能の維持機能;スポーツ時の疲労感を感じ難くする機能、筋肉痛改善機能、筋肉に負荷をかけた場合の痛みを感じ難くする機能、睡眠の質の改善機能、目覚め改善機能;基礎代謝の亢進機能などを備えた、又はこれらの機能が期待される機能性容器詰食用油又は特定保健用食品として用いることができる。
【0091】
本開示の機能性容器詰食用油を摂取させることにより、中性脂肪値の低減方法;認知機能の一部である記憶力、注意力、判断力、空間認識力の維持等の認知機能の低下抑制方法;スポーツ時の疲労感を感じ難くする方法、筋肉痛改善方法、筋肉に負荷をかけた場合の痛みを感じ難くする方法、睡眠の質の改善方法、目覚め改善方法;基礎代謝の亢進方法を提供することができる。
【0092】
これらの機能性容器詰食用油として用いる場合、有効成分であるn-3系多価不飽和脂肪酸を有効量で含有する油組成物と逆止弁付き容器とを備えた機能性容器詰食用油とすることができる。機能性容器詰食用油を機能発揮の目的で用いる場合には、期待される機能を発揮可能な量で食品に添加して摂取することができる。摂取量は、対象となる個体の改善目的の状態の程度、投与対象の年齢、体重及び健康状態などの条件に応じて、適宜設定される。例えば、成人であれば、成人一人あたり一日100mg~3800mg、好ましくは260~1300mgを、1日1回若しくは2~4回、又はそれ以上に分割して、適宜間隔をあけて投与することができる。
【実施例】
【0093】
以下、本開示を実施例にて詳細に説明する。しかしながら、本開示はそれらに何ら限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、「%」は質量(重量)基準である。
【0094】
[実施例1]
(容器詰食用油1)
精製魚油として、イワシ油を原料とし、脱ガム、脱酸、脱色を行い、リパーゼ(酵素)を用いた酵素処理で濃縮した後に、分子蒸留を行い、次いで、水蒸気蒸留による脱臭処理を行った精製魚油「DDオイル タイプ2B-S」(日本水産株式会社製)のうち、POVが0.1meq/kg~0.3meq/kgのものを、精製魚油Aとして用意した。精製魚油Aは、飽和脂肪酸20重量%以下、EPA28重量%以上、DHA12重量%以上、n-3系多価不飽和脂肪酸50重量%以上の組成比で、これらの各成分を含んでいた。
【0095】
精製魚油Aと、表1に示す各配合成分を表中に記載の含有率となる量で各原材料を蓋付き撹拌タンク(400kg)に投入に、窒素を15L/分の速度で供給しながら、溶存酸素が9.0mg/L以下になるまで15~60rpmの速度で撹拌して混合し、油組成物A及び油組成物Bをそれぞれ得た。溶存酸素量は、溶存酸素量はHACH製ポータブルマルチメーターHQ40dを用い、品温25℃で測定した。9.0mg/L以下になった時点で、窒素を5L/分で供給して上部を窒素シールした供給ホッパーに移した。
【0096】
表1中の各配合成分としては、以下を使用した。
オリーブ油: エクストラバージンオリーブ油(S)、原産国スペイン、カネダ株式会
社
太白ごま油:太白胡麻油ラベル缶、竹本油脂株式会社
ごま油:胡麻油228、竹本油脂株式会社
バジル:バジルフレーバーNHS-1677、長谷川香料株式会社
ニンニク:ガーリックフレーバー RSA68244、長岡香料株式会社
レモン:レモンオイル JL53631、小川香料株式会社
アスコルビン酸パルミテート:エアコート(登録商標)C、三菱化学フーズ株式会社
ゴマ油残渣抽出物:ゴマ油残渣抽出物PD1363S、長岡香料株式会社
【0097】
次いで、自動充填機(株式会社シバタエンジニアリング製、MS-GS4)を用いて、遮光フィルム(株式会社フジシール製、乳白ラベル、遮光率99%以上)で本体全体を覆った逆止弁付き容器(100mL容、キョーラク株式会社製、ハクリボトル)に、油組成物Aを100mLの量で充填し、密封し、容器詰食用油1を得た。
【0098】
(容器詰食用油2)
容器詰食用油1で用いた油組成物Aを、遮光フィルム(株式会社フジシール製、乳白ラベル、遮光率99%以上)で本体全体を覆った逆止弁を有しないバイアル瓶(100mL容、日電理科硝子株式会社製、SV-100)に充填した以外は、容器詰食用油1と同様に行い、容器詰食用油2を得た。
【0099】
(容器詰食用油3)
表1に記載の配合に従って、植物油を含まない油組成物Bを得た。油組成物Bを実施例1で用いた遮光型逆止弁付き容器に充填した以外は、容器詰食用油1と同様にして、容器詰食用油3を得た。
【0100】
<評価1:POV>
容器詰食用油1~3を、製造直後に45℃の恒温槽(暗所)に1ヶ月保存した。1週間に1回、容器の蓋を開放して再封する作業を行った。この保存条件は、常温12ヶ月の保存に相当する。1ヶ月後に取り出して、以下の様にPOVを測定した。POVは、日本油化学会(JOCS)制定 基準油脂分析試験法 2013版 2.5.2.1に従って決定した。結果を表1に示す。
【0101】
<評価2:官能評価>
容器詰食用油1~3を、製造直後に45℃の恒温槽(暗所)に1ヶ月保存した。1週間に1回、容器の蓋を開放して再封する作業を行った。この保存条件は、常温12ヶ月の保存に相当する。
製造直後と、1ヶ月保存後にそれぞれ、においに関して、以下のように官能評価を行った。
【0102】
官能評価を行うパネリストには、特別に訓練され、魚のにおいの種類を正しく識別でき、表現でき、かつ嗅覚に異常がないパネリスト4人を選抜した。選抜したパネリストに対しては、最初に、脂肪酸が酸化したにおいと魚の生臭さのにおいについて、パネリスト間の評価が一致するよう事前に訓練を行った。事前訓練は、精製魚油を含有した清涼飲料水「イマークS」(日本水産株式会社製)を使用した。製造直後、25℃で1ヵ月保管後、2ヵ月保管後、3ヵ月保管後、4ヵ月保管後の「イマークS」を、横並びで官能評価した。評価は、以下の5段階評価とし、脂肪酸が酸化したにおい及び魚の生臭いにおいのそれぞれについて、製造直後のものを5点、1ヵ月保管後のものを4点、2ヵ月保管後のものを3点、3ヵ月保管後のものを2点、4ヵ月保管後のものを1点と、それぞれ評価することとし、この評価を、評価基準とした。
5:臭いが抑制されており全くわからない
4:臭いがわずかにわかる
3:臭いがわかるが不快ではない
2:臭いがわかり、やや不快であるが、製品として合格レベル
1:不快な臭い
【0103】
次いで、容器詰食用油1~3の評価を行った。容器詰食用油1~3の評価は、食用油の配合や製法等の情報をパネリストに知らせず、絶対評価で評価を行った。評価項目は上記の5段階評価とした。結果を表1及び表2に示す。
【0104】
【0105】
【0106】
<結果>
表1及び表2に示されるように、同じ精製魚油Aを用いても、逆止弁付き容器を使用しない容器詰食用油2と、精製魚油を植物油と混合していない油組成物Bを用いた容器詰食用油3とは、生臭いにおいと酸化臭とが異なる臭いとして認識可能であることが示された。
特に、混合油ではない油組成物Bを用いた場合には、酸化臭とは別に生臭さを製造直後から認識可能となり、1ヶ月後には、酸化臭がわずかにわかる程度であるにも拘わらず、生臭さは不快なレベルに達した(容器詰食用油3)。また、植物油を含む油組成物であっても逆止弁付き容器に充填していない場合には、2週間後には、酸化臭よりも生臭さが不快なレベルに達していた(容器詰食用油2)。
【0107】
このように酸化した臭いと生臭さとは区別可能であり、風味をより高いレベルで維持するには、生臭さについても考慮すべきことがわかった。
【0108】
これに対して、精製魚油Aと植物油との混合油である油組成物Aを逆止弁付き容器に充填した容器詰食用油1では、酸化臭だけでなく、酸化臭とは別の臭いである生臭さを良好に抑制することができた。このことから、本開示に係る容器詰食用油は、生臭さを長期にわたって良好に抑制して、風味をより高いレベルで維持できることがわかった。
【0109】
[実施例2]
(容器詰食用油4~6)
容器詰食用油1で用いた油組成物Aを、遮光フィルムを有しない逆止弁付き容器(100mL容、キョーラク株式会社製、ハクリボトル)に充填した以外は、実施例1の容器詰食用油1と同様に行い、容器詰食用油4を得た。
表3に記載の配合に従って、香料以外の各配合成分を混合して油組成物C及びDを得た。油組成物C又はDを用いた以外は、実施例1の容器詰食用油1と同様に行い、容器詰食用油5又は6を得た。
【0110】
(容器詰食用油7)
表3の記載の配合に従って、油組成物Aと同一の各成分を、窒素供給をせずに混合して油組成物Eを得た。油組成物Eを用いた以外は実施例1の容器詰食用油1と同様にして、容器詰食用油7を得た。
【0111】
(容器詰食用油8)
表3に記載の配合に従って、精製魚油Aと、植物油とを、窒素供給を行わずに混合して油組成物Fを得た。油組成物Fの溶存酸素量は、9.0mg/Lを超えていた。油組成物Fをバイアル瓶(100mL容、日電理科硝子株式会社製、SV-100)に50mLの量を充填した以外は、実施例1の容器詰食用油1と同様に行い、容器詰食用油8を得た。
【0112】
<評価>
容器詰食用油4~8について、上記と同様にして1ヶ月保存後にPOVを測定した。また、保存後の生臭いにおいについて、上記と同様に官能評価を行った。それぞれ結果を表3に示す。
【0113】
【0114】
<結果>
実施例1の表1及び2と、本実施例の表3に示されるように、精製魚油と植物油との混合油である油組成物を逆止弁付き容器に充填した容器詰食用油1、4~7では、生臭いにおいを抑制することができることがわかった。これらを食してみると、不快なにおいがなく、味にも大きな変化が認められない。
なかでも、油組成物を逆止弁付き容器に収容した容器詰食用油であって、脱臭処理を行い、POVが1.0meq/kg以下である精製魚油Aを用いた容器詰食用油1、4~6は、生臭いにおいの抑制効果が比較的良好であった。
【0115】
これに対して、逆止弁付き容器を使用しない場合には、1ヵ月後のPOVが高く、生臭さの抑制効果が認められず(容器詰食用油8)、遮光処理をしても1ヶ月後のPOVが高く、生臭さの抑制効果も認められなかった(容器詰食用油2)。また、遮光型の逆止弁容器を使用しても、植物油を配合しない場合には、製造直後の溶存酸素量が低く(9.0mg/L)、1ヶ月後のPOVが低く抑えられていても(1.0meq/kg以下)、生臭さの抑制効果は認められなかった(容器詰食用油3)。
【0116】
[実施例3]
次に、脱臭処理を行わずに得られ、POVが異なる2種の精製魚油を含む容器詰食用油を、以下のように作製し、これらの評価を行った。
(容器詰食用油9)
精製魚油として、イワシ油を原料とし、脱ガム、脱酸、脱色を行い、リパーゼ(酵素)を用いた酵素処理で濃縮した後に、分子蒸留を行ったが、脱臭処理を行わず得られた精製魚油「EPA28G2」(日本水産株式会社製)のうち、POVが1.5~2.0meq/kgであるものを用意し、これを精製魚油Bとした。精製魚油Bは、飽和脂肪酸20重量%以下、EPA28重量%以上、DHA12重量%以上、n-3系多価不飽和脂肪酸50重量%以上で、各成分を含んでいた。
表4に記載の配合に従って、精製魚油Bを含む油組成物Gを得て、この油組成物Gを用いた以外は実施例1の容器詰食用油1と同様にして、容器詰食用油9を得た。
【0117】
(容器詰食用油10)
精製魚油として、イワシ油を原料とし、脱ガム、脱酸、脱色を行い、リパーゼ(酵素)を用いた酵素処理で濃縮した後に、分子蒸留を行ったが、水蒸気蒸留による脱臭工程を行わずに得られた精製魚油であるEPA28G2(日本水産株式会社製)のうち、POV0.1~0.3meq/kgのものを用意し、これを精製魚油Cとした。精製魚油CのPOVは、0.1~0.3meq/kgであり、精製魚油Cは、飽和脂肪酸20重量%以下、EPA28重量%以上、DHA12重量%以上、n-3系多価不飽和脂肪酸50重量%以上で、各成分を含んでいた。
表4に記載の配合に従って、この精製魚油Cを用いて香料を使用しなかった以外は、実施例1の容器詰食用油1と同様に行い、油組成物Hを得た。油組成物Hを用いた以外は実施例1の容器詰食用油1と同様にして、容器詰食用油10を得た。
【0118】
【0119】
<評価>
容器詰食用油9及び10について、実施例2と同様にして1ヶ月保存後にPOVを測定した。また、保存後の生臭いにおいについて、実施例2と同様に官能評価を行った。
その結果、容器詰食用油9については、1ヶ月後のPOVは、5.1meq/kgであり、パネラー4人全員が合格レベルと評価した。容器詰食用油10については、1ヶ月後のPOVは、4.3meq/kgであり、パネラー4人のうち2人が合格レベルと評価した。
このように、脱臭処理を行わずに得られた精製魚油B又は精製魚油Cと植物油との混合油である油組成物が逆止弁付き容器に充填された容器詰食用油9及び10はいずれも、保存後の生臭いにおいについて、合格レベルの評価が得られることがわかった。
【0120】
本開示に係る容器詰食用油は、供給源に由来する生臭さを安定して抑制することができる。
本開示に係る容器詰食用油はDHA及びEPAを含有しているので、保存後でも風味が良好な容器詰食用油の一成分として、DHA及びEPAを効果的に摂取することができ、DHA及びEPAによる各種機能の高い発揮が期待される。
【符号の説明】
【0121】
10 容器詰食用油
12 逆止弁付き容器
14 本体
16 内層体
18 収容空間
20 開口部
22 蓋部
24 逆止弁
26 油組成物